説明

貼付剤及びその製造方法

【課題】膏体に一切手を触れることがなく貼付することができる、量産性に優れたパップ剤等の貼付剤、及びその製造方法の提供。
【解決手段】(a)二枚の剥離フィルムからなり、
(b)第一剥離フィルムは、その中央部で折り曲げられたV型剥離フィルム形状を有し、V型剥離フィルムの片面が前記膏体面に貼着され、
(c)残りの膏体面には第二剥離フィルムが貼着され、該第二剥離フィルムの端部が前記V型の第一剥離フィルムの折り曲げ部分をカバーする、
貼付剤の製造方法において、
前記支持体に展着された膏体面の少なくとも半分をチューブ状剥離フィルムで貼着し、該チューブ状剥離フィルムを半裁することにより、その中央部で折り曲げられたV型の第一剥離フィルムを形成することを特徴とする前記貼付剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消炎・鎮痛、或いは掻痒治療等を目的としたパップ剤等の貼付剤及びその製造方法に関する。更に詳しくは、健常者のみならず高齢者や握力の低下した患者であっても、剥離フィルムの剥離から貼付剤の貼付までの動作を、一連の作業の中で容易に行うことができ、更に膏体に一切手を触れることなく、安全かつ衛生的に貼付することができる、優れた貼付剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高齢化或いはハードワーク等により生じる腰痛、関節痛、肩こり等の対症療法として、消炎・鎮痛作用を有するパップ剤等が広く利用されている。また近年では、帯状疱疹等の治療に際しても貼付剤が広く利用されるに至っている。
【0003】
従来のパップ剤等の貼付剤1は、例えば図13に示すように、白色や肌色等の支持体2と当該支持体の一面のほぼ全面に展着された粘着性を有する膏体3と、該膏体の全面を被覆する一枚の剥離フィルム4からなる積層構造として構成されているのが一般的である。
【0004】
この一般的な貼付剤の貼付方法(使用方法)としては、例えばパップ剤の場合にあっては、指先でパップ剤の隅を強い力で擦り合わせて剥離フィルム4を、故意にズレさせることにより膏体3の面から剥離させ、その部位が復元しないうちに速やかに膏体を直接指で押さえ、もう片方の指先で、粘着性を有する膏体部同士が貼着しないようにゆっくりと剥離フィルム4を完全に剥がした後、膏体部と支持体を持って患部に貼付していた。
【0005】
また、この種の貼付剤の製造方法としては、基本的には、例えば図14が示すように、支持体ロール25から引き出される支持体2の一面のほぼ全面に、粘着性を有する膏体3を展着させ、膏体面上に剥離フィルムロール55から引き出される剥離フィルム4を貼着させ、積層体となし、積層体を切断60し、規定の寸法に裁断70することにより製造されている。
【0006】
しかしながら、このような膏体の全面を一枚の剥離フィルムで被覆した貼付剤にあっては、膏体面からの剥離フィルムの剥離が困難であり、時として膏体部同士が接着してしまい、貼付剤がスムーズに患部に貼付できない事態が発生していた。
【0007】
かかる問題点を解決するために、例えば図15に示すような貼付剤が提案されている(特許文献1)。この貼付剤1は、白色や肌色等の支持体2と、該支持体の一面のほぼ全面に展着された粘着性を有する膏体3と、該膏体に貼着された、上側剥離フィルム4aと下側剥離フィルム4bの二枚の剥離フィルムで構成されているものである。
【0008】
この貼付剤の貼付方法としては、二枚の剥離フィルムのうち、上側の剥離フィルム4aの掴み部分を指でつまみ、ゆっくりと剥がし、次に下側の剥離フィルム4bの掴み部分を指でつまみ、粘着性を有する膏体部同士が接着しないようにゆっくりと剥離フィルムを完全に剥がした後、膏体部と支持体を持って患部に貼付するものである。
【0009】
この貼付剤の製造方法としては、例えば図16に示すように、支持体ロールから引き出される支持体2の一面のほぼ全面に、粘着性を有する膏体3を展着させ、膏体面に剥離フィルムロール55から引き出される剥離フィルム4を貼着させるが、剥離フィルム4を上側剥離フィルム4aと下側剥離フィルム4bにカット80し、掴み部折り返し81で端部を積層させ、を膏体3に貼着し、積層体となし、積層体を半裁(切断)60した後、規定の寸法に裁断70することにより製造されている。
【特許文献1】特開2001−219622号公報
【0010】
しかしながら、これら上記した従来のパップ剤等の貼付剤では、いまだ以下に記載するような問題点を有するものである。すなわち、
(1)パップ剤等の貼付剤は、支持体の一面のほぼ全面に膏体を展着した後、当該膏体の上面に剥離フィルムを貼着して得られた積層物としての貼付剤の原反を、長方形などの角形状等に裁断して形成しているため、支持体、膏体及び剥離フィルムの積層物の外周断面が同一面化されている。したがって、剥離フィルムを貼付剤の外周縁で膏体から剥がすにあたって、剥がし始める手掛かりがないために、外周縁を手指で器用に擦り合わせる必要があり、高齢者等には剥離作業が困難である。
【0011】
(2)膏体には、患部への接着力を考慮して増粘作用が付与されているため、粘着性が極めて高く、剥離フィルムを剥がすために強い力が必要となる。そのうえ、パップ剤等の貼付剤の両端部を引っ張って剥離フィルムを剥離させるタイプでは、更に強い力が必要となるために、高齢者等にとっては困難な作業となる。
【0012】
(3)また、これらのパップ剤等の貼付剤では、剥離フィルムを全て剥がした後、又は剥がしながら患部に貼着する手段を選択しているために、貼付の際に指先が膏体に直接触れることがあり、粘着性を有する膏体同士の接着や、貼付剤自体がシワになり易く、そのようなことを防止するためにはゆっくり慎重に作業しないと、正しく貼付できないものである。
【0013】
(4)さらに、剥離フィルムの剥離にあたって指先が膏体に直接触れることにより、膏体の粘着力が低下してしまい、貼付後パップ剤等の貼付剤のめくれが懸念される。
【0014】
(5)またさらに、指先が膏体に直接触れることで、膏体が不衛生となり、損傷皮膚への貼付の際には十分注意が必要であり、好ましいものではない。
【0015】
(6)さらに、指先が膏体に直接触れることで、膏体に含まれる薬効成分等が指先に転移する可能性があり、また、膏体によるべとつき等の不快感のために、十分な洗浄が必要である。
【0016】
(7)また、上記した図16に示した貼付剤の製造方法においては、下側剥離フィルム4bの掴み部分は、インラインで折り曲げる際に、反発を防ぐことを目的とし、折り曲げ部分を超音波シール等で加熱して素材を軟化させ、更に任意の寸法に折り曲げてニップロール等で形成させていたために、高融点の素材には不向きなものであり、素材が限定され、更に機械停止又は稼働再開時等の際は、品質が不安定になり、十分な確認や管理等の配慮が必要であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記した従来の貼付剤が有する問題点を解決し、健常者のみならず高齢者や握力の低下した患者であっても、剥離フィルムの剥離から貼付までの動作を、一連の作業の中で容易に行うことができると共に、膏体に一切手を触れることがなく、安全かつ衛生的に貼付することができる、量産性に優れたパップ剤等の貼付剤、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる課題を解決するための基本的態様として、請求項1に記載の発明は、
(a)膏体面に貼着される剥離フィルムが二枚の剥離フィルムからなり、
(b)第一剥離フィルムは、その中央部で折り曲げられたV型剥離フィルム形状を有すると共に、その折り曲げられたV型剥離フィルムの片面が、折り曲げ部を膏体の中央部に向かうように前記膏体面に貼着され、
(c)残りの膏体面には第二剥離フィルムが貼着されると共に、該第二剥離フィルムの端部が前記V型の第一剥離フィルムの折り曲げ部分をカバーするものである、
支持体と、該支持体の一面のほぼ全面に展着された粘着性を有する膏体と、該膏体面に貼着される剥離フィルムの積層構造を有する貼付剤の製造方法において、
前記支持体に展着された膏体面の少なくとも半分をチューブ状剥離フィルムで貼着し、該チューブ状剥離フィルムを半裁することにより、その中央部で折り曲げられたV型の第一剥離フィルムを形成することを特徴とする前記貼付剤の製造方法;
である。
【0019】
より具体的には、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、残りの膏体面に貼着する第二剥離フィルムがシート状の剥離フィルムであって、第一剥離フィルムの折り曲げ部をカバーする端部形状が、直線、波型又は山型の曲線若しくはそれらの組み合わせ形状であることを特徴とする貼付剤の製造方法である。
【0020】
さらに別の具体的な請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、残りの膏体面に貼着する第二剥離フィルムがチューブ状剥離フィルムであって、該チューブ状剥離フィルムを半裁することにより折り曲げられたV型の第二剥離フィルム形状とし、当該折り曲げ部が第一剥離フィルムの折り曲げ部をカバーするようにしたことを特徴とする貼付剤の製造方法である。
【0021】
また、さらに具体的な請求項4に記載の発明は、第一剥離フィルム及び/又は第二剥離フィルムが、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンのプラスチックフィルム、紙、合成紙、合成樹脂を単体又はラミネートした複合フィルム、或いはアルミ箔、蒸着フィルムをラミネートした複合フィルムからなるものである貼付剤の製造方法である。
【0022】
さらに、請求項5および6に記載の発明は、第一剥離フィルム及び/又は第二剥離フィルムがシリコン加工されたもの、或いはエンボス加工されたものである貼付剤の製造方法である。
【0023】
また、本発明の別の態様として、請求項7に記載の発明は、上記した請求項1ないし6に記載された製造方法により製造された貼付剤である。
【0024】
本発明が提供する製造方法により製造される貼付剤は、上記したように、膏体面を第一剥離フィルム及び第二剥離フィルムの2枚の剥離フィルムにより貼着し、そのなかでもチューブ状剥離フィルムにより貼着し、該チューブ状剥離フィルムを半裁することにより、少なくとも膏体面に貼着される第一剥離フィルムがV型を有する第一剥離フィルムとして形成され、他面を掴み部として構成した点、さらに第二剥離フィルム、すなわち、上側の剥離フィルムにも掴み部を設けた点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0025】
上記したように、本発明が提供する貼付剤は、第二剥離フィルム、すなわち、上側の剥離フィルムに掴み部を設けていることから、手指で容易に掴むことができ、弱い力で安全かつ容易に上側の第二剥離フィルムを剥がすことができる。
次いで、下側のV型を有する第一剥離フィルムの掴み部と支持体との積層物を指で掴み、第一剥離フィルムの掴み部を滑らせるように貼付剤外側方向に引き剥がすことで、露出した膏体が自然に患部に貼着されることとなる。
【0026】
したがって、剥離フィルムの剥離の際、剥がし始める手がかりを強い力で作る必要がないので、力の弱い高齢者等でもスムーズに剥離フィルムを剥離することができ、片手で剥離から貼付までの一連の作業を容易に行うことができる利点を有している。
【0027】
また、剥離フィルムの剥離から患部に対する貼付までの作業中で、膏体が手指等に一切触れることがないことより、膏体自体の粘着力及び皮膚追随性を損なわないものであり、膏体への汚染が無いことから、衛生的に損なわれず、皮膚損傷部位への適用の貼付剤としても安全な貼付剤が提供される利点を有している。
さらにまた、手指のべとつきが一切無いことから、極めて衛生的に貼付が行えると共に、手指の洗浄等は特に必要としない利点を有している。
【0028】
また、チューブ状剥離フィルムを用いることで、フィルムの蛇行や機械停止、或いは稼働再開時等の際でも、品質は一定し、製造操作に特別な配慮を必要としない利点を有している。したがって、本発明が提供する製造方法は、量産性に優れたものであり、コスト削減が図れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の貼付剤で使用する剥離フィルムとしては、無延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の樹脂フィルム、紙、合成紙、合成樹脂を単体又はラミネートして複合させたものや、アルミ箔、蒸着フィルムと上記素材をラミネートさせたもの、及び上記単一素材又は複合素材にシリコン加工やエンボス加工、更には印刷又は着色を施したものを用いることができる。
【0030】
本発明で使用するチューブ状剥離フィルム素材の製膜方法は、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法、流延法等があるが特に限定されない。しかしながら、チューブ状フィルムとするためには、インフレーション法以外はチュービング加工が必要になるために、単一で溶着できない素材は、ヒートシールを可能にするために、シール層を積層させる必要がある。
【0031】
剥離フィルムの厚みは10〜200μm、好ましくは25〜75μmの範囲である。剥離フィルムの厚みが25μm未満であると、その薄さによりフィルム自体が掴み難くなり、また貼付剤の製造時にあたって、フィルムにシワが発生し易くなるので好ましいものではない。また、剥離フィルムの厚みが75μmを超えると、貼付剤の製造における裁断性が低下し、貼付剤自体のコストアップの要因となる。さらに、剥離フィルム自体もより高価なものとなり、コストの面から見ても好ましいものではない。
【0032】
本発明においては、剥離フィルムには、剥離時における手指のすべりを防止するために、エンボス加工を施すことが好ましい。エンボス加工部は、剥離フィルムの全面または局部的な箇所、例えば、掴み部分等に形成される。
【0033】
このエンボス加工の形状は、特に限定されるものではないが、好ましくは手指が滑ることなく掴み易いものであればよく、ダイヤ柄、格子型、亀甲柄、波形、その他種々の形状に形成されることができる。
【0034】
エンボス加工は、インフレーション法のみチューブ状原反フィルムで加工するが、他の製膜法の場合には、チュービング加工前後のどちらでエンボス加工を施すかは特に限定しない。ただし、凹凸の激しい柄を選択した場合は、チュービング加工後にエンボス加工しないと溶着が困難になるので好ましくない。
【0035】
また、剥離フィルムの剥離方法を明確にするために、第一剥離フィルムと第二剥離フィルムの両者、又はそのいずれか一方に、文字、矢印、記号、イラスト等を表示するか、又は着色等をしてもよい。
【0036】
第二剥離フィルムの掴み部分、すなわち上側の剥離フィルムと下側に位置するV型の第一剥離フィルムの重なり部分(積層部分)としては、10〜30mm程度の幅を有するのが好ましく、更に好ましくは15〜25mm幅が好ましい。この掴み部分が15mm幅未満の場合には、手指でその掴み部分を掴みにくくなり、また製造時の蛇行による作業性の悪化、及び歩留まりが低下傾向となり好ましくない。また、掴み部分が30mm幅を超える場合には、手指による掴み部分の掴みは容易になるものの、コストアップの要因になり、また包装袋へ充填する際に積層部分が捲れ易くなり、好ましいものではない。
【0037】
上側の第二剥離フィルムと下側のV型第一剥離フィルムの積層部分においては、好ましくは文字、矢印、記号、イラスト等を表示、または着色して端部を明確にすることが好ましい。更に、掴み部分だけ他と異なるエンボス加工を施し、より目立つよう配慮することも好ましい。
【0038】
上側の第二剥離フィルムと下側のV型第一剥離フィルムの膏体と貼着する面積比率については、特に限定されない。好ましくは上側の第二剥離フィルム:下側のV型第一剥離フィルム=3:1〜1:3、更に好ましくは1:1〜2:1が好ましい。
【0039】
上側の第二剥離フィルムと下側のV型第一剥離フィルムの面積比率が1:1より小さくなると、上側の第二剥離フィルムを剥離し、膏体部分を患部に貼付し、続いて上側のV型第一剥離フィルムを手指で軽く擦りながら引き剥がす際に、貼付部位をもう片方の手指で圧着させ、脱落防止を配慮する傾向が生じる。更に下側V型剥離フィルムの貼着面積が増えるので、コストアップ傾向となるために好ましくない。
【0040】
また、上側の第二剥離フィルムと下側のV型第一剥離フィルムの面積比率が2:1より大きくなると、上側の第二剥離フィルムを剥離する際に膏体同士が貼着する可能性が生じ、ゆっくり丁寧に剥離フィルムを剥離する配慮が必要になる。更に上側の第二剥離フィルムの掴み部分が下側のV型第一剥離フィルムの掴み部分に近づき、上側の第二剥離フィルムを剥離する際に、上下剥離フィルムの掴み部分を同時に掴んでしまう傾向になることから好ましくない。
【0041】
上側に位置する第二剥離フィルムの掴み部分の端部の切断面は、直線、波型、山型等には限定されない。好ましくは直線〜緩やかな曲線を有する形状であるのが好ましく、凸部が鋭角な形状は剥離フィルムの先端で指先を負傷する恐れがあるので好ましくない。
【0042】
また、下側に位置するV型第一剥離フィルムの掴み部分の端部の切断面も、直線、波型、山型等には限定されない。好ましくは直線〜緩やかな曲線を有する形状で、凸部が鋭角な形状は剥離フィルムの先端で指先を負傷する恐れがあるので好ましくない。更に凸部が鋭角な形状は、製造時の膏体と下側V型剥離フィルムとを貼着する際に凸部が妨げになり歩留まりが低下するので好ましくない。
【0043】
本発明の貼付剤において使用する支持体としては、織布、不織布、ラミネート品等が挙げられ、その伸縮性の有無は限定されない。
【0044】
支持体の具体的な材料としては、紙、綿、大麻、黄麻等の靱皮繊維、マニラ麻等の葉脈繊維等のセルロース繊維、羊毛等の獣毛繊維や、絹繊維、羽毛繊維等のタンパク繊維等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維や再生タンパク繊維等の再生繊維、酢酸セルロース繊維やプロミックス等の半合成繊維、ナイロンアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール繊維、ポリイミド繊維等を挙げることができ、これらの繊維の単体または複合繊維を用いて、織布、不織布に加工し利用することができる。
【0045】
支持体は、その引っ張り強度、厚さ、伸縮性等を貼付部位に応じて、また薬物の支持体への移行等を考慮して、上記材料の中から適宜選択される。
【0046】
貼付剤に使用する膏体は、基剤に薬物を含有等させることにより、外用のパップ剤等の貼付剤として有効に利用させるものである。膏体は、皮膚への薬効効果が十分に得られるように水分を含有し、かつ粘着性を有し、常温またはそれ以上の温度においても軟化せず、膏体が皮膚に残らない適度な凝集性を有するように形成されるものである。
【0047】
膏体に含有される増粘剤としては、膏体に水分を30%〜80%程度安定に保持することでき、かつ保水性を有するような増粘剤が望ましい。このような増粘剤の具体例としては、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、澱粉等の植物系、ザンタンガム、アカシアガム等の微生物系、ゼラチン、コラーゲン等の動物系の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等のデンプン系等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレート等のビニル系、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系、その他ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体等の合成高分子等の水溶性高分子等を好適に用いることができる。
【0048】
そのなかでも、特にポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。このポリアクリル酸ナトリウムは、ゲル強度が強く、かつ保水性に優れるからである。さらに、平均重合度20,000〜70,000のポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。平均重合度が20,000より小さくなるにつれ増粘効果が乏しくなり、十分なゲル強度を得ることができなくなり、また、平均重合度が70,000より大きいと増粘効果が強すぎ、作業性が低下する傾向が現れ、いずれも好ましくない。また、ポリアクリル酸ナトリウムには、前記した水溶性高分子を2種類以上併用すること、例えばポリアクリル酸ナトリウムの強イオン高分子と高分子コンプレックスを形成させ、より一層ゲル強度の大きい弾性ゲルを得ることができる。
【0049】
湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール等をあげることができ、充填剤として、カオリン、酸化亜鉛、タルク、チタン、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム等を添加してもよい。また、溶解補助剤または吸収促進剤を配合することもでき、そのようなものとして、炭酸プロピレン、クロタミトン、l−メントール、ハッカ油、リモネン、ジイソプロピルアジペート等をあげることができる。さらに、薬効補助剤として、サルチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、チモール、ハッカ油、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス等を添加することもでき、必要に応じて、安定化剤や抗酸化剤、乳化剤等を添加してもよい。
【0050】
その他、膏体成分として、膏体をより強固にすると共に、保水性を持たせる目的で、必要に応じて、架橋剤や重合剤を添加してもよい。このような架橋剤は、増粘剤等の種類に応じて適宜選択される。例えば、増粘剤としてポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩を選択した場合は、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物、Ca、Mg、Al等の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸塩、酸化亜鉛、無水珪酸等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物等の多価金属化合物等である架橋剤が好適に使用することができる。
【0051】
また、増粘剤としてポリビニルアルコールを選択した場合には、架橋剤或いは重合剤としてアジピン酸、チオグリコール酸、エポキシ化合物(エピクロルヒドリン)、アルデヒド類、N−メチロール化合物、Al、Ti、Zr、Sn、V、Cu、B、Cr等の化合物等の錯化物等を好適に使用することができる。
【0052】
さらにまた、増粘剤としてポリビニルピロリドンを選択した場合には、架橋剤或いは重合剤としてメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリアシッド化合物又はそのアルカリ金属塩(ポリアクリル酸やタンニン酸及びその誘導体)等を好適に使用することができる。
【0053】
また、増粘剤としてポリエチレンオキサイドを選択した場合には、架橋剤或いは重合剤としてパーキオサイド、ポリスルホンアザイド等が好適に用いられる。また、増粘剤にメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を選択した場合には、架橋剤或いは重合剤として多官能ヒドロキシ化合物、ポリアミン、ヨウ素、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、鉄、水銀、鉛塩等を好適に使用することができる。
【0054】
さらに、増粘剤としてゼラチンを選択した場合には、架橋剤或いは重合剤としてホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン等のアルデヒド類、グルオキサール、ブタジエンオキシド等のジエポキシド類、ジビニルケトン等のジケトン類、ジイソシアネート類等を好適に使用することができる。また、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウムを選択した場合には、架橋剤として、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ホウ酸ナトリウム等の多価金属塩が添加されるのが好ましい。特に亜鉛塩、アルミニウム塩は架橋反応が促進されるので好ましい。
【0055】
架橋剤として添加される多価金属塩の濃度は、増粘剤(又は水溶性高分子)1当量に対して0.5〜1.5当量使用するのが好ましい。多価金属塩の濃度が0.5当量未満であると架橋反応が遅すぎ、ゲル強度が低くなる傾向が現れ、また多価金属塩の濃度が1.5当量を超える場合には、架橋反応が早すぎて、ゲル化が不均一になり、作業性が低下する傾向が現れ、いずれも好ましいものではない。
【0056】
パップ剤としては、皮膚密着性がよいこと、有効成分の皮膚透過吸収性を高めること、水分を可及的に多く含有していること等が要求される。膏体中の水分が蒸発するときに皮膚から熱を奪い、この発熱量が清涼感を与え、また角質層が内部から蒸散してくる水分子によって水和され、薬物の吸収性が促進される。膏体として、常温又はその近辺の温度でもだれないこと、剥がすときに痛くなく、膏体が皮膚に残らないこと、べとつかないこと等が挙げられる。
【0057】
そのためには、膏体は増粘剤5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%、湿潤剤5〜40重量%、充填剤20重量%以下、水分10〜80重量%、溶解補助剤0〜8重量%、薬物5重量%以下、好ましくは0.5〜5重量%配合するのが好ましい。
【0058】
本発明の貼付剤に、有効成分として配合される薬物は、その用途に合わせて種々の薬物が選択され、配合することができる。鎮痛・抗炎症成分としては、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、フェルビナク、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、β−グリチルリチン酸等をあげることができる。
【0059】
血行促進成分として、酢酸トコフェロール、トウガラシエキス、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジル、ベンジルアルコール等をあげることができる。また、抗アレルギー成分としては、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等をあげることができる。さらに、局所刺激成分として、l−メントール、カンフル、ハッカ油、ユーカリ油等、さらに、局所麻酔成分として、リドカイン、ベンゾカイン、ジブカイン、テトラカイン等を挙げることができる。貼付剤に使用される薬物としては、上記のものに限定されるものではなく、また、薬物は必要に応じて2種類以上併用することも可能である。
【0060】
膏体中に配合される薬物の配合量は、患者に適用した際にあらかじめ設定された有効量を患部に適用できるように、パップ剤等の貼付剤の種類、用途に応じて適宜選択される。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を具体的実施例となるいくつかの実施形態により、図面を参照しながら説明する。
【0062】
[実施の形態1]
図1に、本発明の一つの実施例である、実施の形態1におけるパップ剤等の貼付剤を示した。図1の(I)はその斜視図であり、図1の(II)は側面図である。
【0063】
図1に示した実施例における貼付剤であるパップ剤1は、伸縮性を有する不織布からなる支持体2と、該支持体2の表面の略全面に展着された膏体3と、及び膏体3の膏体面に貼着される二枚の剥離フィルム41及び42とからなる積層物としての基本的構成を有するものである。
【0064】
本パップ剤1の膏体3面に貼着される二枚の剥離フィルムのうち、その下側に位置する第一剥離フィルム41は、その中央部で折り曲げられたV型剥離フィルム形状を有しており、その折り曲げられたV型第一剥離フィルム41の片面は、折り曲げ部44が膏体の中央部に向かうように前記膏体面の端部から貼着されており、V型剥離フィルムの他面は掴み部45として構成されている。
【0065】
一方、膏体面に貼着される二枚の剥離フィルムのうち、その上側に位置する第二剥離フィルム42は、その中央部で折り曲げられたV型剥離フィルム形状を有しており、その折り曲げられたV型第二剥離フィルム42の片面は、残りの膏体面を貼着すると共に、該第二剥離フィルムの折り曲げ部47が下側に位置するV型第一剥離フィルム41の折り曲げ部44をカバーするように積層され、他面は掴み部46として構成されている。
【0066】
この実施例においては、例えば、支持体2の表面の略全面に展着された膏体3としては、ポリアクリル酸ナトリウム等からなる膏体3であり、膏体3中には、薬効成分として、例えば消炎鎮痛剤であるフェルビナク等の薬物や水分等を含有されている。
【0067】
かかる膏体の膏体面に貼着される剥離フィルム41及び42としては、例えば本実施例においては、厚み30〜50μmを有する無延伸ポリプロピレンからなるチューブ状剥離フィルムを略半面に貼着された重なり部48を設け、且つダイヤ柄エンボス加工が施された上側第二剥離フィルム42と、残る略半面に貼着された厚み30〜50μmを有する無延伸ポリプロピレンからなるチューブ状剥離フィルムにダイヤ柄エンボス加工が施された下側第一剥離フィルム41として構成されている。かかる第一剥離フィルム41及び第二剥離フィルム42共に、チューブ状剥離フィルムを半裁したV型剥離フィルム形状を有している。
【0068】
本実施例においては、上側に位置する第二剥離フィルム42と下側に位置するV型第一剥離フィルム41の膏体3に対する貼着面積比率は、1:1とされている。また、上側に位置する第二剥離フィルム42の第一剥離フィルムに対する積層部となる重なり部分48は、好ましくは、15〜25mm幅の範囲内になるようにされている。
【0069】
この実施例に基づく貼付剤であるパップ剤1の製造方法における工程の概略図を、図2として示した。
すなわち、支持体ロール25から引き出される支持体2に粘着性を有する膏体3を展着し、その膏体面を、剥離フィルムロール55から、上側の第二剥離フィルム42となるチューブ状剥離フィルム及び下側の第一剥離フィルム41となるチューブ状剥離フィルムを貼着し、積層体とし、該積層体を、チューブ状剥離フィルムが切断60されるよう半裁し、その後所定の寸法に裁断70して製造することができる。
【0070】
かかる実施例に基づく本発明の貼付剤であるパップ剤1を、患部に貼着する場合の使用方法を、以下に説明する。
【0071】
図3は、本発明の上記実施例のパップ剤1における、上側に位置する第2剥離フィルム42を剥離する作業を示す、概略斜視図である。
図4は、本発明の上記実施例のパップ剤1の上側に位置する第二剥離フィルム42を剥離させて、ほぼ半面の膏体3を露出した面を患部に貼付する作業を示す、概略側面図である。
図5は、図4の作業に続いて、残された下側に位置するV型第一剥離フィルム41を引き剥がしながら膏体3を患部に貼付する作業を示す、概略側面図である。
【0072】
すなわち、まず、図3に示すように、パップ剤1の上側に位置する第二剥離フィルム42の掴み部分46を手指(図示せず)で持ち、上側第二剥離フィルム42を剥離させていく。第二剥離フィルム42を全て剥離すると、第二剥離フィルム42が貼着されていた膏体3の膏体面(膏体3の半分の面)が露出されてくる。
【0073】
続いて、図4に示すように、露出した膏体面を患部に貼付した後、支持体2と下側に位置するV型第一剥離フィルム41の掴み部45を一緒に掴む。
【0074】
その後、図5に示すように、下側に位置するV型第一剥離フィルム41の掴み部45に接触した手指を、パップ剤外側方向に滑らせながら、第一剥離フィルム41を引き剥がすことで、露出する膏体3が自然に患部に貼付することとなる。
【0075】
これにより、剥離フィルムの剥離からパップ剤の貼付までの作業を、一連の動作の中で容易に行うことが可能となり、更に膏体に手指が一切触れることなく、安全かつ衛生的に貼付することができるのである。
【0076】
[実施の形態2]
図6に、本発明の別の実施例である、実施の形態2におけるパップ剤等の貼付剤を示した。図6の(I)はその斜視図であり、図6の(II)は側面図である。
なお、図中の符号は、図1に示した符号と同一の意味を有する。
【0077】
本実施例においては、パップ剤1は、それを構成する支持体2、支持体2の全面に展着する膏体3、及び膏体3の膏体面に貼着される二枚の剥離フィルム41、42からなる積層物としての構成は、先の実施例と同一であるが、本実施例においては、例えば、支持体2の表面の略全面に展着された膏体3としては、ポリアクリル酸ナトリウム等からなる膏体3であり、膏体3中には、薬効成分として、例えば消炎鎮痛剤であるインドメタシン等の薬物や水分等を含有されている。
【0078】
また、本実施例においては、二枚の剥離フィルム41、42として、上側の第二剥離フィルム42としては、30〜50μm厚の無延伸ポリプロピレンフィルムであり、さらに亀甲柄のエンボス加工を施した剥離フィルムを選択している。
【0079】
一方、下側の第一剥離フィルム41としては、無延伸ポリプロピレンフィルムであり、さらにダイヤ柄のエンボス加工を施したチューブ状剥離フィルムを半裁したものを選択している。
【0080】
なお、この実施例においても、上側に位置する第二剥離フィルム42と下側に位置するV型第一剥離フィルム41の膏体3に対する貼着面積比率は、1:1とされている。また、上側に位置する第二剥離フィルム42の第一剥離フィルムに対する積層部となる重なり部分48は、好ましくは、15〜25mm幅の範囲内になるようにされている。
【0081】
この実施例に基づく貼付剤であるパップ剤1の製造方法における工程の概略図を、図7として示した。
すなわち、支持体ロール25から引き出される支持体2に粘着性を有する膏体3を展着し、その膏体面を、第二剥離フィルムロール55から、上側の第二剥離フィルム42となるチューブ状剥離フィルム、及び第一剥離フィルムロール55から、下側の第一剥離フィルム41となるチューブ状剥離フィルムをそれぞれ引き出し、貼着し、積層体とし、該積層体を、チューブ状剥離フィルムが切断60されるよう半裁し、その後所定の寸法に裁断70して製造することができる。
【0082】
本実施例におけるパップ剤1の患部に対する貼付方法は、上記した先の実施例の方法と同様にして行われる。
なお、図8に本発明の上記実施例のパップ剤1における、上側に位置する第2剥離フィルム42を剥離する作業状態を概略斜視図として示したが、その後の貼付操作は、先の実施例の場合と同様である。
【0083】
[実施の形態3]
図9に、本発明のさらに別の実施例である、実施の形態3におけるパップ剤等の貼付剤を示した。図9の(I)はその斜視図であり、図9の(II)は側面図である。
なお、図中の符号は、図1に示した符号と同一の意味を有する。
【0084】
本実施例においては、パップ剤1は、それを構成する支持体2、支持体2の全面に展着する膏体3、及び膏体3の膏体面に貼着される二枚の剥離フィルム41、42からなる積層物としての構成は、先の実施例と同一であり、また、支持体、膏体及び上側の第二剥離フィルム42と下側の第一剥離フィルム42の膏体に対する貼着面積比率、更には各々の掴み部寸法は、実施の形態2と同様なものであるため説明を省略する。
【0085】
実施の形態2と異なるのは、上側の第二剥離フィルム42及び下側の第一剥離フィルム41が、共に25〜38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに10〜30μmの低密度ポリエチレンフィルムをラミネートし、さらにシリコン処理すると共に、ダイヤ柄エンボス加工施された剥離フィルムを選択したこと、また、上側の第二剥離フィルム41の掴み部分46の切断面を波形としたことである。
【0086】
この実施例に基づく貼付剤であるパップ剤1の製造方法における工程の概略図を、図10として示した。
すなわち、支持体ロール25から引き出される支持体2に粘着性を有する膏体3を展着し、その膏体面を、第二剥離フィルムロール55から、上側の第二剥離フィルム42となるチ剥離フィルム、及び第一剥離フィルムロー55から、下側の第一剥離フィルム41となるチューブ状剥離フィルムをそれぞれ引き出し、貼着し、積層体とし、該積層体を、チューブ状剥離フィルムが切断60されるよう半裁し、その後所定の寸法に裁断70して製造することができる。
なお、上側の第二剥離フィルム42の端部は、波形となるようカット80されている。
【0087】
以上のように構成された本実施の形態3の貼付剤における使用方法については、実施の形態2と同様なものであるため説明を省略する。
ただし、上側の第二剥離フィルム42と下側の第一剥離フィルム41の素材を、25〜38μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムにした場合には、無延伸ポリプロピレンフィルムよりも耐屈曲性が高いために、上下の第二及び第一剥離フィルムの掴み部を掴む際に、特に上側の第二剥離フィルム42で誤って手指を損傷する可能性がある。これを防止するために、端部の切断面を波形にしたことで、手指が損傷する可能性を極めて低減させることができる。
【0088】
なお、掴み部の端部の形状は、本実施例のような波形に限定されるものではなく、山型の曲線若しくはそれらの組み合わせ形状であってもよいことは、いうまでもない。
そのような変形例を、図11及び図12に示した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上記載のように、本発明が提供する貼付剤は、膏体面を第一剥離フィルム及び第二剥離フィルムの2枚の剥離フィルムにより貼着し、両剥離紙に掴み部を設け、この掴み部を指で容易に掴むことで、弱い力で安全かつ容易に剥離フィルムを剥がすことができ、片手で剥離から貼付までの一連の作業を容易に行うことができる。
【0090】
特に、剥離フィルムの剥離から患部に対する貼付までの作業中で膏体が手指等に一切触れることがなく行い得る点で、膏体自体の粘着力及び皮膚追随性を損なわないものであり、膏体への汚染が無いことから、衛生的に貼付が行えるものであり、その産業上の貢献度は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施例である、実施の形態1におけるパップ剤を示した図であり、(I)はその斜視図であり、(II)は側面図である。
【図2】上記実施例に基づく貼付剤であるパップ剤の製造方法における工程の概略図である。
【図3】本発明の上記実施例のパップ剤における、上側に位置する第2剥離フィルムを剥離する作業示す、概略斜視図である。
【図4】本発明の上記実施例のパップ剤の上側に位置する第二剥離フィルムを剥離させて、ほぼ半面の膏体を露出した面を患部に貼付する作業を示す、概略側面図である。
【図5】図3の作業に続いて、残された下側に位置するV型第一剥離フィルムを引き剥がしながら膏体を患部に貼付する作業を示す、概略側面図である。
【図6】本発明の別の実施例である、実施の形態2におけるパップ剤を示した図であり、(I)はその斜視図であり、(II)は側面図である。
【図7】本発明の別の実施例に基づく貼付剤であるパップ剤の製造方法における工程の概略図である。
【図8】本発明の別の実施例に基づく貼付剤であるパップ剤における、上側に位置する第2剥離フィルムを剥離する作業状態を示した概略斜視図である。
【図9】本発明のさらに別の実施例である、実施の形態3におけるパップ剤を示した図であり、(I)はその斜視図であり、(II)は側面図である。
【図10】本発明のさらに別の実施例に基づく貼付剤であるパップ剤の製造方法における工程の概略図である。
【図11】掴み部の端部の変形例を示す図である。
【図12】掴み部の端部の変形例を示す図である。
【図13】従来のパップ剤を示した図であり、(I)はその斜視図であり、(II)はその側面図である。
【図14】従来のパップ剤の製造方法における工程の概略図である。
【図15】別の従来のパップ剤を示した図であり、(I)は斜視図であり、(II)は剥離紙を剥がした状態を示した斜視図であり、(III)は側面図である。
【図16】別の従来のパップ剤の製造方法における工程の概略図である。
【符号の説明】
【0092】
1 パップ剤(貼付剤)
2 支持体
3 膏体
4 剥離フィルム
41 第一剥離フィルム
42 第二剥離フィルム
44 折り曲げ部
45 掴み部
46 掴み部
48 重なり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)膏体面に貼着される剥離フィルムが二枚の剥離フィルムからなり、
(b)第一剥離フィルムは、その中央部で折り曲げられたV型剥離フィルム形状を有すると共に、その折り曲げられたV型剥離フィルムの片面が、折り曲げ部を膏体の中央部に向かうように前記膏体面に貼着され、
(c)残りの膏体面には第二剥離フィルムが貼着されると共に、該第二剥離フィルムの端部が前記V型の第一剥離フィルムの折り曲げ部分をカバーするものである、
支持体と、該支持体の一面のほぼ全面に展着された粘着性を有する膏体と、該膏体面に貼着される剥離フィルムの積層構造を有する貼付剤の製造方法において、
前記支持体に展着された膏体面の少なくとも半分をチューブ状剥離フィルムで貼着し、該チューブ状剥離フィルムを半裁することにより、その中央部で折り曲げられたV型の第一剥離フィルムを形成することを特徴とする前記貼付剤の製造方法。
【請求項2】
残りの膏体面に貼着する第二剥離フィルムがシート状の剥離フィルムであって、第一剥離フィルムの折り曲げ部をカバーする端部形状が、直線、波型又は山型の曲線若しくはそれらの組み合わせ形状であることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤の製造方法。
【請求項3】
残りの膏体面に貼着する第二剥離フィルムがチューブ状剥離フィルムであって、該チューブ状剥離フィルムを半裁することにより折り曲げられたV型の第二剥離フィルム形状とし、当該折り曲げ部が第一剥離フィルムの折り曲げ部をカバーするようにしたことを特徴とする請求項1に記載の貼付剤の製造方法。
【請求項4】
第一剥離フィルム及び/又は第二剥離フィルムが、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンのプラスチックフィルム、紙、合成紙、合成樹脂を単体又はラミネートした複合フィルム、或いはアルミ箔、蒸着フィルムをラミネートした複合フィルムからなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の貼付剤の製造方法。
【請求項5】
第一剥離フィルム及び/又は第二剥離フィルムがシリコン加工されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の貼付剤の製造方法。
【請求項6】
第一剥離フィルム及び/又は第二剥離フィルムがエンボス加工されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の貼付剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により製造された貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−175300(P2007−175300A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377554(P2005−377554)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000215958)帝國製薬株式会社 (44)
【Fターム(参考)】