説明

超音波洗浄装置

【課題】 内部に超音波放射面を有するノズルから液体を流出させて被洗浄部位と接触させることで超音波の伝播路を形成し、生体などの前記被洗浄部位を超音波振動で洗浄するようにしたノズルシャワー式の超音波洗浄装置において、洗浄効率を向上する。
【解決手段】 ノズル3の吐出口12に、内方に折返えした端板13を設けるとともに、超音波洗浄モードで洗浄を行うにあたって、該超音波洗浄モードよりも液体の吐出量を抑える液溜めモードを設定し、駆動回路6はそのように流量を制御する。したがって、前記液溜めモードによる流量の抑制と、前記折返えし部とによって、液体は貯留空間11内に貯留され、一杯になると前記吐出口12から噴出する。これによって、超音波洗浄モードで洗浄を行うにあたって、超音波の伝播路から、該超音波の減衰原因となる気泡を排除し、前記被洗浄部位を効率良く洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔洗浄に好適に実施され、比較的低周波域の超音波での振動エネルギを利用して、任意の被洗浄部位を洗浄する超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子で発生させた超音波振動を、ノズルから吐出させた液体を介して被洗浄部位に伝達させ、洗浄を行う、いわゆるノズルシャワー式の超音波洗浄装置に関しては、たとえば図8で示すようなものがある。この超音波洗浄装置111は、スポットまたはスリット状になった吐出口112から洗浄液113を吐出させ、その洗浄液113中にメガヘルツ帯の超音波を放射して伝播させ、その洗浄液113に接する被洗浄物114に有効に作用させるようにしている。
【0003】
すなわち、この超音波洗浄装置111では、円筒部115aの一方の端部を端板115bで閉塞して成る超音波伝達体115の底部115cに超音波振動子116が取付けられ、その円筒部115aの外周面がハウジング117の内周面に密着されるとともに、前記ハウジング117の先端に取付けられた筒状のノズル118とによって貯留部119を形成し、その貯留部119に管路120を介して図示しないポンプから前記洗浄液113が供給される。これによって、前記超音波伝達体115の底部115cから発生された超音波振動121は、前記洗浄液113中を伝播して前記被洗浄物114に到達し、前記洗浄液113とともに表面汚れ122を除去する。
【0004】
しかしながら、この従来技術では、前記被洗浄物114は半導体素子などで、前記表面汚れ122は、微小な埃などである。そして、超音波振動子116の振動周波数は500kHzから5MHzである。これだけの高周波では、超音波振動の波長が短いので、該超音波振動はノズル118内を繰返し反射し、狭い該ノズル118で集中させて被洗浄物114に放射することができる。このため、前記ノズル118は、たとえば超音波伝達体115の底部115cの径の1/5程度の先細状に絞ることができる。
【0005】
しかしながら、そのような高い周波数では、キャビテーション領域から外れ、口腔内の歯垢や皮脂等の強固な汚れを除去(剥離)することができない。前記口腔内の強固な汚れを除去するためには、低周波域、たとえば数十kHz、好ましくは20〜60kHz程度の振動振幅の大きな超音波を用い、その低周波の超音波振動によって発生したキャビテーション気泡が破壊するときに発生する衝撃波を利用する必要がある。
【0006】
そこで、そのような低周波の超音波洗浄装置が、特許文献1で提案されている。その概略構造を示すと、図9のとおりである。超音波振動子101で発生された超音波振動は、超音波伝達体102で拡大されて共振室103へ放射され、水補給口104から供給される水に重畳されて、ノズル105から被洗浄部位に与えられる。
【特許文献1】特開昭57−65370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術による超音波洗浄装置では、図9から、前記超音波振動の周波数は、15〜100kHzと考えられるが、ノズル105が広がっていないので、波長の長い(周波数の低い)超音波は、消滅してしまうと考えられる。すなわち、そのような低周波の超音波は、ノズル内で反射しないので、該ノズルを広く形成する必要がある。ところが、ノズルを広く形成し、前記超音波振動が被洗浄部位に向けて出てゆくようにすると、ノズル内の水が流出し易くなる。特に起動時に通常の洗浄状態と同様の激しい水流で起動した場合は、ノズル内で水に気泡が入り込む。これによって、超音波の伝播効率が著しく低下するという問題がある。前記気泡は、徐々に解消に向かうが、完全には解消しないこともある。
【0008】
本発明の目的は、低周波型の超音波洗浄装置において、超音波の伝播路から該超音波の減衰原因となる気泡を排除し、被洗浄部位を効率良く洗浄することができる超音波洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超音波洗浄装置は、内部に超音波放射面を有するノズルに液体を供給し、該液体を前記ノズルに形成された吐出口から流出させて被洗浄部位と接触させることで超音波の伝播路を形成し、前記被洗浄部位を洗浄するようにした低周波型の超音波洗浄装置において、前記吐出口には、内方へ折返えされた折返えし部が形成されることを特徴とする超音波洗浄装置。
【0010】
上記の構成によれば、たとえば吐出口側に向けてホーン状に形成されたノズルに液体を供給し、その液体を前記吐出口から流出させて被洗浄部位と接触させることで超音波の伝播路を形成し、前記ノズル内に形成された超音波放射面から、たとえば数十kHz、好ましくは20〜60kHz程度の振動振幅の大きな比較的低い超音波を放射することで、口腔などの前記被洗浄部位の強固な汚れを除去するようにした、いわゆるノズルシャワー式で低周波型の超音波洗浄装置において、前記吐出口に、内方へ折返えされた折返えし部を形成する。
【0011】
したがって、ノズル内に液体が貯留されていない起動時には、前記折返えし部によって、液体は先ずノズル内に貯留され、一杯になると前記吐出口から噴出される。これによって、起動直後から、吐出口から液体を噴出させた場合に生じるような気泡が発生することなく、ノズル内を気泡のない液体で一杯に充填(貯留)した後、洗浄可能な吐出状態に移ることができる。したがって、超音波の伝播路から、該超音波の減衰原因となる気泡を排除し、前記被洗浄部位を効率良く洗浄することができる。
【0012】
また、本発明の超音波洗浄装置は、少なくとも起動時に、洗浄状態よりも液体の吐出量を抑える吐出制御手段を含むことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、ノズル内に液体が貯留されていない前記起動時には、液体はじわじわとノズル内に充填されてゆく。これによって、通常の洗浄状態と同様の激しい水流で起動した場合に生じるような気泡が発生することなく、ノズル内を気泡のない液体で一杯に充填(貯留)した後、通常の洗浄状態に移ることができる。したがって、超音波の伝播路から、該超音波の減衰原因となる気泡を排除し、前記被洗浄部位をさらに効率良く洗浄することができる。
【0014】
なお、前記起動時と同様に、ノズル内の液体が少なくなった状態から通常の洗浄状態に移る場合、たとえば激しい水流で汚れを剥ぎ取る高圧洗浄モードから通常の洗浄モードに移る場合や、マッサージ効果を狙って水流に強弱をつけて、その水流が弱い状態から強い状態へ切換わる場合などでも、同様にノズル内に液体を貯留するように、吐出量を抑えるようにしてもよい。
【0015】
さらにまた、本発明の超音波洗浄装置では、前記ノズルは、吐出口側に向けてホーン状に形成され、前記折返えし部は、前記超音波放射面以上の面積の開口部を有する端板から成ることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、前記折返えし部を、中心部に開口部を有する端板で形成した場合、該端板は液体をノズル内に貯留するために吐出口の一部を閉塞するので、その形状を、超音波放射面以上の面積の開口部を有するように形成することで、前記超音波放射面からの超音波の伝播路を確保しつつ、ノズル内に液体を貯留することもできる。
【0017】
また、本発明の超音波洗浄装置では、前記折返えし部は、網板から成ることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、前記超音波放射面からの超音波の伝播路を確保しつつ、ノズル内に液体を貯留することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の超音波洗浄装置は、以上のように、いわゆるノズルシャワー式で低周波型の超音波洗浄装置において、前記吐出口に、内方へ折返えされた折返えし部を形成する。
【0020】
それゆえ、ノズル内に液体が貯留されていない起動時には、前記折返えし部によって、液体は先ずノズル内に貯留され、一杯になると前記吐出口から噴出される。これによって、起動直後から、吐出口から液体を噴出させた場合に生じるような気泡が発生することなく、ノズル内を気泡のない液体で一杯に充填(貯留)した後、洗浄可能な吐出状態に移ることができる。したがって、超音波の伝播路から、該超音波の減衰原因となる気泡を排除し、前記被洗浄部位を効率良く洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の第1の形態に係る超音波洗浄装置1の内部構成を示す断面図である。この超音波洗浄装置1は、大略的に、ハウジング2およびその先端に取付けられるノズル3と、前記ハウジング2内に配設される超音波振動子4と、前記ハウジング2およびノズル3内に配設されるとともに、一端部が前記超音波振動子4に接続された超音波伝達体(ホーン)5と、前記超音波振動子4を駆動する駆動回路6と、前記ノズル3に液体(洗浄剤を含む水または水)を供給する液体供給部7とを備えて構成されている。
【0022】
前記ハウジング2およびノズル3は、合成樹脂などの絶縁材料から成り、ハウジング2は基端側の筒部から、ノズル3側に向けて先細り状となる錐体形状(絞り形状)に形成されており、ノズル3はハウジング2の先端部から、たとえば45°傾斜して形成される。これによって、使用者が該超音波洗浄装置1を手に持った状態で口腔などを洗浄するにあたって、使用者は腕を大きく上げたり、顔を大きく下げたりすることなく、良好な姿勢で、口腔等の狭い部位の洗浄を行うことができるようになっている。ノズル3は、内部に液体を貯留する貯留空間11を備えるとともに、この貯留空間11に貯留された液体を外部に吐出(噴出)する吐出口12を備えている。
【0023】
図2は、前記ノズル3の形状を詳しく説明するための断面図である。ノズル3は、前記吐出口12側に向けてホーン状に形成され、注目すべきは、その先端には、端板13が設けられている。端板13は、ノズル3の先端を90°内方へ折返えして形成されており、前記ノズル3の外周部分を閉塞し、中心部分は前記吐出口12として開口している。前記超音波振動子4の外径をaとし、ノズル3の先端部分の内径をbとし、前記吐出口12の外径をcとするとき、a≦b、好ましくはa≒bであり、かつb:c≒10:12、好ましくはb:c=10:12、に選ばれる。
【0024】
すなわち、端板13は、ホーン状に拡がるノズル3の先端を閉塞するけれども、超音波振動子4の超音波放射面5a以上の面積の開口部を確保している。これによって、前記超音波放射面5aからの超音波の伝播路を確保しつつ、後述するようにノズル3から流出する液体の一部を堰き止め、該ノズル3内に液体を貯留することができるようになっている。たとえば、前記超音波振動子4の外径aは10mmであり、ノズル3の先端部分の内径bは12mmであり、前記吐出口12の外径cは10mmである。
【0025】
前記超音波振動子4は、チタン酸鉛などのセラミック材料や水晶などで構成された圧電振動子から成り、厚み振動を利用するものである。前記超音波伝達体5は、金属材料によって略円錐台状に形成され、前記超音波振動子4からの超音波振動を増幅して、前記超音波放射面5aから放射する。この超音波伝達体5の下底面5dには前記超音波振動子4が取付けられ、該下底面5d側で、振動の節(振幅が最小)となる部分5bがハウジング2から突出形成された支持体2cによって支持され、前記超音波放射面5aとなる上底面側が前記45°折り曲げられ、前記貯留空間11に臨んでいる。したがって、超音波放射面5aも、45°傾斜し、その傾斜方向に超音波が放射される。なお、この超音波伝達体5を構成する好適な金属材料として、チタンやアルミニウムなどの軽金属、またその軽合金を用いることができる。
【0026】
前記超音波伝達体5の先端は、前記ハウジング2の内周面に、弾性体から成る保持部材14によって気密に保持固定されている。前記保持部材14は、繰返しの伸縮に対して、所期の弾発性を維持し、硬化し難い材料が望ましく、ゴムから成るOリングなどで実現される。前記Oリングから成る保持部材14に対応して、超音波伝達体5において該保持部材14が締着される外周面に、凹溝を形成するようにしてもよい。同様に、ハウジング2側でも、内周面で該保持部材14が密着する部分に、凹溝を形成するようにしてもよい。それぞれの凹溝の深さは、たとえば1mm以下程度にすることが望ましい。もしくは、前記凹溝に代えて、超音波伝達体5の外周面またはハウジング2の内周面に、前記Oリングから成る保持部材14を挟み込む一対(2条)の凸条を用いてもよい。
【0027】
また、超音波振動においては、超音波伝達体5の超音波放射面5aの振動振幅が最も大きく、たとえば40kHzで20μm程度となる。そのため、好ましくは、超音波伝達体5の外径と、保持部材14の外径との差は、振動による伸縮量と、保持部材14の弾性となどに応じて決定すればよく、2mm以下程度にすることが望ましい。こうして、超音波を伝達させるための液体を、前記貯留空間11のみに貯留し、該液体が超音波伝達体5の超音波放射面5a以外の、側面や超音波振動子4部分へ浸水しないように、気密に封止することができるようになっている。
【0028】
前記駆動回路6は、回路基板に発振回路などを構成する電子部品が実装されて構成されたものである。なお、本実施形態では、この駆動回路6は、図略のバッテリで駆動するようにしたものであるが、商用電源で駆動するようにすることも可能である。この駆動回路6は、たとえば数十kHz、好ましくは20〜60kHz程度の振動振幅の大きな比較的低い超音波を前記超音波放射面5aから放射させ、口腔などの被洗浄部位の強固な汚れを除去(剥離)する。この駆動回路6の構成および動作については後に詳述する。
【0029】
前記液体供給部7は、液体を貯留するタンク21と、ポンプ22と、管路23とを備えて構成されている。前記管路23は、その一端がポンプ22に接続され、ハウジング2内を屈曲して引き回された後、本発明では、前記超音波振動子4に接続された超音波伝達体5の中心部を通り、他端が超音波伝達体5の超音波放射面5aの中心から前記貯留空間11に臨む。この管路23も、超音波伝達体5のノズル3内の部分が屈曲形成されており、液体に対して抵抗が生じることになるが、これによって上述のように超音波放射面5aの中心部から液体を吐出することができるようになっている。前記ポンプ22を駆動する吐出制御手段である駆動回路は、超音波振動子4を駆動する駆動回路6に併設されており、その動作についても後に詳述する。
【0030】
上述の説明では、該超音波洗浄装置1にタンク21を搭載しているけれども、大型のタンクを洗面台などに別途に載置して前記管路23の一端を接続するようにしてもよく、あるいは管路23の一端を水道の蛇口に直結してもよい。水道の蛇口に直結する場合、前記ポンプ22に代えて、水流の断続および水量を制御する弁が用いられることになる。
【0031】
このように構成される超音波洗浄装置1において、注目すべきは、吐出手段であるポンプ22およびその駆動回路6は、電源投入されると、図3で示すように、予め定める時間、たとえば1秒毎に、液溜めモード、超音波洗浄モード、および高圧洗浄モードを、この順で繰返すことである。
【0032】
前記液溜めモードは、ポンプ22から、超音波洗浄モードよりも低い、たとえば50cc/minの流量で液体を供給するとともに、前記端板13の作用によって、図4(a)で示すように、前記ノズル3の前記貯留空間11内に液体を貯留するモードである。前記超音波洗浄モードは、ポンプ22の回転数を上昇し、たとえば50〜150cc/minの流量で液体を供給し、図4(b)において、参照符号24で示すように、前記ノズル3から被洗浄部位26へ超音波25の伝播路を作成し、超音波振動によって発生したキャビテーション気泡が破壊するときに発生する衝撃波によって、歯垢や皮脂等の強固に付着している汚れ27を除去(剥離)するモードである。前記高圧洗浄モードは、図4(c)において、ポンプ22の回転数をさらに上昇し、参照符号28で示すように、前記超音波洗浄モードよりも高い流量で前記ノズル3から液体を噴出し、前記超音波洗浄モードで剥がし取られた汚れ27や、前記超音波洗浄モードでは除去しきれない食物残渣等の大きな汚れ29を流し飛ばすモードである。
【0033】
このようにノズル3の貯留空間11内に液体の溜まっていない起動時および高圧水流によって貯留空間11内に空気が侵入する可能性のある前記高圧洗浄モードの後に、液溜めモードを行うことで、液体はじわじわと前記貯留空間11内に充填されてゆく。これによって、超音波洗浄モードを行うにあたって、通常の洗浄状態と同様の激しい水流で起動した場合に生じるような気泡が発生することなく、貯留空間11内を気泡のない液体で一杯に充填(貯留)した後、超音波洗浄モードに移ることができる。したがって、超音波の伝播路から、該超音波の減衰原因となる気泡を排除し、前記被洗浄部位26を効率良く洗浄することができる。また、一連のモードを繰返すことで、超音波だけでは不十分なあらゆる汚れに、1台で効果的な洗浄を行うことができる。
【0034】
ここで、端板13を設けることで、超音波の伝播を阻害することになるけれども、上述のような寸法割合で形成した場合、超音波の伝達率は10〜20%程度低下するのに対して、伝播路に気泡が発生した場合、60%以上低下してしまう。したがって、端板13を設けて液溜めを行い、気泡のない伝播路を形成する方が、極めて効果的である。
【0035】
また、前記起動時や高圧洗浄モードと同様に、貯留空間11内の液体が少なくなった状態から超音波洗浄モードに移る場合、たとえばマッサージ効果を狙って水流に強弱をつけて(高圧洗浄モードと休止とを周期的に繰返す等)、その水流が弱い状態から強い状態へ切換わる場合などでも、同様に貯留空間11内に液体を貯留するように、吐出量を抑えるようにしてもよい。上記各モードの時間や水量は一例であり、適宜定められればよい。
【0036】
また、前記高圧洗浄モードでは、超音波振動子4から超音波が放射されたままとなってもよいが、液体は超音波放射面5aの略中心部から勢い良く噴出し、超音波洗浄モード時のように該超音波放射面5aの全体に液体が行き渡らない可能性があり、また勢い良く噴出された液体に空気を含む可能性もある。したがって、超音波を放射することによる洗浄効果はあまり期待できず、また超音波振動子4が過熱する可能性もあるので、超音波の放射を行わないことが好ましい。
【0037】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の第2の形態に係る超音波洗浄装置31の内部構成を示す断面図である。この超音波洗浄装置31は、上述の超音波洗浄装置1に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、この超音波洗浄装置31では、ノズル33の先端には、前記端板13に代えて、網板34が設けられていることである。この網板34の中心部には開口35が形成されており、その開口35の内径は、図6(c)で示すように前記高圧洗浄モードで液体の径よりも大きく形成されている。網目の粗さは、超音波の伝播路を大きく塞ぐことなく、かつ液溜め効果が得られる1mm程度が好ましい。高圧洗浄モードを使用せず、超音波洗浄モードだけが行われる場合の網板は、前記開口35が形成されておらず、全面が網板となっていてもよい。
【0038】
図6は、上述のように構成される超音波洗浄装置31における各モードでの状態を説明するための図である。この超音波洗浄装置31でも、上述の超音波洗浄装置1と同様に、電源投入されると、予め定める時間毎に、図6(a)で示す液溜めモード、図6(b)で示す超音波洗浄モード、および図6(c)で示す高圧洗浄モードを、この順で繰返す。
【0039】
前記液溜めモードでは、ポンプ22から超音波洗浄モードよりも低い流量で液体が供給されるとともに、前記網板34の作用によって、前記ノズル33の貯留空間11内に、液体が貯留される。前記超音波洗浄モードでは、液体の流量が増加し、該液体はこの網板34を透過して被洗浄部位26へ到達する。前記高圧洗浄モードでは、液体の流量がさらに増加して前記管路23から勢いよく噴出し、該網板34の開口35を通過して被洗浄部位26へ到達する。
【0040】
このように網板34を用いることによっても、前記端板13と同様に、超音波の伝播効率は若干低下するけれども、液溜めを行い、超音波の伝播路から、該超音波の減衰原因となる気泡を排除し、前記被洗浄部位26を効率良く洗浄することができる。また、一連のモードを繰返すことで、超音波だけでは不十分なあらゆる汚れに、1台で効果的な洗浄を行うことができる。
【0041】
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の第3の形態に係る超音波洗浄装置における駆動回路の動作を説明するためのグラフである。本実施の形態では、駆動回路は超音波洗浄モードを行うにあたって、液溜めの良否を検知する機能を備えていることである。前記超音波振動子4は、駆動回路によって、一定電圧で、かつ前記の一定周波数で駆動されている。そして、超音波放射面5aが液体に浸漬されているか否かによって超音波の伝播速度(伝播路のインピーダンス)が異なり、前記超音波振動子4の駆動電流が変化する。本実施の形態の駆動回路は、この駆動電流の変化を検知し、超音波洗浄モードにおいて前記超音波放射面5aが空気中に露出すると、前記液溜めモードを再度行い、超音波洗浄モードに復帰する。
【0042】
具体的には、超音波放射面5aが液体に浸漬されている場合、駆動周波数と前記インピーダンスとの関係は図7(a)で示すようになり、空気中に露出すると図7(b)で示すようになる。詳しくは、超音波振動子4は一定電圧で駆動され、その駆動周波数は共振点frまたは反共振点fa付近に設定されている。その状態で、超音波放射面5aが空気中に露出すると、図7(a)から図7(b)で示すように、前記共振点fr付近で駆動している場合はインピーダンスが急激に低下し、したがって駆動電流が増加し、これに対して反共振点fa付近で駆動している場合はインピーダンスが急激に上昇し、したがって駆動電流が減少する。この電流変化を検知することで、駆動回路は液溜めの良否を検知することができ、液溜めの完了が検知されてから超音波洗浄モードに移ることができる。
【0043】
したがって、超音波洗浄中に使用者が該超音波洗浄装置を口から離して下に向けるなどして、前記貯留空間11から液体が流出してしまっても、再び液溜めモードを行い、効果的な超音波洗浄を行うことができる。
【0044】
また、液溜めモードの終了タイミング近くで超音波振動子4を振動させてみて、超音波放射面5aが液体に浸漬されていることを検知すると、モードに規定された時間が経過していなくても超音波洗浄モードに切換わったり、モードに規定された時間が経過しても超音波放射面5aが液体に浸漬されていない場合は超音波洗浄モードに切換わらなかったりしてもよい。これによって、タンク21の残量によるポンプ吐出圧の変化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係る超音波洗浄装置の内部構成を示す断面図である。
【図2】図1で示す超音波洗浄装置におけるノズル形状を詳しく説明するための断面図である。
【図3】本発明の超音波洗浄装置の動作モード説明するための図である。
【図4】図1で示す超音波洗浄装置の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の第2の形態に係る超音波洗浄装置の内部構成を示す断面図である。
【図6】図5で示す超音波洗浄装置の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の第3の形態に係る超音波洗浄装置における駆動回路の動作を説明するためのグラフである。
【図8】従来技術の超音波洗浄装置の内部構成を示す断面図である。
【図9】他の従来技術の超音波洗浄装置の内部構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1,31 超音波洗浄装置
2 ハウジング
3 ノズル
4 超音波振動子
5 超音波伝達体
5a 超音波放射面
6 駆動回路
7 液体供給部
11 貯留空間
12 吐出口
13 端板
14 保持部材
21 タンク
22 ポンプ
23 管路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に超音波放射面を有するノズルに液体を供給し、該液体を前記ノズルに形成された吐出口から流出させて被洗浄部位と接触させることで超音波の伝播路を形成し、前記被洗浄部位を洗浄するようにした低周波型の超音波洗浄装置において、
前記吐出口には、内方へ折返えされた折返えし部が形成されることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
少なくとも起動時に、洗浄状態よりも液体の吐出量を抑える吐出制御手段を含むことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズルは、吐出口側に向けてホーン状に形成され、前記折返えし部は、前記超音波放射面以上の面積の開口部を有する端板から成ることを特徴とする請求項1または2記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記折返えし部は、網板から成ることを特徴とする請求項1または2記載の超音波洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−75774(P2006−75774A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264501(P2004−264501)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】