説明

誘導加熱装置、誘導加熱定着装置、及び画像形成装置

【課題】電圧共振型インバータによる誘導加熱を安定動作させ、動作中の共振周波数変動によるスイッチング素子の損失/破損を防ぎつつ、高速な電力制御を可能にする。
【解決手段】共振電圧検出回路601では、励磁コイル101と共振コンデンサCresからなるLC並列共振回路の共振電圧を抵抗R71とR72で分圧してコンパレータCMP71に入力する。スイッチング素子Q1の両端の電圧Vce=0になるタイミングでCMP71が出力信号を生成できるように、共振電圧の分圧値とGND(接地)レベルとを比較してタイミング制御信号を生成し、制御部207に入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱体を誘導加熱により加熱する誘導加熱装置、それを備えた誘導加熱定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いる複写機やプリンタ装置等の画像形成装置では、感光体ドラムに形成したトナー画像をシートに転写し、その後、定着手段としての定着ローラによりシートに加熱処理を施し、画像形成を行っている。
【0003】
近年環境問題が重要となり、画像形成装置も省エネルギー化が進んでいる。この画像形成装置の省エネルギー化には、トナーをシートに融着する定着装置部の消費電力低減が必要である。
【0004】
この消費電力低減の要求から、近年、定着装置として、図10に示すような励磁コイル101、加熱ローラ102、定着/加圧ローラ103、励磁コイル101への駆動電流を制御する誘導加熱駆動回路104、加熱ローラ102の温度を検出する温度センサ105から構成される誘導加熱定着装置108が採用されている。ここで、励磁コイル101、誘導加熱駆動回路104、及び温度センサ105が誘導加熱装置を構成している。
【0005】
この誘導加熱定着装置は、励磁コイル101で生成した磁束により、加熱ローラ102の発熱層(導電層)に渦電流を発生させることで、加熱ローラ102を発熱させ、加熱ローラ102の熱を定着/加圧ローラ103に伝達する。加熱ローラ102と定着/加圧ローラ103の間をトナー106を載せたシート107を通過させることで、シート107にトナー106を融着させる。このとき、加熱ローラ102の温度が加熱ローラ102の近傍に配置された温度センサ105により検出され、所定の温度に保つよう誘導加熱駆動回路104で制御される。
【0006】
上記構成からなる誘導加熱定着装置108は使用可能温度まで立上げる時間を画期的に短くでき、且つ効率も良いことから、環境問題にも寄与できるものとして注目されている。
【0007】
図11に誘導加熱駆動装置を示す。
商用電源201から入力される交流電圧は、コンデンサC1/C2/C3とコモンモードチョークコイルL1からなるノイズフィルタ回路202を経由して、ダイオードブリッジDB1により全波整流される。
【0008】
全波整流された交流電圧はさらにコンデンサC4/C5及びチョークコイルL2により構成されたLCフィルタ回路203により直流化(平滑)され、共振コンデンサCresの一端に入力される。共振コンデンサCresの他端は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)からなるスイッチング素子Q1のコレクタに接続されており、スイッチング素子Q1のエミッタは接地(GNDに接続)されている。
【0009】
共振コンデンサCresの両端は外部コネクタCN1により二本の電線によって励磁コイル101の両端に接続され、励磁コイル101と共振コンデンサCresはLC並列共振回路を構成している。
【0010】
制御回路204の駆動回路206から出力される駆動信号はスイッチング素子Q1のベースに入力されており、制御回路204からの駆動信号がスイッチング素子Q1をオンオフすることによって、励磁コイル101へ高周波電流が流れ、磁束が加熱ローラ102に照射されることにより、加熱ローラ102の表面に渦電流が発生し発熱する。
【0011】
制御回路204は入力電流検出回路205a及び入力電圧検出回路205bからの検出信号により入力交流電力を検出する入力電力検出部205と、その出力及び温度センサ105からの温度検出信号により、適正なパルス幅演算を実行する制御部207と、制御部207からの信号に基づいてスイッチング素子Q1を駆動する駆動回路206から構成されている。
【0012】
励磁コイル101及び共振コンデンサCresからなるLC並列共振回路と、スイッチング素子Q1及びそれに内蔵されているダイオードD1が電圧共振インバータを構成している。この電圧共振型インバータの動作原理について図12及び図13を用いて説明する。
【0013】
ここで、図12はスイッチング素子Q1のオンオフ状態の推移と励磁コイル101、共振コンデンサCres、スイッチング素子Q1、ダイオードD1の各々に流れる電流との関係を模式的に表した図であり、図13はスイッチング素子Q1の駆動電圧VG及びコレクタ・エミッタ間電圧Vce、並びに励磁コイル101に流れる高周波電流ILの波形を示した図である。図12において、一点鎖線で記載されている部分は、インピーダンスが相対的に高いため高周波電流ILが流れていない部分である。
【0014】
この電圧共振型インバータの特徴は図12に示すようにスイッチング素子Q1がオンオフする場合にスイッチング素子Q1の両端電圧(コレクタ・エミッタ間電圧)Vceがゼロボルトになっていることであり、Vceがゼロボルト時にターンオンするため、スイッチング素子Q1での損失を低減することができる。
【0015】
図12、図13に示すようにスイッチング素子Q1のオンオフによる電圧共振状態は4つに分けられる。
(I)駆動電圧VGをハイレベルにしてスイッチング素子Q1をオンにしたことにより、直流化された商用電圧が励磁コイル101とスイッチング素子Q1間にかかる。これにより励磁コイル101には高周波電流ILが流れ始める。所望の電力が得られるようにオン時間Tonが設定されている。オン時間Tonの間、高周波電流ILは直線状(リニア)に増加する。
【0016】
(II)所望のオン時間Tonが経過し、駆動電圧VGをロウレベルにしてスイッチング素子Q1をオフすると、励磁コイル101に逆起電圧が発生し、高周波電流ILが共振コンデンサCresを充電する。励磁コイル101に蓄えられていたエネルギーが0になるまで共振コンデンサCresを充電したとき、スイッチング素子Q1の両端電圧Vceがピークとなる。
【0017】
(III)スイッチング素子Q1はオフのままのため、共振コンデンサCresに充電されたエネルギーは、励磁コイル101に対して放電し始める。共振コンデンサCresのエネルギーがなくなるまで、即ちスイッチング素子間電圧が0になるまで放電する。この(II)から(III)まで動作は励磁コイル101と共振コンデンサCres間の共振動作のため、オフ時間Toffは励磁コイル101のインダクタンスと共振コンデンサCresのキャパシタンスにより決まる。この間、高周波電流ILは正弦波状に減少する。
【0018】
(IV)共振コンデンサCresの放電が終わると、励磁コイル101に発生した逆起電圧によりダイオードD1がオンとなるため、ダイオードD1から励磁コイル101へ電流ILが流れる。この間、高周波電流ILは直線状に増加する。
【0019】
以上のように電圧共振型インバータではVce=0のタイミングでスイッチング素子Q1をオンする(ゼロボルトスイッチング)ことが特徴である。また、電圧共振型インバータではオフ時間Toffを一定とし、オン時間幅を制御することにより高調波電流を制御して所望の温度・電力になるように周波数制御するのが一般的である。
【0020】
ところが、励磁コイル101のインダクタンスは励磁コイル101と加熱ローラ102の結合により決定されるため、励磁コイル101及び加熱ローラ102の温度条件により変動する。このため、励磁コイル101及び加熱ローラ102の誘導加熱による昇温によってインダクタンス値が変動すると、励磁コイル101と共振コンデンサCresからなるLC並列共振回路の共振周波数が変動する。図13の「ターンオンタイミング」は、共振周波数の変動により、ターンオンタイミング(オフ時間Toffの終端)が変動する範囲を示す。
【0021】
このため、例えば図14に示すようにオフ時間(ターンオンタイミング)の設定が遅れてしまうと、スイッチング素子間電圧Vceがゼロボルトでないときにスイッチング素子Q1がオンするため、共振コンデンサCresに充電されたエネルギーはスイッチング素子Q1を経由してスパイク電流としてGNDに流れ込む。即ち加熱ローラ102へのエネルギーにならず、スイッチング素子Q1での損失や温度上昇、破損の原因となる。
【0022】
このような問題に対し、電圧共振型インバータの入力電圧の検出値と、加熱ローラの温度の検出値に応じてオン幅/オフ幅を演算/設定することにより、スイッチング素子のオン時の過大電流を防止する方法が提案されている(特許文献1)。
【0023】
しかしながら、誘導加熱による加熱時間の短縮や加熱効率の向上のため加熱ローラの昇温速度が速くなるにつれ、インダクタンス変動も速くなっているため、オン幅/オフ幅ともに演算処理/パルス幅設定処理を行うと、インダクタンス変動に処理が追随できずに遅れを生じ、スイッチング素子での損失増加・破損の可能性が生じてしまう。また、演算処理を高速化すると制御回路が高価になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、電圧共振型インバータによる誘導加熱を安定動作させ、特に動作中の共振周波数変動によるスイッチング素子の損失/破損を防ぎつつ、高速な電力制御を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の誘導加熱装置は、被加熱体に磁束を照射する励磁コイル及び該励磁コイルに並列接続された共振コンデンサからなる共振回路と、直流電圧をオンオフして前記励磁コイルに高周波電流を流すスイッチング手段とを備えた電圧共振型インバータを有する誘導加熱装置であって、前記被加熱体の温度を検出する温度検出手段と、前記励磁コイルの入力電力量を検出する電力量検出手段と、前記温度検出手段の温度検出値又は前記電力量検出手段の電力量検出値が所望の値になるように前記スイッチング手段のオン時間を設定する手段と、前記スイッチング手段の両端の電圧がゼロになるタイミングを示す信号を生成するタイミング生成手段と、該タイミング生成手段で生成された信号に基づいて前記スイッチング手段のターンオンタイミングを設定する手段とを有することを特徴とする誘導加熱装置である。
また、本発明の誘導加熱定着装置は、本発明の誘導加熱装置と、該誘導加熱装置の被加熱体である加熱ローラと、該加熱ローラに対向する定着/加圧ローラとを有することを特徴とする誘導加熱定着装置である。
また、本発明の画像形成装置は、本発明の誘導加熱定着装置を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0026】
[作用]
本発明によれば、被加熱体の温度又は励磁コイルの入力電力量が所望の値になるようにスイッチング手段のオン時間を設定し、スイッチング手段の両端の電圧がゼロになるタイミングを示す信号に基づいてスイッチング手段のターンオンタイミングを設定する。従って、被加熱体の昇温による励磁コイルと共振コンデンサのインピーダンス変動による共振周波数変動に影響されずにスイッチング手段のゼロボルトスイッチング制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、電圧共振型インバータによる誘導加熱を安定動作させ、動作中の共振周波数変動によるスイッチング手段の損失/破損を防ぐとともに、高速な電力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態の誘導加熱装置を示す図である。
【図2】図1における共振電圧検出回路を示す図である。
【図3】図1におけるスイッチング素子の駆動電圧及びコレクタ・エミッタ間電圧、並びに励磁コイルに流れる電流及び共振電圧検出回路の出力を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の誘導加熱装置を示す図である。
【図5】図4における共振電流検出回路を示す図である。
【図6】図4におけるスイッチング素子の駆動電圧及びコレクタ・エミッタ間電圧、並びに励磁コイルに流れる電流及び共振電流検出回路の出力を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の誘導加熱装置を示す図である。
【図8】図7における駆動電流検出回路を示す図である。
【図9】図7におけるスイッチング素子の駆動電圧及びコレクタ・エミッタ間電圧、並びに励磁コイルに流れる電流及び駆動電流検出回路の出力を示す図である。
【図10】従来の誘導加熱定着装置を示す図である。
【図11】図10における誘導加熱装置を示す図である。
【図12】図11におけるスイッチング素子のオンオフ状態の推移と各部に流れる電流との関係を模式的に表した図である。
【図13】図11におけるスイッチング素子の駆動電圧及びコレクタ・エミッタ間電圧、並びに励磁コイルに流れる電流の波形を示す図である。
【図14】図13におけるターンオンタイミングが遅れた場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態の誘導加熱装置の構成を示す図である。この図において、従来装置(図11)と同一又は対応する部分には図11と同じ参照符号を付した。また、この誘導加熱駆動は従来装置と同様、画像形成装置の誘導加熱定着装置に適用される。
【0030】
本実施形態の誘導加熱装置は従来の誘導加熱装置に共振電圧検出回路601を追加したものであり、その他の回路ブロックは図11と同様の構成を有する。図2に共振電圧検出回路601の回路構成を示す。
【0031】
共振電圧検出回路601は、直列接続された抵抗R71及びR72と、コンパレータCMP71から構成されている。抵抗R71は励磁コイル101と共振コンデンサCresとスイッチング素子Q1の接点に接続されており、抵抗R72は接地されている。コンパレータCMP71の一方の入力(反転入力)は抵抗R71、R72の接続点に接続されており、コンパレータCMP71の他方の入力(非反転入力)は接地されている。コンパレータCMP71の出力は制御回路204内の制御部207に入力されている。
【0032】
つまり、この共振電圧検出回路601では、励磁コイル101と共振コンデンサCresからなるLC並列共振回路の共振電圧を抵抗R71とR72で分圧してコンパレータCMP71に入力している。
【0033】
図3は、スイッチング素子Q1の駆動電圧及びコレクタ・エミッタ間電圧、並びに励磁コイル101に流れる高周波電流及び共振電圧検出回路601内のコンパレータCMP71の出力電圧を示す図である。
【0034】
前述したとおり、加熱ローラ102と励磁コイル101の温度上昇により励磁コイル101と共振コンデンサCresからなるLC並列共振回路の共振周波数が変動する。そこで、スイッチング素子Q1の両端の電圧Vceに着目し、Vce=0になるタイミングでコンパレータCMP71がターンオンタイミング制御信号を生成し、制御部207へ出力できるようにするため、共振電圧の分圧値とGND(接地)レベルとを比較し、一致した時にコンパレータCMP71がターンオンタイミング制御信号を生成するように構成した。
【0035】
制御部207による駆動回路206のパルス幅については、制御部207を例えばマイコンやFPGA(Field Programmable Gate Array)などのデジタル制御回路を用いることで、オン幅(オン時間Ton)は入力電力検出部205の演算結果や温度センサ105による演算結果により制御し、オフ幅(オフ時間Toff)はターンオンタイミング制御信号により決定する。
【0036】
これにより、励磁コイル101と共振コンデンサCresからなるLC並列共振回路の共振周波数変動に対して即時に応答し、図3に示すように、スイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになっている状態で駆動電圧VGがハイレベルに変化してスイッチング素子をターンオンするため、スイッチング素子Q1での損失増加や破損を防ぎつつ、所望の電力や温度で電圧共振型インバータを制御することが出来る。
【0037】
一例として制御部207にマイコンを利用する場合、駆動回路206への出力はPWM(Pulse Width Modulation)制御ユニットを、オン幅制御はタイマーユニットを利用し、比較レジスタの値は入力電力や温度の測定値により更新すればよく、オフ幅制御はターンオンタイミング信号による割りこみ処理を利用することにより実装が可能である。また、ターンオフ後は共振動作での割りこみ待ち時間が発生する。その割りこみ待ち時間で入力電力や温度測定及びタイマーユニットのレジスタ更新を実施することで1パルス毎に変更が出来、高速な応答をすることが出来る。
【0038】
このように、本実施形態によれば、スイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになるタイミングを検出して生成したターンオンタイミング制御信号に基づいて、駆動電圧VGをハイレベルに変化させることにより、スイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになっている状態でスイッチング素子Q1をターンオンするので、励磁コイル101と共振コンデンサCresからなるLC並列共振回路の共振周波数変動に対して即時に応答し、スイッチング素子Q1での損失増加や破損を防ぎつつ、所望の電力や温度で電圧共振型インバータを制御することが出来る。
【0039】
[第2の実施形態]
図4は本発明の第2の実施形態の誘導加熱装置の構成を示す図である。この図において、第1の実施形態(図1)と同一又は対応する部分には図1と同じ参照符号を付した。
【0040】
本実施形態の誘導加熱装置は従来の誘導加熱装置に共振電流検出回路701Aを追加したものであり、その他の回路ブロックは図11と同様の構成を有する。図5に共振電流検出回路701Aの回路構成を示す。また、図6にスイッチング素子Q1の駆動電圧及びコレクタ・エミッタ間電圧、並びに励磁コイル101に流れる電流及び共振電流検出回路701Aの出力電圧を示す。
【0041】
共振電流検出回路701Aは、カレントトランスCT71と、抵抗R71Aと、コンデンサC71Aと、抵抗R72Aと、コンパレータCMP71Aから構成されている。カレントトランスCT71は、LC並列共振回路に挿入された一次側コイルと、抵抗R71Aと並列接続された二次側コイルからなる。抵抗R71AにはコンデンサC71Aの一端が接続され、コンデンサC71Aの他端には抵抗R72Aの一端が接続され、抵抗R72Aの他端は接地されている。また、コンパレータCMP71Aの一方の入力(非反転入力)はコンデンサC71Aと抵抗R72Aの接続点に接続され、コンパレータCMP71Aの他方の入力(反転入力)は接地されている。コンパレータCMP71Aの出力は制御回路204内の制御部207に入力される。
【0042】
この共振電流検出回路701Aでは、共振電流を電流−電圧変換により測定する。即ち、コンデンサC71Aと抵抗R72Aで構成される微分回路により図6に示す電圧V(R72A)を得る。この電圧をコンパレータCMP71Aに入力する。コンパレータCMP71Aは、電圧V(R72A)が徐々に増加する状態から一定値で変化しない状態に到達したタイミング、換言すれば励磁コイル101に流れる高周波電流ILが正弦波状の減少から直線状の増加に変化したタイミングで出力信号(ターンオンタイミング制御信号)を生成する。図6に示すように、このタイミングはスイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになるタイミングと一致する。つまり、実質的には、コンパレータCMP71Aは、スイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになるタイミングを検出していることになる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、励磁コイル101に流れる高周波電流ILが正弦波状に減少する状態から直線状に増加する状態に変化するタイミングを検出することで、間接的或いは等価的にスイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになるタイミングを検出してターンオンタイミング制御信号を生成し、その信号に基づいて、駆動電圧VGをハイレベルに変化させることにより、スイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになっている状態でスイッチング素子Q1をターンオンするので、励磁コイル101と共振コンデンサCresからなるLC並列共振回路の共振周波数変動に対して即時に応答し、スイッチング素子Q1での損失増加や破損を防ぎつつ、所望の電力や温度で電圧共振型インバータを制御することが出来る。
【0044】
[第3の実施形態]
図7は本発明の第3の実施形態の誘導加熱装置の構成を示す図である。この図において、第1の実施形態(図1)と同一又は対応する部分には図1と同じ参照符号を付した。
【0045】
本実施形態の誘導加熱装置は従来の誘導加熱装置に駆動電流検出回路701Bを追加したものであり、その他の回路ブロックは図11と同様の構成を有する。図8に駆動電流検出回路701Bの回路構成を示す。また、図9にスイッチング素子Q1の駆動電圧及びコレクタ・エミッタ間電圧、並びに励磁コイル101に流れる電流及び駆動電流検出回路701Bの出力電圧を示す。
【0046】
駆動電流検出回路701Bは、抵抗R71Bと、コンパレータCMP71Bから構成されている。抵抗R71Bはスイッチング素子Q1とGNDとの間に接続されている。コンパレータCMP71Bの一方の入力(反転入力)はスイッチング素子Q1と抵抗R71Bの接続点に接続され、コンパレータCMP71Bの他方の入力(非反転入力)は接地されている。コンパレータCMP71Bの出力は制御回路204内の制御部207に入力される。
【0047】
この駆動電流検出回路701Bでは、抵抗R71Bによる電流−電圧変換により、スイッチング素子Q1に流れる電流を測定することで、図9に示す電圧V(R71B)を得る。この電圧をコンパレータCMP71Bに入力する。コンパレータCMP71Bは、電圧V(R71B)がゼロレベルから急峻に減少する(立ち下がる)タイミングで出力信号(ターンオンタイミング制御信号)を生成する。図9に示すように、このタイミングはスイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになるタイミングと一致する。つまり、実質的には、コンパレータCMP71Bは、スイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになるタイミングを検出していることになる。
【0048】
このように、本実施形態によれば、スイッチング素子Q1に流れる電流がゼロレベルから急峻に減少する(立ち下がる)タイミングを検出することで、間接的或いは等価的にスイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになるタイミングを検出してターンオンタイミング制御信号を生成し、その信号に基づいて、駆動電圧VGをハイレベルに変化させることにより、スイッチング素子Q1の両端の電圧Vceがゼロボルトになっている状態でスイッチング素子Q1をターンオンするので、励磁コイル101と共振コンデンサCresからなるLC並列共振回路の共振周波数変動に対して即時に応答し、スイッチング素子Q1での損失増加や破損を防ぎつつ、所望の電力や温度で電圧共振型インバータを制御することが出来る。
【符号の説明】
【0049】
101…励磁コイル、102…加熱ローラ、103…定着/加圧ローラ、105…温度センサ、201…商用電源、203…LCフィルタ回路、204…制御回路、205…入力電力検出部、206…駆動回路、207…制御部、601…共振電圧検出回路、701A…共振電流検出回路、701B…駆動電流検出回路、DB1…ダイオードブリッジ、Q1…スイッチング素子、Cres…共振コンデンサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特許第3902937号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体に磁束を照射する励磁コイル及び該励磁コイルに並列接続された共振コンデンサからなる共振回路と、直流電圧をオンオフして前記励磁コイルに高周波電流を流すスイッチング手段とを備えた電圧共振型インバータを有する誘導加熱装置であって、
前記被加熱体の温度を検出する温度検出手段と、
前記励磁コイルの入力電力量を検出する電力量検出手段と、
前記温度検出手段の温度検出値又は前記電力量検出手段の電力量検出値が所望の値になるように前記スイッチング手段のオン時間を設定する手段と、
前記スイッチング手段の両端の電圧がゼロになるタイミングを示す信号を生成するタイミング生成手段と、
該タイミング生成手段で生成された信号に基づいて前記スイッチング手段のターンオンタイミングを設定する手段と
を有することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載された誘導加熱装置において、
前記タイミング生成手段は、前記スイッチング手段の両端の電圧を検出する電圧検出手段と、該電圧検出手段の検出電圧がゼロになったタイミングを検出する手段とを有することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載された誘導加熱装置において、
前記タイミング生成手段は、前記励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、該電流検出手段の検出電流が正弦波から直線状に推移したタイミングを検出する手段とを有することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項1に記載された誘導加熱装置において、
前記タイミング生成手段は、前記スイッチング手段に流れる電流を検出する電流検出手段と、該電流検出手段の検出電流が急峻に変化したタイミングを検出する手段とを有することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された誘導加熱装置と、該誘導加熱装置の被加熱体である加熱ローラと、該加熱ローラに対向する定着/加圧ローラとを有することを特徴とする誘導加熱定着装置。
【請求項6】
請求項5に記載された誘導加熱定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−63421(P2012−63421A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205653(P2010−205653)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】