説明

超薄多孔質ナノスケール膜、その製造方法および使用

多孔質ナノスケール膜を形成する方法を記載する。本方法は、半導体材料を含むナノスケールフィルムを基板の一方の側に被着させる段階;基板の対側をマスキングする段階;基板を、そのマスキングされた対側から、基板を貫通する流路が形成されるまでエッチングし続け、それによってフィルムをその両側で露出させて膜を形成する段階;および続いて、複数のランダムに離間した孔を膜内に同時に形成する段階を含む。実質的に滑らかな表面、高い孔密度および高いアスペクト比寸法により特徴づけられる、結果として得られる多孔質ナノスケール膜は、濾過装置、マイクロ流体装置、燃料電池膜において、また電子顕微鏡基板として、使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、多孔質ナノスケール膜、特に超薄多孔質ナノスケール膜、その膜を製造する方法およびその使用に関する。
【0002】
なお、本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、それぞれ2005年4月29日および2006年3月14日に出願された米国特許仮出願第60/675,963号および第60/782,001号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
生物学的流体中の分子の分離は、臨床診断および疾病治療において重要な基本的処置であり、溶質分離にとってもっとも本質的な装置は多孔質膜フィルタである。したがって、フィルタ技術における革命的な進歩は、人の健康の多くの分野に影響を及ぼす潜在能力を有する。典型的なフィルタ材料は、プラスチックまたはセルロースポリマーの紡織基材として作られている。このようにして製造されたフィルタは当然、広い孔径分布を含み、最小の孔が最終的に濾液の小さな分子で目詰まりする。豊富にある小さな孔および大きなフィルタ厚が、膜フィルタを通過する流れに対する二つの主要な抵抗源である(Tong et al., 「Silicon Nitride Nanosieve Membrane」, Nano Letters 4:283-287 (2004)(非特許文献1))。
【0004】
これまで、分子分離用に二つのタイプのナノ製造膜が開発されている。第一のタイプでは、分子は、ナノスケール直径および6μm〜60μmの長さの流路を通過する。流路型フィルタは、メソ多孔質アルミナまたはポリカーボネートホスト膜をシリカ(Yamaguchi et al., 「Self-assembly Of A Silica-surfactant Nanocomposite In A Porous Alumina Membrane」, Nature Materials 3:337-341 (2004)(非特許文献2))または金(Lee et al., 「Electromodulated Molecular Transport In Gold-Nanotubule Membranes」, J. Am. Chem. Soc. 124:11850-11851 (2002)(非特許文献3))で含浸することにより、また、シリコンとポリシリコンとのコルゲートアセンブリから二酸化ケイ素(SiO2)を選択的に除去することにより(Martin et al., J. Controlled Release 102:123-133 (2005)(非特許文献4))アセンブルされてきた。流路型膜は、小さな(約1nm)分子をタンパク質(約5nm)から分離し(Yamaguchi et al., 「Self-assembly Of A Silica-surfactant Nanocomposite in a Porous Alumina Membrane」, Nature Materials 3:337-341 (2004)(非特許文献2))、薬物送達用途の場合にタンパク質の拡散を減速させる(Martin et al., 「Tailoring Width of Microfabricated Nanochannels To Solute Size Can Be Used To Control Diffusion Kinetics」, J. Controlled Release 102:123-133 (2005)(非特許文献4))ためにうまく使用されてきた。流路型膜の大きな厚さは、実用化および大規模分離に必要な機械的安定性を提供するが、流れ抵抗(Tong et al., 「Silicon Nitride Nanosieve Membrane」, Nano Letters 4:283-287 (2004)(非特許文献1))および拡散時間が膜厚と比例して増す。流路型膜の新規な局面、たとえば単一ファイル内で動くように強いられた分子の準フィック的運動(Wei et al., 「Single-file Diffusion of Colloids in One-Dimensional Channels」, Science 287:625-627 (2000)(非特許文献5))が流束をさらに減速させると予想することができる。長い流路はまた、混合物の最初の導入と膜の背面における種の出現との間に時間のずれを生じさせる。小さな高分子(約1nm)の場合、この遅れが数時間にもなることがある(Yamaguchi et al., 「Self-assembly Of A Silica-surfactant Nanocomposite in a Porous Alumina Membrane」, Nature Materials 3:337-341 (2004)(非特許文献2))。したがって、確実な分離のための流路型ナノ膜の使用は可能であるが、高速分離手順におけるその使用は見込みがない。
【0005】
輸送効率の問題は、分離される分子とほぼ同じ厚さ(約10nm)である第二のタイプのナノ多孔質膜によって対処される。分子並みに薄い面における分子サイズの穴の配列として、このタイプの膜は、濾過速度を最大限にするように働くことができる構造的限界を達成する(Tong et al., 「Silicon Nitride Nanosieve Membrane」, Nano Letters 4:283-287 (2004)(非特許文献1)、Chao et al., 「Composite Membranes From Photochemical Synthesis of Ultrathin Polymer Films」, Nature 352:50-52 (1991)(非特許文献6))。しかし、公表された研究では、そのような超薄膜は、イオンビームを使用して厚さ10nmの窒化シリコン膜に25nmの孔を個々に穿孔することによってのみ製造されている(Tong et al., 「Silicon Nitride Nanosieve Membrane」, Nano Letters 4:283-287 (2004)(非特許文献1))。機械的結着性を提供するため、この超薄膜は、はるかに厚い下層膜内にパターン付けされた5ミクロンの穴に掛け渡されるものであった。このタイプの膜の大規模製造は、穿孔処理に費用を要し、きわめて低速である(約20時間/cm2)ため、非実用的である(Tong et al., 「Silicon Nitride Nanosieve Membrane」, Nano Letters 4:283-287 (2004)(非特許文献1))。この製造方法は、商業的に有用な濾過膜には適さないであろう。
【0006】
小規模タンパク質分離および検出装置におけるマイクロ流体工学技術の具現化は、電気的に切り替え可能なナノ流体フィルタの開発から利益を得るであろう。そのようなフィルタは、ユーザによって指定されるサイズのタンパク質を捕獲するように電子的にチューニングすることができる精製システムの構築を可能にするであろう。検出または分析には希薄すぎるタンパク質の場合、まず、溶質が通過するときにタンパク質を捕らえることによって濃縮し、次いでそのタンパク質を分析チャンバに放出するように動的フィルタをプログラムすることもできる。切り替え可能なフィルタの顕著な例が最近の文献にいくつかある。一例では、膜上の電荷をアクティブに操作して同符号荷電種を反発させて孔に入らせない(Schmuhl et al., 「SI-Compatible Ion Selective Oxide Interconnects with High Tunability」, Adv. Mater. 16:900-904 (2004)(非特許文献7)、Martin et al., 「Controlling Ion-Transport Selectivity in Gold Nanotubule Membranes」, Adv. Mater. 13:1351-1362 (2001)(非特許文献8))。他の例では、溶質電荷を駆動して膜を透過させる電気浸透流が確立されている(Kuo et al., 「Molecular Transport through Nanoporous Membranes」, Langmuir 17:6298-6303 (2001)(非特許文献9))。これらのフィルタは、大量生産に統合するにはコストが高すぎるであろう複合アセンブリ手順によって作られるものであった。また、得られるフィルタは厚く、濾液として出現する前に種がミクロン長の流路を通過することを要する。大きなフィルタ厚は、膜透過型フィルタに対する主要な抵抗源であり(Tong et al., 「Silicon Nitride Nanosieve Membrane」, Nano Letters 4:283-287 (2004)(非特許文献1))、高速分離用途におけるこれらの設計の使用を妨げる。
【0007】
本発明は、当技術分野におけるこれらの欠点および他の欠点を解消することに関する。
【0008】
【非特許文献1】Tong et al., 「Silicon Nitride Nanosieve Membrane」, Nano Letters 4:283-287 (2004)
【非特許文献2】Yamaguchi et al., 「Self-assembly Of A Silica-surfactant Nanocomposite In A Porous Alumina Membrane」, Nature Materials 3:337-341 (2004)
【非特許文献3】Lee et al., 「Electromodulated Molecular Transport In Gold-Nanotubule Membranes」, J. Am. Chem. Soc. 124:11850-11851 (2002)
【非特許文献4】Martin et al., 「Tailoring Width of Microfabricated Nanochannels To Solute Size Can Be Used To Control Diffusion Kinetics」, J. Controlled Release 102:123-133 (2005)
【非特許文献5】Wei et al., 「Single-file Diffusion of Colloids in One-Dimensional Channels」, Science 287:625-627 (2000)
【非特許文献6】Chao et al., 「Composite Membranes From Photochemical Synthesis of Ultrathin Polymer Films」, Nature 352:50-52 (1991)
【非特許文献7】Schmuhl et al., 「SI-Compatible Ion Selective Oxide Interconnects with High Tunability」, Adv. Mater. 16:900-904 (2004)
【非特許文献8】Martin et al., 「Controlling Ion-Transport Selectivity in Gold Nanotubule Membranes」, Adv. Mater. 13:1351-1362 (2001)
【非特許文献9】Kuo et al., 「Molecular Transport through Nanoporous Membranes」, Langmuir 17:6298-6303 (2001)
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明の第一の局面は、多孔質ナノスケール膜を製造する方法に関する。この方法は、半導体材料を含むナノスケール膜を基板の一方の側に被着する段階;基板の対側をマスキングする段階;基板を、そのマスキングされた対側から、基板を貫通する流路が形成されるまでエッチングし続け、それによってフィルムを基板の両側で露出させて膜を形成する段階;および次に複数の離間した孔を膜内に同時に形成する段階を含む。
【0010】
本発明の第二の局面は、対側で露出し、500nm未満の平均厚を有するナノスケール半導体膜であって、本発明の第一の局面の方法によって調製されるナノ多孔質半導体膜に関する。
【0011】
本発明の第三の局面は、対側で露出し、約500nm未満の平均厚を有し、対側の間に延びる複数の孔を有するナノスケール半導体膜であって、対側の一方または両方が実質的に滑らかであるナノスケール半導体膜に関する。
【0012】
本発明の第四の局面は、本発明の第二または第三の局面のナノスケール膜を少なくとも一つ含むフィルタ装置に関する。フィルタ装置は、好ましくは、対表面の間に延びる流路を有する支持体を含み、少なくとも一つのナノスケール膜が、流路に向き合う状態で支持体に結合または支持体上に配置されている。
【0013】
本発明の第五の局面は、本発明の第四の局面のフィルタ装置を含むマイクロ流体流動装置に関する。
【0014】
本発明の第六の局面は、本発明の第四の局面のフィルタ装置を含む透析機に関する。透析機は、好ましくは、それぞれが複数の膜を有する本発明のフィルタ装置を複数含む。
【0015】
本発明の第七の局面は、ナノスケール生成物を濾過する方法に関する。この方法は、本発明の第二または第三の局面のナノスケール膜を少なくとも一つ提供する段階;および濾過される一つまたは複数の生成物を含有する流体を少なくとも一つのナノスケール膜に通す段階を含み、それにより、最大孔径よりも大きな物体が少なくとも一つのナノスケール膜の孔を通過することを効果的に妨げる。
【0016】
本発明の第八の局面は、一つまたは複数のウェルを有し、各ウェルが底および一つまたは複数の側壁を有する基板であって、底が、約500nm未満の平均厚を有し対側の間に延びる複数の孔を有するナノスケール半導体膜を含む基板、ならびに一つまたは複数のウェル中の生物学的反応媒体ならびに化合物および有機体の群より個々に選択される二つ以上の反応物を含む、生物学的反応を実施するための装置に関する。
【0017】
本発明の第九の局面は、生物学的反応を実施する方法に関する。この方法は、本発明の第八の局面の装置を提供する段階;一つまたは複数のウェル中で生物学的反応を実施し、それによって最終生成物を形成する段階;および消費された生物学的反応媒体を一つまたは複数のウェルからナノスケール膜に通す段階を含み、最終生成物は、ナノスケール膜を通過するか、一つまたは複数のウェル中に保持される。
【0018】
本発明の第十の局面は、細胞に対する活性に関して薬剤をスクリーニングする方法に関する。方法は、薬剤を提供する段階;細胞を含有する生物学的反応媒体に薬剤を導入することによって本発明の第九の局面の方法を実施する段階;および細胞または最終生成物を分析して細胞に対する薬剤の活性を特定する段階を含む。
【0019】
本発明の第十一の局面は、本発明の第二または第三の局面の膜を少なくとも一つ含む燃料電池に関する。このタイプの燃料電池は、好ましくは、正荷電イオンを選択的に通す膜を含む。
【0020】
本発明の超薄ナノスケール膜を製造する方法は、濾過、電子顕微鏡法、ナノバイオリアクタ用途および燃料電池で商業的に有用である膜を製造するための、再現性を有する費用効果的な手法を達成する。特に、アニール工程中にすべての孔を同時に形成させる段階で半導体材料が多孔質になるため、アニール条件および付着される半導体材料の厚さを操作することにより、孔密度およびサイズを制御することができる。そのうえ、最終的な膜を形成するための半導体フィルムの一方の側または両側における犠牲層の使用のおかげで、実質的に滑らかな面を有する膜を調製することが可能である。このタイプの局所的滑らかさは、フィルタを多くの濾過用途で使用する場合に有用な特徴である。
【0021】
エッチング工程は、厚さ500nmのシリコンウェーハの場合で6時間を要するが、絶え間なく観察する必要はなく、したがって、時間を浪費させない。工程は、非常に容易に自動化することができる。この技術は平面的なエッチング停止面(基板/第一の犠牲フィルムの界面)までエッチングするため、他の技術で製造される可視面積よりも桁違いに大きい、5,000×5,000μm2に近い均一な厚さの視野を製造することができる。おそらく、この方法のもっとも独特な特徴は、1回のエッチング段階で数百個もの多孔質ナノスケール膜を製造するその相当な平行度である。文献に記載されている他の方法を用いると、研究者は、数個のサンプルを調製するだけで簡単に丸一日を要するため、これらの工程は十分な注目に値する。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、超薄ナノスケール膜、そのような膜の製造方法および高分子濾過用途、ナノバイオリアクタにおける、また電子顕微鏡法における材料の支持体としてのそれらの使用に関する。
【0023】
本発明の一つの局面にしたがって、本発明は、多孔質ナノスケール半導体膜を製造する方法に関する。
【0024】
膜を調製するために使用される半導体材料は、任意の適当な半導体材料または、合金として混合されているか、多層構造として調製されているかを問わない、それらの組み合わせであることができる。適当な半導体材料は、非限定的に、ドープされていないシリコンもしくはゲルマニウム、p-ドープされたシリコンもしくはゲルマニウム、n-ドープされたシリコンもしくはゲルマニウムまたはシリコン・ゲルマニウム合金を含む。例示的なp-ドープされたシリコンまたはゲルマニウムは、非限定的に、(CH3)2Zn、(C2H5)2Zn、(C2H5)2Be、(CH3)2Cd、(C2H5)2Mg、B、Al、GaおよびInドーパントを含有するものを含む。例示的なn-ドープされたシリコンまたはゲルマニウムは、非限定的に、H2Se、H2S、CH3Sn、(C2H5)3S、SiH4、Si2H6、P、AsおよびSbドーパントを含有するものを含む。ドーパントは任意の適量で存在することができる。これらの材料の例示的な合金は、ゲルマニウム約10重量%までのシリコン・ゲルマニウム合金ならびにこれらの材料の混合物、および第3族元素窒化物に基づく半導体材料を含む。
【0025】
これらの半導体材料は、結晶化する能力に関して、ドープされていないシリコンと同様な性質を示すと考えられるため、好ましい。したがって、以下に記載するようにして半導体材料の非晶質フィルムを結晶化させると、ナノスケール膜を貫通する孔を特徴とするナノ結晶質または多結晶質膜を形成することができる。当業者には、このように結晶化する固有の能力を有する任意の他の材料を同様に使用しても本発明の多孔質ナノスケール膜を形成することができることが理解されよう。
【0026】
膜を調製する方法は一般に、上記のような半導体材料で形成されているナノスケールフィルムを基板の一方の側に被着させる段階;および基板の対側をマスキングする段階を含む。これらの段階はいずれの順序で実施することもできる。マスキングし、ナノスケールフィルムを被着したのち、基板を、そのマスキングされた対側から、基板を貫通する流路が形成されるまでエッチングし続け、それによってフィルムをその両側で露出させて膜を形成する。フィルムまたは膜内でランダムに離間した複数の孔の同時形成を達成する様式でアニールすることにより、ナノスケールフィルムを多孔質にする。
【0027】
これらの段階を、図1の略図と関連させてさらに詳細に説明する(図1は、半導体の上記説明と合致して非晶質シリコンおよびナノ結晶質シリコンを参照するが、このような参照が単なる例に過ぎないということが理解されよう)。
【0028】
ナノスケール膜を支持するために使用される基板は、好ましくは、膜を形成することができるよう容易にマスキングし、エッチングすることができる基板である。シリコンがそのような基板の一つの好ましい例である。標準的な4、6、8または12インチシリコンウェーハを支持体として使用して、その表面上に、膜によって占められる所望の線形面積に依存して約1500個以上の500μm×500μmのナノスケール膜を形成することができる。シリコンを例として使用する場合、シリコンは、自然に発生する熱酸化層を含有する。本発明のフィルムを調製し、形成する際に使用される手順を簡素化するため、この熱酸化層を、好ましくは、基板の一方の側から完全に除去し、基板の対側からも部分的に除去し(すなわちマスキング処理中)、いずれの場合にも、緩衝酸化物エッチング剤(「BOE」)、たとえば非限定的に「緩衝HF改良された」エッチング剤(Transene Company Inc., Danvers MA)を使用する。これは、図1の段階AおよびBにそれぞれ示されている。
【0029】
マスキング段階は、好ましくは、保護されない基板のエッチングされる方を指図する要素の列を形成することによって実施される。一つの態様にしたがって、図2に示すように、各要素は、正方形の外郭によって包囲された正方形の穴で構成されている。これが、膜構造の形成を可能にし、また、各膜の周囲にトレンチをカットしてサンプルをウェーハから個々に取り出すことができるようにした。当然、本発明の範囲を逸することなく他の構成を使用することもできる。マスク上の形体サイズがかなり大きい場合、高品質レーザプリンタを使用してフィルム上に直接プリントすることもできる。この種のフィルムは、ガラスマスクブランクに取り付け、標準的なフォトリソグラフィーマスクとして使用することができる。背面SiO2を標準的なフォトリソグラフィーによってパターン付けしたのち、4:1BOE中に約10分間浸漬してパターンを酸化層に移すことができる。フォトレジストはアセトンで除去することができる。
【0030】
酸化層を有しない基板の側には、半導体材料のフィルムが基板に被着される。好ましい態様では、半導体フィルムは、好ましくは、犠牲酸化フィルムの被着の間に被着される(すなわち、一つの犠牲フィルムを基板に被着し、他の犠牲フィルムを半導体フィルムに被着し、それによって半導体フィルムを挟む)。
【0031】
半導体フィルム内に任意の所望のレリーフパターンを形成するように犠牲酸化フィルムを被着させることもできるし、厚さまたは表面粗さのばらつきがほとんどない実質的に平面的なフィルム(すなわち、フィルムは局所的に滑らかである)を達成する様式で酸化フィルムおよび半導体フィルムを被着させることができる。レリーフパターンは、たとえば、基板の前面をエッチングしたのち犠牲フィルムを被着させることによって形成することができる。
【0032】
好ましくは、酸化フィルムは、基板が特定のエッチング剤によってエッチングされる速度よりも少なくとも一桁、より好ましくは二桁小さい速度でエッチングされる酸化フィルムである。これは、エッチング工程の正確な制御を可能にする。本質的に、ひとたび犠牲酸化層に遭遇すると、エッチング工程は停止する。これは、図1の段階Dに示されている。
【0033】
エッチング(基板をエッチングするために使用される条件下で)に抵抗する任意の酸化フィルムを犠牲フィルムとして使用することができる。例示的な酸化フィルムは、非限定的に、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを含む。酸化膜単独での試験に基づくと、スパッタリングされた酸化物の10nmフィルムがnc-半導体層をエッチング剤から保護するのに十分であると予想された。ただし、そのような膜は、単独では自らを機械的に支持することはできない。しかし、さらなる許容度を組み込むために、実施例で記載するようなすべてのnc-Si膜製造および透過型電子顕微鏡画像化実験に関して20nm犠牲酸化膜が標準となった。
【0034】
酸化フィルムおよび半導体フィルムの被着は、膜厚の制御を可能にする任意の手法を使用して実施することができる。例示的な手法は、非限定的に、無線周波数(「RF」)マグネトロンスパッタリング、低圧化学蒸着(「CVD」)、プラズマ強化CVD、熱化学成長、RFスパッタリング、DCスパッタリング、熱蒸着、電子ビーム蒸着および電気メッキを含む。これらのうち、RFマグネトロンスパッタリングおよび電子ビーム蒸着が好ましい。フィルム被着段階で用いられる条件は、当業者には公知であるように、所望のフィルム組成および厚さに応じて選択することができる。また、被着の際に用いられる条件を被着段階の過程で変更し、それによって、異なる性質を有する成層をフィルム内に達成することもできる。例示的な条件変更は、非限定的に、圧力変更、プラズマ密度変更、プラズマ出力変更、温度変更、ガス組成変更および原料物質変更を含む。
【0035】
二酸化ケイ素および非晶質シリコンフィルムの被着に関して、高品質の角度可変分光楕円偏光計(VASE)および完全水適合性の原子間力顕微鏡(AFM)の使用が、再現性を有する安定なフィルムの特性決定を実施することを可能にした。これは、本明細書で記載する実施例で用いられたRFスパッタリング手法とともに利用される条件の最適化を可能にした。基本的に、SiO2フィルムは、750WのRF出力、15mTorrのチャンバ圧、6.0sccmのアルゴン流量および7.6sccmの酸素流量で確実に調製され、その場合、フィルムは非常に低いrms粗さ(多くて約0.27nm)を示し、フィルム厚は付着時間によって指図された。非晶質シリコンフィルムは、150WのRF出力、15mTorrのチャンバ圧および10.0sccmのアルゴン流量で調製された。酸化フィルムと同様、a-Siの付着厚さは時間の一次関数であることがわかった。他の酸化フィルムおよび他の半導体フィルムの使用は、用いられる特定の設備に合わせて最適化することができる。
【0036】
本明細書では、意図的なレリーフパターンを有しないフィルムを実質的に滑らかまたは局所的に滑らかであるものとして説明する。これらの語はいずれも、約1nm未満、好ましくは約0.5nm未満、もっとも好ましくは約0.4nm、0.3nmまたは0.2nm未満の表面粗さによって示されるフィルム表面の平面的な性質に言及するために使用される。
【0037】
本発明の多孔質ナノスケール半導体膜は、任意の所望のサブミクロン厚で、好ましくは500nm未満の厚さで調製することができる。いくつかの態様では、膜が加圧環境で使用される場合、約100〜約500nmまたは約150〜約400nmまたは約150〜約250nmの多孔質半導体膜が好ましい。他の態様では、膜が低加圧環境または非加圧環境で使用される場合、膜は、約100nm未満、より好ましくは約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満または約60nm未満、さらに好ましくは約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満または約20nm未満であることができる。いくつかの態様では、約2〜約25nmの膜が好ましい。特に好ましいものは、厚さ約10nm未満である膜であり、厚さが約1nm〜約9nm、約2nm〜約8nm、約2nm〜約5nmおよび約6nmおよび約10nmであるものを含む。このような膜の多孔度および孔径は、本明細書中、後で記載する。
【0038】
選択される材料にかかわらず、ひとたびフィルムが形成されたならば、半導体フィルムは、好ましくは、エッチング手法の前にアニールされる。これは、図1の段階Cで示されている。アニールは、状況によっては、特にエッチング工程が限られた量の基板総質量しか除去しない場合には、エッチングの後で実施することができる。換言するならば、エッチングされる基板の結着性がアニール中に変化しない場合、半導体膜(解放された多層フィルム)のアニールは、エッチングの後で実施することができる。エッチングされる基板の結着性がアニール中に変化する場合には、アニールは、膜に加わる緊張を最小限にするために、好ましくはエッチングの前に半導体フィルムに対して実施される。
【0039】
アニール工程は、半導体材料をアニールするための公知の手順を使用して実施することができる。基本的には、このようなアニール工程は、結晶成長を助長するように、半導体の十分な加熱および十分な滞留時間(すなわち、温度および期間)を提供する。好ましくは、アニールは、実質的に均一な結晶成長を達成する様式で実施され、その場合、平均結晶サイズは、ナノメートル範囲、より好ましくは約100nm未満、約90nm未満または約80nm未満のサイズであり、さらに好ましくは約70nm未満または約60nmまたは約50nm未満のサイズであり、もっとも好ましくは約40nm未満、約30nm未満、約20nm未満、約10nm未満または約2nmのサイズである。
【0040】
適当なアニール工程は、非限定的に、炉アニール、急速熱アニール(「RTA」)、レーザアニールおよびそれらの組み合わせを含む。RTAを単独で、または炉アニールと組み合わせて用いて優れた結果が得られている。ドープされていない非晶質シリコンを転換して結晶質(すなわちナノ結晶質)シリコンを形成することに関して、好ましい温度範囲は、約650℃〜約900℃、より好ましくは約715℃〜約800℃であり、好ましいアニール期間は、RTAの場合で約20秒〜約2分であり、炉アニールの場合で約15分〜約2時間である。ドープされたシリコンおよびシリコン合金の場合の条件はわずかに異なる。ゲルマニウムの場合の条件は、RTAおよび炉アニールに同程度の時間を使用した場合で、約450℃〜約900℃、より好ましくは約500℃〜約700℃であろう。アニール温度および期間はまた、膜が形成されるところの基板の選択によっても制限される。温度および期間は、基板の変形を避けるように選択されるべきである。
【0041】
上記のように犠牲酸化フィルム上の基板を選択的にエッチングする任意の適当なエッチング液を用いることができる。選択比における一桁、二桁または三桁の差が適当であるが、好ましいエッチング剤は、シリコン/二酸化ケイ素の間の選択比における約四桁(104)の差を有する。EDPとして知られるこの好ましいエッチング剤は、エチレンジアミン、ピロカテコール、ピラジンおよび水を含有する。このエッチング剤は、SiO2エッチング速度がわずか0.2nm/分であり、対応する(100)シリコンエッチング速度が約1400nm/分である。EDPの他の利点は、クリーンルーム施設において深刻な汚染問題を引き起こす金属イオン(たとえばカリウムまたはナトリウム)を含有しないということであり、このエッチング液はまた、エッチング中に水素気泡を発生させにくく、より滑らかなエッチングフロントを生じさせることが知られている。
【0042】
一つの好ましい形体のEDP溶液は、Transene Company, Inc.(Danvers, MA)からレーベルPSE300F(すなわち「Preferential Silicon Etch 300―Fast」)として市販されている。この溶液は、エチレンジアミン1L、ピロカテコール320g、水320mLおよびピラジン6gを含有する。
【0043】
EDPは、基板を貫通するエッチングに約6時間を要し、EDPは、全6時間にわたりEDPに暴露されたならば前面の薄いスパッタリングフィルムを消滅させたであろうため、ウェーハのフィルム付着側がエッチング剤に暴露されないままにしながら基板の背面(すなわち、マスキングされた側)の浸漬を可能にするエッチングセルを形成した。このため、厚い酸化マスクの必要性を避けることができる。これは、エッチングセル内のウェーハ全体の浸漬のために必要であった。
【0044】
上記のように、エッチング工程は基板の背面(すなわちマスキングされた側)から実施される。この工程は、図1の段階Dに示されている。この工程は、好ましくは、図3に示すタイプのエッチングセル10で実施される。基本的に、ステンレス鋼のシリンダカラー12が、シリンダのベースにある溝に取り付けられたニトリルOリング14を使用して、マスキングされた基板(すなわち、マスキングされたSiウェーハ16)の背面にシールされている。Oリングは、エッチングされるウェーハに対して密なシールを形成することを可能にする。膜が基板から解放されるとき(すなわち、基板のエッチングが完了するとき)、支持ウェーハ18が平面的な支持面を膜に提供する。エッチング液は、たとえば電気抵抗ヒータによってベースプレート20を通して(またはエッチングセルの側壁を通して)加熱されることができ、サーモカップルからのフィードバックによって安定な溶液温度を維持することができる。また、ベースプレートを通して電磁攪拌を加えて、エッチング剤の適切な混合を保証することもできる。セルの頂部に取り付けられた凝縮器(図示せず)を使用して、約6時間のエッチング中の過剰な蒸散を防ぐことができる。このタイプのエッチングセルの使用は、標準的な4インチシリコンウェーハの場合で約250mLのEDPしか要しない。これは、エッチングのたびに新鮮な溶液を使用することを可能にして、再現性を高める。
【0045】
半導体ウェーハの一つの側だけをエッチングするツールを設計する方法がいくつかあるが、上記設計には、エッチング液の使用を非常に効率的にする利点がある。エッチングのたびに使用される250mLは、そのシリコン飽和限界に近く、使用ごとに捨てることができる。他の技術は、ウェーハの一方の側を保護し、それをはるかに多容量のEDP浴に浸漬することを伴うかもしれない。より大きな容量は通常、費用のせいで各エッチング後に処分されることはなく、したがって、連続的な各エッチングは、異なる性質の溶液に遭遇することになる。
【0046】
エッチングののち、エッチングされたピットの範囲にかけて残るすべてが犠牲フィルムで保護された膜である。この膜は、両側で露出しているが、この段階では、非多孔質犠牲フィルムの存在のせいで多孔質ではない。最終段階で、犠牲フィルムを結晶質(ナノ多孔質)半導体ナノスケールフィルムの両側から除去する。犠牲酸化フィルムの除去は、半導体フィルム/膜上の酸化フィルムを選択的にエッチングするエッチング剤を使用して実施される。適当なエッチング剤は、非限定的に、緩衝酸化物エッチング液およびフッ化水素酸エッチング液を含む。例示的な緩衝酸化物エッチング液は、非限定的に、HFを約6〜約25重量%(より好ましくは約6〜約10重量%)含む(BOEはHFおよびフッ化アンモニウムを含有する。濃度は製造業者によって異なる)。例示的なフッ化水素酸溶液は、HFを約5〜約25重量%、より好ましくは約5〜15重量%含む。
【0047】
犠牲酸化フィルムの除去に用いられる条件は、エッチングされる基板を、酸化フィルムを下層の多孔質半導体ナノスケールフィルムから実質的に除去するのに十分な期間、適切なエッチング液に浸漬することを含む。20nm酸化フィルムの場合に典型的な時間は、約22℃の酸化膜エッチング剤温度で、約10秒〜約8分を含む。
【0048】
犠牲酸化フィルムを除去すると、得られる多孔質ナノスケール膜は、その両側が露出する。個々の膜は、利用されるマスキングパターン(上記)を付された、より大きなウェーハから除去することができる。あるいはまた、複数の膜が上に形成された状態でウェーハを丸ごと維持することもできる。
【0049】
多孔質ナノスケール膜は上記範囲の厚さを有する。用いられるアニール条件に依存して、多孔度および平均孔径(最大孔径を含む)を制御することができる。一例として、直径約50nm未満の平均孔径を有する膜を調製することができる。より具体的には、膜は、平均孔径を約25〜約50nm、約20〜約25nm、約15〜約20nm、約10〜約15nmおよび約2〜約10nmの範囲内に合わせるように調製することができる。106〜1012cm-2の孔密度を得ることができる。
【0050】
形成したままの孔のサイズを別の材料の充填によってゆっくりと減らすことにより、孔径分布に対するさらなる制御を達成することができる。たとえば、非晶質シリコンを付着させるためのRFマグネトロンスパッタリング工程をナノ多孔質膜に適用することもできる。約1nmの非晶質シリコンの付着が平均孔径を最大2nm減らすことができる。この後続の付着を入念に制御することにより、直接的に形成することができるものよりもはるかに小さい孔径分布を達成することができる。
【0051】
膜はまた、半導体膜に関して従来は得られなかった大きな表面積を特徴とする。特に、約10mm2までの表面積が得られた。加えて、横方向長さ:厚さのアスペクト比が10,000:1よりも大きい膜が得られた。特定の態様では、50,000:1、100,000:1および430,000:1よりも大きいアスペクト比が得られた。フィルムおよび製造手順の安定性が加わるならば、1,000,000:1までのアスペクト比を達成することができると予想される。
【0052】
一つの態様では、ナノスケール膜は、半導体材料で形成され、膜の一方の側を少なくとも部分に覆う金属コーティングをさらに含む。金属は、DCもしくRFスパッタリング、熱蒸着、電子ビーム蒸着、電気メッキまたは湿式化学析出を使用して膜に部分的にコーティングすることができる。適当な金属は、非限定的に、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、チタン、タングステン、鉛、スズ、パラジウムおよびこれらの金属の合金を含む。
【0053】
上記のように、本発明の超薄多孔質ナノスケール膜は、流体中に連行された任意の物質(粒状物または溶解固体)を濾過するためのフィルタ装置を形成するために使用することができる。本発明のフィルタ装置は、そのもっとも簡単な形態で、少なくとも一つの多孔質ナノスケール膜を含む。
【0054】
したがって、ナノスケール生成物の濾過は、そのもっとも簡単な形態で、濾過される一つまたは複数の生成物を含有する流体を膜に通すことにより実施することができ、それによって最大孔径よりも大きな物体が膜の孔を通過することを効果的に妨げることができる。
【0055】
濾過に付すことができる流体は、任意の気体または水溶液をはじめとする液体であることができる。一つの態様によると、濾過される流体は生物学的流体である。例示的な生物学的流体は、非限定的に、唾液、血液、血清、脳脊髄液、粘膜分泌物、尿および精液を含む。
【0056】
濾過される生成物または物質は、非限定的に、タンパク質、ウィルス、細菌、コロイドナノ粒子、有機分子系、無機ナノ粒子、溶解イオン、薬物、染料、糖、水性塩、金属、半導体粒子および薬学的化合物を含むことができる。濾過される材料はまた、荷電種(負または正荷電)であることもできる。
【0057】
一つの態様にしたがって、フィルタ装置はさらに、両面の間に延びる流路を含む支持体を含み、少なくとも一つのナノスケール膜が、流路に向き合う状態で支持体に結合されている。支持体は、膜が取り付けられるところのエッチングされていない半導体支持体であることができる。あるいはまた、たとえばエッチングされたウェーハから一つまたは複数の膜が除去されるならば、膜およびそれに伴う支持体は、膜を通過することができる流体から物質を濾過するための膜を一つまたは複数の流路中に提供する装置に埋め込むこともできる。
【0058】
このような装置の例が図4A-Bに示されている。このタイプの装置は、アダプタ30、40(入口Iおよび出口Oを有し、支持体および膜35、45がアダプタ上に配置または固着されて、支持体を通過する流路が入口および出口と流体連通するようになっている)の形態にあることができ、アダプタは、既存の濾過設備に設置するために設計されている。マイクロ流体流動装置、透析機または燃料電池が本発明のフィルタ装置を含むことができる。
【0059】
マイクロ流体流動装置に関して、半導体膜の透過性をアクティブに制御する能力は、タンパク質精製および分析のための動的なマイクロ流体工学的装置の構築を可能にする。これらの用途のうち、タンパク質を分析チャンバに放出する前にタンパク質を濃縮する不能なマイクロクロマトグラフィーシステムおよびマイクロ流体工学的システムを利用することができる。
【0060】
一つの態様では、フィルタ装置は、異なる最大孔径を有する二つ以上のナノスケール膜を含み、その二つ以上のナノスケール膜が、流体流動方向に関して、より小さい最大孔径を有する膜がより大きい最大孔径を有する膜の下流にある状態で直列に配置されている。あるいはまた、フィルタ装置は、上記のように直列に配置された三つ以上のナノスケール膜を含む。濾過される物質に依存して、任意の数の膜を使用して連続濾過をこの方法で提供することができる。このタイプの連続フィルタが図5に示されている。
【0061】
本明細書で提示する結果は、既存の市販フィルタよりも高速の濾過および良好なサイズ選択性を実証し、マイクロ流体工学的システムへの膜の簡単な統合により、連続濾過装置は、血中タンパク質、またはタンパク質および他の化合物の混合集合を含有する他の流体の速やかな分画およびアッセイを可能にする。このような装置は、臨床血液ラボで現在使用されている費用と時間のかかる電気泳動アッセイ(Williams et al., Biochemistry in Clinical Practice, Elsevier, NewYork (1985)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に取って代わることができ、高速アッセイは、指を一刺しした分の血液(20uL)を要するだけである。
【0062】
オン/オフ切り替えによって孔径を動的に調節する、または特定種に対する透過性を制御する能力は、ラボ・オン・チップ用途ではじめにタンパク質を濃縮し、次いでそれを反応チャンバまたはセンサ中に放出するマイクロ流体工学的装置の製造を可能にする。調節可能なpnc-Si膜の対が、オンチップ精製システム中のタンパク質単離チャンバの入口および出口壁を画定することができ、孔径が電圧設定によってチューニング可能であるため、同じシステムを使用してカクテルから異なるタンパク質を精製することができる。さらに、二つより多くのこのような膜を直列に組み合わせると、タンパク質カクテルをユーザ定義の様式で分画するための調節可能なマイクロ流体工学的クロマトグラフィーシステムを構築することができる(図5)。
【0063】
pnc-Si膜を用いたこの研究は、サイズベースの分子分離のための超薄平面型ナノ膜の第一の使用を表す。まず、血清分子、アルブミンおよびIgGの分離は、マイクロ流体工学的血液分析装置または抗体精製システムとのpnc-Si膜の統合を示唆する。実際には、いくつかの膜を直列に配設して、複雑なタンパク質混合物を分画するマイクロ流体工学的システムを開発することができる。もっとも有意なことは、pnc-Si膜を用いて達成される輸送速度の改善である。拡散計測は、Alexa染料の場合で毎時156nmol/cm2の輸送率を記録した。この速度は、同程度のサイズの分子に関して流路タイプ膜の場合で報告された速度(Yamaguchi et al., 「Self-Assembly of a Silica-Surfactant Nanocomposite In a Porous Alumina Membrane」, Nature Materials 3:337-341 (2004)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を一桁超上回り、50 kDカットオフセルロース透析膜による計測値(実施例5に記載)の9倍超の速さである。多孔質ナノ結晶質半導体ベースのプラットフォームは、膜の大規模生産、マイクロ流体工学的装置への簡単な統合、十分に確立されたシラン化学を使用する表面改質および無機フィルムの真空付着による孔径減少(Tong et al., 「Silicon Nitride Nanosieve Membrane」, Nano Letters 4:283-287 (2004)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)をはじめとして、商業的展開のためのいくつかの道筋を開拓する。重要なことに、これらの超薄膜の実証された機械的強度は、大規模透析システムの構築を可能にし、マクロおよびミクロ規模での加圧濾過装置における超薄膜の使用を促進するであろう。
【0064】
図6に示すさらなる態様では、フィルタ装置は、実質的に平行に配置された第一および第二の導管を含み、少なくとも一つのナノスケール膜が第一の導管と第二の導管との間に配置されている。これは、溶解物質およびおそらくは流体が、少なくとも一つのナノスケール膜の孔径によって制限されながら、第一の導管と第二の導管との間を通過することを可能にする。第一および第二の導管の流体流動方向は、同方向であることもできるし、反対方向であることもできる。
【0065】
もう一つの態様では、フィルタ装置は、少なくとも一つのナノスケール膜に結合またはそれに隣接して配置された電極を含む。このタイプのフィルタ装置はゲート式膜として使用することができる。装置は、ナノスケール膜の一方の側に配置された第一の電極およびナノスケール膜の対側に配置された第二の電極、ならびに場合によっては膜そのもの(上記のように金属接点を上に有する)に結合された第三の電極を含むことができる。この態様は図7に示されている。ナノスケール膜をはさんで電解液が導入されると、第一および第二の電極は電解液に電圧を印加することができる。第三の電極は、膜そのものを荷電するために使用することができる。このタイプのフィルタ装置の使用時には、膜をはさんで電圧差を印加することによって荷電種を濾過することができる。
【0066】
ゲート式膜は、三つの輸送機構、すなわちフィックの拡散、イオン移動および電気浸透のいずれか一つによって種を分けることができる。各電気切り替え手法は、ナノスケール孔を透過する分子輸送に対する電気化学的二重層(荷電面の近くで溶液中に形成された空間電荷領域)の影響に頼る。孔径が二重層の厚さに近づき、孔容積の実質的画分が空間電荷領域によって埋められるため、その影響を使用して輸送をアクティブに制御することができる。二重層の厚さは、デバイ長κ-1=(3.29zC1/2)-1(式中、κ-1はnm単位であり、Cは電解質のモル濃度である)によって近似される(Kuo et al., 「Molecular Transport Through Nanoporous Membranes」, Langmuir 17:6298-6303 (2001)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。したがって、二重層の厚さは、0.1mM〜100mMイオン濃度の水溶液中では約30nm〜約1nmで変動する。二重層内の電界の極性および大きさは、孔壁における表面電荷密度、表面化学の関数および溶液pHによって決まる。
【0067】
Martinおよび共同研究者らは、市販のトラックエッチングされたポリカーボネート多孔質膜を正確な厚さの金でコーティングする方法を開発した(Martin et al., 「Controlling Ion-Transport Selectivity in Gold Nanotubule Membranes」, Adv. Mater. 13:1351-1362 (2001)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。トラックエッチングされたフィルタは、厚さ10ミクロンの膜を完全に通過して延びるまっすぐな円柱形の孔の単分散的分布を特徴とする。孔壁に対する金付着が孔径を約30nmから約3nmまで減らして、二重層の影響を増強し、高導電性膜材料を形成する。そして、図7に示すような配置で、この膜に電圧を印加して、その電位を溶液AおよびBに対して上昇(低下)させることができる。これが、二重層の電界強度を摂動させる膜内の電子密度の減少(増大)を生じさせ、それにより、膜透過性を調節する。他の膜構成で、荷電イオンの拡散速度における明確なシフトが示されている。
【0068】
Kuoらは、孔径15nmの同様なポリカーボネートのトラックエッチングされた膜を使用して、それに電圧を印加した際の種の注入を実証した(Kuo et al., 「Molecular Transport through Nanoporous Membranes」, Langmuir 17:6298-6303 (2001)。、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。これらの膜における細長い孔は、二重層内の負の対イオンを引き寄せる正味の正表面電荷を孔壁上に有する傾向を示す。図7の配置で溶液Aと溶液Bとの間に電圧が印加されると電気浸透流が起こり、孔または流路の長手に沿って可動性対イオンの流れを誘発する。二重層がチャンバ容積のより多くを占めるにつれ、この効果はより強くなり、この充填は、溶液のイオン強度を変化させることによって調節することができる。溶液Aと溶液Bとの間の流れは、ナノ多孔質膜をはさんで比較的高い電圧を印加することにより、増大または完全に停止させることができる。
【0069】
Schmuhlらは、シリコンマイクロエレクトロニクスプラットフォーム上に統合することができる新規な膜材料を開発した(Schmuhl et al., 「SI-Compatible Ion Selective Oxide Interconnects With High Tunability」, Adv. Mater. 16:900-904 (2004)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。Schmuhlらは、多孔質シリカで充填されて約3nmの有効孔径を達成した直径1.2ミクロンの孔を有する厚さ1ミクロンの窒化ケイ素膜を使用して、溶液Aと溶液Bとの間の膜をはさんで電圧を印加することによってカチオンおよびアニオンの流れにおける切り替え動が達成されることを実証した。切り替えはかなり低い2Vで起こり、ゼロ電圧で明確な「オフ」状態がある。切り替え配置は、電気浸透切り替えに使用される配置に似ているが、Schmuhlは、この効果が印加電界内のイオンの直接的な流れ(電気泳動)によって支配されることを実証した。このようにして、適切な電圧を印加することにより、正または負電荷を膜をはさんで選択的にポンピングすることができる。この場合もまた、二重層がナノスケール多孔容積の大部分またはすべてを占めるため、この選択性が可能である。すべての切り替え手法が本発明のナノスケール多孔質膜を使用して複製可能であるはずであるが、拡散速度が高められるはずである。
【0070】
本発明の金属ナノスケール膜、好ましくは、白金、パラジウムまたはパラジウム合金で形成されたものは、たとえば、いずれも参照によりその全体が本明細書に組み入れられるEdlundらへの米国特許第6,319,306号および第6,221,117号に記載されているタイプの燃料電池で使用することができる。この態様では、ナノスケール膜は、水素のような正荷電種を選択的に通す。
【0071】
本発明のフィルタ装置はさらに、一つまたは複数の捕獲分子を膜の一方または両方の面の孔の中に含むことができる。捕獲分子は、抗体、核酸(RNAまたはDNA)、ポリペプチド、標的分子に対して特異的または非特異的な親和性を有する分子プローブおよびそれらの組み合わせの群より選択される。
【0072】
本発明のフィルタ装置はまた、孔の中で膜につながれた一つまたは複数の非結合性、スクリーニング性または反発性の分子を含むことができる。非結合性、スクリーニング性または反発性の分子は、非限定的に、Teflon、ポリエチレングリコールおよび他の有機分子を含むことができる。
【0073】
膜の表面または孔の中でつながれた分子のタイプにかかわらず、標準的なガラスカップリング化学を使用することができる。基本的に、膜を形成する半導体材料は、薄い酸化物コーティングをその上に備えている。この工程は、空気中で自然に起こることができ、わずかに高められた温度および湿度環境で促進することができ、サンプルを低温(20〜30℃)〜中温(100〜400℃)の酸素プラズマに暴露することによって達成することができる。次に、多様なカップリング手法のいずれかを使用して、つなぎとめる分子を結合させることができる。
【0074】
一つまたは複数の捕獲分子または一つまたは複数の非結合性、スクリーニングまたは反発性の分子を付けるために利用可能な手法は、非限定的に、一つまたは複数の分子を半導体膜の表面に共有結合させる手法、一つまたは複数の分子を半導体膜の表面とイオン会合させる手法、一つまたは複数の分子を半導体膜の表面に吸着させる手法などを含む。このような会合はまた、一つまたは複数の分子を(カップリング剤の)別の部分に共有結合または非共有結合させることを含むことができ、その部分が他方で半導体膜の表面に共有結合または非共有結合する。
【0075】
基本的に、まず、半導体材料の酸化および加水分解面を、その表面に付けられるカップリング剤で官能化(すなわち下塗り)する。これは、カップリング剤前駆体を提供したのち、そのカップリング剤前駆体を半導体膜の表面に共有結合または非共有結合させることによって達成される。ひとたび半導体表面が下塗りされると、結合させる一つまたは複数の分子を、(i)カップリング剤に共有結合または非共有結合させる、または(ii)カップリング剤を置換して一つまたは複数の分子が、酸化した半導体表面に直接共有結合または非共有結合させるのに有効な条件下、下塗り済み半導体表面に暴露する。半導体膜への一つまたは複数の分子の結合は、一つまたは複数の分子が、濾過される種と相互作用(たとえば結合、反発など)可能なままでいることを可能にするのに有効な条件下で実施される。
【0076】
適当なカップリング剤前駆体は、非限定的に、エポキシド基、チオール、アルデヒド、NHSエステルまたはアルケニルで官能化されたシラン類、およびハロゲン化物含有化合物を含む。
【0077】
シラン類は、半導体構造の表面に結合する第一の部分およびつながれる分子に結合する第二の部分を含む。好ましいシラン類は、非限定的に、C1-6アルコキシ基を有する3-グリシドキシプロピルトリアルコシシラン、C2-12アルキル基およびC1-6アルコキシ基を有するトリアルコキシ(オキシラニルアルキル)シラン、C1-6アルコキシ基を有する2-(1,2-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、C1-6アルコキシ基を有する3-ブテニルトリアルコキシシラン、C2-12アルケニル基およびC1-6アルコキシ基を有するアルケニルトリアルコキシシラン、C2-12アルキル基を有するトリス[(1-メチルエテニル)オキシ]3-オキシラニルアルキルシラン、C1-6アルコキシ基を有する[5-(3,3-ジメチルオキシラニル)-3-メチル-2-ペンテニル]トリアルコキシシラン、(2,3-オキシランジイルジ-2,1-エタンジイル)ビス-トリエトキシシラン、C1-6アルコキシ基およびC2-12アルキル基を有するトリアルコキシ[2-(3-メチルオキシラニル)アルキル]シラン、トリメトキシ[2-[3-(17,17,17-トリフルオロヘプタデシル)オキシラニル]エチル]シラン、トリブトキシ[3-[3-(クロロメチル)オキシラニル]-2-メチルプロピル]シランおよびそれらの組み合わせを含む。シラン類は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT公開公報WO/2002/068957の図9Aに示すシラン化反応スキームにしたがって半導体膜に結合させることができる。
【0078】
ハロゲン化物もまた、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT公開公報WO/2002/068957の図9Bに示す反応スキームにしたがって半導体膜に結合させることができる。
【0079】
その後、一つまたは複数の分子によって提供される官能価のタイプにしたがって一つまたは複数の分子を半導体膜に結合させる。通常、一つまたは複数の分子は、水性条件または水性/アルコール条件中、カップリング剤に付くか、カップリング剤を置換して半導体膜に付く。
【0080】
参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT公開公報WO/2002/068957の図10Aに示す反応スキームにしたがってエポキシド官能基を開裂させて、アミノ基を結合させることができる。また、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT公開公報WO/2002/068957の図10B-Cそれぞれに示す反応スキームにしたがってエポキシド官能基を開裂させて、チオール基またはアルコールを結合させることができる。
【0081】
参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT公開公報WO/2002/068957の図10Dに示す反応スキームにしたがってアルケニル官能基を反応させて、アルケニル基を結合させることができる。
【0082】
ハロゲン化物カップリング剤が用いられる場合、ハロゲン化物カップリング剤は通常、下塗り済みの半導体膜を、半導体結合基としてアルコール基を含有する一つまたは複数の分子(上記のとおり)に暴露したときに置換される。置換は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT公開公報WO/2002/068957の図10Eに示す反応スキームにしたがって実施することができる。
【0083】
一つまたは複数の捕獲分子が二つ以上の標的結合基を含有する場合、その標的結合基はまた、半導体膜の下塗り面と相互作用し、それに結合しうる。これが起こることを防ぐため、下塗り済みの多孔質半導体膜をブロッキング剤に暴露することもできる。ブロッキング剤は本質的に、一つまたは複数の捕獲分子が半導体膜の表面に付くことができる部位の数を最小限にする。ブロッキング剤への暴露は、半導体膜の下塗り面を捕獲分子に暴露する前に実施することもできるし、それと同時に実施することもできる。ブロッキング剤は、標的結合基を有しないということを除き、捕獲分子に構造的に類似したものであることもできるし、簡単なエンドキャップ剤であることもできる。一例として、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT公開公報WO/2002/068957の図10Aに示すように、アミノ酸アルキルエステル(たとえばグリシンメチルエステル、グリシンエチルエステル、3-アラニンメチルエステルなど)ブロック剤をエポキシド官能化半導体構造面に導入することができる。ただし、この場合は、グリシンのアミノ基がエポキシド環を開裂させ、カップリング剤に共有結合する。
【0084】
本発明のもう一つの局面は、生物学的反応を実施するための装置に関する。装置は、一つまたは複数のウェルを含む基板であって、各ウェルが底および一つまたは複数の側壁を有し、底が本発明の多孔質ナノスケール膜を含むものである基板を含む。このような装置の一つの態様が図8A-Bに示されている。装置はまた、一つまたは複数のウェル中の生物学的反応媒体ならびに化合物および有機体の群より個々に選択される二つ以上の反応物を含む。各ウェルが別個のナノスケール膜でできた底を有することもできるし、すべてのウェルが同じ多孔質ナノスケール膜を備えることもできる。
【0085】
適当な化合物は、非限定的に、タンパク質、コロイドナノ粒子、有機分子系、無機ナノ粒子、溶解イオン、薬物、糖(糖類または多糖類)、水性塩、金属、半導体、薬学的化合物、核酸、酵素、脂質、炭水化物およびポリペプチドを含むことができる。
【0086】
適当な有機体は、非限定的に、細胞株、初代単離細胞もしくは細胞の混合集合、一つまたは複数の細菌、ウイルス、プロトプラスト、真菌、寄生生物およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0087】
一つの態様で、膜は、細胞表面受容体、抗体、配位子、生物学的試薬またはそれらの組み合わせを膜の一方の側もしくは両側または膜の孔の中に含む。
【0088】
使用の際、このタイプの装置は、一つまたは複数のウェル中で生物学的反応を実施するために使用することができる。生物学的反応は、起こるならば、検出または計測(すなわち定量)することができる最終生成物を形成する。消費済み生物学的反応媒体を一つまたは複数のウェルからナノスケール膜に通すことにより、最終生成物は、ナノスケール膜を透過するか、一つまたは複数のウェル中で保持されるかのいずれかである。ウェル中(保持液)または濾液中のその存在は、イムノアッセイまたは核酸検出アッセイによって検出することができる。例示的なイムノアッセイは、非限定的に、ELISA、ラジオイムノアッセイ、ゲル拡散沈殿反応アッセイ、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、蛍光イムノアッセイ、タンパク質Aイムノアッセイおよび免疫電気泳動アッセイを含む。例示的な核酸検出アッセイは、非限定的に、ポリメラーゼ連鎖反応、ノーザンブロット法、サザンブロット法、リガーゼ検出反応およびLAMP検出アッセイを含む。変色性染料などを使用する他の検出手順を同様に用いることができる。
【0089】
この生物学的反応の一つの態様は、細胞に対するその活性に関して薬剤をスクリーニングする方法に関する。この方法は、細胞を含む生物学的反応媒体に薬剤を導入し、次に細胞または最終生成物を分析して、細胞に対する薬剤の活性を特定することを含む。上記で用いた同じ検出手法を利用して細胞応答(すなわち、受容体もしくは細胞タンパク質または他の二次的メッセンジャのアップレギュレーション)を検出することもできるし、細胞の直接検査を実施することもできる。標的細胞応答のためのアッセイを本明細書に記載するバイオアッセイおよび濾過手順と統合することができる。
【0090】
実施例
以下の実施例は、本発明の態様を例示するために提供するものであるが、決してその範囲を限定することを意図したものではない。
【0091】
実施例1
ナノ結晶質シリコン膜の形成
【0092】
図1で概説する手順によってpnc-Si膜を製造した。まず、シリコンウェーハを半導体管炉に入れて酸素および蒸気の環境中1000℃で2時間おくことにより、厚さ500nmのSiO2層をシリコンウェーハの両側に成長させた。ウェーハの背面で、標準的なフォトリソグラフィー技術を使用してSiO2をパターン付けして、膜形成工程のためのエッチングマスクを形成した。各膜のためのエッチングマスクは、正方形の境界内の中央に配置された正方形の開口を含むものであった(1個のシリコンウェーハ上に120個までのマスクを形成した)。次いで、EDPエッチングに使用されるものに類似したエッチングセル内で表面を4:1BOEに10分間暴露することによって前面酸化層を除去し、高品質3層フィルムスタック(20nm SiO2/15nm非晶質シリコン/20nm SiO2)を前面にRFマグネトロンスパッタリング付着させた。Ar中、15mTorrのチャンバ圧で0.4W/cm2の標的出力密度を用いてa-Si層をスパッタリングして、3.4nm/分の付着速度を得た。SiO2層をシリコン標的から15mTorrのチャンバ圧で(3:4)Ar:O2ガス流量比および1.8W/cm2の標的出力密度を用いて反応性スパッタリングして、10.7nm/分の付着速度を得た。この付着法は十分に特性決定され、+/−1%の厚さ精度および0.5nm未満の表面粗さでフィルムを付着させることができる。
【0093】
十分に画定されたサイズを有する高品質ナノ結晶を形成する非常に薄い非晶質シリコンフィルムの結晶化は以前にも実証されている(Grom et al., 「Ordering and Self-Organization In Nanocrystalline Silicon」, Nature 407:358-361 (2000)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。pnc-Si膜を形成するため、基板を、高速熱処理チャンバ中で短時間、高温に暴露して(715℃〜770℃で30秒)非晶質シリコンをナノ結晶質フィルムに結晶化させた。次いで、パターン付けされた背面を高選択性シリコンエッチング剤EDP(Reisman et al., 「The Controlled Etching of Silicon In Catalyzed Ethylenediamine-Pyrocatechol-Water Solutions」, J. Electrochem. Soc. 126:1406-1415 (1979)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に暴露すると、このエッチング剤がシリコンウェーハを(111)結晶面に沿って前面フィルムスタックの底二酸化ケイ素層に達するまで除去した。
【0094】
パターン付けされたウェーハのマスキングされた背面を50:1(フッ化水素酸:水)溶液に2分間暴露することによってエッチング手順を開始して、非保護区域の自然酸化物を除去した。次いで、EDP250mLをパイレックス(pyrex)ビーカ中で80℃に加熱し、その間、ウェーハをエッチングセルに取り付けた。この予熱は、温度設定点までの上昇勾配中に温度が設定値を超えることを防ぐために実施した。次いで、予熱したEDPをエッチングセル(図3を参照)に注加し、溶液を攪拌しながら105℃に加熱した。温度が105℃で安定したのち、系は、エッチング期間中、一定の平衡状態のままであった。このような条件の下、約1.4μm/分のエッチング速度が得られ、500μmのエッチングを約6時間で完了した。
【0095】
エッチングが完了したのち、EDPをセルから取り出し、ウェーハを脱イオン水で入念にすすいだ。3層膜を15:1緩衝酸化物エッチング剤(BOE)に22℃で60秒間暴露して保護酸化層を除去して、浮遊状態で掛け渡された超薄pnc-Si膜だけを残した。通常、エタノールまたはペンタン中での最後のすすぎを使用して膜を乾燥させる際の表面張力を減少させた。
【0096】
この工程を使用して、薄いもので3nm、厚いもので500nmの正方形膜、および小さいもので10μm×10μm、大きいもので3mm×3mmの正方形膜を製造した。また、このエッチングを使用して、製造工程が完了したのちウェーハから容易に取り出し、分子分離実験のために個々に使用することができる約120個のサンプル(3.5mm×3.5mm)を画定した。
【0097】
実施例2
さらなるナノ結晶質シリコン膜の形成
実施例1に記載した手順を使用し、スパッタ付着法を使用して20nmのSiO2層2枚の間に挟まれた7nmのa-Si層を形成したのち、シリコンを950℃で30秒間アニールしてnc-Si層を形成した。解放後、他の酸化膜に類似したしわのある膜が形成された(図10A)。しかし、犠牲SiO2の除去ののち、緩衝酸化物エッチング(BOE)に25秒間浸漬すると、きわめて平坦な7nmのne-Si膜が製造された(図10B-Cを参照)。圧縮応力から引張り応力へのこのような劇的なシフトは予想外であったが、a-Siが結晶化するときに起こる体積収縮を示すものである(Miura et al., Appl. Phys. Lett. 60:2746 (1992)、Zacharias et al., Journal of Non-Crystalline Solids 227-230:1132 (1998)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。酸化物はアニール後も圧縮応力を受けたままであり、a-Siよりもはるかに厚いため、全体的なフィルム応力は初期のしわのあるフィルムでは圧縮性である。しかし、酸化膜が除去されたのち、nc-Si層は引張り状態に自由に戻ることができる。また、この2段階膜解放工程は非常にロバストであり、初期の7nm工程試験で80%を超える収率を得る。図10Dは、フィルム厚と同程度の寸法の結晶を示す7nmのnc-Si膜の暗視野TEM画像であり、以前の報告(Tsybeskov et al., Mat. Sci. Eng. B 69:303 (2000)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を確認するものである。この工程の物理的限界を試験するため、図10Eにおける3nmのシリコン膜を、100,000:1を超える幅:厚さアスペクト比で製造した。これがこれまで報告されている最薄の高アスペクト比膜であり、単一面エッチング(「SSE」)工程の能力を明確に実証すると考えられる。さらに薄い膜を形成することが可能であり、限界は未だ達成されていない。
【0098】
これらの膜構造の電子透過性を試験するため、90nmのラテックス球体を、7nm酸化膜を有する3層サンドイッチサンプルのいくつかに付着させた。図11A-Bで見てとれるように、膜は非常に透明であり、ラテックスは容易に画像化され、微細構造がはっきりと認められる。注意深く検査すると、いくつかのシリコンナノ結晶がバックグラウンドテキスチャ中に認められる。
【0099】
図12A-Bでは、約750℃で60秒間RTAのみを受けた20nmのnc-Si層に関する明視野TEM画像と暗視野TEM画像との比較が行われている。明視野モードは、透過型で作動する光学顕微鏡に直接的に類似している。コントラストは主にサンプル中の密度ばらつきによって得られる。この特定の画像では、粒状構造が明確に見てとれるが、結晶化の程度は容易には判定できない。暗視野画像は、結晶質材料から回折した電子のみによって形成される。したがって、画像中に明るいスポットがあるならばそれはナノ結晶である。しかし、すべての結晶が回折を支持するのに適切な配向にあるわけではなく、したがって、観察されるナノ結晶は、全体の小さな一部であると推定される。
【0100】
ナノ結晶の横方向サイズにおけるa-Si層の厚さの影響を決定するため、実質的に異なる厚さを有するフィルムどうしで比較を実施した。薄い層の場合、ナノ結晶は、球形であると予想され、より厚いフィルムの場合、かなり大きめ煉瓦形状が一般的に認められていた。図13A-Cの画像は、これら従来の観察結果とは合致せず、驚くことに、この厚さ範囲のフィルムの場合には明確なサイズ依存性が存在しないということを示すように思われる。ただし、ナノ結晶空気密度は厚さの増大とともに増大するように見える。すべての画像は同じ倍率で撮影され、直接比較しうるものであった。なぜ本nc-Si材料が過去に観察されたときと同じように結晶化しないのかは不明である。この結果は驚くべきことであり、この材料系のフィルム構造を特性決定する際の平面図TEM研究の潜在的重要性を例示する。
【0101】
高屈折率a-Siスパッタリング条件で付着された厚さ7nmのnc-Si層2枚の画像が図14A-Bに示されている。一方のフィルムは750℃で60秒間のRTAのみで処理したものであり(14A)、他方は、750℃で60秒間のRTAおよび1050℃で10分間の炉アニールで処理したものである(14B)。アニールはすべて窒素環境で実施した。両画像は暗視野であり、同じ倍率で撮影した。先のTEM画像と同様、実質的な数の明るいナノ結晶が認められるが、また、他のサンプルでは認められなかった黒いスポットが両画像中に見られる。これらのスポットは実はフィルム内の穴である。暗視野では、正しく配列した結晶だけが明るく見えるが、非晶質で誤配列の結晶質材料は、電子ビームを散乱させ、非常に弱いバックグラウンド照明を生じさせる。画像中の暗いスポットはこのバックグラウンドの不在であり、材料が存在しないことを示す。この解釈は、同様な明視野画像とも合致する。また、これらの画像から、左の画像では穴密度がはるかに高いため、長めの炉アニールがこれらの形体の形成を促進するということが明らかであり、フィルムそのものにおけるボイドによるものであるか、バリヤ酸化膜がエッチングで除去されたとき除去される、アニール工程中に形成された酸化膜の領域である。後に、これらの穴が実際には膜を貫通して延びる孔であるということが試験によってわかった。
【0102】
実施例3
多孔質ナノ結晶質シリコン膜の物性
TEMに加えて、他にもいくつかの特性決定技術を使用して本発明のpnc-Si膜の性質を確認した。図9Aは、厚さ15nmのシリコンフィルムに関して、付着後(a-Si)および結晶化後(pnc-Si)に分光偏光解析法を使用して得られた屈折率分散データを示す(Tompkins et al., 「Spectroscopic Ellipsometry and Reflectometry―A User's Guide」, Wiley & Sons, Inc., New York, (1999)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。スパッタリングされたa-Siは、化学蒸着法(CVD)で付着されたマイクロエレクトロニクス品質のa-Siに匹敵しうる高い光学密度を有し、結晶化後に光学的性質における明らかなシフトを示し、その特徴的な共振ピークは結晶質シリコンのそれに似ている(Palik, E. D. 「Handbook of Optical Constants of Solids」, (Academic Press, Orlando) pp. 547-569 (1985)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。このデータは、滑らかな界面を有する高純度シリコンフィルムを示す。また、付着されたa-SiのTEM画像は区別しうるボイドまたは結晶質形体を示さないということが注目されるべきである。分光偏光解析データの精度を確認するため、いくつかの膜を研磨済みの石英に移し、原子間力顕微鏡法(AFM)を使用して膜エッジの段階高さを計測して、サンプル膜の15nm厚さおよびその非常に滑らかな表面を確認した。
【0103】
pnc-Si膜のもう一つの重要な特徴は、その顕著な機械的安定性である。カスタムホルダを使用して膜の一方の側に圧力を加え、その間に光学顕微鏡を使用して変形を観察することにより、膜を機械的に試験した。図9C-Dは、膜をはさんで1気圧の圧力差(15PSIが使用した実験器具の限界である)を約5分間加えた場合の200μm×200μm×15nmの膜の光学顕微鏡写真を示す。膜は、圧力差なしではきわめて平坦であり(図9C)、最大圧(図9D)では膜は弾性変形するが、試験期間中はその構造結着性を維持する。薄いポリマー膜(Jiang et al., 「Freely Suspended Nanocomposite Membranes As Highly Sensitive Sensors」, Nature Materials 3:721-728 (2004)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)とは違い、pnc-Si膜は、弾性変形を示さず、圧が解除されるとすぐその平坦な状態に戻る。加圧試験を3回繰り返したが、認められる膜の劣化は見られなかった。これらの膜によって示された顕著な強度および耐久性は、その滑らかな表面(Tong et al., 「Silicon Nitride Nanosieve Membrane」, Nano Letters 4:283-287 (2004)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)ならびに亀裂の形成および伝播を阻止するランダムなナノ結晶配向のおかげである可能性が高い。
【0104】
実施例4
多孔質ナノ結晶質シリコン膜における孔径分布
また、結晶化時の急速熱アニール温度の調節によってpnc-Si膜内の孔径分布を制御することができることがわかった。ナノ結晶核生成および成長は、a-Si中で約700℃のしきい結晶化温度を超える強い温度依存性(Zacharias et al., 「Thermal Crystallization of Amorphous Si/SiO2 Superlattices」, Appl. Phys. Lett. 74:2614-2616 (1999)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を示すアレニウス様プロセス(Spinella et al., 「Crystal Grain Nucleation In Amorphous Silicon」, J. Appl. Phys. 84:5383-5414 (1998)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)である。既存の結晶化モデル(Zacharias et al., 「Confinement Effects In Crystallization and Er Doping of Si Nanostructures」, Physica E. 11:245-251 (2001)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)は、ボイド形成を予測することはできず、体積収縮および材料ひずみがどのように超薄膜における孔形成につながるのかを説明するためには拡張されなければならない。
【0105】
孔径チューニング性を実証するために、厚さ15nmのpnc-Si膜を有するウェーハ3枚を、先に記載した方法にしたがって、アニール温度を除いては全く同じ様式で処理した。図15A-Cに示すこれらの膜のTEM画像は、715℃、729℃および753℃でアニールされたサンプルがそれぞれ7.3nm、13.9nmおよび21.3nmの平均孔径を有する場合、孔径および密度が温度とともに単調に増大することを明らかにした。700℃でアニールされたサンプルは結晶性またはボイドを示さず、結晶化の開始点近くで温度に対する強い形態学的依存性を示した。この範囲の孔径のチューニング性が、pnc-Si膜を、タンパク質およびDNAのような大きな生体分子のサイズ選択的分離にとって特に適したものにする。これらの膜を通しての分子輸送の説明のためには孔面積が主要な尺度であるため、孔径ごとに利用可能な全孔面積を特定するヒストグラムが図15A-Cに示されている。孔径データは、Scion画像処理ソフトウェア(Scion Corporation, Frederick, MD)を使用してTEM画像から直接抽出した。
【0106】
実施例5
多孔質ナノ結晶質シリコン膜を使用するタンパク質分離
pnc-Siを用いる分子分離を実証するため、Alexa 488およびAlexa 546(Molecular Probes, Eugene OR)でそれぞれ蛍光標識された異なる分子量(MW)および流体力学的径(D)の二つの一般的な血液タンパク質、すなわちBSA(MW=67kD、D=6.8nm)およびIgG(MW=150kD、D=14 nm)を選択した。また、遊離Alexa 546染料をさらなる低分子量(M=1kD)種として使用した。この染料は第一級アミンと反応して安定な共有結合を形成する。標識付けキットに提供されたスピンカラムで各種を2回精製した。分光光度計を用いて吸光度を計測することにより、染料製造業者によって提供された吸光係数を使用してタンパク質濃度および標識度を計算した。この分析は、BSAがタンパク質1モルあたり8モルの染料で標識されるが、IgGはタンパク質1モルあたり3モルの染料で標識されることを示した。上記実験に使用した顕微鏡を用いると、これは、同じ濃度の各種に関して同程度の蛍光強度を生じさせた。分離実験では、緩衝剤交換または脱塩用途で起こりうるような、より高濃度の溶質種からのタンパク質の分離を模倣するため、タンパク質は1μMで使用し、遊離染料は100μMで使用した。
【0107】
リアルタイム蛍光顕微鏡法を使用して、図16Bに示す、これらの種のpnc-Si膜の通過を観察した。この装備(図16A)では、膜およびその支持シリコンウェーハフレームを50μmシリカスペーサとともにガラススライドに載せて、膜の下に薄い拡散チャンバを形成した。まず、このチャンバを清浄なリン酸緩衝食塩水(「PBS」)約50μLで満たした。次いで、上記のような、PBS中3μLの蛍光タンパク質(1uM)および/または染料(100uM)を膜上のウェルに加えた。各蛍光流路において30秒おきに膜エッジの画像を撮影した。膜エッジからの蛍光シグナルの延展の際の各種の膜の通過を観察した。図16Cは、混合物をウェルに加えた直後の膜エッジの疑似カラー画像を示す。膜は、その上のウェル中の蛍光種から明るく見え、膜エッジを越えたところの均一な暗さは、蛍光分子が膜を通過しておらず、下にあるチャンバに入っていないことを示す。
【0108】
図17Aは、図15Aの膜を使用してBSAを遊離Alexa 546染料と比較する膜透過実験の結果を示す。原料混合物3μLからpnc-Si膜を通しての二つの蛍光種(標識BSAおよび遊離染料)の通過を蛍光顕微鏡の二つの流路上で同時に観察した(図16B)。膜エッジを下から画像化し、蛍光物質の横方向延展を観察して膜の透過を判定した。また、原料溶液の適用の直後に撮影された実験画像が示され、膜の背後の原料溶液のシャープな蛍光エッジを示している。疑似カラー画像(図17B-C)は、6.5分後に蛍光が延展する様子を種ごとに示し、隣接するグラフ(図17A)は蛍光強度の定量的比較を示す。これらの結果から、染料は膜を自由に通過するが、BSAはほぼ完全に遮断されるということが明らかである。
【0109】
BSAがなぜ分子の流体力学的径の2倍を超える大きさの最大孔径を有する膜の背後に保持されたかについて考えられる理由がいくつかある。タンパク質と膜の自然酸化層との間の電荷電荷相互作用、孔を部分的に塞ぐタンパク質吸着およびタンパク質の流体力学的寸法と物理的サイズとの間の関係の不確かさがすべて寄与するのかもしれない。
【0110】
図18は、図15Bの膜を使用して1μM濃度でIgGおよびBSAの透過度を比較した、上記のようにして実施された同様な実験またはBSA実験を示す。この場合、BSAは、IgGの約3倍の速さで膜を透過して拡散した。これらの分子の分子拡散係数は互いの25%以内であるため(Karlsson et al., 「Electronic Speckle Pattern Interferometry: A Tool For Determining Diffusion and Partition Coefficients For Proteins In Gels」, Biotechnol. Prog. 18:423-430 (2002)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、計測された速度差は、pnc-Si膜がBSA拡散と比べてIgG拡散を妨げることを明らかに示す。孔径をより完全に最適化することにより、IgGを完全に排除することができが、BSAの通過を許すpnc-Si膜を工作することを期待することができる。しかし、既存の膜を用いた場合でも、いくつかの膜を直列に配設することによって分離を高めることが可能であろう。また、図17Aおよび18のプロットをBSAに関して定量的に比較すると、膜Bの増大したカットオフサイズ(図15B)が膜A(図15A)と比べてBSA拡散の15倍の増強を可能にすることを実証することができることが注目されよう。
【0111】
流路型膜を通る分子の時間単位の通過時間(Yamaguchi et al., 「Self-Assembly of a Silica-Surfactant Nanocomposite In a Porous Alumina Membrane」, Nature Materials 3:337-341 (2004)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を考えると、濾液分子が数分のうちにpnc-Siフィルタの下流側に現れるということが有意義である。pnc-Si膜を通過する輸送をより良く定量化するため、蛍光顕微鏡実験ののち、100μM出発濃度から膜Aを通過して拡散したAlexa 546染料を取り出し、アッセイすることができるベンチトップ実験を実施した。pnc-Si膜を通過する染料拡散を、標準的な再生セルロース透析膜を通過する拡散と比較した。
【0112】
pnc-Si膜をアルミニウム支持体にアセンブルした。膜の下の容積を清浄なPBS 100μLで満たした。PBS中100μMの蛍光色素3μLを膜の上のSiウェルに入れた。図19に示す時点で、膜の下から100μLを取り出した。分光光度計で吸光度を計測して、pnc-Si膜を通って輸送された染料の濃度を測定した。50kD透析膜を通る染料輸送率を計測するため、匹敵しうる膜表面積を通る拡散を計測した。透析膜を緊張させ、マイクロピペットの先端に対してシールした。PBS中100μMの蛍光色素3μLをピペットに装填した。ピペット全体を、清浄なPBS 100μLを有するマイクロ遠心分離管に浸漬した。指定した時点で100μL量を取り出し、吸光度を計測した。両実験の場合、各時点が独自の実験を表す。
【0113】
図19に示す結果は、匹敵しうるサイズ排除性を有する場合、pnc-Si膜を通過する拡散が透析膜の9倍を超える速さであることを明らかにする。pnc-Si膜は毎時156nmol/cm2の初期輸送速度を示し(図19)、3μL原料量が枯渇するにつれ速度が急速に低下して、バリヤをはさんでの濃度勾配を低下させる。この実験では、図15Aの膜AによるBSA (66kD)の優れた保持性に基づき、50kDカットオフを有する透析膜を選択した。注目すべきことに、この実験を膜C、すなわち図15Cに対して1時間繰り返した場合、30倍の多孔率の差(0.2% vs. 5.7%)にもかかわらず、染料輸送率における10%未満の増加しか計測されなかった。膜Aの多孔度よりもはるかに低い多孔度は理論的には無限に薄い多孔質バリヤを通して半最大よりも大きい拡散を許すはずであるため(Berg, H. C., 「Random Walks in Biology」, Princeton University Press, pp. 34-37 (1993)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、これは、染料輸送が本質的に、本発明の膜によっては妨げられないことを示す。したがって、従来の透析膜に対して観察された拡散速度における9倍を超える増大は、実質的には、この実験における自由拡散の物理的限界である。
【0114】
実施例6
連続分離を使用する3種のタンパク質分離
血液タンパク質を濾過するpnc-Si膜の能力を試験するため、蛍光性の赤および緑標識されたウシ血清アルブミン(BSA)、IgGおよびIgMを作成し(表1)、蛍光顕微鏡を使用して膜を通過する拡散を観察した。
【0115】
(表1) 分離実験に使用した分子

【0116】
膜およびそのシリコン支持体を、シリカビーズをスペーサとして使用して顕微鏡カバースリップから50μm離して配置した(たとえば図16Aを参照)。カバースリップと膜構造との間の流路をリン酸緩衝食塩水で満たした。次いで、一つの赤蛍光標識種および一つの緑蛍光標識種を含有する3μl容量を膜の上に添加した。顕微鏡システムが、膜の一つのエッジを含む視野を使用して、流路中の蛍光分子の到着を画像化した。このようにして、初期画像は、膜エッジにおけるシャープな強度差を含み、それが、蛍光分子が膜を通過するにつれ時間とともに減少した。
【0117】
実験結果が図20A-Cに示されている。この図の三つの主パネルそれぞれは、図15A-Cの膜の一つを使用した場合の、近接する分子量の二つの分子の輸送を比較する。三つのケース、すなわちIgMおよびIgG (図20C)、IgGおよびBSA (図20B)ならびにBSAおよび遊離染料(図20A)のすべてにおいて、膜は、システム内で11分後に二つの分子間の優れた分離を提供した。図20Aは、BSAのほぼ完璧な排除および染料の速やかな通過を示す。これは、これらの膜が、腎臓透析用途における大きめの血液タンパク質からの低分子量化合物の選択的除去に非常に効果的であり得ることを示唆する。図20B-Cのタンパク質分離は、図15A-Cで特性決定された膜だけが試験における候補として利用可能であったという事実にもかかわらず、優秀である。異なる平均孔径を有する膜の配列を工作することにより、BSAおよびIgGに対してより良好な選択性を有する膜が見いだされることが期待される。
【0118】
膜の平均サイズが、その膜が保持すると思われるタンパク質のサイズよりも大きいということは注目に値する。たとえば、7nmの流体力学的半径を有するIgG(Luby-Phelps et al., 「Hindered Diffusion of Inert Tracer Particles in The Cytoplasm of Mouse 3T3 Cells」, Proc. Natl. Acad. Sci. 84(14):4910-3 (1987)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)は、通過を許すはずであるかなりの数の孔(>14nm)を有する膜の通過を大部分妨げられる。この結果は、TEMでの物理的計測値よりも小さい有効孔径および/または沈降アッセイで測定された流体力学的半径よりも大きい濾過のための有効タンパク質径を示唆する。小さめの孔径に関して妥当な一つの可能性は、製造後の膜上に表面酸化層が存在するということである。このような層は当然、イオン溶液中で対(正)イオンを膜表面に引き寄せるはずである負電荷を含有する。孔のナノメートル寸法を考慮すると、正電荷が孔の内部を占有し、負電荷種の通過を遅らせることができる。Martinらは、小さな荷電分子の場合の同様な状況下、ナノチューブに関してこの原理を実証した(Martin et al., 「Controlling Ion-Transport Selectivity in Gold Nanotubule Membranes」, Adv. Mater. 13:1351-1362 (2001)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。電荷のナノスケール秩序化がpnc-Si膜の透過性を下げることができるという提唱と合致して、より高いイオン強度の緩衝剤を使用した場合、より速やかなIgGの通過が見られた(図21)。この溶液中のイオン濃度は、編成された電荷(デバイ層)の深さをかなり減少させるはずである。7.2の等電点で、IgG分子そのものはPBS (pH7.3)中で中性(時間的平均として)であるはずである。しかし、タンパク質を追跡するために使用されたAlexa染料は中性pHで-2の電荷を有する。タンパク質上の電荷は変動するため、この現象は、標識されたIgGを遮断するのではなく、減速させるものと予想されるかもしれない。したがって、これまで得られた結果は、表面電荷を操作することによってpnc-Si膜の透過性をチューニングすることができるという概念と合致している。
【0119】
実施例7
市販のタンパク質分離フィルタに対する多孔質ナノ結晶質シリコン膜の比較
pnc-Si膜を、二つの市販のタンパク質分離フィルタ、100kD Nanosep (商標)および50kD透析膜(いずれもその製造業者(それぞれPall Corporation, East Hills, NYおよびSpectrum Laboratories, Rancho Dominquez, CA)から入手)に対して比較した。各実験からのタンパク質をゲル電気泳動で分析してサイズ分離を判定した。各ゲル中、左レーンまたはカラムがラダー標準(L)であり、異なるサイズのタンパク質の位置を特定する。より小さいタンパク質がゲルのさらに先まで移動する。(C)によって特定されたカラムは対照であり、各実験の抽出物中のすべてのタンパク質を含有する。(R)は保持液であり、フィルタ媒体上または背後に保持される、より大きなタンパク質である。(F)は濾液であり、フィルタ媒体を通過したタンパク質を含有する。
【0120】
Nanosep実験(図22A)では、100kDカットオフNanosepカラム(Pall Life Sciences)を使用して、清澄化BBEC (1.2mg/mL) 200μLを14000gで5分間スピンした。フィルタの上および下からサンプルを回収し、保持液を希釈して濾液の濃度に合致させた。Nanosepカラムは、指定された100kDカットオフよりも下のタンパク質を保持し、予備スピンした対照との比較で高い損失が認められた。サンプルを取り出したのち、比較的厚い膜内に捕らえられたタンパク質によるものである可能性が非常に高い、目立った褐色のしみが膜内に残った。50kDカットオフ透析管(図22B)を使用してBBEC 1mL (1.2mg/mL)を分離した。24時間後、保持液を取り出した(濾液は大きな容器中に希釈したため、ゲル上で移動させることはできなかった)。指定されたカットオフ未満で濾過されたタンパク質は非常に少なかった。pnc-Siフィルタ(図22C)を用いた場合、目詰まりを起こすことなく、はるかに高濃度のタンパク質を使用することが可能であった。pnc-Si膜および50mLのPBSタンクを使用してBBEC 1.5μL(6mg/mL)を分離した。50kDよりも大きなタンパク質は保持液中に残留したが、50kDよりも小さなタンパク質は、容易に膜を通って濾液中に拡散したため、非常に希薄になった。pnc-Si膜は、Nanosep膜に比べてサンプルの損失が非常に少ないことを示した(L=ラダー、C=対照、R=保持液、F=濾液)。
【0121】
実施例8
電圧ゲート式ナノスケール膜
pnc-Si膜の一つの特徴的な局面はその分子の高さである。対照的に、文献に記載されている以前に報告された切り替え法で使用されている膜孔は、長さが幅の約1000倍である。この極端なアスペクト比がピーク輸送効率を制限する。先の実施例で実証されたような、pnc-Si膜を通る分子の急速な拡散を与えられると、本発明の超薄膜は、強い切り替え動の実証により、この限界を乗り越えるであろう。さらには、膜は、小さなイオンの輸送に限定されず、タンパク質のような高分子をも選択的に輸送可能にするであろう(上記で実証したとおり)。膜はまた、シリコンプラットフォーム上での廉価な製造を使用して形成され、それが、マイクロ流体工学的システムへの簡単な統合を可能にするであろう。これらの超薄多孔質膜は、アクティブな切り替えに関してこれまで研究されてきた膜とは根本的に異なるため(材料、アスペクト比、製造法など)、電圧が荷電種を膜を通して通過させる傾向を示し、表面電荷が同符号荷電分子の通過を制限する傾向を示すことが予想される。これらの原理を以下に記す予見的実験作業で試験する。
【0122】
製造中にシリコン表面に酸化層が発生するとき、負の表面電荷が自然に発生する。導電性金属でコーティングされたpnc-Si膜に印加される電圧がさらなる負電荷を誘発することができる。荷電膜表面が溶液中から対イオンを引き寄せて孔に入れ、同符号荷電分子の進入を制限するであろう。導電性膜の場合、正または負の電圧を印加することができ、そのように正荷電高分子を制限することもできる。これらの性質は、タンパク質を分離し、分析するマイクロ流体工学的装置においてこれら独特な膜のアクティブな制御を可能にする。
【0123】
第一の実験では、pnc-Si膜の固有の透過性が製造中に発生する表面電荷によって判定されるその程度を評価する。第二の実験では、導電性金属でコーティングされたpnc-Si膜の表面電荷をアクティブに操作する潜在能力を試験する。第三の実験では、pnc-Si膜を通過する電気泳動流を確立する。曖昧な結論を避けるため、十分に画定された量子ドットの輸送を試験する(しかし、量子ドットを用いて得られる結果は、タンパク質および小さな荷電分子を用いて同様な結果を達成する能力を確認するであろう)。
【0124】
実験1
製造中にpnc-Si膜上に自然に成長する酸化層が、タンパク質輸送に影響するおそれのある固定表面電荷を生じさせるということが知られている。これらの電荷が、一部のタンパク質が、タンパク質の流体力学的半径よりも大きいかなりの数の孔を有する特定の膜を外見上通過することができない理由を説明するかもしれない。電荷依存性の透過性がpnc-Si膜の固有の性質であることを実証することは、アクティブな輸送制御についての研究のための重要な基準となるであろう。
【0125】
一般的な方策は、制御された電荷を有する蛍光種の通過を蛍光顕微鏡を用いて観察することである。製造後に膜が正味の負電荷を有すると仮定すると、負荷電種はpnc-Si膜をはさんで遮断される(または、より低速で通過する)と予想される。タンパク質上に見られるアミンおよびカルボキシル基はそれぞれ約3および8のpKAを有するため、一つの手法は、異なるpHの電解質(リン酸緩衝食塩水)溶液中でpnc-Si膜を通過するタンパク質の拡散を試験することであろう。負荷電分子の中和が輸送を促進するはずであるが、タンパク質サイズまたは膜電荷がpH変化によって影響を受けるおそれがあり、したがって、この手順で得られた結果は解釈が困難であるかもしれない。
【0126】
解釈における紛糾を避けるため、アミンおよびカルボキシル誘導体化された量子ドットをタンパク質に代えて試験種として使用する。量子ドットの場合、タンパク質とは違い、電荷および粒径が独立して制御されるため、このモデル系は理想的である。アミンおよびカルボキシル表面コーティングを有する量子ドットはEvident Corp.から市販されている。同社は、多様な蛍光発光を有する25nm (流体力学的)径の量子ドット上にこれらの表面化学ならびに中性面を提供している。大部分の孔径が20〜40nmであるpnc-Si膜を容易に製造することができ、これらの実験で使用することができる。膜を通しての正、中性および負荷電粒子の輸送は、pnc-Si膜による蛍光性タンパク質の分離を観察するために使用されるものと同じフローチャンバを使用して観察される。COO-量子ドットは、中性およびアミン粒子と同じサイズであるにもかかわらず、より低速でpnc-Si膜を通過すると予想される。
【0127】
この実験設計とともに、これらの解釈を補強するさらなる実験がある。まず、正および負荷電量子ドット上の電荷を、それぞれアセテートおよびアミノメタンとのカルビミミド(carbimimide)反応を使用して中和する。COO-粒子およびアミン粒子の中和バージョンは中性粒子と同じ速度でpnc-Si膜を通して拡散すると予想される。
【0128】
実験2
種の輸送における膜表面電荷の役割を確認するための第二のタイプの実験では、塩(KCl)濃度を0から0.5Mに高めることにより、荷電量子ドットを含有する溶質のイオン強度を高める。イオン強度が高まるにつれ、表面電荷をシールドするデバイ層の深さが孔径よりも小さくなり、したがって、荷電種と非荷電種との輸送速度の差が減少すると予想される。
【0129】
pnc-Si膜上の固有の電荷が荷電種の輸送に影響を及ぼすのに十分であるかどうかにかかわらず、pnc-Si膜が導電性材料でコーティングされているならば、pnc-Si膜を意図的に荷電させることが可能であろう。外因性ソースからの電荷のアクティブな操作が、pnc-Si膜の選択性をアクティブに操作するための最良の機会を提供する。
【0130】
この研究の下で実施される実験は、使用されるpnc-Si膜が金コーティングを用いて製造されることを除き、先に概説した実験に類似している。pnc-Si膜は二つの技術によってコーティングされる。まず、標準的な蒸着技術を使用するとコーティングが発生する。蒸着は、pnc-Si膜の一方の側に均一な金層を生じさせるであろう。孔の内面がコーティングされるべきではないため、このコーティング法が、すべての面を金でコーティングする技術と同じくらい効果的であるかどうかは不明である。一つのそのような技術が無電解金メッキ法、すなわち、溶液中での金イオンの触媒還元およびその後の表面層へのイオンの付着を含む化学的還元法である。効果的な付着を保証するため、表面が表面結合アミンを有する必要があるかもしれず、その場合、pnc-Si膜のシリコン面をアミノシランで前処理することができる。pnc-Si面の転換はSEMによって確認される。コーティングが孔径をかなり減少させることがわかるならば、より大きな孔を有する膜を出発原料として使用したり、および/または金イオンへの表面の暴露を調節したりして、付着層の成長を抑制する。
【0131】
荷電、非荷電および中性の量子ドットが金コーティングされたpnc-Si膜を通過する速度は、定量的蛍光顕微鏡法を使用して評価される。これらの実験は、金コーティングされた膜を通してのベースライン輸送を確立する。コーティングされた膜を電圧源に取り付けることにより、膜が有する電荷を直接操作する。負荷電種の輸送がより低速であることを見出し、輸送速度が印加電圧に反比例して変化することが予想される。実験1に関して記載した方法と同じく、中和された電荷を有する量子ドットの輸送は電圧に依存しないため、そのような量子ドットの使用が対照として働く。加えて、溶液のイオン強度の増大が、荷電種に対するpnc-Si膜の透過性を調整する電圧の能力を減じるであろう。
【0132】
実験3
電気泳動では、電圧が電解液に印加されると、荷電種が電極間で輸送される。pnc-Si膜上の電荷にかかわらず、膜のいずれかの側に電極を配置することにより、pnc-Si膜を通る荷電種の通過を調節することが可能であろう。
【0133】
これらの実験もまた、顕微鏡ベースの拡散チャンバを使用して、正、中性および負荷電量子ドットがpnc-Si膜(コーティングされていない)を通る輸送を比較する。ただし、白金電極を上流側および下流側に配置し、電圧を溶液に印加する。正および負の量子ドットを膜の一方の側にいっしょに配置する。0〜2Vで変動する電圧に関して輸送を比較する。電気分解によって生じる気泡が膜の大きな区分を容易に遮断し、実験を混乱させるおそれがあるため、実験の前に溶液をガス抜きし、電圧を2Vに制限すること(Kuo et al., 「Molecular Transport Through Nanoporous Membranes」, Langmuir 17:6298-6303 (2001))が酸素気泡の生成を最小限にするのに役立つ。さらには、気泡が膜に近接した状態にとどまる可能性が低くなるよう、膜を垂直にした状態で実験を実施することができる。正または負の種のいずれかの輸送速度を印加電圧の大きさおよび極性によって制御することができると予想される。その間、反対荷電種が膜から離れて移動し、それにより、出発チャンバ中に捕らえられたままになるであろう。これらの実験は、pnc-Si膜を通過する輸送の制御ための膜電荷の直接的な操作に代わる方法を提供する。
【0134】
実施例9
多孔質ナノ結晶質シリコン膜を使用する透析機の改変
pnc-Si膜が、透析治療を受けている患者に対してかなりの不快感を現在生じさせる小さなタンパク質毒素(β2ミクログロブリン)(Raj et al., 「Beta(2)-microglobulin Kinetics in Nocturnal Haemodialysis」, Nephrol. Dial. Transplant 15(1):58-64 (2000)、参照により参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を選択的に除去するという期待をもって、この膜を大規模腎臓透析で使用する潜在性を試験する。pnc-Si膜の機械的強度が、透析のような大規模用途のためのアセンブリの構築を可能にすると思われる。
【0135】
複数のシリコンウェーハをアセンブルして、膜が約20nmの最大孔径を特徴とするフロースルー装置にする。透析設備にレトロフィットすると(すなわち、従来の透析管に代えて用いると)、膜の表面を流れる血液は、小さなタンパク質毒素および特定の塩が膜を通って拡散することを可能にし、それによって、患者に戻される血液からそれを除去する。
【0136】
本明細書では好ましい態様を詳細に描写し、説明したが、当業者には、発明の本質を逸することなく様々な改変、追加、代用などを行うことができることが明らかであり、したがって、そのような改変、追加、代用などは、請求の範囲で定義する発明の範囲に入るものとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の多孔質ナノスケール半導体膜を製造する一つの態様を示す略図である。シリコンおよびシリコンの結晶構造への参照は単なる例である。
【図2】基板を通過するエッチングされた流路の形成を容易にする(すなわち膜を露出させる)ための要素の背面マスキングおよび個々の膜の除去を可能にするための基板中のトレンチを示す図である。様々な膜サイズは最適化されたものであるため、マスキングパターンは基板の所々での変化を示す。
【図3】エッチング剤がウェーハの背面だけに露出することを保証するために使用される1個の表面エッチングセルを示す。溶液はベースプレート(図示)または側壁を介して間接的に加熱され、温度は、溶液に浸漬された(すなわち、エッチングセル内)サーモカップルからのフィードバックを使用して制御される。
【図4】膜が装置またはケーシング中で結合され、それによってフィルタを本質的に形成しているシステムを示す。このシステムでは、外径は、フィルタを使用する装置の範囲における使用に適合させることができる。
【図5】タンパク質の連続分離の一つの態様を示す略図である。この構成は、タンパク質のサイズに基づいてタンパク質をチャンバ内に単離することができる。連続流がタンパク質を濃縮したのち弁が開き、個々のコンパートメントを排液する。ナノ膜多孔度のアクティブな制御(図7を参照)が、フレキシブルなクロマトグラフィーシステムによって多様な生体流体からタンパク質を単離することを可能にする。
【図6】超薄pnc半導体膜を組み込んだ向流セルを示す。これらのきわめて高効率の膜は、拡散を減速させるおそれのある膜の近くでの種の蓄積を連続流によって防止するこの分離技術に特に適している。また、膜を通過通すためにキャリヤ溶液が要らず、小さな生成物がバリヤを通過して拡散するだけでよいため、この配置は高容量分離を可能にする。
【図7】アクティブな膜切り替え法を示す。多孔質膜が二つの溶液AおよびBを分離し、切り替え電圧は、A/Bに対する膜Mに直接印加されるか、A点からB点まで膜をはさんで印加されるかのいずれかである。
【図8】二つ以上の薬剤および/または有機体の間で生物学的反応を実施するためにそれぞれが使用されることができる複数のウェルが上に形成されたシリコンウェーハを示す。図8Aは平面図を示し、図8Bは側面図を示す。
【図9】pnc-Si膜の物性を示す。図9Aは、分光偏光解析法によって測定した、高光学密度シリコンフィルムの、結晶化(729℃、30秒間アニール)の前(b、15nm a-Si)および後(a、15nm nc-Si)における屈折率分散曲線を示す。参考までに、結晶質シリコン(d、結晶質Si)およびCVD成長a-Si (c、CVD a-Si参照)の分散曲線がプロットされている。図9Bは、pnc-Si膜の15nmの厚さおよび最小の粗さを確認する、研磨された石英ウィンドウに移した膜のエッジのAFMスキャンである。図9C-Dは、超薄膜材料の顕著な強度を実証する、平衡状態、すなわち平方インチ(「psi」)あたり0.0ポンドおよび背圧15.0psiにある厚さ15nmのpnc-Si膜の光学顕微鏡写真である。
【図10】20nmのSiO2犠牲層を使用して形成された7nmおよび3nmのnc-Si膜を示す。図10Aは、解放された3層7nm膜の干渉コントラスト光学顕微鏡写真(均質な酸化膜に似た構造を示す)である。図10Bは、緩衝酸化物エッチング剤への酸化層の溶解が実質的に平坦な7nmのnc-Si膜を生じさせることを示す。図10Cは、酸化層を緩衝酸化物エッチング剤に溶解したとき形成した平面的な7nmのnc-Si膜の干渉コントラスト光学顕微鏡写真である。この膜の平坦度は10nm未満と計測され、粗さは、同様な200μm膜で0.5nm未満であった。図10Dは、7nmのnc-Siフィルムの平面図暗視野TEM画像である。電子回折を支持するのに適切な結晶配向を有する結晶だけがこの画像に現れている。図10Eは、厚さ3nmで幅400μmの膜を示す。
【図11】一般に利用可能なラテックス球の平面図TEM試験画像である。これらの試験画像は、nc-Si/SiO2膜の高い電子通過性を確認し、この構造を通して高解像度画像を撮影することができることを実証した。バックグラウンドテキスチャは膜内のnc-Siである。
【図12】RTAのみの後の厚さ20nmのnc-Siフィルムの明視野像と暗視野像との比較を示す。明視野像コントラストは、主として密度差によるものであるが、暗視野パターンは、結晶質材料からの電子回折によって形成される。
【図13】様々な厚さのnc-SiフィルムのTEM暗視野像である。厚さに対する明確なナノ結晶サイズ依存性は認められないが、厚めのフィルムの場合にナノ結晶の密度が増すように見える。
【図14】最適化されたa-Siスパッタリング条件で付着された厚さ7nmのnc-Siフィルムの平面図TEM画像である。画像中の暗いスポットはフィルム内の穴である。急速熱アニール(「RTA」または「RTP」)され、炉アニールされたフィルム内にかなり多めの穴が見える。
【図15】pnc-Si膜孔径のチューニング性を示す。シリコンフィルムを結晶化させる温度を変えることにより、孔径を制御することができる。各孔径における分子輸送に利用可能な全孔面積(左プロット)および総孔数(右プロット)をプロットするヒストグラムに示されているように、アニール(RTA)温度が715℃(図15A)から729℃ (図15B)さらに753℃(図15C)に上昇するとともに最大(カットオフ)孔径および多孔度が増す。各ヒストグラムを生成するために使用されるTEM画像が図中央に含まれている。
【図16】pnc-Si膜をはさんでの分子分離および輸送速度を示す。3μL原料混合物からpnc-Si膜を通過する二つの蛍光種(標識タンパク質または遊離染料)の通過を蛍光顕微鏡の二つの流路上で同時に観察した。膜エッジを下から画像化し、蛍光材料の横方向延展を観察して膜の通過を判定した(図16B)。また、膜の背後の原料溶液のシャープな蛍光エッジを示す、原料溶液の適用直後に撮影された実験画像が示されている(図16C)。
【図17】図15Aの膜、すなわち膜Aを使用した場合、膜を介して6.5分でBSAおよび遊離染料の高効率分離が観察されたことを示す。画像の時系列から、膜エッジから50ミクロンのところでの蛍光強度のプロットを生成した(図17A)。流路ごとに第一のフレーム内の膜の中心値に対して強度を正規化した。各流路の最終蛍光画像が図17B〜Cに示されている。
【図18】図15Bの膜、すなわち膜Bを使用した場合、上記方法を使用してタンパク質BSA (MW約67kD)およびIgG (MW約150kD)の3倍の分離が観察されたことを示す。この膜、すなわち膜Bの大きめのサイズカットオフは、図15Aの膜、すなわち膜Aに対して15倍超のBSA輸送の増大を可能にする。
【図19】膜A、すなわち図15Aの膜を通過する染料の拡散速度を、50kDカットオフ(染料MWの50倍の大きさ)を有する市販の透析膜に対してベンチマークしたものを示す。3μlの原料染料は速やかに枯渇するため、輸送速度は、輸送曲線の初期傾斜として計算した。透析膜はこの1kD染料に対して通過性が高いであろうが、pnc-Si膜における輸送は速さが9倍超である。各時点ごとに558nm吸収によって染料濃度を計測した。
【図20】分離実験を示す。三つのパネルは、実施例6で参照する表1における隣り合う分子3対の分離を実証する。各パネルは、顕微鏡設備(図16Aに示す)からの蛍光画像を示し、膜およびその包含物が画像の右手に見てとれる。平均水平強度分布が各画像に隣接して示されている。図20Aは、図15Aの膜を使用する、染料とBSAとの分離を示す。図20Bは、図15Bの膜を使用する、BSAとIgGとの分離を示す。図20Cは、図15Cの膜を使用する、IgGとIgMとの分離を示す。
【図21】顕微鏡チャンバ実験(たとえば図16Aを参照)中に拡散する、蛍光標識されたIgGの輸送を示す。ナノ膜が固有の負電荷を有するという予想と合致して、溶媒のイオン強度の増大が膜を通過通過する拡散の速度を高める。10倍濃縮PBS緩衝剤を用いた場合、タンパク質輸送は倍増する。
【図22】pnc-Si膜が高濃度ウシ脳抽出物(「BBEC」)を濾過する場合に明確なカットオフを実証するということを示すゲル電気泳動実験である。図22Aの実験はNanosepカラムを用いた。図22Bの実験は市販の透析膜を用いた。図22Cの実験は本発明のpnc-Si膜を用いた。Lはラダー標準であり、Cは対照であり、Rは保持液であり、Fは濾液である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ナノスケール膜を製造する方法であって、以下の段階を含む方法:
半導体材料を含むナノスケールフィルムを基板の一方の側に被着させる段階;
基板の対側をマスキングする段階;
基板を、そのマスキングされた対側から、基板を貫通する流路が形成されるまでエッチングし続け、それによってフィルムをその両側で露出させて膜を形成する段階;および
複数の離間した孔を膜内に同時に形成する段階。
【請求項2】
犠牲フィルムを、(i)ナノスケールフィルムを被着させる段階の前に基板の一方の側に被着させるか、(ii)ナノスケールフィルムを被着させる段階の後にナノスケールフィルムの上に被着させるか、または(iii) (i)および(ii)の両方を実施することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ナノスケールフィルムの被着および犠牲フィルムの被着が、実質的に平面的なフィルムを形成するような様式で実施される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ナノスケールフィルムの被着および犠牲フィルムの被着が、レリーフパターン付きフィルムを形成するような様式で実施される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
(i)および(ii)の両方が実施される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
ナノスケールフィルムが非晶質半導体材料を含み、各犠牲フィルムが酸化フィルムである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
同時形成が、エッチングの前または後で非晶質半導体材料を転換して結晶質半導体材料を形成することによって実施される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
転換が、結晶化を誘発するのに適した温度および期間で非晶質半導体材料をアニールすることによって実施される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
結晶質半導体材料が多結晶質またはナノ結晶質材料の形態である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
各酸化フィルムが二酸化ケイ素であり、基板がシリコンである、請求項6記載の方法。
【請求項11】
マスキングが、シリコン基板の対側に不完全な二酸化ケイ素フィルムを形成することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
エッチングが、約10,000よりも大きいシリコン/二酸化ケイ素選択比を有するエッチング剤を使用して実施される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
エッチングが、エチレンジアミン、ピロカテコール、ピラジン、および水を含むエッチング剤を使用して実施される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
エッチング後に犠牲フィルムを除去することをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項15】
除去が同時形成の後に実施される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
除去が、犠牲二酸化ケイ素フィルムを緩衝酸化物エッチング液またはフッ化水素酸エッチング液に暴露することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
エッチングが、基板をそのマスキングされた対側からのみエッチング液に暴露する容器中で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
エッチング中にエッチング液を加熱および/または攪拌することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
被着が、無線周波数マグネトロンスパッタリング、低圧化学蒸着、プラズマ強化化学蒸着、熱化学成長、無線周波数スパッタリング、DCスパッタリング、熱蒸着、電子ビーム蒸着、または電気メッキを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
被着が、フィルム付着中の条件を変更することをさらに含み、条件が、圧力変更、プラズマ密度変更、プラズマ出力変更、温度変更、原料物質変更、およびガス組成変更の群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
半導体材料が、ドープされていないシリコンもしくはゲルマニウム、p-ドープされたシリコンもしくはゲルマニウム、n-ドープされたシリコンもしくはゲルマニウム、またはシリコン・ゲルマニウム合金である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
対側で露出し、500nm未満の平均厚を有し、請求項1記載の工程によって調製されるナノ多孔質半導体膜。
【請求項23】
対側で露出し、約500nm未満の平均厚を有し、対側の間に延びる複数の孔を有し、対側の一方または両方が実質的に滑らかであるナノスケール半導体膜。
【請求項24】
ドープされていないシリコンもしくはゲルマニウム、p-ドープされたシリコンもしくはゲルマニウム、n-ドープされたシリコンもしくはゲルマニウム、またはシリコン・ゲルマニウム合金の群より選択される半導体材料で形成されている、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項25】
半導体材料が、B、Al、Ga、In、P、As、Sb、およびGeの一つまたは複数でドープされたシリコンまたはゲルマニウムである、請求項24記載のナノスケール膜。
【請求項26】
半導体材料が結晶質形態である、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項27】
膜の一方の側を少なくとも部分的に覆う金属コーティングをさらに含む、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項28】
金属が、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、チタン、タングステン、鉛、スズ、パラジウム、およびその合金の群より選択される、請求項27記載のナノスケール膜。
【請求項29】
厚さが約10〜約100nmである、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項30】
厚さが約10nm未満である、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項31】
10,000:1を超える横方向長さ:厚さのアスペクト比によって特徴づけられる、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項32】
実質的に平面的である、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項33】
非平面的であり、上に形成されたレリーフパターンを有する、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項34】
平均孔径が直径約50nm未満である、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項35】
孔密度が106〜1012cm-2である、請求項23記載のナノスケール膜。
【請求項36】
請求項23記載のナノスケール膜を少なくとも一つ含むフィルタ装置。
【請求項37】
対表面の間に延びる流路を有する支持体をさらに含み、少なくとも一つのナノスケール膜が、流路に向き合う(confronting)状態で支持体に結合または支持体上に配置されている、請求項36記載のフィルタ装置。
【請求項38】
異なる最大孔径を有する二つ以上のナノスケール膜を含み、二つ以上のナノスケール膜が、流体流動方向に関して、より小さい最大孔径を有する膜がより大きい最大孔径を有する膜の下流にある状態で直列に配置されている、請求項36記載のフィルタ装置。
【請求項39】
それぞれが異なる最大孔径を有する三つ以上のナノスケール膜を含む、請求項38記載のフィルタ装置。
【請求項40】
支持体がシリコンで形成されている、請求項36記載のフィルタ装置。
【請求項41】
入口および出口を有するアダプタをさらに含み、流路が入口および出口と流体連通するように支持体がアダプタに固着されている、請求項37記載のフィルタ装置。
【請求項42】
実質的に平行に配置された第一および第二の導管をさらに含み、少なくとも一つのナノスケール膜が第一の導管と第二の導管との間に配置されており、それにより、最大孔径よりも小さい種が、少なくとも一つのナノスケール膜を通って第一の導管と該第二の導管との間を通過することができる、請求項36記載のフィルタ装置。
【請求項43】
第一および第二の導管の流体流動方向が同じ方向である、請求項42記載のフィルタ装置。
【請求項44】
第一および第二の導管の流体流動方向が反対方向である、請求項42記載のフィルタ装置。
【請求項45】
少なくとも一つのナノスケール膜に結合またはそれに隣接して配置された電極をさらに含む、請求項36記載のフィルタ装置。
【請求項46】
電極が陽極である、請求項45記載のフィルタ装置。
【請求項47】
電極が陰極である、請求項45記載のフィルタ装置。
【請求項48】
ナノスケール膜の一方の側に配置された第一の電極およびナノスケール膜の対側に配置された第二の電極を含み、それにより、ナノスケール膜をはさんで電解液が導入されると、第一および第二の電極が電解液に電圧を印加することができる、請求項45記載のフィルタ装置。
【請求項49】
ナノスケール膜と接触した第三の電極をさらに含む、請求項48記載のフィルタ装置。
【請求項50】
孔の中または膜の表面で膜につながれた一つまたは複数の捕獲分子をさらに含む、請求項36記載のフィルタ装置。
【請求項51】
孔の中または膜の表面で膜につながれた一つまたは複数の非結合性、スクリーニング性、または反発性の分子をさらに含む、請求項36記載のフィルタ装置。
【請求項52】
請求項36記載のフィルタ装置を含むマイクロ流体流動装置。
【請求項53】
請求項36記載のフィルタ装置を含む透析機。
【請求項54】
請求項23記載のナノスケール膜を含み、ナノスケール膜が、正荷電種を選択的に通す、燃料電池。
【請求項55】
ナノスケール生成物を濾過する方法であって、以下の段階を含む方法:
請求項23記載のナノスケール膜を少なくとも一つ提供する段階;および
濾過される一つまたは複数の生成物を含有する流体を膜に通し、それにより、最大孔径よりも大きな物体が膜の孔を通過することを効果的に妨げる段階。
【請求項56】
提供する段階が、異なる最大孔径を有する二つ以上のナノスケール膜を含み、二つ以上のナノスケール膜が、流体流動方向に関して、より小さい最大孔径を有する膜がより大きい最大孔径を有する膜の下流にある状態で直列に配置されている、請求項55記載の方法。
【請求項57】
提供する段階が、それぞれが異なる最大孔径を有する三つ以上のナノスケール膜を含む、請求項56記載の方法。
【請求項58】
一つまたは複数の捕獲分子が孔の中または膜の表面でナノスケール膜につながれている、請求項55記載の方法。
【請求項59】
一つまたは複数の非結合性、スクリーニング性、または反発性の分子が孔の中または膜の表面でナノスケール膜につながれている、請求項55記載の方法。
【請求項60】
流体が、懸濁した粒状物を含有する気体を含む、請求項55記載の方法。
【請求項61】
流体が、唾液、血液、血清、脳脊髄液、粘膜分泌物、尿、および精液の群より選択される生物学的流体である、請求項55記載の方法。
【請求項62】
流体が水溶液である、請求項55記載の方法。
【請求項63】
濾過される一つまたは複数の生成物が、タンパク質、ウイルス、細菌、細胞株、単離細胞、プロトプラスト、真菌、寄生生物、コロイドナノ粒子、有機分子系、無機ナノ粒子、溶解イオン、薬物、染料、糖、水性塩、金属、半導体粒子、および薬学的化合物の群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項64】
濾過される生成物が荷電種である、請求項55記載の方法。
【請求項65】
通す前に膜をはさんで電圧差を印加することをさらに含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
通す前に膜を荷電させることをさらに含む、請求項64記載の方法。
【請求項67】
一つまたは複数のウェルを含み、それぞれが底および一つまたは複数の側壁を有する基板であって、底が、約500nm未満の平均厚を有し対側の間に延びる複数の孔を有するナノスケール半導体膜を含む、基板と、
一つまたは複数のウェル中の生物学的反応媒体、ならびに化合物および有機体の群より個々に選択される二つ以上の反応物とを含む、
生物学的反応を実施するための装置。
【請求項68】
化合物が、タンパク質、コロイドナノ粒子、有機分子系、無機ナノ粒子、溶解イオン、薬物、糖、水性塩、金属、半導体、薬学的化合物、核酸、酵素、脂質、炭水化物、および/またはポリペプチドである、請求項67記載の装置。
【請求項69】
有機体が、細胞株、単離細胞、細菌、ウイルス、プロトプラスト、真菌、および/または寄生生物である、請求項67記載の装置。
【請求項70】
半導体材料が、ドープされていないシリコンもしくはゲルマニウム、p-ドープされたシリコンもしくはゲルマニウム、n-ドープされたシリコンもしくはゲルマニウム、またはシリコン・ゲルマニウム合金の群より選択される、請求項67記載の装置。
【請求項71】
膜が、細胞表面受容体、抗体、配位子、生物学的試薬、またはその組み合わせを、膜の一方の側もしくは両側の表面または膜の孔の中に含む、請求項67記載の装置。
【請求項72】
各ウェルが、別個のナノスケール膜で構成された底を有する、請求項67記載の装置。
【請求項73】
一つまたは複数のウェルを含み、それぞれが底および一つまたは複数の側壁を有する第二の基板であって、底が、約500nm未満の平均厚を有し対側の間に延びる複数の孔を有するナノスケール半導体膜を含む、第二の基板をさらに含み、第一および第二の基板が互いに結合されて、第一および第二の基板の一つまたは複数のウェルが互いに向き合ってチャンバを形成する、請求項67記載の装置。
【請求項74】
生物学的反応を実施する方法であって、以下の段階を含む方法:
請求項67記載の装置を提供する段階;
一つまたは複数のウェル中で生物学的反応を実施して最終生成物を形成する段階;および
消費された生物学的反応媒体を一つまたは複数のウェルからナノスケール膜に通す段階であって、最終生成物が、ナノスケール膜を透過するか、一つまたは複数のウェル中に保持される段階。
【請求項75】
孔の中または膜の表面で膜につながれた一つまたは複数の捕獲分子をさらに含む、請求項74記載の方法。
【請求項76】
孔の中または膜の表面で膜につながれた一つまたは複数の非結合性、スクリーニング性、または反発性の分子をさらに含む、請求項74記載の方法。
【請求項77】
ナノスケール膜に通される一つまたは複数の生成物が、タンパク質、ウイルス、細菌、コロイドナノ粒子、有機分子系、無機ナノ粒子、溶解イオン、薬物、染料、糖、水性塩、金属、半導体、および薬学的化合物の群より選択される、請求項74記載の方法。
【請求項78】
細胞に対する活性に関して薬剤をスクリーニングする方法であって、以下の段階を含む方法:
薬剤を提供する段階;
細胞を含む生物学的反応媒体に薬剤を導入することによって請求項74記載の方法を実施する段階;および
細胞または最終生成物を分析して細胞に対する薬剤の活性を特定する段階。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2008−540070(P2008−540070A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509241(P2008−509241)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/016743
【国際公開番号】WO2006/119251
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.パイレックス
3.PYREX
【出願人】(507356279)ユニバーシティー オブ ロチェスター (1)
【Fターム(参考)】