説明

誘導加熱調理器

【課題】複数の加熱口を備えた誘導加熱調理器であって、2個の加熱口を同時駆動させた場合の干渉音を抑制することのできる誘導加熱調理器を得る。
【解決手段】中央加熱コイル21及び中央加熱コイル21に直列に接続された共振コンデンサ24、26を備えた中央共振回路28と、右加熱コイル31及び右加熱コイル31に直列に接続された共振コンデンサ33を備えた右共振回路34と、右共振回路34の駆動周波数に応じて中央共振回路28の容量を切り替える容量切替手段(リレー25、27、制御回路11)と、中央共振回路28の駆動周波数と右共振回路34の駆動周波数との差分が、予め定めた低周波領域もしくは高周波領域のいずれかの値となるように中央共振回路28の駆動周波数を制御する制御回路11とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加熱口を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の加熱口を備えた誘導加熱調理器が普及している。このような誘導加熱調理器は、各加熱口はそれぞれ加熱コイルを有し、この加熱コイルを所定の発振周波数で駆動させることにより設定された加熱出力を得ている。しかし、複数の加熱口を同時に使用したときには、各加熱コイルの発振周波数の差分に相当する周波数の干渉音が発生してしまう。
【0003】
この干渉音を低減するため、「少なくとも2つの誘導加熱ユニットのインバータは少なくとも最大加熱出力において50kHz以上の周波数の電力を加熱コイルに供給し、負荷は磁性材質または低電導率材質であることを特徴とした構成」のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−234278号公報(第2頁、第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の誘導加熱調理器では、50kHz以上の周波数の電力を加熱コイルに供給するので、インバータのスイッチング損失が増大し、また、発熱も増大することから回路部品を冷却する冷却手段も増大していた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、複数の加熱口を備えた誘導加熱調理器において、2個の加熱口を同時駆動させた場合の干渉音を抑制することのできる誘導加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る誘導加熱調理器は、第1加熱コイル及び前記第1加熱コイルに直列に接続された共振コンデンサを備えた第1共振回路と、第2加熱コイル及び前記第2加熱コイルに直列に接続された共振コンデンサを備えた第2共振回路と、前記第2共振回路の駆動周波数に応じて前記第1共振回路の容量を切り替える容量切替手段と、直流電流を高周波電流に変換して前記第1共振回路に供給する第1高周波電源部と、直流電流を高周波電流に変換して前記第2共振回路に供給する第2高周波電源部と、前記第1共振回路の駆動周波数と前記第2共振回路の駆動周波数との差分が、予め定めた低周波領域もしくは高周波領域のいずれかの値となるように前記第1共振回路の駆動周波数を制御する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る誘導加熱調理器によれば、2つの共振回路の駆動周波数の差分が、予め定めた低周波領域もしくは高周波領域のいずれかの値となるように第1共振回路の駆動周波数を制御する。このため、耳障りな干渉音を低減することができ、かつ、駆動周波数が高くなりすぎることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の上面図である。
【図2】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の回路構成図である。
【図3】実施の形態1に係る共振コンデンサ回路の容量とリレーのON/OFF状態を示す図である。
【図4】干渉音の周波数と使用者の聴感の関係を示す図である。
【図5】加熱コイルの入力電力と電流値の関係に基づく鍋負荷の判別特性図である。
【図6】実施の形態1に係る中央駆動回路の駆動周波数と電力の関係を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る中央駆動回路の駆動周波数の制御動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の回路構成図である。
【図9】実施の形態3に係る中央駆動回路の駆動周波数と電力の関係を示す図である。
【図10】実施の形態3に係る中央加熱口の目標電力と共振コンデンサ回路の合成容量の関係を示す図である。
【図11】実施の形態3に係る中央駆動回路の駆動周波数の制御動作を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態4に係る誘導加熱調理器の上面図である。
【図13】実施の形態4に係る誘導加熱調理器の加熱コイルの構成図である。
【図14】実施の形態4に係る誘導加熱調理器の回路構成図である。
【図15】実施の形態4に係る誘導加熱調理器の小径鍋載置状態を示す図である。
【図16】実施の形態4に係る誘導加熱調理器の大径鍋載置状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器100の上面図である。誘導加熱調理器100は、鍋を載置する耐熱性のトッププレート1を有し、中央加熱口2、右加熱口3、左加熱口4の合計3口の加熱口を有している。各加熱口の下部には、それぞれ、中央加熱コイル21、右加熱コイル31、左加熱コイル41が設置されており、各加熱コイルから発生する高周波磁界により各加熱口に載置された鍋に渦電流を発生させて、鍋を誘導加熱する。
【0011】
また、誘導加熱調理器100は、操作表示部5を備える。操作表示部5は、電源スイッチ、火力の調整や加熱口の選択等を行う入力スイッチ、及び液晶パネル等で構成されて加熱状態を表示する表示デバイスを備える。使用者が電源スイッチをオンして入力スイッチを操作すると、表示デバイスには加熱状態が表示される。
【0012】
図2は、誘導加熱調理器100の回路構成図であり、中央加熱口2と右加熱口3の回路を示している。なお、左加熱口4の回路については図示していないが、右加熱口3と同様の構成である。
図2において、誘導加熱調理器100は、商用電源12、整流回路13、14、中央加熱口2に対応する中央駆動回路20、右加熱口3に対応する右駆動回路30、制御回路11、操作表示部5を有する。
【0013】
(制御部)
制御回路11は、操作表示部5への使用者からの入力に基づいて、誘導加熱調理器100の3つの加熱口の加熱制御等を行う制御部である。制御回路11の制御動作については後述する。
【0014】
(整流回路)
整流回路13、14は商用電源12に接続されており、商用電源12から入力された交流電力を全波整流して直流電力に変換し、中央駆動回路20、右駆動回路30にそれぞれ供給する。整流回路13は、ダイオードブリッジ131、チョークコイル132、及び平滑コンデンサ133で構成される。また、整流回路14も同様に、ダイオードブリッジ141、チョークコイル142、及び平滑コンデンサ143で構成される。
【0015】
(中央駆動回路20)
中央駆動回路20は、第1加熱コイルである中央加熱コイル21及び容量切替の可能な共振コンデンサ回路23を備えた中央共振回路28と、インバータ回路22とを備える。本発明の第1共振回路は、本実施の形態1では中央共振回路28に相当する。
インバータ回路22は、IGBTなどのスイッチング素子で構成され、このスイッチング素子のスイッチング動作により、整流回路13から出力された直流電流を数十kHz程度の高周波電流に変換して、中央加熱コイル21と共振コンデンサ回路23に供給する。インバータ回路22は、駆動する周波数を変更することにより出力を制御する一般的な周波数制御型のインバータであり、制御回路11は、操作表示部5に設定された火力となるようインバータ回路22の通電制御を行う。
【0016】
(第1共振回路、容量切替手段)
共振コンデンサ回路23は、共振コンデンサ24と共振コンデンサ26とが並列に設けられている。そして、共振コンデンサ24と共振コンデンサ26には、スイッチング手段としてのリレー25、リレー27がそれぞれ直列に接続されている。すなわち、共振コンデンサ24とリレー25の直列接続回路と、共振コンデンサ26とリレー27の直列接続回路が、並列に接続されて共振コンデンサ回路23を構成している。リレー25とリレー27のON/OFF状態は、本発明の容量切替制御部に相当する制御回路11により制御される。
【0017】
図3は、共振コンデンサ回路23の合成容量と、リレー25、27のON/OFF状態の関係を示す図である。なお、本発明において「第1共振回路の容量を切り替える」とは、共振コンデンサ回路23の合成容量を切り替えることをいうものとする。
【0018】
リレー25、27が共にONの場合には、共振コンデンサ回路23は合成容量Aとなり、共振コンデンサ24と共振コンデンサ26が中央加熱コイル21に並列に接続された状態となる。
リレー25がONでリレー27がOFFの場合には、共振コンデンサ回路23は合成容量Bとなり、共振コンデンサ24が単独で中央加熱コイル21に接続された状態となる。
リレー25がOFFでリレー27がONの場合には、共振コンデンサ回路23は合成容量Cとなり、共振コンデンサ26が単独で中央加熱コイル21に接続された状態となる。
【0019】
このように、制御回路11によるリレー25、27のON/OFF制御により、共振コンデンサ回路23は、合成容量A、B、Cの3種類の合成容量値をとることができる。ここで、本発明の容量切替手段は、本実施の形態1では制御回路11とリレー25、27に相当する。
【0020】
(右駆動回路30)
右駆動回路30は、第2加熱コイルである右加熱コイル31と共振コンデンサ33を備えた右共振回路34と、インバータ回路32とを備える。インバータ回路32は、前述のインバータ回路22と同様の構成の周波数制御型のインバータであり、制御回路11により通電制御される。本発明の第2共振回路は、本実施の形態1では右共振回路34に相当する。
【0021】
(負荷鍋判定手段)
加熱対象として各加熱口に載置されうる鍋としては、誘導加熱調理器100で加熱可能な磁性鍋と高抵抗な非磁性鍋(以下、単に非磁性鍋と称する)、及び、抵抗率が小さいことから誘導加熱調理器100では加熱できないアルミ・銅を材質とする鍋などがある。また、鍋を載置せず無負荷の状態で操作表示部5により加熱が指示されてしまうこともあり得る。無負荷の状態やアルミ・銅等の鍋が載置された状態で、磁性鍋や非磁性鍋と同様の方法で誘導加熱を行うと、過剰な電流が加熱コイル等に流れ、過温度上昇や破損等を引き起こすおそれがある。このため、使用者が操作表示部5の操作を行っても直ちに誘導加熱動作を開始せず、各加熱口に載置された鍋の鍋種の判定を行う。
【0022】
中央加熱口2に鍋を載置した場合を例に、鍋種の判定動作を説明する。中央加熱口2に鍋が載置されると、本発明の負荷鍋判定手段としての制御回路11は、インバータ回路22を制御して中央共振回路28に電圧を印加する。電圧が印加された中央共振回路28には共振電流が流れ、この共振電流を検知することにより鍋種を判断する。中央加熱コイル21を流れる電流の電流値は、例えば整流回路13と中央駆動回路20にそれぞれ設けられたカレントトランスなどの電流検出手段を用いた公知の方法によって検知する。
【0023】
図5は、加熱コイルへの入力電力と加熱コイルの電流値の関係に基づく鍋負荷の判別特性図である。加熱口に載置された鍋種により、インバータから見た出力側のインピーダンスが異なるため、入力電力と加熱コイル電流をパラメータとすると、磁性鍋、非磁性鍋、アルミ・銅鍋、無負荷、の4種類を判別することができる。
【0024】
したがって、制御回路11は、使用者により加熱が指示されると、上記のようにして検知した入力電力値と加熱コイルの電流に基づいて鍋種の判定を行う。そして、無負荷、あるいはアルミ・銅鍋を検知した場合には、操作表示部5や図示しないブザー等により使用者に報知するとともに、インバータ回路22への通電を行わない。また、磁性鍋もしくは非磁性鍋を検知した場合は、操作表示部5への火力設定に基づき、インバータ回路22の通電制御を行う。
【0025】
以上のように構成された誘導加熱調理器100の基本的な動作を説明する。ここでは、右加熱口3で加熱を行う場合を例に説明する。トッププレート1の右加熱口3に鍋が載置されて操作表示部5に火力が設定されると、制御回路11は、上述の通り鍋種の判定を行う。そして、加熱可能な鍋であれば、操作表示部5に設定された火力に従ってインバータ回路32への通電制御を行い、右加熱コイル31及び共振コンデンサ33に電圧を印加する。インバータ回路32からの電圧印加により、直列共振回路を構成する右加熱コイル31と共振コンデンサ33には高周波の共振電流が流れる。この電流により右加熱コイル31に高周波磁界が発生し、この高周波磁界により右加熱口3に載置された鍋の底部に渦電流を発生させ、鍋が誘導加熱される。
【0026】
次に、右加熱口3の動作中に、中央加熱口2を動作させる場合の動作について説明する。トッププレート1の中央加熱口2に鍋が載置されて操作表示部5に火力が設定されると、制御回路11は中央駆動回路20への通電を開始する。
【0027】
このとき、中央加熱口2と右加熱口3の駆動周波数の差分に相当する周波数の干渉音が発生する。
図4は、干渉音の周波数と使用者の聴感の関係を示す図である。発生する干渉音が18kHz以上の場合、使用者の可聴域よりも高い周波数であるため使用者にはほとんど聞こえない。また、駆動周波数の差分に相当する周波数が0〜3kHzである場合は、干渉音は使用者の可聴域であるため多少は聞こえるものの、通常の話し声程度の周波数帯域であることから耳障りでない聴感となる。
一方、4kHz以上18kHz未満の周波数帯の干渉音は、一般的な高い音(キーン音)であり、使用者に不快感を与え、耳障りとなる。なお、図4に示す聴感の区分けは大まかなものであり、数値を限定するものではない。
【0028】
このように、2つの加熱口を同時に動作させる場合、各駆動回路の駆動周波数の差分により耳障りな干渉音が発生しうる。このため、誘導加熱調理器100は、干渉音の周波数範囲が3kHz以下、もしくは18kHz以上となるように制御する。
【0029】
図6は、中央駆動回路20の駆動周波数と電力の関係を示す図である。図6において、インバータ回路22は周波数制御型のインバータであって駆動周波数を上昇させるにつれて投入電力が減少するものであり、共振コンデンサ回路23の合成容量に応じてA、B、Cに示す3種類の電力カーブを持つ。図6において、電力カーブA、B、Cは、共振コンデンサ回路23が合成容量A、B、Cのときの電力カーブをそれぞれ図示している。また、中央駆動回路20の投入電力の例として、P1(1500W)とP2(500W)を図示している。
【0030】
ここで、図6に示すように、例えば右駆動回路30がfR(24kHz)の駆動周波数で駆動しているものとする。この場合、中央駆動回路20の駆動周波数の範囲を、右駆動回路30との周波数の差分が3kHz以内となる範囲flo、もしくは、18kHz以上となる範囲fhiとする。図6の例では、範囲floは21kHz〜27kHz、範囲fhiは42kHz〜上限値(例えば、70kHz)となる。以下に、中央駆動回路20の駆動周波数の制御動作を具体的に説明する。
【0031】
図7は、中央駆動回路20の駆動周波数の制御動作を示すフローチャートである。中央駆動回路20の駆動周波数の制御は、図7に示すフローを例えば1秒ごとに連続的に実行することによって行う。なお、図7に示す制御動作を行うのは、右駆動回路30が駆動中に中央駆動回路20を同時に駆動させる場合である。したがって、図7のフローチャートの初期状態においては、右駆動回路30が駆動周波数fR(例えば24kHz)で駆動しているものとする。
【0032】
(S101)
制御回路11は、中央加熱口2の目標電力PCrefと、右駆動回路30の駆動周波数fRを読み込む。中央加熱口2の目標電力PCrefは、操作表示部5への設定から読み込む。
(S102)
続けて、前回の読み込み値(例えば1秒前に読み込んだ値)と比較して、中央加熱口2の目標電力PCrefと右駆動回路30の駆動周波数fRに変化があるか否か判断し、変化がある場合はステップS103へ進み、変化がない場合はそのまま処理を終了する。
【0033】
(S103)
制御回路11は、共振コンデンサ回路23の合成容量が合成容量Aとなるようにリレー25とリレー27をONさせる。そして、中央加熱口2の駆動周波数fCを、範囲flo及び範囲fhiの中で下限(例えば20kHz)から上限(例えば70kHz)までスウィープさせる。
(S104)
続けて、中央加熱口2の電力PCが中央加熱口2の目標電力PCrefとなる周波数があるか否かを判断し、あればステップS109へ進み、ない場合はステップS105へ進む。
すなわち、ステップS103とS104では、図6の電力カーブAにおいて、範囲flo及び範囲fhiの中で駆動周波数fCを徐々に遷移させて、目標電力PCrefが得られるか否か判定するのである。
【0034】
(S105)
制御回路11は、共振コンデンサ回路23の合成容量が合成容量Bとなるようにリレー25をONさせるとともにリレー27をOFFさせる。そして、中央加熱口2の駆動周波数fCを、範囲flo及び範囲fhiの中で下限(例えば20kHz)から上限(例えば70kHz)までスウィープさせる。
(S106)
続けて、ステップS104と同様にして、中央加熱口2の電力PCが中央加熱口2の目標電力PCrefとなる周波数があるか否かを判断し、あればステップS109へ進み、ない場合はステップS107へ進む。
【0035】
(S107)
制御回路11は、共振コンデンサ回路23の合成容量が合成容量Cとなるようにリレー25をOFFさせるとともにリレー27をONさせる。そして、中央加熱口2の駆動周波数fCを、範囲flo及び範囲fhiの中で上限(例えば20kHz)から下限(例えば70kHz)までスウィープさせる。
(S108)
続けて、ステップS104と同様にして、中央加熱口2の電力PCが中央加熱口2の目標電力PCrefとなる周波数を特定する。
【0036】
(S109)
制御回路11は、ステップS104、S106、S108のいずれかで特定した、中央加熱口2の電力PCが中央加熱口2の目標電力PCrefとなる駆動周波数fCで、中央駆動回路20を駆動させる。
【0037】
このように、図7で示した一連のフローにより、右駆動回路30の駆動周波数fRと中央駆動回路20の駆動周波数fCの差分の周波数は、3kHz以下もしくは18kHz以上となる。
【0038】
図7で説明した一連のフローを、図6を参照して更に説明する。
中央加熱口2の目標電力PCrefがP1(1500W)の場合、合成容量Aのとき、範囲floにおいて中央駆動周波数fCを21kHz〜27kHzまでスウィープさせると、fCが22kHzのときに中央加熱口2の電力PcがP1(1500W)となる(図6のステップS103、S104)。したがって、中央加熱口2は、周波数fC1(22kHz)で駆動される(S109)。その後は、使用者が操作表示部5を操作して設定火力を変更することにより中央加熱口2の目標電力PCrefが変更されるか、右加熱口3の駆動周波数fRが変更されるまでは、そのまま同じ駆動周波数fC1で駆動される。
【0039】
また、中央加熱口2の目標電力PCrefがP2(500W)の場合、合成容量Aのときには、範囲flo及び範囲fhiでは中央加熱口2の電力PcがP2(500W)となる周波数は存在しない(S103、S104)。
合成容量Bにした場合、中央加熱口2の駆動周波数fcを範囲flo(21kHz〜27kHz)、及び範囲fhi(42kHz〜70kHz)の範囲でスウィープさせると、fcが46kHzのときに中央加熱口2の電力PcがP2(500W)となる(S105、S106)。したがって、中央加熱口2は、周波数fC2(46kHz)で駆動される(S109)。
【0040】
なお、中央加熱口2の目標電力PCrefがP2(500W)の場合、合成容量Cのときにも電力PcがP2(500W)となる周波数が範囲fhiに存在するため、合成容量Cで駆動させることも可能である。しかし、目標電力PCrefがP2(500W)の場合、合成容量Cのときよりも合成容量Bのときのほうが駆動周波数が低いため、合成容量Bとした方がインバータ回路22のスイッチング損失を抑制することができる。本実施の形態1では、図7で示したように合成容量A、B、Cの順で駆動周波数をスウィープするようにしているので、より低い駆動周波数とすることができ、スイッチング損失を低減できる。
【0041】
なお、上記説明では、右加熱口3が駆動中に中央加熱口2を駆動させる場合を例に説明したが、左加熱口4を駆動中に中央加熱口2を駆動させる場合でも、同様の処理を行う。
【0042】
また、中央加熱口2のみを駆動させる場合には、干渉音が発生しないため、駆動周波数が最小となるように共振コンデンサ回路23は合成容量Aの状態で駆動する。このようにすることで、インバータ回路22のスイッチング損失を抑制できるほか、制御回路11の制御動作が簡易になり、立ち上がり時間を短縮できる。
【0043】
以上のように本実施の形態1に係る誘導加熱調理器100によれば、他の加熱口が駆動しているときに中央加熱口2を駆動させる場合には、共振コンデンサ回路23の容量を切り替えるとともに、他の加熱口の駆動周波数との差分の周波数が耳障りな周波数帯とならない周波数で駆動するようにした。このため、2つの加熱口を同時に駆動させる場合の耳障りな干渉音の発生を抑制することができる。
【0044】
また、比較的電力が大きい領域では駆動周波数帯が低い領域で駆動するように抑制するようにした。例えば、前述の特許文献1の誘導加熱調理器では、駆動周波数範囲が常時50kHz以上であるが、本実施の形態1に係る加熱調理器によれば、共振コンデンサ回路23の容量を切り替えることにより駆動周波数を低くすることができる。このため、インバータ回路22のスイッチング損失の増大を抑制することができる。また、回路の発熱も抑制できるので、冷却手段が増大するのを抑制することができる。
【0045】
また、共振コンデンサとリレーの直列接続回路を複数個並列に接続し、リレーのON/OFF制御を行うことにより共振コンデンサ回路23の容量を切り替えるようにした。このため、共振コンデンサn個を設けた場合、共振コンデンサ回路23の容量を(n!+1)通りに切り替えることができる。したがって、共振回路に設けた共振コンデンサの数よりも多数種類の容量に切り替えることができる。
【0046】
また、中央駆動回路20の共振コンデンサ回路23の容量を制御するのは、左加熱口4または右加熱口3を駆動中に中央加熱口2を動作させる場合であり、中央加熱口2のみを動作させるときには共振コンデンサ回路23の容量制御を行わない。すなわち、右共振回路34が停止状態の場合には共振コンデンサ回路23の容量制御を行わない。このため、制御回路11による制御を簡易に行うことができ、立ち上がり時間を短縮することができる。
【0047】
実施の形態2.
本実施の形態2では、2つの加熱口の駆動回路が1つの整流回路を共用する回路構成となる誘導加熱調理器を例に説明する。
【0048】
図8は、本実施の形態2に係る誘導加熱調理器100Aの回路構成図であり、中央加熱口2と右加熱口3の回路を示しており、前述の図2で説明した実施の形態1と同一又は相当部分には同じ符号を付している。なお、図8では左加熱口4の回路については図示していないが、前述の実施の形態1と同様の構成であるものとする。
【0049】
(整流回路)
図8において、前述の実施の形態1と異なるのは、中央駆動回路20Aと右駆動回路30Aとが、整流回路13Aを共用して接続されている点である。整流回路13Aは、商用電源12から入力された交流電力を全波整流して直流電力に変換し、整流回路13Aに対して、並列に接続された中央駆動回路20A及び右駆動回路30Aに供給する。
【0050】
(パワーモジュール)
中央加熱コイル21に高周波電流を供給するインバータ回路22Aと、右加熱コイル31に高周波電流を供給するインバータ回路32Aは、パワーモジュール50に内蔵されている。パワーモジュール50は、インバータ回路22Aとインバータ回路32Aを内蔵する高周波電源部である。パワーモジュール50は、IGBT51、52、53、54、55、56を備え、2個のIGBTの直列接続回路がアームを構成し、直流高電位線と直流低電位線に対して並列に接続されて構成されている。そして、IGBT51〜54がインバータ回路32Aを構成しており、インバータ回路32Aは2つのアームを用いたいわゆるフルブリッジ型のインバータである。また、IGBT55、56がインバータ回路22Aを構成しており、インバータ回路22Aは1つのアームと直流低電位線を用いたいわゆるハーフブリッジ型のインバータである。なお、本発明の第1高周波電源部はインバータ回路22Aに、第2高周波電源部はインバータ回路32Aにそれぞれ相当する。
【0051】
このように構成された誘導加熱調理器100Aは、前述の実施の形態1と同様の動作を行う。すなわち、操作表示部5に火力が設定されると、まず鍋種の判定を行い、判定結果と操作表示部5への火力設定に基づき、中央加熱コイル21又は右加熱コイル31を誘導加熱させる。また、右加熱口3が動作中に中央加熱口2を動作させる場合には、共振コンデンサ回路23の容量を切り替えるとともに、他の加熱口の駆動周波数との差分の周波数が耳障りな周波数帯とならない周波数で駆動する。
【0052】
以上のように本実施の形態2に係る誘導加熱調理器100Aによれば、中央駆動回路20Aと右駆動回路30Aとが整流回路13Aを共用する構成においても、前述の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、耳障りな干渉音の発生を抑制することができるとともに、インバータ回路22のスイッチング損失の増大を抑制することができる。
【0053】
また、中央駆動回路20Aと右駆動回路30Aとが整流回路13Aを共用する構成とした。また、インバータ回路22Aとインバータ回路32Aを1つにモジュール化したパワーモジュール50を備えた。このため、誘導加熱調理器100Aの回路規模を小型化することができる。
【0054】
また、本実施の形態2に係る誘導加熱調理器100Aのように複数の駆動回路が直流母線と接地線を共通にして整流回路13Aを共用する構成の場合、各加熱コイルはそれぞれ独立して周波数制御されるため、電気的にも干渉が発生する。すなわち、直流母線には各加熱口の駆動周波数成分とそれらの差分の周波数成分が重畳する。このため、差分の周波数成分が加熱コイルを介して鍋を直接振動させ、これにより干渉音が発生する。
しかし、本実施の形態2に係る誘導加熱調理器100Aによれば、共振コンデンサ回路23の容量を切り替えることにより、他の加熱口の駆動周波数との差分の周波数が耳障りな周波数帯とならない周波数で駆動させるので、電気的な干渉による干渉音を使用者の可聴範囲外とすることができる。
【0055】
なお、本実施の形態2では、中央加熱口2と右加熱口3が整流回路13Aを共用した場合を例に説明したが、中央加熱口2と左加熱口4が整流回路を共有する構成としてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0056】
実施の形態3.
前述の実施の形態1、2では、右加熱口3の右加熱コイル31の通電制御を行うインバータ回路32が、周波数制御型のものである場合を例に説明した。本実施の形態3では、右加熱口3の右加熱コイル31を、デューティ制御により通電制御するインバータ回路を例に説明する。なお、本実施の形態3における誘導加熱調理器は、図2、図8で説明した回路構成のいずれにも適用可能であるが、図2の構成を例に説明する。
【0057】
右駆動回路30のインバータ回路32は、駆動周波数を固定した状態でインバータ回路のオンデューティ比率の変更のみで電力制御を行うデューティ制御型のインバータであるものとする。例えば、磁性鍋(鉄やSUS430系の鍋)が載置された場合は右加熱口3の駆動周波数fRmを23kHzに固定し、他方、高抵抗な非磁性鍋(SUS304系の鍋)が載置された場合の駆動周波数fRnを29kHzに固定して、この状態でデューティの変更のみで電力制御する。このほかの右駆動回路30の構成及び動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0058】
次に、上記のように構成された右加熱口3が駆動している状態で、中央加熱口2を駆動させる場合の動作について説明する。
図9は、右加熱口3の駆動周波数と中央加熱口2の駆動周波数の関係を示す図である。図9(a)は右加熱口3に磁性鍋を載置した場合、図9(b)は右加熱口3に非磁性鍋を載置した場合を示している。
【0059】
図9(a)において、磁性鍋が載置された場合の右駆動回路30の駆動周波数fRmは23kHzに固定制御される。したがって、中央駆動回路20の駆動周波数の範囲は、右加熱口3との周波数の差分が3kHz以内となる範囲flo、もしくは、18kHz以上となる範囲fhiとする。この場合、範囲floは20kHz〜26kHz、範囲fhiは41kHz〜上限値(例えば、70kHz)となる。
【0060】
同様に、図9(b)において、非磁性鍋が載置された場合の右駆動回路30の駆動周波数fRnは29kHzに固定制御される。したがって、中央駆動回路20の駆動周波数の範囲は、右加熱口3との周波数の差分が3kHz以内となる範囲flo、もしくは、18kHz以上となる範囲fhiとする。この場合、範囲floは26kHz〜32kHz、範囲fhiは47kHz〜上限値(例えば、70kHz)となる。
【0061】
右加熱口3の駆動周波数は、載置された鍋が変更されない限り固定制御される。このため、中央加熱口2の周波数の範囲floと範囲fhiも、右加熱口3に載置された鍋が磁性鍋か非磁性鍋かによって固定範囲となる。
【0062】
図10は、中央加熱口2の目標電力と共振コンデンサ回路23の合成容量の関係を示す図である。上述のように中央加熱口2の周波数の範囲floと範囲fhiは右加熱口3の鍋種によって固定されるので、中央加熱口2の目標電力PCref、共振コンデンサ回路23の合成容量、及び駆動周波数の範囲を、図9に基づいてテーブル化することができる。
【0063】
図10において、右加熱口3の載置鍋が磁性鍋の場合は、中央加熱口2の目標電力PCrefが0W以上900W未満であれば合成容量Cとし、目標電力PCrefが900W以上であれば合成容量Aとする。また、右加熱口3の載置鍋が非磁性鍋の場合は、中央加熱口2の目標電力PCrefが0W以上400W未満であれば合成容量Cとし、目標電力PCrefが400W以上800W未満であれば合成容量Aとし、目標電力PCrefが800W以上であれば合成容量Bとする。
【0064】
図11は、中央駆動回路20の駆動周波数の制御動作を示すフローチャートである。中央駆動回路20の駆動周波数の制御は、図11に示すフローを例えば1秒ごとに連続的に実行することによって行う。なお、図11に示す制御動作を行うのは、右駆動回路30が駆動中に中央駆動回路20を同時に駆動させる場合である。したがって、図11のフローチャートの初期状態においては、右駆動回路30が駆動周波数fRで駆動しているものとする。
【0065】
(S111)
制御回路11は、右加熱口3に載置された鍋の材質と、中央加熱口2の目標電力PCrefを読み込む。中央加熱口2の目標電力PCrefは、操作表示部5への設定から読み込む。
(S112)
続けて、前回の読み込み値(例えば1秒前に読み込んだ値)と比較して、右加熱口3に載置された鍋の材質と中央加熱口2の目標電力PCrefに変化があるか否か判断し、変化がある場合はステップS113へ進み、変化がない場合はそのまま処理を終了する。
【0066】
(S113)
制御回路11は、右加熱口3に載置された鍋の材質と中央加熱口2の目標電力PCrefに応じ、図10で示したテーブルに従って中央加熱口2の共振コンデンサ回路23の合成容量と駆動周波数fCの範囲を選択する。
【0067】
(S114)
続けて、共振コンデンサ回路23の合成容量がステップS113で選択した合成容量となるようにリレー25とリレー27のON/OFF状態を設定した後、駆動周波数fCを、ステップS113で選択した駆動周波数の範囲内で上限から下限までスウィープさせる。そして、中央加熱口2の電力PCが中央加熱口2の目標電力PCrefとなる駆動周波数fCを特定し、その駆動周波数fCで中央駆動回路20を駆動させる。
なお、中央加熱口2の目標電力PCrefと右加熱口3に載置された鍋の材質が特定されれば、図10のテーブルにより中央駆動回路20の駆動周波数fCも特定されるが、電力の微調整のため、周波数のスウィープを行っている。
【0068】
このような一連の処理を所定周期(例えば1秒)で行い、右加熱口3に載置された鍋又は中央加熱口2の目標電力PCrefに変更があるまでは、そのまま同じ駆動周波数fCで駆動する。
【0069】
以上のように本実施の形態3に係る誘導加熱調理器によれば、前述の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、耳障りな干渉音の発生を抑制することができるとともに、インバータ回路22のスイッチング損失の増大を抑制することができる。
【0070】
また、デューティ制御する右駆動回路30に載置された鍋種に応じて、中央駆動回路20の周波数を予め定めた情報(テーブル)に基づいて行うようにしたので、中央加熱口2の中央駆動回路20の駆動処理速度を向上させることができる。このため、中央駆動回路20に立ち上がり時間を短縮することができる。
【0071】
なお、上記説明では、本発明の第1駆動回路が中央加熱口2の中央駆動回路20である場合を例に説明したが、例えば3口の誘導加熱調理器の場合には、左加熱口、右加熱口の駆動回路を本発明の第1駆動回路とすることができる。しかし、図1のような配置の3口の誘導加熱調理器の場合、左加熱口と右加熱口は物理的に距離が離れているために同時使用したときの干渉音が問題となりにくいのに対し、中央加熱口は他の加熱口との距離が近いため干渉音が問題となりやすい。したがって、図1のような配置の3口の誘導加熱調理器であれば、本発明の第1駆動回路を中央加熱口の駆動回路とすることで、左加熱口と右加熱口のどちらにも対応することができる。
【0072】
実施の形態4.
本実施の形態4では、直径の異なる2つの円形コイルが中心点を同じくして同心円状に配置されることによって一つの加熱コイルを構成した誘導加熱調理器を例に説明する。
【0073】
図12は、本実施の形態4に係る誘導加熱調理器の上面図であり、右加熱口3には加熱コイル61が配置されている。図13は、本実施の形態4に係る誘導加熱調理器の右加熱口3の加熱コイル61の構成図であり、加熱コイル61は直径の異なる2つの円形コイルが同心円状に配置されて、一つの加熱コイルを構成している。2つの円形コイルのうち、直径が小さい方は主コイル65で、直径が大きい方は補助コイル66であり、それぞれ異なるインバータ回路に接続され、独立して駆動される。なお、本実施の形態4において、本発明の第1加熱コイルは補助コイル66に、本発明の第2加熱コイルは主コイル65にそれぞれ相当する。
【0074】
図14は、本実施の形態4に係る誘導加熱調理器の右加熱口3の回路構成図であり、右駆動回路30Bに特徴を有する。なお、図14では、左加熱口4及び中央加熱口2の回路については記載していない。また、前述の図2及び図8で説明した実施の形態1及び実施の形態2と同一又は相当部分には同じ符号を付している。
図14において実施の形態2と異なるのは、主コイル65及び補助コイル66が、それぞれ、インバータ回路32A及びインバータ回路32Bにより、独立して電力制御される点である。インバータ回路32Bは、図8のインバータ回路22Aと同様の構成である。また、補助コイル66には、共振コンデンサ回路23Bが接続されている。この共振コンデンサ回路23Bは、図8の共振コンデンサ回路23と同様の構成である。
【0075】
図15は、実施の形態4を示す誘導加熱調理器の小径鍋載置時の加熱コイル61近傍の断面模式図である。図15において、天板1の下側には、主コイル65及び補助コイル66が、コイルベース67により支持されている。天板1の上面には、主コイル65と同程度の直径を有する鍋(以下、小径鍋と称する)69が載置されている。
【0076】
図16は、実施の形態4を示す誘導加熱調理器の大径鍋載置時の加熱コイル61近傍の断面模式図である。図16において、天板1の上面には、補助コイル66と同程度の直径を有する鍋(以下、大径鍋と称する)68が載置されている。
【0077】
使用者によりトッププレート1上の右加熱口3に小径鍋69が載置されると、実施の形態2と同様にインバータ回路32A及びインバータ回路32Bを負荷判別用の信号で駆動し、主コイル65及び補助コイル66上に載置された鍋種の判別を行う。図15に示す小径鍋69が載置された場合、制御回路11は、主コイル65上には加熱可能鍋が載置されている状態(図5における磁性鍋、非磁性鍋)を検知する。一方、補助コイル66上には加熱可能鍋が載置されていない状態(図5における無負荷)であることを検知する。このように、中央側に位置する主コイル65上にのみ鍋が載置されていることを検知することで、小径鍋69が載置されていると判断できる。制御回路11は、小径鍋69を検知した場合、主コイル65のみを駆動し、調理を行う。
【0078】
使用者によりトッププレート1上の右加熱口3に大径鍋68が載置されると、実施の形態2と同様にインバータ回路32A及びインバータ回路32Bを負荷判別用の信号で駆動し、主コイル65及び補助コイル66上に載置された鍋種の判別を行う。図16に示す大径鍋69が載置された場合、制御回路11は、主コイル65上には加熱可能鍋が載置されている状態(図5における磁性鍋もしくは非磁性鍋)であることを検知し、補助コイル66上にも加熱可能鍋が載置されている状態(図5における磁性鍋もしくは非磁性鍋)であることを検知する。主コイル65と補助コイル66の両方に鍋が載置されていることを検知することで、大径鍋68が載置されていると判断できる。制御回路11は大径鍋68を検知した場合、主コイル65及び補助コイル66を駆動して調理を行う。
【0079】
小径鍋69が載置された場合、主コイル65のみが駆動されるため、主コイル65と補助コイル66の間で駆動周波数の差分の干渉音が発生することは無い。しかしながら、大径鍋68が載置された場合は、主コイル65及び補助コイル66を併用した調理が行われうるので、右加熱口3単体で、コイル間の駆動周波数の差分が干渉音として発生する。以下、大径鍋68を載置した場合について、実施の形態4を示す誘導加熱調理器の動作について説明する。
【0080】
使用者により大径鍋68が載置され、操作表示部5の操作により調理が開始される。制御回路11の鍋種の判別により大径鍋68が検知されると、主コイル65及び補助コイル66が駆動される。主コイル65は載置鍋の鍋底中心部を加熱し、補助コイル66は載置鍋の鍋底ヘリ部及び鍋側面を加熱する。使用者は、操作表示部5を操作することで、調理内容に合わせ、主コイル65及び補助コイル66の火力を任意に設定する。
制御回路11は、使用者により設定された火力に応じてインバータ回路32A及びインバータ回路32Bの駆動周波数を制御する。前述の実施の形態2では、異なる加熱口を同時に動作させる場合の例を示したが、本実施の形態4のように2つのコイルで構成された加熱コイル61を駆動する場合も、実施の形態2と同様の電力制御を行う。すなわち、制御回路11は、共振コンデンサ回路23Bの容量を切り替えることにより、主コイル65と補助コイル66の駆動周波数との差分の周波数が耳障りな周波数帯とならない周波数で駆動させる。
【0081】
以上のように本実施の形態4に係る誘導加熱調理器によれば、同一加熱口で、一つの加熱コイルを構成する主コイル65の駆動回路32Aと補助コイル66の駆動回路32Bが整流回路13Aを共用する構成においても、前述の実施の形態2と同様の効果を得ることができる。すなわち、耳障りな干渉音の発生を抑制することができるとともに、インバータ回路32Aのスイッチング損失の増大を抑制することができる。
【0082】
また、主コイル駆動回路32Aと補助コイル駆動回路32Bとが整流回路13Aを共用する構成とした。また、インバータ回路32Bとインバータ回路32Aを1つにモジュール化したパワーモジュール50を備えた。このため、誘導加熱調理器の回路規模を小型化することができる。
【0083】
また、本実施の形態2に係る誘導加熱調理器のように複数のインバータ回路32A、32Bが直流母線と接地線を共通にして整流回路13Aを共用する構成の場合、主コイル65と補助コイル66はそれぞれ独立して周波数制御されるため、電気的にも干渉が発生する。すなわち、直流母線には主コイル65と補助コイル66の駆動周波数成分とそれらの差分の周波数成分が重畳する。このため、差分の周波数成分が主コイル65と補助コイル66を介して鍋を直接振動させ、これにより干渉音が発生する。
しかし、本実施の形態4に係る誘導加熱調理器によれば、共振コンデンサ回路23Bの容量を切り替えることにより、主コイル65と補助コイル66の駆動周波数の差分の周波数が耳障りな周波数帯とならない周波数で駆動させるので、電気的な干渉による干渉音を使用者の可聴範囲外とすることができる。
【0084】
また、本実施の形態4に係る誘導加熱調理器によれば、補助コイル66の直径が主コイル65の直径よりも大きく設定されているため、載置鍋の各部位を任意の火力で加熱することができる。さらに、補助コイル66側に共振コンデンサ回路23Bを設けたことにより、小径鍋69載置時は共振コンデンサ回路23Bの切り替え動作を行う必要が無いため、制御フローを簡素化することができる。
また、補助コイル66の直径よりも小さい直径の鍋が載置され、補助コイル66が無負荷状態であることを検知すると、補助コイル66の通電を行わないため、載置鍋の直径に即した効率の良い加熱をすることができる。
【0085】
なお、本実施の形態4では、インバータ回路32A、32Bを周波数制御により通電制御する形態について示したが、実施の形態3と同様に、デューティ制御により通電制御する構成としてもよく、同様の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態4では、右加熱口3についての例を示したが、左加熱口4、もしくは中央加熱口2を同様の構成としてもよく、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 トッププレート、2 中央加熱口、3 右加熱口、4 左加熱口、5 操作表示部、11 制御回路、12 商用電源、13、13A 整流回路、14 整流回路、20、20A 中央駆動回路、21 中央加熱コイル、22、22A インバータ回路、23、23B 共振コンデンサ回路、24、24B 共振コンデンサ、25、25B リレー、26、26B 共振コンデンサ、27、27B リレー、28 中央共振回路、30、30A、30B 右駆動回路、31 右加熱コイル、32、32A、32B インバータ回路、33 共振コンデンサ、34 右共振回路、41 左加熱コイル、50 パワーモジュール、61 加熱コイル、65 主コイル、66 補助コイル、67 コイルベース、68 大径鍋、 69 小径鍋、100 誘導加熱調理器、100A 誘導加熱調理器、131 ダイオードブリッジ、132 チョークコイル、133 平滑コンデンサ、141 ダイオードブリッジ、142 チョークコイル、143 平滑コンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1加熱コイル及び前記第1加熱コイルに直列に接続された共振コンデンサを備えた第1共振回路と、
第2加熱コイル及び前記第2加熱コイルに直列に接続された共振コンデンサを備えた第2共振回路と、
前記第2共振回路の駆動周波数に応じて前記第1共振回路の容量を切り替える容量切替手段と、
直流電流を高周波電流に変換して前記第1共振回路に供給する第1高周波電源部と、
直流電流を高周波電流に変換して前記第2共振回路に供給する第2高周波電源部と、
前記第1共振回路の駆動周波数と前記第2共振回路の駆動周波数との差分が、予め定めた低周波領域もしくは高周波領域のいずれかの値となるように前記第1共振回路の駆動周波数を制御する制御部とを備えた
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記第1高周波電源部及び第2高周波電源部に直流電流を供給する整流回路を備え、
前記第1高周波電源部及び第2高周波電源部は、前記整流回路を共用して前記整流回路に並列に接続されている
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記第1高周波電源部と第2高周波電源部は1つにモジュール化されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記第1共振回路は、並列に接続された複数の共振コンデンサが前記第1加熱コイルに直列に接続された構成であり、
前記容量切替手段は、
前記複数の共振コンデンサにそれぞれ直列に接続されたスイッチング手段と、
前記スイッチング手段のON/OFF状態を制御する容量切替制御部とを有する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記第2加熱コイルの上面側に配された天板の上に載置された負荷鍋の材質を判定する負荷鍋判定手段を備え、
前記第2共振回路は、前記負荷鍋の材質に応じた所定の駆動周波数でデューティ制御されるものであり、
前記容量切替手段は、前記負荷鍋判定手段の判定結果に基づいて特定される前記第2共振回路の駆動周波数に応じて前記第1共振回路の容量を切り替える
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
第1加熱コイル及び前記第1加熱コイルに直列に接続された共振コンデンサを備えた第1共振回路と、
第2加熱コイル及び前記第2加熱コイルに直列に接続された共振コンデンサを備え、所定の駆動周波数でデューティ制御される第2共振回路と、
直流電流を高周波電流に変換して前記第1共振回路に供給する第1高周波電源部と、
直流電流を高周波電流に変換して前記第2共振回路に供給する第2高周波電源部と、
前記第1共振回路の目標電力に応じて、前記第1共振回路の駆動周波数と前記第2共振回路の駆動周波数との差分が、予め定めた低周波領域もしくは高周波領域のいずれかの値となるような駆動周波数で前記第1共振回路を駆動可能とするように、前記第1共振回路の容量を切り替える容量切替手段とを備えた
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記第2共振回路が停止状態の場合には、
前記容量切替手段は前記第1共振回路の容量切替を行わない
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記第1加熱コイルと前記第2加熱コイルは、ほぼ同心円状に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記第1加熱コイルの直径は、前記第2加熱コイルの直径よりも大きい
ことを特徴とする請求項8記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
前記負荷鍋判定手段が、前記第2コイルの上面側に配された天板の上に負荷鍋が載置されていないことを検知した場合、前記第1共振回路のみを駆動する
ことを特徴とする請求項5に従属する請求項8または請求項9記載の誘導加熱調理器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−44422(P2011−44422A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115558(P2010−115558)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】