説明

超音波接合方法及びその装置

【課題】 ポリアリレートを主体とする難成形性のマトリックス樹脂にカーボンブラック等の導電性フィラーを分散させてなる組成物のような難成形性樹脂からエンドレスベルトを製造する方法及び装置を提供する。
【解決手段】 導電性フィラーを含有する樹脂フィルムからエンドレスベルトを製造する装置は、(a) 平坦な上面21aに円環状溝22を有し回転する第一の超音波ホーン21と、円環状溝22に係合して従動するロール24と、第一の超音波ホーン21の接線方向に可動な搬送台26とを具備する超音波溶接溶断装置と、(b) 平坦な上面41aを有する当接台41及び第二の超音波ホーン42を具備する超音波装置とを具備する。回転する第一の超音波ホーン21の円環状溝22と従動ロール24との間に樹脂フィルムFの突出部を通して樹脂フィルムFの突出部を線状に超音波溶接するとともに溶断した後、超音波溶断部を平坦化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電複写機や静電プリンター等のカラー画像形成装置に用いる転写ベルトに好適なエンドレスベルトを製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー静電複写機やカラー静電プリンター等のように複数のトナー画像を積層転写することによりカラー画像を形成するカラー画像形成装置には、中間転写ベルト(感光体上に形成されたトナー像を紙等の転写材に転写する前に転写するベルト)や、転写搬送ベルト(紙等の転写材を静電的に吸着して搬送するとともに、感光体上に形成されたトナー像を直接転写するために用いるベルト)が用いられている。
【0003】
転写ベルトには、機械的強度、耐クリープ性、靱性、降伏伸度、屈曲性、寸法安定性、耐熱性、難燃性、低コスト等が要求されており、かつシームレスであるのが好ましい。転写ベルトには現在までにフッ素樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリイミド等が使用されているが、いずれも上記要件を全て満たす訳ではない。
【0004】
このような事情下で、最近ポリアリレート樹脂を用いた転写ベルトが種々提案されている。例えば、特開2000-137389号(特許文献1)は、少なくともポリアリレート樹脂を含有する溶融樹脂を押出機に設けた環状ダイスから管状に押出し、インフレーション法により所定の形状に成形することによりエンドレスベルト状転写部材を製造する方法を提案している。ポリアリレートは上記要件を満たす樹脂として有望であり、実用化が期待されている。しかしながら鋭意検討の結果、ポリアリレート自身が非常に成形性に劣る上、多量のカーボンブラックを含有しているので、ポリアリレートの管状押出成形体をインフレーション法により均一な膜厚のフィルムにするのは、事実上不可能であることが分った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-137389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ポリアリレートを主体とする難成形性のマトリックス樹脂にカーボンブラック等の導電性フィラーを分散させてなる組成物のように非常に成形性に劣る材料からエンドレスベルトを製造する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、回転する超音波ホーンと従動するロールとの間に難成形性の樹脂フィルムを重ねて通すと、難成形性の樹脂フィルムに対しても直線的な超音波溶接溶断を安定して行うことができ、もって難成形性樹脂フィルムからなるエンドレスベルトが得られることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、導電性フィラーを含有する樹脂フィルムからエンドレスベルトを製造する本発明の第一の方法は、平坦な上面に円環状溝を有する第一の超音波ホーンを回転させるとともに、前記円環状溝にロールを係合させて従動させ、環状に折り曲げた前記樹脂フィルムの両端付近を前記円環状溝と前記従動ロールとの間に通すことにより前記樹脂フィルムを超音波溶接するとともに溶断し、接合した超音波溶断部を開いて当接台の平坦面上に保持し、前記超音波溶断部に沿って第二の超音波ホーンを押圧しながら動かすことにより前記超音波溶断部を平坦化することを特徴とする。
【0009】
第一の方法において、前記円環状溝はV字状の斜面を有するとともに、前記従動ロールが傾斜したロール面を有し、前記円環状溝と前記従動ロールとの間に進入した2枚重ねの前記樹脂フィルムを前記従動ロールの前記傾斜ロール面と前記円環状溝の前記V字状斜面とで押圧し、もって溶接するとともに溶断するのが好ましい。
【0010】
第一の方法において、前記第一の超音波ホーンを前記樹脂フィルムの進行方向と同一方向に回転させるのが好ましい。
【0011】
導電性フィラーを含有する樹脂フィルムからエンドレスベルトを製造する本発明の第一の装置は、(a) 平坦な上面に円環状溝を有し回転する第一の超音波ホーンと、前記円環状溝に係合して従動するロールと、前記第一の超音波ホーンの接線方向に可動な搬送台と、環状に折り曲げた前記樹脂フィルムを、両端が前記搬送台から横手方向に突出するように前記搬送台に固定する押圧部材とを具備する超音波溶接溶断装置と、(b) 平坦な上面を有する当接台及び第二の超音波ホーンを具備する超音波装置とを具備し、前記超音波溶接溶断装置において前記樹脂フィルムを固定した前記搬送台を駆動することにより、回転する前記第一の超音波ホーンの前記円環状溝と前記従動ロールとの間に前記樹脂フィルムの突出部を通し、もって前記樹脂フィルムの突出部を線状に超音波溶接するとともに溶断した後、前記超音波装置において前記樹脂フィルムの前記超音波溶断部を前記当接台に固定し、前記超音波溶断部に沿って前記第二の超音波ホーンを押圧しながら動かすことにより、前記超音波溶断部を平坦化することを特徴とする。
【0012】
第一の装置において、前記円環状溝はV字状の斜面を有するとともに、前記従動ロールは傾斜したロール面を有し、前記円環状溝と前記従動ロールとの間に進入した2枚重ねの前記樹脂フィルムは前記従動ロールの前記傾斜ロール面と前記円環状溝の前記V字状斜面とで押圧され、もって溶接された状態で溶断されるのが好ましい。
【0013】
導電性フィラーを含有する樹脂フィルムからエンドレスベルトを製造する本発明の第二の方法は、平坦な上面を有する第一の超音波ホーンを回転させるとともに、前記第一の超音波ホーンの上面にロールを当接させて従動させ、環状に折り曲げた前記樹脂フィルムの両端付近を第一の超音波ホーンの上面と前記従動ロールとの間に通すことにより前記樹脂フィルムを超音波溶接するとともに溶断し、接合した超音波溶断部を開いて当接台の平坦面上に保持し、前記超音波溶断部に沿って第二の超音波ホーンを押圧しながら動かすことにより前記超音波溶断部を平坦化することを特徴とする。
【0014】
導電性フィラーを含有する樹脂フィルムからエンドレスベルトを製造する本発明の第二の装置は、(a) 平坦な上面を有し回転する第一の超音波ホーンと、前記第一の超音波ホーンの上面に当接して従動するロールと、前記第一の超音波ホーンの接線方向に可動な搬送台と、環状に折り曲げた前記樹脂フィルムを、両端が前記搬送台から横手方向に突出するように前記搬送台に固定する押圧部材とを具備する超音波溶接溶断装置と、(b) 平坦な上面を有する当接台及び第二の超音波ホーンを具備する超音波装置とを具備し、前記超音波溶接溶断装置において前記樹脂フィルムを固定した前記搬送台を駆動することにより、回転する前記第一の超音波ホーンの上面と前記従動ロールとの間に前記樹脂フィルムの突出部を通し、もって前記樹脂フィルムの突出部を線状に超音波溶接するとともに溶断した後、前記超音波装置において前記樹脂フィルムの前記超音波溶断部を前記当接台に固定し、前記超音波溶断部に沿って前記第二の超音波ホーンを押圧しながら動かすことにより、前記超音波溶断部を平坦化することを特徴とする。
【0015】
第二の方法及び装置において、前記従動ロールはV字型のロール面を有し、前記ロール面のうち前記樹脂フィルム側の第一のロール面部の中心線からの傾斜角θ1は反対側の第二のロール面部の中心線からの傾斜角θ2より大きいのが好ましい。
【0016】
第一及び第二のエンドレスベルトの製造装置は、さらに(c) 平坦部材と、その両端にヒンジを介して取り付けられた一対の跳ね板と、前記樹脂フィルムの上昇を阻止する部材とを具備する樹脂フィルム折り曲げ装置と、(d) 一対の押え板を有するヒンジ部材とを具備し、前記樹脂フィルム折り曲げ装置により環状に折り曲げられた前記樹脂フィルムの両端を前記ヒンジ部材の一対の押え板の間に挿入した後、前記一対の押え板を閉じることにより前記樹脂フィルムの両端を正確に揃えて把持するのが好ましい。
【0017】
前記ヒンジ部材の押え板の先端に平坦面を有する垂直フランジ部が設けられており、前記樹脂フィルムの両端を把持した状態で前記垂直フランジ部を前記搬送台の垂直面に当接させた後、前記押圧部材により前記樹脂フィルムを前記搬送台に固定することにより前記樹脂フィルムの突出部の長さを正確に決めるのが好ましい。
【0018】
前記樹脂フィルムはポリアリレートを主体とするマトリックス樹脂にカーボンブラックを分散させた組成物からなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、停止した従動ロールに対して第一の超音波ホーンを回転させ、かつ搬送台を第一の超音波ホーンに対して接線方向に進行させるので、第一の超音波ホーンの回転速度及び搬送台の進行速度の調整により直線的な超音波溶接溶断を安定して行うことができる。そのため、ポリアリレートのように難成形性の樹脂からなるフィルムでも、きれいにエンドレスベルトにすることができる。本発明の方法により低コストでエンドレスベルトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のエンドレスベルトの製造装置に用いる樹脂フィルム折り曲げ装置を示す概略側面図である。
【図2】樹脂フィルム折り曲げ装置及びヒンジ部材により樹脂フィルムの両端を正確に揃えて把持する工程を示す概略側面図である。
【図3】樹脂フィルムの両端を把持したヒンジ部材を示す部分拡大図である。
【図4】本発明のエンドレスベルトの製造装置に用いる超音波溶接溶断装置を示す平面図である。
【図5】超音波溶接溶断装置を示す長手方向断面図である。
【図6】第一の超音波ホーンの円環状溝のV字状斜面と従動ロールの傾斜ロール面との関係を示す拡大断面図である。
【図7】両端をヒンジ部材で把持した樹脂フィルムを搬送台に位置決めして固定する工程を示す断面図である。
【図8】フィルムを固定した搬送台が待機位置にいるときの超音波溶接溶断装置を示す平面図である。
【図9】回転する第一の超音波ホーンと静止した従動ロールとの間に樹脂フィルムを送給する工程を示す斜視図である。
【図10】回転する第一の超音波ホーンと静止した従動ロールにより樹脂フィルムを超音波溶接溶断する工程を示す斜視図である。
【図11】第一の超音波ホーンの円環状溝に係合する従動ロールにより樹脂フィルムを超音波溶接溶断する工程を示す部分拡大断面図である。
【図12】樹脂フィルムの超音波溶接溶断部を示す部分拡大図である。
【図13】樹脂フィルムの超音波溶接溶断の途中の状態を示す平面図である。
【図14】樹脂フィルムの超音波溶接溶断中における搬送台と第一の超音波ホーンとの位置関係を示す横手方向断面図である。
【図15】超音波溶接溶断が完了した樹脂フィルムを超音波溶接溶断装置から取り出す工程を示す平面図である。
【図16】樹脂フィルムの超音波溶接溶断部を第二の超音波ホーンにより平坦化する工程を示す断面図である。
【図17】第二の方法及び装置に用いる従動ロール及び第一の超音波ホーンの例を示す部分拡大断面図である。
【図18】第二のエンドレスベルトの製造装置に用いる超音波溶接溶断装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のエンドレスベルトの製造方法及び装置を、添付図面を参照して工程順に説明する。
【0022】
[1] 第一のエンドレスベルトの製造方法及び装置
(A) 樹脂フィルム折り曲げ装置及びヒンジ部材
図1は樹脂フィルム折り曲げ装置10の一例を示す。この折り曲げ装置10は、図1の(1) に示すように、平坦部材11と、その両端にヒンジ11a,11bを介して取り付けられた一対の跳ね板12a,12bと、樹脂フィルムFの上昇を阻止する棒部材13とを具備する。まず一対の跳ね板12a,12bを開いた状態で樹脂フィルムFを載置し、樹脂フィルムFの上方に棒部材13を配置する。図1の(2) に示すように、この状態で一対の跳ね板12a,12bを上方に回動すると、棒部材13により上昇を阻止された樹脂フィルムFは平坦部材11と一対の跳ね板12a,12bとの間で環状に折り曲げられる。折り曲げられた樹脂フィルムFは弾性により湾曲状になる。
【0023】
このとき樹脂フィルムFの両端Fa,Fbは通常正確に揃っていない。図2の(1) 及び(2) に示すように、樹脂フィルムFの両端Fa,Fbを拡開したヒンジ部材15の一対の押え板15a,15bの間に挿入し、一対の押え板15a,15bを開いたままヒンジ部材15を僅かに下降させる。下降の際、ヒンジ部材15に振動を与えても良い。例えば樹脂フィルムFの端部Faが端部Fbより上に位置していたとすると、端部Faだけがヒンジ部材15の内端面15cに当接するので、端部Faだけが下方に押される。すると、樹脂フィルムFは平坦部材11及び跳ね板12a,12bの表面を滑って両端Fa,Fbは同じ高さになる。樹脂フィルムFの滑りを良好にするために、平坦部材11及び跳ね板12a,12bの上面、及び一対の押え板15a,15bの内面にテフロン(登録商標)等の低摩擦層を設けるのが好ましい。両端Fa,Fbを正確に揃えるために、ヒンジ部材15の下降は十分に行う。図2の(3) に示すように、両端Fa,Fbが正確に揃ったら一対の押え板15a,15bを完全に閉じ、樹脂フィルムFの両端Fa,Fbをしっかり固定する。
【0024】
図3及び図6に示すように、樹脂フィルムFを搬送台に固定する際にヒンジ部材15を搬送台26の垂直面26aに当接させるので、各押え板15a,15bには垂直フランジ部16a,16bが設けられている。フランジ部16a,16bは各押え板15a,15bに対して垂直であるとともに、搬送台26の垂直面26aに当接する平坦面を有する。搬送台26は垂直フランジ部16a,16bを載置して滑らせるための水平かつ平坦な上面26cを有する段部26bを有する。段部26bの平坦な上面26cと搬送台26の上面26dとの距離は垂直フランジ部16a,16bの長さに等しい。このため、搬送台26の垂直面26aに当接した押え板15a,15bは搬送台26の上面26dと同じ高さになる。
【0025】
(B) 超音波溶接溶断装置
図4及び図5に示すように、超音波溶接溶断装置20は、平坦な上面21aに円環状溝22を有する第一の超音波ホーン21と、円環状溝22に係合して従動するロール24と、超音波ホーン21の接線方向に可動な搬送台26と、両端Fa,Fbを揃えて環状に折り曲げた樹脂フィルムFを、両端Fa,Fbが搬送台26から横手方向に突出するように搬送台26に固定する押圧部材28とを具備する。第一の超音波ホーン21は回転自在であるが、その回転方向は搬送台26と同一方向であるのが好ましい。
【0026】
図6に示すように、円環状溝22はV字状断面を有し、ロール24のロール面24aは傾斜している。円環状溝22の斜面22aの中心線からの傾斜角はロール24のロール面24aの中心線からの傾斜角より大きいので、円環状溝22の斜面22a上端(円環状溝22の縁部)にロール24のロール面24aが当るようになっている。
【0027】
図5に示す例では、搬送台26にガイド棒27が摺動自在に貫通しており、ガイド棒27は支持フレーム29a,29bに固定されている。搬送台26はまたガイド板32上を車輪(図示せず)により動くようになっている。搬送台26には駆動ベルト31が取り付けられており、駆動ベルト31は一対の歯車32a,32b(一方が駆動で他方が従動)により駆動される。押圧部材28は断面コの字状で、平坦な下面28aと一対の垂直フランジ部28bとからなる。
【0028】
図7の(1) 及び(2) に示すように、環状に折り曲げた樹脂フィルムFを把持したヒンジ部材15を水平にし、垂直フランジ部16bが搬送台26の段部26bの上面26cに当るまで、ヒンジ部材15を下降させる。次いでヒンジ部材15を搬送台26の方向に水平移動させると、一方の押え板15bの垂直フランジ部16bの平坦面は搬送台26の垂直面26aに当接する。すると、搬送台26から横手方向に突出する樹脂フィルム部分(突出部)F’の長さが正確に規定される。(3) 及び(4) に示すように、押圧部材28を下降させて、樹脂フィルムFを搬送台26の上面26dと押圧部材28の下面28aでしっかり把持する。図5に示すように、一対のクランプ34a,34bにより押圧部材28を搬送台26にしっかり固定する。
【0029】
図8は樹脂フィルムFが搬送台26に固定された様子を上から示す。図8では、搬送台26は待機位置におり、樹脂フィルムFの突出部F’の先端は従動ロール24より十分に手前にある。図9に示すように、搬送台26の進行により樹脂フィルムFの突出部F’を第一の超音波ホーン21に接近させるとともに、第一の超音波ホーン21を搬送台26と同一方向に回転させる。図10の(1) 及び(2) に示すように、樹脂フィルムFの突出部F’が第一の超音波ホーン21の円環状溝22と従動ロール24との間に入ると、突出部F’は円環状溝22の斜面22aとロール24のロール面24aで押圧され、溶接された状態で溶断される。図11は、円環状溝22の斜面22aとロール24のロール面24aで強く押圧された樹脂フィルムFの突出部F’で、2枚の樹脂フィルムFが超音波溶接されるとともに、溶断される様子を詳細に示す。図12の(1) は樹脂フィルムFの超音波溶断部F”を詳細に示し、(2) はそれを開いた様子を示す。このように、超音波溶断部F”は平坦にはなっていない。
【0030】
図13は樹脂フィルムFの超音波溶接溶断の途中の状態を示す。停止した従動ロール24に対して第一の超音波ホーン21が回転し、かつ搬送台26が第一の超音波ホーン21に対して接線方向に進行するので、第一の超音波ホーン21の回転速度及び搬送台26の進行速度を調整することにより、直線的な超音波溶接溶断を安定して行うことができる。超音波溶接溶断中の搬送台26と第一の超音波ホーン21との位置関係を図14に示す。図15に示すように超音波溶接溶断が完了したら、クランプ34a,34bを開放して押圧部材28を取り外し、エンドレスベルト状に溶接された樹脂フィルムFを装置から取り出し、搬送台26を待機位置まで戻す。
【0031】
(C) 超音波装置
図16の(1) に示すように、エンドレスベルト状樹脂フィルムFの超音波溶断部F”を平坦化する超音波装置40は、平坦な上面41aを有する当接台41と、超音波溶断部F”に沿って可動な第二の超音波ホーン42とを具備する。当接台41は支持フレーム43に片持ち状に固定された円棒で、加工により上部に平坦面41aが形成されたものが好ましい。
【0032】
図16の(2) に示すように、エンドレスベルト状樹脂フィルムFを当接台41に嵌め、超音波溶断部F”を平坦面41aに固定する。この状態で、第二の超音波ホーン42を超音波溶断部F”に押圧するとともに、それに沿って移動させる。すると図12に示すように曲がっていた超音波溶断部F”は平坦化される。第二の超音波ホーン42の直線的移動は1回でも良いが、必要に応じて複数回行っても良い。
【0033】
[2] 第二のエンドレスベルトの製造方法及び装置
第二の方法及び装置は、第一の超音波ホーンの上面が平坦である(第一の超音波ホーンの上面に円環状溝がない)点で、第一の方法及び装置と異なる。図17は従動ロールの例を示す。(1) の例では、従動ロール25はV字型のロール面を有し、樹脂フィルムF側の第一のロール面部125aの中心線からの傾斜角θ1は反対側の第二のロール面部125bの中心線からの傾斜角θ2と等しい(例えば、θ1=θ2=45°)。(2) の例では、傾斜角θ1は傾斜角θ2より大きい(例えば、θ1=45°、θ2=30°)。(3) の例では、第一のロール面部125aは湾曲状で、第二のロール面部125bは垂直である。(2) 及び(3) の場合のように第一のロール面部125aの中心線からの傾斜角θ1が第二のロール面部125bの中心線からの傾斜角θ2より大きいと、樹脂フィルムFを溶接溶断する際に溶接部を広く取れ、樹脂フィルムFの溶接強度を向上できる。
[3] 樹脂フィルムの組成物
(A) ポリアリレート
本発明に用いる樹脂フィルムFを形成する樹脂は、エンドレス転写ベルトとしての要件を満たすために、ポリアリレートを主体とするのが好ましい。「ポリアリレートを主体とする」とは、ポリアリレートが樹脂分の50質量%以上であればよいことを意味し、ポリアリレート100%の樹脂でも良い。
【0034】
ポリアリレートは、2価のフェノール残基と2価の芳香族カルボン酸残基とから構成されているポリエステルである。2価のフェノール成分は、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン(ビスフェノールAP)等である。また2価の芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3-tert-ブチルイソフタル酸、ジフェン酸、4,4’-ジカルボン酸等である。ポリアリレートは、例えば特開2008-19312号に記載の界面重合法により製造することができる。
【0035】
(B) その他の樹脂
本発明に用いる組成物は、必要に応じて、ポリエステル等の他の樹脂を含有しても良い。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリナフタレンテレフタレートが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。その他の樹脂の配合量は、(ポリアリレート+その他の樹脂)を100質量%として50質量%未満であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましい。
【0036】
(C) カーボンブラック
組成物に添加するカーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等である。カーボンブラックの配合量は転写ベルトの所望の導電率に応じて決める。
【0037】
以上の通り、図面を参照して本発明のクッション部材を説明したが、本発明はそれに限定されず、その趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0038】
10・・・樹脂フィルム折り曲げ装置
11・・・平坦部材
11a,11b・・・ヒンジ
12a,12b・・・一対の跳ね板
13・・・樹脂フィルムの上昇阻止部材
15・・・ヒンジ部材
15a,15b・・・一対の押え板
15c・・・ヒンジ部材の内端面
16a,16b・・・垂直フランジ部
20・・・超音波溶接溶断装置
21・・・第一の超音波ホーン
21a・・・第一の超音波ホーンの上面
22・・・円環状溝
22a・・・円環状溝のV字状斜面
24,25・・・従動ロール
24a・・・従動ロールの傾斜ロール面
125a,125b・・・従動ロールの第一及び第二のロール面部
26・・・搬送台
26a・・・搬送台の垂直面
26b・・・搬送台の段部
26c・・・段部の上面
26d・・・搬送台の上面
27・・・ガイド棒
28・・・押圧部材
29a,29b,43・・・支持フレーム
30・・・押圧板
31・・・駆動ベルト
32a,32b・・・歯車
34a,34b・・・クランプ
40・・・超音波装置
41・・・当接台
41a・・・当接台の上面
42・・・第二の超音波ホーン
F・・・樹脂フィルム
Fa,Fb・・・樹脂フィルムの両端
F’・・・樹脂フィルムの突出部
F”・・・樹脂フィルムの超音波溶接溶断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィラーを含有する樹脂フィルムからエンドレスベルトを製造する方法であって、平坦な上面に円環状溝を有する第一の超音波ホーンを回転させるとともに、前記円環状溝にロールを係合させて従動させ、環状に折り曲げた前記樹脂フィルムの両端付近を前記円環状溝と前記従動ロールとの間に通すことにより前記樹脂フィルムを超音波溶接するとともに溶断し、接合した超音波溶断部を開いて当接台の平坦面上に保持し、前記超音波溶断部に沿って第二の超音波ホーンを押圧しながら動かすことにより前記超音波溶断部を平坦化することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエンドレスベルトの製造方法において、前記円環状溝がV字状の斜面を有するとともに、前記従動ロールが傾斜したロール面を有し、前記円環状溝と前記従動ロールとの間に進入した2枚重ねの前記樹脂フィルムを前記従動ロールの前記傾斜ロール面と前記円環状溝の前記V字状斜面とで押圧し、もって溶接するとともに溶断することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンドレスベルトの製造方法において、前記第一の超音波ホーンを前記樹脂フィルムの進行方向と同一方向に回転させることを特徴とする方法。
【請求項4】
導電性フィラーを含有する樹脂フィルムからエンドレスベルトを製造する方法であって、平坦な上面を有する第一の超音波ホーンを回転させるとともに、前記第一の超音波ホーンの上面にロールを当接させて従動させ、環状に折り曲げた前記樹脂フィルムの両端付近を前記第一の超音波ホーンの上面と前記従動ロールとの間に通すことにより前記樹脂フィルムを超音波溶接するとともに溶断し、接合した超音波溶断部を開いて当接台の平坦面上に保持し、前記超音波溶断部に沿って第二の超音波ホーンを押圧しながら動かすことにより前記超音波溶断部を平坦化することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3に記載のエンドレスベルトの製造方法において、前記従動ロールがV字型のロール面を有し、前記ロール面のうち前記樹脂フィルム側の第一のロール面部の中心線からの傾斜角θ1が反対側の第二のロール面部の中心線からの傾斜角θ2より大きいことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のエンドレスベルトの製造方法において、前記樹脂フィルムはポリアリレートを主体とするマトリックス樹脂にカーボンブラックを分散させた組成物からなることを特徴とする方法。
【請求項7】
導電性フィラーを含有する樹脂フィルムからエンドレスベルトを製造する装置であって、(a) 平坦な上面に円環状溝を有し回転する第一の超音波ホーンと、前記円環状溝に係合して従動するロールと、前記第一の超音波ホーンの接線方向に可動な搬送台と、環状に折り曲げた前記樹脂フィルムを、両端が前記搬送台から横手方向に突出するように前記搬送台に固定する押圧部材とを具備する超音波溶接溶断装置と、(b) 平坦な上面を有する当接台及び第二の超音波ホーンを具備する超音波装置とを具備し、前記超音波溶接溶断装置において前記樹脂フィルムを固定した前記搬送台を駆動することにより、回転する前記第一の超音波ホーンの前記円環状溝と前記従動ロールとの間に前記樹脂フィルムの突出部を通し、もって前記樹脂フィルムの突出部を線状に超音波溶接するとともに溶断した後、前記超音波装置において前記樹脂フィルムの前記超音波溶断部を前記当接台に固定し、前記超音波溶断部に沿って前記第二の超音波ホーンを押圧しながら動かすことにより、前記超音波溶断部を平坦化することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載のエンドレスベルトの製造装置において、前記円環状溝がV字状の斜面を有するとともに、前記従動ロールが傾斜したロール面を有し、前記円環状溝と前記従動ロールとの間に進入した2枚重ねの前記樹脂フィルムは前記従動ロールの前記傾斜ロール面と前記円環状溝の前記V字状斜面とで押圧され、もって溶接された状態で溶断されることを特徴とする装置。
【請求項9】
導電性フィラーを含有する樹脂フィルムからエンドレス転写ベルトを製造する装置であって、(a) 平坦な上面を有し回転する第一の超音波ホーンと、前記第一の超音波ホーンの上面に当接して従動するロールと、前記第一の超音波ホーンの接線方向に可動な搬送台と、環状に折り曲げた前記樹脂フィルムを、両端が前記搬送台から横手方向に突出するように前記搬送台に固定する押圧部材とを具備する超音波溶接溶断装置と、(b) 平坦な上面を有する当接台及び第二の超音波ホーンを具備する超音波装置とを具備し、前記超音波溶接溶断装置において前記樹脂フィルムを固定した前記搬送台を駆動することにより、回転する前記第一の超音波ホーンの上面と前記従動ロールとの間に前記樹脂フィルムの突出部を通し、もって前記樹脂フィルムの突出部を線状に超音波溶接するとともに溶断した後、前記超音波装置において前記樹脂フィルムの前記超音波溶断部を前記当接台に固定し、前記超音波溶断部に沿って前記第二の超音波ホーンを押圧しながら動かすことにより、前記超音波溶断部を平坦化することを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載のエンドレスベルトの製造装置において、前記従動ロールがV字型のロール面を有し、前記ロール面のうち前記樹脂フィルム側の第一のロール面の中心線からの傾斜角が反対側の第二のロール面の中心線からの傾斜角より大きいことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載のエンドレスベルトの製造装置において、前記第一の超音波ホーンは前記樹脂フィルムの進行方向と同一方向に回転することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載のエンドレスベルトの製造装置において、さらに(c) 平坦部材と、その両端にヒンジを介して取り付けられた一対の跳ね板と、前記樹脂フィルムの上昇を阻止する部材とを具備する樹脂フィルム折り曲げ装置と、(d) 一対の押え板を有するヒンジ部材とを具備し、前記樹脂フィルム折り曲げ装置により環状に折り曲げられた前記樹脂フィルムの両端を前記ヒンジ部材の一対の押え板の間に挿入した後、前記一対の押え板を閉じることにより前記樹脂フィルムの両端を正確に揃えて把持することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれかに記載のエンドレスベルトの製造装置において、前記ヒンジ部材の押え板の先端に平坦面を有する垂直フランジ部が設けられており、前記樹脂フィルムの両端を把持した状態で前記垂直フランジ部を前記搬送台の垂直面に当接させた後、前記押圧部材により前記樹脂フィルムを前記搬送台に固定することにより前記樹脂フィルムの突出部の長さを正確に決めることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項7〜13のいずれかに記載のエンドレスベルトの製造装置において、前記樹脂フィルムはポリアリレートを主体とするマトリックス樹脂にカーボンブラックを分散させた組成物からなることを特徴とする装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−740(P2011−740A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143582(P2009−143582)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(508174654)
【Fターム(参考)】