起振装置
【課題】小型かつ低周波数の振動を構造物に与えることができ、振幅も容易に調整可能な起振装置に関する技術を提供する。
【解決手段】第一の正弦波を出力する第一の出力手段としてのモータ10と、第一の正弦波と同じ又は異なる位相の第二の正弦波を出力する第二の出力手段としてのモータ20と、第一の正弦波の振幅方向と第二の正弦波の振幅方向とが重なるようにモータ10とモータ20とを接続する接続手段としてのカム溝30と、を備える。
【解決手段】第一の正弦波を出力する第一の出力手段としてのモータ10と、第一の正弦波と同じ又は異なる位相の第二の正弦波を出力する第二の出力手段としてのモータ20と、第一の正弦波の振幅方向と第二の正弦波の振幅方向とが重なるようにモータ10とモータ20とを接続する接続手段としてのカム溝30と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に起振力を与える起振装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物に外力を付加して応答性を計測し、構造物の振動特性を求めることが行われている。そして、このような構造物の振動特性を求める際に構造物に外力を付加する装置として、起振装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術によれば、正逆回転可能なモータに減速機、ドラム、ワイヤロープを介して接続された錘重を往復運動させることで、構造物に振動を与えることができ、その結果構造物の振動特性を求めることができる。
【0004】
また、上記のような構造物の振動特性を求める際に用いられる起振装置とは異なるものの、被対象物に振動を与える装置として様々な技術が知られている。例えば、特許文献2に記載の技術は、コンクリート二次加工における造型・充填を行う際に用いるための振動テーブルに関する技術であり、複数のモータを一つのケーシング内に収容し、収容される複数のモータを軸並列配置、同軸心配置とすることで、振動力、振動方向を自由に変えることができる。
【特許文献1】特開平10−263478号公報
【特許文献2】特開平7−289993号公報
【特許文献3】特開平9−78579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造物の振動特性を求める際に用いられる起振装置として様々な技術が開発されている。例えば、正逆回転可能なモータに減速機、ドラム、ワイヤロープを介して接続された錘重を往復運動させる起振装置に関する技術によれば、モータの大きさにしては比較的大きな振動力を得ることができる。しかし、この起振装置は、モータを正逆回転させて錘重を往復運動させる構成であり、モータへの負荷が大きく、また振幅の調整を行うことが困難であった。
【0006】
また、上記以外にも種々の起振装置に関する技術が開発されているものの、従来の起振装置は、大型のものが多く、小型かつ低周波数の振動を構造物に与えることができる起振装置の開発が望まれていた。
【0007】
本発明では、上記の問題に鑑みなされたものであり、小型かつ低周波数の振動を構造物に与えることができ、振幅も容易に調整可能な起振装置に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上述した課題を解決するため以下の手段を採用した。すなわち、本発明に係る起振装置は、構造物に起振力を与える起振装置であって、第一の正弦波を出力可能な第一の出力手段と、前記第一の正弦波と同じ又は異なる位相の第二の正弦波を出力可能な第二の出力手段と、前記第一の正弦波の振幅方向と前記第二の正弦波の振幅方向とが重なるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを接続する接続手段と、を備える。
【0009】
本発明に係る起振装置によれば、第一の正弦波の振幅方向と第二の正弦波の振幅方向と
が重なるように、第一の出力手段と第二の出力手段とが接続手段を介して接続されているので、少なくともいずれか一方の出力手段から出力される正弦波の位相を調整することで振幅を大きくしたり小さくしたりすることが可能となる。すなわち、位相を調整することで構造物に与える起振力の振動モードを調整することができる。なお、第一の出力手段と第二の出力手段には、一般的なモータが例示でき、これらのモータは、小型のものを用いることができる。また、本発明に係る起振装置は、小型のモータが適用可能な出力手段と、出力手段同士を接続する接続手段といった非常に簡易な構成であり、装置自体の小型化を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る起振装置において、前記第一の出力手段と前記第二の出力手段は、モータであり、前記接続手段は、前記第一の出力手段の回転運動と前記第二の出力手段の回転運動とを所定の同じ方向に拘束し、回転運動を拘束することで抽出された第一の正弦波と第二の正弦波の振幅方向が重なるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを接続するようにしてもよい。
【0011】
第一の正弦波及び第二の正弦波は、モータの回転運動から抽出することができる。そして、第一の出力手段としてのモータの回転運動と第二の出力手段としてのモータの回転運動を所定の同じ方向に拘束する。例えば、垂直方向を拘束することで、水平方向に振幅する正弦波を抽出することができる。
【0012】
接続手段は、例えば、第一及び第二の出力手段としての夫々のモータの回転軸先端側に設けられ、回転軸と共に回転する回転盤と、第一及び第二の出力手段としての夫々のモータの回転軸から所定距離(距離A)離れた回転盤上に設けられるカムフォロアと、このカムフォロアが移動自在に接続される直線状の溝が設けられ、所定の方向のみの可動が許容されるカム溝と、を備える構成とすることができる。
【0013】
上記構成の場合、カム溝に設けられた直線状の溝が垂直になるようにカム溝を配置し、カム溝自体は、水平方向にのみ移動可能にし、第一の出力手段としてのモータ側のカムフォロアをカム溝の前記溝に接続して該モータを回転運動させる。するとカム溝は、水平方向において振幅Aの正弦運動をする。すなわち、第一の出力手段としてのモータの回転運動から正弦波を抽出することができる。
【0014】
更に、第一の出力手段としてのモータと対向するように第二の出力手段としてのモータをカム溝に接続する。換言すると、カム溝の一方の面(表面)に第一の出力手段としてのモータをカムフォロアを介して接続し、カム溝の他方の面(裏面)に第二の出力手段としてのモータをカムフォロアを介して接続する。ここで、カム溝自体は、水平方向における移動のみが許容されているので、第一の出力手段としてのモータの回転運動と第二の出力手段としての回転運動からそれぞれ同じ振幅方向の正弦波が抽出されることになる。また、第一の出力手段としてのモータの回転運動と第二の出力手段としてのモータの回転運動は、一定方向に往復運動する一つのカム溝によって拘束されているので、抽出される正弦波の振幅方向、換言すると二つの正弦波の振幅方向が同じとなる。その結果、少なくともいずれか一方の正弦波の位相を変化させることで二つの正弦波が合成された正弦運動の振幅を調整することが可能となる。
【0015】
なお、本発明に係る起振装置において、前記第一の出力手段は、前記構造物に固定され、前記第二の出力手段は、前記接続手段によって重ねられる前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の振幅方向において移動可能に前記構造物に接続されることで、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波が合成された正弦運動をするようにしてもよい。
【0016】
上記のような構成とすることで、第二の出力手段自体が第一の正弦波及び第二の正弦波
の振幅方向へ正弦運動することになる。したがって、例えば接続手段としてのカム溝を水平方向においてのみ移動可能な構成とした場合には、第二の出力手段もこのカム溝と同じく水平方向に正弦運動することになる。その際の振幅は、接続手段を上述したような構成とした場合には、最大2Aとなる。
【0017】
つまり、第二の出力手段の正弦運動は、第一の出力手段から出力される第一の正弦波と第二の出力手段から出力される第二の正弦波が合成された正弦運動となり、次式で表されることになる。
【0018】
Asin(ωt)+Asin(ωt+α)
=Asin(ωt+α/2)・cos(α/2)
=(2Acos(α/2))・sin(ωt+α/2)
【0019】
なお、振動数を変化させることも可能であるが、第一の出力手段としてのモータの振動数、第二の出力手段としてのモータの振動数を同じにし、すなわち二つのモータを同じ回転数で回転させ、位相のみを調整することでより容易に振幅を調整することができる。
【0020】
したがって、本発明に係る起振装置は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波は同じ周波数であり、前記第二の出力手段の正弦運動における振幅は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の位相差に基づいて決定されるようにしてもよい。
【0021】
また、本発明に係る起振装置は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の、周波数と位相のうち少なくともいずれか一方を制御する、制御手段を更に備え、前記制御手段は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の周波数が等しくなるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを制御し、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波とのうち少なくともいずれか一方の正弦波の位相を調整することで、前記第二の出力手段の正弦運動の振幅を調整するようにしてもよい。
【0022】
なお、回転制御は、従来の技術を用いることができる。例えば、パルス数とその周波数にによって回転制御を行ってもよく、また、エンコーダなどの検知手段を設け、モータ軸の回転角度や回転速度を検知し、検知手段からの信号を反映させた回転制御を行ってもよい。
【0023】
また、本発明に係る起振装置において、前記構造物に接続される前記第二の出力手段に接続する重錘を更に備え、前記起振力は、前記重錘の重量と、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波との位相差によって調整してもよい。
【0024】
上述したように、本発明に係る起振装置では、第一の出力手段と第二の出力手段のうちいずれか一方の出力手段から出力される正弦波の位相を変化させることで、合成された正弦運動の振幅を調整することができる。本発明では、さらに重錘の重量を適宜変更することで構造物に与える起振力を調整することができる。なお、重錘は、第一の出力手段を固定し、第二の出力手段を移動可能に接続手段を介して接続する場合において、第二の出力手段に接続する。なお、第二の出力手段自体が正弦運動し、その際第二の出力手段自体が重錘としての機能する為、起振力を決定するに当たっては、第二の出力手段の重量も考慮して重錘の重量を決定することが好ましい。
【0025】
なお、上述した起振装置は、二つの出力手段から出力される正弦波の振幅方向を重ねる構成としたが、これに限定されるわけではない。必要に応じて出力手段の数を増やしてもよい。また、本発明に係る起振装置は、その構成が非常に簡易であり、小型であるので構造物の任意の箇所に必要に応じて複数配置することができる。また、取付方向も梁などの
水平部分にに限らず、柱などの垂直部分にも取り付けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、小型かつ低周波数の振動を構造物に与えることができ、振幅も容易に調整可能な起振装置に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明に係る起振装置の実施形態について図面に基づいて説明するが本発明に係る起振装置は、以下に限定されるわけではない。
【0028】
<構成>
図1は、第一の実施形態に係る起振装置1の上面図であり、図2は、第一の実施形態に係る起振装置1の正面図である。なお、図1において重錘設置台50は、起振装置1の構成を分かり易くするため点線で表している。
【0029】
図1、図2に示すように、第一の実施形態に係る起振装置1は、モータ10(本発明の第一の出力手段に相当する。)と、モータ20(本発明の第二の出力手段に相当する。)と、カム溝30とカムフォロア31a、31bと回転盤32a、32bとを備える。なお、カム溝30とカムフォロア31a、31bと回転盤32a、32bは、本発明の接続手段に相当する。
【0030】
モータ10は、ベース40を介して構造物100に固定された状態で本発明の第一の正弦波を出力する。より具体的には、モータ10が所定の回転数で回転運動することで、回転軸10aの先端に接続された回転盤31aに設けられたカムフォロア31aが回転運動する。カムフォロア31aは、カム溝30の直線状の溝に垂直方向に移動可能に接続されている。また、カム溝30は、ベース40のほぼ中心に設けられたレール41上に水平方向(図2における紙面奥方向)にのみ移動可能に接続されている。従って、モータ10を回転運動させると、カム溝30がレール41上を往復運動する。すなわち、モータ10の回転運動から水平方向の正弦運動が抽出される。
【0031】
なお、カム溝30の振幅は、モータ10の回転軸10aからカムフォロア31aまでの距離Aに基づいて決定される。従って、この距離を調整することで、カム溝30の振幅を調整することができる。また、モータ10とベース40との固定は、ベース40から直角に立ち上げられた固定部42にボルト等を用いて行う。なお、ベース40や固定部42の材質は、特に限定されるものではないが、例えば金属のように、強度に優れ、振動に十分に耐えられる材質である必要がある。
【0032】
モータ20は、カム溝30の振幅方向に移動可能な状態で第二の正弦波を出力する。より具体的には、モータ20もモータ10と同じく回転軸20aの先端に回転盤31aが設けられており、モータ20を回転させるとカムフォロア31aが回転運動する。そして、このようなモータ20がモータ10と対向するようにカム溝30に接続されている。換言すると、カム溝30の一方の面(図1における紙面左側)にモータ10のカムフォロア31aが接続され、カム溝30の他方の面(図1における紙面右側)にカムフォロア31bが接続されている。なお、上述したようにモータ20はカム溝30の振幅方向に移動可能に接続されているので、モータ10の回転運動に伴ってカム溝30がレール41上を正弦運動すると、モータ20がカム溝30と共に正弦運動することになる。
【0033】
この際、モータ10とモータ20との回転数を同じ値とし、モータ20の回転軸20bからカムフォロア31bまでの距離もモータ10の回転軸10aからカムフォロア31aまでの距離と同じくAとする。すると、モータ10とモータ20から同波形の正弦波が出
力されることになる。このようにモータ10から出力される第一の正弦波とモータ20から出力される第二の正弦波は、カム溝30等の接続手段によって振幅方向が重ねられており、またモータ20はカム溝30の振幅方向に移動可能に接続されているので、モータ20はモータ10から出力される第一の正弦運動とモータ20から出力される第二の正弦運動が合成された正弦運動を行うことになる。
【0034】
なお、モータ20の正弦運動は、以下の式で表すことができる。
【0035】
Asin(ωt)+Asin(ωt+α)
=Asin(ωt+α/2)・cos(α/2)
=(2Acos(α/2))・sin(ωt+α/2)
【0036】
このように、モータ20はモータ10とモータ20と同一の回転数で正弦運動し、その振幅はモータ10とモータ20との位相差αによって変化することになる。なお、上記における位相差αには、電気的信号のずれの他、カム溝30に接続されるカムフォロア31a、31bの位置のずれも含まれる。
【0037】
ここで、カム溝30とカムフォロア31a、31bの接続形態について図面に基づいてより詳細に説明する。図3は、カム溝30とカムフォロア31a、31bを分離した状態を示す図である。図4は、カム溝30とカムフォロア31a、31bを接続した状態を示す図である。
【0038】
カム溝30は、その溝幅がカムフォロア31a、31bよりもやや大きく形成され、溝内にカムフォロア31a、31bが収容可能に形成されている。また、溝の長さは、回転軸10aからカムフォロア31aまでの距離Aの2倍よりも大きく形成されている。更に、溝の深さは、カムフォロア31a、31bが両側から挿入された際に、互いに接触しないように形成されている。なお、カム溝の材質も特に限定されるわけではないが、金属などの十分な強度を有する材質とすることが好ましい。
<動作>
【0039】
次に、起振装置1の動作について図面に基づいて説明する。図5は、起振装置1におけるモータ20の正弦運動(位相差α=0度とした場合)を示す図である。(a)〜(e)は、所定量回転させた状態を示す。また、上側に記載の図は上面図であり、下側の図は上面図の夫々に対応する側面図である。なお、側面図においては説明上モータ20側の回転盤32bを点線で表し、モータ20自体は省略している。
【0040】
モータ10とモータ20とをカム溝30を介して接続した状態で、位相差α=0度、同じ回転数でモータ10とモータ20とを回転運動させる。なお、位相差αには電気信号のずれの他、カムフォロア31a、31bの位置のずれも含まれるが、位置のずれを0(初期値)として説明する。
【0041】
図5(a)では、回転盤32a、32bがほぼ水平であり、固定されたモータ10の回転軸10aからモータ20の回転軸20bまでの距離は最大振幅2Aとなっている。図5(b)は、図5(a)から所定角度時計方向に回転した状態を示す。モータ10とモータ20は、同じ回転数で回転運動しているため、カムフォロア32a、32bは同じ角度で傾いており、カム溝30とカム溝30に接続されたモータ20は、図5(a)に示す状態よりも回転軸10a側に所定角度の分だけ移動している。
【0042】
図5(c)、(d)、(e)は、それぞれ更に所定角度ずつ時計方向に回転した状態を示す。図5(b)と図5(c)との間でモータ20の振幅は0となる。更に、図5(c)
と図5(d)との間でモータ20の振幅は、最大2Aとなる。そして図5(e)の状態から再び図5(a)の状態へ移行し、モータ20の正弦運動繰り返されることになる。
【0043】
図6から図9は、位相差αとモータ20の振幅の関係を示す図である。なお、回転軸10aからカムフォロア31aまでの距離Aは50mm(回転軸20bからカムフォロア31bまでの距離Aも50mm)、モータ10、20の回転数は3Hzとする。
【0044】
図6は位相差α=0度、図7は位相差α=60度、図8は位相差α=150度、図9は位相差α=180度、におけるモータ20の正弦運動を示す。また、M10はモータ10から出力される第一の正弦波、M20はモータ20から出力される第二の正弦波、M10+M20は第一の正弦波と第二の正弦波の合成であるモータ20の正弦運動を示す。位相差α=0度(図6参照)、位相差α=60度(図7参照)の場合、モータ20の正弦運動の振幅が第一の正弦波及び第二の正弦波の振幅50mmを上回っており、特に位相差α=0度の場合において最大振幅100mmとなっている。また、位相差α=150度(図8参照)、位相差α=180度(図9参照)の場合、モータ20の正弦運動の振幅が第一の正弦波及び第二の正弦波の振幅50mmを下回っており、特に位相差α=180度において振幅が0mmとなっている。
【0045】
このように、第一の実施形態に係る起振装置1によれば、位相差αを調整することで容易に構造物に与える起振力の振幅を調整することができる。すなわち、モータ10とモータ20の回転数を変えることなく、位相差αを調整するのみでモータ20の制限運動の振幅、すなわち振動モードを調整することが可能となる。
【0046】
次にモータ10及びモータ20の制御について説明するが、本実施形態に係る起振装置における制御は、各モータの回転数と位相の制御ができればよく、モータの回転数の制御や位相の制御は従来技術を用いて行うことができる。
【0047】
図10は、制御部70を備える第一の実施形態に係る起振装置1の概略構成を示す図である。同図に示すように、モータ10とモータ20がそれぞれ制御部70と電気的に接続されている。制御部70は、CPU71、メモリ72を有し、所定のプログラムに従ってモータ10、20の回転数、位相を制御する。例えば、モータ10、20としてステッピングモータを使用した場合、制御部内のコントローラ(図示せず)から所定の回転数に応じたパルス信号が出力され、ドライバ(図示せず)で駆動電流に変換されてモータ10を駆動する。なお、本発明は低周波の振動を構造物に与えることを目的としていることから、経済性にも優れたステッピングモータが好適であるといえる。
【0048】
また、モータ10、20としてサーボモータを用いてもよく、制御部70は、この場合エンコーダ(図示せず)によって回転数の検出を行い、エンコーダからのフィードバックとモータ10、20に出力したパルス信号とを比較して、必要に応じて誤差を修正するようにしてもよい。なお、本実施形態では、制御部70を起振装置1に設けることとしたがこれに限定されるわけではない。制御部70を起振装置1とは別に設ける構成としてもよい。
【0049】
なお、制御部70内のメモリ72には、上述した図6から図9に相当するマップやこれらに対応する位相差と振幅との対応がテーブル化されたテーブルを格納してもよい。このようなマップやテーブルを予め設けることで、起振力に応じた位相差を抽出することができ、その結果より容易に目的に応じた振動モードの起振力を構造物に与えることができる。
【0050】
なお、対象の構造物100には起振装置1を目的に応じて複数設置することができる。
図11は、起振装置を同軸上に複数配置する場合のシステム構成の概略を示す図である。なお、起振装置1、2、・・・n、は、モータ10、20を有している。各起振装置と制御部70aは、電気的に接続されており、制御部70aは、複数の起振装置を制御する。すなわち、制御部70aによって各起振装置のON/OFF等を制御することができる。また、上述した制御部70の機能、すなわち、各起振装置毎のモータの制御を制御部70aで行うようにしてもよい。
【0051】
なお、図11に示す概略構成は、複数の起振装置を同軸上に配置する場合のシステム構成の概略図である。同軸上とは、構造物100に与えられる起振力の振幅方向が一つであることを意味し、複数の起振装置の設置方向を同じくして例えば梁等に設置する場合が例示できる。この様に同軸上に複数の起振装置を配置する場合においてそれぞれの起振装置から出力される起振力を同じに設定すれば、起振装置をn機設置した場合、構造物100に与える起振力もn倍とすることが可能となる。目的に応じてより大きな起振力を構造物100に与えることが可能となる。なお、起振装置1から出力される起振力の大きさは、重錘設置台50に接続する重錘の重量によって適宜調整することができる。
【0052】
図12は、異なる軸上に起振装置を配置する場合のシステム構成の概略を示す図である。異なる軸とは、X軸、Y軸、Z軸であり、具体的には、梁、や柱など構造物の任意の場所に設置することができる。なお、制御部70bの機能は、上述した制御部70aと同様であり、また、制御部70の機能を持たせるようにしてもよい。
【0053】
以上説明した第一の実施形態に係る起振装置1によれば、モータ10とモータ20との位相差αを調整することで、振動モードを容易に調整することができ、また、重錘を調整して目的に応じた起振力を構造物に与えることができる。そして、モータ10、20には小型のモータが適用可能であり、起振装置全体の大きさも従来に比べて小型化することができる。なお、一方のモータから出力される正弦波に対し、最大で2倍の振幅の正弦運動を行うことが可能であり、小型でありながら小さい振動から大きい振動まで種々の起振力を構造物に与えることができる。また、小型であり、設置・運搬も容易に行うことができ、構造物の形状に応じて複数配置したり、柱、梁といった異なる軸上に適宜設置して使用することもできる。
【実施例1】
【0054】
次に、本発明に係る起振装置を用いた振動観測について説明する。
【0055】
<実験目的>
本実験は、本発明に係る起振装置を使用し、常時微動観測よりも大きな振動レベルでの振動特性を把握することを目的として行った。
【0056】
<対象構造物概要>
滋賀県虎姫町五村別院の鐘楼の大梁に起振装置を設置して行った。図13は、本実験を行った鐘楼200のイメージ図である。実験を行った鐘楼200は、四本の柱210(柱間は約3m×3m、棟高約6m)、大梁220と、大梁に吊るされた鐘250とを有し、大梁220は、地面からの高さが約4.4mであって柱210間のほぼ中央に配置されている。
【0057】
<実験概要>
鐘楼200に加速度計、速度計、変位計と取り付け(図示せず)、鐘250を吊っている大梁220上に起振装置1を設置して起振し、建物の振動特性(減衰定数、固有振動数)を調べた。なお、起振装置1には、起振力となる重錘として金属製クランプ60を約6kg取り付けた(図14参照)。なお、起振方向が大梁200の軸方向と一致するように
起振装置1を配置した。
【0058】
<実験1>
鐘楼200の固有周期(常時微動観測の結果から得たもの)で起振時の定常状態の応答変位及び起振装置1停止後の鐘楼200の減衰特性を調べた。なお、観測開始10秒後に起振を開始し、50秒経過後に起振を停止した。
【0059】
<実験2>
起振装置1の振動数と振幅が可変である特徴を利用して、最大加振力を一定として1.4Hzより1.6Hzまで0.02Hz刻みで振動数を増加させてゆき、一定時間起振した際の鐘楼200の応答変位を観測した。なお、観測開始10秒後に起振を開始し、25秒間観測した。
【0060】
<実験結果>
図15は、実験1による大梁位置変位を示すグラフである。縦軸は鐘楼の変位を示し、横軸は時間を示す。同図より、鐘楼200が、起振装置1の起振力により振幅約0.4mmで振動することが確認できる。なお、起振装置1の停止50秒以降の減衰振動から対数減衰率によって減衰定数が0.025であることが確認できた。
【0061】
図16は、実験2による最大応答変位を示すグラフである。縦軸は応答変位を示し、横軸は振動数を示す。常時微動観測から算出した鐘楼200の固有振動数は、1.61Hzであったが、起振装置1による実験により、最大応答変位が振動数1.48Hzであることが確認できた。また、鐘楼200の振幅が大きくなると固有振動数が低下することが確認された。
【0062】
上記実験より、本実施形態に係る起振装置1によれば、所定の起振力を構造物に正確に与えることができることが確認された。また、本実施形態に係る起振装置1は、振動数と振幅が可変であり、振動モードを容易に変更することができることが確認された。すなわち、より大きな振動レベル、換言するとより実際の地震に近い振動を構造物に与えることができる。従って、より実際に近い振動を想定した上での振動観測が可能となる。また、本実施形態に係る振動装置1は、小型であるため今回の実験において対象構造物とした鐘楼のような古い木造建築の梁など狭隘な場所にも容易に設置することができ、更に低周波の正弦波を出力することができるので、古い木造建築物に特に好適に用いることができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る起振装置はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第一の実施形態に係る起振装置1の上面図である。
【図2】第一の実施形態に係る起振装置1の正面図である。
【図3】カム溝とカムフォロアを分離した状態を示す図である。
【図4】カム溝とカムフォロアを接続した状態を示す図である。
【図5】起振装置におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図6】位相差α=0度におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図7】位相差α=60度におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図8】位相差α=150度におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図9】位相差α=180度におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図10】制御部を備える第一の実施形態に係る起振装置の概略構成を示す図である。
【図11】起振装置を同軸上に複数配置する場合のシステム構成の概略を示す図である。
【図12】異なる軸上に起振装置を配置する場合のシステム構成の概略を示す図である。
【図13】本実験を行った鐘楼のイメージ図である。
【図14】クランプが取り付けられた起振装置を示す図である。
【図15】実験1による大梁位置変位を示すグラフである。
【図16】実験2による最大応答変位を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1・・・起振装置
10、20・・・モータ
30・・・カム溝
31a、31b・・・カムフォロア
32a、32b・・・回転盤
40・・・ベース
50・・・重錘設置台
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に起振力を与える起振装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物に外力を付加して応答性を計測し、構造物の振動特性を求めることが行われている。そして、このような構造物の振動特性を求める際に構造物に外力を付加する装置として、起振装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術によれば、正逆回転可能なモータに減速機、ドラム、ワイヤロープを介して接続された錘重を往復運動させることで、構造物に振動を与えることができ、その結果構造物の振動特性を求めることができる。
【0004】
また、上記のような構造物の振動特性を求める際に用いられる起振装置とは異なるものの、被対象物に振動を与える装置として様々な技術が知られている。例えば、特許文献2に記載の技術は、コンクリート二次加工における造型・充填を行う際に用いるための振動テーブルに関する技術であり、複数のモータを一つのケーシング内に収容し、収容される複数のモータを軸並列配置、同軸心配置とすることで、振動力、振動方向を自由に変えることができる。
【特許文献1】特開平10−263478号公報
【特許文献2】特開平7−289993号公報
【特許文献3】特開平9−78579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造物の振動特性を求める際に用いられる起振装置として様々な技術が開発されている。例えば、正逆回転可能なモータに減速機、ドラム、ワイヤロープを介して接続された錘重を往復運動させる起振装置に関する技術によれば、モータの大きさにしては比較的大きな振動力を得ることができる。しかし、この起振装置は、モータを正逆回転させて錘重を往復運動させる構成であり、モータへの負荷が大きく、また振幅の調整を行うことが困難であった。
【0006】
また、上記以外にも種々の起振装置に関する技術が開発されているものの、従来の起振装置は、大型のものが多く、小型かつ低周波数の振動を構造物に与えることができる起振装置の開発が望まれていた。
【0007】
本発明では、上記の問題に鑑みなされたものであり、小型かつ低周波数の振動を構造物に与えることができ、振幅も容易に調整可能な起振装置に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上述した課題を解決するため以下の手段を採用した。すなわち、本発明に係る起振装置は、構造物に起振力を与える起振装置であって、第一の正弦波を出力可能な第一の出力手段と、前記第一の正弦波と同じ又は異なる位相の第二の正弦波を出力可能な第二の出力手段と、前記第一の正弦波の振幅方向と前記第二の正弦波の振幅方向とが重なるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを接続する接続手段と、を備える。
【0009】
本発明に係る起振装置によれば、第一の正弦波の振幅方向と第二の正弦波の振幅方向と
が重なるように、第一の出力手段と第二の出力手段とが接続手段を介して接続されているので、少なくともいずれか一方の出力手段から出力される正弦波の位相を調整することで振幅を大きくしたり小さくしたりすることが可能となる。すなわち、位相を調整することで構造物に与える起振力の振動モードを調整することができる。なお、第一の出力手段と第二の出力手段には、一般的なモータが例示でき、これらのモータは、小型のものを用いることができる。また、本発明に係る起振装置は、小型のモータが適用可能な出力手段と、出力手段同士を接続する接続手段といった非常に簡易な構成であり、装置自体の小型化を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る起振装置において、前記第一の出力手段と前記第二の出力手段は、モータであり、前記接続手段は、前記第一の出力手段の回転運動と前記第二の出力手段の回転運動とを所定の同じ方向に拘束し、回転運動を拘束することで抽出された第一の正弦波と第二の正弦波の振幅方向が重なるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを接続するようにしてもよい。
【0011】
第一の正弦波及び第二の正弦波は、モータの回転運動から抽出することができる。そして、第一の出力手段としてのモータの回転運動と第二の出力手段としてのモータの回転運動を所定の同じ方向に拘束する。例えば、垂直方向を拘束することで、水平方向に振幅する正弦波を抽出することができる。
【0012】
接続手段は、例えば、第一及び第二の出力手段としての夫々のモータの回転軸先端側に設けられ、回転軸と共に回転する回転盤と、第一及び第二の出力手段としての夫々のモータの回転軸から所定距離(距離A)離れた回転盤上に設けられるカムフォロアと、このカムフォロアが移動自在に接続される直線状の溝が設けられ、所定の方向のみの可動が許容されるカム溝と、を備える構成とすることができる。
【0013】
上記構成の場合、カム溝に設けられた直線状の溝が垂直になるようにカム溝を配置し、カム溝自体は、水平方向にのみ移動可能にし、第一の出力手段としてのモータ側のカムフォロアをカム溝の前記溝に接続して該モータを回転運動させる。するとカム溝は、水平方向において振幅Aの正弦運動をする。すなわち、第一の出力手段としてのモータの回転運動から正弦波を抽出することができる。
【0014】
更に、第一の出力手段としてのモータと対向するように第二の出力手段としてのモータをカム溝に接続する。換言すると、カム溝の一方の面(表面)に第一の出力手段としてのモータをカムフォロアを介して接続し、カム溝の他方の面(裏面)に第二の出力手段としてのモータをカムフォロアを介して接続する。ここで、カム溝自体は、水平方向における移動のみが許容されているので、第一の出力手段としてのモータの回転運動と第二の出力手段としての回転運動からそれぞれ同じ振幅方向の正弦波が抽出されることになる。また、第一の出力手段としてのモータの回転運動と第二の出力手段としてのモータの回転運動は、一定方向に往復運動する一つのカム溝によって拘束されているので、抽出される正弦波の振幅方向、換言すると二つの正弦波の振幅方向が同じとなる。その結果、少なくともいずれか一方の正弦波の位相を変化させることで二つの正弦波が合成された正弦運動の振幅を調整することが可能となる。
【0015】
なお、本発明に係る起振装置において、前記第一の出力手段は、前記構造物に固定され、前記第二の出力手段は、前記接続手段によって重ねられる前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の振幅方向において移動可能に前記構造物に接続されることで、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波が合成された正弦運動をするようにしてもよい。
【0016】
上記のような構成とすることで、第二の出力手段自体が第一の正弦波及び第二の正弦波
の振幅方向へ正弦運動することになる。したがって、例えば接続手段としてのカム溝を水平方向においてのみ移動可能な構成とした場合には、第二の出力手段もこのカム溝と同じく水平方向に正弦運動することになる。その際の振幅は、接続手段を上述したような構成とした場合には、最大2Aとなる。
【0017】
つまり、第二の出力手段の正弦運動は、第一の出力手段から出力される第一の正弦波と第二の出力手段から出力される第二の正弦波が合成された正弦運動となり、次式で表されることになる。
【0018】
Asin(ωt)+Asin(ωt+α)
=Asin(ωt+α/2)・cos(α/2)
=(2Acos(α/2))・sin(ωt+α/2)
【0019】
なお、振動数を変化させることも可能であるが、第一の出力手段としてのモータの振動数、第二の出力手段としてのモータの振動数を同じにし、すなわち二つのモータを同じ回転数で回転させ、位相のみを調整することでより容易に振幅を調整することができる。
【0020】
したがって、本発明に係る起振装置は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波は同じ周波数であり、前記第二の出力手段の正弦運動における振幅は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の位相差に基づいて決定されるようにしてもよい。
【0021】
また、本発明に係る起振装置は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の、周波数と位相のうち少なくともいずれか一方を制御する、制御手段を更に備え、前記制御手段は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の周波数が等しくなるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを制御し、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波とのうち少なくともいずれか一方の正弦波の位相を調整することで、前記第二の出力手段の正弦運動の振幅を調整するようにしてもよい。
【0022】
なお、回転制御は、従来の技術を用いることができる。例えば、パルス数とその周波数にによって回転制御を行ってもよく、また、エンコーダなどの検知手段を設け、モータ軸の回転角度や回転速度を検知し、検知手段からの信号を反映させた回転制御を行ってもよい。
【0023】
また、本発明に係る起振装置において、前記構造物に接続される前記第二の出力手段に接続する重錘を更に備え、前記起振力は、前記重錘の重量と、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波との位相差によって調整してもよい。
【0024】
上述したように、本発明に係る起振装置では、第一の出力手段と第二の出力手段のうちいずれか一方の出力手段から出力される正弦波の位相を変化させることで、合成された正弦運動の振幅を調整することができる。本発明では、さらに重錘の重量を適宜変更することで構造物に与える起振力を調整することができる。なお、重錘は、第一の出力手段を固定し、第二の出力手段を移動可能に接続手段を介して接続する場合において、第二の出力手段に接続する。なお、第二の出力手段自体が正弦運動し、その際第二の出力手段自体が重錘としての機能する為、起振力を決定するに当たっては、第二の出力手段の重量も考慮して重錘の重量を決定することが好ましい。
【0025】
なお、上述した起振装置は、二つの出力手段から出力される正弦波の振幅方向を重ねる構成としたが、これに限定されるわけではない。必要に応じて出力手段の数を増やしてもよい。また、本発明に係る起振装置は、その構成が非常に簡易であり、小型であるので構造物の任意の箇所に必要に応じて複数配置することができる。また、取付方向も梁などの
水平部分にに限らず、柱などの垂直部分にも取り付けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、小型かつ低周波数の振動を構造物に与えることができ、振幅も容易に調整可能な起振装置に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明に係る起振装置の実施形態について図面に基づいて説明するが本発明に係る起振装置は、以下に限定されるわけではない。
【0028】
<構成>
図1は、第一の実施形態に係る起振装置1の上面図であり、図2は、第一の実施形態に係る起振装置1の正面図である。なお、図1において重錘設置台50は、起振装置1の構成を分かり易くするため点線で表している。
【0029】
図1、図2に示すように、第一の実施形態に係る起振装置1は、モータ10(本発明の第一の出力手段に相当する。)と、モータ20(本発明の第二の出力手段に相当する。)と、カム溝30とカムフォロア31a、31bと回転盤32a、32bとを備える。なお、カム溝30とカムフォロア31a、31bと回転盤32a、32bは、本発明の接続手段に相当する。
【0030】
モータ10は、ベース40を介して構造物100に固定された状態で本発明の第一の正弦波を出力する。より具体的には、モータ10が所定の回転数で回転運動することで、回転軸10aの先端に接続された回転盤31aに設けられたカムフォロア31aが回転運動する。カムフォロア31aは、カム溝30の直線状の溝に垂直方向に移動可能に接続されている。また、カム溝30は、ベース40のほぼ中心に設けられたレール41上に水平方向(図2における紙面奥方向)にのみ移動可能に接続されている。従って、モータ10を回転運動させると、カム溝30がレール41上を往復運動する。すなわち、モータ10の回転運動から水平方向の正弦運動が抽出される。
【0031】
なお、カム溝30の振幅は、モータ10の回転軸10aからカムフォロア31aまでの距離Aに基づいて決定される。従って、この距離を調整することで、カム溝30の振幅を調整することができる。また、モータ10とベース40との固定は、ベース40から直角に立ち上げられた固定部42にボルト等を用いて行う。なお、ベース40や固定部42の材質は、特に限定されるものではないが、例えば金属のように、強度に優れ、振動に十分に耐えられる材質である必要がある。
【0032】
モータ20は、カム溝30の振幅方向に移動可能な状態で第二の正弦波を出力する。より具体的には、モータ20もモータ10と同じく回転軸20aの先端に回転盤31aが設けられており、モータ20を回転させるとカムフォロア31aが回転運動する。そして、このようなモータ20がモータ10と対向するようにカム溝30に接続されている。換言すると、カム溝30の一方の面(図1における紙面左側)にモータ10のカムフォロア31aが接続され、カム溝30の他方の面(図1における紙面右側)にカムフォロア31bが接続されている。なお、上述したようにモータ20はカム溝30の振幅方向に移動可能に接続されているので、モータ10の回転運動に伴ってカム溝30がレール41上を正弦運動すると、モータ20がカム溝30と共に正弦運動することになる。
【0033】
この際、モータ10とモータ20との回転数を同じ値とし、モータ20の回転軸20bからカムフォロア31bまでの距離もモータ10の回転軸10aからカムフォロア31aまでの距離と同じくAとする。すると、モータ10とモータ20から同波形の正弦波が出
力されることになる。このようにモータ10から出力される第一の正弦波とモータ20から出力される第二の正弦波は、カム溝30等の接続手段によって振幅方向が重ねられており、またモータ20はカム溝30の振幅方向に移動可能に接続されているので、モータ20はモータ10から出力される第一の正弦運動とモータ20から出力される第二の正弦運動が合成された正弦運動を行うことになる。
【0034】
なお、モータ20の正弦運動は、以下の式で表すことができる。
【0035】
Asin(ωt)+Asin(ωt+α)
=Asin(ωt+α/2)・cos(α/2)
=(2Acos(α/2))・sin(ωt+α/2)
【0036】
このように、モータ20はモータ10とモータ20と同一の回転数で正弦運動し、その振幅はモータ10とモータ20との位相差αによって変化することになる。なお、上記における位相差αには、電気的信号のずれの他、カム溝30に接続されるカムフォロア31a、31bの位置のずれも含まれる。
【0037】
ここで、カム溝30とカムフォロア31a、31bの接続形態について図面に基づいてより詳細に説明する。図3は、カム溝30とカムフォロア31a、31bを分離した状態を示す図である。図4は、カム溝30とカムフォロア31a、31bを接続した状態を示す図である。
【0038】
カム溝30は、その溝幅がカムフォロア31a、31bよりもやや大きく形成され、溝内にカムフォロア31a、31bが収容可能に形成されている。また、溝の長さは、回転軸10aからカムフォロア31aまでの距離Aの2倍よりも大きく形成されている。更に、溝の深さは、カムフォロア31a、31bが両側から挿入された際に、互いに接触しないように形成されている。なお、カム溝の材質も特に限定されるわけではないが、金属などの十分な強度を有する材質とすることが好ましい。
<動作>
【0039】
次に、起振装置1の動作について図面に基づいて説明する。図5は、起振装置1におけるモータ20の正弦運動(位相差α=0度とした場合)を示す図である。(a)〜(e)は、所定量回転させた状態を示す。また、上側に記載の図は上面図であり、下側の図は上面図の夫々に対応する側面図である。なお、側面図においては説明上モータ20側の回転盤32bを点線で表し、モータ20自体は省略している。
【0040】
モータ10とモータ20とをカム溝30を介して接続した状態で、位相差α=0度、同じ回転数でモータ10とモータ20とを回転運動させる。なお、位相差αには電気信号のずれの他、カムフォロア31a、31bの位置のずれも含まれるが、位置のずれを0(初期値)として説明する。
【0041】
図5(a)では、回転盤32a、32bがほぼ水平であり、固定されたモータ10の回転軸10aからモータ20の回転軸20bまでの距離は最大振幅2Aとなっている。図5(b)は、図5(a)から所定角度時計方向に回転した状態を示す。モータ10とモータ20は、同じ回転数で回転運動しているため、カムフォロア32a、32bは同じ角度で傾いており、カム溝30とカム溝30に接続されたモータ20は、図5(a)に示す状態よりも回転軸10a側に所定角度の分だけ移動している。
【0042】
図5(c)、(d)、(e)は、それぞれ更に所定角度ずつ時計方向に回転した状態を示す。図5(b)と図5(c)との間でモータ20の振幅は0となる。更に、図5(c)
と図5(d)との間でモータ20の振幅は、最大2Aとなる。そして図5(e)の状態から再び図5(a)の状態へ移行し、モータ20の正弦運動繰り返されることになる。
【0043】
図6から図9は、位相差αとモータ20の振幅の関係を示す図である。なお、回転軸10aからカムフォロア31aまでの距離Aは50mm(回転軸20bからカムフォロア31bまでの距離Aも50mm)、モータ10、20の回転数は3Hzとする。
【0044】
図6は位相差α=0度、図7は位相差α=60度、図8は位相差α=150度、図9は位相差α=180度、におけるモータ20の正弦運動を示す。また、M10はモータ10から出力される第一の正弦波、M20はモータ20から出力される第二の正弦波、M10+M20は第一の正弦波と第二の正弦波の合成であるモータ20の正弦運動を示す。位相差α=0度(図6参照)、位相差α=60度(図7参照)の場合、モータ20の正弦運動の振幅が第一の正弦波及び第二の正弦波の振幅50mmを上回っており、特に位相差α=0度の場合において最大振幅100mmとなっている。また、位相差α=150度(図8参照)、位相差α=180度(図9参照)の場合、モータ20の正弦運動の振幅が第一の正弦波及び第二の正弦波の振幅50mmを下回っており、特に位相差α=180度において振幅が0mmとなっている。
【0045】
このように、第一の実施形態に係る起振装置1によれば、位相差αを調整することで容易に構造物に与える起振力の振幅を調整することができる。すなわち、モータ10とモータ20の回転数を変えることなく、位相差αを調整するのみでモータ20の制限運動の振幅、すなわち振動モードを調整することが可能となる。
【0046】
次にモータ10及びモータ20の制御について説明するが、本実施形態に係る起振装置における制御は、各モータの回転数と位相の制御ができればよく、モータの回転数の制御や位相の制御は従来技術を用いて行うことができる。
【0047】
図10は、制御部70を備える第一の実施形態に係る起振装置1の概略構成を示す図である。同図に示すように、モータ10とモータ20がそれぞれ制御部70と電気的に接続されている。制御部70は、CPU71、メモリ72を有し、所定のプログラムに従ってモータ10、20の回転数、位相を制御する。例えば、モータ10、20としてステッピングモータを使用した場合、制御部内のコントローラ(図示せず)から所定の回転数に応じたパルス信号が出力され、ドライバ(図示せず)で駆動電流に変換されてモータ10を駆動する。なお、本発明は低周波の振動を構造物に与えることを目的としていることから、経済性にも優れたステッピングモータが好適であるといえる。
【0048】
また、モータ10、20としてサーボモータを用いてもよく、制御部70は、この場合エンコーダ(図示せず)によって回転数の検出を行い、エンコーダからのフィードバックとモータ10、20に出力したパルス信号とを比較して、必要に応じて誤差を修正するようにしてもよい。なお、本実施形態では、制御部70を起振装置1に設けることとしたがこれに限定されるわけではない。制御部70を起振装置1とは別に設ける構成としてもよい。
【0049】
なお、制御部70内のメモリ72には、上述した図6から図9に相当するマップやこれらに対応する位相差と振幅との対応がテーブル化されたテーブルを格納してもよい。このようなマップやテーブルを予め設けることで、起振力に応じた位相差を抽出することができ、その結果より容易に目的に応じた振動モードの起振力を構造物に与えることができる。
【0050】
なお、対象の構造物100には起振装置1を目的に応じて複数設置することができる。
図11は、起振装置を同軸上に複数配置する場合のシステム構成の概略を示す図である。なお、起振装置1、2、・・・n、は、モータ10、20を有している。各起振装置と制御部70aは、電気的に接続されており、制御部70aは、複数の起振装置を制御する。すなわち、制御部70aによって各起振装置のON/OFF等を制御することができる。また、上述した制御部70の機能、すなわち、各起振装置毎のモータの制御を制御部70aで行うようにしてもよい。
【0051】
なお、図11に示す概略構成は、複数の起振装置を同軸上に配置する場合のシステム構成の概略図である。同軸上とは、構造物100に与えられる起振力の振幅方向が一つであることを意味し、複数の起振装置の設置方向を同じくして例えば梁等に設置する場合が例示できる。この様に同軸上に複数の起振装置を配置する場合においてそれぞれの起振装置から出力される起振力を同じに設定すれば、起振装置をn機設置した場合、構造物100に与える起振力もn倍とすることが可能となる。目的に応じてより大きな起振力を構造物100に与えることが可能となる。なお、起振装置1から出力される起振力の大きさは、重錘設置台50に接続する重錘の重量によって適宜調整することができる。
【0052】
図12は、異なる軸上に起振装置を配置する場合のシステム構成の概略を示す図である。異なる軸とは、X軸、Y軸、Z軸であり、具体的には、梁、や柱など構造物の任意の場所に設置することができる。なお、制御部70bの機能は、上述した制御部70aと同様であり、また、制御部70の機能を持たせるようにしてもよい。
【0053】
以上説明した第一の実施形態に係る起振装置1によれば、モータ10とモータ20との位相差αを調整することで、振動モードを容易に調整することができ、また、重錘を調整して目的に応じた起振力を構造物に与えることができる。そして、モータ10、20には小型のモータが適用可能であり、起振装置全体の大きさも従来に比べて小型化することができる。なお、一方のモータから出力される正弦波に対し、最大で2倍の振幅の正弦運動を行うことが可能であり、小型でありながら小さい振動から大きい振動まで種々の起振力を構造物に与えることができる。また、小型であり、設置・運搬も容易に行うことができ、構造物の形状に応じて複数配置したり、柱、梁といった異なる軸上に適宜設置して使用することもできる。
【実施例1】
【0054】
次に、本発明に係る起振装置を用いた振動観測について説明する。
【0055】
<実験目的>
本実験は、本発明に係る起振装置を使用し、常時微動観測よりも大きな振動レベルでの振動特性を把握することを目的として行った。
【0056】
<対象構造物概要>
滋賀県虎姫町五村別院の鐘楼の大梁に起振装置を設置して行った。図13は、本実験を行った鐘楼200のイメージ図である。実験を行った鐘楼200は、四本の柱210(柱間は約3m×3m、棟高約6m)、大梁220と、大梁に吊るされた鐘250とを有し、大梁220は、地面からの高さが約4.4mであって柱210間のほぼ中央に配置されている。
【0057】
<実験概要>
鐘楼200に加速度計、速度計、変位計と取り付け(図示せず)、鐘250を吊っている大梁220上に起振装置1を設置して起振し、建物の振動特性(減衰定数、固有振動数)を調べた。なお、起振装置1には、起振力となる重錘として金属製クランプ60を約6kg取り付けた(図14参照)。なお、起振方向が大梁200の軸方向と一致するように
起振装置1を配置した。
【0058】
<実験1>
鐘楼200の固有周期(常時微動観測の結果から得たもの)で起振時の定常状態の応答変位及び起振装置1停止後の鐘楼200の減衰特性を調べた。なお、観測開始10秒後に起振を開始し、50秒経過後に起振を停止した。
【0059】
<実験2>
起振装置1の振動数と振幅が可変である特徴を利用して、最大加振力を一定として1.4Hzより1.6Hzまで0.02Hz刻みで振動数を増加させてゆき、一定時間起振した際の鐘楼200の応答変位を観測した。なお、観測開始10秒後に起振を開始し、25秒間観測した。
【0060】
<実験結果>
図15は、実験1による大梁位置変位を示すグラフである。縦軸は鐘楼の変位を示し、横軸は時間を示す。同図より、鐘楼200が、起振装置1の起振力により振幅約0.4mmで振動することが確認できる。なお、起振装置1の停止50秒以降の減衰振動から対数減衰率によって減衰定数が0.025であることが確認できた。
【0061】
図16は、実験2による最大応答変位を示すグラフである。縦軸は応答変位を示し、横軸は振動数を示す。常時微動観測から算出した鐘楼200の固有振動数は、1.61Hzであったが、起振装置1による実験により、最大応答変位が振動数1.48Hzであることが確認できた。また、鐘楼200の振幅が大きくなると固有振動数が低下することが確認された。
【0062】
上記実験より、本実施形態に係る起振装置1によれば、所定の起振力を構造物に正確に与えることができることが確認された。また、本実施形態に係る起振装置1は、振動数と振幅が可変であり、振動モードを容易に変更することができることが確認された。すなわち、より大きな振動レベル、換言するとより実際の地震に近い振動を構造物に与えることができる。従って、より実際に近い振動を想定した上での振動観測が可能となる。また、本実施形態に係る振動装置1は、小型であるため今回の実験において対象構造物とした鐘楼のような古い木造建築の梁など狭隘な場所にも容易に設置することができ、更に低周波の正弦波を出力することができるので、古い木造建築物に特に好適に用いることができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る起振装置はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第一の実施形態に係る起振装置1の上面図である。
【図2】第一の実施形態に係る起振装置1の正面図である。
【図3】カム溝とカムフォロアを分離した状態を示す図である。
【図4】カム溝とカムフォロアを接続した状態を示す図である。
【図5】起振装置におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図6】位相差α=0度におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図7】位相差α=60度におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図8】位相差α=150度におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図9】位相差α=180度におけるモータの正弦運動を示す図である。
【図10】制御部を備える第一の実施形態に係る起振装置の概略構成を示す図である。
【図11】起振装置を同軸上に複数配置する場合のシステム構成の概略を示す図である。
【図12】異なる軸上に起振装置を配置する場合のシステム構成の概略を示す図である。
【図13】本実験を行った鐘楼のイメージ図である。
【図14】クランプが取り付けられた起振装置を示す図である。
【図15】実験1による大梁位置変位を示すグラフである。
【図16】実験2による最大応答変位を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1・・・起振装置
10、20・・・モータ
30・・・カム溝
31a、31b・・・カムフォロア
32a、32b・・・回転盤
40・・・ベース
50・・・重錘設置台
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に起振力を与える起振装置であって、
第一の正弦波を出力可能な第一の出力手段と、
前記第一の正弦波と同じ又は異なる位相の第二の正弦波を出力可能な第二の出力手段と、
前記第一の正弦波の振幅方向と前記第二の正弦波の振幅方向とが重なるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを接続する接続手段と、
を備える起振装置。
【請求項2】
前記第一の出力手段と前記第二の出力手段は、モータであり、
前記接続手段は、前記第一の出力手段の回転運動と前記第二の出力手段の回転運動とを所定の同じ方向に拘束し、回転運動を拘束することで抽出された第一の正弦波と第二の正弦波の振幅方向が重なるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを接続する、請求項1に記載の起振装置。
【請求項3】
前記第一の出力手段は、前記構造物に固定され、
前記第二の出力手段は、前記接続手段によって重ねられる前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の振幅方向において移動可能に前記構造物に接続されることで、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波が合成された正弦運動をする、請求項1又は請求項2に記載の起振装置。
【請求項4】
前記第一の正弦波と前記第二の正弦波は同じ周波数であり、
前記第二の出力手段の正弦運動における振幅は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の位相差に基づいて決定される、請求項3に記載の起振装置。
【請求項5】
前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の、周波数と位相のうち少なくともいずれか一方を制御する、制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の周波数が等しくなるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを制御し、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波とのうち少なくともいずれか一方の正弦波の位相を調整することで、前記第二の出力手段の正弦運動の振幅を調整する、請求項3又は請求項4に記載の起振装置。
【請求項6】
前記構造物に接続される前記第二の出力手段に接続する重錘を更に備え、
前記起振力は、前記重錘の重量と、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波との位相差によって調整される、請求項3又は請求項4に記載の起振装置。
【請求項1】
構造物に起振力を与える起振装置であって、
第一の正弦波を出力可能な第一の出力手段と、
前記第一の正弦波と同じ又は異なる位相の第二の正弦波を出力可能な第二の出力手段と、
前記第一の正弦波の振幅方向と前記第二の正弦波の振幅方向とが重なるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを接続する接続手段と、
を備える起振装置。
【請求項2】
前記第一の出力手段と前記第二の出力手段は、モータであり、
前記接続手段は、前記第一の出力手段の回転運動と前記第二の出力手段の回転運動とを所定の同じ方向に拘束し、回転運動を拘束することで抽出された第一の正弦波と第二の正弦波の振幅方向が重なるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを接続する、請求項1に記載の起振装置。
【請求項3】
前記第一の出力手段は、前記構造物に固定され、
前記第二の出力手段は、前記接続手段によって重ねられる前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の振幅方向において移動可能に前記構造物に接続されることで、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波が合成された正弦運動をする、請求項1又は請求項2に記載の起振装置。
【請求項4】
前記第一の正弦波と前記第二の正弦波は同じ周波数であり、
前記第二の出力手段の正弦運動における振幅は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の位相差に基づいて決定される、請求項3に記載の起振装置。
【請求項5】
前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の、周波数と位相のうち少なくともいずれか一方を制御する、制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波の周波数が等しくなるように前記第一の出力手段と前記第二の出力手段とを制御し、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波とのうち少なくともいずれか一方の正弦波の位相を調整することで、前記第二の出力手段の正弦運動の振幅を調整する、請求項3又は請求項4に記載の起振装置。
【請求項6】
前記構造物に接続される前記第二の出力手段に接続する重錘を更に備え、
前記起振力は、前記重錘の重量と、前記第一の正弦波と前記第二の正弦波との位相差によって調整される、請求項3又は請求項4に記載の起振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−157864(P2008−157864A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349499(P2006−349499)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
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