説明

超低温冷凍装置

【課題】スクロール圧縮要素の潤滑不足に伴うスクロール部分での摩擦の発生を抑制することができ、超低温冷凍に用いるのに好適なスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置を提供する。
【解決手段】オイルセパレータ5に貯油したオイルを密閉容器内に返油するオイルリターン回路23と、レシーバタンク7に溜まった液冷媒の一部またはレシーバタンク7を出た冷媒を過冷却器で過冷却した液冷媒の一部を、スクロール圧縮要素102の低圧部または中間圧部の圧縮室へ供給するリキッドインジェクション回路21と、蒸発器14の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下においてオイルセパレータ5で冷媒から分離されたオイルをスクロール圧縮要素102の低圧部または中間圧部の圧縮室へ供給するオイルインジェクション回路22とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒ガスから分離されたオイルの液位が所要レベルを越えて貯油されると、そのオイルを確実に圧縮機へ戻すことができる簡易な構成のオイルセパレータを備えた超低温冷凍装置におけるスクロール圧縮機の良好な潤滑を得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、密閉容器内に電動機構成の電動要素とこの電動要素によって駆動されるスクロール圧縮要素とを収容し、スクロール圧縮要素は、鏡板の表面に渦巻き状のラップが立設された固定スクロールと、固定スクロールに対向配置され鏡板の表面に渦巻き状のラップが立設され電動要素の回転軸の回転に伴って旋回運動する揺動スクロールとを備える。
【0003】
また、このスクロール圧縮機は、固定スクロールのラップと揺動スクロールのラップとが互いに偏心して、この偏心方向の線上で相互接触による噛み合わせにて閉じ込められた圧縮空間が形成される。この圧縮空間は、電動要素の回転軸の回転に伴う揺動スクロールの旋回運動により、外側から内側に向かって次第に縮小されることにより低圧室、中間圧室、及び高圧室を形成し、圧縮空間の外周部に連通した吸入管から低圧室への冷媒ガスの吸込口に吸い込んだ冷媒ガスを順次、低圧室、中間圧室、及び高圧室にて圧縮しつつ、高圧室と連通するように中心部に形成した吐出ポートから吐出する構成である。
【0004】
このように、スクロール圧縮機によって圧縮され吐出ポートから吐出された冷媒が、凝縮器で凝縮され、膨張弁で減圧膨張された液体冷媒が蒸発器で蒸発し、再びスクロール圧縮機へ帰還する冷媒循環回路を構成した冷凍装置において、内部低圧型スクロール圧縮機を採用して、スクロール圧縮要素の圧縮空間のうち、凝縮器を出た液冷媒の一部を中間圧室へインジェクションすることにより、スクロール圧縮機の吐出ガス温度を制御するものがある(特許文献1参照)。
【0005】
上記のように、スクロール圧縮機で冷媒を圧縮する場合、スクロール圧縮機中の潤滑用オイルの一部がガス冷媒に混入した状態で吐出され、冷凍装置を構成する冷媒循環回路中に入る。特に、スクロール圧縮機を含む冷凍装置によって、膨張弁で減圧膨張された冷媒が導入される蒸発器での冷媒蒸発温度を超低温帯である−40℃以下の温度帯、例えば−40℃〜−60℃程度の超低温の冷凍装置を構成する場合、膨張弁による絞り効果によって、冷凍装置を構成する冷媒循環回路中の冷媒循環量が少なくなる。このため、スクロール圧縮要素の圧縮空間の入り口へ吸入される冷媒ガス量が減少し、これに伴って冷媒ガスに含まれた潤滑用オイルの量も圧縮空間の入り口へ吸入される量が減少した状態となり、スクロール圧縮要素部の潤滑不良となる。
【0006】
また、上記のように、冷媒ガス中のオイルの量が減少してスクロール圧縮要素への潤滑用オイルの供給が不足した場合には、圧縮空間を形成する固定スクロールのラップと揺動スクロールのラップとの相互の摺接による噛み合わせ部のシールに必要なオイルの供給量が不足し、この部分のシールに必要な油膜の形成が困難となり、この部分からの圧縮ガス漏れが増加して冷凍能力の低下を招く。
【0007】
スクロール圧縮要素部の温度上昇を抑制するために、特許文献1のように、液冷媒の一部をスクロール圧縮要素の中間圧部分へ供給するリキッドインジェクション回路を備えた場合、このリキッドインジェクションされる液冷媒によって、圧縮空間のうちの中間圧室のオイルも流され、このスクロール圧縮要素のオイル潤滑が不足することが懸念される。
【0008】
上記のように、−40℃〜−60℃程度の超低温の冷凍装置を構成する場合、スクロール圧縮要素の圧縮空間の入り口へ吸入される冷媒ガス量の減少に伴うオイル吸入量の減少と、更に、リキッドインジェクションされる液冷媒によって生じる中間圧室のオイル不足により、スクロール圧縮要素のオイル潤滑不足が懸念される。
【0009】
ところで、液冷媒の一部をスクロール圧縮要素の中間圧部分へ送り込んで供給するリキッドインジェクション回路を備えている場合、前述のように、リキッドインジェクションされる液冷媒によって圧縮空間のうちの中間圧室のオイルが多く流されてしまう虞がある。このため、リキッドインジェクション回路の替わりに、オイルセパレータを付設した冷凍装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−047383号公報
【特許文献2】特開2011−33209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような冷凍装置によれば、スクロール圧縮機から吐出される冷媒ガスにオイルが多く混入する場合、そのオイルを効果的に回収させることが可能となる。これにより、スクロール圧縮要素の圧縮空間の入り口へ吸入される冷媒ガス量の減少に伴うオイル吸入量の減少を補償することが可能となるかも知れない。
【0012】
しかしながら、上述したように、超低温の冷凍装置を構成する場合には、リキッドインジェクション回路は備えることが好ましいものであり、これを設けていない構成の場合にはスクロール圧縮要素部の温度上昇が懸念される。しかしながら、その一方で、この回路の設置に伴い発生する問題、即ち、リキッドインジェクションされる液冷媒によって生じる中間圧室からのオイル流れによるオイル不足を根本的に解決させる手段の開発が切望されている。
【0013】
本発明はこのような点に鑑み、内部低圧型スクロール圧縮機を採用して超低温冷凍装置を構成する場合に、スクロール圧縮要素の温度上昇を抑制するために、液冷媒の一部をスクロール圧縮要素の中間圧部分へ供給するリキッドインジェクション回路と、スクロール圧縮機から吐出する冷媒ガスに混入オイルを回収させるオイルセパレータとを備えた場合において、スクロール圧縮要素の潤滑不足に伴うスクロール部分での摩擦の発生を抑制することができ、超低温冷凍に用いるのに好適なスクロール圧縮機を備えた超低温冷凍装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に記載の超低温冷凍装置は、電動要素と前記電動要素によって駆動されるスクロール圧縮要素とが密閉容器内に収容され、前記スクロール圧縮要素に連通した吸入管から吸い込んだ冷媒ガスを前記スクロール圧縮要素にて圧縮しつつ吐出ポートから前記密閉容器内に吐出し、この吐出される冷媒ガスを前記密閉容器外に吐出するスクロール圧縮機を備え、
前記吐出される冷媒ガスが、凝縮器、液冷媒を溜めるレシーバタンクを経て膨張弁にて減圧膨張された液冷媒を蒸発器で蒸発した後、再び前記吸入管から前記スクロール圧縮要素へ帰還する冷媒循環回路を形成し、
前記圧縮機のスクロール圧縮要素から吐出する冷媒ガスが前記密閉容器外の前記凝縮器に送り出される冷媒循環回路上にオイルセパレータが設置され、
前記オイルセパレータに貯油したオイルを前記密閉容器内に返油するオイルリターン回路とを備えた超低温冷凍装置おいて、
前記レシーバタンクに溜まった液冷媒の一部または前記レシーバタンクを出た冷媒を過冷却器で過冷却した液冷媒の一部を、前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室へ供給するリキッドインジェクション回路を備えるとともに、
前記蒸発器の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下において前記オイルセパレータで冷媒から分離されたオイルを前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室へ供給するオイルインジェクション回路を設けた、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2に係る超低温冷凍装置は、請求項1に記載の超低温冷凍装置において、
前記リキッドインジェクション回路は第1電磁弁を備え、
前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室の温度が所定値を上回ると、前記第1電磁弁を開くように構成した、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3に係る超低温冷凍装置は、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の超低温冷凍装置において、
前記オイルインジェクション回路は第2電磁弁を備え、前記圧縮機の密閉容器内の低圧室の温度が所定値を上回ると前記第2電磁弁を開くように構成した、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に係る超低温冷凍装置は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超低温冷凍装置において、
前記オイルセパレータは、
前記スクロール圧縮要素から吐出する冷媒ガスが前記密閉容器外に送り出される冷媒循環回路上に設置され本体部と、
この本体部内の上部側に設置されるオイル分離手段と、
前記オイル分離手段で分離された冷媒ガスを本体外部へ送り出す冷媒送出管と、
前記オイル分離手段で分離され滴下されて本体内の底部に貯留するオイルの液量に応じて昇降するフロートと、
このフロートが予め設定された所定レベルを越えて上昇すると作動するフロート式弁と、
前記本体内の底部に貯留するオイルの液面が所定レベルを越えたところで前記フロート式弁が開いて本体内の底部に貯留するオイルが吸引されて本体外部へ送出され、前記密閉容器内へ戻される返油用のオイルリターン管と、
から成る、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に係る超低温冷凍装置によれば、オイルセパレータを備えたオイルリターン回路の他に、オイルセパレータで冷媒から分離されたオイルをスクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室へ供給するオイルインジェクション回路を設けており、このオイルインジェクション回路を介してスクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室へオイルを供給するようになっている。従って、リキッドインジェクションされる液冷媒によって圧縮空間のうちの中間圧室のオイルが多く流されようとしても、そこにオイルインジェクション回路からオイルが同時に供給されるので、スクロール部分でのオイル不足による摩擦の発生を抑制することができる、という利点がある。
【0019】
本発明の請求項2に係る冷凍装置によれば、スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室の温度が所定値を上回ると、リキッドインジェクション回路に設けた第1電磁弁を開くことで、スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室の温度が所定値を上回るのを回避させることができる、といった利点が得られる。
【0020】
本発明の請求項3に係る超低温冷凍装置によれば、圧縮機の密閉容器内の低圧室の温度が所定値以下に降下すると、第2電磁弁が開いてオイルが補給されるので、温度低下が原因でスクロールの圧縮室内に生じるオイル不足を解消させることができる、という利点がある。
【0021】
また、本発明の請求項4に係る超低温冷凍装置よれば、オイルセパレータ内部にフロート及びフロート式弁を設けており、オイルセパレータ内部に貯留される油量が所定値を上回ると、オイルリターン管を介して自動的に密閉容器内へオイルを回収させることができるので、簡易かつ低コストでオイルの供給自動化を実現できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る超低温冷凍装置に用いる冷媒回路を示す説明図である。
【図2】その冷媒回路に用いる超低温圧縮機を示す断面図である。
【図3】(A)はその冷媒回路に用いるオイルセパレータなどを示す断面図、(B)はその平面図である。
【図4】(A)から(C)は、本実施形態のスクロール型圧縮装置に備えた冷媒回路の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る超低温冷凍装置に用いる冷媒循環回路を構成する冷媒回路1を示すものであり、この冷媒回路1は、スラッジ等の異物を除去するためのストレーナ2と、液冷媒(液状の冷媒、以下同じ。)を貯留しガス化させるアキュムレータ3と、超低温・低圧のガス冷媒(ガス状の冷媒、以下同じ。)を吸入し圧縮するスクロール型の超低温圧縮機(以下、「圧縮機」とよぶ)100と、この圧縮機100から吐出された高温・高圧の冷媒に含まれる潤滑油であるオイルを分離・貯留し後述するオイルリターン回路23を介して圧縮機100に戻すオイルセパレータ5と、凝縮器として作用する熱交換器6と、この熱交換器6から流出した液冷媒を貯留するレシーバタンク7と、熱交換器6と一体的に設置された過冷却器8と、冷媒に含まれる水分を除去するフィルタードライヤ9と、及び水分検出用のモイスチャーインジケータ10と、が順次配管接続されている。
【0024】
また、この冷媒回路1には、詳細は後述するが、リキッドインジェクション回路21と、オイルインジェクション回路22と、オイルリターン回路23と、制御部24と、をさらに備えている。なお、図1中、符号25は低圧圧力センサ、26は高圧圧力センサを示す。
【0025】
そして、この室外側の冷媒回路1には、ユニット間配管11及び12を介して膨張弁等の減圧装置13と、蒸発器などとして作用する熱交換器14とを環状に配管接続されており、冷凍サイクルを構成している。なお、図1中、符号15は熱交換器6及び過冷却器8に送風する冷却ファンである。
【0026】
圧縮機100は、詳細は後述するが、スクロール型超低温圧縮機で構成されており、図2に示すように、密閉容器101の上部内に設けたスクロール圧縮要素102の固定スクロール114には、リキッドインジェクション回路21の終端が連結されている。また、圧縮機100の吐出ポートである吐出孔113から上方へ吐出される冷媒ガスの流れが側方へ偏向されて吐出されるカバー127には、この上壁に開口した図示外の出口の近傍に、上壁を貫通するパイプPの先端部に温度検知部60が収容されている。
【0027】
オイルセパレータ5は、スクロール圧縮要素から吐出する冷媒ガスに混入しているオイルを冷媒ガスから分離させる。また、特に本発明のオイルセパレータ5では、図3に示すように、オイルセパレータ5の容器5A内の底部に分離して貯留されるオイルの量が、予め設定された所定レベルを上回ったときに、そのオイルの液位を機械的にかつ自動的に検出して圧縮機100の密閉容器141内部の底部側に戻すため、フロート式のオイルセパレータが用いられている。
【0028】
本実施形態のフロート式のオイルセパレータ5は、図3に示すように、容器5A内の上部側に設置されたオイル分離手段51と、オイル分離手段51で分離された冷媒ガスを容器5A上部から外部へ送り出す冷媒送出管を構成する流出管1Bと、オイル分離手段51で分離され滴下され容器5A内の底部に貯留されるオイルの液位に応じて昇降するフロート52と、フロート52が予め設定された所定レベルを越えて上昇すると開弁するフロート式弁53と、フロート式弁53に基端部が接続されて容器5Aの上部から引き出されたオイル管54と、このオイル管54の先端部に基端部が接続された返油用のオイルリターン管を構成するオイルリターン回路23と、を備えている。
【0029】
オイル分離手段51は、多孔板などで略円筒形状に形成されたフィルタで構成されている。このフィルタの上部には、フィルタの蓋及び容器5Aを貫通した(冷媒回路1の一部を構成する)流入管1Aが設けられており、この流入管1Aの終端部がフィルタ内部側と連通している。さらに、フィルタの上部には、容器5Aを貫通した状態で流出管1Bの基端部が取り付けられており、流出管1Bとフィルタ内部側とが連通している。
【0030】
このオイル分離手段51では、圧縮機100で圧縮されて吐出した高温高圧の冷媒ガスが流入管1Aを介してフィルタ上部から内部に流入すると、ラジアル方向に拡散し、フィルタ内からフィルタ外へ通過する。なお、この冷媒ガスの流入動作は、圧縮機100のスクロールに設けた高圧部の圧縮部側の圧力と、オイルセパレータ5の容器5A内の圧力との差を利用して行われる。また、フィルタを通過した冷媒ガスは、容器5A内の上部側に設置された流出管1Bの基端部から流入したのち熱交換器6の吸入側へ送り込まれる。
【0031】
一方、冷媒ガスが多孔板と衝突しながら多孔板の孔を縫って進み、かかる衝突、摩擦の行程で、冷媒ガスから分離されたオイルはフィルタ表面に付着するとともに自重で容器5A内の底部へ落下(滴下)される。
【0032】
フロート52は、容器5A内の底部に貯留するオイルの液位の昇降変位動作に連動して上下位置が変動するように回動動作する。フロート弁53は、このフロート52の回動動作に応じて開閉動作するものであり、換言すれば、予め設定された所定レベルまでオイルの液位が上昇したところで、この上昇動作に機械的に連動して開弁するように構成されている。
【0033】
オイル管54は、容器5A内の下部に設置されたフロート式弁53と容器5Aの上部側外部との間を連通するように配設されており、容器5A内部の圧力と圧縮機100の密閉容器141内の低圧室112の圧力との差を利用し、容器5A内の底部に貯留するオイルを吸引させることで容器5A外部へ排出させる。このような配置でオイル管54を設置してあるので、容器5A内の下部にオイルが少量貯留されている場合には、オイルリターン回路23からオイルを供給させることができ、閉弁したオイル管54からはオイルが排油されない。
【0034】
また、オイルリターン回路23は、終端部がオイル管54の先端部に接続されているとともに終端部が圧縮機100の密閉容器101内の底部側に接続されており、容器5A内の下部にオイルが所定量以上貯留されている場合にのみ、圧縮機100の密閉容器101内の底部へ供給させる。従って、上述するように、容器5A内の下部にオイルが少量貯留されている場合には、オイルインジェクション回路22からのみオイルを供給させることができる。
【0035】
リキッドインジェクション回路21は、圧縮機100の高圧状態の圧縮室を構成する圧縮空間125内の温度上昇を検知すると、冷却又は過冷却された液冷媒によってこの圧縮空間125を冷却させるために設置されている。このリキッドインジェクション回路21は、レシーバタンク7を出た後、過冷却器8にて過冷却された液冷媒の一部(またはレシーバタンク7に溜まった液冷媒の一部)を、圧縮機100のスクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室を構成する圧縮空間125へ供給するようになっている。
【0036】
本実施形態のリキッドインジェクション回路21は、図2に示すように、過冷却器8にて過冷却された液冷媒の一部を圧縮機100のスクロール圧縮要素の圧縮室を構成する、低圧部、中間圧部、高圧部の3室からなる圧縮空間125のうち、中間圧部の圧縮空間125へ送り込むように構成されている。また、本実施形態のリキッドインジェクション回路21には、サービス用弁21S、ストレーナ21C、第1電磁弁21A、ソレノイド21D等が設置されている。このような構成のリキッドインジェクション回路21では、吐出孔113から上方へ吐出される冷媒ガスの温度が温度検知部60によって検知され、検知温度が所定の設定温度を越えるときにはソレノイド21Dがオンするとともに第1電磁弁21Aの開度量が制御され、過冷却された冷媒が圧縮室である圧縮空間125へ送り込まれる。
【0037】
温度検知部60は、前述したように、図1に示す密閉容器101及びカバー127の上壁を貫通したパイプPの先端部に収容されており、吐出孔113から上方へ吐出される冷媒ガスの温度を検知する。この温度検知部60で検知された温度情報は、制御部24へ出力されるとともに、制御部24では、この温度情報に基づき、例えば図示外の出口での温度が所定の温度を上回るときには、第1電磁弁21A開弁用の第1制御信号Iを出力されるとともにソレノイド21Dを動作させる第3制御信号Iが出力される。
【0038】
オイルインジェクション回路22は、圧縮機100のスクロール外に吐出された後の冷媒が流入するオイルセパレータ5で冷媒中から分離されたオイルを、スクロール圧縮要素102の低圧部または中間圧部の圧縮空間125へ供給するものであり、この供給は蒸発器の冷媒蒸発温度が所定温度以下になると行われる。
【0039】
即ち、冷媒の蒸発温度が超低温、例えば−40℃以下になると、減圧装置13での絞り量が大きくなることが要因で冷媒の循環量が低下するため、これと同時に冷媒中に混入しているオイルの循環量も少なくなる。そこで、オイルセパレータ5で冷媒中から分離され、オイルインジェクション回路22を介して送り出されてきたオイルを、前述のリキッドインジェクション回路21の下流側に送り出されてくる冷媒液と合流させることで、圧縮機100のスクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮空間125へ潤滑用のオイルも同時に補給させるようになっている。なお、本実施形態では、上述したように、リキッドインジェクション回路21(同時に、オイルインジェクション回路22も同様)の先端がスクロール圧縮要素102の中間圧部の圧縮空間125に接続されているが、本発明では、スクロール圧縮要素102の低圧部の圧縮空間125に接続させてもよい。
【0040】
本実施形態のオイルインジェクション回路22は、図3に示すオイルセパレータ5の底部(特に、最下部)とリキッドインジェクション回路21のソレノイド21Dの排出側との間に連結されており、キャピラリチューブ22Aと、第2電磁弁22Bとが設けられている。
【0041】
このように、オイルインジェクション回路22の先端部がオイルセパレータ5の底部、特に最下部に接続されていることにより、オイルセパレータ5の容器5A内の底部に貯留するオイルの貯油量がたとえ少量であっても、そのオイルを圧縮機100のスクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮空間125へ供給させることができる。換言すれば、オイルリターン回路23とは異なり、容器5A内の底部に貯留するオイルの貯油量の多少に係わらず、オイルセパレータ5の容器5A内の底部にオイルが貯留されている限り、オイルインジェクション回路22から圧縮機100のスクロール圧縮要素102の圧縮空間125へ供給できる。
【0042】
キャピラリチューブ22Aは、オイルセパレータ5で冷媒から分離されたオイルに対して、管内が極端に狭まった通路を通過させることで、ここを通過するオイルの過剰な供給を防止して常時安定した流量の制御を行う。
【0043】
第2電磁弁22Bは、制御部24によって開弁制御される。即ち、制御部24は、圧縮機100の低圧室112の内部圧力を検知する低圧圧力センサ25からの圧力信号を介して低圧室112の内部温度を検出し、この温度が所定の設定値以下になると、ソレノイド21Dのオン動作用の第3制御信号Iと第2電磁弁22Bの開弁用の第2制御信号Iを出力する。これにより、リキッドインジェクション回路21側の冷媒とともに、オイルを圧縮機100のスクロール圧縮要素102の中間圧部の圧縮空間125へ適宜供給することで、スクロールの圧縮空間125内部に不足しているオイルを補給させ、スクロールに対する焼き付け防止を図るようになっている。
【0044】
なお、低圧圧力センサ25からの圧力情報から圧縮機100の低圧室112の内部温度を検出する検出方法については、制御部24に格納された、冷媒の圧力P(飽和圧力、絶対圧力)とエンタルピーHとの相関性を示すPH線図(即ち、モリエール線図)に基づき、検出した圧力値に対応する温度が算出されることから、温度検出を行うようになっている。
【0045】
オイルリターン回路23は、オイルセパレータ5で冷媒から分離されたオイルを圧縮機100の密閉容器101内へ回収させるものであり、上述したようにオイルセパレータ5の底部に所定量以上にオイルが貯留されたときに、密閉容器101内の底部へ給油させる。
【0046】
制御部24は、入力が密閉容器101及びカバー127の上壁を貫通するパイプPの先端部に収容された温度検知部60に接続されているとともに、出力がリキッドインジェクション回路21のソレノイド21D及び第1電磁弁21Aに接続されている。また、この制御部24は、入力が圧縮機100の低圧室112の内部圧力を検知する低圧圧力センサ25にも接続されているとともに、出力がオイルインジェクション回路22の第2電磁弁22Bにも接続されている。
【0047】
次に、本実施形態に係る冷媒回路1に備えた、スクロール圧縮機100について、詳細に説明する。
図2において、スクロール圧縮機100は内部低圧型のものであって、鋼板からなる縦型円筒状の密閉容器101を備えている。この密閉容器101は、縦長円筒状を呈する容器本体101Aと、この容器本体101Aの両端(上下両端)にそれぞれ溶接固定された略椀状を呈するエンドキャップ101B(図中上方)及びボトムキャップ101C(図中下方)とから構成されている。以下、密閉容器101のエンドキャップ101B側を上、ボトムキャップ101C側を下で説明を行う。
【0048】
この密閉容器101内には、下側に駆動手段としての電動要素103、上側に電動要素103の回転軸105にて駆動されるスクロール圧縮要素102がそれぞれ収納されている。該密閉容器101内のスクロール圧縮要素102と電動要素103の間には、上部支持フレーム104(メインフレーム)が収納されており、この上部支持フレーム104には中央に軸受部106とボス収容部122とが形成されている。
【0049】
この軸受部106は、回転軸105の先端(上端)側を軸支するためのものであり、当該上部支持フレーム104の一方の面(下側の面)の中央から下方に突出して形成されている。また、ボス収容部122は後述する揺動スクロール115のボス124を収容するためのものであり、上部支持フレーム104の他方の面(上側の面)の中央を下方に凹陥することにより形成されている。
【0050】
また、電動要素103下部の密閉容器101内には、下部支持フレーム107(ベアリングプレート)が収納されており、この下部支持フレーム107の中央には軸受け108が形成されている。この軸受け108は、回転軸105の末端(下端)側を軸支するためのものであり、当該下部支持フレーム107の一方の面(下側の面)の中央から下方に突出して形成されている。そして、下部支持フレーム107の下側の空間、即ち、密閉容器101内の底部は、スクロール圧縮要素102などを潤滑する潤滑油が貯留される油溜め162とされている。
【0051】
前記回転軸105の先端(上端)には、偏心軸123が形成されている。この偏心軸123は、中心が回転軸105の軸心と偏心して設けられると共に、図示しないスライドブッシュ及び旋回軸受けを介して、揺動スクロール115のボス124に、当該揺動スクロール115を旋回駆動可能に挿入されている。
【0052】
前記スクロール圧縮要素102は、固定スクロール114と揺動スクロール115とで構成されている。該固定スクロール114は、円形状の鏡板116と、この鏡板116の一方の面(下側の表面)に立設されたインボリュート状、又は、これに近似した曲線からなる渦巻き状のラップ117と、このラップ117の周囲を取り囲むように立設された周壁118と、この周壁118の周囲(周壁118の他方の面側(上側))に突出して設けられ、外周縁が密閉容器101の容器本体101Aの内面に焼き嵌めされたフランジ119とが、一体に構成されている。
【0053】
そして、固定スクロール114は、フランジ119が容器本体101Aの内面に焼き嵌め固定されると共に、鏡板116の中央部(固定スクロール114の中心)には、スクロール圧縮要素102にて圧縮された冷媒ガスを密閉容器101内上側に形成された吐出圧力空間111(マフラー室)に連通する吐出孔113が形成されている。係る固定スクロール114は、ラップ117の突出方向を下方としている。
【0054】
前記電動要素103は、密閉容器101に固定された固定子150と、この固定子150の内側に配置され、固定子150内で回転する回転子152とから構成されており、この回転子152の中心に回転軸105が嵌合されている。固定子150は、複数枚の電磁鋼板を積層した積層体から成り、この積層体の歯部に巻装された固定子巻線151を有している。また、回転子152も固定子150と同様に電磁鋼板の積層体で形成されている。
【0055】
また、回転軸105の内部には当該回転軸105の軸方向に沿って油路105Aが形成されており、この油路105Aは、回転軸105の下端に位置する吸込口161を備え、当該吸込口161が油溜め162に貯留された潤滑油に浸漬されて、潤滑油中に開口している。また、油路105Aには各軸受けに対応する位置に潤滑を給油する給油口が形成されて、係る構成により、回転軸105が回転すると、油溜め162に貯留された潤滑油が回転軸105の吸込口161から油路105Aに入り、上方に汲み上げられる。そして、汲み上げられた潤滑油は各給油口等を介して各軸受けやスクロール圧縮要素102の摺動部に供給されることとなる。
【0056】
前記密閉容器101には、当該密閉容器101内の下側の空間112(以下、低圧室112とよぶ)内に冷媒を導入するための冷媒吸入管145と、スクロール圧縮要素102にて圧縮され、前記吐出孔113から後述する吐出マフラー室128を介して密閉容器101内の上側の吐出圧力空間111に吐出された冷媒を外部に吐出するための冷媒吐出管146とが設けられている。尚、本実施例では、冷媒吸入管145は密閉容器101の容器本体101Aの側面に溶接固定され、冷媒吐出管146はエンドキャップ101Bの側面に溶接固定されている。
【0057】
一方、本実施例の構成では、固定スクロール114の鏡板116の上面130(ラップ117の反対側の面)が密閉容器101内の上側に形成された吐出圧力空間111に臨むように構成されている。固定スクロール114の鏡板116の上面130には、吐出孔113に連なる吐出弁(図示せず)と、この吐出弁に隣接して複数のリリース弁とが設けられている(吐出弁及びリリース弁は共に図示しない)。当該リリース弁は、冷媒の過圧縮を防止するために設けられたものであり、図示しないリリースポートを介して圧縮過程の圧縮空間125に連通されている。
【0058】
該密閉容器101内上側の吐出圧力空間111内には固定スクロール114にネジ止めされたカバー127が設けられている。このカバー127の下面中央には、固定スクロール114側から吐出圧力空間111方向に凹陥形成され、当該吐出圧力空間111と共にマフラー室を形成する吐出マフラー室128が形成されている。この吐出マフラー室128が前記吐出孔113に連通すると共に、図示しないがカバー127と固定スクロール114間に設けられた隙間を介して吐出マフラー室128と密閉容器101内上側の吐出圧力空間111内とが連通している。
【0059】
具体的には、圧縮過程の冷媒圧力が吐出孔113に至る以前に吐出圧力に達すると、リリース弁が開放されて、圧縮空間125内の冷媒がリリースポートを介して外部に吐出されることとなる。
【0060】
前記揺動スクロール115は、上述した如き容器本体101Aの内面に焼き嵌め固定された固定スクロール114に対して旋回するスクロールであり、円板状の鏡板120と、この鏡板120の一方の面(上側の表面)に立設されたインボリュート状、又は、これに近似した曲線からなる渦巻き状のラップ121と、鏡板120の他方の面(下側の面)の中央に突出形成された前述したボス124とで構成されている。そして、揺動スクロール115はラップ121の突出方向を上方として、このラップ121が固定スクロール114のラップ117に180度回し、向かい合って噛み合うように配置され、内部のラップ117、121間に前記圧縮空間125が形成される。
【0061】
即ち、揺動スクロール115のラップ121は、固定スクロール114のラップ117と対向し、両ラップ121、117の先端面が相手の底面(鏡板116面、及び、鏡板120面)に接するように噛み合い、且つ、揺動スクロール115は回転軸105の軸心から偏心して設けられた偏心軸123に嵌合されている。このため、圧縮空間125は、2つの渦巻き状のラップ121、117が互いに偏心して、その偏心方向の線上で接して閉じこめられた複数の空間を作り、この空間の各々が圧縮室(低圧部、中間圧部、高圧部などの複数の圧縮空間)となる。
【0062】
前記固定スクロール114は、その周壁118の周囲に設けられたフランジ119が複数のボルト(図示せず)を介して上部支持フレーム104に固定されている。また、揺動スクロール115は、オルダムリング148、及び、オルダムキーよりなるオルダム機構149によって上部支持フレーム104に支承されている。これにより、揺動スクロール115は、固定スクロール114に対して、自転せずに旋回運動を行うように構成されている。
【0063】
この揺動スクロール115は、固定スクロール114に対して偏心して公転するため、2つの渦巻き状のラップ117、121の偏心方向と接触位置は回転しながら移動し、前記圧縮室は外側から内側の圧縮空間125に向かって移りながら次第に縮小していく。最初に外側の圧縮空間125から入り込んで低圧部に閉じこめられた低圧の冷媒ガスは、断熱圧縮されながら次第に内側に移動して中間圧(中間圧部)を経て、最後に中央部(高圧部)に到達するときには、高温高圧の冷媒ガスとなる。この冷媒ガスは、当該固定スクロール114の中心に形成された吐出孔113、及び、吐出マフラー室128を介して吐出圧力空間111に送り出される。
【0064】
また、前記カバー127内(カバー127の板圧内部)にはレシーバタンク7(図1参照)内の液冷媒を、スクロール圧縮要素102の中間圧部に戻し、蒸発させることによって圧縮ガスの冷却を行うためのリキッドインジェクション通路144(本発明のリキッドインジェクション回路21に相当)が形成されている(図2に図示)。
【0065】
このリキッドインジェクション通路144は、カバー127内で分岐して後述するインジェクション孔141,142に接続される。また、リキッドインジェクション通路144には、内部が中空のチューブにて構成された配管140が接続されており、この配管140の一端はカバー127のリキッドインジェクション通路144内に圧入され、他端はスリーブ139を介してエンドキャップ101Bに溶接固定されている。
【0066】
また、固定スクロール114の鏡板116には、前記リキッドインジェクション通路144に連通する上述のインジェクション孔141、142が上下方向に貫通形成されている。両インジェクション孔141、142の下側(揺動スクロール115側)は、ラップ117、121側に開口すると共に、スクロール圧縮要素102の中間圧部(固定スクロール114の中心に形成された吐出孔113と同一の圧縮空間125になる直前、若しくは、その近傍の中間圧部の位置)に連通している。係る、エンドキャップ101Bとカバー127間に渡って配管140が取り付けられると共に、配管140に接続された接続管147に図1に示すレシーバタンク7からのリキッドインジェクション回路21が接続されて、リキッドインジェクション通路144が形成されている。
【0067】
該一方のインジェクション孔141は、図1及び図4に示すように固定スクロール114の中心を基準にして、他方のインジェクション孔142と180度ずれた位置に形成されている。そして、一方のインジェクション孔141は、固定スクロール114に立設されたラップ117の外側(揺動スクロール115のラップ121の内側に形成される高圧縮室、つまり高圧部の圧縮空間側)に形成され、他方のインジェクション孔142は、固定スクロール114に立設されたラップ117の内側(揺動スクロール115のラップ121の外側に形成される高圧縮室、つまり高圧部の圧縮空間側)に形成されている。
【0068】
次に、本実施形態の作用について説明する。
初めに、圧縮機100内のスクロール圧縮要素102の作用、特に圧縮ガスの冷却作用について説明する。なお、ここでは、詳細は後述するが、吐出される冷媒温度が所定の温度を上回ったことを、温度検知部60を介して制御部24で検出すると、以下のような工程を経て、制御部24の制御により、レシーバタンク7内の液冷媒が、リキッドインジェクション回路21を介してスクロール圧縮要素102の中間圧部に戻され、蒸発して圧縮ガスの冷却が行われる。
【0069】
ここでは、説明の都合上、初めに、揺動スクロール115は最終圧縮行程近傍に位置しているものとする。また、そのときには、インジェクション孔141、142が、揺動スクロール115のラップ121にて完全に閉塞されている(第1工程;図4(A)参照)。
【0070】
そして、揺動スクロール115が公転していくと、揺動スクロール115のラップ121にて閉塞されていた両インジェクション孔141、142は、中間圧部(圧縮空間125)へ開口する直前に位置する(第2工程;図4(B)参照)。このときは、高圧部(圧縮空間125)から吐出孔113への高温高圧の冷媒ガスの吐出が終了、若しくは、終了直前状態である。
【0071】
更に、揺動スクロール115が公転していくと、両インジェクション孔141、142から揺動スクロール115のラップ121が離間し、当該両インジェクション孔141、142は、中間圧部(圧縮空間125)に開口する(第3工程;図4(C)参照)。このときは、レシーバタンク7内の液冷媒がリキッドインジェクション回路21を介してスクロール圧縮要素102の中間圧部の圧縮空間125に戻り、蒸発して圧縮ガスの冷却が行われる状態である。そして、更に揺動スクロール115が公転していくと戻って、前記(第1工程)、(第2工程)、(第3工程)を繰り返す。このようにして、リキッドインジェクション回路21を介しレシーバタンク7内から送り込まれる液冷媒の蒸発作用を利用した、高温高圧の圧縮ガスに対する冷却動作が行われる。
【0072】
次に、本実施形態に係る超低温冷凍装置には、上記のように、オイルリターン回路23を備えている。従って、密閉容器141(図2参照)から吐出する冷媒が、図3に示す流入管1Aを介してオイルセパレータ5のオイル分離手段51に流入すると、冷媒に混入していたオイルのみが分離されて容器5A内の底部に貯留される。
【0073】
そして、この貯留されるオイル量が次第に増え、オイルセパレータ5の底部のオイル液面を検知するフロート52が所要レベルを越えたことを検知すると、フロート式弁53が開弁する。その結果、開弁するフロート式弁53及びオイル管54を介してオイルがオイルリターン回路23側へ吸引される。
【0074】
これにより、オイル管54を通りオイルセパレータ5から流出するオイルがオイルリターン回路23を介して密閉容器101内底部のオイル溜めに供給され、オイル溜め162のオイル不足を解消することができる。一方、図3に示すオイル分離手段51でオイルが分離され除去された冷媒は、流出管1Bから図1に示す熱交換器6へ送り込まれて凝縮される。
【0075】
従って、本実施形態によれば、オイルセパレータ5と圧縮機100の下部との間を連通するオイルリターン回路23を介してオイルが圧縮機100の内部に戻されることで、圧縮空間125内に生じるオイル不足を解消させることができる。
【0076】
また、本実施形態には、リキッドインジェクション回路21を備えており、スクロール型超低温圧縮機100においては、温度検知部60が所定の設定温度以上に上昇したことを検知することにより、制御部24が動作制御する。そして、この制御部24から出力する第3制御信号Iによりソレノイド21Dがオンするとともに、第1制御信号Iにより第1電磁弁21Aが開き、過冷却器8で過冷却された液冷媒の一部がリキッドインジェクション回路21を介して、スクロール圧縮要素の中間圧部(または低圧部)の圧縮空間125へ供給され、スクロール圧縮要素の温度上昇を抑制する。
【0077】
この場合、温度検知部60の検知温度に応じて行われる制御部24の制御動作により、検出温度が設定温度を超える場合、つまり検出温度との温度差が大きいときには液冷媒の流量が多く、検出温度との温度差が小さいときには液冷媒の流量が少なくなるように、第1電磁弁21Aによる液冷媒の流量が調整される。このようなスクロール圧縮要素の中間圧部(または低圧部)の圧縮空間125への液冷媒の供給は、スクロール圧縮要素の低圧部(または中間圧部)の圧縮空間125よりも過冷却器8内の圧力が高圧であることによる圧力差によって行なわれる。これによって、スクロール圧縮要素の温度上昇が抑制されるわけである。
【0078】
また、本実施形態に係る超低温冷凍装置は、−40℃以下の超低温、例えば−60℃で運転されるものであり、上記のように、オイルインジェクション回路22を備えている。従って、圧縮機100の密閉容器141内の低圧室112(図2参照)の内部圧力を検知する低圧圧力センサ25(図1参照)からの出力信号に基づき、制御部24が格納する冷媒の圧力P(飽和圧力、絶対圧力)とエンタルピーHとの相関性を示すPH線図(即ち、モリエール線図)に基づき、検出した圧力値に対応する温度が算出されることで温度検出される。
【0079】
そして、この検出された、密閉容器141内部の低圧室112の内部温度が所定値を下回っているときには、制御部24からの制御信号によって第2電磁弁22Bが開弁する。従って、オイルインジェクション回路22に設けたキャピラリチューブ22Aを介して流量がほぼ一定量ずつ送り出されるように調整されたオイルセパレータ5の底部からのオイルは、開弁された第2電磁弁22Bを通過する。またこの第2電磁弁22Bを通過後のオイルは、オイルインジェクション回路22とリキッドインジェクション回路21とが合流する共通の配管を介してスクロール圧縮要素2の中間圧部の圧縮空間125へ供給されるが、このオイルの供給動作は低圧室112の内部温度が上昇し所定温度に達するまで行われる。
【0080】
これにより、リキッドインジェクション回路21による過冷却された冷媒供給でスクロール圧縮要素の温度上昇が抑制されるのと同時に、オイルインジェクション回路22によるオイル供給でスクロール圧縮要素のオイル不足を解消してスクロール動作時の潤滑を維持するわけである。
【0081】
従って、本実施形態のオイルセパレータ5によれば、オイルセパレータ5内部に貯留される油量が所定レベルを上回ると、差圧を利用して、自動的に圧縮機100の密閉容器141内底部へ回収させることができる。即ち、オイルセパレータ5の容器5A内底部に所定レベル以上にオイルが貯留されるときに、圧縮機100の密閉容器141内底部へ簡易かつ低コストで確実にオイルの回収自動化が実現できる。
また、このように、簡易かつ低コストで確実にオイルの回収自動化を実現できるオイルセパレータ5を備えた超低温冷凍装置も提供できる。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の要旨を逸脱しない範囲で各種の変形実施が可能である。
例えば、オイルインジェクション回路22に関する温度検出は、本実施形態では、制御部24により、低圧センサ25の圧力検知に基づき圧縮機100の密閉容器141内の低圧室Rの内部圧力から温度が演算される構成であるが、特にこれに限定されない。例えば、蒸発器の冷媒温度を直接測定する構成であってもよい。また、本発明の超低温冷凍装置による冷媒蒸発温度は−40℃以下の所定温度であって、本実施形態では−40℃または−45℃に設定されているが、特にこの温度に限定されない。
【0083】
さらに、本実施形態では、過冷却器8を通過後の冷媒をリキッドインジェクション回路21を介して、圧縮機100のスクロール圧縮要素の中間圧部の圧縮空間125へ送り込むように構成しているが、これに限らない。即ち、例えば図1に破線で示すように、このリキッドインジェクション回路21´を、レシーバタンク7の吐出側と圧縮機100のスクロール圧縮要素の中間圧部(又は低圧部)の圧縮空間との間に設置させてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、簡易かつ低コストで確実にオイルの回収自動化を実現できるオイルセパレータ5を超低温冷凍装置に装備させたが、本発明では、特にこのオイルセパレータは特に超低温タイプの冷凍装置に限定して装備させる必要はなく、通常一般の冷凍装置に装備させてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 冷媒回路(冷媒循環回路)
1A 流入管
1B 流出管
11、12 ユニット間配管
13 減圧装置(膨張弁)
14 熱交換器(蒸発器)
2 ストレーナ
21 リキッドインジェクション回路
21A 第1電磁弁
21D ソレノイド
22 オイルインジェクション回路
22B 第2電磁弁
23 オイルリターン回路(オイルリターン管)
24 制御部
25 低圧圧力センサ
3 アキュムレータ
100 圧縮機(スクロール型超低温圧縮機)
102 スクロール圧縮要素
103 電動要素
105 回転軸
105A 油路
111 吐出圧力空間
112 低圧室
113 吐出孔(吐出ポート)
114 固定スクロール
115 揺動スクロール
117、121 ラップ
125 圧縮空間(中間圧部、低圧部;圧縮室)
128 吐出マフラー室
141 密閉容器
142 カバー
162 油溜め
5 オイルセパレータ
5A 容器
51 オイル分離手段
52 フロート
53 フロート式弁
54 オイル管
6 熱交換器(凝縮器)
60 温度検知部
7 レシーバタンク
8 過冷却器
P パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動要素と前記電動要素によって駆動されるスクロール圧縮要素とが密閉容器内に収容され、前記スクロール圧縮要素に連通した吸入管から吸い込んだ冷媒ガスを前記スクロール圧縮要素にて圧縮しつつ吐出ポートから前記密閉容器内に吐出し、この吐出される冷媒ガスを前記密閉容器外に吐出するスクロール圧縮機を備え、
前記吐出される冷媒ガスが、凝縮器、液冷媒を溜めるレシーバタンクを経て膨張弁にて減圧膨張された液冷媒を蒸発器で蒸発した後、再び前記吸入管から前記スクロール圧縮要素へ帰還する冷媒循環回路を形成し、
前記圧縮機のスクロール圧縮要素から吐出する冷媒ガスが前記密閉容器外の前記凝縮器に送り出される冷媒循環回路上にオイルセパレータが設置され、
前記オイルセパレータに貯油したオイルを前記密閉容器内に返油するオイルリターン回路とを備えた超低温冷凍装置おいて、
前記レシーバタンクに溜まった液冷媒の一部または前記レシーバタンクを出た冷媒を過冷却器で過冷却した液冷媒の一部を、前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室へ供給するリキッドインジェクション回路を備えるとともに、
前記蒸発器の冷媒蒸発温度が所定の冷凍温度以下において前記オイルセパレータで冷媒から分離されたオイルを前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室へ供給するオイルインジェクション回路を設けた、
ことを特徴とする超低温冷凍装置。
【請求項2】
前記リキッドインジェクション回路は第1電磁弁を備え、
前記スクロール圧縮要素の低圧部または中間圧部の圧縮室の温度が所定値を上回ると、前記第1電磁弁を開くように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の超低温冷凍装置。
【請求項3】
前記オイルインジェクション回路は第2電磁弁を備え、前記圧縮機の密閉容器内の低圧室の温度が所定値を上回ると前記第2電磁弁を開くように構成した、
ことを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の超低温冷凍装置。
【請求項4】
前記オイルセパレータは、
前記スクロール圧縮要素から吐出する冷媒ガスが前記密閉容器外に送り出される冷媒循環回路上に設置され本体部と、
この本体部内の上部側に設置されるオイル分離手段と、
前記オイル分離手段で分離された冷媒ガスを本体外部へ送り出す冷媒送出管と、
前記オイル分離手段で分離され滴下されて本体内の底部に貯留するオイルの液量に応じて昇降するフロートと、
このフロートが予め設定された所定レベルを越えて上昇すると作動するフロート式弁と、
前記本体内の底部に貯留するオイルの液面が所定レベルを越えたところで前記フロート式弁が開いて本体内の底部に貯留するオイルが吸引されて本体外部へ送出され、前記密閉容器内へ戻される返油用のオイルリターン管と、
から成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超低温冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247134(P2012−247134A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119253(P2011−119253)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】