説明

試料ガス捕集装置及びガスクロマトグラフ装置

【課題】試料ガスを均一に吸着し且つその脱離した試料ガスの再吸着を防止して高濃度の試料ガスを短時間で送出する。
【解決手段】試料ガスを導入する導入口11aと該導入した試料ガスを排気する排気口15aを有する中空状部材11と、中空状部材11に収容されて前記試料ガスを捕集する捕集剤12と、中空状部材11を加熱して捕集剤12に捕集した試料ガスを脱離させる加熱手段13と、を有し、中空状部材11に導入した試料ガスを低温状態のときに捕集剤12に捕集し且つ捕集剤12に捕集した試料ガスを高温状態のときに脱離する試料ガス捕集装置1において、捕集剤12が、導入口11aから導入した試料ガスを均一に捕集し且つ該捕集した試料ガスを脱離してから排気口15aまでの距離が略均一となる形状に形成され、中空状部材11が、捕集剤12を収容する形状に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入された試料ガスを低温状態のときに捕集し且つ前記捕集した試料ガスを高温状態のときに脱離する捕集剤を有する試料ガス捕集装置及びガスクロマトグラフ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)は、例えば、大気等の試料ガスに含まれる揮発性有機化合物等の検出対象成分の検出に用いられる装置であり、該試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため、分離カラムおよび検出センサなどの検出装置のほかに、検出対象成分を捕集して濃縮するための捕集装置を備えた構成のものが一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1で提案されているGC装置100は、図9に示されるように、試料ガス成分を搬送するキャリアガスを発生するガスボンベなどのキャリアガス源108、キャリアガスによって搬送された試料ガスの成分を検出(分析)する分析装置110、試料ガスを導入する試料導入口101、試料導入口101から導入された試料ガスを吸引して排出口115から排出する吸引ポンプ104、試料ガスから検出対象成分を捕集して濃縮する捕集管102、および、捕集管102を試料導入口101と吸引ポンプ104との間またはキャリアガス源108と分析装置110との間に選択的に接続するバルブ105、などから構成されている。
【0004】
このGC装置100において、検出対象成分を捕集(濃縮)するときは、捕集管102が試料導入口101と吸引ポンプ104との間に直列に接続されるようバルブ105を切り替え、吸引ポンプ104が試料ガスを吸引することにより、試料導入口101に導入された試料ガスが捕集管102内を流動されて検出対象成分が捕集される。そして、検出対象成分を検出するときは、捕集管102がキャリアガス源108と分析装置110との間に直列に接続されるようバルブ105を切り替えて、キャリアガス源108がキャリアガスを発生して捕集管102内を流動させることにより、検出対象成分をキャリアガスによって捕集管102から分析装置110まで搬送して、分析装置110内に導入していた。
【0005】
また、特許文献2に示す捕集管は、急速な加熱昇温ができない接続部分に封止材を装入してデッドボリュームを少なくするとともに、充填剤を均一な加熱昇温が可能な接続部分以外の部分に装入することで、再吸着を防止して分析性能の向上と安定化を可能としてきた。
【特許文献1】特開2006−337158号公報
【特許文献2】特開平9−113493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来の捕集管は、冷却手段によって試料ガスを捕集管内の捕集剤に吸着するのに十分な温度まで冷却され、その後、捕集剤に吸着した試料ガスを気化温度以上に加熱手段によって加熱することで、試料ガスの脱離を促してキャリアガスと共に分析装置に送り出しているが、加熱離脱の際に脱離ガス濃度に時間分布が生じてしまい、分析装置による分析ピークがブロード(幅広)になり、急激な分析ピークを得ることが難しいという問題があった。
【0007】
また、吸着剤がキャリアガスの流れ方向における所定の範囲にわたって設けられているため、試料ガスを均一に吸着させることが困難であり、且つ、流れ方向の上流側で脱離した試料ガスがキャリアガスで下流側に流れて再吸着する可能性があるという問題があった。
【0008】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、試料ガスを均一に吸着し且つその脱離した試料ガスの再吸着を防止して高濃度の試料ガスを短時間で送出する試料ガス捕集装置及びガスクロマトグラフ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の試料ガス捕集装置は、試料ガスを導入する導入口と該導入した試料ガスを排気する排気口を有する中空状部材と、前記中空状部材に収容されて前記試料ガスを捕集する捕集剤と、前記中空状部材を加熱して前記捕集剤に捕集した試料ガスを脱離させる高温状態にする加熱手段と、を有し、前記中空状部材に導入した試料ガスを低温状態のときに前記捕集剤に捕集し且つ前記捕集剤に捕集した試料ガスを高温状態のときに脱離する試料ガス捕集装置において、前記捕集剤が、前記導入口から導入した試料ガスを均一に捕集し且つ該捕集した試料ガスを脱離してから前記排気口までの距離が略均一となる形状に形成され、前記中空状部材が、前記捕集剤を収容する形状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の試料ガス捕集装置において、前記捕集剤が、中空半球状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の試料ガス捕集装置において、前記捕集剤と前記排気口の間に介在するように前記中空状部材に収容され且つ前記捕集剤から脱離した試料ガスの再吸着を防止する非吸着剤を有することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項4記載のガスクロマトグラフ装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の試料ガス捕集装置1と、前記試料ガス捕集装置1で脱離した試料ガスの成分を分析する分析手段5と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1に記載した本発明の試料ガス捕集装置によれば、中空状部材の導入口から導入した試料ガスを均一に捕集し且つ該捕集した試料ガスを脱離してから排気口までの距離が略均一となるように捕集剤を形成して中空状部材に収容するようにしたことから、導入した試料ガスを均一に捕集でき且つその脱離した試料ガスを一気に排気口から排出することができるため、高濃度の試料ガスを短時間で送出することができる。また、捕集剤と排気口との間には捕集剤が存在しないため、脱離した試料ガスの再吸着を防止することができる。従って、本発明の試料ガス捕集装置を用いることで、シャープで分解度の高いピークを得ることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、捕集剤を中空半球状に形成するようにしたことから、試料ガスと捕集剤との接触面積をより広くすることができ、捕集剤の全ての領域から排気口までの距離を等距離とすることができるため、濃縮率が向上でき且つ再吸着による濃縮率の低下を防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、非吸着剤を捕集剤と排気口の間に介在するように中空状部材に収容するようにしたことから、捕集剤から脱離した試料ガスの再吸着を防止して一気に排気口から排出することができるため、高濃度の試料ガスをより一層短時間で送出することができる。
【0016】
以上説明したように請求項4に記載した本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、加熱脱離時における脱離ガス濃度の時間分布の短縮化できる試料ガス捕集装置を有していることから、試料ガス捕集装置は分析手段に短時間で試料ガスを送出することができ、分析手段は急激な検出ピークを得ることができるため、ガスの成分を効率的に分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る試料ガス捕集装置および該試料ガス捕集装置を有するガスクロマトグラフ(GC)装置の一実施形態について、図1〜8の図面を参照して説明する。
【0018】
図1において、試料ガス捕集装置1は、中空状部材11と、捕集剤12と、冷却加熱手段13と、非吸着剤14と、封止ケース15と、封止メッシュ16と、を有し、一体に形成している。なお、本実施形態では、中空状部材11と封止ケース15を別体とした場合について説明するが、それらを一体のケースとすることもできる。
【0019】
中空状部材11は、中空半球状に熱伝導性部材によって形成さている。中空状部材11は、半球状の頂点付近に形成された導入口11aを有し、該導入口11aから内部に試料ガス、キャリアガス等を導入する構造となっている。なお、本実施例では、1つの導入口11aを設ける場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、球表面に複数の導入部を設けて複数箇所から試料ガス、キャリアガス等を内部に導入するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0020】
捕集剤12は、試料ガスを吸着する部材、例えば、TENAX系、活性炭系、ゼオライト系等のガス分子を吸着捕集する膜状材料によって、上述した中空状部材11よりも若干小さな中空半球状に形成されている。そして、捕集剤12は、後述する封止ケース15の排気口15aを中心とした所定半径の半球状に形成されている。このような半休形状とすることで、導入口11aから導入した試料ガスを均一に捕集し且つ該捕集した試料ガスを脱離してから排気口15aまでの距離を略均一としている。この捕集剤12は、低温状態時に中空状部材11内を流れる試料ガスを吸着して捕集する。そして、捕集した試料ガスを気化温度以上とする高温状態に加熱されることで脱離する。
【0021】
冷却加熱手段13は、請求項中の加熱手段に相当し、中空状部材11の外周面に沿って設けられ、公知であるクーラー等の冷却装置及びヒータ等の加熱装置が用いられる。そして、冷却装置及び加熱装置は外部からの制御によって冷却、加熱が切り換えられる。冷却加熱手段13は、中空状部材11を冷却又は加熱することで、上述した捕集剤12の冷却又は加熱を促す。
【0022】
非吸着剤14は、捕集剤12から脱離した試料ガスの吸着性が低い、例えばαアルミナ、不活性処理を施した金属やガラス等の材料が用いられる。そして、捕集剤12と封止ケース15との間に生じる空間に充填される。なお、この非吸着剤14は、不要である場合、試料ガス捕集装置1の構成から削除することもできる。
【0023】
封止ケース15は、上記中空状部材11と同一の材料で、中空状部材11の開口を塞ぐ略円盤状に形成されている。封止ケース15は、排気口15aと、嵌合凸部15bと、係止部15cと、取付部15dと、を有している。
【0024】
排気口15aは、封止ケース15本体の中心付近から外部に向かって突出し、上記中空状部材11内に導入した試料ガス(脱離ガス)を排気する配管状に形成されている。嵌合凸部15bは、封止ケース15の円周部に沿ってリング凸状に形成され、上記中空状部材11の開口に勘合して内部を密閉する。係止部15cは、第1、2メッシュ16a,bに係合して固定するように、上記中空状部材11内に向かって突出するリング凸状に形成されている。取付部15dは、排気口15aの周囲に上記中空状部材11内に向かって突出するリング凸状に形成されている。
【0025】
封止メッシュ16は、第1メッシュ16aと第2メッシュ16bと第3メッシュ16cとを有し、それらの各々は試料ガス等の通過(浸透)が可能な各種メッシュ部材によって中空半球状に形成されている。第1メッシュ16aは、上記中空状部材11との間に所定の隙間Sを形成するように、上記中空状部材11よりも若干小さな中空半球状に形成されている。そして、上記中空状部材11の内面から突出する複数の凸部11bによって、隙間Sを形成するように位置付けられる。
【0026】
第2メッシュ16bは、第1メッシュ16aとの間に捕集剤12を収容することが可能なように、第1メッシュ16aよりも若干小さな中空半球状に形成されている。即ち、第1メッシュ16aと第2メッシュ16bは、封止ケース15の係止部15cと係止されて固定されると、第1メッシュ16aの内面と第2メッシュ16bの外面とによって捕集剤12を挟持する構成となっている。
【0027】
第3メッシュ16cは、第2メッシュ16bとの間に非吸着剤14を収容することが可能なように、第2メッシュ16bよりもかなり小さな中空半球状に形成されている。即ち、第3メッシュ16cは、封止ケース15の取付部15dに取り付けられると、第2メッシュ16bの内面と第3メッシュ16cの外面とによって非吸着剤14を挟持する構成となっている。
【0028】
このように構成した試料ガス捕集装置1は、以下のように組み立てられる。まず、中空状部材11内に第1メッシュ16aを配置し、そこに捕集剤12を配置して第2メッシュ16bで挟み込む。そして、非吸着剤14を充填した後に、第3メッシュ16cが取り付けられた封止ケース15を、中空状部材11の開口から近づけて嵌合して組み立てられる。
【0029】
このように組み立てられた試料ガス捕集装置1は、冷却加熱手段13によって上記中空状部材11内が冷却された状態で、導入口11aから試料ガスが導入されると、上記中空状部材11と第1メッシュ16aとの間の隙間Sを流れて捕集剤12にその試料ガスが捕集される。そして、捕集剤12は薄膜状に形成されていることから、半球状に形成された半球面の全てに均一に捕集される。
【0030】
捕集剤12による試料ガスの捕集(吸着)の終了に応じて、捕集剤12に吸着した試料ガスを気化温度以上に、冷却加熱手段13によって上記中空状部材11内が加熱されると、試料ガスの捕集剤12からの脱離が促される。そして、脱離した試料ガスは導入部11aから導入されたキャリアガスと共に、非吸着部14を通過して排気口15aから外部に送出される。
【0031】
本発明の試料ガス捕集装置1と従来の試料ガスの流れ方向に長い筒状の捕集管(図9参照)の各脱離特性の比較結果を図2に示す。なお、実験条件は、予め定められた冷却時間で冷却して試料ガスを捕集した後に、予め定められた加熱時間で加熱して試料ガスを脱離させ、それを各部材の下流側に設けられたガスセンサで濃度を測定することが条件となっている。
【0032】
図2(a)に示す本発明の脱離特性は、脱離時間が短い間に、高濃度の試料ガスが検出されたことを示している。これに対し、図2(b)に示す従来の脱離特性は、脱離時間が長い間に、低濃度の試料ガスを検出されたことを示している。このように本発明の構造とすることで、高濃度の試料ガスを短時間で送出できることが確認できた。
【0033】
以上説明した本発明の試料ガス捕集装置1によれば、中空状部材11の導入口11aから導入した試料ガスを均一に捕集し且つ該捕集した試料ガスを脱離してから排気口15aまでの距離が略均一となるように捕集剤12を形成して中空状部材11に収容するようにしたことから、導入した試料ガスを均一に捕集でき且つその脱離した試料ガスを一気に排気口15aから排出することができるため、高濃度の試料ガスを短時間で送出することができる。また、捕集剤12と排気口15aとの間には捕集剤12が存在しないため、脱離した試料ガスの再吸着を防止することができる。従って、本発明の試料ガス捕集装置1を用いることで、シャープで分解度の高いピークを得ることができる。
【0034】
また、捕集剤12を中空半球状に形成するようにしたことから、試料ガスと捕集剤12との接触面積をより広くすることができ、捕集剤12の全ての領域から排気口までの距離を等距離とすることができるため、濃縮率が向上でき且つ再吸着による濃縮率の低下を防止することができる。
【0035】
さらに、非吸着剤14を捕集剤12と排気口15aの間に介在するように中空状部材11に収容するようにしたことから、捕集剤12から脱離した試料ガスの再吸着を防止して一気に排気口15aから排出することができるため、高濃度の試料ガスをより一層短時間で送出することができる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、捕集剤12を半球状に形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、導入口11aから導入した試料ガスを均一に捕集し且つ該捕集した試料ガスを脱離してから排気口15aまでの距離が略均一となる形状であれば、例えば、試料ガスの流れ方向に対して捕集剤12の断面が略扇状、円弧状など中空箱状というように種々異なる実施形態とすることができる。
【0037】
また、上述した実施形態では、中空状部材11と捕集剤12とを同一の中空半球状に形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、中空状部材11の形状を捕集剤12の形状にあわせる必要はない。
【0038】
次に、上述した試料ガス捕集装置1を組み込んだガスクロマトグラフ装置3について、図3〜図7の図面を参照して説明する。
【0039】
図3〜図7において、ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)3は、上述した試料ガス捕集装置1と、活性炭フィルタ4と、分析手段5と、バッファ6と、ポンプ7と、を有し、それらを成分検出経路Rに順次組み込んでいる。
【0040】
成分検出経路Rは、試料ガス捕集装置1と活性炭フィルタ4とを接続する流路R1と、試料ガス捕集装置1と分析手段5とを接続する流路R2と、分析手段5とバッファ6とを接続する流路R3と、活性炭フィルタ4と分析手段5とを接続するバイパス経路R4と、を有している。
【0041】
活性炭フィルタ4は、大気口から大気を吸入して、フィルタ内の活性炭により大気に含まれる不純物を取り除いてキャリアガスを生成するものである。
【0042】
分析手段5は、図示しないが、カラムとガスセンサとを有している。カラムは、公知であるガスクロマトグラフの分離カラム等が用いられる。カラムは、ヒータによって加熱されることで、流路R2から導入された試料ガスをその種類(測定対象成分)により時間軸上(所定の測定期間)で分離して送出する。
【0043】
ガスセンサは、接触燃焼式ガスセンサ、吸着燃焼式ガスセンサ等が用いられ、例えば感応素子部と感応素子部の抵抗差に基づいて、ガス濃度を示すセンサ信号を図示しない制御部に出力する。
【0044】
前記制御部は、三方弁V1,V2、分析手段5、流動部7等に電気的に接続され、各々の制御を行う。前記制御部は、前記ガスセンサからのセンサ出力を所定のサンプリング間隔で取得し、それらのセンサ出力に基づいて試料ガスを前記カラムで分離した各分離ガスの濃度を算出することで、サンプルガスを分析する。
【0045】
バッファ6は、ポンプ7による流動の乱れを抑制し、流動量を一定に保つための既存のものであり、バッファ6を配設することで流動量が安定するため検出精度を高めることができる。また、ポンプ7の流動の乱れによる誤差が許容範囲内であれば、バッファ6を省略してもよい。そして、ポンプ7は、ポンプ吸入口7aから吸入したガスをポンプ排出口7bから排出して成分検出経路R内における試料ガス等を流動させるものである。
【0046】
三方弁V1は、流路R1に設けられている。そして、三方弁V1は、3つのポートa、b、cを備え、ポートaには活性炭フィルタ4、ポートbには吸排気口8、ポートcには試料ガス捕集装置1がそれぞれ接続されている。三方弁V1は、試料ガスの導入に応じて、試料ガス捕集装置1と吸排気口8とを接続し(b−c接続)、キャリアガスの導入に応じて、活性炭フィルタ4と試料ガス捕集装置1とを接続する(a−c接続)。
【0047】
三方弁V2は、流路R2に設けられている。三方弁V2は、試料ガス捕集装置1と分析手段5との間に位置するバイパス経路R4の端部に設けられている。また、3つのポートa、b、cを備え、ポートaには分析手段5側に位置する試料ガス捕集装置1の端部、ポートbにはバイパス経路R4、ポートcには分析手段5、がそれぞれ接続されている。三方弁V2は、キャリアガスを流動させる経路として、試料ガス捕集装置1またはバイパス経路R4のどちらか一方を選択して切り替えるものである。即ち、試料ガス捕集装置1と分析手段5(a−c接続)、または、バイパス経路R4と分析手段5(b−c接続)、を選択的に接続するものである。
【0048】
次に、ガスクロマトグラフ(GC)装置1の本発明に係る動作(作用)の一例を、図3〜図7の概略動作図及び図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0049】
ガスクロマトグラフ装置1は、電源投入により起動されると、三方弁V1,V2を共にポートa−c間に接続し、試料ガス捕集装置1の冷却加熱手段13を加熱状態とする。そして、ポンプ7の駆動によりキャリアガスの流動を開始する。これにより、キャリアガスが試料ガス捕集装置1および分析手段5のカラムを通過するように流動され、脱離された不純成分がキャリアガスによってGC装置1外に排出される(以上、図3参照、クリーニング1動作)。そして、不純成分の排出が完了したのち、ステップS120に進む。
【0050】
ステップS120において、試料ガス捕集装置1の冷却加熱手段13を冷却状態にする。そして、ステップS130において、三方弁V1をポートb−c間に接続し、三方弁V2をポートa−c間に接続し、所定の時間にわたるポンプ7の駆動により試料ガスを試料ガス捕集装置1内に流動させることで、試料ガス捕集装置1の捕集剤12に試料ガスを捕集(吸着)させる(以上、図4参照、サンプリング動作)。そして、試料ガスの捕集が完了したのち、ステップS140に進む。
【0051】
なお、捕集剤12による試料ガスの捕集量は、試料ガスの流速と期間により決定され、流動量が多いほど捕集量も多くなるため、所定の期間は捕集剤12の捕集量等に基づいて、捕集剤12が破化しないように設定される。
【0052】
ステップS140において、三方弁V2をポートb−c間に接続し、ポンプ7の駆動により分析手段5等をキャリアガスでパージすることで、不純成分がキャリアガスによってGC装置1外に排出される(以上、図5参照、クリーニング2動作)。そして、不純成分の排出が完了したのち、ステップS150に進む。
【0053】
ステップS150において、三方弁V1,V2を共にポートb−c間に接続し、試料ガス捕集装置1の冷却加熱手段13を加熱状態にすると共に、前記カラムを加熱状態とし、ポンプ7の駆動により成分検出経路Rにおいてキャリアガスを流動させる。(以上、図6参照、脱離1動作)。そして、脱離が完了したのち、ステップS160に進む。
【0054】
ステップS160において、試料ガス捕集装置1の冷却加熱手段13及び前記カラムの各状態を維持して、三方弁V1のポートを(b−c)間から(a−c)間に切り替えて接続し、三方弁V2を一時的にポート(a−c)間に接続し、試料ガス捕集装置1内の脱離ガスを分析手段5へ送出させる(打ち込み)。そして、三方弁V2をポート(b−c)間に接続し、分析手段5による分析が完了するまで、その状態を維持する。
【0055】
これにより、試料ガス捕集装置1内に脱離されて滞留している高濃度の試料ガスが、吸排気口8から吸入された大気によって分析手段5(即ち、カラム)に排出(導入)される。そして、高濃度の試料ガスが前記カラム内に導入されたのち、前記カラムを試料ガス成分分離に適した高温に加熱する。これにより、前記カラム内に導入された試料ガスに含まれる試料ガス成分が分離され、キャリアガスによって、それぞれの試料ガス成分が時間差をもって分析手段5のガスセンサに搬送されて、各成分の検出が行われる(以上、図7参照、脱離2及び分析動作)。そして、分析が終了すると、ステップS110に戻って、一連の処理を繰り返す。
【0056】
以上説明した本発明のガスクロマトグラフ装置3によれば、加熱脱離時における脱離ガス濃度の時間分布の短縮化した試料ガス捕集装置1を有していることから、試料ガス捕集装置1は分離分析手段5に短時間で試料ガスを送出することができ、分離分析手段5は急激な検出ピークを得ることができるため、ガスの成分を効率的に分析することができる。
【0057】
なお、上述したステップS160では、三方弁V1のポートを(a−c)間に接続することで、試料ガス捕集装置1と活性炭フィルタ4とを接続する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、三方弁V1のポートを(b−c)間に接続して試料ガス捕集装置1と吸排気口8と接続して、試料ガス捕集装置1内の脱離ガスを分析手段5へ送出させる実施形態とすることもできる。
【0058】
また、上述した各実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の試料ガス捕集装置の概略構成を示す断面模式図である。
【図2】本発明の試料ガス捕集装置と従来の捕集管の脱離特性を示すグラフであり、(a)が本発明の試料ガス捕集装置のもの、(b)が従来の捕集管のものをそれぞれ示している。
【図3】本発明のガスクロマトグラフ装置のクリーニング1に係る概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明のガスクロマトグラフ装置のサンプリングに係る概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明のガスクロマトグラフ装置のクリーニング2に係る概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明のガスクロマトグラフ装置の脱離1に係る概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明のガスクロマトグラフ装置の脱離2、分析に係る概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明のガスクロマトグラフ装置の処理概要の一例を示すフローチャートである。
【図9】従来のガスクロマトグラフ装置の構成図である。
【符号の説明】
【0060】
1 試料ガス捕集装置
3 ガスクロマトグラフ装置
11 中空状部材
11a 導入口
12 捕集剤
13 加熱手段(冷却加熱手段)
14 非吸着剤
15a 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスを導入する導入口と該導入した試料ガスを排気する排気口を有する中空状部材と、前記中空状部材に収容されて前記試料ガスを捕集する捕集剤と、前記中空状部材を加熱して前記捕集剤に捕集した試料ガスを脱離させる高温状態にする加熱手段と、を有し、前記中空状部材に導入した試料ガスを低温状態のときに前記捕集剤に捕集し且つ前記捕集剤に捕集した試料ガスを高温状態のときに脱離する試料ガス捕集装置において、
前記捕集剤が、前記導入口から導入した試料ガスを均一に捕集し且つ該捕集した試料ガスを脱離してから前記排気口までの距離が略均一となる形状に形成され、
前記中空状部材が、前記捕集剤を収容する形状に形成されていることを特徴とする試料ガス捕集装置。
【請求項2】
前記捕集剤が、中空半球状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の試料ガス捕集装置。
【請求項3】
前記捕集剤と前記排気口の間に介在するように前記中空状部材に収容され且つ前記捕集剤から脱離した試料ガスの再吸着を防止する非吸着剤を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の試料ガス捕集装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の試料ガス捕集装置と、前記試料ガス捕集装置で脱離した試料ガスの成分を分析する分析手段と、を有することを特徴とするガスクロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−236588(P2009−236588A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81074(P2008−81074)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】