説明

超高感度分光光度計

本発明は、光が光強度変化を引き起こす物質と相互作用する測定に関し、本発明の好ましい実施形態である分光光度計は、物質との反射相互作用による超高感度測定を提供する。これらの測定での光源ノイズレベルは、本発明に従って低減できる。本発明の好ましい実施形態は、内部光源の無い封止ハウジング(112,600,700)と、サンプルおよび参照セルに基づく反射を使用する。幾つかの実施形態では、実質的に固体の熱伝導性ハウジング(600,700)が用いられる。好ましい実施形態の他の特徴は、サンプルセルおよび参照セルに基づく特定の反射を含む。内部全反射の実施形態は、例えば、相互作用面を含むプリズム(302,322,622a,623a)と、検出器と、プリズムからのビーム出力を検出器上に集光するレンズと、気体または液体を相互作用面へ配給するための入口および出口を有する閉じた相互作用容積とを含む。鏡面反射の実施形態では、プリズムの代わりに反射面(402,422)が使用される。拡散反射の実施形態では、プリズムの代わりに、つや消し(matte)面(502,522)が使用され、つや消し面が散乱を生成する。本発明の態様は、分光測光法でのノイズ関与成分の識別と、所定の実施形態では、選別した組の好ましい特徴を含み、好ましい実施形態の装置の応用により、ショットノイズ限界にかなり近いノイズレベルが実現可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、分光測光法(spectrophotometry)である。本発明の装置および方法は、分光光度計の全ての使用、即ち、液体、気体および固体の中およびそれらの界面での光の吸収または散乱の測定に応用可能である。広範な分光分析の測定機器および装置は、本発明から利益を受けることができる。本発明の例示の応用は、紫外線−可視光(UV−Vis)、赤外線(IR)、原子吸光(AA)、円二色性(CD)分光光度計、高性能の液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。
【背景技術】
【0002】
気体、液体または固体であるサンプルの基本的性質は、ある波長の光を吸収したり散乱する傾向またはその傾向の欠如である。吸収、散乱または伝達するサンプル傾向の特徴付けが、分光測光の基礎である。応用例は、化学や生物学のサンプル分析を含む。他の応用例は、製造した製品の検査、空気や水の品質検査を含む。
【0003】
定量分光測光の何れの応用のポイントは、サンプルの性質を発見したり、相互に区別するために、サンプルを数値的に特徴付ける能力である。応用に関わらず、定量分光測光の重要なことは、感度、正確さ(precision)および精度(accuracy)である。分光測光測定の感度は、類似の吸収性質を有するサンプル間の小さな差を検出する能力に直接関連している。感度が大きくなるほど、検出可能な差は小さくなる。
【0004】
分光測光測定の正確さは、別々の時間で同一のサンプルについて同じ測定を繰り返す能力の関数として考えることができる。分光測光測定の精度は、サンプル組成の数値尺度を正しく決定する能力の関数として考えることができる。後者は、例えば、サンプル中の未知の元素を定量化しようとした場合、重大である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
所定範囲の濃度について、定量化は、一定レベルの正確さおよび精度によって特徴付けられる。しかしながら、濃度範囲の下限より低くなると、正確さおよび精度の両方とも悪い影響を受ける。この下限は、特定の分光測光機器の検出限界である。感度が増加すると、検出限界は低くなる。高いレベルの正確さおよび精度を維持しつつ、感度の改善が望ましい。
【0006】
我々は、以前、透過率測定を使用する分光測光での増加した感度を提供している。我々の米国特許第6741348号(’348特許)は、高感度の分光測光測定を提供する方法および装置を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、’348特許の測定能力を、光が光強度変化を引き起こす物質と相互作用する他の測定の範囲に拡張している。好ましい実施形態の分光光度計装置は、物質との反射相互作用による超高感度測定を提供する。これらの測定での光源ノイズレベルは、本発明に従って低減できる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、内部光源の無い封止ハウジングと、サンプルおよび参照セルに基づく反射を使用する。幾つかの実施形態では、実質的に固体の熱伝導性ハウジングが用いられる。
【0009】
本発明の装置は、サンプルビームおよび参照ビームを用いた二重光ビーム構成を用いる。二重ビームは、同じ光源から導かれており、光源に関連した実験ノイズ、即ち、比較的早いランダム変動およびゆっくりとしたドリフトの両方が両ビームに可干渉性で現れることになる。本発明の実施形態では、キャンセル技術の使用により、コヒーレントな実験ノイズのレベルを低減することによって、感度の増加が達成される。
【0010】
好ましい実施形態の他の特徴は、サンプルセルおよび参照セルに基づく特定の反射を含む。内部全反射の実施形態は、例えば、相互作用面を含むプリズムと、検出器と、プリズムからのビーム出力を検出器上に集光するレンズと、検体を相互作用面へ配給するための入口および出口を有する閉じた相互作用容積とを含む。
【0011】
鏡面反射の実施形態では、プリズムの代わりに反射面が使用される。拡散反射の実施形態では、プリズムの代わりに、つや消し(matter)面が使用される。
【0012】
本発明の態様は、分光測光法でのノイズ関与成分の識別と、所定の実施形態では、選別した組の好ましい特徴とを含み、好ましい実施形態の装置の応用により、ショットノイズ限界にかなり近いノイズレベルが実現可能である。
【0013】
本発明の他の特徴、目的および利点は、図面を参照して詳細な説明の読解によって当業者に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、分光測光法での増加した感度に広く関係している。本発明のより広範な態様は、分光測光法でのノイズ関与成分の識別と、所定の実施形態では、選別した組の好ましい特徴とを含む。本発明の幾つかの実施形態は、本発明の態様の組合せ、即ち、個々の解決法を全ての識別されたノイズ源に適用することによって、このタイプの低減を実現することを探求する。
【0015】
これらの好ましい実施形態において、全ての重要なノイズ源が識別され最小化された後、こうした低減が実現することになる。本発明の好ましい実施形態は、ショットノイズ限界にかなり近いノイズレベルを生成することができる。熟練者は、好ましい実施形態を参照すると、本発明の追加の態様を理解するであろう。
【0016】
本発明は、ビーム経路中に浮遊する微粒子、検査対象である液体中の泡や浮遊微粒子、光検出器の表面からの反射などによって生ずる潜在的な干渉を扱う測定を提供する。こうしたノイズ源は、従来、こうしたノイズ源を関連付けるのに必要な感度を提供できなかった従来の装置では考慮されていなかった。
【0017】
本発明の装置は、サンプルビームおよび参照ビームを用いた二重光ビーム構成を用いる。二重ビームは、同じ光源から導かれており、光源に関連した実験ノイズ、即ち、比較的早いランダム変動およびゆっくりとしたドリフトの両方が両ビームに可干渉性で現れることになる。キャンセル技術の使用により、コヒーレントな実験ノイズのレベルを低減することによって、感度の増加が達成される。
【0018】
サンプルビームおよび参照ビームは、サンプル検出器および参照検出器に光電流を誘起し、コヒーレントな変動は、適切な電子回路の使用により、サンプル光電流および参照光電流の差分(I−I)をとることによって相殺される。回路は、下記の式によって与えられる差分電圧Vを出力する。
【0019】
=K(I−I) (1)
【0020】
は、比例定数であって、電子回路のパラメータによって決定される。光電流I,Iが同一であると、光源のコヒーレントなランダム変動は、両ビーム中に均等に存在して、差分電圧Vにおいて相殺される。光源ドリフトの影響がベースラインVにおいて解消される一方で、これらはピーク高さに影響を及ぼす。この影響を補正するために、Vは、下記の式によって与えられる出力参照電圧Vで除算される。
【0021】
=K (2)
【0022】
は、比例定数であって、電子回路のパラメータによって決定される。光源ドリフトは、IとIの両方に影響を与え、式(1)と式(2)から、光源ドリフトはVをVで除算することによって解消されることが判る。
【0023】
/V=K/K[I/I−1] (3)
【0024】
式(3)から、比率I/Iが計算できる。
【0025】
/I=V/V(K/K−1+1 (4)
【0026】
最後に、吸光度Aは、A=−log(I/I)の式から、I/Iの実験値から計算できる。
【0027】
透過率測定は、典型的には、真正溶液(true solution)の分析のために用いられる。真正溶液は、見かけは透明であり、例えば、浮遊する微粒子などによる目に見える量の光散乱が存在せず、光強度の低減は、溶液を通過する際、主に吸収によって生ずる。
【0028】
本発明の装置を用いて、純粋溶液の吸光度を大幅に改善した精度で測定し、ベール−ランバート(Beer-Lambert)の法則を用いてデータを分析することが可能である。
【0029】
例示の実施形態の透過率分光光度計を図1に示しており、これは、図2〜図7に開示した反射の実施形態に適用する幾つかの基本ノイズ低減の態様を説明するために用いる。図1の構成において、これは透過率によるものであり、光は、サンプルを直接通過し、光強度がサンプルとの相互作用により減少する。光学的に透明なサンプルの場合、光の減少は、特許で説明したように、吸収によって生ずる。
【0030】
透過率測定では、光強度は、光を散乱する浮遊微細構造の存在のため、減少することもある。これらの浮遊物は、典型的には、曇のように見え、これらの分析に用いる方法は「濁度測定」と称される。光強度の減少と浮遊物の検体量との間の数学的関係は、経験的に得る必要がある。ベール−ランバートの法則は、適用されない。それにも拘わらず、該方法は有用であり、定常的に使用される。濁度測定および他の透過率応用は、’348特許で記載したように、図1の方法論を用いて実施することができる。
【0031】
一般的な第2のタイプの光学測定は、反射率であり、図2〜図7は、図1の実施形態での超高感度の透過率測定を可能にする原理を、反射測定を用いて良好に探査されるサンプルに拡張している例示の装置を示している。内部反射、鏡面反射および拡散反射について別々の実施形態を用意しており、熟練者は、これらの実施形態を参照して本発明の広範な態様を理解するであろう。
【0032】
我々は、実験的な試作品として構築された、図1の透過率の実施形態から開始する。図1の分光光度計は、ノイズ源の識別およびノイズ源を扱う方法を含む複数の発明の態様を具体化している。実施形態の全体は、本発明の態様を示す有用な枠組みを提供しており、これは、図2〜図7の好ましい実施形態より広いものであり、これらの外側に適用可能であることは、熟練者は理解するであろう。
【0033】
図1の好ましい実施形態の装置は、説明の簡略化のため、白熱光源(タングステンランプ)を用いた可視域で動作する単一波長のフィルタユニットである。
【0034】
図1の好ましい実施形態での一般的なビーム経路は、分光測光法に使用される典型的な二重ビーム構成である。光源102、例えば、タングステンランプ、からの光は、2つの広帯域光学フィルタ104,106を通過し、光ガイド108、好ましくは、光ファイバケーブルによって測定機器へ運ばれる。
【0035】
光ガイド108は、光源から装置への熱伝達を回避するために低い熱伝導率を有し、封止マウント110を介して取り付けられている。マウント110は、ダストおよび迷光がハウジングに入るのを防止するため、封止されている。マウント110は、ハウジング壁112の内面に直接に取り付けられる。
【0036】
これは、光源102を隔離するために機能する。光源の種類についての特定の選択は、特定の応用に依存することになる。本発明は、紫外UVから遠赤外FIRまでのスペクトル範囲の全体について実施可能であり、光源は適切に選択できる。追加の例示の適切な光源は、アルゴンランプ、キセノンランプ、水素ランプ、重水素ランプ、タングステンランプ、アークランプ、中空カソードランプ、ネルンスト(Nernst)灯、ニクロム線、グローブ灯(globar)、レーザなどを含む。
【0037】
光源102は、好ましい実施形態の分光光度計の他の構成部分からの熱分離の手段として、外部に置いている。光源は、通常、分光光度計の光学部分および検出器部分に伝達可能な著しい熱を生成し得る。熱い光源102は、外部に置いて、機器への伝導熱移送を最小化し、代わりに周囲の環境への対流熱移送を可能にしている。
【0038】
さらに、熱絶縁層113が、周囲環境から好ましい分光光度計への熱移送を最小化している。フィルタ104,106は、好ましくは、紫外および赤外の遮断フィルタを含み、伝達される光のエネルギー範囲を狭くして、「コールド」光を生成し、輻射による熱移送を制限している。
【0039】
好ましい光ファイバ光ガイド108は、ファイバコアの位置および曲率に対して敏感な偏光比を有する。光ファイバガイドケーブル108は、マウント110に取り付けられ、マウント110は、偏光を低減するホログラフィック拡散器114と、より良好な平行化および集光のために、実際の光源直径を、あるサイズ、例えば、1/8”(インチ)に減少させるアパーチャ116とを含む。
【0040】
発生したビーム118は、壁112の中の第2アパーチャ120を通過し、1:1の共役比で構成された両凸レンズ124によって平行化され再び集光される。壁128の中の干渉フィルタ126を通過した後、発生した狭帯域ビーム130は、平凸コリメーションレンズ132を通過して、平行化したビーム134を生成する。
【0041】
平行化ビーム134の直径は、レンズ144,146の開放光学アパーチャより小さくなるように設計される。レンズ124,132は、熱伝導性のマウント123,135に搭載された市販の光学ホルダーの中にそれぞれ保持される。マウントは、大きな熱容量を有する。これらのマウントには、固体金属ブロックが好ましい。
【0042】
誘電体ビームスプリッタ136は、別個の経路に沿って、通過した(サンプル)ビーム138と、反射した(参照)ビーム140とを生成し、後者は、ミラー142によってさらに反射する。ビームスプリッタ136は、我々が製作した真鍮ホルダーの中に保持され、ミラー142は、市販の調整ホルダーによって保持されており、それぞれ光学マウント137,141によって支持されている。
【0043】
これらのマウントは、マウント123,135に類似した構造を有し、大きな熱容量を備える。誘電体ビームスプリッタ136は、入射ビーム134の偏光に敏感なビーム分岐比を有する。例えば、平均60%透過で40%反射を備えた誘電体ビームスプリッタに関して、透過は、s偏光した光では42%に過ぎないが、p偏光した光では76%になる。
【0044】
モノクロメータまたは光ファイバから出た光は、部分偏光しており、偏光比は、温度ドリフトおよび機械的ドリフトに従う。本発明の例示の実験的な試作品では、光ファイバ108は、3/8”(インチ)のコア直径を有する。偏光比は、ファイバコアの位置および曲率に対して極めて敏感である。室温の変化は、相対的な差分電圧V/Vの変化を容易に生じさせ、これは、10−5またはそれ以上のオーダーで、2つのビーム間の不均衡の尺度になる。
【0045】
光ファイバから出た光がホログラフィック拡散器114を通過すると、偏光比を100倍減少させる。こうして偏光は本質的に完全にスクランブルされて、ビーム分岐比は温度ドリフトに対してずっと鈍感になり、差分の安定性が増加する。本発明者は、粗面化した表面を持つ従来のガラス拡散器は、充分な偏光スクランブルを提供しないため、有効でないことを見出した。
【0046】
サンプルビーム138および参照ビーム140は、壁148の中の集光レンズ144,146を通過して、集光ビーム150,152がサンプルセル154および参照セル156の中にそれぞれ入る。サンプルセル154は仕切り空間160eの中にあり、参照セル156は仕切り空間160dの中にある。2つの部屋は、壁162によって分離されている。
【0047】
ビームの平衡は、好ましい実施形態の全体の温度安定性の特徴および誘電体ビームスプリッタ136を含む全体的な光学系によって容易である。2つのビーム平衡を支援するために、好ましくは、参照ビーム152のパワーは、高精度の光学アッテネータ164を調整することによって、減衰させることが可能である。
【0048】
アッテネータは、マウント166と、精密マイクロメータ型のねじ168と、薄いロッド170とを含む。ビームは、壁176の中に搭載された集光レンズ172,174を通過して、熱伝導性のチャンバ182,184の中にそれぞれ搭載された検出器178,180によって集められる。検出器は、チャンバ182,184内での入射光の方向に対して45°の角度で搭載されることが好ましい
【0049】
こうして検出器の表面で反射した光ビーム186,188は、光トラップ194,196の中でチャンバ内部に閉じ込められた状態になる。フォトダイオード検出器は、光電流を生成して、検出器回路189に供給される。適切な検出器は、衝突した(サンプルまたは参照)ビームのパワーに正確に比例して変化する電流を生成するようになる。代替の可能性ある検出器は、例えば、光電子増倍管、光電管、光電池、電荷転送導体、熱電対、ボロメータ、焦電セル、赤外線検出器などを含む。
【0050】
回路系は、出力電圧を生成し、これはハウジング112を通ってデジタイザ190および、例えば、コンピュータで実現可能である分析回路192へ供給される。熱伝導性の回路は、大きな熱容量を有するベース(不図示)を介して、内部コンポーネントの中に設置される。
【0051】
’348特許の図1に示した透過配置に従って構築された実験試作品では、ベースは、3/4インチの堅い鋼であって、ここに、マウント/セル123,135,137,141,154,156および各種壁および外側ハウジングを直接取り付けた。ベースおよび不図示の上カバーおよびハウジング外壁112は、内部コンポーネントとともに伝導熱移送回路を形成している。カバー、ベースおよび壁112は、例えば、1/2インチの市販の装置113を用いて環境から絶縁されている。これは、外部環境での変化に対する内部温度の応答を遅くする。内部熱伝導は、内部コンポーネント間の平衡を促進している。
【0052】
好ましい実施形態の検出器回路は、図2Aに示している。好ましい図2A(上)の実施形態に係る例示の実験試作品回路は、安価で市販のコンポーネントを用いて製作した。図2Aにおいて、サンプル(S)および参照(R)フォトダイオード178,180(図1)からの電流は、定電流源200,202としてそれぞれ表現している。
【0053】
フォトダイオードは、これらの光電流の差分がノード204で現れるように構成されている。変換器208(A208,R208,C208を含む)は、S光電流200を電圧に変換し、これはポテンショメータP209の一端に供給される。変換器210(A210,R210,C210を含む)は、R光電流202を電圧に変換し、これはポテンショメータP209の他端に供給される。
【0054】
変換器208からの出力電圧は負であり、変換器210からの出力電圧は正であるため、全電圧差がP209を通じて低下する。この電圧は、光源のDCパワーに追従するようになり、光源のノイズおよびドリフト成分も含んでいる。P209からの出力電圧の極性および大きさは、ポテンショメータの位置とともに変化する。例えば、電圧は、KV(正)からゼロを通ってK’V(負)まで連続的に変化し得る。定数は、K=R212/R210、K’=R212/R208である。
【0055】
P209からのこの電圧は、電流として、フィードバック抵抗R211を通ってノード204へフィードバックされる。フィードバック電流は、光源パワーを正確に追跡し、その大きさおよび極性は、幾つかの回路要素(R208,R210,P209,R211)の値によって決定される。
【0056】
こうして、このフィードバック電流のノード204への加算は、P209の設定に依存して、S光電流またはR光電流の大きさを増加させる効果を有する。この準備とともに、ポテンショメータP204を用いたフィードバック電流の慎重な調整により、S光電流およびR光電流が平衡となって、光源ノイズを高い程度まで解消することができる。
【0057】
S光電流がR光電流より大きい場合、P209は、必要な正電圧出力を与えるように調整され、そして逆も同様である。回路要素の値は、適切な大きさのフィードバック電流を生じさせて、S光電流がR光電流が平衡となるように選ばれる。
【0058】
必要なフィードバック電流は、S光電流の1%未満とすることができる。極めて小さい程度の光電流の不均衡(例えば、10−5)は、容易に到達できる。光源ノイズ解消の程度は、回路での光電流の不均衡の程度に等しいことから、10−5の不均衡は、検出器ショットノイズ性能を達成できるのに充分またはそれ以上である。10−3の光電流不均衡は、ショットノイズ限界性能を確保するのに充分である。
【0059】
単一波長での測定に関して、検出器電流は、最初に、両方のサンプルセルおよび参照セルの中の溶媒を用いて平衡化する必要がある。続いて、サンプルセル中の分析サンプルを用いて測定を行う。平衡化は1回は行う必要があるため、図2Aと図2Bの両方に示すように、P209は単一のポテンショメータとすることができる。
【0060】
しかしながら、走査ユニットを用いるような、ある波長範囲に渡って行われる吸光度測定では、両方のサンプルセルおよび参照セルの中の溶媒を用いて、検出器電流は複数の波長で平衡化する必要がある。これは、一般に、各波長においてP209の異なる設定を必要とし、その結果、サンプルセル中の分析サンプルを用いてスペクトルを走査した場合、P209の設定は、走査での各データポイントを測定するのに先立って変更する必要がある。P209の各設定は、その特定波長での平衡を確保する値に対応することになる。これを達成するには、P209は、メモリに保存した全ての波長についての設定を備えた、コンピュータ制御のデジタルポテンショメータと置き換え可能である。
【0061】
平衡条件では、差分増幅器212の入力における全電流はゼロに接近して、光源ノイズ解消が達成される。光源ノイズ解消は、ノード204での電流モードで行われ、S光電流およびR光電流は直接に引き算される。そして、差分は、差分増幅器212(A212,R212,C212,D212を含む)での出力電圧に変換される。これは、最も簡単で最も正確な方法である。
【0062】
差分増幅器212の出力は、ローパスフィルタ214(R214,C214を含む)を通って、利得Gを持つ追加の電圧増幅器216へ供給され、差分電圧GVを生成して出力する。出力GVの標準偏差は、上述のような光源ノイズではなく、検出器のショットノイズによって決定される。
【0063】
図2Aと図2Bにおいて、光源ノイズ解消は、電流モードで達成される。代替として、解消は電圧モードで達成することができる。好ましい実施形態の電圧モードノイズ解消検出器回路は、図2Cに示している。
【0064】
フォトダイオード200からのソース光電流は、変換器220(A220,R220,C220を含む)によって電圧に変換される。出力電圧V=IR200は、可変ポテンショメータP220に供給され、ポテンショメータ出力は、増幅器A224の非反転入力に供給される。
【0065】
同様に、フォトダイオード202からの参照光電流は、変換器222(A222,R222,C222を含む)によって電圧に変換される。出力電圧V=IR222は、可変ポテンショメータP222に供給され、ポテンショメータ出力は、増幅器A224の反転入力に供給される。
【0066】
図2Cに示した構成の場合、両方のVおよびVは正である。こうして増幅器A224への両入力の電圧が均等になった場合、ノイズ解消が行われる。均等化は、最初に、両方のP220およびP222を、電圧減衰がない最大設定に設定することによって行われる。
【0067】
そして、より大きい出力電圧VまたはVに対応したポテンショメータは、増幅器A224の出力がゼロになるまで調整される。例えば、V<Vの場合、P220は、通常、FP220=1に対応した最大に設定することになり、P222は、FP220<1に対応した平衡に調整することになる。FP220とFP222は、ポテンショメータの分数の減衰であり、0〜1の範囲をとる。
【0068】
そして、コヒーレント光源ノイズは、増幅器A224により電圧差分出力において解消される。増幅器A224の出力は、ローパスフィルタ226を通って、最終的にバッファ増幅器A228によって出力される。
【0069】
電圧解消の場合、電圧差分は、V=(FP220V−FP222V)として定義され、出力電圧は、GVである。ここで、Gは、増幅器A224,A228の合成利得である。電圧出力FP220VおよびFP222Vも利用可能である。これらの出力の1つは、後述する吸光度の計算に必要になる。
【0070】
大きな吸光度の値の測定に関して、ノイズ解消は必要ではなく、透過率は、208,210の出力から直接に取得できる。大きな吸光度に関して、ダイオードD212は、差分増幅器212のための電圧出力を制限している。これは、差分増幅器212の出力でのドリフトに関連した妨害を制御する。実験試作品の装置では、差分増幅器が数ボルトオーダーの出力を生成した後、ある期間、ドリフトに曝されて、これが出力216での小さいV値の正確な測定を妨害することを我々は観測した。
【0071】
|V|>|V|のとき、吸光度決定は、Q=V/V+1の測定を必要とし、|V|<|V|のとき、吸光度決定は、Q=[1−V/V−1の測定を必要とする。Vは、216の出力電圧を増幅器216の利得Gで除算して得られる。Vは、210の出力を係数Kで除算したものである。Vは、208の出力を係数K’で除算したものである。V,V,Vは、別個の出力電圧として利用可能であり、VおよびVまたはVは、同時に測定可能であり、これらは光源ドリフトに起因する誤差を回避するために必要である。
【0072】
およびV(またはV)の両方が光源パワーに直接に比例しているため、光源パワードリフトは考慮しなければならない。VおよびV(またはV)が同時に測定されなければ、これらの比率は、光源パワーが2つの電圧の測定時間の間で変わるにつれて、変化することになる。しかしながら、同時測定の場合、光源パワー依存性は解消する。
【0073】
図2Cに示した電圧解消回路に関して、Qは、Q=V/FP222V+1として常に定義できる。分数の減衰FP222は、定数であり、量FP222Vは、増幅器A222の有効出力として採用できる。
【0074】
検出器回路で実行される補正は、参照ビームまたはサンプルビーム、あるいは両ビームにおいて位置決め可能である。光学的な平衡によって支援される。光学系の全体設計は、ビーム中のほぼ平衡を保証すべきである。好ましい特徴はまた、ビーム平衡を微調整するための平衡調整を導入している。ビームがユニットの全体設計においてほぼ平衡である場合、平衡の程度を調整するために、2つの好ましい手段がある。
【0075】
第1に、参照ビームを減衰させるために、参照ビーム経路に衝突可能である壁搭載したアッテネータ164(図1)が存在している。実験試作品では、壁マウント166は、1/4−40の小ねじ168を搭載している。ねじ168は、ビーム方向に対して垂直な軸上で、ビームのエッジ近くに搭載される。ねじの端部は、1mm直径で5mm長の小型ロッド170に向いている。細いロッドの位置は、微細ねじ山を用いて正確に調整可能である。このねじは、比較的粗い調整を提供するものであり、光電流i,iを約10分の1まで平衡化するために使用できる。
【0076】
第2に、212(図2)への光電流入力は、上述のように、ポテンショメータP209(図2)を調整することによって、電子的にゼロにできる。電子的調整の能力を用いて、光電流は、約10分の1より良好に平衡化できる。
【0077】
フィードバックループの時定数を、検出器の立ち上がり時間と同様にすることによって、小さな平衡電流での追跡誤差は最小化される。R211を通じて供給される極めて小ない量の電流(<2%)を除いて、何れかの検出器からの電流も、光源ノイズの高い周波数成分を減衰できる電子フィルタにはかからない。このことは、正確なノイズ解消に必要となる高速な応答を確保する。さらに、検出器電流の主要部分は、何れの電子回路要素を流れない。
【0078】
最後に、抵抗R211をかなり大きくすることによって、差分増幅器の入力回路での存在により生成される追加のノイズも極めて小さくなり、実験的には検出器のショットノイズを下回ることが判明している。差分増幅器212の出力は、ビームを電子的に正確に平衡化することによって、10μVのオーダーで小さくできる。
【0079】
図2Aに示した回路は、データ収集の際に光の波長が連続的に変化する走査機器を用いた使用に適している。それぞれ離散的な波長での測定を行う前に、ビームは、上述のように平衡化する必要がある。
【0080】
サンプルビームおよび参照ビームの相対パワーは、走査する波長範囲に渡って変化することが予想されることから、フィードバック電流の符号を変化させる能力は、望ましい特徴であり、これはこの回路に含まれている。第2の好ましい実施形態の検出器回路は、図2Bに示しており、共通の要素は、図2Aの参照符号を用いて付与している。
【0081】
この回路は、フィルタ機器を用いたような、単一の波長で動作するユニットを用いた使用に適している。このタイプの機器を用いた場合、測定がただ1つの波長で行われるため、フィードバック電流の符号を変える必要はない。
【0082】
図2Bにおいて、サンプルまたは参照の何れかから導かれる平衡電流は、スイッチ206によって選択され、スイッチ206の設定に依存して、何れか任意の時間で単一極性の電流だけが利用可能になる。
【0083】
我々の研究では、光源ノイズが解消された後は温度ドリフトが支配的になるという発見をもたらした。従って、本発明の他の態様は、差分光パワー比での温度ドリフトを制限することである。好ましくは、差分光パワー比での温度ドリフト、ΔP/P=(P−P)/Pは、本発明またはその態様の一定の実用的な応用では15分程度に長くなることがあるデータ取得期間中、10−6未満に制限される。
【0084】
相対差分電圧比V/V=(V−V)/Vは、ΔP/Pの実験測定値であり、実験的に興味のあるものは差分電圧安定性である。多くの設計特徴は、温度ドリフトを制限して、高い程度の差分安定性を保証するように識別され選択された。特に、我々は、温度ドリフトを減少させて、第1実施形態におけるV/Vの熱誘導変化が、測定間隔に渡って10−6またはそれ以下のオーダーになるようにした。このことは、検出器ショットノイズ限界での全体ノイズと一致している。
【0085】
光パワー変化を10−6のオーダーで測定したい場合、下記で与えられる識別要因の好ましい選択が重要になる。これらの要因は、10−4またはそれ以上のオーダーのパワー変化を検出する人の能力にほとんど影響を与えないことから、温度安定性の重要性は、一般には評価されていなかった。
【0086】
温度ドリフトの分析は、多くの温度係数の使用を必要とする。論文の値は、利用できる場合、温度係数として使用し、それ以外では、我々は係数の妥当な推定を行った。幾つかの場合、必要な係数は直接測定により得られた。本発明のこの部分の第1態様は、本発明に係る実用的な分光光度計の最適化に対処するコンポーネントの選択が必要である。
【0087】
ビームスプリッタ136は、多くの場合、差分の不安定性を生じさせる光学コンポーネントである。入射ビーム134の偏光に加えて、分岐比も、入射角および光の波長に対して極めて敏感である。V/Vの入射角依存性は、6×10−3/度である。このことは、たった0.001度の入射角変化が、V/Vを約6×10−6変化させることを意味する。
【0088】
このような入射角の小さな変化は、温度誘起の膨張およびビームスプリッタホルダのねじれに起因して、容易に生じ得る。実際に発生するいずれの変化の大きさは、ビームスプリッタマウントの構造および材料に強く依存するようになる。比較的大きいマウント137は、堅い鋼ブロックからなり、熱的および機械的な安定性の両方を提供する。透過型の実験試作器でのビームビームスプリッタホルダは、1/2”(インチ)厚の真鍮プレートで、3”の高さ、3”の幅とした。
【0089】
例示の実験試作器で用いた干渉フィルタ126は、0.023nm/℃の温度係数を有していたが、一方、誘電体ビームスプリッタ136については、差分比V/Vの波長依存性が5×10−4/nmである。これは、1×10−5/℃の合成係数を与える。
【0090】
温度変化は、ビームスプリッタ136の反射率での変化も生じさせ、これはV/Vに対して小さな影響を有し、入射角45°で約6.2×10−6/℃となる。これは、使用する光学材料の屈折率での温度誘起の変化によって生じる。
【0091】
温度変化は、2つの検出器178,180の暗電流も変化させるようになる。図2Aと図2Bでの好ましい実施形態の検出器回路の構成のため、検出器178,180の暗電流は、相殺するようになる。不整合の検出器は相殺効果を低減することから、検出器は整合していることが好ましい。
【0092】
重大な不整合の場合、残留する暗電流は150pA程度に大きくなる。暗電流の温度係数は115%/℃であり、これは、差分暗電流において172pA/℃程度に換算できる。例示の実験的な実施形態において、光電流は、2.0μAのオーダーである。従って、検出器の暗電流は、相対差分電圧比V/Vにおいて8.6×10−5/℃という可能性あるドリフトレートを作り出している。
【0093】
好ましい実施形態の設計についての最適化の目標は、実験観測に基づき、測定を行うのに妥当な時間が必要である(15分程度)ことを考慮することによって、説明した。本発明者は、1×10−6AUの測定値と一致した最大許容温度ドリフトレートが、約0.001℃/分であると推定する。このレベルまたはそれ以下の温度ドリフトレートは、図1〜図7に示す好ましい実施形態に従って達成できる。
【0094】
本発明の他の態様は、コンポーネントの温度安定化である。本発明の実施形態における主要な受動的(passive)な温度安定化は、2つの態様を有する。ハウジング内部では、コンポーネントが、高い熱伝導率を有する材料、例えば、固体のアルミニウム、鋼、真鍮および他の金属で形成されている。
【0095】
内部コンポーネント間の熱移送は、本発明の実施形態において熱平衡を促進する。他の態様は、外部環境に対する絶縁であり、これは、周囲環境での変化に対して、装置の応答を遅くすることによって、機器を保護している。
【0096】
大きい熱容量を有する厚いベースプレート、例えば、3/4インチのステンレス鋼板からなる厚いベースプレートが、内部コンポーネント間の熱移送の基礎として設けられる。分厚い金属製の光学マウントは、大きな熱容量および大きな機械的安定性をも提供している。ベースプレートに直接搭載された、約3/4”厚の堅い鋼ブロックのマウントは、安定性に寄与することができ、例えば、全体ハウジングは、1/2インチの市販の絶縁材料からなる層を用いて、熱的に遮蔽することができる。
【0097】
好ましい実施形態での仕切り分け(Compartmentalization)は、温度ドリフトに対して低減した感受性を直接的または間接的にもたらす複数の利点を達成している。仕切り分けにより、光学コンポーネントの幾つかはハウジング壁に搭載可能になり、良好な熱接触および安定性を提供している。壁122,128,148,162,176は、図1、図3〜図5の実施形態でのこの目標を容易にする。図6と図7の実施形態では、良好な熱接触および安定性が、単一構造(unitary)の実質的に堅固なハウジングで達成されている。
【0098】
第2に、サンプルセルおよび参照セルを光学的に隔離することができ、これは迷光に関連した問題を最小化する。さらに、壁およびハウジングの内側表面は、光吸収材料、例えば、つや消し(matte)黒色ペイントでコートすることが好ましい。
【0099】
レンズ、フィルタ、ミラー、例えば、114,124,126,132,142,144,146,172,174は、温度変化に起因した性能変動に対して耐性のあるように構成される。光学コンポーネント用のマウントは、固体かつ分厚い。大きなサイズは、熱膨張に対する安定性を確保する。ビームスプリッタ用のホルダーは、充分に重量のあるものにでき、例えば、3インチ四方で1/2インチ厚の固体金属であり、可能性ある温度ドリフトを最小化している。ビームスプリッタによって生ずる差分ドリフトは、例えば、15分間で1×10−6未満、あるいは6.7×10−5/℃とすることができる。
【0100】
典型的なシリコンフォトダイオード検出器は、可視領域(400〜750nm)で20%に近い反射率を有することがある。検出器表面からの反射光を閉じ込めることは、有益であると判断した。サンプルホルダー154または参照ホルダー156に向かって逆行する光は、不要な反射および散乱をもたらすことがある。反射光がサンプルホルダー154または参照セルホルダー156に向かって逆行するのが許容されると、多重反射がセル、レンズおよび検出器の表面間で生ずることがある。
【0101】
多重反射の場合、これらの何れかのコンポーネントの再位置決めをもたらすような小さな温度変化は、10−6レベルの光変化の検出を妨害するという影響をもたらすであろう。検出器表面からの反射は、透過型の実施形態において制御され、この問題に対処している。反射制御の好ましい手法は、サンプル検出器178および参照検出器180の表面を、入射ビームに対して垂直でない角度に整列させることを含む。
【0102】
好ましい実施形態において、検出器での入射角は45°であり、反射光の伝搬方向は、入射ビームに対して90°である。検出器用のチャンバ182,184は、検出器を、反射した光ビーム186,188を個々の光トラップ194,196の中に向ける角度で搭載している。光を光トラップの中に向けるのに充分な下限と、全ての光を検出器が集めることができる上限との間にある角度が使用できる。
【0103】
これらの限界に関する値は、光ビームおよび検出器の断面積によって決定することになる。反射光186,188は、光トラップ194,196によって閉じ込められ、これらの内面は黒色に塗布されている。検出器表面による反射光の閉じ込めは、5×10−5AU未満の吸光度の決定にとって重要であると考えられる。
【0104】
サンプルまたは参照を通過するビームの経路にある何れの汚染物質または微粒子は、妨害を生じさせることになる。ここで用いたように、汚染物質および微粒子は、例えば、泡、溶存ガス、ダストなどを含むものと識別された。例えば、サンプル領域でのビーム断面は、約5mm(第1実施形態に係る例示の試作品のように)である場合、5μmより大きい断面または2.3μmより大きい直径を持つ何れの粒子は、1×10−6AUより大きいノイズピークを生じさせるであろう。
【0105】
我々は、我々の調査において、問題を生じさせる浮遊粒子は、チャンバを閉じた後、20分以内でサンプルチャンバの底に落ち着くことが判明した。サンプルビーム中の浮遊ダスト粒子の存在は、検出信号において一連の正方向に鋭いスパイクとなって現れる。ダストピークは、粒子が落ち着くとともに減少する傾向がある。
【0106】
他方、液体中の粒子は、ブラウン運動のため、粒子がセルの底に落ち着くのに、通常、数時間を要する。さらに、何らかの温度変化は、これらの運動を液体セル全体で再活性化する傾向がある。これは、液体サンプルでの極めて小さい吸光度の検出にとって重大な問題である。我々の実験では、これらの粒子は、5×10−5AU程度に高いノイズを容易に生じさせることがある。
【0107】
実験では、空気中のダストに起因して、ストッパを備えた従来のキュベット(cuvette)構造は、5×10−5AU未満の吸光度の決定には適していないことが判った。理由は、ダスト粒子が、セルを洗浄したり、液体を変えたりするプロセスの間に何時でもキュベットに入り込む傾向があるからである。さらに、サンプルセルを開放することは、浮遊粒子を光学系に導入する傾向が出てくる。必要な液体フローチャネルおよび開口を作成するために孔あけした固体金属本体が好ましい。
【0108】
本発明者は、ダスト問題に加えて、追加の可能性あるノイズ源も識別した。例えば、調査対象である液体の温度が、セルの温度と数度だけ異なることがあることが判った。通常使用される石英セルは、比較的小さい熱伝導率を示するため、液体の温度が安定するには5分またはそれ以上を要する。本発明の他の態様は、ダスト/粒子およびセル温度の変動から、可能性あるノイズを取り扱う。
【0109】
例示の実施形態の反射測定方法および装置は、図1の実施形態の変更をベースとしている。図3は、図1の実施形態の変更部分を示しており、透過セル154,156を置き換えて、内部反射測定が行えるようにしている。これは、別個のセルおよび検出器の再配置を必要とする。
【0110】
図3において、サンプルビーム300は、内部反射光学素子、例えば、プリズム302または他の内部反射光学素子に入る。ビームは、プリズム302を通過して、相互作用面304に入射し、そこで内部全反射を受け、ビーム306は、プリズム302から出射する。この場合、ビーム方向は90°変化するが、この角度は例として用いたに過ぎず、他の方向変化を用いてもよい。
【0111】
反射したビーム306は、レンズ308によって、図1に関して説明した手法(非垂直)で光トラップ311を含むチャンバ内に搭載されたサンプル検出器310の上に集光される。
【0112】
検体(サンプル)は、プリズムの相互作用面304の場所またはその上に存在し、光ビームが表面304で内部全反射を受けると、光は、本質において、極めて小さい距離だけ検体の中に浸入する(いわゆるエバネセント波)。侵入深さは、光の波長にほぼ等しい。光がサンプルに侵入すると、光ビームの強度は、吸収または表面304でのサンプルとの他の相互作用によって減少するようになるからである。強度減少の程度は、サンプルの化学的性質に依存し、検体の定量化に使用できる。
【0113】
サンプルは、入口316および出口318を有する閉じたサンプル容積314を備えた表面304に供給される。入口316および出口318は、ハウジング外部に接続され、浮遊するダスト粒子に関連したベースラインノイズをもたらすようなハウジング全体の開放を必要とせずに、検体サンプルをサンプルセルの中に導入できる。
【0114】
サンプルビームと同様な手法で、参照ビーム320は、プリズム322に入り、プリズムの相互作用面324で反射する。出現したビーム326は、レンズ328によって、光トラップ331を含むチャンバ内に収容され、非垂直角度で搭載された参照検出器330、例えば、フォトダイオードなど、に集光される。
【0115】
参照物質は、入口336および出口338のポートが装着された閉じた相互作用容積334の中に収納されている。参照ビームと参照相互作用面324での参照物質との間の相互作用の性質は、サンプル相互作用面304で生ずるものと同一である。
【0116】
サンプル検出器310および参照検出器330からの信号は、それぞれ信号ライン312,332を経由して検出器回路340へ供給される。これは、例示の実施形態では、図2Aまたは図2Bの検出器回路に従って構成されている。
【0117】
光源ノイズ解消は、サンプル検出器310および参照検出器330からの出力間の差分をとることによって、検出器回路340において達成される。この解消は、サンプル光電流および参照光電流が平衡化し、検体に関与する光吸収が測定可能であることを必要とする。これは容易に達成され、下記の例を用いて説明する。
【0118】
簡単のため、我々は、2成分ガス混合を分析するものと仮定する。主要な成分ガスは過剰に存在し、第2成分ガスは僅かな量で存在している。僅かなガスは、検体と称され、この検体の量を計ることが興味の対象である。
【0119】
2成分ガスのサンプル混合物は、サンプル相互作用容積314に置かれ、純粋な主要ガスは、参照相互作用容積334に置かれる。これらの条件下で、主要ガスが光を吸収すれば、ガス吸収量は、サンプル物質および参照物質の両方で本質的に同じになる。さらに、プリズム302,322の相互作用面から反射し、これらのプリズムの本体によって吸収される光の量は、サンプルビームおよび参照ビームの両方で同じになる。
【0120】
こうしてサンプル検出器および参照検出器310,330の両方での光電流は、検体吸収の点を除いてそれぞれ平衡状態になる。こうして主要ガスの吸収およびプリズムの吸収/反射の効果は、キャンセルされ、検体の定量測定が可能になる。しかも、光電流は本質的に平衡状態であるため、光源ノイズ解消が達成される。
【0121】
参照区画334に主要ガスが無い場合、サンプル検出器310からの信号に主要ガスおよび検体ガスの両方からの吸収の影響が出るようになり、主要ガスからの吸収は別の実験で決定する必要がある。さらに、光電流の平衡を維持するのは、適当な主要ガス参照なしでは、より複雑になる。
【0122】
液体検体サンプルに関して、プリズム302,322は、90°よりかなり大きい全反射角が可能になるように変更される。これは、追加の光学系または検出器310,330の再配置を必要とし、その結果、検出器は、サンプルおよび参照との相互作用の後に、サンプルビームおよび参照ビームを受光するようになる。
【0123】
検出器回路340の出力342は、コンピュータまたは他の制御装置に供給される。内部反射を生成する別々の光学素子の使用により、感度は増加し得る。多重内部反射を生成する光学素子は、単一反射の実施形態と比較して感度を増加させることができる。
【0124】
図1の実施形態の特徴は、別途、図3に適用可能であるため、内部反射の感度は、光源ノイズおよびドリフトの悪影響を制限することによって、増強される。さらに、図2Aと図2Bの回路およびノイズ解消のための本発明の全般的な方法は、感度を増加させるように機能する。
【0125】
図4は、図1の実施形態の他の変更および鏡面(specular)反射をベースとした測定方法を示す。サンプルビーム400は、壁404からなる滑らかな反射相互作用面402、例えば、ミラーに入射する。サンプルとの相互作用は、相互作用面402で生じて、反射したビーム406は、レンズ408によって、入射ビームに対して非垂直角度で、光トラップ411を含むチャンバ内に搭載されたサンプル検出器410、例えば、フォトダイオードなど、に集光される。
【0126】
検出器410は、その信号を信号ライン412に出力する。図4において、相互作用面402での入射角およびその面からの反射角は、両方とも45°であり、鏡面反射プロセスがサンプルビームの方向を合計90°変化させている。しかし、この角度は、図3の実施形態のように、任意の選択である。
【0127】
サンプルセルは、光学的に透明な閉じた相互作用容積414を含み、これは、壁404に封止され、相互作用容積414の一部として壁404を含んでいる。入口416および出口418は、相互作用容積414へのサンプルの導入を可能にする。入口および出口は、ハウジング外部の位置に接続され、ハウジングを開放することなく、相互作用容積414を充填できる。
【0128】
固体壁404は、相互作用容積の片側を形成して、内部反射面402がサンプルと接触可能である。特に、相互作用面402に引き寄せられ保持された、ガス相からの物質による光吸収を研究することが興味の対象である。
【0129】
同様な構成は、参照セルにも用いられている。サンプルビーム420は、壁424からなる滑らかな反射相互作用面422、例えば、ミラーに入射する。参照ガス(または液体)との相互作用は、相互作用面422で生じて、反射したビーム426は、レンズ428によって、前述と同じ手法で、光トラップ431を含むチャンバ内に搭載された参照検出器430、例えば、フォトダイオードなど、に集光される。
【0130】
参照検出器430は、その信号を信号ライン432に出力する。光学的に透明な相互作用容積434は、壁424に封止され、相互作用容積434の一部として壁424を含んでいる。入口436および出口438は、相互作用容積434へのサンプルの導入を可能にする。入口および出口は、ハウジング外部の位置に接続され(ハウジングに関して図1を参照)、ハウジングを開放することなく、相互作用容積434を充填できる。
【0131】
サンプルビームは、(i)相互作用容積414の壁を通過するとき、(ii)相互作用容積の中に保持されたガスサンプルを通過するとき、(iii)反射相互作用面402に衝突することによって、減衰する可能性がある。参照ビームも、(i)相互作用容積434の壁を通過するとき、(ii)相互作用容積の中に保持された参照ガスを通過するとき、(iii)反射相互作用面422に衝突することによって、減衰する可能性がある。
【0132】
同一のガスが、相互作用容積414,434の中に保持されている場合、ガスおよびセル壁によって吸収される光の量は、それ自体、サンプルビームおよび参照ビームの両方については同一になる。光ビームが2つの異なる相互作用面402,422に衝突する際に、吸収において可能性ある差分だけが発生する。
【0133】
図4の実施形態は、(i)サンプル面402が、ガス相にある1つ又はそれ以上の成分と相互作用する傾向が強い場合、(ii)参照面422が、ガス相の成分と相互作用する傾向がほとんど無いか、皆無である場合、特に有用である。例えば、サンプル相互作用面402は、化学処理、例えば、抗体を用いてコートしたり、特別に処方されたポリマーを用いてコートすることよって活性化することができる。こうした表面処理は、化学種と反射面との間の強い相互作用をもたらすことになり、ガス相に存在する1つ又はそれ以上の目標物質がサンプル相互作用面402に捕捉可能になる。同じ物質は、参照相互作用面422には捕捉されない。相互作用面402にある物質が光を吸収すれば、吸収は、吸着された物質を検出して定量測定するために使用可能である。
【0134】
図1の実施形態の特徴は、別途、図4に適用可能であるため、鏡面反射の感度は、光源ノイズおよびドリフトの悪影響を制限することによって、増強される。さらに、図2Aと図2Bの回路およびノイズ解消のための本発明の全般的な方法は、感度を増加させるように機能する。
【0135】
図4の実施形態は、光源ノイズ解消を達成し、そして、表面に保持された化学種によって吸収される少ない量の光を測定することを可能にする。こうして鏡面反射測定は、サンプル面の構造を監視するために使用可能であり、表面に吸着した分子層の物理的かつ化学的性質を検出し研究するために使用できる。
【0136】
図5は、図1の実施形態の他の変更および拡散(diffuse)反射をベースとした測定方法を示す。サンプルビーム500は、壁504からなるつや消し相互作用面502に入射する。光は、矢印で示すように、ある範囲の方向に散乱する。散乱光の一部506は、ミラー508によって、光トラップ511を含むチャンバ内に搭載されたサンプル検出器510、例えば、フォトダイオードなど、に集光される。サンプル検出器の信号は信号ライン512に供給される。閉じたサンプル相互作用容積514が壁504によって片側に完成しており、入口516および出口518を経由して供給されるサンプルは、相互作用面502と相互作用し得る。
【0137】
参照セルは、同様に構成される。参照ビーム520は、壁524からなるつや消し相互作用面522に入射する。光は、矢印で示すように、ある範囲の方向に散乱する。散乱光の一部526は、ミラー528によって、光トラップ531を含むチャンバ内に搭載された参照検出器530に集光される。参照検出器530は、その信号を信号ライン532に出力する。閉じたサンプル相互作用容積534が、参照物質を相互作用面525に配給し、入口536および出口538によって供給される。
【0138】
検出器回路540は、信号ライン512,532からの信号を受け取って、信号ライン542に出力を生成する。例示の実施形態では、検出器回路540は、図2Aまたは図2Bの何れかに従って構成される。信号ライン542の出力は、例えば、コンピュータまたは他の制御装置に供給してもよい。
【0139】
他の実施形態のように、感度向上のための方法は、拡散測定を改善するために適用される。全ての上記実施形態において、サンプル検出器および参照検出器は、感度を増加するように処理可能である光電流を生成するために使用できる。例えば、サンプルおよび参照光電流差分を取ることは、光源の比較的高速なランダム変動を抑圧するように機能する。ピーク高さにおけるよりゆっくりな光源ドリフトの影響は、参照光電流を用いて増減することによって補償可能である。
【0140】
こうして、式(3)で与えられるタイプの関数は、全ての応用での定量測定の基礎である。ベール−ランバートの法則が適用される透過測定では、式(4)を使用する必要がある。他の全ての応用では、式(3)が直接に使用可能であり、V/Vと検体濃度の間の相関は、実験的に決定しなければならない。
【0141】
セルの入口、出口および本体は、汎用の測定機器に適用される場合、多くの有機溶媒に対して化学的に安定であるべきであり、一方、特定の目的の測定機器は、特定溶媒に対して耐性のあるように調整してもよい。テフロン(Teflon)(登録商標)製ガスケットは、セルの構成においてシールとして機能し得る。入口および出口は、空気中のダスト粒子がシステムに入るのを防止するように、フィルタ除去すべきである。
【0142】
自動化した機器では、ガスまたは流体のフローは、制御システムによって正確に制御可能であり、制御システムは、例えば、セルの圧力、フローおよび温度を監視するためのセンサを含んでもよい。センサは、装置内の熱の影響の導入を回避するように、慎重に選定すべきである。
【0143】
流水式洗浄(flushing)およびフィルタリングは、例えば、装置製造の完了時および装置立ち上げ時に発生し得るダスト粒子を除去するために、フィルタ付き入口および出口システムとともに使用してもよい。続いて、サンプルおよび参照材料が、適切なフィルタ付き入口および出口を通じて導入されれば、閉じたシステムは清浄に維持されることになる。使用するフィルタリングシステムのタイプは、分析されるガスまたは液体のサンプルに依存して変更することになるが、多くの市販のフィルタリング技術が適している。
【0144】
液体のサンプルおよび参照のフィルタリングは、ダストおよび粒子を除去する。しかしながら、液体の場合、泡および溶存ガスは、可能性あるノイズの一因として識別される。本発明の他の態様は、液体サンプルから溶存ガスを除去するための処理を取り扱う。これは、サンプルセルに入る前に、液体の脱気前処理、例えば、超音波処理によって達成される。好ましくは、液体サンプル用の本発明の実施のとき、溶媒および検体溶媒の両方が脱気される。脱気処理は、溶存ガスを除去する。一般に、液体が閉じたシステムの中に配給される場合、泡は、サンプルセルでは問題にはならない。しかしながら、脱気処理は泡も除去するであろう。
【0145】
単一構造(unitary)のハウジング構成は、本発明に従って、コンパクトで機械的かつ熱的に安定した装置を提供でき、上述した何れのタイプの測定に適用できる。例示の実施形態は、本発明の追加の好ましい特徴を示すために説明している。
【0146】
図6は、単一構造ハウジングを備えた好ましい実施形態を示す。図6の実施形態での温度安定化は、主として単一構造の固体金属ハウジング600から達成される。高い熱伝導率を有する材料、例えば、アルミニウムを用いている。中空部分600aは、ある形状および深さに切り出されて、装置コンポーネントの搭載および配置を提供している。
【0147】
固体金属のカバープレート(不図示)は、ハウジング600を封止し、これは、カバープレートを含む全ての辺で絶縁されている。優れた機械的安定性もまた、ハウジング600の単一構造によって提供される。固体の単一構造金属ハウジングは、コンパクトな梱包で比較的大きい熱容量を提供でき、図1の実施形態の場合より小さい装置を可能にする。
【0148】
図6において、光学コンポーネント間の間隔は例示的なものであり、単一構造ハウジングは、光学経路長を縮小しつつ、本発明の温度安定性を達成することができる。図6のような単一構造本体を有する実験伝送装置の温度ドリフトは、0.0005℃/分であることが判った。
【0149】
モノクロメータからの単色光は、光ファイバ601およびアパーチャ602を通ってハウジング600の中に結合される。ビーム603は、コリメートレンズ604を通過し、平行化したビーム605は、ビームスプリッタ606に45°の入射角で入射して、通過ビーム607および反射ビーム608を生成する。
【0150】
通過ビーム607は、第2のビームスプリッタ610に45°の入射角で入射して、通過ビーム611および反射ビーム612を生成する。ビームスプリッタ610は、606と同一である。ビーム611は、光トラップ613の中に閉じ込められる。同様に、反射ビーム608は、第3の同じビームスプリッタ614に45°の入射角で入射して、通過ビーム615および反射ビーム616を生成する。
【0151】
壁600bは、スプリッタ606,610,614を45°の入射角で正確に搭載するように機械加工されている。ビーム616は、光トラップ617の中に閉じ込められる。この段階で、2つのビーム612,615は、充分に整合されるべきである(同一の位相、強度および偏光)。このビームスプリッタ配置は、紫外UVから遠赤外FIRの広い波長領域に渡って、整合されたビームを実現する。
【0152】
そして、ビームは、集光レンズ618,619を通過して、符号622で全体として示すサンプルセル(図3に係る内部全反射用に構築され、図3に示すように、表面、閉じた容積、入口、出口などを含む)および、符号623で全体として示す参照セル(同様に、図3に係る内部全反射用に構築されている)に、ビーム620,621を集光する。
【0153】
ビームは、個々のサンプルおよび参照の出射側プリズム622a,623aとの相互作用の後、レンズ624,625によって再び集光され、検出器チャンバ626,627に入る。検出器628,629は、信号を信号ライン630,631から検出器回路632へ出力する。
【0154】
ビームスプリッタは、好ましくは、固体金属ハウジングの壁構造600bに搭載される。レンズは、ベースプレートに搭載されたホルダー内に保持される。これは、温度および機械的な安定性を提供する。他のオプションは、レンズを搭載するために、中空部分600aの一部として、予め定めたスロット(slot)を、例えば、壁600bの中に提供することである。
【0155】
検出器表面から反射したビームは、検出器チャンバの領域633,634に入り、そこで閉じ込められる。好ましい実施形態において3つのビームスプリッタの使用は、初期の光パワーの半分以上の損失をもたらす。正確な量は、ビームスプリッタの特性に依存する。光の損失を最小化するために、商業的に入手可能な、50/50(T/R)の分岐比を持つビームスプリッタを使用すべきである。光の損失にも拘わらず、この構成は、3つの整合したビームスプリッタを用いて、2つの出現ビームが全波長で等しいパワーになる、という優れた利点を有する。即ち、P615=P605606614およびP612=P605606610であり、ここで反射割合がR606=R610=R614で、透過割合がT606=T610=T614である。
【0156】
ビームはまた、全波長で等しい偏光および位相を有する。これは、ビーム平衡化の問題を著しく簡単にする。我々が行った事前の測定および計算では、実現可能な条件下(許容誤差の整合および市販のビームスプリッタ)で、ビームパワーは、紫外UVから遠赤外FIRの波長領域全体に渡って0.5%未満しか相違しないことを示しており、これは、ショットノイズ限界をかなり下回る光源ノイズ解消を確保するのに充分である。図2に示した全ての好ましい検出器回路は、同一パワーのビームを用いれば極めて良好に動作する。
【0157】
ミラープリズムは、商業的に入手可能であり、3つのビームスプリッタ構成の使用の代替として、図6の実施形態で使用できる。ミラープリズムを用いて、平行化した光ビームは、プリズムの2つのミラー面から反射によって、名目上等しいパワーの2つのビームに分割される。2つのビームは180°で分岐し、2つの追加ミラーからの反射によって再び方向を変えて、平行になる。頂点によって可能性ある光散乱のため、ミラープリズムのその領域は、通常、光ビームから遮蔽されている。
【0158】
ビームのパワー比は、プリズムを移動したり、適切に配置されたアパーチャを用いて調整可能である。我々の経験によると、我々は、この構成は、3つのビームスプリッタ構成のものより、温度ドリフトに対してより敏感であると考えている。
【0159】
実質的に固体の単一構造ハウジングを備えた他の好ましい実施形態は、図7に示している。図7の実施形態は、図6の実施形態と同様であり、コンポーネント配置用の形状を有する中空部分700aおよびビームスプリッタ搭載用の壁構造700bを備えた固体のハウジング700を有し、図6の実施形態の優れた光学安定性の特徴を有するが、図7の実施形態は、図5のように、つや消し面からの拡散反射を使用している。
【0160】
図7における光源702は、例えば、ビームを生成する光学系を備えたレーザであり、図6の3つのビームスプリッタ配置が、ビームスプリッタ704,706,708を用いて達成されている。サンプルセルおよび参照セルは、全体として符号710,712で示しており、図5に従って構築されている(つや消し面、壁、容積、ミラー、入口、出口などを含む詳細は図5を参照のこと)。
【0161】
本発明の種々の実施形態を図示し説明したが、他の変更、置換および代替は当業者にとって明らかであると理解すべきである。こうした変更、置換および代替は、添付の請求項から決定されるべき本発明の精神および範囲を逸脱することなく、行うことができる。
【0162】
本発明の種々の特徴は、添付の請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】カバーを外した状態の好ましい実施形態の分光光度計の概略平面図である。
【図2A】好ましい実施形態の回路系を示す。
【図2B】好ましい実施形態の回路系を示す。
【図2C】好ましい実施形態の回路系を示す。
【図3】好ましい実施形態の内部全反射分光光度計の一部を示す。
【図4】好ましい実施形態の鏡面反射分光光度計の一部を示す。
【図5】好ましい実施形態の拡散反射分光光度計の一部を示す。
【図6】カバーを外した状態の他の好ましい実施形態の内部全反射分光光度計の概略平面図である。
【図7】カバーを外した状態の他の好ましい実施形態の拡散反射分光光度計の概略平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部光源の無い封止ハウジング(112,600,700)と、
前記ハウジングに搭載された参照セル(156,図3〜図5,623,712)と、
前記ハウジングに搭載されたサンプルセル(154,図3〜図5,622,710)と、
外部で発生した光ビームを参照ビームおよびサンプルビーム(150,152,300,320,400,420,500,520,620,621)へ分岐し、参照ビームおよびサンプルビームを別々の経路に分配して、一方の経路は、参照ビームを参照セルの中に通し、他方の経路は、サンプルビームを前記サンプルセルの中に通すようにした、ハウジング内にある光学系と、
参照ビームを参照物質と相互作用させ、参照ビームの少なくとも一部を反射するための参照セル相互作用手段(322,324,434,422,534,522,623a)と、
サンプルビームをサンプルと相互作用させ、サンプルビームの少なくとも一部を反射するためのサンプルセル相互作用手段(302,304,414,402,514,502,622a)と、
前記参照セル相互作用手段によって反射した光の少なくとも一部を検出するための参照光検出器(330,430,530,629)と、
前記サンプルセル相互作用手段によって反射した光の少なくとも一部を検出するためのサンプル光検出器(310,410,510,628)と、
前記封止ハウジングに対して外部にある光源から、外部で発生した光ビームを前記光学系の中に供給するための光ガイド(108,601,702)とを備える分光光度計。
【請求項2】
前記光ガイドを前記ハウジングに搭載する封止マウント(110)をさらに備える請求項1記載の分光光度計。
【請求項3】
前記ハウジングに対して外部にあり、前記光ガイドと光学的に結合した光源(102,702)をさらに備える請求項1記載の分光光度計。
【請求項4】
前記光ガイドと光学的に結合した波長選択素子(104,106)をさらに備える請求項1記載の分光光度計。
【請求項5】
前記波長選択素子は、干渉フィルタを備える請求項4記載の分光光度計。
【請求項6】
前記参照セル相互作用手段および前記サンプルセル相互作用手段は、内部全反射をそれぞれ利用して、参照ビームを参照物質と相互作用させ、サンプルビームをサンプルと相互作用させるようにした請求項1記載の分光光度計。
【請求項7】
前記参照セル相互作用手段および前記サンプルセル相互作用手段は、鏡面反射をそれぞれ利用して、参照ビームを参照物質と相互作用させ、サンプルビームをサンプルと相互作用させるようにした請求項1記載の分光光度計。
【請求項8】
前記参照セル相互作用手段および前記サンプルセル相互作用手段は、拡散反射をそれぞれ利用して、参照ビームを参照物質と相互作用させ、サンプルビームをサンプルと相互作用させるようにした請求項1記載の分光光度計。
【請求項9】
外部で発生した光ビームを、2つの経路に現れる別々の参照ビームおよびサンプルビームに分岐するための誘電体ビームスプリッタ(136,606,610,704,706)をさらに備える請求項1記載の分光光度計。
【請求項10】
前記参照光検出器からの参照電流および前記サンプル光検出器からのサンプル電流を受けて、前記参照電流および前記サンプル電流を平衡化し、差分電圧へ変換される差分電流を生成するためのフィードバックを有する合算ポイントでの電流モード引き算によって、参照電流とサンプル電流の間の差分に比例した差分電圧を生成して、そして、該差分電圧と、前記参照電流に比例した電圧および前記サンプル電流に比例した電圧のうち少なくとも一方とを同時に生成する検出器回路(189,図2A〜図2C,340,440,540,632)をさらに備える請求項1記載の分光光度計。
【請求項11】
内部熱平衡を促進するための受動的な温度安定化手段(112,113,123,135,137,141,154,156,600,700)をさらに備える請求項10記載の分光光度計。
【請求項12】
前記参照電流は参照電圧に変換され、前記サンプル電流はサンプル電圧に変換され、そして、前記参照電圧およびサンプル電圧は、差分増幅器の入力で引き算されて、前記差分増幅器は差分電圧を生成するようにした請求項10記載の分光光度計。
【請求項13】
前記検出器回路は、前記サンプル電流および前記参照電流のうち小さい方の少量を、前記差分増幅器の前記入力へ供給するフィードバックループをさらに備える請求項12記載の分光光度計。
【請求項14】
前記サンプル電流および前記参照電流のうち小さい方の少量は、前記サンプル電流と前記参照電流の間で、約10−3又はそれ以下の不平衡を生成する量であるようにした請求項13記載の分光光度計。
【請求項15】
前記サンプル光検出器を収容するサンプル光検出器チャンバと、
前記参照光検出器を収容する参照光検出器チャンバと、
前記サンプル光検出器チャンバおよび前記参照光検出器チャンバの各々に設けられ、前記サンプル光検出器および前記参照光検出器から反射した光をそれぞれ閉じ込める光トラップ(194,196,511,531,633,634)とをさらに備える請求項1記載の分光光度計。
【請求項16】
前記ハウジングは、前記参照セル、前記サンプルセル、前記光学系、前記参照光検出器および前記サンプル光検出器の搭載および配置を提供する形状をなした中空部分(600a,700a)を有する固体の単一構造金属ハウジング(600,700)を備える請求項1記載の分光光度計。
【請求項17】
前記固体の単一構造金属ハウジングの中に、前記光学系のコンポーネントを保持するためのスロットをさらに備える請求項16記載の分光光度計。
【請求項18】
前記固体の単一構造金属ハウジングは、アルミニウムを含むようにした請求項16記載の分光光度計。
【請求項19】
実質的に固体の熱伝導性ハウジング(600,700)と、
光伝送経路およびコンポーネント配置を規定する、前記ハウジング内にある中空部分(600a,700a)と、
前記中空部分と光伝送を行う光入口アパーチャ(602)と、
前記光入口アパーチャと光伝送を行うコリメートレンズ(604,702)と、
前記コリメートレンズと光伝送を行う第1ビームスプリッタ(606,704)と、
前記第1ビームスプリッタの透過側と光伝送を行う第2ビームスプリッタ(610,706)と、
前記第1ビームスプリッタの反射側と光伝送を行う第3ビームスプリッタ(614,708)と、
前記第2および第3ビームスプリッタの一方と光伝送を行う、参照セル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム(623,623a,712)と、
前記第2および第3ビームスプリッタの他方と光伝送を行う、サンプルセル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム(622,622a,710)とを備える分光光度計。
【請求項20】
前記参照セル反射相互作用界面、前記サンプルセル反射相互作用界面および反射ビーム検出システムは、前記第2ビームスプリッタの反射側および前記第3ビームスプリッタの透過側と光伝送を行うようにした請求項19記載の分光光度計。
【請求項21】
前記中空部分の一部として形成され、第2ビームスプリッタからの透過光および前記第3ビームスプリッタの反射光を閉じ込めるように配置された、光トラップ(613,617)をさらに備える請求項19記載の分光光度計。
【請求項22】
前記参照セル、前記サンプルセルおよび検出システムからの反射光を閉じ込める追加の光トラップ(633,634)をさらに備える請求項19記載の分光光度計。
【請求項23】
前記参照セル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム、ならびに前記サンプルセル反射相互作用界面および反射ビーム検出システムは、
相互作用面(304,324)を含むプリズム(302,322,622a,623a)と、
検出器(330,310,628,629)と、
前記プリズムからのビーム出力を前記検出器へ集光するレンズ(308,328,624,625)と、
ガスまたは液体を相互作用面へ供給するための入口および出口を有する閉じた相互作用容積(314,334)とをそれぞれ備える請求項19記載の分光光度計。
【請求項24】
前記参照セル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム、ならびに前記サンプルセル反射相互作用界面および反射ビーム検出システムは、
反射相互作用面(402,422)と、
検出器(430,410)と、
前記反射相互作用面からのビーム出力を前記検出器へ集光するレンズ(408,428)と、
ガスまたは液体を反射相互作用面へ供給するための入口および出口を有する閉じた相互作用容積(414,434)とをそれぞれ備える請求項19記載の分光光度計。
【請求項25】
前記参照セル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム、ならびに前記サンプルセル反射相互作用界面および反射ビーム検出システムは、
つや消し相互作用面(502,522)と、
検出器(530,510)と、
前記つや消し相互作用面からの散乱出力を前記検出器へ集光するレンズまたはミラー(508,528)と、
ガスまたは液体を相互作用面へ供給するための入口および出口を有する閉じた相互作用容積(513,534)とをそれぞれ備える請求項19記載の分光光度計。
【請求項26】
内部光源の無い封止ハウジング(112,600,700)と、
前記ハウジングに搭載された参照セル(156,図3〜図5,623,712)と、
前記ハウジングに搭載されたサンプルセル(154,図3〜図5,622,710)と、
外部で発生した光ビームを参照ビームおよびサンプルビーム(150,152,300,320,400,420,500,520,620,621)へ分岐し、参照ビームおよびサンプルビームを別々の経路に分配して、一方の経路は、参照ビームを参照セルの中に通し、他方の経路は、サンプルビームを前記サンプルセルの中に通すようにした、ハウジング内にある光学系と、
参照ビームを通す一方の経路と光伝送を行う参照セル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム(322,324,434,422,534,522,623a)と、
サンプルビームを通す他方の経路と光伝送を行うサンプルセル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム(302,304,414,402,514,502,622a)と、
前記参照セル相互作用手段によって反射した光の少なくとも一部を検出するための参照光検出器(330,430,530,629)と、
前記サンプルセル相互作用手段によって反射した光の少なくとも一部を検出するためのサンプル光検出器(310,410,510,628)と、
前記封止ハウジングに対して外部にある光源から、外部で発生した光ビームを前記光学系の中に供給するための光ガイド(108,601,702)とを備える分光光度計。
【請求項27】
前記参照セル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム、ならびに前記サンプルセル反射相互作用界面および反射ビーム検出システムは、
相互作用面(304,324)を含むプリズム(302,322,622a,623a)と、
検出器(330,310,628,629)と、
前記プリズムからのビーム出力を前記検出器へ集光するレンズ(308,328,624,625)と、
ガスまたは液体を相互作用面へ供給するための入口および出口を有する閉じた相互作用容積(314,334)とをそれぞれ備える請求項26記載の分光光度計。
【請求項28】
前記参照セル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム、ならびに前記サンプルセル反射相互作用界面および反射ビーム検出システムは、
反射相互作用面(402,422)と、
検出器(430,410)と、
前記反射相互作用面からのビーム出力を前記検出器へ集光するレンズ(408,428)と、
ガスまたは液体を反射相互作用面へ供給するための入口および出口を有する閉じた相互作用容積(414,434)とをそれぞれ備える請求項26記載の分光光度計。
【請求項29】
前記参照セル反射相互作用界面および反射ビーム検出システム、ならびに前記サンプルセル反射相互作用界面および反射ビーム検出システムは、
つや消し相互作用面(502,522)と、
検出器(530,510)と、
前記つや消し相互作用面からの散乱出力を前記検出器へ集光するレンズまたはミラー(508,528)と、
ガスまたは液体を相互作用面へ供給するための入口および出口を有する閉じた相互作用容積(513,534)とをそれぞれ備える請求項26記載の分光光度計。
【請求項30】
前記ハウジングは、実質的に固体の熱伝導性ハウジング(700,600)と、
光伝送経路およびコンポーネント配置を規定する、前記ハウジング内にある中空部分(700a,600a)とを備える請求項26記載の分光光度計。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2008−537993(P2008−537993A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551322(P2007−551322)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/000805
【国際公開番号】WO2006/076353
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(507238171)ザ・キュレイターズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミズーリ (7)
【氏名又は名称原語表記】THE CURATORS OF THE UNIVERSITY OF MISSOURI
【Fターム(参考)】