説明

走行制御装置

【課題】不要な加速を抑制するとともに、先行車両に対して安定して追従することができる走行制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る走行制御装置1は、自車両が走行している車線上で、自車両の最も近くに存在する先行車両の走行状態を判定する先行車両走行状態判定部21と、先行車両走行状態判定部21によって判定された先行車両の走行状態に基づいて、加速度の制限値を設定して自車両の走行制御を行う走行制御部22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を制御する走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、先行車両に追従走行する追従走行制御を行う走行制御装置が知られている。従来の走行制御装置は、先行車両の速度変動に追従するため、先行車両との相対速度をゼロとする制御を行っている。このような追従制御では、先行車両と同じかそれ以上の速度変動(加速及び減速)が生じる。このため、下記の特許文献1に記載の走行制御装置では、自車速と実加速度に基づいて、加速度上限値を算出し、急加速を行わないように自車両の走行制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−127782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の走行制御装置は、自車両の走行状態に基づいて、加速度上限値を算出するため、先行車両に対する追従性能が十分でなかった。
【0005】
そこで本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、不要な加速を抑制するとともに、先行車両に対して安定した追従が可能な走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る走行制御装置は、先行車両の走行状態を判定する先行車両走行状態判定手段と、先行車両走行状態判定手段によって判定された先行車両の走行状態に基づいて、加速度の制限値を設定して自車両の走行制御を行う走行制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、先行車両の走行状態に基づいて加速度の制限値を設定することにより、先行車両の走行状態に応じた加速を行うことができる。その結果、不要な加速を抑制するとともに、先行車両に対して安定した追従を行うことが可能となる。
【0008】
また本発明に係る走行制御装置において、走行制御手段は、先行車両走行状態判定手段によって判定された先行車両の走行状態に基づいて、目標車間距離を設定して自車両の走行制御を行うのが好ましい。これによれば、先行車両の走行状態に応じた目標車間距離で走行できる。このため、不要な加速を抑制するとともに、先行車両に対して安定した追従を行うことが可能となる。
【0009】
また本発明に係る走行制御装置において、自車両の渋滞区間における走行区間を判定する走行区間判定手段をさらに備えてもよく、走行制御手段は、先行車両走行状態判定手段によって判定された先行車両の走行状態と、走行区間判定手段によって判定された自車両の走行区間と、に基づいて、加速度の制限値を設定して自車両の走行制御を行うのが好ましい。これによれば、渋滞区間を走行している場合に、渋滞区間の走行区間に応じて加速度の制限値を設定することにより、渋滞区間の走行区間を考慮した加速を行うことができる。このため、不要な加速を抑制するとともに、先行車両に対して安定した追従を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の走行制御装置によれば、不要な加速を抑制するとともに、先行車両に対して安定して追従することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る走行制御装置の構成概略図である。
【図2】先行車両の速度変化と先行車両の走行状態との関係を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る走行制御装置における目標加速度と加速度制限値による補正目標加速度との関係を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る走行制御装置の走行制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態に係る走行制御装置の第1変形例の走行制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】渋滞区間における自車速と交通流速度とを示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る走行制御装置の第2変形例の走行制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る走行制御装置の構成概略図である。
【図9】自車速と目標車間距離との関係を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る走行制御装置の走行制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係る走行制御装置のACCによる自車速と従来のACCによる自車速とを比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の走行制御装置1の構成概略図である。走行制御装置1は、自車両に搭載され、自車両が走行している車線上で、自車両の最も近くに存在する先行車両(以下、単に「先行車両」という。)の走行状態を判定して、先行車両の走行状態に応じた走行制御を行う装置である。図1に示すように車両制御装置1は、車両ECU(Electronic Control Unit)2と、車間距離計測装置3と、車速センサ4と、加速度センサ5と、通信装置6と、ナビゲーションシステム7と、ACC(Adaptive Cruise Control)スイッチ8と、ブレーキアクチュエータ11と、アクセルアクチュエータ12と、HMI(Human Machine Interface)装置13と、を備えている。
【0014】
車両ECU2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイス等を含むコンピュータを主体として構成されている。車両ECU2は、車間距離計測装置3、車速センサ4、加速度センサ5、通信装置6、ナビゲーションシステム7、ACCスイッチ8、ブレーキアクチュエータ11、アクセルアクチュエータ12、及びHMI装置13に接続されている。また車両ECU2は、先行車両走行状態判定部21と走行制御部22とを備えている。車両ECU2は、さらに交通流速度推定部23と走行区間判定部24とを備えてもよい。
【0015】
車間距離計測装置3は、例えば自車両の前面中央に設けられており、先行車両との車間距離を計測する装置である。車間距離計測装置3は、例えばミリ波レーダである。車間距離計測装置3は、ミリ波を自車両から前方に向けて出射し、先行車両や対向車両、路側物、障害物等から反射してきたミリ波を受信する。そして、車間距離計測装置3は、出射から受信までの時間を計測することによって自車両から先行車両や対向車両、路側物、障害物までの距離を算出する。車間距離計測装置3は、算出した自車両から先行車両や対向車両、路側物、障害物までの距離に関する距離情報を車両ECU2に送信する。
【0016】
車速センサ4は、例えば自車両の車輪部に設けられ、車輪の回転数を検出しており、検出した車輪の回転数から走行状態の車速を算出する。車速センサ4は、算出した車速に基づく車速情報を車両ECU2に送信する。加速度センサ5は、例えば自車両の前部に設けられており、自車両の前後加速度と横加速度を検出する。加速度センサ5は、各加速度に基づく加速度情報を車両ECU2に送信する。
【0017】
通信装置6は、主要道路などに設けられた路側装置、基地局、他車両の少なくともいずれかとの間で双方向通信を行う装置である。通信装置6は、路側装置、基地局、他車両の少なくともいずれかとの間における双方向通信によって例えば他車両の走行位置情報及び他車両の車速情報等を含む走行情報を取得する。通信装置6は、路側装置、基地局、又は他車両から取得した他車両の走行情報を車両ECU2に送信する。
【0018】
ナビゲーションシステム7は、自車両の走行位置を取得する不図示のGPS(Global Positioning System)受信機と、地図情報を記憶する不図示の地図情報DBと、を備えており、地図情報DBに記憶された地図情報に基づいて、入力された目的地までの経路を算出し、不図示の表示装置や音声装置等を用いて経路案内を行う。また、ナビゲーションシステム7は、自車両が現在走行している位置に関する走行位置情報、自車両の走行位置の近傍における地図情報、及び自車両の走行経路に関する走行経路情報を車両ECU2に送信する。
【0019】
ACCスイッチ8は、例えば自車両のステアリングに設けられており、運転者の操作によって、ACCを行うか否かについてのON−OFFが可能とされている。ACCスイッチ8は、ACCがONとなっているか否かに関するACCON−OFF情報を車両ECU2に送信する。車両ECU2は、ACCがONとなっていることを示すACCON−OFF情報をACCスイッチ8から受信することにより、自車両の走行制御を行う。
【0020】
ブレーキアクチュエータ11は、自車両のブレーキの制動量を制御するアクチュエータであり、車両ECU2から出力される加減速度情報に基づいて、ブレーキの制動量を調整する。アクセルアクチュエータ12は、自車両のスロットル開度を調整するアクチュエータであり、車両ECU2から出力される加減速度情報に基づいて、スロットル開度を調整する。HMI装置13は、自車両に搭載され、運転者に通知を行う装置である。HMI装置13は、例えば表示装置、音声装置等である。HMI装置13は、車両ECU2から出力される加速度情報や車間距離情報等の制御情報に基づいて通知を行い、運転者の運転を誘導する。
【0021】
続いて、本実施形態の車両ECU2の各機能について以下に説明を行う。
【0022】
先行車両走行状態判定部21は、先行車両の走行状態を判定する先行車両走行状態判定手段として機能する。先行車両走行状態判定部21は、車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報と、車速センサ4から受信した自車両の車速情報と、加速度センサ5から受信した自車両の加速度情報と、に基づいて、先行車両が加速を行っている加速モードであるか、減速を行っている減速モードあるか、あるいはほぼ一定の速度で走行している定常モードであるかを判定する。
【0023】
図2は、先行車両の速度変化と先行車両の走行状態との関係を示す図である。図2に示すように、先行車両Mの車速Vが増加している期間は、先行車両Mが加速モードであることを示す。また、先行車両Mの車速Vが減少している期間は、先行車両Mが減速モードであることを示す。また、先行車両Mの車速Vがほぼ一定の期間は、先行車両Mが定常モードであることを示す。
【0024】
先行車両走行状態判定部21は、後述する図3に示すように、さらに複数の走行状態を設定し、先行車両がいずれの走行状態であるかを判定するようにしてもよい。先行車両の加速度aが1.0m/s以上で、先行車両の相対速度ΔV(=V−V)が10km/h以上で、車間誤差ΔL(=L−L)が5m以上の場合、先行車両がオーバー加速モードであることを示す。先行車両の加速度aが0.3m/s以上1.0m/s未満の場合、先行車両が加速モードであることを示す。先行車両の加速度aが−0.3m/s以上0.3m/s未満の場合、先行車両が定常モードであることを示す。先行車両の加速度aが−0.3m/s未満の場合、先行車両が減速モードであることを示す。
【0025】
先行車両走行状態判定部21は、さらに車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報と、車速センサ4から受信した自車両の車速情報と、加速度センサ5から受信した自車両の加速度情報と、に基づいて、先行車両の車速V及び加速度aを算出する。
【0026】
走行制御部22は、先行車両走行状態判定部21によって判定された先行車両の走行状態に基づいて、自車両の走行制御を行う走行制御手段として機能する。走行制御部22は、目標車間距離設定部221と、目標加速度算出部222と、加速度制限値設定部223と、目標加速度設定部224と、を備えている。
【0027】
目標車間距離設定部221は、先行車両に対する目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段として機能する。第1実施形態においては、目標車間距離設定部221は、車速センサ4から受信した自車両の車速情報が示す自車速Vに基づいて目標車間距離Lを算出して設定する。目標車間距離設定部221は、例えば以下の目標車間式(1)を用いて目標車間距離Lを算出する。なお、最小車間距離Lmin及び係数kは、目標車間距離設定部221に予め設定された値である。最小車間距離Lminは、例えば3.5mに設定されている。
目標車間距離Lt=Lmin+kV…(1)
【0028】
目標加速度算出部222は、先行車両に対する目標加速度を設定する目標加速度設定手段として機能する。目標加速度算出部222は、先行車両走行状態判定部21により算出された先行車両の車速Vと、車速センサ4から受信した自車両の車速情報が示す自車速Vと、車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報が示す実際の車間距離Lと、目標車間距離設定部221により設定された目標車間距離Lと、に基づいて目標加速度aを算出する。目標加速度算出部222は、例えば以下の式(2)を用いて目標加速度aを算出する。なお、係数k及び係数kは、それぞれ目標加速度算出部222に予め設定された値である。
目標加速度at=kV(Vp-V)+kL(L-Lt)…(2)
【0029】
加速度制限値設定部223は、先行車両走行状態判定部21によって判定された先行車両の走行状態に基づいて、自車両の加速度の制限値である加速度制限値alimを設定する加速度制限値設定手段として機能する。加速度制限値設定部223は、例えば、先行車両走行状態判定部21により判定された先行車両の走行状態が加速モード、定常モード、減速モードのいずれのモードであるかに応じて、予め各モードに対応付けて記憶されている加速度制限値alimを設定する。加速度制限値設定部223は、先行車両の走行状態に応じて、さらに複数の加速度制限値alimを設けてもよい。また、加速度制限値設定部223は、減速度制限値を設定してもよい。
【0030】
目標加速度設定部224は、目標加速度算出部222によって算出された目標加速度aを、加速度制限値設定部223によって設定された加速度制限値alimに基づいて補正し、補正目標加速度aとして設定する目標加速度設定手段として機能する。具体的に説明すると、目標加速度設定部224は、目標加速度算出部222によって算出された目標加速度aと、加速度制限値設定部223によって設定された加速度制限値alimとを比較する。そして、目標加速度aと加速度制限値alimとが同じか、目標加速度aの方が小さければ、目標加速度設定部224は、補正を行うことなく目標加速度aを補正目標加速度aとして設定する。一方、目標加速度aの方が大きければ、目標加速度設定部224は、加速度制限値alimを補正目標加速度aとして設定する。
【0031】
目標加速度設定部224は、加速度制限値設定部223によって減速度制限値が設定されている場合には、目標加速度算出部222によって算出された目標加速度aと、加速度制限値設定部223によって設定された減速度制限値とを比較する。そして、目標加速度aと減速度制限値とが同じか、目標加速度aの方が大きければ、目標加速度設定部224は、補正を行うことなく目標加速度aを補正目標加速度aとして設定する。一方、目標加速度aの方が小さければ、目標加速度設定部224は、減速度制限値を補正目標加速度aとして設定する。
【0032】
図3は、目標加速度aと加速度制限値alimによる補正目標加速度aとの関係を示す図である。グラフA1は、先行車両の走行状態がオーバー加速モードの場合の目標加速度aと補正目標加速度aとの関係を示すグラフである。グラフA2は、先行車両の走行状態が加速モードの場合の目標加速度aと補正目標加速度aとの関係を示すグラフである。
【0033】
グラフA3は、先行車両の走行状態が定常モードの場合の目標加速度aと補正目標加速度aとの関係を示すグラフである。グラフA4は、先行車両の走行状態が定常モードであり、且つ先行車両の相対速度ΔV(=V−V)が0km/hより大きい場合の目標加速度aと補正目標加速度aとの関係を示すグラフである。グラフA5は、先行車両の走行状態が減速モードの場合の目標加速度aと補正目標加速度aとの関係を示すグラフである。
【0034】
先行車両走行状態判定部21により判定された先行車両の走行状態がオーバー加速モードである場合、加速度制限値設定部223は、加速度制限値をalim1に設定する。alim1は、例えば0.8m/sである。先行車両走行状態判定部21により判定された先行車両の走行状態が加速モードである場合、加速度制限値設定部223は、加速度制限値をalim2に設定する。alim2は、例えば0.4m/sである。先行車両走行状態判定部21により判定された先行車両の走行状態が定常モードである場合、加速度制限値設定部223は、加速度制限値をalim3に設定する。alim3は、例えば0.2m/sである。
【0035】
先行車両走行状態判定部21により判定された先行車両の走行状態が定常モードであり、且つ先行車両の相対速度ΔV(=V−V)が0km/hより大きい場合、加速度制限値設定部223は、加速度制限値をalim4に設定する。alim4は、例えば−0.1m/sである。先行車両走行状態判定部21により判定された先行車両の走行状態が減速モードである場合、加速度制限値設定部223は、加速度制限値をalim5に設定する。alim5は、例えば−0.2m/sである。
【0036】
先行車両走行状態判定部21により判定された先行車両の走行状態がオーバー加速モードである場合、目標加速度設定部224は、目標加速度aと加速度制限値alim1とが同じか、目標加速度aの方が小さければ、補正を行うことなく目標加速度aを補正目標加速度aとして設定する。一方、目標加速度aの方が大きければ、目標加速度設定部224は、加速度制限値alim1を補正目標加速度aとして設定する。先行車両が他の走行状態である場合も、目標加速度設定部224は、同様にして補正目標加速度aを設定する。
【0037】
走行制御部22は、目標加速度設定部224によって設定された補正目標加速度aに基づいて、加減速度情報をブレーキアクチュエータ11及びアクセルアクチュエータ12に送信し、ブレーキ及びアクセル(エンジン)の制御を行う。また、車両ECU2は、HMI装置13に補正目標加速度aを示す加速度情報を送信し、HMI装置13に補正目標加速度aを通知させるようにしてもよい。
【0038】
続いて、図4のフローチャートを用いて、走行制御装置1における走行制御処理について説明する。この処理は、車両ECU2がACCオンを示すACCON−OFF情報をACCスイッチ8から受信することにより、車両ECU2に予め設定された周期で繰り返し実施される。
【0039】
まず、先行車両走行状態判定部21は、車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報が示す実際の車間距離Lと、車速センサ4から受信した自車両の車速情報が示す自車速Vと、加速度センサ5から受信した自車両の加速度情報が示す加速度aと、に基づいて、先行車両が加速を行っている加速モードであるか、減速を行っている減速モードあるか、あるいはほぼ一定の速度で走行している定常モードであるかを判定する(S1)。
【0040】
次に、目標車間距離設定部221は、車速センサ4から受信した自車両の車速情報が示す自車速Vに基づいて、先行車両に対する目標車間距離Lを算出して設定する(S2)。目標車間距離設定部221は、例えば上記目標車間式(1)を用いて目標車間距離Lを算出する。そして、目標加速度算出部222は、先行車両走行状態判定部21により算出された先行車両の車速Vと、車速センサ4から受信した自車両の車速情報が示す自車速Vと、車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報が示す実際の車間距離Lと、目標車間距離設定部221により設定された目標車間距離Lと、に基づいて目標加速度aを算出する(S3)。目標加速度算出部222は、例えば上記式(2)を用いて目標加速度aを算出する。
【0041】
加速度制限値設定部223は、例えば、先行車両走行状態判定部21により判定された先行車両の走行状態が加速モード、定常モード、減速モードのいずれのモードであるかに応じて、予め各モードに対応付けて記憶されている加速度制限値alimを設定する(S4)。目標加速度設定部224は、目標加速度算出部222によって算出された目標加速度aを、加速度制限値設定部223によって設定された加速度制限値alimに基づいて補正し、補正目標加速度aとして設定する(S5)。そして、走行制御部22は、S5で算出された補正目標加速度aに基づいて、自車両の走行制御を行う(S6)。
【0042】
このように、走行制御装置1によれば、先行車両の走行状態に基づいて、加速度の制限値を設定して自車両の走行制御を行うことにより、不要な加速を抑制するとともに、先行車両に対して安定した追従を行うことが可能となる。例えば、先行車両が加速モードである場合には、加速度制限値を通常より高く設定して、自車両の加速を許容する。先行車両が減速モードである場合には、加速度制限値を通常より低く設定して、自車両の加速を制限する。このように、走行制御を必要に応じてより適切に行うことが可能となる。その結果、燃費の向上及び乗り心地の向上が可能となる。
【0043】
また、加速度制限値設定部223が減速度制限値を設けることにより、目標加速度算出部222によって算出された目標加速度が大きい減速度を示す場合であっても、目標加速度設定部224は、補正目標加速度を減速度制限値とすることで、急激な減速を抑制することができる。
【0044】
(第1変形例)
走行制御装置1は、自車両が走行している走行経路の交通流速度Vtrafficを考慮して目標加速度aを設定するようにしてもよい。この場合、車両ECU2は、さらに交通流速度推定部23を備える。
【0045】
交通流速度推定部23は、自車両が走行している地点における交通流速度Vtrafficを推定する交通流速度推定手段として機能する。交通流速度推定部23は、例えば、一定の期間(数十秒程度)に車速センサ4から受信した複数の車速情報がそれぞれ示す自車速Vの平均値を交通流速度Vtrafficとして推定する。交通流速度推定部23は、自車両が走行している走行経路上の複数の先行車両の車速を通信装置6を介して車車間通信で受信し、その平均値を交通流速度Vtrafficとして推定してもよい。
【0046】
路側にトラフィックカウンターが一定距離間隔で設置されている場合には、交通流速度推定部23は、走行経路上の複数のトラフィックカウンターが計測し算出した各地点の平均速度を、通信装置6を介して路車間通信で受信するようにしてもよい。そして、交通流速度推定部23は、各地点の平均速度に基づいて、走行経路上の交通流速度Vtrafficを算出するようにしてもよい。例えば、交通流速度推定部23は、各地点の平均速度をそれぞれその地点における交通流速度Vtrafficと推定し、これらを結ぶ曲線を用いて走行経路上の交通流速度Vtrafficを推定してもよい。
【0047】
目標加速度算出部222は、交通流速度推定部23により推定された交通流速度Vtrafficと、先行車両走行状態判定部21により算出された先行車両の車速Vと、車速センサ4から受信した自車両の車速情報が示す自車速Vと、車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報が示す実際の車間距離Lと、目標車間距離設定部221により設定された目標車間距離Lと、に基づいて目標加速度aを算出する。目標加速度算出部222は、例えば以下の式(3)を用いて目標加速度aを算出する。なお、係数k、係数k、及び係数kは、それぞれ目標加速度算出部222に予め設定された値である。
目標加速度at=kt(Vtraffic-V)+kV(Vp-V)+kL(L-Lt)…(3)
【0048】
続いて、図5のフローチャートを用いて、走行制御装置1の第1変形例における走行制御処理について説明する。この処理は、車両ECU2がACCオンを示すACCON−OFF情報をACCスイッチ8から受信することにより、車両ECU2に予め設定された周期で繰り返し実施される。
【0049】
S11及びS12の処理は、図4のS1及びS2の処理と同様であるので、その説明を省略する。交通流速度推定部23は、自車両が走行している地点における交通流速度Vtrafficを推定する(S13)。そして、目標加速度算出部222は、交通流速度推定部23により推定された交通流速度Vtrafficと、先行車両走行状態判定部21により算出された先行車両の車速Vと、車速センサ4から受信した自車両の車速情報が示す自車速Vと、車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報が示す実際の車間距離Lと、目標車間距離設定部221により設定された目標車間距離Lと、に基づいて目標加速度aを算出する(S14)。目標加速度算出部222は、例えば上記式(3)を用いて目標加速度aを算出する。
【0050】
以降、S15〜S17の処理は、図4のS4〜S6の処理と同様であるので、その説明を省略する。なお、S13の処理は、S14の処理以前であれば、どのタイミングで行われてもよい。
【0051】
このように、走行制御装置1によれば、交通流速度推定部23をさらに備えることにより、自車両が走行している地点における交通流速度Vtrafficを考慮して目標加速度aを算出することができる。このため、交通流速度Vtrafficに応じた補正目標加速度aを算出でき、この補正目標加速度aに基づいて、自車両の走行制御を行うことができる。その結果、不要な加速を行うことを抑制し、燃費のさらなる向上及び乗り心地のさらなる向上が可能となる。
【0052】
(第2変形例)
走行制御装置1は、自車両が渋滞区間を走行している場合、自車両が渋滞区間におけるどの区間を走行しているかを考慮して加速度制限値alimを設定するようにしてもよい。この場合、車両ECU2は、さらに走行区間判定部24を備える。
【0053】
走行区間判定部24は、自車両の渋滞区間における走行区間を判定する走行区間判定手段として機能する。走行区間判定部24は、例えば車速センサ4から受信した車速情報に基づいて、自車両が渋滞区間におけるどの走行区間を走行しているかを判定する。走行区間判定部24は、車速センサ4から受信した車速情報が示す自車速が所定の速度V1以下である場合に渋滞区間を走行していると判定する。速度V1は、予め走行区間判定部24に設定されており、例えば40km/hである。また、走行区間判定部24は、車速センサ4から受信した車速情報が示す自車速が所定の速度V2以上である場合に渋滞区間から抜けたと判定する。速度V2は、予め走行区間判定部24に設定されており、例えば80km/hである。走行区間判定部24は、渋滞区間を走行中に車速センサ4から受信した車速情報を不図示の走行情報記憶手段に記憶する。
【0054】
走行区間判定部24は、走行情報記憶手段に記憶された複数の車速情報を予め解析して、渋滞区間を複数の区間に分類している。走行区間判定部24は、渋滞区間を、例えば渋滞区間に入った直後の区間であって車両が減速傾向を示す末尾区間、車両が安定した速度変動をする中心区間、渋滞区間から抜け出す手前の区間であって車両が加速傾向を示す回復区間、に分類している。走行区間判定部24は、走行情報記憶手段に記憶された複数の車速情報を所定期間ごとに所定の時間間隔で抽出し、車速に関する平均値、標準偏差、尖度、歪度等の複数の変量を算出する。そして、走行区間判定部24は、算出した複数の変量を多変量解析することで、2つの変量に纏めるための判別関数を算出する。さらに、走行区間判定部24は、渋滞区間の各区間の境界線を示す判別直線を算出する。
【0055】
走行区間判定部24は、車速センサ4から受信した車速情報が示す自車速Vが所定の速度V1以下である場合に渋滞区間を走行していると判定する。走行区間判定部24は、渋滞区間を走行していると判定すると、現在走行中に車速センサ4から受信した複数の車速情報に基づいて、車速に関する平均値、標準偏差、尖度、歪度等の複数の変量を算出する。走行区間判定部24は、算出した判別関数及び判別直線を用いて、自車両が末尾区間、中心区間、回復区間のいずれの区間を走行しているか判定する。また、走行区間判定部24は、車速センサ4から受信した車速情報が示す自車速Vが所定の速度V2以上である場合に渋滞区間から抜けたと判定する。
【0056】
加速度制限値設定部223は、先行車両走行状態判定部21によって判定された先行車両の走行状態と、走行区間判定部24によって判定された自車両の走行区間と、に基づいて、自車両の加速度の制限値である加速度制限値alimを設定する。図6は、渋滞区間における自車速Vと交通流速度Vtrafficとを示す図である。一般的に、渋滞区間の末尾区間では、車速は大きい変動周期で次第に減速し、交通流速度Vtrafficは減速傾向を示す。また、渋滞区間の中間区間では、車速は安定した変動をし、交通流速度Vtrafficはほぼ一定の速度を示す。また、渋滞区間の回復区間では、車速は上昇を基調とした変動をし、交通流速度Vtrafficは加速傾向を示す。
【0057】
加速度制限値設定部223は、自車両が渋滞区間の末尾区間を走行していると判定された場合には、先行車両は減速傾向を示すと予測されることから、渋滞区間に入る前よりも小さい加速度制限値alimを設定する。加速度制限値設定部223は、自車両が渋滞区間の中心区間を走行していると判定された場合には、車速の変動が少ないと予測されることから、さらに小さい加速度制限値alimを設定する。加速度制限値設定部223は、自車両が渋滞区間の回復区間を走行していると判定された場合には、先行車両は加速傾向を示すと予測されることから、他の走行区間と比較して大きい加速度制限値alimを設定し、自車両の加速を許容する。
【0058】
続いて、図7のフローチャートを用いて、走行制御装置1の第2変形例における走行制御処理について説明する。この処理は、車両ECU2がACCオンを示すACCON−OFF情報をACCスイッチ8から受信することにより、車両ECU2に予め設定された周期で繰り返し実施される。
【0059】
まず、走行区間判定部24は、自車両が渋滞区間を走行しているか否かを判定する(S21)。走行区間判定部24は、例えば車速センサ4から受信した車速情報が示す自車速Vが所定の速度V1以下である場合に渋滞区間を走行していると判定する。そして、自車両が渋滞区間を走行していると判定された場合(S21;Yes)、走行区間判定部24は、自車両が渋滞区間のいずれの走行区間を走行しているか判定する(S22)。一方、S21の判定において、自車両が渋滞区間を走行していないと判定された場合(S21;No)、走行区間判定部24は、自車両が通常の(渋滞区間でない)走行区間を走行していると判定する。以降、S23〜S25の処理は、図4のS1〜S3の処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0060】
次に、加速度制限値設定部223は、先行車両走行状態判定部21によって判定された先行車両の走行状態と、走行区間判定部24によって判定された自車両の走行区間と、に基づいて、自車両の加速度の制限値である加速度制限値alimを設定する(S26)。以降、S27及びS28の処理は、図4のS5及びS6の処理と同様であるので、その説明を省略する。なお、S21及びS22の処理は、S26の処理以前であれば、どのタイミングで行われてもよい。
【0061】
このように、走行制御装置1によれば、走行区間判定部24をさらに備えることにより、さらに渋滞区間の走行区間を考慮して加速度制限値alimを設定することができる。このため、渋滞区間の走行区間の特徴に応じた加速を行うことができる。その結果、不要な加速を行うことを抑制し、燃費の向上及び乗り心地の向上が可能となる。
【0062】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の走行制御装置1Aの構成概略図である。第1実施形態の走行制御装置1と比較すると、走行制御装置1Aは、車両ECU2に代えて車両ECU2Aを備える点が異なる。第1実施形態の車両ECU2と比較すると、車両ECU2Aは、先行車両走行状態判定部21、走行制御部22に代えて、先行車両走行状態判定部21A、走行制御部22Aを備える点が異なる。
【0063】
先行車両走行状態判定部21Aは、先行車両走行状態判定部21の機能に加えて、目標車間距離算出用に、先行車両の第2走行状態を判定する。先行車両走行状態判定部21Aは、先行車両が加速モードのとき、先行車両の加速度aが所定の加速度Aより小さいか否かの判定を行う。先行車両の加速度aが所定の加速度Aより小さい場合に、先行車両は減速モードに遷移したと判定する。加速度Aは、予め先行車両走行状態判定部21Aに設定されており、例えば−0.3m/sである。
【0064】
一方で、先行車両走行状態判定部21Aは、先行車両が減速モードのとき、先行車両の加速度aが所定の加速度Aより大きいか否かの判定を行う。先行車両の加速度aが所定の加速度Aより大きい場合に、先行車両は加速モードに遷移したと判定する。加速度Aは、予め先行車両走行状態判定部21Aに設定されており、例えば0.5m/sである。なお、先行車両走行状態判定部21Aは、先行車両の初期の第2走行状態を、加速モードとして上記判定を行っている。先行車両走行状態判定部21Aにより判定された先行車両の第2走行状態は、後述する目標車間距離設定部221Aの目標車間距離の算出に用いられる。
【0065】
走行制御部22Aは、先行車両走行状態判定部21Aによって判定された先行車両の走行状態に基づいて、自車両の走行制御を行う走行制御手段として機能する。第1実施形態の走行制御部22と比較すると、走行制御部22Aは、目標車間距離設定部221に代えて目標車間距離設定部221Aを備える点が異なる。
【0066】
目標車間距離設定部221Aは、先行車両走行状態判定部21Aによって判定された先行車両の第2走行状態に基づいて、目標車間距離Lを算出して設定する目標車間距離設定手段として機能する。目標車間距離設定部221Aは、先行車両走行状態判定部21Aにより判定された先行車両の第2走行状態と、車速センサ4から受信した自車両の車速情報が示す自車速Vと、車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報が示す実際の車間距離Lと、に基づいて目標車間距離Lを算出する。
【0067】
目標車間距離設定部221Aは、例えば先行車両走行状態判定部21Aにより判定された先行車両の第2走行状態が加速モードの場合、第1実施形態の目標車間距離設定部221が使用した目標車間式(1)を加速時目標車間式として目標車間距離Lを算出する。目標車間距離設定部221Aは、例えば先行車両走行状態判定部21Aにより判定された先行車両の第2走行状態が減速モードの場合、減速時目標車間式として、以下の式(4)を用いて目標車間距離Lを算出する。なお、最小車間距離Lminは、目標車間距離設定部221Aに予め設定されており、例えば3.5mである。減速開始時車間距離Ldecelは、先行車両が減速を開始した時の自車両と先行車両との車間距離である。減速開始時速度Vdecelは、先行車両が減速を開始した時の自車両の車速である。
【数1】

【0068】
先行車両が減速モードの場合における目標車間距離Lの算出を具体的に説明する。先行車両走行状態判定部21Aにより加速モードから減速モードに遷移したと判定されたとき、目標車間距離設定部221Aは、車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報が示す距離を減速開始時車間距離Ldecelとして一時的に記憶する。また、先行車両走行状態判定部21Aにより加速モードから減速モードに遷移したと判定されたとき、目標車間距離設定部221Aは、車速センサ4から受信した車速情報が示す車速を減速開始時速度Vdecelとして一時的に記憶する。そして、目標車間距離設定部221Aは、一時記憶した減速開始時車間距離Ldecel及び減速開始時速度Vdecelを目標車間式(4)に代入し、減速時目標車間式を算出する。そして、目標車間距離設定部221Aは、算出した減速時目標車間式を用いて目標車間距離Lを算出する。
【0069】
図9は、自車速Vと目標車間距離Lとの関係を示す図である。グラフB1は、自車速Vと最大目標車間距離との関係の一例を示すグラフである。グラフB2は、従来のACCにおける自車速Vと長目標車間距離との関係の一例を示すグラフである。長目標車間距離とは、長い車間距離を許容する場合の目標車間距離である。グラフB3は、従来のACCにおける自車速Vと短目標車間距離との関係の一例を示すグラフである。短目標車間距離とは、短い車間距離を許容する場合の目標車間距離である。このグラフ3は、先行車両の第2走行状態が加速モードの場合の、自車速Vと目標車間距離Lとの関係の一例を示すグラフでもある。すなわち、上記目標車間式(1)を表したグラフである。
【0070】
グラフB4は、先行車両の第2走行状態が減速モードの場合の、自車速Vと目標車間距離Lとの関係の一例を示すグラフである。すなわち、減速時目標車間式の一例を表したグラフである。グラフB5は、先行車両の第2走行状態が減速モードの場合の、自車速Vと目標車間距離Lとの関係の一例を示すグラフである。グラフB5の折れ線部分は、自車両が減速中に自車両と先行車両との間に他車両が割り込んだことを示す。この割り込みにより、目標車間距離設定部221Aは、割り込んだ他車両に対する減速時目標車間式を算出し、以降、算出した減速時目標車間式に基づいて目標車間距離Lを算出する。
【0071】
その他の構成については、第1実施形態の車両ECU2と同様であるので、その説明を省略する。
【0072】
続いて、図10のフローチャートを用いて、走行制御装置1Aにおける走行制御処理の手順について説明する。この走行制御処理は、車両ECU2AがACCオンを示すACCON−OFF情報をACCスイッチ8から受信することにより、車両ECU2Aに予め設定された周期で行われる。
【0073】
まず、先行車両走行状態判定部21Aは、先行車両の第2走行状態を判定し、先行車両が加速モードであるか否かを判定する(S31)。先行車両が加速モードであると判定された場合(S31;Yes)、目標車間距離設定部221Aは、加速時目標車間式(1)に基づいて、目標車間距離Lを算出する(S32)。一方、S31の判定において、先行車両が加速モードでないと判定された場合(S31;No)、先行車両走行状態判定部21Aは、前回走行制御処理を行った時に先行車両が加速モードであったか否かを判定する(S33)。
【0074】
先行車両走行状態判定部21Aは、先行車両の走行状態を判定した際に、先行車両の走行状態を判定した時刻を示す時刻情報とともにその判定結果を不図示の記憶手段に一時記憶しておく。そして、先行車両走行状態判定部21Aは、記憶手段に記憶されている情報を参照することで、前回走行制御処理を行った時に先行車両が加速モードであったか否かの判定を行う。
【0075】
前回走行制御処理を行った時に先行車両が加速モードであったと判定された場合(S33;Yes)、目標車間距離設定部221Aは、減速時目標車間式を算出する(S34)。目標車間距離設定部221Aは、車間距離計測装置3から受信した先行車両との距離情報が示す距離を減速開始時車間距離Ldecelとし、車速センサ4から受信した車速情報が示す車速を減速開始時速度Vdecelとして目標車間式(4)に代入し、減速時目標車間式を算出する。目標車間距離設定部221Aは、S34において算出した減速時目標車間式に基づいて、目標車間距離Lを算出する(S37)。
【0076】
一方、S33の判定において、前回走行制御処理を行った時に先行車両が加速モードでなかったと判定された場合(S33;No)、前回走行制御処理を行った時の先行車両と、自車両との間に、他車両が割り込んだか否かを判定する(S35)。例えば、先行車両走行状態判定部21Aは、先行車両の走行状態を判定する際に、先行車両を識別可能な情報を保持しておき、前回の走行制御処理時の先行車両と今回の走行制御処理時の先行車両とが同じであるか否かを判定する。
【0077】
先行車両走行状態判定部21Aは、例えば、不図示の車載カメラの画像情報又は通信装置6を介して受信した先行車両の車両識別情報等を、先行車両を識別可能な情報として保持する。先行車両走行状態判定部21Aは、前回の走行制御処理時の先行車両と今回の走行制御処理時の先行車両とが同じ場合には、他車両の割り込みはなかったと判定する。一方、先行車両走行状態判定部21Aは、前回の走行制御処理時の先行車両と今回の走行制御処理時の先行車両とが異なる場合には、他車両の割り込みがあったと判定する。
【0078】
S35の判定において、他車両が割り込んだと判定された場合(S35;Yes)、目標車間距離設定部221Aは、割り込んだ他車両に対する減速時目標車間式を算出する(S36)。すなわち、目標車間距離設定部221Aは、車間距離計測装置3から受信した他車両との距離情報が示す距離を減速開始時車間距離Ldecelとし、車速センサ4から受信した車速情報が示す車速を減速開始時速度Vdecelとして目標車間式(4)に代入し、減速時目標車間式を算出する。そして、目標車間距離設定部221Aは、S36において算出した減速時目標車間式に基づいて、目標車間距離Lを算出する(S37)。
【0079】
一方で、S35の判定において、割り込みは無かったと判定された場合(S35;No)、前回の走行制御処理時の先行車両と今回の走行制御処理時の先行車両とは同一である。このため、目標車間距離設定部221Aは、前回の走行制御処理時に使用した減速時目標車間式に基づいて、目標車間距離Lを算出する(S37)。そして、走行制御部22Aは、S32又はS37で算出された目標車間距離Lに基づいて、自車両の走行制御を行う(S38)。
【0080】
走行制御部22Aは、例えば、先行車両との車間距離を目標車間距離Lとするようにブレーキアクチュエータ11及びアクセルアクチュエータ12に対して加減速度情報を出力する。走行制御部22Aは、例えば、目標車間距離Lを示す車間距離情報をHMI装置13に出力して、HMI装置13により運転者に通知するようにしてもよい。
【0081】
また、S38の処理の前に、図4のS3〜S5の処理がさらに行われる構成としてもよい。すなわち、走行制御部22は、目標車間距離設定部221Aによって算出された目標車間距離Lに基づいて目標加速度aを算出し、算出された目標加速度aに基づいて補正目標加速度aを設定して、自車両の走行制御を行うようにしてもよい。
【0082】
さらに、走行制御装置1Aは、自車両が走行している走行経路の交通流速度Vtrafficを考慮して目標加速度aを設定するようにしてもよい。この場合、車両ECU2Aは、さらに交通流速度推定部23を備える。また、走行制御装置1Aは、自車両が渋滞区間を走行している場合、自車両が渋滞区間におけるどの区間を走行しているかを考慮して加速度制限値alimを設定するようにしてもよい。この場合、車両ECU2Aは、さらに走行区間判定部24を備える。交通流速度推定部23及び走行区間判定部24については、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0083】
図11は、先行車両の車速に対する従来のACCによる自車両の車速と、走行制御装置1AのACCによる自車両の車速と、を示した図である。従来のACCは、先行車両の速度変化に追従することを目標として、先行車両との相対速度をゼロにすること及び目標車間に合わせることを行っている。このため、従来のACCによる自車両の車速Vは、先行車両の車速Vに対して加速及び減速が数秒程度遅れた速度変動を繰り返している。その結果、先行車両と同じか、それ以上の速度変動、すなわち加速及び減速が生じている。
【0084】
一方で、走行制御装置1AのACCによれば、先行車両の走行状態に応じて加速度制限値が設定されるため、先行車両の車速Vに対して自車両の車速Vの変動が少ない。特に、先行車両が急激な加速又は減速を行った場合に、自車両の加速又は減速が制限されている。このため、従来のACCと比較すると、燃費が向上し、乗り心地も向上する。
【0085】
このように、走行制御装置1Aによれば、走行制御装置1の作用効果に加えて以下の作用効果を有する。すなわち、走行制御装置1Aによれば、先行車両の走行状態に基づいて、目標車間距離を設定して自車両の走行制御を行うことにより、不要な加速を抑制するとともに、先行車両に対して安定した追従を行うことが可能となる。このため、走行制御を必要に応じてより適切に行うことが可能となる。その結果、燃費の向上及び乗り心地の向上が可能となる。
【0086】
なお、本発明に係る走行制御装置は上記第1及び第2実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係る走行制御装置は、各請求項に記載した要旨を変更しないように第1及び第2実施形態に係る走行制御装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。例えば、走行制御装置1,1Aは、交通流速度推定部23及び走行区間判定部24を備えてもよい。この場合、自車両が走行している地点における交通流速度Vtrafficをさらに考慮して目標加速度aを算出し、渋滞区間の走行区間を考慮して加速度制限値alimを設定する。
【0087】
例えば、車間距離計測装置3は、ミリ波レーダに代えて、車載カメラを用いて、先行車両等との距離を計測し、距離情報を車両ECU2に送信する構成としてもよい。また、車間距離計測装置3は、ドップラーシフトにより発生する出射波と、先行車両や対向車両、路側物、障害物等からの反射波と、の周波数差により、先行車両や対向車両、路側物、障害物等の相対速度の検出を行うようにしてもよい。車間距離計測装置3は、相対速度情報を車両ECU2に送信するようにしてもよい。この場合、先行車両走行状態判定部21,21Aは、車間距離計測装置3から受信した先行車両の相対速度情報と、車速センサ4から受信した自車両の車速情報と、加速度センサ5から受信した自車両の加速度情報と、に基づいて、先行車両の車速V及び加速度aを算出し、先行車両の走行状態および第2走行状態を判定するようにしてもよい。
【0088】
走行区間判定部24は、多変量解析により渋滞区間を複数の区間に分類し、自車両がどの区間を走行しているか判断しているが、これに限られるものではない。例えば、走行区間判定部24は、以下のようにして自車両の走行区間を判定してもよい。走行区間判定部24は、不図示のGPS受信機から自車両の走行位置を取得する。そして、走行区間判定部24は、交通流速度推定部23によって推定された自車両の走行位置における交通流速度Vtrafficが速度V1以下であるか否かを判定する。交通流速度Vtrafficが速度V1以下の場合、走行区間判定部24は、自車両が渋滞区間を走行していると判定してもよい。
【0089】
さらに、走行区間判定部24は、交通流速度Vtrafficが、減速傾向を示しているか、安定しているか、上昇傾向を示しているかを判定する。交通流速度Vtrafficが、減速傾向を示している場合には、走行区間判定部24は、自車両が渋滞区間の末尾区間を走行していると判定する。交通流速度Vtrafficが、安定している場合には、走行区間判定部24は、自車両が渋滞区間の中心区間を走行していると判定する。交通流速度Vtrafficが、上昇傾向を示している場合には、走行区間判定部24は、自車両が渋滞区間の回復区間を走行していると判定してもよい。
【0090】
走行区間判定部24は、自車両の走行位置における交通流速度Vtrafficが速度V2以上であるか否かを判定する。交通流速度Vtrafficが速度V2以上の場合、走行区間判定部24は、自車両が渋滞区間から抜けたと判定してもよい。
【0091】
先行車両走行状態判定部21,21Aは、先行車両の加速度に基づいて先行車両の走行状態の判定を行っているが、この走行状態を判定するためのしきい値は、上記実施形態において示した値に限定されるものではない。また、加速度制限値設定部223によって設定される加速度制限値も、上記実施形態において示した値に限定されるものではない。
【0092】
先行車両走行状態判定部21Aは、補正目標加速度a算出用の先行車両の走行状態と、目標車間距離L算出用の先行車両の第2走行状態と、をそれぞれ判定しているが、補正目標加速度a算出用と、目標車間距離L算出用とで共通に使用する1つの走行状態を判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1,1A…走行制御装置、21,21A…先行車両走行状態判定部(先行車両走行状態判定手段)、22,22A…走行制御部(走行制御手段)、23…交通流速度推定部、24…走行区間判定部(走行区間判定手段)、221,221A…目標車間距離設定部、222…目標加速度算出部、223…加速度制限値設定部、224…目標加速度設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車両の走行状態を判定する先行車両走行状態判定手段と、
前記先行車両走行状態判定手段によって判定された前記先行車両の走行状態に基づいて、加速度の制限値を設定して自車両の走行制御を行う走行制御手段と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記走行制御手段は、前記先行車両走行状態判定手段によって判定された前記先行車両の走行状態に基づいて、目標車間距離を設定して自車両の走行制御を行う、
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
自車両の渋滞区間における走行区間を判定する走行区間判定手段をさらに備え、
前記走行制御手段は、前記先行車両走行状態判定手段によって判定された前記先行車両の走行状態と、前記走行区間判定手段によって判定された自車両の走行区間と、に基づいて、加速度の制限値を設定して自車両の走行制御を行う、
請求項1又は2に記載の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−153296(P2012−153296A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15327(P2011−15327)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】