調節孔の制御方法
【課題】管路内を通過する光の量、流体の流量又は流体の圧力を長期間に亘って制御可能な調節孔の制御方法を提供すること。
【解決手段】光又は流体が通過する管路3内に、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成された隔壁5が横断状に配置されている。隔壁5に、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔6が軸方向に貫通して設けられている。管路3内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、調節孔6の開口度を変化させる。
【解決手段】光又は流体が通過する管路3内に、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成された隔壁5が横断状に配置されている。隔壁5に、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔6が軸方向に貫通して設けられている。管路3内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、調節孔6の開口度を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内を通過する光の量、流体の流量又は流体の圧力を調節する調節孔の制御方法及び調節孔の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管路内を通過する流体の流量を制御する方法として、ニードルバルブによる制御方法などの機械的な制御方法が主に用いられてきた。
【0003】
しかしながら、この方法では、機械的な摺動により摩耗が生じ、その結果、制御特性が経年変化したり、更には制御ができなくなるという難点があった。
【0004】
ところで、磁性粒子を含有する磁性流体は、CDプレーヤの振動を減衰するダンパーに用いられている(例えば特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2005−180612号公報
【特許文献2】特開2001−291609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、磁性粒子を含有する磁性流体は、流動性があるため、取り扱いが不便である上、更に、長期間の使用によって揮発したり揮散したりしてその体積が徐々に減少する。そのため、そのような磁性流体を用いたダンパー等の制御装置は、やはり、制御特性が経年変化したり、更には制御ができなくなるという難点があった。
【0006】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、管路内を通過する光の量、流体の流量又は流体の圧力を長期間に亘って制御可能な調節孔の制御方法、該制御方法に用いられる調節孔の制御装置、及び該制御装置に用いられる隔壁の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1] 光又は流体が通過する管路内に、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成された隔壁が横断状に配置されるとともに、前記隔壁に、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられており、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、前記調節孔の開口度を変化させることを特徴とする調節孔の制御方法。
【0009】
[2] 前記磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されている前項1記載の調節孔の制御方法。
【0010】
[3] 前記粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムである前項1又は2記載の調節孔の制御方法。
【0011】
[4] 前記磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子である前項1〜3のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【0012】
[5] 前記磁性粒子の体積を前記磁性粒子と前記粘弾性固体との合計体積で割った値を、前記隔壁における磁性粒子の含有率とするとき、
前記含有率は15〜52体積%の範囲内に設定されている前項1〜4のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【0013】
[6] 前記隔壁は、シリコーンゴムの母液とその硬化液と前記磁性粒子としてのカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成されている前項1〜5のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【0014】
[7] 前記管路の外側に前記隔壁を周方向に包囲するように配置されたコイルによって磁場勾配を生じさせる前項1〜6のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【0015】
[8] 光又は流体が通過する管路と、
前記管路内に横断状に配置され、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成されてなり、且つ、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられた隔壁と、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせる磁場勾配発生手段と、
を備えていることを特徴とする調節孔の制御装置。
【0016】
[9] 前記磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されている請求項8記載の調節孔の制御装置。
【0017】
[10] 前記粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムである前項8又は9記載の調節孔の制御装置。
【0018】
[11] 前記磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子である前項8〜10のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【0019】
[12] 前記磁性粒子の体積を前記磁性粒子と前記粘弾性固体との合計体積で割った値を、前記隔壁における磁性粒子の含有率とするとき、
前記含有率は15〜52体積%の範囲内に設定されている前項8〜11のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【0020】
[13] 前記隔壁は、シリコーンゴムの母液とその硬化液と前記磁性粒子としてのカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成されている前項8〜12のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【0021】
[14] 前記磁場勾配発生手段は、前記管路の外側に前記隔壁を周方向に包囲するように配置されたコイルによって磁場勾配を生じさせるように構成されている前項8〜13のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【0022】
[15] 光又は流体が通過する管路と、
前記管路内に横断状に配置され、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられた隔壁と、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせる磁場勾配発生手段と、
を備えた調節孔の制御装置に用いられる隔壁の製造方法であって、
シリコーンゴムの母液とその硬化液とカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで隔壁を形成することを特徴とする調節孔制御装置用隔壁の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以下の効果を奏する。
【0024】
[1]の発明では、管路内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、調節孔の開口度が変化される。そのため、調節孔の開口度を繰り返し変化させた場合であっても、隔壁の摩耗は殆ど生じない。さらに、隔壁は粘弾性固体で形成されているから、揮発や揮散が生じない。したがって、長期間に亘って調節孔を制御することができる。
【0025】
さらに、粘弾性固体で形成された隔壁は、磁性流体で形成された隔壁に比べて取り扱いが便利である上、更に隔壁の管路内への配置作業を容易に行うことができる。
【0026】
[2]の発明では、隔壁を製造する際に、磁性粒子を粘弾性固体に均一に分散することができる。そのため、磁性粒子が均一分散した隔壁を製造することができる。このような隔壁を用いることにより、調節孔の制御を確実に行うことができる。
【0027】
[3]の発明では、隔壁の弾性を、調節孔の開口度を変化させるのに適する弾性に確実に設定することができ、もって調節孔の制御を確実に行うことができる。
【0028】
[4]の発明では、隔壁の磁性を、調節孔の開口度を変化させるのに適する磁性に確実に設定することができ、もって調節孔の制御を確実に行うことができる。
【0029】
[5]の発明では、隔壁の弾性及び磁性を、調節孔の開口度を変化させるのに適する弾性及び磁性に確実に設定することができ、もって調節孔の制御を更に確実に行うことができる。
【0030】
[6]の発明では、隔壁の弾性及び磁性を、調節孔の開口度を変化させるのに適する弾性及び磁性に確実に設定することができ、もって調節孔の制御を確実に行うことができる。
【0031】
[7]の発明では、調節孔の開口度を確実に変化させることができる。
【0032】
[8]〜[14]の発明では、本発明に係る調節孔の制御方法に好適に用いられる調節孔の制御装置を提供できる。
【0033】
[15]の発明では、本発明に係る調節孔の制御装置に用いられる隔壁を確実に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る調節孔の制御装置(1A)の断面図であり、図2は、この制御装置(1A)の概略説明図である。
【0036】
この制御装置(1A)は、図1に示すように、管体(2)と、隔壁(5)と、磁場勾配発生手段(7)とを備えている。
【0037】
管体(2)は、詳述すると丸管体である。したがって、管体(2)の管路(3)の断面形状は円形状である。この管路(3)内には、液体(例:水、油、液体燃料)や気体(例:空気、ガス燃料)等の流体(G)が軸方向に通過する。なお本発明は、管路(2)内を通過する流体(G)の種類に限定されるものではない。
【0038】
管体(2)は、磁力を透過可能な材料で製作されたものであり、具体的には、例えば、プラスチック(アクリル、塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等)やセラミック等の非磁性体で製作されたものである。
【0039】
管体(2)の内径、即ち管路(3)の直径D(図2参照)は、例えば、12〜24mmの範囲内に設定されている。ただし本発明は、Dがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0040】
なお、図2において、r軸は管路(3)の径方向の軸であり、z軸は管路(3)の中心軸を通る軸である。また、z軸の原点Oは、管路(3)の中心軸上における隔壁(5)の軸方向中間位置に設定されている。
【0041】
隔壁(5)は、図3に示すように円柱状のものである。そして、この隔壁(5)が、図1に示すように管路(3)内の軸方向中間位置に管路(3)に対して横断状に配置されている。これにより、管路(3)が隔壁(5)で上流側と下流側とに仕切られている。また、隔壁(5)の直径は、管路(3)の直径Dと同寸乃至は若干大寸に設定されている。
【0042】
隔壁(5)の長さL(図3参照)は、例えば、9〜15mmの範囲内に設定されている。ただし本発明は、Lがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0043】
隔壁(5)の中心部には、図1に示すように、管路(3)内を通過する流体(G)の流量又は圧力を調節する調節孔(6)が、管路(3)の軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。この調節孔(6)は、例えばオリフィスとして機能するものである。制御装置(1A)は、この調節孔(6)を制御するものである。
【0044】
本実施形態では、調節孔(6)の断面形状は円形状であり、また調節孔(6)の直径d及び開口面積Sは、管路(3)の軸方向において一定に設定されている。
【0045】
調節孔(6)の直径dは、例えば、0.1〜1mmの範囲内に設定されている。ただし本発明は、dがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0046】
隔壁(5)は、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成されており、したがって弾性的に変形可能なものである。磁性粒子は粘弾性固体に略均一(均一)に分散し且つ粘弾性固体に対して固定状態に含有されている。そして、この隔壁(5)は、管路(3)内に径方向(即ちr方向)に磁場勾配が生じた場合には、弾性的に変形されるように構成されている。
【0047】
図1に示すように、この隔壁(5)が管路(3)内に配置された状態において、隔壁(5)の周面は管路(3)の周面(即ち、管体(2)の内周面)にその全周に亘って面接触状態に当接している。さらに、本発明では、この隔壁(5)は、その周面が管路(3)の周面に対して非圧接状態に管路(3)内に配置されていても良いし、その周面が管路(3)の周面に接着剤等により接着固定された状態で管路(3)内に配置されていても良い。さらに、隔壁(5)が管路(3)内に圧縮状態に挿入されることで、隔壁(5)に蓄積された弾性復元力により隔壁(5)の周面が管路(3)の周面に圧接固定された状態で、隔壁(5)が管路(3)内に配置されていても良い。
【0048】
粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムであることが望ましい。詳述すると、粘弾性固体は、この群より選択される1種のゴムからなるか又は2種以上を混合したゴムであることが望ましい。このような粘弾性固体を隔壁(5)の構成材料に用いることにより、隔壁(5)の弾性を、調節孔(6)の開口度を変化させるのに適する弾性に確実に設定することができ、もって調節孔(6)の制御を確実に行うことができる。また、各ゴムはゲル状であっても良い。
【0049】
また、粘弾性固体は、100℃における引き裂き強さが例えば10〜30kN/m2の範囲内であることが望ましい。ただし本発明は、粘弾性固体の引き裂き強さがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0050】
また、粘弾性固体を隔壁(5)の構成材料として用いることにより、調節孔(6)の開口度を微細に変化させることが可能となり、もって調節孔(6)の制御を確実に行うことができる。
【0051】
磁性粒子として、例えば、強磁性粒子、反磁性粒子、反共磁性粒子及び常磁性粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子が好適に用いられる。詳述すると、磁性粒子として、この群より選択される1種の粒子か又は2種以上を混合した粒子が好適に用いられる。
【0052】
さらに、磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子であることが望ましい。詳述すると、磁性粒子は、この群より選択される1種の粒子か又は2種以上を混合した粒子であることが望ましい。
【0053】
さらに、磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されていることが望ましい。なお、磁性粒子の粒度とは、磁性粒子の平均粒径のことである。粒度が500μm以下であることにより、隔壁を製造する際に、磁性粒子を粘弾性固体に均一に分散させることが可能となる。その結果、磁性粒子が均一分散した隔壁(5)を製作することができる。このような隔壁(5)を用いることにより、調節孔(6)の制御を確実に行うことができる。特に、粒度は10μm以下に設定されていることが望ましい。
【0054】
一方、磁性粒子の粒度の下限値は限定されるものではなく、すなわち粒度は0μmを超える値であれば良い。特に、粒度が1μm以上である場合には、磁性粒子を安価に製造及び入手できる点で望ましい。
【0055】
また、粒度が10nm以下の磁性粒子である場合、例えば、粒度が10nm以下のマグネタイト粒子である場合には、これを超常磁性粒子として使用できる可能性がある。超常磁性粒子を使用することにより、次の利点がある。すなわち、もし隔壁(5)が強磁性粒子を含有した粘弾性固体で形成されている場合には、隔壁(5)に磁場が繰り返し印加されると、発熱が生じる虞がある。一方、隔壁(5)が超常磁性粒子を含有した粘弾性固体で形成されている場合には、そのような発熱は生じないという利点がある。また、強磁性粒子は残留磁化を生じるために、強磁性粒子を使用した前者の隔壁(5)は、応答性に些か難がある。一方、超常磁性粒子は残留磁化を殆ど又は全く生じないので、超常磁性粒子を使用した後者の隔壁(5)は、前者の隔壁よりも応答性に優れているという利点がある。
【0056】
ただし本発明は、磁性粒子の粒度が上記の範囲内であることに限定されるものではない。
【0057】
また、磁性粒子の形状は、球状であっても良いし、棒状や針状であっても良いし、その他の形状であっても良い。
【0058】
また、この隔壁(5)において、磁性粒子の体積を磁性粒子と粘弾性固体との合計体積で割った値を、隔壁(5)における磁性粒子の含有率(即ち体積含有率)とするとき、この含有率は15〜52体積%の範囲内であることが望ましい。ここで含有率とは、磁性粒子の体積をA、粘弾性固体の体積をBとするとき、{A/(A+B)}×100で算出される。
【0059】
含有率が上記の範囲内であることにより、隔壁(5)の弾性及び磁性を、調節孔(6)の開口度を変化させるのに適する弾性及び磁性に確実に設定することができる。詳述すると、含有率が15体積%未満の場合、磁性粒子の量が少なすぎて隔壁(5)の変形量が小さく、その結果、調節孔(6)の開口度を変化させるのが困難になる虞がある。一方、含有率が52体積%を超えた場合、隔壁(5)の変形能が磁場の強さに追随できなくなる虞があり、その結果、例えば隔壁(5)が破損する虞がある。特に望ましい含有率の範囲は25〜30体積%である。ただし本発明は、含有率が上記の範囲内であることに限定されるものではない。
【0060】
ここで、隔壁(5)が、磁性粒子としてカルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴム(詳述するとシリコーンゲル)で形成されている場合において、当該隔壁(5)の好ましい製造方法の一例は、以下のとおりである。
【0061】
すなわち、シリコーンゴムの母液とその硬化液とカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で減圧脱泡しながら撹拌器等の撹拌手段で均一に撹拌混合する。その後、この混合物を、所定の成形型の成形キャビティ内に流し込む。この際、成形キャビティ内には、予め、調節孔形成用の細棒状中子が軸方向に沿って配置されている。なお、成形型の材質としては、例えば、アクリル等のプラスチックが好適に用いられる。また、シリコーンゴムの母液とその硬化液とカルボニル鉄粒子との混合比(即ち配合比)は、質量比で、1:1:1.3〜8の範囲内であることが特に望ましい。
【0062】
次いで、成形キャビティ内の混合物を、熱風機等の加熱手段により例えば30〜70℃の温度範囲内で加熱して硬化させる。その後、硬化物を成形キャビティ内から取り出し、更に必要に応じて硬化物にトリミング加工を施すことにより、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成された隔壁(5)を製作することができる。
【0063】
磁場勾配発生手段(7)は、管路(3)内に径方向(即ちr方向)に磁場勾配を生じさせるものであり、コイル(詳述すると電磁コイル)(8)と電源(9)とを有している。そして、この磁場勾配発生手段(7)は、コイル(8)によって管路(3)内に径方向に磁場勾配を生じさせるように構成されている。
【0064】
コイル(8)は、例えば円形状のものであり、詳述すると、有限の長さのソレノイドコイル等で構成されている。そして、このコイル(8)が、管路(3)の外側(即ち管体(2)の外側)に隔壁(5)を周方向に包囲するように、管路(3)の中心軸に対して同軸状に配置されている。すなわち、コイル(8)の内側に管路(3)及び隔壁(5)が配置されている。このコイル(8)の長さ(詳述すると軸方向の長さ)は、例えば、4L〜8L(ただし、L:隔壁(5)の長さ)の範囲内に設定されている。ただし本発明は、コイル(8)の長さがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0065】
電源(9)は、コイル(8)に電流を供給するものであり、詳述するとコイル(8)に直流電流(I)を供給するものであって、コイル(8)に接続されている。さらに、この電源(9)は、コイル(8)への供給電流(I)を調節する可変抵抗器等の電流調節手段(10)を有しており、例えば0〜30Aの範囲内の直流電流(I)を供給可能なものである。なお、この電流調節手段(10)は、管路(3)内の径方向の磁場勾配の大きさを変化させる手段としても捉えることができる。
【0066】
さらに、磁場勾配発生手段(7)は、コイル(8)を保持する銅製コイルホルダ(12)と、コイル(8)及びコイルホルダ(12)を冷却する冷却手段として冷却ジャケット(11)とを備えている。
【0067】
冷却ジャケット(11)は、コイル(8)の外周面及びコイルホルダ(12)の外周面に装着された冷却パイプ(11a)を有している。そして、この冷却パイプ(11a)内に冷却液として例えば水を流通させることにより、コイル(8)とコイルホルダ(12)を冷却するように構成されている。
【0068】
次に、本第1実施形態の調節孔の制御装置(1A)を用いた調節孔(6)の制御方法について、その制御原理と共に以下に説明する。
【0069】
まず、磁場勾配発生手段(7)のコイル(8)に電源(9)により直流電流(I)を供給する。すると、このコイル(8)によって、図2に示すように、管路(3)内に径方向(即ちr方向)に磁場勾配が発生する。なお、図2において、Hは、コイル(8)に直流電流(I)を供給した場合の、管路(3)内の磁場である。
【0070】
このように磁場勾配が発生することにより、隔壁(5)中の多数の磁性粒子に磁場勾配の方向に力(これを「ケルビン力」という。)が作用する。その結果、隔壁(5)が弾性的に変形するとともに、この変形に伴い隔壁(5)に弾性復元力が蓄積される。そして、磁性粒子に作用するケルビン力と隔壁(5)に蓄積される弾性復元力とが釣り合うまで、隔壁(5)が変形する。このように隔壁(5)が変形することに伴い、調節孔(6)の開口度(即ち開口面積)が変化する。
【0071】
また、管路(3)内に発生した径方向の磁場勾配の大きさは、コイル(8)への供給電流(I)を増減させることにより、容易に変化させることができる。
【0072】
ここで、調節孔(6)の開口度の変化態様について、図4(A)〜(C)を参照して以下に説明する。
【0073】
図4(A)は、管路(3)内に磁場勾配を生じさせる前の隔壁(5)の状態を示す、制御装置(1A)の概略断面図である。
【0074】
図4(A)に示した制御装置(1A)において、隔壁(5)は、例えば、その周面が管路(3)の周面(即ち管体(2)の内周面)に対して非圧接状態に管路(3)内に配置されているとする。この場合、コイル(8)に直流電流(I)を供給すると、例えば図4(B)に示すように、隔壁(5)中の多数の磁性粒子がケルビン力により管路(3)の周面側に移動しようとする。その結果、調節孔(6)の直径がdからd1(d<d1)に増大するとともに、隔壁(5)の周面が管路(3)の周面上を軸方向にスライド移動しながら隔壁(5)が軸方向に延びてその長さがLからL1(L<L1)になるように変形する。このように隔壁(5)が変形した後の状態において、調節孔(6)の直径d1は、軸方向において略一定(一定)である。このd1は、コイル(8)への供給電流(I)が増加することに伴い増大する。一方、このd1は、コイル(8)への供給電流(I)が減少することに伴い減少し、更にコイル(8)への電流供給を停止することにより、d1が元の寸法であるdに戻る。
【0075】
一方、図4(A)に示した制御装置(1A)において、隔壁(5)は、例えば、その周面が管路(3)の周面に接着剤により接着固定された状態で管路(3)内に配置されているとする。この場合、コイル(8)に直流電流(I)を供給すると、例えば図4(C)に示すように、隔壁(5)中の多数の磁性粒子がケルビン力により管路(3)の周面側に移動しようとする。その結果、調節孔(6)の直径のうち軸方向両端位置の直径がdからd1(d<d1)に増大するとともに、軸方向中間位置の直径がdからd2(d<d2)に増大し、更に、隔壁(5)は、その周面が管路(3)の周面に接着固定された状態のまま軸方向等に僅かに膨出変形する。このように隔壁(5)が変形した後の状態において、調節孔(6)の直径は、軸方向中間位置(その直径d2)が最も小さく、該軸方向中間位置から軸方向両端位置(その直径d1)にぞれぞれ進むにつれて漸次増大している(即ち、d1>d2)。そして、コイル(8)への供給電流(I)が増加することに伴い、d1及びd2がそれぞれ増大する。一方、コイル(8)への供給電流(I)が減少することに伴い、d1及びd2がそれぞれ減少し、更にコイル(8)への電流供給を停止することにより、d1及びd2が元の寸法であるdに戻る。
【0076】
一方、図4(A)に示した制御装置(1A)において、隔壁(5)は、例えば、管路(3)内に圧縮状態に挿入されることで、隔壁(5)に蓄積された弾性復元力により隔壁(5)の周面が管路(3)の周面に圧接固定された状態で管路(3)内に配置されていているとする。この場合、隔壁(5)は、例えば、図4(B)に示した隔壁(5)の変形と図4(C)に示した隔壁(5)の変形とを合わせたような状態に変形する。そして、コイル(8)への供給電流(I)が増加することに伴い、調節孔(6)の直径が増大する。一方、コイル(8)への供給電流(I)が減少することに伴い、直径が減少し、更にコイル(8)への電流供給を停止することにより、直径が元の寸法であるdに戻る。
【0077】
以上のように、上記第1実施形態の調節孔の制御装置(1A)では、電流調節手段(10)によりコイル(8)への供給電流(I)を増減させて、管路(3)内の径方向の磁場勾配の大きさを変化させることにより、調節孔(6)の開口度(開口面積)を増減させ、これにより、管路(3)を通過する流体(G)の流量又は圧力を調節することができる。
【0078】
而して、上記第1実施形態の調節孔の制御装置(1A)を用いた調節孔(6)の制御方法によれば、管路(3)内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、調節孔(6)の開口度が変化されることから、調節孔(6)の開口度を繰り返し変化させた場合であっても、隔壁(5)の摩耗は殆ど生じない。さらに、隔壁(5)は粘弾性固体で形成されているから、揮発や揮散が生じない。したがって、長期間に亘って調節孔(6)を制御することができる。
【0079】
さらに、粘弾性固体で形成された隔壁(5)は、流体で形成された隔壁に比べて取り扱いが便利である上、更に隔壁(5)の管路(3)内への配置作業を容易に行うことができる。
【0080】
図5(A)〜図5(G)は、それぞれ隔壁(5)の調節孔(6)の変形例を示すものである。ただし本発明は、隔壁(5)の調節孔(6)は図5(A)〜図5(G)に示したものであることに限定されるものではなく、その他に、例えば、これらを組み合わせても良いし、その他の形状のものであっても良い。
【0081】
図5(A)では、隔壁(5)に複数個の調節孔(6)が軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。複数個の調節孔(6)の開口面積の大きさは互いに同一であり、軸方向において一定に設定されている。また、各調節孔(6)の断面形状は円形状である。なお本発明は、調節孔(6)の断面形状は、その他に、例えば楕円形状であっても良い。
【0082】
図5(B)では、隔壁(5)に複数個の調節孔(6)が軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。複数個の調節孔(6)の開口面積の大きさは大小の2種類あり、またその開口面積は軸方向において一定に設定されている。各調節孔(6)の断面形状は円形状である。
【0083】
図5(C)では、隔壁(5)に複数個の調節孔(6)が軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。複数個の調節孔(6)の開口面積の大きさは互いに同一であり、軸方向において一定に設定されている。また、各調節孔(6)の断面形状は四角形状である。なお本発明は、調節孔(6)の断面形状は、その他に、例えば、三角形状、五角形状、六角形状等の多角形状であっても良い。
【0084】
図5(D)では、隔壁(5)に複数個の調節孔(6)が軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。複数個の調節孔(6)は断面形状が円形状のものと四角形のものとがある。各調節孔(6)の開口面積は軸方向において一定に設定されている。
【0085】
図5(E)では、隔壁(5)にテーパ孔からなる調節孔(6)が軸方向に貫通して設けられている。この調節孔(6)はテーパ孔からなることから軸方向に対して開口面積が漸次増大するように形成されている。なお本発明は、調節孔(6)は、その他に、例えば、軸方向に対して開口面積が漸次減少するように形成されていても良い。
【0086】
図5(F)では、隔壁(5)にテーパ孔からなる調節孔(6)が軸方向に対して斜めの方向に貫通して設けられている。この調節孔(6)はテーパ孔からなることから軸方向に対して開口面積が漸次増大するように形成されている。なお本発明は、調節孔(6)は、その他に、例えば、軸方向に対して開口面積が漸次減少するように形成されていても良い。
【0087】
図5(G)では、隔壁(5)に直径方向に長いスリット状の調節孔(6)が軸方向に貫通して設けられており、この調節孔(6)によって隔壁(5)が2個に分割されている。
【0088】
図6は、本発明の第2実施形態に係る調節孔の制御装置(1B)を説明する図である。なお同図には、上記第1実施形態の制御装置(1A)の要素と同一の要素には同一の符号が付されている。以下、この制御装置(1B)の構成について、上記第1実施形態の制御装置(1A)と異なる点を中心に以下に説明する。
【0089】
この制御装置(1B)では、管体(2)の管路(3)内を光が軸方向に通過する。管体(2)は詳述すると丸管体である。また、隔壁(5)は円板状のものであり、管路(3)内に横断状に配置されている。さらに、この隔壁(5)の中心部には、管路(3)内を通過する光の量を調節する調節孔(6)が、軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。この調節孔(6)の断面形状は円形状である。制御装置(1B)は、この調節孔(6)を制御するものである。この調節孔(6)は、例えばアイリスとして機能するものである。
【0090】
この制御装置(1B)は、例えば、カメラ等の撮像装置における絞り装置に用いられる。なお、(20)は被写体、(21)は感光面等のスクリーンである。
【0091】
この制御装置(1B)を用いた調節孔(6)の制御方法は、上記第1実施形態と同じであり、これを簡単に説明すると以下のとおりである。
【0092】
すなわち、磁場勾配発生手段(7)のコイル(8)に電源(9)により直流電流を供給することにより、管路(3)内に径方向に磁場勾配を生じさせる。これにより、隔壁(5)の調節孔(6)の開口度(開口面積)が増大し、もってスクリーン(21)に到達する光量が増加する。一方、コイル(8)への供給電流を減少させることにより、調節孔(6)の開口度が減少し、もってスクリーン(21)に到達する光量が減少する。
【0093】
以上のように、この制御装置(1B)では、コイル(8)への供給電流を増減させて、管路(3)内の径方向の磁場勾配の大きさを変化させることにより、調節孔(6)の開口度を増減させ、これにより、管路(3)を通過する光量を調節することができる。
【0094】
以上で、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示したものに限定されるではなく、様々に設定変更可能である。
【0095】
例えば、本発明では、磁場勾配発生手段(7)のコイル(8)に供給する電流(I)は、直流電流の他に、例えば、交流電流(例:低周波数の交流電流)であっても良いし、脈動電流であっても良い。
【0096】
また、本発明では、コイル(8)への供給電流(I)を制御する方法は、電源(9)等に設けられた電流供給スイッチについてonとoffを所定の周期で交互に繰り返すことにより制御を行う方法、即ちon−off制御方法であっても良いし、あるいは、コイル(8)への供給電流(I)を時間的に徐々に増加又は減少させるとともに、このような増加と減少を所定の周期で交互に繰り返すことにより制御を行う方法であっても良いし、その他の制御方法であっても良い。
【0097】
また、本発明では、磁場勾配発生手段(7)は、コイル(8)の他に、例えば、管路(3)の外側(即ち管体(2)の外側)に配置された永久磁石又は電磁石を有するものであり、この永久磁石又は電磁石によって管路(3)内に径方向に磁場勾配を生じさせるように構成されていても良い。この場合、永久磁石又は電磁石を、例えば、管路(3)に近づけたり、管路(3)の軸方向に移動させたり、周方向に移動させたり、回転させたりすることにより、調節孔(6)の開口度を増減させることができる。
【0098】
また、本発明では、管路(3)の断面形状は、円形状の他に、例えば、四角形や六角形等の多角形状であっても良い。
【0099】
また、本発明では、磁性粒子は、粘弾性固体に均一に分散した状態に含有されていても良いし、不均一に分散した状態に含有されていても良い。
【実施例】
【0100】
次に、本発明に係る調節孔の制御装置が流体の流量を調節可能か否かについて実験した実施例(実験例)を以下に説明する。ただし本発明は、この実施例に示したものに限定されるものではない。
【0101】
<制御装置(1C)の構成>
図7は、本実施例(実験例)で使用した調節孔の制御装置(1C)の概略図である。この制御装置(1C)において、管体(2)の管路(3)の直径D(図2参照)は12mmである。また、管体(2)は透明アクリル製であり、その肉厚は1〜2mmである。隔壁(5)の長さLは12mmである。調節孔(6)は、図3に示すように隔壁(5)の中心部に管路(3)の軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。調節孔(6)の直径dは1.0mmである。
【0102】
この制御装置(1C)において、(51)は電動モータ、(52)は速度コントローラ、(53)はボールねじ、(54)はピストンロッド、(55)は連結プレート、(56)はシリンダ、(57)は供給タンク、(58)は流量調節弁、(59)は貯留タンク、(60)はエアーコンプレッサ、(61)は圧力計、(62)はビデオカメラ、(63)はモニタ、(64)は差圧計、(65)は、コイル(8)を冷却する冷却手段のコントローラである。
【0103】
隔壁(5)は、強磁性粒子を含有した粘弾性固体で形成されたものであり、その材質は以下のとおりである。
【0104】
<隔壁(5)の材質>
磁性粒子:カルボニル鉄粒子(BASF社製、商品名「CM」)
磁性粒子の粒度:表1に示す
磁性粒子の粒子密度:3.7×103kg/m3
磁性粒子の磁性:強磁性
磁性粒子の形状:球状
粘弾性固体:シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SE1885A&B」)
粘弾性固体の粘度:0.5Pa・s
粘弾性固体の密度:1.0×103kg/m3
なお、磁性粒子及び粘弾性固体の上記の特性は、いずれも25℃における特性である。
【0105】
また、隔壁(5)は次の製造方法により製作されたものである。
【0106】
<隔壁(5)の製造方法>
シリコーンゲルの母液(商品名「SE1885A」)とその硬化液(商品名「SE1885B」)とカルボニル鉄粒子とを、表1に示した配合比(質量比)で減圧脱泡しながら撹拌器で均一に撹拌混合した。次いで、この混合物を、アクリル製成形型の成形キャビティ内に流し込んだ。この際、成形キャビティ内には、予め、調節孔形成用の細棒状中子が軸方向に沿って配置されている。次いで、成形キャビティ内の混合物を熱風機により30〜70℃の温度範囲で加熱して硬化させた。その後、この硬化物を成形キャビティ内から取り出すことにより、図3に示した所望する隔壁(5)を製作した。
【0107】
こうして製作された隔壁(5)において、カルボニル鉄粒子の含有率(単位:体積%)は表1のとおりである。なお含有率は、カルボニル鉄粒子の体積をA、シリコーンゲルの体積をBとするとき、{A/(A+B)}×100で算出した。
【0108】
【表1】
【0109】
<調節孔の制御試験>
表1中の実施例1〜7の隔壁(5)を準備し、各隔壁(5)を制御装置(1C)の管路(3)内に配置した。次いで、磁場勾配発生手段(7)のコイル(8)に電源(9)により直流電流(I)を0〜30Aの範囲内で供給し、管路(3)内の代表的な磁場の強さHz※と、調節孔(6)の開口面積Sとの関係を測定した。その結果の一例を図8にグラフで示す。なお図8は、表1中の実施例2の隔壁(5)を使用した場合のものである。
【0110】
図8において、Hz※は、管路(3)内の代表的な磁場の強さとして、z軸の原点0(図2参照)での磁場の強さであり、すなわち管路(3)の中心軸上における隔壁(5)の軸方向中間位置での磁場の強さである。ここで、コイル(8)に0、10、20及び30Aの直流電流を供給した場合、Hz※は、それぞれ、0、0.0556、0.1112及び0.1668MA/mである。
【0111】
図8に示すように、コイル(8)への供給電流(I)を増加させてHz※を大きくすることに伴い、調節孔(6)の開口面積Sが増大し、一方、コイル(8)への供給電流(I)を減少させてHz※を小さくすることに伴い、調節孔(6)の開口面積Sが減少した。したがって、コイル(8)への供給電流(I)を増減させることにより、調節孔(6)の開口度(開口面積S)を変化させ得ることを確認できた。
【0112】
図9の(A)〜(D)は、それぞれ、Hz※=0MA/m(I=0A)、Hz※=0.0556MA/m(I=10A)、Hz※=0.1112MA/m(I=20A)、及びHz※=0.1668MA/m(I=30A)の場合における、ビデオカメラ(62)で撮影した隔壁(5)の調節孔(6)の写真である(図10参照)。これらの図(写真)から、Hz※が増大することに伴い、調節孔(6)の開口度(開口面積S)が増大することを確認でき、また、Hz※が減少することに伴い、調節孔(6)の開口度(開口面積S)が減少することも確認できた。
【0113】
実際に、制御装置(1C)の管路(3)内に上流側から流体として空気を供給しながら、コイル(8)への供給電流(I)を増減させたところ、表1に示した全実施例の各隔壁について、空気の流量を調節することができたし、更に空気の圧力を調節することができた。また、流体として空気の代わりに水を使用した場合にも、同じく、水の流量を調節することができたし、更に水圧を調節することができた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、管路内を通過する光の量、流体の流量又は流体の圧力を調節する調節孔の制御方法及び調節孔の制御装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1実施形態に係る調節孔の制御装置の断面図である。
【図2】同制御装置の概略説明図である。
【図3】同制御装置の隔壁の斜視図である。
【図4(A)】同制御装置の管路内に磁場勾配を生じさせる前の隔壁の状態を示す概略断面図である。
【図4(B)】同制御装置の管路内に磁場勾配を生じさせたときの隔壁の一変形状態を示す概略断面図である。
【図4(C)】同制御装置の管路内に磁場勾配を生じさせたときの隔壁のもう一つの変形状態を示す概略断面図である。
【図5(A)】隔壁の第1変形例を示す斜視図である。
【図5(B)】隔壁の第2変形例を示す斜視図である。
【図5(C)】隔壁の第3変形例を示す斜視図である。
【図5(D)】隔壁の第4変形例を示す斜視図である。
【図5(E)】隔壁の第5変形例を示す斜視図である。
【図5(F)】隔壁の第6変形例を示す斜視図である。
【図5(G)】隔壁の第7変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る調節孔の制御装置の概略断面図である。
【図7】本発明の実施例(実験例)で使用した調節孔の制御装置の概略図である。
【図8】代表的な磁場の強さHz※と調節孔の開口面積Sとの関係を表すグラフである。
【図9】幾つかの代表的な磁場の強さHz※において調節孔を撮影した写真である。
【図10】図9中の(A)の説明図である。
【符号の説明】
【0116】
1A、1B、1C…調節孔の制御装置
2…管体
3…管路
5…隔壁
6…調節孔
7…磁場勾配発生手段
8…コイル
9…電源
11…冷却ジャケット(冷却手段)
G…流体
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内を通過する光の量、流体の流量又は流体の圧力を調節する調節孔の制御方法及び調節孔の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管路内を通過する流体の流量を制御する方法として、ニードルバルブによる制御方法などの機械的な制御方法が主に用いられてきた。
【0003】
しかしながら、この方法では、機械的な摺動により摩耗が生じ、その結果、制御特性が経年変化したり、更には制御ができなくなるという難点があった。
【0004】
ところで、磁性粒子を含有する磁性流体は、CDプレーヤの振動を減衰するダンパーに用いられている(例えば特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2005−180612号公報
【特許文献2】特開2001−291609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、磁性粒子を含有する磁性流体は、流動性があるため、取り扱いが不便である上、更に、長期間の使用によって揮発したり揮散したりしてその体積が徐々に減少する。そのため、そのような磁性流体を用いたダンパー等の制御装置は、やはり、制御特性が経年変化したり、更には制御ができなくなるという難点があった。
【0006】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、管路内を通過する光の量、流体の流量又は流体の圧力を長期間に亘って制御可能な調節孔の制御方法、該制御方法に用いられる調節孔の制御装置、及び該制御装置に用いられる隔壁の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1] 光又は流体が通過する管路内に、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成された隔壁が横断状に配置されるとともに、前記隔壁に、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられており、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、前記調節孔の開口度を変化させることを特徴とする調節孔の制御方法。
【0009】
[2] 前記磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されている前項1記載の調節孔の制御方法。
【0010】
[3] 前記粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムである前項1又は2記載の調節孔の制御方法。
【0011】
[4] 前記磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子である前項1〜3のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【0012】
[5] 前記磁性粒子の体積を前記磁性粒子と前記粘弾性固体との合計体積で割った値を、前記隔壁における磁性粒子の含有率とするとき、
前記含有率は15〜52体積%の範囲内に設定されている前項1〜4のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【0013】
[6] 前記隔壁は、シリコーンゴムの母液とその硬化液と前記磁性粒子としてのカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成されている前項1〜5のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【0014】
[7] 前記管路の外側に前記隔壁を周方向に包囲するように配置されたコイルによって磁場勾配を生じさせる前項1〜6のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【0015】
[8] 光又は流体が通過する管路と、
前記管路内に横断状に配置され、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成されてなり、且つ、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられた隔壁と、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせる磁場勾配発生手段と、
を備えていることを特徴とする調節孔の制御装置。
【0016】
[9] 前記磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されている請求項8記載の調節孔の制御装置。
【0017】
[10] 前記粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムである前項8又は9記載の調節孔の制御装置。
【0018】
[11] 前記磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子である前項8〜10のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【0019】
[12] 前記磁性粒子の体積を前記磁性粒子と前記粘弾性固体との合計体積で割った値を、前記隔壁における磁性粒子の含有率とするとき、
前記含有率は15〜52体積%の範囲内に設定されている前項8〜11のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【0020】
[13] 前記隔壁は、シリコーンゴムの母液とその硬化液と前記磁性粒子としてのカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成されている前項8〜12のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【0021】
[14] 前記磁場勾配発生手段は、前記管路の外側に前記隔壁を周方向に包囲するように配置されたコイルによって磁場勾配を生じさせるように構成されている前項8〜13のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【0022】
[15] 光又は流体が通過する管路と、
前記管路内に横断状に配置され、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられた隔壁と、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせる磁場勾配発生手段と、
を備えた調節孔の制御装置に用いられる隔壁の製造方法であって、
シリコーンゴムの母液とその硬化液とカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで隔壁を形成することを特徴とする調節孔制御装置用隔壁の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以下の効果を奏する。
【0024】
[1]の発明では、管路内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、調節孔の開口度が変化される。そのため、調節孔の開口度を繰り返し変化させた場合であっても、隔壁の摩耗は殆ど生じない。さらに、隔壁は粘弾性固体で形成されているから、揮発や揮散が生じない。したがって、長期間に亘って調節孔を制御することができる。
【0025】
さらに、粘弾性固体で形成された隔壁は、磁性流体で形成された隔壁に比べて取り扱いが便利である上、更に隔壁の管路内への配置作業を容易に行うことができる。
【0026】
[2]の発明では、隔壁を製造する際に、磁性粒子を粘弾性固体に均一に分散することができる。そのため、磁性粒子が均一分散した隔壁を製造することができる。このような隔壁を用いることにより、調節孔の制御を確実に行うことができる。
【0027】
[3]の発明では、隔壁の弾性を、調節孔の開口度を変化させるのに適する弾性に確実に設定することができ、もって調節孔の制御を確実に行うことができる。
【0028】
[4]の発明では、隔壁の磁性を、調節孔の開口度を変化させるのに適する磁性に確実に設定することができ、もって調節孔の制御を確実に行うことができる。
【0029】
[5]の発明では、隔壁の弾性及び磁性を、調節孔の開口度を変化させるのに適する弾性及び磁性に確実に設定することができ、もって調節孔の制御を更に確実に行うことができる。
【0030】
[6]の発明では、隔壁の弾性及び磁性を、調節孔の開口度を変化させるのに適する弾性及び磁性に確実に設定することができ、もって調節孔の制御を確実に行うことができる。
【0031】
[7]の発明では、調節孔の開口度を確実に変化させることができる。
【0032】
[8]〜[14]の発明では、本発明に係る調節孔の制御方法に好適に用いられる調節孔の制御装置を提供できる。
【0033】
[15]の発明では、本発明に係る調節孔の制御装置に用いられる隔壁を確実に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る調節孔の制御装置(1A)の断面図であり、図2は、この制御装置(1A)の概略説明図である。
【0036】
この制御装置(1A)は、図1に示すように、管体(2)と、隔壁(5)と、磁場勾配発生手段(7)とを備えている。
【0037】
管体(2)は、詳述すると丸管体である。したがって、管体(2)の管路(3)の断面形状は円形状である。この管路(3)内には、液体(例:水、油、液体燃料)や気体(例:空気、ガス燃料)等の流体(G)が軸方向に通過する。なお本発明は、管路(2)内を通過する流体(G)の種類に限定されるものではない。
【0038】
管体(2)は、磁力を透過可能な材料で製作されたものであり、具体的には、例えば、プラスチック(アクリル、塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等)やセラミック等の非磁性体で製作されたものである。
【0039】
管体(2)の内径、即ち管路(3)の直径D(図2参照)は、例えば、12〜24mmの範囲内に設定されている。ただし本発明は、Dがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0040】
なお、図2において、r軸は管路(3)の径方向の軸であり、z軸は管路(3)の中心軸を通る軸である。また、z軸の原点Oは、管路(3)の中心軸上における隔壁(5)の軸方向中間位置に設定されている。
【0041】
隔壁(5)は、図3に示すように円柱状のものである。そして、この隔壁(5)が、図1に示すように管路(3)内の軸方向中間位置に管路(3)に対して横断状に配置されている。これにより、管路(3)が隔壁(5)で上流側と下流側とに仕切られている。また、隔壁(5)の直径は、管路(3)の直径Dと同寸乃至は若干大寸に設定されている。
【0042】
隔壁(5)の長さL(図3参照)は、例えば、9〜15mmの範囲内に設定されている。ただし本発明は、Lがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0043】
隔壁(5)の中心部には、図1に示すように、管路(3)内を通過する流体(G)の流量又は圧力を調節する調節孔(6)が、管路(3)の軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。この調節孔(6)は、例えばオリフィスとして機能するものである。制御装置(1A)は、この調節孔(6)を制御するものである。
【0044】
本実施形態では、調節孔(6)の断面形状は円形状であり、また調節孔(6)の直径d及び開口面積Sは、管路(3)の軸方向において一定に設定されている。
【0045】
調節孔(6)の直径dは、例えば、0.1〜1mmの範囲内に設定されている。ただし本発明は、dがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0046】
隔壁(5)は、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成されており、したがって弾性的に変形可能なものである。磁性粒子は粘弾性固体に略均一(均一)に分散し且つ粘弾性固体に対して固定状態に含有されている。そして、この隔壁(5)は、管路(3)内に径方向(即ちr方向)に磁場勾配が生じた場合には、弾性的に変形されるように構成されている。
【0047】
図1に示すように、この隔壁(5)が管路(3)内に配置された状態において、隔壁(5)の周面は管路(3)の周面(即ち、管体(2)の内周面)にその全周に亘って面接触状態に当接している。さらに、本発明では、この隔壁(5)は、その周面が管路(3)の周面に対して非圧接状態に管路(3)内に配置されていても良いし、その周面が管路(3)の周面に接着剤等により接着固定された状態で管路(3)内に配置されていても良い。さらに、隔壁(5)が管路(3)内に圧縮状態に挿入されることで、隔壁(5)に蓄積された弾性復元力により隔壁(5)の周面が管路(3)の周面に圧接固定された状態で、隔壁(5)が管路(3)内に配置されていても良い。
【0048】
粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムであることが望ましい。詳述すると、粘弾性固体は、この群より選択される1種のゴムからなるか又は2種以上を混合したゴムであることが望ましい。このような粘弾性固体を隔壁(5)の構成材料に用いることにより、隔壁(5)の弾性を、調節孔(6)の開口度を変化させるのに適する弾性に確実に設定することができ、もって調節孔(6)の制御を確実に行うことができる。また、各ゴムはゲル状であっても良い。
【0049】
また、粘弾性固体は、100℃における引き裂き強さが例えば10〜30kN/m2の範囲内であることが望ましい。ただし本発明は、粘弾性固体の引き裂き強さがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0050】
また、粘弾性固体を隔壁(5)の構成材料として用いることにより、調節孔(6)の開口度を微細に変化させることが可能となり、もって調節孔(6)の制御を確実に行うことができる。
【0051】
磁性粒子として、例えば、強磁性粒子、反磁性粒子、反共磁性粒子及び常磁性粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子が好適に用いられる。詳述すると、磁性粒子として、この群より選択される1種の粒子か又は2種以上を混合した粒子が好適に用いられる。
【0052】
さらに、磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子であることが望ましい。詳述すると、磁性粒子は、この群より選択される1種の粒子か又は2種以上を混合した粒子であることが望ましい。
【0053】
さらに、磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されていることが望ましい。なお、磁性粒子の粒度とは、磁性粒子の平均粒径のことである。粒度が500μm以下であることにより、隔壁を製造する際に、磁性粒子を粘弾性固体に均一に分散させることが可能となる。その結果、磁性粒子が均一分散した隔壁(5)を製作することができる。このような隔壁(5)を用いることにより、調節孔(6)の制御を確実に行うことができる。特に、粒度は10μm以下に設定されていることが望ましい。
【0054】
一方、磁性粒子の粒度の下限値は限定されるものではなく、すなわち粒度は0μmを超える値であれば良い。特に、粒度が1μm以上である場合には、磁性粒子を安価に製造及び入手できる点で望ましい。
【0055】
また、粒度が10nm以下の磁性粒子である場合、例えば、粒度が10nm以下のマグネタイト粒子である場合には、これを超常磁性粒子として使用できる可能性がある。超常磁性粒子を使用することにより、次の利点がある。すなわち、もし隔壁(5)が強磁性粒子を含有した粘弾性固体で形成されている場合には、隔壁(5)に磁場が繰り返し印加されると、発熱が生じる虞がある。一方、隔壁(5)が超常磁性粒子を含有した粘弾性固体で形成されている場合には、そのような発熱は生じないという利点がある。また、強磁性粒子は残留磁化を生じるために、強磁性粒子を使用した前者の隔壁(5)は、応答性に些か難がある。一方、超常磁性粒子は残留磁化を殆ど又は全く生じないので、超常磁性粒子を使用した後者の隔壁(5)は、前者の隔壁よりも応答性に優れているという利点がある。
【0056】
ただし本発明は、磁性粒子の粒度が上記の範囲内であることに限定されるものではない。
【0057】
また、磁性粒子の形状は、球状であっても良いし、棒状や針状であっても良いし、その他の形状であっても良い。
【0058】
また、この隔壁(5)において、磁性粒子の体積を磁性粒子と粘弾性固体との合計体積で割った値を、隔壁(5)における磁性粒子の含有率(即ち体積含有率)とするとき、この含有率は15〜52体積%の範囲内であることが望ましい。ここで含有率とは、磁性粒子の体積をA、粘弾性固体の体積をBとするとき、{A/(A+B)}×100で算出される。
【0059】
含有率が上記の範囲内であることにより、隔壁(5)の弾性及び磁性を、調節孔(6)の開口度を変化させるのに適する弾性及び磁性に確実に設定することができる。詳述すると、含有率が15体積%未満の場合、磁性粒子の量が少なすぎて隔壁(5)の変形量が小さく、その結果、調節孔(6)の開口度を変化させるのが困難になる虞がある。一方、含有率が52体積%を超えた場合、隔壁(5)の変形能が磁場の強さに追随できなくなる虞があり、その結果、例えば隔壁(5)が破損する虞がある。特に望ましい含有率の範囲は25〜30体積%である。ただし本発明は、含有率が上記の範囲内であることに限定されるものではない。
【0060】
ここで、隔壁(5)が、磁性粒子としてカルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴム(詳述するとシリコーンゲル)で形成されている場合において、当該隔壁(5)の好ましい製造方法の一例は、以下のとおりである。
【0061】
すなわち、シリコーンゴムの母液とその硬化液とカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で減圧脱泡しながら撹拌器等の撹拌手段で均一に撹拌混合する。その後、この混合物を、所定の成形型の成形キャビティ内に流し込む。この際、成形キャビティ内には、予め、調節孔形成用の細棒状中子が軸方向に沿って配置されている。なお、成形型の材質としては、例えば、アクリル等のプラスチックが好適に用いられる。また、シリコーンゴムの母液とその硬化液とカルボニル鉄粒子との混合比(即ち配合比)は、質量比で、1:1:1.3〜8の範囲内であることが特に望ましい。
【0062】
次いで、成形キャビティ内の混合物を、熱風機等の加熱手段により例えば30〜70℃の温度範囲内で加熱して硬化させる。その後、硬化物を成形キャビティ内から取り出し、更に必要に応じて硬化物にトリミング加工を施すことにより、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成された隔壁(5)を製作することができる。
【0063】
磁場勾配発生手段(7)は、管路(3)内に径方向(即ちr方向)に磁場勾配を生じさせるものであり、コイル(詳述すると電磁コイル)(8)と電源(9)とを有している。そして、この磁場勾配発生手段(7)は、コイル(8)によって管路(3)内に径方向に磁場勾配を生じさせるように構成されている。
【0064】
コイル(8)は、例えば円形状のものであり、詳述すると、有限の長さのソレノイドコイル等で構成されている。そして、このコイル(8)が、管路(3)の外側(即ち管体(2)の外側)に隔壁(5)を周方向に包囲するように、管路(3)の中心軸に対して同軸状に配置されている。すなわち、コイル(8)の内側に管路(3)及び隔壁(5)が配置されている。このコイル(8)の長さ(詳述すると軸方向の長さ)は、例えば、4L〜8L(ただし、L:隔壁(5)の長さ)の範囲内に設定されている。ただし本発明は、コイル(8)の長さがこの範囲内であることに限定されるものではない。
【0065】
電源(9)は、コイル(8)に電流を供給するものであり、詳述するとコイル(8)に直流電流(I)を供給するものであって、コイル(8)に接続されている。さらに、この電源(9)は、コイル(8)への供給電流(I)を調節する可変抵抗器等の電流調節手段(10)を有しており、例えば0〜30Aの範囲内の直流電流(I)を供給可能なものである。なお、この電流調節手段(10)は、管路(3)内の径方向の磁場勾配の大きさを変化させる手段としても捉えることができる。
【0066】
さらに、磁場勾配発生手段(7)は、コイル(8)を保持する銅製コイルホルダ(12)と、コイル(8)及びコイルホルダ(12)を冷却する冷却手段として冷却ジャケット(11)とを備えている。
【0067】
冷却ジャケット(11)は、コイル(8)の外周面及びコイルホルダ(12)の外周面に装着された冷却パイプ(11a)を有している。そして、この冷却パイプ(11a)内に冷却液として例えば水を流通させることにより、コイル(8)とコイルホルダ(12)を冷却するように構成されている。
【0068】
次に、本第1実施形態の調節孔の制御装置(1A)を用いた調節孔(6)の制御方法について、その制御原理と共に以下に説明する。
【0069】
まず、磁場勾配発生手段(7)のコイル(8)に電源(9)により直流電流(I)を供給する。すると、このコイル(8)によって、図2に示すように、管路(3)内に径方向(即ちr方向)に磁場勾配が発生する。なお、図2において、Hは、コイル(8)に直流電流(I)を供給した場合の、管路(3)内の磁場である。
【0070】
このように磁場勾配が発生することにより、隔壁(5)中の多数の磁性粒子に磁場勾配の方向に力(これを「ケルビン力」という。)が作用する。その結果、隔壁(5)が弾性的に変形するとともに、この変形に伴い隔壁(5)に弾性復元力が蓄積される。そして、磁性粒子に作用するケルビン力と隔壁(5)に蓄積される弾性復元力とが釣り合うまで、隔壁(5)が変形する。このように隔壁(5)が変形することに伴い、調節孔(6)の開口度(即ち開口面積)が変化する。
【0071】
また、管路(3)内に発生した径方向の磁場勾配の大きさは、コイル(8)への供給電流(I)を増減させることにより、容易に変化させることができる。
【0072】
ここで、調節孔(6)の開口度の変化態様について、図4(A)〜(C)を参照して以下に説明する。
【0073】
図4(A)は、管路(3)内に磁場勾配を生じさせる前の隔壁(5)の状態を示す、制御装置(1A)の概略断面図である。
【0074】
図4(A)に示した制御装置(1A)において、隔壁(5)は、例えば、その周面が管路(3)の周面(即ち管体(2)の内周面)に対して非圧接状態に管路(3)内に配置されているとする。この場合、コイル(8)に直流電流(I)を供給すると、例えば図4(B)に示すように、隔壁(5)中の多数の磁性粒子がケルビン力により管路(3)の周面側に移動しようとする。その結果、調節孔(6)の直径がdからd1(d<d1)に増大するとともに、隔壁(5)の周面が管路(3)の周面上を軸方向にスライド移動しながら隔壁(5)が軸方向に延びてその長さがLからL1(L<L1)になるように変形する。このように隔壁(5)が変形した後の状態において、調節孔(6)の直径d1は、軸方向において略一定(一定)である。このd1は、コイル(8)への供給電流(I)が増加することに伴い増大する。一方、このd1は、コイル(8)への供給電流(I)が減少することに伴い減少し、更にコイル(8)への電流供給を停止することにより、d1が元の寸法であるdに戻る。
【0075】
一方、図4(A)に示した制御装置(1A)において、隔壁(5)は、例えば、その周面が管路(3)の周面に接着剤により接着固定された状態で管路(3)内に配置されているとする。この場合、コイル(8)に直流電流(I)を供給すると、例えば図4(C)に示すように、隔壁(5)中の多数の磁性粒子がケルビン力により管路(3)の周面側に移動しようとする。その結果、調節孔(6)の直径のうち軸方向両端位置の直径がdからd1(d<d1)に増大するとともに、軸方向中間位置の直径がdからd2(d<d2)に増大し、更に、隔壁(5)は、その周面が管路(3)の周面に接着固定された状態のまま軸方向等に僅かに膨出変形する。このように隔壁(5)が変形した後の状態において、調節孔(6)の直径は、軸方向中間位置(その直径d2)が最も小さく、該軸方向中間位置から軸方向両端位置(その直径d1)にぞれぞれ進むにつれて漸次増大している(即ち、d1>d2)。そして、コイル(8)への供給電流(I)が増加することに伴い、d1及びd2がそれぞれ増大する。一方、コイル(8)への供給電流(I)が減少することに伴い、d1及びd2がそれぞれ減少し、更にコイル(8)への電流供給を停止することにより、d1及びd2が元の寸法であるdに戻る。
【0076】
一方、図4(A)に示した制御装置(1A)において、隔壁(5)は、例えば、管路(3)内に圧縮状態に挿入されることで、隔壁(5)に蓄積された弾性復元力により隔壁(5)の周面が管路(3)の周面に圧接固定された状態で管路(3)内に配置されていているとする。この場合、隔壁(5)は、例えば、図4(B)に示した隔壁(5)の変形と図4(C)に示した隔壁(5)の変形とを合わせたような状態に変形する。そして、コイル(8)への供給電流(I)が増加することに伴い、調節孔(6)の直径が増大する。一方、コイル(8)への供給電流(I)が減少することに伴い、直径が減少し、更にコイル(8)への電流供給を停止することにより、直径が元の寸法であるdに戻る。
【0077】
以上のように、上記第1実施形態の調節孔の制御装置(1A)では、電流調節手段(10)によりコイル(8)への供給電流(I)を増減させて、管路(3)内の径方向の磁場勾配の大きさを変化させることにより、調節孔(6)の開口度(開口面積)を増減させ、これにより、管路(3)を通過する流体(G)の流量又は圧力を調節することができる。
【0078】
而して、上記第1実施形態の調節孔の制御装置(1A)を用いた調節孔(6)の制御方法によれば、管路(3)内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、調節孔(6)の開口度が変化されることから、調節孔(6)の開口度を繰り返し変化させた場合であっても、隔壁(5)の摩耗は殆ど生じない。さらに、隔壁(5)は粘弾性固体で形成されているから、揮発や揮散が生じない。したがって、長期間に亘って調節孔(6)を制御することができる。
【0079】
さらに、粘弾性固体で形成された隔壁(5)は、流体で形成された隔壁に比べて取り扱いが便利である上、更に隔壁(5)の管路(3)内への配置作業を容易に行うことができる。
【0080】
図5(A)〜図5(G)は、それぞれ隔壁(5)の調節孔(6)の変形例を示すものである。ただし本発明は、隔壁(5)の調節孔(6)は図5(A)〜図5(G)に示したものであることに限定されるものではなく、その他に、例えば、これらを組み合わせても良いし、その他の形状のものであっても良い。
【0081】
図5(A)では、隔壁(5)に複数個の調節孔(6)が軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。複数個の調節孔(6)の開口面積の大きさは互いに同一であり、軸方向において一定に設定されている。また、各調節孔(6)の断面形状は円形状である。なお本発明は、調節孔(6)の断面形状は、その他に、例えば楕円形状であっても良い。
【0082】
図5(B)では、隔壁(5)に複数個の調節孔(6)が軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。複数個の調節孔(6)の開口面積の大きさは大小の2種類あり、またその開口面積は軸方向において一定に設定されている。各調節孔(6)の断面形状は円形状である。
【0083】
図5(C)では、隔壁(5)に複数個の調節孔(6)が軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。複数個の調節孔(6)の開口面積の大きさは互いに同一であり、軸方向において一定に設定されている。また、各調節孔(6)の断面形状は四角形状である。なお本発明は、調節孔(6)の断面形状は、その他に、例えば、三角形状、五角形状、六角形状等の多角形状であっても良い。
【0084】
図5(D)では、隔壁(5)に複数個の調節孔(6)が軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。複数個の調節孔(6)は断面形状が円形状のものと四角形のものとがある。各調節孔(6)の開口面積は軸方向において一定に設定されている。
【0085】
図5(E)では、隔壁(5)にテーパ孔からなる調節孔(6)が軸方向に貫通して設けられている。この調節孔(6)はテーパ孔からなることから軸方向に対して開口面積が漸次増大するように形成されている。なお本発明は、調節孔(6)は、その他に、例えば、軸方向に対して開口面積が漸次減少するように形成されていても良い。
【0086】
図5(F)では、隔壁(5)にテーパ孔からなる調節孔(6)が軸方向に対して斜めの方向に貫通して設けられている。この調節孔(6)はテーパ孔からなることから軸方向に対して開口面積が漸次増大するように形成されている。なお本発明は、調節孔(6)は、その他に、例えば、軸方向に対して開口面積が漸次減少するように形成されていても良い。
【0087】
図5(G)では、隔壁(5)に直径方向に長いスリット状の調節孔(6)が軸方向に貫通して設けられており、この調節孔(6)によって隔壁(5)が2個に分割されている。
【0088】
図6は、本発明の第2実施形態に係る調節孔の制御装置(1B)を説明する図である。なお同図には、上記第1実施形態の制御装置(1A)の要素と同一の要素には同一の符号が付されている。以下、この制御装置(1B)の構成について、上記第1実施形態の制御装置(1A)と異なる点を中心に以下に説明する。
【0089】
この制御装置(1B)では、管体(2)の管路(3)内を光が軸方向に通過する。管体(2)は詳述すると丸管体である。また、隔壁(5)は円板状のものであり、管路(3)内に横断状に配置されている。さらに、この隔壁(5)の中心部には、管路(3)内を通過する光の量を調節する調節孔(6)が、軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。この調節孔(6)の断面形状は円形状である。制御装置(1B)は、この調節孔(6)を制御するものである。この調節孔(6)は、例えばアイリスとして機能するものである。
【0090】
この制御装置(1B)は、例えば、カメラ等の撮像装置における絞り装置に用いられる。なお、(20)は被写体、(21)は感光面等のスクリーンである。
【0091】
この制御装置(1B)を用いた調節孔(6)の制御方法は、上記第1実施形態と同じであり、これを簡単に説明すると以下のとおりである。
【0092】
すなわち、磁場勾配発生手段(7)のコイル(8)に電源(9)により直流電流を供給することにより、管路(3)内に径方向に磁場勾配を生じさせる。これにより、隔壁(5)の調節孔(6)の開口度(開口面積)が増大し、もってスクリーン(21)に到達する光量が増加する。一方、コイル(8)への供給電流を減少させることにより、調節孔(6)の開口度が減少し、もってスクリーン(21)に到達する光量が減少する。
【0093】
以上のように、この制御装置(1B)では、コイル(8)への供給電流を増減させて、管路(3)内の径方向の磁場勾配の大きさを変化させることにより、調節孔(6)の開口度を増減させ、これにより、管路(3)を通過する光量を調節することができる。
【0094】
以上で、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示したものに限定されるではなく、様々に設定変更可能である。
【0095】
例えば、本発明では、磁場勾配発生手段(7)のコイル(8)に供給する電流(I)は、直流電流の他に、例えば、交流電流(例:低周波数の交流電流)であっても良いし、脈動電流であっても良い。
【0096】
また、本発明では、コイル(8)への供給電流(I)を制御する方法は、電源(9)等に設けられた電流供給スイッチについてonとoffを所定の周期で交互に繰り返すことにより制御を行う方法、即ちon−off制御方法であっても良いし、あるいは、コイル(8)への供給電流(I)を時間的に徐々に増加又は減少させるとともに、このような増加と減少を所定の周期で交互に繰り返すことにより制御を行う方法であっても良いし、その他の制御方法であっても良い。
【0097】
また、本発明では、磁場勾配発生手段(7)は、コイル(8)の他に、例えば、管路(3)の外側(即ち管体(2)の外側)に配置された永久磁石又は電磁石を有するものであり、この永久磁石又は電磁石によって管路(3)内に径方向に磁場勾配を生じさせるように構成されていても良い。この場合、永久磁石又は電磁石を、例えば、管路(3)に近づけたり、管路(3)の軸方向に移動させたり、周方向に移動させたり、回転させたりすることにより、調節孔(6)の開口度を増減させることができる。
【0098】
また、本発明では、管路(3)の断面形状は、円形状の他に、例えば、四角形や六角形等の多角形状であっても良い。
【0099】
また、本発明では、磁性粒子は、粘弾性固体に均一に分散した状態に含有されていても良いし、不均一に分散した状態に含有されていても良い。
【実施例】
【0100】
次に、本発明に係る調節孔の制御装置が流体の流量を調節可能か否かについて実験した実施例(実験例)を以下に説明する。ただし本発明は、この実施例に示したものに限定されるものではない。
【0101】
<制御装置(1C)の構成>
図7は、本実施例(実験例)で使用した調節孔の制御装置(1C)の概略図である。この制御装置(1C)において、管体(2)の管路(3)の直径D(図2参照)は12mmである。また、管体(2)は透明アクリル製であり、その肉厚は1〜2mmである。隔壁(5)の長さLは12mmである。調節孔(6)は、図3に示すように隔壁(5)の中心部に管路(3)の軸方向に真っ直ぐに貫通して設けられている。調節孔(6)の直径dは1.0mmである。
【0102】
この制御装置(1C)において、(51)は電動モータ、(52)は速度コントローラ、(53)はボールねじ、(54)はピストンロッド、(55)は連結プレート、(56)はシリンダ、(57)は供給タンク、(58)は流量調節弁、(59)は貯留タンク、(60)はエアーコンプレッサ、(61)は圧力計、(62)はビデオカメラ、(63)はモニタ、(64)は差圧計、(65)は、コイル(8)を冷却する冷却手段のコントローラである。
【0103】
隔壁(5)は、強磁性粒子を含有した粘弾性固体で形成されたものであり、その材質は以下のとおりである。
【0104】
<隔壁(5)の材質>
磁性粒子:カルボニル鉄粒子(BASF社製、商品名「CM」)
磁性粒子の粒度:表1に示す
磁性粒子の粒子密度:3.7×103kg/m3
磁性粒子の磁性:強磁性
磁性粒子の形状:球状
粘弾性固体:シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SE1885A&B」)
粘弾性固体の粘度:0.5Pa・s
粘弾性固体の密度:1.0×103kg/m3
なお、磁性粒子及び粘弾性固体の上記の特性は、いずれも25℃における特性である。
【0105】
また、隔壁(5)は次の製造方法により製作されたものである。
【0106】
<隔壁(5)の製造方法>
シリコーンゲルの母液(商品名「SE1885A」)とその硬化液(商品名「SE1885B」)とカルボニル鉄粒子とを、表1に示した配合比(質量比)で減圧脱泡しながら撹拌器で均一に撹拌混合した。次いで、この混合物を、アクリル製成形型の成形キャビティ内に流し込んだ。この際、成形キャビティ内には、予め、調節孔形成用の細棒状中子が軸方向に沿って配置されている。次いで、成形キャビティ内の混合物を熱風機により30〜70℃の温度範囲で加熱して硬化させた。その後、この硬化物を成形キャビティ内から取り出すことにより、図3に示した所望する隔壁(5)を製作した。
【0107】
こうして製作された隔壁(5)において、カルボニル鉄粒子の含有率(単位:体積%)は表1のとおりである。なお含有率は、カルボニル鉄粒子の体積をA、シリコーンゲルの体積をBとするとき、{A/(A+B)}×100で算出した。
【0108】
【表1】
【0109】
<調節孔の制御試験>
表1中の実施例1〜7の隔壁(5)を準備し、各隔壁(5)を制御装置(1C)の管路(3)内に配置した。次いで、磁場勾配発生手段(7)のコイル(8)に電源(9)により直流電流(I)を0〜30Aの範囲内で供給し、管路(3)内の代表的な磁場の強さHz※と、調節孔(6)の開口面積Sとの関係を測定した。その結果の一例を図8にグラフで示す。なお図8は、表1中の実施例2の隔壁(5)を使用した場合のものである。
【0110】
図8において、Hz※は、管路(3)内の代表的な磁場の強さとして、z軸の原点0(図2参照)での磁場の強さであり、すなわち管路(3)の中心軸上における隔壁(5)の軸方向中間位置での磁場の強さである。ここで、コイル(8)に0、10、20及び30Aの直流電流を供給した場合、Hz※は、それぞれ、0、0.0556、0.1112及び0.1668MA/mである。
【0111】
図8に示すように、コイル(8)への供給電流(I)を増加させてHz※を大きくすることに伴い、調節孔(6)の開口面積Sが増大し、一方、コイル(8)への供給電流(I)を減少させてHz※を小さくすることに伴い、調節孔(6)の開口面積Sが減少した。したがって、コイル(8)への供給電流(I)を増減させることにより、調節孔(6)の開口度(開口面積S)を変化させ得ることを確認できた。
【0112】
図9の(A)〜(D)は、それぞれ、Hz※=0MA/m(I=0A)、Hz※=0.0556MA/m(I=10A)、Hz※=0.1112MA/m(I=20A)、及びHz※=0.1668MA/m(I=30A)の場合における、ビデオカメラ(62)で撮影した隔壁(5)の調節孔(6)の写真である(図10参照)。これらの図(写真)から、Hz※が増大することに伴い、調節孔(6)の開口度(開口面積S)が増大することを確認でき、また、Hz※が減少することに伴い、調節孔(6)の開口度(開口面積S)が減少することも確認できた。
【0113】
実際に、制御装置(1C)の管路(3)内に上流側から流体として空気を供給しながら、コイル(8)への供給電流(I)を増減させたところ、表1に示した全実施例の各隔壁について、空気の流量を調節することができたし、更に空気の圧力を調節することができた。また、流体として空気の代わりに水を使用した場合にも、同じく、水の流量を調節することができたし、更に水圧を調節することができた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、管路内を通過する光の量、流体の流量又は流体の圧力を調節する調節孔の制御方法及び調節孔の制御装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1実施形態に係る調節孔の制御装置の断面図である。
【図2】同制御装置の概略説明図である。
【図3】同制御装置の隔壁の斜視図である。
【図4(A)】同制御装置の管路内に磁場勾配を生じさせる前の隔壁の状態を示す概略断面図である。
【図4(B)】同制御装置の管路内に磁場勾配を生じさせたときの隔壁の一変形状態を示す概略断面図である。
【図4(C)】同制御装置の管路内に磁場勾配を生じさせたときの隔壁のもう一つの変形状態を示す概略断面図である。
【図5(A)】隔壁の第1変形例を示す斜視図である。
【図5(B)】隔壁の第2変形例を示す斜視図である。
【図5(C)】隔壁の第3変形例を示す斜視図である。
【図5(D)】隔壁の第4変形例を示す斜視図である。
【図5(E)】隔壁の第5変形例を示す斜視図である。
【図5(F)】隔壁の第6変形例を示す斜視図である。
【図5(G)】隔壁の第7変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る調節孔の制御装置の概略断面図である。
【図7】本発明の実施例(実験例)で使用した調節孔の制御装置の概略図である。
【図8】代表的な磁場の強さHz※と調節孔の開口面積Sとの関係を表すグラフである。
【図9】幾つかの代表的な磁場の強さHz※において調節孔を撮影した写真である。
【図10】図9中の(A)の説明図である。
【符号の説明】
【0116】
1A、1B、1C…調節孔の制御装置
2…管体
3…管路
5…隔壁
6…調節孔
7…磁場勾配発生手段
8…コイル
9…電源
11…冷却ジャケット(冷却手段)
G…流体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光又は流体が通過する管路内に、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成された隔壁が横断状に配置されるとともに、前記隔壁に、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられており、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、前記調節孔の開口度を変化させることを特徴とする調節孔の制御方法。
【請求項2】
前記磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されている請求項1記載の調節孔の制御方法。
【請求項3】
前記粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムである請求項1又は2記載の調節孔の制御方法。
【請求項4】
前記磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子である請求項1〜3のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【請求項5】
前記磁性粒子の体積を前記磁性粒子と前記粘弾性固体との合計体積で割った値を、前記隔壁における磁性粒子の含有率とするとき、
前記含有率は15〜52体積%の範囲内に設定されている請求項1〜4のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【請求項6】
前記隔壁は、シリコーンゴムの母液とその硬化液と前記磁性粒子としてのカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成されている請求項1〜5のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【請求項7】
前記管路の外側に前記隔壁を周方向に包囲するように配置されたコイルによって磁場勾配を生じさせる請求項1〜6のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【請求項8】
光又は流体が通過する管路と、
前記管路内に横断状に配置され、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成されてなり、且つ、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられた隔壁と、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせる磁場勾配発生手段と、
を備えていることを特徴とする調節孔の制御装置。
【請求項9】
前記磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されている請求項8記載の調節孔の制御装置。
【請求項10】
前記粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムである請求項8又は9記載の調節孔の制御装置。
【請求項11】
前記磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子である請求項8〜10のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【請求項12】
前記磁性粒子の体積を前記磁性粒子と前記粘弾性固体との合計体積で割った値を、前記隔壁における磁性粒子の含有率とするとき、
前記含有率は15〜52体積%の範囲内に設定されている請求項8〜11のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【請求項13】
前記隔壁は、シリコーンゴムの母液とその硬化液と前記磁性粒子としてのカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成されている請求項8〜12のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【請求項14】
前記磁場勾配発生手段は、前記管路の外側に前記隔壁を周方向に包囲するように配置されたコイルによって磁場勾配を生じさせるように構成されている請求項8〜13のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【請求項15】
光又は流体が通過する管路と、
前記管路内に横断状に配置され、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられた隔壁と、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせる磁場勾配発生手段と、
を備えた調節孔の制御装置に用いられる隔壁の製造方法であって、
シリコーンゴムの母液とその硬化液とカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで隔壁を形成することを特徴とする調節孔制御装置用隔壁の製造方法。
【請求項1】
光又は流体が通過する管路内に、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成された隔壁が横断状に配置されるとともに、前記隔壁に、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられており、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせることにより、前記調節孔の開口度を変化させることを特徴とする調節孔の制御方法。
【請求項2】
前記磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されている請求項1記載の調節孔の制御方法。
【請求項3】
前記粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムである請求項1又は2記載の調節孔の制御方法。
【請求項4】
前記磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子である請求項1〜3のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【請求項5】
前記磁性粒子の体積を前記磁性粒子と前記粘弾性固体との合計体積で割った値を、前記隔壁における磁性粒子の含有率とするとき、
前記含有率は15〜52体積%の範囲内に設定されている請求項1〜4のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【請求項6】
前記隔壁は、シリコーンゴムの母液とその硬化液と前記磁性粒子としてのカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成されている請求項1〜5のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【請求項7】
前記管路の外側に前記隔壁を周方向に包囲するように配置されたコイルによって磁場勾配を生じさせる請求項1〜6のいずれか1項記載の調節孔の制御方法。
【請求項8】
光又は流体が通過する管路と、
前記管路内に横断状に配置され、磁性粒子を含有する粘弾性固体で形成されてなり、且つ、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられた隔壁と、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせる磁場勾配発生手段と、
を備えていることを特徴とする調節孔の制御装置。
【請求項9】
前記磁性粒子は、粒度が500μm以下に設定されている請求項8記載の調節孔の制御装置。
【請求項10】
前記粘弾性固体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、ポリエチレンゴム、ネオプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される1種又は2種以上のゴムである請求項8又は9記載の調節孔の制御装置。
【請求項11】
前記磁性粒子は、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子及びマグネタイト粒子からなる群より選択される1種又は2種以上の粒子である請求項8〜10のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【請求項12】
前記磁性粒子の体積を前記磁性粒子と前記粘弾性固体との合計体積で割った値を、前記隔壁における磁性粒子の含有率とするとき、
前記含有率は15〜52体積%の範囲内に設定されている請求項8〜11のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【請求項13】
前記隔壁は、シリコーンゴムの母液とその硬化液と前記磁性粒子としてのカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで形成されている請求項8〜12のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【請求項14】
前記磁場勾配発生手段は、前記管路の外側に前記隔壁を周方向に包囲するように配置されたコイルによって磁場勾配を生じさせるように構成されている請求項8〜13のいずれか1項記載の調節孔の制御装置。
【請求項15】
光又は流体が通過する管路と、
前記管路内に横断状に配置され、光量、流体流量又は流体圧力を調節する調節孔が軸方向に貫通して設けられた隔壁と、
前記管路内に径方向に磁場勾配を生じさせる磁場勾配発生手段と、
を備えた調節孔の制御装置に用いられる隔壁の製造方法であって、
シリコーンゴムの母液とその硬化液とカルボニル鉄粒子とを質量比で、1:0.1〜1.5:1.3〜8の範囲内で混合した後、加熱硬化して得られた、カルボニル鉄粒子を含有したシリコーンゴムで隔壁を形成することを特徴とする調節孔制御装置用隔壁の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図5(C)】
【図5(D)】
【図5(E)】
【図5(F)】
【図5(G)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図5(C)】
【図5(D)】
【図5(E)】
【図5(F)】
【図5(G)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【公開番号】特開2007−287815(P2007−287815A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111598(P2006−111598)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】
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