識別タグ、識別されるように適合された対象物、ならびに関連する方法、装置およびシステム
開示されているのは、可読情報を収容する識別層(103)を保持する対象物(200)(たとえば、クレジットカード、紙幣、文書、ラベル、その他)である。識別層は、ランダムに分布した導電性/帯磁可能粒子(303)、半導電性粒子、光活性粒子などを含むことが可能である。識別層は、上部層(105)および下部層(104)に挟まれて、対象物を形成する。少なくとも粒子のいくつかが、対象物の1つのエッジ(102)に沿って露出され、そのエッジに沿って動く読み取りヘッド(201)によって読み取られることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、識別タグが添付されることが可能な対象物を識別する、その識別タグと、識別されるように適合された対象物とに関する。特に、本発明は、それぞれが、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備える、そのような識別タグと、識別されるように適合された対象物とに関する。さらに、本発明は、読み取り装置と、識別装置と、識別システムと、識別タグを形成する方法と、識別タグまたは識別されるように適合された対象物から識別特徴(情報)を読み取る方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]識別技術は、長年にわたり、広く関心が持たれ、開発が行われてきた分野である。識別の一般的な方法は、可読タグの使用に依存する。そのようなタグは、目に見える程度のバーコード、ホログラム、および機械可読タグ(磁気ストライプや無線識別(RFID)チップなど)から、顕微鏡で見える程度の蛍光インクおよびミクロンサイズの散乱粒子まで様々である。
【0003】
[003]識別技術に絶えず関心が持たれる主な理由の1つは、詐欺行為の発生が、安全でない方式で取引が行われてきたことに大きく起因することである。より安全な取引システムが求められているのは明らかである。たとえば、パスポート、証明書、労働許可証、ビザ、自動車免許証などの個人文書、ATMカード、クレジットカード、通貨、小切手などの商業証券、および他の商取引証書を、取引の時点で確実に認証することが必要とされている。別の例では、コンパクトディスク(CD)やデジタル多用途ディスク(DVD)などのアイテムに一意のフィンガープリントを付けて不正コピーの使用を防ぐことができれば、ソフトウェア産業やエンタテインメント産業にとって大きな恩恵となるであろう。さらに別の例では、商品価値が非常に高い物品(宝石、手工芸品、骨董品など)の取引の場合には、そのような物品を受け入れる側が、その物品のアイデンティティを確認してからクレジットを発行することが可能であることが不可欠である。より一般的なレベルでは、そのアイデンティティを後で確認される必要がある任意の物理的物体に対する、安価で信頼性が高い認証システムも必要とされている。これは、商業に関しては、「ブランド保護」を容易にする。
【0004】
[004]様々な識別方法が知られており、以下ではそれらについて記載する。
【0005】
[005]よく知られている識別方法の1つは、クレジットカードに見られるような磁気ストライプ(磁気バーコードとも呼ばれる)にエンコードされた情報を使用する。磁気ストライプは、典型的には、樹脂で固められた微小磁性粒子で構成される。これらの粒子は、カードに直接塗布されるか、カードに塗布されたプラスチック基材の上でストライプになる。このストライプは、それらの粒子(たとえば、鉄の粒子)の各領域が特定方向に磁化されて(すなわち、ストライプ内の磁性粒子の極性が局所的に変化させられて)情報の各ビットが定義されることにより、エンコードされる。ストライプの長さに沿ってエンコードの向きを変えることによって、情報がストライプに書き込まれ、保存される。したがって、ユーザアカウント番号などの識別情報が、最初に書き込みヘッドによって磁気ストライプにプログラムされ、その後、その磁気ストライプを読み取りヘッドで読み取ることによって確認される。その後、ユーザの確認は、ユーザが(たとえば)文書または伝票に署名をするか、個人識別番号を入力して、ユーザのアイデンティティが確認されることによって行われる。
【0006】
[006]そのようなシステムは、本質的に、安全ではない。なぜなら、磁気ストライプにエンコードされた署名およびデータは、偽造が容易に可能だからである。さらに、磁気媒体は、磁気ストライプが磁界に接近したときに、破損しやすい。
【0007】
[007]以下では、識別装置の分野の先行技術について述べる。
【0008】
[008]欧州特許出願公開第0824242(A2)号明細書には、物品の表面にあって、その位置が読み取られ、一意署名を与えるために使用される、ランダム磁気ロッド、ランダム磁気ファイバ、またはランダム磁気フィラメントが記載されている。
【0009】
[009]米国特許出願公開第2001/0010333号明細書には、クレジットカードおよび他の平面/積層構造物によって案内される光の作用を測定して、そのアイテムのエッジに現れる一意パターンを検出することが記載されている。この文献ではさらに、そのようなファイバのあらかじめ決められたパターンおよびランダムパターンと、不透明領域および透明領域から散乱する光の作用とを用いて、識別用パターンを生成することが考察されている。
【0010】
[010]米国特許第4218674号明細書には、対象物を識別する手段として、材料のランダムな表面欠陥を測定することが記載されている。
【0011】
[011]PCT出願の国際公開第2004/013735号パンフレットには、たとえば磁性トナーを用いて印刷される識別手段が記載されている。これは、2Dバーコードパターンとよく似ており、対象物にセキュリティ情報を、ビットマップに似た画素形式で書き込む手段である。
【0012】
[012]PCT出願の国際公開第87/01845号パンフレットおよび欧州特許第0236365(B1)号明細書は、ランダムファイバに対するマイクロ波問合せを認証用信号の作成手段として使用することを開示している。
【0013】
[013]欧州特許出願公開第0696779(A1)号明細書は、クレジットカードなどの対象物の表面に印刷された磁気インクのランダムパターンを使用することを開示している。
【0014】
[014]欧州特許第0583709(B1)号明細書は、カード上の粒子のランダムな分布を電磁スキャンによって表面全体にわたって測定し、そのシグネチャをカード上のメモリチップにリンクさせることを開示している。
【0015】
[015]欧州特許第0820031(B1)号明細書は、クレジットカード上のストリップを、全領域が磁性材料を含むカードに置き換えることを開示している。
【0016】
[016]PCT出願の国際公開第03/017192号パンフレットは、誘導読み取りヘッドを用いて問い合わせられる、対象物の表面上の磁気ファイバまたは磁気フィラメントに関する。
【0017】
[017]米国特許出願公開第2002/0145050号明細書は、データをカードの磁気ストライプの微細構造に関連付けてその磁気ストライプに格納し、それを生体計測データとリンクする。
【0018】
[018]欧州特許第1031115(B1)号明細書は、磁性粒子フィンガープリントを文書の表面に添付し、そのシグネチャを読み取り、それと別の添付されたラベルとを相互に参照することを開示している。
【0019】
[019]米国特許第5430279号明細書は、磁気ストライプ内の磁気ジッタを(チェックサム方式を用いて)検出および認証する方法および回路を説明している。
【0020】
[020]米国特許第4395628号明細書は、磁性材料のマイクロドットを、カードのセキュリティシステムの一環として(たとえば、レーザビームを用いて)カードに書き込まれた一意パターンとして使用することを開示している。
【0021】
[021]米国特許第4557550号明細書は、2つのストライプ(1つは記録可能、もう1つは永続的)を用いてカードの安全性を向上させることを開示している。
【0022】
[022]最後に、米国特許第6254002(B1)号は、ランダムに分布した磁性粒子をカジノチップの表面および/またはエッジに添付して、磁気可読情報のソースを形成する、カジノチップの分野における反偽造セキュリティシステムを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
[023]しかしながら、先行技術による識別システムの多くにおいては、簡単かつ効率的な方式での読み取りが可能であって、製造コストが低く、十分に安全な確認を可能にする(すなわち、識別の信頼性が十分に高い)識別タグが開示されていない。
【0024】
[024]本発明の目的は、容易かつ効率的な読み取りが可能であって、高価でなく、識別の信頼性が十分に高い識別システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
[025]この目的は、特に、各独立クレームにおいて定義されるように、識別タグと、識別されるように適合された対象物と、読み取り装置と、識別装置と、識別システムと、識別タグの形成方法と、識別されるように適合された対象物の形成方法と、識別特徴の読み取り方法と、を提供することによって達成される。
【0026】
[026]そのような識別タグは、識別タグが添付されることが可能な対象物を識別する識別であり、前記識別タグは、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、識別特徴を読み取るためのトラックは、このトラックからのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別層の最も薄い寸法部分を露出する。一実施形態では、識別タグは、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別タグが対象物に添付可能であるよう適合される。
【0027】
[027]識別されるように適合された対象物は、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、識別特徴を読み取るためのトラックは、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別層のその最も薄い寸法部分を露出する。
【0028】
本発明をさらに詳しく説明する前に、以下で、本明細書で用いる用語を、図1Aおよび図1Bを参照して明らかにする。図1Aに示すように、本発明のタグおよび対象物は、1つ以上(たとえば、2つまたは3つ)の層を有する層構造を備えることが可能である。
【0029】
・層1は、可読識別特徴が中に置かれた識別層であり、この識別層はa×b×cの寸法を有する。この識別層1は、典型的には、少なくともその一部分において、可読識別特徴を形成する、ランダムに分布した複数の粒子を含む。典型的には、識別層1の厚さ「a」は、「b」または「c」より小さく、大幅に小さいことが好ましい。識別層1は矩形である必要はないが、矩形の場合は、bおよびcは、面内形状の範囲において最も大きい寸法である。この点において、「層」は、2つの次元においてかなり長いか、伸ばされ、残る第3の次元において薄い構造を意味することに注意されたい。
【0030】
・後でも説明するように、識別層1は、自己支持形(たとえば、ポリマーのシートに散布された粒子)であってよく、したがって、層2および/または3は、実施形態によっては存在しなくてもよい。
【0031】
・識別層1は、不連続であってよい。すなわち、個別に散乱した粒子であってよい。ただし、それらの粒子はほとんどすべてが一平面内に存在し、その場合、少なくとも層2または層3が、支持または粘着のために存在する。
【0032】
・層2および3は、存在する場合には、層1と異なる寸法であってよく、互いに異なる寸法であってよい。a<fであることもa<iであることも必要条件ではないが、本発明のタグまたは対象物の実施形態によっては、優先される場合がある。
【0033】
・トラック4は、識別層の最も薄い寸法部分(図1の寸法部分「a」)を露出するように、層1の1つまたは複数のエッジから形成される。このトラックからのみ、少なくとも識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能である。本明細書で用いられる「意味があるように読み取られることが可能」は、トラックが読み取られると、識別目的に用いられる一意の信号が得られることを意味する。これは、本発明の対象物またはタグにおいて、識別層1のb-c平面に沿うかb-c平面内にある任意のエッジまたは部分を読み取りのために露出することが必須でないことを意味する。むしろ、タグまたは対象物は、トラック4だけが読み取り可能であり、したがって、識別層のb−c平面に沿うかb−c平面内にあるエッジまたは部分に沿っての読み取りは実行されないか、実行される必要がないように、設計/適合されるのが通例である。しかしながら、本発明を実施する際には、最も薄い寸法部分「a」から形成されたトラックに加えて、他の領域(たとえば、識別層のa−b平面内の一部分)も必要に応じて読み取り可能であることにも注意されたい。
【0034】
・トラック4を読み取ると、本明細書では「フィンガープリント」と呼ばれる一意信号(磁気信号、電気信号、光信号など)が得られる。このフィンガープリントは、(エンコード、デジタル処理、暗号化、圧縮、必要に応じて一部のみを指定するためのフィルタリングなど、任意の好適な処理方法を用いて)「シグネチャ」として保存されることが可能である。
【0035】
・フィンガープリントは、露出しているトラックの一部または全体を読み取ることにより(たとえば、識別層1の1つのエッジの一部分のみに沿って、または識別層1の1つのエッジの全体に沿って、またはさらに、識別層1のコーナー周辺または全周に沿って(トラックを形成するために露出している場合)読み取ることにより)取得可能である。
【0036】
・層1は、クレジットカードやCD−ROMの例のように、対象物自体の一部として含まれてよい(層2および/または3などの他の層も対象物の一部として存在してよい)。代替として、本発明のタグにおいては、層1、2、および3は、別の対象物に添付された対象物自体(タグ)であってよい。
【0037】
・トラックの読み取りは、任意の好適な読み取り素子により行われる。読み取り素子(または複合素子)(「読み取り素子」は、トラックに沿ってフィンガープリントを検出する、1つまたは複数のセンサ)の寸法(高さ=図1Bのj)は、読み取り素子がトラックの端から端まですべてのフィンガープリント情報をセンスするように、トラック幅と等しいか、好ましくはトラック幅より大きい。読み取り素子がトラック幅より狭い場合、読み取り素子は、トラック幅より大きいか等しい幅の領域をスキャンするように、動かされる。その領域をスキャンする一例示的方法を、図1Hに示す。この図では、スキャン幅を「j」としている。さらに、読み取り装置が、光磁気読み取りのような遠隔読み取り技術に基づく場合、前述のような「読み取り素子」および関連付けられた寸法「j」は、物理的な素子の寸法ではなく、(たとえば、光ビームで)スキャンされる領域の幅を意味することを理解されたい。
【0038】
[028]別の実施形態では、本発明は、識別されるべき識別タグまたは対象物の中に置かれた識別特徴を読み取る読み取り装置を提供する。この読み取り装置は、
識別層の中に置かれた情報を読み取るように適合された読み取り素子であって、前記識別層が、既に開示された識別タグまたは対象物の中に置かれた、読み取り素子と、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内する案内手段と、を備える。
【0039】
[029]さらに、識別タグが添付された対象物を識別する識別装置が提供され、識別装置は、前述の特徴を有する識別タグを備え、前記識別タグが添付された対象物を備える。
【0040】
[030]これの上位に、本発明は、対象物を識別する識別システムを提供し、識別システムは、前述のように識別層を備える識別タグまたは対象物と、前記識別タグの中に置かれた識別情報を読み取る、前述の特徴を有する読み取り装置と、識別情報を読み取って得られた情報を保存するデータ記憶媒体と、を備える。
【0041】
[031]さらに、本明細書では、対象物を識別するための識別タグを形成する方法、または識別されるべき対象物を形成する方法が開示される。タグまたは対象物は、識別特徴が中に置かれた識別層を少なくとも備える。この方法は、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、トラックが、識別層のその最も薄い寸法部分を露出するように、識別特徴を読み取るための前記トラックを形成するステップを含む。
【0042】
[032]さらに、識別タグの中に置かれた識別情報を読み取る方法が提供され、この方法は、
読み取り素子を用いて、前述のように識別層の中に置かれた識別特徴を、識別層の最も薄い寸法部分を露出したトラックから読み取るステップと、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内するステップと、を含む。
【0043】
[033]本発明の基本概念は、識別されるべき対象物、または識別タグ(すなわち、アイデンティティを確認されるべき対象物に添付可能であるか、添付されているか、埋め込まれたタグ)を提供することであり、読み取りのために層構造の「主表面」を用いられるのではなく、典型的には、可読識別層の最も薄い寸法部分だけが、識別層に収容されている識別特徴の読み取りのためにアクセス可能であるように、可読識別層が露出している。「主表面」は、本明細書では、より大きな、またはより突出している表面の1つであると定義される。たとえば、図1Aでは、b−c平面にある表面が「主表面」であり、a−c平面にある表面は、エッジがより狭く、本明細書で用いられる定義での「主表面」を構成しない。したがって、本発明では、識別されるべき対象物または識別タグの「主表面」面積より通常は格段に小さい表面積を有する表面が、一般には、可読識別層を露出するトラックを提供する表面として用いられる。
【0044】
[034]しかしながら、典型的には少なくとも1つのエッジから形成されるトラックだけが識別層のサンプリングに用いられる場合でも、識別層内に埋められる(層構造の一部になりうる)、識別層の材料が、読み出されて対象物またはタグのアイデンティティを確認するための識別情報を提供するフィンガープリントおよびそのシグネチャに寄与することも可能である。このアプローチは、本発明の対象物またはタグの偽造を非常に困難にする。
【0045】
[035]たとえば、識別層が、長さ寸法x、y、zを有する直方体(これは、識別されるべき対象物であっても、識別タグであってもよい)の中に識別層が形成される場合には、識別層は、その直方体の中に、寸法a、b、cを有する狭い平面として形成される(図1Gも参照)。図1Gに示すように、識別層は、典型的には、少なくとも前記直方体の周囲面またはエッジの1つまで延び、そこで、狭いトラックが識別特徴を露出する。たとえば、識別層が図1Gに示されるように露出している場合、典型的には、a≦x、a<<y、および、c>x、c≦yである。この場合は、前に定義されたように、直方体のy−z面が直方体の「主表面」を構成する。
【0046】
[036]本明細書に記載の対象物または識別タグの中の識別情報を容易かつ確実に読み出すために、本発明の識別タグに適合された読み取り装置が提供され、その読み取り装置において、可読識別情報が中に置かれた識別層の1つのエッジの少なくとも一部から形成された前記トラックに沿って読み取り素子が案内される。より詳細には、読み取り素子は、好ましくは、識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックと平行または(後で定義されるように)「ほぼ平行」に、対象物または識別構造に沿って動くことが可能であり、案内手段は、(識別情報と呼ばれることも可能な)識別特徴が正確かつ明確に読み出されることが可能であるように、可読識別層内の可読識別特徴に対する読み取り素子の相対的な方向を、適正な対応関係に保つ。図1Iは、トラックと平行に動く読み取り素子を示す。図1Jは、トラックと「ほぼ平行」に動く読み取り素子を示し、この場合の素子の動きは、素子がその動きの全体で、適切な識別情報を収容する、トラックの領域をまたぐのであれば、容認可能である。読み取り素子が(図1Hに示されるように)トラックを端から端までスキャンした場合、スキャンされた領域は、少なくとも、上記で定義されたように、トラックと「ほぼ平行」でなければならない。これに関連して、識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックは、約1ミリメートル以下から約100ナノメートルの幅を有してよいことに注目されたい。実施形態によっては、トラック幅は、約500マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、約1マイクロメートル未満、または約500ナノメートル未満である。この点において、トラック幅は、識別層の、タグまたは対象物に埋め込まれている領域の幅(最も薄い寸法部分)より大きくても小さくてもよいことにも注意されたい(図1G(ii)を参照)。そこで、識別層103の(図1Aで定義された)寸法「a」および「b」を、図1G(ii)に示す。ここで、「a」は、識別層を含む平面の厚さとして測定される。寸法「b」は、識別層の露出面と、有意の面外突起161の開始点との間の距離として定義される。ここで、トラックによって露出される最も薄い寸法部分は、識別層のこの説明に従う、識別層の最も薄い寸法部分である。
【0047】
[037]本明細書に記載の識別層を備える識別タグまたは対象物は、低コストでの製造が可能である。低コストであることは、たとえば市場において競争力のある価格が付けられる識別タグにとっての必須条件である。本発明の教示により、フィンガープリントは、識別層から確実に読み取られることが可能であり、識別されるべき対象物または識別タグの中に置かれた識別情報の模倣に対する保護が強化される。
【0048】
[038]さらに、識別特徴を備える識別層は非常に薄いのが普通であり(上記を参照)、本発明の例示的製造方法は、高コストのリソグラフィパターニングを必要とせずに、容易に製造され、明確に範囲が定められたトラックを提供するので、識別システムの信頼性は高められる。
【0049】
[039]したがって、識別情報の読み取りが容易に可能であり、製造コストが高くなく、識別の信頼性が十分に高い識別システムが提供される。
【0050】
[040]次に、本発明の識別タグおよび対象物の好ましい実施形態について説明する。これらの実施形態は、読み取り装置、識別装置、識別システム、識別タグの形成方法、および識別情報の読み取り方法にも適用可能である。
【0051】
[041]一実施形態では、本発明のタグまたは対象物の層構造は、識別層の下に支持層を備えることが可能である。さらに、タグまたは対象物は、覆い層を備えて、支持層と覆い(最上)層との間に識別層が配置されるようにすることが可能である。基本的には、識別層と互換である材料であれば、支持層および/または覆い層の両方に用いることが可能である。好適な材料の例として、プラスチック、金属、セラミック、繊維、革または木のような天然材料、ガラス、およびこれらの組み合わせがあり、これらに限定されない。好適なプラスチックの例として、バッグ、クレジットカード、パッキング材料、薄板などのプラスチック製品の製造に一般的に使用される、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)クリレートなどのポリマー材料がある。好適なガラスおよびセラミックとして、アルミナ、シリカ、ボーンチャイナ、エナメル、ガラスフリットなどがあり、これらに限定されない。
【0052】
[042]支持層(二層構造の場合)またはサンドイッチ構造(三層構造の場合)を使用することにより、識別層は、構造的に支持され、(サンドイッチ構造の場合には)上方および下方に対して電磁的に遮蔽されることも可能である。そのような層構造はさらに、識別層の最も薄い寸法部分を(エッジから)露出することを可能にする。識別層の最も薄い寸法部分(および、したがって、識別層の1つまたは複数のエッジから得られるトラック)は、容易に露出されることが可能であり、これは、識別層(または、支持層および/または覆い層が使用されている場合には、層構造)を、識別層または層構造の平面に対して10度を超える角度で(または、実施形態によっては、平面にほとんど垂直に)単純に切削、研磨、または磨削することにより可能である。
【0053】
[043]識別タグの層構造は、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つの別の識別層を備えることが可能である。
【0054】
[044]1つまたは複数の追加識別層を与えることにより、識別特徴を複数の識別層に分割して、安全性をさらに高めることが可能である。これは、それらの識別層に含まれた情報を模倣するのに必要な労力が、分割によって大幅に増えるためである。さらに、この対策は、システムに冗長性を導入して、識別タグの信頼性をさらに高めることが可能である。
【0055】
[045]層構造は、前記識別層と前記別の識別層との間に配置された少なくとも1つの中間層を備えることが可能である。
【0056】
[046]この対策をとることにより、異なる識別層同士を空間的に分離して、前記識別層に設置された情報を別々に、および/または同時に読み取ることが可能になる。したがって、本発明の識別タグまたは対象物の信頼性をさらに高める、さらなる冗長性を含めることが可能である。
【0057】
[047]本発明のタグまたは対象物はさらに、識別特徴を読み取るプロセスの間の読み取り素子のアライメントを容易にするアライメント層を、最上層と最下層との間に備えることが可能である。
【0058】
[048]識別層は、ランダムに分布した複数の粒子を、層の少なくとも一部に含むことが可能である。実施形態によっては、識別層は、孔を有するホスト材料を含み、少なくともそれらの孔のうちのいくつかが粒子を収容する。後で説明するように、それらの粒子は、磁性材料または帯磁可能材料、あるいはほぼ導電性の材料からなることが可能である。他の実施形態では、それらの粒子は、マトリックス内にランダムに分散することが可能であるか、スパッタリング/イオン打ち込みによってもたらされることが可能である(実施例も参照)。
【0059】
[049]そのような(高い)無秩序性の構造に粒子を提供して識別層内の識別特徴を定義することにより、その情報を模倣するにはきわめて膨大な労力および/またはコストが必要になるため、それによって、識別システムの安全性が高められる。
【0060】
[050]識別層は、複数の磁性(または帯磁可能)粒子を含むことが可能である。磁性(または帯磁可能)粒子を、ランダムに分布した粒子および/またはランダムに方向づけられた粒子として実装することにより、識別層を露出するトラックに沿って動き、磁性(または帯磁可能)粒子によって引き起こされる磁界分布から形成された識別特徴のフィンガープリントを読み取り、低コストかつ高信頼性の識別構造を実現することが可能な、読み取り素子として、磁気読み取りヘッドを用いることが可能である。識別層には、磁気特性を示す任意の材料を使用することが可能であり、そのような材料として、強磁性材料、反強磁性材料、強磁性材料などの磁性材料があり、これらに限定されない。使用される磁性材料としては、Fe、Ni、Co、Gd、Dyなどの強磁性材料、これらに関連する合金、酸化物、および混合物、MnBi、CrTe、EuO、CrO2、MnAsなどの他の化合物があり、これらに限定されない。磁気の影響を受ける他の材料も考えられている。そのような材料の例として、磁鉄鉱などの強磁性材料(たとえば、スピネル、ガーネット、フェライト)がある。Ce、Cr、Pt、B、Ndの合金(たとえば、Nd−Fe−B、Nd−Fe−Co−B、Nd−Pr−Fe−Co−Ti−Zr−B)、Smの合金(たとえば、SmCo5)、AINiCo(アルニコ)、パーマロイ、ミューメタルのような合金など、磁気媒体において一般的に使用される他の材料も考えられている。
【0061】
[051]孔が少なくとも部分的に充填されている多孔質材料が使用される場合、ホスト材料は、実質的に非磁性材料である。一般に、少なくとも実質的に非磁性(磁気的に不活性)であるか、実質的に電気的に絶縁性である多孔質ホスト材料であれば、本発明で使用可能である。通常、このホスト材料は、孔内の材料がホスト材料の他の領域に移動することが妨げられるか、無視できる程度であるように、良好な機械的、熱的、および化学的安定性を有する。さらに、ホスト材料の安定性により、孔内の材料の酸化および望ましくない化学的変質が最小限になる。そのような特性は、タグから取得された磁気信号、電気信号、または電磁信号が一意識別可能のままであることを可能にする。好適なホスト材料は、たとえば、米国特許第5139884号および第5035960号明細書、またはNielschらのJournal of Magnetism and Magnetic Materials 249(2002)234〜240頁に記載されているように、アルミニウム膜の陽極酸化によって調製される多孔質アルマイトを含むことが可能である。したがって、タグのホスト材料は、アルミナであってよい。
【0062】
[052]他の好適なホスト材料として、多孔質ポリマー膜(通常は、1つの成分が選択的に除去されたバイブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマー)または多孔質半導電性材料(多孔質シリコンなど)または多孔質III−V族材料(たとえば、FollらのAdvanced Materials、15、183〜198頁(2003年)を参照されたい)がある。本発明において多孔質ホスト材料として使用するのに好適なIII−V族材料の例として、GaAs、InP、AlAsなどがある。別の好適なホスト材料は、ゼオライトである。好適なゼオライトの例として、ゼオライトミネラルグループ(たとえば、斜プチロル沸石、菱沸石、灰十字沸石、およびモルデン沸石)のメンバのいずれか1つが含まれる。他の好適な多孔質材料として、無機酸化物(酸化シリコン、酸化亜鉛、および酸化スズなど)がある。
【0063】
[053]加えて、または代替として、本発明の識別タグまたは対象物は、複数の導電性または半導電性粒子を含むことが可能である。導電性材料としては、Cu、Sn、Fe、Niなどであってこれらに限定されない金属や、これらの合金がある。半導電性材料の例としていくつか挙げるとすれば、(ポリ)シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、白金シリサイド、窒化シリコン、シリコンクロム(SiCr)などがある。この実施形態によれば、識別層をサンプリングする読み取り素子として磁気読み取りヘッドを用いて、少なくとも前記粒子のいくつかに電流を流すことによって引き起こされる電磁界分布から形成される識別特徴を読み取ることが可能である。同様に、ランダムに分布した導電性または半導電性粒子の、識別層内の位置の関数としての(抵抗、導電率、インピーダンスなどのような)電気的パラメータを、適切な読み取り素子(導電性センサなど)を用いて検出することが可能である。孔に導電性粒子を充填することが可能な多孔質ホスト材料の場合は、磁性粒子に関連して前述された同じホスト材料を用いることが可能である。
【0064】
[054]加えて、または代替として、識別タグまたは対象物は、複数の光学的に反射性または吸収性または活性である粒子を含む識別層を備えることが可能である。「光学的に活性」は、本出願においては、粒子が、発するか反射する光の波長および/または偏光面を変化させることを意味する。この実施形態によれば、識別層から形成されたトラックをサンプリングする読み取り素子として、光検出器を用いて、識別特徴を読み取ることが可能である。これらの識別特徴は、ほんのいくつかの可能性を挙げるとすれば、たとえば、特定波長で蛍光発光する粒子、偏光面を変化させるキラル粒子、または様々な波長で蛍光発光する粒子および/または相互干渉光の偏光面を変化させる粒子の混合物から形成されることが可能である。
【0065】
[055]本発明はまた、磁性および/または帯磁可能および/または導電性および/または半導電性および/または光学的活性の粒子の組み合わせを含んで、システムの信頼性および安全性をさらに高めることも可能である。たとえば、ある場合には、光学的確認および磁気的確認の組み合わせを実装することが可能である。典型的には、識別層内に存在する粒子は、最大寸法が約10ナノメートルから約500マイクロメートルの間であってよい(ただし、これに限定されない)。
【0066】
[056]本発明の識別タグまたは対象物においては、それぞれが識別特徴を含む複数の識別層が考えられており、各識別層は、他の識別層とは独立に読み取られることが可能である。
【0067】
[057]個々の層を読み取ることにより、本発明の識別タグまたは対象物に、様々な種類の情報(たとえば、識別特徴と、そのタグを添付することが可能な製品の価格のような付加情報や、そのような製品に関連する背景情報)を設置することが可能である。
【0068】
[058]別の実施形態では、1つまたは複数の識別層を露出する1つまたは複数のトラックが、保護被膜で覆われる。基本的には、環境的損傷(たとえば、化学的および/または機械的劣化)からトラックを物理的に保護することに適した材料であれば、少なくとも識別特徴のいくつかが、トラックから、意味があるように読み取られることが可能であることを妨げる材料でない限り、使用可能である。保護被膜に含まれうる好適な材料の例として、テフロン被膜などのポリマー被膜、硬質ポリマー、酸化物や窒化物や非晶質ダイヤモンドなどのゾルゲルまたは蒸着された材料、ダイヤモンド様カーボンや四面体非晶質カーボンなどのダイヤモンド様材料(膜)、スパン塗布ラッカーなどがあり、これらに限定されない。この保護被膜(層)は、「硬質」材料であってもよい。本明細書では、「硬質」材料を、50メガニュートン/平方メートル(50MN/m2)以上のバルク降伏応力を好ましくは有する材料として定義する。硬質材料として働く好適なポリマーの一例が、強靱かつ透明という利点を有するポリメチルメタクリレートである。ポリメチルメタクリレートの単一被膜層は、モノマーメチルメタクリレート溶液にタグを浸漬するか、タグにモノマーメチルメタクリレート溶液を塗布することによって作られることが可能である。モノマー溶液は、塗布中または塗布後にポリマー化される。
【0069】
[059]次に、本発明の読み取り装置の好ましい実施形態について説明する。これらの実施形態は、識別タグ、識別装置、識別システム、識別タグの形成方法、および識別情報の読み取り方法にも適用可能である。
【0070】
[060]案内手段は、読み取り素子が、既に定義された識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックに沿って、トラックと平行または少なくとも(既に定義されたように)ほぼ平行な方向に動くように、識別層に沿って読み取り素子を案内するように適合されることが可能である。
【0071】
[061]したがって、案内手段は、読み取り素子が、識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックと平行または少なくとも(既に定義されたように)ほぼ平行に動くように、典型的には、読み取り素子が、識別タグまたは識別されるべき対象物から形成されたトラックに沿って案内されることを可能にする形状または他の特性を有する。
【0072】
[062]読み取り素子は、識別層に含まれた、複数のランダム無秩序粒子から情報を読み取るように適合されることが可能である。
【0073】
[063]したがって、読み取り素子は、一意のフィンガープリント(およびシグネチャ)を与える、ランダムな方向を向いた粒子の特徴的配置から得られる信号を検出するように適合されることが可能である。
【0074】
[064]読み取り素子は、識別層に含まれた、複数の磁性粒子または帯磁可能粒子から情報を読み取るように適合されることが可能である。この場合の読み取り素子は、磁気読み取り素子である。
【0075】
[065]読み取り素子はまた、識別層に含まれた、複数の導電性粒子および/または半導電性粒子から情報を読み取るように適合されることも可能である。この実施形態によれば、読み取り素子は、ランダム無秩序粒子の配置の特徴的な電気的パラメータを読み出す電気的または電磁的または磁気的読み取り素子である。
【0076】
[066]読み取り素子はさらに、識別構造に含まれた、複数の光学的活性粒子から情報を読み取るように適合されることが可能である。この実施形態によれば、読み取り素子は、反射率または蛍光強度、光学異方性などのような光学的パラメータを読み出すことが可能な光読み取り器または光検出器である。
【0077】
[067]少なくとも2つの異なるタイプの読み取り(たとえば、磁気的読み取りと光学的読み取り、あるいは電気的読み取りと磁気的読み取り)機能を有する読み取り素子を使用することも可能である。そうすることにより、安全性をさらに高めることが可能である。
【0078】
[068]案内部材は、識別タグのエッジに沿って読み取り素子を機械的に案内するように適合されることが可能である。つまり、案内部材の形状は、前述のように形成されたトラックに沿って、案内部材がこの機械的案内手段によって案内されることが可能であるように、適合されることが可能である。そのような機械的案内部材は、たとえば、U字形であることが可能であり、その場合は、U字の開いた部分が、識別タグまたは識別されるべき対象物の、トラックが識別層の最も薄い寸法部分を露出している部分を係合する。
【0079】
[069]案内部材はまた、識別層のエッジから形成されたトラックの少なくとも一部分に垂直に沿って読み取り素子を光学的に案内するように適合されることも可能である。この実施形態によれば、識別層内に設置された識別特徴の、エラーのない検出を可能にするために、沿って読み取り素子が案内されるべき経路を示す可視マークを、対象物または識別タグに与えることが可能である。一例として、光センサと、読み取り素子のアクチュエーション機構にリンクされたフィードバックループとが、これを達成することが可能である。
【0080】
[070]読み取り装置はさらに、案内部材が、前記トラックに沿って前記読み取り素子を電磁的に案内するように適合されるよう、与えられることが可能である。この実施形態によれば、案内部材の補助センシング素子が、沿ってフィンガープリントが取り込まれるべき経路に追従することを可能にする、可読電磁案内層または特徴(たとえば、強磁性材料の構造物)が与えられる。
【0081】
[071]別の実施形態によれば、読み取り装置は、読み取り素子によって読み取られたフィンガープリントのシグネチャを、あらかじめ保存されている基準シグネチャと比較することと、識別タグから読み取られたシグネチャと、あらかじめ保存されている基準シグネチャとの差が、所定のしきい値を下回る場合には、識別タグが有効であると識別することとに適合された処理手段を有することが可能である。
【0082】
[072]言い換えると、読み取り装置のデータ記憶媒体に、固有のシグネチャを、パラメータのセットとして保存することが可能である。このパラメータセットは、個々のケースにおいて、検出されたシグネチャと比較されることが可能であり、その場合は、その測定されたシグネチャが、データ記憶媒体に保存されているシグネチャと比較される。測定されたシグネチャとあらかじめ保存されているシグネチャとのずれがしきい値未満であれば、その識別は、確認されたと見なされる。それによって、そのようである対象物またはそのタグが添付された対象物は、本物であると見なされることが可能である。しかしながら、あらかじめ保存されている基準シグネチャが、読み取り装置のメモリ内に永続的に保存されるとは限らない。むしろ、読み取り装置は、読み取り装置から離れた場所にあるデータ記憶媒体に保存された、あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取ることが可能であるように設計されることが可能である。代替として、読み取り装置は、タグが添付された対象物、または識別されるべき対象物の中に保存された、あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取ることが可能である。このコンテキストでは、本発明の対象物またはタグは、別の情報(たとえば、対象物の価格、対象物の製造元など)を追加で保存していることも可能であることに注意されたい。そのような情報は、従来のバーコード、二次元バーコード、磁気ストリップ、またはメモリチップに含まれることが可能である。したがって、読み取り装置は、従来のバーコード、二次元バーコード、磁気ストリップ、またはメモリチップからそのようなシグネチャを読み取るように適合されることも可能である。
【0083】
[073]処理手段はさらに、読み取られたフィンガープリントからのシグネチャを、今後の確認チェックのための更新された基準シグネチャとして保存することにより、あらかじめ保存されている基準シグネチャを更新するように適合されることが可能である。長期間にわたって識別されるように適合された識別タグまたは対象物を使用する場合は、識別タグの多数回の使用の結果として、トラックまたは識別層全体が摩耗する可能性がある。そのような摩耗によって、特徴的なシグネチャが変化する可能性がある。あらかじめ保存されている基準シグネチャが常に同じままである静的システムの場合は、そのような摩耗作用のために、識別タグがシステムによって認識されなくなる可能性がある。そこで、本発明の一実施形態において使用される動的システムは、検出されたシグネチャにおける変化を更新し、この更新されたシグネチャを、あらかじめ保存されている基準シグネチャとして保存する。これにより、識別層の材料の摩耗に起因する小さな経時変化を考慮することが可能になり、タグまたは対象物が、摩耗の結果として、無効であると誤って格付けされることが避けられるので、システムの機能性が高まる。
【0084】
[074]前述の開示によれば、識別されるように適合されたタグまたは対象物の識別特徴を表す特性(シグネチャ)を決定するために、従来の読み取りヘッドを用いることが可能である。使用可能な読み取りヘッドの例として、たとえば、カセットテーププレーヤ、ビデオカセットレコーダ(VCR)、磁気データストレージテープ、ハードディスクドライブ、Zip(商標)ディスク、Jaz(商標)ディスク、磁気ストライプ読み取り装置などで使用される読み取りヘッドがある。代替として、一般にはMFMとして知られる磁気力顕微鏡が使用可能である。さらに、磁気カー効果などの光磁気効果の検出も利用可能である。電界強度や電磁界強度のような特性を決定する場合には、適切な周波数に校正されることが可能な、任意の従来の高感度電界メータまたはEMFガウスメータを、この目的に使用することが可能である。光学特性を決定する場合には、必要に応じて、たとえば、偏光フィルタおよび/または色フィルタを備えられた、任意の光検出器またはフォトダイオードを使用することが可能である。
【0085】
[075]対象物またはタグからフィンガープリントを決定した後、数学的手続きにより、フィンガープリント(信号)を処理(たとえば、フィルタリング、スムージング、フーリエ変換、または他の数学的信号処理手法を実施)および/または圧縮および/または暗号化してから、保存したり、対象物またはタグのシグネチャを取得したりすることが可能である。第1の測定されたフィンガープリント(または、必要に応じて、後続の測定されたフィンガープリント)を、タグの読み取りによって得られたロー信号の形式で、またはその処理/圧縮/暗号化された形式で、種々のデータ記憶媒体(ハードディスク、スマートカード、RAMモジュール、テープストレージ、磁気ストライプ、または他の任意のデータ記憶媒体)に保存して、あらかじめ保存されている基準シグネチャにすることが可能である。
【0086】
[076]本発明では、最初のフィンガープリント/シグネチャは、当該のタグまたは対象物に含まれるトラック全体をスキャンすることによって取得可能である。しかしながら、この最初のフィンガープリント/シグネチャは、トラックの一部分だけを読み取ることによっても取得可能である。たとえば、必要とされる認証のレベルが低い用途では、トラックの一部分を読み取るだけで十分な場合がある。その場合は、この「部分的」フィンガープリントが、あらかじめ保存されているシグネチャ(識別情報)になる。このようにして、新しいタグまたは対象物のフィンガープリントの読み取りおよび記録のための処理時間を減らすことも可能である。
【0087】
[077]「部分的」フィンガープリントだけを必要とすることも、偽造をより面倒にする。これは、使用される部分が、タグまたは対象物だけの識別層に含まれる識別特徴から識別可能であることを必要とされず、システム全体に含まれる独立命令の一部をなすことを優先するためである。これは、一般に、対象物の認証に使用されるのが一部の情報だけであるにもかかわらず、偽造が、識別層全体(すなわち、タグまたは対象物の全体)を複製しなければならないことを意味する。典型的には、使用されない部分を複製することは、タグの偽造に必要なコストおよび労力を増やすが、オリジナルの製造元または正規ユーザの側のコストおよび労力をあまり増やさない。
【0088】
[078]次に、識別装置の実施形態について説明する。これらの実施形態は、本発明の対象物または識別タグ、読み取り装置、識別システム、識別タグの形成方法、および識別情報の読み取り方法にも適用可能である。
【0089】
[079]識別装置では、識別タグを、対象物の層構造の最も狭い寸法部分に添付することが可能である。代替として、識別装置では、前記識別タグを、対象物の層構造の主表面に添付することが可能である。
【0090】
[080]次に、本発明の識別タグまたは対象物の形成方法の好ましい実施形態について説明する。これらの実施形態は、識別タグ、読み取り素子、識別システム、識別装置、および識別情報の読み取り方法にも適用可能である。
【0091】
[081]識別タグまたは対象物タグは、識別層の上に配置される覆い層を形成することによって製造されることが可能である。さらに、少なくとも1つの識別層が最下層と最上層との間に配置される層構造を形成することが可能である。
【0092】
[082]そのようにして、たとえば、最下層と最上層との間に挟まれた識別層を有し、トラックが識別層の最も薄い寸法部分を露出する積層構造を製造することが可能である。
【0093】
[083]トラックは、任意の好適な手法(ほんのいくつかを列挙するとすれば、たとえば、切削、磨削、および/または研磨)によって形成可能である。
【0094】
[084]これは、積層構造を種々の部分に切り分け、その各部分が別々の識別タグまたは対象物を形成することが可能であるようにすることが可能であることを意味する。その切り分けられたエッジは、可読識別特徴を備える識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックを含む。
【0095】
[085]識別層は、多孔質マトリックスを形成し、その多孔質マトリックスの孔に適切な材料を充填して製造される複数のランダム無秩序構造/粒子を用いて形成されることが可能である。
【0096】
[086]そのような多孔質マトリックス(すなわち、多数のランダムに分散した孔を有する固体)は、たとえば、多孔質マトリックスが磁性材料または帯磁可能材料から作られていて、その空隙または孔が、情報層に由来するフィンガープリントを含む検出された信号を変調することにつながる場合には、識別層を形成することが可能である。あるいは、多孔質材料が非磁性であって、孔に、磁性材料または帯磁可能材料が充填されているか、少なくとも部分的に充填されている場合も、識別層を形成することが可能である。
【0097】
[087]代替として、識別構造は、前記層構造にイオンを打ち込むことによって製造されることも可能である。
【0098】
[088]この実施形態によれば、打ち込まれ、熱アニール処理されたイオンの統計的分散配置が、典型的には、識別構造の形成に用いられる。このランダム分布は、打ち込まれ、熱アニール処理されたイオンのランダム凝集の結果である。
【0099】
[089]代替として、識別構造は、不混和性2元系ポリマーの相分離を用いて製造されることが可能である。
【0100】
[090]この実施形態によれば、2相系を用いて層が形成され、その後、その2つの相が自動的に分離される。これらの相の一方を除去し、結果として得られる空隙(または孔)を、識別層の一部をなす材料が導入されることが可能な場所として使用することが可能である。
【0101】
[091]識別情報を読み取る方法の実施形態を以下に示す。この実施形態は、識別タグ、識別されるべき対象物、読み取り装置、識別装置、識別システム、および識別タグの形成方法にも適用可能である。
【0102】
[092]この実施形態によれば、案内ステップは、対象物に添付されている識別タグの識別層のエッジから形成されたトラックに沿って読み取り素子を案内することを含むことが可能である。
【0103】
[093]前述の開示によれば、本発明は、次のような分野において使用されることが可能である。
1.公式文書、チケット、セキュリティカード、小切手、クレジットカード、証明書、IDカード、搭乗券、ビザ、パスポート、債務証書などの偽造を防ぐ分野。
2.盗難回収後の、または証明された信憑性の妥当性を検証すべき貴重アイテム(たとえば、宝石類、法定相続動産、骨董品、芸術品など)の識別の分野。
3.商品価値があるアイテム(たとえば、ブランド商品、宝石およびダイヤモンド、重要技術部品、薬剤パッケージング、玩具、赤ん坊用品、食品パッケージングなど)の識別およびブランド保護の分野。
【0104】
[094]たとえば、米国内に限ってのクレジットカードおよび小切手の偽造による損失は、年間50億ドルと推定されている(出典:Washington University in St. Louis、http://news−info.wustl.edu/tips/2002/science−tech/indeck.html)。
【0105】
[095]本発明は、低コストで製造が容易な識別タグまたはそのように識別されるように適合された対象物(本明細書では、識別特徴と呼ばれるもの、またはそれらに由来するフィンガープリントの両方を含む)、および本物アイテムを識別および追跡する関連システムを提供する。さらに、本発明は、識別特徴をデザインによって複製(またはコピー)することがきわめて困難であること(不可能ではない場合)、および/またはきわめて高コストであること(禁止同然なほどに高コストではない場合)を意図するものである。これは、ある範囲の複雑な粒子を選択すること、および/または非常に小さな特徴(孔や凹凸など)を利用することと、識別層が実質的に面内構造であることとを、識別層の最も薄い寸法部分を露出するように形成されたトラックの読み取りと組み合わせることによって、達成される。この点において、識別層の最も薄い寸法部分を露出する、本発明のアプローチによって、粒子の多くが、読み取りに関しては面外方向を向くようになることにも注目されたい。それによって、読み取りがより容易になり、特徴の複製がより困難になる。
【0106】
[096]本発明は、読み取りまたは検出が可能であり、したがって、一意のフィンガープリントおよびシグネチャの提供が可能である、自然集合または自己集合した無秩序な識別層および識別構造を作成する方法を提供する。これらの識別層は、選択次第で、ロバストであって、低コストであって、大量生産され、安全性のレベルに適合されることが可能である。
【0107】
[097]このアプローチは、非常に薄い識別層(1マイクロメートルよりはるかに小さい幅、すなわち、識別層の最も薄い寸法部分)を容易に製造することを可能にする。考えられている最も小さい寸法は、従来のフォトリソグラフィの限界より小さく、フォトリソグラフィ以外の方法となれば、非常に高コストであるパターニング手法(大規模かつ低コストの量産に不向きな遠紫外線リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、または集束イオンビームリソグラフィなど)に依存することになる。
【0108】
[098]本発明の典型的な実施形態は、適切に整形された識別層(たとえば、材料の、比較的細長いストリップ)を提供する。前述のように、識別層の、露出可能な最も小さい寸法部分は、識別特徴を読み出すために形成されるトラックの形を定める。これにより、容易なパターニングと、トラック幅の容易な制御と、フィンガープリントの確実な設置および読み取りとが可能になる。
【0109】
[099]上記からわかるように、基準フィンガープリントの取得と、識別対象のフィンガープリントの取得とが、別々の時点に別々の場所で行われることが、実用レベルで可能であり、一般的である。たとえば、製造されたタグまたは対象物が、最初に、離れた場所に送られ、そこでシグネチャが取得され、データ記憶媒体に保存されてから、タグまたは対象物がタグまたは対象物の使用者(クレジットカード会社やダイヤモンド採掘会社)に送られることが可能である(代替として、もちろん、タグまたは対象物が製造された場所でシグネチャが読み取られてから、基準シグネチャが、離れた場所に送られ、そこで保存されることも可能である)。タグの場合、このタグ使用者は次に、タグ付けされるべき対象物(たとえば、クレジットカードやダイヤモンド)にタグを添付してから、それを顧客に販売する。同様に、対象物の場合、クレジットカード会社のような使用者は、追加の情報/コンテンツ(クレジットカード番号など)を、本明細書に記載の識別層を収容するロークレジットカードに保存することが可能である。あるいは、本発明のそのような識別層を収容する、CDのようなデータ記憶媒体の場合は、レコード会社のような使用者が、そのCDに音楽を保存してから顧客に販売することが可能である。この顧客は次に、対象物のアイデンティティを確認するために、第2のフィンガープリントを取得し、取得されたシグネチャを、(離れた場所のデータ記憶媒体に保存可能な)あらかじめ保存されている基準シグネチャと比較することが可能である。代替として、タグ使用者は、タグを対象物に添付してから、タグを読み取り、その後にシグネチャをデータ記憶媒体に送ることも可能である(同様に、対象物使用者は、先に当該商品を製造し、次にそれを、離れた場所に送り、そこで基準シグネチャを読み取らせてデータ記憶媒体に保存することが可能である)。いずれの場合も、タグまたは当該対象物からのシグネチャの形で識別情報が取得され、タグまたは対象物の今後の識別のためにデータ記憶媒体に保存される。
【0110】
[0100]このコンテキストにおいて、本発明の対象物またはタグの中の識別特徴を読み取る方法の実施形態について、以下で説明する。
【0111】
[0101]一実施形態では、前記識別層の少なくとも一部分に含まれる、ランダムに分布した複数の粒子から情報が読み取られる。この、ランダムに分布した複数の粒子は、磁性または帯磁可能であっても、導電性または半導電性であっても、光学的活性であってもよい。
【0112】
[0102]磁性粒子が使用される場合、読み取りは、タグまたは対象物の識別層の少なくとも一部分の磁界の少なくとも1つの特性を決定するステップを含むことが可能である。それによって、固有の磁気信号が取得される。この場合、識別層は、孔を有する、実質的に非磁性のホスト材料を含むことが可能であり、少なくとも孔のいくつかが磁性材料を収容する。
【0113】
[0103]読み取るのは、識別層の一部分の磁界の、識別層の無秩序性に強く依存する、少なくとも1つの特性であってよい。より具体的には、無秩序性は、識別層の少なくとも1つの特性(たとえば、識別層内の磁性材料の、孔のサイズ、形状、および向き、孔間距離、孔の充填率、結晶方位など)に関連付けられることが可能である。たとえば、多孔質ホスト材料が用いられる場合、無秩序性は、ホスト材料だけの特性でありうる。これの一例として、孔のサイズも孔間距離も様々であるホスト材料を使用することが可能であり、この材料の孔に磁性材料を(均等に)充填することが可能である。孔が順序よく並ぶホストを使用し、孔の中の材料の充填度を変化させることによって無秩序性を形成することが可能である。無秩序構造を有する識別層を使用することももちろん可能であり、たとえば、充填された孔の割合や(磁性材料の場合には)タグ内の材料の結晶方位を変化させることも可能である。タグまたは対象物の識別層の中の無秩序性を作り出すために操作されることが可能な前述の特性は、自由度と見なされることも可能である。
【0114】
[0104]一実施形態では、識別層は、磁界にさらされてから、トラックの前記部分の磁界(信号)の少なくとも1つの特性がそれぞれ決定される。この実施形態では、識別層内の磁性材料は、読み取りの1回ごとに、読み取り前に磁界によって再磁化されることが可能である。これにより、トラックの磁界信号が大きくなり、読み取りやすくなる。この目的のために、均一ではあるが均質ではない磁界(たとえば、単純な棒磁石によって作られた磁界や、ソレノイドまたは磁石の組み合わせから生成された磁界)を用いて、識別層を再磁化することが可能である。
【0115】
[0105]一実施形態では、タグまたは対象物の識別層に情報を追加保存(記録)する方法が考えられている。この、情報の保存(記録)は、(たとえば粒子のグループの形で)存在する磁性材料を分極ドメインまで磁化すること、または磁性(または導電性)材料を収容する、トラックの粒子グループをパターニングにより決定すること、またはこれら2つのアプローチの組み合わせによって、実行されることが可能である。この記録ステップは、フィンガープリントの第1の決定の前、または代替として、この第1の決定の後に行われることが好ましい。
【0116】
[0106]本発明の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付図面と併せての以下の説明ならびに添付の特許請求項から明らかになるであろう。添付図面においては、同様の部品または要素は、同様の参照符号で示される。
【0117】
[0107]以下に示す、限定的でない例および図面を参照して、本発明をさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0118】
[0148]図面における例示は概略であり、種々の図面において、同様な要素は、同じ参照符号で示されている。
【0119】
[0149]本明細書のコンテキストでは、用語の「個別タグを付ける」、「識別する」、およびそれらの派生語は、あるアイテムにマーキングを施して、そのアイテムが他のアイテムと一意に区別されることが可能であるようにすることを、特に意味するものとして、同義で使用される。このコンテキストでは「透かしを入れる」および「バーコードを付ける」も使用可能な場合があるが、これらの用語は、一般に、あるアイテムグループを、別のアイテムグループと区別することを意味する(たとえば、紙幣の透かしは、紙幣を、偽造紙幣と区別するが、他の個々の本物の紙幣と区別しない)。「偽造」、「模造」、「捏造」、「複写」などの用語は、同義で使用される。
【0120】
[0150]前述の説明によれば、本発明は、1つまたは複数の識別層を備える対象物において(本来的に)存在する無秩序性、または意図的に作成された無秩序性を検出することに基づき、この検出は、識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックに沿って無秩序性領域を読み取るかプロービングし、その結果として得られる信号によって、アイデンティティの確認に使用可能なフィンガープリントが作成されることによって行われる。発明者らは、そのような無秩序性をデザインによって意図的に再現するのが困難であること、ならびに、1つまたは複数の識別層の最も薄い寸法部分が読み取り用として露出していれば、結果として得られるフィンガープリントの読み取りが容易であることを認識した。
【0121】
[0151]「層」は、具体的には、1つの寸法が狭く(薄く)、他の2つの寸法が広く、典型的には、それらの比が少なくとも1:10:10であるが、1:100:100以上であることが好ましい何かを意味する。しかしながら、大きい2つの寸法の程度が同等である必要はない。
【0122】
[0152]このアプローチには、識別層を用いて狭く長いストライプ(トラック)を形成することによって、従来のフォトリソグラフィの複雑さおよび費用を回避できるという、重要な利点がある。「従来のフォトリソグラフィ」は、光活性層(レジストなど)、露光源(紫外線ランプなど)、およびマスク(ポジティブまたはネガティブのイメージとして、所望のパターンの金属の不透明層がコーティングされたマスターガラスプレートなど)を使用することを意味する。
【0123】
[0153]識別層のアスペクト比は、典型的には少なくとも1:10であることが好ましく、1:100であることがより好ましく、最も狭い寸法は、典型的には1ミリメートル未満であるが、500マイクロメートル未満、100マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、さらには1マイクロメートル未満であることがより好ましい。
【0124】
[0154]次に、図1Cを参照して、本発明の第1の実施形態による識別装置100について説明する。
【0125】
[0155]識別装置100は、識別タグ102を備え、識別タグ102が添付されたアイテム101を備え、アイテム101を、識別タグ102が付けられた対象物として、識別する。
【0126】
[0156]識別タグ102が添付されたアイテム101を識別するための識別タグ102は、層構造を有し、識別情報が設置された可読識別層103を備える。識別層103の少なくとも1つのエッジから、識別特徴を読み取るためのトラック110が形成され、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記トラックは、識別層のその最も薄い寸法部分を露出する。識別タグ102は、識別特徴が、識別層のその最も薄い寸法部分からのみ、意味があるように読み取られることが可能であるよう、アイテムまたは対象物101に添付可能であるように適合される。
【0127】
[0157]識別タグ102において、その層構造は、前記識別層の上に配置された最上層105と、さらにオプションで(たとえば、識別層がさらに支持を必要とする可能性がある場合に)最下層104とを備える。
【0128】
[0158]図1Cに示すように、識別タグ102は、アイテム101の、前記層構造の主表面に添付される。この実施形態では、タグ102は、識別層の最も薄い寸法部分が、(ここでは円柱形状の)アイテム101の主回転軸と平行に方向づけられるように、円柱形状アイテム101に添付される。図1Cはさらに、トラック110を読み取る読み取りヘッド111を示している。
【0129】
[0159]次に、図1Dを参照して、本発明の第2の実施形態による識別装置150について説明する。
【0130】
[0160]識別装置150が識別装置100と異なるのは、識別層の最も薄い寸法部分が、円柱形状アイテム101の主回転軸に垂直に方向づけられるように、識別タグ150が円柱形状アイテム101に添付される点である。
【0131】
[0161]図1Eは、識別装置100のさらに別の実施形態を示す。この装置では、識別タグ170は、識別層の最も薄い寸法部分が、円柱形状アイテム101の円周表面に垂直に方向づけられるように、円柱形状アイテム101に添付される。
【0132】
[0162]したがって、本発明の一有利点は、識別されるべきアイテムにタグを、ほとんど考え得るいかなる方法ででも添付することが可能であって、それでもなお、少なくとも識別特徴のいくつかが、タグの最も薄い寸法部分から、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別層のトラックが露出することである。これに関連して、前述のすべての実施形態において、露出しているトラックの一部または全体を読み取ること(たとえば、識別層103の1つのエッジの一部分のみに沿って、または識別層103の1つのエッジの全体に沿って、またはさらに、識別層103のコーナー周辺または露出している全周に沿って読み取ること)が可能であることに再度注目されたい。「露出している」は、本明細書では、読み取り素子を用いて識別情報を読み取ることが可能であることを意味する。すなわち、トラックは、物理的に覆われていても、しかるべき情報の読み取りが可能であれば、この定義により、「露出している」とすることが可能である。たとえば、標準的な磁気読み取りヘッドは、薄い非磁性保護層を通してでもデータを読み取ることが可能であり、光磁気読み取り装置は、比較的厚い透明層を通してでも読み取ることが可能である。図1Gに示された実施形態によって示されるように、本発明で用いられる識別層は、対象物またはタグの中に埋め込まれることが可能であり、それでもなお、トラックが露出していれば、識別層の他の部分がアクセス不可能であっても、完全に機能することが可能である。「アクセス可能」は、識別特徴を励起または活性化することによって、検出される信号(したがって、読み取られるフィンガープリント)に影響を及ぼすことが可能であることを意味する。たとえば、図1Gが(寸法x、y、zの)対象物の中に埋め込まれた(寸法a、b、cの)単層タグを示すとする。さらに、識別特徴が磁性粒子からなるとする。その場合は、十分に強力な磁石を対象物のy−z平面まで持っていくことによって、識別特徴に「アクセス」することが可能である。この磁石は、識別層内のトラックまたはトラック周辺にある粒子の磁気信号に影響を及ぼすが、それらの粒子の信号は、トラックからのみ、意味があるように読み取られることが可能である。すなわち、それらの粒子の信号は、y−z平面から「アクセス可能」であっても、トラックによってのみ「露出している」。
【0133】
[0163]本発明の別の実施形態では、識別層は、識別されるべき対象物の一部である。そのような実施形態を、図1Fに示す。対象物101は、識別層103と、最上層105と、最下層104とを備える。識別層103の(円形)のエッジから、読み取りヘッド111を用いて識別特徴を読み取るためのトラック110が形成され、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、トラック110は、識別層のその最も薄い寸法部分を露出する。図1G(i)は、本発明の一実施形態による直方体のタグまたは対象物の斜視図および側面図である。この場合、識別層103は、直方体の一面にのみ延びて、その面にのみトラックを形成する。その面の表面は、保護層121で覆われる。保護層121はトラック110を物理的に覆うが、それでもなお、トラック110は、読み取り素子120を用いて、識別特徴が、意味があるように読み取られることが可能なので、本明細書で用いられる定義に従って、露出している。図1G(ii)は、本発明の一実施形態によるタグまたは対象物および読み取り素子の断面を示す。この図の右側には、磁性粒子を含む材料160が拡大されて示されている。この場合、磁性粒子を含む材料160は、平坦ではなく、1つまたは複数の面外突起161を含む。識別層103の(図1Aで定義された)寸法「a」および「b」を、図面内に示す。ここで、「a」は、識別層を含む平面の厚さとして測定される。寸法「b」は、識別層の露出面と、有意の面外突起161の開始点との間の距離として定義される。
【0134】
[0164]読み取り素子をトラックの端から端まで動かす方法を、図1H〜Jに示す。図1Hは、トラック110の全体をのこぎり歯パターンでスキャンする読み取り素子120を示す。スキャン領域の幅は「j」である。スキャンパターンは、のこぎり歯パターンに限定される必要はなく、しかるべき識別情報を含むトラックの領域をカバーすることが可能な任意の所望のパターンであってよい。同様に、読み取り素子120は、スキャン幅より小さい寸法である必要はなく、スキャン幅と同等以上の寸法であってもよい。
【0135】
[0165]図1Iは、トラック110と平行な方向に動く読み取り素子120を示す。この場合、読み取り素子120の幅は「j」であり、トラック幅と同等であるか、好ましくは、トラック幅より大きい。
【0136】
[0166]図1Jは、トラック110と(既に定義されているように)「ほぼ平行」な方向に動く読み取り素子120を示す。読み取り素子120の幅は「j」である。この、平行からのずれは、意図的に設定されてもよく、あるいは、たとえば、読み取り素子の移動の許容誤差に起因してもよい。
【0137】
[0167]次に、図2を参照して、本発明の第1の実施形態による識別システム200についてさらに説明する。
【0138】
[0168]図2に示された識別システム200は、識別タグ102と、読み取り素子201とを有する。識別システム200は、製造、および識別層103のトラック202の読み取りにおいて、直接的な利点をもたらす。すなわち、製造が容易であり、設置が容易であり、(たとえば、機械的案内により)読み取りが容易である。
【0139】
[0169]次に、図3を参照して、本発明の第1の実施形態による識別システム200の他の図についてさらに説明する。
【0140】
[0170]図3は、磁性粒子303を含む識別層103の細部301を示す。読み取り素子201が読み取り方向304に沿って動くと、磁性粒子303のフィンガープリント302が検出される。このフィンガープリントは、後でシグネチャに変換されることが可能である。
【0141】
[0171]識別層103における無秩序性は、いくつかの異なる方法において実現可能である。確認目的での原理は、識別層の一部分を露出するトラックを作成し、その中の無秩序性を適切な検出器でプロービングすることである。その結果は、トラックに沿う位置の関数としての信号であり、本明細書では、この信号をフィンガープリントと称し、処理後は「シグネチャ」とも称する。
【0142】
[0172]このフィンガープリント/シグネチャは、たとえば、磁界、電磁界、電界、導電率、キャパシタンス、インダクタンス、電磁波の波長、電磁波の振幅、電磁極性、またはこれらの組み合わせの変動を測定することによって決定されることが可能である。それぞれの場合において、フィンガープリント/シグネチャは、検出器のセンサ素子が、好ましくは、トラックの少なくとも全幅の端から端までおよぶようにして、このトラックの長い方向の寸法に沿う位置に対して決定される変動である。また、ここでは、前述のパラメータの変化率(または高次の微分)によって決定されるフィンガープリント/シグネチャが、識別層103の端から端までを、たとえば、一定速度または一定加速度でトラッキングしてフィンガープリント/シグネチャを測定することによって決定されると見なされる。
【0143】
[0173]本明細書における「システム」は、特に、識別層が対象物に、対象物の一部として直接添付される事実、または識別層が、対象物に接着されることが可能なラベルまたはタグの一部として対象物に添付される事実を意味する。「タグ」および「ラベル」という語は、本明細書では、同義で使用される。読み取り素子201は、フィンガープリントを検出および生成するために用いられ、そのフィンガープリントは、保存されることが可能である。その後の識別層の読み取りによって、最初に保存されたシグネチャと比較されることが可能なフィンガープリント/シグネチャが生成される。一致した場合は、そのシグネチャが元の識別層から導出されたものであることを示す。
【0144】
[0174]以下では、本発明を説明するのに好適な工程および材料系を、例示的に記載する。
【0145】
[0175]まず、磁性粒子を含む積層タグについて、より詳細に説明する。
【0146】
[0176]本発明の一態様では、識別層の磁界変動を、読み取り素子を有する適切な読み取りヘッドを用いて検出することが可能である。この例では、基板上に堆積した、ランダムに分布する磁性粒子が、(粒子が互いに離散的である可能性があっても)識別層として見なされる。その場合には、識別層は、別の材料の層で覆われる。この、2つ以上(ここに記載の例では3つ)の材料の層のサンドイッチを、ここでは「積層」とも呼ぶ。
【0147】
[0177]次に、図4A〜4Hを参照して、本発明の第1の実施形態による識別タグまたは対象物の製造方法の過程について説明する。
【0148】
[0178]図4A〜4Dは、そのようなタグまたは対象物を製造するために使用することが可能な工程を示す。まず、図4Aに示すように、ポリマー積層薄板401の、接着剤を含有する側に、ニッケル片400を塗る。次に、図4Bに示すように、別の積層薄板402をかぶせ、その材料のスタックを、従来の事務所据置型ラミネータに、110℃および最低プリセット速度(速度1)で通すことによって、まとめて積層化する。次に、エッジ断面を研磨して、図4Cに示すように、識別層のトラック403を含む滑らかな表面が露出するようにする。これにより、このエッジを磁界センサで読み取ることによって、図4Dに示されるようなフィンガープリント/シグネチャ404を取得することが可能であり、この場合、粒子が磁界のピークを引き起こし、そのピークがフィンガープリント/シグネチャのピークになる。好適な磁界センサとして、誘導ヘッド、AMRヘッド、GMRヘッド、光磁気カー効果検出器などがある。図4F〜4Hに示された、本発明のタグまたは対象物の製造工程は、図4A〜4Dに示された工程とほとんど同じであるが、異なるのは、引き伸ばされたニッケル片またはファイバまたはウィスカが、識別層の平面内に配置されて用いられる点である。ニッケル片のサイズおよび形状は様々なので、トラックを読み取って得られるフィンガープリント404は、もちろん、図4Dのフィンガープリントとは異なる。引き伸ばされた形状であれば、トラックから検出される磁性信号がほとんど面外磁気信号であるため、信号の検出が容易になり(したがって、フィンガープリントの読み取りが容易になり)、さらにはタグの偽造が困難になるので、有利さが増す。
【0149】
[0179]図5は、本発明の第1の実施形態の方法に従って製造された識別タグの光学顕微鏡画像および電子顕微鏡画像を示す。
【0150】
[0180]したがって、図5は、トラック403の光学顕微鏡画像および走査電子顕微鏡画像の例を示す。
【0151】
[0181]次に、本発明の目的のための、この実施形態の望ましい特徴について説明する。まず、磁界変動に依存する識別層については、磁気特性を示す任意の粒子を識別層に用いることが可能であり、そのような粒子として、強磁性材料、反強磁性材料などの磁性材料があり、これらに限定されないが、強磁性材料が好ましい。使用される磁性粒子としては、Fe、Ni、Co、Gd、Dyなどの強磁性材料、これらに関連する合金、酸化物、および混合物、MnBi、CrTe、EuO、CrO2、MnAsなどの他の化合物があり、これらに限定されない。磁気の影響を受ける他の材料も考えられている。そのような材料の例として、磁鉄鉱などの強磁性材料(たとえば、スピネル、ガーネット、フェライト)がある。Ce、Cr、Pt、B、Ndの合金(たとえば、Nd−Fe−B、Nd−Fe−Co−B、Nd−Pr−Fe−Co−Ti−Zr−B)、Smの合金(たとえば、SmCo5)、AINiCo(アルニコ)、パーマロイ、ミューメタルのような合金など、磁気媒体において一般的に使用される他の材料も考えられている。前述の任意の粒子の組み合わせも考えられている。
【0152】
[0182]この例の場合、識別層内の無秩序性は、層内の、粒子のサイズ、粒子の形態構造、粒子の結晶化度、粒子内の結晶方位、粒子の間隔、磁気飽和、および粒子の性質の関数である。適切な粒子または粒子の組み合わせを選択することにより、別の類似のフィンガープリントが、偶然によって、または極端に関連が薄いデザインによってしか発生し得ないように、無秩序性を高めることが可能である。それは、たとえば、プレート、ロッド、またはフラクタルのような複雑な異方性粒子形状、およびそれらの混合物を用いることによって可能である。非磁性パッキング粒子(他の金属片、シリカ、粘土、ラテックス球、カーボンブラック、窒化硼素などであり、これらに限定されない)の使用も考えられている。
【0153】
[0183]この例の他の利点は、特定の形態構造の粒子を選択することによって、それらの性質を予測できることである(つまり、粒子が平坦に、層と平行な平面の形で存在する傾向を有するように、プレート状またはロッド状の粒子を選択することが優先されてよい)。これは、識別層の幅を望ましい狭さに保つことに役立つ。さらに、粒子がフィンガープリントの露出領域の背後の平面内まで広がっていれば、その形状異方性によって、強力な磁界が粒子から得られる。この結果として、信号対雑音比が高くなって読み取りプロセスが改善されるとともに、複製(したがって偽造)がいっそう困難になる。
【0154】
[0184]この例では、ポリマー薄板を積層化して識別層を収容することが考えられている。しかしながら、これは一例に過ぎず、他の固体材料(金属フォイル、紙、木、ガラス、革、繊維、シリコンなど)を使用することも可能であり、これらを前述のような形に接着して、識別層のエッジ(最も薄い寸法部分)、したがって適切なトラックを露出させることが可能である。さらに、フィンガープリントを挟む上層および下層の材料、厚さ、堆積形態が異なってよいことも考えられている。たとえば、下層は、粒子が堆積するフレキシブル固体基板であることが可能である。一方、上層は、前駆物質が気体、プラズマ、ペースト、または液体であっても固体層が得られるように、スピン塗布、吹き付け、蒸着、スクリーン印刷、またはスパッタリングによって堆積する層であることが可能である。また、前記層を、接着剤、エポキシ樹脂、はんだ、共晶熱接合、シリカゾルゲル、フリット、機械的インタロック、または機械的圧縮によって接着することも考えられている。接着剤は、薄い追加層であってよく、層自体を構成してもよく、あらかじめ粒子上に存在してもよく、下層および/または上層に存在してもよい。明らかに、温度特性および機械的特性が異なる材料を選択することにより、識別層を含むタグまたは対象物を様々な動作環境(たとえば、高温、低温、液体、気体、酸化性、還元性、化学的攻撃性など)に適応させることが可能である。識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックを作製する場合の、切削、劈開、研磨、その他の作業の程度は、使用される材料の性質によって異なる。研磨作業自体が、識別特徴を形成する材料から得られるフィンガープリント(したがって、シグネチャ)に寄与する、さらなる固有の無秩序性を導入するために行われることが可能であることに注目されたい。
【0155】
[0185]この例の別の実施形態では、識別層が、トラックの読み取りの1回ごとに、読み取りに先立って強力な均一磁界にさらされることが考えられている。ここで、「強力」は、トラックの表面または表面近くにある粒子の中の磁区の向きを変えて、それらの粒子によって生成される磁界がほとんどトラックの面外に並ぶようにするのに十分な磁界を意味する。このアプローチは、磁界パターンを毎回リセットすることによって、タグまたは対象物の耐用寿命中の変化の影響を最小限にすることが可能であるという利点を有する。この、フィンガープリントをリセットする機能はさらに、タグまたは対象物を、粒子の帯磁の向きおよび強度が変化しうる環境(たとえば、強力な外部磁界の領域および/または温度が上昇する領域)での複数回の読み取りに用いることが可能であることを意味する。さらに、これによって、書き換え可能な磁性層に保存された磁気情報が強力な磁界によってすべて消去されるために、書き換え可能な磁性層がフィンガープリントの複製に使用されるのを防ぐことができる。
【0156】
[0186]この用途に適する粒子のサイズは、広い範囲にわたることが可能であり、実際、その個体数に対して広く分布することが可能であり、それによって、無秩序性がさらに高まる。粒子は、すべての寸法が500マイクロメートル未満であることが好ましく、さらに、最も狭い寸法が10マイクロメートル未満程度であることが好ましい。用途によっては、識別層の端から端までの変動が複雑であって、1つ1つのシグネチャの何十億もの組み合わせが可能であるように、(サブミクロンレンジの)非常に小さい粒子を選択することが特に有用である。さらに、用途によっては、隠されたフィンガープリントを有することが望ましい場合があり、小さい粒子を選択することが、それを達成するためのいくらかの助けになる。その場合には、適切に色づけされた粒子、無色の粒子、および/または織目の写った粒子を選択することも可能である。
【0157】
[0187]次に、図6を参照して、本発明の第2の実施形態による識別システム600について説明する。
【0158】
[0188]識別システム600に含まれる識別タグは、図2に示された識別タグ102と比較すると、識別層103に加えて、別の識別層601を含む。隣接する2つの識別層103、601の間に、分離層602が設けられる。
【0159】
[0189]3つ以上の識別層103または601が存在する、この実施形態の変形形態も開示される。これは、たとえば、2つ、3つ、またはそれ以上の識別層103、601が、図6に示されるように、互いにほぼ平行に配置されるような、複数スタックの積層によって達成可能である。これは、フィンガープリントに冗長性および/または情報のさらなる一意性を与え、それによって、偽造がいよいよ困難になる。この場合、読み取り素子201は、識別層103、601の最も薄い寸法部分から形成されるすべてのトラックを、1つの素子だけで並列に読み取ることが可能である。代替として、読み取り素子201は、別々のセンシング素子を用いて識別層103、601のそれぞれを並列に読み取ること、または、複数の読み取りヘッドおよび/またはセンシング素子および/またはパスを用いて、それぞれを直列に読み取ることが可能である。さらに、前述の、層材料および堆積方法について考えられていることは、ここでも当てはまる。
【0160】
[0190]さらに、本発明のタグまたは対象物の製造が、ここで説明されたバッチプロセスだけでなく、ロールツーロールプロセスでも容易であることが考えられている。
【0161】
[0191]次に、図7を参照して、本発明の第2の実施形態による識別タグまたは対象物の製造方法の過程について説明する。
【0162】
[0192]図7は、それらのタグまたは対象物を製造するロールツーロールプロセスを示し、これには片面ポリマー積層物のロール701が含まれる。そのような場合は、ロールプロセスの速度、および粒子ディスペンサ700からの粒子のパルス堆積によって、各フィンガープリントの長さ、およびフィンガープリントの間隔が規定される。円形ブラシ702を通った後、スタンプ/プレスを行うロール703を通り、その後、110℃(ただし、これに限定されない)の温度で動作可能な積層化ロール705を通る。さらに、エッジトリミングが実行される場合は、そのための廃棄物経路704が設けられる。ピンチローラ710の後に研磨装置706と読み取り/インデックス付け装置707とを含めることにより、これらのタグまたは対象物の製造、読み取り、およびインデックス付けを一列で行い、それらをリールに巻き取って、大量かつ低コストの用途での使用に備えることが可能である。最後に、完成ポリマーロール708が、おそらくは、709によって与えられる第2のキャリアフィルムまたはバッキングロールの上に作られる。インデックス付けは、タグがリールから一定量供給されたときに、どのフィンガープリント/シグネチャが既に読み取られ、保存されているかが知られることを意図している。
【0163】
[0193]次に、図8を参照して、本発明の第3の実施形態による識別タグの製造のオプションの工程について説明する。
【0164】
[0194]図8に示すように、広いウェブの積層物800を作成し、切断装置801で切断してストリップにして、複数の識別層802を露出させ、矢印803で示されるように、個々に研磨、読み取り、インデックス付け、および後日使用のための保存を行うことも可能である。
【0165】
[0195]次に、図9を参照して、本発明の実施形態による別の対象物としてのクレジットカード900について説明する。
【0166】
[0196]クレジットカード900は、支持基板901を備え、支持基板901の主表面において従来の磁気ストリップ902が保持される。さらに、クレジットカード900の狭いエッジが、識別層103を備えるように設けられる。識別層103の詳細を、図9に示された拡大部分において示す。図9からわかるように、クレジットカードのような対象物のデザインは、識別層103が基板901によって支持されることが可能であって(基板901の一部分でない場合)、最上層105によって覆われることが可能である点で、タグ102のデザインと類似している。
【0167】
[0197]図9の実施形態から明らかであるように、識別層を収容する、(たとえば、積層物として製造されることが可能である)適切な対象物自体が、実質的にタグ付けされた対象物であることが可能であると考えられている。これは、積層物をタグとして製造して他の対象物に添付することとは異なる。この対象物は、例としてクレジットカードが考えられているが、他の例として、証明書、紙幣、セキュリティアクセスカード、車両キーカード、パスポート、IDカード、リードフレーム、電子デバイスパッケージ、パッケージ材料(たとえば、医薬品用)、媒体ディスク(たとえば、CD、DVD)、高級品(ハンドバッグなど)も含まれる。そのような実施形態は、図9に示されたような識別層103が、クレジットカードのような対象物の中に含まれる場合に、クレジットカードの最も薄い寸法部分が、識別層を読み取るためのトラックを露出させることに使用される形で実現される。
【0168】
[0198]次に、図10A〜10Cを参照して、本発明の別の実施形態による識別システム1000、1030、1060について説明する。
【0169】
[0199]フィンガープリントにおける磁性粒子の使用は、フィンガープリント/シグネチャを提供するために開示された一例である。他の選択肢は、導電性粒子(金属粒子、カーボンブラック、グラファイト、金属被膜粒子など)および(下層または上層あるいは追加層であることが可能であって、たとえば、金属フォイル、金属リーフ、スパッタ金属、蒸着金属、導電性酸化物、導電性複合材料などで作られる)電極を使用して、少なくとも粒子の一部が異なる電位を帯びるか、電磁界または電界のアンテナとして動作することが可能であるようにすることである。そのような場合、検出器は、トラックと接触するか、トラックから微小距離だけ離れたところを通過して、たとえば、電圧、電流、電界、電磁界、キャパシタンス、またはインダクタンスの変動を検出する。図10A〜10Cは、電気的に刺激されたフィンガープリント/シグネチャを有するそのような実施形態のいくつかの例を示す。各例では、粒子の存在が検出器に影響を及ぼし、その検出器がシグネチャに影響を及ぼす。
【0170】
[0200]図10Aに示された識別システム1000においては、読み取り装置1001がDC電源の負電位に接続される。DC電源の正電位は、識別タグ1002の最上層105に接続される。読み取り装置1001は、識別層103のシグネチャに従うパーコレーション電流経路を検出するように適合される。
【0171】
[0201]図10Bに示された識別システム1030においては、読み取り装置1031が識別層103のシグネチャを読み取るように適合される。識別タグ1032の下層104が、DC電源の負電位に接続される。DC電源の正電位は、識別タグ1032の最上層105に接続される。読み取り装置1031は、識別層103のシグネチャに従う電位差または抵抗を検出するように適合される。
【0172】
[0202]図10Cに示された識別システム1060においては、読み取り装置1061が、AC電源の第1の接続点に接続される。AC電源の第2の接続点は、識別タグ1062の最上層105に接続される。読み取り装置1061は、識別層103のシグネチャに従う電磁界またはインダクタンスを検出するように適合される。
【0173】
[0203]次に、図11A〜11Cを参照して、本発明の実施形態による、光検出手段を用いて識別特徴を読み取る識別システム1100、1130、1160について説明する。
【0174】
[0204]図11A〜11Cは、染料粒子、染料被膜粒子、燐光性粒子(燐光体など)、量子ドット粒子、光輝性粒子、偏光粒子、キラル分子、液晶、複屈折粒子などであって、これらに限定されない光学活性粒子の使用を含む。これらは、光源(たとえば、紫外線ランプ、青色発光ダイオード、レーザ、または白色電球など)によって照射または励起されることが可能であり、好適な検出器(フォトダイオード、分光光度計、または、フィルタまたは偏光子を有するか有しない電荷結合素子アレイなど)を使用して、吸収光、放出色、放出強度、および/または偏光面の変動が検出されることが可能である。この場合も、結果として、目的に適したフィンガープリント/シグネチャが得られる。
【0175】
[0205]図11Aに示された識別システム1100においては、読み取り装置1101が、識別層103内の量子ドット粒子からPLスペクトルを検出する光読み取り装置として設けられる。(UV放射線を放射する)光源1107が、最上層105内の窓1108(光透過領域)を通して識別層103を照射する。読み取り装置1101は、少なくとも可読識別特徴のいくつかだけが、識別層103の最も薄い寸法部分からのみ、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別層のエッジから形成されたトラックを読み取って得られるシグネチャに従う光を検出するように適合される。
【0176】
[0206]図11Bに示された識別システム1130においては、読み取り装置1131が、燐光体粒子の層を通して伝搬された光による、粒子からの燐光を検出する光読み取り装置として設けられる。光源1107が、識別層103を照射する。読み取り装置1131は、識別層の最も薄い寸法部分のエッジから形成されたトラックに沿う位置に対して、燐光の波長および強度を測定することによって、識別層103のフィンガープリントに従う光を検出するように適合される。
【0177】
[0207]図11Cに示された識別システム1160においては、読み取り装置1161が、偏光面に影響を及ぼす粒子による、識別層の端から端までの位置に対する偏光の変化を検出する光読み取り装置として設けられる。光源1107(たとえば、レーザ)が、識別層103を照射する。読み取り装置1161は、識別層103のフィンガープリントを読み取ることによって光を検出するように適合される。
【0178】
[0208]読み取りプロセスにおいて読み取りヘッドを案内するために積層構造を用いるアプローチの利点として、以下が挙げられる。第1に、読み取りヘッドまたはその関連部分を、識別層が中に存在するタグの幅によって機械的に案内されるように整形することが可能である。さらに、識別層の上方および/または下方のスタックに、案内として動作する追加層(たとえば、アライメント層)を含めることが可能である。これらのアライメント層は、たとえば、可視、反射性、磁気、または導電性のマーキングを、連続的に、または間欠的に、または識別層の開始点および/または終了点に施すことによって、光センサ、磁気センサ、または電気センサで検出されることが可能である。これらを組み合わせて用いることが可能であり、それらは、大部分が同一平面内に存在することが可能である。たとえば、識別層内に備えられた粒子と同じ平面にスパッタマーキングを間欠的に堆積させることが可能である。前述の層と同様に、これらの層は、スパッタリング、蒸着、積層、印刷、スピン塗布、および/または吹き付けを含む、それらに限定されない様々な方法で、堆積可能である。
【0179】
[0209]図12A〜12Dは、前述の例を説明する、本発明の実施形態による識別システムを示す図である。
【0180】
[0210]図12Aに示された識別システムでは、層シーケンス103、104、105が識別タグ1200を形成し、識別タグ1200は、読み取り素子1201によって読み取られ、読み取り素子1201は、U字形案内手段1212によって機械的に案内される。案内手段1212は、読み取り素子1201自体の延長部分であってよい。代替として、案内手段1212は、読み取り素子1201を収容する、整形された読み取りヘッド、またはその読み取りヘッドシステムを収容する外側ケーシングであってよい。そのような機械的案内手段として、位置を維持するローラ、コイルばね、リーフばね、集中ギンブルまたはピボットなどがある。これらの案内手段は、読み取り素子、読み取りヘッド装置、または読み取り装置の外側ハウジングに設置されることが可能である。
【0181】
[0211]図12Bは、別の識別システムの等角図および断面図である。このシステムでは、読み取り装置1210は、直角構造を有し、その構造において、案内手段1212が、(最上層105および最下層104を含む対象物またはタグの一部であることが可能な)識別層102のエッジから形成されたトラックに沿って読み取り素子1201を案内する。
【0182】
[0212]図12Cに示された識別システムでは、層シーケンス103、104、105はさらに、案内層1233および中間層1234を含んで識別タグ1230を形成する。案内層1233を用いて、読み取り素子1201を案内することが可能である。案内層1233のうちの1つは、視覚的/光学的案内を提供する、連続的な金属薄板であることが可能である。案内層1233のうちの別の1つは、案内磁界を提供する、強磁性材料の連続的な薄板であることが可能である。
【0183】
[0213]図12Dに示された識別システムでは、層シーケンス103、104、105はさらに、案内層1263および中間層1234を含んで識別タグ1260を形成する。案内層1263を用いて、読み取り素子1261を案内することが可能である。案内層1263のうちの1つは、隣接するフィンガープリントの開始点および終了点を示すマーカ(たとえば、光学式マーカ)を有することが可能である。案内層1263のうちの別の1つは、たとえば案内磁界を提供する、強磁性材料の間欠的な案内層であることが可能である。
【0184】
[0214]実施形態によっては、これらの層は、互いに平行であることが好ましい。現時点の好ましい実施形態によっては、これらの層は、厚さが100マイクロメートル未満であり、1〜10マイクロメートルの厚さであることがさらに優先される。
【0185】
[0215]前述のすべての実施形態において、それぞれの実施形態の一部分が、他の実施形態の一部分に当てはまってもよい。たとえば、ロールツーロールプロセスは、導電性粒子による変形形態にも適用されることが可能である。さらに、組み合わせ(たとえば、導電性磁性粒子と、対象となる複数のフィールドまたはシグネチャを検出する読み取り装置との使用)も考えられている。これにより、偽造に対する安全性および保護がさらに高められる。
【0186】
[0216]これまでのすべての図において、読み取り装置は、フィンガープリントの端から端まで動くものとして示されてきた。しかしながら、静止読み取り装置と可動タグ/対象物とを有することも可能である。
【0187】
[0217]さらに、1つまたは複数の保護層でトラックを保護することが可能である(図1Gも参照)。これは、耐用寿命中にフィンガープリント領域への機械的または化学的損傷を減らすことに役立ちうる。好適な材料として、テフロン被膜、別のポリマー被膜、ゾルゲル、非晶質ダイヤモンドまたはダイヤモンド様薄膜などがあり、これらに限定されない。これらの材料を、様々な方法(蒸着、スパッタリング、PVD、PECVD、フィルタ陰極真空アーク、浸漬塗工法、または吹き付け)で堆積させることが可能である。保護層は、層構造のエッジの一部分に限定されることも、エッジの全体であることも、さらにはタグ/対象物の上部表面および下部表面の部分を連続的に覆うことも可能である。保護層は、読み取り装置による当該情報の読み取りを可能にするか(すなわち、前に定義されたように、トラックは依然として「露出して」いなければならないか)、さもなければ、読み取りが行われることが可能であるように、保護層の取り外しが容易に可能でなければならない(図1Gも参照)。
【0188】
[0218]タグを製造してから対象物に添付する場合は、その添付を可能にする多数の好適な方法を用いることが可能である。実際の方法は、いくつかパラメータを挙げるとすれば、タグに使用される材料、対象物の表面に使用される材料、および前記対象物の運用環境に応じて様々であるが、主なものは、接着剤、エポキシ樹脂、はんだ、共晶熱接合、シリカゾルゲル、フリット、機械的インタロック、または機械的圧縮の使用である。密着する層は、薄い追加層であってもよく、識別層自体を構成してもよく、タグの上部表面および/または下部表面のいずれかまたは両方の一部または全体に存在してもよい。
【0189】
[0219]図13は、本発明の別の実施形態による識別装置1300を示す。
【0190】
[0220]識別装置1300は、対象物1302に密着した識別タグ1301を有する。タグ1301は、識別層1303を有し、密着部分1304において対象物1302と密着している。
【0191】
[0221]以下では、多孔質材料の積層薄板を利用する、本発明の実施形態について説明する。
【0192】
[0222]多孔質材料を使用することにより、そのような多孔質材料の孔に、選択的に磁性材料または導電性材料を充填して、識別層を作成することが可能である。
【0193】
[0223]次に、図14A〜16を参照して、本発明の一実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0194】
[0224]図14A〜14Eは、図14Aに示されたアルミフォイル1400で積層タグを作製する例示的工程を示す。まず、アルミフォイル1400を、糸くずのでないふき取り用の布とイソプロパノール(IPA)とでクリーニングし、その後、脱イオン水でクリーニングする。
【0195】
[0225]次に、図14Bに示すように、フォイル1400を、一部が外に突き出るように、2つのポリマー積層薄板1401、1402の間に置いて、フォイル1400がそれらの接着面と接触するようにする。図14Cに示すように、その材料のスタックを、従来の事務所据置型ラミネータに、たとえば、110℃および最低プリセット速度(速度1)で通すことによって、まとめて積層化する。次に、この積層化された膜1403を、Struers EpoFixを用いたエポキシモールド1404に入れ、図14Dに示されるように、硬化するまで、たとえば一晩、放置する。作製の最後の工程は、2段階の研磨である。このサンプルに対し、グレード500〜1200から2400〜4000の研摩紙で研磨を行い、その後、続けて、3ミクロンビーズおよび1ミクロンビーズを有するダイヤモンドサスペンションを用いて精密研磨を行う。図14Eは、このようにして作製された積層Al膜の底面図である。
【0196】
[0226]次に、図15に示すように、サンプルおよびPtメッシュ1501をビーカー1500に入れ、温度制御装置1502を用いて、冷却板1502の温度を所望の温度(たとえば、4℃)に設定する。溶液の温度が設定温度に達すると、図のように、突き出たフォイル1400がタグ前駆物質に対する接点となって、150Vに設定された電源1503が接続される。この陽極酸化工程により、アルミニウム含有層のエッジに孔がランダムに分布した無秩序性多孔質アルミナが生成される。これに続き、サンプルを拡張溶液(たとえば、5重量%の燐酸)に浸漬して、孔を所望のサイズまで拡大する。
【0197】
[0227]最後に、サンプルおよびPtメッシュ1501を、30gのNiSO4.6H2O、4.5gのNiCl2.6H2O、および4.5gのH3BO3を含有するNiめっき溶液に浸漬する。めっき電圧は、たとえば、−1.4Vに設定する。めっき後、Niがランダムに、孔の内側に落ちる。この時点で、この領域が、所望の識別層を構成する。
【0198】
[0228]図16A〜16Dは、本発明の前述の実施形態による識別タグの例示的製造方法の過程を示す図であって、孔を形成する工程と、孔を充填する工程とを示している。
【0199】
[0229]図16Aは、積層薄板1401、1402の間にあるアルミフォイル1400の一部分を示す。
【0200】
[0230]図16Bは、アルミフォイル1400内に孔1600を形成する陽極酸化工程の後の、図16Aのアレイを示す。
【0201】
[0231]図16Cは、アルミフォイル1400の孔1600のうちのいくつかの中にニッケル粒子1601を形成するニッケルめっき工程の後の、図16Bのアレイを示す。
【0202】
[0232]図16Dは、図16Cに示された識別タグ上で読み取り素子によって取り込まれたシグネチャ1610を示す。
【0203】
[0233]図16A〜16Dは、識別層を収容するタグの形成過程を示している。この時点で、この識別層(すなわち、これに含まれた識別特徴)を、適切な磁界検出器を用いて、識別層のトラックから読み取って、シグネチャを取得することが可能になる。
【0204】
[0234]図16Eは、前述の方法を用いて製造された、孔が充填されたタグの断面を示す。図1Aと同様に、ここでも、トラック幅の寸法「a」と、識別層の深さの寸法「b」とが示されている(しかしながら、この図は2次元なので、寸法「c」は示されていない)。この図において見られるように、この方法の一利点は、(アルミニウムの薄いフォイルを用いることにより)狭いトラックを形成しやすいことと、結果として得られる孔が全体としてトラックの面外方向を向くことである。これは、前と同様に、磁気フィンガープリントの読み取りがより容易であり、偽造がより困難な構造であることを意味する。この点において、トラックの面外方向を向くように配置された識別特徴を提供する構造(たとえば、磁性材料すなわち粒子が後で充填される、ランダムに分布した孔)の形成は、図15および16で示されたような電気化学的方法にはまったく限定されないことに注意されたい。ただし、(たとえば、ランダムに分布する粒子がトラックの面外に配置されることを可能にする)図4に示された方法のような、他の任意の好適な方法を、本発明で用いることが可能である。
【0205】
[0235]図17は、2つのそのような積層アルミフォイルと、前述の陽極酸化工程の結果として得られた多孔質アルミナとの、走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。これら2つの例において、識別層を形成するために用いられたアルミフォイルの厚さは、一方のケースでは250μmであり、他方のケースでは20μmであった。
【0206】
[0236]トラック幅(識別層の最も薄い寸法部分)は、1ミリメートル未満であり、好ましくは、500マイクロメートル未満、100マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、さらには1マイクロメートル未満である。前述の例でフォイル前駆物質の使用について示したが、他の形態の識別層(スパッタ層、蒸着層、金属リーフ、印刷層、またはスパンオン層など)も、ここでは考えられている。
【0207】
[0237]磁性材料が充填された多孔質材料の使用は、層構造アプローチを用いて所望の幅を識別層に与える目的に関して、多数の利点がある。
【0208】
[0238]この工程スキームにおける変更の例として、以下のものがある。
・孔のサイズ、分布、間隔、およびこれらの、処理条件による制御。
・孔のサイズ、形状、および分布が様々な多孔性ホストを提供するための、前駆物質および純度の変更。
・孔を様々な程度に充填するための、様々な磁性材料。
・読み取りの1回ごとに、読み取り前に、識別層を強力な磁界にさらしてリセットする実施形態。
・高アスペクト比のナノ構造多孔質薄膜をナノ棒磁石として使用することの利点。
・導電性材料が充填された孔からの電磁界および電界の様々な測定方法。
【0209】
[0239]次に、図18を参照して、本発明にしたがって識別されるように適合された別の対象物としての、本発明の識別層を収容するコンパクトディスク1800について説明する。
【0210】
[0240]コンパクトディスク1800は、主表面を備える。さらに、コンパクトディスク1800のエッジが、(たとえば、磁性材料が部分的に充填された多孔質アルミナを含むアルミニウム層であって、最上層105と最下層104との間に配置されることが可能な)識別層103の最も薄い寸法部分を露出するように設計される。識別層103の詳細も、図18の拡大部分で示されている。
【0211】
[0241]したがって、図18の実施形態では、実質的にタグ付けされる対象物は、識別層を収容する積層物自体である。例として、ここでは、コンパクトディスク(CD)ソフトウェア媒体を明示的に示したが、(既に紹介した)他の例も同様に当てはまる。図18に示されたように識別層102を収容するCDは、たとえば図15および16に示された工程により、CDの1つのエッジの、スパッタリングされた薄いアルミニウム層の微小領域を陽極酸化することによって得られる。そうすることによって、識別層は、トラックを形成する露出領域を含み、このトラックを読み取ることにより、そのソフトウェア媒体が本物であることが認証される。陽極酸化工程または孔充填工程の前および/または後にCDの微小領域を切削および/または研磨することが、円滑なトラックを形成するために望ましい場合がある。
【0212】
[0242]識別タグに関連して本発明を説明した、他の実施形態の特徴は、識別層を収容する積層物自体が、識別されるように適合された対象物であってよい実施形態にも単純に当てはまり得る。そのような特徴の例として、ロールツーロールプロセスでの製造、複数スタックの使用、読み取りヘッドの機械的案内、そのような読み取りヘッドを案内する、隣接する中間層の使用などがある。同様のことが、様々な材料、添付の様式、および/または本明細書に記載の動作の様式にも当てはまる。
【0213】
[0243]次に、イオン打ち込みを用いて識別層を作成する、本発明の実施形態について説明する。
【0214】
[0244]以下では、図19A〜19Dを参照して、本発明の別の実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0215】
[0245]識別層として好適な層を形成する一例示的方法は、イオン打ち込み方法である。この場合、層は、層状サンプルが連続作成されるのではなく、前駆物質のバルクの形で形成されることが可能である。図19A〜19Cは、このアプローチに特に適した各段階を示す。図19Aの断面図において一方の側から示されるバルク材料1900は、ポリマー、金属薄板、木、セラミック、皮、繊維、シリコンウェハ、その他を含み、これらに限定されない、広い範囲の材料から選択されることが可能である。
【0216】
[0246]図19Bに示された、イオン打ち込みに用いられるイオン1901は、識別層を形成するか、識別層の要素となることが必要なイオンである。磁気識別特徴に基づく識別層の場合は、鉄、ニッケル、コバルトなどであって、これらに限定されない強磁性材料のイオンを用いることが望ましい。そのイオンエネルギーの選択によって、イオンがバルク材料に浸透する深さを調整することが可能である。これは、停止距離が、バルク材料1900、イオンエネルギー、およびイオンの散乱断面の関数であるためである。停止距離の予測および計算は、当該技術分野においては周知である(たとえば、TRIMのようなシミュレーションソフトウェアを使用する)。高フルエンスのイオンを用いることにより、相当な密度のイオン材料をバルク内に取得することが可能であり、後続のアニール工程(その結果として得られる構造を図19Cに示す)により、拡散および凝集が進んで、識別層を形成する凝集粒子1903が形成される。特定のフルエンスのイオンの場合、結果は、明瞭かつ種々のサイズの、材料の島(すなわち、粒子群)の凝固層である。この材料は、イオンとして残留する場合も、バルクまたは他の気体と反応して化合物(酸化物など)を与える場合もある。
【0217】
[0247]バルク材料1900の少なくとも1つのエッジを切削および/または研磨することにより、識別層1903を露出するトラックが作成される(ここで、はっきりさせるために再度言及すると、図19は、識別層1903を備える対象物またはタグの側面図である)。イオン打ち込みによる識別層の形成工程は、既に説明されたロールツーロールプロセスで実現可能であり、既に説明された他の多くの実施形態との組み合わせが可能である(たとえば、異なる複数のイオンエネルギーを選択することによる多層スタックの形や、異なる複数のイオンおよび/または前駆物質を選択することによる非磁性の変形形態での使用が可能である)。
【0218】
[0248]図19Dは、図19Cに示された、識別されるように適合された識別タグまたは対象物について、読み取り素子によって取り込まれたフィンガープリント/シグネチャ1910を示す。
【0219】
[0249]タグまたは対象物の前駆物質内で高密度の停止層(たとえば、浸透の深さを規定するのに役立つチタンまたはタンタルの層)を使用することも可能である。また、この方法の変形形態では、拡散障壁およびバルク内へのイオンの拡散を利用することもさらに可能である。
【0220】
[0250]次に、識別層の生成方法の別の例として、不混和性2元系ポリマーブレンド層の相分離について詳細に説明する。
【0221】
[0251]スピンキャスト不混和性2元系ポリマーブレンドの相分離の一般現象については、実験的な研究が行われており、相分離プロセスの分析モデルが提案されている。それについては、WalheirnらのMacromol.30、4995(1997年)、Takenaka、HashimotoのPhys.Rev.E 48,647(1993年)を参照されたい。
【0222】
[0252]ここでは、相分離した2元系ポリマーブレンドの形態構造を用いて、たとえば強磁性材料の、無秩序パターンが層内に形成される。相分離したパターンは、ランダムであり、熱雑音および他のカオス過程の作用によって自己集合する。したがって、これは、2つのパターンが同一である確率が非常に小さいので、本発明の目的に好適である。
【0223】
[0253]図20は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)−ポリスチレン(PS)ブレンドの相分離した形態構造の、PSをスピン塗布して除去した後の原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。
【0224】
[0254]この画像は、高分子量のポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)と高分子量のポリスチレン(PS)とのポリマー溶液を媒体にスピン塗布して高表面エネルギー基板にすることによって得られる。その後、適切な溶媒を用いて、PMMAドメインを除去することなく、PSを溶かす。その後、PMMAの薄い残留層を酸素プラズマ処理によって除去して、最終的な無秩序パターンを形成する。その後、この無秩序パターンを、いくつかある方法のいずれかによって、下方の下層基板に転写する。
【0225】
[0255]以下では、図21A〜21Fを参照して、本発明の別の実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0226】
[0256]この方法では、図21A〜21Fに示すように、Ni薄膜の一部をエッチング除去することによって、無秩序パターンをNi薄膜に転写する。
【0227】
[0257]この例では、図21Aに示すように、基板2100をSiから作り、物理気相成長法によって、Ni薄膜2101をSi基板2100の上に堆積させる。Si基板2100に対するNi 2101の密着性を高めるために、Niの前に、Crの薄層(図示せず)を堆積させる。次に、Ni 2101の上にフォトレジスト2102をスピン塗布し、その後、フォトレジスト2102の上にCr 2103を堆積させる。
【0228】
[0258]図21Bに示すように、不混和性ポリマーブレンド溶液を特定の角速度でCr層2103にスピン塗布して、PS相2110および残留相2111からなる所望の相分離形態構造を得る。
【0229】
[0259]次に、図21Cに示すように、シクロヘキサンなどの溶媒を用いてPS相2110を選択的に除去して、残留相2111(すなわち、PMMA)をCr 2103上に残す。その後、Cr層2103をCrエッチング溶液でウェットエッチングして、図21Cに示されるような層シーケンスを得る。
【0230】
[0260]次に、図21Dに示すように、露出したフォトレジスト2102をUVにさらして現像し、Ni薄膜2101を露出させる。代替として、露出したフォトレジスト2102を異方性O2プラズマエッチングにより除去することも可能である。
【0231】
[0261]次に、図21Eに示すように、Niエッチング溶液を用いてNi薄膜2101をエッチングする。
【0232】
[0262]図21Fに示すように、フォトレジスト2102を(フォトレジストの上に配置された構造物とともに)除去すると、最終結果として、Niの無秩序パターン2120が得られる。
【0233】
[0263]次に、図22A〜22Fを参照して、本発明のさらに別の実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0234】
[0264]図22A〜22Fは、Niの電気めっきによって基板上に無秩序パターンを形成する工程を示す。
【0235】
[0265]この実施形態では、図22Aに示すように、基板2200はSiであり、Si 2200の上にAu 2201の薄膜を物理気相成長法によって堆積させる。Si基板2200に対するAu 2201の密着性を高めるために、Au 2201の前に、Crの薄層(図示せず)を堆積させる。次に、Au 2201の上にフォトレジスト2202をスピン塗布し、フォトレジスト2202の上にCr層2203を堆積させる。
【0236】
[0266]図22Bに示すように、不混和性ポリマーブレンド溶液を特定の角速度でCr層2203にスピン塗布して、PS相2210および残留相2211からなる所望の相分離形態構造を得る。
【0237】
[0267]図22Cに示すように、シクロヘキサンなどの溶媒を用いてPS相2210を選択的に除去して、PMMAの残留相2211をCr 2203上に残す。次に、Cr層2203を、Crエッチング溶液でエッチングする。
【0238】
[0268]図22Dに示すように、露出したフォトレジスト2202をUVにさらして現像し、Au薄膜2201を露出させる。代替として、露出したフォトレジスト2202を異方性O2プラズマエッチングにより除去することも可能である。
【0239】
[0269]次に、図22Eに示すように、Au 2201の上にNi構造物2220を、所望の高さになるまで電着させる。
【0240】
[0270]次に、図22Fに示すように、フォトレジスト2202を(フォトレジストの上に配置された構造物とともに)除去すると、最終結果として、Niの無秩序パターン2230が得られる。
【0241】
[0271]次に、図23A〜23Dを参照して、本発明のさらに別の実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0242】
[0272] 図23A〜23Dは、Niの無電解堆積によって基板上に無秩序パターンを形成する例示的工程を示す。
【0243】
[0273]この実施形態によれば、図23Aに示すように、Siの基板2300を使用する。不混和性ポリマーブレンド溶液を特定の角速度でSi 2300にスピン塗布して、PS相2309および残留相2310からなる所望の相分離形態構造を得る。
【0244】
[0274]図23Bに示すように、シクロヘキサンなどの溶媒を用いてPS相2309を選択的に除去して、PMMA 2310をSi基板2300上に残す。次に、薄いCr密着層2311を物理気相成長させ、その後に薄いパラジウム層(図示せず)を物理気相成長させる。
【0245】
[0275]次に、図23Cに示すように、残留相2310の最上部に配置されたPd−Cr膜2311の部分を、PMMA 2310をアセトンに溶かすことによって、持ち上げる。
【0246】
[0276]次に、図23Dに示すように、Pd−Cr膜2311の残留部分で覆われたSi基板2300を無電解めっき溶液の加熱漕に浸漬することによって、Ni 2320を堆積させる。
【0247】
[0277]図24および25は、本発明の第7の実施形態の方法に従って製造された識別タグの原子間力顕微鏡画像を示す。
【0248】
[0278]相分離ポリマーを用いて無秩序層を作成することに関連付けられた前述の実施形態では、様々な変形形態が実施可能である。シリコンの代替として、他の任意の固体材料で基板を形成することが可能である。実際、例示的な基板として、ポリマー薄板、セラミック、ガラス、紙、木、革、繊維、金属などの基板がある。基板の選択は、タグの運用環境に左右される場合があり、同様の考察が、前述の他のケースについて説明されたことにも当てはまる。
【0249】
[0279]前述のケースでは、上に横たわる膜は、Ni(および好適な中間密着層または導電層)である。これは、前述の実施形態に関して開示されたように、他の任意の磁性材料(たとえば、Fe、Cr)であってよく、磁界以外のものが検出にとって好ましい場合には、代替材料(たとえば、他の実施形態で紹介されたように、電気特性を検出する場合には、CuまたはAu)であってよい。相分離手法と粒子とを組み合わせて、1つのポリマー相に微粒子(理論的には直径100マイクロメートル未満だが、直径1マイクロメートル未満が好ましい)がプリロードされるようにすることも可能である。これらの粒子は、その相内にとどまり、表面張力によって、混合時に相と相との間に形成された無秩序境界に向かって移動する。結果として、前述の実施形態(たとえば、Niのような磁性粒子または帯磁可能粒子を使用するケースにおいて、磁気読み取りヘッドを有する実施形態)のように検出されることが可能な、粒子の無秩序配置が達成される。
【0250】
[0280]前述の3つの例では、膜は、PVD、電気めっき、または無電解めっきによって堆積されるように説明された。しかしながら、これは、たとえば、金属錯体前駆物質または金属含有ペーストまたはサスペンションを蒸着、印刷、またはスピン塗布することによっても達成可能である。これはトラック幅を規定する層なので、膜の厚さは、100マイクロメートル未満であることが優先され、約1マイクロメートルであることがさらに好ましい。
【0251】
[0281]このプロセスは、前述のロールツーロールプロセスで実施可能であり、既述の他の多くの実施形態と組み合わせることも可能である(たとえば、多層スタックの場合は、対象物自体の一部として、など)。
【0252】
[0282]前述のすべての実施形態において、タグを対象物から取り外す動作によって、シグネチャがオリジナルのシグネチャとの相関を有しなくなる程度まで識別層が乱されるか、影響を受けるように、非常に薄い保持層を有する積層物を開発することが可能である。これは、タグを取り外して別の(おそらくは偽造の)対象物に添付することが不可能であることを意味する。
【0253】
[0283]前述の方法で識別層が形成された後、1つの次元において非常に薄くなるように、切片を切り出すことが可能である。そのような実施形態を図26に示す。ここでは、層シーケンスは、下層104と、上層105と、下層104と上層105との間に挟まれた識別層103とを有する。層シーケンス103、104、105の小さなスライスが切り出され、対象物2600に接着される(図26を参照)。この点において、好適な手法(たとえば、ダイヤモンドナイフによる検鏡用切片作製法)では、数十ナノメートルの、材料の極薄スライスを切り出すことが可能であるが、本明細書に記載のタグは、その最も薄い寸法部分でも、識別特徴を備える層の厚さであるように、典型的には、断面が100マイクロメートル以上の厚さであることに注意されたい(実施形態によっては、理論的には100マイクロメートル未満)。
【0254】
[0284]前述の実施形態において、識別層および関連付けられたトラックの寸法(一般に、所与の長さスケールに対して、トラックが長いほど、多くの情報が含まれる)、無秩序の寸法(所与の長さスケールに対して、無秩序のスケールが小さいほど、多くの情報が存在する)、およびその無秩序の複雑さ(粒子サイズの変動量、孔形状の変動量、および他の自由度)を変えることにより、安全性のレベルを変えることが可能である。
【0255】
[0285]前述の実施形態では、簡単のために、識別層の最も薄い寸法部分を露出することによって作成されたトラックが、考えられている層の面に垂直であるように示されている。しかしながら、角度を付けて断面を切削および/または研磨しても、所望の狭いトラック幅を達成することが可能である。これは、角度が非常に浅い場合のみ達成されないため、層の面に対して少なくとも10度より大きい角度であれば有効であるが、80〜90度の角度が優先される。この件を図27に示す。ここでは、層シーケンス103、104、105のスライス2701、2702が、(切断線2702、2703で示される)異なる角度で切り出されている。
【0256】
[0286]前述の実施形態では、トラック内にも(トラック全体に、またはトラックの特定の微小部分に、または、トラックが、情報が記録されたストリップの特定の微小部分であるように)情報を配置することが開示されている。これは、情報に対して様々な長さスケールの無秩序を考えること、したがって、たとえば情報のビットを保存することが可能であるように、1つの長さスケールを変調することによるものである。これは、バーコード、磁気ストリップ内の磁区、または2進法と同様である。そのような実施形態を図28に示す。ここでは、磁性粒子磁区2810が、永続的に保存されることが望まれる情報のビット(たとえば、製品ファミリを識別するバーコード)に対応するように、間欠的に物理的に堆積している。磁性粒子要素2800が示される、より細かいスケールでは、前述の識別層は、この変調構造の各部分または1つまたは複数の要素の中の細部である。
【0257】
[0287]本発明による別の方法は、前述の方法と類似しているが、物理構造を変調することによって情報を配置するのではなく、1つの長さスケールに帯磁方向「オン」(「オン」部分2900)および「オフ」(「オフ」部分2901)が書き込まれる(ただし、粒子の細部構造はフィンガープリントとして動作する)形で、広がった、連続的な識別層103が与えられる。これは、粒子密度が高いために、より大きな長さスケールに対して、低分解能のヘッドで検出される情報のビットに雑音がほとんど検出されない場合に、特に良好に働く。図29は、この概念を実現する、本発明の実施形態を示す。
【0258】
[0288]上記は、粒子または磁性材料の形で情報を保存する例であるが、他の実施形態(たとえば、粒子の光学的活性/反射率を変調して、微細なフィンガープリント構造が含まれる光学式バーコードを与える実施形態)も同様である。
【0259】
[0289]図30Aを参照して、本発明による読み取り装置3000について説明する。この読み取り装置は、たとえば従来のクレジットカード読み取り装置において見られるような、スロット3010を備える。さらに、この読み取り装置は、スロット3010の底部に読み取りヘッド3004を設置されるように適合される。1つまたは複数の読み取り素子(センサ)3012(たとえば、磁気信号の場合には、「1つまたは複数の読み取り素子」は、標準的な誘導性読み取り素子、異方性磁気抵抗(AMR)読み取り素子、巨大磁気抵抗(GMR)読み取り素子であることが可能であるか、光磁気読み取り方法などの他の概念に基づくことが可能であることに注意されたい)は、トラック幅を網羅するように、読み取りヘッド3004内に設置される。図30Aに示すように、読み取り素子は、スロット3010に挿入されるべき対象物の動きにほぼ垂直に配置されることが可能である。したがって、識別層103を備え、識別層103が、識別層103の最も薄い寸法部分から識別特徴を読み取られるように露出したトラックを有する、クレジットカード900のような対象物が、スロット3010内を移動すると、読み取りヘッド3004内の読み取り素子3012がフィンガープリントを読み取る。次に、このフィンガープリントを、読み取り装置3000でさらに処理して、シグネチャを得ることが可能である。読み取り装置はさらに、タグまたはトラックの読み取り装置通過時の位置を監視するセンサを備えることが可能であることに注意されたい(この目的には、たとえば光学式動き検出器が好適である)。
【0260】
[0290]読み取り装置3000が与えられている場合、読み取り装置3000はさらに、読み取り素子によって読み取られたフィンガープリントからのシグネチャを、あらかじめ保存されている基準シグネチャと比較して、クレジットカード対象物から読み取られたシグネチャと、あらかじめ保存されている基準シグネチャとの差が、所定のしきい値を下回る場合には、クレジットカード3000が本物であると識別する、好適な処理手段(図示せず)を備えることが可能である。あらかじめ保存されているシグネチャが、(読み取り装置から)離れた場所のデータ記憶媒体にある場合、読み取り装置は、その、離れた場所のデータ記憶媒体から、あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取るように適合されているのが通例である。しかしながら、より一般的には、読み取り装置は、読み取られたシグネチャまたはフィンガープリントを、離れた場所にあるデータ記憶媒体に送り、そこで、保存されているシグネチャとの比較が行われるように、適合される。その比較が行われた後、一致が検出されたかどうかを詳述して、タグまたは対象物を識別および/または認証するメッセージが(たとえば、読み取り装置に)返信される。これに対し、あらかじめ保存されている基準シグネチャが対象物またはタグ自体に保存されている場合、読み取り装置は(さらに)、このあらかじめ保存されている基準シグネチャを対象物またはタグ3005から受け取るか読み取るように適合される。
【0261】
[0291]図30Aおよび30Bは、タグ付けされた対象物の2つの例を示す。これらは、実用化され、実験室試験で100回を超える読み取りが行われたものである。図30Aに示したのは、クレジットカードサイズの積層プラスチックカードの形のタグ付けされたIDカードであり、そのタグは、積層された2枚のプラスチック薄板の間に磁性粒子を散布し、約2cm×1cmのサイズに切り出し、プラスチックのIDカードの層間に挿入して積層化したものである。図30Bに示したのは革のサンプルであって、これは、同様のタグ(磁性粒子を有するプラスチック薄板)が間に挿入され、貼り合わせられた2片のウォレットレザーを含む。この革ラベル(サンプル)も、ほぼクレジットカードサイズであり、機械的には柔軟なままである。両サンプルとも、やはり図30Aの写真に示されたスロット読み取り装置により、繰り返し、確実に読み取られた。この2つの例は、特に、識別特徴の磁気読み取りまたは電気読み取りの場合に、識別特徴を読み取るためのトラックが、読み取りのためには、露出されて見えていなくても、対象物に埋め込まれていても、保護層に覆われていてもよいことを示している。
【0262】
[0292]図31は、本発明の実施形態による単層タグの形成を示す。ここでは、磁性粒子または帯磁可能粒子3101と、非磁性マトリックス材料3102(このマトリックス材料は、ポリマーまたは金属であってよく、これらに限定されない)とを混合する。この混合物は、ホッパ3103からパイプ3104に流れ落ち、押し出し/圧延機構3105により、押し出されるか、および/または圧延される。結果として得られるタグの対角図も図31に示した。このケースでは、(寸法a、b、cの)識別層103は、上側の面にも下側の面にも支持層を必要としないよう、十分に堅牢である。トラック110は、タグの1つまたは複数の最も薄いエッジであり、幅が「a」である。2つ以上の層を使用するタグの場合と同様に、トラックの表面または表面近くにある磁性粒子または帯磁可能粒子は、トラックに沿って動く読み取り装置によって読み取られる磁気フィンガープリントに寄与する。
【0263】
[0293]図32は、本発明の別の実施形態による三層タグの断面を示す。トラック110は、識別層103の、露出した最も薄い寸法部分から形成される。このケースでは、トラック110を収容するタグ表面は、浅い、非対称のV字形表面である。さらに、最上支持層105および最下支持層104は、厚さが同じではない。しかしながら、しかるべき形状の案内を有する読み取り装置が、トラックからフィンガープリントを確実に読み取ることが可能であるのは、今や明らかである。さらに、本発明のタグまたは対象物の識別層を露出するトラックに沿って読み取り素子を通すことが可能である、適切な形状の読み取り装置を作ることが可能であれば、トラックが、ほとんど任意の形状のタグ表面に収容されることが可能であることも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1A】本発明の識別層を、本発明によるタグまたは対象物の中の、識別層の最上部および最下部にあるオプションの覆い層と、本発明で用いられる読み取り素子とともに示す図である。
【図1B】図1Aの識別層の側面図である。
【図1C】本発明の一実施形態による識別装置を示す図である。
【図1D】本発明の第2の実施形態による識別装置を示す図である。
【図1E】本発明の別の実施形態による識別装置を示す図である。
【図1F】本発明の一実施形態による、本発明の対象物を示す図である。
【図1G(i)】本発明の実施形態によるタグまたは対象物の対角図、ならびにその実施形態によるタグ/対象物および読み取り装置の断面図である。
【図1G(ii)】図1G(i)の実施形態によるタグ/対象物および読み取り装置の断面図である。
【図1H】トラックを端から端までスキャンする読み取り素子を示す図である。
【図1I】トラックの上を、トラックと平行に動く読み取り素子を示す図である。
【図1J】トラックの上を、トラックと「ほぼ平行」に動く読み取り素子を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による識別システムをさらに示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による識別システムの別の図である。
【図4A】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4B】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4C】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4D】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4E】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4F】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4G】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4H】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の方法に従って製造された識別タグの光学顕微鏡画像および電子顕微鏡画像を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による識別システムを示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による識別タグの製造方法の過程におけるオプションの工程を示す図である。
【図9】本発明の実施形態による対象物の例としてのクレジットカードを示す図である。
【図10A】電気的特性に由来するフィンガープリントの読み取りに基づく、本発明の識別システムを示す図である。
【図10B】電気的特性に由来するフィンガープリントの読み取りに基づく、本発明の識別システムを示す図である。
【図10C】電気的特性に由来するフィンガープリントの読み取りに基づく、本発明の識別システムを示す図である。
【図11A】光学式読み取りを用いる、本発明の識別システムを示す図である。
【図11B】光学式読み取りを用いる、本発明の識別システムを示す図である。
【図11C】光学式読み取りを用いる、本発明の識別システムを示す図である。
【図12A】機械的案内手段を用いる、本発明による識別システムを示す図である。
【図12B】機械的案内手段を用いる、本発明による識別システムを示す図である。
【図12C】機械的案内手段を用いる、本発明による識別システムを示す図である。
【図12D】機械的案内手段を用いる、本発明による識別システムを示す図である。
【図13】本発明の別の実施形態による識別装置を示す図である。
【図14A】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図14B】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図14C】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図14D】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図14E】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図15】本発明のいくつかの実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16A】本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16B】本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16C】本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16D】本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16E】図16A〜16Dの方法を用いて製造されたタグの断面を示す図である。
【図17】本発明の実施形態に従って製造された識別タグのSEM画像を示す図である。
【図18】本発明の対象物の別の例としてのCDを示す図である。
【図19A】本発明による識別タグまたは対象物の製造方法の過程を示す図である。
【図19B】本発明による識別タグまたは対象物の製造方法の過程を示す図である。
【図19C】本発明による識別タグまたは対象物の製造方法の過程を示す図である。
【図19D】本発明による識別タグまたは対象物の製造方法の過程を示す図である。
【図20】相分離形態構造の原子間力顕微鏡画像を示す図である。
【図21】図21A〜図21Fは本発明の別の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図22】図22A〜図22Fは本発明のさらに別の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図23】図23A〜図23Dは本発明のさらに別の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図24】図23に示された本発明の実施形態の方法に従って製造された識別タグの原子間力顕微鏡画像を示す図である。
【図25】図23に示された本発明の実施形態の方法に従って製造された識別タグの原子間力顕微鏡画像を示す図である。
【図26】本発明の一実施形態による識別装置である。
【図27】図27に示された本発明の実施形態による識別装置の製造方法の過程を示す図である。
【図28】本発明のさらに別の実施形態による識別システムを示す図である。
【図29】本発明のさらに別の実施形態による識別システムを示す図である。
【図30A】本発明の読み取り装置の一実施形態を示す図である。
【図30B】本発明に従ってタグ付けされた対象物の例を示す図である。
【図30C】本発明に従ってタグ付けされた対象物の例を示す図である。
【図31】本発明の一実施形態による単層タグの形成を示す図、ならびにそのタグの対角図である。
【図32】本発明の一実施形態による三層タグの断面図であって、トラックを収容するタグの表面が平坦であり、最上層および最下層が非対称である。
【図1a】
【図1b】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、識別タグが添付されることが可能な対象物を識別する、その識別タグと、識別されるように適合された対象物とに関する。特に、本発明は、それぞれが、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備える、そのような識別タグと、識別されるように適合された対象物とに関する。さらに、本発明は、読み取り装置と、識別装置と、識別システムと、識別タグを形成する方法と、識別タグまたは識別されるように適合された対象物から識別特徴(情報)を読み取る方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]識別技術は、長年にわたり、広く関心が持たれ、開発が行われてきた分野である。識別の一般的な方法は、可読タグの使用に依存する。そのようなタグは、目に見える程度のバーコード、ホログラム、および機械可読タグ(磁気ストライプや無線識別(RFID)チップなど)から、顕微鏡で見える程度の蛍光インクおよびミクロンサイズの散乱粒子まで様々である。
【0003】
[003]識別技術に絶えず関心が持たれる主な理由の1つは、詐欺行為の発生が、安全でない方式で取引が行われてきたことに大きく起因することである。より安全な取引システムが求められているのは明らかである。たとえば、パスポート、証明書、労働許可証、ビザ、自動車免許証などの個人文書、ATMカード、クレジットカード、通貨、小切手などの商業証券、および他の商取引証書を、取引の時点で確実に認証することが必要とされている。別の例では、コンパクトディスク(CD)やデジタル多用途ディスク(DVD)などのアイテムに一意のフィンガープリントを付けて不正コピーの使用を防ぐことができれば、ソフトウェア産業やエンタテインメント産業にとって大きな恩恵となるであろう。さらに別の例では、商品価値が非常に高い物品(宝石、手工芸品、骨董品など)の取引の場合には、そのような物品を受け入れる側が、その物品のアイデンティティを確認してからクレジットを発行することが可能であることが不可欠である。より一般的なレベルでは、そのアイデンティティを後で確認される必要がある任意の物理的物体に対する、安価で信頼性が高い認証システムも必要とされている。これは、商業に関しては、「ブランド保護」を容易にする。
【0004】
[004]様々な識別方法が知られており、以下ではそれらについて記載する。
【0005】
[005]よく知られている識別方法の1つは、クレジットカードに見られるような磁気ストライプ(磁気バーコードとも呼ばれる)にエンコードされた情報を使用する。磁気ストライプは、典型的には、樹脂で固められた微小磁性粒子で構成される。これらの粒子は、カードに直接塗布されるか、カードに塗布されたプラスチック基材の上でストライプになる。このストライプは、それらの粒子(たとえば、鉄の粒子)の各領域が特定方向に磁化されて(すなわち、ストライプ内の磁性粒子の極性が局所的に変化させられて)情報の各ビットが定義されることにより、エンコードされる。ストライプの長さに沿ってエンコードの向きを変えることによって、情報がストライプに書き込まれ、保存される。したがって、ユーザアカウント番号などの識別情報が、最初に書き込みヘッドによって磁気ストライプにプログラムされ、その後、その磁気ストライプを読み取りヘッドで読み取ることによって確認される。その後、ユーザの確認は、ユーザが(たとえば)文書または伝票に署名をするか、個人識別番号を入力して、ユーザのアイデンティティが確認されることによって行われる。
【0006】
[006]そのようなシステムは、本質的に、安全ではない。なぜなら、磁気ストライプにエンコードされた署名およびデータは、偽造が容易に可能だからである。さらに、磁気媒体は、磁気ストライプが磁界に接近したときに、破損しやすい。
【0007】
[007]以下では、識別装置の分野の先行技術について述べる。
【0008】
[008]欧州特許出願公開第0824242(A2)号明細書には、物品の表面にあって、その位置が読み取られ、一意署名を与えるために使用される、ランダム磁気ロッド、ランダム磁気ファイバ、またはランダム磁気フィラメントが記載されている。
【0009】
[009]米国特許出願公開第2001/0010333号明細書には、クレジットカードおよび他の平面/積層構造物によって案内される光の作用を測定して、そのアイテムのエッジに現れる一意パターンを検出することが記載されている。この文献ではさらに、そのようなファイバのあらかじめ決められたパターンおよびランダムパターンと、不透明領域および透明領域から散乱する光の作用とを用いて、識別用パターンを生成することが考察されている。
【0010】
[010]米国特許第4218674号明細書には、対象物を識別する手段として、材料のランダムな表面欠陥を測定することが記載されている。
【0011】
[011]PCT出願の国際公開第2004/013735号パンフレットには、たとえば磁性トナーを用いて印刷される識別手段が記載されている。これは、2Dバーコードパターンとよく似ており、対象物にセキュリティ情報を、ビットマップに似た画素形式で書き込む手段である。
【0012】
[012]PCT出願の国際公開第87/01845号パンフレットおよび欧州特許第0236365(B1)号明細書は、ランダムファイバに対するマイクロ波問合せを認証用信号の作成手段として使用することを開示している。
【0013】
[013]欧州特許出願公開第0696779(A1)号明細書は、クレジットカードなどの対象物の表面に印刷された磁気インクのランダムパターンを使用することを開示している。
【0014】
[014]欧州特許第0583709(B1)号明細書は、カード上の粒子のランダムな分布を電磁スキャンによって表面全体にわたって測定し、そのシグネチャをカード上のメモリチップにリンクさせることを開示している。
【0015】
[015]欧州特許第0820031(B1)号明細書は、クレジットカード上のストリップを、全領域が磁性材料を含むカードに置き換えることを開示している。
【0016】
[016]PCT出願の国際公開第03/017192号パンフレットは、誘導読み取りヘッドを用いて問い合わせられる、対象物の表面上の磁気ファイバまたは磁気フィラメントに関する。
【0017】
[017]米国特許出願公開第2002/0145050号明細書は、データをカードの磁気ストライプの微細構造に関連付けてその磁気ストライプに格納し、それを生体計測データとリンクする。
【0018】
[018]欧州特許第1031115(B1)号明細書は、磁性粒子フィンガープリントを文書の表面に添付し、そのシグネチャを読み取り、それと別の添付されたラベルとを相互に参照することを開示している。
【0019】
[019]米国特許第5430279号明細書は、磁気ストライプ内の磁気ジッタを(チェックサム方式を用いて)検出および認証する方法および回路を説明している。
【0020】
[020]米国特許第4395628号明細書は、磁性材料のマイクロドットを、カードのセキュリティシステムの一環として(たとえば、レーザビームを用いて)カードに書き込まれた一意パターンとして使用することを開示している。
【0021】
[021]米国特許第4557550号明細書は、2つのストライプ(1つは記録可能、もう1つは永続的)を用いてカードの安全性を向上させることを開示している。
【0022】
[022]最後に、米国特許第6254002(B1)号は、ランダムに分布した磁性粒子をカジノチップの表面および/またはエッジに添付して、磁気可読情報のソースを形成する、カジノチップの分野における反偽造セキュリティシステムを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
[023]しかしながら、先行技術による識別システムの多くにおいては、簡単かつ効率的な方式での読み取りが可能であって、製造コストが低く、十分に安全な確認を可能にする(すなわち、識別の信頼性が十分に高い)識別タグが開示されていない。
【0024】
[024]本発明の目的は、容易かつ効率的な読み取りが可能であって、高価でなく、識別の信頼性が十分に高い識別システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
[025]この目的は、特に、各独立クレームにおいて定義されるように、識別タグと、識別されるように適合された対象物と、読み取り装置と、識別装置と、識別システムと、識別タグの形成方法と、識別されるように適合された対象物の形成方法と、識別特徴の読み取り方法と、を提供することによって達成される。
【0026】
[026]そのような識別タグは、識別タグが添付されることが可能な対象物を識別する識別であり、前記識別タグは、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、識別特徴を読み取るためのトラックは、このトラックからのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別層の最も薄い寸法部分を露出する。一実施形態では、識別タグは、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別タグが対象物に添付可能であるよう適合される。
【0027】
[027]識別されるように適合された対象物は、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、識別特徴を読み取るためのトラックは、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別層のその最も薄い寸法部分を露出する。
【0028】
本発明をさらに詳しく説明する前に、以下で、本明細書で用いる用語を、図1Aおよび図1Bを参照して明らかにする。図1Aに示すように、本発明のタグおよび対象物は、1つ以上(たとえば、2つまたは3つ)の層を有する層構造を備えることが可能である。
【0029】
・層1は、可読識別特徴が中に置かれた識別層であり、この識別層はa×b×cの寸法を有する。この識別層1は、典型的には、少なくともその一部分において、可読識別特徴を形成する、ランダムに分布した複数の粒子を含む。典型的には、識別層1の厚さ「a」は、「b」または「c」より小さく、大幅に小さいことが好ましい。識別層1は矩形である必要はないが、矩形の場合は、bおよびcは、面内形状の範囲において最も大きい寸法である。この点において、「層」は、2つの次元においてかなり長いか、伸ばされ、残る第3の次元において薄い構造を意味することに注意されたい。
【0030】
・後でも説明するように、識別層1は、自己支持形(たとえば、ポリマーのシートに散布された粒子)であってよく、したがって、層2および/または3は、実施形態によっては存在しなくてもよい。
【0031】
・識別層1は、不連続であってよい。すなわち、個別に散乱した粒子であってよい。ただし、それらの粒子はほとんどすべてが一平面内に存在し、その場合、少なくとも層2または層3が、支持または粘着のために存在する。
【0032】
・層2および3は、存在する場合には、層1と異なる寸法であってよく、互いに異なる寸法であってよい。a<fであることもa<iであることも必要条件ではないが、本発明のタグまたは対象物の実施形態によっては、優先される場合がある。
【0033】
・トラック4は、識別層の最も薄い寸法部分(図1の寸法部分「a」)を露出するように、層1の1つまたは複数のエッジから形成される。このトラックからのみ、少なくとも識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能である。本明細書で用いられる「意味があるように読み取られることが可能」は、トラックが読み取られると、識別目的に用いられる一意の信号が得られることを意味する。これは、本発明の対象物またはタグにおいて、識別層1のb-c平面に沿うかb-c平面内にある任意のエッジまたは部分を読み取りのために露出することが必須でないことを意味する。むしろ、タグまたは対象物は、トラック4だけが読み取り可能であり、したがって、識別層のb−c平面に沿うかb−c平面内にあるエッジまたは部分に沿っての読み取りは実行されないか、実行される必要がないように、設計/適合されるのが通例である。しかしながら、本発明を実施する際には、最も薄い寸法部分「a」から形成されたトラックに加えて、他の領域(たとえば、識別層のa−b平面内の一部分)も必要に応じて読み取り可能であることにも注意されたい。
【0034】
・トラック4を読み取ると、本明細書では「フィンガープリント」と呼ばれる一意信号(磁気信号、電気信号、光信号など)が得られる。このフィンガープリントは、(エンコード、デジタル処理、暗号化、圧縮、必要に応じて一部のみを指定するためのフィルタリングなど、任意の好適な処理方法を用いて)「シグネチャ」として保存されることが可能である。
【0035】
・フィンガープリントは、露出しているトラックの一部または全体を読み取ることにより(たとえば、識別層1の1つのエッジの一部分のみに沿って、または識別層1の1つのエッジの全体に沿って、またはさらに、識別層1のコーナー周辺または全周に沿って(トラックを形成するために露出している場合)読み取ることにより)取得可能である。
【0036】
・層1は、クレジットカードやCD−ROMの例のように、対象物自体の一部として含まれてよい(層2および/または3などの他の層も対象物の一部として存在してよい)。代替として、本発明のタグにおいては、層1、2、および3は、別の対象物に添付された対象物自体(タグ)であってよい。
【0037】
・トラックの読み取りは、任意の好適な読み取り素子により行われる。読み取り素子(または複合素子)(「読み取り素子」は、トラックに沿ってフィンガープリントを検出する、1つまたは複数のセンサ)の寸法(高さ=図1Bのj)は、読み取り素子がトラックの端から端まですべてのフィンガープリント情報をセンスするように、トラック幅と等しいか、好ましくはトラック幅より大きい。読み取り素子がトラック幅より狭い場合、読み取り素子は、トラック幅より大きいか等しい幅の領域をスキャンするように、動かされる。その領域をスキャンする一例示的方法を、図1Hに示す。この図では、スキャン幅を「j」としている。さらに、読み取り装置が、光磁気読み取りのような遠隔読み取り技術に基づく場合、前述のような「読み取り素子」および関連付けられた寸法「j」は、物理的な素子の寸法ではなく、(たとえば、光ビームで)スキャンされる領域の幅を意味することを理解されたい。
【0038】
[028]別の実施形態では、本発明は、識別されるべき識別タグまたは対象物の中に置かれた識別特徴を読み取る読み取り装置を提供する。この読み取り装置は、
識別層の中に置かれた情報を読み取るように適合された読み取り素子であって、前記識別層が、既に開示された識別タグまたは対象物の中に置かれた、読み取り素子と、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内する案内手段と、を備える。
【0039】
[029]さらに、識別タグが添付された対象物を識別する識別装置が提供され、識別装置は、前述の特徴を有する識別タグを備え、前記識別タグが添付された対象物を備える。
【0040】
[030]これの上位に、本発明は、対象物を識別する識別システムを提供し、識別システムは、前述のように識別層を備える識別タグまたは対象物と、前記識別タグの中に置かれた識別情報を読み取る、前述の特徴を有する読み取り装置と、識別情報を読み取って得られた情報を保存するデータ記憶媒体と、を備える。
【0041】
[031]さらに、本明細書では、対象物を識別するための識別タグを形成する方法、または識別されるべき対象物を形成する方法が開示される。タグまたは対象物は、識別特徴が中に置かれた識別層を少なくとも備える。この方法は、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、トラックが、識別層のその最も薄い寸法部分を露出するように、識別特徴を読み取るための前記トラックを形成するステップを含む。
【0042】
[032]さらに、識別タグの中に置かれた識別情報を読み取る方法が提供され、この方法は、
読み取り素子を用いて、前述のように識別層の中に置かれた識別特徴を、識別層の最も薄い寸法部分を露出したトラックから読み取るステップと、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内するステップと、を含む。
【0043】
[033]本発明の基本概念は、識別されるべき対象物、または識別タグ(すなわち、アイデンティティを確認されるべき対象物に添付可能であるか、添付されているか、埋め込まれたタグ)を提供することであり、読み取りのために層構造の「主表面」を用いられるのではなく、典型的には、可読識別層の最も薄い寸法部分だけが、識別層に収容されている識別特徴の読み取りのためにアクセス可能であるように、可読識別層が露出している。「主表面」は、本明細書では、より大きな、またはより突出している表面の1つであると定義される。たとえば、図1Aでは、b−c平面にある表面が「主表面」であり、a−c平面にある表面は、エッジがより狭く、本明細書で用いられる定義での「主表面」を構成しない。したがって、本発明では、識別されるべき対象物または識別タグの「主表面」面積より通常は格段に小さい表面積を有する表面が、一般には、可読識別層を露出するトラックを提供する表面として用いられる。
【0044】
[034]しかしながら、典型的には少なくとも1つのエッジから形成されるトラックだけが識別層のサンプリングに用いられる場合でも、識別層内に埋められる(層構造の一部になりうる)、識別層の材料が、読み出されて対象物またはタグのアイデンティティを確認するための識別情報を提供するフィンガープリントおよびそのシグネチャに寄与することも可能である。このアプローチは、本発明の対象物またはタグの偽造を非常に困難にする。
【0045】
[035]たとえば、識別層が、長さ寸法x、y、zを有する直方体(これは、識別されるべき対象物であっても、識別タグであってもよい)の中に識別層が形成される場合には、識別層は、その直方体の中に、寸法a、b、cを有する狭い平面として形成される(図1Gも参照)。図1Gに示すように、識別層は、典型的には、少なくとも前記直方体の周囲面またはエッジの1つまで延び、そこで、狭いトラックが識別特徴を露出する。たとえば、識別層が図1Gに示されるように露出している場合、典型的には、a≦x、a<<y、および、c>x、c≦yである。この場合は、前に定義されたように、直方体のy−z面が直方体の「主表面」を構成する。
【0046】
[036]本明細書に記載の対象物または識別タグの中の識別情報を容易かつ確実に読み出すために、本発明の識別タグに適合された読み取り装置が提供され、その読み取り装置において、可読識別情報が中に置かれた識別層の1つのエッジの少なくとも一部から形成された前記トラックに沿って読み取り素子が案内される。より詳細には、読み取り素子は、好ましくは、識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックと平行または(後で定義されるように)「ほぼ平行」に、対象物または識別構造に沿って動くことが可能であり、案内手段は、(識別情報と呼ばれることも可能な)識別特徴が正確かつ明確に読み出されることが可能であるように、可読識別層内の可読識別特徴に対する読み取り素子の相対的な方向を、適正な対応関係に保つ。図1Iは、トラックと平行に動く読み取り素子を示す。図1Jは、トラックと「ほぼ平行」に動く読み取り素子を示し、この場合の素子の動きは、素子がその動きの全体で、適切な識別情報を収容する、トラックの領域をまたぐのであれば、容認可能である。読み取り素子が(図1Hに示されるように)トラックを端から端までスキャンした場合、スキャンされた領域は、少なくとも、上記で定義されたように、トラックと「ほぼ平行」でなければならない。これに関連して、識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックは、約1ミリメートル以下から約100ナノメートルの幅を有してよいことに注目されたい。実施形態によっては、トラック幅は、約500マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、約1マイクロメートル未満、または約500ナノメートル未満である。この点において、トラック幅は、識別層の、タグまたは対象物に埋め込まれている領域の幅(最も薄い寸法部分)より大きくても小さくてもよいことにも注意されたい(図1G(ii)を参照)。そこで、識別層103の(図1Aで定義された)寸法「a」および「b」を、図1G(ii)に示す。ここで、「a」は、識別層を含む平面の厚さとして測定される。寸法「b」は、識別層の露出面と、有意の面外突起161の開始点との間の距離として定義される。ここで、トラックによって露出される最も薄い寸法部分は、識別層のこの説明に従う、識別層の最も薄い寸法部分である。
【0047】
[037]本明細書に記載の識別層を備える識別タグまたは対象物は、低コストでの製造が可能である。低コストであることは、たとえば市場において競争力のある価格が付けられる識別タグにとっての必須条件である。本発明の教示により、フィンガープリントは、識別層から確実に読み取られることが可能であり、識別されるべき対象物または識別タグの中に置かれた識別情報の模倣に対する保護が強化される。
【0048】
[038]さらに、識別特徴を備える識別層は非常に薄いのが普通であり(上記を参照)、本発明の例示的製造方法は、高コストのリソグラフィパターニングを必要とせずに、容易に製造され、明確に範囲が定められたトラックを提供するので、識別システムの信頼性は高められる。
【0049】
[039]したがって、識別情報の読み取りが容易に可能であり、製造コストが高くなく、識別の信頼性が十分に高い識別システムが提供される。
【0050】
[040]次に、本発明の識別タグおよび対象物の好ましい実施形態について説明する。これらの実施形態は、読み取り装置、識別装置、識別システム、識別タグの形成方法、および識別情報の読み取り方法にも適用可能である。
【0051】
[041]一実施形態では、本発明のタグまたは対象物の層構造は、識別層の下に支持層を備えることが可能である。さらに、タグまたは対象物は、覆い層を備えて、支持層と覆い(最上)層との間に識別層が配置されるようにすることが可能である。基本的には、識別層と互換である材料であれば、支持層および/または覆い層の両方に用いることが可能である。好適な材料の例として、プラスチック、金属、セラミック、繊維、革または木のような天然材料、ガラス、およびこれらの組み合わせがあり、これらに限定されない。好適なプラスチックの例として、バッグ、クレジットカード、パッキング材料、薄板などのプラスチック製品の製造に一般的に使用される、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)クリレートなどのポリマー材料がある。好適なガラスおよびセラミックとして、アルミナ、シリカ、ボーンチャイナ、エナメル、ガラスフリットなどがあり、これらに限定されない。
【0052】
[042]支持層(二層構造の場合)またはサンドイッチ構造(三層構造の場合)を使用することにより、識別層は、構造的に支持され、(サンドイッチ構造の場合には)上方および下方に対して電磁的に遮蔽されることも可能である。そのような層構造はさらに、識別層の最も薄い寸法部分を(エッジから)露出することを可能にする。識別層の最も薄い寸法部分(および、したがって、識別層の1つまたは複数のエッジから得られるトラック)は、容易に露出されることが可能であり、これは、識別層(または、支持層および/または覆い層が使用されている場合には、層構造)を、識別層または層構造の平面に対して10度を超える角度で(または、実施形態によっては、平面にほとんど垂直に)単純に切削、研磨、または磨削することにより可能である。
【0053】
[043]識別タグの層構造は、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つの別の識別層を備えることが可能である。
【0054】
[044]1つまたは複数の追加識別層を与えることにより、識別特徴を複数の識別層に分割して、安全性をさらに高めることが可能である。これは、それらの識別層に含まれた情報を模倣するのに必要な労力が、分割によって大幅に増えるためである。さらに、この対策は、システムに冗長性を導入して、識別タグの信頼性をさらに高めることが可能である。
【0055】
[045]層構造は、前記識別層と前記別の識別層との間に配置された少なくとも1つの中間層を備えることが可能である。
【0056】
[046]この対策をとることにより、異なる識別層同士を空間的に分離して、前記識別層に設置された情報を別々に、および/または同時に読み取ることが可能になる。したがって、本発明の識別タグまたは対象物の信頼性をさらに高める、さらなる冗長性を含めることが可能である。
【0057】
[047]本発明のタグまたは対象物はさらに、識別特徴を読み取るプロセスの間の読み取り素子のアライメントを容易にするアライメント層を、最上層と最下層との間に備えることが可能である。
【0058】
[048]識別層は、ランダムに分布した複数の粒子を、層の少なくとも一部に含むことが可能である。実施形態によっては、識別層は、孔を有するホスト材料を含み、少なくともそれらの孔のうちのいくつかが粒子を収容する。後で説明するように、それらの粒子は、磁性材料または帯磁可能材料、あるいはほぼ導電性の材料からなることが可能である。他の実施形態では、それらの粒子は、マトリックス内にランダムに分散することが可能であるか、スパッタリング/イオン打ち込みによってもたらされることが可能である(実施例も参照)。
【0059】
[049]そのような(高い)無秩序性の構造に粒子を提供して識別層内の識別特徴を定義することにより、その情報を模倣するにはきわめて膨大な労力および/またはコストが必要になるため、それによって、識別システムの安全性が高められる。
【0060】
[050]識別層は、複数の磁性(または帯磁可能)粒子を含むことが可能である。磁性(または帯磁可能)粒子を、ランダムに分布した粒子および/またはランダムに方向づけられた粒子として実装することにより、識別層を露出するトラックに沿って動き、磁性(または帯磁可能)粒子によって引き起こされる磁界分布から形成された識別特徴のフィンガープリントを読み取り、低コストかつ高信頼性の識別構造を実現することが可能な、読み取り素子として、磁気読み取りヘッドを用いることが可能である。識別層には、磁気特性を示す任意の材料を使用することが可能であり、そのような材料として、強磁性材料、反強磁性材料、強磁性材料などの磁性材料があり、これらに限定されない。使用される磁性材料としては、Fe、Ni、Co、Gd、Dyなどの強磁性材料、これらに関連する合金、酸化物、および混合物、MnBi、CrTe、EuO、CrO2、MnAsなどの他の化合物があり、これらに限定されない。磁気の影響を受ける他の材料も考えられている。そのような材料の例として、磁鉄鉱などの強磁性材料(たとえば、スピネル、ガーネット、フェライト)がある。Ce、Cr、Pt、B、Ndの合金(たとえば、Nd−Fe−B、Nd−Fe−Co−B、Nd−Pr−Fe−Co−Ti−Zr−B)、Smの合金(たとえば、SmCo5)、AINiCo(アルニコ)、パーマロイ、ミューメタルのような合金など、磁気媒体において一般的に使用される他の材料も考えられている。
【0061】
[051]孔が少なくとも部分的に充填されている多孔質材料が使用される場合、ホスト材料は、実質的に非磁性材料である。一般に、少なくとも実質的に非磁性(磁気的に不活性)であるか、実質的に電気的に絶縁性である多孔質ホスト材料であれば、本発明で使用可能である。通常、このホスト材料は、孔内の材料がホスト材料の他の領域に移動することが妨げられるか、無視できる程度であるように、良好な機械的、熱的、および化学的安定性を有する。さらに、ホスト材料の安定性により、孔内の材料の酸化および望ましくない化学的変質が最小限になる。そのような特性は、タグから取得された磁気信号、電気信号、または電磁信号が一意識別可能のままであることを可能にする。好適なホスト材料は、たとえば、米国特許第5139884号および第5035960号明細書、またはNielschらのJournal of Magnetism and Magnetic Materials 249(2002)234〜240頁に記載されているように、アルミニウム膜の陽極酸化によって調製される多孔質アルマイトを含むことが可能である。したがって、タグのホスト材料は、アルミナであってよい。
【0062】
[052]他の好適なホスト材料として、多孔質ポリマー膜(通常は、1つの成分が選択的に除去されたバイブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマー)または多孔質半導電性材料(多孔質シリコンなど)または多孔質III−V族材料(たとえば、FollらのAdvanced Materials、15、183〜198頁(2003年)を参照されたい)がある。本発明において多孔質ホスト材料として使用するのに好適なIII−V族材料の例として、GaAs、InP、AlAsなどがある。別の好適なホスト材料は、ゼオライトである。好適なゼオライトの例として、ゼオライトミネラルグループ(たとえば、斜プチロル沸石、菱沸石、灰十字沸石、およびモルデン沸石)のメンバのいずれか1つが含まれる。他の好適な多孔質材料として、無機酸化物(酸化シリコン、酸化亜鉛、および酸化スズなど)がある。
【0063】
[053]加えて、または代替として、本発明の識別タグまたは対象物は、複数の導電性または半導電性粒子を含むことが可能である。導電性材料としては、Cu、Sn、Fe、Niなどであってこれらに限定されない金属や、これらの合金がある。半導電性材料の例としていくつか挙げるとすれば、(ポリ)シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、白金シリサイド、窒化シリコン、シリコンクロム(SiCr)などがある。この実施形態によれば、識別層をサンプリングする読み取り素子として磁気読み取りヘッドを用いて、少なくとも前記粒子のいくつかに電流を流すことによって引き起こされる電磁界分布から形成される識別特徴を読み取ることが可能である。同様に、ランダムに分布した導電性または半導電性粒子の、識別層内の位置の関数としての(抵抗、導電率、インピーダンスなどのような)電気的パラメータを、適切な読み取り素子(導電性センサなど)を用いて検出することが可能である。孔に導電性粒子を充填することが可能な多孔質ホスト材料の場合は、磁性粒子に関連して前述された同じホスト材料を用いることが可能である。
【0064】
[054]加えて、または代替として、識別タグまたは対象物は、複数の光学的に反射性または吸収性または活性である粒子を含む識別層を備えることが可能である。「光学的に活性」は、本出願においては、粒子が、発するか反射する光の波長および/または偏光面を変化させることを意味する。この実施形態によれば、識別層から形成されたトラックをサンプリングする読み取り素子として、光検出器を用いて、識別特徴を読み取ることが可能である。これらの識別特徴は、ほんのいくつかの可能性を挙げるとすれば、たとえば、特定波長で蛍光発光する粒子、偏光面を変化させるキラル粒子、または様々な波長で蛍光発光する粒子および/または相互干渉光の偏光面を変化させる粒子の混合物から形成されることが可能である。
【0065】
[055]本発明はまた、磁性および/または帯磁可能および/または導電性および/または半導電性および/または光学的活性の粒子の組み合わせを含んで、システムの信頼性および安全性をさらに高めることも可能である。たとえば、ある場合には、光学的確認および磁気的確認の組み合わせを実装することが可能である。典型的には、識別層内に存在する粒子は、最大寸法が約10ナノメートルから約500マイクロメートルの間であってよい(ただし、これに限定されない)。
【0066】
[056]本発明の識別タグまたは対象物においては、それぞれが識別特徴を含む複数の識別層が考えられており、各識別層は、他の識別層とは独立に読み取られることが可能である。
【0067】
[057]個々の層を読み取ることにより、本発明の識別タグまたは対象物に、様々な種類の情報(たとえば、識別特徴と、そのタグを添付することが可能な製品の価格のような付加情報や、そのような製品に関連する背景情報)を設置することが可能である。
【0068】
[058]別の実施形態では、1つまたは複数の識別層を露出する1つまたは複数のトラックが、保護被膜で覆われる。基本的には、環境的損傷(たとえば、化学的および/または機械的劣化)からトラックを物理的に保護することに適した材料であれば、少なくとも識別特徴のいくつかが、トラックから、意味があるように読み取られることが可能であることを妨げる材料でない限り、使用可能である。保護被膜に含まれうる好適な材料の例として、テフロン被膜などのポリマー被膜、硬質ポリマー、酸化物や窒化物や非晶質ダイヤモンドなどのゾルゲルまたは蒸着された材料、ダイヤモンド様カーボンや四面体非晶質カーボンなどのダイヤモンド様材料(膜)、スパン塗布ラッカーなどがあり、これらに限定されない。この保護被膜(層)は、「硬質」材料であってもよい。本明細書では、「硬質」材料を、50メガニュートン/平方メートル(50MN/m2)以上のバルク降伏応力を好ましくは有する材料として定義する。硬質材料として働く好適なポリマーの一例が、強靱かつ透明という利点を有するポリメチルメタクリレートである。ポリメチルメタクリレートの単一被膜層は、モノマーメチルメタクリレート溶液にタグを浸漬するか、タグにモノマーメチルメタクリレート溶液を塗布することによって作られることが可能である。モノマー溶液は、塗布中または塗布後にポリマー化される。
【0069】
[059]次に、本発明の読み取り装置の好ましい実施形態について説明する。これらの実施形態は、識別タグ、識別装置、識別システム、識別タグの形成方法、および識別情報の読み取り方法にも適用可能である。
【0070】
[060]案内手段は、読み取り素子が、既に定義された識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックに沿って、トラックと平行または少なくとも(既に定義されたように)ほぼ平行な方向に動くように、識別層に沿って読み取り素子を案内するように適合されることが可能である。
【0071】
[061]したがって、案内手段は、読み取り素子が、識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックと平行または少なくとも(既に定義されたように)ほぼ平行に動くように、典型的には、読み取り素子が、識別タグまたは識別されるべき対象物から形成されたトラックに沿って案内されることを可能にする形状または他の特性を有する。
【0072】
[062]読み取り素子は、識別層に含まれた、複数のランダム無秩序粒子から情報を読み取るように適合されることが可能である。
【0073】
[063]したがって、読み取り素子は、一意のフィンガープリント(およびシグネチャ)を与える、ランダムな方向を向いた粒子の特徴的配置から得られる信号を検出するように適合されることが可能である。
【0074】
[064]読み取り素子は、識別層に含まれた、複数の磁性粒子または帯磁可能粒子から情報を読み取るように適合されることが可能である。この場合の読み取り素子は、磁気読み取り素子である。
【0075】
[065]読み取り素子はまた、識別層に含まれた、複数の導電性粒子および/または半導電性粒子から情報を読み取るように適合されることも可能である。この実施形態によれば、読み取り素子は、ランダム無秩序粒子の配置の特徴的な電気的パラメータを読み出す電気的または電磁的または磁気的読み取り素子である。
【0076】
[066]読み取り素子はさらに、識別構造に含まれた、複数の光学的活性粒子から情報を読み取るように適合されることが可能である。この実施形態によれば、読み取り素子は、反射率または蛍光強度、光学異方性などのような光学的パラメータを読み出すことが可能な光読み取り器または光検出器である。
【0077】
[067]少なくとも2つの異なるタイプの読み取り(たとえば、磁気的読み取りと光学的読み取り、あるいは電気的読み取りと磁気的読み取り)機能を有する読み取り素子を使用することも可能である。そうすることにより、安全性をさらに高めることが可能である。
【0078】
[068]案内部材は、識別タグのエッジに沿って読み取り素子を機械的に案内するように適合されることが可能である。つまり、案内部材の形状は、前述のように形成されたトラックに沿って、案内部材がこの機械的案内手段によって案内されることが可能であるように、適合されることが可能である。そのような機械的案内部材は、たとえば、U字形であることが可能であり、その場合は、U字の開いた部分が、識別タグまたは識別されるべき対象物の、トラックが識別層の最も薄い寸法部分を露出している部分を係合する。
【0079】
[069]案内部材はまた、識別層のエッジから形成されたトラックの少なくとも一部分に垂直に沿って読み取り素子を光学的に案内するように適合されることも可能である。この実施形態によれば、識別層内に設置された識別特徴の、エラーのない検出を可能にするために、沿って読み取り素子が案内されるべき経路を示す可視マークを、対象物または識別タグに与えることが可能である。一例として、光センサと、読み取り素子のアクチュエーション機構にリンクされたフィードバックループとが、これを達成することが可能である。
【0080】
[070]読み取り装置はさらに、案内部材が、前記トラックに沿って前記読み取り素子を電磁的に案内するように適合されるよう、与えられることが可能である。この実施形態によれば、案内部材の補助センシング素子が、沿ってフィンガープリントが取り込まれるべき経路に追従することを可能にする、可読電磁案内層または特徴(たとえば、強磁性材料の構造物)が与えられる。
【0081】
[071]別の実施形態によれば、読み取り装置は、読み取り素子によって読み取られたフィンガープリントのシグネチャを、あらかじめ保存されている基準シグネチャと比較することと、識別タグから読み取られたシグネチャと、あらかじめ保存されている基準シグネチャとの差が、所定のしきい値を下回る場合には、識別タグが有効であると識別することとに適合された処理手段を有することが可能である。
【0082】
[072]言い換えると、読み取り装置のデータ記憶媒体に、固有のシグネチャを、パラメータのセットとして保存することが可能である。このパラメータセットは、個々のケースにおいて、検出されたシグネチャと比較されることが可能であり、その場合は、その測定されたシグネチャが、データ記憶媒体に保存されているシグネチャと比較される。測定されたシグネチャとあらかじめ保存されているシグネチャとのずれがしきい値未満であれば、その識別は、確認されたと見なされる。それによって、そのようである対象物またはそのタグが添付された対象物は、本物であると見なされることが可能である。しかしながら、あらかじめ保存されている基準シグネチャが、読み取り装置のメモリ内に永続的に保存されるとは限らない。むしろ、読み取り装置は、読み取り装置から離れた場所にあるデータ記憶媒体に保存された、あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取ることが可能であるように設計されることが可能である。代替として、読み取り装置は、タグが添付された対象物、または識別されるべき対象物の中に保存された、あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取ることが可能である。このコンテキストでは、本発明の対象物またはタグは、別の情報(たとえば、対象物の価格、対象物の製造元など)を追加で保存していることも可能であることに注意されたい。そのような情報は、従来のバーコード、二次元バーコード、磁気ストリップ、またはメモリチップに含まれることが可能である。したがって、読み取り装置は、従来のバーコード、二次元バーコード、磁気ストリップ、またはメモリチップからそのようなシグネチャを読み取るように適合されることも可能である。
【0083】
[073]処理手段はさらに、読み取られたフィンガープリントからのシグネチャを、今後の確認チェックのための更新された基準シグネチャとして保存することにより、あらかじめ保存されている基準シグネチャを更新するように適合されることが可能である。長期間にわたって識別されるように適合された識別タグまたは対象物を使用する場合は、識別タグの多数回の使用の結果として、トラックまたは識別層全体が摩耗する可能性がある。そのような摩耗によって、特徴的なシグネチャが変化する可能性がある。あらかじめ保存されている基準シグネチャが常に同じままである静的システムの場合は、そのような摩耗作用のために、識別タグがシステムによって認識されなくなる可能性がある。そこで、本発明の一実施形態において使用される動的システムは、検出されたシグネチャにおける変化を更新し、この更新されたシグネチャを、あらかじめ保存されている基準シグネチャとして保存する。これにより、識別層の材料の摩耗に起因する小さな経時変化を考慮することが可能になり、タグまたは対象物が、摩耗の結果として、無効であると誤って格付けされることが避けられるので、システムの機能性が高まる。
【0084】
[074]前述の開示によれば、識別されるように適合されたタグまたは対象物の識別特徴を表す特性(シグネチャ)を決定するために、従来の読み取りヘッドを用いることが可能である。使用可能な読み取りヘッドの例として、たとえば、カセットテーププレーヤ、ビデオカセットレコーダ(VCR)、磁気データストレージテープ、ハードディスクドライブ、Zip(商標)ディスク、Jaz(商標)ディスク、磁気ストライプ読み取り装置などで使用される読み取りヘッドがある。代替として、一般にはMFMとして知られる磁気力顕微鏡が使用可能である。さらに、磁気カー効果などの光磁気効果の検出も利用可能である。電界強度や電磁界強度のような特性を決定する場合には、適切な周波数に校正されることが可能な、任意の従来の高感度電界メータまたはEMFガウスメータを、この目的に使用することが可能である。光学特性を決定する場合には、必要に応じて、たとえば、偏光フィルタおよび/または色フィルタを備えられた、任意の光検出器またはフォトダイオードを使用することが可能である。
【0085】
[075]対象物またはタグからフィンガープリントを決定した後、数学的手続きにより、フィンガープリント(信号)を処理(たとえば、フィルタリング、スムージング、フーリエ変換、または他の数学的信号処理手法を実施)および/または圧縮および/または暗号化してから、保存したり、対象物またはタグのシグネチャを取得したりすることが可能である。第1の測定されたフィンガープリント(または、必要に応じて、後続の測定されたフィンガープリント)を、タグの読み取りによって得られたロー信号の形式で、またはその処理/圧縮/暗号化された形式で、種々のデータ記憶媒体(ハードディスク、スマートカード、RAMモジュール、テープストレージ、磁気ストライプ、または他の任意のデータ記憶媒体)に保存して、あらかじめ保存されている基準シグネチャにすることが可能である。
【0086】
[076]本発明では、最初のフィンガープリント/シグネチャは、当該のタグまたは対象物に含まれるトラック全体をスキャンすることによって取得可能である。しかしながら、この最初のフィンガープリント/シグネチャは、トラックの一部分だけを読み取ることによっても取得可能である。たとえば、必要とされる認証のレベルが低い用途では、トラックの一部分を読み取るだけで十分な場合がある。その場合は、この「部分的」フィンガープリントが、あらかじめ保存されているシグネチャ(識別情報)になる。このようにして、新しいタグまたは対象物のフィンガープリントの読み取りおよび記録のための処理時間を減らすことも可能である。
【0087】
[077]「部分的」フィンガープリントだけを必要とすることも、偽造をより面倒にする。これは、使用される部分が、タグまたは対象物だけの識別層に含まれる識別特徴から識別可能であることを必要とされず、システム全体に含まれる独立命令の一部をなすことを優先するためである。これは、一般に、対象物の認証に使用されるのが一部の情報だけであるにもかかわらず、偽造が、識別層全体(すなわち、タグまたは対象物の全体)を複製しなければならないことを意味する。典型的には、使用されない部分を複製することは、タグの偽造に必要なコストおよび労力を増やすが、オリジナルの製造元または正規ユーザの側のコストおよび労力をあまり増やさない。
【0088】
[078]次に、識別装置の実施形態について説明する。これらの実施形態は、本発明の対象物または識別タグ、読み取り装置、識別システム、識別タグの形成方法、および識別情報の読み取り方法にも適用可能である。
【0089】
[079]識別装置では、識別タグを、対象物の層構造の最も狭い寸法部分に添付することが可能である。代替として、識別装置では、前記識別タグを、対象物の層構造の主表面に添付することが可能である。
【0090】
[080]次に、本発明の識別タグまたは対象物の形成方法の好ましい実施形態について説明する。これらの実施形態は、識別タグ、読み取り素子、識別システム、識別装置、および識別情報の読み取り方法にも適用可能である。
【0091】
[081]識別タグまたは対象物タグは、識別層の上に配置される覆い層を形成することによって製造されることが可能である。さらに、少なくとも1つの識別層が最下層と最上層との間に配置される層構造を形成することが可能である。
【0092】
[082]そのようにして、たとえば、最下層と最上層との間に挟まれた識別層を有し、トラックが識別層の最も薄い寸法部分を露出する積層構造を製造することが可能である。
【0093】
[083]トラックは、任意の好適な手法(ほんのいくつかを列挙するとすれば、たとえば、切削、磨削、および/または研磨)によって形成可能である。
【0094】
[084]これは、積層構造を種々の部分に切り分け、その各部分が別々の識別タグまたは対象物を形成することが可能であるようにすることが可能であることを意味する。その切り分けられたエッジは、可読識別特徴を備える識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックを含む。
【0095】
[085]識別層は、多孔質マトリックスを形成し、その多孔質マトリックスの孔に適切な材料を充填して製造される複数のランダム無秩序構造/粒子を用いて形成されることが可能である。
【0096】
[086]そのような多孔質マトリックス(すなわち、多数のランダムに分散した孔を有する固体)は、たとえば、多孔質マトリックスが磁性材料または帯磁可能材料から作られていて、その空隙または孔が、情報層に由来するフィンガープリントを含む検出された信号を変調することにつながる場合には、識別層を形成することが可能である。あるいは、多孔質材料が非磁性であって、孔に、磁性材料または帯磁可能材料が充填されているか、少なくとも部分的に充填されている場合も、識別層を形成することが可能である。
【0097】
[087]代替として、識別構造は、前記層構造にイオンを打ち込むことによって製造されることも可能である。
【0098】
[088]この実施形態によれば、打ち込まれ、熱アニール処理されたイオンの統計的分散配置が、典型的には、識別構造の形成に用いられる。このランダム分布は、打ち込まれ、熱アニール処理されたイオンのランダム凝集の結果である。
【0099】
[089]代替として、識別構造は、不混和性2元系ポリマーの相分離を用いて製造されることが可能である。
【0100】
[090]この実施形態によれば、2相系を用いて層が形成され、その後、その2つの相が自動的に分離される。これらの相の一方を除去し、結果として得られる空隙(または孔)を、識別層の一部をなす材料が導入されることが可能な場所として使用することが可能である。
【0101】
[091]識別情報を読み取る方法の実施形態を以下に示す。この実施形態は、識別タグ、識別されるべき対象物、読み取り装置、識別装置、識別システム、および識別タグの形成方法にも適用可能である。
【0102】
[092]この実施形態によれば、案内ステップは、対象物に添付されている識別タグの識別層のエッジから形成されたトラックに沿って読み取り素子を案内することを含むことが可能である。
【0103】
[093]前述の開示によれば、本発明は、次のような分野において使用されることが可能である。
1.公式文書、チケット、セキュリティカード、小切手、クレジットカード、証明書、IDカード、搭乗券、ビザ、パスポート、債務証書などの偽造を防ぐ分野。
2.盗難回収後の、または証明された信憑性の妥当性を検証すべき貴重アイテム(たとえば、宝石類、法定相続動産、骨董品、芸術品など)の識別の分野。
3.商品価値があるアイテム(たとえば、ブランド商品、宝石およびダイヤモンド、重要技術部品、薬剤パッケージング、玩具、赤ん坊用品、食品パッケージングなど)の識別およびブランド保護の分野。
【0104】
[094]たとえば、米国内に限ってのクレジットカードおよび小切手の偽造による損失は、年間50億ドルと推定されている(出典:Washington University in St. Louis、http://news−info.wustl.edu/tips/2002/science−tech/indeck.html)。
【0105】
[095]本発明は、低コストで製造が容易な識別タグまたはそのように識別されるように適合された対象物(本明細書では、識別特徴と呼ばれるもの、またはそれらに由来するフィンガープリントの両方を含む)、および本物アイテムを識別および追跡する関連システムを提供する。さらに、本発明は、識別特徴をデザインによって複製(またはコピー)することがきわめて困難であること(不可能ではない場合)、および/またはきわめて高コストであること(禁止同然なほどに高コストではない場合)を意図するものである。これは、ある範囲の複雑な粒子を選択すること、および/または非常に小さな特徴(孔や凹凸など)を利用することと、識別層が実質的に面内構造であることとを、識別層の最も薄い寸法部分を露出するように形成されたトラックの読み取りと組み合わせることによって、達成される。この点において、識別層の最も薄い寸法部分を露出する、本発明のアプローチによって、粒子の多くが、読み取りに関しては面外方向を向くようになることにも注目されたい。それによって、読み取りがより容易になり、特徴の複製がより困難になる。
【0106】
[096]本発明は、読み取りまたは検出が可能であり、したがって、一意のフィンガープリントおよびシグネチャの提供が可能である、自然集合または自己集合した無秩序な識別層および識別構造を作成する方法を提供する。これらの識別層は、選択次第で、ロバストであって、低コストであって、大量生産され、安全性のレベルに適合されることが可能である。
【0107】
[097]このアプローチは、非常に薄い識別層(1マイクロメートルよりはるかに小さい幅、すなわち、識別層の最も薄い寸法部分)を容易に製造することを可能にする。考えられている最も小さい寸法は、従来のフォトリソグラフィの限界より小さく、フォトリソグラフィ以外の方法となれば、非常に高コストであるパターニング手法(大規模かつ低コストの量産に不向きな遠紫外線リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、または集束イオンビームリソグラフィなど)に依存することになる。
【0108】
[098]本発明の典型的な実施形態は、適切に整形された識別層(たとえば、材料の、比較的細長いストリップ)を提供する。前述のように、識別層の、露出可能な最も小さい寸法部分は、識別特徴を読み出すために形成されるトラックの形を定める。これにより、容易なパターニングと、トラック幅の容易な制御と、フィンガープリントの確実な設置および読み取りとが可能になる。
【0109】
[099]上記からわかるように、基準フィンガープリントの取得と、識別対象のフィンガープリントの取得とが、別々の時点に別々の場所で行われることが、実用レベルで可能であり、一般的である。たとえば、製造されたタグまたは対象物が、最初に、離れた場所に送られ、そこでシグネチャが取得され、データ記憶媒体に保存されてから、タグまたは対象物がタグまたは対象物の使用者(クレジットカード会社やダイヤモンド採掘会社)に送られることが可能である(代替として、もちろん、タグまたは対象物が製造された場所でシグネチャが読み取られてから、基準シグネチャが、離れた場所に送られ、そこで保存されることも可能である)。タグの場合、このタグ使用者は次に、タグ付けされるべき対象物(たとえば、クレジットカードやダイヤモンド)にタグを添付してから、それを顧客に販売する。同様に、対象物の場合、クレジットカード会社のような使用者は、追加の情報/コンテンツ(クレジットカード番号など)を、本明細書に記載の識別層を収容するロークレジットカードに保存することが可能である。あるいは、本発明のそのような識別層を収容する、CDのようなデータ記憶媒体の場合は、レコード会社のような使用者が、そのCDに音楽を保存してから顧客に販売することが可能である。この顧客は次に、対象物のアイデンティティを確認するために、第2のフィンガープリントを取得し、取得されたシグネチャを、(離れた場所のデータ記憶媒体に保存可能な)あらかじめ保存されている基準シグネチャと比較することが可能である。代替として、タグ使用者は、タグを対象物に添付してから、タグを読み取り、その後にシグネチャをデータ記憶媒体に送ることも可能である(同様に、対象物使用者は、先に当該商品を製造し、次にそれを、離れた場所に送り、そこで基準シグネチャを読み取らせてデータ記憶媒体に保存することが可能である)。いずれの場合も、タグまたは当該対象物からのシグネチャの形で識別情報が取得され、タグまたは対象物の今後の識別のためにデータ記憶媒体に保存される。
【0110】
[0100]このコンテキストにおいて、本発明の対象物またはタグの中の識別特徴を読み取る方法の実施形態について、以下で説明する。
【0111】
[0101]一実施形態では、前記識別層の少なくとも一部分に含まれる、ランダムに分布した複数の粒子から情報が読み取られる。この、ランダムに分布した複数の粒子は、磁性または帯磁可能であっても、導電性または半導電性であっても、光学的活性であってもよい。
【0112】
[0102]磁性粒子が使用される場合、読み取りは、タグまたは対象物の識別層の少なくとも一部分の磁界の少なくとも1つの特性を決定するステップを含むことが可能である。それによって、固有の磁気信号が取得される。この場合、識別層は、孔を有する、実質的に非磁性のホスト材料を含むことが可能であり、少なくとも孔のいくつかが磁性材料を収容する。
【0113】
[0103]読み取るのは、識別層の一部分の磁界の、識別層の無秩序性に強く依存する、少なくとも1つの特性であってよい。より具体的には、無秩序性は、識別層の少なくとも1つの特性(たとえば、識別層内の磁性材料の、孔のサイズ、形状、および向き、孔間距離、孔の充填率、結晶方位など)に関連付けられることが可能である。たとえば、多孔質ホスト材料が用いられる場合、無秩序性は、ホスト材料だけの特性でありうる。これの一例として、孔のサイズも孔間距離も様々であるホスト材料を使用することが可能であり、この材料の孔に磁性材料を(均等に)充填することが可能である。孔が順序よく並ぶホストを使用し、孔の中の材料の充填度を変化させることによって無秩序性を形成することが可能である。無秩序構造を有する識別層を使用することももちろん可能であり、たとえば、充填された孔の割合や(磁性材料の場合には)タグ内の材料の結晶方位を変化させることも可能である。タグまたは対象物の識別層の中の無秩序性を作り出すために操作されることが可能な前述の特性は、自由度と見なされることも可能である。
【0114】
[0104]一実施形態では、識別層は、磁界にさらされてから、トラックの前記部分の磁界(信号)の少なくとも1つの特性がそれぞれ決定される。この実施形態では、識別層内の磁性材料は、読み取りの1回ごとに、読み取り前に磁界によって再磁化されることが可能である。これにより、トラックの磁界信号が大きくなり、読み取りやすくなる。この目的のために、均一ではあるが均質ではない磁界(たとえば、単純な棒磁石によって作られた磁界や、ソレノイドまたは磁石の組み合わせから生成された磁界)を用いて、識別層を再磁化することが可能である。
【0115】
[0105]一実施形態では、タグまたは対象物の識別層に情報を追加保存(記録)する方法が考えられている。この、情報の保存(記録)は、(たとえば粒子のグループの形で)存在する磁性材料を分極ドメインまで磁化すること、または磁性(または導電性)材料を収容する、トラックの粒子グループをパターニングにより決定すること、またはこれら2つのアプローチの組み合わせによって、実行されることが可能である。この記録ステップは、フィンガープリントの第1の決定の前、または代替として、この第1の決定の後に行われることが好ましい。
【0116】
[0106]本発明の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付図面と併せての以下の説明ならびに添付の特許請求項から明らかになるであろう。添付図面においては、同様の部品または要素は、同様の参照符号で示される。
【0117】
[0107]以下に示す、限定的でない例および図面を参照して、本発明をさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0118】
[0148]図面における例示は概略であり、種々の図面において、同様な要素は、同じ参照符号で示されている。
【0119】
[0149]本明細書のコンテキストでは、用語の「個別タグを付ける」、「識別する」、およびそれらの派生語は、あるアイテムにマーキングを施して、そのアイテムが他のアイテムと一意に区別されることが可能であるようにすることを、特に意味するものとして、同義で使用される。このコンテキストでは「透かしを入れる」および「バーコードを付ける」も使用可能な場合があるが、これらの用語は、一般に、あるアイテムグループを、別のアイテムグループと区別することを意味する(たとえば、紙幣の透かしは、紙幣を、偽造紙幣と区別するが、他の個々の本物の紙幣と区別しない)。「偽造」、「模造」、「捏造」、「複写」などの用語は、同義で使用される。
【0120】
[0150]前述の説明によれば、本発明は、1つまたは複数の識別層を備える対象物において(本来的に)存在する無秩序性、または意図的に作成された無秩序性を検出することに基づき、この検出は、識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックに沿って無秩序性領域を読み取るかプロービングし、その結果として得られる信号によって、アイデンティティの確認に使用可能なフィンガープリントが作成されることによって行われる。発明者らは、そのような無秩序性をデザインによって意図的に再現するのが困難であること、ならびに、1つまたは複数の識別層の最も薄い寸法部分が読み取り用として露出していれば、結果として得られるフィンガープリントの読み取りが容易であることを認識した。
【0121】
[0151]「層」は、具体的には、1つの寸法が狭く(薄く)、他の2つの寸法が広く、典型的には、それらの比が少なくとも1:10:10であるが、1:100:100以上であることが好ましい何かを意味する。しかしながら、大きい2つの寸法の程度が同等である必要はない。
【0122】
[0152]このアプローチには、識別層を用いて狭く長いストライプ(トラック)を形成することによって、従来のフォトリソグラフィの複雑さおよび費用を回避できるという、重要な利点がある。「従来のフォトリソグラフィ」は、光活性層(レジストなど)、露光源(紫外線ランプなど)、およびマスク(ポジティブまたはネガティブのイメージとして、所望のパターンの金属の不透明層がコーティングされたマスターガラスプレートなど)を使用することを意味する。
【0123】
[0153]識別層のアスペクト比は、典型的には少なくとも1:10であることが好ましく、1:100であることがより好ましく、最も狭い寸法は、典型的には1ミリメートル未満であるが、500マイクロメートル未満、100マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、さらには1マイクロメートル未満であることがより好ましい。
【0124】
[0154]次に、図1Cを参照して、本発明の第1の実施形態による識別装置100について説明する。
【0125】
[0155]識別装置100は、識別タグ102を備え、識別タグ102が添付されたアイテム101を備え、アイテム101を、識別タグ102が付けられた対象物として、識別する。
【0126】
[0156]識別タグ102が添付されたアイテム101を識別するための識別タグ102は、層構造を有し、識別情報が設置された可読識別層103を備える。識別層103の少なくとも1つのエッジから、識別特徴を読み取るためのトラック110が形成され、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記トラックは、識別層のその最も薄い寸法部分を露出する。識別タグ102は、識別特徴が、識別層のその最も薄い寸法部分からのみ、意味があるように読み取られることが可能であるよう、アイテムまたは対象物101に添付可能であるように適合される。
【0127】
[0157]識別タグ102において、その層構造は、前記識別層の上に配置された最上層105と、さらにオプションで(たとえば、識別層がさらに支持を必要とする可能性がある場合に)最下層104とを備える。
【0128】
[0158]図1Cに示すように、識別タグ102は、アイテム101の、前記層構造の主表面に添付される。この実施形態では、タグ102は、識別層の最も薄い寸法部分が、(ここでは円柱形状の)アイテム101の主回転軸と平行に方向づけられるように、円柱形状アイテム101に添付される。図1Cはさらに、トラック110を読み取る読み取りヘッド111を示している。
【0129】
[0159]次に、図1Dを参照して、本発明の第2の実施形態による識別装置150について説明する。
【0130】
[0160]識別装置150が識別装置100と異なるのは、識別層の最も薄い寸法部分が、円柱形状アイテム101の主回転軸に垂直に方向づけられるように、識別タグ150が円柱形状アイテム101に添付される点である。
【0131】
[0161]図1Eは、識別装置100のさらに別の実施形態を示す。この装置では、識別タグ170は、識別層の最も薄い寸法部分が、円柱形状アイテム101の円周表面に垂直に方向づけられるように、円柱形状アイテム101に添付される。
【0132】
[0162]したがって、本発明の一有利点は、識別されるべきアイテムにタグを、ほとんど考え得るいかなる方法ででも添付することが可能であって、それでもなお、少なくとも識別特徴のいくつかが、タグの最も薄い寸法部分から、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別層のトラックが露出することである。これに関連して、前述のすべての実施形態において、露出しているトラックの一部または全体を読み取ること(たとえば、識別層103の1つのエッジの一部分のみに沿って、または識別層103の1つのエッジの全体に沿って、またはさらに、識別層103のコーナー周辺または露出している全周に沿って読み取ること)が可能であることに再度注目されたい。「露出している」は、本明細書では、読み取り素子を用いて識別情報を読み取ることが可能であることを意味する。すなわち、トラックは、物理的に覆われていても、しかるべき情報の読み取りが可能であれば、この定義により、「露出している」とすることが可能である。たとえば、標準的な磁気読み取りヘッドは、薄い非磁性保護層を通してでもデータを読み取ることが可能であり、光磁気読み取り装置は、比較的厚い透明層を通してでも読み取ることが可能である。図1Gに示された実施形態によって示されるように、本発明で用いられる識別層は、対象物またはタグの中に埋め込まれることが可能であり、それでもなお、トラックが露出していれば、識別層の他の部分がアクセス不可能であっても、完全に機能することが可能である。「アクセス可能」は、識別特徴を励起または活性化することによって、検出される信号(したがって、読み取られるフィンガープリント)に影響を及ぼすことが可能であることを意味する。たとえば、図1Gが(寸法x、y、zの)対象物の中に埋め込まれた(寸法a、b、cの)単層タグを示すとする。さらに、識別特徴が磁性粒子からなるとする。その場合は、十分に強力な磁石を対象物のy−z平面まで持っていくことによって、識別特徴に「アクセス」することが可能である。この磁石は、識別層内のトラックまたはトラック周辺にある粒子の磁気信号に影響を及ぼすが、それらの粒子の信号は、トラックからのみ、意味があるように読み取られることが可能である。すなわち、それらの粒子の信号は、y−z平面から「アクセス可能」であっても、トラックによってのみ「露出している」。
【0133】
[0163]本発明の別の実施形態では、識別層は、識別されるべき対象物の一部である。そのような実施形態を、図1Fに示す。対象物101は、識別層103と、最上層105と、最下層104とを備える。識別層103の(円形)のエッジから、読み取りヘッド111を用いて識別特徴を読み取るためのトラック110が形成され、識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、トラック110は、識別層のその最も薄い寸法部分を露出する。図1G(i)は、本発明の一実施形態による直方体のタグまたは対象物の斜視図および側面図である。この場合、識別層103は、直方体の一面にのみ延びて、その面にのみトラックを形成する。その面の表面は、保護層121で覆われる。保護層121はトラック110を物理的に覆うが、それでもなお、トラック110は、読み取り素子120を用いて、識別特徴が、意味があるように読み取られることが可能なので、本明細書で用いられる定義に従って、露出している。図1G(ii)は、本発明の一実施形態によるタグまたは対象物および読み取り素子の断面を示す。この図の右側には、磁性粒子を含む材料160が拡大されて示されている。この場合、磁性粒子を含む材料160は、平坦ではなく、1つまたは複数の面外突起161を含む。識別層103の(図1Aで定義された)寸法「a」および「b」を、図面内に示す。ここで、「a」は、識別層を含む平面の厚さとして測定される。寸法「b」は、識別層の露出面と、有意の面外突起161の開始点との間の距離として定義される。
【0134】
[0164]読み取り素子をトラックの端から端まで動かす方法を、図1H〜Jに示す。図1Hは、トラック110の全体をのこぎり歯パターンでスキャンする読み取り素子120を示す。スキャン領域の幅は「j」である。スキャンパターンは、のこぎり歯パターンに限定される必要はなく、しかるべき識別情報を含むトラックの領域をカバーすることが可能な任意の所望のパターンであってよい。同様に、読み取り素子120は、スキャン幅より小さい寸法である必要はなく、スキャン幅と同等以上の寸法であってもよい。
【0135】
[0165]図1Iは、トラック110と平行な方向に動く読み取り素子120を示す。この場合、読み取り素子120の幅は「j」であり、トラック幅と同等であるか、好ましくは、トラック幅より大きい。
【0136】
[0166]図1Jは、トラック110と(既に定義されているように)「ほぼ平行」な方向に動く読み取り素子120を示す。読み取り素子120の幅は「j」である。この、平行からのずれは、意図的に設定されてもよく、あるいは、たとえば、読み取り素子の移動の許容誤差に起因してもよい。
【0137】
[0167]次に、図2を参照して、本発明の第1の実施形態による識別システム200についてさらに説明する。
【0138】
[0168]図2に示された識別システム200は、識別タグ102と、読み取り素子201とを有する。識別システム200は、製造、および識別層103のトラック202の読み取りにおいて、直接的な利点をもたらす。すなわち、製造が容易であり、設置が容易であり、(たとえば、機械的案内により)読み取りが容易である。
【0139】
[0169]次に、図3を参照して、本発明の第1の実施形態による識別システム200の他の図についてさらに説明する。
【0140】
[0170]図3は、磁性粒子303を含む識別層103の細部301を示す。読み取り素子201が読み取り方向304に沿って動くと、磁性粒子303のフィンガープリント302が検出される。このフィンガープリントは、後でシグネチャに変換されることが可能である。
【0141】
[0171]識別層103における無秩序性は、いくつかの異なる方法において実現可能である。確認目的での原理は、識別層の一部分を露出するトラックを作成し、その中の無秩序性を適切な検出器でプロービングすることである。その結果は、トラックに沿う位置の関数としての信号であり、本明細書では、この信号をフィンガープリントと称し、処理後は「シグネチャ」とも称する。
【0142】
[0172]このフィンガープリント/シグネチャは、たとえば、磁界、電磁界、電界、導電率、キャパシタンス、インダクタンス、電磁波の波長、電磁波の振幅、電磁極性、またはこれらの組み合わせの変動を測定することによって決定されることが可能である。それぞれの場合において、フィンガープリント/シグネチャは、検出器のセンサ素子が、好ましくは、トラックの少なくとも全幅の端から端までおよぶようにして、このトラックの長い方向の寸法に沿う位置に対して決定される変動である。また、ここでは、前述のパラメータの変化率(または高次の微分)によって決定されるフィンガープリント/シグネチャが、識別層103の端から端までを、たとえば、一定速度または一定加速度でトラッキングしてフィンガープリント/シグネチャを測定することによって決定されると見なされる。
【0143】
[0173]本明細書における「システム」は、特に、識別層が対象物に、対象物の一部として直接添付される事実、または識別層が、対象物に接着されることが可能なラベルまたはタグの一部として対象物に添付される事実を意味する。「タグ」および「ラベル」という語は、本明細書では、同義で使用される。読み取り素子201は、フィンガープリントを検出および生成するために用いられ、そのフィンガープリントは、保存されることが可能である。その後の識別層の読み取りによって、最初に保存されたシグネチャと比較されることが可能なフィンガープリント/シグネチャが生成される。一致した場合は、そのシグネチャが元の識別層から導出されたものであることを示す。
【0144】
[0174]以下では、本発明を説明するのに好適な工程および材料系を、例示的に記載する。
【0145】
[0175]まず、磁性粒子を含む積層タグについて、より詳細に説明する。
【0146】
[0176]本発明の一態様では、識別層の磁界変動を、読み取り素子を有する適切な読み取りヘッドを用いて検出することが可能である。この例では、基板上に堆積した、ランダムに分布する磁性粒子が、(粒子が互いに離散的である可能性があっても)識別層として見なされる。その場合には、識別層は、別の材料の層で覆われる。この、2つ以上(ここに記載の例では3つ)の材料の層のサンドイッチを、ここでは「積層」とも呼ぶ。
【0147】
[0177]次に、図4A〜4Hを参照して、本発明の第1の実施形態による識別タグまたは対象物の製造方法の過程について説明する。
【0148】
[0178]図4A〜4Dは、そのようなタグまたは対象物を製造するために使用することが可能な工程を示す。まず、図4Aに示すように、ポリマー積層薄板401の、接着剤を含有する側に、ニッケル片400を塗る。次に、図4Bに示すように、別の積層薄板402をかぶせ、その材料のスタックを、従来の事務所据置型ラミネータに、110℃および最低プリセット速度(速度1)で通すことによって、まとめて積層化する。次に、エッジ断面を研磨して、図4Cに示すように、識別層のトラック403を含む滑らかな表面が露出するようにする。これにより、このエッジを磁界センサで読み取ることによって、図4Dに示されるようなフィンガープリント/シグネチャ404を取得することが可能であり、この場合、粒子が磁界のピークを引き起こし、そのピークがフィンガープリント/シグネチャのピークになる。好適な磁界センサとして、誘導ヘッド、AMRヘッド、GMRヘッド、光磁気カー効果検出器などがある。図4F〜4Hに示された、本発明のタグまたは対象物の製造工程は、図4A〜4Dに示された工程とほとんど同じであるが、異なるのは、引き伸ばされたニッケル片またはファイバまたはウィスカが、識別層の平面内に配置されて用いられる点である。ニッケル片のサイズおよび形状は様々なので、トラックを読み取って得られるフィンガープリント404は、もちろん、図4Dのフィンガープリントとは異なる。引き伸ばされた形状であれば、トラックから検出される磁性信号がほとんど面外磁気信号であるため、信号の検出が容易になり(したがって、フィンガープリントの読み取りが容易になり)、さらにはタグの偽造が困難になるので、有利さが増す。
【0149】
[0179]図5は、本発明の第1の実施形態の方法に従って製造された識別タグの光学顕微鏡画像および電子顕微鏡画像を示す。
【0150】
[0180]したがって、図5は、トラック403の光学顕微鏡画像および走査電子顕微鏡画像の例を示す。
【0151】
[0181]次に、本発明の目的のための、この実施形態の望ましい特徴について説明する。まず、磁界変動に依存する識別層については、磁気特性を示す任意の粒子を識別層に用いることが可能であり、そのような粒子として、強磁性材料、反強磁性材料などの磁性材料があり、これらに限定されないが、強磁性材料が好ましい。使用される磁性粒子としては、Fe、Ni、Co、Gd、Dyなどの強磁性材料、これらに関連する合金、酸化物、および混合物、MnBi、CrTe、EuO、CrO2、MnAsなどの他の化合物があり、これらに限定されない。磁気の影響を受ける他の材料も考えられている。そのような材料の例として、磁鉄鉱などの強磁性材料(たとえば、スピネル、ガーネット、フェライト)がある。Ce、Cr、Pt、B、Ndの合金(たとえば、Nd−Fe−B、Nd−Fe−Co−B、Nd−Pr−Fe−Co−Ti−Zr−B)、Smの合金(たとえば、SmCo5)、AINiCo(アルニコ)、パーマロイ、ミューメタルのような合金など、磁気媒体において一般的に使用される他の材料も考えられている。前述の任意の粒子の組み合わせも考えられている。
【0152】
[0182]この例の場合、識別層内の無秩序性は、層内の、粒子のサイズ、粒子の形態構造、粒子の結晶化度、粒子内の結晶方位、粒子の間隔、磁気飽和、および粒子の性質の関数である。適切な粒子または粒子の組み合わせを選択することにより、別の類似のフィンガープリントが、偶然によって、または極端に関連が薄いデザインによってしか発生し得ないように、無秩序性を高めることが可能である。それは、たとえば、プレート、ロッド、またはフラクタルのような複雑な異方性粒子形状、およびそれらの混合物を用いることによって可能である。非磁性パッキング粒子(他の金属片、シリカ、粘土、ラテックス球、カーボンブラック、窒化硼素などであり、これらに限定されない)の使用も考えられている。
【0153】
[0183]この例の他の利点は、特定の形態構造の粒子を選択することによって、それらの性質を予測できることである(つまり、粒子が平坦に、層と平行な平面の形で存在する傾向を有するように、プレート状またはロッド状の粒子を選択することが優先されてよい)。これは、識別層の幅を望ましい狭さに保つことに役立つ。さらに、粒子がフィンガープリントの露出領域の背後の平面内まで広がっていれば、その形状異方性によって、強力な磁界が粒子から得られる。この結果として、信号対雑音比が高くなって読み取りプロセスが改善されるとともに、複製(したがって偽造)がいっそう困難になる。
【0154】
[0184]この例では、ポリマー薄板を積層化して識別層を収容することが考えられている。しかしながら、これは一例に過ぎず、他の固体材料(金属フォイル、紙、木、ガラス、革、繊維、シリコンなど)を使用することも可能であり、これらを前述のような形に接着して、識別層のエッジ(最も薄い寸法部分)、したがって適切なトラックを露出させることが可能である。さらに、フィンガープリントを挟む上層および下層の材料、厚さ、堆積形態が異なってよいことも考えられている。たとえば、下層は、粒子が堆積するフレキシブル固体基板であることが可能である。一方、上層は、前駆物質が気体、プラズマ、ペースト、または液体であっても固体層が得られるように、スピン塗布、吹き付け、蒸着、スクリーン印刷、またはスパッタリングによって堆積する層であることが可能である。また、前記層を、接着剤、エポキシ樹脂、はんだ、共晶熱接合、シリカゾルゲル、フリット、機械的インタロック、または機械的圧縮によって接着することも考えられている。接着剤は、薄い追加層であってよく、層自体を構成してもよく、あらかじめ粒子上に存在してもよく、下層および/または上層に存在してもよい。明らかに、温度特性および機械的特性が異なる材料を選択することにより、識別層を含むタグまたは対象物を様々な動作環境(たとえば、高温、低温、液体、気体、酸化性、還元性、化学的攻撃性など)に適応させることが可能である。識別層の最も薄い寸法部分を露出するトラックを作製する場合の、切削、劈開、研磨、その他の作業の程度は、使用される材料の性質によって異なる。研磨作業自体が、識別特徴を形成する材料から得られるフィンガープリント(したがって、シグネチャ)に寄与する、さらなる固有の無秩序性を導入するために行われることが可能であることに注目されたい。
【0155】
[0185]この例の別の実施形態では、識別層が、トラックの読み取りの1回ごとに、読み取りに先立って強力な均一磁界にさらされることが考えられている。ここで、「強力」は、トラックの表面または表面近くにある粒子の中の磁区の向きを変えて、それらの粒子によって生成される磁界がほとんどトラックの面外に並ぶようにするのに十分な磁界を意味する。このアプローチは、磁界パターンを毎回リセットすることによって、タグまたは対象物の耐用寿命中の変化の影響を最小限にすることが可能であるという利点を有する。この、フィンガープリントをリセットする機能はさらに、タグまたは対象物を、粒子の帯磁の向きおよび強度が変化しうる環境(たとえば、強力な外部磁界の領域および/または温度が上昇する領域)での複数回の読み取りに用いることが可能であることを意味する。さらに、これによって、書き換え可能な磁性層に保存された磁気情報が強力な磁界によってすべて消去されるために、書き換え可能な磁性層がフィンガープリントの複製に使用されるのを防ぐことができる。
【0156】
[0186]この用途に適する粒子のサイズは、広い範囲にわたることが可能であり、実際、その個体数に対して広く分布することが可能であり、それによって、無秩序性がさらに高まる。粒子は、すべての寸法が500マイクロメートル未満であることが好ましく、さらに、最も狭い寸法が10マイクロメートル未満程度であることが好ましい。用途によっては、識別層の端から端までの変動が複雑であって、1つ1つのシグネチャの何十億もの組み合わせが可能であるように、(サブミクロンレンジの)非常に小さい粒子を選択することが特に有用である。さらに、用途によっては、隠されたフィンガープリントを有することが望ましい場合があり、小さい粒子を選択することが、それを達成するためのいくらかの助けになる。その場合には、適切に色づけされた粒子、無色の粒子、および/または織目の写った粒子を選択することも可能である。
【0157】
[0187]次に、図6を参照して、本発明の第2の実施形態による識別システム600について説明する。
【0158】
[0188]識別システム600に含まれる識別タグは、図2に示された識別タグ102と比較すると、識別層103に加えて、別の識別層601を含む。隣接する2つの識別層103、601の間に、分離層602が設けられる。
【0159】
[0189]3つ以上の識別層103または601が存在する、この実施形態の変形形態も開示される。これは、たとえば、2つ、3つ、またはそれ以上の識別層103、601が、図6に示されるように、互いにほぼ平行に配置されるような、複数スタックの積層によって達成可能である。これは、フィンガープリントに冗長性および/または情報のさらなる一意性を与え、それによって、偽造がいよいよ困難になる。この場合、読み取り素子201は、識別層103、601の最も薄い寸法部分から形成されるすべてのトラックを、1つの素子だけで並列に読み取ることが可能である。代替として、読み取り素子201は、別々のセンシング素子を用いて識別層103、601のそれぞれを並列に読み取ること、または、複数の読み取りヘッドおよび/またはセンシング素子および/またはパスを用いて、それぞれを直列に読み取ることが可能である。さらに、前述の、層材料および堆積方法について考えられていることは、ここでも当てはまる。
【0160】
[0190]さらに、本発明のタグまたは対象物の製造が、ここで説明されたバッチプロセスだけでなく、ロールツーロールプロセスでも容易であることが考えられている。
【0161】
[0191]次に、図7を参照して、本発明の第2の実施形態による識別タグまたは対象物の製造方法の過程について説明する。
【0162】
[0192]図7は、それらのタグまたは対象物を製造するロールツーロールプロセスを示し、これには片面ポリマー積層物のロール701が含まれる。そのような場合は、ロールプロセスの速度、および粒子ディスペンサ700からの粒子のパルス堆積によって、各フィンガープリントの長さ、およびフィンガープリントの間隔が規定される。円形ブラシ702を通った後、スタンプ/プレスを行うロール703を通り、その後、110℃(ただし、これに限定されない)の温度で動作可能な積層化ロール705を通る。さらに、エッジトリミングが実行される場合は、そのための廃棄物経路704が設けられる。ピンチローラ710の後に研磨装置706と読み取り/インデックス付け装置707とを含めることにより、これらのタグまたは対象物の製造、読み取り、およびインデックス付けを一列で行い、それらをリールに巻き取って、大量かつ低コストの用途での使用に備えることが可能である。最後に、完成ポリマーロール708が、おそらくは、709によって与えられる第2のキャリアフィルムまたはバッキングロールの上に作られる。インデックス付けは、タグがリールから一定量供給されたときに、どのフィンガープリント/シグネチャが既に読み取られ、保存されているかが知られることを意図している。
【0163】
[0193]次に、図8を参照して、本発明の第3の実施形態による識別タグの製造のオプションの工程について説明する。
【0164】
[0194]図8に示すように、広いウェブの積層物800を作成し、切断装置801で切断してストリップにして、複数の識別層802を露出させ、矢印803で示されるように、個々に研磨、読み取り、インデックス付け、および後日使用のための保存を行うことも可能である。
【0165】
[0195]次に、図9を参照して、本発明の実施形態による別の対象物としてのクレジットカード900について説明する。
【0166】
[0196]クレジットカード900は、支持基板901を備え、支持基板901の主表面において従来の磁気ストリップ902が保持される。さらに、クレジットカード900の狭いエッジが、識別層103を備えるように設けられる。識別層103の詳細を、図9に示された拡大部分において示す。図9からわかるように、クレジットカードのような対象物のデザインは、識別層103が基板901によって支持されることが可能であって(基板901の一部分でない場合)、最上層105によって覆われることが可能である点で、タグ102のデザインと類似している。
【0167】
[0197]図9の実施形態から明らかであるように、識別層を収容する、(たとえば、積層物として製造されることが可能である)適切な対象物自体が、実質的にタグ付けされた対象物であることが可能であると考えられている。これは、積層物をタグとして製造して他の対象物に添付することとは異なる。この対象物は、例としてクレジットカードが考えられているが、他の例として、証明書、紙幣、セキュリティアクセスカード、車両キーカード、パスポート、IDカード、リードフレーム、電子デバイスパッケージ、パッケージ材料(たとえば、医薬品用)、媒体ディスク(たとえば、CD、DVD)、高級品(ハンドバッグなど)も含まれる。そのような実施形態は、図9に示されたような識別層103が、クレジットカードのような対象物の中に含まれる場合に、クレジットカードの最も薄い寸法部分が、識別層を読み取るためのトラックを露出させることに使用される形で実現される。
【0168】
[0198]次に、図10A〜10Cを参照して、本発明の別の実施形態による識別システム1000、1030、1060について説明する。
【0169】
[0199]フィンガープリントにおける磁性粒子の使用は、フィンガープリント/シグネチャを提供するために開示された一例である。他の選択肢は、導電性粒子(金属粒子、カーボンブラック、グラファイト、金属被膜粒子など)および(下層または上層あるいは追加層であることが可能であって、たとえば、金属フォイル、金属リーフ、スパッタ金属、蒸着金属、導電性酸化物、導電性複合材料などで作られる)電極を使用して、少なくとも粒子の一部が異なる電位を帯びるか、電磁界または電界のアンテナとして動作することが可能であるようにすることである。そのような場合、検出器は、トラックと接触するか、トラックから微小距離だけ離れたところを通過して、たとえば、電圧、電流、電界、電磁界、キャパシタンス、またはインダクタンスの変動を検出する。図10A〜10Cは、電気的に刺激されたフィンガープリント/シグネチャを有するそのような実施形態のいくつかの例を示す。各例では、粒子の存在が検出器に影響を及ぼし、その検出器がシグネチャに影響を及ぼす。
【0170】
[0200]図10Aに示された識別システム1000においては、読み取り装置1001がDC電源の負電位に接続される。DC電源の正電位は、識別タグ1002の最上層105に接続される。読み取り装置1001は、識別層103のシグネチャに従うパーコレーション電流経路を検出するように適合される。
【0171】
[0201]図10Bに示された識別システム1030においては、読み取り装置1031が識別層103のシグネチャを読み取るように適合される。識別タグ1032の下層104が、DC電源の負電位に接続される。DC電源の正電位は、識別タグ1032の最上層105に接続される。読み取り装置1031は、識別層103のシグネチャに従う電位差または抵抗を検出するように適合される。
【0172】
[0202]図10Cに示された識別システム1060においては、読み取り装置1061が、AC電源の第1の接続点に接続される。AC電源の第2の接続点は、識別タグ1062の最上層105に接続される。読み取り装置1061は、識別層103のシグネチャに従う電磁界またはインダクタンスを検出するように適合される。
【0173】
[0203]次に、図11A〜11Cを参照して、本発明の実施形態による、光検出手段を用いて識別特徴を読み取る識別システム1100、1130、1160について説明する。
【0174】
[0204]図11A〜11Cは、染料粒子、染料被膜粒子、燐光性粒子(燐光体など)、量子ドット粒子、光輝性粒子、偏光粒子、キラル分子、液晶、複屈折粒子などであって、これらに限定されない光学活性粒子の使用を含む。これらは、光源(たとえば、紫外線ランプ、青色発光ダイオード、レーザ、または白色電球など)によって照射または励起されることが可能であり、好適な検出器(フォトダイオード、分光光度計、または、フィルタまたは偏光子を有するか有しない電荷結合素子アレイなど)を使用して、吸収光、放出色、放出強度、および/または偏光面の変動が検出されることが可能である。この場合も、結果として、目的に適したフィンガープリント/シグネチャが得られる。
【0175】
[0205]図11Aに示された識別システム1100においては、読み取り装置1101が、識別層103内の量子ドット粒子からPLスペクトルを検出する光読み取り装置として設けられる。(UV放射線を放射する)光源1107が、最上層105内の窓1108(光透過領域)を通して識別層103を照射する。読み取り装置1101は、少なくとも可読識別特徴のいくつかだけが、識別層103の最も薄い寸法部分からのみ、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別層のエッジから形成されたトラックを読み取って得られるシグネチャに従う光を検出するように適合される。
【0176】
[0206]図11Bに示された識別システム1130においては、読み取り装置1131が、燐光体粒子の層を通して伝搬された光による、粒子からの燐光を検出する光読み取り装置として設けられる。光源1107が、識別層103を照射する。読み取り装置1131は、識別層の最も薄い寸法部分のエッジから形成されたトラックに沿う位置に対して、燐光の波長および強度を測定することによって、識別層103のフィンガープリントに従う光を検出するように適合される。
【0177】
[0207]図11Cに示された識別システム1160においては、読み取り装置1161が、偏光面に影響を及ぼす粒子による、識別層の端から端までの位置に対する偏光の変化を検出する光読み取り装置として設けられる。光源1107(たとえば、レーザ)が、識別層103を照射する。読み取り装置1161は、識別層103のフィンガープリントを読み取ることによって光を検出するように適合される。
【0178】
[0208]読み取りプロセスにおいて読み取りヘッドを案内するために積層構造を用いるアプローチの利点として、以下が挙げられる。第1に、読み取りヘッドまたはその関連部分を、識別層が中に存在するタグの幅によって機械的に案内されるように整形することが可能である。さらに、識別層の上方および/または下方のスタックに、案内として動作する追加層(たとえば、アライメント層)を含めることが可能である。これらのアライメント層は、たとえば、可視、反射性、磁気、または導電性のマーキングを、連続的に、または間欠的に、または識別層の開始点および/または終了点に施すことによって、光センサ、磁気センサ、または電気センサで検出されることが可能である。これらを組み合わせて用いることが可能であり、それらは、大部分が同一平面内に存在することが可能である。たとえば、識別層内に備えられた粒子と同じ平面にスパッタマーキングを間欠的に堆積させることが可能である。前述の層と同様に、これらの層は、スパッタリング、蒸着、積層、印刷、スピン塗布、および/または吹き付けを含む、それらに限定されない様々な方法で、堆積可能である。
【0179】
[0209]図12A〜12Dは、前述の例を説明する、本発明の実施形態による識別システムを示す図である。
【0180】
[0210]図12Aに示された識別システムでは、層シーケンス103、104、105が識別タグ1200を形成し、識別タグ1200は、読み取り素子1201によって読み取られ、読み取り素子1201は、U字形案内手段1212によって機械的に案内される。案内手段1212は、読み取り素子1201自体の延長部分であってよい。代替として、案内手段1212は、読み取り素子1201を収容する、整形された読み取りヘッド、またはその読み取りヘッドシステムを収容する外側ケーシングであってよい。そのような機械的案内手段として、位置を維持するローラ、コイルばね、リーフばね、集中ギンブルまたはピボットなどがある。これらの案内手段は、読み取り素子、読み取りヘッド装置、または読み取り装置の外側ハウジングに設置されることが可能である。
【0181】
[0211]図12Bは、別の識別システムの等角図および断面図である。このシステムでは、読み取り装置1210は、直角構造を有し、その構造において、案内手段1212が、(最上層105および最下層104を含む対象物またはタグの一部であることが可能な)識別層102のエッジから形成されたトラックに沿って読み取り素子1201を案内する。
【0182】
[0212]図12Cに示された識別システムでは、層シーケンス103、104、105はさらに、案内層1233および中間層1234を含んで識別タグ1230を形成する。案内層1233を用いて、読み取り素子1201を案内することが可能である。案内層1233のうちの1つは、視覚的/光学的案内を提供する、連続的な金属薄板であることが可能である。案内層1233のうちの別の1つは、案内磁界を提供する、強磁性材料の連続的な薄板であることが可能である。
【0183】
[0213]図12Dに示された識別システムでは、層シーケンス103、104、105はさらに、案内層1263および中間層1234を含んで識別タグ1260を形成する。案内層1263を用いて、読み取り素子1261を案内することが可能である。案内層1263のうちの1つは、隣接するフィンガープリントの開始点および終了点を示すマーカ(たとえば、光学式マーカ)を有することが可能である。案内層1263のうちの別の1つは、たとえば案内磁界を提供する、強磁性材料の間欠的な案内層であることが可能である。
【0184】
[0214]実施形態によっては、これらの層は、互いに平行であることが好ましい。現時点の好ましい実施形態によっては、これらの層は、厚さが100マイクロメートル未満であり、1〜10マイクロメートルの厚さであることがさらに優先される。
【0185】
[0215]前述のすべての実施形態において、それぞれの実施形態の一部分が、他の実施形態の一部分に当てはまってもよい。たとえば、ロールツーロールプロセスは、導電性粒子による変形形態にも適用されることが可能である。さらに、組み合わせ(たとえば、導電性磁性粒子と、対象となる複数のフィールドまたはシグネチャを検出する読み取り装置との使用)も考えられている。これにより、偽造に対する安全性および保護がさらに高められる。
【0186】
[0216]これまでのすべての図において、読み取り装置は、フィンガープリントの端から端まで動くものとして示されてきた。しかしながら、静止読み取り装置と可動タグ/対象物とを有することも可能である。
【0187】
[0217]さらに、1つまたは複数の保護層でトラックを保護することが可能である(図1Gも参照)。これは、耐用寿命中にフィンガープリント領域への機械的または化学的損傷を減らすことに役立ちうる。好適な材料として、テフロン被膜、別のポリマー被膜、ゾルゲル、非晶質ダイヤモンドまたはダイヤモンド様薄膜などがあり、これらに限定されない。これらの材料を、様々な方法(蒸着、スパッタリング、PVD、PECVD、フィルタ陰極真空アーク、浸漬塗工法、または吹き付け)で堆積させることが可能である。保護層は、層構造のエッジの一部分に限定されることも、エッジの全体であることも、さらにはタグ/対象物の上部表面および下部表面の部分を連続的に覆うことも可能である。保護層は、読み取り装置による当該情報の読み取りを可能にするか(すなわち、前に定義されたように、トラックは依然として「露出して」いなければならないか)、さもなければ、読み取りが行われることが可能であるように、保護層の取り外しが容易に可能でなければならない(図1Gも参照)。
【0188】
[0218]タグを製造してから対象物に添付する場合は、その添付を可能にする多数の好適な方法を用いることが可能である。実際の方法は、いくつかパラメータを挙げるとすれば、タグに使用される材料、対象物の表面に使用される材料、および前記対象物の運用環境に応じて様々であるが、主なものは、接着剤、エポキシ樹脂、はんだ、共晶熱接合、シリカゾルゲル、フリット、機械的インタロック、または機械的圧縮の使用である。密着する層は、薄い追加層であってもよく、識別層自体を構成してもよく、タグの上部表面および/または下部表面のいずれかまたは両方の一部または全体に存在してもよい。
【0189】
[0219]図13は、本発明の別の実施形態による識別装置1300を示す。
【0190】
[0220]識別装置1300は、対象物1302に密着した識別タグ1301を有する。タグ1301は、識別層1303を有し、密着部分1304において対象物1302と密着している。
【0191】
[0221]以下では、多孔質材料の積層薄板を利用する、本発明の実施形態について説明する。
【0192】
[0222]多孔質材料を使用することにより、そのような多孔質材料の孔に、選択的に磁性材料または導電性材料を充填して、識別層を作成することが可能である。
【0193】
[0223]次に、図14A〜16を参照して、本発明の一実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0194】
[0224]図14A〜14Eは、図14Aに示されたアルミフォイル1400で積層タグを作製する例示的工程を示す。まず、アルミフォイル1400を、糸くずのでないふき取り用の布とイソプロパノール(IPA)とでクリーニングし、その後、脱イオン水でクリーニングする。
【0195】
[0225]次に、図14Bに示すように、フォイル1400を、一部が外に突き出るように、2つのポリマー積層薄板1401、1402の間に置いて、フォイル1400がそれらの接着面と接触するようにする。図14Cに示すように、その材料のスタックを、従来の事務所据置型ラミネータに、たとえば、110℃および最低プリセット速度(速度1)で通すことによって、まとめて積層化する。次に、この積層化された膜1403を、Struers EpoFixを用いたエポキシモールド1404に入れ、図14Dに示されるように、硬化するまで、たとえば一晩、放置する。作製の最後の工程は、2段階の研磨である。このサンプルに対し、グレード500〜1200から2400〜4000の研摩紙で研磨を行い、その後、続けて、3ミクロンビーズおよび1ミクロンビーズを有するダイヤモンドサスペンションを用いて精密研磨を行う。図14Eは、このようにして作製された積層Al膜の底面図である。
【0196】
[0226]次に、図15に示すように、サンプルおよびPtメッシュ1501をビーカー1500に入れ、温度制御装置1502を用いて、冷却板1502の温度を所望の温度(たとえば、4℃)に設定する。溶液の温度が設定温度に達すると、図のように、突き出たフォイル1400がタグ前駆物質に対する接点となって、150Vに設定された電源1503が接続される。この陽極酸化工程により、アルミニウム含有層のエッジに孔がランダムに分布した無秩序性多孔質アルミナが生成される。これに続き、サンプルを拡張溶液(たとえば、5重量%の燐酸)に浸漬して、孔を所望のサイズまで拡大する。
【0197】
[0227]最後に、サンプルおよびPtメッシュ1501を、30gのNiSO4.6H2O、4.5gのNiCl2.6H2O、および4.5gのH3BO3を含有するNiめっき溶液に浸漬する。めっき電圧は、たとえば、−1.4Vに設定する。めっき後、Niがランダムに、孔の内側に落ちる。この時点で、この領域が、所望の識別層を構成する。
【0198】
[0228]図16A〜16Dは、本発明の前述の実施形態による識別タグの例示的製造方法の過程を示す図であって、孔を形成する工程と、孔を充填する工程とを示している。
【0199】
[0229]図16Aは、積層薄板1401、1402の間にあるアルミフォイル1400の一部分を示す。
【0200】
[0230]図16Bは、アルミフォイル1400内に孔1600を形成する陽極酸化工程の後の、図16Aのアレイを示す。
【0201】
[0231]図16Cは、アルミフォイル1400の孔1600のうちのいくつかの中にニッケル粒子1601を形成するニッケルめっき工程の後の、図16Bのアレイを示す。
【0202】
[0232]図16Dは、図16Cに示された識別タグ上で読み取り素子によって取り込まれたシグネチャ1610を示す。
【0203】
[0233]図16A〜16Dは、識別層を収容するタグの形成過程を示している。この時点で、この識別層(すなわち、これに含まれた識別特徴)を、適切な磁界検出器を用いて、識別層のトラックから読み取って、シグネチャを取得することが可能になる。
【0204】
[0234]図16Eは、前述の方法を用いて製造された、孔が充填されたタグの断面を示す。図1Aと同様に、ここでも、トラック幅の寸法「a」と、識別層の深さの寸法「b」とが示されている(しかしながら、この図は2次元なので、寸法「c」は示されていない)。この図において見られるように、この方法の一利点は、(アルミニウムの薄いフォイルを用いることにより)狭いトラックを形成しやすいことと、結果として得られる孔が全体としてトラックの面外方向を向くことである。これは、前と同様に、磁気フィンガープリントの読み取りがより容易であり、偽造がより困難な構造であることを意味する。この点において、トラックの面外方向を向くように配置された識別特徴を提供する構造(たとえば、磁性材料すなわち粒子が後で充填される、ランダムに分布した孔)の形成は、図15および16で示されたような電気化学的方法にはまったく限定されないことに注意されたい。ただし、(たとえば、ランダムに分布する粒子がトラックの面外に配置されることを可能にする)図4に示された方法のような、他の任意の好適な方法を、本発明で用いることが可能である。
【0205】
[0235]図17は、2つのそのような積層アルミフォイルと、前述の陽極酸化工程の結果として得られた多孔質アルミナとの、走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。これら2つの例において、識別層を形成するために用いられたアルミフォイルの厚さは、一方のケースでは250μmであり、他方のケースでは20μmであった。
【0206】
[0236]トラック幅(識別層の最も薄い寸法部分)は、1ミリメートル未満であり、好ましくは、500マイクロメートル未満、100マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、さらには1マイクロメートル未満である。前述の例でフォイル前駆物質の使用について示したが、他の形態の識別層(スパッタ層、蒸着層、金属リーフ、印刷層、またはスパンオン層など)も、ここでは考えられている。
【0207】
[0237]磁性材料が充填された多孔質材料の使用は、層構造アプローチを用いて所望の幅を識別層に与える目的に関して、多数の利点がある。
【0208】
[0238]この工程スキームにおける変更の例として、以下のものがある。
・孔のサイズ、分布、間隔、およびこれらの、処理条件による制御。
・孔のサイズ、形状、および分布が様々な多孔性ホストを提供するための、前駆物質および純度の変更。
・孔を様々な程度に充填するための、様々な磁性材料。
・読み取りの1回ごとに、読み取り前に、識別層を強力な磁界にさらしてリセットする実施形態。
・高アスペクト比のナノ構造多孔質薄膜をナノ棒磁石として使用することの利点。
・導電性材料が充填された孔からの電磁界および電界の様々な測定方法。
【0209】
[0239]次に、図18を参照して、本発明にしたがって識別されるように適合された別の対象物としての、本発明の識別層を収容するコンパクトディスク1800について説明する。
【0210】
[0240]コンパクトディスク1800は、主表面を備える。さらに、コンパクトディスク1800のエッジが、(たとえば、磁性材料が部分的に充填された多孔質アルミナを含むアルミニウム層であって、最上層105と最下層104との間に配置されることが可能な)識別層103の最も薄い寸法部分を露出するように設計される。識別層103の詳細も、図18の拡大部分で示されている。
【0211】
[0241]したがって、図18の実施形態では、実質的にタグ付けされる対象物は、識別層を収容する積層物自体である。例として、ここでは、コンパクトディスク(CD)ソフトウェア媒体を明示的に示したが、(既に紹介した)他の例も同様に当てはまる。図18に示されたように識別層102を収容するCDは、たとえば図15および16に示された工程により、CDの1つのエッジの、スパッタリングされた薄いアルミニウム層の微小領域を陽極酸化することによって得られる。そうすることによって、識別層は、トラックを形成する露出領域を含み、このトラックを読み取ることにより、そのソフトウェア媒体が本物であることが認証される。陽極酸化工程または孔充填工程の前および/または後にCDの微小領域を切削および/または研磨することが、円滑なトラックを形成するために望ましい場合がある。
【0212】
[0242]識別タグに関連して本発明を説明した、他の実施形態の特徴は、識別層を収容する積層物自体が、識別されるように適合された対象物であってよい実施形態にも単純に当てはまり得る。そのような特徴の例として、ロールツーロールプロセスでの製造、複数スタックの使用、読み取りヘッドの機械的案内、そのような読み取りヘッドを案内する、隣接する中間層の使用などがある。同様のことが、様々な材料、添付の様式、および/または本明細書に記載の動作の様式にも当てはまる。
【0213】
[0243]次に、イオン打ち込みを用いて識別層を作成する、本発明の実施形態について説明する。
【0214】
[0244]以下では、図19A〜19Dを参照して、本発明の別の実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0215】
[0245]識別層として好適な層を形成する一例示的方法は、イオン打ち込み方法である。この場合、層は、層状サンプルが連続作成されるのではなく、前駆物質のバルクの形で形成されることが可能である。図19A〜19Cは、このアプローチに特に適した各段階を示す。図19Aの断面図において一方の側から示されるバルク材料1900は、ポリマー、金属薄板、木、セラミック、皮、繊維、シリコンウェハ、その他を含み、これらに限定されない、広い範囲の材料から選択されることが可能である。
【0216】
[0246]図19Bに示された、イオン打ち込みに用いられるイオン1901は、識別層を形成するか、識別層の要素となることが必要なイオンである。磁気識別特徴に基づく識別層の場合は、鉄、ニッケル、コバルトなどであって、これらに限定されない強磁性材料のイオンを用いることが望ましい。そのイオンエネルギーの選択によって、イオンがバルク材料に浸透する深さを調整することが可能である。これは、停止距離が、バルク材料1900、イオンエネルギー、およびイオンの散乱断面の関数であるためである。停止距離の予測および計算は、当該技術分野においては周知である(たとえば、TRIMのようなシミュレーションソフトウェアを使用する)。高フルエンスのイオンを用いることにより、相当な密度のイオン材料をバルク内に取得することが可能であり、後続のアニール工程(その結果として得られる構造を図19Cに示す)により、拡散および凝集が進んで、識別層を形成する凝集粒子1903が形成される。特定のフルエンスのイオンの場合、結果は、明瞭かつ種々のサイズの、材料の島(すなわち、粒子群)の凝固層である。この材料は、イオンとして残留する場合も、バルクまたは他の気体と反応して化合物(酸化物など)を与える場合もある。
【0217】
[0247]バルク材料1900の少なくとも1つのエッジを切削および/または研磨することにより、識別層1903を露出するトラックが作成される(ここで、はっきりさせるために再度言及すると、図19は、識別層1903を備える対象物またはタグの側面図である)。イオン打ち込みによる識別層の形成工程は、既に説明されたロールツーロールプロセスで実現可能であり、既に説明された他の多くの実施形態との組み合わせが可能である(たとえば、異なる複数のイオンエネルギーを選択することによる多層スタックの形や、異なる複数のイオンおよび/または前駆物質を選択することによる非磁性の変形形態での使用が可能である)。
【0218】
[0248]図19Dは、図19Cに示された、識別されるように適合された識別タグまたは対象物について、読み取り素子によって取り込まれたフィンガープリント/シグネチャ1910を示す。
【0219】
[0249]タグまたは対象物の前駆物質内で高密度の停止層(たとえば、浸透の深さを規定するのに役立つチタンまたはタンタルの層)を使用することも可能である。また、この方法の変形形態では、拡散障壁およびバルク内へのイオンの拡散を利用することもさらに可能である。
【0220】
[0250]次に、識別層の生成方法の別の例として、不混和性2元系ポリマーブレンド層の相分離について詳細に説明する。
【0221】
[0251]スピンキャスト不混和性2元系ポリマーブレンドの相分離の一般現象については、実験的な研究が行われており、相分離プロセスの分析モデルが提案されている。それについては、WalheirnらのMacromol.30、4995(1997年)、Takenaka、HashimotoのPhys.Rev.E 48,647(1993年)を参照されたい。
【0222】
[0252]ここでは、相分離した2元系ポリマーブレンドの形態構造を用いて、たとえば強磁性材料の、無秩序パターンが層内に形成される。相分離したパターンは、ランダムであり、熱雑音および他のカオス過程の作用によって自己集合する。したがって、これは、2つのパターンが同一である確率が非常に小さいので、本発明の目的に好適である。
【0223】
[0253]図20は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)−ポリスチレン(PS)ブレンドの相分離した形態構造の、PSをスピン塗布して除去した後の原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。
【0224】
[0254]この画像は、高分子量のポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)と高分子量のポリスチレン(PS)とのポリマー溶液を媒体にスピン塗布して高表面エネルギー基板にすることによって得られる。その後、適切な溶媒を用いて、PMMAドメインを除去することなく、PSを溶かす。その後、PMMAの薄い残留層を酸素プラズマ処理によって除去して、最終的な無秩序パターンを形成する。その後、この無秩序パターンを、いくつかある方法のいずれかによって、下方の下層基板に転写する。
【0225】
[0255]以下では、図21A〜21Fを参照して、本発明の別の実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0226】
[0256]この方法では、図21A〜21Fに示すように、Ni薄膜の一部をエッチング除去することによって、無秩序パターンをNi薄膜に転写する。
【0227】
[0257]この例では、図21Aに示すように、基板2100をSiから作り、物理気相成長法によって、Ni薄膜2101をSi基板2100の上に堆積させる。Si基板2100に対するNi 2101の密着性を高めるために、Niの前に、Crの薄層(図示せず)を堆積させる。次に、Ni 2101の上にフォトレジスト2102をスピン塗布し、その後、フォトレジスト2102の上にCr 2103を堆積させる。
【0228】
[0258]図21Bに示すように、不混和性ポリマーブレンド溶液を特定の角速度でCr層2103にスピン塗布して、PS相2110および残留相2111からなる所望の相分離形態構造を得る。
【0229】
[0259]次に、図21Cに示すように、シクロヘキサンなどの溶媒を用いてPS相2110を選択的に除去して、残留相2111(すなわち、PMMA)をCr 2103上に残す。その後、Cr層2103をCrエッチング溶液でウェットエッチングして、図21Cに示されるような層シーケンスを得る。
【0230】
[0260]次に、図21Dに示すように、露出したフォトレジスト2102をUVにさらして現像し、Ni薄膜2101を露出させる。代替として、露出したフォトレジスト2102を異方性O2プラズマエッチングにより除去することも可能である。
【0231】
[0261]次に、図21Eに示すように、Niエッチング溶液を用いてNi薄膜2101をエッチングする。
【0232】
[0262]図21Fに示すように、フォトレジスト2102を(フォトレジストの上に配置された構造物とともに)除去すると、最終結果として、Niの無秩序パターン2120が得られる。
【0233】
[0263]次に、図22A〜22Fを参照して、本発明のさらに別の実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0234】
[0264]図22A〜22Fは、Niの電気めっきによって基板上に無秩序パターンを形成する工程を示す。
【0235】
[0265]この実施形態では、図22Aに示すように、基板2200はSiであり、Si 2200の上にAu 2201の薄膜を物理気相成長法によって堆積させる。Si基板2200に対するAu 2201の密着性を高めるために、Au 2201の前に、Crの薄層(図示せず)を堆積させる。次に、Au 2201の上にフォトレジスト2202をスピン塗布し、フォトレジスト2202の上にCr層2203を堆積させる。
【0236】
[0266]図22Bに示すように、不混和性ポリマーブレンド溶液を特定の角速度でCr層2203にスピン塗布して、PS相2210および残留相2211からなる所望の相分離形態構造を得る。
【0237】
[0267]図22Cに示すように、シクロヘキサンなどの溶媒を用いてPS相2210を選択的に除去して、PMMAの残留相2211をCr 2203上に残す。次に、Cr層2203を、Crエッチング溶液でエッチングする。
【0238】
[0268]図22Dに示すように、露出したフォトレジスト2202をUVにさらして現像し、Au薄膜2201を露出させる。代替として、露出したフォトレジスト2202を異方性O2プラズマエッチングにより除去することも可能である。
【0239】
[0269]次に、図22Eに示すように、Au 2201の上にNi構造物2220を、所望の高さになるまで電着させる。
【0240】
[0270]次に、図22Fに示すように、フォトレジスト2202を(フォトレジストの上に配置された構造物とともに)除去すると、最終結果として、Niの無秩序パターン2230が得られる。
【0241】
[0271]次に、図23A〜23Dを参照して、本発明のさらに別の実施形態による識別タグの製造方法の過程について説明する。
【0242】
[0272] 図23A〜23Dは、Niの無電解堆積によって基板上に無秩序パターンを形成する例示的工程を示す。
【0243】
[0273]この実施形態によれば、図23Aに示すように、Siの基板2300を使用する。不混和性ポリマーブレンド溶液を特定の角速度でSi 2300にスピン塗布して、PS相2309および残留相2310からなる所望の相分離形態構造を得る。
【0244】
[0274]図23Bに示すように、シクロヘキサンなどの溶媒を用いてPS相2309を選択的に除去して、PMMA 2310をSi基板2300上に残す。次に、薄いCr密着層2311を物理気相成長させ、その後に薄いパラジウム層(図示せず)を物理気相成長させる。
【0245】
[0275]次に、図23Cに示すように、残留相2310の最上部に配置されたPd−Cr膜2311の部分を、PMMA 2310をアセトンに溶かすことによって、持ち上げる。
【0246】
[0276]次に、図23Dに示すように、Pd−Cr膜2311の残留部分で覆われたSi基板2300を無電解めっき溶液の加熱漕に浸漬することによって、Ni 2320を堆積させる。
【0247】
[0277]図24および25は、本発明の第7の実施形態の方法に従って製造された識別タグの原子間力顕微鏡画像を示す。
【0248】
[0278]相分離ポリマーを用いて無秩序層を作成することに関連付けられた前述の実施形態では、様々な変形形態が実施可能である。シリコンの代替として、他の任意の固体材料で基板を形成することが可能である。実際、例示的な基板として、ポリマー薄板、セラミック、ガラス、紙、木、革、繊維、金属などの基板がある。基板の選択は、タグの運用環境に左右される場合があり、同様の考察が、前述の他のケースについて説明されたことにも当てはまる。
【0249】
[0279]前述のケースでは、上に横たわる膜は、Ni(および好適な中間密着層または導電層)である。これは、前述の実施形態に関して開示されたように、他の任意の磁性材料(たとえば、Fe、Cr)であってよく、磁界以外のものが検出にとって好ましい場合には、代替材料(たとえば、他の実施形態で紹介されたように、電気特性を検出する場合には、CuまたはAu)であってよい。相分離手法と粒子とを組み合わせて、1つのポリマー相に微粒子(理論的には直径100マイクロメートル未満だが、直径1マイクロメートル未満が好ましい)がプリロードされるようにすることも可能である。これらの粒子は、その相内にとどまり、表面張力によって、混合時に相と相との間に形成された無秩序境界に向かって移動する。結果として、前述の実施形態(たとえば、Niのような磁性粒子または帯磁可能粒子を使用するケースにおいて、磁気読み取りヘッドを有する実施形態)のように検出されることが可能な、粒子の無秩序配置が達成される。
【0250】
[0280]前述の3つの例では、膜は、PVD、電気めっき、または無電解めっきによって堆積されるように説明された。しかしながら、これは、たとえば、金属錯体前駆物質または金属含有ペーストまたはサスペンションを蒸着、印刷、またはスピン塗布することによっても達成可能である。これはトラック幅を規定する層なので、膜の厚さは、100マイクロメートル未満であることが優先され、約1マイクロメートルであることがさらに好ましい。
【0251】
[0281]このプロセスは、前述のロールツーロールプロセスで実施可能であり、既述の他の多くの実施形態と組み合わせることも可能である(たとえば、多層スタックの場合は、対象物自体の一部として、など)。
【0252】
[0282]前述のすべての実施形態において、タグを対象物から取り外す動作によって、シグネチャがオリジナルのシグネチャとの相関を有しなくなる程度まで識別層が乱されるか、影響を受けるように、非常に薄い保持層を有する積層物を開発することが可能である。これは、タグを取り外して別の(おそらくは偽造の)対象物に添付することが不可能であることを意味する。
【0253】
[0283]前述の方法で識別層が形成された後、1つの次元において非常に薄くなるように、切片を切り出すことが可能である。そのような実施形態を図26に示す。ここでは、層シーケンスは、下層104と、上層105と、下層104と上層105との間に挟まれた識別層103とを有する。層シーケンス103、104、105の小さなスライスが切り出され、対象物2600に接着される(図26を参照)。この点において、好適な手法(たとえば、ダイヤモンドナイフによる検鏡用切片作製法)では、数十ナノメートルの、材料の極薄スライスを切り出すことが可能であるが、本明細書に記載のタグは、その最も薄い寸法部分でも、識別特徴を備える層の厚さであるように、典型的には、断面が100マイクロメートル以上の厚さであることに注意されたい(実施形態によっては、理論的には100マイクロメートル未満)。
【0254】
[0284]前述の実施形態において、識別層および関連付けられたトラックの寸法(一般に、所与の長さスケールに対して、トラックが長いほど、多くの情報が含まれる)、無秩序の寸法(所与の長さスケールに対して、無秩序のスケールが小さいほど、多くの情報が存在する)、およびその無秩序の複雑さ(粒子サイズの変動量、孔形状の変動量、および他の自由度)を変えることにより、安全性のレベルを変えることが可能である。
【0255】
[0285]前述の実施形態では、簡単のために、識別層の最も薄い寸法部分を露出することによって作成されたトラックが、考えられている層の面に垂直であるように示されている。しかしながら、角度を付けて断面を切削および/または研磨しても、所望の狭いトラック幅を達成することが可能である。これは、角度が非常に浅い場合のみ達成されないため、層の面に対して少なくとも10度より大きい角度であれば有効であるが、80〜90度の角度が優先される。この件を図27に示す。ここでは、層シーケンス103、104、105のスライス2701、2702が、(切断線2702、2703で示される)異なる角度で切り出されている。
【0256】
[0286]前述の実施形態では、トラック内にも(トラック全体に、またはトラックの特定の微小部分に、または、トラックが、情報が記録されたストリップの特定の微小部分であるように)情報を配置することが開示されている。これは、情報に対して様々な長さスケールの無秩序を考えること、したがって、たとえば情報のビットを保存することが可能であるように、1つの長さスケールを変調することによるものである。これは、バーコード、磁気ストリップ内の磁区、または2進法と同様である。そのような実施形態を図28に示す。ここでは、磁性粒子磁区2810が、永続的に保存されることが望まれる情報のビット(たとえば、製品ファミリを識別するバーコード)に対応するように、間欠的に物理的に堆積している。磁性粒子要素2800が示される、より細かいスケールでは、前述の識別層は、この変調構造の各部分または1つまたは複数の要素の中の細部である。
【0257】
[0287]本発明による別の方法は、前述の方法と類似しているが、物理構造を変調することによって情報を配置するのではなく、1つの長さスケールに帯磁方向「オン」(「オン」部分2900)および「オフ」(「オフ」部分2901)が書き込まれる(ただし、粒子の細部構造はフィンガープリントとして動作する)形で、広がった、連続的な識別層103が与えられる。これは、粒子密度が高いために、より大きな長さスケールに対して、低分解能のヘッドで検出される情報のビットに雑音がほとんど検出されない場合に、特に良好に働く。図29は、この概念を実現する、本発明の実施形態を示す。
【0258】
[0288]上記は、粒子または磁性材料の形で情報を保存する例であるが、他の実施形態(たとえば、粒子の光学的活性/反射率を変調して、微細なフィンガープリント構造が含まれる光学式バーコードを与える実施形態)も同様である。
【0259】
[0289]図30Aを参照して、本発明による読み取り装置3000について説明する。この読み取り装置は、たとえば従来のクレジットカード読み取り装置において見られるような、スロット3010を備える。さらに、この読み取り装置は、スロット3010の底部に読み取りヘッド3004を設置されるように適合される。1つまたは複数の読み取り素子(センサ)3012(たとえば、磁気信号の場合には、「1つまたは複数の読み取り素子」は、標準的な誘導性読み取り素子、異方性磁気抵抗(AMR)読み取り素子、巨大磁気抵抗(GMR)読み取り素子であることが可能であるか、光磁気読み取り方法などの他の概念に基づくことが可能であることに注意されたい)は、トラック幅を網羅するように、読み取りヘッド3004内に設置される。図30Aに示すように、読み取り素子は、スロット3010に挿入されるべき対象物の動きにほぼ垂直に配置されることが可能である。したがって、識別層103を備え、識別層103が、識別層103の最も薄い寸法部分から識別特徴を読み取られるように露出したトラックを有する、クレジットカード900のような対象物が、スロット3010内を移動すると、読み取りヘッド3004内の読み取り素子3012がフィンガープリントを読み取る。次に、このフィンガープリントを、読み取り装置3000でさらに処理して、シグネチャを得ることが可能である。読み取り装置はさらに、タグまたはトラックの読み取り装置通過時の位置を監視するセンサを備えることが可能であることに注意されたい(この目的には、たとえば光学式動き検出器が好適である)。
【0260】
[0290]読み取り装置3000が与えられている場合、読み取り装置3000はさらに、読み取り素子によって読み取られたフィンガープリントからのシグネチャを、あらかじめ保存されている基準シグネチャと比較して、クレジットカード対象物から読み取られたシグネチャと、あらかじめ保存されている基準シグネチャとの差が、所定のしきい値を下回る場合には、クレジットカード3000が本物であると識別する、好適な処理手段(図示せず)を備えることが可能である。あらかじめ保存されているシグネチャが、(読み取り装置から)離れた場所のデータ記憶媒体にある場合、読み取り装置は、その、離れた場所のデータ記憶媒体から、あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取るように適合されているのが通例である。しかしながら、より一般的には、読み取り装置は、読み取られたシグネチャまたはフィンガープリントを、離れた場所にあるデータ記憶媒体に送り、そこで、保存されているシグネチャとの比較が行われるように、適合される。その比較が行われた後、一致が検出されたかどうかを詳述して、タグまたは対象物を識別および/または認証するメッセージが(たとえば、読み取り装置に)返信される。これに対し、あらかじめ保存されている基準シグネチャが対象物またはタグ自体に保存されている場合、読み取り装置は(さらに)、このあらかじめ保存されている基準シグネチャを対象物またはタグ3005から受け取るか読み取るように適合される。
【0261】
[0291]図30Aおよび30Bは、タグ付けされた対象物の2つの例を示す。これらは、実用化され、実験室試験で100回を超える読み取りが行われたものである。図30Aに示したのは、クレジットカードサイズの積層プラスチックカードの形のタグ付けされたIDカードであり、そのタグは、積層された2枚のプラスチック薄板の間に磁性粒子を散布し、約2cm×1cmのサイズに切り出し、プラスチックのIDカードの層間に挿入して積層化したものである。図30Bに示したのは革のサンプルであって、これは、同様のタグ(磁性粒子を有するプラスチック薄板)が間に挿入され、貼り合わせられた2片のウォレットレザーを含む。この革ラベル(サンプル)も、ほぼクレジットカードサイズであり、機械的には柔軟なままである。両サンプルとも、やはり図30Aの写真に示されたスロット読み取り装置により、繰り返し、確実に読み取られた。この2つの例は、特に、識別特徴の磁気読み取りまたは電気読み取りの場合に、識別特徴を読み取るためのトラックが、読み取りのためには、露出されて見えていなくても、対象物に埋め込まれていても、保護層に覆われていてもよいことを示している。
【0262】
[0292]図31は、本発明の実施形態による単層タグの形成を示す。ここでは、磁性粒子または帯磁可能粒子3101と、非磁性マトリックス材料3102(このマトリックス材料は、ポリマーまたは金属であってよく、これらに限定されない)とを混合する。この混合物は、ホッパ3103からパイプ3104に流れ落ち、押し出し/圧延機構3105により、押し出されるか、および/または圧延される。結果として得られるタグの対角図も図31に示した。このケースでは、(寸法a、b、cの)識別層103は、上側の面にも下側の面にも支持層を必要としないよう、十分に堅牢である。トラック110は、タグの1つまたは複数の最も薄いエッジであり、幅が「a」である。2つ以上の層を使用するタグの場合と同様に、トラックの表面または表面近くにある磁性粒子または帯磁可能粒子は、トラックに沿って動く読み取り装置によって読み取られる磁気フィンガープリントに寄与する。
【0263】
[0293]図32は、本発明の別の実施形態による三層タグの断面を示す。トラック110は、識別層103の、露出した最も薄い寸法部分から形成される。このケースでは、トラック110を収容するタグ表面は、浅い、非対称のV字形表面である。さらに、最上支持層105および最下支持層104は、厚さが同じではない。しかしながら、しかるべき形状の案内を有する読み取り装置が、トラックからフィンガープリントを確実に読み取ることが可能であるのは、今や明らかである。さらに、本発明のタグまたは対象物の識別層を露出するトラックに沿って読み取り素子を通すことが可能である、適切な形状の読み取り装置を作ることが可能であれば、トラックが、ほとんど任意の形状のタグ表面に収容されることが可能であることも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1A】本発明の識別層を、本発明によるタグまたは対象物の中の、識別層の最上部および最下部にあるオプションの覆い層と、本発明で用いられる読み取り素子とともに示す図である。
【図1B】図1Aの識別層の側面図である。
【図1C】本発明の一実施形態による識別装置を示す図である。
【図1D】本発明の第2の実施形態による識別装置を示す図である。
【図1E】本発明の別の実施形態による識別装置を示す図である。
【図1F】本発明の一実施形態による、本発明の対象物を示す図である。
【図1G(i)】本発明の実施形態によるタグまたは対象物の対角図、ならびにその実施形態によるタグ/対象物および読み取り装置の断面図である。
【図1G(ii)】図1G(i)の実施形態によるタグ/対象物および読み取り装置の断面図である。
【図1H】トラックを端から端までスキャンする読み取り素子を示す図である。
【図1I】トラックの上を、トラックと平行に動く読み取り素子を示す図である。
【図1J】トラックの上を、トラックと「ほぼ平行」に動く読み取り素子を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による識別システムをさらに示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による識別システムの別の図である。
【図4A】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4B】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4C】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4D】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4E】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4F】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4G】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図4H】本発明の第1の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の方法に従って製造された識別タグの光学顕微鏡画像および電子顕微鏡画像を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による識別システムを示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による識別タグの製造方法の過程におけるオプションの工程を示す図である。
【図9】本発明の実施形態による対象物の例としてのクレジットカードを示す図である。
【図10A】電気的特性に由来するフィンガープリントの読み取りに基づく、本発明の識別システムを示す図である。
【図10B】電気的特性に由来するフィンガープリントの読み取りに基づく、本発明の識別システムを示す図である。
【図10C】電気的特性に由来するフィンガープリントの読み取りに基づく、本発明の識別システムを示す図である。
【図11A】光学式読み取りを用いる、本発明の識別システムを示す図である。
【図11B】光学式読み取りを用いる、本発明の識別システムを示す図である。
【図11C】光学式読み取りを用いる、本発明の識別システムを示す図である。
【図12A】機械的案内手段を用いる、本発明による識別システムを示す図である。
【図12B】機械的案内手段を用いる、本発明による識別システムを示す図である。
【図12C】機械的案内手段を用いる、本発明による識別システムを示す図である。
【図12D】機械的案内手段を用いる、本発明による識別システムを示す図である。
【図13】本発明の別の実施形態による識別装置を示す図である。
【図14A】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図14B】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図14C】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図14D】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図14E】図13に示された本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図15】本発明のいくつかの実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16A】本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16B】本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16C】本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16D】本発明の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図16E】図16A〜16Dの方法を用いて製造されたタグの断面を示す図である。
【図17】本発明の実施形態に従って製造された識別タグのSEM画像を示す図である。
【図18】本発明の対象物の別の例としてのCDを示す図である。
【図19A】本発明による識別タグまたは対象物の製造方法の過程を示す図である。
【図19B】本発明による識別タグまたは対象物の製造方法の過程を示す図である。
【図19C】本発明による識別タグまたは対象物の製造方法の過程を示す図である。
【図19D】本発明による識別タグまたは対象物の製造方法の過程を示す図である。
【図20】相分離形態構造の原子間力顕微鏡画像を示す図である。
【図21】図21A〜図21Fは本発明の別の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図22】図22A〜図22Fは本発明のさらに別の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図23】図23A〜図23Dは本発明のさらに別の実施形態による識別タグの製造方法の過程を示す図である。
【図24】図23に示された本発明の実施形態の方法に従って製造された識別タグの原子間力顕微鏡画像を示す図である。
【図25】図23に示された本発明の実施形態の方法に従って製造された識別タグの原子間力顕微鏡画像を示す図である。
【図26】本発明の一実施形態による識別装置である。
【図27】図27に示された本発明の実施形態による識別装置の製造方法の過程を示す図である。
【図28】本発明のさらに別の実施形態による識別システムを示す図である。
【図29】本発明のさらに別の実施形態による識別システムを示す図である。
【図30A】本発明の読み取り装置の一実施形態を示す図である。
【図30B】本発明に従ってタグ付けされた対象物の例を示す図である。
【図30C】本発明に従ってタグ付けされた対象物の例を示す図である。
【図31】本発明の一実施形態による単層タグの形成を示す図、ならびにそのタグの対角図である。
【図32】本発明の一実施形態による三層タグの断面図であって、トラックを収容するタグの表面が平坦であり、最上層および最下層が非対称である。
【図1a】
【図1b】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に添付されることが可能な、前記対象物を識別するための識別タグであって、
可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別特徴を読み取るためのトラックが、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、識別タグ。
【請求項2】
前記識別層の前記最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも前記特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別されるべき対象物に添付可能であるようになっている、請求項1に記載の識別タグ。
【請求項3】
前記識別層の最上部に配置された覆い層を備える、請求項1または2に記載の識別タグ。
【請求項4】
前記識別層が最下層と前記最上層との間に配置された層構造を備える、請求項3に記載の識別タグ。
【請求項5】
前記層構造が、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つの追加識別層を備える、請求項4に記載の識別タグ。
【請求項6】
前記層構造が、前記識別層と前記追加識別層との間に配置された少なくとも1つの中間層を備える、請求項4または5に記載の識別タグ。
【請求項7】
前記層構造が、前記識別特徴の読み取りプロセスの間のアライメントを容易にする、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つのアライメント層をさらに備える、請求項4〜6のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの識別層が、少なくとも一部分において、ランダムに分布した複数の粒子を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の磁性粒子または帯磁可能粒子を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の導電性粒子および/または半導電性粒子を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の光学的活性粒子を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項12】
前記識別層が、アルミナ、金属、セラミック、ポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項13】
前記材料が、Fe、Ni、Co、これらの合金、酸化物、混合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される磁性材料である、請求項12に記載の識別タグ。
【請求項14】
前記粒子の最大寸法が、10ナノメートルと500マイクロメートルとの間である、請求項8〜13のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項15】
前記識別層を露出する前記トラックの幅が、約100ナノメートルから約1ミリメートルである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項16】
前記トラックの幅が、約500マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、約1マイクロメートル未満、または約500ナノメートル未満である、請求項15に記載の識別タグ。
【請求項17】
前記トラックが保護被膜で覆われた、請求項1〜16のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項18】
前記保護被膜が、ポリマー被膜、ゾルゲル、非晶質ダイヤモンド、またはダイヤモンド様材料からなる群から選択される材料を含む、請求項17に記載の識別タグ。
【請求項19】
前記最下層が、プラスチック、金属、セラミック、繊維、革、ガラス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項4〜18のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項20】
前記トラックが、前記識別層の唯一のアクセス可能部分である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項21】
識別される対象物であって、
可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別特徴を読み取るためのトラックが、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、対象物。
【請求項22】
前記識別層の最上部に配置された覆い層を備える、請求項21に記載の対象物。
【請求項23】
前記識別層が最下層と前記最上層との間に配置された層構造を備える、請求項22に記載の対象物。
【請求項24】
前記層構造が、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つの追加識別層を備える、請求項23に記載の対象物。
【請求項25】
前記層構造が、前記識別層と前記追加識別層との間に配置された少なくとも1つの中間層を備える、請求項23または24に記載の対象物。
【請求項26】
前記層構造が、前記識別特徴の読み取りプロセスの間のアライメントを容易にする、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つのアライメント層をさらに備える、請求項23〜25のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項27】
前記少なくとも1つの識別層が、少なくとも一部分において、ランダムに分布した複数の粒子を含む、請求項21〜26のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項28】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の磁性粒子または帯磁可能粒子を含む、請求項21〜27のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項29】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の導電性粒子および/または半導電性粒子を含む、請求項21〜28のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項30】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の光学的活性粒子を含む、請求項21〜29のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項31】
前記識別層が、アルミナ、金属、セラミック、ポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項21〜30のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項32】
前記材料が、Fe、Ni、Co、これらの合金、酸化物、混合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される磁性材料である、請求項28〜31のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項33】
前記粒子の最大寸法が、10ナノメートルと500マイクロメートルとの間である、請求項27〜31のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項34】
前記識別層を露出する前記トラックの幅が、約100ナノメートルから約1ミリメートルである、請求項21〜33のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項35】
前記トラックの幅が、約500マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約1マイクロメートル未満である、請求項34に記載の対象物。
【請求項36】
前記トラックが保護被膜で覆われた、請求項21〜35のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項37】
前記保護被膜が、ポリマー被膜、ゾルゲル、非晶質ダイヤモンド、またはダイヤモンド様材料からなる群から選択される材料を含む、請求項36に記載の対象物。
【請求項38】
前記最下層が、プラスチック、金属、セラミック、繊維、革、ガラス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項23〜37のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項39】
前記トラックが前記識別層の一方の側だけを露出する、請求項21〜38のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項40】
前記対象物が、高級品、技術部品、繊維、物品を包むパッケージング、容器の封印シール、クレジットカード、証明書、紙幣、セキュリティアクセスカード、車両キーカード、パスポート、IDカード、リードフレーム、電子デバイスパッケージ、または媒体ディスクである、請求項21〜39のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項41】
識別タグまたは識別されるべき対象物の中に置かれた識別特徴を読み取る読み取り装置であって、
識別層内に置かれた情報を読み取るようになっている読み取り素子であり、前記識別層が、前記識別タグまたは前記識別されるべき対象物の中に置かれ、前記識別特徴を読み取るためのトラックが、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、前記読み取り素子と、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内する案内手段と、を備える読み取り装置。
【請求項42】
前記読み取り素子が、前記識別層に含まれる、ランダムに分布した複数の粒子から情報を読み取るようになっている、請求項42に記載の読み取り装置。
【請求項43】
前記読み取り素子が、前記識別層に含まれる、ランダムに分布した複数の磁性粒子から磁界を読み取るようになっている、請求項41または42に記載の読み取り装置。
【請求項44】
前記読み取り素子が、前記識別層に含まれる、ランダムに分布した複数の導電性および/または半導電性粒子から電気的または電磁的情報を読み取るようになっている、請求項41〜43のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項45】
前記読み取り素子が、前記識別層に含まれる、ランダムに分布した複数の光活性粒子から放出された光子を検出するようになっている、請求項41〜44のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項46】
前記案内部材が、前記トラックに沿って前記読み取り素子を機械的に案内するようになっている、請求項41〜45のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項47】
前記案内部材が、前記トラックに沿って前記読み取り素子を光学的に案内するようになっている、請求項41〜46のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項48】
前記案内部材が、前記トラックに沿って前記読み取り素子を電磁的に案内するようになっている、請求項41〜47のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項49】
前記読み取り素子によって読み取られた前記特徴からのフィンガープリントおよび/またはシグネチャを、あらかじめ保存されている基準シグネチャと比較することと、
識別タグまたは対象物から読み取られた前記フィンガープリントおよび/またはシグネチャと、前記あらかじめ保存されている基準シグネチャとの差が、所定のしきい値を下回る場合には、前記識別タグまたは前記対象物が有効であると識別することと、を行うように適合された処理手段を有する、請求項41〜48のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項50】
前記読み取り装置から離れた場所のデータ記憶媒体にある前記あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取るようになっている、請求項49に記載の読み取り装置。
【請求項51】
前記タグが添付されている前記対象物の中にある前記あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取るようになっている、請求項49に記載の読み取り装置。
【請求項52】
前記処理手段が、前記あらかじめ保存されている基準シグネチャを書き直すか、直前に読み取られたフィンガープリント/シグネチャを前記あらかじめ保存されている基準シグネチャに付加することによって、前記あらかじめ保存されている基準シグネチャを更新するよう、さらに適合された、請求項49〜51のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項53】
識別タグが添付された対象物を識別する識別装置であって、
請求項1〜20のいずれか一項に記載の識別タグを備え、
前記識別タグが添付された対象物を備える、識別装置。
【請求項54】
対象物を識別する識別システムであって、
対象物を識別するための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の識別タグであって、前記対象物に添付されることが可能な識別タグと、
前記識別タグの中にエンコードされた識別情報を読み取る、請求項41〜52のいずれか一項に記載の読み取り装置と、を備える識別システム。
【請求項55】
前記識別タグの基準読み取りによって取得された基準シグネチャが保存されているデータ記憶媒体をさらに備える、請求項54に記載の識別システム。
【請求項56】
対象物を識別する識別システムであって、
識別されるように適合された、請求項21〜40のいずれか一項に記載の対象物と、
前記識別タグの中に置かれた識別情報を読み取る、請求項41〜52のいずれか一項に記載の読み取り装置と、を備える識別システム。
【請求項57】
識別されるように適合された前記対象物の基準読み取りによって取得された基準シグネチャが保存されたデータ記憶媒体をさらに備える、請求項56に記載の識別システム。
【請求項58】
前記あらかじめ保存されている基準シグネチャのための前記データ記憶媒体が、前記読み取り装置から離れた場所にあるデータ記憶媒体である、請求項55または57に記載の識別システム。
【請求項59】
前記あらかじめ保存されている基準シグネチャのための前記データ記憶媒体が、前記タグが添付されている前記対象物の中にある、請求項58に記載の識別システム。
【請求項60】
前記データ記憶媒体が、磁気ストリップ、メモリチップ、媒体ディスク、ハードディスク、スマートカード、RAMモジュール、または磁気テープである、請求項59に記載の識別システム。
【請求項61】
対象物に添付されることが可能な、前記対象物を識別するための識別タグを形成する方法であって、前記識別タグが、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別層の少なくとも1つのエッジから、前記識別特徴を読み取るためのトラックを形成するステップであって、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記トラックが、前記識別層の前記最も薄い寸法部分を露出する、ステップを含む方法。
【請求項62】
識別されるように適合された対象物を形成する方法であって、前記対象物が、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別層の少なくとも1つのエッジから、前記識別特徴を読み取るためのトラックを形成するステップであって、前記識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記トラックが、前記識別層の前記最も薄い寸法部分を露出する、ステップを含む方法。
【請求項63】
前記識別層の最上部に配置された覆い層を形成するステップをさらに含む、請求項61または62に記載の方法。
【請求項64】
前記識別層が最下層と前記最上層との間に配置された層構造を形成するステップをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記識別層の前記最も薄い寸法部分を露出する、前記識別層の少なくとも1つのエッジから前記識別特徴を読み取るためのトラックが、切削、磨削、および/または研磨によって形成される、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記識別層が、少なくとも一部分において、前記最下層の上に散布された、ランダムに分布した複数の粒子によって形成される、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記識別層が、少なくとも孔のいくつかに別の材料が充填された多孔質マトリックスから形成される、請求項61〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記識別層が、前記層構造にイオンを打ち込むことによって製造される、請求項64〜67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記識別層が、不混和性2元系ポリマーの相分離を用いて製造される、請求項64〜67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
識別タグ内の識別特徴を読み取る方法であって、
前記識別タグが、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、識別特徴を読み取るためのトラックから前記識別特徴を、読み取り素子を用いて読み取るステップであって、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能である、ステップと、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内するステップと、を含む方法。
【請求項71】
識別されるべき対象物の中の識別特徴を読み取る方法であって、
前記対象物が、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、識別特徴を読み取るためのトラックから前記識別特徴を、読み取り素子を用いて読み取るステップであって、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能である、ステップと、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内するステップと、を含む方法。
【請求項72】
読み取るステップが、前記識別層の少なくとも一部分に含まれる、ランダムに分布した複数の粒子から信号を読み取ることを含む、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記ランダムに分布した複数の粒子が、磁性粒子または帯磁可能粒子である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
トラックの少なくとも一部分の磁界の少なくとも1つの特性を決定して、フィンガープリントを取得するステップを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記識別層が、孔を有する、実質的に非磁性のホスト材料を含み、少なくとも前記孔のいくつかが磁性材料を収容する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
トラックの前記一部分の前記磁界の前記少なくとも1つの特性が、前記識別層の無秩序性に強く依存する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記無秩序性が、前記タグ内の磁性材料の、孔のサイズ、形状、および向き、孔の充填率、結晶方位、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特徴に起因する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記無秩序性が、前記タグ内の前記層内の、粒子のサイズ、粒子の形態構造、粒子の結晶化度、粒子内の結晶方位、粒子の間隔、磁気飽和、粒子の性質、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特徴に起因する、請求項73〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記トラックが磁界にさらされてから、前記トラックの前記一部分の前記磁界の前記少なくとも1つの特性がそれぞれ決定される、請求項73〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
対象物に添付されることが可能な、前記対象物を識別するための識別タグであって、
可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別特徴を読み取るためのトラックが、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、識別タグ。
【請求項2】
前記識別層の前記最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも前記特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるように、識別されるべき対象物に添付可能であるようになっている、請求項1に記載の識別タグ。
【請求項3】
前記識別層の最上部に配置された覆い層を備える、請求項1または2に記載の識別タグ。
【請求項4】
前記識別層が最下層と前記最上層との間に配置された層構造を備える、請求項3に記載の識別タグ。
【請求項5】
前記層構造が、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つの追加識別層を備える、請求項4に記載の識別タグ。
【請求項6】
前記層構造が、前記識別層と前記追加識別層との間に配置された少なくとも1つの中間層を備える、請求項4または5に記載の識別タグ。
【請求項7】
前記層構造が、前記識別特徴の読み取りプロセスの間のアライメントを容易にする、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つのアライメント層をさらに備える、請求項4〜6のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの識別層が、少なくとも一部分において、ランダムに分布した複数の粒子を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の磁性粒子または帯磁可能粒子を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の導電性粒子および/または半導電性粒子を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の光学的活性粒子を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項12】
前記識別層が、アルミナ、金属、セラミック、ポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項13】
前記材料が、Fe、Ni、Co、これらの合金、酸化物、混合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される磁性材料である、請求項12に記載の識別タグ。
【請求項14】
前記粒子の最大寸法が、10ナノメートルと500マイクロメートルとの間である、請求項8〜13のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項15】
前記識別層を露出する前記トラックの幅が、約100ナノメートルから約1ミリメートルである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項16】
前記トラックの幅が、約500マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、約1マイクロメートル未満、または約500ナノメートル未満である、請求項15に記載の識別タグ。
【請求項17】
前記トラックが保護被膜で覆われた、請求項1〜16のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項18】
前記保護被膜が、ポリマー被膜、ゾルゲル、非晶質ダイヤモンド、またはダイヤモンド様材料からなる群から選択される材料を含む、請求項17に記載の識別タグ。
【請求項19】
前記最下層が、プラスチック、金属、セラミック、繊維、革、ガラス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項4〜18のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項20】
前記トラックが、前記識別層の唯一のアクセス可能部分である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の識別タグ。
【請求項21】
識別される対象物であって、
可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別特徴を読み取るためのトラックが、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、対象物。
【請求項22】
前記識別層の最上部に配置された覆い層を備える、請求項21に記載の対象物。
【請求項23】
前記識別層が最下層と前記最上層との間に配置された層構造を備える、請求項22に記載の対象物。
【請求項24】
前記層構造が、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つの追加識別層を備える、請求項23に記載の対象物。
【請求項25】
前記層構造が、前記識別層と前記追加識別層との間に配置された少なくとも1つの中間層を備える、請求項23または24に記載の対象物。
【請求項26】
前記層構造が、前記識別特徴の読み取りプロセスの間のアライメントを容易にする、前記最下層と前記最上層との間に配置された少なくとも1つのアライメント層をさらに備える、請求項23〜25のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項27】
前記少なくとも1つの識別層が、少なくとも一部分において、ランダムに分布した複数の粒子を含む、請求項21〜26のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項28】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の磁性粒子または帯磁可能粒子を含む、請求項21〜27のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項29】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の導電性粒子および/または半導電性粒子を含む、請求項21〜28のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項30】
前記少なくとも1つの識別層が、ランダムに分布した複数の光学的活性粒子を含む、請求項21〜29のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項31】
前記識別層が、アルミナ、金属、セラミック、ポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項21〜30のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項32】
前記材料が、Fe、Ni、Co、これらの合金、酸化物、混合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される磁性材料である、請求項28〜31のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項33】
前記粒子の最大寸法が、10ナノメートルと500マイクロメートルとの間である、請求項27〜31のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項34】
前記識別層を露出する前記トラックの幅が、約100ナノメートルから約1ミリメートルである、請求項21〜33のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項35】
前記トラックの幅が、約500マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約1マイクロメートル未満である、請求項34に記載の対象物。
【請求項36】
前記トラックが保護被膜で覆われた、請求項21〜35のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項37】
前記保護被膜が、ポリマー被膜、ゾルゲル、非晶質ダイヤモンド、またはダイヤモンド様材料からなる群から選択される材料を含む、請求項36に記載の対象物。
【請求項38】
前記最下層が、プラスチック、金属、セラミック、繊維、革、ガラス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項23〜37のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項39】
前記トラックが前記識別層の一方の側だけを露出する、請求項21〜38のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項40】
前記対象物が、高級品、技術部品、繊維、物品を包むパッケージング、容器の封印シール、クレジットカード、証明書、紙幣、セキュリティアクセスカード、車両キーカード、パスポート、IDカード、リードフレーム、電子デバイスパッケージ、または媒体ディスクである、請求項21〜39のいずれか一項に記載の対象物。
【請求項41】
識別タグまたは識別されるべき対象物の中に置かれた識別特徴を読み取る読み取り装置であって、
識別層内に置かれた情報を読み取るようになっている読み取り素子であり、前記識別層が、前記識別タグまたは前記識別されるべき対象物の中に置かれ、前記識別特徴を読み取るためのトラックが、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、前記読み取り素子と、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内する案内手段と、を備える読み取り装置。
【請求項42】
前記読み取り素子が、前記識別層に含まれる、ランダムに分布した複数の粒子から情報を読み取るようになっている、請求項42に記載の読み取り装置。
【請求項43】
前記読み取り素子が、前記識別層に含まれる、ランダムに分布した複数の磁性粒子から磁界を読み取るようになっている、請求項41または42に記載の読み取り装置。
【請求項44】
前記読み取り素子が、前記識別層に含まれる、ランダムに分布した複数の導電性および/または半導電性粒子から電気的または電磁的情報を読み取るようになっている、請求項41〜43のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項45】
前記読み取り素子が、前記識別層に含まれる、ランダムに分布した複数の光活性粒子から放出された光子を検出するようになっている、請求項41〜44のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項46】
前記案内部材が、前記トラックに沿って前記読み取り素子を機械的に案内するようになっている、請求項41〜45のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項47】
前記案内部材が、前記トラックに沿って前記読み取り素子を光学的に案内するようになっている、請求項41〜46のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項48】
前記案内部材が、前記トラックに沿って前記読み取り素子を電磁的に案内するようになっている、請求項41〜47のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項49】
前記読み取り素子によって読み取られた前記特徴からのフィンガープリントおよび/またはシグネチャを、あらかじめ保存されている基準シグネチャと比較することと、
識別タグまたは対象物から読み取られた前記フィンガープリントおよび/またはシグネチャと、前記あらかじめ保存されている基準シグネチャとの差が、所定のしきい値を下回る場合には、前記識別タグまたは前記対象物が有効であると識別することと、を行うように適合された処理手段を有する、請求項41〜48のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項50】
前記読み取り装置から離れた場所のデータ記憶媒体にある前記あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取るようになっている、請求項49に記載の読み取り装置。
【請求項51】
前記タグが添付されている前記対象物の中にある前記あらかじめ保存されている基準シグネチャを受け取るようになっている、請求項49に記載の読み取り装置。
【請求項52】
前記処理手段が、前記あらかじめ保存されている基準シグネチャを書き直すか、直前に読み取られたフィンガープリント/シグネチャを前記あらかじめ保存されている基準シグネチャに付加することによって、前記あらかじめ保存されている基準シグネチャを更新するよう、さらに適合された、請求項49〜51のいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項53】
識別タグが添付された対象物を識別する識別装置であって、
請求項1〜20のいずれか一項に記載の識別タグを備え、
前記識別タグが添付された対象物を備える、識別装置。
【請求項54】
対象物を識別する識別システムであって、
対象物を識別するための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の識別タグであって、前記対象物に添付されることが可能な識別タグと、
前記識別タグの中にエンコードされた識別情報を読み取る、請求項41〜52のいずれか一項に記載の読み取り装置と、を備える識別システム。
【請求項55】
前記識別タグの基準読み取りによって取得された基準シグネチャが保存されているデータ記憶媒体をさらに備える、請求項54に記載の識別システム。
【請求項56】
対象物を識別する識別システムであって、
識別されるように適合された、請求項21〜40のいずれか一項に記載の対象物と、
前記識別タグの中に置かれた識別情報を読み取る、請求項41〜52のいずれか一項に記載の読み取り装置と、を備える識別システム。
【請求項57】
識別されるように適合された前記対象物の基準読み取りによって取得された基準シグネチャが保存されたデータ記憶媒体をさらに備える、請求項56に記載の識別システム。
【請求項58】
前記あらかじめ保存されている基準シグネチャのための前記データ記憶媒体が、前記読み取り装置から離れた場所にあるデータ記憶媒体である、請求項55または57に記載の識別システム。
【請求項59】
前記あらかじめ保存されている基準シグネチャのための前記データ記憶媒体が、前記タグが添付されている前記対象物の中にある、請求項58に記載の識別システム。
【請求項60】
前記データ記憶媒体が、磁気ストリップ、メモリチップ、媒体ディスク、ハードディスク、スマートカード、RAMモジュール、または磁気テープである、請求項59に記載の識別システム。
【請求項61】
対象物に添付されることが可能な、前記対象物を識別するための識別タグを形成する方法であって、前記識別タグが、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別層の少なくとも1つのエッジから、前記識別特徴を読み取るためのトラックを形成するステップであって、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記トラックが、前記識別層の前記最も薄い寸法部分を露出する、ステップを含む方法。
【請求項62】
識別されるように適合された対象物を形成する方法であって、前記対象物が、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別層の少なくとも1つのエッジから、前記識別特徴を読み取るためのトラックを形成するステップであって、前記識別層の最も薄い寸法部分からのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能であるよう、前記トラックが、前記識別層の前記最も薄い寸法部分を露出する、ステップを含む方法。
【請求項63】
前記識別層の最上部に配置された覆い層を形成するステップをさらに含む、請求項61または62に記載の方法。
【請求項64】
前記識別層が最下層と前記最上層との間に配置された層構造を形成するステップをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記識別層の前記最も薄い寸法部分を露出する、前記識別層の少なくとも1つのエッジから前記識別特徴を読み取るためのトラックが、切削、磨削、および/または研磨によって形成される、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記識別層が、少なくとも一部分において、前記最下層の上に散布された、ランダムに分布した複数の粒子によって形成される、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記識別層が、少なくとも孔のいくつかに別の材料が充填された多孔質マトリックスから形成される、請求項61〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記識別層が、前記層構造にイオンを打ち込むことによって製造される、請求項64〜67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記識別層が、不混和性2元系ポリマーの相分離を用いて製造される、請求項64〜67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
識別タグ内の識別特徴を読み取る方法であって、
前記識別タグが、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、識別特徴を読み取るためのトラックから前記識別特徴を、読み取り素子を用いて読み取るステップであって、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能である、ステップと、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内するステップと、を含む方法。
【請求項71】
識別されるべき対象物の中の識別特徴を読み取る方法であって、
前記対象物が、可読識別特徴が中に置かれた識別層を備え、
前記識別層の最も薄い寸法部分を露出する、識別特徴を読み取るためのトラックから前記識別特徴を、読み取り素子を用いて読み取るステップであって、前記トラックからのみ、少なくとも前記可読識別特徴のいくつかが、意味があるように読み取られることが可能である、ステップと、
前記トラックに沿って前記読み取り素子を案内するステップと、を含む方法。
【請求項72】
読み取るステップが、前記識別層の少なくとも一部分に含まれる、ランダムに分布した複数の粒子から信号を読み取ることを含む、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記ランダムに分布した複数の粒子が、磁性粒子または帯磁可能粒子である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
トラックの少なくとも一部分の磁界の少なくとも1つの特性を決定して、フィンガープリントを取得するステップを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記識別層が、孔を有する、実質的に非磁性のホスト材料を含み、少なくとも前記孔のいくつかが磁性材料を収容する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
トラックの前記一部分の前記磁界の前記少なくとも1つの特性が、前記識別層の無秩序性に強く依存する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記無秩序性が、前記タグ内の磁性材料の、孔のサイズ、形状、および向き、孔の充填率、結晶方位、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特徴に起因する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記無秩序性が、前記タグ内の前記層内の、粒子のサイズ、粒子の形態構造、粒子の結晶化度、粒子内の結晶方位、粒子の間隔、磁気飽和、粒子の性質、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特徴に起因する、請求項73〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記トラックが磁界にさらされてから、前記トラックの前記一部分の前記磁界の前記少なくとも1つの特性がそれぞれ決定される、請求項73〜77のいずれか一項に記載の方法。
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G(i)】
【図1G(ii)】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図21E】
【図21F】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30a】
【図30b】
【図30c】
【図31】
【図32】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G(i)】
【図1G(ii)】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図21E】
【図21F】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30a】
【図30b】
【図30c】
【図31】
【図32】
【公表番号】特表2008−527578(P2008−527578A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552093(P2007−552093)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000012
【国際公開番号】WO2006/078220
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000012
【国際公開番号】WO2006/078220
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
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