説明

超音波プローブ装置及び超音波画像化装置

【課題】 開口長の大きさを制御可能とし、画像分解能及び観測対象距離を限定することなく、超音波による良好な画像化を実現することができる超音波プローブ装置等を提供すること。
【解決手段】 近距離を画像化する場合には開口長Hを小さくとり、遠距離を画像化する場合には開口長Hを大きくするように、開口長を伸張、収縮させる。また、開口長を伸張、収縮に連動して、画像化領域が各超音波プローブからの超音波指向角幅に含まれるように、各超音波プローブの姿勢を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いた媒質中物体の画像化技術分野に係り、特に、開口の大きさを制御可能な超音波プローブ装置及び超音波画像化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を用いた媒質中物体の可視化技術として、例えば海水中においては、遠方の魚群を探知する魚群探知機(超音波ソナー)に代表される超音波画像化装置が知られている。これらは、プラットフォームとしての船舶船底部に単数あるいは列状に配された複数の超音波プローブより超音波を海底へ向けて発信し、プラットフォームの移動に伴ってその受信波形を表示することで海底までの断面を作成し、魚群の画像を合成する手法をとっている。一般の超音波ソナーを用いた合成開口ソナーでも同様にプラットフォームの移動に伴って画像を生成するものであり、これらの手法では、プラットフォームの移動を行う必要があるとともに、プラットフォームの移動位置を正しく管理する必要がある。
【0003】
これらの手法に対して、マトリクス状に超音波プローブを配置し、プラットフォームを移動することなく一度に画像を生成することができる装置等が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この様な装置では、マトリクス状に超音波プローブを配置することでいわゆる平面状のアンテナを有することになる。これらの装置においては、マトリクス状に配置されるプローブの相対的な位置関係は固定しており、プローブ密度は不変のものである。
【特許文献1】特願平4−206588号公報
【特許文献2】特願平3−174098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超音波プローブ装置、超音波画像化装置には、次のような問題がある。
【0005】
すなわち、超音波プローブがマトリクス状に配置された超音波プローブ装置(マトリクス状超音波プローブ装置)を用いた合成開口形式の超音波画像化装置では、画像分解能ΔXは、プローブから画像化領域までの距離Hと、マトリクス状の超音波プローブによって形成される超音波照射面(開口)の径(開口長)Lとの間で、ΔXはL/Hと比例の関係にある。従って、遠くを分解能良く画像化するには、大きなマトリクス超音波プローブが必要になる。
【0006】
大きなマトリクス状超音波プローブ装置、すなわち開口長の大きなマトリクス状超音波プローブ装置で近距離を画像化すると、特定の超音波プローブの反射が強くなりすぎ、画質が低下する恐れがある。これは、マトリクス状超音波プローブ装置の超音波プローブ密度が近距離を画像化する場合には粗すぎるためとも言い換えられる。また、小さなマトリクス状超音波プローブ装置、すなわち開口長の小さなマトリクス状超音波プローブ装置で遠距離を画像化すると、画像分解能が足りなくなる恐れがある。これは、遠距離の分解能を挙げるためには受信面積を大きく取る必要があるという合成開口の原理によるものである。
【0007】
すなわち、マトリクス状超音波プローブ装置の開口長が固定されていることで、画像分解能と観測対象距離が限定されるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、開口長の大きさを制御可能とし、画像分解能及び観測対象距離を限定することなく、超音波による良好な画像化を実現することができる超音波プローブ装置及び超音波画像化装置を提供することを目的としている。
【0009】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【特許文献1】特開平4−206588号公報
【特許文献2】特開平3−174098号公報
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0011】
本発明の第1の視点は、それぞれが、供給される駆動信号に応答して超音波を発信し、超音波を受信して電気信号を発生する複数の超音波プローブと、前記複数の超音波プローブを二次元状に配列し設置するための設置手段と、前記設置手段を伸張及び収縮させることで、前記複数の超音波プローブが配列されることによって形成される超音波照射面の径を変更する伸張収縮機構と、前記複数の超音波プローブが発生する各電気信号を用いて、超音波画像を生成する画像生成手段と、を具備することを特徴とする超音波画像化装置である。
【0012】
本発明の第2の視点は、それぞれが、供給される駆動信号に応答して超音波を発信し、超音波を受信して電気信号を発生する複数の超音波プローブと、前記複数の超音波プローブを二次元状に配列し設置するための設置手段と、前記設置手段を伸張及び収縮させることで、前記複数の超音波プローブが配列されることによって形成される超音波照射面の径を変更する伸張収縮機構と、を具備することを特徴とする超音波画プローブ装置である。
【発明の効果】
【0013】
以上本発明によれば、開口長の大きさを制御可能とし、画像分解能及び観測対象距離を限定することなく、超音波による良好な画像化を実現することができる超音波プローブ装置及び超音波画像化装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態乃至第3実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波画像処理装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波画像処理装置1は、超音波プローブ装置10、増幅器12、A/D変換器14、距離信号演算回路16、画像生成回路18、発信器20、切替回路22、発信制御部24、表示制御部26、表示部28、開口長制御部30、プローブ姿勢制御部32、操作部34を具備している。
【0016】
超音波プローブ装置10は、二次元状に配列された複数の超音波プローブ101、開口長変更装置103、プローブ姿勢変更部104を有している。複数の超音波プローブ101は、プローブ姿勢変更部104を介して開口長変更装置103に固定されている。各超音波プローブ101は、圧電素子から形成されており、供給される駆動信号に基づき超音波を発生し、また超音波を受信して所定の波形を有する電気信号を発生する。開口長変更装置103は、開口長制御部30からの制御信号に従って開口長を変更するための機構を有している。プローブ姿勢変更部104は、プローブ姿勢制御部32からの制御信号に従って画像化対象領域Sに対する各超音波プローブ101の姿勢を変更するための機構を有している。なお、超音波プローブ装置10の詳しい構成については、後述する。
【0017】
増幅器12は、各超音波プローブ101が発生した受信超音波形を増幅し、A/D変換器14に送り出す。
【0018】
A/D変換器14は、増幅器12から受け取った増幅後の受信信号をA/D変換(アナログ/ディジタル変換)する。
【0019】
距離信号演算回路16は、A/D変換後の受信信号に基づいて、画像化の対象物と各超音波プローブ101との間の距離を計算する。
【0020】
画像生成回路18は、各超音波プローブ101の位置情報と計算された画像化の対象物と各超音波プローブ101との距離とに基づいて、対象物に関する超音波画像を各超音波プローブ101毎(各チャネル毎)に生成する。ここで、チャネルとは、超音波プローブ101毎に設けられている増幅器12、A/D変換器14、距離信号演算回路16、画像生成回路18からなる受信系統を意味する。
【0021】
発信器20は、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、発信超音波を形成するための駆動信号を繰り返し発生する。
【0022】
切替回路22は、発信制御部24からの制御信号に従ってスイッチを切り替え、発信器20からの駆動信号を所定の超音波プローブ101に所定のタイミングで供給する。
【0023】
発信制御部24は、発信器20からの駆動信号を供給する超音波プローブ101の選択、供給タイミング(供給間隔)に関する制御、及び各超音波プローブ101による反射超音波の受信タイミング制御を行う。特に、発信制御部24は、後述する最大/最小距離を用いた開口合成機能に従って、各超音波プローブ101への駆動信号の供給(すなわち、各超音波プローブ101からの超音波発信)、及び各超音波プローブ101による反射超音波の受信のタイミングを制御する。
【0024】
表示制御部26は、画像生成回路18において生成されたチャネル毎の超音波画像を合成し、画像化対象物の形状、内部構造等を示す超音波画像を生成する。
【0025】
表示部28は、表示制御部26において生成された超音波画像等を所定の形態で表示する。
【0026】
開口長制御部30は、発受信制御部24の制御のもと、開口長変更装置103の機構を展開(伸張)又は収縮させることで、超音波プローブ装置10の開口長を制御する。例えば、開口長制御部30は、画像化対象領域Sと超音波プローブ装置10との間の距離をLとし、超音波プローブ装置10の開口長をHとした場合、L/H=一定となるように開口長変更装置103の機構を展開又は収縮させる。
【0027】
プローブ姿勢制御部32は、発受信制御部24の制御のもと、プローブ姿勢変更部104の機構を駆動することで、各超音波プローブ101の姿勢を制御する。例えば、画像化対象領域Sが超音波プローブ装置10から距離Lの位置にある径L1の円盤状のものとしたとき、プローブ姿勢制御部32は、開口長Hの長さを有する超音波プローブ装置10の先端位置0.5Hにおいて指向角θcの超音波を送受信する超音波プローブ101が次の式(1)、(2)、(3)で定めるθoの向きになるように、プローブ姿勢変更部104の機構を制御する。
【数1】

【0028】
この開口長制御部30とプローブ姿勢制御部32の制御によって、例えば近距離を画像化する場合には開口長Hを小さくとり、遠距離を画像化する場合には開口長Hを大きくすることによって画像の分解能が一定に保たれる。
【0029】
操作部34は、操作者からの各種指示、条件の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体1にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール13s、マウス13c、キーボード13d等を有している。
【0030】
(開口長制御機能)
次に、本超音波画像化装置1が有する開口長制御機能について説明する。この機能は、近距離を画像化する場合には開口長Hを小さくとり、遠距離を画像化する場合には開口長Hを大きくするように、開口長を伸張、収縮させるものである。また、画像化領域が各超音波プローブからの超音波指向角幅に含まれるように、各超音波プローブの姿勢を開口長の伸張、収縮に連動して制御する。これらの機能により、画像化対象までの距離に関係なく画像の分解能が一定に保つことができる。
【0031】
図2(a)は、超音波プローブ装置10の展開状態を正面から見た図であり、図2(b)は、超音波プローブ装置10の収縮展開状態を正面から見た図である。各図に示すように、超音波プローブ101は伸縮ロッド105上に設置され、伸縮ロッド105は隣接するロッド同士を結合部材107によって結合されている。各伸縮ロッド105が伸び縮みすることで、開口面及び開口長を展開および収縮することができる。
【0032】
超音波プローブ101のそれぞれは数cmから数10cm程度の径を有するため、開口長を収縮した状態では超音波プローブ101同士が重なりあう場合があり、係る場合、図2(b)に示すように収縮した状態で超音波プローブ101同士が重ならないようにする必要がある。従って、超音波プローブ101は図2(a)に示すように各伸縮ロッド105に対して同じ数設置されるわけではなく、図2(b)に示すように収縮した状態において重ならないように配置される。
【0033】
なお、図2(a)、(b)の例においては、超音波プローブ101は合計64個が配置され、伸縮ロッド105は32本配置されている。また、伸縮ロッド105は3本が1セットとなり、この伸縮ロッド105の1セットには、それぞれ超音波プローブ素子が4個、1個、2個のパターン(図2(a)の領域r参照)、或いは3個、1個、2個のパターン(図2(a)の領域r参照)で設置されている。しかしながら、当該例に拘泥されず、超音波プローブ101の個数、伸縮ロッド105の本数、各伸縮ロッド105に配置される超音波プローブ101の個数は、任意に設定することができる。
【0034】
図3(a)は、図2(a)の領域rの展開状態を示した図であり、図3(b)は、図2(a)の領域rの収縮状態を示した図である。各図に示すように、伸縮ロッド105は、送り出しのためのワイヤ111と結合部113によって結合されており、その送り出しワイヤ111は駆動機構115の回転によって送り出される。
【0035】
また、伸縮ロッド105は、伸縮に伴って各超音波プローブ101の姿勢角を変更するリンク機構109を有している。リンク機構109は、所定の条件を満たすよう展開・収縮の大きさに応じて所定の条件を満たすよう各超音波プローブ101の姿勢角を制御する。このリンク機構109の典型例としては、伸縮ロッド105の伸縮長に同期して超音波プローブ101の角度を変更するようなラックピニオン機構などが挙げられる。しかしながら、当該例に拘泥されず、伸縮ロッド105の伸縮・収縮運動を回転運動に変換するものであれば、どの様な機構であっってもよい。
【0036】
超音波を用いた媒質中物体の画像化における分解能について、図4、図5(a)、(b)を用いて説明する。超音波プローブ101が例えば図2(a)に示す形態にて配置された場合の開口長をHとし、画像化対象領域Sと超音波プローブ装置10の開口面との距離をLとする。この場合、画像分解能ΔXは、超音波プローブ101から画像化領域Sまでの距離Hと超音波プローブ装置10の大きさLとの間においては、ΔXとL/Hとは比例の関係にある。従って、近距離の画像化を行う場合には、図5(a)に示すように超音波プローブ101の配置密度を上げた状態にする必要がある。また、遠距離の画像化を行う場合には、図5(b)に示すように超音波プローブ101の配置密度を下げた状態にする必要がある。
【0037】
一方、超音波プローブ101の配置密度については制限がある。これは、超音波プローブ101の指向性に起因するものである。また、発信された超音波が遠方の反射体に反射され、反射波として超音波プローブ101に検出されるためには、発信超音波の強度を上げる必要がある。発信超音波の強度を上げるためには、超音波プローブ101自体を大きくする方法がある。ただし、発信超音波の波形の半波長より超音波プローブ101の径が大きくなっていくと、超音波プローブ101が発信する超音波は当該プローブ101の前面に強く放射される指向性を持った波形となり、放射される波形の放射範囲(指向角内)に観測領域が無いと反射信号は弱すぎて受信できなくなる。つまり、ある画像化範囲に有効な反射波を発信できる超音波プローブ101の設置範囲には限界があり、それ以外に配置された残りの超音波プローブ101は開口合成による反射体の形状把握に寄与できなくなる。
【0038】
すなわち、画像化領域Sを定めると、超音波プローブ101から発信される超音波の指向性により、画像化領域S内に超音波を発信可能な超音波プローブ101が制限される。図6に示す例では、超音波プローブ101a、101b、101c、101dのそれぞれから発信された超音波の各指向角θ、θ、θ、θ内に画像化領域Sが入っている。一方、一番下の超音波プローブ101eから発信された超音波の各指向角θ内には、画像化領域Sの一部しか存在しない。このように指向性がある超音波プローブ101を用いると、超音波プローブ装置10の開口長をどれだけ大きくしても、実際の開口合成に寄与する超音波プローブ101は全プローブの一部に限られてしまうことになる。以上のように、個々の超音波プローブ101が指向性を有することによって、開口合成に関与する超音波プローブ101の配置範囲に制限が生まれる。
【0039】
そこで、本実施形態に係る超音波プローブ装置10、及びこれを具備する超音波画像化装置1では、この制限を回避するために、各超音波プローブ101の姿勢を制御する。すなわち、図7に示すように個々の超音波プローブ101の各指向角内に画像化領域Sが入るように、各超音波プローブ101の向き(姿勢)を制御する。例えば、超音波プローブ101aについては、プローブ姿勢制御部21は、例えば鉛直方向に対して調整角θだけ下側に傾けることで超音波プローブ101の各指向角内に画像化領域Sが入るように、プローブ姿勢変更部104を制御する。この様な各超音波プローブ101の姿勢制御により、全ての超音波プローブ101から発信される超音波を画像化領域Sに到達させることができる。その結果、全超音波プローブ101を開口合成に寄与させることができ、開口長の大きさを大きくしただけ分解能を高くすることができる。
【0040】
なお、超音波プローブ101の姿勢制御は、上記例に拘泥されない。超音波プローブ101が固定された伸縮ロッド105を変形させることで、鉛直方向に対する超音波プローブ101の角度を調整するようにしてもよい。図8には、画像化領域Sを中心として所定の曲率により円弧の一部分となるように変形ロッド121を変形する例を示してある。この様な手法によっても、鉛直方向に対する超音波プローブ101の角度を調整することができ、超音波プローブ101が常に画像化領域Sの方向を向くようにすることができる。特に、この様な超音波プローブ101の姿勢制御の利点は、超音波プローブ101毎に制御する必要がなく、統一的な駆動機構で調整可能であり、また個々の超音波プローブ101の位置精度も維持しやすいことである。
【0041】
図8に示した例において球面の曲率を最小にするためには、一回の超音波発受信で画像化することを予定した画像化領域Sが各超音波プローブ101の指向角幅に入ればよい。図9に示すように、画像化領域Sを指向角幅内に存在させるための超音波プローブ101aの最小の調整角θ(=θ)は、式(1)の関係式によって求めることができる。ここで、L1は式(2)で、Hは式(3)で書き表される。すなわち、超音波プローブ装置10からLだけ離れた位置にある半径H1の円盤状の画像化領域Sに、開口面一番端の位置0.5Hで指向角θcの超音波プローブ101からの音波を照射するためには、超音波プローブ101の向きをθoとすればよい。
【0042】
なお、超音波プローブ101の向きのみを調整する場合には、距離L1を考慮しない式(3)、及び次に示す式(4)を満たすような超音波プローブ101の向きθoを選択すれば十分である。
【数2】

【0043】
(効果)
以上述べた構成によれば、近距離を画像化する場合には開口長Hを小さくとり、遠距離を画像化する場合には開口長Hを大きくするように、開口長を伸張、収縮させることができる。特に、超音波プローブ装置の開口長をH、当該超音波プローブ装置と画像化対象領域との間の距離をLとした場合に、L/Hが一定となるように、画像化対象領域までの距離Lに応じて開口長Hを制御する。従って、画像対象領域までの距離に関わらず、一定の画質による超音波画像化を実現することができる。特に、開口長を伸張、収縮に連動して、画像化領域が各超音波プローブからの超音波指向角幅に含まれるように、各超音波プローブの姿勢を制御する。これにより、全ての超音波プローブを画像化に寄与させることができ、画像化対象までの距離に関係なく画像の分解能が一定に保つことができる。
【0044】
また、本超音波プローブ装置では、伸縮ロッド等を利用した開口長変更装置によって、展開・収縮を任意回数実行できる強固な構造となっている。従って、例えば海中の様な抵抗の大きい媒質中においても、自在に開口長を制御することが可能である。
【0045】
なお、超音波を用いた開口合成手法によく似た観測手段として、電波を用いた合成開口レーダにおいて、展開機能を有するアンテナがよく用いられている。例えば、宇宙空間の人工衛星において、地上との通信や各種観測に用いるための展開アンテナとして様々なものが知られている。これらの人工衛星用アンテナは、打ち上げ時収納のために収縮しているものの、展開を一度きり行えばよいものであり、展開収縮を複数回行うことはない。また、障害物のない宇宙空間に展開されるため、構造が脆弱でも問題はないと言える。さらに、アンテナとして電波を用いるために電波の波長を送受信する素子は面状に配置されており、その素子の配置密度を操作する必要もない。また、プラットフォームとしての人工衛星そのものが移動することによって開口合成を行うために、アンテナ素子の向きを変更する必要もない。従って、本超音波プローブ装置は、これらのアンテナに比して、展開・収縮を任意のタイミングで所望する回数だけ実行できるものとなっており、また、格段の強度を有するものとなっている。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波画像化装置10は、超音波プローブ装置10の超音波照射面(すなわち、開口面)を画像対象領域Sに対して傾斜させることで、開口長及び姿勢を制御する例である。
【0047】
図10(a)、(b)は、本実施形態に係る超音波プローブ装置10の側面図を示した図である。同図に示すように、本超音波プローブ装置10は、平面板121に対しプローブ姿勢変更部104を介して超音波プローブ101がマトリックス状に配列されている。なお、超音波プローブ101を配列する土台は、平面板121に拘泥されず、例えば波等からの影響を低減させるために格子状の強固なフレームであってもよい。
【0048】
本超音波プローブ装置10において開口長を長くする場合には、図10(a)に示すように平面板121をSに対して直面するように配置し、且つ各超音波プローブ101と平面板121とが垂直になるように(すなわち、各超音波プローブ101が画像化領域と直面するように)プローブ姿勢変更部104を制御する。一方、開口長を短くする場合には、図10(b)に示すように例えば水平方向と角度θをなすように平面板121を傾斜させる。また、このとき、全ての超音波プローブ101を画像化に寄与させるために、各超音波プローブ101の姿勢を制御する。この制御は、例えば図11に示すように、当該超音波プローブ装置10から径H1の円盤状の画像化領域までの距離をLとした場合に、当該超音波プローブ装置10の開口面一番端の位置0.5Hで指向角θcの超音波を画像照射領域Sに対して照射するために、次の式(5)で与えられる角度θoだけ超音波プローブ101を傾ける。
【数3】

【0049】
なお、式(5)中のL1、Hは、それぞれ次の式(6)、(7)によって与えられる。
【数4】

【0050】
以上述べた構成によっても、第1の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波画像化装置10は、複数の超音波プローブ101が配列された、大きさの異なる同心円上の円形フレームの円弧長(又は半径)を制御することで、当該超音波プローブ装置10の開口長を制御する例である。
【0052】
図12(a)は、本実施形態に係る超音波プローブ装置10の展開状態を正面から見た図であり、図12(b)は収縮展開状態を正面から見た図である。各図に示すように、超音波プローブ装置10は、同心円状に配置され複数の超音波プローブ101が設置された複数の円環フレーム123を有している。また、各円環フレーム123は、中心位置を固定したままで伸縮自在な機構(詳細は後述)を有している。従って、各円環フレーム123の動径方向に沿って拡大、縮小させることで、本超音波プローブ装置10の開口長を展開(拡大)、収縮させることができる。
【0053】
なお、図12(a)、(b)に示した例では、内側から順番に、6個、6個、6個、12個の超音波プローブ101が各円環フレーム123に設置された超音波プローブ装置10を示している。しかしながら、当該例に拘泥されず、図12(b)に示す収縮状態のときに超音波プローブ101同士が接触しない範囲であれば、どのような設置構成であってもよい。また、円環支持部材125の数についても、特に限定はない。
【0054】
図13は、円環フレーム123の伸縮機構を説明するための図である。説明のために図13を125で切って展開したものを図14(a)、(b)に示す。図13、14(a)、(b)に示すように、円環フレーム123は、連結部位123cにおいて連結されたフレーム部材123a、123b、フレーム部材123a、123bのなす角度θを開口長制御部30からの信号に従って制御する開閉装置123dを有するパンタグラフである。例えば、開閉装置123dが開口長制御部30からの信号に従って角度θを増大させた場合には、図14(b)に示すように連結されたフレーム部材123a、123bが伸張することで円環フレーム123の円弧長さ(又は半径)が増大し、その結果本超音波プローブ装置10の開口長が大きくなる。一方、開閉装置123dが開口長制御部30からの信号に従って角度θを減少させた場合には、図14(a)に示すように連結されたフレーム部材123a、123bが収縮することで円環フレーム123円弧長さ(又は半径)が減少し、その結果、本超音波プローブ装置10の開口長が小さくなる。
【0055】
なお、連結部材123cは、図14(a)、(b)に示すように、パンタグラフ円弧長さと同期して長さが変わるものである(すなわち、開閉装置123dが角度θを増大させた場合には長くなり、角度θを減少させた場合には短くなる。)。本実施形態に係る超音波プローブ装置10は、この連結部材123cの性質を利用して、パンタグラフ機構による開口長制御と連動した各超音波プローブ101の姿勢制御を実行する。
【0056】
図15(a)、(b)は、パンタグラフ機構による開口長制御と連動した各超音波プローブ101の姿勢制御を説明するための図である。図15(a)に示すように、連結部材123cは、ピニオン機構を有するハッチング部123e、当該ハッチング部123eに結合され且つ超音波プローブ101を設置するめのラック123fを具備している。開閉装置123dによって角度θが増大され円環フレーム123が展開すると、当該展開と連動して、設置された超音波プローブ101の姿勢は例えば図15(b)に示すように下方に変化する。また、開閉装置123dによって角度θが減少され円環フレーム123が収縮すると、当該展開と収縮と連動して、設置された超音波プローブ101の姿勢は例えば図15(b)から図15(a)へと変化する。
【0057】
なお、ラック123fとピニオン機構の歯数と半径の関係は、既述の式(1)、(2)、(3)を満たすように向きを変更するために十分な条件を有する必要があることはいうまでもない。さらに、第1の実施形態で示した様に、超音波プローブ101の向きは、距離L1を考慮しない場合には、既述の式(3)、(4)を満たすような超音波プローブ101の向きθoを選択すれば十分である。この場合、超音波プローブ101の向きは、開口の大きさ長Hよって決まる角度となる。
【0058】
また、図15(a)、(b)に示した超音波プローブ装置101の姿勢制御機構は、あくまでも一例である。従って、その姿勢を制御するために、例えば各超音波プローブ101毎に(すなわち個別に)姿勢駆動機構を有する構成であってもよい。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上本発明によれば、開口長の大きさを制御可能とし、画像分解能及び観測対象距離を限定することなく、超音波による良好な画像化を実現することができる超音波プローブ装置及び超音波画像化装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波画像処理装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2(a)、(b)は、超音波プローブ装置10の展開状態と収縮状態を正面から図示したものである。
【図3】図3(a)は、図2(a)の領域rの展開状態を示した図であり、図3(b)は、図2(a)の領域rの収縮状態を示した図である。
【図4】図4は、超音波を用いた媒質中物体の画像化における分解能について説明するための図である。
【図5】図5(a)、(b)は、超音波を用いた媒質中物体の画像化における分解能について説明するための図である。
【図6】図6は、超音波プローブの指向角と画像化領域Sとの位置関係を説明するための図である。
【図7】図7は、超音波プローブの姿勢制御の一例を説明するための図である。
【図8】図8は、超音波プローブの姿勢制御の他の例を説明するための図である。
【図9】図9は、画像化領域Sを超音波プローブの指向角幅内に存在させるための調整角θcを説明するための図である。
【図10】図10(a)、(b)は、第2の実施形態に係る超音波プローブ装置10の側面図を示した図である。
【図11】図11は、第2の実施形態に係る超音波プローブ装置10の超音波プローブ101の姿勢制御を説明するための図である。
【図12】図12(a)、(b)は、第3の実施形態に係る超音波プローブ装置10の正面図である。
【図13】図13は、円環フレーム123の伸縮機構を説明するための図である。
【図14】図14(a)、(b)は、円環フレーム123の伸縮機構を説明するための図である。
【図15】図15は、パンタグラフ機構による開口長制御と連動した各超音波プローブ101の姿勢制御を説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
1…超音波画像化装置、10…超音波プローブ装置、12…増幅器、14…A/D変換器、16…距離信号演算回路、18…画像生成回路、20…発信器、22…切替回路、24…発信制御部、26…表示制御部、28…表示部、30…開口長制御部、32…プローブ姿勢制御部、34…操作部、101…超音波プローブ、103…開口長変更装置、104…プローブ姿勢変更部、105…伸縮ロッド、107…結合部材、109…リンク機構、111…ワイヤ、113…結合部、115…駆動機構、121…変形ロッド、123…円環フレーム、125…円環支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、供給される駆動信号に応答して超音波を発信し、超音波を受信して電気信号を発生する複数の超音波プローブと、
前記複数の超音波プローブを二次元状に配列し設置するための設置手段と、
前記設置手段を伸張及び収縮させることで、前記複数の超音波プローブが配列されることによって形成される超音波照射面の径を変更する伸張収縮機構と、
前記複数の超音波プローブが発生する各電気信号を用いて、超音波画像を生成する画像生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波画像化装置。
【請求項2】
前記超音波照射面と画像化対象領域との距離が近くなるに従って前記設置手段を収縮させ、前記超音波照射面と画像化対象領域との距離が遠くなるに従って前記設置手段を伸張させるように、前記伸張収縮機構を制御する制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の超音波画像化装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記超音波照射面の径をHとし、前記超音波照射面から画像化対象領域までの距離をLとした場合に、L/Hが一定となるように、前記距離Lに従って前記伸張収縮機構を制御することを特徴とする請求項2記載の超音波画像化装置。
【請求項4】
前記複数の超音波プローブのそれぞれが発信する超音波の指向角幅に画像化対象領域が含まれるように、前記設置手段を伸張又は収縮に連動して、少なくとも一つの前記超音波プローブの前記設置手段に対する姿勢を制御する姿勢制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波画像化装置。
【請求項5】
それぞれが、供給される駆動信号に応答して超音波を発信し、超音波を受信して電気信号を発生する複数の超音波プローブと、
前記複数の超音波プローブを二次元状に配列し設置するための設置手段と、
前記設置手段を伸張及び収縮させることで、前記複数の超音波プローブが配列されることによって形成される超音波照射面の径を変更する伸張収縮機構と、
を具備することを特徴とする超音波プローブ装置。
【請求項6】
前記超音波照射面と画像化対象領域との距離が近くなるに従って前記設置手段を収縮させ、前記超音波照射面と画像化対象領域との距離が遠くなるに従って前記設置手段を伸張させるように、前記伸張収縮機構を制御する制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項5記載の超音波プローブ装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記超音波照射面の径をHとし、前記超音波照射面から画像化対象領域までの距離をLとした場合に、L/Hが一定となるように、前記距離Lに従って前記伸張収縮機構を制御することを特徴とする請求項6記載の超音波プローブ装置。
【請求項8】
前記複数の超音波プローブのそれぞれが発信する超音波の指向角幅に画像化対象領域が含まれるように、前記設置手段を伸張又は収縮に連動して、少なくとも一つの前記超音波プローブの前記設置手段に対する姿勢を制御する姿勢制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項5又は6記載の超音波プローブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−265037(P2009−265037A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117787(P2008−117787)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】