説明

試薬庫、自動分析装置及び試薬庫の温度制御プログラム

【課題】自動分析装置の試薬庫内外に発生する結露を防止する手段を有する試薬庫を提供する。
【解決手段】試薬庫5Aの内部温度、外部温度をそれぞれ検出する本体内部温度検出部、本体外部温度検出部19を備え、それらの検出結果に基づき温度条件取得部20において結露を防止できる温度条件を取得し、当該取得結果に基づいて温度制御部21が温度変更部18を制御して試薬庫5A内の温度調整をすることで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動分析装置による被検試料の測定に用いる試薬を保管する試薬庫、自動分析装置及び試薬庫の温度制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、生化学検査や免疫血清検査等に用いられる装置である。
【0003】
自動分析装置を用いて分析を行う場合には、まず、生体から採取された血液等の被検試料と被検試料の検査項目に該当する試薬とを反応容器に分注する。そして、その混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、光学的に測定することにより、被検試料中の様々な成分の濃度や酵素活性を求めることができる。
【0004】
この測定に用いられる試薬は、その性質に合わせて所定の温度範囲内での保管(保冷)が必要である。このため、試薬は試薬ボトル等の試薬を保管するための容器に入れられた状態で保冷機能を有する試薬庫内に配置され、保冷された状態におかれる。
【0005】
試薬ボトルには試薬の種類や使用期限、ロット番号等を記録したバーコードラベル(試薬バーコード、試薬IDラベル)が貼られている。そして当該バーコードラベルは試薬庫外に設けられたバーコードリーダーによって読み取られる。
【0006】
また、試薬庫は試薬の入った試薬ボトルを所定の温度で保管するために外気とは断熱されていることが望ましい。従って、一般的には、試薬庫はバーコードラベルを読み取るための読み取り窓や、試薬を分注する際に分注アーム先端のプローブが挿入される試薬吸引口等の一部を除いて断熱材で覆われている構成となっている。
【0007】
ここで、試薬庫に設けられた透明な読み取り窓を通じてバーコードラベルを読み取る際に試薬庫内と試薬庫外の温度差が大きい状態を考える(例えば試薬庫内の温度が2℃に対して試薬庫外の温度が25℃)。
【0008】
この場合、断熱材で覆われていない読み取り窓部分には結露が生じてしまい、バーコードラベルの読み取りができなくなるという問題があった。
【0009】
そこで、結露を防止・除去する手段として(1)読み取り窓を厚くする、(2)結露を検知した場合に読み取り窓に熱を加える、或いは送風等することで結露を除去する(「特許文献1」参照)、ことが考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−211066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記手段を使用する場合には以下の問題点が生じる。
【0012】
すなわち、読み取り窓を厚くした場合、光学的な問題からバーコードの読み取りが困難となる。
【0013】
一方、特許文献1に記載の技術を用いることで結露を除去することは可能である。しかし特許文献1に記載の技術は結露したことを検知し、当該検知結果に基づいて結露除去を行うものであるため、結露を防止することはできない。また、一旦結露が生じてしまうとその除去には時間がかかることから、効率的な検査という観点では望ましいものではない。
【0014】
本発明は上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、読み取り窓等、試薬庫内外の結露を防止する手段を有する試薬庫、自動分析装置及び試薬庫の温度制御プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、この発明の試薬庫は、自動分析装置に用いられる試薬を収容する試薬容器を配置するための配置部と、前記配置部を収納する本体部と、前記本体部内の温度を変更する温度変更部と、前記本体部内の温度を検出する本体内部温度検出部と、前記本体部外の温度を検出する本体外部温度検出部と、前記本体内部温度検出部及び前記本体外部温度検出部それぞれの検出結果に基づいて前記温度変更部で変更する温度条件を取得する温度条件取得部と、前記温度変更部を制御して、前記本体部内の温度を前記温度条件に基づいて変更させる温度制御部と、を有することを特徴とする。
【0016】
また上記課題を解決するために、この発明の自動分析装置は、試薬を収容する試薬容器を配置するための配置部と、前記配置部を収納する本体部と、前記本体部内の温度を検出する本体内部温度検出部とを有する試薬庫と、前記本体部内の温度を変更する温度変更部と、前記本体部外の温度を検出する本体外部温度検出部と、前記本体内部温度検出部及び前記本体外部温度検出部それぞれの検出結果に基づいて前記温度変更部で変更する温度条件を取得する温度条件取得部と、前記温度変更部を制御して、前記本体部内の温度を前記温度条件に基づいて変更させる温度制御部と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、上記課題を解決するために、この発明の試薬庫温度制御プログラムは、自動分析装置に用いられる試薬を収容する試薬容器を配置するための配置部と、前記配置を収納する本体部と、前記本体部内の温度を検出する本体内部温度検出部と、を有する試薬庫と、前記本体部内の温度を変更する温度変更部と、前記本体部内の温度を検出する本体内部温度検出部と、前記本体部外の温度を検出する本体外部温度検出部と、を有する自動分析装置の試薬庫の温度制御を行うコンピュータに対して、前記温度変更部を制御して前記本体部内の温度を変更させるステップと、前記本体内部温度検出部を制御して前記本体部内の温度を検出させるステップと、前記本体外部温度検出部を制御して前記本体部外の温度を検出させるステップと、前記本体内部温度検出部及び前記本体外部温度検出部それぞれによる検出結果に基づいて、前記本体部内の温度条件を取得させるステップと、前記本体部内を前記温度条件に基づいて温度変更させるステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、試薬庫外の温度と試薬庫内の温度に基づいて、試薬庫内の温度条件(結露しないような試薬庫内温度条件)を変更することができるため、試薬の保管温度の範囲等を保ちつつ、試薬庫内外に生じる可能性のある結露を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】試薬庫を有する自動分析装置の構成を示す図である。
【図2】試薬庫の構成を示す図である。
【図3】図2のA部分の内部拡大図である。
【図4】実施の形態1の各構成の関連を示すブロック図である。
【図5】実施の形態1の試薬庫で行われる処理の概要を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態2の各構成の関連を示すブロック図である。
【図7】実施の形態2の試薬庫で行われる処理の概要を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態3の各構成の関連を示すブロック図である。
【図9】実施の形態3の試薬庫で行われる処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
[実施の形態1]
図1から図5は本発明の実施の形態1にかかるものである。
【0022】
図1は本発明にかかる試薬庫を含む自動分析装置の構成を示す図である。自動分析装置1は反応庫2を有している。反応庫2には複数の反応管3が配置される。各反応管3にはサンプル分注アーム4により検査対象となる血液等のサンプルが注入される。
【0023】
一方、反応庫2の近傍(外と内)には自動分析に用いられる試薬を保管する試薬庫5A、5Bが配置されている。そして、各試薬庫5A、5B内には試薬が収容される複数の試薬ボトル6(試薬容器)と、複数の試薬ボトル6を所定の位置に配置する試薬ラック7(配置部)が設けられている。
【0024】
試薬分注アーム8は当該試薬ボトル6から試薬を分注し、サンプルが入った反応管3に試薬を入れる。なお、本来、試薬庫5A、5Bの上部はカバー15で覆われている。そして、このカバー15には試薬分注アーム8が試薬を分注する部分にのみ開口部(試薬吸引口16)が設けられている(詳細は図2を参照)。
【0025】
サンプル及び試薬が注入された反応管3は撹拌手段9によって撹拌された後、測定部10において光学測定が行われる。その結果、各サンプルの検査値を得ることができる。
【0026】
ここで試薬ボトル6の側面には、当該試薬ボトル6に入っている試薬の名称や使用期限、ロット番号等を記録した記録部に該当するバーコード11が貼付されている。
【0027】
バーコード11は試薬庫5A、5Bの側面に設けられた透明な読み取り窓12を通して、試薬庫5A、5Bの外部に配置されたバーコードリーダー13によって読み取られる。バーコードリーダー13によって読み取られた情報は、図示しない自動分析装置の制御部等に転送され、分析結果の取得等に利用される。
【0028】
次に図2及び図3を用いて、本実施形態にかかる試薬庫5Aの構成の詳細について説明を行う。なお、反応庫2の内側に設けられた試薬庫5Bも試薬庫5Aと同様の構成を有している。
【0029】
試薬庫5Aは、本体部14、カバー15及び読み取り窓12を有する。本体部14はその内部に試薬ラック7に配置された複数の試薬ボトル6が収納される構成となっている。カバー15は本体部14の上面を覆い、試薬庫5Aを密閉された状態とする。読み取り窓12は本体部14の側面に配置され、バーコード11を読み取ることができるよう透明に形成されている。
【0030】
なお、試薬庫5Aには内部の温度を一定に保つため、読み取り窓12等の一部を除いて断熱材が設けられている。
【0031】
カバー15には、試薬分注アーム8によって試薬を分注するための試薬吸引口16が設けられている。この試薬吸引口16周辺にも結露が生じやすい。
【0032】
図3は図2のA部分の内部拡大図である。図3に示すように、試薬ボトル6が配置される本体部14の内部には、その内部温度を検出するための本体内部温度検出部17が設けられている。
【0033】
一方、本体部14の外部には、温度変更部18、本体外部温度検出部19、温度条件取得部20、温度制御部21が設けられている。温度変更部18は、本体部14の内部を所定の温度まで冷却・加熱をし、当該温度で保冷する機能を有している。本体外部温度検出部19は、本体部14の外部の温度を検出する機能を有している。温度条件取得部20は、本体内部温度検出部17と本体外部温度検出部19からの検出結果に基づいて試薬庫5A内の温度条件を取得する機能を有している。温度制御部21は、温度条件取得部20で取得された条件に基づいて温度変更部18の動作制御を行う機能を有している。
【0034】
ここで、図2における温度変更部18、本体外部温度検出部19、温度条件取得部20、温度制御部21の配置については一例であり特に制限はない。例えば温度変更部18は本体部14の内部に配置されていてもよい。
【0035】
但し、結露を防止するためには結露が特に生じて欲しくない部分近傍の本体内部の温度や本体外部の温度を測定することが望ましい(後の実施の形態で説明する湿度も同様)。
【0036】
従って、例えば図2、図3のように、読み取り窓12の近傍に本体内部温度検出部17や本体外部温度検出部19を配置し、それらの検出結果に基づいて試薬庫5A内部の温度制御を行うことで読み取り窓12の結露をより防止し易くなる。
【0037】
次に、図4のブロック図を用いて本実施の形態の温度制御に関する部分について説明を行う。
【0038】
本体内部温度検出部17及び本体外部温度検出部19は温度条件取得部20と電気的に接続されている。本体内部温度検出部17と本体外部温度検出部19は所定の時間ごとに(或いは連続で)試薬庫5A内外の温度をそれぞれ検出し、その情報を温度条件取得部20に送る。
【0039】
なお、所定時間ごとに温度検出を行う場合には本体内部温度検出部17と本体外部温度検出部19の温度検出タイミングを揃えることが望ましい。同じタイミングで本体内外の温度を比較することにより、結露を防止できる温度をより確実に決定することができるからである。
【0040】
温度条件取得部20は、本体内部温度検出部17と本体外部温度検出部19から送られてきた検出温度を元に試薬庫5A内部の温度として適切な温度条件を取得する。この取得には例えば予め規定したテーブル(後述する)を使用することが考えられる。なお、結露を防止するためには試薬庫内外の温度差が小さいほど良い。
【0041】
続いて、温度条件取得部20によって取得された結果は、温度条件取得部20と電気的に接続された温度制御部21に送られる。
【0042】
温度制御部21は温度変更部18と電気的に接続されている。温度制御部21は、試薬庫5A内が温度条件取得部20で取得した温度条件となるよう温度変更部18の動作制御を行う機能を有している。この動作制御に関しては例えばフィードフォワード・フィードバック制御を用いることができるが、この制御方法に限られるものではない。
【0043】
温度変更部18は温度制御部21からの制御に基づき、例えばペルチェ素子やコンプレッサーを用いた方式で試薬庫5A内を冷却或いは加熱し、所定の温度で保冷する動作を行う。すなわち本実施の形態における温度変更部18は一定の温度で保冷する機能と試薬庫内を冷却或いは加熱する機能の2つの機能を有している。
【0044】
試薬庫5A内を冷却、加熱する方法としては、ペルチェ素子を用いた場合には電流の流れる状態を制御することで冷却と加熱を切り換えることが可能である。試薬庫5A内の温度を上昇させたい場合には当該構成を用いることで迅速な温度制御が可能となる。
【0045】
なお、ペルチェ素子等加熱する手段を使用せずとも温度変更部18の冷却機能のオンオフ制御により試薬庫5A内部の温度を上昇させることも可能である。
【0046】
次に、図5を用いて本実施の形態の動作について説明を行う。
【0047】
本実施の形態の試薬庫5Aの動作については、まず本体内部温度検出部17が試薬庫5Aの内部温度を検出する段階と(S1)、本体外部温度検出部19が試薬庫5Aの外部温度を検出する段階を有する(S2)。なお、S1とS2は逆の順番で行われてもよいし、同時に行われてもよい。
【0048】
次に、S1とS2で検出された情報に基づき、温度条件取得部20が、例えば、予め作成された以下の表1にあるようなテーブルを用いて、読み取り窓12が結露しないような試薬庫5A内の温度条件を取得する(S3)。そして取得された条件は温度制御部21に送られる。
【0049】
【表1】

*本実施の形態で用いられる試薬の保管温度(試薬が劣化しない温度)を2℃〜10℃とする。
【0050】
なお、表1の条件については本実施の形態の温度制御部21による制御内容を理解し易くするために設定した条件であり例示的なものである。
【0051】
表1(1)の場合、試薬庫5A外と試薬庫5A内の温度差が大きいため、試薬庫5A内の温度を上げ、試薬庫5A外の温度に近づけることで結露を防止できる。従って、S3では試薬庫5A内の保冷温度として10℃という温度条件が取得され、その取得結果を温度制御部21に送る。
【0052】
10℃までしか上げないのは、試薬の保管温度の許容範囲に基づいている。従って、保管温度が15℃までの試薬であれば15℃まで試薬庫5A内の温度を上げることで、より確実に結露を防止することが可能となる。
【0053】
また表1(2)の場合、試薬庫5A内外の温度は結露を防止しつつ試薬の保冷にも適切な温度になっていると判断される。この場合、S3では今のままの試薬庫内部温度を保つべき(5℃という温度条件)との判断がなされ,その取得結果を温度制御部21に送る。
【0054】
更に表1(3)の場合、試薬庫5A内外の温度差が低いため結露は生じにくい条件となっている。しかし、試薬庫内温度が試薬の保管にとっては高すぎる温度(保管温度10℃に対して12℃)となっているため、S3においては内部温度を10℃まで下げるという条件を取得し、その取得結果を温度制御部21に送る。
【0055】
温度条件取得部20から温度条件を取得した後、試薬庫5A内が当該温度条件に基づいた温度になるよう制御を行うため、温度制御部21は、温度変更部18を駆動制御する。そして温度変更部18は当該制御に基づいて試薬庫5A内の温度変更を行う(S4)。
【0056】
例えば表1(1)の場合には試薬庫5A内の温度が10℃となるように温度変更部18による温度変更が行われる。具体的には温度変更部18の加熱機能を駆動させ、試薬庫5A内の温度を10℃まで上昇させる。そして試薬庫5A内の温度が10℃になると温度変更部18の保冷機能によってその状態が保持される。
【0057】
以上のS1からS4までの処理を行うことにより、本実施の形態においては試薬庫5A内外の温度に基づいて、読み取り窓12が結露しにくい試薬庫5A内の温度条件を取得し、当該条件に基づいた制御を行うことで試薬庫5A内の温度調整を行うことができる。
【0058】
その結果、読み取り窓12の結露を防止することができると共に、結露によってバーコードの読み取りができないという事態を回避できることから効率のよい検査が可能となる。
【0059】
[実施の形態2]
図6から図7は実施の形態2にかかるものである。なお、本実施の形態の構成は実施の形態1と共通する部分が多いため、主に異なる部分について記載する。
【0060】
一般に、読み取り窓12等に結露が生じる際には、試薬庫内外の温度差の他に試薬庫外の湿度も大きく影響する。
【0061】
そこで、本実施の形態は試薬庫外の状態を検出する手段として、実施の形態1における本体外部温度検出部19のほかに本体外部湿度検出部22を設けた構成となっている。
【0062】
本体外部湿度検出部22は試薬庫5Aの外部に配置される。本体外部湿度検出部22は試薬庫外の湿度を検出し、その検出結果を温度条件取得部20に送る機能を有している。
【0063】
本体部14に対する本体外部湿度検出部22の配置は、実施の形態1で述べたとおり、結露を防止したい部分近傍に設けることが望ましい。また湿度検出のタイミングとしては、本体内部温度検出部17や本体外部温度検出部19の検出タイミングと同期させることが望ましいが、その限りではない。
【0064】
次に図7を用いて本実施の形態の動作について説明を行う。
【0065】
実施の形態1同様、本体内部温度検出部17が試薬庫5Aの内部温度を検出する段階(S10)、本体外部温度検出部19が試薬庫5Aの外部温度を検出する段階(S11)を有する。
【0066】
更に本実施の形態では上記検出部の検出段階と合わせて、本体外部湿度検出部22が、試薬庫5Aの外部湿度を検出する段階が追加されている(S12)。なお、S10、S11、S12はどの順番で行われてもよいし、同時に行われてもよい。
【0067】
S10、S11及びS12で検出された情報に基づき、温度条件取得部20は、例えば以下の表2にあるようなテーブルを用いて、読み取り窓12が結露しないような試薬庫内温度条件を取得する(S13)。そして取得された条件は温度制御部21に送られる。
【0068】
【表2】

*本実施の形態で用いられる試薬の保管温度(試薬が劣化しない温度)を2℃〜10℃とする。
【0069】
なお、表2の条件については本実施の形態の温度制御部21による制御内容を理解し易くするために設定した条件であり例示的なものである。
【0070】
例えば表2の(2)と(3)の場合、試薬庫5A内外の温度は同じ条件であるが、(2)の場合の試薬庫5Aの外部湿度が10%であるのに対して、(3)の場合の試薬庫5Aの外部湿度は90%とかなり高くなっている。このような場合、同じ温度であっても湿度が高いほうがより結露し易い条件となるため、(2)の場合と比べ(3)の場合には試薬庫5A内の温度を試薬庫外の温度に近い温度とし、その温度差を少なくすることで結露を防止することができる。よって温度条件取得部20は各検出部の結果に基づいて適切な温度条件を取得し(S13)、その取得結果を温度制御部21に送る。その結果、温度制御部21では温度変更部18の駆動制御を行う(S14)。
【0071】
以上のS10からS14までの処理を行うことにより、本実施の形態においては試薬庫5A内の温度と試薬庫5A外の温度に加え、試薬庫5A外の湿度に基づいて読み取り窓12が結露しにくい内部温度の条件を取得し、当該条件に基づいた制御を行うことで試薬庫5A内部の温度調整を行うことができる。
【0072】
その結果、実施の形態1と比べ、より高い精度で結露の防止を行うことが可能となる。
【0073】
[実施の形態3]
図8から図9は実施の形態3にかかるものである。なお、本実施の形態の構成は実施の形態1と共通する部分が多いため、主に異なる部分について記載する。
【0074】
試薬は、その劣化を防止するため、保管温度(試薬によって異なる。例えば2℃から10℃)が決められている。従って、通常、温度変更部18及び温度制御部21は試薬庫内の温度を所定の範囲内に保つよう駆動する。
【0075】
一方、試薬の保管温度は目安であるため、短時間であれば保管温度を少し超えてもその性能が劣化することはない。
【0076】
ここで試薬庫外の温度は、通常、高くとも室温程度であるが、例えば何らかの理由により試薬庫外の温度が著しく高くなってしまった場合、試薬庫内の温度は2℃から10℃までの範囲でしか制御されていないことから、試薬庫内外の温度差が大きくなり、読み取り窓12等に結露が生じてしまう。
【0077】
試薬庫外の温度が高い場合、温度変更部18により試薬庫内の温度を試薬庫外の温度に近づけることで結露は防止できる。しかし、試薬をその保管温度を超える温度で長時間置くことは劣化を招くことになるため望ましくない。
【0078】
このため、本実施の形態では所定の時間(試薬の劣化を招かない程度の時間)だけ試薬の保管温度を超えるような試薬庫内の温度制御を行うことができる構成を設けている。なお、試薬の劣化を招かない時間は各試薬によって異なる。
【0079】
本実施の形態では図8に示すとおり、試薬の保管温度を超えるような温度条件が温度制御部21により温度変更部18に指示されたときからの経過時間を計測する時間計測部23と、時間計測部23によって計測された時間が所定以上を超えた場合に、温度制御部21での制御を解除する指示を行う指示部24を有する。これら時間計測部23と指示部24は他の構成と別で設けられてもよいし、例えば図2の温度条件取得部20と同じブロック内に配置されていてもよい。それ以外の構成については実施の形態1等と同じものである。
【0080】
次に図9を用いて本実施の形態の動作について説明を行う。
【0081】
実施の形態1同様、本体内部温度検出部17が試薬庫5Aの内部温度を検出する段階(S20)、本体外部温度検出部19が試薬庫5Aの外部温度を検出する段階(S21)を有する。なお、実施の形態2のように本体外部湿度検出部22により検出された外部湿度を用いることも可能である。
【0082】
S20、S21で検出された情報に基づき、温度条件取得部20は、例えば上記の表1にあるようなテーブルを用いて、読み取り窓12が結露しないような試薬庫5A内の温度条件を取得する(S22)。そして取得された条件は温度制御部21に送られる。
【0083】
そして、温度制御部21は取得された温度条件が試薬の保管温度範囲内にあるかどうかの判断を行う(S23)。試薬の保管温度については予め温度制御部21に記録しておくことで、様々な種類の試薬に対応することができる。なお、S23の段階を温度条件取得部20で行うことも可能である。
【0084】
当該取得された温度条件が試薬の保管温度範囲内にあると判断された場合(S23でYの場合)にはS27に進み、温度制御部21が温度変更部18を駆動させ、当該温度条件に基づいた温度制御を行う。
【0085】
当該取得された温度条件が試薬の保管温度範囲外にあると判断された場合(S23でNの場合)には、温度制御部21が温度変更部18を駆動させ、当該温度条件に試薬庫5A内を変更すると共に、時間計測部23により当該温度条件に変更されている時間を計測する(S24)。
【0086】
次に、時間計測部23で計測された時間が一定時間を超えた場合(S25でYの場合)、指示部24は、試薬庫5A内の温度を試薬保管温度の範囲内に戻すよう温度制御部21へ指示を行う(S26)。
【0087】
なお、S25で一定時間を超えていない場合(Nの場合)はS24に戻る。
【0088】
その後、温度制御部21は、試薬庫5A内の温度を試薬保管温度の範囲内に戻すよう温度変更部18を制御する(S27)。
【0089】
以上の通り、本実施の形態においては試薬庫5A内の温度を所定の時間だけ試薬の保管温度範囲外に設定することができる構成を有しているため、試薬庫5Aの外気温度が高くなった場合であっても結露を効果的に防止できると共に、内部温度上昇による試薬の劣化を防止することができる。
【0090】
なお、本実施の形態の説明においては時間計測部23が時間計測を開始するトリガーを温度制御部21の動作としているが、それに限られるものではない。
【0091】
例えば温度変更部18の動作をトリガーとすれば、実際に温度調整が行われる時点(温度変更部18が温度制御部21の制御を受けて動き出す時点)を計測開始時間とすることができることから、より正確な時間に基づいた温度制御が可能となる。
【0092】
或いは、本体内部温度検出部17での検出結果をトリガーとすることもできる。すなわち、本体内部温度検出部17が本体内部温度を測定し、その温度を温度条件取得部20で取得された条件と比較する。そして、本体内部温度検出部17での測定温度が当該条件に適合した時点で時間計測部23が計測を開始することも考えられる。この場合には更に正確な時間に基づいた温度制御が可能となる。
【0093】
(実施の形態1から3まで共通の事項)
実施の形態1から3の構成は結露の防止という観点で適宜組み合わせることが可能である。
【0094】
本体外部温度検出部19や本体外部湿度検出部22等、試薬庫外部に配置可能な構成については試薬庫5A、5Bに直接設ける必要はなく、例えば試薬庫5A、5Bが配置される自動分析装置側に設けることも可能である。
【0095】
試薬庫内部の湿度を検出する手段(本体内部湿度検出部)を設け、試薬庫内外の温度や試薬庫外の湿度と合わせて最適な温度条件を取得し、その条件に基づいて温度変更部18の制御を行うことも可能である。本体内部の湿度まで考慮することにより、高い精度で結露の防止を行うことができる。
【0096】
各実施の形態における「結露しないような試薬庫内条件」を正確に求める場合には、例えば温度、湿度と飽和水蒸気量の関係から求めることが可能である。この関係をテーブル化し、温度条件取得部20に適用することで、温度制御部21による精度の高い温度制御が可能となる。或いは実際に実験を行った結果に基づいてテーブルを作成することでもよい。
【0097】
実施の形態1から3までの制御に関しては、その内容をプログラム化しコンピュータに実行させることも可能である。
【符号の説明】
【0098】
5A、5B 試薬庫
11 バーコード
12 読み取り窓
14 本体部
17 本体内部温度検出部
18 温度変更部
19 本体外部温度検出部
20 温度条件取得部
21 温度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置に用いられる試薬を収容する試薬容器を配置するための配置部と、
前記配置部を収納する本体部と、
前記本体部内の温度を変更する温度変更部と、
前記本体部内の温度を検出する本体内部温度検出部と、
前記本体部外の温度を検出する本体外部温度検出部と、
前記本体内部温度検出部及び前記本体外部温度検出部それぞれの検出結果に基づいて前記温度変更部で変更する温度条件を取得する温度条件取得部と、
前記温度変更部を制御して、前記本体部内の温度を前記温度条件に基づいて変更させる温度制御部と、
を有することを特徴とする試薬庫。
【請求項2】
前記本体部外の湿度を検出する本体外部湿度検出部を更に有し、
前記温度条件取得部は前記本体内部温度検出部、前記本体外部温度検出部及び前記本体外部湿度検出部それぞれの検出結果に基づいて前記温度条件を取得することを特徴とする請求項1記載の試薬庫。
【請求項3】
前記温度制御部により温度変更されてからの経過時間を計測する時間計測部と、
前記時間計測部によって計測された経過時間が所定時間を超えた場合に、前記温度制御部の制御を変更する指示を行う指示部と、
を更に有することを特徴とする請求項1または2記載の試薬庫。
【請求項4】
試薬を収容する試薬容器を配置するための配置部と、前記配置部を収納する本体部と、前記本体部内の温度を検出する本体内部温度検出部とを有する試薬庫と、
前記本体部内の温度を変更する温度変更部と、
前記本体部外の温度を検出する本体外部温度検出部と、
前記本体内部温度検出部及び前記本体外部温度検出部それぞれの検出結果に基づいて前記温度変更部で変更する温度条件を取得する温度条件取得部と、
前記温度変更部を制御して、前記本体部内の温度を前記温度条件に基づいて変更させる温度制御部と、
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
前記本体部外の湿度を検出する本体外部湿度検出部を更に有し、
前記温度条件取得部は前記本体内部温度検出部、前記本体外部温度検出部及び前記本体外部湿度検出部それぞれの検出結果に基づいて前記温度変更部で変更する温度条件を取得することを特徴とする請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記温度制御部により温度変更されてからの経過時間を計測する時間計測部と、
前記時間計測部によって計測された経過時間が所定時間を超えた場合に、前記温度制御部の制御を変更する指示を行う指示部と、
を更に有することを特徴とする請求項4または5記載の自動分析装置。
【請求項7】
自動分析装置に用いられる試薬を収容する試薬容器を配置するための配置部と、前記配置を収納する本体部と、前記本体部内の温度を検出する本体内部温度検出部と、を有する試薬庫と、
前記本体部内の温度を変更する温度変更部と、
前記本体部内の温度を検出する本体内部温度検出部と、
前記本体部外の温度を検出する本体外部温度検出部と、
を有する自動分析装置の試薬庫の温度制御を行うコンピュータに対して、
前記温度変更部を制御して前記本体部内の温度を変更させるステップと、
前記本体内部温度検出部を制御して前記本体部内の温度を検出させるステップと、
前記本体外部温度検出部を制御して前記本体部外の温度を検出させるステップと、
前記本体内部温度検出部及び前記本体外部温度検出部それぞれによる検出結果に基づいて、前記本体部内の温度条件を取得させるステップと、
前記本体部内を前記温度条件に基づいて温度変更させるステップと、
を実行させることを特徴とする試薬庫温度制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−191207(P2011−191207A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58367(P2010−58367)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】