説明

識別機能を有するホース

【課題】ホースの種類や用途を識別する着色部位を良好に視認することができるとともに、着色部位の範囲を小さく抑えることで、ホースの性能を良好に維持することができる識別機能を有するホースを提供する。
【解決手段】このホースは、ホース本体1の外周面に、補強芯2を螺旋状に巻回してなり、その補強芯2の頂部5付近に、補強芯2の長さ方向に沿うようにして、ホースの種類又は用途を識別するための着色部位10を設けている。これにより、ホース最外周に着色部位10が螺旋状に巻回された状態となって、ホースをどの方向から見ても着色部位10の色を容易に視認することができる。また、異種材料からなる着色部位10のホース全体に占めるの割合を小さくして、ホースの性能を良好に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホースの種類や用途を識別するための着色を施した識別機能を有するホースに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製のホースとして、軟質樹脂からなるホース本体に、硬質樹脂からなる補強芯を螺旋状に巻回することによって構成したものがある。この種のホースは、可撓性及び耐圧性に優れており、給排水、送排気の他、食品、粉体や粒体、モルタル、油等の各種物品の輸送といった様々な用途に使用されている。また、同じ用途に使用するホースであっても、大きさや形状、材質、性能等の違いによって様々な種類のものがある。
【0003】
これらホースとしては、外観上見分けが付くものが大半ではあるが、なかには外観だけでは識別が困難な類似したものがある。このような類似したホース同士は、管理や出荷、施工に際して誤認を招き易いといった問題がある。
【0004】
従来より、外観上類似したホースを見分ける対策の1つとして、ホース外周面に識別用の着色を施すといった方法が採られている。この場合、一般に着色部位は、ホースの樹脂素材に対して異種材料となる着色剤を配合して形成されているため、ホース全体に占める着色部位の割合が大きくなると、ホースの性能に悪影響を及ぼすことがあり、また着色剤の使用量が多くなってコスト高を招くといった不具合がある。かといって、例えば特許文献1にも開示されているように、着色部位をホース外周面に部分的に設けると、ホースの向きによっては、着色部位が隠れてしまって、識別性が損なわれることがある。
【0005】
上記のような補強芯を螺旋状に巻回したホースにおいては、例えば着色剤を配合した樹脂素材によって補強芯を構成したものがあり、この場合には、ホース全体に占める着色部位の割合をある程度抑えることができ、着色部位がホースの外周全周に亘って現れるので識別性も良好である。
【0006】
【特許文献1】特開2003−307287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように、補強芯を螺旋状に巻回したホースにおいて、その補強芯を着色剤を配合した樹脂素材によって構成する場合、着色剤の配合により補強芯自体の強度が低下するため、必要な強度を維持するために、補強芯を構成する樹脂素材の見直しが必要となり、大幅な設計変更を強いられるといった不具合があった。
【0008】
また、ホース全体としてのイメージに与える影響も大きく、使用する着色剤の色をうまく選別しないと、ホース本来の意匠性を損なってしまうといった不具合があった。
【0009】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、ホースの種類や用途を識別する着色部位を良好に視認することができるとともに、着色部位の範囲を小さく抑えることで、ホースの性能を良好に維持することができ、しかも大幅な設計変更や意匠性の低下を招くこともない識別機能を有するホースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明の識別機能を有するホースは、ホース本体1の外周面に、補強芯2を螺旋状に巻回してなるホースであって、前記補強芯2におけるその中心部4よりもホース径方向外側に位置する頂部5付近に、前記補強芯2の長さ方向に沿うようにして、ホースの種類又は用途を識別するための着色部位10を設けたことを特徴とする。
【0011】
具体的には、前記着色部位10を、前記補強芯2よりも細幅の帯板状に形成して、前記補強芯2の頂部5の外表面に露出させた状態で配置している。
【0012】
また、前記着色部位10を、前記補強芯2よりも細幅の棒状に形成して、前記補強芯2の頂部5に埋め込んだ状態で配置している。
【0013】
さらに、前記補強芯2は、透明若しくは半透明の合成樹脂からなる。さらにまた、前記補強芯2と着色部位10とを、共押出しにより一体化させている。
【発明の効果】
【0014】
この発明のホースでは、螺旋状に巻回した補強芯の頂部付近に着色部位を設けているので、ホース最外周に着色部位が螺旋状に巻回された状態となって、ホースをどの方向から見ても、またホースが捻れたり、捩れたりしていても、着色部位の色を容易に視認することができ、ホースの種類や用途を確実に識別することができる。
【0015】
また、このように補強芯の頂部付近にのみ着色部位を設けることによって、ホース全体に占める着色部位の割合を小さくして、ホースの性能を良好に維持することができるとともに、製造コストも削減することができる。しかも、補強芯全体に対する着色部位の割合も極僅かとなるため、補強芯自体の強度低下を抑制して、補強芯を構成する樹脂素材の見直しも不要とすることができ、大幅な設計変更を強いられることもない。加えて、ホース全体としてのイメージも大きく変わることはなく、ホース本来の意匠性を損なうこともない。
【0016】
さらに、着色部位がホース本体からホース径方向へ大きく離間した位置にあるため、搬送物の輸送によってホース本体の壁面が摩耗しても、ホース内部に着色部位に含まれる着色剤が流れ出して、搬送物に着色剤が混入してしまうといった不具合を生じることがない。この特徴は、本発明の食品輸送用のホースへの適用に特に重要なものである。
【0017】
また、帯板状の着色部位を、補強芯の頂部外表面に露出させた状態で配置することで、着色部位の色をはっきりと鮮明に視認することができ、より一層の識別性の向上を図ることができる。さらに、棒状の着色部位を、補強芯の頂部に埋め込んだ状態で配置することで、着色部位の摩耗を確実に防止して、長期間に亘って識別性を良好に発揮させることができる。しかも、これらの場合において、着色部位が補強芯よりも細幅であると、着色部位によって補強芯全体が覆い隠されることがなく、ホース本来の意匠性を良好に維持することができる。また、補強芯を透明若しくは半透明とすることで、着色部位を目立たせて識別性をより一層向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る識別機能を有するホースは、図1に示すように、ホース本体1の外周面に、補強芯2を螺旋状に巻回してなる。
【0019】
ホース本体1は、ポリオレフィン系樹脂を主素材として略円筒状に形成されている。具体的には、透明若しくは半透明な軟質のポリプロピレン樹脂が用いられている。なお、ホース本体1の素材としては、ポリプロピレン樹脂等に限らず、ホースの用途等に応じて適宜選択される樹脂を用いれば良い。
【0020】
このホース本体1の内部には、網状の補強繊維3が埋設されている。なお、ホース本体1において、必ずしもこのような補強繊維3を設けるには及ばない。
【0021】
補強芯2は、ポリオレフィン系樹脂を主素材として構成されている。具体的には、透明若しくは半透明な硬質のポリプロピレン樹脂が用いられている。なお、補強芯2の素材としては、ポリプロピレン樹脂等に限らず、ホースの用途等に応じて適宜選択される樹脂を用いれば良い。
【0022】
この補強芯2は、図2に示すように、例えばその中心部4よりもホース径方向外側に位置する頂部5の外表面が断面略円弧状に形成されている。なお、補強芯2の形状としては、このような形状だけに限定されるものではなく、例えば断面略方形状、断面略凸状、断面略凹状といったようにどのような形状であっても良い。
【0023】
そして、補強芯2の頂部5付近には、補強芯2の長さ方向に沿うようにして、ホースの種類又は用途を識別するための着色部位10が設けられている。例えば、着色部位10の色は、給排水用のホースであれば赤、送排気用のホースであれば青、食品輸送用のホースであれば緑といったように用途毎に設定されたり、ホースの大きさや形状、材質、性能等といった種類毎に設定されている。
【0024】
この着色部位10は、マスターバッチにより色付けした樹脂を主素材として構成されている。具体的には、補強芯2の樹脂素材と同じ樹脂に、着色剤を適宜配合してなるものが用いられている。そして、着色部位10は、補強芯2よりも細幅の帯板状に形成されていて、補強芯2の頂部5の外表面中央に沿って露出した状態で配されている。
【0025】
上記の識別機能を有するホースは、例えば次のようにして製造される。すなわち、軟質のポリプロピレン樹脂からなる帯状体を螺旋状に巻回して、その先行する帯状体と後続する帯状体の互いに隣接する端縁部同士を熱融着することによってホース本体1を形成する。そして、このホース本体1の外周面に対して、共押出しにより着色部位10を一体化させた補強芯2を螺旋状に巻回して、その補強芯2をホース本体1の外周面に熱融着することによって、製造される。なお、ホース本体1としては、帯状体を螺旋巻回することによって形成するだけに限らず、例えば押出成形によって形成しても良い。
【0026】
このようにして構成されたホースでは、その最外周において、細幅の着色部位10が螺旋状に巻回された状態となっている。従って、ホースをどの方向から見ても、またホースが捻れたり、捩れたりしていても、着色部位10の色を容易に視認することができ、ホースの種類や用途を確実に識別することができる。また、補強芯2全体に対する着色部位10の割合は極僅かであって、ホースの強度低下は殆どなく、ホース全体としてのイメージも大きく変わることはない。さらに、ホース本体1からホース径方向へ大きく離間した補強芯2の頂部5に着色部位10を設けているので、特にホースを食品輸送用として用いる場合において、食品の輸送によってホース本体1の壁面が摩耗しても、ホース内部に着色部位10に含まれる着色剤が流れ出して、食品に着色剤が混入してしまうといった不具合を生じることがない。
【0027】
図3及び図4は、別の実施形態に係る識別機能を有するホースを示している。このホースでは、着色部位10が補強芯2よりも細幅の棒状に形成されていて、補強芯2の頂部5に埋め込まれた状態で配されている。着色部位10の色は、透明若しくは半透明の補強芯2を通して視認することができるようになっている。
【0028】
従って、図1及び図2に示すホースに比べて、着色部位10の摩耗を確実に防止して、長期間に亘って識別性を良好に発揮させることができる。また、図1及び図2に示すホースに比べて、着色部材10の色がやや不鮮明に見えることになるが、棒状の着色部位10はホース径方向に厚みを有して、ホースを斜め方向から見ると、着色部位10がホース径方向に広がって見えることから、視認には何ら支障をきたすことはない。
【0029】
上記の図3及び図4に示すホースの着色部位10は、断面略円形に形成されているが、例えば図5や図6に示すように断面略楕円形に形成しても良く、さらに図7に示すように断面略方形に形成しても良い。その他の構成及び効果は、図1及び図2に示すホースと同様である。
【0030】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、着色部位10を補強芯2に沿って連続して設けていたが、着色部位10を補強芯2に沿ってその長さ方向に適宜間隔をあけて設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態に係る識別機能を有するホースの一部破断正面図である。
【図2】同じくその要部の縦断面図である。
【図3】別の実施形態に係る識別機能を有するホースの一部破断正面図である。
【図4】同じくその要部の縦断面図である。
【図5】同じくその着色部位の変形例を示す縦断面図である。
【図6】同じくその着色部位の別の変形例を示す縦断面図である。
【図7】同じくその着色部位のさらに別の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・ホース本体、2・・補強芯、4・・中心部、5・・頂部、10・・着色部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体(1)の外周面に、補強芯(2)を螺旋状に巻回してなるホースであって、前記補強芯(2)におけるその中心部(4)よりもホース径方向外側に位置する頂部(5)付近に、前記補強芯(2)の長さ方向に沿うようにして、ホースの種類又は用途を識別するための着色部位(10)を設けたことを特徴とする識別機能を有するホース。
【請求項2】
前記着色部位(10)を、前記補強芯(2)よりも細幅の帯板状に形成して、前記補強芯(2)の頂部(5)外表面に露出させた状態で配置した請求項1記載の識別機能を有するホース。
【請求項3】
前記着色部位(10)を、前記補強芯(2)よりも細幅の棒状に形成して、前記補強芯(2)の頂部(5)に埋め込んだ状態で配置した請求項1記載の識別機能を有するホース。
【請求項4】
前記補強芯(2)は、透明若しくは半透明の合成樹脂からなる請求項1乃至3のいずれかに記載の識別機能を有するホース。
【請求項5】
前記補強芯(2)と着色部位(10)とを、共押出しにより一体化させた請求項1乃至4のいずれかに記載の識別機能を有するホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−285403(P2007−285403A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113061(P2006−113061)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000221502)東拓工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】