説明

超高速ウェットエッチング装置

【課題】基板を均一にエッチングするために有利な技術を提供する。
【解決手段】エッチング装置は、第1面および第2面を有する基板の前記第1面をフッ化水素および硝酸を含むエッチング液によってエッチングするように構成され、前記基板の前記第2面を保持するチャックと、前記チャックを回転させることによって前記基板を回転させる回転機構と、フッ化水素および硝酸を含むエッチング液を前記回転機構によって回転させられている前記基板の前記第1面の中央部分に供給する第1供給部と、前記回転機構によって回転させられている前記基板の前記第1面の前記中央部分より外側の外側部分に補充液を供給する第2供給部とを含む。前記補充液は、フッ化水素および硝酸のうちの一方の酸を含み他方の酸を含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化水素(HF)と硝酸(HNO)を含むエッチング液によって、シリコン基板を均一かつ高速にウェットエッチングする超高速ウェットエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このところ、省エネや携帯端末機器の世界的普及の視点から低電圧駆動の半導体デバイスが求められている。半導体デバイスを低電圧駆動する一つの技術課題としては、半導体素子を形成するためのシリコン基板の厚みを薄くすることが挙げられる。例えば、パワーデバイス分野では、シリコン基板の厚さを50μm〜100μm程度にすることが求められている。DRAMやFLASHメモリでは、基板の表裏面間を電極で貫通させて(貫通電極:Through Silicon Via:TSV)、メモリを多層構造に組み上げてメモリ密度を高くしているが、より低電圧で駆動させ、よりメモリの高密度化を高めるために、シリコン基板の厚さを20μm〜30μm程度に薄くすることが強く求められている。
【0003】
シリコン基板の厚みを薄くする技術は、現状では、シリコン基板表面に、パワーデバイスやメモリを設けた後に、研磨砥粒を用いたBack Grindingにより所定の厚さまでシリコン基板裏面を機械的に研磨し、次いで、ウェットエッチングを施している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、機械研磨では、ダメージが入って所謂ダメージ層を形成してしまうことと、シリコン基板を薄くすることに時間が掛りすぎるという解決すべき課題が機械研磨とウェットエッチングの併用には存在している。従って、半導体デバイスを製造する際に、シリコン基板に一切ダメージが入らないでシリコン基板の厚さを極く短時間でシリコン基板を必要な厚さまで薄くする新技術の創出が今日の急務な課題になっている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するもので、フッ硝酸をエッチング液に用いてシリコン基板を400μm/分以上の速度で略々均一にエッチング除去することができる超高速ウェットエッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の超高速ウェットエッチング装置は、フッ硝酸をエッチング液に用いてシリコン基板を400μm/分以上の速度で略々均一にエッチング除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機械的研磨をいっさい用いないため、デバイスにいっさいダメージを入れることなく、ウェットエッチングだけでシリコン基板の厚さを必要な50μm〜100μm、20μm〜30μmといった厚さに1分間程度のきわめて短い時間内に仕上げることができるようになり、きわめて生産性の高い製造技術が確立される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】フッ酸(HF)及び硝酸(HNO)を含むエッチング液におけるHF及びHNOの濃度とシリコン基板のエッチング速度との関係を示す図である。
【図2】シリコンを800μm/minでエッチングするHF(30%)とHNO(28%)HO(42%)溶液による石英基板のエッチング量の時間依存性を示す図である。
【図3−a】エッチング処理チャンバー100の全体図(図3−dの“B−B”断面)を示す模式的説明図である。
【図3−b】エッチング処理チャンバーの圧力コントロールの例を説明する説明図である。
【図3−c】超高速エッチングおよび超純水洗浄液供給と廃液処理に関して図3−dの“B―B”での断面を説明する模式的断面図である。
【図3−d】エッチング処理チャンバーの薬液供給アームとノズルの例を説明するための模式的説明図である。
【図3−e】ノズル位置と回転方向の関係を説明するための模式的説明図である。
【図4】厚さ725μmの200mm直径のシリコン基板のエッチング結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の最適な実施形態を説明する。
【0010】
図1は、フッ酸(HF)及び硝酸(HNO)を含むエッチング液におけるHF及びHNOの濃度とシリコン基板のエッチング速度との関係を示す図である。例えばHF(30wt%)/HNO(28wt%)、HF(2wt%)/HNO(36wt%)、HF(26.5wt%)/HNO(45wt%)の濃度のフッ酸・硝酸溶液によるシリコンのエッチング速度は、1分間で800μmに達する。
【0011】
シリコンを高速にエッチングするエッチング液は、フッ酸(HF)と硝酸(HNO)の混合液である。フッ化水素分子(HF)はこうした溶液の中で、ごく一部が
HF→H+F
と解離し、生成されたフッ素イオンFは中性のHF分子と結合して2フッ化水素イオンHFが生成される、したがって、ここで述べた混合液には、ごく少量の2フッ化水素イオンHFが生成されるだけで、大部分のHF分子は中性のHF分子のまま存在することになる。
【0012】
化学量論組成のシリコンの酸化物(SiO)は2フッ化水素イオンHFでだけエッチングが可能であり、中性のHF分子ではSiOはエッチングできない。硫酸(HSO)がシリコン基板表面に形成する酸化物は、この化学量論組成に近い酸化物であるため中性のHF分子ではエッチングできない。そのため、HF/HSO薬液によるシリコン基板のエッチング速度はきわめて遅い。一方、HNOによりシリコン基板表面に形成されるシリコンの酸化物は、酸素欠損型の酸化物であるため、中性のHF分子でエッチングできる。そのため、フッ酸・硝酸溶液によるシリコンエッチングだけが極めて高速となる。
【0013】
その反応式は下記の通りである。
3Si+4HNO+18HF→3HSiF+4NO+8H
シリコン1原子エッチングするのに、HNO、1.33分子と、HF、6分子が使われ、反応生成物としてHSiFが1分子とNOガスが1.33分子と水(HO)が2.66分子発生する。
【0014】
シリコン基板の広い面積の表面を均一にかつ高速にエッチングするためには、新鮮なエッチング液を常時供給することで反応生成物を瞬時に除去することが不可欠である。シリコン基板を高速回転する枚葉の装置にすることで、シリコン基板表面を水平方向に流れる溶液の流速が非常に速くなることで、反応生成物の表面からの除去は急速に行える。溶液がシリコン基板表面に帯存する時間がきわめて短くなるのであるから、効率のよいエッチングを行うためには、エッチング速度のきわめて速いエッチング液が必須になる。エッチング液のシリコン基板表面への供給は、中心部近傍から周辺部に向って複数の薬液供給ノズルを配置することによって行う。シリコン基板の周辺部に向うにつれて、エッチングしなければならないシリコン基板の面積は実効的に広くなるから、ノズルから供給する薬液の量は、周辺部のノズル程多くする必要がある。
【0015】
厚さ775μmの300mm直径のシリコン基板を、例えば1分間で755μmエッチングして、20μm厚さの基板を作成する工程で発生する反応生成物の量と使用される薬品の量を計算しておくことは、装置設計に決定的に重要なことである。
反応式は
3Si+4HNO+18HF=3HSiF+4NO+8H
である。
【0016】
Si 1原子エッチングするのに、HNOが1.33分子消費され、HFが6分子消費される。反応生成物は、NOガス分子が1.33分子発生し、HSiFが1分子生成される。300mmシリコン基板1枚で消費されるシリコンの量は、π×15×0.0755=53.34cmである。シリコンの比重は2.33g/cmであるから、エッチングされるシリコンの重量は、124グラムである。単位体積当りのシリコンの原子数は5×1022個/cmであるから、1枚のシリコン基板からエッチングされるシリコンの原子数は、2.67×1024個である。
【0017】
従って、300mmシリコン基板1枚の処理に消費される硝酸分子は3.55×1024分子であり、HF分子は1.6×1025分子である。一方生成される反応生成物は、HSiF分子が2.67×1024分子生成され、NOガス分子は3.55×1024分子生成される。大気圧で0℃のガス1cmに含まれるガスの分子数は、2.69×1019分子である。発生するNOガスの量は1.32×10cm=132リットルである。300mmウェーハを755μm 1分間でエッチングすると、300mm直径のシリコン基板表面から、132リットル/minのNOガスが発生する。こうした事をすべて克服する工夫が本発明の超高速ウェットエッチング装置には施されている。
【0018】
132リットル/minの量で発生してくるNOガスを可能な限り速く除去するためには、シリコン基板表面に300リットル/min〜500リットル/min程度のクリーンな空気を流して、粗引きポンプで排気する。500リットル/minのクリーンな空気を供給し、2,000リットル/minの粗引きポンプで排気すると、流れるガス流量f(sccm)とポンプの排気速度s(リットル/sec)とチャンバー圧力p(Torr)の式から
【数1】

となり、チャンバー内圧力は240Torrと若干減圧状態になる。
【0019】
300mmのシリコン基板1枚の処理で消費されるHF分子は1.6×1025分子である。50wt%HFが略々1リットル(1kg)消費される。反応生成物であるHSiFを可能な限り速く基板表面から除去するために、シリコン基板は、基板表面を流れる液の速度を速くするために、700rpm〜800rpm以上の高速に回転させる必要がある。同時に、液膜の厚さも回転数の増加と共に薄くなるから、NOガスが脱離され易くなる。
【0020】
本発明に関わるエッチング液では、超速度でエッチング反応が進行するので、HFやHNOはきわめて速く消費される。そのために超高速エッチング液を基板表面に供給するノズルの本数は、シリコン基板の中心部から外周部に向って、複数本必要となる。更に、外周部程エッチングしなければならないシリコン基板表面の面積が大きいので、供給しなければならないエッチング液の量は多くなる。従って、シリコン基板表面に設けられるエッチング液供給ノズルは、200mmウェーハで4本以上、300mmウェーハで6本以上設けるのが好ましい。
【0021】
シリコン基板表面からは、NOガスが激しく発生し続けるから、エッチング液をシリコン基板表面に垂直に供給しようとすると、液がはね返されることがある。従って、中央部1本目のノズルはシリコン基板表面に向って垂直供給とし、外周部のノズルになるにつれて、ノズルからの液放出方向をシリコン基板の回転方向に向って傾斜を付けてエッチング液を供給するのが好ましい。
【0022】
ノズルからの液放出方向の傾斜角は外周部になる程深く傾けるのが好ましい。そのために、図3でも説明するように、より好ましい実施形態では、2本目のノズルの傾斜角30度程度、3本目、4本目のノズルの傾斜角45度程度、5本目、6本目のノズルの傾斜角は60度程度に設定される。更に、エッチング液供給吹き出し部近傍は、シリコン基板上での液の流れに乱れが多いため、複数本設けられるノズルの実効的距離が接近しないように、4本のアームにエッチング液供給ノズルが設置され、その中心からの位置が調整されているのが好ましい。
【0023】
エッチングの停止は、各ノズルからのエッチング液の供給を停止すると同時に、中心部に設けられているもう一本のノズルから大量の超純水を供給することでエッチングは急速に停止させる。エッチングを急速に停止させるための超純水供給ノズルが中心部に1本必要である。
【0024】
回転する基板の周辺に設けられたカップ1はシリコン基板の超高速エッチングを行っている時の排液を回収する。排液の中には大量のシリコン(Si)とフッ素(F)が含有されているので、シリコンとフッ素の回収装置にこの排液は供給する。カップ2は、エッチング液の供給を停止して超純水を供給して、エッチングを停止すると共に基板表面を洗浄する時の、洗浄排液を回収するのである。
【0025】
超高速エッチング液や超純水を、例えば1分間に一度程度バルブを開閉して供給したり、停止したりしなければならない。高速エッチングになればなる程、エッチング液の供給開始・停止・超純水の供給開始・停止は速く行われなければならない。バルブの開閉を速く正確に行おうとすると空圧弁が必要であり、望ましくは電動弁が必要である。電動弁も電気二重層キャパシタ内蔵の電動弁であることが望ましい。バルブを速く開閉すると非圧縮性流体の場合、特にバルブを閉にする時バルブの内部の体積が小さくなるため激しいWater Hammer 現象を伴うことがある。そのため、バルブの開閉を行っても、バルブの実効的内容積が変化しない新しいバルブを使うことが特に望ましい。Water Hammer 現象を起さないためである。
【0026】
図1には、フッ酸(HF)硝酸(HNO)混合液によるシリコンの室温におけるエッチング速度(800μm/min、600μm/min、400μm/min)が得られる、フッ酸濃度と硝酸濃度が示される。
【0027】
エッチング液として、50wt%HFと70wt%硝酸もしくは97wt%硝酸を混合してフッ酸硝酸混合液を作った。
【0028】
エッチングのやり方は、面積が10mm×30mm厚さ730μmのシリコン基板を、フッ酸硝酸エッチング液中で、基板表面に垂直な方向に、シリコン基板を1秒間に2回往復させた。反応生成物を基板表面からただちに除去し、つねに新鮮なフッ酸硝酸エッチング液にシリコン基板表面をさらすためである。基板厚さをレーザ変位計で計測し、厚さの減少分の1/2がエッチング量となる。室温で、400μm/min、600μm/min、800μm/minといった文字通り超高速エッチングが行われることが図1に示される。
【0029】
図2には、シリコンを800μm/minでエッチングするHF(30wt%)とHNO(28wt%)HO(42wt%)溶液による石英基板のエッチング量の時間依存性を示す。
【0030】
シリコン基板と同じ寸法にした石英基板をシリコン基板とまったく同じ手法でエッチングしたが、そのエッチング速度は1μm/minを下回る0.97μm/minであり、シリコンにくらべて石英(SiO2)の速度は1/800以下である。
【0031】
図3−aには、エッチング処理チャンバー100の全体図(図3−dの“B−B”断面)を示す。シリコン基板10を保持するステージ11、ステージ11を回転させる回転機構12、シリコン基板10の処理を行う裏面の反対側の表面側10aに薬液の回り込み防止としてガスを供給するライン13がある。シリコン基板10の処理面である裏面に薬液を供給する四本のアームがあり、複数の薬液供給ノズルが設けられている。アームはノズルからシリコン基板10処理面への薬液供給が適切な位置に行えるための上下機構・旋回機構14を持っている。また供給ライン25には薬液と超純水の供給と停止を行うバルブが設けられており、このバルブには供給される薬液と超純水の供給時のWater Hummerを防止する、Water Hummer防止機能が設けられている。バルブの開閉を速く正確に行うためには電気二重層キャパシタ内蔵の電動弁が必要である。Water Hummerは非圧縮性流体を用いた場合に、特にバルブを閉にするときバルブの内部の体積が小さくなることにより生じるが、上述のWater Hummer防止機能としては具体的には,開閉時にバルブ内の体積が変化しないバルブを用いている。
【0032】
シリコン基板10処理面に供給され、シリコン基板のエッチングに使用された薬液を排出するためのカップ15と廃液ライン16と回収部17およびエッチング処理により発生するガスを排出するための排気ライン18が連通されている。廃液と排気は気液分離機能19により分離され、排出される。エッチング処理チャンバー100内の圧力を計測する圧力計測機能20、圧力を制御するコントローラ21、チャンバー100内からの反応生成ガス等の排気のためのガス(クリーンな空気)を供給するとともにそのガスの供給量を調整する流量調整機能22が設けられ、排気ラインにはエッチング処理により発生するガスを除外する除外部23とエッチング処理チャンバー100から速やかにガスを排出するための排気調整機能24(ex.ポンプ)が設けられている。
【0033】
図3−bには、エッチング処理チャンバーの圧力コントロールの例が示される。本発明に於いては、エッチングにより大量のNOガスが発生する。これをチャンバー外に速やかに排出することが必要となる。そのため、チャンバーの排気ラインにポンプを設ける。エッチング開始前にポンプを稼動し、チャンバー内への空気供給量を待機時の量からエッチング時の量に変更した後に、エッチングを開始する。エッチング終了後、ポンプの作動を停止し、チャンバーへの空気供給量も待機時の量に戻す。
【0034】
図3−cには、超高速エッチングおよび超純水洗浄液供給と廃液処理に関して図3−dの“B―B”での断面が示される。図3−cを用いて説明する。エッチング処理チャンバー100に設けられた廃液および排気を導くためのカップ15は2段構造となっており内側のカップ15aは超高速エッチング処理で使用し、外側カップ15bは超純水洗浄処理で使用する。カップ15aと15bの切り替えは、カップ上下動作にて必要なカップのみ開放し、待機中は両カップとも閉じている。超高速エッチング処理に使用された薬液はカップ15aより回収装置17へ供給され、エッチング薬液の再利用を行うことも可能となる。また、超純水洗浄処理に使用された液は廃液ライン16に流す。このカップ15a,15bの薬液が接触するテーパ形状になされた表面41は凹凸処理がなされ、薬液が液滴やミストとして跳ね返りシリコン基板10面上やエッチング処理チャンバー100に飛散することを防止している。
【0035】
図3−dには、エッチング処理チャンバーの薬液供給アームとノズルの例を示す。ウェーハへ薬液を吐出する薬液供給ノズルは複数本設ける。ノズルはアームに設置される。ノズルは複数本設けることにより、ウェーハ面上の複数の箇所に、供給する薬液の量や供給する薬液の組成を、夫々の箇所毎に適切に、異なった供給を行うことが出来る。アームとして、略々90度ずつ角度が異なる4本が設けられている。アームは回転軸中心を持つ旋回機能と、上下動作機能を備えており、供給する薬液が設置されたアームを薬液供給位置へ移動させ処理を行う。処理が終了したらシリコン基板10の上から速やかに待機位置へ移動する。アーム51,アーム52は待機位置55へ、アーム53,アーム54は待機位置56に待機する。各ノズルはシリコン基板10への液供給角度を調整する機能を持っている。固定ボルト70を緩め、丸棒形状のノズルシャフトを中心としてノズルの角度を調整する。これにより薬液がシリコン基板10に供給された後の薬液の流れを調整し、飛散を防止することができる。
【0036】
中心近傍(中心から20mm程度)にエッチング液を供給する1本目のノズル61はシリコン基板処理面に略々垂直に、エッチング液を供給する。その液量は約1リットル/min程度であり、エッチング液を供給するノズルの内径は4.2mm程度(1/4インチ相当)である。2本目のノズル62は、1本目のノズル61が設置されたアーム51の反対側(略々180度の角度差)のアーム53に設置される。中心からの距離は略々50mm程度であり、供給するエッチング液の流量は1リットル/min程度である。角度は30度程度、シリコン基板10の回転方向に傾いている。3本目のノズル63はノズル61とノズル62の間(90度の角度)のアーム52に設置され、中心から75mm程度の距離であり角度は45度程である。供給するエッチング液流量は1.2リットル/min程度である。さらに4本目のノズル64は、3本目のノズル63の反対側のアーム54に設置される。その中心からの位置は95mm程度であり、供給される液量は2リットル/min程度である。角度は45度程度である。5本目のノズル65は2本目のノズルが設置されているアーム53に設置され、中心から115mm程度の距離であり、角度は60度程度、供給するエッチング液流量は3リットル/min程度である。6本目のノズル66は1本目のノズル61が設置されたアーム51に取付けられ、中心からの距離は約135mm程度、角度は60度であり、供給するエッチング液流量は4リットル/min程度である。エッチング停止後に超純水を供給するノズル67は、1本目のノズル61が設置されたアーム51の略々中心に据えられる。供給する超純水の流量は3リットル/min〜10リットル/minである。エッチング液を供給するノズルは、設置される位置によって外周部のノズル程、供給するエッチング液量は多くなる。液の吹き出し流速が略々等しくなるように、外周部のノズル吹出部程、ノズル内径が太くなされている。
【0037】
図3−eには、ノズル位置と回転方向の関係を示す。シリコン基板中心からの距離が互いに近い、2つの異なるノズルより液を供給する場合、それぞれ小さい角度差の位置で供給すると液の流れが干渉し合う場合がある。この問題を防ぐため、例えば図中の(1),(2)および(5),(6)で示すように、シリコン基板中心からの距離が互いに近いノズル同士は液の流れが最も干渉しない、180度の角度差の位置関係で供給する。また、(1),(2)および(5),(6)の中間付近に位置する(3),(4)は(1),(2)に対して90度の角度差を設け、かつ、(3),(4)同士は180度の角度差の位置関係にて供給する。
【0038】
図4には、厚さ725μmの200mm直径のシリコン基板のエッチング結果が示されている。1本目のノズル位置中心から20.5mm、2本目のノズル位置(1本目のノズルの正反対のアームに設置)中心から52.5mm、3本目のノズルの位置(1本目と2本目のノズルの間のアームに設置)中心から72mm、4本目のノズル(3本目のノズルとの正反対の位置のアームに設置)中心から85mmである。各ノズルから供給される薬液はHF(30wt%)HNO(28wt%)HO(42wt%)であり、流量は、1本目のノズル:1リットル/min、2本目のノズル:1リットル/min、3本目のノズル:1.2リットル/min、4本目のノズル:2リットル/minである。
【0039】
基板の回転速度は850rpmである。40秒間エッチングした後、各ノズルからの薬液供給をやめると同時に中心部のノズルから3リットル/minの超純水を供給して、エッチングを停止している。40秒で640μmのシリコンが均一にエッチングされ85μm厚さのシリコン基板が得られることが図4には示されている。超短時間でシリコン基板が十分に薄くできることが完全に実証されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ硝酸をエッチング液に用いてシリコン基板を400μm/分以上の速度で略々均一にエッチング除去することを特徴とする超高速ウェットエッチング装置。
【請求項2】
シリコン基板を600μm/分以上の速度で略々均一にエッチング除去する請求項1に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項3】
前記超高速ウェットウェットエッチングを行うエッチング液がフッ酸(HF)と硝酸(HNO)を含む溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項4】
前記ウェットエッチング液に含まれるフッ酸(HF)濃度が19%以上であり硝酸(HNO)濃度が20%以上であることを特徴とする請求項3に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項5】
前記ウェットエッチング液に含まれるフッ酸(HF)濃度が22%以上であり硝酸(HNO)濃度が25%以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項6】
前記ウェットエッチング液に含まれるフッ酸(HF)濃度が26%以上であり硝酸(HNO)濃度が28%以上であることを特徴とする請求項3,4,又は5に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項7】
高速回転するステージ上に、処理面であるシリコン基板裏面を表面側にしてシリコン基板を設置し、複数のノズルから請求項4,5,又は6に記載のエッチング液を、前記ステージに設置された前記シリコン基板裏面の異なる複数の場所に供給することを特徴とする超高速ウェットエッチング装置。
【請求項8】
前記シリコン基板が設置されるステージの上方に、略々ステージの中心から周辺に向う方向に四本のアームが略々90度づつずれた位置関係で設置され、エッチング液を供給するノズルはこのアームに設置されるが、その位置関係が高速回転するシリコン基板の中心部にもっとも近い所にエッチング液を供給する一番目のノズルが設置されたアームに対し、シリコン基板の中心部に二番目に近い所にエッチング液を供給する二番目のノズルは、略々対象の位置にある180度角度のずれたアームに設置し、三番目のノズルはその中間に位置するアーム(シリコン基板の回転方向で一番目から二番目に向う方向)に設置し、四番目のノズルは三番目のノズルが設置されたアームの略々対象の位置にあるアームに設置し、五番目の位置にエッチング液を供給するノズルは、二番目のノズルが設置されているアームに設け、六番目の位置にエッチング液を供給するノズルは、一番目のノズルが設置されたアームに設けるといった位置関係になされた複数のエッチング液供給ノズルを備えた請求項7に記載の超高速エッチング装置。
【請求項9】
エッチング停止時、前記ノズルからのエッチング液の供給を停止すると同時に、シリコン基板中心部に超純水を供給するノズルを備えたことを特徴とする請求項7,8,又は9に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項10】
前記超純水供給ノズルと前記一番目のエッチング液供給ノズルは、略々垂直にシリコン基板面に液を供給するが、前記二番目以降のエッチング液供給ノズルは、シリコン基板の回転方向に向って傾斜角を持ってエッチング液を供給するようになっており、外周部にエッチング液を供給するノズル程その傾斜角はゆるやかになっていることを特徴とする請求項9に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項11】
前記複数設けられたエッチング液供給ノズルから供給されるエッチング液の流量は、外周部に設けられたノズル程その流量が多くなっていることを特徴とする請求項10に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項12】
前記外周部に設けられたエッチング液供給ノズルから流れるエッチング液量が外周部のノズル程多くなっている状況において、シリコン基板表面に供給される時のエッチング液の流速がすべてのノズルにおいて略々等しくなるように外周部のノズル吹き出し部直径が太くなされていることを特徴とする請求項11に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項13】
中心部にもっとも近い所にエッチング液を供給する一番目のノズルの液供給部の太さは1/4インチチューブ相当の内径4.2mm程度であり、その一番目のノズルに1リットル/min程度のエッチング液が供給されていることを特徴とする請求項10,11又は12に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項14】
前記高速回転するステージはシリコン基板を確実に吸着すると共に、ステージ周辺からシリコン基板周辺にガスを吹き出してエッチング液がシリコン基板の表面側に回りこむことを抑制していることを特徴とする請求項7に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項15】
前記高速回転するステージの周囲には、エッチング廃液及び洗浄液を回収する為のカップ1及び2が設けられており、いずれも気液分離機構及びガス排気ポンプに接続されており、チャンバー上流からは発生するガスを効率よくシリコン基板表面から除去するために大量のクリーンな空気が送り込まれる機構を備えたことを特徴とする請求項7又は14に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項16】
前記クリーンな空気の導入はエッチング開始直前にガス排気ポンプの稼動と共に開始され、エッチングが終了してガス排気ポンプが停止する時に供給が停止されることを特徴とする請求項15に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項17】
前記エッチング液の廃液を回収するカップ1は、シリコン、フッ素及びエッチング液の回収装置に接続されていることを特徴とする請求項15又は16に記載の超高速ウェットエッチング装置。
【請求項18】
前記カップ1及びカップ2は、シリコン基処理面からとび散る大量のエッチング液と洗浄液を受けることになるが、カップ表面に衝突したエッチング液や洗浄液の液滴が反射してミストを作らないように表面に傾斜角が設けられ表面凹凸が制御されていることを特徴とする請求項15に記載の超高速ウェットエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−a】
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【図3−b】
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【図3−c】
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【図3−d】
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【図3−e】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119655(P2012−119655A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107619(P2011−107619)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼研究会名:第22回 マイクロエレクトロニクス研究会、 主催者名:国立大学法人東北大学、東北大学未来科学技術共同研究センター 大見研究室、UCT研究会 発表日:平成22月11月13日 ▲2▼刊行物名:第22回 マイクロエレクトロニクス研究会プロシーディング、 第20回 大見研究室OB総会資料 発行者:東北大学未来科学技術共同研究センター 大見研究室 発行日:平成22月11月13日 ▲3▼研究会名:第22回 マイクロエレクトロニクス研究会 主催者名:国立大学法人東北大学、東北大学未来科学技術共同研究センター 大見研究室、UCT研究会 発表日:平成22月11月13日 ▲4▼刊行物名:第22回 マイクロエレクトロニクス研究会プロシーディング 第20回 大見研究室OB総会資料 発行者:東北大学未来科学技術共同研究センター 大見研究室 発行日:平成22月11月13日
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】