説明

認知、神経変性または神経疾患または障害の処置のための海産および合成起源のフェニル−プレニル誘導体

本発明は、式(I)のフェニル−フェニル誘導体のファミリー、およびアルツハイマー病またはパーキンソン病などの認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の処置におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、それらを含んでなる医薬組成物に関する。さらに、本発明は、医療用、特に、認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の処置および/または予防に用いるための式(I)の化合物、ならびに認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の処置および/または予防のための薬剤の製造におけるこれらの化合物の使用を示す。


【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、式(I)のフェニル−フェニル誘導体系列、およびアルツハイマー病またはパーキンソン病などの認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の処置におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、それらを含んでなる医薬組成物に関する。さらに、本発明は、認知、神経変性または神経疾患もしくは障害の処置および/または予防のための薬剤の製造におけるそれらの化合物の使用も示す。
【0002】
背景技術
グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK−3)は、酵素または転写因子などの多様な標的タンパク質をリン酸化する、αおよびβイソ型を含むセリン−トレオニンプロテインキナーゼである。GSK−3βは、タンパク質合成、細胞増殖、アポトーシス、または胚発生の誘発などの細胞工程のいくつかのシグナル伝達経路に重要な調節的役割を果たす(Discovery and development of GSK3 inhibitors for the treatment of type 2 diabetes, Wagman et al., Curr. Pharm. Des. 2004;10(10):1105-37)。これらの調節経路の多くにおける障害が、パーキンソン病(GSK-3beta inhibition/beta-catenin stabilization in ventral midbrain precursors increases differentiation into dopamine neurons, Castelo-Branco et al., J Cell Sci. 2004 Nov 15;117(Pt 24):5731-7)、アルツハイマー病、II型糖尿病、双極性障害、GSK3ホモログを発現する単細胞寄生体により引き起こされる疾患(Pharmacological inhibitors of glycogen synthase kinases 3, Maijer L et al., Trends Pharmacol. Sci. 2004;25(9):471-80))、またはプリオン誘発性の神経変性(Prion peptide induces neuronal cell death through a pathway involving glycogen synthase kinase 3, Perez M. et al., Biochem. J. 2003; 372(Pt 1):129-36)などのヒトの疾患に関与している。
【0003】
GSK−3が関与する重要な調節工程はWnt経路である。Wntは、細胞の増殖、分化、移動、および運命などの種々の工程のアクチベーターとして働くシステイン豊富で、グリコシル化されたタンパク質のファミリーである(The Wnts, Miller JR, Genome Biol. 2002;3(1):REVIEWS3001)。この経路の重要なタンパク質はβ−カテインであり、核へ転流し、Wntがその受容体と結合した際に種々の遺伝子を活性化する。他のタンパク質の中でもAPC(腺腫様多発結腸ポリープ)およびaxinを含む多重タンパク質複合体は、GSK−3がそのN末端ドメインのいくつかの部位でβ−カテインをリン酸化するのを助ける。この事象はユビキチンとリン酸化されたβ−カテインの結合、およびその後のプロテアソームにおける分解と誘発する。
【0004】
アルツハイマー病(AD)は、神経炎病斑の核におけるβ−アミロイドタンパク質の沈着の存在と、AD患者の脳における異常な神経原繊維錯綜とを特徴とする神経変性疾患である。アミロイドβ−タンパク質(Aβ)は、大きなトランスメンブランI型タンパク質であるアミロイドβタンパク質前駆体(AβPP)の2回のエンドタンパク質分解切断により生じる。β−セクレターゼと呼ばれるプロテアーゼは、AβドメインのN末端でAβPPを切断して、可溶性AβPPと膜固定C末端フラグメント(CTF)を生じる。次に、γ−セクレターゼと呼ばれる第二のセクレターゼがトランスメンブラン領域内でCTFを切断してAβを生じ、これが細胞から分泌される。この事象を回避または軽減することができる化合物の同定は、ADの処置に関する研究の重要な目標となっている。
【0005】
また、他の疾患も脳におけるβアミロイド沈着の存在に関連づけられている。いくつかの例がMCI(軽度認知障害)、ダウン症候群、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、脳アミロイドアンギオパシー、他の変性認知症(血管起源および変性起源複合型認知症、パーキンソン病関連の認知症、進行性核上麻痺関連の認知症、大脳皮質基底核変性症関連の認知症、およびレビー小体型アルツハイマー病を含む)である(米国特許第20040132782号公報参照)。
【0006】
BACE(β部位AβPP切断酵素)は、β−セクレターゼ活性を有するアスパルチルプロテアーゼである。BACEは、その管腔ドメインに典型的なアスパルチルプロテアーゼモチーフを有するI型内在性膜タンパク質である。BACEは、AβPPをMet−Asp部位で特異的に加水分解し、酸性pHが最適である。BACEは脳で発現が高く、CTFの細胞内部位およびAβ産生と同時局在する。BACEはアルツハイマー病に対する治療化合物の開発の重要な標的となっている。
【0007】
BACEの発現および活性を増強するいくつかの因子がある。Hまたは多飽和脂肪酸のアルデヒド最終生成物であるHNE(4−ヒドロキシノネナール)などの酸化剤および酸化性生成物は、神経細胞および非神経細胞において細胞内のAβレベルおよび分泌されるAβレベルを増強することが示された(Paola et al. 2000; Misonou et al. 2001; Frederikse et al. 1996)。Aβ過剰産生の根底にある細胞機構を調べるために多くの研究が行われている。2002年には、Tamagno et al.(Oxidative Stress Increases Expression and Activity of BACE in NT2 Neurons, 2002, Neurobiol. Dis., 10, 279-288)は、酸化ストレスがBACEタンパク質のレベルおよび活性を誘導し、この事象が酸化性生成物HNEにより媒介されることを示している。この研究によれば、NT細胞を酸化剤に曝してもAβPP発現には影響がなかった。Aβに対するこれらの薬剤の作用は、BACE1遺伝子の転写のアップレギュレーションによるBACE1発現の増強に関連している(Oxidative stress potentiates BACE1 gene expression and Aβ generation, Tong et al., 2004, J. Neural. Transm., 112(3):455-69)。
【0008】
酸化性薬剤の作用を防ぐことができる化合物の同定は、アルツハイマー病における現在の研究の重要な目標となっている。これらの化合物のうち、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびCNSにおけるその役割が、Tamagno et al.により研究されている(Dehydroepiandrosterone reduces expression and activity of BACE in NT2 neurons exposed to oxidative stress, Tamagno et al., 2003, Neurobiol. Dis., 14, 291-301)。DHEAは、アンドロゲンおよびエストロゲン双方の前駆体として働き、神経系においてステロール前駆体から合成される副腎ステロイドである(Balieu 1981)。DHEAは、種々の動物モデルにおいて記憶および学習の増強を含む、CNSにおける種々の機能的活性を向上させ、興奮性アミノ酸およびAβ神経毒性に対して保護を示すことが知られている(Vallee et al. 2001)。この研究では、DHEAによる前処理が、NTニューロンにおいてAsc/FeおよびH/Feなどの酸化性薬剤により誘導されたBACEの発現、タンパク質レベル、および活性を低減することができることを示している。この保護は、HNEなどの脂質酸化の最終生成物の産生を防ぐことができるステロイドの抗酸化特性によるものであると思われる。酸化性ストレス生成物は、BACEタンパク質のレベルおよび活性の増強を誘導し、この誘導は、定量的PCR分析により示されたように遺伝子の過剰発現によるものである。加齢に伴うDHEA濃度の低下は、それが寿命に関連づけられ得ること、およびその進行的低下がADを含む加齢性変性障害のいくつかと関連づけられ得るという示唆をもたらした。結論として、DHEAは、BACEの発現および活性の負の調整により、AβPPの酸化ストレス依存的アミロイド形成プロセシングを防ぐことができる。
【0009】
米国特許第6001880号公報には、ラジカルスカベンジャーとして有用なピラゾリン誘導体が開示されている。前記ピラゾリン誘導体の合成のための中間体として、3,4−ジゲラニルオキシ安息香酸および3,4−ジゲラニルオキシ安息香酸エチルが開示されている。認知、神経変性または神経疾患もしくは障害の処置におけるそれらの有用性については述べられていない。
【0010】
Chemical Abstract (accession number 2001:184028)では、3D−HPLC分析において4−ヒドロキシ−3−プレニルオキシ安息香酸エチルが有用であることが開示されている。認知、神経変性または神経疾患もしくは障害の処置におけるその有用性については述べられていない。
【0011】
Baek, S. H., et al, J. of Nat. Prod., 1998, 1143-1145には、細胞傷害性活性を有する化合物が開示されている。前記化合物の合成における中間体として、3,4−ジゲラニルオキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ−3−ゲラニルオキシ安息香酸メチル、および4−メトキシ−3−ゲラニルオキシ安息香酸メチルが挙げられている。前記合成中間体の治療活性については述べられていない。
【0012】
欧州特許第0869118号公報には、ピロリジン誘導体の抗菌活性が開示されている。前記ピロリジン誘導体の合成のための中間体として、3,4−プレニルオキシ安息香酸、3,4−ゲラニルオキシ安息香酸、および4−メトキシ−3−ゲラニルオキシ安息香酸が開示されている。認知、神経変性または神経疾患もしくは障害の処置におけるそれらの有用性については述べられていない。
【0013】
WO94/02465A号公報には、腫瘍壊死因子を阻害するための化合物が開示されている。4−メトキシ−3−プレニルオキシ安息香酸は、活性化合物の合成中間体として開示されている。前記合成中間体の治療活性については述べられていない。
【0014】
BACEの発現は脳、特にニューロンに限局化されており、これはニューロンが脳におけるβ−アミロイドペプチドの主要な供給源であることを示唆している。他方、星状細胞は、β−アミロイドのクリアランスおよび分解、ニューロンに対する栄養的支持の提供およびβ−アミロイド沈着物とニューロンの間の保護バリアの形成に重要であることが知られている。しかしながら、Rossnerら(Alzheimer's disease β-secretase BACE1 is not a neuron specific enzyme, Rossner et al., J Neurobiochem. 2005, 92, 226-234)によれば、星状細胞はまた、β−アミロイドペプチドのもう一つの細胞供給源に相当し得る。ADの病理における星状細胞の役割は依然として確定されておらず、ニューロン、星状細胞、および小神経膠細胞における広域の相互作用事象に依存するために場合毎に異なる可能性がある。
【発明の概要】
【0015】
海綿Sarcotragusの有機溶媒抽出物が興味深い生物活性、すなわち、GSK−3阻害剤ならびにBACE阻害剤としての生物活性を示すことを見出した。これらの抽出物からの有効成分の分画および精製により、治療薬としての可能性のある用途を有する一連のフェニル−フェニル化合物の単離に至った。さらなる詳細が本明細書の実施例に示されている。原化合物の特性を改良するために、合成誘導体が設計された。
【0016】
よって、本発明は、一般式(I)のフェニル−フェニル誘導体の新規なファミリーに関する。それらはin vitroアッセイにおいて、酵素標的GSK−3に対して、また、それらのほとんどのものはBACEに対して阻害作用を示すことが示された。上記で詳細に述べたように、GSK−3は、多様な性質の多くの疾患および症状、特に、認知、神経変性、または神経疾患において重要な役割を果たすことが知られ、従って、この酵素の阻害は、前記疾患および症状の処置のための優れた治療アプローチとなることが知られている。さらに、上記で詳細に述べたように、BACE酵素の阻害もまた、多くの疾患および症状の処置のための良好な治療標的である。よって、これらの酵素が種々の認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害に関連することが知られていること、およびそれらの阻害がこれらの疾患の予防および処置の助けとなることが知られていることを考慮すれば、式(I)の化合物は認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の予防および/または処置に有用である。
【0017】
よって、第1の態様において、本発明は、新規な下記式(I)の化合物(本発明の化合物とも呼ぶ)並びにその塩、好ましくは、任意の薬学上許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグに関する
【化1】

[式中、
mは、0、1、2、3、4、および5から選択される整数であり、
は、−C(=O)OR、−CHO、および−CONH−Rから選択され、ここで、Rは、水素、−CH−Ph、−CH−O−CHから選択され、RはC−Cアルキルであり、
は、水素、フェニル、ベンジル、−COR、および−CH−O−CHから選択され、ここで、Rは、水素およびC−Cアルキルから選択され、
は、−CHおよび
【化2】

から選択される]。
【0018】
式(I)の化合物は不斉置換基、すなわち、Rおよび/またはRにおける不斉置換基を含む場合があり、これが種々の立体異性体(鏡像異性体、ジアステレオ異性体など)の存在を生じ得る。本発明はこのような立体異性体を総て含んでなる。
【0019】
本発明のさらなる態様は、薬剤として用いるための上記で定義されたような新規な式(I)の化合物である。
【0020】
本発明はさらに、少なくとも1種類の上記で定義されたような式(I)の化合物またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグと、少なくとも1種類の薬学上許容される担体、アジュバント、および/またはビヒクルとを含んでなる医薬組成物に関する。
【0021】
式(I)の化合物は以下の手順に従って製造される。
【0022】
市販の化合物3−ブロモ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(A)を出発反応物として用い、これはアセタールの形態で保護され、この目的で、エチレングリコールおよびp−トルエンスルホン酸一水和物を加え、このようにして、保護されたアルデヒド(B)を得る。フェノール性アルコールの保護は、THF(テトラヒドロフラン)中DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)とともにメチルクロロメチルエーテルを加えて行い、保護されたフェノール(C)を得る(スキーム1参照)。
【化3】

【0023】
アルデヒドおよびフェノールが保護されたら、アルキル化剤として(2E)−1−ブロモ−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン(D)、(2E,6E)−1−ブロモ−3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン(E)(双方とも市販)のフェニル鎖、および臭化ゲラニルゲラニル(エチル性エーテル中、PBr(臭化リン(III))を用いて3,7,11,15−テトラメチル−1,6,10,14−ヘキサデカテトラエン−3−オール(F)から出発して得た)を用いてアルキル化反応を行い、生成物Gを得る(スキーム2参照)。
【化4】

【0024】
総ての場合で、アルキル化は生成物Cを用いて行い、これに1:1比のトルエンおよび無水エチル性エーテルの混合物中、CuBr.DMS(臭化銅(I)−硫化ジメチル複合体)および対応する臭化フェニルとともにn−BuLi(リチウム−1−ブタニド)を用いて行い、対応するアルデヒド8−10を得た(スキーム3参照)。
【化5】

【0025】
その後の、メタノール中、CSA((±)−カンファー−10−スルホン酸)を用いたメトキシメチルエーテルの脱保護により、対応するアルコール11〜13を得た。アルデヒドの酸化は、1:4比のTHF/水混合物中、NaHPO(リン酸二水素ナトリウム)およびNaClO(亜塩素酸ナトリウム)を用いて行い、酸14〜16を得た(スキーム4参照)。
【化6】

【0026】
生成物16から出発し、ここではm=3の化合物が得られた。生成物16を、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中、KCO(炭酸カリウム)の存在下でBrBn(臭化ベンジル)と反応させ、生成物17を得た(スキーム5参照)。
【化7】

【0027】
対応するアミド(18)を得るために、エチルアミンをジクロロメタン中、EDC(N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド)およびHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)とともに用いた(スキーム6参照)。
【化8】

【0028】
生成物16をピリジン中、無水酢酸と反応させ、保護された生成物19を100%の収率で得た。次に、THF(テトラヒドロフラン)中、DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)とともにメチルクロロメチルエーテルと反応させ、生成物20を75%の収率で得た(スキーム7参照)。
【化9】

【0029】
本発明の別の態様は、認知、神経変性または神経疾患もしくは障害の処置および/または予防のための薬剤の製造における下記式(I)の化合物、その任意の薬学上許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグの使用である
【化10】

[式中、
mは、0、1、2、3、4、および5から選択される整数であり、
は、C−C12アルコキシ、−CH−O−CH、−OH、−C(=O)OR、−CHO、および−CONH−Rから選択され、ここで、Rは、水素、C−Cアルキル、−CH−Ph、−CH−O−CHから選択され、RはC−Cアルキルであり、
は、水素、フェニル、ベンジル、−COR、C−Cアルキル、および−CH−O−CHから選択され、ここでRは、水素およびC−Cアルキルから選択され、
は、−CHおよび
【化11】

から選択される]。
【0030】
さらなる態様は、認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の処置および/または予防における使用のための式(I)の化合物である。さらなる態様において、本発明は認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害を処置および/または予防する方法であって、このような処置を必要とする患者に治療上有効量の少なくとも1種類の上記で定義されたような式(I)の化合物またはその医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【発明の具体的説明】
【0031】
式(I)の化合物の上記の定義において、以下の用語は示された意味を有する。
【0032】
「C−C12アルキル」とは、炭素および水素原子からなり、不飽和を含まず、1〜12個、好ましくは1〜6個(「C−Cアルキル」)の炭素原子を有し、一重結合により分子の残りの部分と結合している直鎖または分枝炭化水素鎖基に関する。アルキル基の例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルなどのアルキル基が挙げられる。
【0033】
アルキル基は非置換型であっても、または下記のような1もしくは2個の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0034】
本明細書で本発明の化合物において置換された基という場合、1以上の利用可能な位置で1以上の好適な基、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードなどのハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシルのようなC1−6アルカノイル基などのアルカノイル、カルボキサミド、1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有する基を含むアルキル基、1以上の不飽和結合と2〜約12個の炭素または2〜約6個の炭素原子を有する基を含むアルケニルおよびアルキニル基、1以上の酸素結合と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有するアルコキシ基、フェノキシなどのアリールオキシ、1以上のチオエーテル結合と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する部分を含むアルキルチオ基、1以上のスルフィニル結合と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルフィニル基、1以上のスルホニル結合と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルホニル基、1以上のN原子と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する基などのアミノアルキル基、6個以上の炭素を有する炭素環式アリール、特に、フェニルまたはナフチルおよびアラルキル、例えばベンジルで置換されていてもよい特定の部分に関する。特に他で言及されない限り、場合により置換されていてもよい基は、その基の置換可能などの位置に置換基を有してもよく、どの置換も他の置換と独立である。
【0035】
「C−C12アルケニル」とは、その中に1以上の炭素−炭素二重結合を有し、2〜12個、好ましくは1〜6個(「C−Cアルケニル」)の炭素原子を有し、一重結合により分子の残りの部分と結合している直鎖または分枝炭化水素鎖基に関する。アルケニル基の二重結合は、別の不飽和基と共役していてもしていなくてもよい。好適なアルケニル基としては、限定されるものではないが、ビニル、アリル、ブテニル(例えば、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル)、ペンテニル(例えば、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル)、ヘキセニル(例えば、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル)、ブタジエニル、ペンタジエニル(例えば、1,3−ペンタジエニル、2,4−ペンタジエニル)、ヘキサジエニル(例えば、1,3−ヘキサジエニル、1,4−ヘキサジエニル、1,5−ヘキサジエニル、2,4−ヘキサジエニル、2,5−ヘキサジエニル)、2−エチルヘキセニル(例えば、2−エチルヘキシ−1−エニル、2−エチルヘキシ−2−エニル、2−エチルヘキシ−3−エニル、2−エチルヘキシ−4−エニル、2−エチルヘキシ−5−エニル)、2−プロピル−2−ブテニル、4,6−ジメチル−オクト−6−エニルなどのアルケニル基が挙げられる。アルケニル基は非置換型であっても、または下記のような1もしくは2個の置換基で置換されていてもよい。
【0036】
「C−C12アルコキシ」とは式−ORaの基に関し、Raは上記で定義されたようなアルキル基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシなどである。
【0037】
「アルコキシメチルエーテル」とは式−CH−O−R’の基に関し、R’は本明細書で定義されるようなアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはトリアルキルシリル基、例えば、メトキシメチルエーテル、2−メトキシエトキシメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、p−メトキシベンジルオキシメチルエーテル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテルである。
【0038】
「C−C12アルキニル」とは、その中に1以上の炭素−炭素三重結合と1〜12個、好ましくは1〜6個(「C−Cアルキニル」)の炭素原子を有し、一重結合により分子の残りの部分と結合している直鎖または分枝炭化水素鎖基を意味する。アルキニル基の三重結合は別の不飽和基と共役していてもしていなくてもよい。好適なアルキニル基としては、限定されるものではないが、エチニル、プロピニル(例えば、1−プロピニル、2−プロピニル)、ブチニル(例えば、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル)、ペンチニル(例えば、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル)、ヘキシニル(例えば、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル)、メチルプロピニル、3−メチル−1−ブチニル、4−メチル−2−へプチニル、および4−エチル−2−オクチニルなどのアルキニル基が挙げられる。アルキニル基は非置換型であっても、または下記のような1もしくは2個の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0039】
「C−C12アルキルアミノ」とは、C−C12モノアルキルアミノを意味するものとし、一重結合により分子の残りの部分と結合し、上記で定義されたような単一のアルキル鎖で置換されたアミノ基に関する。
【0040】
「C−C12ジアルキルアミノ」とは、一重結合により分子の残りの部分と結合し、上記で定義されたような互いに同じまたは異なる二つのアルキル鎖で置換されたアミノ基に関する。
【0041】
第1の態様によれば、本発明は、下記一般式(I)の新規な化合物並びにその塩、好ましくは、任意の薬学上許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグに関する
【化12】

[式中、
mは、0、1、2、3、4、および5から選択される整数であり、
は、−C(=O)OR、−CHO、および−CONH−Rから選択され、ここで、Rは、水素、−CH−Ph、−CH−O−CHから選択され、RはC−Cアルキルであり、
は、水素、フェニル、ベンジル、−COR、および−CH−O−CHから選択され、ここで、Rは、水素およびC−Cアルキルから選択され、
は、−CHおよび
【化13】

から選択される]。
【0042】
mの意味を明確にするために、mが0である場合、式(I)の化合物は
【化14】

であることを示す。
【0043】
mが1である場合、式(I)の化合物は
【化15】

である。
【0044】
mが2である場合、式(I)の化合物は
【化16】

であるなどである。
【0045】
一つの実施形態によれば、mは0、1、2、および3から選択される。式(I)の化合物の好ましい群は、Rが−C(=O)ORであり、Rが水素、−CH−O−CH、および−CH−Phから選択されるものである。なおさらに好ましい実施形態によれば、Rは−CH−O−CHおよび−CH−Phから選択される。
【0046】
さらなる好ましい化合物群は、Rが−CONH−Rであり、Rがメチルおよびエチルから選択されるものである。
【0047】
別の好ましい実施形態によれば、Rは水素、ベンジル、−COCH、および−CH−O−CHから選択される。なおさらなる好ましい実施形態では、Rはベンジルおよび−CH−O−CHから選択される。
【0048】
好ましい化合物群は、R
【化17】

であるものである。
【0049】
さらなる好ましい化合物群は、mが1、2、3、4、および5から選択される整数であり、Rが−CHOであり、Rが−CH−O−CHであるものである。
【0050】
別の好ましい実施形態によれば、mは0、1、および2から選択される整数であり、Rは−C(=O)OHであり、RはCH−O−CHである。
【0051】
さらなる好ましい化合物群は、mが2、3、4、および5から選択される整数であり、Rが−CHOであり、Rが水素であるものである。
【0052】
別の好ましい実施形態によれば、mは2、4、および5から選択される整数であり、Rは−C(=O)OHであり、Rは水素である。
【0053】
好ましい式(I)の化合物は下記:
【化18】



並びにその塩、好ましくは、薬学上許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグである。
【0054】
特に他で言及されない限り、本発明の化合物はまた、1種類以上の同位体が豊富な原子が存在することだけが異なる化合物も含むものとする。例えば、水素が重水素またはトリチウムに置き換わっていること、または炭素が13C−または14C−豊富な炭素または15N−豊富な窒素に置き換わっていること以外には示された構造を有する化合物が本発明の範囲内にある。
【0055】
「その薬学上許容される塩、溶媒和物およびプロドラッグ」とは、レシピエントに投与した際に本明細書に記載されているような化合物を(直接または間接的に)提供し得る塩、溶媒和物、またはプロドラッグに関する。しかしながら、薬学上許容されない塩も薬学上許容される塩の製造に有用であり得るので本発明の範囲内にあると考えられる。塩、プロドラッグ、および誘導体の製造は、当技術分野で公知の方法により行うことができる。好ましくは、「薬学上許容される」とは、生理学上耐用性があり、一般にヒトに投与した際に胃の不快感、めまいなどのアレルギー性または類似の望ましくない反応を生じない分子の構成要素および組成物に関する。好ましくは、本明細書において「薬学上許容される」とは、連邦または州政府の規制局により認可されていること、または米国薬局方または動物、より特にはヒトにおける使用に関する他の一般に認知されている薬局方に挙げられていることを意味する。
【0056】
例えば、本明細書で提供される化合物の薬学上許容される塩は、慣例の化学法により、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成される。一般に、このような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水または有機溶媒またはこの二つの混合物中、化学量論量の適当な塩基または酸と反応させることにより製造される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸付加塩、および例えば酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、およびp−トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウム、およびリチウム塩などの無機塩、ならびに例えばエチレンジアミン、エタノールアミン、N,N−ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルカミン、および塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリ塩が挙げられる。
【0057】
本願で用いられる「プロドラッグ」とは、溶解度またはバイオアベイラビリティなどのその物理化学的特性のいずれかを変化させるために(医薬用途)置換またはさらなる化学基の付加などの化学誘導体化を受けた化学化合物、例えば、対象に投与した後にそれ自体有効化合物を生じる有効化合物のエステルおよびエーテル誘導体を意味するものとして定義される。ある作用化合物のプロドラッグを製造する周知の方法の例が当業者に知られており、例えば、Krogsgaard-Larsen et al., Textbook of Drug Design and Discovery, Taylor & Francis (April 2002)に見出すことができる。本発明による「溶媒和物」とは、非共有結合を介してそれと結合された別の分子(ほとんどが極性溶媒であり得る)を有する本発明の化合物のいずれの形態も意味するものとして理解すべきである。溶媒和物の例としては、アルコレート、例えば、メタノレートが挙げられる。
【0058】
特に好ましいプロドラッグは、本発明の化合物を患者に投与した際に、そのような化合物のバイオアベイラビリティを高める(例えば、経口投与された化合物を血中により容易に吸収されるようにすることによる)または親化合物の、生体コンパートメント(例えば、脳またはリンパ系)への送達を親種よりも高めるものである。
【0059】
塩、溶媒和物、およびプロドラッグの製造は当技術分野で公知の方法によって行うことができる。薬学上許容されない塩、溶媒和物、またはプロドラッグも、薬学上許容される塩、溶媒和物、またはプロドラッグの製造に有用であり得るので、本発明の範囲内にあると考えられる。本発明の化合物は、遊離化合物または溶媒和物(例えば、水和物)のいずれかとして結晶形態であってもよく、両形態とも本発明の範囲内にあるものとする。溶媒和の形態は一般に当技術分野で公知である。好適な溶媒和物は薬学上許容される溶媒和物である。特定の実施形態では、溶媒和物は水和物である。
【0060】
本発明による式(I)の化合物またはそれらの塩もしくは溶媒和物は好ましくは薬学上許容される、または実質的に純粋な形態である。薬学上許容される形態とは、とりわけ、希釈剤および担体などの通常の医薬添加剤を除いて薬学上許容されるレベルの純度を有すること、および通常の用量レベルで有毒であると考えられる材料を含まないことを意味する。原薬に対する純度は好ましくは50%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは90%超である。好ましい実施形態では、それは95%超の式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。
【0061】
上記の式(I)で表される本発明の化合物は、キラル中心の存在に応じて鏡像異性体、または多重結合の存在に応じて異性体(例えば、Z、E)を含み得る。単一の異性体、鏡像異性体、またはジアステレオ異性体およびその混合物は本発明の範囲内にある。
【0062】
本発明のもう一つの態様は、薬剤として用いるための上記で定義されたような式(I)の化合物である。
【0063】
本発明はさらに、患者に投与するための、少なくとも1種類の本発明の新規な式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグと少なくとも1種類の薬学上許容される担体、アジュバント、および/またはビヒクルを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0064】
「担体、アジュバント、および/またはビヒクル」とは、それとともに有効成分が投与される分子存在または物質に関する。このような医薬担体、アジュバント、またはビヒクルは、水、および油(石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む)などの無菌液体、賦形剤、洗剤(disgregant)、湿潤剤、または希釈剤であり得る。好適な医薬担体は、E.W. Martin により"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。
【0065】
医薬組成物の例としては、経口、局所、または非経口投与用の任意の固体(錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒など)、または液体(溶液、懸濁液、またはエマルション)組成物が含まれる。
【0066】
好ましい実施形態では、これらの医薬組成物は経口形態である。経口投与に好適な投与形は錠剤またはカプセル剤であり得、例えばシロップ、アラビアガム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントガム、またはポリビニルピロリドンなどの結合剤、例えばラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール、またはグリシンなどの増量剤、例えばステアリン酸マグネシウムなどの錠剤滑沢剤、例えばデンプン、ポリビニルピロリドン、グリコール酸ナトリウムデンプン、または微晶質セルロースなどの崩壊剤、またはラウリル硫酸ナトリウムなどの薬学上許容される湿潤剤を含み得る。
【0067】
固体経口組成物は、ブレンド、充填、または打錠の常法によって製造することができる。多量の増量剤を用いる組成物中に有効薬剤を分布させるには、繰り返しブレンド操作を用いればよい。このような操作は当技術分野で慣例のものである。錠剤は例えば湿式または乾式造粒により製造することができ、所望により、通常の薬務で周知の方法に従ってコーティング、特に腸溶コーティングでコーティングしてもよい。
【0068】
医薬組成物は適当な単位投与形中の無菌溶液、懸濁液、または凍結乾燥生成物などの非経口投与用に適合させることができる。増量剤、緩衝剤、または界面活性剤などの十分な賦形剤を使用することができる。
【0069】
記載の処方物はスペインおよび米国薬局方および類似の参考テキストに記載または引用されているものなどの標準的な方法を用いて製造される。本発明の新規な式(I)の化合物または組成物の投与は、静注、経口剤形ならびに腹腔内および静脈内投与などのいずれの好適な方法により投与してもよい。経口投与が、患者および処置される多くの疾患の慢性特徴に便宜であることから好ましい。本発明の新規な化合物および組成物は他の薬剤とともに用いて併用療法を提供してもよい。これらの他の薬剤は同じ組成物の一部を形成してもよいし、あるいは同時または異なる時点で投与するための分離した組成物として提供されてもよい。
【0070】
本発明のもう一つの態様は、認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の処置および/または予防のための薬剤の製造における、下記式(I)の化合物並びにその塩、好ましくは、任意の薬学上許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグの使用である:
【化19】

[式中、
mは、0、1、2、3、4、および5から選択される整数であり、
は、C−C12アルコキシ、−CH−O−CH、−OH、−C(=O)OR、−CHO、および−CONH−Rから選択され、ここで、Rは水素、C−Cアルキル、−CH−Ph、−CH−O−CHから選択され、RはC−Cアルキルであり、
は、水素、フェニル、ベンジル、−COR、C−Cアルキル、および−CH−O−CHから選択され、ここで、Rは水素およびC−Cアルキルから選択され、
は、−CHおよび
【化20】

から選択される]。
【0071】
さらなる態様は、認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の処置および/または予防のための式(I)の化合物である。
【0072】
この使用のために好ましい式(I)の化合物は次のものである。
【化21】





【0073】
本発明の枠内で、「認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害」とは、限定されるものではないが、アルツハイマー病などの認知症、パーキンソン病、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎性パーキンソン症候群、脳炎後パーキンソン症候群、拳闘家脳炎(pugilistic encephalitis)、グァムパーキンソン症候群−認知症複合症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭骨認知症、ハンチントン病、AIDS関連認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症および神経外傷性疾患(例えば、急性卒中)、癲癇、気分障害(例えば、鬱病、統合失調症、および双極性障害)、卒中後の機能回復の助長、脳出血(例えば、孤立性脳アミロイドアンギオパシーによる脳出血)、軽度認知障害、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(Hemmorhage)、脳アミロイドアンギオパシー、虚血、脳損傷、特に外傷性脳損傷、ダウン症候群、レビー小体病、炎症、および慢性炎症性疾患を含む慢性神経変性症状から選択されるいずれかの疾患、障害、または症状に関する。
【0074】
好ましい疾患または障害は糖尿病、認知症(例えば、アルツハイマー病およびパーキンソン病)、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、および神経外傷性疾患(例えば、急性卒中)、癲癇、気分障害(例えば、鬱病、統合失調症、および双極性障害)、卒中後の機能回復の助長、脳出血、軽度認知障害、虚血、脳損傷、特に外傷性脳損傷、炎症、および慢性炎症性疾患を含む慢性神経変性症状である。
【0075】
特に好ましい疾患はアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、卒中、癲癇、気分障害、虚血、脳損傷、および慢性炎症性疾患である。
【0076】
本発明のもう一つの態様は、認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害を処置および/または予防する方法であって、このような処置を必要とする患者に治療上有効量の、上記で定義されたような少なくとも1種類の式(I)の化合物またはその医薬組成物を投与することを含んでなる方法である。
【0077】
「認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害」とは、上記で示されたものと解釈すべきである。
【0078】
これらの疾患または障害は好ましくは、限定されるものではないが、アルツハイマー病などの認知症、パーキンソン病、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎性パーキンソン症候群、脳炎後パーキンソン症候群、拳闘家脳炎、グァムパーキンソン症候群−認知症複合症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭骨認知症、ハンチントン病、AIDS関連認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、および神経外傷性疾患(例えば、急性卒中)、癲癇、気分障害(例えば、鬱病、統合失調症、および双極性障害)、卒中後の機能回復の助長、脳出血(例えば、孤立性脳アミロイドアンギオパシーによる脳出血)、軽度認知障害、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、脳アミロイドアンギオパシー、虚血、脳損傷、特に外傷性脳損傷、ダウン症候群、レビー小体病、炎症、および慢性炎症性疾患を含む慢性神経変性症状から選択される。
【0079】
一般に、本発明の化合物またはその医薬組成物の「治療上有効量」は、選択される化合物の相対的有効性、処置される障害の重篤度および罹患者の体重によって異なる。しかしながら、有効化合物は一般に、1日1回以上、例えば、1日1回、2回、3回、または4回投与され、典型的な総1日用量は0.1〜1000mg/kg/日の範囲である。
【0080】
本明細書の文脈で「処置」または「処置する」とは、疾患または前記疾患に関連する1以上の症状を予防、改善、または除去するための本発明による化合物または処方物の投与を意味する。「処置」はまた、疾患の生理学的後遺症の予防、改善、または除去を包含する。
【0081】
本明細書の文脈で「改善する」とは、自覚的(患者の、または患者上の感覚)または他覚的(測定パラメーター)いずれかの、処置される患者の状態に対するいずれの改善も意味するものと理解される。
【0082】
以下、本発明を例によりさらに説明する。それらはいずれの場合も特許請求の範囲で定義されるような本発明の範囲を限定するもととして解釈されるべきでない。
【実施例】
【0083】
実施例1:海綿および採集場所の記載
Sarcotragusは、2001年5月にコロマー島、(スペイン マヨルカ島 フォルメントール、北緯39°56’617 南緯3°07’ 860”)付近の水深42mの洞窟でスキューバーダイビングにより手で採集した。証拠標本(ORMA000312)をPharmaMarに寄託した。
【0084】
実施例2:化合物の抽出および単離
冷凍海綿(488g)をさいの目に切り、室温にてイソプロパノール(3×1000ml)で抽出した。合わせた抽出液を減圧下で濃縮し、16,09gの粗材料を得た。この材料を、HOからMeOH、次いでMeOH/CHCl(1:1)への段階的勾配を用いたLichroprep RP−18でのVLCに付した。100%のMeOHで溶出した画分をヘキサン/酢酸エチルから、次いでMeOH/EtOAc(1:1)への段階的勾配を用いたシリカゲルでのクロマトグラフィーに付した。ヘキサン/EtOAc(7:3)で溶出した画分を半分取逆相HPLC分離(SymmetryPrep C−18、19×300mm、10分で勾配HO〜AcN+0.1%ギ酸80〜100%AcN、次いで30分で100%AcN、254および290nmでのUV検出)に付し、純粋な化合物である化合物2、化合物4、および化合物5を得た。ヘキサン/EtOAc(1:1)で溶出した画分から純粋な化合物である化合物1を得た。MeOH/EtOAc(1:1)で溶出した画分を半分取逆相HPLC分離(SymmetryPrep C−18、19×300mm、45分で勾配HO〜AcN+0.1%ギ酸60〜100%AcN、254および290nmでのUV検出)に付し、純粋な化合物である化合物3を得た。
化合物3:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.9 (br.s), 6.9 (br.s), 5.6 (m), 5.2 (br.s), 5.1 (m), 2.6 (m), 2.2-2.0 (m), 1.8 (s), 1.6 (s), 1.58 (s), 1.3 (s).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ.170.1 , 159.2, 138.9, 139.0, 135.5, 133.5, 132.5, 130.4, 126.9, 125.6, 125.2, 123.6, 121.8, 121.1 , 1 15.6, 71.0, 42.3, 39.6, 29.7, 26.7, 26.1 , 16.2, 1.60.
【0085】
化合物1〜5は次の通り。
【表1】

【0086】
製造
上記で示した一般反応スキームに従い、次の化合物を得た。
【表2】




これらの化合物のいくつかの詳細な製造を以下に示す。
【0087】
実施例3:式(I)の化合物の製造
【化22】

2−ブロモ−4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−フェノール
無水トルエン(75mL)中、3−ブロモ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(5.0g、24.8ミリモル)の溶液に、エチレングリコール(1.66mL、29.8ミリモル)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(473mg、2.49ミリモル)を加える。得られた混合物を、好ましくはディーン−スタークを用い、5時間135℃まで加熱し、この時間が経過したところで、この混合物を室温とする。トリエチルアミン(2mL)を加え、溶媒を減圧下で除去する。溶出剤として1:2比の酢酸エチル/ヘキサン混合物を用い、シリカゲルクロマトグラフィーカラムを用いた精製を行い、5.4gの白色固体生成物を得る(収率90%)。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.54 (d, 1H, J=2.0), 7.24 (dd, 1H, J=2.0, 8.3), 6.88 (m, 1H), 5.63 (s, 1H), 4.02 (m, 5H)
13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 156.27, 132.59, 132.01, 128.28, 116.87, 110.52, 104.18, 66.30.
【0088】
【化23】

2−(3−ブロモ−4−メトキシメトキシ−フェニル)−[1,3]ジオキソラン
0℃に冷却した無水THF(75mL)中、窒素雰囲気下、2−ブロモ−4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−フェノール(5.3g、22.0ミリモル)の溶液に、DIPEA(9.42mL、54.0ミリモル)をゆっくり加える。得られた混合物を0℃で15分間攪拌する。この時間が経過したところで、CIMOM(3.48mL、43.0ミリモル)を滴下し、この反応物を室温で16時間攪拌する。この混合物を減圧下で乾燥させ、移動相として1:10比の酢酸エチル/ヘキサン混合物を用い、シリカゲルカラムを用いた精製を行い、6.0gの透明な液体生成物を得る(収率95%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δppm 7.66 (s, 1H), 7.33 (dd, 1H, J=1.5, 8.4), 7.12 (d, 1H, J=8.5), 5.72 (s, 1H), 5.20 (m, 2H), 4.04 (m, 4H), 3.48 (m, 3H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δppm 154.32, 132.92, 131.51, 126.78, 1 15.65, 1 12.73, 102.68, 95.00, 65.27, 56.34.
【0089】
【化24】

臭化ゲラニルゲラニル
無水ジエチルエーテル(20mL)中、ゲラニルリナロール(5g、170ミリモル)の溶液に、0℃、窒素雰囲気下で、三臭化リン(0.81mL、8,61ミリモル)の溶液を滴下する。この混合物を前記の温度で3時間攪拌した後、この混合物をさらに20mLのジエチルエーテルで希釈する。飽和NaHCO溶液(20mL)を加えて反応を停止させると、気泡が見られる。20mLの水を加える。ジエチルエーテル(2×50mL)を用いた抽出を行い、エーテル相を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させる。移動相としてAcOEt/ヘキサノール1:20混合物を用いてシリカゲルカラムでの精製を行い、黄色油性生成物を得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δppm 5.53 (dt, J=8.44, 1.17 Hz, 1H), 5.17-5.03 (m, 3H), 4.02 (d, J=8.43 Hz, 2H), 2.19-1.92 (m, 12H), 1.73 (d, J=1.23 Hz, 3H), 1.68 (d, J=0.86 Hz, 3H), 1.60 (s, 9H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δppm 143.60, 135.63, 134.95, 131.25, 124.36, 124.16, 123.37, 120.52, 39.72, 39.66, 39.53, 29.67, 26.76, 26.59, 26.10, 25.69, 17.68, 16.05, 16.00, 15.97.
【0090】
【化25】

生成物8〜10の合成のための一般手順
無水トルエン(6mL)および無水ジエチルエーテル(10mL)中、2−(3−ブロモ−4−メトキシメトキシ−フェニル)−[1,3]ジオキソラン(C)(3,46ミリモル)の溶液に、少量のモレキュラーシーブスを加える。前記溶液に、室温で窒素雰囲気下、n−BuLi(1.3当量、4.50ミリモル、ヘキサン中1.6M溶液)を加え、この混合物を5分間攪拌する。次に、CuBr.DMS(0.6当量、2.07ミリモル)を加え、この混合物をさらに30分間攪拌し、この時間が経過したところで対応する臭化フェニル(1.1当量、3.80ミリモル)を加える。4時間後、飽和塩化アンモニウム(NHCl)水溶液(5mL)を加えて反応を停止させ、得られた混合物をジエチルエーテル(2×50mL)で抽出し、有機相を1N塩酸(HCl)溶液(2×50mL)で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させる。移動相として1:10比の酢酸エチル/ヘキサン混合物を用いてシリカゲルカラムを用いた精製を行い、生成物を透明な油状物として得る。
【0091】
【化26】

(2E)−3−(3,7−ジメチル−オクタ−2,6−ジエニル)−4−メトキシメトキシ−ベンズアルデヒド
1H NMR (400 MHz, CDCl3 δ ppm) 9.87 (s, 1H), 7.69 (m, 2H), 7.17 (d, J=9.09 Hz, 1H), 5.35-5.29 (m, 1H), 5.29 (s, 2H), 5.10 (dtdd, J=5.80, 4.34, 2.96, 1.45 Hz, 1H), 3.49 (s, 3H), 3.39 (d, J=7.41 Hz, 2H), 2.16-2.00 (m, 4H), 1.72 (d, J=1.04 Hz, 1H), 1.67 (d, J=1.09 Hz, 3H), 1.59 (s, 3H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3.δ ppm) 191.22, 159.93, 137.05, 131.56, 131.52, 130.82, 130.43, 130.05, 124.10, 121.24, 113.20, 94.01, 56.28, 39.74, 28.43, 26.60, 25.68, 17.68, 16.14.
【0092】
【化27】

(2E,6E)−4−メトキシメトキシ−3−(3,7,11−トリメチル−ドデカ−2,6,10−トリエニル)−ベンズアルデヒド
1H-NMR (400 MHz, CDCl3. δ ppm) 9,87 (s; 1H); 7,70 (m; 2H); 7,17 (d; 1H; J=8,7Hz); 5,33 (t; 1H; J=7,2Hz); 5,29 (s; 3H); 5,10 (m; 2H); 3,49 (s; 3H); 3,39 (d; 2H; J=7,3Hz); 2,05 (m; 8H); 1,73 (s; 3H) 1,67 (s; 3H) 1,59 (s; 6H)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3.δ ppm) 191,21; 159,92; 137,08; 135,13; 131,54; 131,26; 130,83; 130,44; 130,05; 124,32; 123,99; 121,23; 113,21; 94,00; 56,27; 39,76; 39,69; 28,45; 26,72; 26,56; 25,67; 17,66; 16,17; 16,00.
【0093】
【化28】

(2E,6E,10E)−4−メトキシメトキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−ベンズアルデヒド
1H NMR (400 MHz, CDCl3δ ppm) 9.87 (s, 1 H), 7.72-7.65 (m, 2H), 7.17 (d, J=9.02 Hz, 1H), 5.35-5.30 (m, 1H), 5.29 (s, 2H), 5.16-5.05 (m, 3H), 3.49 (s, 3H), 3.39 (d, J=7.30 Hz, 2H), 2.21-1.90 (m, 12H), 1.73 (s, 3H), 1.68 (s, 3H), 1.59 (s, 6H), 1.58 (s, 3H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm) 191.17, 159.91, 137.07, 135.14, 134.88, 131.53, 131.21, 130.82, 130.43, 130.03, 124.37, 124.18, 123.99, 121.21, 113.20, 93.98, 56.25, 39.77, 39.69, 28.45, 26.74, 26.61, 25.67, 17.65, 16.17, 16.00, 15.97.
【0094】
【化29】

生成物11〜13の合成のための一般手順
メタノール(10mL)に溶解させた生成物8〜10(0,24ミリモル)の溶液に、(+/−)−カンファー−10−スルホン酸(0,26ミリモル)を加える。得られた溶液を4時間70℃まで加熱する。NaHCO(重炭酸ナトリウム)の水溶液飽和(5ml)を加えて反応を停止させる。それをジエチルエーテル(2×25ml)を用いて抽出し、水(1×25ml)およびブライン(1×25ml)で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させる。移動相として1:4比の酢酸エチル/ヘキサン混合物を用いてシリカゲルカラムでの精製を行い、透明な油性生成物を得る。
【0095】
【化30】

(2E)−3−(3,7−ジメチル−オクタ−2,6−ジエニル)−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド
1H NMR (400 MHz, CDCl3δ ppm) 9.85 (s, 1 H), 7.71-7.64 (m, 2H), 6.93 (d, J=8.77 Hz, 1 H), 5.33 (dt, J=7.21 , 1.28 Hz, 1 H), 5.10-5.03 (m, 1 H), 3.43 (d, J=7.20 Hz, 2H), 2.21-2.05 (m, 4H), 1.78 (d, J=0.66 Hz, 3H), 1.68 (d, J=0.86 Hz, 3H), 1.60 (d, J=0.50 Hz, 3H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm) 191.15, 160.28, 139.83, 132.14, 131.96, 130.50, 129.99, 127.56, 123.62, 120.52, 116.28, 39.66, 29.57, 26.32, 25.67, 17.71, 16.27
【0096】
【化31】

(2E,6E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11−トリメチル−ドデカ−2,6,10−トリエニル)−ベンズアルデヒド
1H NMR (400 MHz, CDCl3δ ppm) 9.85 (s, 1H); 7.67 (m, 2H); 6.91 (d, 1H, J=8.8Hz); 5.78 (s, 1H); 5.33 (t, 1H, J=7.4Hz); 5.08 (m, 2H); 3.43 (d, 2H, J=7.1Hz); 2.07 (m, 8H); 1.79 (s, 3H); 1.67 (s, 3H); 1.59 (s, 6H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm) 191.0; 160.1; 139.9; 135.7; 131.9; 131.3; 130.4; 130.0; 127.4; 124.3; 123.4; 121.1; 120.4; 116.3; 39.6; 29.6; 26.6; 26.2; 25.6; 17.6; 16.3; 16.0.
【0097】
【化32】

(2E,6E,10E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−ベンズアルデヒド
1H NMR (400 MHz, CDCl3δ ppm) 9.84 (s, 1H), 7.67 (m, 2H), 6.92 (d, J=8.34 Hz, 1H), 5.33 (t, J=6.59 Hz, 1H), 5.20-5.02 (m, 3H), 3.43 (d, J=6.70 Hz, 2H), 2.30-1.87 (m, 12H), 1.79 (s, 3H), 1.67 (s, 3H), 1.60 (s, 9H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm) 191.21, 139.71, 135.70, 134.94, 131.99, 131.25, 130.47, 129.90, 127.64, 124.37, 124.17, 123.50, 121.21, 120.51, 116.23, 39.69, 39.64, 29.48, 26.75, 26.56, 26.33, 26.27, 25.68, 17.67, 16.31, 16.06, 15.99.
【0098】
【化33】

生成物1、6、14〜15の合成のための一般手順:
THF/HO(2.5mL/0.5mL)と2−メチル−2−ブテン(0.1mL)の混合物中、4−ヒドロキシ−3−(3−メチル−ブト−2−エニル)−ベンズアルデヒドまたはアルデヒド11〜13(0.43ミリモル)の溶液に、リン酸二水素ナトリウム(1.01ミリモル)および亜塩素酸ナトリウム(1.06ミリモル)を交互に加える。この反応物を室温で4時間攪拌し、この時間が経過したところで、この混合物を、1N塩酸(HCl)溶液を用いて、弱酸性(pH4〜5)となるまで中和する。水(20mL)を加え、それをCHCl(2×25mL)で抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させる。溶出剤としてジクロロメタンと3%メタノールの混合物を用いて、クロマトグラフィーカラムを用いた精製を行う。
【0099】
【化34】

4−ヒドロキシ−3−(3−メチル−ブト−2−エニル)−安息香酸
1H NMR (400 MHz, CD3OD S) ppm 7.74 (d, J=1.74 Hz, 1H), 7.70 (dd, J=8.35, 1.99Hz, 1H), 6.78 (d, J=8.36 Hz, 1 H), 5.45-5.20 (m, 1H), 3.30 (d, J=3.44 Hz, 2H), 1.75 (d, J=0.84 Hz, 3H), 1.72 (s, 3H).
13C NMR (100 MHz, CD3OD δ) ppm 170.69, 161.06, 133.72, 132.63, 130.48, 129.39, 123.41 , 122.90, 115.37, 29.12, 26.03, 17.91.
【0100】
【化35】

(2E)−3−(3,7−ジメチル−オクタ−2,6−ジエニル)−4−ヒドロキシ−安息香酸
1H NMR (400 MHz, CDCl3δ ppm) 7.93-7.84 (m, 2H), 6.85 (d, J=8.88 Hz, H), 5.33 (dt, J=7.16, 1.17 Hz, 1H), 5.12-5.04 (m, 1H), 3.41 (d, J=7.17 Hz, 2H), 2.21-2.03 (m, 4H), 1.77 (d, J=0.74 Hz, 3H), 1.68 (d, J=0.83 Hz, 3H), 1.60 (d, J=0.52 Hz, 3H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm) 172.20, 159.78, 139.38, 132.75, 132.23, 130.67, 127.29, 123.97, 121.74, 121.13, 115.88, 39.90, 29.67, 26.63, 25.87, 17.92, 16.46.
【0101】
【化36】

(2E,6E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11−トリメチル−ドデカ−2,6,10−トリエニル)−安息香酸
1H NMR (400 MHz, CDCl3 δ ppm) 7.98-7.84 (m, 2H), 6.85 (d, J=8.86 Hz, 1H), 5.33 (t, J=6.73 Hz, 1 H), 5.19-5.04 (m, 2H), 3.42 (d, J=6.82 Hz, 2H), 2.05 (ddd, J=28.04, 13.03, 6.46 Hz, 8H), 1.79 (s, 3H), 1.67 (s, 3H), 1.60 (s, 6H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3 ppm 171.81 , 159.54, 139.57, 135.68, 132.57, 131.28, 130.52, 126.79, 124.33, 123.50, 121.61 , 120.78, 1 15.78, 39.66, 29.71 , 26.67, 26.32, 25.67, 17.67, 16.31 , 16.04.
【0102】
【化37】

(2E,6E,10E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸
1H NMR (400 MHz, CDCl3 δ ppm) 7.93-7.85 (m, 2H), 6.85 (d, J=6.95 Hz, 1H), 5.33 (t, J=6.98 Hz, 1H), 5.18-5.03 (m, 3H), 3.42 (d, J=6.67 Hz, 2H), 2.20-1.89 (m, 12H), 1.80 (s, 3H), 1.68 (s, 1 H), 1.62-1.57 (m, 9H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm 171.53, 159.53, 139.64, 135.72, 134.93, 132.59, 130.54, 126.76, 124.39, 124.21 , 123.50, 121.61 , 120.77, 115.80, 39.70, 39.65, 29.76, 26.76, 26.58, 26.35, 25.68, 17.67, 16.32, 16.06, 16.00.
【0103】
【化38】

(2E,6E,10E)−4−ベンジルオキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸ベンジルエステル
DMF(1.2mL)中、(2E,6E,10E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸(100mg、0.25mmol)およびKCO(34mg、0.25mmol)の懸濁液に、臭化ベンジル(43mg、0.25mmol)を少量ずつ加え、この混合物を4時間攪拌した。2時間後、KCOが懸濁した琥珀色の溶液は、白色の懸濁物を伴う透明な溶液になった。水を加え、この混合物をエチルエーテル(25mL)で抽出する。エーテル相を水(10mL)で8回、ブラインで1回洗浄し、溶媒を蒸発させた。放射状クロマトグラフィー10:1(ヘキサン/酢酸エチル)で精製を行った。
1H NMR (400 MHz, CDCl3δ ppm 7.94-7.90 (m, 2H), 7.47-7.30 (m, 10H), 6.91 (d, J=9.23 Hz, 1 H), 5.34 (s, 2H), 5.34-5.30 (m, 1 H), 5.15 (s, 2H), 5.14-5.07 (m, 3H), 3.41 (d, J=7.23 Hz, 2H), 2.16-1.92 (m, 12H), 1.69 (d, J=1.14 Hz, 3H), 1.67 (d, J=0.91 Hz, 3H), 1.60 (s, 3H), 1.59 (s, 6H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm 166.37, 160.32, 136.71 , 136.61 , 136.45, 135.03, 134.86, 131.19, 130.55, 129.45, 128.56, 128.50, 128.03, 127.98, 127.16, 124.42, 124.27, 124.17, 122.40, 121.66, 110.81 , 70.01 , 66.25, 39.80, 39.72, 28.63, 26.78, 26.73, 26.67, 25.66, 17.66, 16.21 , 16.01.
【0104】
【化39】

(2E,6E,10E)−N−エチル−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−ベンズアミド
ジクロロメタン(2mL)中、(2E,6E,10E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸(100mg、0.25mmol)の溶液に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(71mg、0.37mmol)および1−ヒドロキシベンドトリアゾール(50mg、0.37mmol)を加え、この反応物を1時間攪拌した。次に、エチルアミン(0.15mL、0.3mmol)を加え、この溶液を室温でさらに3時間攪拌放置した。水を加え(25mL)、この混合物をジクロロメタン(50mL)で抽出した。有機層をブライン(25mL)で洗浄し、溶媒を蒸発させ、透明な褐色油状物を得た。カラムクロマトグラフィー、溶出剤ヘキサン/酢酸エチル(2:1)により精製(67%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3δ ppm 7.54 (d, J=2.20 Hz, 1 H), 7.50 (dd, J=8.31 , 2.28 Hz, 1 H), 6.84 (d, J=8.32 Hz, 1 H), 6.69 (s, 1 H), 6.05 (t, J=5.35 Hz, 1 H), 5.32 (dt, J=7.14, 1.06 Hz, 1 H), 5.15-5.04 (m, 3H), 3.47 (dq, J=7.24, 5.72 Hz, 2H), 3.39 (d, J=7.14 Hz, 2H), 2.18-1.92 (m, 12H), 1.76 (s, 3H), 1.68 (d, J=0.98 Hz, 3H), 1.59 (s, 9H), 1.23 (t, J=7.26 Hz, 3H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm 167.62, 157.79, 138.63, 135.50, 134.91 , 131.22, 128.88, 127.30, 126.47, 126.38, 124.39, 124.22, 123.72, 121.22, 1 15.57, 39.71 , 39.67, 34.92, 29.44, 26.77, 26.62, 26.54, 25.66, 17.66, 16.30, 16.03, 15.99, 14.93
【0105】
【化40】

(2E,6E,10E)−4−アセトキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸
無水ピリジン(3mL)中、(2E,6E,10E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸(100mg、0.25mmol)の淡黄色溶液に0℃で無水酢酸(0.023mL、0.25mmol)を加えた。0℃で15分後、また、1.5時間後でも生成物は見られなかった。0℃で無水酢酸(0.03mL)を追加し、この反応物を室温で一晩、攪拌放置した。溶媒を蒸発乾固させた(73.5%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3δ ppm 8.02 (d, 1H), 7.99 (dd, J=8.39 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 8.34 Hz, H), 5.26 (dd, J=7.20, 6.14 Hz, 1H), 5.1 1 (tt, J=8.34, 4.22 Hz, 3H), 3.31 (d, J=7.10 Hz, 2H), 2.33 (s, 3H), 2.20-1.91 (m, 12H), 1.72 (s, 3H), 1.68 (d, J=0.84 Hz, 3H), 1.61 (s, 3H), 1.59 (s, 6H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm 168.69, 153.28, 137.68, 135.25, 134.86, 134.08, 132.35, 131.17, 129.31 , 124.41 , 124.24, 123.91 , 122.53, 120.63, 39.68, 28.68, 26.77, 26.65, 26.59, 25.64, 20.85, 17.64, 16.26, 16.00, 15.97.
【0106】
【化41】

(2E,6E,10E)−4−アセトキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸メトキシメチルエステル
テトラヒドロフラン(1.5mL)中、(2E,6E,10E)−4−アセトキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸メトキシメチルエステル(110mg、0.24mmol)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(37mg、0.29mmol)を加えた。得られた混合物に0℃でメチルクロロメチルエーテル(0.02mL、0.29mmol)を加え、この混合物を3.5時間攪拌した。ジエチルエーテル(50mL)を加え、この混合物を水(25mL)、0.1N HCl(10mL)およびブラインで洗浄して淡黄色油状物を得た。この油性生成物をヘキサン/酢酸エチル(20:1)を用いた放射状クロマトグラフィーにより精製し、90mgの無色の油状物を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3δ ppm 7.98 (d, J=1.97 Hz, 1 H), 7.95 (dd, J=8.36, 2.16 Hz, 1H), 7.12 (d, J=8.35 Hz, 1H), 5.47 (s, 2H), 5.28-5.20 (m, 1H), 5.15-5.06 (m, 3H), 3.53 (s, 3H), 3.30 (d, J=7.11 Hz, 2H), 2.32 (s, 3H), 2.17-1.91 (m, 12H), 1.71 (d, J=0.59 Hz, 3H), 1.68 (d, J = 1.00 Hz, 3H), 1.60 (s, 6H), 1.59 (d, J = 0.91 Hz, 3H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3δ ppm 168.70, 165.43, 152.87, 137.58, 135.24, 134.88, 134.03, 131.91 , 131.19, 128.78, 127.65, 124.39, 124.21 , 123.90, 122.48, 120.69, 90.95, 57.66, 39.69, 28.74, 26.77, 26.65, 25.65, 20.84, 17.64, 16.28, 15.99.
【0107】
【化42】

(2E)−3−(3,7−ジメチル−オクタ−2,6−ジエニル)−4−メトキシメトキシ−安息香酸
THF/水(2.5ml/0.5ml)の混合物中、(2E)−3−(3,7−ジメチル−オクタ−2,6−ジエニル)−4−メトキシメトキシ−ベンズアルデヒド(150mg、0,496ミリモル)の溶液に、2−メチル−2−ブテン(0.05ml)、リン酸二水素ナトリウム(164mg、1.19ミリモル)を加えた。次に、亜塩素酸ナトリウム(140mg、1.24ミリモル)を加え、この混合物を室温で4時間攪拌する。この混合物をCHCl(2×25ml)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶出剤として1:2比の酢酸エチル/ヘキサン混合物を用い、クロマトグラフィーカラムを用いた精製を行う。
1H NMR (400 MHz, CDCl3 δppm 7,95 (dd; 1H; J=2,2Hz; J=8,4Hz) 7,92 (d; 1H; J=2,3Hz) 7,10 (d; 1H; J=8,4Hz) 5,32 (dt; 1H; J=1,1Hz; J=7,3Hz) 5,28 (s; 2H) 5,11 (dt; 1H; J=1,3Hz; J=6,7Hz) 3,49 (s; 3H) 3,38 (d; 2H; J=7,3Hz) 2,07 (m; 4H) 1,73 (d; 3H; J=0,8Hz) 1,67 (d; 3H; J=1,0Hz) 1,60 (s; 3H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δppm 171,66; 159,33; 136,75; 131,77; 131,48; 130,82; 129,96; 124,15; 122,26; 121,54; 112,83; 93,97; 56,20; 39,75; 28,51; 26,65; 25,64; 17,67; 16,14.
【0108】
【化43】

4−メトキシメトキシ−3−(3,7,11−トリメチル−ドデカ−2,6,10−トリエニル)−安息香酸
化合物21の製造と同様に反応戦略に従い、化合物28を(2E,6E)−4−メトキシメトキシ−3−(3,7,11−トリメチル−ドデカ−2,6,10−トリエニル)−ベンズアルデヒドの酸化により得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.93 (dd, J=1,2Hz, J=8,7Hz, 1H), 7.92 (d, J = 9.26 Hz, 1 H), 7.10 (d, J = 8.42 Hz, 1 H), 5.32 (t, J = 7.21 Hz, 1 H), 5.28 (s, 2H), 5.18-5.04 (m, 2H), 3.49 (s, 3H), 3.38 (d, J = 7.32 Hz, 2H), 2.24-1.87 (m, 8H), 1.73 (s, 3H), 1.67 (s, 3H), 1.59 (s, 6H)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 171.12, 159.31, 136.78, 135.10, 131.78, 131.23, 130.82, 129.96, 124.38, 124.05, 122.19, 121.54, 112.84, 93.97, 56.20, 39.77, 39.68, 28.54, 26.74, 26.61, 25.67, 17.66, 16.18, 15.99.
【0109】
【化44】

(2E,6E,10E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸ベンジルエステル
DMF(1.2mL)中、(2E,6E,10E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸(100mg、0.25mmol)およびKCO(34mg、0.25mmol)の懸濁液に、臭化ベンジル(43mg、0.25mmol)を少量ずつ加え。この混合物を4時間攪拌した。2時間後、KCOが懸濁した琥珀色の溶液は、白色の懸濁物を伴う透明な溶液になった。水を加え、得られた混合物をエチルエーテル(25mL)で抽出した。有機相を水(10mL)で8回、ブラインで1回洗浄し、真空下で溶媒を蒸発させた。溶出剤としてヘキサン/酢酸エチル(10:1)混合物を用いた放射状クロマトグラフィーにより精製を行い、44mg(36%)の目的生成物を琥珀色のシロップとして得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ ppm) 7.89-7.85 (m, 2H), 7.46-7.30 (m, 5H), 6.83 (d, J=8.89 Hz, 1H), 5.86 (s, 1H), 5.35 (s, 2H), 5.32 (m, 1H), 5.14-5.07 (m, 3H), 3.40 (d, J=7.15 Hz, 2H), 2.18-1.94 (m, 14H), 1.79 (s, 3H), 1.69 (s, 3H), 1.62-1.59 (m, 9H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ ppm) 166.68, 159.19, 139.55, 136.56, 135.86, 135.14, 132.26, 131.44, 130.10, 128.76, 128.32, 128.27, 127.01 , 124.63, 124.46, 123.81 , 122.67, 121.154, 1 15.880, 66.609, 39.941 , 39.921 , 39.881 , 29.901 , 27.008, 26.832, 26.643, 25.894, 17.892, 16.547, 16.277, 16.221.
【0110】
【化45】

(2E,6E,10E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸メトキシメチエステル
THF(1.2mL)中、(2E,6E,10E)−4−ヒドロキシ−3−(3,7,11,15−テトラメチル−ヘキサデカ−2,6,10,14−テトラエニル)−安息香酸(100mg、0.25mmol)およびジ−イソプロピルエチルアミン(0.05mL、30mmol)の溶液に、クロロ−メトキシメタン(0.02mL、0.30mmol)を加え、この混合物を3時間攪拌した。0℃で再びクロロ−メトキシメタン(0.02mL、0.30mmol)を追加し、さらに1.5時間攪拌を続けた。ジエチルエーテル25mL)を加え、得られた混合物を水(15mL×2)、飽和NaCL溶液(10mL×2)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、真空下で溶媒を蒸発させた。得られた固体を溶出剤としてヘキサン/酢酸エチル(10:1〜1:1)混合物を用いた放射状クロマトグラフィーにより精製し、82mg(61%)の目的生成物を淡黄色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3 δ ppm) 7.88-7.84 (m, 2H), 6.84 (d, J=8.21 Hz, 1 H), 5.46 (s, 2H), 5.34 (dt, J=7.15, 7.14, 1.07 Hz, 1H), 5.13-5.07 (m, 3H), 3.54 (s, 3H), 3.41 (d, J=7.17 Hz, 2H), 2.18-1.92 (m, 14H), 1.78 (s, 3H), 1.68 (s, 3H), 1.60 (s, 6H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ ppm) 166.109, 159.194, 139.104, 135.558, 134.877, 132.083, 131.176, 129.922, 127.033, 124.379, 124.200, 123.605, 121.936, 120.913, 115.595, 90.626, 57.565, 39.686, 39.626, 29.465, 26.747, 26.576, 26.433, 25.629, 17.626, 16.268, 16.007, 15.955.
【0111】
化合物23、26、および27は次の一般反応スキームに従って製造した。
【化46】

ベンジルエーテルHは、炭酸カリウムの存在下で3−ブロモ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを保護することにより製造した(収率91%)。次に、このアルデヒドをエチレングリコールおよび触媒量のp−トルエンスルホン酸と反応させ、アセタールIをそこそこの収量で得た(Ling, et al., J. Org. Chem. 2001, 66, 8843)。この臭化アリールのさらなるアルキル化を、n−BuLi、次いで臭化銅、次いで対応するフェニル臭化物を加えることにより達成し、対応するアルデヒド(23aおよび23b)を得た。NaHPOおよびNaClの存在下でさらなる酸化を行い、酸26および27を高収量で得た。
【0112】
【化47】

4−ベンジルオキシ−3−(3,7,11−トリメチル−ドデカ−2,6,10−トリエニル)−ベンズアルデヒド
1H NMR (400 MHz, CDCl3 δ) ppm 9.86 (s, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.70 (dd, J=6.96, 2.10 Hz, 1H), 7.46-7.31 (m, 5H), 7.00 (d, J=9.06 Hz, 1H), 5.39-5.27 (m, 1H), 5.18 (s, 2H), 5.15-5.03 (m, 2H), 3.43 (d, J=7.28 Hz, 2H), 2.23-1.81 (m, 8H), 1.67 (s, 6H), 1.59 (s, 3H), 1.58 (s, 3H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3 δ) ppm 191.37, 161.73, 137.41, 136.51, 135.33, 131.62, 131.48, 130.93, 130.54, 130.02, 128.86, 128.35, 127.42, 124.57, 124.29, 121.42, 111.42, 70.40, 40.00, 39.92, 28.71, 26.95, 26.82, 25.91, 17.91, 16.41, 16.24.
【0113】
【化48】

4−ベンジルオキシ−3−(3,7,11−トリメチル−ドデカ−2,6,10−トリエニル)−安息香酸
1H-NMR (25oC, CDCl3, 400 MHz, ppm) 7.95 (dd, 1H, J=1.2Hz, J=8.5Hz); 7.92 (d, 1H, J=1.9Hz); 7.38 (m, 5H); 6.94 (d, 1H, J=8.5Hz); 5.34 (t, 1H, J=7.2Hz); 5.17 (s, 2H); 5.11 (m, 2H); 3.42 (d, 2H, J=7.2Hz); 2.04 (m, 8H); 1.67 (s, 6H); 1.59 (s, 3H); 1.59 (s, 3H).
13C-NMR (25oC; CDCl3; 100 MHz; ppm) 177.7; 160.8; 136.8; 136.5; 135.0; 131.6; 131.2; 130.6; 130.1; 128.5; 128.0; 127.1; 124.4; 124.1; 121.5; 121.4; 110.8; 70.0; 39.7; 39.6; 28.5; 26.7; 26.6; 25.6; 17.6; 16.1; 16.0.
【0114】
【化49】

4−ベンジルオキシ−3−(3,7−ジメチル−オクタ−2,6−ジエニル)−安息香酸
1H-NMR (25oC, CDCl3, 400 MHz, ppm) 7.95 (dd, 1 H, J=1 .2Hz, J=8.7Hz); 7.92 (d, J=1 .9Hz, 1H); 7.39 (m, 5H); 6.94 (d, 1H, J=8.5Hz); 5.34 (t, 1H, J=7.4Hz); 5.17 (s, 2H); 5.1 1 (t, 1H, J=6.7Hz); 3.41 (d, 2H, J=7.2Hz); 2.08 (m, 4H); 1.67 (s, 6H); 1.60 (m, 3H)
13C-NMR (25oC, CDCl3, 100 MHz, ppm) 171.2; 160.8; 136.8; 136.5; 131.6; 131.4; 130.6; 130.1; 128.5;128.0; 127.2; 124.2; 121.5; 121.4; 110.8; 70.0; 39.7; 28.5; 26.6; 25.6; 17.6; 16.1.
生物学的方法
【0115】
実施例4:基本アッセイ
このアッセイの目的は、合成または海洋起源いずれかの化合物が、Aβの形成を避けるためのBACE−1阻害剤であるか否かを決定することである。このアッセイはFRET法(蛍光共鳴エネルギー移動)に基づく。FRETは、とりわけ、ペプチド基質の切断を測定するために用いる。このペプチド基質は蛍光ドナーと、消光アクセプターとの二つの蛍光団を示す。これら二つの蛍光団間の距離は、光励起の際にドナー蛍光エネルギーがアクセプターによって有意に消光されるように選択されている。基質ペプチドの切断が起こった際には、エネルギーバランスが崩れ、総てのドナー蛍光が観察される。蛍光の増強はタンパク質分解率と直線的関係がある(Gordon, GW et al., 1998)。このアッセイでは、酵素である精製BACE−1と、「スウェーデン突然変異」を呈する蛍光ペプチド基質との間で反応が起こる。BACE−1によるペプチドの切断は蛍光エネルギーを生じ、この酵素活性を定量することができる。
【0116】
このアッセイに用いる試薬は次の通りである。
・rhBACE−1 β−セクレターゼ組換えヒト(R&D Systems. Ref. 931-AS)
・蛍光ペプチド基質IV(R&D Systems. Ref. ES004)
・β−セクレターゼ阻害剤H−4848(BACHEM. Ref. H-4848.0001)。
・酢酸ナトリウム
【0117】
このアッセイは96ウェルマイクロプレートで行う。基質の終濃度はウェル当たり3.5μMであり、酵素濃度は0.5μg/mlである。アッセイの最終容量はウェル当たり100μlであり、試薬は総て反応バッファーで希釈する。化合物を10-5および10-6Mの濃度で試験する。アッセイの対照は、BACHEMからの市販の阻害剤β−セクレターゼ阻害剤H−4848であり、300nMで試験する。サンプルおよび対照は総て2回試験する。
【0118】
プレートを穏やかに混合し、蛍光の変化を、320nm励起フィルターと405nm発光フィルターとともに蛍光計プレートリーダーを用いて測定する。温度は好ましくは25〜30℃の間に維持すべきである。測定は1時間の間に10分置きに行う。最初の測定値を最後の測定値から差し引いて蛍光増強を算出し、酵素活性を評価する。100%活性をサンプルまたは阻害剤を含まないウェルの結果の平均値として算出する。
【0119】
蛍光に異常な影響が検出された場合には、BACE阻害活性を、BACE−1(β−セクレターゼ)FRET ASSAY KIT(Invitrogen, Ref. P2985)を用いてアッセイした。544nm励起フィルターと580nm発光フィルターとともに蛍光計プレートリーダーを用いて蛍光を測定した。
【0120】
このアッセイに関するさらなる情報は以下の参照文献(引用することにより発明の開示の一部とされる)に見出せる。
Andrau, D et al; "BACE1- and BACE2-expressing human cells: characterization of beta-Amyloid precursor protein-derived catabolites, design of a novel fluorimetric assay, and identification of new in vitro inhibitors". J Biol Chem. 2003 JuI 1 1 ;278(28):25859-66
Gordon, GW et al; "Quantitative fluorescence resonance energy transfer measurements using fluorescence microscopy." Biophys J. 1998 May; 74:2702-13
【0121】
本発明の式(I)の化合物を、それらのBACE活性阻害を決定するために、上記で示したアッセイに付した。結果を酵素活性のパーセンテージとして表Iに示す。
【0122】
【表3】


【0123】
実施例5:GSK−3β阻害アッセイ
本発明による式(I)の化合物のGSK−3β活性を、組換えヒトGSK−3酵素、リン酸供給源およびGSK−3基質の混合物を対応する試験化合物の存在下および非存在下でインキュベートすることにより、そしてこの混合物のGSK−3活性を測定することにより決定した。化合物は25および50μMの終濃度で試験した。
【0124】
組換えヒトグリコーゲンシンターゼキナーゼ3βを、MOPS 11mM、pH7.4、EDTA 0.2mM、EGTA 1.25mM、MgCl 26.25mMおよびオルトバナジウム酸ナトリウム0.25mM中、62.5μMのホスホ−グリコーゲンシンターゼペプチド−2(GS−2)、0.5μCi γ−33P−ATPおよび終濃度12.5μMの非標識ATPの存在下でアッセイした。最終アッセイ容量は20μlとした。30℃で30分間インキュベートした後、15μlのアリコートをP81ホスホセルロースペーパーにスポットした。フィルターを少なくとも各10分間4回洗浄し、シンチレーションカウンターにて1.5mlのシンチレーションカクテルを用いて計数した。
【0125】
本発明の式(I)の化合物を、それらのGSK−3活性阻害を決定するために、上記で示したアッセイに付した。結果を酵素活性のパーセンテージとして表IIに示す。
【0126】
【表4】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)化合物並びにその塩、好ましくは、任意の薬学上許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグ:
【化1】

[式中、
mは、0、1、2、3、4、および5から選択される整数であり、
は、−C(=O)OR、−CHO、および−CONH−Rから選択され、ここで、Rは、水素、−CH−Ph、−CH−O−CHから選択され、RはC−Cアルキルであり、
は、水素、フェニル、ベンジル、−COR、および−CH−O−CHから選択され、ここで、Rは、水素およびC−Cアルキルから選択され、
は、−CHおよび
【化2】

から選択される]。
【請求項2】
mが0、1、2、および3から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が−C(=O)ORであり、Rが水素、−CH−O−CH、および−CH−Phから選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
が−CH−O−CHおよび−CH−Phから選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が−CONH−Rであり、Rがメチルおよびエチルから選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が水素、ベンジル、−COCH、および−CH−O−CHから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
がベンジルおよび−COCHから選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】

【化3】

である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
mが1、2、3、4、および5から選択される整数であり、Rが−CHOであり、Rが−CH−O−CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
mが0、1、および2から選択される整数であり、Rが−C(=O)OHであり、RがCH−O−CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
mが2、3、4、および5から選択される整数であり、Rが−CHOであり、Rが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
mが2、4、および5から選択される整数であり、Rが−C(=O)OHであり、Rが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
【化4】



から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
薬剤として用いるための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
少なくとも1種類の請求項1〜13のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグと、少なくとも1種類の薬学上許容される担体、アジュバント、および/またはビヒクルとを含んでなる医薬組成物。
【請求項16】
認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の処置および/または予防のための薬剤の製造における、下記式(I)の化合物並びにその塩、好ましくは、任意の薬学上許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグの使用:

【化5】

[式中、
mは、0、1、2、3、4、および5から選択される整数であり、
は、C−C12アルコキシ、−CH−O−CH、−OH、−C(=O)OR、−CHO、および−CONH−Rから選択され、ここで、Rは、水素、C−Cアルキル、−CH−Ph、−CH−O−CHから選択され、RはC−Cアルキルであり、
は、水素、フェニル、ベンジル、−COR、C−Cアルキル、および−CH−O−CHから選択され、ここで、Rは、水素およびC−Cアルキルから選択され、
は、−CHおよび
【化6】

から選択される]。
【請求項17】
前記認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害が、アルツハイマー病などの認知症、パーキンソン病、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎性パーキンソン症候群、脳炎後パーキンソン症候群、拳闘家脳炎、グァムパーキンソン症候群−認知症複合症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭骨認知症、ハンチントン病、AIDS関連認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、および神経外傷性疾患(例えば、急性卒中)、癲癇、気分障害(例えば、鬱病、統合失調症、および双極性障害)、卒中後の機能回復の助長、脳出血(例えば、孤立性脳アミロイドアンギオパシーによる脳出血)、軽度認知障害、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、脳アミロイドアンギオパシー、虚血、脳損傷、特に外傷性脳損傷、ダウン症候群、レビー小体病、炎症、および慢性炎症性疾患を含む慢性神経変性症状から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害の処置および/または予防のための下記式(I)の化合物並びにその塩、好ましくは、任意の薬学上許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグ:
【化7】

[式中、
mは、0、1、2、3、4、および5から選択される整数であり、
は、C−C12アルコキシ、−CH−O−CH、−OH、−C(=O)OR、−CHO、および−CONH−Rから選択され、ここで、Rは、水素、C−Cアルキル、−CH−Ph、−CH−O−CHから選択され、Rは、C−Cアルキルであり、
は、水素、フェニル、ベンジル、−COR、C−Cアルキル、および−CH−O−CHから選択され、ここで、Rは、水素およびC−Cアルキルから選択され、
は、−CHおよび
【化8】

から選択される]。
【請求項19】
前記認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害が、アルツハイマー病などの認知症、パーキンソン病、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎性パーキンソン症候群、脳炎後パーキンソン症候群、拳闘家脳炎、グァムパーキンソン症候群−認知症複合症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭骨認知症、ハンチントン病、AIDS関連認知症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、および神経外傷性疾患(例えば、急性卒中)、癲癇、気分障害(例えば、鬱病、統合失調症、および双極性障害)、卒中後の機能回復の助長、脳出血(例えば、孤立性脳アミロイドアンギオパシーによる脳出血)、軽度認知障害、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、脳アミロイドアンギオパシー、虚血、脳損傷、特に外傷性脳損傷、ダウン症候群、レビー小体病、炎症、および慢性炎症性疾患を含む慢性神経変性症状から選択される、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
認知、神経変性、または神経疾患もしくは障害を処置および/または予防する方法であって、このような処置を必要とする患者に治療上有効な量の少なくとも1種類の請求項16で定義された式(I)の化合物を投与することを含んでなる、方法。

【公表番号】特表2011−511042(P2011−511042A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545479(P2010−545479)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051373
【国際公開番号】WO2009/098287
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(505132389)ノスシラ、ソシエダッド、アノニマ (12)
【氏名又は名称原語表記】NOSCIRA S.A.
【Fターム(参考)】