説明

試薬情報取得装置、試薬情報取得方法及び自動分析装置

【課題】試薬庫に収容された総ての試薬容器の情報の取得に要する時間を短縮することが可能な試薬情報取得装置、試薬情報取得方法及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】複数の試薬容器を着脱自在に収納する自動分析装置の試薬庫中央に設置され、複数の試薬容器を含む試薬庫内の画像を一括して撮像する全方位カメラ22と、全方位カメラが撮像した画像から試薬庫に収納された試薬容器の有無と、試薬容器がある場合に、試薬容器に貼付された情報記録媒体の画像を抽出する画像抽出部25と、画像抽出部が抽出した各情報記録媒体の画像をもとに各情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取るデコード部26と、デコード部が読み取った試薬情報データを試薬庫内の各収納位置における試薬容器の有無と共に記録部28に記録する記録制御部27とを備えた試薬情報取得装置20、試薬情報取得方法及び自動分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬情報取得装置、試薬情報取得方法及び自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、試薬情報を記録したバーコードラベル等の情報記録媒体を試薬容器に貼付した複数の試薬容器を試薬庫内に配置した試薬テーブルに収容し、前記試薬庫に設置したバーコードリーダ等の読取手段によって情報記録媒体を個々に読み取ることによって使用する複数の試薬を管理している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−326063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動分析装置は、試薬庫に収容された総ての試薬容器から試薬情報を取得する場合、試薬庫内の試薬テーブルを回転させ、読取手段によって複数の試薬容器のそれぞれに貼付した情報記録媒体を個々に読み取る必要がある。このため、自動分析装置は、試薬庫に収容された総ての試薬容器から試薬情報を取得するのに時間を要する。しかも、試薬容器の追加,交換或いは抜き取り等があった場合、収容位置や試薬情報を把握するには、分析作業を中断して再度試薬テーブルを回転させ、総ての試薬容器から情報を取得し直す必要があり、試薬庫に収容された総ての試薬容器の情報の取得に時間が掛かるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試薬庫に収容された総ての試薬容器の情報の取得に要する時間を短縮することが可能な試薬情報取得装置、試薬情報取得方法及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る試薬情報取得装置は、複数の試薬容器を着脱自在に収納する自動分析装置の試薬庫中央に設置され、前記複数の試薬容器を含む前記試薬庫内の画像を一括して撮像する全方位撮像手段と、前記全方位撮像装置が撮像した画像から前記試薬庫に収納された試薬容器の有無と、前記試薬容器がある場合に、前記試薬容器に貼付された情報記録媒体の画像を抽出する画像抽出手段と、前記画像抽出手段が抽出した前記情報記録媒体の画像をもとに前記情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取るデコード手段と、前記デコード手段が読み取った試薬情報データを前記試薬庫内の各収納位置における前記試薬容器の有無と共に記録部に記録する記録制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る試薬情報取得装置は、上記の発明において、前記全方位撮像手段は、単一の全方位カメラであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る試薬情報取得装置は、上記の発明において、前記全方位撮像手段は、複数の広角カメラであることを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項4に係る試薬情報取得方法は、自動分析装置の試薬庫に着脱自在に収納された複数の試薬容器を前記試薬庫内の画像を一括して撮像する撮像工程と、撮像した前記画像から前記試薬庫に収納された試薬容器の有無と、前記試薬容器がある場合に、前記試薬容器に貼付された情報記録媒体の画像を抽出する画像抽出工程と、前記画像抽出工程で抽出した前記情報記録媒体の画像をもとに前記情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取るデコード工程と、前記デコード工程で読み取った前記試薬情報を前記試薬庫内の各収納位置における前記試薬容器の有無と共に記録する記録制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項5に係る自動分析装置は、検体と試薬を反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置であって、前記試薬情報取得装置を用い、当該自動分析装置の試薬庫に収納された試薬容器の有無と試薬容器に貼付された情報記録媒体から当該試薬容器の試薬情報を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の試薬情報取得装置は、本発明の試薬情報取得方法に従って、全方位撮像手段が一括して撮像した複数の試薬容器を含む前記試薬庫内の画像から画像抽出手段が試薬容器の有無と、試薬容器に貼付された情報記録媒体の画像を抽出し、抽出した情報記録媒体の画像をもとにデコード手段が情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取り、記録手段が読み取った試薬情報データを記録制御手段が試薬庫内の各収納位置における試薬容器の有無と共に記録し、本発明の自動分析装置は、本発明の試薬情報取得装置を搭載しているので、試薬庫に収容された総ての試薬容器の情報の取得に要する時間を短縮することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の試薬情報取得装置、試薬情報取得方法及び自動分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1の試薬情報取得装置を搭載した本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、実施の形態1の自動分析装置の試薬保冷庫を示す斜視図である。図3は、図2に示す試薬保冷庫の断面図である。図4は、試薬情報取得装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2に検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、攪拌装置8、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注機構12及び試薬保冷庫13が設けられ、試薬情報取得装置20を備えている。
【0014】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段(ステッピングモータ)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0015】
検体分注機構5は、反応ホイール6に保持された複数の反応容器7に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器7に分注する。
【0016】
反応ホイール6は、検体テーブル3とは異なる駆動手段(ステッピングモータ)によって図1に矢印で示す方向に回転され、外周には複数の凹部6aが周方向に沿って設けられている。反応ホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に凹部6aの1個分回転する。
【0017】
反応容器7は、容量が数nL〜数十μLと微量なキュベットであり、図1に示すように、反応ホイール6の凹部6aに配置される。反応容器7は、測光装置10の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0018】
攪拌装置8は、図1に示すように、反応ホイール6の外周近傍に配置され、櫛歯状電極(IDT)を有する表面弾性波素子を駆動し、発生する音波によって反応容器7に保持された液体を非接触で攪拌する攪拌手段である。
【0019】
測光装置10は、図1に示すように、反応ホイール6の外周近傍に配置され、反応容器7に保持された液体を分析する分析光(340〜800nm)を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置10は、前記光源と受光器が反応ホイール6の凹部6aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0020】
洗浄装置11は、図1に示すように、反応ホイール6外周近傍の攪拌装置8と略対向する位置に配置され、反応容器7から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置11は、測光終了後の反応容器7から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置11は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器7の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0021】
試薬分注機構12は、反応ホイール6に保持された複数の反応容器7に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル14の所定の試薬容器15から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0022】
試薬保冷庫13は、図1〜図3に示すように、試薬テーブル14が回転自在に収容され、上部を覆う蓋13aを有している。試薬テーブル14は、検体テーブル3及び反応ホイール6とは異なる駆動手段(ステッピングモータ)によって図1に矢印で示す方向に回転され、内筒14aと筒状の外壁14bとの間に扇形の収納部14cが周方向に沿って複数設けられている。内筒14aの中央には、試薬情報取得装置20の全方位カメラ22が配置されている。各収納部14cには、試薬容器15が着脱自在に収納される。
【0023】
複数の試薬容器15は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、試薬テーブル14中心側の側面には収容した試薬に関する情報を記録する情報記録媒体として二次元バーコードラベル15a(図2,図3参照)が貼付されている。二次元バーコードラベル15aは、試薬の種類,ロット及び有効期限等の試薬情報が記録され、同じサイズのものを試薬情報取得装置20から見て同じ位置に貼付する。ここで、情報記録媒体としては、試薬情報取得装置20による情報の取得ができれば、二次元バーコードラベル15aに代えて、一次元バーコードラベルやドットコードラベルを使用することも可能である。
【0024】
制御部16は、検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、攪拌装置8、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル14、分析部17、入力部18、表示部19及び試薬情報取得装置20等と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、二次元バーコードラベル15aから読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。
【0025】
分析部17は、制御部16を介して測光装置10に接続され、受光器が受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目等の入力や試薬情報取得装置20による試薬保冷庫13内の試薬情報取得の命令を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0026】
試薬情報取得装置20は、制御部16による制御の下に作動し、試薬保冷庫13内を一括して撮像して得た複数の試薬容器15を含む試薬保冷庫13内全体の環状画像から各試薬容器15に貼付した二次元バーコードラベル15aに記録された試薬情報並びに各収納部14cにおける試薬容器15の有無に係る情報を取得する。試薬情報取得装置20は、図4に示すように、全方位カメラ22、画像処理部24、デコード部26及び記録制御部27を有しており、例えば、マイクロコンピュータシステムが使用される。
【0027】
全方位カメラ22は、360°の視野角を有する魚眼カメラであり、制御部16からの制御信号の下に作動するカメラ制御部21に制御されて試薬保冷庫13内を一括して撮影し、撮影した環状画像からなる画像データを画像メモリ23に出力する。画像メモリ23は、全方位カメラ22から入力された画像データを記録する。
【0028】
画像処理部24は、画像抽出部25と一体となって全方位カメラ22が撮像した画像から試薬テーブル14における試薬容器15の有無と、試薬容器15に貼付された二次元バーコードラベル15aの画像を抽出する。画像処理部24は、画像メモリ23に記録された環状画像を基準位置から周方向に沿って展開し、パノラマ画像に変換する画像処理を施した後、パノラマ画像の画像データを画像抽出部25へ出力する。画像抽出部25は、画像処理部24から入力されるパノラマ画像の画像データをもとに各試薬容器15に貼付した二次元バーコードラベル15aの画像を抽出し、抽出した個々の画像データをデコード部26へ出力する。このとき、各試薬容器15は、二次元バーコードラベル15aが総て同じ位置に貼付されている。このため、画像抽出部25は、位置を特定して二次元バーコードラベル15aの画像を抽出することが可能となる。
【0029】
デコード部26は、画像抽出部25から入力される各二次元バーコードラベル15aの画像データをデコードし、各二次元バーコードラベル15aに記録された試薬情報を読み取る。このとき、画像抽出部25は、試薬容器15が収容されていない部分からは二次元バーコードラベル15aの画像を抽出することができない。このため、試薬容器15が収容されていない部分は画像データがないので、デコード部26は、デコードができず、この位置を試薬容器15未収容とし、読み取った各二次元バーコードラベル15aの試薬情報のデータと共に記録制御部27へ出力する。
【0030】
記録制御部27は、デコード部26が読み取った各二次元バーコードラベル15aの試薬情報のデータを試薬テーブル14の収納部14cの位置に対応させて試薬容器15の有無データと共に記録部28に記録する。記録部28に記録されたこれらのデータは、自動分析装置1の制御部16を介した入力部18からの指示により表示部19へ表示すること等によって試薬管理や試薬容器15の有無の確認等に利用される。
【0031】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応ホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器7に試薬分注機構12が試薬容器15から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、反応ホイール6によって周方向に沿って搬送され、検体分注機構5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。そして、検体が分注された反応容器7は、反応ホイール6によって攪拌装置8へ搬送され、分注された試薬と検体が順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液は、反応ホイール6が再び回転したときに測光装置10を通過し、光源から出射された分析光が透過する。これにより、反応容器7内の試薬と検体の反応液を透過した分析光が受光部で側光され、制御部16によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置11によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0032】
このとき、例えば、試薬容器15の追加や変更等によって試薬保冷庫13内に収容された試薬容器15の収容位置や試薬情報を取得する必要が生じた場合、オペレータが入力部18を操作して情報取得の命令を制御部16に入力する。すると、制御部16による制御の下に、試薬情報取得装置20が作動を開始し、図5のフローチャートに示す試薬情報取得方法により、先ず、全方位カメラ22がカメラ制御部21に制御されて試薬保冷庫13内を複数の試薬容器15と共に一括して撮影する(撮像工程,ステップS100)。これにより、試薬情報取得装置20は、試薬保冷庫13内の環状画像を取得する。
【0033】
次に、試薬情報取得装置20は、撮影によって得た試薬保冷庫13内の環状画像を画像処理部24に処理させてパノラマ画像に変換する(画像処理工程、ステップS102)。次いで、試薬情報取得装置20は、画像抽出部25によってパノラマ画像から試薬容器15に貼付された二次元バーコードラベル15aの画像を抽出する(画像抽出工程,ステップS104)。
【0034】
その後、試薬情報取得装置20は、抽出した二次元バーコードラベル15aの画像をもとにデコード部26によって二次元バーコードラベル15aに記録された試薬情報を読み取る(デコード工程,ステップS106)。次に、試薬情報取得装置20は、読み取った試薬情報を試薬保冷庫13内の試薬テーブル14の各収納部14cにおける試薬容器15の有無と共に記録制御部27によって記録部28に記録する(記録工程,ステップS108)。これにより、試薬情報取得装置20は、試薬情報取得方法に関する一連の動作が終了する。
【0035】
このとき、全方位カメラ22は、試薬テーブル14中央の上方に視野の中心が位置するように配置され、且つ、円周方向について360°の視野角を有する魚眼カメラを使用している。このため、全方位カメラ22は、試薬保冷庫13内を撮影した、例えば、図6に示す環状画像ILの画像データを画像メモリ23に出力する。図6において、中央が試薬保冷庫13における蓋13a下面の中央であり、その周囲に二次元バーコードラベル15aを貼付した複数の試薬容器15の端面が周方向に沿って撮像されている。ここで、この実施の形態では全方位カメラ22を上方に向けて配置しているので、得られた環状画像は、図6に示すように、試薬テーブル14を上方から見下ろした場合とは逆方向に複数の試薬容器15が並んだものとなる。
【0036】
画像メモリ23は、全方位カメラ22から入力された図6に示す環状画像ILを、展開開始位置Psから各収納部14cに対応する中心角の間隔で図中に矢印で示す半時計方向へ展開する。これにより、画像メモリ23は、試薬保冷庫13内の環状画像ILの画像データを図7に示すパノラマ画像IPに変換する。
【0037】
ここで、展開開始位置Psは、自動分析装置1の電源投入時等の初期化時に制御部16が試薬テーブル14の位置決めを行って決定する。そして、制御部16は、展開開始位置Psを基準として試薬容器15を収納する収納部14cの位置P1,………,P5,………,P14,………,Pn(図ではn=32)を位置決めする。分析開始後、制御部16は、駆動手段(ステッピングモータ)の回転ステップ数から試薬テーブル14の回転位置を把握することによって、各収納部14cの位置P1,………,P5,………,P14,………,Pnを把握する。画像メモリ23は、制御部16から入力される情報から各収納部14cの位置P1,………,P5,………,P14,………,Pnを把握する。
【0038】
また、環状画像をパノラマ画像に変換する際、画像メモリ23は、図8に示すように、環状画像ILの中心Cから外周FOに向かう半径分の画素をパノラマ画像IPの縦方向の画素に展開する。ここで、パノラマ画像IPは、上が環状画像ILの中心Cに対応し、下が環状画像ILの外周FOに対応している。
【0039】
このようにして画像メモリ23が変換したパノラマ画像IPは、収納部14cの数(=n)をもとに、画像抽出部25が、図9に示すように、各収納部14cに対応するように横方向に等分割し、分割画像IS毎に試薬容器15に貼付した二次元バーコードラベル15aの画像IBを抽出する。画像抽出部25は、抽出した二次元バーコードラベル15aの画像IBのデータをデコード部26へ出力する。
【0040】
デコード部26は、画像抽出部25から入力された二次元バーコードラベル15aの画像データから二次元バーコードラベル15aに記録された試薬情報を読み取り、記録部28へ出力する。記録部28は、デコード部26から入力された各二次元バーコードラベル15aの試薬情報を試薬テーブル14の収納部14cの位置に対応させて試薬容器15の有無と共に記録する。試薬情報取得装置20は、このようにして試薬情報及び試薬容器15の有無を記録制御部27によって記録部28へ記録し、試薬情報取得方法に関する一連の動作を終了する。
【0041】
ここで、試薬情報取得装置20による上述した一連の試薬情報取得動作は、全方位カメラ22が試薬保冷庫13内を一括して撮影することによって実行され、従来の自動分析装置のように読取手段によって複数の試薬容器15のそれぞれに貼付した情報記録媒体を個々に読み取る必要はない。このため、試薬情報取得装置20は、試薬容器の追加,交換或いは抜き取りがあった場合等を含め、総ての試薬容器15の情報取得に要する時間を従来に比べて大幅に短縮することができる。従って、自動分析装置1は、試薬情報取得装置20を使用することによって分析に要する時間を増すことができ、単位時間当たりの分析処理検体数を増加させることができる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、本発明の試薬情報取得装置、試薬情報取得方法及び自動分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1の試薬情報取得装置は、撮像手段として全方位カメラを使用したのに対し、実施の形態2の試薬情報取得装置は、撮像手段として複数の広角カメラを使用し、他の構成は実施の形態1の試薬情報取得装置と同じである。図10は、実施の形態2の試薬情報取得装置を搭載した自動分析装置の試薬保冷庫の平面図である。図11は、図10に示す試薬保冷庫の断面図である。ここで、実施の形態2の自動分析装置は、試薬情報取得装置の全方位撮像装置が実施の形態1の全方位撮像装置と異なるだけで、実施の形態1と自動分析装置と構成が同じである。従って、自動分析装置の説明は省略し、実施の形態1の自動分析装置と同一構成要素には同じ符号を使用して説明する。
【0043】
実施の形態2の試薬情報取得装置は、図10及び図11に示すように、試薬保冷庫13の試薬テーブル14中央上部に配置され、カメラ制御部21に制御される4台の広角カメラC1〜C4を有している。広角カメラC1〜C4は、視野角θ=120°となる対物レンズを有するカメラであり、試薬テーブル14の中央上部に隣接するカメラの光軸がなす中心角が等しくなるように(=90°)設置されている。
【0044】
従って、実施の形態2の試薬情報取得装置は、4台の広角カメラC1〜C4がカメラ制御部21に制御されて試薬保冷庫13内を複数の試薬容器15と共に一括して撮像することにより、全方位カメラとして機能する。このとき、広角カメラC1〜C4は、視野角θ=120°となる対物レンズを使用している。このため、実施の形態2の試薬情報取得装置は、実施の形態1の試薬情報取得装置20の全方位カメラ22に比べ、撮像した画像の歪が顕著に低減されると共に、広角カメラC1〜C4が撮像した複数の試薬容器15の画像が横一列に配列される(図12参照)。このため、広角カメラC1〜C4が撮像した画像は、環状画像からパノラマ画像にする際に画像の向きを変換した実施の形態1と異なり、画像の向きを変換する必要がないという利点を有している。なお、広角カメラは、隣接するカメラの光軸がなす中心角が等しくなるように配置すれば、カメラの設置数は4つでなくともよく、また視野角θも120°に限定されるものではない。
【0045】
ここで、図12は、広角カメラC1〜C4のそれぞれが撮像した図11に示す複数の試薬容器15の楕円状画像IC1〜IC4を示している。実施の形態2の試薬情報取得装置は、広角カメラC1〜C4のそれぞれが試薬テーブル14の円周方向に120°の視野角を有し、試薬容器15との距離により試薬テーブル14に収容可能な最大個数の4分割に相当する数(図12の各楕円状画像では8個)の試薬容器15が収まる画像領域となるように設定されており、広角カメラC1〜C4が等しい中心角で設置されている。このため、図12に示す楕円状画像IC1〜IC4は、画像条件が同じであり、同一の画像補正を施すことにより、各試薬容器15の試薬テーブル14上の収納位置及び試薬容器15に貼付した二次元バーコードラベル15aを認識することができる。
【0046】
従って、実施の形態2の試薬情報取得装置は、実施の形態において説明した試薬情報取得方法により、広角カメラC1〜C4が一括して取得した試薬保冷庫13内の画像情報を、画像メモリ23を介して画像処理部24へ入力し、画像抽出部25,デコード部26から記録制御部27によって記録部28に記録することにより、実施の形態1の試薬情報取得装置20と同様にして試薬情報及び試薬テーブル14の各収納部14cの位置における試薬容器15の有無に関する情報を取得することができる。
【0047】
このとき、画像処理部24は、実施の形態1においては、環状画像をパノラマ画像に変換したが、実施の形態2においては、楕円状画像IC1〜IC4の縦方向と横方向の歪を補正して図13に示す補正画像CCR1〜CCR4とする。
【0048】
以上のように、実施の形態2の試薬情報取得装置は、広角カメラC1〜C4によって試薬保冷庫13内を一括して撮影して得られる楕円状画像IC1〜IC4を画像処理する。このため、実施の形態2の試薬情報取得装置は、従来の自動分析装置のように読取手段によって複数の試薬容器15のそれぞれに貼付した情報記録媒体を個々に読み取る必要はない。従って、実施の形態2の試薬情報取得装置は、試薬容器の追加,交換或いは抜き取りがあった場合等を含め、総ての試薬容器15の情報取得に要する時間を従来に比べて大幅に短縮することができる。これにより、実施の形態2の試薬情報取得装置を搭載した自動分析装置1は、実施の形態2の試薬情報取得装置を使用することで分析に要する時間を増すことができ、単位時間当たりの分析処理検体数を増加させることができる。
【0049】
なお、実施の形態1,2の自動分析装置は、試薬保冷庫13が一つの場合について説明したが、試薬保冷庫13は複数であってもよく、さらに実施の形態1の自動分析装置1を1ユニットとして複数ユニット組み合わされた自動分析装置であってもよい。
【0050】
また、実施の形態1,2の自動分析装置は、表示部19に上述した各試薬情報取得装置によって得られた試薬情報のデータを表示するようにしてもよい。特に、表示の仕方として、試薬保冷庫13の蓋13aを開いた状態における試薬テーブル14の平面図の画像としたグラフィックな表示とすることにより、オペレータによる試薬容器15の交換作業や分注状態のモニタリングを行い易くすることもできる。この場合、実施の形態1,2の自動分析装置は、必要に応じて、全方位カメラ22や広角カメラC1〜C4から得た画像を前記試薬テーブル14の平面図の画像と同じ配列となるように修正するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態1の試薬情報取得装置を搭載した本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1の自動分析装置の試薬保冷庫を示す斜視図である。
【図3】図2に示す試薬保冷庫の断面図である。
【図4】試薬情報取得装置の構成を示すブロック図である。
【図5】試薬情報取得方法を説明するフローチャートである。
【図6】実施の形態1の自動分析装置に搭載した本発明の試薬情報取得装置によって実行される試薬情報取得方法の撮像工程で得られる環状画像を示す図である。
【図7】本発明の試薬情報取得装置によって実行される試薬情報取得方法の画像処理工程で得られるパノラマ画像を示す図である。
【図8】環状画像からパノラマ画像への変換を説明する図である。
【図9】本発明の試薬情報取得装置によって実行される画像抽出工程における情報記録媒体の画像の抽出を説明する図である。
【図10】実施の形態2の試薬情報取得装置を搭載した自動分析装置の試薬保冷庫の平面図である。
【図11】図10に示す試薬保冷庫の断面図である。
【図12】試薬情報取得装置のそれぞれの広角カメラが撮像した楕円状画像を示す図である。
【図13】図12に示すそれぞれの楕円状画像の歪を補正した補正画像を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 反応ホイール
7 反応容器
8 攪拌装置
10 測光装置
11 洗浄装置
12 試薬分注機構
13 試薬保冷庫
14 試薬テーブル
15 試薬容器
15a 二次元バーコードラベル
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 試薬情報取得装置
21 カメラ制御部
22 全方位カメラ
23 画像メモリ
24 画像処理部
25 画像抽出部
26 デコード部
27 記録制御部
28 記録部
C1〜C4 広角カメラ
CCR1〜CCR4 補正画像
IB 二次元バーコードラベルの画像
IC1〜IC4 楕円状画像
IL 環状画像
IP パノラマ画像
IS 分割画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬容器を着脱自在に収納する自動分析装置の試薬庫中央に設置され、前記複数の試薬容器を含む前記試薬庫内の画像を一括して撮像する全方位撮像手段と、
前記全方位撮像装置が撮像した画像から前記試薬庫に収納された試薬容器の有無と、前記試薬容器がある場合に、前記試薬容器に貼付された情報記録媒体の画像を抽出する画像抽出手段と、
前記画像抽出手段が抽出した前記情報記録媒体の画像をもとに前記情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取るデコード手段と、
前記デコード手段が読み取った試薬情報データを前記試薬庫内の各収納位置における前記試薬容器の有無と共に記録部に記録する記録制御手段と、
を備えたことを特徴とする試薬情報取得装置。
【請求項2】
前記全方位撮像手段は、単一の全方位カメラであることを特徴とする請求項1に記載の試薬情報取得装置。
【請求項3】
前記全方位撮像手段は、複数の広角カメラであることを特徴とする請求項1に記載の試薬情報取得装置。
【請求項4】
自動分析装置の試薬庫に着脱自在に収納された複数の試薬容器を前記試薬庫内の画像を一括して撮像する撮像工程と、
撮像した前記画像から前記試薬庫に収納された試薬容器の有無と、前記試薬容器がある場合に、前記試薬容器に貼付された情報記録媒体の画像を抽出する画像抽出工程と、
前記画像抽出工程で抽出した前記情報記録媒体の画像をもとに前記情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取るデコード工程と、
前記デコード工程で読み取った前記試薬情報を前記試薬庫内の各収納位置における前記試薬容器の有無と共に記録する記録制御工程と、
を含むことを特徴とする試薬情報取得方法。
【請求項5】
検体と試薬を反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置であって、請求項1〜3いずれか一つに記載の試薬情報取得装置を用い、当該自動分析装置の試薬庫に収納された試薬容器の有無と試薬容器に貼付された情報記録媒体から当該試薬容器の試薬情報を取得することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−196973(P2008−196973A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32447(P2007−32447)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】