説明

貸金庫システム

【課題】高いセキュリティ性を維持しつつ、銀行より貸与された鍵を使用しなくても保護箱を開けることができる貸金庫システムを提供する。
【解決手段】顧客の物品が保護箱に格納され、ブースに設けられた保護箱利用口を介して顧客が保護箱を利用する貸金庫システムにおいて、保護箱に、顧客がブース内で入力した顧客確認情報を受信可能とするデータ通信部17と、このデータ通信部17により受信した顧客確認情報と予め保護箱毎に付与された顧客登録情報とが一致したときに解錠する電気錠12とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貸金庫システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
貸金庫システムの一例としては、複数の顧客に対応してそれぞれ設けられ、各顧客が所有する被格納物を格納するための複数の保護箱と、各保護箱を収納するための収納部と、取り出し指示信号に基づいて開口し、返却指示信号に基づいて閉じる保護箱利用口と、保護箱を前記収納部と前記保護箱利用口との間で搬送する搬送手段と、各顧客が顧客確認情報を入力する操作部と、顧客確認情報の入力に基づき、搬送手段および保護箱利用口を制御する制御部と、前記保護箱利用口および操作部を収容し、顧客が保護箱に被格納物の出し入れを行うブースと、を備えた構成のものが挙げられる(例えば、特許文献1−3参照)。
【0003】
従来の貸金庫システムでは、保護箱は鍵によってのみ施錠/解錠される構造になっている。ブースの操作部は、例えばスライド開閉式のシャッタを備えた保護箱利用口と、タッチパネルによる入力方式の操作パネルと、利用者の認証カードを読み込む挿入式のカードリーダとを備える。正規な利用者である場合、その利用者がカードリーダに認証カードを挿入し、操作パネルにより暗証番号を入力することで、保護箱が保護箱利用口まで搬送され、シャッタが開く。保護箱利用口のシャッタが開くと、保護箱の上部蓋を鍵で解錠して蓋を開け、保護箱内から目的のものを取り出したり、収納する。保護箱を利用した後は、保護箱の蓋を閉め、鍵で施錠し、ブースの操作画面での返却ボタン等の操作により、保護箱利用口のシャッタが閉じ、保護箱は収納部へ搬送される。
【特許文献1】特公平2−1956号公報
【特許文献2】特開2006−97434号公報
【特許文献3】特開2007−23668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、保護箱の上部蓋を解施錠するものは鍵のみであるため、利用者は認証カードと、保護箱の蓋を解施錠するための鍵の両方所持しなければ貸金庫システムを利用することが出来ず、特に鍵は厳重に管理する必要があり、また持ち運びにかさばるため鍵の使用は利用者にとっては煩わしかった。
また保護箱がブース内の保護箱利用口まで搬送された履歴は残るが、利用者が保護箱内の目的物を出し入れする直前の行動である保護箱の蓋を解錠したという履歴は残っていなかった。
【0005】
本発明は、主に、(1)銀行より貸与された鍵を使用しなくても保護箱を開けることができる、(2)保護箱の蓋の解施錠や開閉の履歴を残す、等を目的として創作されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、顧客の物品が保護箱に格納され、ブースに設けられた保護箱利用口を介して顧客が前記保護箱を利用する貸金庫システムであって、保護箱に、顧客がブース内で入力した顧客確認情報を受信可能とするデータ通信手段と、このデータ通信手段により受信した顧客確認情報と予め保護箱毎に付与された顧客登録情報とが一致したときに解錠する電気錠とを設けたことを特徴とする貸金庫システムとした。
【0007】
この貸金庫システムによれば、高いセキュリティ性を維持しつつ、銀行に貸与された鍵を使用しなくても保護箱を開けることができる。
【0008】
また、本発明は、搬送される保護箱が保護箱利用口に到着したときに保護箱に電源供給する構成としたことを特徴とする貸金庫システムとした。
【0009】
この貸金庫システムによれば、保護箱個々にバッテリ等の電源を備える必要がなくなり、バッテリ等の電源切れにより保護箱の電気錠が解錠不能となることもない。また、経済的な貸金庫システムを構築できる。
【0010】
また、本発明は、前記顧客確認情報と前記顧客登録情報とを照合する照合手段を保護箱に設けたことを特徴とする貸金庫システムとした。
【0011】
この貸金庫システムによれば、保護箱内で照合が完結し、照合をするために前記顧客登録情報が保護箱内から外に出て漏れることがなく、前記顧客登録情報を暗号化するなどして更に厳重にセキュリティ管理することができる。
また、この貸金庫システムによれば、照合時間が迅速になるので、顧客にとってスピーディーに保護箱を利用できる。
【0012】
また、本発明は、保護箱の蓋の開閉状態を検知する検知手段と、前記蓋の開閉履歴を記憶する記憶手段とを保護箱に設けたことを特徴とする貸金庫システムとした。
【0013】
この貸金庫システムによれば、顧客確認情報を入力して保護箱の蓋を解錠する場合でも機械錠を利用して保護箱の蓋を解錠する場合でも保護箱の蓋の解施錠履歴や開閉履歴を確実に残すことができる。したがって、顧客が保護箱内の目的物を出し入れする直前の行動である保護箱の蓋の解錠作業について厳重にセキュリティ管理することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高いセキュリティ性を維持しつつ、銀行に貸与された鍵を使用しなくても保護箱を開けることができ、顧客にとって貸金庫利用の便宜性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は貸金庫システムにおけるブース周りの一例を示す外観斜視図、図2は保護箱の外観斜視図である。顧客が利用するブース1は仕切り壁3を隔てて貸金庫室2に隣接している。貸金庫室2内では各顧客の物品を格納した複数の保護箱5(図2)が所定の収納部に収納されており、ブース1内の顧客の指示を受けることで、図示しない搬送装置により、その顧客の保護箱5がブース1内の保護箱利用口4まで搬送される。保護箱利用口4は、操作装置6に形成されており、通常時は例えばスライド開閉式のシャッタ4aにより閉じられている。
【0016】
操作装置6には、タッチパネルによる入力方式の操作パネル7が設けられている。この操作パネル7は各種情報を表示するモニタ機能を有する。顧客は、この操作パネル7を用いて顧客個々を特定するための顧客確認情報を入力する。操作パネル7で入力する顧客確認情報としては、パスワードや暗証番号等が挙げられる。他の顧客確認情報としては、てのひら静脈や指静脈などの生体情報やICカード情報などが挙げられ、その場合それぞれ生体認証装置、ICカードリーダを介して情報を入力する。
【0017】
本発明における貸金庫システムでは、従来の貸金庫システムと同様に顧客が、まず保護箱5をブース1内の保護箱利用口4まで搬送するために操作装置6のカードリーダに認証カードを挿入し、操作パネル7により暗証番号を入力する。図示しないメインコントローラが、これらの入力された顧客確認情報が予めメインコントローラに登録されている顧客登録情報と一致するか否かを判別し、正規な利用者である場合、保護箱5がブース1内の保護箱利用口4まで搬送される。メインコントローラは例えば貸金庫室2内に設置される。保護箱5が保護箱利用口4に到着すると、ブース1の操作パネル7の操作により保護箱利用口4のシャッタを開口する。次に保護箱5の蓋9を解錠するための顧客確認情報を操作装置6で入力する。後記する保護箱5内の照合部13は、入力された顧客確認情報が予め登録されている顧客登録情報と一致するか否かを判別し、正規な利用者である場合、保護箱の蓋9が解錠される。保護箱5をブース1内の保護箱利用口4まで搬送するための顧客確認情報と保護箱5の蓋9を解錠するための顧客確認情報とは異なるものにすることがセキュリティ上望ましい。本発明において、保護箱5の蓋9を解錠するための顧客確認情報を入力する装置はブース1内の操作装置6に限られず、ブース1内に操作装置6とは別に設けた専用の操作装置でもよい。
【0018】
図2において、保護箱5は扁平の直方体形状を呈しており、上面の中央部には、ロータリ式の手動による解施錠用のツマミ部8を一端側に有した回動開閉式の蓋9が取り付けられている。顧客はツマミ部8を回して解錠したうえで、蓋9を仮想線で示すように上方に開き、収納部10において物品の出し入れを行う。
【0019】
保護箱5の長手方向一端側(ツマミ部8が位置する側)には、収納部10とは独立して制御ユニット11が設けられている。制御ユニット11は、電気錠12、照合部13、制御部14、記憶部15、電源供給部16、データ通信部17等から構成される。制御ユニット11を覆う保護箱5の上面には、機械錠18の鍵差込口、電源ランプ19、解錠ランプ20、施錠ランプ21が取り付けられ、一側面には、電源供給部16としての接触式の電源接続端子16aおよび前記データ通信部17としての赤外線通信窓17aが取り付けられている。電源ランプ19は保護箱5に電源が供給されたときに、解錠ランプ20は保護箱5が解錠状態にあるときに、施錠ランプ21は保護箱5が施錠状態にあるときに、それぞれ点灯する。保護箱5の筐体の形成態様については、収納部10と制御ユニット11とを一体に覆う筐体としてもよいし、収納部10と制御ユニット11とをそれぞれ別々に覆う筐体として、後から両筐体を一体に連結する構造としてもよい。収納部10と制御ユニット11とを別々の筐体にすることにより、保護箱5の施錠状態を保持して制御ユニット10の基板交換やメンテナンスを行うことも可能となる。
【0020】
図3は電気錠12の平面構造図である。長尺状のカンヌキ22はその略中央部で、鉛直軸である支軸23に回転自在に枢支されており、カンヌキ22の一端に形成された凸状の鉤部22aが前記ツマミ部8と一体に動く係合片8aの係合部8bに係合することにより保護箱5が施錠状態となる。符号24は、係合片8aに当接、非当接となることでツマミ部8の開閉位置を検知するリミットスイッチからなる検知センサである。
【0021】
カンヌキ22の回転の規制および規制解除には2つのソレノイドが関与する。第1ソレノイド(マスターロックソレノイド)25は、伸長状態にあるときのピン25aが、係合部8bと係合状態にあるカンヌキ22の一端の切欠き部22bに係止することにより、カンヌキ22の解錠方向への回転を規制する。ピン25aが縮退すると規制解除となる。ピン25aは非通電時に伸長して通電時に縮退し、その伸長方向は施錠状態のカンヌキ22の延在方向と略平行である。ピン25aには板状の検知片26が取り付けられており、リミットスイッチからなる検知センサ27がこの検知片26に当接することで第1ソレノイド25の作動状態が検知される。また、第1ソレノイド25の故障等を考慮して、ソレノイド本体部と前記検知片26との間には、ピン25aを常に伸長する方向に付勢する圧縮コイルばね28が設けられている。
【0022】
第2ソレノイド29は、そのピン29aの先端が、カンヌキ22における支軸23と一端部との間に形成された鉛直軸の連結軸30を介してカンヌキ22に連結される。なお厳密に言えば、ピン29aの直線運動をカンヌキ22の回転運動に変換するため、連結軸30周りの構造は軸とこの軸の移動を許容する孔(長孔等)とから構成されている。ピン29aが伸長した状態でカンヌキ22の鉤部22aが係合部8bに係合し、縮退した状態で鉤部22aが係合部8bから外れる。ピン29aは非通電時に伸長して通電時に縮退し、その伸長方向は第1ソレノイド25のピン25aの伸長方向と直交している。このようにカンヌキ22に対して2つのソレノイドの伸長方向を互いに異ならせることにより、たとえ保護箱5が一方向に大きな振動や衝撃を受けても、少なくとも一方のソレノイドが正常に維持されやすくなるので、蓋9の施錠が確実に維持される。また、第2ソレノイドの故障等を考慮して、保護箱5に固設した図示しない固定部材とカンヌキ22の一端部との間には、カンヌキ22を常に施錠方向に付勢する圧縮コイルばね31が設けられる。
【0023】
機械錠18は、顧客が鍵を用いて保護箱5を開ける場合に使用する。機械錠18としては公知のシリンダー錠が適用され、カンヌキ22の他端側に係合している。顧客が図示しない鍵を鍵差込口に差し込み、回すことでカンヌキ22が解錠方向に回転し、ツマミ部8が開方向に回転可能な状態となる。なお、鍵を差し込むとき、つまり保護箱5を利用しようとするときには、後記するように電源供給部16を介して第1ソレノイド25が通電状態となるので、ピン25aは縮退し、鍵によるカンヌキ22の解錠方向への回転が可能となる。
【0024】
図4に保護箱5の蓋9を施解錠するための貸金庫システム全体の一構成例を示す。先ずブース側(操作装置6側)においては、顧客個々を特定する顧客確認情報を入力するための顧客確認情報入力部51および各種情報を表示する表示部52が備えられ、その具体例として前記したタッチパネルによる入力方式の操作パネル7(図1)が挙げられる。保護箱5の蓋9を解錠するための暗証番号などの顧客確認情報は顧客が自由に設定できるものである。顧客確認情報入力部51で入力された顧客確認情報は受信部53で受信された後、暗号部54で暗号処理されて送信部55から保護箱5に送信される。保護箱5から送信された各種情報は受信部56で受信され、復号部57、演算部58を経て表示部52に表示される。他に、ブース側(操作装置6側)には、各コンピュータプログラムを格納したプログラムメモリ59、保護箱5への給電制御を行う給電制御部60、保護箱5が保護箱利用口4に到着したことを検知する保護箱検知部61が備えられる。
【0025】
保護箱5側においては、ブース側から送信される顧客確認情報を受信する受信部62と、復号処理する復号部63と、復号化された顧客確認情報と予め登録されている顧客登録情報とを照合する照合部13と、照合部13で両情報が一致したときに第2ソレノイド29および表示部(解錠ランプ20)を作動させる制御部14とを備える。照合部13はCPUから構成される。具体的なソレノイド(第1ソレノイド25、第2ソレノイド29)の作動を以下に述べる。まず保護箱5がブース1の保護箱利用口4へ搬送され、電源供給部16を介して操作装置6側から給電されると第1ソレノイド25が作動し、電源ランプ19が点灯し、第1ソレノイド25とカンヌキ22との係合が解除される。次に操作装置6から入力される顧客確認情報がデータ通信部17を介して保護箱5の照合部13へ送信され予め記憶部15に記憶されている顧客登録情報と照合し、照合一致の場合、第2ソレノイド29が作動し、カンヌキ22とツマミ部8との係合が解除され、解錠ランプ20が点灯し、保護箱5の蓋9が解錠される。
また、検知部(検知センサ24、27)で得られる保護箱5の開閉履歴等の情報は、暗号部64で暗号処理されて送信部65からブース側に送信される。照合部13では、その他の情報についての照合を行う場合もある。
【0026】
また、保護箱5には、コンピュータプログラムを格納したプログラムメモリ66、顧客登録情報を格納した顧客登録情報格納部67、貸金庫番号を格納した貸金庫番号格納部68、保護箱5の利用履歴等のイベントを格納するイベント格納部69が備わり、さらに保護箱利用口4に到着したときに、例えば操作装置6内の電源70に接続する電源供給部16が備わる。以上において、受信部62および送信部65が前記したデータ通信部17を構成し、プログラムメモリ66、顧客登録情報格納部67、貸金庫番号格納部68、イベント格納部69が前記した記憶部15を構成する。データ通信部17としては、赤外線通信などの非接触方式や、接続端子同士を接触させる接触方式にしてもよい。また、電源供給部16としては、接触式の電源供給部でも非接触式の電源供給部でもよい。
【0027】
その他、保護箱5の記憶部15に保護箱5が収納されている場所を特定する銀行の支店番号などを記憶させてもよく、本実施形態においては、保護箱5がブース1の保護箱利用口4へ搬送され、電源供給部16を介して操作装置6側から給電されるとき、同時にデータ通信部17を介して銀行の支店番号が送信される。そして、記憶部15には、解錠が許可された銀行の支店番号が登録されており、給電時に、データ通信部17を介して送信された銀行の支店番号と記憶部15に登録された銀行の支店番号との照合が行われるようになっている。この照合は前記照合部13を利用することができる。この場合、保護箱5が操作装置6側から給電されるときに銀行の支店番号による照合を行っており、保護箱5の電源供給部16を介して不正に給電するだけでは第1ソレノイド25は作動せず、セキュリティが向上する。また、他の支店に収納している保護箱を単に移し替えた場合は保護箱5の蓋9を解錠することは出来ない。なお、保護箱5に送信する銀行の支店番号は、図示しない上位コンピュータに問い合わせて取得してもよいし、操作装置6内のメモリから取得してもよい。
【0028】
その他、例えば操作装置6(図1)が複数台備えられた貸金庫システムの場合には、記憶部15に操作装置6の装置番号などを記憶させてもよく、この場合、顧客がどの操作装置6を利用したか履歴として残せる。本実施形態においては、保護箱5が電源供給部16を介して操作装置6側から給電されるとき、同時にデータ通信部17を介して操作装置6の装置番号が送信される。そして、記憶部15には、全ての操作装置6の装置番号が登録されており、給電時に、データ通信部17を介して送信された操作装置6の装置番号と記憶部15に登録された操作装置6の装置番号との照合が行われるようになっている。この照合は前記照合部13を利用することができる。なお、保護箱5に送信する操作装置6の装置番号は、図示しない上位コンピュータに問い合わせて取得してもよいし、操作装置6内のメモリから取得してもよい。
【0029】
また、上記の操作装置6(図1)が複数台備えられた貸金庫システムの場合に、記憶部15に、全ての操作装置6の装置番号ではなく、特定の操作装置6の装置番号のみを記憶させてもよい。この場合には、照合部13での照合により顧客は特定の操作装置6を利用することができる。
【0030】
次いで、イベント格納部69に格納されるデータとしては、先ず保護箱5の利用履歴データが挙げられる。利用履歴データとしては、顧客が入力した顧客確認情報、機械錠18による解錠データ等である。また、本実施形態では、検知センサ24、27から出力されるデータや照合部13における照合結果もイベント格納部69に格納される。その他に、図示しない上位コンピュータに問い合わせて顧客番号等の顧客情報、解錠時刻、施錠時刻などを格納してもよい。本発明では、いつ、誰が、顧客確認情報の入力により或いは機械錠により、何番の貸金庫番号の保護箱の蓋を解施錠、開閉したなどの履歴が取れる。
【0031】
以下、本発明に係る貸金庫システムの運用フローを説明する。なお、説明中の符号付きの構成要素については適宜に図1〜図4を参照されたい。
「1.通常利用の場合」
図5は通常利用の場合の貸金庫システムの運用フロー図である。通常利用とは機械錠18の鍵を使用せずにパスワード等の顧客確認情報を入力して保護箱5を開ける場合を指している。ブース1での本人認証(例えば、従来からの顧客が持参する認証カードによる認証)がOKとなれば、保護箱5がブース1の保護箱利用口4へ搬送され、シャッタ4aが開き、電源70と保護箱5の電源供給部16とが接続することにより制御ユニット11に電源が供給される。
【0032】
次に操作装置6は「キー1」を取得する。「キー1」とは例えば銀行の支店番号や操作装置6の装置番号である。操作装置6は図示しない上位システムへ問い合わせて取得した「キー1」或いは操作装置6内のメモリに記憶されている「キー1」を保護箱5のデータ通信部17を介して保護箱5の照合部13へ送り、保護箱5内でこの「キー1」の認証が行われる。照合部13は、送信されてきた「キー1」と予め記憶部15に記憶されている「キー1」との認証(照合)を行う。
【0033】
認証OKの場合、第1ソレノイド25が作動し、ピン25aが縮退することにより第1ソレノイド25とカンヌキ22との係合が解除される。保護箱5は、「キー1」の認証OKの結果と保護箱5の記憶部15に記憶されている前回の履歴情報を操作装置6に送信する。「キー1」の認証OKの結果はイベント格納部69に記憶される。また、検知センサ27の信号に基づき、第1ソレノイド25が作動した旨がイベント格納部69に記憶される。操作装置6の表示部52(操作パネル7)には、前回の履歴情報が表示される。認証NGの場合、保護箱利用口4のシャッタが自動的に閉じられ、操作装置6の操作パネル7に異常が発生したため、銀行員が対応するという旨のメッセージが表示される。
【0034】
次に、操作装置6は「キー2」を取得する。「キー2」としては、操作装置6から入力される暗証番号やパスワードの他、手のひら静脈や指静脈などの生体認証データ、カード情報等が挙げられる。入力された「キー2」は操作装置6から保護箱5のデータ通信部17を介して保護箱5の照合部13へ送られる。照合部13では、送信されてきた「キー2」と予め記憶部15(顧客登録情報格納部67)に記憶されている「キー2」との認証(照合)を行う。
【0035】
認証OKの場合、第2ソレノイド29が作動し、ピン29aが縮退することによりカンヌキ22とツマミ部8との係合が解除され、顧客がツマミ部8を開方向に回すことで蓋9を開けることができる。「キー2」の認証OKの結果は、イベント格納部69に記憶されるとともに、データ通信部17を介して操作装置6に送信される。そして、操作装置6の表示部52(操作パネル7)には保護箱5の蓋9が解錠された旨表示される。
【0036】
保護箱5の蓋9を開け、目的物の出し入れを行い、蓋9を閉めツマミ部8を閉方向に回すと、検知センサ24の信号に基づき、保護箱5の利用履歴、つまり解錠履歴がイベント格納部69に記憶され、システムが停止し、保護箱5の電気錠12は自動施錠される。
なお、「キー2」の認証を3回失敗すると、電気錠12を解錠することはできないようになっており、操作装置6の操作パネル7に暗証番号を3回間違えたという旨のメッセーズが表示され、保護箱利用口4のシャッタが自動的に閉じられ、保護箱5は貸金庫室2内の所定の収納部に自動的に返却される。なお、図5では保護箱5が保護箱利用口4に到着したときに保護箱5に電源が供給され、保護箱5の照合部13に「キー1」が送信され照合を行っているが、電源供給のみで「キー1」が送信されない場合も考えられる。
【0037】
「2.鍵による利用の場合」
図6は機械錠18の鍵を利用する場合の貸金庫システムの運用フロー図である。顧客は保護箱5の蓋9を顧客確認情報を入力して解錠するか機械錠を利用して解錠するか選択できる。機械錠18の鍵を利用する場合としては、他に顧客が暗証番号などの顧客確認情報を忘れてしまった場合や、非常時に銀行員が保護箱5を開ける場合なども考えられる。先ず、ブース1での本人認証(例えば、従来からの顧客が持参する認証カードによる認証)がOKとなれば、保護箱5がブース1の保護箱利用口4へ搬送され、電源70と保護箱5の電源供給部16とが接続することにより、制御ユニット11に電源が投入される。
【0038】
次に操作装置6は「キー1」を取得する。「キー1」とは例えば銀行の支店番号や操作装置6の装置番号である。操作装置6は、図示しない上位システムへ問い合わせて取得した「キー1」或いは操作装置6内のメモリに記憶されている「キー1」を保護箱5のデータ通信部17を介して保護箱5の照合部13へ送り、保護箱5内でこの「キー1」の認証が行われる。照合部13は、送信されてきた「キー1」と予め記憶部15に記憶されている「キー1」との認証(照合)を行う。
【0039】
認証OKの場合、第1ソレノイド25が作動し、ピン25aが縮退することにより第1ソレノイド25とカンヌキ22との係合が解除される。保護箱5は、「キー1」の認証OKの結果と保護箱5の記憶部15に記憶されている前回の履歴情報を操作装置6に送信する。「キー1」の認証OKの結果はイベント格納部69に記憶される。また、検知センサ27の信号に基づき、第1ソレノイド25が作動した旨がイベント格納部69に記憶される。操作装置6の表示部52(操作パネル7)には、前回の履歴情報が表示される。認証NGの場合、保護箱利用口4のシャッタが自動的に閉じられ、操作装置6の操作パネル7に異常が発生したため、銀行員が対応するという旨のメッセージが表示される。
【0040】
次に、保護箱5の機械錠18に図示しない鍵を差し込んで回すと、カンヌキ22とツマミ部8との係合が解除され、ツマミ部8を開方向に回すことで蓋9を開けることができる。検知センサ24の信号に基づき、蓋9が解錠された旨がデータ通信部17を介して操作装置6に送信され、操作装置6の表示部52(操作パネル7)には保護箱5の蓋9が解錠された旨表示される。
【0041】
保護箱5の蓋9を開け、目的物の出し入れを行い、蓋9を閉めツマミ部8を閉方向に回すと、検知センサ24の信号に基づき、保護箱5の利用履歴、つまり解錠履歴がイベント格納部69に記憶され、システムが停止し、保護箱5の電気錠12は自動施錠される。なお、図6では保護箱5が保護箱利用口4に到着したときに保護箱5に電源が供給され、保護箱5の照合部13に「キー1」が送信され照合を行っているが、電源供給のみで「キー1」が送信されない場合も考えられる。
【0042】
以上のように、保護箱5に、顧客がブース1内で入力した顧客確認情報を受信可能とするデータ通信手段(データ通信部17)と、このデータ通信手段(データ通信部17)により受信した顧客確認情報と予め保護箱5毎に付与された顧客登録情報とが一致したときに解錠する電気錠12とを設けた貸金庫システムとすれば、高いセキュリティ性を維持しつつ、銀行に貸与された鍵を使用しなくても保護箱5を開けることができる。
【0043】
また、搬送される保護箱5が保護箱利用口4に到着したときに保護箱5に電源供給する構成とすれば、保護箱5個々にバッテリ等の電源を備える必要もなくなり、バッテリ等の電源切れにより保護箱5の電気錠12が解錠不能となることもない。また、経済的な貸金庫システムを構築できる。
【0044】
データ通信手段(データ通信部17)により受信した顧客確認情報と予め保護箱5毎に付与された顧客登録情報とを照合する照合手段(照合部13)を保護箱5に設ければ、保護箱5内で照合が完結し、照合をするために前記顧客登録情報が保護箱5内から外に出て漏れることがなく、前記顧客登録情報を厳重にセキュリティ管理することができる。また、照合時間が迅速になるので、顧客にとってスピーディーに保護箱5を利用できる。
【0045】
保護箱5の蓋9の開閉状態や第1ソレノイド25の作動状態を検知する検知手段(検知センサ24、27)と、蓋9の開閉履歴や第1ソレノイド25の作動状態を顧客が入力した顧客確認情報による解錠か、機械錠18を利用した解錠であるかと共に記憶する記憶手段(記憶部15)とを保護箱5に設ければ、顧客確認情報を入力し解錠した場合か、機械錠18を利用し解錠した場合かを区別して、保護箱5の蓋9の解施錠履歴や開閉履歴を確実に残すことができる。したがって、顧客が保護箱5内の目的物を出し入れする直前の行動である保護箱5の蓋9の解錠作業について厳重にセキュリティ管理することができる。
【0046】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。非常時、保護箱5が保護箱利用口4に到着していない場合で銀行員が機械錠18を用いて蓋9を開ける場合などには、専用の給電装置を用いて制御ユニット11に電源供給すればよい。また、保護箱5が電源供給部16を介して操作装置6側から給電され、データ通信部17を介して銀行の支店番号などの照合データが送信される場合には、専用の給電装置を利用する場合にも保護箱5の電源供給部16を介して給電すると同時にデータ通信部17を介して銀行の支店番号など照合データを送信する必要がある。その場合、不正に保護箱5の電源供給部16を介して給電するだけでは保護箱5を開けることは出来ず、専用の給電装置が必要となり、より厳重なセキュリティ管理となる。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の貸金庫システムにおけるブース周りの一例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の貸金庫システムに用いられる保護箱の外観斜視図である。
【図3】電気錠の平面構造図である。
【図4】貸金庫システムの構成ブロック図である。
【図5】通常利用の場合の貸金庫システムの運用フロー図である。
【図6】機械錠の鍵を利用する場合の貸金庫システムの運用フロー図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ブース
2 貸金庫室
4 保護箱利用口
5 保護箱
6 操作装置
7 操作パネル
10 収納部
11 制御ユニット
12 電気錠
22 カンヌキ
25 第1ソレノイド
29 第2ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の物品が保護箱に格納され、ブースに設けられた保護箱利用口を介して顧客が前記保護箱を利用する貸金庫システムであって、
保護箱に、顧客がブース内で入力した顧客確認情報を受信可能とするデータ通信手段と、このデータ通信手段により受信した顧客確認情報と予め保護箱毎に付与された顧客登録情報とが一致したときに解錠する電気錠とを設けたことを特徴とする貸金庫システム。
【請求項2】
搬送される保護箱が保護箱利用口に到着したときに保護箱に電源供給する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の貸金庫システム。
【請求項3】
前記顧客確認情報と前記顧客登録情報とを照合する照合手段を保護箱に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の貸金庫システム。
【請求項4】
保護箱の蓋の開閉状態を検知する検知手段と、前記蓋の開閉履歴を記憶する記憶手段とを保護箱に設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の貸金庫システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−52219(P2009−52219A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217855(P2007−217855)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(307011510)株式会社熊平製作所 (12)
【Fターム(参考)】