説明

超電導ケーブルの接続構造体及び接続方法

【課題】 超電導特性が劣化することなく、低い接続抵抗を有する超電導ケーブルの接続構造体及び超電導ケーブルの接続方法を提供すること。
【解決手段】 フォーマと、その周囲に配設された超電導線材とを具備する超電導ケーブルの接続構造体であって、前記フォーマは、溶接により接続され、その接続部は、それ以外のフォーマの部分と同径であり、前記超電導線材の接続部は、前記超電導線材の接続端部同士を突合せて配置し、その突合せ部上に半田により接続用超電導線材を接着してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル等に適用可能な酸化物超電導導体の接続方法に係り、特に、超電導ケーブルの接続構造体及び接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、巻き芯である銅撚り線フォーマに、テープ状の超電導導体線材をスパイラル状に巻きつけて導体を構成し、その上に電気絶縁層を介して、超電導シールドとして超電導線材をスパイラル状に巻きつけた構造を有する。
【0003】
このような超電導ケーブルを接続する方法としては、通常の電力ケーブルの接続のように導体の接続端部をスリーブに挿入して圧縮する方法が考えられる。しかし、超電導線材は機械的強度が弱く、圧縮すると超電導性が失われてしまうため、超電導ケーブルにはこの方法をそのまま適用することは出来ない。
【0004】
従来の方法として、図7に示すように、超電導ケーブルのフォーマ21のみをスリーブ22に挿入して圧縮し、接続した後、超電導線材23の接続端部をスリーブ22に半田付けすることにより接続する方法(例えば、特許文献1参照)も知られているが、この方法では、接続部において、超電導線材の低抵抗の特性を生かすことができないため、接続部の抵抗が大きくなり、冷凍機などの設備が別途必要となるという問題がある。
【0005】
また、図8に示すように、超電導ケーブルのフォーマ21のみをスリーブ22に挿入して圧縮し、接続した後、スリーブ22をまたいで接続用の超電導線材24を配置し、超電導線材23の接続端部を接続用の超電導線材24に半田付けする方法考えられるが、スリーブ22の存在のために超電導線材の接続部の径が大きくなり、更にその上に多層の構成材を配置すると、超電導線材の接続部が圧縮されて、超電導特性が劣化してしまうという問題が生ずる。
【特許文献1】特開2005−251570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされ、超電導特性が劣化することなく、低い接続抵抗を有する超電導ケーブルの接続構造体及び超電導ケーブルの接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、フォーマと、超電導線材とを具備し、前記超電導線材が前記フォーマ上に積層されて複数の超電導導体層を形成している超電導ケーブルの接続構造体であって、前記超電導導体層のうち、1層目の超電導導体層は、前記超電導線材の接続端部同士が突合せて配置された突合せ部上において接続用超電導線材が前記超電導線材の各々の接続端部と電気的に接続された第1層接続部を有し、前記超電導導体層のうち、2層目の超電導導体層は、前記第1層接続部と長手方向に異なる位置に、接続用超電導線材が前記超電導線材の各々の接続端部と電気的に接続された第2層接続部を少なくとも1箇所有していることを特徴とする超電導ケーブルの接続構造体を提供する。
【0008】
このような超電導ケーブルの接続構造体において、前記超電導導体層は3層からなり、前記超電導導体層のうち、3層目の超電導導体層は、前記第2層接続部と長手方向に異なる位置に接続用超電導線材が前記超電導線材の各々の接続端部と電気的に接続された第3層接続部を少なくとも1箇所有することが出来る。
【0009】
また、前記超電導線材は、 前記超電導導体層の接続部は1層につき1箇所形成されており、ケーブルの長手方向において千鳥状に配置することが出来る。
【0010】
更に、前記超電導線材は、前記超電導線材及び接続用超電導線材は、基板と、超電導薄膜を含む通電層とを有し、前記超電導導体層の接続部は、前記超電導線材の接続端部の通電層と、前記接続用超電導線材の通電層とが、半田により接着してなることが出来る。
【0011】
本発明の第2の態様は、フォーマと、超電導線材とを具備し、前記超電導線材が前記フォーマ上に積層されて複数の超電導導体層を形成している超電導ケーブルの接続方法において、
(a)前記超電導ケーブルの被接続端部の所定領域を露出させる工程、
(b)接続部がそれ以外のフォーマの部分と同径となるように、前記露出したフォーマの先端同士を溶接する工程、
(c)前記超電導線材の被接続端部同士を突合せる工程、
(d)前記被接続端部の突合せ部に半田テープを巻回する工程、
(e)前記突合せ部の半田テープを巻回した部分上に接続用超電導線材を配置する工程、
(f)前記(e)工程にておいて半田テープを巻回した部分を加熱して、前記超電導線材の被接続端部に接続用超電導線材を半田により接着し、1層目の超電導導体層を接続する工程、
(g)前記1層目の超電導導体層の接続部上に、それ以外の絶縁層の部分と同径となるように、絶縁層を形成する工程、
(h)2層目の超電導導体層において、前記1層目の接続部と長手方向に異なる位置で(c)、(d)および(e)を行う工程、
(i)前記(h)工程にておいて半田テープを巻回した部分を加熱して、前記超電導線材の被接続端部に接続用超電導線材を半田により接着し、2層目の超電導導体層を接続する工程を具備することを特徴とする超電導ケーブルの接続方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、先に接続した超電導導体層の接続部と異なる位置に次に接続する超電導導体層の接続部を形成することで、各超電導導体層の超電導特性が劣化することなく、低い接続抵抗を有する超電導ケーブルの接続構造体を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1(a)に比較例としての超電導ケーブルの接続構造を示す。図1(a)の配置は、3層の超電導線材11a,11b、12a,12b、13a,13bを、接続用超電導線材14,15,16により接続し、その接続中心の位置を一致させたものである。この配置は、接続用超電導線材の数を少なくすることが出来るという利点はあるが、1層目を接続した後に2層目を接続する際に、1層目の接続部に熱が加わり、1層目の接続部を損傷させる恐れがあり、また接続部の位置が重なっているため、接続部において順次径が大きくなるという難点がある。
【0015】
図1(b)〜図1(d)に、本発明の一実施形態に係る超電導ケーブルの接続構造を示す。図1(b)に示す配置は、1層目の超電導導体層20を形成する超電導線材11a,11bの接続端部を突き合わせて配置された突き合わせ部上に接続用超電導線材14を電気的に接続した第1層接続部17と、2層目の超電導導体層21,3層目の超電導導体層22の接続部の位置が重なることを避けるため、2層目及び3層目の超電導線材を段切りし、不足の超電導線材12c,13cをそれぞれ超電導線材12a,12b間と超電導線材13a,13b間に配置して、それぞれ2つの接続用超電導線材15a,15b,16a,16bにより接続し、第2層接続部18、第3層接続部19をそれぞれ2箇所に形成したものである。この配置は、第1層と第2層、第2層と第3層の接続部の位置が重ならないため、超電導導体層の超電導特性が劣化しないという利点があり、また、接続部の径が他の部分と同径に出来るという利点がある。
【0016】
図1(c)に示す配置は、図1(b)に示す配置において、不足の超電導線材12c,13cを用いる代わりに、接続用超電導線材15,16の長さを長くし、2,3層目の超電導線材12aと12b,13aと13bを直接、接続用超電導線材15,16を用いて接続し、第2層接続部18、第3層接続部19をそれぞれ2箇所に形成したものである。この配置によれば、図1(b)と同様に、超電導導体層の超電導特性が劣化しないという利点があり、また、接続部の位置が重ならないため、接続部の径が他の部分と同径に出来るという利点がある。更に、図1(b)の不足の超電導線材12c、13cに相当するものを配置する必要がなく、部品点数を少なくすることができるという利点がある。
【0017】
図1(d)に示す配置は、各層の超電導導体層の接続部を1層につき1箇所形成し、各層の接続部の位置を、ケーブルの長手方向において1層目の第1層接続部17に対して、2層目の第2層接続部18を左に、3層目の第3層接続部19を右というように、千鳥状に配置したものである。この配置は、図1(b)、(c)と同様に、超電導導体層の超電導特性が劣化しないという利点があり、また、接続部の位置が重ならないため、接続部の径が他の部分と同径に出来るという利点がある。更に、径方向に隣り合う導体層の接続部の位置が重ならずに、しかも接続用超電導線材の数及び接続部の数が増加することもないので、最も好ましい配置である。なお、図1(d)において第3層接続部19を右に配置せずに、第1層接続部17と同じ位置に配置しても、第3層接続部19と第2層接続部18が径方向において隣り合わない位置に配置されていることで、同様の利点を得ることができる。
【0018】
以上のように、図1では、3層の超電導導体層の場合を図示したが、本発明の実施形態においては、2層や4層でもよく、複数層の超電導導体層のうち、内外側で隣り合う層の接続部と重なり合わないように配置すればよい。特に、3層以上の超電導導体層であれば、図1(d)のような千鳥状に配置する構造が、接続部の位置が重ならずに、しかも接続用超電導線材の数及び接続部の数を増加させずに行うことができ、好ましい。
【0019】
図1のような接続構造体に用いる超電導線材は、RE系薄膜超電導線材を用いることは勿論、Bi系やMgBなどのシース超電導線材を用いてもよい。ここで、REは希土類元素であり、RE系超電導材料はY、Nd 、S m 、E u 、G d 、D y 、H o 、E r 、T m 、Y b 、L u から選ばれる1種類または2種類以上の元素からなる超電導材料である。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る超電導ケーブルの1層目の超電導導体層の接続構造を示す断面図である。図2において、超電導ケーブルの被接続端部1a,1bのフォーマ2a,2bが溶接により接続されている。図2では、フォーマ2a,2bの端面は逆向きの傾斜面であり、突合されてV型断面の凹部が形成され、この凹部が溶接材料2cにより埋められている状態を示す。このように、フォーマ2a,2bの接続された構造体は、どの部分も同径とされている。
【0021】
溶接されたフォーマ2a,2bの上に、超電導線材11a,11bが突合わされて配置されており、その突合わせ部の上に、接続用の超電導線材14が半田層6を介して接着され、接続部17を形成している。超電導線材11a,11bは、それぞれ基板11a−1,11b−1上に超電導薄膜を含む通電層11a−2,11b−2を有しており、基板11a−1,11b−1がフォーマ2a,2bに接するように配置されている。接続用超電導線材14は、超電導線材11a,11bと同様に基板14−1上に超電導薄膜を含む通電層14−2を有しており、接続用超電導線材14の通電層14−2が通電層11a−2,11b−2と対向するように配置されている。なお、ここで言う通電層11a−2,11b−2,14−2とは、超電導薄膜を有し、電流が主に流れる層のことを指し、基板11a−1,11b−1,14−1とは反対側の超電導薄膜上に安定化層を有していてもよい。
【0022】
なお、図2における超電導線材11a,11bおよび接続用の超電導線材14は、RE系薄膜超電導線材を想定している。Bi系やMgBなどのシース超電導線材の場合には、基板と通電層といった構成はないため、通電層を対向するように配置する必要はない。
【0023】
このようにして、1層目の超電導導体層20は、超電導線材11aと超電導線材11bを、接続用超電導線材14を介して電気的に接続した第1層接続部17によって接続されている。
【0024】
以上のように構成された超電導ケーブルの接続構造体では、フォーマ2a,2bが溶接により接続され、接合部が他の部分と同径とされているため、その上に形成される超電導線材の接続構造が上層から圧縮されて、超電導特性が劣化するという現象は生じない。
【0025】
図2に示す構成は、フォーマ上の第1層の超電導導体層における超電導線材の接続構造を示しているが、複数層の場合にも、図1のような第2層および第3層の超電導導体層の接続部は同様な構成をとる。
【0026】
以上のように、超電導線材の層数が増えると、それに伴い、接続箇所が増加し、接続不良の数も増加してしまう。また、接続不良かどうかの判定は、液体窒素中における抵抗を測定しなければわからないので、接続作業の際に判定することは困難である。従って、このような接続不良の判定を簡単な方法で行なうことが望まれている。以下、そのような接続不良の判定方法について説明する。
【0027】
図3に示すような接続部構造の多くの試料を作成する。試料は、幅10mmの超電導線材3,4同士を、幅10mm、長さ100mmの接続用超電導線材5により半田6を介して接続したもので、距離120mmの位置A及びBに電圧端子をとり、その外側の位置C及びDに電流端子が取り出されるようにされている。なお、試料としては、良品と悪品の両者を作成する。悪品は、超電導線材の接着に用いる半田テープを巻回する範囲を少なくしたり、半田テープを巻回する接続部にフラックスを塗らないことにより作成した。
【0028】
まず、これらの試料の常温時における接続抵抗を4端子法により測定する。即ち、端子CD間に1〜100mAの電流を流し、端子AB間に発生した電圧から常温時の抵抗Rを算出する。
【0029】
次に、試料を液体窒素中に浸漬し、端子CD間に電流を流し、臨界電流Ic近くまで徐々に電流値を上げていき、横軸に電流、縦軸に電圧をとった座標にプロットし、傾きが一定の範囲の電流、電圧値から抵抗を算出する。
【0030】
以上のようにして、接続構造の常温時の抵抗Rと液体窒素中の抵抗Rとを求め、横軸にRを、縦軸にRをとってプロットしたところ、図4に示す結果を得た。なお、図中、白丸(○)が良品についてのデータで、黒丸(●)が悪品についてのデータである。
【0031】
図4に示す結果から明らかなように、良品ではR及びRがいずれも低いのに対し、悪品ではR及びRがいずれも高い。これらの結果から、Rが低いとRも低いが、Rが高いとRも高いことがわかる。このことは、Rを測定するだけで、Rを測定することなく、良品、悪品の判定をすることが出来ることを意味する。図4に示す結果から、接続構造の常温時の抵抗Rが1300μΩ以下であれば良品、1300μΩを超えると、悪品であると判定することが出来る。
【0032】
以上は、幅10mmの超電導線材の抵抗についての判定方法であるが、実際の接続構造では、フォーマの周囲に複数本(n本)の超電導線材を配置するので、その場合の接続抵抗は、上記抵抗Rをnで割った値である。
【0033】
従って、具体的な良品、悪品の判定を行なう際には、幅wの超電導線材の接続構造についての室温下での抵抗と、冷却下での抵抗との相関から、良品、悪品の閾値である室温下での抵抗Rを求め、接続に使用した幅vの超電導線材の本数がn本であるとき、室温下での抵抗がR/(nv/w)より小さいときに良品と判定することができる。
【0034】
以下、本発明の一実施例としての超電導ケーブルの接続方法について、図面を参照して説明する。
【0035】
図5は、3相の超電導ケーブルの構造を示す図である。図5において、超電導ケーブル1は、その断面中心から外側に積層された、フォーマ2、6層の超電導導体層3、絶縁層7、4層の超電導シールド層8、及び保護層9からなる超電導ケーブルコア10が断熱管11内に収納された構造を有している。
【0036】
断熱管11は、ステンレスまたはアルミからなる内管11aと外管11cとを同心配置し、それらの間にスーパーインシュレーションやアルミ蒸着フィルムなどの絶縁材11bを介在させて構成され、熱絶縁性能を向上させるために、外管と内管の間を真空排気している。
【0037】
フォーマ2は、エナメル絶縁、ホルマル絶縁などによって絶縁被覆された導体線を多層に撚り合されて構成される。この導体線としては、銅線、アルミ線や強度を目的とした銅合金線を用いることができ、銅線が最も好ましい。超電導線材3は、フォーマ2上に超電導線材を多層に螺旋状に巻回することにより構成される。
【0038】
超電導導体層3を形成する超電導線材4は、例えば、金属基板4a上に中間層4b、YBCO(YBa2Cu3Ox)超電導薄膜4c、安定化層4d、および保護層4eを形成したYBCO超電導線であり、テープ状のものである。ここで、通電層としては、超電導薄膜4cを含んでいればよく、この構造では、少なくとも超電導薄膜4c、安定化層4dおよび保護層4eを有した層を指す。
【0039】
絶縁層7は、絶縁紙、絶縁紙とポリプロピレンフィルムとを接合した半合成紙、高分子不織テープなどを超電導導体層3上に巻回することにより構成される。また、超電導シールド層8は、超電導導体層3に用いたものと同様の超電導線材を絶縁層7上に多層にらせん状に巻回することにより構成され、保護層9は、絶縁紙、高分子不織布、金属テープと絶縁紙や高分子不織布の積層などを超電導シールド層8上に巻回することにより構成される。
【0040】
次に、上記の超電導ケーブル同士を接続するプロセスについて、図2を参照して説明する。なお、図2では、フォーマ2上に1層の超電導線材3が設けられている構成のみを図示している。
【0041】
超電導ケーブル同士を接続する際、まず、超電導ケーブル端部から超電導ケーブルコア10を、断熱管11から一定長さだけ突き出して、露出させる。次いで、接続されるケーブルコア10の先端から順に段剥ぎする。即ち、ケーブルコア10の先端のフォーマ2、超電導導体層3、絶縁層7、超電導シールド層8、保護層9の各層を、最も外側の保護層9から順次所定の長さだけ剥ぐことにより、各層を露出させる。なお、フォーマ2の露出長さは、溶接時の銅を溶解する温度に対して、その外側の層である超電導線材3が高温にならない程度の長さ(150〜200mm)とすることが望ましい。
【0042】
この場合、超電導シールド層8及び超電導線材3の被接続端部は、所定の冶具に沿わせてカールして後方に逃がしておくとよい。
【0043】
次いで、図2に示すように、フォーマ2a,2bの接続端部を例えば45度の角度で切断し、突き合せ、引き続き、溶接を行う。カットする角度は、45度に限ることはなく、溶接時に溶融した溶接材料が隙間無く十分に充填する角度で30〜60度の範囲で適宜選択することが出来る。カットする角度が大き過ぎる場合には、溶接部の長さが長くなり,小さ過ぎる場合には、溶接金属を溶かしてフォーマ母材に接続する為の溶接トーチが2本のフォーマの間に入らずに十分な溶け込みが出来なくなり、好ましくない。フォーマ2a,2bの先端を斜めにカットする方法として、グラインダーで切削する方法や金属切断用のこぎりなどで切る方法を挙げることができる。
【0044】
溶接は、ガス溶接、アーク溶接、抵抗溶接、電子ビーム溶接などの方法を採用することが出来る。溶接は、フォーマ2a,2bの端部と溶接材料2cを溶解して、突き合された接続部、即ち、V字型断面の部分を埋めることにより行う。
【0045】
使用する溶接材料2cは、フォーマを構成する金属材料の少なくてもひとつを含むことが望ましい。例えば、フォーマ2a,2bとして銅素線を撚り合せたものを用いた場合、溶接材料2cとしては、銅、銅銀合金などを用いることが出来る。
【0046】
溶接に際しては、熱がフォーマ2a,2bを伝わって、超電導線材11a,11b、絶縁層7などに伝わり、これらの層が高熱になることで、超電導線材や絶縁紙が焼損や熱劣化することがないように、フォーマ2a,2bの先端と超電導線材11a,11b3,4までの間に、冷却装置を取り付けて冷却してもよい。
【0047】
なお、溶接は、所定の温度、例えば冷却装置の位置において、100℃を超えないように監視しつつ行なうのがよく、この温度を超えそうな場合には溶接を中断する。
【0048】
フォーマ2a,2bの先端を突合せ溶接した後、溶接部が盛り上がってフォーマの外径より太くなる場合があるが、そのような太い部分は、ヤスリやグラインダーなどを用いて削り、接続部の直径をフォーマ2a,2bの本体部の直径と一致させて、接続部で段差などが生じないようにする必要がある。
【0049】
その後、カールされて後方にある超電導線材11a,11bの被接続端部をフォーマ2a,2bの上に配置し、突合せる。次いで、突合せ部及びその近傍の表面にフラックスを塗布する。フラックスとしては、例えば、ハロゲン無添加の樹脂系のフラックスを用いることが出来る。
【0050】
そして、フラックスを塗布した上に、例えば厚さ0.1mmの薄い半田テープを巻き付ける。半田テープとしては、例えば、融点165℃のSn−43Pb−14Biを用いることが出来る。
【0051】
次いで、半田テープを巻き付けた上に、接続用超電導線材14を配置する。接続用超電導線材14としては、接続されるべき超電導線材11a,11bと同一のものを用いる。しかし、超電導線材11a,11bに合せてスパイラル状に配置する必要はない。また、接続用超電導線材14の本数は、超電導線材11a,11bの本数と同じか又はそれ以上とすることが望ましい。本数が多いほうが、隙間が生ずることがなく、また接続抵抗を下げる上で効果的である。
【0052】
次に、接続用超電導線材14を配置した構造にテフロン(登録商標)テープを巻き、間に熱電対を挿入し、その上にヒータを巻き、更にその上に断熱材を巻いて、超電導線材11a,11bの接続の準備が完了する。
【0053】
そして、ヒータの電源をONにし、接続部の加熱を開始し、熱電対により測定される温度が、例えば200℃に到達した時点、あるいは数秒から数十秒保持した後に、ヒータの電源をOFFとする。このような加熱により半田テープが溶融すると、超電導線材11a,11bの被接続端部と接続用超電導線材14とが接着され、超電導線材11a,11bの接続が完了する。
【0054】
次に、図3に示す端子CD間に電流を流し、端子AB間に発生した電圧から常温時の抵抗Rを算出し、上述した方法で良品、悪品の判定を行なう。悪品と判定された場合には、再度接続作業をやり直すが、良品と判定された場合には、接続部に透明フィルムを巻いて径を調整した後、2層目の超電導線材の接続を行なう。
【0055】
本発明者らは、以上説明した手順により、3層の超電導線材を接続した試験を行った。ここで用いた超電導線材4(図5における超電導線材4と同様のテープ構造)は、ハステロイ(登録商標)基板上4aに、中間層4bとしてIBAD-Gd2Zr2O7, PLD-CeO2を成膜し、超電導薄膜4cとしてMOCVD法によりYBCOを成膜し、更に、安定化層4dとして厚さ20μmのAg層を形成し、更に保護層4eとして厚さ100μmのCuを半田付けして形成したYBCO線材を用いた。
【0056】
1層目は、幅2mmの超電導線材を27本(全幅54mm)、2層目は、幅2mmの超電導線材を28本(全幅56mm)、3層目は、幅2mmの超電導線材を27本(全幅54mm)をそれぞれ接続し、各層の室温下での抵抗を求めた。その結果、1層目から順に、220μΩ、220μΩ、210μΩであった。これらを幅10mmの超電導線材の抵抗に換算すると、それぞれ1188μΩ、1232μΩ、1134μΩであった。これらの抵抗はいずれも、図4に示す良品、悪品の判定条件である1300μΩより低く、いずれも良品と判定された。
【0057】
また、液体窒素中での抵抗を求めた結果、1層目から順に、0.02μΩ、0.03μΩ、0.01μΩであった。これらを幅10mmの超電導線材の抵抗に換算すると、それぞれ0.108μΩ、0.168μΩ、0.054μΩであった。
【0058】
これらの室温下での抵抗R及び液体窒素中での抵抗Rを図4の座標にプロットすると、図4において□で表されているように、いずれも良品の範囲にある。
【0059】
以上のようにして、所定の複数層の超電導線材が接続されるが、その場合の接続部の位置は、図1(d)に示すように、2層目を右に、3層目を左というように、千鳥状に配置することが望ましい。
【0060】
次に、接続された超電導線材上の、絶縁層が除去されている位置に、空間が形成されることのないようにカーボン紙を巻きつけて径を調整することで、除去されていないそれ以外の絶縁層と同径となるようにカーボン紙で絶縁層を形成した後、超電導線材同士の接続と同様の手順で、絶縁層上で、超電導シールドを接続用超電導シールドを介して接続する。
【0061】
即ち、図6に示すように、接続されるべきケーブル用超電導シールド8a,8bを、カールを戻して揃えた後、その間のカーボン紙上に第1の接続用超電導シールド12aをスパイラル状に巻く。この際、ケーブル用超電導シールド8a、8bとスパイラルピッチを合せることが望ましい。次いで、ケーブル用超電導シールド8a、8bの被接続端部と第1の接続用超電導シールド12aの両端とを突き合せる。そして、第2の接続用超電導シールド12b,12cを突き合せ部に配置し、超電導線材同士の接続と同様にして、接続作業を行なう。常温下での抵抗の測定及び良品、悪品の判定は、超電導線材同士の接続と同様である。
【0062】
本発明者らは、以上説明した手順により、ケーブル用超電導シールドを接続した試験を行った。ケーブル用超電導シールドは、幅2mmの超電導線材を52本(全幅104mm)であり、右側のケーブル用超電導シールド8aと第1の接続用超電導シールド12aとの間の接続抵抗は、110μΩ、左側のケーブル用超電導シールド8bと第1の接続用超電導シールド12aとの間の接続抵抗は、120μΩであった。これらを幅10mmの超電導線材の抵抗に換算すると、それぞれ1144μΩ、1248μΩであり、いずれも、図4に示す良品、悪品の判定条件である1300μΩより低く、いずれも良品と判定された。
【0063】
また、液体窒素中での抵抗を求めた結果、右側のケーブル用超電導シールド8aと第1の接続用超電導シールド12aとの間の接続抵抗は、0.01μΩであり、左側のケーブル用超電導シールド8bと第1の接続用超電導シールド12aとの間の接続抵抗も0.01μΩであった。これらを幅10mmの超電導線材の抵抗に換算すると、いずれも0.104μΩであった。
【0064】
これらの室温下での抵抗及び液体窒素中での抵抗は、図4において▽で表されている。
【0065】
以上のようにして、1層のケーブル用超電導シールドが接続される。なお、多層のケーブル用超電導シールドを設けることも可能であり、そのような場合には、接続部の位置は、超電導線材同士の接続と同様に図1(b)〜(d)に示すように配置することができ、特に、図1(d)に示すように、2層目を左に、3層目を右というように、千鳥状に配置することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(a)は比較例である。(b)、(c)、(d)はそれぞれ本発明の一実施形態に係る超電導ケーブルの多層の超電導線材における接続部の位置の配置を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る超電導ケーブルの接続方法により接続された、超電導ケーブルの接続構造体を説明する断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る超電導ケーブルの接続構造体の良品、悪品の判定のための試料を示す図である。
【図4】良品及び悪品における接続構造の常温時の抵抗Rと液体窒素中の抵抗Rとの関係を示す特性図である。
【図5】通常の超電導ケーブルの構造を示す図である。
【図6】超電導シールドの接続部の配置を示す図である。
【図7】従来の超電導ケーブルの接続構造体を示す断面図である。
【図8】従来の超電導ケーブルの接続構造体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
2,2a,2b…フォーマ、2c・・・溶接金属、3…複数の超電導導体層,4,11a,11b,12a,12b,13a,13b,…超電導線材、14,15,15a,15b,16,16a,16b…接続用超電導線材、17…第1接続部、18…第2接続部、19…第3接続部、20…1層目の超電導導体層、21…2層目の超電導導体層、22…3層目の超電導導体層、7…絶縁層、8a,8b…超電導シールド、9…保護層、10…超電導ケーブルコア、11…断熱管、11a…内管、11b…断熱材、11c…外管、12a,12b,12c…接続用超電導シールド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマと、超電導線材とを具備し、前記超電導線材が前記フォーマ上に積層されて複数の超電導導体層を形成している超電導ケーブルの接続構造体であって、
前記超電導導体層のうち、1層目の超電導導体層は、前記超電導線材の接続端部同士が突合せて配置された突合せ部上において接続用超電導線材が前記超電導線材の各々の接続端部と電気的に接続された第1層接続部を有し、
前記超電導導体層のうち、2層目の超電導導体層は、前記第1層接続部と長手方向に異なる位置に、接続用超電導線材が前記超電導線材の各々の接続端部と電気的に接続された第2層接続部を少なくとも1箇所有している
ことを特徴とする超電導ケーブルの接続構造体。
【請求項2】
前記超電導導体層は3層からなり、前記超電導導体層のうち、3層目の超電導導体層は、前記第2層接続部と長手方向に異なる位置に接続用超電導線材が前記超電導線材の各々の接続端部と電気的に接続された第3層接続部を少なくとも1箇所有していることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの接続構造体。
【請求項3】
前記超電導導体層の接続部は1層につき1箇所形成されており、ケーブルの長手方向において千鳥状に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の超電導ケーブルの接続構造体。
【請求項4】
前記超電導線材及び接続用超電導線材は、基板と、超電導薄膜を含む通電層とを有し、
前記超電導導体層の接続部は、前記超電導線材の接続端部の通電層と、前記接続用超電導線材の通電層とが、半田により接着してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの接続構造体。
【請求項5】
フォーマと、超電導線材とを具備し、前記超電導線材が前記フォーマ上に積層されて複数の超電導導体層を形成している超電導ケーブルの接続方法において、
(a)前記超電導ケーブルの被接続端部の所定領域を露出させる工程、
(b)接続部がそれ以外のフォーマの部分と同径となるように、前記露出したフォーマの先端同士を溶接する工程、
(c)前記超電導線材の被接続端部同士を突合せる工程、
(d)前記被接続端部の突合せ部に半田テープを巻回する工程、
(e)前記突合せ部の半田テープを巻回した部分上に接続用超電導線材を配置する工程、
(f)前記(e)工程にておいて半田テープを巻回した部分を加熱して、前記超電導線材の被接続端部に接続用超電導線材を半田により接着し、1層目の超電導導体層を接続する工程、
(g)前記1層目の超電導導体層の接続部上に、それ以外の絶縁層の部分と同径となるように、絶縁層を形成する工程、
(h)2層目の超電導導体層において、前記1層目の接続部と長手方向に異なる位置で(c)、(d)および(e)を行う工程、
(i)前記(h)工程にておいて半田テープを巻回した部分を加熱して、前記超電導線材の被接続端部に接続用超電導線材を半田により接着し、2層目の超電導導体層を接続する工程
を具備することを特徴とする超電導ケーブルの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−240100(P2009−240100A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84889(P2008−84889)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超電導応用基盤技術研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】