説明

詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法

【課題】表皮材とワディング材の2層構造を採り、そのワディング材のその表皮材のない表面に均一な低通気層を成形できて詰め物を一体発泡する際、そのワディング材にウレタン発泡原液の浸透を防いで部分的硬さのむらの発生を防止でき、触感を保ち、そして、成形品の表面に柔かい触感を確保でき、さらに、別工程で手間をかける必要もなく積層工程で同時に行なえ、バリア層に使う樹脂フィルムを省けて材料費も削減でき、そして、低コスト化を可能にする。
【解決手段】帯状ワディング材12を一方向に連続的に移動させながらその帯状ワディング材12の片面13を加熱して溶融させ、それに同時的に帯状表皮材15を一方向に連続的に移動させながらその帯状ワディング材12のその溶融片面13に連続的に重ね合わせ、接着させて積層し、次に、その帯状ワディング材12の他面14を加熱して溶融させ、溶融中にワディングのセル膜を潰しながら伸ばして均一な低通気層37を成形する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法に関し、詳細には、表皮材とワディング材の2層構造の低通気シート・トリム・カバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車シートでは、詰め物を一体発泡させるトリム・カバーの多くは、表皮材とワディング材が用いられ、そして、そのワディング材には、連続気泡軟質ポリウレタン・フォームが使用されるので、その詰め物を一体発泡する際、ウレタン発泡原液がそのワディング材に透過するのを防ぐためにバリア層として配置される非通気性の樹脂フォルムの3層構造が採られる。それの2層目のワディング材は一体発泡により得られる成形品の表面に柔らかい感触を与えるために必要であり、その3層目の樹脂フィルムはその2層目のワディング材に通気性が高く、セル膜に大きな穴が開いているためにその3層目のバリア層として樹脂フィルムが無いとウレタン発泡原液がそのワディング材の内部や表皮表面にまで浸透して硬化するので、部分的硬さのむらができて触感が悪くなってしまう。
【0003】
また、表皮材に積層されたワディング材の他面を火炎または加熱処理して表面を溶融させて低通気にする方法もあるが、この方法では、そのワディング材の溶融面が玉状の塊になるだけで局部的低通気部分(塊)はできるが、ウレタン発泡原液の浸透を防ぐ均一な層ができずその塊のない通気のある箇所へそのウレタン発泡原液が逃げ道として集中し、部分的硬さのむらが顕著に発生されて触感が悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開昭60−36085公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、表皮材とワディング材の2層構造を採り、そのワディング材のその表皮材のない表面に均一な低通気層を成形できて詰め物を一体発泡する際、そのワディング材にウレタン発泡原液の浸透を防いで部分的硬さのむらの発生を防止でき、触感を保ち、そして、成形品の表面に柔かい触感を確保でき、さらに、別工程で手間をかける必要もなく積層工程で同時に行なえ、バリア層に使う樹脂フィルムを省けて材料費も削減でき、そして、低コスト化を可能にするところの詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法は、帯状ワディング材を一方向に連続的に移動させながらその帯状ワディング材の片面を加熱して溶融させ、それに同時的に帯状表皮材を一方向に連続的に移動させながらその帯状ワディング材のその溶融片面に連続的に重ね合わせ、接着させて積層し、次に、その帯状ワディング材の他面を加熱して溶融させ、溶融中にワディングのセル膜を潰しながら伸ばして均一な低通気層を成形する。
【発明の効果】
【0007】
この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法では、表皮材とワディング材の2層構造が採られ、積層工程でその表皮材を接着させないそのワ
ディング材の表面、すなわち、他面に加熱処理後に溶融面を瞬時にプレスして溶融中にワディングのセル膜を潰しながら伸ばして均一な低通気層が成形できて詰め物を一体発泡する際、そのワディング材にウレタン発泡原液の浸透が防がれて部分的硬さのむらの発生が防止され、触感が保たれ、そして、成形品の表面に柔かい触感が確保され、さらに、別工積で手間をかける必要もなく積層工程で同時に行なえ、バリア層に使う樹脂フィルムが省かれて材料費が削減され、そして、低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法の具体例で製造された低通気シート・トリム・カバーを用いて一体発泡された軽自動車のフロント・シートのヘッドレストを示した縦断面図である。
【図2】そのヘッドレストを部分的に拡大して示した拡大断面図である。
【図3】この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法の具体例を示した概説図である。
【図4】この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法の別の具体例を示した概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法は、帯状ワディング材を一方向に連続的に移動させながらその帯状ワディング材の片面を加熱して溶融させ、それに同時的に帯状表皮材を一方向に連続的に移動させながらその帯状ワディング材のその溶融片面に連続的に重ね合わせ、接着させて積層し、次に、その帯状ワディング材の他面を加熱して溶融させ、溶融中にワディングのセル膜を潰しながら伸ばして均一な低通気層を成形する。
【0010】
また、この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法は、ワディング材送出し機、表皮材送出し機、離型紙送出し機、完成品捲取り機、一対のラミネート・ローラー、プレス・ローラー、複数のワディング・ガイド・ローラー、複数の離型紙ガイド・ローラー、接着用バーナー、および、溶かし用バーナーなどを含んで構成されるところの詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造装置を用いて行なわれる。
【0011】
さらに、この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法は、ワディング材送出し機、表皮材送出し機、完成品捲取り機、一対のラミネート・ローラー、ローラー表面に離型紙を巻き付けたプレス・ローラー、複数のワディング・ガイド・ローラー、接着用バーナー、および溶かし用バーナーなどを含んで構成されるところの詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造装置を用いて行なわれる。そのプレス・ローラーは、火炎処理後のその帯状ワディング材の溶融他面がローラー表面に溶着してしまうので、そのようにそのローラー表面に離型紙を巻き付けられるが、剥離効果のあるものをそのローラー表面に取り付ければよい。また、そのようにその帯状ワディング材の火炎処理に用いられるその接着用バーナーおよび溶かし用バーナーは、適宜の加熱処理、例えば、熱板に置き換えてかまわない。
【実施例1】
【0012】
以下、特定されて図示された具体例に基づいて、この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法を説明するに、図1ないし図3は、軽自動車の
フロント・シートのヘッドレスト40の一体発泡に用いられた低通気シート・トリム・カバーの製造に活用されたところのこの発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法の具体例10を示し、そして、この詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法10は、ワディング材送出し機21、表皮材送出
し機22、離型紙送出し機23、完成品捲取り機(図示せず)、一対のラミネート・ローラー25、26、プレス・ローラー27、複数のワディング・ガイド・ローラー28、29、30、31、複数の離型紙ガイド・ローラー32、33、34、接着用バーナー35、および、溶かし用バーナー36などを含んで構成されるところの詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造装置20を用いて行なわれる。そのヘッドレスト40は、また、型において低通気シート・トリム・カバー44に一対のスティ42、42付きフレーム41をセットしてパッド43を一体発泡させてたものである。
【0013】
そのワディング材送出し機21から帯状ワディング材12を連続的に引き出し、その引き出された帯状ワディング材12をその複数のワディング・ガイド・ローラー28、29、30、31に案内させてその一対のラミネート・ローラー25、26のワディング側のそのラミネート・ローラー25に沿わせながらその一対のラミネート・ローラー25、26間に連続的に移動させ、その一対のラミネート・ローラー25、26間に移動される直前のそのラミネート・ローラー25に巻き付くところにおいてその接着用バーナー35でそのワディング材12の片面13を溶融させ、それに同時的にその表皮材送出し機22から帯状表皮材15を連続的に引き出し、その引出された帯状表皮材15をその一対のラミネート・ローラー25、26の表皮側のそのラミネート26に沿わせながらその一対のラミネート・ローラー25、26間に連続的に移動させ、その一対のラミネート・ローラー25、26でその帯状ワディング材12のその溶融片面13に連続的に重ね合わせながら接着させて積層する。その帯状ワディング材12は、連続気泡軟質ポリウレタン・フォームである。
【0014】
次に、その積層された帯状ワディング材12および帯状表皮材15をその一対のラミネート・ローラー25、26の表皮側のそのラミネート・ローラー26に沿わせながらその一対のラミネート・ローラー25、26からのそのラミネート・ローラー26とそのプレス・ローラー27との間に連続的に移動させ、そのラミネート・ローラー26とそのプレス・ローラー27との間に移動される直前のそのラミネート・ローラー26に巻き付けられているところにおいてその溶かし用バーナー36でその帯状ワディング材12の他面14を溶融させ、その溶融中にそのプレス・ローラー27でワディングのセル膜を押し潰しながら伸ばしてその帯状ワディング材12のその他面14に均一的な低通気層37を成形する。その際、その離型紙送出し機23から帯状離型紙24が引き出され、その複数の離型紙ガイド・ローラー32、33、34に案内されてそのプレス・ローラー27に沿わせながら巻き付けられてそのラミネート・ローラー26とそのプレス・ローラー27との間に連続的に供給されるので、その帯状ワディング材12がそのプレス・ローラー27から容易に剥離されて完成品11になり、そして、その完成品11、すなわち、低通気シート・トリム・カバー11はその捲取り機に連続的に巻き取られる。
【0015】
そのようにして製造されるその低通気シート・トリム・カバー11は、その帯状ワディング材12のその他面14に火炎処理後、溶融面14を瞬時にプレスすることによって溶融中のワディングのセル膜を潰しながら伸ばし、その帯状ワディング材12のその他面14に均一な低通気層37を成形することができ、その結果、その帯状ワディング材12のその他面14には、約1mm程度の溶融圧縮層37が成形され、そして、通気量は、火炎処理後圧縮処理無しの場合の通気量24.3[cc/cm2/s]に比べて5.8[cc/cm2/s]に低減され、含浸量も低減される。
【0016】
そして、そのパッド43を一体発泡する際、そのワディング材12にウレタン発泡原液の浸透が抑制されて部分的な硬さのむらの発生が防止され、触感が保たれ、そして、成形品11の表皮に柔かい感触が確保され、さらに、別工程で手間をかける必要もなく積層工程で同時に行なえて製造工程が簡素化され、バリア層に使う樹脂フィルムが省かれて材料費も削減されてコスト低減が図られる。
【実施例2】
【0017】
図4は、この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法の別の具体例50を示し、そして、この詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法50は、ワディング材送出し機21、表皮材送出し機22、完成品捲取り機(図示せず)、一対のラミネート・ローラー25、26、ローラー表面に離型紙53を巻き付けたプレス・ローラー52、複数のワディング・ガイド・ローラー28、29、30、31、接着用バーナー35、および溶かし用バーナー36などを含んで構成されるところの詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造装置51を用いて行なわれる。
【0018】
そのワディング材送出し機21から帯状ワディング材12を連続的に引き出し、その引き出された帯状ワディング材12をその複数のワディング・ガイド・ローラー28、29、30、31に案内させてその一対のラミネート・ローラー25、26のワディング側のそのラミネート・ローラー25に沿わせながらその一対のラミネート・ローラー25、26間に連続的に移動させ、その一対のラミネート・ローラー25、26間に移動される直前のそのラミネート・ローラー25に巻き付くところにおいてその接着用バーナー35でそのワディング材12の片面13を溶融させ、それに同時的にその表皮材送出し機22から帯状表皮材15を連続的に引き出し、その引出された帯状表皮材15をその一対のラミネート・ローラー25、26の表皮側のそのラミネート26に沿わせながらその一対のラミネート・ローラー25、26間に連続的に移動させ、その一対のラミネート・ローラー25、26でその帯状ワディング材12のその溶融片面13に連続的に重ね合わせながら接着させて積層する。
【0019】
次に、その積層された帯状ワディング材12および帯状表皮材15をその一対のラミネート・ローラー25、26の表皮側のそのラミネート・ローラー26に沿わせながらその一対のラミネート・ローラー25、26からのそのラミネート・ローラー26とそのプレス・ローラー27との間に連続的に移動させ、そのラミネート・ローラー26とそのプレス・ローラー27との間に移動される直前のそのラミネート・ローラー26に巻き付けられているところにおいてその溶かし用バーナー36でその帯状ワディング材12の他面14を溶融させ、その溶融中にそのプレス・ローラー52でワディングのセル膜を押し潰しながら伸ばしてその帯状ワディング材12のその他面14に均一的な低通気層37を成形する。そのプレス・ローラー52が、予め、ローラー表面に離型紙53を巻き付けているので、その帯状ワディング材12はそのプレス・ローラー52から容易に剥離されて完成品11になり、そして、その完成品11、すなわち、低通気シート・トリム・カバー11はその捲取り機に連続的に巻き取られる。
【0020】
したがって、この製造方法50では、前述の製造方法10に比べてさらにその帯状離型紙24が省かれて製造工程がさらに簡素化され、そして、コスト低減がさらに図られる。
【0021】
先に図面を参照して説明されたところのこの発明の特定された具体例から明らかであるように、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、この発明の内容は、その発明の性質(nature)および本質(substance)に由来し、そして、それらを内在させると客観的に認められる別の態様に容易に具体化される。勿論、この発明の内容は、その発明の課題に相応し(be commensurate with)、そして、その発明の成立に必須である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
上述から理解されるように、この発明の詰め物の一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法は、帯状ワディング材を一方向に連続的に移動させながらその帯状
ワディング材の片面を加熱して溶融させ、それに同時的に帯状表皮材を一方向に連続的に移動させながらその帯状ワディング材のその溶融片面に連続的に重ね合わせ、接着させて積層し、次に、その帯状ワディング材の他面を加熱して溶融させ、溶融中にワディングのセル膜を潰しながら伸ばして均一な低通気層を成形するので、この発明の詰め物に一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法では、低通気シート・トリム・カバーは、その帯状ワディング材のその他面を加熱処理後、その溶融他面を瞬時にプレスすることによって溶融中のワディングのセル膜を潰しながら伸ばし、その帯状ワディング材のその他面にその均一な低通気層を成形することができ、通気量が低減されて含浸量も低減され、そして、詰め物を一体発泡する際、そのワディング材にウレタン発泡原液の浸透が抑制されて部分的な硬さのむらの発生が防止され、触感が保たれ、そして、成形品の表皮に柔かい感触が確保され、さらに、別工程で手間をかける必要もなく積層工程で同時に行なえて製造工程が簡素化され、バリア層に使う樹脂フィルムが省かれて材料費も削減されてコスト低減が図られ、その結果、自動車シートにとっても非常に有用で実用的である。
【符号の説明】
【0023】
10 低通気シート・トリム・カバーの製造方法
11 低通気シート・トリム・カバー/完成品
12 帯状ワディング材
13 片面/溶融片面
14 他面/溶融他面/溶融面
15 帯状表皮材
20 低通気シート・トリム・カバーの製造装置
21 ワディング材送出し機
22 表皮材送出し機
23 離型紙送出し機
24 帯状離型紙
25 ラミネート・ローラー
26 ラミネート・ローラー
27 プレス・ローラー
28 ワディング・ガイド・ローラー
29 ワディング・ガイド・ローラー
30 ワディング・ガイド・ローラー
31 ワディング・ガイド・ローラー
32 離型紙ガイド・ローラー
33 離型紙ガイド・ローラー
34 離型紙ガイド・ローラー
35 接着用バーナー
36 溶かし用バーナー
37 均一な低通気層/溶融圧縮層
40 ヘッドレスト
41 フレーム
42 スティ
43 パッド
44 低通気シート・トリム・カバー
45 シート・トラック
50 低通気シート・トリム・カバーの製造方法
51 低通気シート・トリム・カバーの製造装置
52 プレス・ローラー
53 離型紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状ワディング材を一方向に連続的に移動させながらその帯状ワディング材の片面を加熱して溶融させ、それに同時的に帯状表皮材を一方向に連続的に移動させながらその帯状ワディング材のその溶融片面に連続的に重ね合わせ、接着させて積層し、次に、その帯状ワディング材の他面を加熱して溶融させ、溶融中にワディングのセル膜を潰しながら伸ばして均一な低通気層を成形するところの詰め物に一体発泡に用いる低通気シート・トリム・カバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−170661(P2012−170661A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36495(P2011−36495)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】