超音波センサ
【課題】残響音および減衰音の影響を回避して検出対象物の位置および距離の高精度な測定が可能な超音波センサを低コストに提供する。
【解決手段】受信部10は、台座11と、同一寸法形状で同一構成の受信素子12a〜12dとから構成されている。平板矩形状の各受信素子12a〜12dは、円盤形状の台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cから45゜の等角度で放射状に配置されている。また、各受信素子12a〜12dは、台座11を横方向から見て、各受信素子12a〜12dの受信面Sの法線nが、台座11の中心軸C上の1つの点Pにて交わると共に、台座11の表面に対して45゜の等角度を成すように、各受信素子12a〜12dの長手方向の一端部が台座11の周縁に沿って台座11の表面上に取付固定されている。
【解決手段】受信部10は、台座11と、同一寸法形状で同一構成の受信素子12a〜12dとから構成されている。平板矩形状の各受信素子12a〜12dは、円盤形状の台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cから45゜の等角度で放射状に配置されている。また、各受信素子12a〜12dは、台座11を横方向から見て、各受信素子12a〜12dの受信面Sの法線nが、台座11の中心軸C上の1つの点Pにて交わると共に、台座11の表面に対して45゜の等角度を成すように、各受信素子12a〜12dの長手方向の一端部が台座11の周縁に沿って台座11の表面上に取付固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波センサに係り、詳しくは、受信した超音波を電気信号に変換するか又は電気信号を超音波に変換して発信する超音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、音響測深機や魚群探知機などの垂直ソナー、船舶が目標物の方向および自船からの距離を測定するための水平ソナー、臓器を画像化して診断するための超音波診断装置など、様々な分野に超音波センサが広く利用されている。
【0003】
また、近年、自動車(車両)に超音波センサを搭載し、その超音波センサから発信した人体に無害な超音波の反射を受信することにより、自動車の周囲にある物体の2次元あるいは3次元の位置測定および距離測定を行い、自動車の周囲を監視して安全走行に役立てる技術の開発がすすめられている。
例えば、自動車の後部に超音波センサを搭載し、自動車の後方に存在する物体(人間や障害物など)を検知する装置(一般に「バックソナー」と呼ばれる)を用い、当該物体との衝突を回避してバックでの駐車を支援する自動駐車支援システムが実用化されている。
【0004】
このような検出対象物の位置測定および距離測定に使用される超音波センサ(超音波探触子)として、例えば、有機高分子を介して連結された複数の圧電体素子からなる複合圧電体と、この複合圧電体の一方の面上に互いに間隙を保って複数個配列されたアレイ電極とを備え、上記アレイ電極の間隙部にあたる上記複合圧電体の部分には上記有機高分子より音波減衰係数の大きい充填材を充填したものが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−347797号公報(第2〜4頁 図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術を含め、従来の超音波センサにおいて、受信(受音)した超音波を電気信号に変換する受信部は、同一寸法形状の複数個の振動板(特許文献1のアレイ電極)を同一平面上にて1方向に整然と並べて配置する1次元配置、または、同一寸法形状の複数個の振動板を同一平面上にて縦横2方向に整然と並べて配置する2次元配置のいずれかの構造をとる。
そして、外部から入力した電気信号を超音波に変換して発信(発音)する超音波センサの発信部が、検出対象物に対して超音波を発信し、その超音波が検出対象物に反射した反射音を受信部の各振動板で受信する。
【0006】
そこで、受信部が複数個の振動板(受音板)で受信した超音波のタイミングのずれを検出し、その受信した超音波のタイミングのずれと発信部が発射した超音波とを比較することにより、検出対象物の2次元あるいは3次元の位置測定、超音波センサと検出対象物との距離測定などを行うことができる。
【0007】
また、従来の超音波センサの発信部は、通常、1個の振動板(発音板)から検出対象物に対して超音波を発信する。
尚、複数個の振動板から超音波を発信するタイプも提案されているが、そのタイプの発信部は、受信部と同様に、同一寸法形状の複数個の振動板を同一平面上に1次元配置または2次元配置した構造をとる。
そして、発信部が複数個の振動板を備える理由は、超音波の発信出力を増大することにある。
【0008】
ところで、検出対象物から反射した超音波は周囲の物体に何度も跳ね返って空間に残り、その空間に残った音からなる残響音(反射音)が発生することがある。
また、入力した電気信号の停止と同時に発信部の振動板の振動を停止させることは困難であり、振動板の振動は減衰しながら停止するため、発信部の発信した超音波には減衰音が生じる。
【0009】
この残響音および減衰音により、前記した超音波のタイミングのずれを正確に検出することが難しくなる。そのため、従来の超音波センサでは、以下の方策をとる必要がある。
(ア)受信部が受信した超音波から残響音および減衰音を取り除くため、受信部の生成した電気信号を処理する複雑な信号処理回路を設ける。
(イ)残響音および減衰音が消えてその影響を回避できるくらいの長周期のパルス波または連続波からなる超音波を発信部から発信させるため、発信部が入力する電気信号を処理する複雑な信号処理回路を設ける。
(ウ)減衰音を速やかに低減するため、発信部に特別な制振構造を設ける。
【0010】
しかし、複雑な信号処理回路や特別な制振構造を設けるとなると、超音波センサの製品コストが増大するという問題があった。
また、近年、残響音および減衰音の影響を回避し、検出対象物の位置および距離の測定精度を向上させるために、発信部から発信される超音波の指向性を任意に制御することが要求されている。
【0011】
本発明は上記問題を解決するため又は上記要求を満足するためになされたものであって、以下の目的を有するものである。
(1)残響音および減衰音の影響を回避して検出対象物の位置および距離の高精度な測定が可能な超音波センサを低コストに提供する。
(2)発信する超音波の指向性を任意に制御可能な超音波センサを低コストに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、受信した超音波を電気信号に変換するか又は電気信号を超音波に変換して発信する複数個の変換手段を備え、各変換手段が立体的に配置されたことを技術的特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波センサにおいて、
前記変換手段を3個以上の複数個備え、各変換手段は、超音波を受信するための受信面または超音波を発信するための発信面が、それぞれ等角度で放射状に配置されていることを技術的特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段は、各変換手段の一端部を含む平面に対して前記受信面または前記発信面が45゜の角度を成すように配置されていることを技術的特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段を覆う保護カバーを備えたことを技術的特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の超音波センサにおいて、
前記保護カバーの裏面側は前記各変換手段に密着していることを技術的特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の超音波センサにおいて、
前記保護カバーの裏面側と前記各変換手段との間には空隙が設けられていることを技術的特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記変換手段は、圧電式または静電容量式であることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
(請求項1)
請求項1の発明において、受信した超音波を電気信号に変換する受信素子として各変換手段を機能させ、各変換手段から受信部を構成する場合には、受信部とは別に設けた超音波センサの発信部が、検出対象物に対して超音波を発信し、その超音波が検出対象物に反射した反射音を受信部の各受信素子(変換手段)で受信する。
そして、受信部が各受信素子(変換手段)で受信した超音波の音圧差を検出し、その受信した超音波の音圧差と発信部が発射した超音波とを比較することにより、検出対象物の2次元あるいは3次元の位置測定、超音波センサと検出対象物との距離測定などを行うことができる。
【0020】
ところで、縦波は、その進行方向と同一方向に圧力を発生させ、その進行方向と垂直方向には圧力を発生させないという特性がある。
超音波は縦波であるため、変換手段が超音波を受信するための受信面に対する超音波の入射角が0゜の場合に受信面が受ける音圧が最大となり、入射角が90゜に近づくほど音圧が低下して、入射角が90゜の場合に音圧がゼロになる。
【0021】
変換手段は、受信面が受ける音圧が大きいほど、生成する電気信号のレベルが増大する。つまり、変換手段が受信した超音波を変換して生成する電気信号のレベルは、各変換手段の受信面に対する超音波の入射角に依存する。
ここで、変換手段が生成する電気信号のレベルは、変換手段の受信感度に対応し、電気信号のレベルが高いほど受信感度も高くなる。言い換えると、変換手段における超音波の受信感度は、受信面が受ける音圧に対応し、受信面に対する超音波の入射角に依存する。
【0022】
従って、請求項1の発明において、各変換手段を受信素子として機能させた場合には、各受信素子(変換手段)を立体的に配置することで、各受信素子の受信感度の入射角依存性を利用し、各受信素子で受信した超音波の音圧差に基づいて、検出対象物の位置測定および距離測定を正確に行うことができる。
【0023】
そして、請求項1の発明では、従来技術(同一寸法形状の複数個の振動板を同一平面上に1次元配置または2次元配置した構造)のように、複数個の振動板で受信した超音波のタイミングのずれに基づいて前記測定を行うのではなく、各受信素子(変換手段)で受信した超音波の音圧差に基づいて前記測定を行うため、残響音および減衰音の影響を回避して測定精度を向上させることができる。
【0024】
さらに、請求項1の発明によれば、従来技術のように複雑な信号処理回路や特別な制振構造を設ける必要がないため、超音波センサの製品コストを低下させることができる。
ここで、受信部を構成する各受信素子(変換手段)は、必要な前記測定精度および指向性に応じて立体的に配置すればよく、その受信素子の個数および配置状態はカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0025】
また、請求項1の発明において、外部から入力した電気信号を超音波に変換して発信する発信素子として各変換手段を機能させ、各変換手段から発信部を構成する場合には、発信部を構成する発信素子の個数は超音波の発信出力(音響出力)に対応し、その発信素子の個数を増やすほど発信出力を大きくすることができる。
【0026】
そして、発信部を構成する発信素子(変換手段)の配置状態を適宜設定することにより、超音波の発信方向の指向性を適宜設定することができる。
ここで、発信部を構成する各発信素子(変換手段)は、必要な発信出力および指向性に応じて立体的に配置すればよく、その発信素子の個数および配置状態はカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0027】
(請求項2)
請求項2の発明によれば、前記変換手段を3個以上の複数個設け、各変換手段の受信面または発信面を等角度で放射状に配置することにより、請求項1の発明の作用・効果を確実に得ることが可能になる。
【0028】
(請求項3)
請求項3の発明によれば、各変換手段の一端部を含む平面に対して受信面または発信面が45゜の角度を成すように配置することにより、請求項2の発明の作用・効果を更に確実に得ることが可能になる。
【0029】
(請求項4:第2実施形態に該当)
請求項4の発明によれば、各変換手段を覆う保護カバーを設けることにより、各変換手段を周辺環境から保護して超音波センサの耐候性を高めると共に、各変換手段の破損を防止できる。
【0030】
(請求項5:第2実施形態の第1構造例に該当)
請求項5の発明によれば、保護カバーの裏面側を各変換手段に密着させることにより、保護カバーと各変換手段の間で振動が直接伝達されることから、保護カバーを設けることによる各変換手段の受信感度または発信感度の低下を回避できる。
【0031】
ここで、保護カバーには、空気,塵埃,液体などを透過させない高い耐候性に加えて、超音波の高い伝達性と、各変換手段の振動を阻害しない程度の低い剛性とが要求される。このような要求を満たす材料として、例えば、各種金属(アルミニウム合金など)の薄膜、各種合成樹脂膜、ゴム膜などがある。
【0032】
(請求項6:第2実施形態の第2構造例に該当)
請求項6の発明によれば、保護カバーの裏面側と各変換手段との間に空隙を設けることにより、超音波センサに外力が加わっても、その外力は保護カバーに印加されるだけで、各変換手段には外力が直接印加されないため、各変換手段の破損を確実に防止できる。
【0033】
ここで、保護カバーには、空気,塵埃,液体などを透過させない高い耐候性に加えて、超音波により振動しやすく、超音波を屈折させずに透過させる性質が要求される。
また、保護カバーと各変換手段との空隙に液体,ゾル,ゲルのいずれかの充填材料を充填した場合には、その充填材料の音響インピーダンスを保護カバーの音響インピーダンスに近づけることにより、保護カバーと各変換手段との間の振動の伝達を確実に行うことが可能になり、各変換手段の受信感度または発信感度の低下を回避できる。
【0034】
(請求項7)
請求項7の発明によれば、圧電式または静電容量式の超音波センサを得ることができる。
【0035】
(用語の説明)
尚、上述した[課題を解決するための手段]に記載した構成要素と、後述する[発明を実施するための最良の形態]に記載した構成部材との対応関係は以下のようになっている。
「変換手段」は、受信素子(発信素子)12a〜12fに該当する。
請求項3の「各変換手段の一端部を含む平面」は、台座11の表面に該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面を参照しながら説明する。
尚、各実施形態において、第1実施形態と同一の構成部材については符号を等しくすると共に、同一内容の箇所については重複説明を省略してある。
【0037】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における超音波センサの受信部10の斜視図である。
図2(A)は、受信部10の平面図である。図2(B)は、受信部10の正面図である。
【0038】
受信部10は、台座11と、4個の同一寸法形状で同一構成の受信素子(変換手段)12a〜12dとから構成されている。
平板矩形状の各受信素子12a〜12dは、円盤形状の台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cから45゜の等角度で放射状に配置されている。
【0039】
また、各受信素子12a〜12dは、台座11を横方向から見て、各受信素子12a〜12dの受信面Sの法線nが台座11の中心軸C(前記放射状の中心軸)上の1つの点Pにて交わると共に、各受信素子12a〜12dの受信面Sが台座11の表面(各受信素子12a〜12dの一端部を含む平面)に対して45゜の等角度を成すように、各受信素子12a〜12dの長手方向の一端部が台座11の周縁に沿って台座11の表面上に取付固定されている。
つまり、各受信素子12a〜12dは、円盤形状の台座11を上方向から見て、一直線上に配置された各受信素子12a,12dおよび各受信素子12b,12cの受信面Sが90゜の等角度を成すように配置されている。
【0040】
[受信素子の構造]
図3〜図5は、各受信素子12a〜12dの第1〜第3構造例を示す概略縦断面図である。尚、図3〜図5では高さ方向(板厚方向)を誇張して図示してある。
【0041】
<第1構造例>
図3に示す第1構造例において、圧電式の各受信素子12a〜12dは、下部電極21、受信電極22、複合圧電体23などから構成されている。
平板矩形状の各電極21,22は平行に配置され、各電極21,22間には複合圧電体23が挟設されている。
複合圧電体23は、複数個の柱状の圧電体素子24と、有機高分子層25とから構成されている。
【0042】
各圧電体素子24は、その上下端部が各電極21,22に接続されている。
有機高分子層25は、各圧電体素子24の間隙に充填され、各圧電体素子24を互いに結合する。つまり、各圧電体素子24は有機高分子層25中に埋め込まれている。
尚、各圧電体素子24は、強誘電体(例えば、PZTなど)からなる。
また、有機高分子層25は、例えば、シリコンゴム、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などからなる。
【0043】
そして、受信電極22の表面が超音波の受信面Sとなり、超音波により受信電極22が振動すると、その振動は複合圧電体23に伝達され、複合圧電体23が振動すると圧電効果により電気信号が生成され、その電気信号は各電極21,22に接続された配線(図示略)を介して出力される。
つまり、第1構造例の各受信素子12a〜12dでは、各電極21,22および複合圧電体23の積層構造から振動板(受音板)が構成され、その振動板の受信した超音波が電気信号に変換される。
【0044】
<第2構造例>
図4に示す第2構造例において、圧電式の各受信素子12a〜12dは、下部電極21、受信電極22、誘電体層31などから構成されている。
各電極21,22間には、強誘電体(例えば、PZTなど)からなる誘電体層31が挟設されている。
【0045】
そして、受信電極22の表面が超音波の受信面Sとなり、超音波により受信電極22が振動すると、その振動は誘電体層31に伝達され、誘電体層31が振動すると圧電効果により電気信号が生成され、その電気信号は各電極21,22に接続された配線(図示略)を介して出力される。
つまり、第2構造例の各受信素子12a〜12dでは、各電極21,22および誘電体層31の積層構造から振動板(受音板)が構成され、その振動板の受信した超音波が電気信号に変換される。
【0046】
<第3構造例>
図5に示す第3構造例において、静電容量式(コンデンサ式)の各受信素子12a〜12dは、下部電極21、受信電極22、保持部材41などから構成されている。
各電極21,22の両端部間には保持部材41が挟設され、各電極21,22は間隙Kを設けて対向されている。
下部電極21は振動不能に固定されて固定電極を構成し、受信電極22は振動可能で可動電極を構成する。
【0047】
そして、受信電極22の表面が超音波の受信面Sとなり、超音波により受信電極22が振動すると、各電極21,22間の距離が変化し、各電極21,22間の静電容量も変化する。そこで、配線(図示略)を介して各電極21,22に接続された変換回路(図示略)を用い、各電極21,22間の静電容量の変化を電気信号に変換する。
つまり、第3構造例の各受信素子12a〜12dでは、受信電極22から振動板(受音板)が構成され、その振動板の受信した超音波が電気信号に変換される。
【0048】
[第1実施形態の作用・効果]
第1実施形態によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0049】
[1]
受信部10とは別に設けられた超音波センサの発信部(図示略)が、検出対象物に対して超音波を発信し、その超音波が検出対象物に反射した反射音を受信部10の各受信素子12a〜12dで受信する。
【0050】
そして、受信部10が各受信素子12a〜12dで受信した超音波の音圧差を検出し、その受信した超音波の音圧差と発信部が発射した超音波とを比較することにより、検出対象物の2次元あるいは3次元の位置測定、超音波センサと検出対象物との距離測定などを行うことができる。
尚、超音波センサの発信部には、どのような型式(例えば、圧電式や静電容量式など)を用いてもよい。
【0051】
[2]
図6は、受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θを説明するための説明図である。
受信面Sに対する超音波の入射角θとは、受信面Sの法線nと超音波の進入方向とがなす角度である。
【0052】
図7は、受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θと、受信面Sが受ける音圧との関係を示す特性図である。尚、音圧は、最大値を「1」として表示してある。
縦波は、その進行方向と同一方向に圧力を発生させ、その進行方向と垂直方向には圧力を発生させないという特性がある。
超音波は縦波であるため、受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θが0゜の場合に受信面Sが受ける音圧が最大となり、入射角θが90゜に近づくほど音圧が低下して、入射角θが90゜の場合に音圧がゼロになる。
【0053】
各受信素子12a〜12dは、受信面Sが受ける音圧が大きいほど受信電極22の撓みも大きくなるため、生成する電気信号のレベルが増大する。
つまり、各受信素子12a〜12dが受信した超音波を変換して生成する電気信号のレベルは、各受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θに依存する。
【0054】
ここで、各受信素子12a〜12dが生成する電気信号のレベルは、各受信素子12a〜12dの受信感度に対応し、電気信号のレベルが高いほど受信感度も高くなる。
言い換えると、各受信素子12a〜12dにおける超音波の受信感度は、受信面Sが受ける音圧に対応し、受信面Sに対する超音波の入射角θに依存する。
【0055】
[3]
図1および図2に示すように各受信素子12a〜12dを配置することで、各受信素子12a〜12dの受信感度の入射角依存性を利用し、各受信素子12a〜12dで受信した超音波の音圧差に基づいて、検出対象物の位置測定および距離測定を正確に行うことができる。
【0056】
ところで、検出対象物から反射した超音波は周囲の物体に何度も跳ね返って空間に残り、その空間に残った音からなる残響音(反射音)が発生することがある。
また、入力した電気信号の停止と同時に発信部の振動板の振動を停止させることは困難であり、振動板の振動は減衰しながら停止するため、発信部の発信した超音波には減衰音が生じる。
【0057】
しかし、第1実施形態の受信部10は、従来技術(同一寸法形状の複数個の振動板を同一平面上に1次元配置または2次元配置した構造)のように、複数個の振動板で受信した超音波のタイミングのずれに基づいて前記測定を行うのではなく、各受信素子12a〜12dで受信した超音波の音圧差に基づいて前記測定を行うため、残響音および減衰音の影響を回避して測定精度を向上させることができる。
そして、第1実施形態によれば、従来技術のように複雑な信号処理回路や特別な制振構造を設ける必要がないため、超音波センサの製品コストを低下させることができる。
【0058】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態における超音波センサの受信部50の斜視図である。
受信部50において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、各受信素子12a〜12dを覆う略円錐形状の保護カバー51が台座11の表面上に取付固定されている点だけである。
このように、各受信素子12a〜12dを覆う保護カバー51を設けることにより、各受信素子12a〜12dを周辺環境から保護して受信部50の耐候性を高めると共に、各受信素子12a〜12dの破損を防止できる。
【0059】
図9は、保護カバー51の第1構造例を説明するための一部縦断面図である。
保護カバー51の裏面側は各受信素子12a〜12dに密着している。
そのため、超音波によって保護カバー51が振動すると、その保護カバー51の振動は各受信素子12a〜12dに直接伝達されることから、保護カバー51を設けることによる各受信素子12a〜12dの受信感度の低下を回避できる。
【0060】
ここで、保護カバー51には、空気,塵埃,液体などを透過させない高い耐候性に加えて、超音波の高い伝達性と、各受信素子12a〜12dの振動を阻害しない程度の低い剛性とが要求される。このような要求を満たす材料として、例えば、各種金属(アルミニウム合金など)の薄膜、各種合成樹脂膜、ゴム膜などがある。
【0061】
図10は、保護カバー51の第2構造例を説明するための一部縦断面図である。
保護カバー51の裏面側と各受信素子12a〜12dとの間には、空隙Lが設けられている。
そのため、受信部50に外力が加わっても、その外力は保護カバー51に印加されるだけで、各受信素子12a〜12dには外力が直接印加されないため、各受信素子12a〜12dの破損を確実に防止できる。
ここで、保護カバー51には、空気,塵埃,液体などを透過させない高い耐候性に加えて、超音波により振動しやすく、超音波を屈折させずに透過させる性質が要求される。
【0062】
また、保護カバー51と各受信素子12a〜12dとの空隙Lに液体,ゾル,ゲルのいずれかの充填材料を充填した場合には、その充填材料の音響インピーダンスを保護カバー51の音響インピーダンスに近づけることにより、保護カバー51の振動を当該充填材料を介して各受信素子12a〜12dへ確実に伝達させることが可能になり、各受信素子12a〜12dの受信感度の低下を回避できる。
【0063】
尚、物質の音響インピーダンスは、その物質の密度と伝搬音速との積である。そして、物質間の音響インピーダンスが異なるほど、その物質間における音波の伝搬特性は悪化する。つまり、空隙Lの充填材料と保護カバー51の音響インピーダンスが異なるほど、超音波は保護カバー51で反射して充填材料に伝搬し難くなる。
【0064】
そのため、保護カバー51として合成樹脂膜を用いる場合には、当該合成樹脂の微粒子を液体中に分散させたゾルや、当該合成樹脂からなる高分子ゲルを充填材料として用いればよい。また、充填材料は各受信素子12a〜12dを侵さないものである必要がある。このような要求を満たす充填材料として、例えば、シリコンゲル、フッ素ゲルなどがある。
【0065】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態における超音波センサの受信部60の斜視図である。
図12(A)は、受信部60の平面図である。図12(B)は、受信部60の正面図である。
【0066】
受信部60は、台座11と、6個の同一寸法形状で同一構成の受信素子12a〜12fから構成されている。
平板矩形状の各受信素子12a〜12fは、円盤形状の台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cから30゜の等角度で放射状に配置されている。
【0067】
また、各受信素子12a〜12fは、台座11を横方向から見て、各受信素子12a〜12fの受信面Sの法線nが台座11の中心軸C上の1つの点Pにて交わると共に、各受信素子12a〜12fの受信面Sが台座11の表面に対して45゜の等角度を成すように、各受信素子12a〜12fの長手方向の一端部が台座11の周縁に沿って台座11の表面上に取付固定されている。
つまり、各受信素子12a〜12fは、円盤形状の台座11を上方向から見て、一直線上に配置された各受信素子12a,12e、各受信素子12b,12f、各受信素子12c,12dの受信面Sが90゜の等角度を成すように配置されている。
【0068】
このように、第3実施形態の受信部60において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、2個の受信素子12e,12fを追加すると共に、各受信素子12a〜12dの平面配置を変更した点だけである。
第3実施形態によれば、各受信素子12e,12fを追加した分だけ、超音波の受信方向の指向性を広くすると共に、各受信素子12a〜12fの受信感度の入射角依存性を用いた検出対象物の位置および距離の測定精度を向上させることが可能になるため、第1実施形態の前記作用・効果を更に高めることができる。
【0069】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態における超音波センサの受信部70の斜視図である。
図14(A)は、受信部70の平面図である。図14(B)は、受信部70の正面図である。
【0070】
受信部70は、台座11と、3個の同一寸法形状で同一構成の受信素子12a〜12cから構成されている。
平板矩形状の各受信素子12a〜12cは、円盤形状の台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cから60゜の等角度で放射状に配置されている。
【0071】
また、各受信素子12a〜12cは、台座11を横方向から見て、各受信素子12a〜12cの受信面Sの法線nが台座11の中心軸C上の1つの点Pにて交わると共に、各受信素子12a〜12cの受信面Sが台座11の表面に対して45゜の等角度を成すように、各受信素子12a〜12cの長手方向の一端部が台座11の周縁に沿って台座11の表面上に取付固定されている。
【0072】
このように、第4実施形態の受信部70において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、1個の受信素子12dを省くと共に、各受信素子12a〜12cの平面配置を変更した点だけである。
第4実施形態によれば、受信素子12dを省いた分だけ、第1実施形態の前記作用・効果が若干低下するものの、超音波センサの製品コストを削減することができる。
【0073】
[別の実施形態]
ところで、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等もしくはそれ以上の作用・効果を得ることができる。
【0074】
[別例1]
各受信素子12a〜12fは、台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cからそれぞれ適宜な角度で放射状に配置してもよく、適宜な形状(例えば、渦巻き状など)に配置してもよい。
また、各受信素子12a〜12fは、台座11を横方向から見て、台座11の表面に対して適宜な等角度を成すように配置してもよく、台座11の表面に対して各受信素子12a〜12fが別々の角度を成すように配置してもよい。
そして、各受信素子の個数は4個(第1実施形態),6個(第3実施形態),3個(第4実施形態)に限らず、3個以上の適宜な個数にしてもよい。
【0075】
すなわち、受信部を構成する各受信素子は、必要な前記測定精度および指向性に応じて立体的に配置すればよく、その受信素子の個数および配置状態はカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0076】
[別例2]
上記各実施形態は超音波センサの受信部に適用したものであるが、本発明は電気信号を超音波に変換して発信する超音波センサの発信部に適用してもよい。
すなわち、受信部10,50,60,70の各受信素子12a〜12fを、発信部の各発信素子として機能させてもよい。この場合、各受信素子12a〜12fの受信面Sは、発信素子から超音波を発信する発信面となる。
【0077】
例えば、各発信素子を図3に示す第1構造例(圧電式)にした場合には、各電極21,22に印加される電気信号に応じて、複合圧電体23が圧電効果により振動して電極22から超音波が発信する。
また、各発信素子を図4に示す第2構造例(圧電式)にした場合には、各電極21,22に印加される電気信号に応じて、誘電体層31が圧電効果により振動して電極22から超音波が発信する。
また、各発信素子を図5に示す第3構造例(コンデンサ式)にした場合には、各電極21,22に印加される電気信号に応じて、各電極21,22間に静電引力が発生し、その静電引力により電極22が振動して超音波が発生する。
【0078】
ところで、発信部を構成する発信素子の個数は超音波の発信出力(音響出力)に対応し、その発信素子の個数を増やすほど発信出力を大きくすることができる。
また、発信部を構成する発信素子の配置状態を適宜設定することにより、超音波の発信方向の指向性を適宜設定することができる。
【0079】
従って、各受信素子12a〜12fを発信部の各発信素子として機能させた場合も、前記[別例1]と同様に、発信部を構成する各発信素子は、必要な発信出力および指向性に応じて立体的に配置すればよく、その発信素子の個数および配置状態はカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0080】
例えば、発信部の各発信素子を受信部10,60,70の各受信素子12a〜12fと同様に配置した場合には、台座11を底面とする半球状の広い指向性が得られる。
また、各受信部10,60,70と同一構成の2個の発信部を用い、各発信部の台座11を裏面側同士貼り合わせて組み立てれば、完全な球状の無指向性が得られる。
図15は、受信部10と同一構成の2個の発信部80a,80bを用い、各発信部80a,80bの台座11を裏面側同士貼り合わせて組み立てた構成例を示す斜視図である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態における超音波センサの受信部10の斜視図。
【図2】図2(A)は受信部10の平面図。図2(B)は受信部10の正面図。
【図3】受信部10を構成する受信素子12a〜12dの第1構造例を示す概略縦断面図。
【図4】受信部10を構成する受信素子12a〜12dの第2構造例を示す概略縦断面図。
【図5】受信部10を構成する受信素子12a〜12dの第3構造例を示す概略縦断面図。
【図6】受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θを説明するための説明図。
【図7】受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θと、受信面Sが受ける音圧との関係を示す特性図。
【図8】本発明を具体化した第2実施形態における超音波センサの受信部50の斜視図。
【図9】第2実施形態の保護カバー51の第1構造例を説明するための一部縦断面図。
【図10】第2実施形態の保護カバー51の第2構造例を説明するための一部縦断面図。
【図11】本発明を具体化した第3実施形態における超音波センサの受信部60の斜視図。
【図12】図12(A)は受信部60の平面図。図12(B)は受信部60の正面図。
【図13】本発明を具体化した第4実施形態における超音波センサの受信部70の斜視図。
【図14】図14(A)は受信部70の平面図。図14(B)は受信部70の正面図。
【図15】本発明を具体化した別例2における超音波センサの発信部80a,80bの斜視図。
【符号の説明】
【0082】
10,50,60,70…超音波センサの受信部(発信部)
11…台座
12a〜12f…受信素子(発信素子)
S…受信面(発信面)
51…保護カバー
L…空隙
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波センサに係り、詳しくは、受信した超音波を電気信号に変換するか又は電気信号を超音波に変換して発信する超音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、音響測深機や魚群探知機などの垂直ソナー、船舶が目標物の方向および自船からの距離を測定するための水平ソナー、臓器を画像化して診断するための超音波診断装置など、様々な分野に超音波センサが広く利用されている。
【0003】
また、近年、自動車(車両)に超音波センサを搭載し、その超音波センサから発信した人体に無害な超音波の反射を受信することにより、自動車の周囲にある物体の2次元あるいは3次元の位置測定および距離測定を行い、自動車の周囲を監視して安全走行に役立てる技術の開発がすすめられている。
例えば、自動車の後部に超音波センサを搭載し、自動車の後方に存在する物体(人間や障害物など)を検知する装置(一般に「バックソナー」と呼ばれる)を用い、当該物体との衝突を回避してバックでの駐車を支援する自動駐車支援システムが実用化されている。
【0004】
このような検出対象物の位置測定および距離測定に使用される超音波センサ(超音波探触子)として、例えば、有機高分子を介して連結された複数の圧電体素子からなる複合圧電体と、この複合圧電体の一方の面上に互いに間隙を保って複数個配列されたアレイ電極とを備え、上記アレイ電極の間隙部にあたる上記複合圧電体の部分には上記有機高分子より音波減衰係数の大きい充填材を充填したものが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−347797号公報(第2〜4頁 図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術を含め、従来の超音波センサにおいて、受信(受音)した超音波を電気信号に変換する受信部は、同一寸法形状の複数個の振動板(特許文献1のアレイ電極)を同一平面上にて1方向に整然と並べて配置する1次元配置、または、同一寸法形状の複数個の振動板を同一平面上にて縦横2方向に整然と並べて配置する2次元配置のいずれかの構造をとる。
そして、外部から入力した電気信号を超音波に変換して発信(発音)する超音波センサの発信部が、検出対象物に対して超音波を発信し、その超音波が検出対象物に反射した反射音を受信部の各振動板で受信する。
【0006】
そこで、受信部が複数個の振動板(受音板)で受信した超音波のタイミングのずれを検出し、その受信した超音波のタイミングのずれと発信部が発射した超音波とを比較することにより、検出対象物の2次元あるいは3次元の位置測定、超音波センサと検出対象物との距離測定などを行うことができる。
【0007】
また、従来の超音波センサの発信部は、通常、1個の振動板(発音板)から検出対象物に対して超音波を発信する。
尚、複数個の振動板から超音波を発信するタイプも提案されているが、そのタイプの発信部は、受信部と同様に、同一寸法形状の複数個の振動板を同一平面上に1次元配置または2次元配置した構造をとる。
そして、発信部が複数個の振動板を備える理由は、超音波の発信出力を増大することにある。
【0008】
ところで、検出対象物から反射した超音波は周囲の物体に何度も跳ね返って空間に残り、その空間に残った音からなる残響音(反射音)が発生することがある。
また、入力した電気信号の停止と同時に発信部の振動板の振動を停止させることは困難であり、振動板の振動は減衰しながら停止するため、発信部の発信した超音波には減衰音が生じる。
【0009】
この残響音および減衰音により、前記した超音波のタイミングのずれを正確に検出することが難しくなる。そのため、従来の超音波センサでは、以下の方策をとる必要がある。
(ア)受信部が受信した超音波から残響音および減衰音を取り除くため、受信部の生成した電気信号を処理する複雑な信号処理回路を設ける。
(イ)残響音および減衰音が消えてその影響を回避できるくらいの長周期のパルス波または連続波からなる超音波を発信部から発信させるため、発信部が入力する電気信号を処理する複雑な信号処理回路を設ける。
(ウ)減衰音を速やかに低減するため、発信部に特別な制振構造を設ける。
【0010】
しかし、複雑な信号処理回路や特別な制振構造を設けるとなると、超音波センサの製品コストが増大するという問題があった。
また、近年、残響音および減衰音の影響を回避し、検出対象物の位置および距離の測定精度を向上させるために、発信部から発信される超音波の指向性を任意に制御することが要求されている。
【0011】
本発明は上記問題を解決するため又は上記要求を満足するためになされたものであって、以下の目的を有するものである。
(1)残響音および減衰音の影響を回避して検出対象物の位置および距離の高精度な測定が可能な超音波センサを低コストに提供する。
(2)発信する超音波の指向性を任意に制御可能な超音波センサを低コストに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、受信した超音波を電気信号に変換するか又は電気信号を超音波に変換して発信する複数個の変換手段を備え、各変換手段が立体的に配置されたことを技術的特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波センサにおいて、
前記変換手段を3個以上の複数個備え、各変換手段は、超音波を受信するための受信面または超音波を発信するための発信面が、それぞれ等角度で放射状に配置されていることを技術的特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段は、各変換手段の一端部を含む平面に対して前記受信面または前記発信面が45゜の角度を成すように配置されていることを技術的特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段を覆う保護カバーを備えたことを技術的特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の超音波センサにおいて、
前記保護カバーの裏面側は前記各変換手段に密着していることを技術的特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の超音波センサにおいて、
前記保護カバーの裏面側と前記各変換手段との間には空隙が設けられていることを技術的特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記変換手段は、圧電式または静電容量式であることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
(請求項1)
請求項1の発明において、受信した超音波を電気信号に変換する受信素子として各変換手段を機能させ、各変換手段から受信部を構成する場合には、受信部とは別に設けた超音波センサの発信部が、検出対象物に対して超音波を発信し、その超音波が検出対象物に反射した反射音を受信部の各受信素子(変換手段)で受信する。
そして、受信部が各受信素子(変換手段)で受信した超音波の音圧差を検出し、その受信した超音波の音圧差と発信部が発射した超音波とを比較することにより、検出対象物の2次元あるいは3次元の位置測定、超音波センサと検出対象物との距離測定などを行うことができる。
【0020】
ところで、縦波は、その進行方向と同一方向に圧力を発生させ、その進行方向と垂直方向には圧力を発生させないという特性がある。
超音波は縦波であるため、変換手段が超音波を受信するための受信面に対する超音波の入射角が0゜の場合に受信面が受ける音圧が最大となり、入射角が90゜に近づくほど音圧が低下して、入射角が90゜の場合に音圧がゼロになる。
【0021】
変換手段は、受信面が受ける音圧が大きいほど、生成する電気信号のレベルが増大する。つまり、変換手段が受信した超音波を変換して生成する電気信号のレベルは、各変換手段の受信面に対する超音波の入射角に依存する。
ここで、変換手段が生成する電気信号のレベルは、変換手段の受信感度に対応し、電気信号のレベルが高いほど受信感度も高くなる。言い換えると、変換手段における超音波の受信感度は、受信面が受ける音圧に対応し、受信面に対する超音波の入射角に依存する。
【0022】
従って、請求項1の発明において、各変換手段を受信素子として機能させた場合には、各受信素子(変換手段)を立体的に配置することで、各受信素子の受信感度の入射角依存性を利用し、各受信素子で受信した超音波の音圧差に基づいて、検出対象物の位置測定および距離測定を正確に行うことができる。
【0023】
そして、請求項1の発明では、従来技術(同一寸法形状の複数個の振動板を同一平面上に1次元配置または2次元配置した構造)のように、複数個の振動板で受信した超音波のタイミングのずれに基づいて前記測定を行うのではなく、各受信素子(変換手段)で受信した超音波の音圧差に基づいて前記測定を行うため、残響音および減衰音の影響を回避して測定精度を向上させることができる。
【0024】
さらに、請求項1の発明によれば、従来技術のように複雑な信号処理回路や特別な制振構造を設ける必要がないため、超音波センサの製品コストを低下させることができる。
ここで、受信部を構成する各受信素子(変換手段)は、必要な前記測定精度および指向性に応じて立体的に配置すればよく、その受信素子の個数および配置状態はカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0025】
また、請求項1の発明において、外部から入力した電気信号を超音波に変換して発信する発信素子として各変換手段を機能させ、各変換手段から発信部を構成する場合には、発信部を構成する発信素子の個数は超音波の発信出力(音響出力)に対応し、その発信素子の個数を増やすほど発信出力を大きくすることができる。
【0026】
そして、発信部を構成する発信素子(変換手段)の配置状態を適宜設定することにより、超音波の発信方向の指向性を適宜設定することができる。
ここで、発信部を構成する各発信素子(変換手段)は、必要な発信出力および指向性に応じて立体的に配置すればよく、その発信素子の個数および配置状態はカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0027】
(請求項2)
請求項2の発明によれば、前記変換手段を3個以上の複数個設け、各変換手段の受信面または発信面を等角度で放射状に配置することにより、請求項1の発明の作用・効果を確実に得ることが可能になる。
【0028】
(請求項3)
請求項3の発明によれば、各変換手段の一端部を含む平面に対して受信面または発信面が45゜の角度を成すように配置することにより、請求項2の発明の作用・効果を更に確実に得ることが可能になる。
【0029】
(請求項4:第2実施形態に該当)
請求項4の発明によれば、各変換手段を覆う保護カバーを設けることにより、各変換手段を周辺環境から保護して超音波センサの耐候性を高めると共に、各変換手段の破損を防止できる。
【0030】
(請求項5:第2実施形態の第1構造例に該当)
請求項5の発明によれば、保護カバーの裏面側を各変換手段に密着させることにより、保護カバーと各変換手段の間で振動が直接伝達されることから、保護カバーを設けることによる各変換手段の受信感度または発信感度の低下を回避できる。
【0031】
ここで、保護カバーには、空気,塵埃,液体などを透過させない高い耐候性に加えて、超音波の高い伝達性と、各変換手段の振動を阻害しない程度の低い剛性とが要求される。このような要求を満たす材料として、例えば、各種金属(アルミニウム合金など)の薄膜、各種合成樹脂膜、ゴム膜などがある。
【0032】
(請求項6:第2実施形態の第2構造例に該当)
請求項6の発明によれば、保護カバーの裏面側と各変換手段との間に空隙を設けることにより、超音波センサに外力が加わっても、その外力は保護カバーに印加されるだけで、各変換手段には外力が直接印加されないため、各変換手段の破損を確実に防止できる。
【0033】
ここで、保護カバーには、空気,塵埃,液体などを透過させない高い耐候性に加えて、超音波により振動しやすく、超音波を屈折させずに透過させる性質が要求される。
また、保護カバーと各変換手段との空隙に液体,ゾル,ゲルのいずれかの充填材料を充填した場合には、その充填材料の音響インピーダンスを保護カバーの音響インピーダンスに近づけることにより、保護カバーと各変換手段との間の振動の伝達を確実に行うことが可能になり、各変換手段の受信感度または発信感度の低下を回避できる。
【0034】
(請求項7)
請求項7の発明によれば、圧電式または静電容量式の超音波センサを得ることができる。
【0035】
(用語の説明)
尚、上述した[課題を解決するための手段]に記載した構成要素と、後述する[発明を実施するための最良の形態]に記載した構成部材との対応関係は以下のようになっている。
「変換手段」は、受信素子(発信素子)12a〜12fに該当する。
請求項3の「各変換手段の一端部を含む平面」は、台座11の表面に該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面を参照しながら説明する。
尚、各実施形態において、第1実施形態と同一の構成部材については符号を等しくすると共に、同一内容の箇所については重複説明を省略してある。
【0037】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における超音波センサの受信部10の斜視図である。
図2(A)は、受信部10の平面図である。図2(B)は、受信部10の正面図である。
【0038】
受信部10は、台座11と、4個の同一寸法形状で同一構成の受信素子(変換手段)12a〜12dとから構成されている。
平板矩形状の各受信素子12a〜12dは、円盤形状の台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cから45゜の等角度で放射状に配置されている。
【0039】
また、各受信素子12a〜12dは、台座11を横方向から見て、各受信素子12a〜12dの受信面Sの法線nが台座11の中心軸C(前記放射状の中心軸)上の1つの点Pにて交わると共に、各受信素子12a〜12dの受信面Sが台座11の表面(各受信素子12a〜12dの一端部を含む平面)に対して45゜の等角度を成すように、各受信素子12a〜12dの長手方向の一端部が台座11の周縁に沿って台座11の表面上に取付固定されている。
つまり、各受信素子12a〜12dは、円盤形状の台座11を上方向から見て、一直線上に配置された各受信素子12a,12dおよび各受信素子12b,12cの受信面Sが90゜の等角度を成すように配置されている。
【0040】
[受信素子の構造]
図3〜図5は、各受信素子12a〜12dの第1〜第3構造例を示す概略縦断面図である。尚、図3〜図5では高さ方向(板厚方向)を誇張して図示してある。
【0041】
<第1構造例>
図3に示す第1構造例において、圧電式の各受信素子12a〜12dは、下部電極21、受信電極22、複合圧電体23などから構成されている。
平板矩形状の各電極21,22は平行に配置され、各電極21,22間には複合圧電体23が挟設されている。
複合圧電体23は、複数個の柱状の圧電体素子24と、有機高分子層25とから構成されている。
【0042】
各圧電体素子24は、その上下端部が各電極21,22に接続されている。
有機高分子層25は、各圧電体素子24の間隙に充填され、各圧電体素子24を互いに結合する。つまり、各圧電体素子24は有機高分子層25中に埋め込まれている。
尚、各圧電体素子24は、強誘電体(例えば、PZTなど)からなる。
また、有機高分子層25は、例えば、シリコンゴム、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などからなる。
【0043】
そして、受信電極22の表面が超音波の受信面Sとなり、超音波により受信電極22が振動すると、その振動は複合圧電体23に伝達され、複合圧電体23が振動すると圧電効果により電気信号が生成され、その電気信号は各電極21,22に接続された配線(図示略)を介して出力される。
つまり、第1構造例の各受信素子12a〜12dでは、各電極21,22および複合圧電体23の積層構造から振動板(受音板)が構成され、その振動板の受信した超音波が電気信号に変換される。
【0044】
<第2構造例>
図4に示す第2構造例において、圧電式の各受信素子12a〜12dは、下部電極21、受信電極22、誘電体層31などから構成されている。
各電極21,22間には、強誘電体(例えば、PZTなど)からなる誘電体層31が挟設されている。
【0045】
そして、受信電極22の表面が超音波の受信面Sとなり、超音波により受信電極22が振動すると、その振動は誘電体層31に伝達され、誘電体層31が振動すると圧電効果により電気信号が生成され、その電気信号は各電極21,22に接続された配線(図示略)を介して出力される。
つまり、第2構造例の各受信素子12a〜12dでは、各電極21,22および誘電体層31の積層構造から振動板(受音板)が構成され、その振動板の受信した超音波が電気信号に変換される。
【0046】
<第3構造例>
図5に示す第3構造例において、静電容量式(コンデンサ式)の各受信素子12a〜12dは、下部電極21、受信電極22、保持部材41などから構成されている。
各電極21,22の両端部間には保持部材41が挟設され、各電極21,22は間隙Kを設けて対向されている。
下部電極21は振動不能に固定されて固定電極を構成し、受信電極22は振動可能で可動電極を構成する。
【0047】
そして、受信電極22の表面が超音波の受信面Sとなり、超音波により受信電極22が振動すると、各電極21,22間の距離が変化し、各電極21,22間の静電容量も変化する。そこで、配線(図示略)を介して各電極21,22に接続された変換回路(図示略)を用い、各電極21,22間の静電容量の変化を電気信号に変換する。
つまり、第3構造例の各受信素子12a〜12dでは、受信電極22から振動板(受音板)が構成され、その振動板の受信した超音波が電気信号に変換される。
【0048】
[第1実施形態の作用・効果]
第1実施形態によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0049】
[1]
受信部10とは別に設けられた超音波センサの発信部(図示略)が、検出対象物に対して超音波を発信し、その超音波が検出対象物に反射した反射音を受信部10の各受信素子12a〜12dで受信する。
【0050】
そして、受信部10が各受信素子12a〜12dで受信した超音波の音圧差を検出し、その受信した超音波の音圧差と発信部が発射した超音波とを比較することにより、検出対象物の2次元あるいは3次元の位置測定、超音波センサと検出対象物との距離測定などを行うことができる。
尚、超音波センサの発信部には、どのような型式(例えば、圧電式や静電容量式など)を用いてもよい。
【0051】
[2]
図6は、受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θを説明するための説明図である。
受信面Sに対する超音波の入射角θとは、受信面Sの法線nと超音波の進入方向とがなす角度である。
【0052】
図7は、受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θと、受信面Sが受ける音圧との関係を示す特性図である。尚、音圧は、最大値を「1」として表示してある。
縦波は、その進行方向と同一方向に圧力を発生させ、その進行方向と垂直方向には圧力を発生させないという特性がある。
超音波は縦波であるため、受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θが0゜の場合に受信面Sが受ける音圧が最大となり、入射角θが90゜に近づくほど音圧が低下して、入射角θが90゜の場合に音圧がゼロになる。
【0053】
各受信素子12a〜12dは、受信面Sが受ける音圧が大きいほど受信電極22の撓みも大きくなるため、生成する電気信号のレベルが増大する。
つまり、各受信素子12a〜12dが受信した超音波を変換して生成する電気信号のレベルは、各受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θに依存する。
【0054】
ここで、各受信素子12a〜12dが生成する電気信号のレベルは、各受信素子12a〜12dの受信感度に対応し、電気信号のレベルが高いほど受信感度も高くなる。
言い換えると、各受信素子12a〜12dにおける超音波の受信感度は、受信面Sが受ける音圧に対応し、受信面Sに対する超音波の入射角θに依存する。
【0055】
[3]
図1および図2に示すように各受信素子12a〜12dを配置することで、各受信素子12a〜12dの受信感度の入射角依存性を利用し、各受信素子12a〜12dで受信した超音波の音圧差に基づいて、検出対象物の位置測定および距離測定を正確に行うことができる。
【0056】
ところで、検出対象物から反射した超音波は周囲の物体に何度も跳ね返って空間に残り、その空間に残った音からなる残響音(反射音)が発生することがある。
また、入力した電気信号の停止と同時に発信部の振動板の振動を停止させることは困難であり、振動板の振動は減衰しながら停止するため、発信部の発信した超音波には減衰音が生じる。
【0057】
しかし、第1実施形態の受信部10は、従来技術(同一寸法形状の複数個の振動板を同一平面上に1次元配置または2次元配置した構造)のように、複数個の振動板で受信した超音波のタイミングのずれに基づいて前記測定を行うのではなく、各受信素子12a〜12dで受信した超音波の音圧差に基づいて前記測定を行うため、残響音および減衰音の影響を回避して測定精度を向上させることができる。
そして、第1実施形態によれば、従来技術のように複雑な信号処理回路や特別な制振構造を設ける必要がないため、超音波センサの製品コストを低下させることができる。
【0058】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態における超音波センサの受信部50の斜視図である。
受信部50において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、各受信素子12a〜12dを覆う略円錐形状の保護カバー51が台座11の表面上に取付固定されている点だけである。
このように、各受信素子12a〜12dを覆う保護カバー51を設けることにより、各受信素子12a〜12dを周辺環境から保護して受信部50の耐候性を高めると共に、各受信素子12a〜12dの破損を防止できる。
【0059】
図9は、保護カバー51の第1構造例を説明するための一部縦断面図である。
保護カバー51の裏面側は各受信素子12a〜12dに密着している。
そのため、超音波によって保護カバー51が振動すると、その保護カバー51の振動は各受信素子12a〜12dに直接伝達されることから、保護カバー51を設けることによる各受信素子12a〜12dの受信感度の低下を回避できる。
【0060】
ここで、保護カバー51には、空気,塵埃,液体などを透過させない高い耐候性に加えて、超音波の高い伝達性と、各受信素子12a〜12dの振動を阻害しない程度の低い剛性とが要求される。このような要求を満たす材料として、例えば、各種金属(アルミニウム合金など)の薄膜、各種合成樹脂膜、ゴム膜などがある。
【0061】
図10は、保護カバー51の第2構造例を説明するための一部縦断面図である。
保護カバー51の裏面側と各受信素子12a〜12dとの間には、空隙Lが設けられている。
そのため、受信部50に外力が加わっても、その外力は保護カバー51に印加されるだけで、各受信素子12a〜12dには外力が直接印加されないため、各受信素子12a〜12dの破損を確実に防止できる。
ここで、保護カバー51には、空気,塵埃,液体などを透過させない高い耐候性に加えて、超音波により振動しやすく、超音波を屈折させずに透過させる性質が要求される。
【0062】
また、保護カバー51と各受信素子12a〜12dとの空隙Lに液体,ゾル,ゲルのいずれかの充填材料を充填した場合には、その充填材料の音響インピーダンスを保護カバー51の音響インピーダンスに近づけることにより、保護カバー51の振動を当該充填材料を介して各受信素子12a〜12dへ確実に伝達させることが可能になり、各受信素子12a〜12dの受信感度の低下を回避できる。
【0063】
尚、物質の音響インピーダンスは、その物質の密度と伝搬音速との積である。そして、物質間の音響インピーダンスが異なるほど、その物質間における音波の伝搬特性は悪化する。つまり、空隙Lの充填材料と保護カバー51の音響インピーダンスが異なるほど、超音波は保護カバー51で反射して充填材料に伝搬し難くなる。
【0064】
そのため、保護カバー51として合成樹脂膜を用いる場合には、当該合成樹脂の微粒子を液体中に分散させたゾルや、当該合成樹脂からなる高分子ゲルを充填材料として用いればよい。また、充填材料は各受信素子12a〜12dを侵さないものである必要がある。このような要求を満たす充填材料として、例えば、シリコンゲル、フッ素ゲルなどがある。
【0065】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態における超音波センサの受信部60の斜視図である。
図12(A)は、受信部60の平面図である。図12(B)は、受信部60の正面図である。
【0066】
受信部60は、台座11と、6個の同一寸法形状で同一構成の受信素子12a〜12fから構成されている。
平板矩形状の各受信素子12a〜12fは、円盤形状の台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cから30゜の等角度で放射状に配置されている。
【0067】
また、各受信素子12a〜12fは、台座11を横方向から見て、各受信素子12a〜12fの受信面Sの法線nが台座11の中心軸C上の1つの点Pにて交わると共に、各受信素子12a〜12fの受信面Sが台座11の表面に対して45゜の等角度を成すように、各受信素子12a〜12fの長手方向の一端部が台座11の周縁に沿って台座11の表面上に取付固定されている。
つまり、各受信素子12a〜12fは、円盤形状の台座11を上方向から見て、一直線上に配置された各受信素子12a,12e、各受信素子12b,12f、各受信素子12c,12dの受信面Sが90゜の等角度を成すように配置されている。
【0068】
このように、第3実施形態の受信部60において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、2個の受信素子12e,12fを追加すると共に、各受信素子12a〜12dの平面配置を変更した点だけである。
第3実施形態によれば、各受信素子12e,12fを追加した分だけ、超音波の受信方向の指向性を広くすると共に、各受信素子12a〜12fの受信感度の入射角依存性を用いた検出対象物の位置および距離の測定精度を向上させることが可能になるため、第1実施形態の前記作用・効果を更に高めることができる。
【0069】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態における超音波センサの受信部70の斜視図である。
図14(A)は、受信部70の平面図である。図14(B)は、受信部70の正面図である。
【0070】
受信部70は、台座11と、3個の同一寸法形状で同一構成の受信素子12a〜12cから構成されている。
平板矩形状の各受信素子12a〜12cは、円盤形状の台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cから60゜の等角度で放射状に配置されている。
【0071】
また、各受信素子12a〜12cは、台座11を横方向から見て、各受信素子12a〜12cの受信面Sの法線nが台座11の中心軸C上の1つの点Pにて交わると共に、各受信素子12a〜12cの受信面Sが台座11の表面に対して45゜の等角度を成すように、各受信素子12a〜12cの長手方向の一端部が台座11の周縁に沿って台座11の表面上に取付固定されている。
【0072】
このように、第4実施形態の受信部70において、第1実施形態の受信部10と異なるのは、1個の受信素子12dを省くと共に、各受信素子12a〜12cの平面配置を変更した点だけである。
第4実施形態によれば、受信素子12dを省いた分だけ、第1実施形態の前記作用・効果が若干低下するものの、超音波センサの製品コストを削減することができる。
【0073】
[別の実施形態]
ところで、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等もしくはそれ以上の作用・効果を得ることができる。
【0074】
[別例1]
各受信素子12a〜12fは、台座11を上方向から見て、台座11の中心軸Cからそれぞれ適宜な角度で放射状に配置してもよく、適宜な形状(例えば、渦巻き状など)に配置してもよい。
また、各受信素子12a〜12fは、台座11を横方向から見て、台座11の表面に対して適宜な等角度を成すように配置してもよく、台座11の表面に対して各受信素子12a〜12fが別々の角度を成すように配置してもよい。
そして、各受信素子の個数は4個(第1実施形態),6個(第3実施形態),3個(第4実施形態)に限らず、3個以上の適宜な個数にしてもよい。
【0075】
すなわち、受信部を構成する各受信素子は、必要な前記測定精度および指向性に応じて立体的に配置すればよく、その受信素子の個数および配置状態はカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0076】
[別例2]
上記各実施形態は超音波センサの受信部に適用したものであるが、本発明は電気信号を超音波に変換して発信する超音波センサの発信部に適用してもよい。
すなわち、受信部10,50,60,70の各受信素子12a〜12fを、発信部の各発信素子として機能させてもよい。この場合、各受信素子12a〜12fの受信面Sは、発信素子から超音波を発信する発信面となる。
【0077】
例えば、各発信素子を図3に示す第1構造例(圧電式)にした場合には、各電極21,22に印加される電気信号に応じて、複合圧電体23が圧電効果により振動して電極22から超音波が発信する。
また、各発信素子を図4に示す第2構造例(圧電式)にした場合には、各電極21,22に印加される電気信号に応じて、誘電体層31が圧電効果により振動して電極22から超音波が発信する。
また、各発信素子を図5に示す第3構造例(コンデンサ式)にした場合には、各電極21,22に印加される電気信号に応じて、各電極21,22間に静電引力が発生し、その静電引力により電極22が振動して超音波が発生する。
【0078】
ところで、発信部を構成する発信素子の個数は超音波の発信出力(音響出力)に対応し、その発信素子の個数を増やすほど発信出力を大きくすることができる。
また、発信部を構成する発信素子の配置状態を適宜設定することにより、超音波の発信方向の指向性を適宜設定することができる。
【0079】
従って、各受信素子12a〜12fを発信部の各発信素子として機能させた場合も、前記[別例1]と同様に、発信部を構成する各発信素子は、必要な発信出力および指向性に応じて立体的に配置すればよく、その発信素子の個数および配置状態はカット・アンド・トライで実験的に最適値を見つけて設定すればよい。
【0080】
例えば、発信部の各発信素子を受信部10,60,70の各受信素子12a〜12fと同様に配置した場合には、台座11を底面とする半球状の広い指向性が得られる。
また、各受信部10,60,70と同一構成の2個の発信部を用い、各発信部の台座11を裏面側同士貼り合わせて組み立てれば、完全な球状の無指向性が得られる。
図15は、受信部10と同一構成の2個の発信部80a,80bを用い、各発信部80a,80bの台座11を裏面側同士貼り合わせて組み立てた構成例を示す斜視図である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態における超音波センサの受信部10の斜視図。
【図2】図2(A)は受信部10の平面図。図2(B)は受信部10の正面図。
【図3】受信部10を構成する受信素子12a〜12dの第1構造例を示す概略縦断面図。
【図4】受信部10を構成する受信素子12a〜12dの第2構造例を示す概略縦断面図。
【図5】受信部10を構成する受信素子12a〜12dの第3構造例を示す概略縦断面図。
【図6】受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θを説明するための説明図。
【図7】受信素子12a〜12dの受信面Sに対する超音波の入射角θと、受信面Sが受ける音圧との関係を示す特性図。
【図8】本発明を具体化した第2実施形態における超音波センサの受信部50の斜視図。
【図9】第2実施形態の保護カバー51の第1構造例を説明するための一部縦断面図。
【図10】第2実施形態の保護カバー51の第2構造例を説明するための一部縦断面図。
【図11】本発明を具体化した第3実施形態における超音波センサの受信部60の斜視図。
【図12】図12(A)は受信部60の平面図。図12(B)は受信部60の正面図。
【図13】本発明を具体化した第4実施形態における超音波センサの受信部70の斜視図。
【図14】図14(A)は受信部70の平面図。図14(B)は受信部70の正面図。
【図15】本発明を具体化した別例2における超音波センサの発信部80a,80bの斜視図。
【符号の説明】
【0082】
10,50,60,70…超音波センサの受信部(発信部)
11…台座
12a〜12f…受信素子(発信素子)
S…受信面(発信面)
51…保護カバー
L…空隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した超音波を電気信号に変換するか又は電気信号を超音波に変換して発信する複数個の変換手段を備え、各変換手段が立体的に配置されたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサにおいて、
前記変換手段を3個以上の複数個備え、
各変換手段は、超音波を受信するための受信面または超音波を発信するための発信面が、それぞれ等角度で放射状に配置されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段は、各変換手段の一端部を含む平面に対して前記受信面または前記発信面が45゜の角度を成すように配置されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段を覆う保護カバーを備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波センサにおいて、
前記保護カバーの裏面側は前記各変換手段に密着していることを特徴とする超音波センサ。
【請求項6】
請求項4に記載の超音波センサにおいて、
前記保護カバーの裏面側と前記各変換手段との間には空隙が設けられていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記変換手段は、圧電式または静電容量式であることを特徴とする超音波センサ。
【請求項1】
受信した超音波を電気信号に変換するか又は電気信号を超音波に変換して発信する複数個の変換手段を備え、各変換手段が立体的に配置されたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサにおいて、
前記変換手段を3個以上の複数個備え、
各変換手段は、超音波を受信するための受信面または超音波を発信するための発信面が、それぞれ等角度で放射状に配置されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段は、各変換手段の一端部を含む平面に対して前記受信面または前記発信面が45゜の角度を成すように配置されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記各変換手段を覆う保護カバーを備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波センサにおいて、
前記保護カバーの裏面側は前記各変換手段に密着していることを特徴とする超音波センサ。
【請求項6】
請求項4に記載の超音波センサにおいて、
前記保護カバーの裏面側と前記各変換手段との間には空隙が設けられていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記変換手段は、圧電式または静電容量式であることを特徴とする超音波センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−203423(P2006−203423A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11485(P2005−11485)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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