赤外線撮像装置
【課題】赤外線撮像装置においては、赤外線固体撮像素子の駆動線に加えられる垂直駆動パルスの波高値のわずかのばらつきでも画素出力に重畳され、さらに積分回路で増幅されることで、画面上で横引き状のノイズとして視認される。
【解決手段】平均値算出回路15は、水平走査周期毎に水平有効画素範囲の各画素について画素平均値AVを算出する。オフセット算出回路16は、基準値から平均値算出回路15で算出した前記画素平均値AVを差引いてオフセット補正量FSを算出する。オフセット補正回路8は、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出したオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正された信号FGを出力する。
【解決手段】平均値算出回路15は、水平走査周期毎に水平有効画素範囲の各画素について画素平均値AVを算出する。オフセット算出回路16は、基準値から平均値算出回路15で算出した前記画素平均値AVを差引いてオフセット補正量FSを算出する。オフセット補正回路8は、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出したオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正された信号FGを出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線固体撮像素子を用いた赤外線撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線固体撮像素子の一例としての熱型赤外線固体撮像素子として、画素が2次元に配列され、行ごとに駆動線によって接続され、列ごとに信号線によって接続されたものが知られている。この撮像素子においては、垂直走査回路とスイッチにより各駆動線が順番に選択され、選択された駆動線を介して電源から画素に通電される。画素の出力は信号線を介して積分回路に伝えられ、積分回路で積分及び増幅され、水平走査回路とスイッチによって順次出力端子へ出力される(特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−214639号公報(段落0003)
【非特許文献1】石川等、「従来のシリコンICプロセスを用いた低コスト320×240非冷却IRFPA」、Part of the SPIE Conference on infrared Technology and Applications XXV、1999年4月発行、Vol.3698、p.556頁から564頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤外線固体撮像素子の駆動線に加えられる垂直駆動パルスの波高値のわずかのばらつきでも画素出力に重畳され、さらに積分回路で増幅されることで、画面上で水平走査線毎の輝度がランダムに変動する横引き状のノイズとして視認される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、
所定の波長域に感度を有する撮像手段と、
所定の波長域成分を前記撮像手段の撮像面上で結像させる結像手段と
を備えた赤外線撮像装置において、
前記撮像手段から出力される撮像信号をデジタル信号に変換してデジタル撮像信号を出力するデジタル変換手段と、
前記デジタル変換手段から出力される前記デジタル撮像信号の水平走査期間毎に水平有効画素部分の平均を算出してライン平均値を出力するライン平均値算出手段と、
前記ライン平均値算出手段から出力された前記ライン平均値と基準値とのレベル差から水平走査期間毎にオフセット値を算出するオフセット算出手段と、
前記デジタル変換手段から出力される前記デジタル撮像信号を前記平均値算出手段及び前記オフセット算出手段における処理のための時間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段で遅延した前記デジタル撮像信号に対して前記オフセット算出手段で算出したオフセット値に基づいてレベル補正を行うオフセット補正手段と
を備えたことを特徴とする赤外線撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、水平走査線毎のレベル変動を算出して、撮像信号の信号レベルを補正することにより、水平走査線毎の信号レベルが一定に安定し、画面上においても水平走査線毎の輝度がランダムに変動する横引き状のノイズを抑圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
図示の赤外線撮像装置は、レンズ1と、シャッタ2と、撮像素子3と、減算回路4と、増幅回路5と、A/D変換器6と、減衰回路10と、加算回路11と、更新回路12と、フレームメモリ13と、帰還用D/A変換器14と、タイミング生成回路17と、シャッタ制御回路18と、遅延回路7と、オフセット補正回路8と、出力用D/A変換器19と、出力端子9と、平均値算出回路15と、オフセット算出回路16と、基準値生成回路23とを備える。
【0008】
まず標準動作状態としてシャッタ2が開いた状態での動作を説明する。被写体が放射する赤外線はレンズ1により集光され、開放状態のシャッタ2を介して撮像素子3上に結像する。撮像素子3には赤外線を検知する素子が二次元平面上に配列されており、各素子から赤外線強度に応じて変化する信号が得られる。撮像素子3に配列されている赤外線検知素子は概ね8〜14マイクロメートルの波長帯域に感度を有する。
【0009】
減算回路4は、撮像素子3の出力信号である撮像信号SNから、フレームメモリ13に格納されているデジタル固定パターンノイズ(FPN)をアナログ変換して得られる固定パターンノイズAFPNを減算した信号成分だけからなる信号SGを出力する。帰還用D/A変換器14はフレームメモリ13に格納されているデジタル固定パターンノイズFPNをアナログ変換した固定パターンノイズAFPNを減算回路4に供給する。減算回路4の出力信号SGは、増幅回路5で所定の増幅率で増幅される。増幅回路5の増幅率は、撮像信号SNから固定パターンノイズAFPNを除いた信号成分SGの振幅(変動範囲)がA/D変換器6の入力ダイナミックレンジのフルレンジになるように設定される。増幅回路5の出力信号はA/D変換器6でデジタル信号DGに変換される。
【0010】
A/D変換器6の出力信号DGは、水平走査周期毎にDC信号レベルがランダムに変動する横引き状のノイズを含んでいる。
平均値算出回路15は、水平走査周期毎に水平有効画素範囲の各画素について画素平均値AVを算出する。オフセット算出回路16は、予め定められた、固定レベルの基準値RFから平均値算出回路15で算出した画素平均値AVを差引いてオフセット補正量FSを算出する。基準値RFはA/D変換器6の出力信号DGのダイナミックレンジの中心値(信号が取り得る値の範囲の中心値)に設定される。A/D変換器6の出力信号DGが例えば8ビットのデジタル信号(0から255までの範囲内の値を取る)である場合、基準値RFは、上記の中心値である127に設定される。
【0011】
オフセット補正回路8は、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出したオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正された信号FGを出力する。
遅延回路7は、A/D変換器6の出力信号DGを所定の期間、即ち、当該水平走査線について、平均値算出回路15及びオフセット算出回路16で当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間、例えば1水平走査期間だけ遅延させる。
出力用D/A変換器19はオフセット補正回路8の出力信号FGをアナログ変換して出力端子9から出力する。出力端子9から出力された信号は、表示部25に送られて、信号に対応した画像が表示される。
【0012】
A/D変換器6の出力信号DGに含まれる横引き状のノイズの抑圧動作の詳細について図2乃至図4を参照して説明する。図2乃至図4は、水平方向の画素数が100であり、垂直方向のライン数が4である場合を示しており、各々横軸に水平方向の画素位置、縦軸に図1の回路内のそれぞれの位置に現れる信号のレベルをとっている。A/D変換器6の出力信号DGは例えば8ビットのデジタル信号であり、信号レベルは0から255までの範囲内の値を取る。説明を分かりやすくするため、A/D変換器6の出力信号DGとして、大きさが互いに異なる横引き状ノイズを含むものを想定して説明する。
【0013】
図2は、A/D変換器6から出力されるライン毎の信号DGm(m=1、2、3、4)のレベルを示す。ラインL1とラインL3の信号DG1、DG3は中心値である127よりも大きく、画面上ではやや白い筋状に視認される。ラインL2とラインL4の信号DG2、DG4は中心値である127よりも小さく、画面上ではやや黒い筋状に視認される。尚、上記のように、ラインL1〜L4の信号(A/D変換器6の出力)をDG1〜DG4で表し、一般的にはラインmの信号をDGmで表すが、どのラインにも当てはまる説明に際しては単に「DG」と表すことも、「DGm」と表すこともある。他の記号についても同様である。
【0014】
図3は、平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6から出力される信号のライン毎(水平走査周期毎)の画素平均値AVm(m=1、2、3、4)を示す。この平均値は、各ライン内の水平有効画素範囲内のすべての画素についての信号値を平均することで求められたものである。
図3では、ラインL1の平均値AV1が150、ラインL2の平均値AV2が30、ラインL3の平均値AV3が220、ラインL4の平均値AV4が60と求まったものとしている。
【0015】
図3はまた、オフセット算出回路6の出力信号FS、即ち、基準値生成手段23から供給される基準値RFである127から、平均値算出回路15で算出された画素平均値AV1〜AV4を差引いて算出したオフセット補正量FSm(m=1、2、3、4)を示す。ラインL1のオフセット補正量FS1が127−150=−23、ラインL2のオフセット補正量FS2が127−30=+97、ラインL3のオフセット補正量FS3が127−220=−93、ラインL4のオフセット補正量FS4が127−60=+67と求められたものとしている。
【0016】
図4は、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSm(m=1、2、3、4)を加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16における当該水平走査線のオフセット補正量FSmの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけ図2のA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL1の信号はFS1=−23だけオフセット補正され、ラインL2の信号はFS2=+97だけオフセット補正され、ラインL3の信号はFS3=−93だけオフセット補正され、ラインL4の信号はFS4=+67だけオフセット補正される。このようにして、各ラインの信号DG1〜DG8はダイナミックレンジの中心値CDである127に各ラインのオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均が一致するように、オフセット補正される。このように処理することで、ラインL1〜L4における横引き状のノイズが抑圧される。
【0017】
A/D変換器6の出力信号DGに含まれる横引き状のノイズの抑圧動作の詳細について上記の例(図2乃至図4に示す例)とは異なる信号パターンを有する例について図5乃至図14を参照して説明する。図5乃至図14は、水平方向の画素数が100、垂直方向のライン数が8である場合を例としている。図6、図8乃至図13では各々横軸に水平方向の画素、縦軸に信号レベルをとっている。
【0018】
図5は被写体を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す。図7は被写体に対応する画像(ノイズが重畳されていないものとし、かつ本発明によるオフセット補正を加えない場合に表示される画像)を示す。図14は表示画像を概略的に示す。
A/D変換器6の出力信号DGは例えば8ビットのデジタル信号であり、0から255までの範囲内の値を取る。
【0019】
撮像素子3が図5に示すように、低温の背景101aの右下の一角の部分、即ち(対応する画像において、ラインL5〜L8のうちの右半分101bに高温の物体(注目被写体)が撮像範囲に含まれるとき、撮像素子3からの出力信号は全8ラインのうち例えば上側の4ライン、即ちラインL1〜L4は低温部101aに相当する信号を、下側の4ライン、即ちラインL5〜L8は低温部101aから高温部101bに変化する信号を出力する。但し、撮像素子3の出力信号は、横引き状のノイズを含んでいる。
【0020】
仮に図5に示される被写体を撮像することにより得られる信号にノイズが含まれず(重畳されておらず)、低温部101aから得られる信号の値が127であり、高温部101bから得られる信号の値が191であるとする。
この場合、ラインL1〜L4から得られる信号の値は図6に符号102aで示す如くライン全体にわたり、127であり、ラインL5〜L8から得られる信号の値は図6に符号102bで示す如く、各ラインのうち、1番目から50番目までの画素では127である一方、51番目から100番目の画素では、191である。
【0021】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図7に示す如くとなる。図7において、各部分(領域)の明るさは、図5の対応する部分の温度に対応するものとなる。なお、温度が高いほど、信号の値(階調値)が大きく、表示画像がより明るくなるものとしている。
図7の領域103aは、図5の背景(低温部)101aに対応し、その領域103aの明るさは信号値127に対応する明るさであり、領域103bは、図5の高温部101bに対応し、その領域103bは、領域103aよりも明るく、信号値191に対応する明るさを持つ。
【0022】
図8は、A/D変換器6から出力される、全8ラインのうちラインL1〜L4についてライン毎の信号DG1〜DG4のレベルを示す。ラインL1とラインL3の信号DG1、DG3はダイナミックレンジの中心値である127よりも大きく、画面上ではやや白い筋状に視認される。ラインL2とラインL4の信号DG2、DG4はダイナミックレンジの中心値である127よりも小さく、画面上ではやや黒い筋状に視認される。
【0023】
図9は、平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6の出力信号のライン毎の画素平均値AV1〜AV4を示す。この平均値AV1〜AV4は、各ライン内の水平有効画素範囲内のすべての画素についての信号値を平均することで求められたものである。
図9では、ラインL1の信号DG1の平均値AV1が159、ラインL2の信号DG2の平均値AV2が103、ラインL3の信号DG3の平均値AV3が167、ラインL4の信号DG4の平均値AV4が79と求まったものとしている。
【0024】
図9はまた、オフセット算出回路6の出力信号FSm(m=1、2、3,4)、即ち基準値生成手段23から供給される基準値RFである127から、平均値算出回路15で算出された画素平均値AV1〜AV4を差引いて算出したオフセット補正量FSm(m=1、2、3、4)を示す。ラインL1のオフセット補正量FS1が127−159=−32、ラインL2のオフセット補正量FS2が127−103=+24、ラインL3のオフセット補正量FS3が127−167=−40、ラインL4のオフセット補正量FS4が127−79=+48と求められたものとしている。
【0025】
図9はまた、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16における当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL1の信号DG1はオフセット補正量FS1である−32だけオフセット補正され、ラインL2の信号DG2はオフセット補正量FS2である+24だけオフセット補正され、ラインL3の信号DG3はオフセット補正量FS3である−40だけオフセット補正され、ラインL4の信号DG4はオフセット補正量FS4である+48だけオフセット補正される。即ち、ラインL1〜L4の信号DG1〜DG4はダイナミックレンジの中心値CDである127に補正後の各ラインの信号FG1〜FG4の平均が一致するようにオフセット補正される。このように処理することで、ラインL1〜L4における横引き状のノイズが抑圧され、オフセット補正回路8からは、横引き状のノイズが抑圧された信号が出力される。
【0026】
図10は、A/D変換器6の出力信号DGの全8ラインのうちラインL5〜L8についてライン毎の信号DG5〜DG8のレベルを示す。ラインL5及びラインL7のうちの、低温部101aの信号DG5a、DG7aは、ダイナミックレンジの中心値CDである127よりも大きく、画面上ではやや白い筋状に視認される。ラインL6及びラインL8の低温部101aの信号DG6a、DG8aは、ダイナミックレンジの中心値CDである127よりも小さく、画面上ではやや黒い筋状に視認される。
ラインL5〜ラインL8の高温部101bの信号DG5b〜DG8bは、ダイナミックレンジの中心値CDである127よりも大きく、画面上では全体的に白っぽい中の横筋状ノイズとして視認される。
【0027】
図11は、平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6の出力信号のライン毎の画素平均値AV5〜AV8を示す。この平均値AV5〜AV8は、各ライン内の水平有効画素範囲内のすべての画素についての信号値を平均することで求められたものである。
ラインL5の信号DG5の平均値が191、ラインL6の信号DG6の平均値が135、ラインL7の信号DG7の平均値が199、ラインL8の信号DG8の平均値が111と求まったものとしている。
【0028】
図11はまた、オフセット算出回路6の出力信号FS、即ち基準値生成手段23から供給される基準値RFである127から、平均値算出回路15で算出された画素平均値AV5〜AV8を差引いて算出したオフセット補正量FS5〜FS8を示す。ラインL5のオフセット補正量FS5が127−191=−64、ラインL6のオフセット補正量FS6が127−135=−8、ラインL7のオフセット補正量FS7が127−199=−72、ラインL8のオフセット補正量FS8が127−111=+16と求められたものとしている。
【0029】
図11はまた、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16における当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL5の信号DG5はオフセット補正量FS5である−64だけオフセット補正され、ラインL6の信号DG6はオフセット補正量FS6である−8だけオフセット補正され、ラインL7の信号DG7はオフセット補正量FS7である−72だけオフセット補正され、ラインL8の信号DG8はオフセット補正量FS8である+16だけオフセット補正される。このように、各ラインL5〜L8の信号DG5〜DG8はダイナミックレンジの中心値CDである127に補正後の各ラインの信号FG5〜FG8の平均が一致するように、オフセット補正される。このよう処理することで、ラインL5〜L8における横引き状のノイズが抑圧され、オフセット補正回路8からは、横引き状のノイズが抑圧された信号が出力される。
【0030】
図12は、ラインL1〜L4の各々についての、オフセット補正回路8の出力信号FG1〜FG4を示し、図13は、ラインL5〜L8の各々についての、オフセット補正回路8の出力信号FG5〜FG8を示す。図12及び図13に示される信号FG1〜FG8が出力端子9から表示部25に送られる。出力端子9から出力される信号により表示部25で表示される画像は図14に示す如くとなる。
図示のように、ラインL1〜L4から成る領域では、各ラインの平均明るさV3(=127)は、図7の領域103aの明るさV2(=127)と略等しい。ラインL5〜L8のうち左半分の領域104bの明るさV4(=95)は、図7の領域103aの明るさV1(=127)よりも小さく、一方右半分の領域104cの明るさV5(=159)は、図7の領域103bの明るさV2(=191)よりも小さい。ラインL5〜L8の各ラインの平均明るさ(V4+V5)/2は、ラインL1〜L4の平均明るさV3と等しい。
また、ラインL1〜L4から成る領域104aでも、ラインL5〜L8から成る104b、104cでも、横引き状のノイズが抑制されている。このように、オフセット補正を行う結果、ラインL5〜L8で実際の信号レベルからずれが生じるものの、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0031】
次にデジタル固定パターンノイズFPNをフレームメモリ13に格納する動作(FPN取込み処理)を、図1を参照して説明する。このときシャッタ2は遮蔽状態に、更新回路12はフレームメモリ13の更新を許可された状態に制御される。シャッタ2が遮光状態なので撮像素子3からは固定パターンノイズ(FPN)を含むノイズ成分のみが出力信号として出力される。
【0032】
減算回路4は、撮像素子3の出力信号である撮像信号から、フレームメモリ13に格納されているデジタル固定パターンノイズ(FPN)を帰還用D/A変換器14でアナログ変換して得られる固定パターンノイズAFPNを減算する。減算回路4の出力信号は、増幅回路5で所定の増幅率で増幅された後、A/D変換器6でデジタル信号に変換される。
【0033】
減衰回路10は、A/D変換器6の出力信号DGを所定の減衰率で減衰した信号を出力する。減衰回路10の所定の減衰率は、増幅回路5の所定の増幅率を考慮して、減衰回路10から出力される信号の振幅が元信号(減算回路4の出力)と同じか、又はより小さくなるような減衰率とする。
【0034】
加算回路11は、フレームメモリ13に格納されている固定パターンノイズFPN(1フレーム前に取得された固定パターンノイズであるので、FPN(i−1)と表すこともある)と、減衰回路10の出力信号を加算し、最新のデジタル固定パターンノイズ(FPN(i)と表すこともある。)として出力する。(なお、上記のように、1フレーム前に取得された固定パターンノイズを符号「FPN(i−1)」で表し、現フレームの固定パターンノイズを符号「FPN(i)」で表すが、どのフレームの固定パターンノイズについても当てはまる説明に際しては、単に「FPN」と表す。)加算回路11で加算したデジタル固定パターンノイズ(FPN(i−1))は、減算回路4において撮像素子3の出力信号SGから差し引いた固定パターンノイズAFPNをアナログ変換する前の信号FPN(i−1)に等しい。
【0035】
加算回路11から出力された最新のデジタル固定パターンノイズ(FPN(i))は更新回路12を経由してフレームメモリ13に格納される。フレームメモリ13の格納信号は、次のフレーム期間において、帰還用D/A変換器14でアナログ信号AFPNに変換された後、減算回路4に供給されると共に加算回路11にも供給される。
【0036】
タイミング生成回路17はシャッタ制御回路18と更新回路12の動作タイミングを指示する信号を出力する。シャッタ制御回路18はタイミング生成回路17から出力されるタイミング信号に基づいてシャッタ2の開閉動作を制御する。更新回路12はタイミング生成回路17から出力されるタイミング信号に基づいてフレームメモリ13内の記憶データを加算回路11の出力信号で更新する。タイミング生成回路17はシャッタ2が完全に遮蔽状態の時、更新回路12によるフレームメモリ13内の記憶データの更新を許可する。
【0037】
タイミング生成回路17は、外部スイッチSWの操作によって手動モードでシャッタ2を閉じてフレームメモリ13内に保存されるデジタル固定パターンノイズ(FPN)を、その時点での撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)に対応する値となるように、更新する。また、タイミング生成回路17は、所定時間が経過する毎にシャッタ2を閉じてフレームメモリ13内に保存されるデジタル固定パターンノイズ(FPN)を、その時点での撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)に対応する値となるように更新する。
【0038】
FPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間において、フレームメモリ13は新たにデジタル固定パターンノイズ(FPN)を取込むため記憶信号を0にリセットする。帰還用D/A変換器14はフレームメモリ13から出力された0レベル信号をアナログ変換して減算回路4に供給する。減算回路4は、撮像素子3の出力信号から、フレームメモリ13に格納されている0レベル信号のアナログ変換信号を減算するので撮像素子3の出力信号をそのまま出力する。減算回路4の出力信号は、増幅回路5で所定の増幅率で増幅された後、A/D変換器6でデジタル信号に変換される。この段階では、撮像素子3から出力される固定パターンノイズ(FPN)が、そのままA/D変換器6に入力されるため、A/D変換器6の入力ダイナミックレンジよりも大きい固定パターンノイズ(FPN)は振幅の中心部分だけがA/D変換される。入力ダイナミックレンジから外れた信号は、A/D変換されないで切り捨てられる。この時、A/D変換器6に供給される信号の直流電位は、A/D変換器6の入力ダイナミックレンジの中心になるよう調整されている。
【0039】
減衰回路10は、A/D変換器6の出力信号DGを減衰する。加算回路11は、フレームメモリ13に格納されているリセット後の0レベル信号と、減衰回路10の出力信号とを加算し、FPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)を生成する。加算回路11から出力されたデジタル固定パターンノイズ(FPN)は更新回路12を経由してフレームメモリ13に格納される。
【0040】
FPN取込み処理開始後の2番目のフレーム期間において、減算回路4は、撮像素子3から出力される固定パターンノイズ(FPN)から、FPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)のアナログ変換信号を減算する。例えば増幅回路5の増幅率と減衰回路10の減衰率が整合している場合は、FPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間においてA/D変換器6でA/D変換されないで切り捨てられた部分の全部又は一部が減算回路4の出力信号になる。
【0041】
減算回路4の出力信号は、増幅回路5で所定の増幅率で増幅された後、A/D変換器6でデジタル信号に変換される。撮像素子3の出力信号は振幅の中心部分だけがA/D変換される。入力ダイナミックレンジから外れた信号は、A/D変換されないで切り捨てられる。この時、A/D変換器6に供給される信号の直流電位は、A/D変換器6の入力ダイナミックレンジの中心になるよう調整されている。
【0042】
減衰回路10は、A/D変換器6の出力信号DGを減衰する。加算回路11は、フレームメモリ13に格納されているFPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)と、減衰回路10の出力信号とを加算し、FPN取込み処理開始後の2番目のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)を生成する。加算回路11から出力されたFPN取込み処理開始後の2番目のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)は更新回路12を経由してフレームメモリ13に格納される。
【0043】
このように、シャッタ2を遮蔽状態にして固定パターンノイズ(FPN)の書込みを所定フレーム期間行うことで、撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)を、デジタル化したデジタル固定パターンノイズ(FPN)をフレームメモリ13に取込むことができる。固定パターンノイズ(FPN)の取込みに必要なフレーム数は、撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)の振幅、増幅回路5の増幅率、減衰回路10の減衰率などから求められる。タイミング生成回路17は、固定パターンノイズ(FPN)の取込み処理を所定数のフレーム期間続けるように、シャッタ制御回路18と更新回路12を制御する。上記所定数のフレーム期間はフレームメモリ13内に保存されるデジタル固定パターンノイズ(FPN)が、撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)との違いが無視できるようになるのに要する時間に相当する。
【0044】
また、A/D変換器6の出力信号DGが所定値より小さくなったことで取込み完了と判断してもよい。タイミング生成回路17は、A/D変換器6の出力信号DGが1フレーム期間以上にわたって所定値より小さくなったことを確認した上で標準動作状態(通常の撮像状態)に移行するためシャッタ制御回路18と更新回路12を制御する。
【0045】
撮像素子3が出力する撮像信号から固定パターンノイズ(FPN)を差し引いた信号をデジタル変換することで、撮像素子3が出力する撮像信号をそのままデジタル変換する場合と比較し、デジタル変換器のダイナミックレンジを有効に利用することが出来る。
【0046】
A/D変換器6と帰還用D/A変換器14は例えば同じビット精度であっても出力信号の振幅、直線性などの性能に差があるため、A/D変換器6の出力信号DGを減衰しないでそのままデジタル固定パターンノイズFPN(取り込み処理中の値、即ち未だ収束していないもの)と加算するとA/D変換器6と帰還用D/A変換器14の特性差によっては信号が発散し、収束しにくくなる。そのため、減衰回路10にて振幅を所定の減衰率で減衰してからデジタル固定パターンノイズ(FPN)と加算する。これにより、A/D変換器6と帰還用D/A変換器14の特性差が吸収でき、信号の発散を防いでデジタル固定パターンノイズ(FPN)を収束させて取り込むことができる。
【0047】
以上説明したように実施の形態1によれば、水平走査線毎のレベル変動を算出して、撮像信号の信号レベルを一定値に補正することにより、水平走査線毎の信号レベルが一定に安定し、画面上においても横引き状のノイズを抑圧することができる。
【0048】
実施の形態2.
図15はこの発明の実施の形態2の赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。図15において、レンズ1、シャッタ2、撮像素子3、減算回路4、増幅回路5、A/D変換器6、減衰回路10、加算回路11、更新回路12、フレームメモリ13、帰還用D/A変換器14、タイミング生成回路17、シャッタ制御回路18、遅延回路7、オフセット補正回路8、出力用D/A変換器19、出力端子9、平均値算出回路15、オフセット算出回路16は、実施の形態1で説明した図1の同じ番号を付した回路要素と同様のもので、同様に動作するものであるので、その説明を省略する。
【0049】
図15に示される赤外線撮像装置は、画素範囲設定回路22を備えている点で図1の赤外線撮像装置と異なる。
画素範囲設定回路22は、各ラインの水平有効画素範囲内の画素のうち、平均の算出に用いられる画素範囲(平均算出画素範囲)を設定するものであり、該画素範囲の開始位置の画素(開始画素)と終了位置の画素(終了画素)を示す信号を出力する。
【0050】
平均値算出回路15は、各ラインの水平有効画素範囲内の画素のうち、画素範囲設定回路22から入力される信号で示される、開始画素から終了画素までの範囲(平均算出画素範囲)について画素平均値(ライン平均値)AVを計算してオフセット算出回路16へ供給する。
【0051】
平均値算出回路15で平均値を求めるに際して用いる画素の範囲を限定することにより、オフセット補正回路8によるオフセット補正動作が受ける効果について、以下に図16乃至図39を参照して説明する。
【0052】
図16乃至図39は水平方向の画素数が100であり、垂直方向のライン数が8である場合を示している。図17、図19、図21、図24、図26、図28、図31、図32、図34、図35、図37、図38は各々横軸に水平方向の画素、縦軸に信号レベルをとっている。
図16、図23、図30は被写体を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す。
図18、図25、図33は被写体に対応する画像(ノイズが重畳されていないものとし、かつ本発明によるオフセット補正を加えない場合に表示される画像)を示す。
図20、図22、図27、図29、図36、図39は表示画像を概略的に示す。
A/D変換器6の出力信号DGが例えば8ビットのデジタル信号であり、0か255までの範囲内の値を取る。
【0053】
一つの被写体(1番目の被写体)として、図16に示すような低温の背景105aの中央部に常温でやや温度差のある2つの部分105b、105cから成る注目物体(注目被写体)105dが撮像範囲に含まれる場合について説明する。図示の例では、1番目から25番目までの画素及び76番目から100番目までの画素が背景105aに対応し、注目物体105dのうちの、26番目から50番目までの画素から成る部分105bよりも、51番目から75番目までの画素から成る部分105cの方が若干温度が高い。
【0054】
このような被写体を撮像することで得られる各ラインの信号は、仮にノイズが重畳されていないとすれば、例えば、図17に符号105eで示すごときものとなる。図17に示すように、背景部分105aに対応する1番目から25番目までの画素、及び76番目から100番目までの画素では、信号値が0であり、26番目から50番目までの画素では、信号値が127より若干低く、51番目から75番目までの画素では信号値が127より若干高く、26番目から75番目までの画素の信号値の平均は127である。
【0055】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図18に示す如くとなる。図18において、領域106a、106b、106cがそれぞれ図16の部分105a、105b、105cに対応する。なお、被写体の温度が高いほど、信号の値(階調値)が大きく、表示画像がより明るくなるものとしている。
【0056】
まず画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定され、即ち各ラインの全体が平均算出画素範囲として設定されている場合、ラインL1〜L8の信号DG1〜DG8は、基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に、各ラインのライン全体のオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図19のようなものとなり、出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図20に示す如くとなる。図20において、領域107a、107b、107cはそれぞれ図18の対応する領域106a、106b、106cよりも明るい。特に注目物体のある中央領域107b、107c(図18の領域106b、106cに対応する)が白っぽい画像になるものの、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0057】
次に画素範囲設定回路22により、26番目の画素を開始画素とし、75番目の画素を終了画素とすることが設定され、即ち、26番目の画素から75番目の画素まで(中央部分の画素)が平均算出画素範囲として設定されている場合、水平方向中央の部分の50画素を用いて各ライン平均値が算出される。図16に示される被写体の場合、1番目から25番目までの画素と、76番目から100番目までの画素は、背景の低温部分105aに含まれるので、これらはライン平均値の計算には用いられず、注目している常温の被写体部分105b、105cのみでライン平均値が計算される。
【0058】
ラインL1〜L8の信号DG1〜DG8は、基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に、各ラインの平均算出画素範囲のオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図21のようなものとなり、出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図22に示す如くとなる。図22において、領域108a、108b、108cはそれぞれ図18の対応する領域106a、106b、106cと同じ明るさである。このため、特に注目物体のある中央領域108b、108cが白飛びや黒潰れすることなくコントラスト感のある画像が得られ、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0059】
他の被写体(2番目の被写体)として、図23のような低温の背景109aの右半分に常温でやや温度差のある部分109a、109bから成る注目物体(注目被写体)109dが撮像範囲に含まれる場合について説明する。図示の例では、1番目から50番目までの画素が背景109aに対応し、注目物体109dのうちの、51番目から75番目までの画素から成る部分109bよりも、76番目から100番目までの画素から成る部分109cの方が若干温度が高い。
【0060】
このような被写体を撮像することで得られる各ラインの信号は、仮にノイズが重畳されていないとすれば、例えば、図24に示すごときものとなる。図24に符号109eで示すように、背景部分109aに対応する1番目から50番目までの画素では、信号値が0であり、51番目から75番目までの画素では、信号値が127より若干低く、76番目から100番目までの画素では信号値が127より若干高く、51番目から100番目までの画素の信号値の平均は127である。
【0061】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図25に示す如くとなる。図25において、領域110a、110b、110cがそれぞれ図23の部分109a、109b、109cに対応する。なお、被写体の温度が高いほど、信号の値(階調値)が大きく、表示画像がより明るくなるものとしている。
【0062】
まず画素範囲設定回路22により、1番目の画素から100番目の画素まで、即ち各ラインの全体が平均算出画素範囲として設定されている場合、ラインL1〜L8の信号DG1〜DG8は基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインのライン全体のオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図26のようなものとなり、出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図26に示す如くとなる。図27において、領域111a、111b、111cはそれぞれ図18の対応する領域110a、110b、110cよりも明るい。特に注目物体のある右半分の領域111b、111c(図25の部分110b、110cに対応する)が白っぽい画像になるものの、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0063】
次に画素範囲設定回路22により、51番目の画素から100番目の画素まで(右半分部分の画素)が平均算出画素として設定されている場合、水平方向右半分の部分109b、109cの50画素を用いて各ラインの平均値が算出される。したがって背景の低温部分109aはライン平均値の計算に用いられず、注目している常温の被写体部分109b、109cのみでライン平均値が計算される。
【0064】
ラインL1〜L8の信号DG1〜DG8は、基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に、各ラインの平均算出画素範囲のオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図28のようなものとなり、出力端子9から出力される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像は図29に示す如くとなる。
図29において、領域112a、112b、112cは図25の対応する領域110a、110b、110cと同じ明るさである。このため、特に注目物体のある右半分の領域112b、112cが白飛びや黒潰れすることなくコントラスト感のある画像が得られ、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0065】
さらに他の被写体(3番目の被写体)として、図30のような低温の背景113aの右上部分に常温でやや温度差のある部分113b、113cから成る注目物体(注目被写体)113dが撮像範囲に含まれ、さらに左下部分に常温でやや温度差のある部分113e、113fから成る注目物体(注目被写体)113gが撮像範囲に含まれる場合について説明する。図示の例では、ラインL1〜L4においては、1番目から50番目までの画素が背景113aに対応し、注目物体113dのうち、51番目から75番目までの画素から成る部分113bよりも、76番目から100番目までの画素から成る部分113cの方が若干温度が高い。また、ラインL5〜L8においては、51番目から100番目までの画素が背景113aに対応し、注目物体113gのうち、1番目から25番目までの画素から成る部分113eよりも、26番目から50番目までの画素から成る部分113fの方が若干温度が高い。
【0066】
このような被写体を撮像することで得られる信号は、仮にノイズが重畳されていないとすれば、例えば、図31及び図32に示すごときものとなる。図31は、ラインL1〜L4の信号を符号113hで示し、図32は、ラインL5〜L8の信号を符号113kで示す。
ラインL1〜L4の信号においては、図31に示すように、背景部分113aに対応する1番目から50番目までの画素では、信号値が0であり、51番目から75番目までの画素では、信号値が127より若干低く、76番目から100番目までの画素では信号値が127より若干高く、51番目から100番目までの画素の信号値の平均は127である。
ラインL5〜L8の信号においては、図32に示すように、背景部分113aに対応する51番目から100番目までの画素では、信号値が0であり、1番目から25番目までの画素では、信号値が127より若干低く、26番目から50番目までの画素では信号値が127より若干高く、1番目から50番目までの画素の信号値の平均は127である。
【0067】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図33に示す如くとなる。図33において、領域114a、114b、114c、114e、114fがそれぞれ図30の部分113a、113b、113c、113e、113fに対応する。なお、被写体の温度が高いほど、信号の値(階調値)が高く、表示画像がより明るくなるものとしている。
【0068】
まず画素範囲設定回路22により、1番目の画素から100番目の画素まで、即ち各ラインの全体が平均算出画素範囲として設定されている場合、ラインL1〜L4の信号DG1〜DG4は基準値(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインのライン全体のオフセット補正後の信号FG1〜FG4の平均値が一致する様にオフセット補正されて図34のようなものとなる。ラインL5〜L8の信号DG5〜DG8は基準値(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインのオフセット補正後の信号FG5〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図35のようなものとなり、出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図36に示す如くとなる。図36において、領域115a、115b、115c、115e、115fはそれぞれ図33の対応する領域114a、114b、114c、114e、114fよりも明るい。特に注目物体のある右上の領域115b、115c(図33の114e、114fに対応する)と左下の領域115e、115f(図33の114e、114fに対応する)が白っぽい画像になるものの横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0069】
次に画素範囲設定回路22により、ラインL1〜L4について、51番目の画素から100番目の画素まで(各ラインの右半分)が平均算出画素範囲として設定されており、ラインL5〜L8について1番目の画素から50番目の画素まで(各ラインの左半分)が平均算出画素範囲として設定されている場合、ラインL1〜L4については、水平方向右半分の部分113b、113cの50画素を用いて各ラインの平均値が算出され、ラインL5〜L8については、水平方向左半分の部分113e、113fの50画素を用いて各ラインの平均値が算出される。したがって背景の低温部分113aはライン平均値の計算に用いられず、注目している常温の被写体部分113b、113c、113e、113fのみでライン平均値が計算される。
【0070】
ラインL1〜L4の信号DG1〜DG4は基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインの平均値算出範囲のオフセット補正後の信号FG1〜FG4の平均値が一致する様にオフセット補正されて図37のようなものとなり、ラインL5〜L8の各々の信号DG5〜DG8は、基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインの平均算出範囲のオフセット補正後の信号FG5〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図38のようなものとなる。出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図39に示す如くとなる。図39において、領域116a、116b、116c、116e、116fは図33の対応する領域114a、114b、114c、114e、114fと同じ明るさである。このため、特に注目物体のある右上の領域116b、116cと左下の領域116e、116fが白飛びや黒潰れすることなくコントラスト感のある画像が得られ、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0071】
以上、各ラインの平均算出画素範囲が50画素である場合について説明したが、32画素あるいは64画素などの2のべき乗の画素範囲とすれば、平均値算出に際し、通常の割り算を行うことなく、単純なビットシフトでライン平均値を計算できるため回路規模を小さくすることができる。例えば平均算出画素範囲を64画素とした場合は、総和データの末尾6ビットを切り捨てることで平均値を算出することが出来る。
【0072】
被写体の背景部分と注目部分(注目被写体)の位置が固定される用途においては、画素範囲設定回路22により設定される平均算出画素範囲の開始画素、終了画素を示す信号を固定したものとし、これに基づき平均値算出回路15がライン平均値を算出することで、特に注目部分の画像をコントランストの良い状態で視認できるようになる。
【0073】
画素範囲設定回路22による平均算出画素範囲の設定を、例えば全画素(各ラインの全体)か中央部の所定数の画素か、それ以外の任意の指定画素範囲か、さらにライン毎に平均算出画素範囲を設定するかを、図示していないスイッチでモード選択することとしても良く、また図示しないキーボードなどのユーザインタフェース手段で任意の画素範囲を入力しても良い。
【0074】
実施の形態3.
図40は、この発明の実施の形態3の赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。図40において、レンズ1、シャッタ2、撮像素子3、減算回路4、増幅回路5、A/D変換器6、減衰回路10、加算回路11、更新回路12、フレームメモリ13、帰還用D/A変換器14、タイミング生成回路17、シャッタ制御回路18、遅延回路7、オフセット補正回路8、出力用D/A変換器19、出力端子9、平均値算出回路15、オフセット算出回路16は、実施の形態1で説明した図1の同じ番号を付した回路要素と同様に動作して同様な効果を示すものであるので、その説明を省略する。
【0075】
図40に示される赤外線撮像装置は、図1の基準値生成手段23の代わりに、基準値生成手段24を備えている点で図1の赤外線撮像装置と異なる。図示の基準値生成手段24は、混合回路20とメモリ21とを備える。図1の基準値生成手段23が固定された基準値RFを生成するのに対し、図40の基準値生成手段24は、入力される信号の平均値に応じて、ライン毎に基準値RFm(i)を変化させる。ここで、mはラインの番号を表す。どのラインにも当てはまる説明に際しては、「m」を付さず、単に「RF」で表すこともある。またiは、フレーム番号を表すが、どのフレームにも当てはまる説明に際しては、(i)を省略し、「RF」、「RFm」で表す。なお、他の記号についても同様である。
【0076】
基準値生成手段24は、各ラインについてフレーム方向平均値を算出して、このフレーム方向平均値を基準値としてオフセット算出回路16に供給するものである。ここでフレーム方向平均値とは、現在のフレームにおける各ラインの平均値、及び所定数(1又は2以上)の過去のフレームにおける同じラインについての平均値との単純平均又は加重平均値を求めることにより得られるものである。
【0077】
メモリ21は、平均値算出回路15の出力が書き込まれるように接続され、メモリ21は、平均値算出回路15で算出された平均値を所定数((M−1)で表す)フレーム分記憶し、現フレームについて平均値算出回路15で算出された平均値AV(i)と、メモリ21に記憶された(M−1)フレーム分の平均値AV(i−1)、AV(i−2)、…AV(i−M+1)とを混合回路20に入力し、混合回路20において、これらを加算してMで割ることにより現フレームのための基準値を求める。
【0078】
Mは例えば32とする。しかし、16、32、64、128などの数値に設定しても良く、さらに他の数値としても良い。
メモリ21はM−1、例えば31フレーム分のライン各々について求められた平均値を格納するためのメモリ容量を持つ必要があり、常に過去の(M−1)フレーム分、例えば31フレーム分の当該ライン毎の画素平均値AV(i−1)、AV(i−2)、…AV(i−31)を記憶しているようにメモリ制御を行う必要がある。
【0079】
重み付け平均を求める場合には、例えば、現フレームについて求められた平均値AV(i)と、過去の所定数(1または2以上)のフレームの各々について求められた平均値AV(i−1)、AV(i−2)、…とに対し異なる重み付けを付ける。
【0080】
オフセット算出回路16は、基準値生成手段24、特にその混合回路20から出力される現フレームのライン基準値RF(i)から平均値算出回路15で算出された画素平均値AV(i)を差引いてオフセット補正量FS(i)を算出する。
【0081】
オフセット補正回路8は、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出したオフセット補正量FS(i)を加えて、オフセット補正された信号FG(i)を出力する。
遅延回路7は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16で、当該水平走査線のオフセット補正量FS(i)の算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間、例えば1水平走査期間)だけA/D変換器6の出力信号DGを遅延させてオフセット補正回路8に供給する。出力用D/A変換器19はオフセット補正回路8の出力信号FG(i)をアナログ変換して出力端子9から出力する。
【0082】
A/D変換器6の出力信号DGに含まれる横引き状のノイズの抑圧動作の詳細について図5乃至図7及び図41乃至図45、図46乃至図53を参照して説明する。図41乃至図53は水平方向の画素数が100であり、垂直方向のライン数が8である場合を示しており、図41乃至図52において、横軸に水平方向の画素位置、縦軸に図40の回路内のそれぞれの位置に現われる信号のレベルをとっている。
【0083】
実施の形態1に関して説明したように、図5は被写体を、その各部の位置を、被写体を撮像することにより得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す。図7は被写体に対応する画像(ノイズが重畳されていないものとし、かつ本発明によるオフセット補正を加えない場合に表示される画像)を示す。図53は表示画像を概略的に示す。
A/D変換器6の出力信号DGは例えば8ビットのデジタル信号であり、信号レベルは0から255までの範囲内の値を取る。
【0084】
撮像素子3が図5に示すように、低温の背景101aの右下の一角の部分、即ち(対応する画像において、)ラインL5〜L8のうちの右半分101bに高温の物体がある被写体を撮像したとき、撮像素子3からの出力信号は全8ラインのうち例えば上側の4ライン、即ちラインL1〜L4は低温部101aに相当する信号を、下側の4ライン、即ちラインL5〜L8は低温部101aから高温部101bに変化する信号を出力する。但し、撮像素子3の出力信号は、横引き状のノイズを含んでいる。
【0085】
仮に図5に示される被写体から得られる信号がノイズを含まないとし、低温部101aから得られる信号DGの値が127であり、高温部101bから得られる信号DGの値が191であるとすると、ラインL1〜L4から得られる信号DGの値は図6に示す如くとなる。
【0086】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)DGを用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図7に示す如くとなる。
【0087】
しかしながら、実際には、撮像素子3の出力信号はノイズを含み、該ノイズの大きさは、フレームごとに変化する可能性がある。そこで、本実施の形態3では、各ラインについて、メモリ21により過去(M−1)フレーム分のライン平均値を記憶し、該メモリ21に記憶された過去(M−1)フレーム分のそれぞれのライン平均値AVm(i−(M−1))〜AVm(i−1)と、現フレームについて算出されたライン平均値AVm(i)の平均を混合回路20で求めて、これを現フレームの当該ラインに対するライン基準値(RFm(i))として出力する。
【0088】
以下、簡単のため、M=4である場合について、混合回路20とメモリ21でのライン基準値RFmの算出動作について図41乃至図44を参照して数値例を用いて説明する。
【0089】
図41は、ラインL1についてのライン基準値RF1の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL1の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF1を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL1の平均値AV1(i)として159が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL1の平均値AV1(i−3)としての113と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL1の平均値AV1(i−2)としての141と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL1の平均値AV1(i−1)として95が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL1の平均値AV1(i−3)としての113と、フィールドF(i−2)のラインL1の平均値AV1(i−2)としての141と、フィールドF(i−1)のラインL1の平均値AV1(i−1)としての95を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL1の平均値AV1(i)である159と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL1の平均値)の平均AA1を図41に示すように、
AA1(i)=(113+141+95+159)/4=127
により求め、ラインL1のためのライン基準値RF1(i)としてAA1(i)=127をオフセット算出回路16に供給する。
【0090】
図42は、ラインL2についてのライン基準値RF2の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL2の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF2を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL2の平均値AV2(i)として103が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL2の平均値AV2(i−3)としての151と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL2の平均値AV2(i−2)としての79と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL2の平均値AV2(i−1)としての175が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL2の平均値AV2(i−3)としての151と、フィールドF(i−2)のラインL2の平均値AV2(i−2)としての79と、フィールドF(i−1)のラインL2の平均値AV2(i−1)としての175を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL2の平均値AV2(i)である103と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL2の平均値)の平均AA2(i)を、図42に示すように、
AA2(i)=(151+79+175+103)/4=127
により求め、ラインL2のためのライン基準値RF2(i)としてAA2(i)=127をオフセット算出回路16に供給する。
【0091】
図43は、ラインL3についてのライン基準値RF3の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL3の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF3を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL3の平均値AV3(i)として167が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL3の平均値AV3(i−3)としての87と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL3の平均値AV3(i−2)としての137と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL3の平均値AV3(i−1)としての117が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL3の平均値AV3(i−3)としての87と、フィールドF(i−2)のラインL3の平均値AV3(i−2)としての137と、フィールドF(i−1)のラインL3の平均値AV3(i−1)としての117を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL3の平均値AV3(i)である167と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL3の平均値)の平均AA3(i)を図43に示すように、
AA3(i)=(87+137+117+167)/4=127
により求め、ラインL3のためのライン基準値RF3(i)としてAA3(i)=127をオフセット算出回路16に供給する。
【0092】
図44は、ラインL4についてのライン基準値RF4の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL4の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF4を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL4の平均値AV4(i)として79が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL4の平均値AV4(i−3)としての175と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL4の平均値AV3(i−2)としての99と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL4の平均値AV2(i−1)としての155が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL4の平均値AV4(i−3)としての175と、フィールドF(i−2)のラインL4の平均値AV4(i−2)としての99と、フィールドF(i−1)のラインL4の平均値AV4(i−1)としての155を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL4の平均値AV4(i)である79と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL4の平均値)の平均AA4(i)を図44に示すように、
AA4(i)=(175+99+155+79)/4=127
により求め、ラインL4のためのライン基準値RF4(i)としてAA4(i)=127をオフセット算出回路16に供給する。
【0093】
なお、上記の例では、ラインL1〜L4の複数フレームの平均AA1(i)〜AA4(i)が互いに一致し、すべて127となっているが、これは偶然であり、実際には、これらは一致するとは限らず、また127になるとは限らないが、しかし、127に近い値になる傾向があり、フレーム数Mを増やすほど、127により近くなる傾向がある。ここでは、簡単のため、127に一致するものとして説明を行っている。
【0094】
図45に、オフセット算出回路6の出力信号FSとして混合回路20で生成した各ラインのライン基準値RFm(i)から平均値算出回路15で算出した現フレームの画素平均値AVm(i)を差引いて算出したオフセット補正量FSmを示す。
ラインL1のオフセット補正量FS1(i)はラインL1の基準値RF1(i)=127とラインL1の平均値AV1(i)=159から
FS1(i)=127−159=−32
により、ラインL2のオフセット補正量FS2(i)はラインL2の基準値RF2(i)=127とラインL2の平均値AV2(i)=103から
FS2(i)=127−103=+24
により、ラインL3のオフセット補正量FS3(i)はラインL3の基準値RF3(i)=127とラインL3の平均値AV3(i)=167から
FS3(i)=127−167=−40
により、ラインL4のオフセット補正量FS4(i)はラインL4の基準値RF4(i)=127とラインL4の平均値AV4(i)=79から
FS4(i)=127−79=+48
によりそれぞれ求められる。
【0095】
図45はまた、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出したオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16で、当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけ図2のA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL1の信号はオフセット補正量FS1(i)である−32だけオフセット補正され、ラインL2の信号はオフセット補正量FS2(i)である+24だけオフセット補正され、ラインL3の信号はオフセット補正量FS3(i)である−40だけオフセット補正され、ラインL4の信号はオフセット補正量FS4(i)である+48だけオフセット補正される。即ち、このようにして、ラインL1〜L4の信号は各ライン基準値RFmである127に各ラインのオフセット補正後の信号FG1(i)〜FG4(i)の平均が一致するように、オフセット補正される。このようにして、低温部分に相当するラインL1〜L4の横引き状のノイズが抑圧される。
【0096】
図46は、ラインL5についてのライン基準値RF5の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL5の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF5を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL5の平均値AV5(i)として191が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL5の平均値AV5(i−3)としての127と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL5の平均値AV5(i−2)としての221と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL5の平均値AV5(i−1)としての97が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL5の平均値AV5(i−3)としての127と、フィールドF(i−2)のラインL5の平均値AV5(i−2)としての221と、フィールドF(i−1)のラインL5の平均値AV5(i−1)としての97を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL5の平均値AV5(i)である191と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL5の平均値)の平均AA5(i)を図46のように、AA5(i)=(127+221+97+191)/4=159により求め、ラインL5のライン基準値RF5としてAA5(i)=159をオフセット算出回路16に供給する。
【0097】
図47は、ラインL6についてのライン基準値RF6の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL6の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF6を求める場合について説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL6の平均値AV6(i)として135が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL6の平均値AV6(i−3)としての183と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL6の平均値AV7(i−2)としての105と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL6の平均値AV8(i−1)としての213が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL6の平均値AV6(i−3)としての183と、フィールドF(i−2)のラインL6の平均値AV6(i−2)としての105と、フィールドF(i−1)のラインL6の平均値AV6(i−1)としての213を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL6の平均値AV6(i)である135と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL6の平均値)の平均AA6(i)を図47に示すように、
AA6(i)=(183+105+213+135)/4=159
により求め、ラインL6のライン基準値RF6(i)として、AA6(i)=159をオフセット算出回路16に供給する。
【0098】
図48は、ラインL7についてのライン基準値RF7の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL7の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF7を求める場合について説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL7の平均値として199が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL7の平均値AV7(i−3)としての148と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL7の平均値AV7(i−2)としての170と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL7の平均値AV7(i−1)としての119が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL7の平均値AV7(i−3)としての148と、フィールドF(i−2)のラインL7の平均値AV7(i−2)としての170と、フィールドF(i−1)のラインL7の平均値AV7(i−1)としての119を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL7の平均値AV7(i)である199と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL7の平均値)の平均AA7(i)を図48に示すように、
AA7(i)=(148+170+119+199)/4=159
により求め、ラインL7のライン基準値RF7(i)としてAA7(i)=159をオフセット算出回路16に供給する。
【0099】
図49は、ラインL8についてのライン基準値RF8の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL8の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF8を求める場合について説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL8の平均値として111が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL8の平均値AV8(i−3)としての135と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL8の平均値AV8(i−2)としての207と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL8の平均値AV8(i−1)としての183が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL8の平均値AV8(i−3)としての135と、フィールドF(i−2)のラインL8の平均値AV8(i−2)としての207と、フィールドF(i−1)のラインL8の平均値AV8(i−1)としての183を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL8の平均値AV8(i)である111と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL8の平均値)の平均AV8(i)を図49に示すように、
AA8(i)=(135+207+183+111)/4=159
により求め、ラインL8のライン基準値RF8(i)としてAA8(i)=159をオフセット算出回路16に供給する。
【0100】
なお、上記の例では、ラインL5〜L8の複数フレームの平均AA5(i)〜AA8(i)が互いに一致し、すべて159となっているが、これは偶然であり、実際には、これらは一致するとは限らず、また159になるとは限らないが、しかし、159に近い値になる傾向があり、フレーム数Mを増やすほど、159により近くなる傾向がある。ここでは、簡単のため、159に一致するものとして説明を行っている。
【0101】
図50に、オフセット算出回路6の出力信号FSとして混合回路20で生成した各ラインのライン基準値RFm(i)から平均値算出回路15で算出した現フレームの画素平均値AVm(i)を差引いて算出したオフセット補正量FSmを示す。
ラインL5のオフセット補正量FS5(i)はラインL5の基準値RF5(i)=159とラインL5の平均値AV5(i)=191から
FS5(i)=159−191=−32
により、ラインL6のオフセット補正量FS6(i)はラインL6の基準値RF6(i)=159とラインL6の平均値AV6(i)=135から
FS6(i)=159−135=+24
により、ラインL7のオフセット補正量FS7(i)はラインL7の基準値RF7(i)=159とラインL7の平均値AV7(i)=199から
FS7(i)=159−199=−40により、ラインL8のオフセット補正量FS8(i)はラインL8の基準値RF8(i)=159とラインL8の平均値AV8(i)=111から
FS8(i)=159−111=+48
により、それぞれ求められる。
【0102】
図50はまた、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16における当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけ図40のA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL5の信号DG5はオフセット補正量FS5(i)である−32だけオフセット補正され、ラインL6の信号DG6はオフセット補正量FS6(i)である+24だけオフセット補正され、ラインL7の信号DG7はオフセット補正量FS7(i)である−40だけオフセット補正され、ラインL8の信号DG8はオフセット補正量FS8(i)である+48だけオフセット補正される。即ち、このようにして、ラインL5〜L8の信号DG5〜DG8は各ライン基準値RFmである159に各ラインの補正後の信号FG5(i)〜FG8(i)の平均が一致するようにオフセット補正される。このようにして、低温部から高温部に変化するラインL5〜L8の横引き状のノイズが抑圧される。
【0103】
このようにして、オフセット補正回路8からは、横引き状のノイズが抑圧された信号FGmが出力される。
図51にラインL1〜L4についての信号DG1(i)〜DG4(i)をオフセット補正することにより得られる信号FG1(i)〜FG4(i)を示し、図52にラインL5〜L8についての信号DG5(i)〜DG8(i)をオフセット補正することにより得られる信号FG5(i)〜FG8(i)を示す。この信号が出力端子9から表示部25に送られる。出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図53に示す如くとなる。
図53において、各部分(領域)の明るさは、図5の対応する部分の温度に対応するものとなる。なお、温度が高いほど、信号の値(階調値)が大きく、表示画像がより明るくなるものとしている。
図53の領域117aは、図5の背景(低温部)101aに対応し、その領域117aの明るさは信号値127に対応する明るさであり、領域117bは、図5の高温部101bに対応し、その領域117bは、領域117aよりも明るく、信号値191に対応する明るさを持つ。
このように、表示画像は実際の信号レベルからのずれなく、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。また、図5の被写体に相当する画像信号を出力端子9に得ることが出来る。
【0104】
以上説明したように実施の形態3によれば、水平走査線毎のレベル変動を算出して、撮像信号の信号レベルをライン基準値に補正することにより、水平走査線毎の信号レベルが一定に安定し、画面上においても横引き状ノイズを抑圧することができる。
【0105】
また、ライン基準値を当該ラインの画素平均値AV及び過去フレームの平均値から生成したことにより、被写体の温度レベルの違いによるライン毎の信号レベル差を無くすことができる。
【0106】
実施の形態4.
図54は、この発明の実施の形態4の赤外線撮像装置を示すブロック図である。図54の赤外線撮像装置は、図40の装置と概して同じであるが、基準値生成手段24を構成する混合回路20及びメモリ21の接続及び動作が異なる。
図54の装置では、メモリ21が混合回路20で算出された基準値を記憶し、メモリ21に記憶された基準値が混合回路20に供給される。
図54の装置においては、図40の装置のように、現在のフレームの各ラインについての平均値、及び所定数の過去のフレームにおける同じラインについての平均値の平均を求めるのではなく、現フレームについて平均値算出手段15において各ラインについて算出された平均値と、同じラインについて前フレームのために求められ、メモリ21に記憶されている基準値との加重平均を混合回路20で求めることにより、現フレームについて当該ラインのための基準値を求める。
例えば、現フレームにおいて求められた平均値AViに対する重み付け係数を1/N(Nは1より大きい値である)とし、前フレームにおける基準値RF(i−1)に対する重み付け係数を{1−(1/N)}とする。この場合、
現フレームの基準値RFiは、
RFi=AVi×(1/N)+RF(i−1)×(1−(1/N))
により求められる。
各フレームについて混合回路20で算出された基準値RFiは、メモリ21に書き込まれ、次のフレーム期間においてメモリ21から読み出されて、「前フレームの基準値(RF(i−1)」として混合回路20に供給される。
ここでNは正の整数とし、2のべき乗、例えば16、32、64、128とするのが好ましい。
【0107】
前フレームについての基準値も同様の処理を過去に繰り返すことにより求められたものであるので、このような方法による基準値の算出は、過去のすべてフレームの平均値を考慮に入れ、現在に近いものほどより大きな重み付けをして平均を求める方法であり、フレーム方向の平均を求める方法の一種であると言える。
【0108】
図54の構成を取る場合、メモリ21は、ライン各々に対応したライン基準値を格納するためのメモリ容量を持つ必要がある。
【0109】
図54の構成でも、図40の構成と同様の効果が得られるほか、メモリ21の容量が図40の構成よりも少なくて済むと言う利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】この発明の実施の形態1に係る赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のA/D変換器6から出力されるライン毎の信号DGm(m=1、2、3、4)のレベルを図である。
【図3】図1の平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6から出力される信号のライン毎(水平走査周期毎)の画素平均値AVm(m=1、2、3、4)を示す図である。
【図4】図1のオフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSm(m=1、2、3、4)を加えて、オフセット補正する動作を示す図である。
【図5】被写体の一例を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す図である。
【図6】図5に示される被写体を撮像することにより得られる信号がノイズを含まないとした場合に、ラインL1〜L4,L5〜L8から得られる信号の値を示す図である。
【図7】図6に示される信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像を示す図である。
【図8】図5に示される被写体を撮像したときにA/D変換器6から出力される、ラインL1〜L4の信号DG1〜DG4を示す図である。
【図9】図5に示される被写体を撮像したときの平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6の出力信号のライン毎の画素平均値AV1〜AV4を示す図である。
【図10】図5に示される被写体を撮像したときにA/D変換器6から出力される、ラインL5〜L8の信号DG5〜DG8を示す図である。
【図11】図5に示される被写体を撮像したときの平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6の出力信号のライン毎の画素平均値AV5〜AV8を示す。
【図12】図5に示される被写体を撮像したときのラインL1〜L4の各々についての、オフセット補正回路8の出力信号FG1〜FG4を示す図である。
【図13】図5に示される被写体を撮像したときのラインL5〜L8の各々についての、オフセット補正回路8の出力信号FG5〜FG8を示す図である。
【図14】図12及び図13に示される信号FG1〜FG8が出力端子9から表示部25に送られたときに、表示部25で表示される画像を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態2に係る赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図16】被写体の一例を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す図である。
【図17】図16に示される被写体を撮像することにより得られる各ラインの信号が、ノイズを含まないとした場合の、ラインL1〜L8から得られる信号を示す図である。
【図18】図17に示される信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像を示す図である。
【図19】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図16に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力される信号FG1〜FG8を示す図である。
【図20】図19に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図21】画素範囲設定回路22により、26番目の画素を開始画素とし、75番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図16に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力される信号FG1〜FG8を示す図である。
【図22】図21に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図23】被写体の他の例を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す図である。
【図24】図23に示される被写体を撮像することにより得られる各ラインの信号が、ノイズを含まないとした場合の、ラインL1〜L8から得られる信号を示す図である。
【図25】図24に示される信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像を示す図である。
【図26】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図23に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力される信号FG1〜FG8を示す図である。
【図27】図26に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図28】画素範囲設定回路22により、51番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図23に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力される信号FG1〜FG8を示す図である。
【図29】図28に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図30】被写体のさらに他の例を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す図である。
【図31】図30に示される被写体を撮像することにより得られる各ラインの信号が、ノイズを含まないとした場合の、ラインL1〜L4から得られる信号を示す図である。
【図32】図30に示される被写体を撮像することにより得られる各ラインの信号が、ノイズを含まないとした場合の、ラインL5〜L8から得られる信号を示す図である。
【図33】図31、図32に示される信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像を示す図である。
【図34】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図30に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力されるラインL1〜L4についての信号FG1〜FG4を示す図である。
【図35】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図30に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力されるラインL5〜L8についての信号FG5〜FG8を示す図である。
【図36】図34、図35に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図37】画素範囲設定回路22により、51番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図30に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力されるラインL1〜L4についての信号FG1〜FG4を示す図である。
【図38】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、50番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図30に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力されるラインL5〜L8についての信号FG5〜FG8を示す図である。
【図39】図37、図38に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図40】この発明の実施の形態3に係る赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図41】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL1についての平均値AV1(i−3)〜AV1(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF1(i)を示す図である。
【図42】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL2についての平均値AV2(i−3)〜AV2(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF2(i)を示す図である。
【図43】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL3についての平均値AV3(i−3)〜AV3(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF3(i)を示す図である。
【図44】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL3についての平均値AV4(i−3)〜AV4(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF4(i)を示す図である。
【図45】オフセット算出回路6の出力信号FSとして混合回路20で生成した各ラインのライン基準値RF1(i)〜RF4(i)から平均値算出回路15で算出した現フレームの画素平均値AV1(i)〜AV4(i)を差引いて算出したオフセット補正量FS1(i)〜FS4(i)を示す図である。
【図46】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL5についての平均値AV5(i−3)〜AV5(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF5(i)を示す図である。
【図47】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL6についての平均値AV6(i−3)〜AV6(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF6(i)を示す図である。
【図48】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL7についての平均値AV7(i−3)〜AV7(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF7(i)を示す図である。
【図49】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL8についての平均値AV8(i−3)〜AV8(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF8(i)を示す図である。
【図50】オフセット算出回路6の出力信号FSとして混合回路20で生成した各ラインのライン基準値RF5(i)〜RF8(i)から平均値算出回路15で算出した現フレームの画素平均値AV5(i)〜AV8(i)を差引いて算出したオフセット補正量FS5(i)〜FS8(i)を示す図である。
【図51】ラインL1〜L4についての信号DG1(i)〜DG4(i)をオフセット補正することにより得られる信号FG1(i)〜FG4(i)を示す図である。
【図52】ラインL5〜L8についての信号DG5(i)〜DG8(i)をオフセット補正することにより得られる信号FG5(i)〜FG8(i)を示す図である。
【図53】図51、図52に示される信号FG1(i)〜FG8(i)を用いて表示される画像を示す図である。
【図54】この発明の実施の形態4に係る赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0111】
1 レンズ、 2 シャッタ、 3 撮像素子、 4 減算回路、 5 増幅回路、 6 A/D変換器、 7 遅延回路、 8 オフセット補正回路、 9 出力端子、 10 減衰回路、 11 加算回路、 12 更新回路、 13 フレームメモリ、 14 帰還用D/A変換器、 15 平均値算出回路、 16 オフセット算出回路、 17 タイミング生成回路、 18 シャッタ制御回路、 19 出力用D/A変換器、 20 混合回路、 21 メモリ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線固体撮像素子を用いた赤外線撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線固体撮像素子の一例としての熱型赤外線固体撮像素子として、画素が2次元に配列され、行ごとに駆動線によって接続され、列ごとに信号線によって接続されたものが知られている。この撮像素子においては、垂直走査回路とスイッチにより各駆動線が順番に選択され、選択された駆動線を介して電源から画素に通電される。画素の出力は信号線を介して積分回路に伝えられ、積分回路で積分及び増幅され、水平走査回路とスイッチによって順次出力端子へ出力される(特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−214639号公報(段落0003)
【非特許文献1】石川等、「従来のシリコンICプロセスを用いた低コスト320×240非冷却IRFPA」、Part of the SPIE Conference on infrared Technology and Applications XXV、1999年4月発行、Vol.3698、p.556頁から564頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤外線固体撮像素子の駆動線に加えられる垂直駆動パルスの波高値のわずかのばらつきでも画素出力に重畳され、さらに積分回路で増幅されることで、画面上で水平走査線毎の輝度がランダムに変動する横引き状のノイズとして視認される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、
所定の波長域に感度を有する撮像手段と、
所定の波長域成分を前記撮像手段の撮像面上で結像させる結像手段と
を備えた赤外線撮像装置において、
前記撮像手段から出力される撮像信号をデジタル信号に変換してデジタル撮像信号を出力するデジタル変換手段と、
前記デジタル変換手段から出力される前記デジタル撮像信号の水平走査期間毎に水平有効画素部分の平均を算出してライン平均値を出力するライン平均値算出手段と、
前記ライン平均値算出手段から出力された前記ライン平均値と基準値とのレベル差から水平走査期間毎にオフセット値を算出するオフセット算出手段と、
前記デジタル変換手段から出力される前記デジタル撮像信号を前記平均値算出手段及び前記オフセット算出手段における処理のための時間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段で遅延した前記デジタル撮像信号に対して前記オフセット算出手段で算出したオフセット値に基づいてレベル補正を行うオフセット補正手段と
を備えたことを特徴とする赤外線撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、水平走査線毎のレベル変動を算出して、撮像信号の信号レベルを補正することにより、水平走査線毎の信号レベルが一定に安定し、画面上においても水平走査線毎の輝度がランダムに変動する横引き状のノイズを抑圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
図示の赤外線撮像装置は、レンズ1と、シャッタ2と、撮像素子3と、減算回路4と、増幅回路5と、A/D変換器6と、減衰回路10と、加算回路11と、更新回路12と、フレームメモリ13と、帰還用D/A変換器14と、タイミング生成回路17と、シャッタ制御回路18と、遅延回路7と、オフセット補正回路8と、出力用D/A変換器19と、出力端子9と、平均値算出回路15と、オフセット算出回路16と、基準値生成回路23とを備える。
【0008】
まず標準動作状態としてシャッタ2が開いた状態での動作を説明する。被写体が放射する赤外線はレンズ1により集光され、開放状態のシャッタ2を介して撮像素子3上に結像する。撮像素子3には赤外線を検知する素子が二次元平面上に配列されており、各素子から赤外線強度に応じて変化する信号が得られる。撮像素子3に配列されている赤外線検知素子は概ね8〜14マイクロメートルの波長帯域に感度を有する。
【0009】
減算回路4は、撮像素子3の出力信号である撮像信号SNから、フレームメモリ13に格納されているデジタル固定パターンノイズ(FPN)をアナログ変換して得られる固定パターンノイズAFPNを減算した信号成分だけからなる信号SGを出力する。帰還用D/A変換器14はフレームメモリ13に格納されているデジタル固定パターンノイズFPNをアナログ変換した固定パターンノイズAFPNを減算回路4に供給する。減算回路4の出力信号SGは、増幅回路5で所定の増幅率で増幅される。増幅回路5の増幅率は、撮像信号SNから固定パターンノイズAFPNを除いた信号成分SGの振幅(変動範囲)がA/D変換器6の入力ダイナミックレンジのフルレンジになるように設定される。増幅回路5の出力信号はA/D変換器6でデジタル信号DGに変換される。
【0010】
A/D変換器6の出力信号DGは、水平走査周期毎にDC信号レベルがランダムに変動する横引き状のノイズを含んでいる。
平均値算出回路15は、水平走査周期毎に水平有効画素範囲の各画素について画素平均値AVを算出する。オフセット算出回路16は、予め定められた、固定レベルの基準値RFから平均値算出回路15で算出した画素平均値AVを差引いてオフセット補正量FSを算出する。基準値RFはA/D変換器6の出力信号DGのダイナミックレンジの中心値(信号が取り得る値の範囲の中心値)に設定される。A/D変換器6の出力信号DGが例えば8ビットのデジタル信号(0から255までの範囲内の値を取る)である場合、基準値RFは、上記の中心値である127に設定される。
【0011】
オフセット補正回路8は、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出したオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正された信号FGを出力する。
遅延回路7は、A/D変換器6の出力信号DGを所定の期間、即ち、当該水平走査線について、平均値算出回路15及びオフセット算出回路16で当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間、例えば1水平走査期間だけ遅延させる。
出力用D/A変換器19はオフセット補正回路8の出力信号FGをアナログ変換して出力端子9から出力する。出力端子9から出力された信号は、表示部25に送られて、信号に対応した画像が表示される。
【0012】
A/D変換器6の出力信号DGに含まれる横引き状のノイズの抑圧動作の詳細について図2乃至図4を参照して説明する。図2乃至図4は、水平方向の画素数が100であり、垂直方向のライン数が4である場合を示しており、各々横軸に水平方向の画素位置、縦軸に図1の回路内のそれぞれの位置に現れる信号のレベルをとっている。A/D変換器6の出力信号DGは例えば8ビットのデジタル信号であり、信号レベルは0から255までの範囲内の値を取る。説明を分かりやすくするため、A/D変換器6の出力信号DGとして、大きさが互いに異なる横引き状ノイズを含むものを想定して説明する。
【0013】
図2は、A/D変換器6から出力されるライン毎の信号DGm(m=1、2、3、4)のレベルを示す。ラインL1とラインL3の信号DG1、DG3は中心値である127よりも大きく、画面上ではやや白い筋状に視認される。ラインL2とラインL4の信号DG2、DG4は中心値である127よりも小さく、画面上ではやや黒い筋状に視認される。尚、上記のように、ラインL1〜L4の信号(A/D変換器6の出力)をDG1〜DG4で表し、一般的にはラインmの信号をDGmで表すが、どのラインにも当てはまる説明に際しては単に「DG」と表すことも、「DGm」と表すこともある。他の記号についても同様である。
【0014】
図3は、平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6から出力される信号のライン毎(水平走査周期毎)の画素平均値AVm(m=1、2、3、4)を示す。この平均値は、各ライン内の水平有効画素範囲内のすべての画素についての信号値を平均することで求められたものである。
図3では、ラインL1の平均値AV1が150、ラインL2の平均値AV2が30、ラインL3の平均値AV3が220、ラインL4の平均値AV4が60と求まったものとしている。
【0015】
図3はまた、オフセット算出回路6の出力信号FS、即ち、基準値生成手段23から供給される基準値RFである127から、平均値算出回路15で算出された画素平均値AV1〜AV4を差引いて算出したオフセット補正量FSm(m=1、2、3、4)を示す。ラインL1のオフセット補正量FS1が127−150=−23、ラインL2のオフセット補正量FS2が127−30=+97、ラインL3のオフセット補正量FS3が127−220=−93、ラインL4のオフセット補正量FS4が127−60=+67と求められたものとしている。
【0016】
図4は、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSm(m=1、2、3、4)を加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16における当該水平走査線のオフセット補正量FSmの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけ図2のA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL1の信号はFS1=−23だけオフセット補正され、ラインL2の信号はFS2=+97だけオフセット補正され、ラインL3の信号はFS3=−93だけオフセット補正され、ラインL4の信号はFS4=+67だけオフセット補正される。このようにして、各ラインの信号DG1〜DG8はダイナミックレンジの中心値CDである127に各ラインのオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均が一致するように、オフセット補正される。このように処理することで、ラインL1〜L4における横引き状のノイズが抑圧される。
【0017】
A/D変換器6の出力信号DGに含まれる横引き状のノイズの抑圧動作の詳細について上記の例(図2乃至図4に示す例)とは異なる信号パターンを有する例について図5乃至図14を参照して説明する。図5乃至図14は、水平方向の画素数が100、垂直方向のライン数が8である場合を例としている。図6、図8乃至図13では各々横軸に水平方向の画素、縦軸に信号レベルをとっている。
【0018】
図5は被写体を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す。図7は被写体に対応する画像(ノイズが重畳されていないものとし、かつ本発明によるオフセット補正を加えない場合に表示される画像)を示す。図14は表示画像を概略的に示す。
A/D変換器6の出力信号DGは例えば8ビットのデジタル信号であり、0から255までの範囲内の値を取る。
【0019】
撮像素子3が図5に示すように、低温の背景101aの右下の一角の部分、即ち(対応する画像において、ラインL5〜L8のうちの右半分101bに高温の物体(注目被写体)が撮像範囲に含まれるとき、撮像素子3からの出力信号は全8ラインのうち例えば上側の4ライン、即ちラインL1〜L4は低温部101aに相当する信号を、下側の4ライン、即ちラインL5〜L8は低温部101aから高温部101bに変化する信号を出力する。但し、撮像素子3の出力信号は、横引き状のノイズを含んでいる。
【0020】
仮に図5に示される被写体を撮像することにより得られる信号にノイズが含まれず(重畳されておらず)、低温部101aから得られる信号の値が127であり、高温部101bから得られる信号の値が191であるとする。
この場合、ラインL1〜L4から得られる信号の値は図6に符号102aで示す如くライン全体にわたり、127であり、ラインL5〜L8から得られる信号の値は図6に符号102bで示す如く、各ラインのうち、1番目から50番目までの画素では127である一方、51番目から100番目の画素では、191である。
【0021】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図7に示す如くとなる。図7において、各部分(領域)の明るさは、図5の対応する部分の温度に対応するものとなる。なお、温度が高いほど、信号の値(階調値)が大きく、表示画像がより明るくなるものとしている。
図7の領域103aは、図5の背景(低温部)101aに対応し、その領域103aの明るさは信号値127に対応する明るさであり、領域103bは、図5の高温部101bに対応し、その領域103bは、領域103aよりも明るく、信号値191に対応する明るさを持つ。
【0022】
図8は、A/D変換器6から出力される、全8ラインのうちラインL1〜L4についてライン毎の信号DG1〜DG4のレベルを示す。ラインL1とラインL3の信号DG1、DG3はダイナミックレンジの中心値である127よりも大きく、画面上ではやや白い筋状に視認される。ラインL2とラインL4の信号DG2、DG4はダイナミックレンジの中心値である127よりも小さく、画面上ではやや黒い筋状に視認される。
【0023】
図9は、平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6の出力信号のライン毎の画素平均値AV1〜AV4を示す。この平均値AV1〜AV4は、各ライン内の水平有効画素範囲内のすべての画素についての信号値を平均することで求められたものである。
図9では、ラインL1の信号DG1の平均値AV1が159、ラインL2の信号DG2の平均値AV2が103、ラインL3の信号DG3の平均値AV3が167、ラインL4の信号DG4の平均値AV4が79と求まったものとしている。
【0024】
図9はまた、オフセット算出回路6の出力信号FSm(m=1、2、3,4)、即ち基準値生成手段23から供給される基準値RFである127から、平均値算出回路15で算出された画素平均値AV1〜AV4を差引いて算出したオフセット補正量FSm(m=1、2、3、4)を示す。ラインL1のオフセット補正量FS1が127−159=−32、ラインL2のオフセット補正量FS2が127−103=+24、ラインL3のオフセット補正量FS3が127−167=−40、ラインL4のオフセット補正量FS4が127−79=+48と求められたものとしている。
【0025】
図9はまた、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16における当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL1の信号DG1はオフセット補正量FS1である−32だけオフセット補正され、ラインL2の信号DG2はオフセット補正量FS2である+24だけオフセット補正され、ラインL3の信号DG3はオフセット補正量FS3である−40だけオフセット補正され、ラインL4の信号DG4はオフセット補正量FS4である+48だけオフセット補正される。即ち、ラインL1〜L4の信号DG1〜DG4はダイナミックレンジの中心値CDである127に補正後の各ラインの信号FG1〜FG4の平均が一致するようにオフセット補正される。このように処理することで、ラインL1〜L4における横引き状のノイズが抑圧され、オフセット補正回路8からは、横引き状のノイズが抑圧された信号が出力される。
【0026】
図10は、A/D変換器6の出力信号DGの全8ラインのうちラインL5〜L8についてライン毎の信号DG5〜DG8のレベルを示す。ラインL5及びラインL7のうちの、低温部101aの信号DG5a、DG7aは、ダイナミックレンジの中心値CDである127よりも大きく、画面上ではやや白い筋状に視認される。ラインL6及びラインL8の低温部101aの信号DG6a、DG8aは、ダイナミックレンジの中心値CDである127よりも小さく、画面上ではやや黒い筋状に視認される。
ラインL5〜ラインL8の高温部101bの信号DG5b〜DG8bは、ダイナミックレンジの中心値CDである127よりも大きく、画面上では全体的に白っぽい中の横筋状ノイズとして視認される。
【0027】
図11は、平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6の出力信号のライン毎の画素平均値AV5〜AV8を示す。この平均値AV5〜AV8は、各ライン内の水平有効画素範囲内のすべての画素についての信号値を平均することで求められたものである。
ラインL5の信号DG5の平均値が191、ラインL6の信号DG6の平均値が135、ラインL7の信号DG7の平均値が199、ラインL8の信号DG8の平均値が111と求まったものとしている。
【0028】
図11はまた、オフセット算出回路6の出力信号FS、即ち基準値生成手段23から供給される基準値RFである127から、平均値算出回路15で算出された画素平均値AV5〜AV8を差引いて算出したオフセット補正量FS5〜FS8を示す。ラインL5のオフセット補正量FS5が127−191=−64、ラインL6のオフセット補正量FS6が127−135=−8、ラインL7のオフセット補正量FS7が127−199=−72、ラインL8のオフセット補正量FS8が127−111=+16と求められたものとしている。
【0029】
図11はまた、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16における当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL5の信号DG5はオフセット補正量FS5である−64だけオフセット補正され、ラインL6の信号DG6はオフセット補正量FS6である−8だけオフセット補正され、ラインL7の信号DG7はオフセット補正量FS7である−72だけオフセット補正され、ラインL8の信号DG8はオフセット補正量FS8である+16だけオフセット補正される。このように、各ラインL5〜L8の信号DG5〜DG8はダイナミックレンジの中心値CDである127に補正後の各ラインの信号FG5〜FG8の平均が一致するように、オフセット補正される。このよう処理することで、ラインL5〜L8における横引き状のノイズが抑圧され、オフセット補正回路8からは、横引き状のノイズが抑圧された信号が出力される。
【0030】
図12は、ラインL1〜L4の各々についての、オフセット補正回路8の出力信号FG1〜FG4を示し、図13は、ラインL5〜L8の各々についての、オフセット補正回路8の出力信号FG5〜FG8を示す。図12及び図13に示される信号FG1〜FG8が出力端子9から表示部25に送られる。出力端子9から出力される信号により表示部25で表示される画像は図14に示す如くとなる。
図示のように、ラインL1〜L4から成る領域では、各ラインの平均明るさV3(=127)は、図7の領域103aの明るさV2(=127)と略等しい。ラインL5〜L8のうち左半分の領域104bの明るさV4(=95)は、図7の領域103aの明るさV1(=127)よりも小さく、一方右半分の領域104cの明るさV5(=159)は、図7の領域103bの明るさV2(=191)よりも小さい。ラインL5〜L8の各ラインの平均明るさ(V4+V5)/2は、ラインL1〜L4の平均明るさV3と等しい。
また、ラインL1〜L4から成る領域104aでも、ラインL5〜L8から成る104b、104cでも、横引き状のノイズが抑制されている。このように、オフセット補正を行う結果、ラインL5〜L8で実際の信号レベルからずれが生じるものの、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0031】
次にデジタル固定パターンノイズFPNをフレームメモリ13に格納する動作(FPN取込み処理)を、図1を参照して説明する。このときシャッタ2は遮蔽状態に、更新回路12はフレームメモリ13の更新を許可された状態に制御される。シャッタ2が遮光状態なので撮像素子3からは固定パターンノイズ(FPN)を含むノイズ成分のみが出力信号として出力される。
【0032】
減算回路4は、撮像素子3の出力信号である撮像信号から、フレームメモリ13に格納されているデジタル固定パターンノイズ(FPN)を帰還用D/A変換器14でアナログ変換して得られる固定パターンノイズAFPNを減算する。減算回路4の出力信号は、増幅回路5で所定の増幅率で増幅された後、A/D変換器6でデジタル信号に変換される。
【0033】
減衰回路10は、A/D変換器6の出力信号DGを所定の減衰率で減衰した信号を出力する。減衰回路10の所定の減衰率は、増幅回路5の所定の増幅率を考慮して、減衰回路10から出力される信号の振幅が元信号(減算回路4の出力)と同じか、又はより小さくなるような減衰率とする。
【0034】
加算回路11は、フレームメモリ13に格納されている固定パターンノイズFPN(1フレーム前に取得された固定パターンノイズであるので、FPN(i−1)と表すこともある)と、減衰回路10の出力信号を加算し、最新のデジタル固定パターンノイズ(FPN(i)と表すこともある。)として出力する。(なお、上記のように、1フレーム前に取得された固定パターンノイズを符号「FPN(i−1)」で表し、現フレームの固定パターンノイズを符号「FPN(i)」で表すが、どのフレームの固定パターンノイズについても当てはまる説明に際しては、単に「FPN」と表す。)加算回路11で加算したデジタル固定パターンノイズ(FPN(i−1))は、減算回路4において撮像素子3の出力信号SGから差し引いた固定パターンノイズAFPNをアナログ変換する前の信号FPN(i−1)に等しい。
【0035】
加算回路11から出力された最新のデジタル固定パターンノイズ(FPN(i))は更新回路12を経由してフレームメモリ13に格納される。フレームメモリ13の格納信号は、次のフレーム期間において、帰還用D/A変換器14でアナログ信号AFPNに変換された後、減算回路4に供給されると共に加算回路11にも供給される。
【0036】
タイミング生成回路17はシャッタ制御回路18と更新回路12の動作タイミングを指示する信号を出力する。シャッタ制御回路18はタイミング生成回路17から出力されるタイミング信号に基づいてシャッタ2の開閉動作を制御する。更新回路12はタイミング生成回路17から出力されるタイミング信号に基づいてフレームメモリ13内の記憶データを加算回路11の出力信号で更新する。タイミング生成回路17はシャッタ2が完全に遮蔽状態の時、更新回路12によるフレームメモリ13内の記憶データの更新を許可する。
【0037】
タイミング生成回路17は、外部スイッチSWの操作によって手動モードでシャッタ2を閉じてフレームメモリ13内に保存されるデジタル固定パターンノイズ(FPN)を、その時点での撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)に対応する値となるように、更新する。また、タイミング生成回路17は、所定時間が経過する毎にシャッタ2を閉じてフレームメモリ13内に保存されるデジタル固定パターンノイズ(FPN)を、その時点での撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)に対応する値となるように更新する。
【0038】
FPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間において、フレームメモリ13は新たにデジタル固定パターンノイズ(FPN)を取込むため記憶信号を0にリセットする。帰還用D/A変換器14はフレームメモリ13から出力された0レベル信号をアナログ変換して減算回路4に供給する。減算回路4は、撮像素子3の出力信号から、フレームメモリ13に格納されている0レベル信号のアナログ変換信号を減算するので撮像素子3の出力信号をそのまま出力する。減算回路4の出力信号は、増幅回路5で所定の増幅率で増幅された後、A/D変換器6でデジタル信号に変換される。この段階では、撮像素子3から出力される固定パターンノイズ(FPN)が、そのままA/D変換器6に入力されるため、A/D変換器6の入力ダイナミックレンジよりも大きい固定パターンノイズ(FPN)は振幅の中心部分だけがA/D変換される。入力ダイナミックレンジから外れた信号は、A/D変換されないで切り捨てられる。この時、A/D変換器6に供給される信号の直流電位は、A/D変換器6の入力ダイナミックレンジの中心になるよう調整されている。
【0039】
減衰回路10は、A/D変換器6の出力信号DGを減衰する。加算回路11は、フレームメモリ13に格納されているリセット後の0レベル信号と、減衰回路10の出力信号とを加算し、FPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)を生成する。加算回路11から出力されたデジタル固定パターンノイズ(FPN)は更新回路12を経由してフレームメモリ13に格納される。
【0040】
FPN取込み処理開始後の2番目のフレーム期間において、減算回路4は、撮像素子3から出力される固定パターンノイズ(FPN)から、FPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)のアナログ変換信号を減算する。例えば増幅回路5の増幅率と減衰回路10の減衰率が整合している場合は、FPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間においてA/D変換器6でA/D変換されないで切り捨てられた部分の全部又は一部が減算回路4の出力信号になる。
【0041】
減算回路4の出力信号は、増幅回路5で所定の増幅率で増幅された後、A/D変換器6でデジタル信号に変換される。撮像素子3の出力信号は振幅の中心部分だけがA/D変換される。入力ダイナミックレンジから外れた信号は、A/D変換されないで切り捨てられる。この時、A/D変換器6に供給される信号の直流電位は、A/D変換器6の入力ダイナミックレンジの中心になるよう調整されている。
【0042】
減衰回路10は、A/D変換器6の出力信号DGを減衰する。加算回路11は、フレームメモリ13に格納されているFPN取込み処理開始後の最初のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)と、減衰回路10の出力信号とを加算し、FPN取込み処理開始後の2番目のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)を生成する。加算回路11から出力されたFPN取込み処理開始後の2番目のフレーム期間のデジタル固定パターンノイズ(FPN)は更新回路12を経由してフレームメモリ13に格納される。
【0043】
このように、シャッタ2を遮蔽状態にして固定パターンノイズ(FPN)の書込みを所定フレーム期間行うことで、撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)を、デジタル化したデジタル固定パターンノイズ(FPN)をフレームメモリ13に取込むことができる。固定パターンノイズ(FPN)の取込みに必要なフレーム数は、撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)の振幅、増幅回路5の増幅率、減衰回路10の減衰率などから求められる。タイミング生成回路17は、固定パターンノイズ(FPN)の取込み処理を所定数のフレーム期間続けるように、シャッタ制御回路18と更新回路12を制御する。上記所定数のフレーム期間はフレームメモリ13内に保存されるデジタル固定パターンノイズ(FPN)が、撮像素子3の出力信号に含まれる固定パターンノイズ(FPN)との違いが無視できるようになるのに要する時間に相当する。
【0044】
また、A/D変換器6の出力信号DGが所定値より小さくなったことで取込み完了と判断してもよい。タイミング生成回路17は、A/D変換器6の出力信号DGが1フレーム期間以上にわたって所定値より小さくなったことを確認した上で標準動作状態(通常の撮像状態)に移行するためシャッタ制御回路18と更新回路12を制御する。
【0045】
撮像素子3が出力する撮像信号から固定パターンノイズ(FPN)を差し引いた信号をデジタル変換することで、撮像素子3が出力する撮像信号をそのままデジタル変換する場合と比較し、デジタル変換器のダイナミックレンジを有効に利用することが出来る。
【0046】
A/D変換器6と帰還用D/A変換器14は例えば同じビット精度であっても出力信号の振幅、直線性などの性能に差があるため、A/D変換器6の出力信号DGを減衰しないでそのままデジタル固定パターンノイズFPN(取り込み処理中の値、即ち未だ収束していないもの)と加算するとA/D変換器6と帰還用D/A変換器14の特性差によっては信号が発散し、収束しにくくなる。そのため、減衰回路10にて振幅を所定の減衰率で減衰してからデジタル固定パターンノイズ(FPN)と加算する。これにより、A/D変換器6と帰還用D/A変換器14の特性差が吸収でき、信号の発散を防いでデジタル固定パターンノイズ(FPN)を収束させて取り込むことができる。
【0047】
以上説明したように実施の形態1によれば、水平走査線毎のレベル変動を算出して、撮像信号の信号レベルを一定値に補正することにより、水平走査線毎の信号レベルが一定に安定し、画面上においても横引き状のノイズを抑圧することができる。
【0048】
実施の形態2.
図15はこの発明の実施の形態2の赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。図15において、レンズ1、シャッタ2、撮像素子3、減算回路4、増幅回路5、A/D変換器6、減衰回路10、加算回路11、更新回路12、フレームメモリ13、帰還用D/A変換器14、タイミング生成回路17、シャッタ制御回路18、遅延回路7、オフセット補正回路8、出力用D/A変換器19、出力端子9、平均値算出回路15、オフセット算出回路16は、実施の形態1で説明した図1の同じ番号を付した回路要素と同様のもので、同様に動作するものであるので、その説明を省略する。
【0049】
図15に示される赤外線撮像装置は、画素範囲設定回路22を備えている点で図1の赤外線撮像装置と異なる。
画素範囲設定回路22は、各ラインの水平有効画素範囲内の画素のうち、平均の算出に用いられる画素範囲(平均算出画素範囲)を設定するものであり、該画素範囲の開始位置の画素(開始画素)と終了位置の画素(終了画素)を示す信号を出力する。
【0050】
平均値算出回路15は、各ラインの水平有効画素範囲内の画素のうち、画素範囲設定回路22から入力される信号で示される、開始画素から終了画素までの範囲(平均算出画素範囲)について画素平均値(ライン平均値)AVを計算してオフセット算出回路16へ供給する。
【0051】
平均値算出回路15で平均値を求めるに際して用いる画素の範囲を限定することにより、オフセット補正回路8によるオフセット補正動作が受ける効果について、以下に図16乃至図39を参照して説明する。
【0052】
図16乃至図39は水平方向の画素数が100であり、垂直方向のライン数が8である場合を示している。図17、図19、図21、図24、図26、図28、図31、図32、図34、図35、図37、図38は各々横軸に水平方向の画素、縦軸に信号レベルをとっている。
図16、図23、図30は被写体を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す。
図18、図25、図33は被写体に対応する画像(ノイズが重畳されていないものとし、かつ本発明によるオフセット補正を加えない場合に表示される画像)を示す。
図20、図22、図27、図29、図36、図39は表示画像を概略的に示す。
A/D変換器6の出力信号DGが例えば8ビットのデジタル信号であり、0か255までの範囲内の値を取る。
【0053】
一つの被写体(1番目の被写体)として、図16に示すような低温の背景105aの中央部に常温でやや温度差のある2つの部分105b、105cから成る注目物体(注目被写体)105dが撮像範囲に含まれる場合について説明する。図示の例では、1番目から25番目までの画素及び76番目から100番目までの画素が背景105aに対応し、注目物体105dのうちの、26番目から50番目までの画素から成る部分105bよりも、51番目から75番目までの画素から成る部分105cの方が若干温度が高い。
【0054】
このような被写体を撮像することで得られる各ラインの信号は、仮にノイズが重畳されていないとすれば、例えば、図17に符号105eで示すごときものとなる。図17に示すように、背景部分105aに対応する1番目から25番目までの画素、及び76番目から100番目までの画素では、信号値が0であり、26番目から50番目までの画素では、信号値が127より若干低く、51番目から75番目までの画素では信号値が127より若干高く、26番目から75番目までの画素の信号値の平均は127である。
【0055】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図18に示す如くとなる。図18において、領域106a、106b、106cがそれぞれ図16の部分105a、105b、105cに対応する。なお、被写体の温度が高いほど、信号の値(階調値)が大きく、表示画像がより明るくなるものとしている。
【0056】
まず画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定され、即ち各ラインの全体が平均算出画素範囲として設定されている場合、ラインL1〜L8の信号DG1〜DG8は、基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に、各ラインのライン全体のオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図19のようなものとなり、出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図20に示す如くとなる。図20において、領域107a、107b、107cはそれぞれ図18の対応する領域106a、106b、106cよりも明るい。特に注目物体のある中央領域107b、107c(図18の領域106b、106cに対応する)が白っぽい画像になるものの、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0057】
次に画素範囲設定回路22により、26番目の画素を開始画素とし、75番目の画素を終了画素とすることが設定され、即ち、26番目の画素から75番目の画素まで(中央部分の画素)が平均算出画素範囲として設定されている場合、水平方向中央の部分の50画素を用いて各ライン平均値が算出される。図16に示される被写体の場合、1番目から25番目までの画素と、76番目から100番目までの画素は、背景の低温部分105aに含まれるので、これらはライン平均値の計算には用いられず、注目している常温の被写体部分105b、105cのみでライン平均値が計算される。
【0058】
ラインL1〜L8の信号DG1〜DG8は、基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に、各ラインの平均算出画素範囲のオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図21のようなものとなり、出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図22に示す如くとなる。図22において、領域108a、108b、108cはそれぞれ図18の対応する領域106a、106b、106cと同じ明るさである。このため、特に注目物体のある中央領域108b、108cが白飛びや黒潰れすることなくコントラスト感のある画像が得られ、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0059】
他の被写体(2番目の被写体)として、図23のような低温の背景109aの右半分に常温でやや温度差のある部分109a、109bから成る注目物体(注目被写体)109dが撮像範囲に含まれる場合について説明する。図示の例では、1番目から50番目までの画素が背景109aに対応し、注目物体109dのうちの、51番目から75番目までの画素から成る部分109bよりも、76番目から100番目までの画素から成る部分109cの方が若干温度が高い。
【0060】
このような被写体を撮像することで得られる各ラインの信号は、仮にノイズが重畳されていないとすれば、例えば、図24に示すごときものとなる。図24に符号109eで示すように、背景部分109aに対応する1番目から50番目までの画素では、信号値が0であり、51番目から75番目までの画素では、信号値が127より若干低く、76番目から100番目までの画素では信号値が127より若干高く、51番目から100番目までの画素の信号値の平均は127である。
【0061】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図25に示す如くとなる。図25において、領域110a、110b、110cがそれぞれ図23の部分109a、109b、109cに対応する。なお、被写体の温度が高いほど、信号の値(階調値)が大きく、表示画像がより明るくなるものとしている。
【0062】
まず画素範囲設定回路22により、1番目の画素から100番目の画素まで、即ち各ラインの全体が平均算出画素範囲として設定されている場合、ラインL1〜L8の信号DG1〜DG8は基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインのライン全体のオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図26のようなものとなり、出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図26に示す如くとなる。図27において、領域111a、111b、111cはそれぞれ図18の対応する領域110a、110b、110cよりも明るい。特に注目物体のある右半分の領域111b、111c(図25の部分110b、110cに対応する)が白っぽい画像になるものの、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0063】
次に画素範囲設定回路22により、51番目の画素から100番目の画素まで(右半分部分の画素)が平均算出画素として設定されている場合、水平方向右半分の部分109b、109cの50画素を用いて各ラインの平均値が算出される。したがって背景の低温部分109aはライン平均値の計算に用いられず、注目している常温の被写体部分109b、109cのみでライン平均値が計算される。
【0064】
ラインL1〜L8の信号DG1〜DG8は、基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に、各ラインの平均算出画素範囲のオフセット補正後の信号FG1〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図28のようなものとなり、出力端子9から出力される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像は図29に示す如くとなる。
図29において、領域112a、112b、112cは図25の対応する領域110a、110b、110cと同じ明るさである。このため、特に注目物体のある右半分の領域112b、112cが白飛びや黒潰れすることなくコントラスト感のある画像が得られ、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0065】
さらに他の被写体(3番目の被写体)として、図30のような低温の背景113aの右上部分に常温でやや温度差のある部分113b、113cから成る注目物体(注目被写体)113dが撮像範囲に含まれ、さらに左下部分に常温でやや温度差のある部分113e、113fから成る注目物体(注目被写体)113gが撮像範囲に含まれる場合について説明する。図示の例では、ラインL1〜L4においては、1番目から50番目までの画素が背景113aに対応し、注目物体113dのうち、51番目から75番目までの画素から成る部分113bよりも、76番目から100番目までの画素から成る部分113cの方が若干温度が高い。また、ラインL5〜L8においては、51番目から100番目までの画素が背景113aに対応し、注目物体113gのうち、1番目から25番目までの画素から成る部分113eよりも、26番目から50番目までの画素から成る部分113fの方が若干温度が高い。
【0066】
このような被写体を撮像することで得られる信号は、仮にノイズが重畳されていないとすれば、例えば、図31及び図32に示すごときものとなる。図31は、ラインL1〜L4の信号を符号113hで示し、図32は、ラインL5〜L8の信号を符号113kで示す。
ラインL1〜L4の信号においては、図31に示すように、背景部分113aに対応する1番目から50番目までの画素では、信号値が0であり、51番目から75番目までの画素では、信号値が127より若干低く、76番目から100番目までの画素では信号値が127より若干高く、51番目から100番目までの画素の信号値の平均は127である。
ラインL5〜L8の信号においては、図32に示すように、背景部分113aに対応する51番目から100番目までの画素では、信号値が0であり、1番目から25番目までの画素では、信号値が127より若干低く、26番目から50番目までの画素では信号値が127より若干高く、1番目から50番目までの画素の信号値の平均は127である。
【0067】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図33に示す如くとなる。図33において、領域114a、114b、114c、114e、114fがそれぞれ図30の部分113a、113b、113c、113e、113fに対応する。なお、被写体の温度が高いほど、信号の値(階調値)が高く、表示画像がより明るくなるものとしている。
【0068】
まず画素範囲設定回路22により、1番目の画素から100番目の画素まで、即ち各ラインの全体が平均算出画素範囲として設定されている場合、ラインL1〜L4の信号DG1〜DG4は基準値(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインのライン全体のオフセット補正後の信号FG1〜FG4の平均値が一致する様にオフセット補正されて図34のようなものとなる。ラインL5〜L8の信号DG5〜DG8は基準値(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインのオフセット補正後の信号FG5〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図35のようなものとなり、出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図36に示す如くとなる。図36において、領域115a、115b、115c、115e、115fはそれぞれ図33の対応する領域114a、114b、114c、114e、114fよりも明るい。特に注目物体のある右上の領域115b、115c(図33の114e、114fに対応する)と左下の領域115e、115f(図33の114e、114fに対応する)が白っぽい画像になるものの横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0069】
次に画素範囲設定回路22により、ラインL1〜L4について、51番目の画素から100番目の画素まで(各ラインの右半分)が平均算出画素範囲として設定されており、ラインL5〜L8について1番目の画素から50番目の画素まで(各ラインの左半分)が平均算出画素範囲として設定されている場合、ラインL1〜L4については、水平方向右半分の部分113b、113cの50画素を用いて各ラインの平均値が算出され、ラインL5〜L8については、水平方向左半分の部分113e、113fの50画素を用いて各ラインの平均値が算出される。したがって背景の低温部分113aはライン平均値の計算に用いられず、注目している常温の被写体部分113b、113c、113e、113fのみでライン平均値が計算される。
【0070】
ラインL1〜L4の信号DG1〜DG4は基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインの平均値算出範囲のオフセット補正後の信号FG1〜FG4の平均値が一致する様にオフセット補正されて図37のようなものとなり、ラインL5〜L8の各々の信号DG5〜DG8は、基準値RF(信号のダイナミックレンジの中心値)である127に各ラインの平均算出範囲のオフセット補正後の信号FG5〜FG8の平均値が一致する様にオフセット補正されて図38のようなものとなる。出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図39に示す如くとなる。図39において、領域116a、116b、116c、116e、116fは図33の対応する領域114a、114b、114c、114e、114fと同じ明るさである。このため、特に注目物体のある右上の領域116b、116cと左下の領域116e、116fが白飛びや黒潰れすることなくコントラスト感のある画像が得られ、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。
【0071】
以上、各ラインの平均算出画素範囲が50画素である場合について説明したが、32画素あるいは64画素などの2のべき乗の画素範囲とすれば、平均値算出に際し、通常の割り算を行うことなく、単純なビットシフトでライン平均値を計算できるため回路規模を小さくすることができる。例えば平均算出画素範囲を64画素とした場合は、総和データの末尾6ビットを切り捨てることで平均値を算出することが出来る。
【0072】
被写体の背景部分と注目部分(注目被写体)の位置が固定される用途においては、画素範囲設定回路22により設定される平均算出画素範囲の開始画素、終了画素を示す信号を固定したものとし、これに基づき平均値算出回路15がライン平均値を算出することで、特に注目部分の画像をコントランストの良い状態で視認できるようになる。
【0073】
画素範囲設定回路22による平均算出画素範囲の設定を、例えば全画素(各ラインの全体)か中央部の所定数の画素か、それ以外の任意の指定画素範囲か、さらにライン毎に平均算出画素範囲を設定するかを、図示していないスイッチでモード選択することとしても良く、また図示しないキーボードなどのユーザインタフェース手段で任意の画素範囲を入力しても良い。
【0074】
実施の形態3.
図40は、この発明の実施の形態3の赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。図40において、レンズ1、シャッタ2、撮像素子3、減算回路4、増幅回路5、A/D変換器6、減衰回路10、加算回路11、更新回路12、フレームメモリ13、帰還用D/A変換器14、タイミング生成回路17、シャッタ制御回路18、遅延回路7、オフセット補正回路8、出力用D/A変換器19、出力端子9、平均値算出回路15、オフセット算出回路16は、実施の形態1で説明した図1の同じ番号を付した回路要素と同様に動作して同様な効果を示すものであるので、その説明を省略する。
【0075】
図40に示される赤外線撮像装置は、図1の基準値生成手段23の代わりに、基準値生成手段24を備えている点で図1の赤外線撮像装置と異なる。図示の基準値生成手段24は、混合回路20とメモリ21とを備える。図1の基準値生成手段23が固定された基準値RFを生成するのに対し、図40の基準値生成手段24は、入力される信号の平均値に応じて、ライン毎に基準値RFm(i)を変化させる。ここで、mはラインの番号を表す。どのラインにも当てはまる説明に際しては、「m」を付さず、単に「RF」で表すこともある。またiは、フレーム番号を表すが、どのフレームにも当てはまる説明に際しては、(i)を省略し、「RF」、「RFm」で表す。なお、他の記号についても同様である。
【0076】
基準値生成手段24は、各ラインについてフレーム方向平均値を算出して、このフレーム方向平均値を基準値としてオフセット算出回路16に供給するものである。ここでフレーム方向平均値とは、現在のフレームにおける各ラインの平均値、及び所定数(1又は2以上)の過去のフレームにおける同じラインについての平均値との単純平均又は加重平均値を求めることにより得られるものである。
【0077】
メモリ21は、平均値算出回路15の出力が書き込まれるように接続され、メモリ21は、平均値算出回路15で算出された平均値を所定数((M−1)で表す)フレーム分記憶し、現フレームについて平均値算出回路15で算出された平均値AV(i)と、メモリ21に記憶された(M−1)フレーム分の平均値AV(i−1)、AV(i−2)、…AV(i−M+1)とを混合回路20に入力し、混合回路20において、これらを加算してMで割ることにより現フレームのための基準値を求める。
【0078】
Mは例えば32とする。しかし、16、32、64、128などの数値に設定しても良く、さらに他の数値としても良い。
メモリ21はM−1、例えば31フレーム分のライン各々について求められた平均値を格納するためのメモリ容量を持つ必要があり、常に過去の(M−1)フレーム分、例えば31フレーム分の当該ライン毎の画素平均値AV(i−1)、AV(i−2)、…AV(i−31)を記憶しているようにメモリ制御を行う必要がある。
【0079】
重み付け平均を求める場合には、例えば、現フレームについて求められた平均値AV(i)と、過去の所定数(1または2以上)のフレームの各々について求められた平均値AV(i−1)、AV(i−2)、…とに対し異なる重み付けを付ける。
【0080】
オフセット算出回路16は、基準値生成手段24、特にその混合回路20から出力される現フレームのライン基準値RF(i)から平均値算出回路15で算出された画素平均値AV(i)を差引いてオフセット補正量FS(i)を算出する。
【0081】
オフセット補正回路8は、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出したオフセット補正量FS(i)を加えて、オフセット補正された信号FG(i)を出力する。
遅延回路7は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16で、当該水平走査線のオフセット補正量FS(i)の算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間、例えば1水平走査期間)だけA/D変換器6の出力信号DGを遅延させてオフセット補正回路8に供給する。出力用D/A変換器19はオフセット補正回路8の出力信号FG(i)をアナログ変換して出力端子9から出力する。
【0082】
A/D変換器6の出力信号DGに含まれる横引き状のノイズの抑圧動作の詳細について図5乃至図7及び図41乃至図45、図46乃至図53を参照して説明する。図41乃至図53は水平方向の画素数が100であり、垂直方向のライン数が8である場合を示しており、図41乃至図52において、横軸に水平方向の画素位置、縦軸に図40の回路内のそれぞれの位置に現われる信号のレベルをとっている。
【0083】
実施の形態1に関して説明したように、図5は被写体を、その各部の位置を、被写体を撮像することにより得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す。図7は被写体に対応する画像(ノイズが重畳されていないものとし、かつ本発明によるオフセット補正を加えない場合に表示される画像)を示す。図53は表示画像を概略的に示す。
A/D変換器6の出力信号DGは例えば8ビットのデジタル信号であり、信号レベルは0から255までの範囲内の値を取る。
【0084】
撮像素子3が図5に示すように、低温の背景101aの右下の一角の部分、即ち(対応する画像において、)ラインL5〜L8のうちの右半分101bに高温の物体がある被写体を撮像したとき、撮像素子3からの出力信号は全8ラインのうち例えば上側の4ライン、即ちラインL1〜L4は低温部101aに相当する信号を、下側の4ライン、即ちラインL5〜L8は低温部101aから高温部101bに変化する信号を出力する。但し、撮像素子3の出力信号は、横引き状のノイズを含んでいる。
【0085】
仮に図5に示される被写体から得られる信号がノイズを含まないとし、低温部101aから得られる信号DGの値が127であり、高温部101bから得られる信号DGの値が191であるとすると、ラインL1〜L4から得られる信号DGの値は図6に示す如くとなる。
【0086】
このような信号(ノイズを含まないものとしている)DGを用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像は、図7に示す如くとなる。
【0087】
しかしながら、実際には、撮像素子3の出力信号はノイズを含み、該ノイズの大きさは、フレームごとに変化する可能性がある。そこで、本実施の形態3では、各ラインについて、メモリ21により過去(M−1)フレーム分のライン平均値を記憶し、該メモリ21に記憶された過去(M−1)フレーム分のそれぞれのライン平均値AVm(i−(M−1))〜AVm(i−1)と、現フレームについて算出されたライン平均値AVm(i)の平均を混合回路20で求めて、これを現フレームの当該ラインに対するライン基準値(RFm(i))として出力する。
【0088】
以下、簡単のため、M=4である場合について、混合回路20とメモリ21でのライン基準値RFmの算出動作について図41乃至図44を参照して数値例を用いて説明する。
【0089】
図41は、ラインL1についてのライン基準値RF1の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL1の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF1を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL1の平均値AV1(i)として159が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL1の平均値AV1(i−3)としての113と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL1の平均値AV1(i−2)としての141と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL1の平均値AV1(i−1)として95が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL1の平均値AV1(i−3)としての113と、フィールドF(i−2)のラインL1の平均値AV1(i−2)としての141と、フィールドF(i−1)のラインL1の平均値AV1(i−1)としての95を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL1の平均値AV1(i)である159と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL1の平均値)の平均AA1を図41に示すように、
AA1(i)=(113+141+95+159)/4=127
により求め、ラインL1のためのライン基準値RF1(i)としてAA1(i)=127をオフセット算出回路16に供給する。
【0090】
図42は、ラインL2についてのライン基準値RF2の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL2の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF2を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL2の平均値AV2(i)として103が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL2の平均値AV2(i−3)としての151と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL2の平均値AV2(i−2)としての79と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL2の平均値AV2(i−1)としての175が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL2の平均値AV2(i−3)としての151と、フィールドF(i−2)のラインL2の平均値AV2(i−2)としての79と、フィールドF(i−1)のラインL2の平均値AV2(i−1)としての175を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL2の平均値AV2(i)である103と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL2の平均値)の平均AA2(i)を、図42に示すように、
AA2(i)=(151+79+175+103)/4=127
により求め、ラインL2のためのライン基準値RF2(i)としてAA2(i)=127をオフセット算出回路16に供給する。
【0091】
図43は、ラインL3についてのライン基準値RF3の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL3の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF3を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL3の平均値AV3(i)として167が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL3の平均値AV3(i−3)としての87と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL3の平均値AV3(i−2)としての137と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL3の平均値AV3(i−1)としての117が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL3の平均値AV3(i−3)としての87と、フィールドF(i−2)のラインL3の平均値AV3(i−2)としての137と、フィールドF(i−1)のラインL3の平均値AV3(i−1)としての117を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL3の平均値AV3(i)である167と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL3の平均値)の平均AA3(i)を図43に示すように、
AA3(i)=(87+137+117+167)/4=127
により求め、ラインL3のためのライン基準値RF3(i)としてAA3(i)=127をオフセット算出回路16に供給する。
【0092】
図44は、ラインL4についてのライン基準値RF4の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL4の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF4を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL4の平均値AV4(i)として79が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL4の平均値AV4(i−3)としての175と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL4の平均値AV3(i−2)としての99と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL4の平均値AV2(i−1)としての155が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL4の平均値AV4(i−3)としての175と、フィールドF(i−2)のラインL4の平均値AV4(i−2)としての99と、フィールドF(i−1)のラインL4の平均値AV4(i−1)としての155を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL4の平均値AV4(i)である79と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL4の平均値)の平均AA4(i)を図44に示すように、
AA4(i)=(175+99+155+79)/4=127
により求め、ラインL4のためのライン基準値RF4(i)としてAA4(i)=127をオフセット算出回路16に供給する。
【0093】
なお、上記の例では、ラインL1〜L4の複数フレームの平均AA1(i)〜AA4(i)が互いに一致し、すべて127となっているが、これは偶然であり、実際には、これらは一致するとは限らず、また127になるとは限らないが、しかし、127に近い値になる傾向があり、フレーム数Mを増やすほど、127により近くなる傾向がある。ここでは、簡単のため、127に一致するものとして説明を行っている。
【0094】
図45に、オフセット算出回路6の出力信号FSとして混合回路20で生成した各ラインのライン基準値RFm(i)から平均値算出回路15で算出した現フレームの画素平均値AVm(i)を差引いて算出したオフセット補正量FSmを示す。
ラインL1のオフセット補正量FS1(i)はラインL1の基準値RF1(i)=127とラインL1の平均値AV1(i)=159から
FS1(i)=127−159=−32
により、ラインL2のオフセット補正量FS2(i)はラインL2の基準値RF2(i)=127とラインL2の平均値AV2(i)=103から
FS2(i)=127−103=+24
により、ラインL3のオフセット補正量FS3(i)はラインL3の基準値RF3(i)=127とラインL3の平均値AV3(i)=167から
FS3(i)=127−167=−40
により、ラインL4のオフセット補正量FS4(i)はラインL4の基準値RF4(i)=127とラインL4の平均値AV4(i)=79から
FS4(i)=127−79=+48
によりそれぞれ求められる。
【0095】
図45はまた、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出したオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16で、当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけ図2のA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL1の信号はオフセット補正量FS1(i)である−32だけオフセット補正され、ラインL2の信号はオフセット補正量FS2(i)である+24だけオフセット補正され、ラインL3の信号はオフセット補正量FS3(i)である−40だけオフセット補正され、ラインL4の信号はオフセット補正量FS4(i)である+48だけオフセット補正される。即ち、このようにして、ラインL1〜L4の信号は各ライン基準値RFmである127に各ラインのオフセット補正後の信号FG1(i)〜FG4(i)の平均が一致するように、オフセット補正される。このようにして、低温部分に相当するラインL1〜L4の横引き状のノイズが抑圧される。
【0096】
図46は、ラインL5についてのライン基準値RF5の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL5の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF5を求める場合につき説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL5の平均値AV5(i)として191が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL5の平均値AV5(i−3)としての127と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL5の平均値AV5(i−2)としての221と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL5の平均値AV5(i−1)としての97が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL5の平均値AV5(i−3)としての127と、フィールドF(i−2)のラインL5の平均値AV5(i−2)としての221と、フィールドF(i−1)のラインL5の平均値AV5(i−1)としての97を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL5の平均値AV5(i)である191と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL5の平均値)の平均AA5(i)を図46のように、AA5(i)=(127+221+97+191)/4=159により求め、ラインL5のライン基準値RF5としてAA5(i)=159をオフセット算出回路16に供給する。
【0097】
図47は、ラインL6についてのライン基準値RF6の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL6の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF6を求める場合について説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL6の平均値AV6(i)として135が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL6の平均値AV6(i−3)としての183と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL6の平均値AV7(i−2)としての105と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL6の平均値AV8(i−1)としての213が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL6の平均値AV6(i−3)としての183と、フィールドF(i−2)のラインL6の平均値AV6(i−2)としての105と、フィールドF(i−1)のラインL6の平均値AV6(i−1)としての213を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL6の平均値AV6(i)である135と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL6の平均値)の平均AA6(i)を図47に示すように、
AA6(i)=(183+105+213+135)/4=159
により求め、ラインL6のライン基準値RF6(i)として、AA6(i)=159をオフセット算出回路16に供給する。
【0098】
図48は、ラインL7についてのライン基準値RF7の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL7の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF7を求める場合について説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL7の平均値として199が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL7の平均値AV7(i−3)としての148と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL7の平均値AV7(i−2)としての170と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL7の平均値AV7(i−1)としての119が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL7の平均値AV7(i−3)としての148と、フィールドF(i−2)のラインL7の平均値AV7(i−2)としての170と、フィールドF(i−1)のラインL7の平均値AV7(i−1)としての119を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL7の平均値AV7(i)である199と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL7の平均値)の平均AA7(i)を図48に示すように、
AA7(i)=(148+170+119+199)/4=159
により求め、ラインL7のライン基準値RF7(i)としてAA7(i)=159をオフセット算出回路16に供給する。
【0099】
図49は、ラインL8についてのライン基準値RF8の算出を説明する図である。例えば4フィールド分のラインL8の平均値の4つのデータについて平均してライン基準値RF8を求める場合について説明する。平均値算出回路15から現フィールドF(i)のラインL8の平均値として111が混合回路20に供給される。メモリ21には、3つ前のフィールドF(i−3)のラインL8の平均値AV8(i−3)としての135と、2つ前のフィールドF(i−2)のラインL8の平均値AV8(i−2)としての207と、1つ前のフィールドF(i−1)のラインL8の平均値AV8(i−1)としての183が格納されている。
混合回路20は、メモリ21から、フィールドF(i−3)のラインL8の平均値AV8(i−3)としての135と、フィールドF(i−2)のラインL8の平均値AV8(i−2)としての207と、フィールドF(i−1)のラインL8の平均値AV8(i−1)としての183を読み出して、平均値算出回路15から供給されたフィールドF(i)のラインL8の平均値AV8(i)である111と合わせて4つのデータ(4フィールド分のラインL8の平均値)の平均AV8(i)を図49に示すように、
AA8(i)=(135+207+183+111)/4=159
により求め、ラインL8のライン基準値RF8(i)としてAA8(i)=159をオフセット算出回路16に供給する。
【0100】
なお、上記の例では、ラインL5〜L8の複数フレームの平均AA5(i)〜AA8(i)が互いに一致し、すべて159となっているが、これは偶然であり、実際には、これらは一致するとは限らず、また159になるとは限らないが、しかし、159に近い値になる傾向があり、フレーム数Mを増やすほど、159により近くなる傾向がある。ここでは、簡単のため、159に一致するものとして説明を行っている。
【0101】
図50に、オフセット算出回路6の出力信号FSとして混合回路20で生成した各ラインのライン基準値RFm(i)から平均値算出回路15で算出した現フレームの画素平均値AVm(i)を差引いて算出したオフセット補正量FSmを示す。
ラインL5のオフセット補正量FS5(i)はラインL5の基準値RF5(i)=159とラインL5の平均値AV5(i)=191から
FS5(i)=159−191=−32
により、ラインL6のオフセット補正量FS6(i)はラインL6の基準値RF6(i)=159とラインL6の平均値AV6(i)=135から
FS6(i)=159−135=+24
により、ラインL7のオフセット補正量FS7(i)はラインL7の基準値RF7(i)=159とラインL7の平均値AV7(i)=199から
FS7(i)=159−199=−40により、ラインL8のオフセット補正量FS8(i)はラインL8の基準値RF8(i)=159とラインL8の平均値AV8(i)=111から
FS8(i)=159−111=+48
により、それぞれ求められる。
【0102】
図50はまた、オフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSを加えて、オフセット補正する動作を示す。遅延回路7の出力信号は、平均値算出回路15とオフセット算出回路16における当該水平走査線のオフセット補正量FSの算出が完了するまでの時間に相当する遅延時間だけ図40のA/D変換器6の出力信号DGを遅延させたものである。
ラインL5の信号DG5はオフセット補正量FS5(i)である−32だけオフセット補正され、ラインL6の信号DG6はオフセット補正量FS6(i)である+24だけオフセット補正され、ラインL7の信号DG7はオフセット補正量FS7(i)である−40だけオフセット補正され、ラインL8の信号DG8はオフセット補正量FS8(i)である+48だけオフセット補正される。即ち、このようにして、ラインL5〜L8の信号DG5〜DG8は各ライン基準値RFmである159に各ラインの補正後の信号FG5(i)〜FG8(i)の平均が一致するようにオフセット補正される。このようにして、低温部から高温部に変化するラインL5〜L8の横引き状のノイズが抑圧される。
【0103】
このようにして、オフセット補正回路8からは、横引き状のノイズが抑圧された信号FGmが出力される。
図51にラインL1〜L4についての信号DG1(i)〜DG4(i)をオフセット補正することにより得られる信号FG1(i)〜FG4(i)を示し、図52にラインL5〜L8についての信号DG5(i)〜DG8(i)をオフセット補正することにより得られる信号FG5(i)〜FG8(i)を示す。この信号が出力端子9から表示部25に送られる。出力端子9から出力される信号を用いて表示される画像は図53に示す如くとなる。
図53において、各部分(領域)の明るさは、図5の対応する部分の温度に対応するものとなる。なお、温度が高いほど、信号の値(階調値)が大きく、表示画像がより明るくなるものとしている。
図53の領域117aは、図5の背景(低温部)101aに対応し、その領域117aの明るさは信号値127に対応する明るさであり、領域117bは、図5の高温部101bに対応し、その領域117bは、領域117aよりも明るく、信号値191に対応する明るさを持つ。
このように、表示画像は実際の信号レベルからのずれなく、横引き状のノイズが抑圧され、落ち着いた見やすい画像が得られる。また、図5の被写体に相当する画像信号を出力端子9に得ることが出来る。
【0104】
以上説明したように実施の形態3によれば、水平走査線毎のレベル変動を算出して、撮像信号の信号レベルをライン基準値に補正することにより、水平走査線毎の信号レベルが一定に安定し、画面上においても横引き状ノイズを抑圧することができる。
【0105】
また、ライン基準値を当該ラインの画素平均値AV及び過去フレームの平均値から生成したことにより、被写体の温度レベルの違いによるライン毎の信号レベル差を無くすことができる。
【0106】
実施の形態4.
図54は、この発明の実施の形態4の赤外線撮像装置を示すブロック図である。図54の赤外線撮像装置は、図40の装置と概して同じであるが、基準値生成手段24を構成する混合回路20及びメモリ21の接続及び動作が異なる。
図54の装置では、メモリ21が混合回路20で算出された基準値を記憶し、メモリ21に記憶された基準値が混合回路20に供給される。
図54の装置においては、図40の装置のように、現在のフレームの各ラインについての平均値、及び所定数の過去のフレームにおける同じラインについての平均値の平均を求めるのではなく、現フレームについて平均値算出手段15において各ラインについて算出された平均値と、同じラインについて前フレームのために求められ、メモリ21に記憶されている基準値との加重平均を混合回路20で求めることにより、現フレームについて当該ラインのための基準値を求める。
例えば、現フレームにおいて求められた平均値AViに対する重み付け係数を1/N(Nは1より大きい値である)とし、前フレームにおける基準値RF(i−1)に対する重み付け係数を{1−(1/N)}とする。この場合、
現フレームの基準値RFiは、
RFi=AVi×(1/N)+RF(i−1)×(1−(1/N))
により求められる。
各フレームについて混合回路20で算出された基準値RFiは、メモリ21に書き込まれ、次のフレーム期間においてメモリ21から読み出されて、「前フレームの基準値(RF(i−1)」として混合回路20に供給される。
ここでNは正の整数とし、2のべき乗、例えば16、32、64、128とするのが好ましい。
【0107】
前フレームについての基準値も同様の処理を過去に繰り返すことにより求められたものであるので、このような方法による基準値の算出は、過去のすべてフレームの平均値を考慮に入れ、現在に近いものほどより大きな重み付けをして平均を求める方法であり、フレーム方向の平均を求める方法の一種であると言える。
【0108】
図54の構成を取る場合、メモリ21は、ライン各々に対応したライン基準値を格納するためのメモリ容量を持つ必要がある。
【0109】
図54の構成でも、図40の構成と同様の効果が得られるほか、メモリ21の容量が図40の構成よりも少なくて済むと言う利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】この発明の実施の形態1に係る赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のA/D変換器6から出力されるライン毎の信号DGm(m=1、2、3、4)のレベルを図である。
【図3】図1の平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6から出力される信号のライン毎(水平走査周期毎)の画素平均値AVm(m=1、2、3、4)を示す図である。
【図4】図1のオフセット補正回路8で、遅延回路7の出力信号にオフセット算出回路16で算出されたオフセット補正量FSm(m=1、2、3、4)を加えて、オフセット補正する動作を示す図である。
【図5】被写体の一例を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す図である。
【図6】図5に示される被写体を撮像することにより得られる信号がノイズを含まないとした場合に、ラインL1〜L4,L5〜L8から得られる信号の値を示す図である。
【図7】図6に示される信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像を示す図である。
【図8】図5に示される被写体を撮像したときにA/D変換器6から出力される、ラインL1〜L4の信号DG1〜DG4を示す図である。
【図9】図5に示される被写体を撮像したときの平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6の出力信号のライン毎の画素平均値AV1〜AV4を示す図である。
【図10】図5に示される被写体を撮像したときにA/D変換器6から出力される、ラインL5〜L8の信号DG5〜DG8を示す図である。
【図11】図5に示される被写体を撮像したときの平均値算出回路15の出力信号、即ちA/D変換器6の出力信号のライン毎の画素平均値AV5〜AV8を示す。
【図12】図5に示される被写体を撮像したときのラインL1〜L4の各々についての、オフセット補正回路8の出力信号FG1〜FG4を示す図である。
【図13】図5に示される被写体を撮像したときのラインL5〜L8の各々についての、オフセット補正回路8の出力信号FG5〜FG8を示す図である。
【図14】図12及び図13に示される信号FG1〜FG8が出力端子9から表示部25に送られたときに、表示部25で表示される画像を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態2に係る赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図16】被写体の一例を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す図である。
【図17】図16に示される被写体を撮像することにより得られる各ラインの信号が、ノイズを含まないとした場合の、ラインL1〜L8から得られる信号を示す図である。
【図18】図17に示される信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像を示す図である。
【図19】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図16に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力される信号FG1〜FG8を示す図である。
【図20】図19に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図21】画素範囲設定回路22により、26番目の画素を開始画素とし、75番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図16に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力される信号FG1〜FG8を示す図である。
【図22】図21に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図23】被写体の他の例を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す図である。
【図24】図23に示される被写体を撮像することにより得られる各ラインの信号が、ノイズを含まないとした場合の、ラインL1〜L8から得られる信号を示す図である。
【図25】図24に示される信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像を示す図である。
【図26】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図23に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力される信号FG1〜FG8を示す図である。
【図27】図26に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図28】画素範囲設定回路22により、51番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図23に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力される信号FG1〜FG8を示す図である。
【図29】図28に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図30】被写体のさらに他の例を、その各部の位置を、撮像により得られる画像のライン番号及び画素番号に対応付けて示す図である。
【図31】図30に示される被写体を撮像することにより得られる各ラインの信号が、ノイズを含まないとした場合の、ラインL1〜L4から得られる信号を示す図である。
【図32】図30に示される被写体を撮像することにより得られる各ラインの信号が、ノイズを含まないとした場合の、ラインL5〜L8から得られる信号を示す図である。
【図33】図31、図32に示される信号(ノイズを含まないものとしている)を用いて、本発明による補正を行うことなく、表示を行った場合の画像を示す図である。
【図34】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図30に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力されるラインL1〜L4についての信号FG1〜FG4を示す図である。
【図35】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図30に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力されるラインL5〜L8についての信号FG5〜FG8を示す図である。
【図36】図34、図35に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図37】画素範囲設定回路22により、51番目の画素を開始画素とし、100番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図30に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力されるラインL1〜L4についての信号FG1〜FG4を示す図である。
【図38】画素範囲設定回路22により、1番目の画素を開始画素とし、50番目の画素を終了画素とすることが設定されている場合に、図30に示される被写体を撮像したときに、図15のオフセット補正回路8から出力されるラインL5〜L8についての信号FG5〜FG8を示す図である。
【図39】図37、図38に示される信号FG1〜FG8を用いて表示される画像を示す図である。
【図40】この発明の実施の形態3に係る赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図41】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL1についての平均値AV1(i−3)〜AV1(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF1(i)を示す図である。
【図42】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL2についての平均値AV2(i−3)〜AV2(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF2(i)を示す図である。
【図43】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL3についての平均値AV3(i−3)〜AV3(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF3(i)を示す図である。
【図44】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL3についての平均値AV4(i−3)〜AV4(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF4(i)を示す図である。
【図45】オフセット算出回路6の出力信号FSとして混合回路20で生成した各ラインのライン基準値RF1(i)〜RF4(i)から平均値算出回路15で算出した現フレームの画素平均値AV1(i)〜AV4(i)を差引いて算出したオフセット補正量FS1(i)〜FS4(i)を示す図である。
【図46】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL5についての平均値AV5(i−3)〜AV5(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF5(i)を示す図である。
【図47】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL6についての平均値AV6(i−3)〜AV6(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF6(i)を示す図である。
【図48】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL7についての平均値AV7(i−3)〜AV7(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF7(i)を示す図である。
【図49】3つ前のフィールドから現フィールドまでのラインL8についての平均値AV8(i−3)〜AV8(i)、及びこれらに基いて定められたライン基準値RF8(i)を示す図である。
【図50】オフセット算出回路6の出力信号FSとして混合回路20で生成した各ラインのライン基準値RF5(i)〜RF8(i)から平均値算出回路15で算出した現フレームの画素平均値AV5(i)〜AV8(i)を差引いて算出したオフセット補正量FS5(i)〜FS8(i)を示す図である。
【図51】ラインL1〜L4についての信号DG1(i)〜DG4(i)をオフセット補正することにより得られる信号FG1(i)〜FG4(i)を示す図である。
【図52】ラインL5〜L8についての信号DG5(i)〜DG8(i)をオフセット補正することにより得られる信号FG5(i)〜FG8(i)を示す図である。
【図53】図51、図52に示される信号FG1(i)〜FG8(i)を用いて表示される画像を示す図である。
【図54】この発明の実施の形態4に係る赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0111】
1 レンズ、 2 シャッタ、 3 撮像素子、 4 減算回路、 5 増幅回路、 6 A/D変換器、 7 遅延回路、 8 オフセット補正回路、 9 出力端子、 10 減衰回路、 11 加算回路、 12 更新回路、 13 フレームメモリ、 14 帰還用D/A変換器、 15 平均値算出回路、 16 オフセット算出回路、 17 タイミング生成回路、 18 シャッタ制御回路、 19 出力用D/A変換器、 20 混合回路、 21 メモリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長域に感度を有する撮像手段と、
所定の波長域成分を前記撮像手段の撮像面上で結像させる結像手段と
を備えた赤外線撮像装置において、
前記撮像手段から出力される撮像信号をデジタル信号に変換してデジタル撮像信号を出力するデジタル変換手段と、
前記デジタル変換手段から出力される前記デジタル撮像信号の水平走査期間毎に水平有効画素部分の平均を算出してライン平均値を出力するライン平均値算出手段と、
前記ライン平均値算出手段から出力された前記ライン平均値と基準値とのレベル差から水平走査期間毎にオフセット値を算出するオフセット算出手段と、
前記デジタル変換手段から出力される前記デジタル撮像信号を前記平均値算出手段及び前記オフセット算出手段における処理のための時間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段で遅延した前記デジタル撮像信号に対して前記オフセット算出手段で算出したオフセット値に基づいてレベル補正を行うオフセット補正手段と
を備えたことを特徴とする赤外線撮像装置。
【請求項2】
所定の基準値を出力する基準値生成手段をさらに備え、
前記オフセット算出手段は、
前記基準値生成手段から出力された基準値から前記ライン平均値算出手段より出力された前記ライン平均値を差引いたオフセット値をオフセット補正手段へ供給することを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項3】
前記所定の基準値は、前記撮像信号のダイナミックレンジの中心値であることを特徴とする請求項2に記載の赤外線撮像装置。
【請求項4】
各ラインについて、前記ライン平均値のフレーム方向平均を算出してライン基準値を出力するライン基準値算出手段をさらに備え、
前記オフセット算出手段は、
前記ライン基準値算出手段から出力された前記ライン基準値からライン平均値算出手段より出力された前記ライン平均値を差引いたオフセット値を前記オフセット補正手段へ供給することを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項5】
前記ライン基準値算出手段は、各ラインについて、過去フレーム分のライン平均値を記憶するメモリと、該メモリに記憶された過去フレーム分のライン平均値と、現フレームについて算出されたライン平均値の平均を求めて、これを現フレームの当該ラインに対するライン基準値として出力する混合手段とを備えることを特徴とする請求項4に記載の赤外線撮像装置。
【請求項6】
前記ライン基準値算出手段は、各ラインについて前記ライン平均値算出手段から出力された現フレームのライン平均値と、前フレームの当該ラインのライン基準値を所定比率で混合して現フレームのライン基準値を新たに算出することを特徴とする請求項4に記載の赤外線撮像装置。
【請求項7】
前記ライン基準値算出手段における現フレームの前記ライン平均値と前フレームのライン基準値との混合値は、
現フレームの前記ライン平均値を1/N(ここで、Nは1より大きい値)倍した値と前フレームのライン基準値を{1−(1/N)}倍した値を加算して算出することを特徴とする請求項6に記載の赤外線撮像装置。
【請求項8】
前記ライン平均値算出手段は、水平有効画素範囲内の所定の平均算出画素範囲内の画素について平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項9】
前記平均値算出画素範囲が、水平有効画素範囲内の水平方向の中央部分に位置するものであることを特徴とする請求項8に記載の赤外線撮像装置。
【請求項10】
前記平均算出画素範囲は、注目被写体の位置に対応して設定される画素範囲であることを特徴とする請求項8に記載の赤外線撮像装置。
【請求項11】
前記平均算出画素範囲は、注目する複数の注目被写体の位置に対応して水平走査線単位で設定される複数の画素範囲であることを特徴とする請求項10に記載の赤外線撮像装置。
【請求項12】
前記平均算出画素範囲は、2のべき乗個の画素から成ることを特徴とする請求項8に記載の赤外線撮像装置。
【請求項13】
前記所定の波長域成分は、概ね8〜14マイクロメートル波長帯域であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項1】
所定の波長域に感度を有する撮像手段と、
所定の波長域成分を前記撮像手段の撮像面上で結像させる結像手段と
を備えた赤外線撮像装置において、
前記撮像手段から出力される撮像信号をデジタル信号に変換してデジタル撮像信号を出力するデジタル変換手段と、
前記デジタル変換手段から出力される前記デジタル撮像信号の水平走査期間毎に水平有効画素部分の平均を算出してライン平均値を出力するライン平均値算出手段と、
前記ライン平均値算出手段から出力された前記ライン平均値と基準値とのレベル差から水平走査期間毎にオフセット値を算出するオフセット算出手段と、
前記デジタル変換手段から出力される前記デジタル撮像信号を前記平均値算出手段及び前記オフセット算出手段における処理のための時間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段で遅延した前記デジタル撮像信号に対して前記オフセット算出手段で算出したオフセット値に基づいてレベル補正を行うオフセット補正手段と
を備えたことを特徴とする赤外線撮像装置。
【請求項2】
所定の基準値を出力する基準値生成手段をさらに備え、
前記オフセット算出手段は、
前記基準値生成手段から出力された基準値から前記ライン平均値算出手段より出力された前記ライン平均値を差引いたオフセット値をオフセット補正手段へ供給することを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項3】
前記所定の基準値は、前記撮像信号のダイナミックレンジの中心値であることを特徴とする請求項2に記載の赤外線撮像装置。
【請求項4】
各ラインについて、前記ライン平均値のフレーム方向平均を算出してライン基準値を出力するライン基準値算出手段をさらに備え、
前記オフセット算出手段は、
前記ライン基準値算出手段から出力された前記ライン基準値からライン平均値算出手段より出力された前記ライン平均値を差引いたオフセット値を前記オフセット補正手段へ供給することを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項5】
前記ライン基準値算出手段は、各ラインについて、過去フレーム分のライン平均値を記憶するメモリと、該メモリに記憶された過去フレーム分のライン平均値と、現フレームについて算出されたライン平均値の平均を求めて、これを現フレームの当該ラインに対するライン基準値として出力する混合手段とを備えることを特徴とする請求項4に記載の赤外線撮像装置。
【請求項6】
前記ライン基準値算出手段は、各ラインについて前記ライン平均値算出手段から出力された現フレームのライン平均値と、前フレームの当該ラインのライン基準値を所定比率で混合して現フレームのライン基準値を新たに算出することを特徴とする請求項4に記載の赤外線撮像装置。
【請求項7】
前記ライン基準値算出手段における現フレームの前記ライン平均値と前フレームのライン基準値との混合値は、
現フレームの前記ライン平均値を1/N(ここで、Nは1より大きい値)倍した値と前フレームのライン基準値を{1−(1/N)}倍した値を加算して算出することを特徴とする請求項6に記載の赤外線撮像装置。
【請求項8】
前記ライン平均値算出手段は、水平有効画素範囲内の所定の平均算出画素範囲内の画素について平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項9】
前記平均値算出画素範囲が、水平有効画素範囲内の水平方向の中央部分に位置するものであることを特徴とする請求項8に記載の赤外線撮像装置。
【請求項10】
前記平均算出画素範囲は、注目被写体の位置に対応して設定される画素範囲であることを特徴とする請求項8に記載の赤外線撮像装置。
【請求項11】
前記平均算出画素範囲は、注目する複数の注目被写体の位置に対応して水平走査線単位で設定される複数の画素範囲であることを特徴とする請求項10に記載の赤外線撮像装置。
【請求項12】
前記平均算出画素範囲は、2のべき乗個の画素から成ることを特徴とする請求項8に記載の赤外線撮像装置。
【請求項13】
前記所定の波長域成分は、概ね8〜14マイクロメートル波長帯域であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【公開番号】特開2008−128892(P2008−128892A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315711(P2006−315711)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]