説明

調光窓材

【課題】赤外線の透過量を抑えることができ、かつ調光素子層が劣化しにくい調光窓材を提供する。
【解決手段】透明基板層10、20と、透明基板層10、20の間に設けられた調光素子層30と、赤外線反射層12(赤外線反射膜)とを有する調光窓材1であり、赤外線反射層12は、透明基板層10と調光素子層30との間で、かつ透明基板層10の表面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光窓材に関する。
【背景技術】
【0002】
調光窓材とは、光の透過量をコントロールできる窓材である。調光窓材としては、2枚の透明基板層と、該透明基板層の間に設けられた調光素子層とを有する合わせガラスが知られている。調光素子層は、2枚の透明電極層付き支持板層と、該支持板層の間に設けられた調光層とを有する素子であり、該素子に印加する電圧を変化させることによって、光の透過量をコントロールできる。
【0003】
該調光窓材は、太陽光の透過量をコントロールできるが、それは可視光線の透過量をコントロールすることが主であり、赤外線の透過量は必ずしも充分に抑えることができない場合がある。よって、たとえば調光窓材を自動車用窓として用いる場合、車内の快適性の向上、冷房負荷の低下等のために、調光窓材を透過する赤外線の透過量をより効果的に抑えることが求められる。
【0004】
赤外線の透過量を抑える調光窓材としては、下記の調光窓材が提案されている。
2枚のガラス板の間に中間膜および調光素子が挟持され、中間膜が熱線遮蔽性微粒子を含む調光窓材(特許文献1)。
該調光窓材は、熱線遮蔽性微粒子が赤外線を吸収することによって赤外線の透過量を抑えている。
【0005】
しかし、該調光窓材は、熱線遮蔽性微粒子が赤外線を吸収することによって、調光窓材が高温となる。そして、その熱によって調光素子の劣化が促進されるため、調光窓材が経時的に劣化する問題を有する。調光素子の劣化は、調光層が熱を吸収しやすい二色性色素を含む場合に顕著に現れる。
【特許文献1】特開2004−131335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、赤外線の透過量を抑えることができ、かつ調光素子層が劣化しにくい調光窓材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の調光窓材は、2枚の透明基板層と、該透明基板層の間に設けられた調光素子層と、赤外線反射層とを有することを特徴とする。
前記赤外線反射層は、前記2枚の透明基板層のうちの一方と前記調光素子層との間に設けられていることが好ましく、該透明基板層の少なくとも片側の表面に形成されているか、または前記2枚の透明基板層のうちの一方と前記調光素子層との間に設けられた赤外線反射フィルム層を含むことが好ましい。
前者の調光窓材は、一方の表面から他方の表面に向かって、赤外線反射層付き透明基板層、中間樹脂層、調光素子層、中間樹脂層、透明基板層の構成を有することが好ましく、後者の調光窓材は、一方の表面から他方の表面に向かって、透明基板層、中間樹脂層、赤外線反射フィルム層、中間樹脂層、調光素子層、中間樹脂層、透明基板層の構成を有することが好ましい。
また、前記調光窓材は、調光素子層が、透明電極層を対向させて配置された2枚の透明電極層付き支持板層と該透明電極層間に存在する液晶含有層とを有する液晶含有調光素子層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の調光窓材は、赤外線の透過量を抑えることができ、かつ調光素子層が劣化しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の調光窓材の一例を示す断面図である。調光窓材1は、透明基板層10、20と、透明基板層10、20の間に設けられた調光素子層30と、透明基板層10の片側にあらかじめ形成された赤外線反射膜からなる赤外線反射層12と、赤外線反射層12付きの透明基板層10と調光素子層30との間に設けられた中間樹脂層40と、透明基板層20と調光素子層30との間に設けられた中間樹脂層50とを有する。
【0010】
透明基板層10、20における透明とは、可視光線を透過できることを意味する。透明基板層10、20を構成する透明基板としては、ガラス基板または有機ガラスと呼ばれる樹脂基板が挙げられる。ガラス基板の材料としては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、高シリカガラス等が挙げられる。また、樹脂製基板の材料としては、ポリメチルメタアクリレート等のポリアルキルメタアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリカーボネート、ポリメチルスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等が挙げられる。
透明基板の形状としては、平面状、曲面状等が挙げられる。また、これらの基板は、通常、0.4〜10mmの範囲内の一定の厚さを有する。なお、組み合わせる2枚の透明基板層10、20の各厚さは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0011】
2枚の透明基板は、両方が前記のガラス基板または樹脂基板であってもよく、どちらか一方が樹脂基板で他方がガラス基板であってもよい。また、一方が前記厚さの透明基板である場合、他方が前記厚さよりも薄い樹脂フィルムであってもよい。
樹脂フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルローストリアセテート系樹脂等が挙げられる。樹脂フィルムの厚さは、通常、25〜500μmである。
【0012】
赤外線反射層12の赤外線反射膜は、透明基板の表面に形成される透明コーティング膜である。
赤外線反射膜としては、金属酸化物膜と金属薄膜とが交互に積層された積層膜(1)や、相互に屈折率が異なる誘電体を積層した積層膜(2)等の公知の赤外線反射膜が挙げられる。
積層膜(1)における金属酸化物としては、SnがドープされたIn(以下、ITOと記す。)、SbがドープされたSnO(以下、ATOと記す。)、InがドープされたZnO(以下、IZOと記す。)、GaがドープされたZnO(以下、GZOと記す。)、ZnO、TiO等が挙げられ、金属としてはAgが挙げられる。積層膜(1)としては、具体的には、透明基板の側からZnOとAgとを交互に積層した積層膜が挙げられる。
積層膜(2)における誘電体としては、ZnO、SiO、TiO、ZrO等の金属酸化物、TiN、Si等の金属窒化物等が挙げられる。積層膜(2)としては、具体的には、透明基板の側から、TiN、TiO、Siの順に積層した積層膜、透明基板の側からZnO、TiN、ZnO、TiN、ZnOの順に積層した積層膜等が挙げられる。
【0013】
調光素子層30を構成する調光素子は、透明電極層(図示略)付き支持板層32と、2枚の支持板層32の透明電極層の間に設けられた調光層34と、透明電極層の表面に端子(図示略)を介して接続されるバスバ36とを有する。
【0014】
支持板層32は、それぞれ透明な支持板からなる。該支持板としては、前記透明基板と同様のものが使用できる。2枚の支持板のそれぞれの厚さや、組み合わせについても前記透明基板と同様である。また、支持板の一方が前記透明基板と同等のものである場合、他方の支持板として前記透明基板よりも薄い樹脂フィルムを用いてもよい。支持板として用いられる樹脂フィルムは、前記透明基板として用いられる樹脂フィルムと同様である。
【0015】
透明電極層としては、ITO膜、ATO膜、SnO膜、IZO膜、GZO膜等が挙げられる。
【0016】
調光層34としては、液晶と重合体とを含む複合体からなる層、二色性色素と重合体とを含む複合体からなる層、二色性色素と液晶と重合体とを含む複合体からなる層等が挙げられる。これらのうち、複合体中に液晶を含む液晶含有層であることが好ましい。以下、調光層34が、二色性色素と液晶と重合体とを含む複合体からなる液晶含有層である場合について説明する。
【0017】
二色性色素とは、分子の長軸方向と短軸方向とで光吸収性に大きな差がある色素を意味する。二色性色素には、分子の長軸方向に振動する光をより大きく吸収するポジ型(以下、p型と記す。)色素と、分子の短軸方向に振動する光をより大きく吸収するネガ型(以下、n型と記す。)色素とがある。調光素子に印加される電圧の変化によって、液晶の配向状態が変化し、該液晶の配向状態の変化に応じて二色性色素の配向状態が変化する。
【0018】
液晶の誘電率異方性(以下、Δεと記す。)が正であり、二色性色素がp型の場合、調光素子に電圧を印加せず、支持板に対して液晶を水平配向させれば、二色性色素も支持板に対して水平配向し、調光素子の可視光線透過率が小さくなる。逆に、調光素子に電圧を印加し、支持板に対して液晶を垂直配向させれば、二色性色素も支持板に対して垂直配向し、調光素子の可視光線透過率が大きくなる。二色性色素がn型の場合、調光素子の可視光線透過率の変化はp型の逆となる。
【0019】
液晶のΔεが負であり、二色性色素がp型の場合、調光素子に電圧を印加せず、支持板に対して液晶を垂直配向させれば、二色性色素も支持板に対して垂直配向し、調光素子の可視光線透過率が大きくなる。逆に、調光素子に電圧を印加し、支持板に対して液晶を水平配向させれば、二色性色素も支持板に対して水平配向し、調光素子の可視光線透過率が小さくなる。二色性色素がn型の場合、調光素子の可視光線透過率の変化はp型の逆となる。
【0020】
以上のように、二色性色素がp型であるかn型であるかによって、液晶が支持板に対して垂直配向した場合と水平配向した場合との可視光線透過率の変化は異なる。以下、説明の簡略化のため、特に断らない限り、二色性色素がp型である場合を中心に説明する。
【0021】
二色性色素としては、耐光性、耐久性のある二色性色素が好ましく、アントラキノン系化合物、アゾ系化合物等が挙げられる。二色性色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。二色性色素の含有量は、液晶と重合体との合計100質量部に対して、0.1〜12質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0022】
液晶は、1種以上の液晶化合物からなる組成物であり、液晶の組成物全体としてΔεが正または負であればよい。すなわち、個々の液晶化合物は、Δεが負の化合物であってよく、Δεが正の化合物であってもよく、Δεがない化合物でもよい。
【0023】
二色性色素がp型である場合で、かつ低透過率状態で長時間使用することが多い場合または電源が切れたときに低透過率状態にすることが望まれる場合には、正のΔεを有する液晶を選択し、電圧非印加時に液晶を支持板に対して水平配向させ、低透過率状態になるようにする。
二色性色素がp型である場合で、かつ高透過率状態で長時間使用することの多い場合または電源が切れたときに高透過率状態にすることが望まれる場合には、負のΔεを有する液晶を選択し、電圧非印加時に液晶を支持板に対して垂直配向させ、高透過率状態になるようにする。
液晶のΔεの絶対値は、1以上が好ましく、2〜50がより好ましい。液晶のΔεの絶対値が1以上であれば、低電圧で調光素子を駆動できる。
【0024】
液晶化合物としては、Δεが正の液晶化合物とするためには、極性基(シアノ基、フッ素原子等。)が分子の長軸方向に結合した化合物が好ましい。一方、Δεが負の液晶化合物にするためには、極性基(シアノ基、フッ素原子等。)が分子の短軸方向に結合した化合物が好ましい。
【0025】
液晶の屈折率異方性(以下、Δnと記す。)は、0.2以下が好ましく、0.15以下がより好ましい。液晶のΔnが0.2以下であれば、液晶および二色性色素が水平配向した際に、調光素子における光散乱が少なくなる。液晶のΔnを小さくするには、メソゲン構造として飽和炭素環を有する液晶化合物を少なくとも1種含む液晶を用いる。飽和炭素環とは、炭素原子と水素原子とからなる飽和の環であり、シクロヘキサン環が好ましい。
【0026】
液晶の含有量は、液晶と重合体との合計100質量部に対して、50〜98質量部が好ましく、55〜95質量部がより好ましい。液晶の含有量が50質量部以上であれば、調光素子を低電圧で駆動できる。液晶の含有量が98質量部以下であれば、調光素子の電圧印加、非印加の繰り返しに対する耐久性および機械的な外力に対する耐久性が高くなり、さらに高温での信頼性が高くなる。
【0027】
液晶としてΔεが正であるものを選択した場合、カイラル剤を含むカイラルネマチック液晶とすることが好ましい。カイラル剤としては、公知のものが挙げられる。カイラル剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
カイラル剤の含有量は、液晶とカイラル剤との合計100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましい。カイラル剤の含有量が0.1質量部以上であれば、カイラル剤のヘリカルピッチを小さくでき、二色性色素の向きを回転させて効率的に吸光できる。カイラル剤の含有量が30質量部以下であれば、後述する重合性化合物の重合時に液晶の配向を維持できる温度範囲への影響を少なくできる。
【0029】
重合体は、調光素子の形状を保持する成分である。重合体は、二色性色素と、液晶と、重合性官能基を有する化合物(以下、重合性化合物と記す。)を含む液晶混合物中で重合性化合物を重合させて得られるものである。具体的には、重合性化合物の重合性官能基の一部または全部が反応することにより、該重合性化合物が2個以上重合したものである。複合体には、調光機能に影響のない限りにおいて、重合が完結せずに残った微量の未反応の重合性化合物が含まれていてもよい。
【0030】
重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基等が挙げられ、反応性が高い点から、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましい。
【0031】
重合性化合物としては、メソゲン構造を有する化合物が好ましい。該化合物を用いると、液晶との相溶性が高くなり、液晶と配向しやすくなる。
たとえば、Δεが正の液晶を用いた場合、電圧を印加すると液晶は支持板に対して垂直配向し、重合性化合物も液晶に沿って支持板に対して垂直配向する。該状態で重合反応が進行すると、重合体は垂直配向を維持したものとなる。そのため、調光素子の電圧印加時の散乱透過率を著しく低減できる。
なお、Δεが負の液晶を用いた場合、電圧を印加すると液晶は支持板に対して平行配向し、重合性化合物も液晶に沿って支持板に対して平行配向する。該状態で重合反応が進行すると、重合体は平行配向を維持したものとなる。該場合、調光素子の電圧印加時の散乱透過率は増大する。
【0032】
メソゲン構造としては、2価の環基を2個以上有する構造が好ましく、2価の環基を2〜5個有する構造がより好ましい。環基は、それぞれ直接結合していてもよく、連結基(−O−、−OCO−、−COO−、−CH−、−CHCH−等。)を介して結合していてもよい。
【0033】
2価の環基としては、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
メソゲン構造としては、下式(1)、(2)で表される構造が好ましい。
−X−COO−X−OCO−X− ・・・(1)。
−X−X−X− ・・・(2)。
ただし、X、X、Xは、それぞれ、1,4−フェニレン基またはトランス−1,4−シクロヘキシレン基であり、該基の水素原子の1個以上は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、シアノ基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0034】
重合性化合物は、重合性官能基を1個有する化合物であってもよく、重合性官能基を2個以上有する化合物であってもよい。重合性化合物が、重合性官能基を2個以上有する場合、硬化(架橋)重合体が得られる。
【0035】
重合性化合物としては、下式(3)の化合物が好ましい。
−(OR−O−Z−O−(RO)−A ・・・(3)。
ただし、A、Aは、それぞれ、アクリロイル基、メタクリロイル基、グリシジル基またはアリル基であり、R、Rは、それぞれ、炭素数2〜18のアルキレン基であり、アルキレン基の水素原子の1個以上は、アルキル基で置換されていてもよく、Zは、メソゲン構造からなる2価の基であり、n、mは、それぞれ1〜10の整数である。
【0036】
重合体は、1種の重合性化合物を重合したものであってもよく、2種以上の重合性化合物を重合したものであってもよい。メソゲン構造を有する重合体は、メソゲン構造を有する重合性化合物のみを重合させたものであってもよく、メソゲン構造を有する重合性化合物とメソゲン構造を有さない重合性化合物とを共重合させたものであってもよい。
【0037】
重合体の含有量は、液晶と重合体との合計100質量部に対して、2〜50質量部が好ましく、5〜45質量部がより好ましい。重合体の含有量が2質量部以上であれば、調光素子の電圧印加、非印加の繰り返しに対する耐久性および機械的な外力に対する耐久性が高くなる。重合体の含有量が50質量部以下であれば、調光素子の駆動電圧を低くでき、さらに、液晶の配向を維持できる温度範囲を広くとれる。該温度範囲が広くなると、重合性化合物を重合させるときの温度範囲を広くとれる。
【0038】
液晶含有層が接する支持板の表面には、液晶を配向せしめる配向処理が施されていることが好ましい。液晶が正のΔεを有する場合、電圧非印加時に液晶が水平配向になるようにする水平配向処理を行うことが好ましい。液晶が負のΔεを有する場合、電圧非印加時に液晶が垂直配向になるようにする垂直配向処理を行うことが好ましい。配向処理の方法としては、たとえば、支持板の表面を直接研磨する方法、支持板の表面に樹脂の薄膜を設けた後ラビングする方法、配向材を支持板の表面に設ける方法等が挙げられる。
【0039】
2枚の支持板の間隔は、スペーサ(図示略)によって制御することが好ましい。スペーサの大きさによって、支持板の間隔を適宜調整できる。支持板の間隔は、2〜50μmが好ましく、3〜30μmがより好ましい。支持板の間隔が2μm以上であれば、コントラストが高くなる。支持板の間隔が50μm以下であれば、複合体を形成する際の重合反応が安定する。
【0040】
調光素子は、たとえば、下記の方法によって製造できる。
2枚の支持板を、透明電極が形成された側が向かい合うように、2本のロールで挟むと同時に、支持板の間にスペーサが均一に分散した液晶混合物を注入する。
ついで、2本のロールによって支持板の間隔を均一に保持したまま、連続的に重合性化合物を重合させ、液晶含有層を形成する。
ついで、透明電極の表面に導電性粘着剤付き端子(金属箔等。)を貼り付け、該端子にバスバを取り付ける。
ついで、支持板の外周部をシール剤(エポキシ樹脂等。)で封止する。
【0041】
重合反応としては、活性エネルギー線重合反応、熱重合反応等が挙げられる。活性エネルギー線重合反応としては、光重合反応が好ましく、紫外線照射による重合反応がより好ましい。
【0042】
重合反応は、液晶の配向性が維持できる温度範囲で行うのが好ましい。該温度範囲で重合させることにより、複合体は、液晶が支持板に対して均一に配向する。
【0043】
重合反応は、電圧を印加した状態で行ってもよい。印加電圧は、0.5〜300Vが好ましい。
重合反応を、電圧を印加した状態で行う場合、電圧を予備印加してもよい。予備印加とは、重合反応の前にあらかじめ電圧を印加することを意味する。印加電圧は、0.5〜300Vが好ましい。液晶が正のΔεを有する場合、電圧を予備印加することによって、重合性化合物を完全にかつ均一に垂直配向させることができ、結果として電圧印加時の散乱透過率のより小さい調光素子が得られる。
【0044】
液晶混合物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤等が挙げられる。
【0045】
重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、重合体に高い比抵抗が要求される場合には、0.01〜10質量部がより好ましい。
【0046】
液晶混合物は、調光素子の調光機能を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、界面活性剤、光安定化剤、染料、顔料、連鎖移動剤、架橋剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
【0047】
中間樹脂層40、50は、透明基板を、該透明基板の間に調光素子を挟持した状態で貼り合わせるために用いる。
中間樹脂層40、50の材料としては、調光素子への負荷を考慮すると、140℃以下で溶融する樹脂が好ましく、100℃以下で溶融する樹脂がより好ましい。該樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと記す。)、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アイオノマー樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート等が挙げられ、EVA、ポリビニルブチラールが好ましい。
中間樹脂層40、50は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤、染料、顔料等を含んでいてもよい。これらのうち、調光窓材に入射する紫外線によるダメージを抑制するため、紫外線吸収剤を含むことは好ましい。
【0048】
調光窓材1は、通常の合わせガラスの製造方法によって製造できる。
たとえば、赤外線反射層12が形成された透明基板と、赤外線反射層を有しない透明基板との間に、赤外線反射層12が樹脂フィルム側となるように、中間樹脂層40、50となる樹脂フィルムを介してシート状の調光素子を挟み込んで積層物とし、該積層物を加熱して樹脂フィルムを軟化または溶融させた後、固化または硬化させて透明基板表面と調光素子表面とを樹脂フィルムを介して接着させる方法、該積層物を加熱加圧して樹脂フィルムを透明基板表面と調光素子表面とに接着させる方法、などにより各層を接着一体化する。加熱は、真空引きをした後または真空引きをしながら行うことが好ましい。
【0049】
以上説明した調光窓材1は、赤外線反射層12を有するため、調光窓材1に入射する赤外線の透過量を抑えることができる。また、透明基板層10と調光素子層30との間に赤外線反射層12を有するため、透明基板層10側から入射した赤外線が赤外線反射層12で反射される。そのため、調光窓材1に吸収される赤外線の吸収量が極めて少なく、調光窓材1が高温になりにくい。その結果、調光素子層30が熱によって劣化しにくい。
【0050】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の調光窓材の他の例を示す断面図である。調光窓材2は、透明基板層10、20と、透明基板層10、20の間に設けられた赤外線反射フィルム層60と、透明基板層10、20の間に設けられた調光素子層30と、透明基板層10と赤外線反射フィルム層60との間に設けられた中間樹脂層41と、赤外線反射フィルム層60と調光素子層30との間に設けられた中間樹脂層42と、透明基板層20と調光素子層30との間に設けられた中間樹脂層50とを有する。
第1の実施形態と同じ構成には同じ符号を付し、該構成の説明は省略する。また、中間樹脂層41、42の材料は中間樹脂層40、50と同様の材料が使用できる。
【0051】
赤外線反射フィルム層60を構成する赤外線反射フィルムとしては、たとえば、樹脂フィルム(図示略)の表面に赤外線反射膜(図示略)が形成された積層フィルム等が挙げられる。この樹脂フィルムとしては、PET、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルローストリアセテート系樹脂等が挙げられる。赤外線反射膜は、前記透明基板の表面に形成される透明コーティング膜と同様の膜である。
また、赤外線反射フィルムとしては、屈折率が異なる2種類のポリマーを多数積層した光学干渉多層フィルムであってもよい。具体的にはポリエチレンナフタレートとポリメチルメタアクリレートとを交互に多数積層した光学干渉多層フィルムが挙げられる。
【0052】
調光窓材2は、通常の合わせガラスの製造方法によって製造できる。たとえば、第1の実施形態と同様に積層物を製造し、次いで加熱等で各層間を接着する方法が挙げられる。
【0053】
以上説明した調光窓材2は、赤外線反射フィルム層60を有するため、赤外線の透過量を抑えることができる。また、透明基板層10と調光素子層30との間に赤外線反射フィルム層60を有するため、透明基板層10側から入射した赤外線が赤外線反射フィルム層60で反射される。そのため、調光窓材2に吸収される赤外線の吸収量が極めて少なく、調光窓材2が高温になりにくい。その結果、調光素子層30が熱によって劣化しにくい。
【0054】
(他の実施形態)
本発明の調光窓材は、図示例の調光窓材1、2に限定はされない。たとえば、赤外線反射層12の耐摩耗性が充分に高い場合は、赤外線反射層12を透明基板層10の外側表面、すなわち調光窓材の最表層に設けてもよい。また、赤外線反射層12を透明基板層10の両方の面に設けてもよい。
【0055】
また、本発明の調光窓材は、他の層を有していてもよい。
他の層としては、ガラス破損防止用金網、樹脂基板の表面の傷発生防止用コーティング層、着色層、紫外線吸収フィルム、防曇コーティング層、防曇フィルム層等が挙げられる。
【0056】
(窓)
本発明の調光窓材は、赤外線反射層が調光素子よりも光(太陽光等。)の入射側に位置するように、各種フレームに取り付けることにより窓として用いられる。透明基板の一方として樹脂フィルムを用いた調光窓材の場合は、赤外線反射層が調光素子層よりも光の入射側に位置するように、かつ、樹脂フィルムが室内側に位置するように用いられることが好ましい。
窓としては、自動車用窓(フロントガラス、サンシェード、リアガラス、フロントドアガラス、リアドアガラス、サンルーフ、リアクオーターガラス等。)列車用窓、航空機用窓、建築物(オフィスビル、住宅等。)用窓等が挙げられる。
【0057】
本発明の調光窓材は、赤外線反射層を有することにより、調光窓材に入射する赤外線の透過量を抑制することができる。よって、調光窓材を自動車用窓や建築物用窓として用いた場合、車内や室内の快適性が向上し、冷房負荷の低下することができる。さらに、調光素子層に到達する赤外線の量を抑えられるので、熱による調光素子層の劣化を抑制することができる。その結果、透過状態における可視光線の透過率を高い状態に維持できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。例1は、実施例であり、例2、3は、比較例である。
【0059】
例1〜3に示す手順で調光窓材を作製し、下記の要領によって求められる耐光性を指標にして評価を行った。
【0060】
(耐光性)
スーパーキセノンウェザーメータ(スガ試験機社製、SX75)を用いて、調光窓材に光を1500時間照射した。光照射後の調光窓材について、可視光線透過率を測定し、下式(4)から耐光性を求めた。なお、調光窓材の可視光線透過率は、ガードナー社製のヘイズガードプラスを用いて測定した。
耐光性=光照射後の可視光線透過率/光照射前の可視光線透過率×100 ・・・(4)。
【0061】
〔例1〕
ネマチック液晶P(等方相相転移温度(Tc):109℃、Δn:0.09、Δε:3.35)の68質量部、カイラル剤(コレステリルノナノエート)の12質量部、式(1)の構造を有する重合性化合物の20質量部、液晶Pとカイラル剤と重合性化合物との合計100質量部に対して3質量部の二色性色素(三菱化学社製、LSB278)、液晶Pとカイラル剤と重合性化合物との合計100質量部に対して1質量部の樹脂ビーズ(積水ファインケミカル社製、直径6μm)、重合性化合物の100質量部に対して3質量部のベンゾインイソプロピルエーテルを含む液晶混合物Aを調製した。
【0062】
片面にITO膜が形成されたPETフィルム(厚さ:125μm、表面抵抗値:300Ω/□)の2巻きを、ITO膜側が向かい合うようにして、45℃に保持したロールに供給した。
PETフィルムを該ロールに供給すると同時に、2枚のPETフィルムの間に、60℃に保持した液晶状態の液晶混合物Aを注入した。
該液晶混合物Aを挟持した2枚のPETフィルムをロールに通過させ、PETフィルムの間に液晶混合物Aをラミネートした。
【0063】
ITO膜間に、周波数50Hzの交流電源を用いて45Vの電圧を5分間予備印加した。ついで、電圧を印加したままの状態で、液晶混合物Aに、45℃の照射ブースにて、ケミカルランプからの主波長が352nmの紫外線を、強さ3mW/cmで10分間照射し、重合性化合物を重合させ、複合体を含む調光層が挟持されたフィルム積層体を得た。
【0064】
該フィルム積層体から10cm角分を切り出し、2枚のPETフィルムのITO膜の表面に導電性粘着剤付き金属箔を貼り付け、該端子にバスバを取り付けた。
2枚のPETフィルムの外周部に、加熱硬化型のエポキシ樹脂を塗布し、80℃で30分間加熱し、エポキシ樹脂を硬化させて封止を完了し、調光素子を作製した。
【0065】
2枚の透明ガラス基板(旭硝子社製、ソーダライムガラス、厚さ2mm)を準備し、そのうちの1枚の片側表面に赤外線反射膜(ZnO/Ag/ZnOの積層膜)を形成した。つぎに、調光素子を、赤外線反射膜付き透明ガラス基板と、透明ガラス基板との間に、赤外線反射膜がEVAフィルム側となるように、EVAフィルム(厚さ0.4mm)を介して挟み込んで積層物とした。なお、このEVAフィルムは、紫外線吸収剤が混練されたEVAフィルムである。
該積層物をゴム袋に入れ、電気オーブン中にてゴム袋内を真空引きし、つぎに加熱した後、室温に戻して、調光窓材を得た。
【0066】
透過状態における該調光窓材の可視光線透過率を測定した。ついで、スーパーキセノンウェザーメータを用いて、調光窓材に、赤外線反射膜付き透明ガラス基板側から光を1500時間照射した後、再び透過状態における該調光窓材の可視光線透過率を測定し、式(4)から耐光性を求めた。結果を表1に示す。
【0067】
〔例2〕
赤外線反射膜付き透明ガラス基板を、赤外線反射膜のない透明ガラス基板に変更した以外は、例1と同様にして調光窓材を製造した。
該調光窓材について耐光性を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
〔例3〕
赤外線反射膜付き透明ガラス基板を、赤外線吸収ガラス基板(旭硝子社製、UVクールグリーン、厚さ2mm)に変更した以外は、例1と同様にして調光窓材を製造した。
該調光窓材について耐光性を評価した。光は赤外線吸収ガラス基板側から入射させた。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
光が入射する側の基板を赤外線反射膜付き基板とした例1の調光窓材は、光照射後において可視光線透過率の低下が抑えられ、調光素子層の劣化が抑えられていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の調光窓材は、自動車用窓、建築用窓等に有用であり、自動車窓に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の調光窓材の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の調光窓材の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 調光窓材
2 調光窓材
10 透明基板層
12 赤外線反射層
20 透明基板層
30 調光素子層
40 中間樹脂層
41 中間樹脂層
42 中間樹脂層
50 中間樹脂層
60 赤外線反射フィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の透明基板層と、
該透明基板層の間に設けられた調光素子層と、
赤外線反射層と
を有する、調光窓材。
【請求項2】
前記赤外線反射層が、前記2枚の透明基板層のうちの一方と前記調光素子層との間に設けられている、請求項1に記載の調光窓材。
【請求項3】
前記赤外線反射層が、前記透明基板層の少なくとも片側の表面に形成されている、請求項2に記載の調光窓材。
【請求項4】
調光窓材が、一方の表面から他方の表面に向かって、赤外線反射層付き透明基板層、中間樹脂層、調光素子層、中間樹脂層、透明基板層の構成を有する、請求項3に記載の調光窓材。
【請求項5】
前記2枚の透明基板層のうちの一方と前記調光素子層との間に設けられた赤外線反射フィルム層を含む、請求項1または2に記載の調光窓材。
【請求項6】
調光窓材が、一方の表面から他方の表面に向かって、透明基板層、中間樹脂層、赤外線反射フィルム層、中間樹脂層、調光素子層、中間樹脂層、透明基板層の構成を有する、請求項5に記載の調光窓材。
【請求項7】
調光素子層が、透明電極層を対向させて配置された2枚の透明電極層付き支持板層と該透明電極層間に存在する液晶含有層とを有する液晶含有調光素子層である、請求項1〜6のいずれかに記載の調光窓材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−208861(P2010−208861A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175179(P2007−175179)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】