説明

走査光学装置

【課題】アパーチャ板を別途用意しなくてもLDから出射されるレーザ光の成形ができる走査光学装置を得る。
【解決手段】レーザダイオードからの出射レーザ光を、成形アパーチャを通過させてから回転多面鏡に入射させ、被走査面に走査する走査光学装置において、上記レーザダイオードからの出射レーザ光を平行光とするコリメータレンズを支持する合成樹脂製のコリメータベースまたは、該コリメータベースを固定する合成樹脂製のハウジングに一体に、上記レーザ光を遮る遮光壁を形成し、この遮光壁に、上記アパーチャを形成した走査光学装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光をポリゴンミラーに入射させて走査する走査光学装置に関し、特にレーザダイオードからの出射レーザ光を成形するアパーチャ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザプリンタ、デジタルコピー機、レーザファックス、レーザプロッタ等の電子写真方式を用いた各種機器には、回転駆動されるポリゴンミラーにレーザダイオード(LD)からの出射レーザ光を入射させ、該ポリゴンミラーからの反射光を、fθレンズを介して被走査媒体に入射させて走査する走査光学装置が搭載されている。
【0003】
LDからの出射レーザ光は、所定の断面形状(一般的に円形や長円形)のアパーチャを通過させることで、成形されている。従来、このアパーチャは、別に用意したアパーチャ板に形成されており、このアパーチャ板をLDユニットあるいは走査光学装置のハウジング(ケーシング)に別途取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-28814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アパーチャ板を別途用意して組み付ける従来構造は、極限迄の部品点数の削減、コストダウンを求められている走査光学装置にとって、改良の余地がある。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づき、アパーチャ板を別途用意しなくてもLDから出射されるレーザ光の成形ができる走査光学装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、走査光学装置の殆どは、合成樹脂材料の成形品から形成されており、その成形品を利用してレーザ光を成形するアパーチャを形成すれば、コストダウンに寄与できるとの着眼に基づいてなされたものである。
【0008】
本発明は、レーザダイオードからの出射レーザ光を、成形アパーチャを通過させてから回転多面鏡に入射させ、被走査面に走査する走査光学装置において、上記レーザダイオードからの出射レーザ光を平行光とするコリメータレンズを支持するコリメータベースまたは、該コリメータベースを固定するハウジングに一体に、上記レーザ光を遮る遮光壁を形成し、この遮光壁に、上記アパーチャを形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の走査光学装置において、上記遮光壁は、レーザ光の進行方向に離間した2枚が備えられており、この2枚の遮光壁にそれぞれ、一端部が閉じ他端部が開放された一対のアパーチャ形成溝が形成されていて、この一対のアパーチャ形成溝のレーザ光軸方向から見た重なり部分によって上記アパーチャが形成されている。
【0010】
2枚の遮光壁上の一対のアパーチャ形成溝は、レーザ光軸方向から見たとき、一直線上に位置していて、その開放端部がレーザ光軸を挟んで互いに反対側に位置するのが実際的である。
【0011】
本発明の走査光学装置にあっては、2枚の遮光壁上の一対のアパーチャ形成溝が、上記コリメータベースまたはハウジングを形成する一対の成形型が開閉移動する方向と平行に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーザ光を平行光とするコリメータレンズを支持する合成樹脂製のコリメータベースまたは、該コリメータベースを固定する合成樹脂製のハウジングに一体にレーザ光を遮る遮光壁を形成し、この遮光壁にアパーチャを形成したので、アパーチャ板を別途用意しなくてもLDから出射されるレーザ光の成形ができる走査光学装置を得ることができる。本発明によれば、部品点数の削減及び組み立て工程の削減によりコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による走査光学装置の第一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】同第一の実施形態の別の角度から見た斜視図である。
【図3】同第一の実施形態の平面図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】本発明によるアパーチャ構造をシリンダーレンズ側から見た図である。
【図6】本発明によるアパーチャ構造の特徴部分を示す斜視図である。
【図7】本発明による走査光学装置の第二の実施形態を示す斜視図である。
【図8】同第二の実施形態の別の角度から見た斜視図である。
【図9】同第二の実施形態の平面図である。
【図10】図9のX-X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし図5は、本発明による走査光学装置(走査光学系ユニット)10の第一の実施形態を示している。図1ないし図3では走査光学ユニット10の上カバーを描いていない。この走査光学系ユニット10は、合成樹脂材料の成形品からなるハウジング(機枠)11内に、レーザ光の光路順に、レーザ光を射出するレーザダイオード(LD)を備えたレーザユニット12、コリメータレンズ13、シリンダーレンズ14、ポリゴンミラー(回転多面鏡)15、第1fθレンズ16、第2fθレンズ17、及び長尺ミラー18が固定されている。レーザユニット12から射出されたレーザ光は、コリメータレンズ13によって平行光束とされ、シリンダーレンズ14によって断面形状が成形され、ポリゴンミラー15によって主走査方向に偏向されて第1fθレンズ16と第2fθレンズ17に入射し、長尺ミラー18で反射して、感光ドラムなどの走査対象面上において等速走査される。長尺ミラー18によるレーザ光の反射方向は、図3の紙面に垂直な下方である。ハウジング11内には、レーザ光が走査対象面を走査する走査光路外であって、走査対象面の走査開始位置より前位相となる位置に、走査開始タイミングを検知するためのタイミング検知ミラー19が配置されている。タイミング検知ミラー19で反射したレーザ光は、ハウジング11内に設けられた受光素子20に入射する。
【0015】
レーザユニット12及びコリメータレンズ13は、ハウジング11上に固定ねじ21で固定される合成樹脂製のコリメータベース30に支持されている。コリメータベース30は、レーザユニット12を支持するLD支持壁31と、このLD支持壁31と直交するコリメータレンズ13の光軸(レーザ光軸)Oと平行な連続した壁からなる、コリメータレンズ13を支持するレンズ支持壁32を有し、このレンズ支持壁32の前方(レーザ光の進行方向)に、コリメータレンズ13の光軸Oと直交しレーザ光の進行方向に離間する2枚(一対)の遮光壁33、34が一体に形成されている。遮光壁33と34は、LD支持壁31と平行であり、コリメータレンズ13とシリンダーレンズ14の間に位置する。この遮光壁33と34にはそれぞれ、図5、図6に明らかなように、内端部が閉じ、外端部が開放されたアパーチャ形成溝35、36が形成されている。アパーチャ形成溝35、36の向きは互いに反対であり、コリメータレンズ13の光軸方向から見たときの内端部の重なり部分でアパーチャAが形成されている。アパーチャ形成溝35と36は、コリメータレンズ13の光軸方向(レーザ光軸方向)から見たとき、互いに一直線上に位置し、開放端部が光軸Oを挟んで互いに反対側に位置している(一方のアパーチャ形成溝36は、外端部がコリメータベース30の裏面側に開放されている)。アパーチャAの形状は、図5の例では、四角形の隅部を円形にした形状をしているが、内端部の形状により、円形、長円形その他の任意形状とすることができる。
【0016】
このように、2枚の遮光壁33、34に形成した一端が開放されたアパーチャ形成溝35と36の重なり部分でアパーチャAを形成すると、コリメータベース30の成形型(抜き型)構造を単純にすることができる。すなわち、上下の開き型で製造できる。例えば、以上の2枚の遮光壁33と34及び遮光壁33と34上のアパーチャ形成溝35と36は、コリメータベース30を形成する一対の成形型(射出成形型)の上型に、遮光壁33を形成する凹部分と遮光壁34を形成する凹部分、及び遮光壁33を形成する凹部分の中にアパーチャ形成溝35を形成する凸部分を設け、下型にアパーチャ形成溝36を形成する凸部分を設けることで、LD支持壁31およびレンズ支持壁32と同時に形成できる。
【0017】
図7ないし図10は、本発明による走査光学装置の別の実施形態を示している。この第二の実施形態は、第一の実施形態ではコリメータベース30に形成していた遮光壁33と34を、ハウジング111に形成している。第一の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0018】
ハウジング111は、レーザユニット12を支持するLD支持壁311と、このLD支持壁311と直交するコリメータレンズ13の光軸(レーザ光軸)Oと平行な連続した壁からなるレンズ支持壁321を有し、このレンズ支持壁321の前方に、コリメータレンズ13の光軸Oと直交しレーザ光の進行方向に離間する2枚の遮光壁331と341がハウジング111と一体に形成されている。遮光壁331、341はコリメータレンズ13とシリンダーレンズ14の間に位置する。遮光壁331と341にはそれぞれ、内端部が閉じ、外端部が開放されたアパーチャ形成溝351、361が形成されている(図10)。アパーチャ形成溝351、361は、互いに反対方向を向いており、内端部の重なり部分でアパーチャA1を形成していて、コリメータレンズ13の光軸方向(レーザ光軸方向)から見たとき、互いに一直線上に位置し、開放端部が光軸Oを挟んで互いに反対側に位置している(一方のアパーチャ形成溝361は、ハウジング111を貫通し、外端部がハウジング111の裏面側に開放されている)。アパーチャA1の形状は、図5に示した例と同様に、四角形の隅部を円形にした形状をしているが、内端部の形状により、円形、長円形その他の任意形状とすることができる。
【0019】
このように、2枚の遮光壁331、341のアパーチャ形成溝351と361の重なり部分でアパーチャA1を形成すると、ハウジング111の成形型(抜き型)構造を複雑化することなく、アパーチャ形成溝351と361を有する遮光壁331、341を、ハウジング111と一緒に同一工程で製造できる。つまり、2枚の遮光壁331と341及び遮光壁331と341上のアパーチャ形成溝351と361(一端開放溝)を、一対の成形型が開閉する際の移動方向と平行に形成し、かつ一対の成形型が離反する方向のアパーチャ形成溝351と361の外端部を開放すれば、ハウジング111の成形型(抜き型)構造を複雑化することなく、アパーチャ形成溝351と361を有する遮光壁331、341を、ハウジング111と一緒に同一工程で製造できる。
【0020】
以上の実施形態では、一方のアパーチャ形成溝36、361の外方端部がコリメータベース30、ハウジング111を貫通して開放しているが、本発明はこれに限定されない。本発明は、2枚の遮光壁および遮光壁上のアパーチャ形成溝を、コリメータベース、またはハウジングを形成する一対の成形型が開閉移動(接離移動)する方向と平行に形成し、成形型が離反する方向のアパーチャ形成溝の外端部を開放すればよい。
【符号の説明】
【0021】
10 走査光学系ユニット(走査光学装置)
11 ハウジング(機枠)
12 レーザユニット
13 コリメータレンズ
14 シリンダーレンズ
15 ポリゴンミラー(回転多面鏡)
16 第1fθレンズ
17 第2fθレンズ
18 長尺ミラー
19 タイミング検知ミラー
20 受光素子
30 コリメータベース
31 LD支持壁
32 レンズ支持壁
33 34 遮光壁
35 36 アパーチャ形成溝
111 ハウジング(機枠)
311 LD支持壁
321 レンズ支持壁
331 341 遮光壁
351 361 アパーチャ形成溝
A A1 アパーチャ
O 光軸(レーザ光軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードからの出射レーザ光を、成形アパーチャを通過させてから回転多面鏡に入射させ、被走査面に走査する走査光学装置において、
上記レーザダイオードからの出射レーザ光を平行光とするコリメータレンズを支持するコリメータベースまたは、該コリメータベースを固定するハウジングに一体に、上記レーザ光を遮る遮光壁を形成し、この遮光壁に、上記アパーチャを形成したことを特徴とする走査光学装置。
【請求項2】
請求項1記載の走査光学装置において、上記遮光壁は、レーザ光の進行方向に離間した2枚が備えられており、この2枚の遮光壁にそれぞれ、一端部が閉じ他端部が開放された一対のアパーチャ形成溝が形成されていて、この一対のアパーチャ形成溝のレーザ光軸方向から見た重なり部分によって上記アパーチャが形成されている走査光学装置。
【請求項3】
請求項2記載の走査光学装置において、2枚の遮光壁上の一対のアパーチャ形成溝は、レーザ光軸方向から見たとき、一直線上に位置していて、その開放端部がレーザ光軸を挟んで互いに反対側に位置している走査光学装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の走査光学装置において、2枚の遮光壁上の一対のアパーチャ形成溝は、上記コリメータベースまたはハウジングを形成する一対の成形型が開閉移動する方向と平行に形成されている走査光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−37267(P2013−37267A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174767(P2011−174767)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】