説明

貼付剤用基剤及びそれを用いた貼付剤

本発明は、高含水率で接着性、保型性を備え、膏体の滲み出しが無く、皮膚刺激性を回避し、しかも膏体の残留がなく皮膚からきれいに剥がすことができる貼付剤用基剤及びそれを用いた貼付剤である。すなわち、本発明は、(a)構成単量体の1〜30モル%が2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、70〜99モル%がアクリル酸であり、酸の20〜60モル%が中和されており、微粉末状で未反応単量体の含有率が0.5質量%以下である水溶性共重合体、(b)多価アルコール、(c)多価金属化合物、および(d)水を必須成分とする貼付剤用基剤及び当該基剤を用いてなる皮膚用貼付剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、貼付剤用基剤並びにその基剤、薬剤及び水分などからなる膏体を不織布等の支持体に施してなる貼付剤に関するものである。より具体的には、水分を高含水率で含有し、長時間冷却効果を維持できると共に、薬剤の経皮吸収性に優れ、接着性、展延性、保型性及び耐熱性を備えた貼付剤用基剤、およびその基剤を支持体上に施してなる貼付剤に関するものである。
【背景技術】
親水性又は水溶性ポリマー及び水を主成分とする基剤に、保湿剤や薬剤などを含有させた膏体を不織布などの支持体上に展着した貼付剤が広く用いられ、その用途も拡大している。それに伴って、薬剤の経皮吸収性の向上や冷却時間の持続性の向上などを目的として、高含水率の貼付剤用基剤の研究、開発が進められている。本発明において、基剤とは、薬効成分を保持する物質を意味する。
親水性の貼付剤用基剤には、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースやポリアクリル酸(塩)などの親水性ポリマーが用いられている。一般的に親水性の基剤は非水系の基剤に比して、皮膚に対する安全性が高く、保水性に優れているが、粘着力が不十分である。粘着力を上げようとすると、親水性ポリマーの凝集力が低下し、膏体を皮膚から剥がす際に皮膚に膏体が残留し易くなるという問題がある。
親水性の基剤において、従来の親水性ポリマーに代え、架橋型の親水性ポリマーを用いたり、親水性ポリマーの基剤中に多価金属塩を添加することで分子間架橋を生じせしめ、基剤の接着性や保型性の向上が試みられている。
例えば、スルホン酸基を有する架橋型ポリマーから構成される基剤として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)及びアクリル酸(塩)を、多官能性架橋剤の存在下で共重合して得られる架橋型水溶性ポリマーからなるパップ剤(特開平4−91021号公報)や、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、アクリル酸(塩)及びエチレン性不飽和結合を2個以上有する架橋性単量体を架橋重合して得た架橋型親水性ポリマーが開示されている(特開平9−124466号公報)。
このような架橋型親水性ポリマーを用いた膏体は、膏体を構成する粒状のゲル粒子自体にある程度の保型性はあるが、各々のゲル粒子には流動性が無い。そのために、これらのゲル粒子を含む膏体は支持体上への展延性に劣り、膏体層の表面を滑らかに仕上げ難い。また、各々のゲル粒子が完全に架橋されているため、膏体は接着力に乏しくなる。そこで、接着力を上げるために支持体に展延した後の架橋反応を緩和すると、膏体の保型性が不足して、接着力と保型性を両立させることができず、貼付剤としては十分に機能しなくなる。
また、ポリアクリル酸(塩)に加えて、スルホン酸基を有する架橋型高吸水性ポリマーと、分子間架橋を目的とした多価金属化合物を添加した膏体も開示されている。しかしながら、スルホン酸基を有する高吸水性ポリマーの配合量が多い場合には、接着力が不足したり、膏体の表面を滑らかにできない等の問題があった(特開2003−155252号公報)。
一方、ゲル組成物をシート状に賦形する方法には、アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の単量体成分を重合して得られる親水性ポリマーを、薬剤などの成分と均一に混練し、これを支持体に塗布する方法、あるいは親水性ポリマーを構成する原料の単量体、架橋剤及び薬剤、その他の添加物などを予め配合し、支持体又は型枠に流し込んだ状態で紫外線照射等により重合し、賦形する方法がある。
例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)と架橋性単量体を、湿潤剤である多価アルコールと共に、pH5.5以上の水性媒体中で紫外線照射し共重合させることにより、高粘着性ハイドロゲルを得ている(特開平6−200224号公報)。そのほか、エチレン性不飽和結合を有する単量体、薬剤、及び光重合開始剤を含有する組成物を、活性エネルギー線で光重合する経皮吸収製剤用基剤の製造方法(特開平9−124465号公報)や、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸等からなる単官能性単量体、エチレン性不飽和結合を2個以上有する架橋性単量体、保湿剤、薬剤等含む溶液を、フィルム上に塗布し、紫外線を照射することで重合、ゲル化させる方法(特公平5−502239号公報)等がある。
これらの方法は、重合による親水性ポリマーの生成と同時に膏体層が形成されるので、低粘度の単量体溶液の混合が容易で、光重合を採用するため短時間で架橋反応が行える利点がある。しかしながら、紫外線により分解する薬剤を使用できないことや、このような直接的な重合方法により得られる膏体層には、未反応の単量体が多く残り易いという問題があった。また、膏体層自体を精製することも困難である。
上記のように、これまでの貼付剤用基剤では、含水率はある程度上げることはできても、皮膚への接着性の点で劣っていたり、不織布等の支持体から膏体の滲み出しがあったり、貼付剤を皮膚から剥がす際に膏体が皮膚に残留し、きれいに剥がれないなどの問題があり、基剤の皮膚への接着性、保水性、保型性、硬度などの点で十分に満足のゆくものでなかった。
【発明の開示】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、
(a)構成単量体の1〜30モル%が2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、70〜99モル%がアクリル酸であり、酸の20〜60モル%が中和されており、微粉末状で未反応単量体の含有率が0.5質量%以下である水溶性共重合体、
(b)多価アルコール、
(c)多価金属化合物、及び
(d)水
から構成されるゲル組成物が、水分を80質量%以上含有した状態であっても、長時間に渡って冷却効果を維持すること、薬剤の経皮吸収性、接着性、保型性に優れること、展延性に優れて膏体層の表面を滑らかに仕上げられること、且つ適度な硬度を有しており、剥離の際に皮膚に残留し難いことを見出し、本発明を完成した。
以下に本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
1.貼付剤用基剤の構成
本発明の貼付剤用基剤は、
(a)水溶性共重合体
(b)多価アルコール
(c)多価金属化合物、及び
(d)水
を必須成分とする。
(a)水溶性共重合体
水溶性共重合体は、重合体を構成する2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩と、アクリル酸及び/又はその塩からなる単量体混合物、又は前記単量体混合物に所望により加えられる、他の単量体を含んでなる単量体混合物を、架橋剤の非存在下に重合して得られるものである。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩は、膏体に硬度を付与し保型性を維持するために用いられるもので、重合の際の使用量、すなわち、実質的に重合体を構成する量は、水溶性共重合体を構成する全単量体単位の合計モル数を基準として、通常、1〜30モル%である。
1モル%未満では、基剤にアルコールや脂肪酸を配合したり、水分を80質量%以上含有させると、膏体の保型性が不足して支持体から膏体が滲み出し、膏体の硬度が低下して剥がす際に膏体が皮膚に残留し易くなる。
また、30モル%を超えると、剥がす際に膏体が皮膚に残留し難くなるが、接着力が低下するために膏体の接着性と保型性を両立させることが困難になる。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又は、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられ、これらは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を対応するアルカリで中和することにより容易に得られるものである。
アクリル酸及び/又はその塩の量としては、上記と同様に、水溶性共重合体を構成する全単量体単位の合計モル数を基準に、通常、70〜99モル%である。70モル%未満では接着性と保型性を両立し難くなる。また、99モル%を超えると、保型性が不足して支持体から膏体が滲み出し、膏体の硬度が低下して剥がす際に膏体が皮膚に残留し易くなる。
アクリル酸の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又は、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられ、これらはアクリル酸を対応するアルカリで中和することにより容易に得られるものである。
この水溶性共重合体は、前記のとおり、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩、並びにアクリル酸及び/又はその塩を必須構成単量体単位とするが、本発明においては、これらと共に基剤の性能を損なわない範囲(好ましくは、全単体量単位の合計モル数に対して10モル%以下)で、他の単量体を併用したものも含まれるものである。
他の単量体としては、例えば、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸以外の(メタ)アクリルアミドアルキルアルカンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などの不飽和スルホン酸、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
水溶性共重合体の中和率は、20〜60モル%である。中和率が20モル%未満では、膏体のpHが低下し過ぎて皮膚刺激性の点で好ましくない。
また、中和率が60モル%を超えると、接着力が低下するために接着性と保型性を両立できなくなる。
なお、中和率とは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びアクリル酸とそれらの塩の割合を示すものである。
目的の中和率を有する水溶性共重合体は、単量体として酸と塩を用いて重合することにより、あるいは酸の重合中や、得られた酸の重合体をアルカリで中和することにより調製されるものである。
水溶性共重合体中に残存する未反応の単量体の含有率は、重合体総質量に対して0.5質量%以下である。未反応の残存単量体含有率が0.5質量%を超えると、皮膚刺激性があり好ましくない。
水溶性共重合体の分子量は、ポリエチレンオキサイドを基準物質とする水系ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)による重量平均分子量で100万〜2000万のものが好ましい。
分子量が100万未満では、保型性が不足して支持体から膏体が滲み出し、膏体の硬度が低下し、剥がす際に膏体が皮膚に残留し易くなる。分子量が2000万を超えると、水に溶解しないものが増加するため、重合体の水溶性が損なわれる。
本発明に用いられる水溶性共重合体は、微粉末状のものである。固形分は90質量%以上であることが好ましい。固形分が90質量%未満のものでは、多価アルコールに対する重合体の分散安定性が悪化する場合がある。
また、粉末全量を基準にして90質量%以上が粒子径180μm以下の粒子からなり、かつ、75μm以下の粒子が80質量%以下である粒度分布を有する微粉末であることが好ましい。
粒子径が180μm以上の粒子が10質量%を超えると、膏体の表面を滑らかに仕上げることが困難になる場合がある。また、粒子径が75μm以下の粒子が80質量%を超えると分子量が低下し易く、作業性も悪くなる場合がある。
水溶性共重合体の合成には、公知の重合法が採用できる。具体的には、ゲル重合法、水溶液重合法及び逆相懸濁重合法などが挙げられる。
重合開始剤としてはレドックス重合開始剤が好ましい。また、レドックス重合開始剤の替わりに、光重合開始剤を含有させた単量体水溶液に、紫外線等の活性エネルギー線を照射してラジカル重合させることもできる。
重合開始剤の具体例としては、過硫酸ナトリウムや過硫酸カリウム等の過硫酸アルカリ金属塩、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、クメンヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、2,2’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
また、重合に際し、遷移金属塩や亜硫酸水素塩、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)、アミン化合物等のレドックス形成用の還元剤を併用することが好ましい。
また、添加する重合開始剤の量は、使用する重合開始剤の種類や目的とする重合体の組成、重合度、粘度などに応じて調整される。通常、全単量体の合計量を基準にして、5〜10,000ppmが用いられる。好ましくは10〜5,000ppm、特に15〜3,000ppmがより好ましい。
水溶性共重合体の基剤中の含有量は、基剤全量を基準にして、通常、1〜30質量%、好ましくは3〜15質量%である。使用量が1質量%未満の場合には、得られる基剤の保型性や硬度が低下し、皮膚から膏体を剥がす際に、膏体が皮膚に残留し易くなる場合がある。また、30質量%を超えると、得られる基剤の硬度と接着力のバランスがとれなくなる場合がある。
(b)多価アルコール
本発明の貼付剤用基剤は、多価アルコールを必須成分とするもので、この多価アルコールは、保湿剤又は保水剤として作用する。
好適に用いられる多価アルコールの具体例としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
その使用量は、基剤全量を基準にして、通常、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。使用量が1質量%未満の場合は、得られる基剤から水分が揮発して乾燥し、基剤中に薬剤が析出する場合がある。また、50質量%を超えると、得られる基剤の硬度と接着力のバランスがとれなくなる場合がある。
(c)多価金属化合物
本発明の貼付剤用基剤は、多価金属化合物を必須成分とする。この多価金属化合物は多価金属イオンを放出し、放出された多価金属イオンは、(a)水溶性共重合体中のアニオン基(カルボン酸基、スルホン酸基など)とイオン結合することによって架橋構造を形成して、基剤に接着性、ゲル形成能、高含水性、保型性及び硬度などの特性を付与するのである。
かかる多価金属化合物としては、例えば、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン、チタンイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオンなどの多価金属イオンを放出する多価金属化合物を挙げることができる。
本発明の貼付剤用基剤及び貼付剤は、人の皮膚などに直接貼着して用いられるものであって、安全であることが必要である。その点から多価金属化合物としては、安全性に優れるアルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、亜鉛化合物が好ましく用いられる。
好適に用いられる多価金属化合物の具体例としては、アルミニウムサクシネート、アルミニウムグリシネート、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、鉄ミョウバンなどを挙げることができる。また、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
そのうちでも、水酸化アルミニウム、アルミニウムグリシネート、塩化アルミニウムはゲル強度が強くなる点から好ましく、中でもアルミニウムグリシネート又は水酸化アルミニウムが特に好ましい。
その使用量は、基剤全量を基準にして、通常、0.001〜3質量%、好ましくは0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。
多価金属化合物の使用量が0.001質量%未満の場合には、成分(a)水溶性共重合体中のアニオン基と架橋構造を形成し難くなり、基剤に接着性、ゲル形成及び保型性などの特性を付与することが困難になる。また、3質量%を超えると、架橋し過ぎて接着力が不足する場合がある。
(d)水
本発明の貼付剤用基剤は水系で用いられるものである。水としては、通常、精製水等の水が用いられる。
具体的な水の使用量は、貼付剤用基剤に求められる特性に応じて定められる、上記(a)〜(c)成分の量に依存するものであるが、通常、10〜85質量%である。
(e)水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩
本発明の貼付剤用基剤は上記必須成分(a)〜(d)の他に、増粘剤や粘着付与剤として、水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩を配合することが好ましい。
水溶性のポリアクリル酸の塩としては、ポリアクリル酸のカルボキシル基の全て又は一部が塩の形態のものが使用できる。
前記ポリアクリル酸のカルボキシル基の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。なかでも、ナトリウム塩であることが安全性及び生産性の点から好ましい。
好適に使用し得る水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩は、市販されているので、それらをそのまま用いてもよい。
市販の水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩としては、例えば、日本純薬株式会社製の粉末ポリアクリル酸部分中和物(商品名「アロンビスAH−105」)、日本純薬株式会社製の粉末ポリアクリル酸ナトリウム(商品名「アロンビスS」)、日本純薬株式会社製のポリアクリル酸水溶液(濃度20質量%、商品名「ジュリマーAC−10H」)、日本純薬株式会社製の粉末状架橋型ポリアクリル酸(商品名「ジュンロンPW−110」)などを挙げることができる。これらは単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
その使用量は、基剤全量を基準にして、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜15質量%である。
水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩の使用量が1質量%未満の場合には、得られる基剤の皮膚接着性の向上や、膏体のゲル強度の向上に寄与することが少ない。また、30質量%を超えると、得られる基剤の硬度と接着力のバランスがとれなくなる場合がある。
(f)炭素数2〜6の一価アルコール
本発明の貼付剤用基剤には、目的に応じて、炭素数2〜6の一価アルコールを配合することができる。
この炭素数2〜6の一価アルコールは、冷却シートとした場合の清涼化剤や、疎水性の薬剤や添加物を基剤中に均一に溶解させる溶解補助剤として、或いは経皮吸収促進剤として作用する。
上記の炭素数2〜6の一価アルコールとしては、安全性や効果の点から、エタノール、イソプロパノールが好ましく用いられる。特に好ましくはエタノールである。
その使用量は、基剤全量を基準にして、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%である。使用量が20質量%を超える場合には、皮膚に発疹や炎症を生じ易い。
(g)長鎖脂肪酸及び/又はそのエステル
本発明の貼付剤用基剤には、また、目的に応じて長鎖脂肪酸及び/又はそのエステルを配合することができる。この長鎖脂肪酸及び/又はそのエステルは、基剤に配合する疎水性の添加物や、薬剤の溶解補助剤として、或いは薬効成分の経皮吸収性を向上させるために用いられる。
前記長鎖脂肪酸及び/又はそのエステルとしては、安全性や効果の点から、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、並びにそれらのエステルが好ましく用いられる。
その使用量は、基剤全量を基準にして、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。使用量が0.1質量%未満の場合には、疎水性の添加物や薬剤の溶解性の向上に寄与することが少なく、添加物や薬剤が基剤中で析出したり、薬剤の経皮吸収性が低下する場合がある。
上記に記述した成分(e)〜(g)は各々単独で添加使用しても、又は2種以上を併用して上記必須成分(a)〜(d)に添加してもよい。
それらの組合せとしては、以下のようなものが挙げられる。
1)(e)水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩と(f)炭素数2〜6の一価アルコールの組合せ。
2)(e)水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩と(g)長鎖脂肪酸及び/又はそのエステルの組合せ。
3)(f)炭素数2〜6の一価アルコールと(g)長鎖脂肪酸及び/又はそのエステルの組合せ。
4)(e)水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩、(f)炭素数2〜6の一価アルコールと(g)長鎖脂肪酸及び/又はそのエステルの組合せ。
(h)水酸基を有する有機酸又はその塩
さらに、本発明の貼付剤用基剤には、水酸基を有する有機酸又はその塩をも、求められる特性に応じて、併用することもできる。
この水酸基を有する有機酸又はその塩は、上記成分(c)の多価金属化合物が多価金属イオンを放出しやすいように、分子内に有する水酸基とカルボキシル基によって、難溶性金属化合物の溶解を助長するものである。
かかる水酸基を有する有機酸又はその塩としては、皮膚への刺激性や安全性の観点から、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルコン酸及びそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましくは酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及びそれらのアルカリ金属塩である。例えば、酒石酸は、水酸化アルミニウムやアルミニウムグリシネートとの併用によりゲルの硬化速度が速くなる点でも好ましい。
また、その使用量は、基剤全量を基準にして、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜2質量%である。
(i)薬剤又は化粧料成分
本発明の貼付剤用基剤は、医薬貼付剤又は化粧用貼付剤に用いられるもので、かかる用途に使用するに際しては、薬剤又は化粧料成分を配合したものとすることもできる。
かかる薬剤又は化粧料成分としては、例えば、抗炎症剤、鎮痛剤、気管支拡張剤、抗喘息剤や強心剤などの医薬品、美白剤などの化粧料成分などを挙げることができる。
薬剤の具体例としては、例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、スプロフェン、ロキソプロフェン、フェルビナク、プロキシカム、メロキシカム、ツロブテロール、ジフェンヒドラミン、ジブカイン、プロカイン、リドカイン、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコチン、ビタミン類等が挙げられる。
美白剤の具体例としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸ステアリル等のアスコルビン酸誘導体及びその塩、コウジ酸及びその誘導体、カンゾウエキス、プラセンタエキス、ハイドロキノン及びその誘導体、アルブチン、イソフラボン誘導体、p−ヒドロキシ桂皮酸誘導体、ゲラニイン、没食子酸、システイン、グルタチオン、コロイド硫黄、テプノレン、2−クロマノン誘導体、スピロエーテル化合物等が挙げられる。
薬剤又は美白剤の配合比率は、基剤全量を基準にして0.1〜20質量%が好ましい。
(j)その他の成分
本発明の貼付剤用基剤には、上記成分以外にも、貼付剤に一般に用いられる添加物、すなわち使用時の品質を改善するために、酸化防止剤、防腐剤、乳化剤などの、その他の成分の1種又は2種以上を配合することができる。
かかる、その他の成分としては、L−メントール、カンフル、チモール、ハッカ油、ヒマシ油、ウイキョウ油、ダイウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、チアミン油、テレピレン油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、ローズ油等の香料・清涼化剤;唐辛子エキス、サンショウエキス等の温感剤;ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等の防腐剤;乳化剤;カオリン、酸化チタン、無水ケイ酸等の無機粉末などを挙げることができる。
香料・清涼化剤、無機添加物などの配合比率の具体例としては、貼付剤用基剤全量を基準にして、通常、1〜20質量%である。
2.貼付剤用基剤の調製方法
本発明の貼付剤用基剤の調製方法は、特に制限されない。
一般的には、(a)水溶性共重合体、(b)多価アルコール、及び(c)多価金属化合物、並びに成分(e)〜(g)及び成分(j)、更に、目的に応じて(i)薬剤又は化粧料成分を添加し、(h)水酸基を有する有機酸又はその塩を(d)水に溶解させ、これらを混合して室温で均一になるまで混練し、減圧下で脱泡して含水膨潤ゲル(含水ゲル膏体)とするものである。
3.貼付剤用基剤の用途
本発明の貼付剤用基剤は、種々な用途に使用可能である。
例えば、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗喘息剤や強心剤などの医薬品、美白剤などの化粧品及び冷感剤や冷却シート、温感剤や携帯式カイロ等の医療用具や日用品などの領域でも貼付剤用基剤として使用できる。
4.貼付剤用基剤の使用方法及び貼付剤の製造方法
4.1 医薬用又は化粧用皮膚貼付剤
本発明の貼付剤用基剤と、目的に応じた薬剤又は美白剤、及びその他の成分からなる含水ゲル膏体を、不織布、編布、織布、紙、プラスチックフィルム等の支持体上に、展着などにより層状に施す。
ついで、必要に応じて、その表面を、例えばポリエチレンフィルムなどのような離型性のフィルムやシートなどで覆うことによって、医薬貼付剤又は化粧用貼付剤が製造される。これらは皮膚に貼付して使用される。
4.2 医療用具又は日用品
ゲル膏体に、エタノールや水分などを成分とし、これらを十分に保持させた場合には、基剤から水分の蒸発による気化熱で冷感や吸熱効果を持ち、皮膚への冷感、冷却機能を有する。上記4.1同様、不織布やプラスチックフィルムなどの支持体上に施し成型することで、冷感剤や冷却シートなどが調製される。
4.3 その他
さらに、本発明の貼付剤用基剤が耐熱性能を有し、ある程度(例えば温度50〜60℃程度)の高温度下においても保型性能が維持される。したがって、ゲル膏体に、必要に応じて唐辛子エキスなどの温感剤を配合して、上記同様、不織布やプラスチックフィルムなどの支持体上に施し成型することで貼付剤とする。この貼付剤に、酸化鉄を利用した携帯カイロなどの保温成形体などを、適切な接着剤などで貼合わせて、貼るタイプの保温具(貼付カイロ)とすることができる。
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の各例において、特に表示されていない場合の「%」は、「質量%」を意味する。
◎共重合体の合成例1
<共重合体1の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液180.7g(10モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液309.0g(30モル%相当)、アクリル酸170.4g(60モル%相当)及び純水539.9gを混合して、単量体濃度31質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。
この単量体水溶液をステンレス製デュアー瓶(反応容器)に仕込み、反応容器内の温度を10℃に温調しながら30分間窒素バブリングを行った。
ついで、重合開始剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイド30ppm(全単量体の合計量に対しての質量基準に換算、以下同様)、過硫酸ナトリウム200ppm及びエリソルビン酸ナトリウム30ppmを添加し、そのまま8時間放置して断熱静置レドックス重合を行った。
8時間の反応終了後、生成した含水ゲル状重合体を反応容器から取り出し、チョッパーに投入して挽肉状に細断した。
細断された含水ゲルを熱風乾燥機で乾燥し、粉砕機で粉砕した。更に、83meshのステンレス製標準篩(JIS Z 8801、内径200mm、目開き180μm)を用いて180μmよりも大きい粒子を除去した後、仕上げ乾燥して目的とする微粉末状の共重合体1を得た。
◎共重合体の合成例2
<共重合体2の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液356.9g(20モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液203.4g(20モル%相当)、アクリル酸168.3g(60モル%相当)及び純水471.4gを混合して単量体濃度35質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。
それ以外は、合成例1と同様に操作し、目的とする微粉末状の共重合体2を調製した。
◎共重合体の合成例3
<共重合体3の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液507.4g(30モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液192.8g(20モル%相当)、アクリル酸132.9g(50モル%相当)及び純水366.9gを混合して単量体濃度38質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。
それ以外は、合成例1と同様に操作し、目的とする微粉末状の共重合体3を調製した。
◎共重合体の合成例4
<共重合体4の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液179.0g(10モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液204.1g(20モル%相当)、アクリル酸197.0g(70モル%相当)及び純水619.9gを混合して単量体濃度30質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。
それ以外は、合成例1と同様に操作し、目的とする微粉末状の共重合体4を調製した。
◎共重合体の合成例5
<共重合体5の合成>
合成例1と同様に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液180.7g(10モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液309.0g(30モル%相当)、アクリル酸170.4g(60モル%相当)及び純水539.9gを混合して単量体濃度31質量%の単量体水溶液1.2kgを調製して重合した後、細断、乾燥した。
つぎに、微粉末状の共重合体の粒子径がさらに細かくなるように粉砕機の設定を変えて粉砕した。それ以外は、合成例1と同様に操作し、目的とする微粉末状の共重合体5を調製した。
◎共重合体の合成例6
<共重合体6の合成>
合成例1と同様にして重合した後、細断、乾燥した。次に、微粉末状の共重合体の粒子径が粗くなるように粉砕機の設定を変えて粉砕し、粒子径180μmよりも大きい粒子を除去しなかった。それ以外は、合成例1と同様に操作し、目的とする微粉末状の共重合体6を調製した。
なお、試料の一部を83meshのステンレス製標準篩で篩分した。その結果、粒子径180μmよりも大きい粒子は、共重合体全量に対して90質量%であった。
◎共重合体の合成例7
<共重合体7の合成>
合成例5と同様にして重合した後、細断、乾燥した。つぎに、合成例5と同様に、微粉末状の共重合体の粒子径がさらに細かくなるように粉砕機の設定を変えて粉砕した後、200meshのステンレス製標準篩(JIS Z 8801、内径200mm、目開き75μm)を用いて粒子径75μmよりも大きい粒子を除去した。
それ以外は、合成例5と同様に操作し、目的とする微粉末状の共重合体7を調製した。
◎比較共重合体の合成例1
<比較共重合体1の合成>
アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液566.2g(50モル%相当)、アクリル酸156.2g(50モル%相当)及び純水477.6gを混合して単量体濃度30質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。
それ以外は、合成例1と同様に操作し、目的とする粉末状の比較共重合体1を調製した。
◎比較共重合体の合成例2
<比較共重合体2の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液775.1g(50モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液220.9g(25モル%相当)、アクリル酸60.9g(25モル%相当)及び純水143.1gを混合して単量体濃度44質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。
それ以外は、合成例1と同様に操作し、目的とする粉末状の比較共重合体2を調製した。
◎比較共重合体の合成例3
<比較共重合体3の合成>
合成例1と同様の単量体水溶液に、重合開始剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイド300ppm、過硫酸ナトリウム200ppm及びエリソルビン酸ナトリウム300ppm、及び二官能性架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド150ppmを添加した。
それ以外は、合成例1と同様に操作し、目的とする粉末状の比較共重合体3を調製した。
◎比較共重合体の合成例4
<比較共重合体4の合成>
アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液449.8g(40モル%相当)、アクリル酸186.1g(60モル%相当)及び純水564.1gを混合して単量体濃度29質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。それ以外は、合成例1と同様に操作し、目的とする粉末状の比較共重合体4を調製した。
つぎに、合成例1〜7で得られた共重合体1〜7並び比較合成例1〜4で得られた比較共重合体1〜4の物性評価を、以下に示す試験方法に従って行った。
その結果を表1に示す。
[試験方法]
(1)固形分
合成例1〜7並びに比較合成例1〜4で得られた共重合体を、各々1.00gアルミカップに計量し、温度105℃の乾燥機で3時間過熱し、加熱減量から固形分を求めた。
(2)0.2質量%水溶液粘度
純水500mlに合成例1〜7並びに比較合成例1〜4で得られた共重合体を各々1.00gずつ加えて3時間攪拌し、十分に溶解して0.2質量%濃度の共重合体水溶液を調製した。
この共重合体水溶液の粘度をB型粘度計(東京計器(株)製、形式:BM型)により、温度30℃、30rpmのローター回転数で測定した。
(3)重量平均分子量
合成例1〜7並びに比較合成例1〜4で得られた共重合体の分子量は、水系GPC法により測定した。
溶離液には、溶質として硫酸ナトリウム(1.33g/l)と水酸化ナトリウム(0.33g/l)を含む水溶液を用いた。重量平均分子量は、ポリエチレンオキサイドを基準物質として検量線を作成し、算出した。
(4)未反応単量体(残存単量体)の含有率
80容量%アセトニトリル水溶液20mlに、合成例1〜7並びに比較合成例1〜4で得られた共重合体を各々1.00g添加して1時間攪拌した後、1時間静置して抽出を行った。この上澄み液を採取し、高速液体クロマトグラフィー法により測定した。
使用した分離カラムは、(株)日立製作所製HPLCパックドカラム#3056で、溶離液は0.1質量%リン酸緩衝液である。未反応単量体の含有率は共重合体全量に対する質量%で算出した。
(5)粒子径180μm以上の粒子の含有率
合成例1〜7並びに比較合成例1〜4で得られた共重合体を、各々100g秤量し、83meshのステンレンス製標準篩(JIS Z 8801、内径200mm、目開き180μm)で篩分した。粒子径180μm以上の粒子の含有率は、共重合体全量に対する質量%で算出した。
(6)粒子径75μm以下の粒子の含有率
合成例1〜7並びに比較合成例1〜4で得られた共重合体を、各々100g秤量し、200meshのステンレンス製標準篩(JIS Z 8801、内径200mm、目開き75μm)で篩分した。粒子径75μm以下の粒子の含有率は共重合体全量に対する質量%で算出した。

表中の略号は以下のものを示す。
ATBS−Na:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム
A−Na:アクリル酸ナトリウム
AA:アクリル酸
尚、ATBSは東亞合成株式会社の登録商標である。

◎実施例1〜11及び比較例1〜4
[貼付剤の製造方法]
1)貼付剤用基剤の調製
下記の表2−1、2−2、2−3に示す各成分を、表2−1、2−2、2−3に示す割合(質量部)で混合装置(ニーダー)を用いて、室温で均一になるまで混練し、減圧下で脱泡して水性ゲル膏体である貼付剤用基剤を調製した。
2)貼付剤の製造
上記1)で得られた水性ゲル膏体を、伸縮性不織布(目付が105g/mのポリエステル製不織布)に、約1mm(10g/100cm)の厚みで塗布し、剥離フィルムを被せて貼付剤を製造した。
3)包装・成型
上記2)で得られた貼付剤を、ホイルラミネートフィルム2枚を用いて貼付剤の両面方向から挟み込んだ後、フィルムの周囲をヒートシールして気密包装した。
これを、温度25℃、50%RHで240時間保管・成型した。
[貼付剤の評価方法]
成型された貼付剤を、気密包装材から取り出して、以下に示す項目について評価した。
(1)接着性:貼付剤を5名以上の腕に貼り付け、剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その平均値から下記の基準で接着性を評価した。
◎: 剥がれ落ちるまでの平均時間が5時間以上。
○: 剥がれ落ちるまでの平均時間が3時間以上5時間未満。
△: 剥がれ落ちるまでの平均時間が3時間未満。
(2)耐滲み出し性:ポリエステル製不織布の裏面を目視により観察して、下記の基準で評価した。
○: 全く滲み出しがない。
△: 一部に滲み出しがある。
×: 全体に滲み出しがある。
(3)膏体残り:貼付剤を腕に貼り付けてさらに掌で軽く圧着した後、すぐに貼付剤を剥がし取り、腕に残った膏体の有無を目視により観察し、下記の基準で評価した。
○: 膏体が腕に全く残っていない。
△: 膏体の一部が腕に残った。
(4)硬度:約90°に曲げた肘の外側に貼付剤を貼り付け、掌で軽く圧着した後、肘を伸ばして密着状態を目視により観察した。
◎: 浮いた部分が全くなく、良好に密着している。
○: 一部に浮きが見られたが、全体的に安定して密着している。
△: 肘全体に浮いた部分が見られた。
(5)膏体表面の仕上り状態:剥離フィルムを剥がし、貼付剤の膏体表面の仕上り状態を目視により観察して、下記の基準で評価した。
○: 表面が滑らかな平坦であり、良好な仕上りである。
△: 表面に少し凹凸が見られる。
なお、表中の名称は以下のものを示す。
アロンビスAH−105:粉末状ポリアクリル酸部分中和物(日本純薬製)
ジュリマーAC−10H:濃度20質量%ポリアクリル酸水溶液(日本純薬製)
また、「アロンビスAH−105」及び「ジュリマーAC−10H」は、日本純薬株式会社の登録商標である。



表2−1、2−2、2−3で明らかなように、実施例の貼付剤は、比較例に比べて良好な結果が得られた。
すなわち、実施例1〜11において、各々の貼付剤の接着性は極めて良好である。また、実施例1及び4〜11で示されるように、基剤の(a)水溶性共重合体の組成で、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の構成率が10モル%と少ない方が、ゲル膏体の硬度がより確保できた。
さらに、(e)水溶性ポリアクリル酸及びその塩を、基剤に添加した実施例6〜9に示されるように、接着性及び硬度も良好なものであった。
また、(a)水溶性共重合体の粒子径が180μm以上の粗粒や、75μm以下の微細粒を多く含んだ実施例8及び9で、膏体の表面に少々凹凸が見られた以外は、実施例の全てにおいて、滲み出し、膏体の残留もなく膏体の表面仕上りの良好な貼付剤が得られていた。
一方、比較共重合体1を用いた比較例1では、評価を行った接着性、耐滲み出し、膏体残り、硬度及び表面仕上げの全てにおいて問題があった。また、比較共重合体2を用いた比較例2では、接着性及び硬度の点において問題があった。
更に、(a)水溶性共重合体の重合時に多官能架橋剤を添加した比較共重合体3を用いた比較例3では、接着性、硬度及び表面仕上げの点で難があった。また、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含まず、且つ共重合体1と同じ中和率の比較共重合体4を用いた比較例4では、接着性及び表面仕上りの点で難がある。
特に、美白成分のリン酸L−アスコルビルマグネシウムを配合したため、保型性と硬化性が著しく悪化し、不織布全体に滲み出しが生じていた。
◎実施例12〜14及び比較例5〜7
[貼付カイロの作成]
まず、成型された貼付剤と、市販の使い捨てカイロを、それぞれ気密包装材から取り出し、接着剤で前記貼付剤の不織布面と使い捨てカイロを貼り合わせて、評価用の貼付カイロを作成した。
[貼付カイロの評価方法]
上記で作成した貼付カイロを、以下に示す項目について評価した。
(1)初期接着性:作成直後の貼付カイロを5名以上の腰に貼り付けた後、直ちに剥がし、そのときの剥離強度を下記の3段階で評価した。
◎: 十分に安定な接着強度。
○: 十分ではないが、自然には剥がれ落ちない程度の接着強度。
△: 接着強度が不十分で、うまく貼り付かない。
(2)耐熱接着性:作成直後の貼付カイロを5名以上の腰に貼り付けて剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その平均値から下記の基準で、加温状態での耐熱接着性を評価した。
◎: 剥がれ落ちるまでの平均時間が3時間以上。
○: 剥がれ落ちるまでの平均時間が1時間以上3時間未満。
△: 剥がれ落ちるまでの平均時間が1時間未満。
(3)耐熱膏体残り性:作成直後の貼付カイロを5名以上の腰に貼り付けて、剥がれ落ちないようにサポーターで固定して5時間貼り付けた後、剥がし取り、皮膚に残った膏体の有無を目視により観察して、下記の基準で加熱状態の耐熱膏体残り性を評価した。
○: 膏体が皮膚に全く残っていない。
△: 膏体の一部が皮膚に残った。
(4)耐汗接着性:作成直後の貼付カイロを5名以上の腰に貼り付けて、剥がれ落ちないようにサポーターで固定した状態で軽く30分間運動して汗をかいた後、剥がし取り、そのときの剥離強度を下記の4段階で評価した。
◎: 十分に安定な接着強度。
○: 十分ではないが、軽く体を動かしても剥がれ落ちない程度の接着強度。
△: 強度が著しく低下し、軽く体を動かすと剥れ落ちる程度の接着強度。
×: 殆ど貼り付かず、体を静止しても剥がれ落ちる程度の接着強度。
(5)再接着性:上記耐汗接着性の評価の後、引き続き、腰の被着部位の汗を拭き取り、再度、評価後の貼付カイロを腰に貼り付けた後、直ちに剥がし、そのときの剥離強度を下記の4段階で評価した。
◎: 十分に安定な接着強度。
○: 十分ではないが、軽く体を動かしても剥がれ落ちない程度の接着強度。
△: 強度が著しく低下し、軽く体を動かすと剥れ落ちる程度の接着強度。
×: ほどんど貼り付かず、体を静止しても剥がれ落ちる程度の接着強度。

表3に示すように、実施例の貼付カイロは、比較例に比べて良好な結果が得られた。
すなわち、実施例12〜14では、各々の貼付カイロの接着性は極めて良好であった。実施例12で示されるように、共重合体1を用いると、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含まず、同じ中和率のポリアクリル酸部分中和物(比較共重合体4)を用いた比較例5よりも接着性に優れていた。特に耐熱接着性、耐汗接着性、再接着性に優れて、貼付性能を満足するものであった。
また、(e)水溶性ポリアクリル酸及びその塩として、粉末状ポリアクリル酸部分中和物(アロンビスAH−105)を併用することにより、初期接着性が向上した(実施例13)。
さらに、(e)水溶性ポリアクリル酸(塩)として、濃度20質量%ポリアクリル酸水溶液(ジュリマーAC−10H)を併用することにより、初期接着性と再接着性が向上した(実施例14)。
一方、(a)水溶性共重合体として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含まないポリアクリル酸部分中和物(比較共重合体4)を用いた比較例5〜7では、初期接着性はある程度示した。しかしながら、評価を行った他の耐熱接着性、耐熱膏体残り、耐汗接着性、再接着性の全てで問題があった。
【産業上の利用可能性】
本発明の貼付剤用基剤及びそれを用いてなる貼付剤は、水分を極めて多量に含有することができる。そのため、皮膚などに貼付した際に、長時間にわたって冷却効果を維持することができ、しかも薬剤の経皮吸収性に優れている。
本発明の貼付剤用基剤及び貼付剤は、高含水率であるにも拘わらず保型性に優れ、且つ耐熱性も有している。そのため、不織布等の支持体から膏体の滲み出しがない。さらに、皮膚などへの接着性に優れ貼付時に剥がれ難く、その上適度な硬度を有し、皮膚から剥がす際に膏体の皮膚への残留が無く、長時間貼付可能である。
しかも、水溶性共重合体を得た後に貼付剤用基剤を調製するので、不純物である未反応の残存単量体の含有量が少なく、赤斑、かぶれ、発疹などの皮膚障害を防止することも可能である。
以上のように、本発明の貼付剤用基剤及びその基剤を用いてなる貼付剤は、広く医薬・化粧用の皮膚貼付剤及び医療用具や日用品への応用展開が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分からなることを特徴とする貼付剤用基剤。
(a)構成単量体の1〜30モル%が2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、70〜99モル%がアクリル酸であり、酸の20〜60モル%が中和されており、微粉末状で未反応単量体の含有率が0.5質量%以下である水溶性共重合体、
(b)多価アルコール
(c)多価金属化合物
(d)水
【請求項2】
請求項1に記載の貼付剤用基剤において、各成分の基剤全量を基準にした配合割合が下記のとおりであることを特徴とする貼付剤用基剤。
(a)水溶性共重合体:1〜30質量%
(b)多価アルコール:1〜50質量%
(c)多価金属化合物:0.001〜3質量%
(d)水:残部
【請求項3】
前記微粉末状の水溶性共重合体が、その90質量%以上が180μm以下の粒子径を有する粒子であり、且つ75μm以下の粒子径を有する粒子が80質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の貼付剤用基剤。
【請求項4】
請求項1に記載の貼付剤用基剤が、さらに下記記載の成分の1種又は2種以上を有することを特徴とする貼付剤用基剤。
(e)水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩
(f)炭素数が2〜6である一価の低級アルコール
(g)長鎖脂肪酸及び/又はそれらのエステル
(h)水酸基を有する有機酸又はその塩
【請求項5】
前記低級アルコールがエタノール又はイソプロパノールである請求項4記載の貼付剤用基剤。
【請求項6】
前記水酸基を有する有機酸又はその塩が酒石酸又はその塩であることを特徴とする請求項4記載の貼付剤用基剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の貼付剤用基剤からなる水性ゲル膏体を支持体上に施してなる貼付剤。
【請求項8】
前記水性ゲル膏体が、薬剤又は美白剤を含有することを特徴とする請求項7記載の貼付剤。

【国際公開番号】WO2004/078165
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503133(P2005−503133)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002841
【国際出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【出願人】(390039974)日本純薬株式会社 (13)
【Fターム(参考)】