説明

超音波センサ、その調整方法、及びその製造方法

【課題】超音波センサとしての特性を満足しながらも、小型化・薄肉化を図ることのできる超音波センサ、その調整方法、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】超音波センサ1では、トランス30は、1次側コイル31に接続される2本の第2接続ピン41aと2次側コイルに接続される2本の第2接続ピン41bとを有する接続基板40を介して超音波振動子10と一体化され、超音波振動子10の共振周波数である第1共振周波数fと、超音波振動子10及び2次側コイル32によって構成される電気回路の共振周波数である第2共振周波数f’との差が小さくなるように、調整機構34によって2次側コイル32のインダクタLが調整された状態にて、ケース60内に組み付けられて回路基板20と超音波振動子10との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバンパ等に配置されて当該車両近傍の障害物を超音波にて検知する超音波センサ、その調整方法、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の超音波センサとして、例えば特許文献1に記載の超音波センサが知られている。この特許文献1に記載の超音波センサを含めた従来の超音波センサについて、図8を参照して説明する。
【0003】
図8に示すように、超音波センサ100は、外部に露出した振動面S1にて受信した超音波を電気信号に変換する超音波振動子110と、この超音波振動子110にて変換された電気信号に基づいて障害物を検知する処理回路が作製された回路基板120と、開口面を有し、超音波振動子110及び回路基板120が開口面から挿入されて内部に組み付けられる中空状のケース160とを備えて構成されている。
【0004】
超音波センサ100は、超音波振動子110及び回路基板120がケース160に組み付けられた状態で、回路基板120の処理回路が作製された上表面S2と超音波振動子110の振動面S1とが平行となり、超音波振動子110と回路基板120とが、接続ピン115と、超音波振動子110が押し込まれたときに発生する押圧を緩和する中継ピン(押圧緩和機構)121とを介して電気的に接続される。
【0005】
これにより、超音波振動子110が外部から押されることで接続ピン115が押し込まれても、そのとき発生する押圧を中継ピン121にて緩和することが可能となり、超音波振動子110が押し込まれたときに超音波振動子110と回路基板120との電気的な接続が破壊されないようにすることができるようになる。
【0006】
また、超音波センサ100は、超音波振動子110から出力される電気信号の電圧を増幅するトランス130が回路基板120の上表面S2、すなわち回路基板120の超音波振動子110と反対側の表面に実装されている。このトランス130は、回路基板120に電気的に接続される図示しない1次側コイルと、超音波振動子110に電気的に接続される図示しない2次側コイルと、2次側コイルのインダクタLを調整する調整機構133(例えばねじ式の調整機構)を有して構成されている。調整機構133は、トランス130の上表面、すなわち回路基板120の超音波振動子110と反対側の表面である上表面S2側に配置されていることから、超音波振動子110及び回路基板120がケース160に組み付けられた後、調整機構133によって2次側コイルのインダクタLを調整することが可能である。調整機構133によって2次側コイルのインダクタLを調整することにより、超音波振動子110から出力した超音波の残響時間が最短となるとともに超音波振動子110にて受信した超音波を変換した電気信号の電圧のピークが最大となり、超音波センサ100としての特性を満足することができるようになる。なお、調整機構133による調整前の電気信号の電圧波形を図9(a)に示し、調整機構133による調整後の電気信号の電圧波形を図9(b)に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−281999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、超音波センサの搭載スペースの制約や超音波センサの軽量化等により、超音波センサのさらなる小型化・薄肉化が求められている。
【0009】
図8に示した超音波センサ100では、トランス130が回路基板120の上表面S2に実装されていることから、超音波センサ100の厚さH1はこのトランス130の高さ分だけ厚くなってしまう。
【0010】
そこで、超音波振動子110と回路基板120との間に中継ピン121によって押圧を緩和するために設けられたスペースを有効活用するべく、上記従来技術の改良例として、トランス130を回路基板120の裏面S3、すなわち回路基板120の超音波振動子110側の表面に実装することが考えられる。これにより、超音波センサ100の小型化・薄肉化を図ることができるようになる。
【0011】
しかしながら、トランス130を回路基板120の裏面S3に実装すると、調整機構133も回路基板120の裏面S3側に配置されることから、超音波振動子110及び回路基板120がケース160に組み付けられた後、調整機構133によって2次側コイルのインダクタLを調整することができなくなってしまう。そしてひいては、超音波センサ100としての特性が満足されなくなってしまう。
【0012】
なお、超音波振動子110と回路基板120とが、接続ピン115だけでなく中継ピン121を介して電気的に接続される構成について説明したが、超音波振動子110と回路基板120とが、中継ピン121を介さず接続ピン115を介して電気的に接続される構成でも、上記問題が同様に生じる。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、超音波センサとしての特性を満足しながらも、小型化・薄肉化を図ることのできる超音波センサ、その調整方法、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、外部に露出して振動する振動面から超音波を送信するとともに、当該振動面にて受信した超音波を電気信号に変換する超音波振動子と、超音波振動子から超音波を送信させるとともに、超音波振動子にて変換された電気信号に基づいて障害物を検知する処理回路が作製された回路基板と、回路基板に接続される1次側コイルと、超音波振動子に接続される2次側コイルと、これら1次側コイル及び2次側コイルの少なくとも一方のインダクタを調整する調整機構とを有し、超音波振動子から出力された電気信号の電圧を増幅するトランスと、開口面を有し、超音波振動子、トランス、及び回路基板が開口面から挿入されて内部に組み付けられる中空状のケースとを備える超音波センサであって、トランスは、超音波振動子と一体化され、調整機構による調整が実施された状態にて、回路基板と超音波振動子との間に配置されていることを特徴とする。
【0015】
超音波センサとしての上記構成では、トランスが超音波振動子と一体化されて回路基板と超音波振動子との間に配置されることから、トランスが回路基板の上表面に実装されている上記従来技術とは異なり、超音波振動子と回路基板との間のスペースを有効に活用することができ、超音波センサの小型化・薄肉化を図ることができるようになる。
【0016】
また、超音波センサとしての上記構成では、調整機構による調整が実施された状態にて回路基板と超音波振動子との間に配置されることから、調整機構によって調整することができない上記改良例とは異なり、超音波センサとしての特性が満足されなくなることはない。
【0017】
したがって、上記請求項1に記載の構成によれば、超音波センサとしての特性を満足しながらも、小型化・薄肉化を図ることができるようになる。
【0018】
なお、上記請求項1に記載の構成において、請求項2に記載の発明のように、当該超音波センサは、超音波振動子、トランス、及び回路基板をケースに組み付けた状態で、回路基板の処理回路が作製された表面と超音波振動子の振動面とが平行となり、超音波振動子及びトランスと回路基板とが接続ピン及び押圧緩和機構を介して電気的に接続されているとよい。
【0019】
また、上記請求項2に記載の構成において、請求項3に記載の発明のように、トランスは、1次側コイル及び2次側コイルが巻き付けられるコアを有しており、コアは、当該コアに巻き付けられた1次側コイルの向き及び2次側コイルの向きが超音波振動子の振動面に対し垂直となる向きに配置されているとよい。
【0020】
また、上記請求項2または3に記載の構成において、請求項4に記載の発明のように、トランスは、1次側コイルに接続される2本の接続ピンと2次側コイルに接続される2本の接続ピンとを有する接続基板を介して、超音波振動子と一体化されているとよい。これにより、トランスと超音波振動子と容易に一体化することができるようになる。
【0021】
上記請求項4に記載の構成において、請求項5に記載の発明では、超音波振動子は、その指向性が水平方向と垂直方向とで異なるように構成されており、接続ピンは、接続基板の表面に、超音波振動子の指向性の水平方向及び垂直方向に対応付けられた離間距離をもって平面視矩形状に配置されていることとした。これにより、超音波振動子の指向性を接続ピンの配置形状から判別することができるようになる。
【0022】
上記請求項2〜5のいずれか一項に記載の構成において、請求項6に記載の発明のように、押圧緩和機構は、超音波振動子を開口面に挿入する方向に接続ピンが押し込まれると、この方向に撓む中継ピンであるとよい。これにより、超音波振動子が押し込まれたときに発生する押圧を緩和することができるようになる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、上記請求項1〜6に記載の超音波センサを調整する調整方法であって、超音波振動子の共振周波数である第1共振周波数と、超音波振動子及び2次側コイルによって構成される電気回路の共振周波数である第2共振周波数との差が小さくなるように、調整機構によって前記2次側コイルのインダクタを調整する。これにより、超音波振動子から出力される超音波の残響時間が短くなるとともに超音波振動子にて受信した超音波を変換した電気信号の電圧のピークが大きくなるという、超音波センサとしての特性を満足することができるようになる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、上記請求項1〜6に記載の超音波センサを製造する方法であって、ケースには、超音波振動子を挿入するための第1の開口と、回路基板を挿入するための第2の開口とが設けられ、トランスを超音波振動子と一体化し、そのトランスの調整を行い、第1の開口からトランスを先頭側としてケース内に超音波振動子を挿入し、さらに、第2の開口から回路基板をケース内に挿入する。これにより、請求項1〜6に記載の超音波センサを製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る超音波センサ及びその調整方法の一実施の形態について、(a)は、超音波振動子とトランスとが一体化された後にケースに組み付けられた状態を示す側面断面図であり、(b)は、その平面図である。
【図2】本実施の形態を構成する超音波振動子について、(a)は超音波振動子の断面図であって(c)におけるA−A矢指断面図に相当する図であり、(b)は超音波振動子に備えられる圧電素子を収容したハウジングの裏面図であり、(c)は超音波振動子全体の裏面図である。
【図3】本実施の形態を構成するトランスの内部構造を示す側面図である。
【図4】本実施の形態を構成する超音波振動子とトランスとが一体化された状態を示す側面図である。
【図5】トランスと超音波振動子とが一体化された状態において、(a)は、超音波振動子及びトランスの電気的な接続状態を示す図であり、(b)は、超音波振動子及び2次側コイルによって構成される電気回路の等価回路図である。
【図6】超音波振動子及び2次側コイルによって構成される電気回路の周波数特性について、(a)は、調整機構による調整前の周波数特性を示す図であり、(b)は調整機構による調整後の周波数特性を示す図である。
【図7】本実施の形態の超音波センサの変形例を示す平面図である。
【図8】従来の超音波センサの側面断面図である。
【図9】従来の超音波センサの調整方法について、(a)は調整前の電気信号の電圧波形を示す図であり、(b)は調整後の電気信号の電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る超音波センサ、その調整方法、その製造方法の一実施の形態について、図1〜図6を参照して説明する。なお、本実施の形態の超音波センサは、車両のバンパに取り付けられて、バックソナー又はコーナーソナーとして用いられる。
【0027】
図1(a)及び(b)に示されるように、本実施の形態の超音波センサ1は、外部に露出した振動面11bから超音波を送信するとともに、当該振動面にて受信した超音波を電気信号に変換する超音波センサである超音波振動子10と、超音波振動子10から超音波を送信させるとともに、超音波振動子10にて変換された電気信号に基づいて障害物を検知する処理回路が作製された回路基板20と、超音波振動子10から出力された電気信号の電圧を増幅するトランス30と、超音波振動子10とトランス30とを一体化する接続基板40と、超音波振動子10が押圧されたときにその押圧を緩和する中継ピン50とが、合成樹脂からなる中空状のケース60内に組み付けられて構成されている。
【0028】
図2(a)〜(c)を参照して、超音波振動子10について詳述する。超音波振動子10は、図2(a)〜(c)に示されるように、ハウジング11、圧電素子12、スペーサ13、ベース14、及び一対の第1接続ピン15を有して構成されている。
【0029】
ハウジング11は、導電性材料(金属材料や表面に導電膜を形成した絶縁材料)で構成され、有底円筒状とされることでハウジング11の内部に内部空間16が形成されている。ハウジング11の底部11aの内面に圧電素子12が貼着されており、この底部11aの外側表面が振動面11bとなっている。本実施の形態では、導電性材料としてアルミニウムを用いており、振動面11bを円形状としている。また、内部空間16の上面形状は、図2(b)に示すように、長辺と短辺が異なる長さで、四隅が丸められた長方形状とされている。内部空間16をこのような形状とすることにより、超音波振動子10の指向性を水平方向と垂直方向とで異なるものとすることができる。なお、図2(b)においては、上下方向が指向性の狭い垂直方向、左右方向が指向性の広い水平方向となっている。
【0030】
圧電素子12は、圧電セラミックス(例えばチタン酸ジルコン酸鉛系)で構成され、その表裏両面に図示しない電極を備えている。圧電素子12の一方の電極は、リード17aによって一対の第1接続ピン15の一方に電気的に接続され、他方の電極は、ハウジング11の底部11aに導電性接着剤により貼着され、導電性材料で構成されたハウジング11を介してリード17bに接続されたのち、一対の第1接続ピン15の他方に電気的に接続されている。なお、ハウジング11の内部空間16には、スペーサ13及びベース14に設けられた図示しない注入口を介して、圧電素子12側から順にフェルト、シリコンが充填されており、振動面から第1接続ピン15に伝達される不要振動が抑制されている。
【0031】
スペーサ13は、ハウジング11の開口部とベース14との間に配置されている。スペーサ13は、ハウジング11の底部11aの振動に伴ってハウジング11の筒部11cに生じる不要振動が第1接続ピン15の固定されているベース14に伝達されるのを抑制する弾性体であり、例えばシリコンゴムから構成されている。なお、ここでは、スペーサ13を配置する構成としたが、スペーサ13を無くした構成とすることもできる。
【0032】
ベース14は、ハウジング11の開口部側の外周面にスペーサ13を介して嵌め込まれることで、ハウジング11に固定されている。このベース14は、絶縁材料、例えばABS樹脂等の合成樹脂で構成されている。ベース14には、第1接続ピン15が貫通配置されている。ベース14を成形する際に、第1接続ピン15をインサート成形することで、第1接続ピン15の一部がベース14に埋設固定されるようにしている。また、ベース14には、第1接続ピン15の長手方向に沿って延設された保護部18が備えられ、ハウジング11の外部に引き出された第1接続ピン15を、ベース14からハウジング外部の先端に向けて被覆している。この保護部18にて、一対の第1接続ピン15が一体的に被覆されている。
【0033】
また、ベース14には、第1接続ピン15が突出する方向に突出する第1の基準部14aが形成されている。第1の基準部14aの先端位置は、図2(c)に示すように、ベース14の外周面に対してベース14(超音波振動子10)の径方向において部分的に突出させられている。
【0034】
第1接続ピン15は、例えば銅を主成分とする導電性材料からなり、例えば太さ0.5mmφの棒状部材で構成される。本実施の形態では、超音波振動子10(圧電素子12)の指向性が水平方向と垂直方向とで異なるように構成してあるため、第1接続ピン15および保護部18を、図2(c)に示すように、超音波振動子10(ハウジング11)の中心軸からずれた位置に設けている。
【0035】
超音波振動子10には、例えば発泡シリコン等で構成された発泡弾性体19が備えられている。この発泡弾性体19は、保護部18に対向するようにスペーサ13に設けられ、第1接続ピン15などの振動を抑制する弾性体として機能するもので、第1接続ピン15は発泡弾性体19も貫通するように配置されている。なお、ここでは発泡弾性体19を備えた構成としているが、備えていない構造とすることもできる。
【0036】
そして、ハウジング11、スペーサ13、ベース14、発泡弾性体19が、それぞれ接着剤(例えばシリコン系接着剤)等で接着されることで、一体構造とされた超音波振動子10が構成されている。
【0037】
回路基板20は、第1接続ピン15、第2接続ピン41、及び中継ピン50を介して超音波振動子10と電気的に接続されている。回路基板20には、超音波振動子10(詳しくは圧電素子12)に超音波を発生させる駆動電圧を中継ピン50、第2接続ピン41、第1接続ピン15を介して印加するとともに、超音波振動子10から第2接続ピン41、第1接続ピン15、及び中継ピン50を介して入力された、圧電素子12の逆起電圧効果により発生した電圧を処理する処理回路が作製されている。なお、第2接続ピン41及び中継ピン50については後述するが、第2接続ピン41には、トランス30の1次側コイル31に接続される第2接続ピン41aと2次側コイル32に接続される第2接続ピン41bがあり、これらを総称する場合に単に第2接続ピン41と記載する。
【0038】
トランス30は、図3に示すように、1次側コイル31と、2次側コイル32と、これら1次側コイル31及び2次側コイル32が巻き付けられたコア33と、2次側コイル32のインダクタLを調整するネジ式の調整機構34とを有して構成されており、図4に示すように、接続基板40を介して超音波振動子10と一体化される。
【0039】
1次側コイル31は、コア33の図3において下方に所定巻数N1にて巻き付けられており、当該トランス30が接続基板40によって超音波振動子10と一体化されると、接続基板40の第2接続ピン41aに電気的に接続される。
【0040】
2次側コイル32は、コア33の図3において上方に所定巻数N2(>巻数N1)にて巻き付けられている。2次側コイル32は、当該トランス30が接続基板40によって超音波振動子10と一体化されると、第1接続ピン15を介して超音波振動子10(正確には圧電素子12)の電極及び第2接続ピン41bにそれぞれ電気的に接続される。
【0041】
コア33は、いわゆるEIコアによって構成されており、当該コア33に巻き付けられた1次側コイル31の向き及び2次側コイル32の向き、すなわち図3に矢印にて示す向きが、超音波振動子10の振動面11bに対し垂直となる向きとなるように、接続基板40によって超音波振動子10と一体化される。
【0042】
ねじ式の調整機構34は、本実施の形態では、コア33の図3において上面に設けられている。トランス30の上方からねじを回すことにより、2次側コイル32のインダクタLを増減することが可能であり、2次側コイル32のインダクタLを増減することにより、当該トランス30と一体化された超音波振動子10の特性、すなわち超音波センサ1の特性を調整することができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、1次側コイル31の向き及び2次側コイル32の向きが超音波振動子10の振動面11bに対し垂直となる向きとなるように、トランス30が接続基板40によって超音波振動子10と一体化されていたため、ねじ式の調整機構34がトランス30の上面に配置されることとなっていたが、これに限らない。1次側コイル31の向き及び2次側コイル32の向きが超音波振動子10の振動面11bと平行になる向きとなるように、トランス30を接続基板40によって超音波振動子10と一体化してもよく、この場合、ねじ式の調整機構34はトランス30の側面に配置されることになる。
【0044】
次に、超音波振動子10とトランス30とを一体化する接続基板40について説明する。接続基板40は、図1(b)及び図4に示すように、平面視正方形状の基板によって構成され、計「4本」の第2接続ピン41と、超音波振動子10の一対の第1接続ピン15の各々に対応するスルーホールH42と、配線L41と、配線L42と、これら図1(b)及び図4では図示しないコンデンサC2とを有して構成されている。
【0045】
第2接続ピン41は、第1接続ピン15と同様に、例えば銅を主成分とする導電性材料からなり、例えば太さ0.5mmφの棒状部材で構成される。第2接続ピン41は、図4に示されるように、接続基板40の上表面S41に対し垂直に、且つ、図1(b)に示されるように、接続基板40の上表面S41において一列に配置されている。
【0046】
超音波振動子10の静電容量が温度に起因して変化することから、コンデンサC2は、この温度変化に起因する静電容量の変化を調整するために設けられている。コンデンサC2については、省略して構成することも可能であるため、後述する図5では破線にて示している。
【0047】
超音波振動子10の上面の所定位置に接続基板40が載置されるとともに、この接続基板40の上表面S41の所定位置にトランス30が載置されると、超音波振動子10の第1接続ピン15はスルーホールH42を介して接続基板40を貫通し、この状態ではんだ付け等されることにより、超音波振動子10とトランス30とが接続基板40によって一体化される。
【0048】
図5(a)は、超音波振動子10とトランス30とが接続基板40によって一体化された状態において、超音波振動子10、接続基板40、及びトランス30の電気的な接続状態を示した図である。
【0049】
超音波振動子10とトランス30とが接続基板40によって一体化されると、計4本の第2接続ピン41のうち2本の第2接続ピン41bは、超音波振動子10、コンデンサC2、及び2次側コイル32の各々と第1接続ピン15を介して電気的に並列接続され、計4本の第2接続ピンのうち残りの2本の第2接続ピン41aは、1次側コイル31と電気的に接続される。
【0050】
ここで、超音波振動子10とトランス30とを接続基板40によって一体化した後そのままケース60に組み付けると、調整機構34が回路基板20の裏面S3側に配置されることから、調整機構34によって2次側コイル32のインダクタLを調整することができなくなってしまう。そしてひいては、超音波センサ1としての特性が満足されなくなってしまう。
【0051】
そこで、本実施の形態では、超音波振動子10とトランス30とを接続基板40によって一体化した後、調整機構34によって2次側コイル32のインダクタLを調整した上で、ケース60に組み付けることとした。したがって、超音波振動子110を超音波センサ100に組み付けた後にトランス130の2次側コイルを調整する従来の調整方法とは異なる調整方法となる。
【0052】
以下、超音波センサ1の調整方法について具体的に説明する。図5(b)は、超音波振動子10とトランス30とが接続基板40によって一体化された状態において、超音波振動子10及び2次側コイル32によって構成される電気回路の等価回路図である。超音波振動子10は、コンデンサC1とインダクタL1と抵抗R1とが直列接続された直列回路とコンデンサC0との並列回路10aとしてその周波数特性を表すことができ、超音波振動子10及び2次側コイル32によって構成される電気回路は、この並列回路10aとコンデンサC2と2次側コイル32に相当するインダクタL2との並列回路としてその周波数特性を表すことができる。
【0053】
図5(b)に示す等価回路では、第2接続ピン41bに印加する電圧の周波数を変化させると、並列回路10aの一部を構成する直列回路の共振周波数fにて共振が発生するとともに、並列回路10aの一部を構成するコンデンサC0、コンデンサC2、及びインダクタL2にて構成される並列回路の共振周波数f’にて共振が発生する。
【0054】
そして、本実施の形態の調整方法では、調整機構34にてインダクタL2を増減して共振周波数fと共振周波数f’との差が最小となるように調整する。
【0055】
図6(a)に、調整機構34による調整前の等価回路の周波数特性を示し、図6(b)に、調整機構34による調整後の等価回路の周波数特性を示す。これら図6(a)及び(b)のように、共振周波数fと共振周波数f’との差が小さくなるようにインダクタL2を調整機構34にて調整すると、ケース60に組み付けた後、超音波振動子10から出力される超音波の残響時間が短くなるとともに超音波振動子10にて受信した超音波を変換した電気信号の電圧のピークが大きくなるという、超音波センサ1としての特性を満足することができるようになる。なお、共振周波数f及び共振周波数f’はそれぞれ特許請求の範囲に記載の第1共振周波数及び第2共振周波数に相当する。
【0056】
中継ピン50は、第1接続ピン15や第2接続ピン41と同様に、例えば銅を主成分とする導電性材料からなり、平行部50a、折曲部50b、垂直部50c、孔50dを有して構成されている。平行部50aは、中継ピン50のうちケース60に組み付けられると回路基板20の表面に平行となる部分であり、折曲部50bは、ケース60に組み付けられると超音波振動子10が押し込まれたときに発生する押圧によって撓み、この押圧を緩和する部分であり、垂直部50cは、中継ピン50のうちケース60に組み付けられると回路基板20の表面と垂直となる部分であり、孔50dは、ケース60に組み付けられると第2接続ピン41が挿入されて電気的な接続を取る部分である。このように構成されることで、中継ピン50は、ケース60に組み付けられると、接続基板40によってトランス30と一体化された超音波振動子10と回路基板20とを電気的に接続しつつ、押し込まれたときに発生する押圧を緩和することができる。なお、本実施の形態では、押圧緩和機構として中継ピン50を採用することで、超音波振動子10と回路基板20との電気的な接続を取るとともに押圧を吸収していたが、これに限らず、ハーネスによって行なうこととしてもよい。ちなみに、中継ピン50が特許請求の範囲に記載の押圧緩和機構に相当する。
【0057】
ケース60には、図1(a)において下方に、接続基板40によってトランス30と一体化された超音波振動子10を挿入するための開口60bが設けられているとともに、図1(a)において上方に、回路基板20をケース60内に挿入するための開口60aとが設けられている。接続基板40によってトランス30と一体化されインダクタL2が調整された超音波振動子10は、開口60bからトランス30を先頭側としてケース60内に挿入され、その後、回路基板20及び中継ピン50は、開口60aからケース60内に挿入されて、当該超音波センサ1が製造される。このようにして製造された超音波センサ1では、回路基板20と超音波振動子10の振動面11bとは平行となり、超音波振動子10及びトランス30と回路基板20とは、第1接続ピン15、第2接続ピン41、及び中継ピン50を介して電気的に接続されることとなる。なお、開口60aが特許請求の範囲に記載の第2の開口に相当し、開口60bが特許請求の範囲に記載の第1の開口に相当する。
【0058】
以上説明した本実施の形態の超音波センサ1では、トランス30は、1次側コイル31に接続される2本の第2接続ピン41aと2次側コイルに接続される2本の接続ピン42bとを有する接続基板40を介して超音波振動子10と一体化され、超音波振動子10の共振周波数である第1共振周波数fと、超音波振動子10及び2次側コイル32によって構成される電気回路の共振周波数である第2共振周波数f’との差が小さくなるように、調整機構34によって2次側コイル32のインダクタLが調整された状態にて、ケース60内に組み付けられて回路基板20と超音波振動子10との間に配置されている。
【0059】
上記構成によれば、トランス30が超音波振動子10と一体化されて回路基板20と超音波振動子10との間に配置されることから、トランス130が回路基板120の上表面S2に実装されている背景技術の欄に記載した上記従来技術とは異なり、超音波振動子10と回路基板20との間のスペースを有効に活用することができ、超音波センサ1の小型化・薄肉化を図ることができるようになる(すなわち、超音波センサ1(図1)の厚さHは、超音波センサ100(図8)の厚さH1よりも薄くなる)。また、上記構成によれば、調整機構34によって調整された状態にて回路基板20と超音波振動子10との間に配置されることから、調整機構34によって調整することができない課題の欄に記載した改良例とは異なり、超音波センサ1としての特性が満足されなくなることはない。したがって、超音波センサ1としての特性を満足しながらも、小型化・薄肉化を図ることができるようになる。
【0060】
なお、本発明に係る超音波センサ1及びその調整方法は、上記実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
【0061】
上記実施の形態では、接続基板40の第2接続ピン41は、図1(b)に示されるように、接続基板40の上表面S41において一列に配置されていたが、これに限らない。第2接続ピン41は、接続基板40の上表面S41に、超音波振動子10の指向性の水平方向及び垂直方向に対応付けられた離間距離をもって平面視矩形状に配置されていてもよい。具体的には、図1(b)に対応する図として図7に示すように、第2接続ピン41bに対応する第2接続ピン41d及び第2接続ピン41aに対応する第2接続ピン41cは、第2接続ピン41d同士の離間距離と第2接続ピン41c同士の離間距離とが同一であり、且つ、第2接続ピン41dと第2接続ピン41cとの離間距離が第2接続ピン41d同士の離間距離及び第2接続ピン41c同士の離間距離よりも長い平面視矩形状に配置されていてもよい。ちなみに、この矩形の長辺に沿った方向が超音波センサ1の水平方向に対応付けられており、この矩形の短辺に沿った方向が超音波センサ1aの垂直方向に対応付けられているものとする。このような構成によれば、超音波センサ1aの指向性を第2接続ピン41c及び41dの配置形状から判別することができるようになる。なお、この矩形の長辺に沿った方向を超音波センサ1の垂直方向に対応付け、且つ、この矩形の短辺に沿った方向を超音波センサ1aの水平方向に対応付けてもよく、第2接続ピン41dと第2接続ピン41cとの離間距離が第2接続ピン41d同士の離間距離及び第2接続ピン41c同士の離間距離よりも短い平面視矩形状に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…超音波センサ、10…超音波振動子、10a…並列回路、11…ハウジング、12…圧電素子、13…スペーサ、14…ベース、15…第1接続ピン、20…回路基板、20a…孔、30…トランス、31…1次側コイル、32…2次側コイル、33…コア、34…調整機構、C2…コンデンサ、40…接続基板、41a〜41d…第2接続ピン、L41、L42…配線、H42…スルーホール、50…押圧緩和機構、50a…平行部、50b…折曲部、50c…垂直部、50d…孔、60…ケース、60a…(第2の)開口、60b…(第1の)開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に露出して振動する振動面にて受信した超音波を電気信号に変換する超音波振動子と、
前記超音波振動子にて変換された電気信号に基づいて障害物を検知する処理回路が作製された回路基板と、
前記回路基板に接続される1次側コイルと、前記超音波振動子に接続される2次側コイルと、これら1次側コイル及び2次側コイルの少なくとも一方のインダクタを調整する調整機構とを有し、前記超音波振動子から出力された電気信号の電圧を増幅するトランスと、
開口面を有し、前記超音波振動子、前記トランス、及び前記回路基板が前記開口面から挿入されて内部に組み付けられる中空状のケースとを備える超音波センサであって、
前記トランスは、前記超音波振動子と一体化され、前記調整機構による調整が実施された状態にて、前記回路基板と前記超音波振動子との間に配置されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサにおいて、
当該超音波センサは、前記超音波振動子、前記トランス、及び前記回路基板を前記ケースに組み付けた状態で、前記回路基板の前記処理回路が作製された表面と前記超音波振動子の振動面とが平行となり、前記超音波振動子及び前記トランスと前記回路基板とが接続ピン及び押圧緩和機構を介して電気的に接続されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波センサにおいて、
前記トランスは、前記1次側コイル及び前記2次側コイルが巻き付けられるコアを有しており、
前記コアは、当該コアに巻き付けられた前記1次側コイルの向き及び前記2次側コイルの向きが前記超音波振動子の振動面に対し垂直となる向きに配置されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の超音波センサにおいて、
前記トランスは、前記1次側コイルに接続される2本の接続ピンと前記2次側コイルに接続される2本の接続ピンとを有する接続基板を介して、前記超音波振動子と一体化されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波センサにおいて、
前記超音波振動子は、その指向性が水平方向と垂直方向とで異なるように構成されており、
前記接続ピンは、前記接続基板の表面に、前記超音波振動子の指向性の水平方向及び垂直方向に対応付けられた離間距離をもって平面視矩形状に配置されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の超音波センサにおいて、
前記押圧緩和機構は、前記超音波振動子を前記開口面に挿入する方向に前記接続ピンが押し込まれると、この方向に撓む中継ピンであることを特徴とする超音波センサ。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の超音波センサを調整する調整方法であって、
前記超音波振動子の共振周波数である第1共振周波数と、前記超音波振動子及び前記2次側コイルによって構成される電気回路の共振周波数である第2共振周波数との差が小さくなるように、前記調整機構によって前記2次側コイルのインダクタを調整することを特徴とする超音波センサの調整方法。
【請求項8】
請求項1〜6に記載の超音波センサを製造する方法であって、
前記ケースには、前記超音波振動子を挿入するための第1の開口と、前記回路基板を挿入するための第2の開口とが設けられ、
前記トランスを前記超音波振動子と一体化し、そのトランスの調整を行い、第1の開口からトランスを先頭側としてケース内に超音波振動子を挿入し、さらに、第2の開口から回路基板をケース内に挿入することを特徴とする超音波センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−239089(P2011−239089A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107547(P2010−107547)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】