説明

貴金属単結晶ナノワイヤ及びその製造方法

本発明は、貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を前駆物質として利用した貴金属ナノワイヤの製造方法及び貴金属ナノワイヤを提供して、詳細には、反応炉の前端部に位置させた前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体単結晶基板とを、不活性気体が流れる雰囲気で熱処理し、前記単結晶基板上に貴金属単結晶ナノワイヤを形成する製造方法、及び本発明の製造方法により製造された貴金属ナノワイヤを提供する。本発明の製造方法は、触媒を使用しない気相移送法を利用して貴金属ナノワイヤを製造することができ、その工程が簡単で且つ再現性があって、製造されたナノワイヤが、欠陥及び不純物を含まない完璧な単結晶状態の高純度・高品質貴金属ナノワイヤである長所があり、単結晶基板上に凝集されていない均一な大きさの貴金属ナノワイヤを大量生産できる長所があって、貴金属ナノワイヤが単結晶基板表面と方向性を有し、その方向性及び配列が制御可能な長所がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を前駆物質として、気相移送法を利用した貴金属ナノワイヤの製造方法、及びこれにより製造された貴金属ナノワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、貴金属単結晶ナノワイヤは、その化学的安定性が高く、熱伝導度及び電気伝導度が大きく、電気、磁気、光学素子及びセンサーへの活用価値が高い。
【0003】
特に、Agは、全ての金属の中でも最もよい電気及び熱伝導率を有しており、Agの光学的特性により、可視光線領域で最も高いSERS(Surface Enhanced Raman Scattering:表面増強ラマン)効率を示している。このようなAgをナノワイヤ形態で製造する場合、マイクロ電子素子から光学センサーまで多様な応用にその発展が期待できる。特に、SERSの場合、信号の大きさは、Agナノ構造の細密な形態に大きく依存するため、確実な化学またはバイオセンサーの製作のためには、きれいな表面を有する、よく定義されてよく分析されたナノワイヤを製造する技術が最も重要である。
【0004】
Auの場合、Agの場合と同様に、SERS現象を観察することができる。一般に、金属ナノ構造体(nanostructure)は、SAM(self-assembled monolayer)を利用して表面に分子を吸着させることができるが、これを利用し、Auナノ構造体表面に均一に吸着された分子層を得ることができる。AuナノワイヤとSAMを利用して分子のSERS現象を観察して、SAMをなす分子をlinkerに応用し、選択的な生分子分析及び光素子への活用が大きいといえる。また、Auナノワイヤ構造をSERS測定に利用する場合、非常に高感度の分析技術として利用できると期待される。
【0005】
Pdの場合、センサーへの活用が注目を浴びている。多様で且つ精密なガスセンサーの開発は、科学技術の発展と共に高精密度が要求される分野で重大な課題として残っている。また、感知能力に優れたセンサーの開発は、国内・国外を問わず、遥かに遠い状態である。特に、燃料電池の開発と共に、これを商用化する時に発生し得る水素の漏れとこれを監視できる高感度燃料電池用水素ガスセンサーの開発は、次世代清浄エネルギーに使用される燃料電池の研究と並行すべき課題として残っている。このような水素センサーの開発並みに重要視されていることが、センサーとして使用される物質の開発である。その中でも最も注目を浴びている物質の一つがPd金属であって、水素との強い吸着力を有して、自己体積の900倍の水素を吸収できる金属Pdを利用して、ナノワイヤとして合成し高感度センサーに応用することに対する研究が、国内外の数多いグループで進行中である。
【0006】
上述のように、貴金属ナノワイヤの電気、磁気または光学素子、センサーへの活用価値が非常に高いが、気相で貴金属ナノワイヤが合成された場合は報告されたことがなく、既存に発表された貴金属ナノワイヤの合成法は、大部分が鋳型、界面活性剤、膜を作る物質(capping agent)を利用した液相化学法が主をなしており、触媒無しに気相を利用して貴金属ナノワイヤが製造された結果は、未だに報告されたことがない。
【0007】
しかしながら、前記液相化学法は、貴金属ナノワイヤの形状調節が難しく、製造された貴金属ナノワイヤの純度が劣り、ナノワイヤに欠陥が存在するか、多結晶体のナノワイヤが合成される短所がある。また、その製造方法が、気相合成法に比べ複雑であり、大量生産が難しい短所がある。
【0008】
最も素子の大きさの縮小による素子性能の向上という技術的命題は、ナノワイヤの合成と特性に関する基礎研究の必要性を提起する。このようなナノワイヤは、通常いわゆるbottom−up方式の合成法により製作されるが、このような合成法の特性上、ナノワイヤは無秩序な位置と方向に成長してしまう。このように無秩序に成長したナノワイヤは、ナノワイヤの実質的な応用を阻害する障害要素として作用するため、大面積素子の実現のためには、ナノワイヤの位置と方向に対する精密な制御が可能な工程が先行されなければならない。
【0009】
本発明者らは、大量生産が可能で、高品質、高純度の貴金属ナノワイヤの製造方法を提案し、これを発展させ、貴金属ナノワイヤの成長に対する精密な制御を通じてナノワイヤの位置と方向を調節できる製造方法を提案し、基板に整列される方向性(orientation)が調節された貴金属ナノワイヤを通じて、3次元素子を具現できる足場を提供する。
【0010】
また、垂直成長された貴金属金属ナノ線にCo、Fe、Mnなどの遷移金属を微量ドーピングする場合、強磁性(ferromagnetic)の特性を示すと知られている。したがって、本発明の垂直成長合成法は、3次元メモリー製作において、非常に重要な基礎技術を提供すると言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の問題点を解決するための本発明の目的は、触媒を使用しない気相移送法を利用して、基板に対して方向性を有する高純度、高品質の貴金属単結晶ナノワイヤ及びその製造方法を提供することにあり、本発明の他の目的は、本発明の貴金属単結晶ナノワイヤが備えられた素子またはセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、無触媒条件で気相移送法を利用して貴金属単結晶ナノワイヤを製造する方法を詳述する。
【0013】
本発明の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法は、反応炉の前端部に位置させた貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を含む前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体単結晶基板とを、不活性気体が流れる雰囲気で熱処理して、前記単結晶基板上に貴金属単結晶ナノワイヤを形成するという特徴を有する。
【0014】
本発明の製造方法は、触媒を使用せず、単に貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を前駆物質として単結晶基板上に貴金属ナノワイヤを形成させる方法であって、触媒を使用せず、気相の物質移動経路を通じて貴金属単結晶ナノワイヤを製造するため、その工程が簡単で且つ再現性があって、不純物を含まない高純度のナノワイヤを製造することができる長所がある。
【0015】
また、前記反応炉の前端部及び反応炉の後端部の温度をそれぞれ調節し、前記不活性気体の流れ程度と前記熱処理時に利用される熱処理管内の圧力を調節して、最終的に単結晶基板上部で金属物質の核生成駆動力、成長駆動力、核生成速度及び成長速度を調節する方法であるため、貴金属単結晶ナノワイヤの大きさ及び基板上の密度などが制御可能で、再現可能であり、欠陥がなく、結晶性のよい高品質の貴金属単結晶ナノワイヤを製造することができるようになる。
【0016】
したがって、本発明の核心事項は、触媒を使用せず、貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を前駆物質として、気相移送法を利用して金属ナノワイヤを製造することにあり、高品質、高純度、好ましい形状のナノワイヤを製造するために最も重要な核心条件は、反応炉の前端部及び反応炉の後端部のそれぞれ温度、前記不活性気体の流れ程度及び前記熱処理時の圧力条件である。
【0017】
貴金属ナノワイヤを製造するための前駆物質として、貴金属酸化物、貴金属物質及びハロゲン化貴金属を使用することができ、前記貴金属酸化物は、酸化銀、酸化金及び酸化パラジウムから選択されて、前記貴金属物質は、銀、金及びパラジウムから選択されて、前記ハロゲン化貴金属(noble metal halide)は、フッ化貴金属(noble metal fluoride)、塩化貴金属(noble metal chloride)、臭化貴金属(noble metal bromide)及びヨウ化貴金属(noble metal iodide)から選択されたものが好ましく、さらに好ましくは、塩化貴金属、臭化貴金属及びヨウ化貴金属から選択されたものが好ましく、最も好ましくは、塩化貴金属である。前記ハロゲン化貴金属は、ハロゲン化金、ハロゲン化銀及びハロゲン化パラジウムから選択されたものが好ましく、前記ハロゲン化金は、フッ化金、塩化金、臭化金及びヨウ化金から選択されたものが好ましく、前記ハロゲン化銀は、フッ化銀、塩化銀、臭化銀及びヨウ化銀から選択されたものが好ましく、前記ハロゲン化パラジウムは、フッ化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム及びヨウ化パラジウムから選択されたものが好ましい。また、前記ハロゲン化貴金属は、ハロゲン化貴金属水和物を含む。
【0018】
前記前駆物質は、好ましくは、貴金属酸化物または貴金属物質であり、さらに好ましくは、貴金属酸化物である。
【0019】
貴金属ナノワイヤの磁性特性を調節するために、前記前駆物質は、遷移金属をさらに含むことができ、前記遷移金属物質は、Co、Fe、Mg、Mn、Cr、Zr、Cu、Zn、V、Ti、NbまたはY、またはこれらの混合物である。
【0020】
前記熱処理温度条件、不活性気体の流れ条件(carrier gas flow rate)及び熱処理時の圧力条件は、独立して変化され得るが、前記三つの条件が、異なる条件の状態によって依存的に変化することにより、好ましい品質及び形状の貴金属単結晶ナノワイヤを得ることができる。
【0021】
したがって、前記三つの条件の数値限定が独立的に意味を有するというよりは、三つの条件が合わせられた状態で最も好ましい貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法になる。
【0022】
前記反応炉の前端部及び反応炉の後端部のそれぞれの温度は、前駆物質の融点、気化点、気化エネルギーなどの物理的性質及び不活性気体の流れ条件及び熱処理時の圧力条件によって最適化されるべきであるが、好ましくは、前記反応炉の前端部の温度が、前記反応炉の後端部の温度以上の温度に維持されることが好ましく、前記反応炉の前端部の温度と前記反応炉の後端部との温度差が0〜700℃であることが好ましい。
【0023】
前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に100〜600sccm流すことが好ましく、前駆物質が貴金属酸化物または貴金属物質である場合、前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に400〜600sccm流すことが好ましくて、さらに好ましくは、450〜550sccm流すことがさらに好ましい。前駆物質がハロゲン化貴金属である場合、前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に100〜300sccm流すことが好ましい。
【0024】
前記熱処理時の圧力は、常圧より低い圧力を有することが好ましく、さらに好ましくは、2〜50torr、最も好ましくは、2〜20torrの圧力である。しかし、前駆物質がハロゲン化貴金属である場合、常圧を使用して製造してもよい。
【0025】
上述の反応炉の温度条件、不活性気体の流れ条件及び熱処理時の圧力条件は、前駆物質の気化程度、時間当たり単結晶基板に伝達される気化された前駆物質の量、単結晶基板上の貴金属物質の核生成及び成長速度、単結晶基板上に生成された貴金属物質(ナノワイヤ)の表面エネルギー、単結晶基板上に生成された貴金属物質(ナノワイヤ)の凝集程度、単結晶基板上に生成された貴金属物質の形状(morphology)に影響を及ぼすようになる。
【0026】
したがって、上記の温度、不活性気体の流れ及び熱処理時の圧力条件で、本発明の前駆物質を利用して、気相移送法により、最も好ましい品質と形状の貴金属ナノワイヤを製造することができるようになる。上記の条件範囲を外れる場合は、製造されたナノワイヤの凝集、形状の変化、欠陥のような品質の問題が発生する可能性があり、ナノワイヤの形態ではない、粒子、ロッドなどの金属体が得られる問題点がある。
【0027】
熱処理時間も同様に、上記の温度、不活性気体の流れ及び熱処理時の圧力条件によって最適化されるべきであるが、好ましくは30分乃至2時間熱処理することが好ましい。上記の熱処理時間の範囲で不活性気体により気化された前駆物質が単結晶基板に移動し、核生成及び成長に参与するようになるが、これと同時に、単結晶基板に既に形成された貴金属物質間で気相及び基板表面を介しての貴金属物質移動(原子またはクラスタ単位の物質移動)が起こり、オストワルド成長 (Ostwald ripening)が起こるようになる。
【0028】
したがって、上記の熱処理後、貴金属ナノワイヤが形成された単結晶基板を、前駆物質を除去した状態で再び熱処理し、貴金属ナノワイヤの密度、大きさなどを調節することもできる。
【0029】
上述のように、本発明の製造方法は、貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を前駆物質として利用するという点と、前記前駆動物質を利用して貴金属ナノワイヤが製造できる気相移送法を提案することにあるため、本製造方法に使用可能な前駆物質は、あらゆる貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属が可能であり、これを利用して、あらゆる貴金属単結晶ナノワイヤが製造可能である。特に、前記貴金属酸化物は、酸化金、酸化銀、酸化パラジウム、酸化白金、酸化イリジウム、酸化オスミウム、酸化ロジウムまたは酸化ルテニウムが使用可能であり、前記貴金属酸化物を利用して、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウムまたはルテニウム単結晶ナノワイヤを製造することができる。
【0030】
前記酸化金、酸化銀、酸化パラジウム、酸化白金、酸化イリジウム、酸化オスミウム、酸化ロジウムまたは酸化ルテニウムの貴金属酸化物は、常温常圧で熱力学的に安定した量論比を有する酸化物であってもよく、貴金属による点欠陥または酸素による点欠陥に起因した前記安定した量論比を有しない貴金属酸化物であってもよい。
【0031】
また、前記半導体または不導体単結晶基板は、上記の熱処理条件で化学的/熱的に安定した半導体または不導体であれば何でも使用可能であるが、好ましくは、シリコン単結晶、ゲルマニウム単結晶またはシリコンゲルマニウム単結晶から選択された4族単結晶、ガリウム砒素単結晶、インジウムリン単結晶またはガリウムリン単結晶から選択された3〜5族単結晶、2〜6族単結晶、4〜6族単結晶、サファイア単結晶及び二酸化珪素単結晶から選択された単結晶基板を使用することが好ましい。
【0032】
ところが、前記基板は、単に基板上部に貴金属ナノワイヤが形成される空間を提供する役割をするだけであるため、必要に応じて上述の単結晶基板物質の多結晶体を使用してもよい。
【0033】
上述のように、反応炉の前端部及び反応炉の後端部のそれぞれの温度は、貴金属酸化物及び貴金属の融点、気化点、気化エネルギーなどの物理的性質によって最適化する必要があるため、貴金属酸化物として酸化銀、銀またはハロゲン化銀を利用してAg単結晶ナノワイヤを製造する場合、前記反応炉の前端部の温度と前記反応炉の後端部との温度差が250〜650℃であることが好ましく、前駆物質(貴金属酸化物)は、850〜1050℃に維持されて、前記単結晶基板は、400〜600℃に維持されることが好ましい。
【0034】
また、貴金属酸化物として酸化金、金またはハロゲン化金を利用してAu単結晶ナノワイヤを製造する場合、前記反応炉の前端部の温度と前記反応炉の後端部との温度差が0〜300℃であることが好ましく、前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、900〜1000℃に維持されることが好ましい。
【0035】
前記貴金属酸化物として酸化パラジウム、パラジウムまたはハロゲン化パラジウムを利用してPd単結晶ナノワイヤを製造する場合、前記反応炉の前端部の温度と前記反応炉の後端部との温度差が0〜300℃であることが好ましく、前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、900〜1000℃に維持されることが好ましい。
【0036】
以下、本発明による単結晶基板表面と一定な方向性(orientation)を有する貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法を詳述する。
【0037】
本発明による貴金属単結晶ナノワイヤは、貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を含む前駆物質を利用して無触媒条件で製造されて、半導体または不導体単結晶基板表面と方向性を有する特徴がある。
【0038】
前記方向性は、基板の表面と基板上部に製造されるナノワイヤの長軸との方向を意味し、特徴的に基板の表面に対して垂直または水平方向性を有する。
【0039】
前記貴金属単結晶ナノワイヤは、反応炉の前端部に位置させた前記前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた前記単結晶基板とを、不活性気体が流れる雰囲気で一定な圧力で熱処理して製造されるが、前記方向性は、前記前駆物質の種類、前記単結晶基板の種類、前記単結晶基板の表面方向、前記熱処理の温度、前記不活性気体の流れ量、前記圧力、またはこれらの組み合わせによって制御される。
【0040】
基板と特定な方向性を有する貴金属ナノワイヤは、好ましくは、前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、800〜1100℃に維持され、前記反応炉の前端部(前駆物質)から前記反応炉の後端部(単結晶基板)側に前記不活性気体を50〜200sccm流して、前記熱処理は、3〜20torrの圧力で行われて製造される。
【0041】
この際、前記前駆物質は、貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属が使用可能であり、これを利用して、貴金属単結晶ナノワイヤが製造可能である。前記貴金属酸化物は、酸化金、酸化銀、酸化パラジウム、酸化白金、酸化イリジウム、酸化オスミウム、酸化ロジウムまたは酸化ルテニウムが使用可能であり、前記貴金属酸化物を利用して、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウムまたはルテニウム単結晶ナノワイヤを製造することができる。 前記貴金属物質は、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウムまたはルテニウムが使用可能であり、前記ハロゲン化貴金属は、フッ化貴金属(noble metal fluoride)、塩化貴金属(noble metal chloride)、臭化貴金属(noble metal bromide)及びヨウ化貴金属(noble metal iodide)から選択されたものが好ましく、さらに好ましくは、塩化貴金属、臭化貴金属及びヨウ化貴金属から選択されたものが好ましく、最も好ましくは、塩化貴金属である。前記ハロゲン化貴金属の貴金属は、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウム及びルテニウムから選択されたもので、前記ハロゲン化貴金属は、ハロゲン化貴金属水和物を含む。
【0042】
前記前駆物質は、好ましくは、貴金属酸化物または貴金属物質であることが好ましい。
【0043】
前記貴金属酸化物は、酸化金及び酸化パラジウムから選択されて、前記貴金属物質は、金及びパラジウムから選択されて、前記ハロゲン化貴金属は、ハロゲン化金及びハロゲン化パラジウムから選択されることが好ましい。
【0044】
前記貴金属単結晶ナノワイヤは、貴金属バルクと同一な結晶構造を有する特徴があり、高純度・高結晶性を有して、基板に多数の貴金属ナノワイヤが、ランダム(random)ではなく、特定な配列で配列されている特徴がある。
【0045】
前記貴金属単結晶ナノワイヤは、前記単結晶基板表面に対して垂直に成長し、垂直方向性を有する特徴がある。
【0046】
前記垂直方向性を有する貴金属単結晶ナノワイヤは、貴金属バルクと同一な結晶構造を有して、面取り状(faceted shapes)である特徴がある。ここで、前記面取り状(faceted shapes)は、結晶を構成する全ての面で表面が構成されるのではないことを意味し、貴金属ナノワイヤの短軸または長軸を含む特定断面の外周上で、接線の傾きが不連続的に変化することを意味する。
【0047】
前記垂直成長した貴金属単結晶ナノワイヤは、Au単結晶ナノワイヤであり、前記Au単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)である特徴がある。
【0048】
また、前記Au単結晶ナノワイヤは、面取り状(faceted shapes)である特徴があり、Au単結晶ナノワイヤの長軸断面の外周上で、接線の傾きが不連続的に変化する特徴がある。前記Au単結晶ナノワイヤの成長方向は、<110>である特徴があり、これにより、基板の表面とAu単結晶ナノワイヤの<110>が垂直の方向性を有する。好ましくは、サファイア単結晶基板の{0001}表面と前記Au単結晶ナノワイヤの<110>方向が垂直である特徴がある。
【0049】
前記垂直成長した貴金属単結晶ナノワイヤは、Pd単結晶ナノワイヤであり、前記Pd単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)である特徴がある。
【0050】
また、前記Pd単結晶ナノワイヤは、面取り状(faceted shapes)である特徴があり、Pd単結晶ナノワイヤの長軸断面の外周上で、接線の傾きが不連続的に変化する特徴がある。前記Pd単結晶ナノワイヤの成長方向は、<110>である特徴がある。好ましくは、サファイア単結晶基板の{0001}表面と前記Pd単結晶ナノワイヤの<110>方向が垂直である特徴がある。
【0051】
基板表面に対して垂直方向性を有する前記貴金属ナノワイヤは、前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、850〜1100℃に維持され、3〜8torrの圧力で、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に前記不活性気体が50〜200sccm流れる条件で製造されることが好ましい。
【0052】
前記貴金属単結晶ナノワイヤは、前記単結晶基板表面と平行に水平に成長して、水平方向性を有する特徴がある。
【0053】
前記基板表面と平行に水平成長した貴金属単結晶ナノワイヤは、Au単結晶ナノワイヤであり、前記Au単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)である特徴があり、前記基板の表面とAuナノワイヤの{110}または{111}面が平行である特徴がある。
【0054】
好ましくは、前記単結晶基板は、{0001}表面のサファイア基板であり、前記基板の{0001}面と前記Auナノワイヤの{110}面が平行な方向性を有する。
【0055】
前記基板表面と平行に水平成長した貴金属単結晶ナノワイヤは、Pd単結晶ナノワイヤであり、前記Pd単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)である特徴があり、この際、Pd単結晶ナノワイヤが製造される前記単結晶基板は、{0001}表面のサファイア基板であることが好ましい。
【0056】
基板表面に対して水平方向性を有する前記貴金属単結晶ナノワイヤは、前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、800〜950℃に維持され、15〜20torrの圧力で、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に前記不活性気体が50〜200sccm流れる条件で製造されることが好ましい。
【0057】
前記単結晶基板は、4族単結晶基板、3〜5族単結晶基板、2〜6族単結晶基板、4〜6族単結晶基板、サファイア単結晶基板、酸化ケイ素単結晶基板、またはこれらの積層基板であり、好ましくは、サファイア単結晶基板である。
【0058】
本発明による貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法は、反応炉の前端部に位置させた貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を含む前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体単結晶基板とを、不活性気体が流れる雰囲気で一定な圧力で熱処理し、前記単結晶基板表面と方向性を有する貴金属単結晶ナノワイヤが製造される特徴を有する。
【0059】
前記方向性は、基板の表面と基板上部に製造されるナノワイヤの長軸との方向を意味し、前記貴金属単結晶ナノワイヤの長軸が前記単結晶基板表面と垂直または水平の方向性を有する特徴がある。
【0060】
本発明による製造方法において、前記方向性は、前記前駆物質の種類、前記単結晶基板の種類、前記単結晶基板の表面方向、前記熱処理条件、前記不活性気体の流れ量、前記圧力、またはこれらの組み合わせにより調節される特徴がある。
【0061】
この際、前記前駆物質は、貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属が使用可能であり、これを利用して、貴金属単結晶ナノワイヤが製造可能である。前記貴金属酸化物は、酸化金、酸化銀、酸化パラジウム、酸化白金、酸化イリジウム、酸化オスミウム、酸化ロジウムまたは酸化ルテニウムが使用可能であり、前記貴金属酸化物を利用して、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウムまたはルテニウム単結晶ナノワイヤを製造することができる。 前記貴金属物質は、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウムまたはルテニウムが使用可能であり、前記ハロゲン化貴金属は、フッ化貴金属(noble metal fluoride)、塩化貴金属(noble metal chloride)、臭化貴金属(noble metal bromide)及びヨウ化貴金属(noble metal iodide)から選択されたものが好ましく、さらに好ましくは、塩化貴金属、臭化貴金属及びヨウ化貴金属から選択されたものが好ましく、最も好ましくは、塩化貴金属である。前記ハロゲン化貴金属の貴金属は、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウム及びルテニウムから選択されたもので、前記ハロゲン化貴金属は、ハロゲン化貴金属水和物を含む。
【0062】
前記前駆物質は、好ましくは、貴金属酸化物または貴金属物質であることが好ましい。
【0063】
前記貴金属酸化物は、酸化金及び酸化パラジウムから選択されて、前記貴金属物質は、金及びパラジウムから選択されて、前記ハロゲン化貴金属は、ハロゲン化金及びハロゲン化パラジウムから選択されることが好ましい。
【0064】
前記単結晶基板は、4族単結晶基板、3〜5族単結晶基板、2〜6族単結晶基板、4〜6族単結晶基板、サファイア単結晶基板、酸化ケイ素単結晶基板、またはこれらの積層基板であり、好ましくは、サファイア単結晶基板である。
【0065】
本発明による製造方法において、前記貴金属単結晶ナノワイヤが前記単結晶基板表面に対して垂直に成長する特徴があり、この際、前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、850〜1100℃に維持されることが好ましく、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に前記不活性気体を50〜200sccm流すことが好ましく、前記熱処理は、3〜8torrの圧力で行われることが好ましい。垂直成長する貴金属単結晶ナノワイヤが製造される前記単結晶基板は、{0001}面のサファイア単結晶であることが好ましい。
【0066】
前記前駆物質は、酸化金または金であり、前記垂直成長する貴金属単結晶ナノワイヤは、Au単結晶ナノワイヤである特徴がある。
【0067】
前記前駆物質は、酸化パラジウムまたはパラジウムであり、前記垂直成長する貴金属単結晶ナノワイヤは、Pd単結晶ナノワイヤである特徴がある。
【0068】
本発明による製造方法において、前記貴金属単結晶ナノワイヤが前記単結晶基板表面と平行に水平成長する特徴があり、この際、前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、800〜950℃に維持されることが好ましく、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に前記不活性気体を50〜200sccm流すことが好ましく、前記熱処理は、15〜20torrの圧力で行われることが好ましい。
【0069】
水平成長する貴金属単結晶ナノワイヤが製造される前記単結晶基板は、サファイア単結晶であることが好ましく、前記サファイア単結晶基板の表面は、{0001}面または{11−20}面である特徴がある。。
【0070】
前記前駆物質は、酸化金または金であり、前記水平成長する貴金属単結晶ナノワイヤは、Au単結晶ナノワイヤである特徴がある。
【0071】
前記前駆物質は、酸化パラジウムまたはパラジウムであり、前記水平成長する貴金属単結晶ナノワイヤは、Pd単結晶ナノワイヤである特徴がある。
【0072】
以下、本発明による単結晶基板と方向性を有する貴金属ナノワイヤの製造方法を、より詳細に説明する。
【0073】
本発明の基板に対して方向性を有する貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法は、反応炉の前端部に位置させた貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を含む前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体単結晶基板とを、不活性気体が流れる雰囲気で一定な圧力で熱処理し、前記単結晶基板表面に方向性を有する貴金属単結晶ナノワイヤが形成される特徴を有する。
【0074】
詳細には、前記熱処理により気化された前駆物質が前記不活性気体の流れにより移送されて、前記単結晶基板の表面に貴金属物質の核生成(nucleation)及び成長が起こり、前記単結晶基板の表面と垂直または水平の方向性を有する貴金属単結晶ナノワイヤが製造されるようになる。
【0075】
本発明の製造方法は、触媒を使用せず、単に貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を前駆物質として使用し、単結晶基板上に貴金属ナノワイヤを形成させる方法であって、触媒を使用せず、気相の物質移動経路を通じて貴金属単結晶ナノワイヤを製造するため、その工程が簡単で且つ再現性があって、不純物を含まない高純度のナノワイヤを製造することができる長所がある
【0076】
また、前記核生成及び成長条件を制御し、基板表面に対して垂直または水平の方向性を有して、凝集することなく互いに独立して均一に特定方向に配列された貴金属単結晶ナノワイヤを製造することができる長所がある。
【0077】
前記基板上の核生成及び成長により生成された基金増単結晶ナノワイヤの長軸は、前記単結晶基板表面と垂直または水平の関係を有して、このような垂直または水平の方向性は、前記前駆物質の種類、前記単結晶基板の種類、前記単結晶基板の表面方向、前記熱処理条件、前記不活性気体の流れ量、前記圧力、またはこれらの組み合わせにより制御される。
【0078】
詳細には、前記反応炉の前端部(前駆物質)から前記反応炉の後端部(単結晶基板)の温度をそれぞれ調節して、前記不活性気体の流れ程度と前記熱処理時に利用される熱処理管内の圧力を調節して、目的とする貴金属単結晶の表面相(Surface phase)及び各表面エネルギー(Surface energy)を調節して、最終的に単結晶基板上部で貴金属物質の核生成駆動力、成長駆動力、核生成速度及び成長速度を調節して、貴金属物質の核生成及び成長により、単結晶基板と特定方向性を有する貴金属ナノワイヤが製造されるのである。
【0079】
この際、前記基板は、目的とする貴金属単結晶の核生成、特に2次元核生成(2-dimensional nucleation)が容易に発生する不導体または半導体単結晶の表面であり、格子ミスマッチ(lattice mismatch)により誘導される弾性応力(elastic stressまたはelastic strain)及び線欠陥(dislocation)がよく発生しないように適宜選択する必要がある。
【0080】
貴金属単結晶の核生成の容易性(2-dimensional nucleation energy barrier)は、目的とする貴金属単結晶ナノワイヤの物質、目的とする貴金属単結晶ナノワイヤの低指数面の原子構造、前記単結晶基板の物質、前記単結晶基板の表面方向、またはこれらの組み合わせにより決定される。
【0081】
さらに、目的する貴金属単結晶ナノワイヤの物質が同一である場合、前記単結晶基板の物質、前記単結晶基板の表面方向、またはこれらの組み合わせにより、貴金属単結晶ナノワイヤの核生成及び成長が変わるため、最終的に基板と貴金属単結晶ナノワイヤの方向性が制御できる。
【0082】
上述のように、前記不導体または半導体単結晶基板は、目的とする貴金属単結晶ナノワイヤの核生成が容易に発生して、前記熱処理条件で化学的/熱的に安定した半導体または不導体であればいずれも使用可能であるが、実質的にシリコン単結晶、ゲルマニウム単結晶またはシリコンゲルマニウム単結晶から選択された4族単結晶;ガリウム砒素単結晶、インジウムリン単結晶及びガリウムリン単結晶から選択された3〜5族単結晶;2〜6族単結晶;4〜6族単結晶;サファイア単結晶;酸化ケイ素単結晶;及びこれらの積層基板;から選択される。
【0083】
一例として、目的とする貴金属ナノワイヤがAuまたはPdの単結晶ナノワイヤである場合、低費用で購入が容易で、熱力学的に安定した面である低指数の表面で貴金属の核生成が容易に発生するサファイア単結晶を使用することが実質的である。
【0084】
上述のように、前記単結晶基板表面に対して方向性を有する貴金属ナノワイヤを製造するためには、貴金属物質の最初核生成及び成長段階を制御することが必要である。これを制御するための核心条件は、熱処理管内圧力、反応炉の前端部(前駆物質)及び反応炉の後端部(基板)の熱処理温度、及び不活性気体の流れ速度である。
【0085】
理論的、実験的結果を通じて、結晶性を有する全ての物質は、表面エネルギーに影響を及ぼす温度、圧力、雰囲気、不純物などにより表面の原子的構造が変わる、単一ラフ(singular-rough)相変態が起こると知られている。上記の相変態に最も大きい影響を及ぼす要素として温度が挙げられるが、高温で熱力学的に安定した単結晶の形状は、角ばっていない丸い形状であって、この際、表面の原子は、原子的に不規則な構造を有するようになる。低温では、エントロピーエネルギーより単結晶の結晶方向による破壊結合(broken bond)エネルギーの影響が大きくなり、面取り状を有するようになるが、前記面取り状を構成する各面は、表面エネルギーが小さい結晶方向の面であって、この際、表面は、原子的にも偏平な構造を有すると知られている。
【0086】
本発明の単結晶基板表面に対して特定方向性を有するように整列された貴金属ナノワイヤの製造方法は、貴金属物質の熱力学的に安定した表面相を、熱処理温度及び圧力を利用して制御して、不活性気体の流れ量を調節し、前記基板表面に伝達される核生成及び成長駆動力を調節して、前記整列された方向性を獲得した。
【0087】
上述の核生成及び成長条件のために、好ましくは、前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、800〜1100℃に維持されることが好ましく、前記反応炉の前端部(前駆物質)から前記反応炉の後端部(単結晶基板)側に前記不活性気体を50〜200sccm流すことが好ましく、前記熱処理は、3〜20torrの圧力で行われることが好ましい。
【0088】
上述の好ましい温度、圧力及び不活性気体の流れ量から外れる場合は、単結晶基板表面に対する方向性が失われるか、ナノワイヤの形態ではない、ロッドや粒子状の貴金属が得られて、単結晶体でない、多結晶体から構成されたナノワイヤが生成される可能性がある。
【0089】
前記単結晶基板の表面に対して垂直方向性を有するように整列された貴金属ナノワイヤを製造するためには、前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、850〜1100℃に維持されることが好ましく、前記反応炉の前端部(前駆物質)から前記反応炉の後端部(単結晶基板)側に前記不活性気体を50〜200sccm流すことが好ましく、前記熱処理は、3〜8torrの圧力で行われることが好ましい。
【0090】
前記単結晶基板の表面に対して水平方向性を有するように整列された貴金属ナノワイヤを製造するためには、前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、800〜950℃に維持されることが好ましく、前記反応炉の前端部(前駆物質)から前記反応炉の後端部(単結晶基板)側に前記不活性気体を50〜200sccm流すことが好ましく、前記熱処理は、15〜20torrの圧力で行われることが好ましい。
【0091】
熱処理時間も同様に、上記の温度、不活性気体の流れ及び熱処理時の圧力条件によって最適化されるべきであるが、好ましくは30分乃至2時間熱処理することが好ましい。上記の熱処理時間の範囲で不活性気体により気化された前駆物質が単結晶基板に移動し、核生成及び成長に参与するようになるが、これと同時に、単結晶基板に既に形成された貴金属物質間で気相及び基板表面を介しての貴金属物質移動が起こり、粒子成長が起こるようになる。
【0092】
したがって、上記の熱処理後、貴金属ナノワイヤが形成された単結晶基板を、前駆物質を除去した状態で再び熱処理し、単結晶基板と方向性を有して整列された貴金属ナノワイヤの密度、大きさなどを調節することもできる。
【0093】
本製造方法に使用可能な前駆物質は、貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属が使用可能であり、これを利用して、貴金属単結晶ナノワイヤが製造可能である。前記貴金属酸化物は、酸化金、酸化銀、酸化パラジウム、酸化白金、酸化イリジウム、酸化オスミウム、酸化ロジウムまたは酸化ルテニウムが使用可能であり、前記貴金属酸化物を利用して、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウムまたはルテニウム単結晶ナノワイヤを製造することができる。 前記貴金属物質は、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウムまたはルテニウムが使用可能であり、前記ハロゲン化貴金属は、フッ化貴金属(noble metal fluoride)、塩化貴金属(noble metal chloride)、臭化貴金属(noble metal bromide)及びヨウ化貴金属(noble metal iodide)から選択されたものが好ましく、さらに好ましくは、塩化貴金属、臭化貴金属及びヨウ化貴金属から選択されたものが好ましく、最も好ましくは、塩化貴金属である。前記ハロゲン化貴金属の貴金属は、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウム及びルテニウムから選択されたもので、前記ハロゲン化貴金属は、ハロゲン化貴金属水和物を含む。
【0094】
前記前駆物質は、好ましくは、貴金属酸化物または貴金属物質であることが好ましい。
【0095】
貴金属ナノワイヤの磁性特性を調節するために、前記前駆物質は、遷移金属をさらに含むことができ、前記遷移金属物質は、Co、Fe、Mg、Mn、Cr、Zr、Cu、Zn、V、Ti、Nb、Yまたはこれらの混合物である。
【0096】
前記前駆物質として酸化金、金またはハロゲン化金、好ましくは、酸化金または金を利用して、前記単結晶基板表面に対して方向性を有する整列されたAu単結晶ナノワイヤを製造することができて、前記前駆物質として酸化パラジウム、パラジウムまたはハロゲン化パラジウム、好ましくは、酸化パラジウムまたはパラジウムを利用して、前記単結晶基板表面に対して方向性を有する整列されたPd単結晶ナノワイヤを製造することができる、
【0097】
ここで、前記ハロゲン化金は、フッ化金、塩化金、臭化金及びヨウ化金から選択されたものが好ましく、前記ハロゲン化パラジウムは、フッ化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム及びヨウ化パラジウムから選択されたものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施例1により製造されたAgナノワイヤのSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【図2】本発明の実施例1により製造されたAgナノワイヤのTEM(Transmission Electron Microscope)写真である。
【図3】本発明の実施例1により製造されたAgナノワイヤのZone axisによる電子回折パターンである。
【図4】本発明の実施例1により製造されたAgナノワイヤのHRTEM(High Resolution Transmission Electron Microscope)写真である。
【図5】本発明の実施例1により製造されたAgナノワイヤのEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)結果である。
【図6】本発明の実施例1により製造されたAgナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。
【図7】本発明の実施例2により製造されたAuナノワイヤのSEM写真である。
【図8】本発明の実施例2により製造されたAuナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。
【図9】本発明の実施例2により製造されたAuナノワイヤのTEM結果であって、図9(a)は、図9(b)のAuナノワイヤの制限視野回折結果であり、図9(b)は、Auナノワイヤの暗視野像である。
【図10】本発明の実施例2により製造されたAuナノワイヤのEDS結果である。
【図11】本発明の実施例3により製造されたPdナノワイヤのSEM写真である。
【図12】本発明の実施例3により製造されたPdナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。
【図13】本発明の実施例3により製造されたPdナノワイヤのTEM結果であって、図13(a)は、図13(b)のPdナノワイヤの制限視野回折結果であり、図13(b)は、Pdナノワイヤの暗視野像である。
【図14】本発明の実施例3により製造されたPdナノワイヤのEDS結果である。
【図15】本発明の実施例4により製造されたPdナノワイヤのSEM写真である。
【図16】本発明の実施例4により製造されたPdナノワイヤのTEM結果であって、図16の左側上部に挿入された図は、図16のPdナノワイヤの制限視野回折結果である。
【図17】本発明の実施例4により製造されたPdナノワイヤのEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)結果である。
【図18】本発明の実施例5により製造されたAuナノワイヤのSEM写真である。
【図19】本発明の実施例5により製造されたAuナノワイヤの高倍率SEM写真である。
【図20】本発明の実施例6により製造されたAuナノワイヤのSEM写真である。
【図21】本発明の実施例6により製造されたAuナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。
【図22】本発明の実施例6により製造されたAuナノワイヤのTEM結果であって、図22(a)は、図22(b)のAuナノワイヤの制限視野回折結果であり、図22(b)は、Auナノワイヤの暗視野像であり、図22(c)は、図22(b)のHRTEM(High Resolution Transmission Electron Microscope)写真である。
【図23】本発明の実施例6により製造されたAuナノワイヤのEDS結果である。
【図24】本発明の実施例7により製造されたPdナノワイヤのSEM写真である。
【図25】本発明の実施例7により製造されたPdナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。
【図26】本発明の実施例7により製造されたPdナノワイヤのTEM結果であって、図26(a)は、Pdナノワイヤの暗視野像であり、 図26(b)は、図26(a)のPdナノワイヤの制限視野回折結果であり、図26(c)は、図22(a)のHRTEM写真である。
【図27】本発明の実施例7により製造されたPdナノワイヤのEDS結果である。
【図28】本発明の実施例8により製造されたAuナノワイヤのSEM写真である。
【図29】本発明の実施例8により製造されたAuナノワイヤと基板の界面HRTEM写真である。
【図30】本発明の実施例9により製造されたAuナノワイヤのSEM写真である。
【図31】本発明の実施例9により製造されたAuナノワイヤと基板の界面HRTEM写真である。
【図32】本発明の実施例10により製造されたPdナノワイヤのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下、実施例1乃至実施例5を通じて、無触媒条件で気相移送法により貴金属ナノワイヤを製造する方法を、より具体的に提供する。
【0100】
(実施例1)
反応炉で、気相移送法を利用し、Ag単結晶ナノワイヤを合成した。
【0101】
前記反応炉は、前端部と後端部に区別されて、独立的に加熱体(heating element)及び温度調節装置を備えている。反応炉内の管は、直径1インチ、長さ60cm大きさの石英(Quzrtz)材質からなるものを使用した。
【0102】
反応炉の前端部の中央に、前駆物質のAgO(Sigma-Aldrich,226831)0.5gを入れた高純度アルミナ材質のボート状容器を位置させて、反応炉の後端部の中央には、シリコン基板を位置させた。アルゴン気体は、反応炉の前端部に投入され、反応炉の後端部に排気されて、反応炉の後端部には真空ポンプが備えられている。前記真空ポンプを利用して石英管内の圧力を15torrに維持して、MFC(Mass Flow Controller)を利用して500sccmのArが流れるようにした。
【0103】
前記シリコン基板は、表面に自然酸化膜が形成されている(100)結晶面を有するシリコンウェハーを使用した。
【0104】
反応炉の前端部(前駆物質を入れたアルミナボート)の温度は950℃に維持して、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は500℃に維持した状態で30分間熱処理し、Ag単結晶ナノワイヤを製造した。
【0105】
(実施例2)
反応炉で、気相移送法を利用し、Au単結晶ナノワイヤを合成した。
【0106】
前駆物質、熱処理温度及び単結晶基板の物質を除いては、実施例1と同様な条件及び装置を利用してAuナノワイヤを製造した。
【0107】
前駆物質としてAu(Sigma-Aldrich,334057)0.05gを使用して、単結晶基板として、表面が(0001)面であるサファイア単結晶を使用した。
【0108】
反応炉の前端部(前駆物質を入れたアルミナボート)の温度は1100℃に維持して、反応炉の後端部(サファイア基板)の温度は900℃に維持した状態で30分間熱処理し、Au単結晶ナノワイヤを製造した。
【0109】
(実施例3)
反応炉で、気相移送法を利用し、Pd単結晶ナノワイヤを合成した。
【0110】
前駆物質、熱処理温度、圧力及び単結晶基板の物質を除いては、実施例1と同様な条件及び装置を利用してPdナノワイヤを製造した。
【0111】
前駆物質としてPdO(Sigma-Aldrich,203971)0.03gを使用して、単結晶基板として、表面が(0001)面であるサファイア単結晶を使用した。真空ポンプを利用し、石英管内の圧力を5torrに維持した。
【0112】
反応炉の前端部(前駆物質を入れたアルミナボート)の温度は1100℃に維持して、反応炉の後端部(サファイア基板)の温度は900℃に維持した状態で30分間熱処理し、Pd単結晶ナノワイヤを製造した。
【0113】
本発明の製造方法にしたがって、パラジウムを前駆物質として使用(実施例4)し、Pd単結晶ナノワイヤを製造して、塩化金を前駆物質として使用(実施例5)し、Au単結晶ナノワイヤを製造した。
【0114】
(実施例4)
反応炉で、気相移送法を利用し、Pd単結晶ナノワイヤを合成した。
【0115】
前駆物質としてPd(Sigma-Aldrich,203939)0.03gを使用したことを除いては、実施例3と同様な条件及び装置を利用してPd単結晶ナノワイヤを製造した。
【0116】
(実施例5)
反応炉で、気相移送法を利用し、Au単結晶ナノワイヤを合成した。
【0117】
前駆物質、圧力、不活性気体の流れ条件を除いては、実施例2と同様な条件及び装置を利用してAu単結晶ナノワイヤを製造した。
【0118】
前駆物質としてAuCl(Sigma-Aldrich,481130)0.05gを使用して、真空ポンプを利用し、石英管内の圧力を5torrに維持して、MFC(Mass Flow Controller)を利用し、150sccmのArが流れるようにした。
【0119】
前記実施例1乃至5を通じて製造された貴金属単結晶ナノワイヤを分析して、本発明の製造方法により製造された貴金属単結晶ナノワイヤの品質、形状及び純度などを分析した。
【0120】
図1乃至図6は、実施例1を通じて製造されたAgナノワイヤを利用した測定結果である。
【0121】
図1は、シリコン単結晶基板上に製造されたAgナノワイヤのSEM写真であって、図1から分かるように、多量のナノワイヤが数十μmの長さを有する均一な大きさで、シリコン単結晶基板と分離されて製造されることが分かり、ナノワイヤの長軸方向に真っ直ぐ伸びた形状を有して、ナノワイヤ同士が凝集することなく、個別的に分離可能なAgナノワイヤが製造されたことが分かり、Ag単結晶ナノワイヤの短軸の径が80〜150nmで、長軸の長さは、10μm以上であることが分かる。
【0122】
図2は、AgナノワイヤのTEM写真であって、図2を通じて、製造されたAgナノワイヤの形状を詳細に観察してみると、滑らかな表面を有するAgナノワイヤが形成されたことが分かり、前記Ag単結晶ナノワイヤの成長方向に対する垂直方向の断面は、断面外周上接線の傾き値が連続的に変化する緩やかな曲率を持った形状を有して、表面エネルギーの最小化のために、前記断面が円形であることが分かる。また、Ag単結晶ナノワイヤの成長方向側の端部の断面が、角ばっていない楕円形であることが分かる。
【0123】
図3は、製造された単一なAgナノワイヤにおいて、3軸のZone Axisに対するSAED(Selected Area Electron Diffraction)パターンである。図3の回折パターンにより、一つのAgナノワイヤが単一な結晶体であることが分かり、図3のZone Axis点(透過点)と回折点間の距離及びZone Axisによる電子回折パターン結果により、製造されたAgナノワイヤが面心立方構造(FCC)を有することが分かって、バルクAgと同一なユニットセル大きさを有することが分かる。
【0124】
図4は、AgナノワイヤのHRTEM写真である。図4から分かるように、緩やかな曲率を持ったAgナノワイヤの長軸をなす表面が原子的にも不規則な構造(Atomically rough structure)であることが分かり、Agナノワイヤの成長方向が<110>方向であることが分かる。また、(110)面間の間隔がバルクAgと同一な0.29nmであることが分かる。
【0125】
図5は、TEM装備に付着されたEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を利用したAgナノワイヤの成分分析結果である。図5の結果を通じて分かるように、グリッド(grid)のように、測定装備の特性上、副次的に測定された物質を除くと、製造されたナノワイヤがAgのみからなっていることが分かる。
【0126】
図6は、AgナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。前記図6の回折結果は、回折ピークの移動(Peak shift)無しにバルクのAg回折結果と正確に一致して、製造されたAgナノワイヤが面心立方構造(FCC)を有することが分かる。
【0127】
図7乃至図10は、実施例2を通じて製造されたAuナノワイヤを利用した測定結果である。図7は、サファイア単結晶基板上に製造されたAuナノワイヤのSEM写真であって、Agナノワイヤの製造結果と同様に、多量のナノワイヤが数十μmの長さを有する均一な大きさで、サファイア単結晶基板と分離されて製造されることが分かり、ナノワイヤの長軸方向に真っ直ぐ伸びた形状を有して、ナノワイヤ同士が凝集することなく、個別的に分離可能なAuナノワイヤが製造されたことが分かり、Au単結晶ナノワイヤの短軸の径が50〜150nmで、長軸の長さは、50μm以上であることが分かる。
【0128】
図8は、AuナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。前記図8の回折結果は、回折ピークの移動(Peak shift)無しにバルクのAu回折結果と正確に一致して、製造されたAuナノワイヤが面心立方構造(FCC)を有することが分かる。
【0129】
製造されたAuナノワイヤの構造及び形状をTEMを利用して詳細に観察してみると、図9(a)乃至(b)の結果から分かるように、製造されたAuナノワイヤが滑らかな表面を有することが分かり、Agとは違って、前記Au単結晶ナノワイヤの成長方向側の端部が面取り状(Faceted shape)であることが分かり、図9(a)のSAEDを通じて、製造されたAuナノワイヤが単一な結晶体からなる単結晶体であることが分かり、Au単結晶ナノワイヤの成長方向(長軸)が<110>方向であり、また前記面取り状のナノワイヤの角ばった表面を形成する各面は、{111}{110}{100}のような低指数面であることが分かる。
【0130】
図10は、TEM装備に付着されたEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を利用したAuナノワイヤの成分分析結果である。図10の結果を通じて分かるように、グリッド(grid)のように、測定装備の特性上、副次的に測定された物質を除くと、製造されたナノワイヤがAuのみからなっていることが分かる。
【0131】
図11乃至図14は、実施例3を通じて製造されたPdナノワイヤを利用した測定結果である。図11は、サファイア単結晶基板上に製造されたPdナノワイヤのSEM写真であって、Agナノワイヤの製造結果と同様に、多量のナノワイヤが数μmの長さを有する均一な大きさで、サファイア単結晶基板と分離されて製造されることが分かり、ナノワイヤの長軸方向に真っ直ぐ伸びた形状を有して、ナノワイヤ同士が凝集することなく、個別的に分離可能なPdナノワイヤが製造されたことが分かり、Pd単結晶ナノワイヤの短軸の径が50〜150nmで、長軸の長さは、5μm以上であることが分かる。
【0132】
図12は、PdナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。前記図12の回折結果から分かるように、製造されたPdナノワイヤがバルクPdの回折結果と一致して、面心立方構造(FCC)を有することが分かる。
【0133】
製造されたPdナノワイヤの構造及び形状をTEMを利用して詳細に観察してみると、図13(a)乃至(b)の結果から分かるように、製造されたPdナノワイヤが滑らかな表面を有することが分かり、Agとは違って、前記Pd単結晶ナノワイヤの成長方向側の端部が面取り状(Faceted shape)であることが分かり、図13(a)のSAEDを通じて、製造されたPdナノワイヤが単一な結晶体からなる単結晶体であることが分かり、Pd単結晶ナノワイヤの成長方向(長軸)が<110>方向であることが分かる。また、前記面取り状のナノワイヤの表面を形成する各面は、{111}{110}{100}のような低指数面であることが分かる。
【0134】
図14は、TEM装備に付着されたEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を利用したPdナノワイヤの成分分析結果である。図14の結果を通じて分かるように、グリッド(grid)のように、測定装備の特性上、副次的に測定された物質を除くと、製造されたナノワイヤがPdのみからなっていることが分かる。
【0135】
図15乃至図17は、実施例4を通じて製造されたPdナノワイヤを利用した測定結果である。図15は、サファイア単結晶基板上にPd前駆物質を利用して製造されたPdナノワイヤのSEM写真であって、酸化パラジウム前駆物質を利用した製造結果と同様に、多量のナノワイヤが数μmの長さを有する大きさで、サファイア単結晶基板と分離されて製造されることが分かり、ナノワイヤの長軸方向に真っ直ぐ伸びた形状を有して、ナノワイヤ同士が凝集することなく、個別的に分離可能なPdナノワイヤが製造されたことが分かる。図16から分かるように、製造されたPdナノワイヤが滑らかな表面を有することが分かり、図16の左側上部に示されたSAEDを通じて、製造されたPdナノワイヤが単一な結晶体からなる単結晶体であることが分かり、Pd単結晶ナノワイヤの成長方向(長軸)が<110>方向であることが分かる。図17は、TEM装備に付着されたEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を利用したPdナノワイヤの成分分析結果である。図17の結果を通じて分かるように、グリッド(grid)のように、測定装備の特性上、副次的に測定された物質を除くと、製造されたナノワイヤがPdのみからなっていることが分かる。
【0136】
実施例4及び図15乃至図17の結果から分かるように、本発明の製造方法を通じて、貴金属酸化物の前駆物質だけではなく、貴金属物質を前駆物質として使用した場合も、大きさが均一で、高品質の単結晶体でありながら、不純物を含まない高純度ナノワイヤが、基板と分離され、製造されたナノワイヤ同士が凝集せずに製造されることが分かる。
【0137】
図18乃至図19は、実施例5を通じて製造されたAuナノワイヤを利用した測定結果である。図18は、サファイア単結晶基板上にAuCl前駆物質を利用して製造されたAuナノワイヤのSEM写真であり、図19は、高倍率のSEM写真である。AuClの前駆物質を利用した場合も、多量のナノワイヤが数μmの長さを有する大きさで、サファイア単結晶基板と分離されて製造されることが分かり、ナノワイヤの長軸方向に真っ直ぐ伸びた形状を有して、ナノワイヤ同士が凝集することなく、個別的に分離可能なAuナノワイヤが製造されたことが分かる。また、前記実施例5を通じて製造されたAuナノワイヤの、TEMを利用した電子回折及びEDS結果を分析した結果、実施例2を通じて製造されたAuナノワイヤと同様に、単結晶で、高純度・高品質のAuナノワイヤが製造されることが分かる。
【0138】
上述のように、本発明の実施例1乃至5により製造された貴金属ナノワイヤを分析した結果、本発明の貴金属ナノワイヤは、使用された前駆物質に係らず、共通的に大きさが均一で、高品質の単結晶体であり、不純物を含まない高純度ナノワイヤであることが分かる。また、基板上に多量のナノワイヤが形成されて、それぞれのナノワイヤが凝集することなく、分離可能であることが分かる。
【0139】
以下、実施例6乃至実施例14を通じて、単結晶基板と方向性を有する貴金属ナノワイヤを製造する方法を、より具体的に提供する。
【0140】
(実施例6)
反応炉で、気相移送法を利用し、基板に垂直配向されたAu単結晶ナノワイヤを製造した。
【0141】
前記反応炉は、前端部と後端部に区別されて、独立的に加熱体(heating element)及び温度調節装置を備えている。反応炉内の管は、直径1インチ、長さ60cm大きさの石英(Quzrtz)材質からなるものを使用した。
【0142】
反応炉の前端部の中央に、前駆物質のAu(Sigma-Aldrich,334057)0.02gを入れた高純度アルミナ材質のボート状容器を位置させて、反応炉の後端部の中央には、単結晶基板として表面が(0001)面であるサファイア単結晶を位置させた。アルゴン気体は、反応炉の前端部に投入され、反応炉の後端部に排気されて、反応炉の後端部には真空ポンプが備えられている。前記真空ポンプを利用して石英管内の圧力を5torrに維持して、MFC(Mass Flow Controller)を利用して100sccmのArが流れるようにした。
【0143】
反応炉の前端部(前駆物質を入れたアルミナボート)の温度は1100℃に維持して、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は900℃に維持した状態で30分間熱処理し、Au単結晶ナノワイヤを製造した。
【0144】
(実施例7)
反応炉で、気相移送法を利用し、基板に垂直配向されたPd単結晶ナノワイヤを製造した。
【0145】
熱処理温度、前駆物質、不活性気体の流れ量、圧力を除いて、実施例6と同様な条件及び装置を利用してPdナノワイヤを製造した。
【0146】
前駆物質としてPdO(Sigma-Aldrich,203971)0.05gを使用して、真空ポンプを利用し、石英管内の圧力を6torrに維持した。
【0147】
アルゴン気体が140sccm流れる状態で、反応炉の前端部(前駆物質を入れたアルミナボート)の温度は1100℃に維持して、反応炉の後端部(サファイア基板)の温度は900℃に維持した状態で30分間熱処理し、Pd単結晶ナノワイヤを製造した。
【0148】
(実施例8)
反応炉で、気相移送法を利用し、基板に水平配向されたAu単結晶ナノワイヤを製造した。
【0149】
熱処理温度、圧力及び不活性気体の流れ量を除いて、実施例6と同様な条件及び装置を利用してAuナノワイヤを製造した。
【0150】
真空ポンプを利用し、石英管内の圧力を17torrに維持して、アルゴン気体が80sccm流れる状態で、反応炉の前端部(前駆物質を入れたアルミナボート)の温度は1100℃に維持して、反応炉の後端部(サファイア基板)の温度は850℃に維持した状態で30分間熱処理し、Au単結晶ナノワイヤを製造した。
【0151】
(実施例9)
反応炉で、気相移送法を利用し、基板に水平配向されたAu単結晶ナノワイヤを製造した。
【0152】
(11−20)面サファイア単結晶基板を使用したことを除いて、実施例8と同様な条件及び装置を利用してAuナノワイヤを製造した。
【0153】
(実施例10)
反応炉で、気相移送法を利用し、基板に水平配向されたPd単結晶ナノワイヤを製造した。
【0154】
熱処理温度、圧力及び不活性気体の流れ量を除いて、実施例7と同様な条件及び装置を利用してPdナノワイヤを製造した。
【0155】
真空ポンプを利用し、石英管内の圧力を20torrに維持して、アルゴン気体が100sccm流れる状態で、反応炉の前端部(前駆物質を入れたアルミナボート)の温度は1100℃に維持して、反応炉の後端部(サファイア基板)の温度は850℃に維持した状態で30分間熱処理し、Pd単結晶ナノワイヤを製造した。
【0156】
(実施例11)
Au前駆物質を利用し、垂直配向されたAu単結晶ナノワイヤを製造した。
【0157】
前駆物質としてAu 0.02gを使用したことを除いては、実施例6と同様な条件でAuナノワイヤを製造した。
【0158】
(実施例12)
Pd前駆物質を利用し、垂直配向されたPd単結晶ナノワイヤを製造した。
【0159】
前駆物質としてPd 0.05gを使用したことを除いては、実施例7と同様な条件でPdナノワイヤを製造した。
【0160】
(実施例13)
Au前駆物質を利用し、水平配向されたAu単結晶ナノワイヤを製造した。
【0161】
前駆物質としてAuを使用したことを除いては、実施例8と同様な条件でAuナノワイヤを製造した。
【0162】
(実施例14)
Pd前駆物質を利用し、水平配向されたPd単結晶ナノワイヤを製造した。
【0163】
前駆物質としてPdを使用したことを除いては、実施例10と同様な条件でPdナノワイヤを製造した。
【0164】
実施例6で製造されたナノワイヤの物理的特性は、実施例11で製造されたナノワイヤと類似しており、実施例7で製造されたナノワイヤの物理的特性は、実施例12で製造されたナノワイヤと類似しており、実施例8で製造されたナノワイヤの物理的特性は、実施例13で製造されたナノワイヤと類似しており、実施例10で製造されたナノワイヤの物理的特性は、実施例14で製造されたナノワイヤと類似していた。したがって、以下、製造分析された単結晶ナノワイヤの特性は、実施例6乃至実施例10に基づいて詳述する。
【0165】
実施例6乃至10を通じて製造された貴金属単結晶ナノワイヤを分析し、基板と方向性を有する貴金属単結晶ナノワイヤの品質、形状及び純度などを分析した。
【0166】
図20乃至図23は、実施例6を通じて製造されたAuナノワイヤを利用した測定結果である。図20(a)は、サファイア単結晶基板上に製造されたAuナノワイヤのSEM写真である。図20から分かるように、本発明のAgナノワイヤは、単結晶基板の表面に対して垂直に成長配列された特徴がある。また、多量のナノワイヤが製造されることが分かり、ナノワイヤが長軸方向に真っ直ぐ伸びた形状を有して、ナノワイヤ同士が凝集することなく、個別的に分離可能なAuナノワイヤが製造されたことが分かる。また、図20(b)の高倍率SEMを通じて、Auナノワイヤが巨視的に面取り状を有することが分かる。
【0167】
図21は、AuナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。前記図21の回折結果は、回折ピークの移動(Peak shift)無しにバルクのAu回折結果と正確に一致して、製造されたAuナノワイヤが面心立方構造(FCC)を有することが分かる。
【0168】
製造されたAuナノワイヤの構造及び形状をTEMを利用して詳細に観察してみると、図22(a)乃至(c)の結果から分かるように、製造されたAuナノワイヤが滑らかな表面を有して、面取り状(Faceted shape)であることが分かる。図22(a)のSAEDパターンを通じて、製造されたAuナノワイヤが単一な結晶体からなる単結晶体であることが分かり、図22(a)と図22(b)を通じて、Au単結晶ナノワイヤの成長方向(長軸)が<110>方向であることが分かって、図22(c)の結果から、ナノ線が完璧な単結晶であることを確認することができる。
【0169】
図20乃至図22(c)の結果から、前記Au単結晶ナノワイヤの成長方向に対して、垂直方向の断面は、断面外周上の接線の傾き値が不連続的に変化する面取り状を有して、前記面取り状のナノワイヤの表面を形成する各面は、{111}{110}{100}のような低指数面であることが分かる。
【0170】
図23は、TEM装備に付着されたEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を利用したAuナノワイヤの成分分析結果である。図23の結果を通じて分かるように、グリッド(grid)のように、測定装備の特性上、副次的に測定された物質を除くと、製造されたナノワイヤがAuのみからなっていることが分かる。
【0171】
図24乃至図27は、実施例7を通じて製造されたPdナノワイヤを利用した測定結果である。
【0172】
図24(a)は、サファイア単結晶基板上に製造されたPdナノワイヤのSEM写真である。50〜150nmの直径と5〜10μm長さを有する多量のナノワイヤが、単結晶基板表面に対して垂直に成長配列されたことが分かる。長軸方向に真っ直ぐ伸びた形状を有して、ナノワイヤ同士が凝集することなく、個別的に分離可能なPdナノワイヤが製造されたことが分かる。また、図20(b)の高倍率SEMを通じて、Pdナノワイヤが巨視的に面取り状を有することが分かる。
【0173】
図25は、PdナノワイヤのXRD(X-Ray Diffraction)結果である。図25の回折結果から分かるように、製造されたPdナノワイヤがバルクPdの回折結果と一致して、面心立方構造(FCC)を有することが分かる。
【0174】
製造されたPdナノワイヤの構造及び形状をTEMを利用して詳細に観察してみると、図26(a)乃至(c)の結果から分かるように、製造されたPdナノワイヤが滑らかな表面を有して、面取り状(Faceted shape)であることが分かる。図26(a)のSAEDを通じて、製造されたPdナノワイヤが単一な結晶体からなる単結晶体であることが分かり、Pd単結晶ナノワイヤの成長方向(長軸)が<110>方向であることが分かる。前記面取り状のナノワイヤの表面を形成する各面は、{111}{110}{100}のような低指数面であることが分かる。また図26(c)のHRTEMイメージを通じて、製造された単結晶ナノワイヤが、欠陥のない高結晶性を有することが分かる。
【0175】
図27は、TEM装備に付着されたEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を利用したPdナノワイヤの成分分析結果である。図27の結果を通じて分かるように、グリッド(grid)のように、測定装備の特性上、副次的に測定された物質を除くと、製造されたナノワイヤがPdのみからなっていることが分かる。
【0176】
上述のように、本発明の実施例6乃至7により製造された貴金属ナノワイヤを分析した結果、本発明の貴金属ナノワイヤは、物質に係らず、共通的に単結晶基板の表面に対して垂直成長配列された特徴を有し、高品質の単結晶体であり、不純物を含まない高純度ナノワイヤであることが分かる。また、基板上に多量のナノワイヤが形成されて、それぞれのナノワイヤが凝集することなく、個別的に分離可能であることが分かる。結晶学的な特徴として、本発明の貴金属単結晶ナノワイヤは、貴金属バルクと同一な結晶構造を有して、単結晶ナノワイヤの成長方向(長軸)が<110>方向であり、面取り状(faceted shape)であることが分かる。
【0177】
図28乃至図29は、実施例8を通じて製造されたAuナノワイヤを利用した測定結果である。
【0178】
図28は、サファイア単結晶基板に製造されたAuナノワイヤのSEM写真である。図28から分かるように、単結晶基板表面に対して水平に成長配列された多量のナノワイヤが製造されることが分かる。
【0179】
図29は、製造されたAuナノワイヤとサファイア基板の界面の高倍率TEM写真であって、図29の右側上部の電子回折パターンから分かるように、製造されたAuナノワイヤが純粋な単結晶からなっており、バルクAuと同一な面心立方構造を有することが分かる。また、製造されたAuナノワイヤと前記基板の結晶学的関係を、TEMを利用して詳細に観察した結果、図29の結果から分かるように、製造されたAuナノワイヤの(110)面とサファイア単結晶表面である(0001)面がエピタキシャル(epitaxial)であることが分かる。
【0180】
サファイア単結晶表面にエピタキシャルに成長したAu単結晶ナノワイヤが<110>の成長方向を有することが分かり、Auナノワイヤの長軸(<110>)がサファイア単結晶表面の<11−20>と平行であることが分かる。これにより、図28のように水平成長した多数のAuナノワイヤが、<11−20>と結晶学的に同一な六つの方向に3角形または6角形で配列された構造を有することが分かる。
【0181】
図30乃至図31は、実施例9を通じて製造されたAuナノワイヤを利用した測定結果である。
【0182】
図30は、a面のサファイア単結晶基板に製造されたAuナノワイヤのSEM写真である。実施例8と同様に、単結晶基板の表面に対して水平に成長配列された多量のナノワイヤが製造されることが分かる。しかし、Auナノワイヤの長軸(<110>)が単結晶表面の<11−20>と結晶学的に同一な六つの方向に配列された構造を有する実施例8とは違って、単一な方向に配列されたAuナノワイヤが製造された。
【0183】
図31は、製造されたAuナノワイヤとサファイア基板の界面の高倍率TEM写真であって、図31の右側上部の電子回折パターンから分かるように、製造されたAuナノワイヤが純粋な単結晶からなっており、バルクAuと同一な面心立方構造を有することが分かる。また、製造されたAuナノワイヤと前記基板の結晶学的関係を、TEMを利用して詳細に観察した結果、実施例8の結果と同様に、Au単結晶ナノワイヤが<110>の成長方向を有することが分かり、製造されたAuナノワイヤの(11−1)面とサファイア単結晶表面である(11−20)面がエピタキシャル(epitaxial)であり、Au単結晶ナノワイヤの長軸方向である<110>方向とa面サファイア単結晶基板の<0001>方向が平行であることが分かる。これにより、図30のように水平成長した多数のAuナノワイヤが<0001>の単一な方向に配列されていることが分かる。
【0184】
また、実施例8及び実施例9で製造されたAuナノワイヤを、TEM装備に付着されたEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を利用して成分分析した結果、実施例6と同様に、グリッド(grid)のように、測定装備の特性上、副次的に測定された物質を除くと、ナノワイヤがAuのみからなっている純粋なAuナノワイヤが製造された。
【0185】
図32は、実施例10を通じて製造されたPdナノワイヤのSEM写真である。実施例8乃至実施例9の基板と平行に成長したAuナノワイヤと同様に、基板と平行に成長したPdナノワイヤが製造されて、TEMを利用した結晶構造分析を行った結果、実施例7と同様に、単結晶のPdナノワイヤが製造されて、TEM装備に付着されたEDSを利用して成分分析した結果、Pdのみからなる純粋なPdナノワイヤが製造された。
【0186】
実施例6乃至実施例10を通じて、貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を含む前駆物質を利用して、無触媒条件で製造され、純粋な単結晶体で、内部欠陥の少ない高品質・高純度の貴金属ナノワイヤが、一定な方向性を有して基板上部に形成されることが分かり、このような方向性が、前記前駆物質の種類、前記単結晶基板の種類、前記単結晶基板の表面方向、前記熱処理の温度、前記不活性気体の流れ量、前記圧力、またはこれらの組み合わせによって制御されることが分かる。
【0187】
本発明の貴金属ナノワイヤの製造方法及び本発明の製造方法により製造された貴金属ナノワイヤは、基板の表面に対する方向性及びナノワイヤの大きさ及び形状の制御が可能であり、再現可能であって、単純な製造工程を通じて大量の高純度・高品質のナノワイヤを提供することにより、貴金属ナノワイヤそのものに対する物理的、光学的、電磁気的性質を研究できる足場を提供して、金属の中、電気伝導度及び熱伝導率がよくて化学的に安定した貴金属ナノワイヤを利用し、電気素子、光素子または磁気素子の特性を向上させることができて、その大きさを減少させることができ、特に、貴金属ナノワイヤの表面特性を利用した分光装置に備えられるか、生物学的情報検出装置(bio sensor)、光、電気、磁気、熱または振動、またはこれらの組み合わせを検出する装置(sensor)に備えられ、検出特性を調節して、センサーの敏感度、正確性、再現性を向上させることができる。さらに、単結晶基板の表面に対する垂直配列を利用して、MEMS(micro electro mechanical systems)構造体、3次元メモリー素子に製作活用できる。
【0188】
以上のように、本発明では、具体的な前駆物質、具体的な単結晶基板のように、特定な事項と限定された実施例及び図面を参照して説明したが、これらは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたもので、本発明がこれらに限定されるものではなく、本発明の属する分野で通常の知識を有する者なら、このような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0189】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に局限して定められてはならず、添付の特許請求の範囲だけではなく、この特許請求の範囲と均等なあるいは等価的な変形のあるあらゆるものは、本発明の思想の範疇に属すると言える。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の製造方法は、触媒を使用しない気相移送法を利用して貴金属ナノワイヤを製造することができ、その工程が簡単で且つ再現性があって、製造されたナノワイヤが、欠陥及び不純物を含まない完璧な単結晶状態の高純度・高品質貴金属ナノワイヤである長所があり、単結晶基板上に凝集されていない均一な大きさの貴金属ナノワイヤを大量生産できる長所がある。また、単結晶基板と製造された貴金属ナノワイヤが特定な方向性を有するように製造できる長所がある。
【0191】
貴金属ナノワイヤが制御可能であり、再現可能であって、単純な製造工程を利用して大量提供することにより、貴金属ナノワイヤそのものに対する物理的、光学的、電磁気的性質を研究できる足場を提供して、金属の中、電気伝導度及び熱伝導率がよくて化学的に安定した高純度・高品質のAgナノワイヤ、Auナノワイヤ及びPdナノワイヤを提供し、これを利用した高敏感度、高効率の電気素子、光素子または磁気素子の活用への道を提供して、特に、貴金属ナノワイヤの表面特性を利用した分光装置、生物学的情報検出装置(bio sensor)、光、電気、磁気、熱または振動、またはこれらの組み合わせを検出する装置(sensor)に活用できる。
【0192】
基板との特定方向性を有する貴金属ナノワイヤが制御可能であり、再現可能であって、単純な製造工程を利用して大量提供することにより、貴金属ナノワイヤそのものに対する物理的、光学的、電磁気的性質を研究できる足場を提供して、金属の中、電気伝導度及び熱伝導率がよくて化学的に安定した高純度・高品質のAuナノワイヤ及びPdナノワイヤを提供し、これを利用した高敏感度、高効率の電気素子、光素子または磁気素子の活用への道を提供して、特に、基板表面に対して方向性を有する貴金属ナノワイヤを利用し、3次元MEMS(micro electro mechanical systems)構造体または3次元メモリー素子分野に効果的に活用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉の前端部に位置させた貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を含む前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体単結晶基板とを、不活性気体が流れる雰囲気で熱処理して、前記単結晶基板上に貴金属単結晶ナノワイヤを形成することを特徴とする、貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記不活性気体を、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に100〜600sccm流すことを特徴とする、請求項1に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記熱処理は、2〜50torrの圧力で行われることを特徴とする、請求項2に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記反応炉の前端部の温度が、前記反応炉の後端部の温度と同一であるか、さらに高い温度であり、前記反応炉の前端部の温度と前記反応炉の後端部との温度差が0〜700℃であることを特徴とする、請求項3に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記貴金属酸化物は、酸化銀、酸化金及び酸化パラジウムから選択されて、前記貴金属物質は、銀、金及びパラジウムから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項6】
前記不活性気体を、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に400〜600sccm流すことを特徴とする、請求項5に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化貴金属(noble metal halide)は、フッ化貴金属(noble metal fluoride)、塩化貴金属(noble metal chloride)、臭化貴金属(noble metal bromide)及びヨウ化貴金属(noble metal iodide)から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項8】
前記不活性気体を、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に100〜300sccm流すことを特徴とする、請求項7に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項9】
前記前駆物質は、遷移金属物質をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項10】
前記単結晶基板は、サファイア基板またはシリコン基板であることを特徴とする、請求項1に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項11】
前記貴金属酸化物は、酸化銀、銀またはハロゲン化銀であり、前記貴金属単結晶ナノワイヤは、Agナノワイヤであることを特徴とする、請求項3に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項12】
前記前駆物質は、850〜1050℃に維持されて、前記単結晶基板は、400〜600℃に維持されることを特徴とする、請求項11に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項13】
前記貴金属酸化物は、酸化金、金またはハロゲン化金であり、前記貴金属単結晶ナノワイヤは、Auナノワイヤであることを特徴とする、請求項3に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項14】
前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、900〜1000℃に維持されることを特徴とする、請求項13に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項15】
前記貴金属酸化物は、酸化パラジウム、パラジウムまたはハロゲン化パラジウムであり、前記貴金属単結晶ナノワイヤは、Pdナノワイヤであることを特徴とする、請求項3に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項16】
前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、900〜1000℃に維持されることを特徴とする、請求項15に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の製造方法により製造された貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項18】
前記貴金属単結晶ナノワイヤは、Ag単結晶ナノワイヤであることを特徴とする、請求項17に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項19】
前記Ag単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)であることを特徴とする、請求項18に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項20】
前記Ag単結晶ナノワイヤの成長方向に対する垂直方向の断面は、断面外周上接線の傾き値が連続的に変化するものであることを特徴とする、請求項18に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項21】
前記断面は、円形であることを特徴とする、請求項20に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項22】
前記Ag単結晶ナノワイヤの成長方向側の端部の断面は、楕円形であることを特徴とする、請求項18に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項23】
前記貴金属単結晶ナノワイヤは、Au単結晶ナノワイヤであることを特徴とする、請求項17に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項24】
前記Au単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)であることを特徴とする、請求項23に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項25】
前記貴金属単結晶ナノワイヤは、Pd単結晶ナノワイヤであることを特徴とする、請求項18に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項26】
前記Pd単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)であることを特徴とする、請求項25に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項27】
貴金属酸化物、貴金属物質またはハロゲン化貴金属を含む前駆物質を利用して無触媒条件で製造されて、半導体または不導体単結晶基板表面と方向性を有する貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項28】
前記方向性は、垂直または水平方向性であることを特徴とする、請求項27に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項29】
前記貴金属酸化物は、酸化金及び酸化パラジウムから選択されて、前記貴金属物質は、金及びパラジウムから選択されて、前記ハロゲン化貴金属は、ハロゲン化金及びハロゲン化パラジウムから選択されたものであることを特徴とする、請求項27に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項30】
前記貴金属単結晶ナノワイヤが前記単結晶基板表面に対して垂直に成長したことを特徴とする、請求項28に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項31】
前記前駆物質は、酸化金または金であり、前記垂直成長した貴金属単結晶ナノワイヤは、Au単結晶ナノワイヤであることを特徴とする、請求項30に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項32】
前記Au単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)であり、長軸の方向が<110>であることを特徴とする、請求項31に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項33】
前記前駆物質は、酸化パラジウムまたはパラジウムであり、前記垂直成長した貴金属単結晶ナノワイヤは、Pd単結晶ナノワイヤであることを特徴とする、請求項30に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項34】
前記Pd単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)であり、長軸の方向が<110>であることを特徴とする、請求項33に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項35】
前記貴金属単結晶ナノワイヤは、貴金属バルクと同一な結晶構造を有して、面取り状(faceted shapes)であることを特徴とする、請求項30に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項36】
前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、850〜1100℃に維持され、3〜8torrの圧力で、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に前記不活性気体が50〜200sccm流れて、前記単結晶基板表面に対して垂直に成長したことを特徴とする、請求項30に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項37】
前記貴金属単結晶ナノワイヤが前記単結晶基板表面と平行に水平に成長したことを特徴とする、請求項28に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項38】
前記前駆物質は、酸化金または金であり、前記基板表面と平行に水平成長した貴金属単結晶ナノワイヤは、Au単結晶ナノワイヤであることを特徴とする、請求項37に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項39】
前記単結晶基板は、{0001}表面のサファイア基板であり、前記基板の{0001}面と前記Auナノワイヤの面心立方構造(Face Centered Cubic){110}面が平行であることを特徴とする、請求項38に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項40】
前記単結晶基板は、{11−20}表面のサファイア基板であり、前記基板の{11−20}面と前記Auナノワイヤの面心立方構造(Face Centered Cubic){111}面が平行であることを特徴とする、請求項38に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項41】
前記前駆物質は、酸化パラジウムまたはパラジウムであり、前記基板表面と平行に水平成長した貴金属単結晶ナノワイヤは、Pd単結晶ナノワイヤであることを特徴とする、請求項37に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項42】
前記Pd単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(Face Centered Cubic)であることを特徴とする、請求項41に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項43】
前記単結晶基板は、{0001}表面のサファイア基板であることを特徴とする、請求項41に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項44】
前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、800〜950℃に維持され、15〜20torrの圧力で、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に前記不活性気体が50〜200sccm流れて、前記単結晶基板表面と平行に成長したことを特徴とする、請求項37に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項45】
前記単結晶基板は、サファイア単結晶基板であることを特徴とする、請求項27に記載の貴金属単結晶ナノワイヤ。
【請求項46】
反応炉の前端部に位置させた貴金属酸化物又は貴金属物質を含む前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体単結晶基板とを、不活性気体が流れる雰囲気で一定な圧力で熱処理し、前記単結晶基板表面と方向性を有する貴金属単結晶ナノワイヤを形成することを特徴とする、貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項47】
前記貴金属単結晶ナノワイヤの長軸が前記単結晶基板表面と垂直または水平の方向性を有することを特徴とする、請求項46に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項48】
前記方向性を、前記前駆物質の種類、前記単結晶基板の種類、前記単結晶基板の表面方向、前記熱処理条件、前記不活性気体の流れ量、前記圧力、またはこれらの組み合わせにより調節することを特徴とする、請求項47に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項49】
前記貴金属単結晶ナノワイヤが前記単結晶基板表面に対して垂直に成長することを特徴とする、請求項46に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項50】
前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、850〜1100℃に維持されることを特徴とする、請求項49に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項51】
前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に前記不活性気体を50〜200sccm流すことを特徴とする、請求項50に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項52】
前記熱処理は、3〜8torrの圧力で行われることを特徴とする、請求項51に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項53】
前記貴金属単結晶ナノワイヤが前記単結晶基板表面と平行に水平に成長することを特徴とする、請求項46に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項54】
前記前駆物質は、1000〜1200℃に維持されて、前記単結晶基板は、800〜950℃に維持されることを特徴とする、請求項53に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項55】
前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部側に前記不活性気体を50〜200sccm流すことを特徴とする、請求項54に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項56】
前記熱処理は、15〜20torrの圧力で行われることを特徴とする、請求項55に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項57】
前記貴金属酸化物は、酸化金及び酸化パラジウムから選択され、前記貴金属物質は、金及びパラジウムから選択されることを特徴とする、請求項46に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。
【請求項58】
前記単結晶基板は、4族単結晶基板、3〜5族単結晶基板、2〜6族単結晶基板、4〜6族単結晶基板、サファイア単結晶基板、酸化ケイ素単結晶基板、またはこれらの積層基板であることを特徴とする、請求項46に記載の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2010−532308(P2010−532308A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514626(P2010−514626)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003737
【国際公開番号】WO2009/005261
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(596071752)コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (60)
【Fターム(参考)】