超高速ラマンレーザーシステム及び動作方法
複数の反射器を有する共振器空洞であって、少なくとも一つの反射器は、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応する周波数において前記共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であり、前記出力反射器は、前記ラマン変換周波数において部分的に透過性を有する共振器空洞と、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように前記共振器空洞内に配置された固体ラマン活性媒質であって、前記ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを前記共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するための固体ラマン活性媒質と、前記共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、前記ラマン活性媒質内において前記ラマン変換周波数を有する前記共振パルスをラマン増幅するように、前記共振器の光学長を調節して前記共振ラマン変換パルスのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度と整合させるための共振器調節器と、を有するラマンレーザーシステム。また、分散素子及び複数の結合共振器空洞を更に有するマルチ波長ラマンレーザーシステム。また、超高速パルス化ラマンレーザー動作を提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高速ラマンレーザーシステム及びその動作方法に関し、且つ、更に詳しくは、モードロックラマンレーザーシステム及び動作方法に関し、且つ、以下、本発明について、この用途を参照して説明することとする。但し、本発明は、この特定の使用分野に限定されるものではないことを理解されたい。
【背景技術】
【0002】
本明細書における背景技術に関するすべての説明は、その背景技術が先行技術であることの是認として見なすべきではなく、且つ、その背景技術が周知であるか又は当技術分野における共通の一般的知識の一部を構成していることの是認として見なすべきでもない。
【0003】
超高速レーザーは、研究室において一般的なものであり、且つ、現時点における主なタイプは、以下のとおりである。即ち、ネオジムに基づいたレーザー(Nd:YVO4及びNd:YAGなど)は、約1064nmにおいてピコ秒パルスを生成し、且つ、532nm及び355nmに周波数倍増又は三倍増することが可能であり、Ti:サファイアレーザーは、数フェムト秒という短いパルスを有することが可能であり、且つ、700〜950nmの波長範囲において動作することが可能であり(且つ、350〜525nmに到達するように周波数倍増することが可能であり)、Yb3+又はEr3+ドーパントに基づいたファイバレーザーは、それぞれ、1060nm及び1500nm周辺において動作し、光ポンピング半導体「VECSEL」レーザーは、可視領域及び赤外領域における個別の波長について設計することができる相対的に新しいタイプの供給源であり、古い技術である色素レーザーは、可視波長に対する同調可能なアクセスを許容しているが、望ましくない発癌性染料の取扱い及び交換に起因し、絶滅したも同然の状態にある。
【0004】
レーザー研究室以外においては、且つ、特に、バイオフォトニクスの分野においては、同調可能なTi:サファイアレーザーとネオジムレーザーという二つの「業界標準」レーザーのみが主に使用されている。これらのレーザーは、十分なスペクトルカバレージを提供しておらず、且つ、550nm〜700nmの黄色から赤色の領域が、カバレージが不十分な一つの主要なエリアである。原則的には、その他のレーザー及びOPO技術を追加することによって十分な波長カバレージを提供することが可能であろうが、広範に利用可能なものにするには、これは、実際には、あまりに面倒で、複雑であって、且つ、高価であり、且つ、したがって、研究者は、波長の制約によって課される制限に直面することになる。したがって、可視領域における、特に、500〜700nmにおけるピコ秒パルスレーザー源の開発に対する多大な関心が存在している。
【0005】
二光子蛍光顕微鏡法は、通常は700〜1000nmの範囲において動作する同調可能な超短パルスTi:サファイアレーザーとの関連において広く使用されている定評のある生物学的撮像法である。但し、更に短い波長において、特に、500〜650nmにおいて動作することができる超短パルスレーザーに対する需要が増大しており、その理由は、この技法は、コントラストメカニズムとして機能する内生的自己蛍光構造又は合成発蛍光団を利用することによって様々な生物学的サンプルの二光子吸収帯域を整合させるために更に短い波長の放射を使用することが可能であり、更に短い波長により、二光子蛍光の適用分野が更に様々な生物学的分子にまで広がることになるためである。励起の非線形特性に鑑み、レーザー源は、調査対象の生物学的サンプルに対する損傷を回避するために低い平均パワーを維持しつつ、非線形二光子プロセスを改善するするために大きなピークパワーを有するパルスを生成可能であることが望ましい。対象の発蛍光団の吸収帯域に対する完全な波長の整合は、それらの帯域が相当に幅が広くなる傾向を有しているため(20〜30nm)、通常は、必要とされない。又、高分解能を実現するためには、ビーム品質も、高くなければならず、且つ、サンプルの高速走査のためには、高い繰り返し速度が必要とされる。
【0006】
500〜700nmにおける超短パルス化出力の生成については、様々な方法によって対処されている。例えば、光パラメトリック発振器(Optical Parametric Oscillator:OPO)を使用してUVからIRまでの同調可能な超高速放射を生成しており、例えば、ポンプと信号の空洞内和周波数混合を伴う1047nmでポンピングされるOPOは、608〜641nmの範囲において同調可能なフェムト秒出力をもたらすことが既に実証されている[例えば、非特許文献1を参照されたい]。しかしながら、これらのシステムは、通常、高価且つ複雑であり、且つ、水晶の温度及び角度の非常に厳格な制御を必要としている。又、OPOに使用されている水晶は、多くの場合に、湿りやすく、したがって、時間に伴って劣化する(グレートラッキング)。更には、ポンプ波長に近接した波長にアクセスすることができず、且つ、したがって、黄色の生成のためには、効率を犠牲にして、ネオジムポンピングOPOを355nmにおいてポンピングしなければならない。専門家ではないユーザーがOPOをあまり採用していないのは、これらの複雑性がその理由であろう。同調可能な可視色素レーザー技術を代替する固体レーザーの開発が多くのレーザー物理学者の長期目標となっており、且つ、この観点において、OPOは、明らかな潜在力を有してはいるが、その採用は、主には複雑性の問題に起因して大部分が物理学研究室に限られている。
【0007】
別の方式は、フェムト秒Ti:サファイアレーザーの出力によってフォトニック結晶ファイバをポンピングし、数ピコ秒のパルスを伴う500〜600nmの範囲のブロードバンドの同調可能な可視放射を生成するというものであるが[例えば、非特許文献2]、この供給源と関連する平均パワーは小さく、許容されるのは、閾値近傍の二光子吸収のみである。第3の可能性は、三光子吸収のために、フェムト秒パルス化Ti:サファイアレーザー又はNdに基づいたレーザーを利用するというものである。但し、三光子吸収のためのピークパワー要件は、二光子顕微鏡法のためのものを大幅に上回っており、且つ、したがって、この技法は、生物学的撮像における制限された用途を有している。したがって、特定の望ましい可視及びIR波長におけるピコ秒パルスの効率的な生成を提供する、向上した簡便さ、向上した効率、及び費用の低減を提供することができる別の代替肢の探求に対する強い関心と動機付けが存在しており、且つ、可視波長の広い範囲における短パルスの生成は、二光子顕微鏡法を含むバイオフォトニクスにおけるいくつかの用途にとって有益であろう。
【0008】
新しい波長にアクセスするための従来のレーザーにおけるラマンシフトは、十分に定評のある技法である。具体的には、IR、可視、及びUVの出力を効率的に生成するために、様々な構成において、結晶質媒質内における誘導ラマン散乱(Stimulated Raman Scattering:SRS)が利用されている。SRSは、ラマン媒質を通じたシングル又はダブルパスのみを使用することにより、大きなピークパワーを有するパルスのために非常に効率的に動作することができる。ラマン媒質の周辺に空洞を配置して一つ又は複数のストークス波長を共振させることは、いくつかの重要な利点を有しており、即ち、これは、低パワーパルスの変換を許容しており、これは、ビーム品質を改善し、且つ、これは、任意の望ましい次数を選択的に出力することができるように、或いは、この代わりに、複数の波長を同時に出力することができるように、2次以上のストークス次数へのSRSプロセスの変換及び縦続接続に対する効果的な制御を許容している。
【0009】
数ナノ秒以上の持続時間を有するポンプパルスの場合には、短いラマン共振器によって単一のポンプパルスの効果的なSRS変換を許容することができる。ラマン媒質の通過時間よりも短いピコ秒パルスの場合には、もはや、単純な共振器は使用不能である。共振器を伴うことなしにラマン媒質の1又は2パス内におけるピコ秒ストークス生成を効率的なものにすることは可能であるが、パルスパワー閾値は、共振ラマンレーザーのものよりも格段に大きく、出力スペクトルの制御は容易ではなく、且つ、出力ビームは、大部分の用途の需要を満たすために十分な品質を有してはいない。解決策は、パルス列によってポンピングされる共振器を使用し、モードロックポンプレーザーのものに整合した空洞長を有する外部共振器を「同期モードロック」するというものである。同期ポンピングレーザーは、ポンプレーザーのパルス間周期をラマンレーザー共振器のラウンドトリップ時間と整合させて多数のパルスにわたってラマン共振器内に強力な循環ピコ秒パルスを形成するステップに依存している。いくつかのグループが、可視及びIR領域の波長範囲の生成を可能にするQスイッチングモードロックレーザーからの有限のパルス列によって同期ポンピングされる結晶質及び気体ピコ秒ラマン発振器について報告している。但し、これらの方式は、いずれも、μJのレベルの、或いは、場合によっては、mJのレベルのパルスエネルギーを利用しており、相対的に小さなデューティサイクルを有するという欠点を有し、且つ、相対的に大きく且つ複雑なレーザーシステムを必要としている。又、Qスイッチングされる列内の連続パルスは、異なるピークパワーを有しており、この結果、これらは、撮像及び走査顕微鏡法などの走査用途に適していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】McConnell他、Opt. Lett. 28、1742〜1744(2003)
【非特許文献2】Palero他、Opt. Express 13、5363〜5368(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、これらの従来技術の欠点のうちの一つ又は複数のものを実質的に克服するか又は少なくとも改善すること、或いは、既存の超高速レーザーシステムの有用な代替肢を少なくとも提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によれば、同期ポンピングラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、複数の反射器を有する共振器空洞を有してもよい。少なくとも一つの反射器は、共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するように適合された出力反射器であってよい。パルス化出力ビームは、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応した周波数を有してもよい。出力反射器は、ラマン変換周波数において部分的な透過性を有してもよい。出力反射器は、ラマン変換周波数において最大で約80%の透過性を有してもよい。或いは、この代わりに、出力反射器は、ラマン変換周波数において最大で約90%の透過性を有してもよい。ラマン変換周波数の約10%超が、共振器空洞内において共振してもよい。いくつかの構成において、レーザーシステムは、高利得レーザーシステムであってよい。レーザーシステムの利得は、3超、5超、又は10超であってもよい。レーザーシステムの利得は、約1〜10、約2〜10、約3〜10、約4〜10、又は約5〜10であってもよい。その他の構成において、レーザーシステムは、0.01(1%)〜1の利得を有する低利得レーザーシステムであってもよい。
【0013】
本システムは、パルス化ポンプビームによってポンピングされるように共振器空洞内に配置された固体ラマン活性媒質を更に有してもよい。パルス化ポンプビームは、ポンプ繰り返し速度を有してもよい。ラマン活性媒質は、ラマン活性媒質に入射するポンプパルスをラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換してもよい。このラマン変換されたパルスは、共振器空洞内において共振してもよい。本システムは、共振器の光学長を調節し、共振するラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度と整合させるための共振器調節器を更に有してもよい。共振器の光学長は、共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、調節してもよい。
【0014】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0015】
第1の態様の一構成によれば、同期ポンピングラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、複数の反射器を有する共振器空洞であって、少なくとも一つの反射器は、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応した周波数を有する共振器空洞からのパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であってよく、出力反射器は、ラマン変換周波数において部分的な透過性を有してもよい、共振器空洞と、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように共振器空洞内に配置された固体ラマン活性媒質であって、ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するための固体ラマン活性媒質と、共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、共振器の光学長を調節して共振するラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度と整合させるための共振器調節器と、を有する。
【0016】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0017】
共振器調節器は、選択された共振器を共振器空洞の光軸に沿って平行移動させ、これにより、共振器空洞の光学長を調節するように構成してもよい。共振器空洞の光軸は、共振器空洞の共振光学モードと一致するように規定してもよい。
【0018】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様の共振器調節器は、空洞長の約+/−1cmに対応する共振器空洞内のラマン変換光の+/−33ピコ秒のラウンドトリップ時間差に等しい長さだけ、共振器空洞の長さを調節するように構成してもよい。又、第1〜第4の態様のうちの何れかの態様の共振器調節器は、マイクロメートルレベル(例えば、約1〜100μm)における又はこれ未満(例えば、500〜1000nm)における共振器空洞の長さの微細調節のために構成してもよい。
【0019】
第1の態様の更なる構成によれば、本システムは、マルチ波長動作のために適合させてもよく、この場合に、共振器空洞は、プライマリ共振器空洞であり、且つ、プライマリ共振器空洞からのパルス化出力ビームは、プライマリ周波数変換ビームである。本システムは、複数のセカンダリ反射器を有するセカンダリ共振器空洞であって、少なくとも一つのセカンダリ反射器は、プライマリ出力ビームのセカンダリラマン変換周波数に対応した周波数を有するセカンダリ共振器空洞からのセカンダリパルス化周波数変換出力ビームを出力するために適合されたセカンダリ出力反射器であり、セカンダリ出力反射器は、セカンダリラマン変換周波数において部分的な透過性を有する、セカンダリ共振器空洞と、プライマリ周波数変換ビームによってポンピングされるようにセカンダリ共振器空洞内に配置された第2固体ラマン活性媒質であって、ラマン活性媒質上に入射するプライマリ周波数変換ビームのパルスをセカンダリ共振器空洞内において共振するセカンダリラマン変換周波数を有するセカンダリ共振パルスにラマン変換するための第2固体ラマン活性媒質と、セカンダリ共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて第2ラマン活性媒質内においてプライマリ周波数変換ビームのパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、第2ラマン活性媒質内においてセカンダリラマン変換周波数を有するセカンダリ共振パルスをラマン増幅するように、セカンダリ共振器の光学長を調節して共振セカンダリラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をプライマリ周波数変換ビームの繰り返し速度と整合させるためのセカンダリ共振器調節器と、を更に有してもよい。少なくとも一つのセカンダリ反射器は、プライマリ周波数変換ビームをセカンダリ共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、セカンダリ共振器空洞に対するプライマリ周波数変換ビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0020】
第2の態様によれば、第1の態様のシステムをマルチ波長動作のために適合させてもよい。このマルチ波長システムは、異なる波長の共振器空洞内の共振光を空間的に分散させて二つ以上の結合共振器空洞内に二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために共振器空洞内に配置される分散素子を有してもよい。本システムは、空間的に分離された共振ビームのそれぞれに対応する二つ又は複数の調節可能な反射器を更に有してもよい。調節可能な反射器のそれぞれは、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射するように配置してもよい。それぞれの調節可能な反射器は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、それぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ポンプパルス又は共振ビームのパルスを伴うマルチ波長ラマンレーザーシステムを提供するように、その個々の空間的に分離された共振ビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合させてもよい。
【0021】
第2の態様の一構成によれば、マルチ波長動作のために適合された第1の態様によるラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、異なる波長の共振器空洞内の共振光を空間的に分散させて二つ以上の結合共振器空洞内に二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために共振器空洞内に配置された分散素子と、空間的に分離された共振ビームのそれぞれに対応する二つ又は複数の調節可能な反射器であって、それぞれの調節可能な反射器は、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射するように配置されており、且つ、それぞれの調節可能な反射器は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供するように、その個々の空間的に分離された共振ビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている、二つ又は複数の調節可能な反射器と、を更に有する。
【0022】
第3の態様によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、複数の反射器を有する共振器空洞を有してもよい。本システムは、パルス化ポンプビームによってポンピングされるように共振器空洞内に配置され、且つ、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を更に有してもよい。ポンプビームは、ポンプ繰り返し速度を有してもよい。本システムは、異なる波長の空洞内の共振光を空間的に分散させて共振器空洞内に二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために共振器空洞内に配置された分散素子を更に有してもよい。本システムは、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射して複数の結合共振器空洞を形成するように配置された二つ又は複数の調節可能な反射器を更に有してもよい。それぞれの調節可能な反射器は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、その個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合させてもよい。調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応した周波数を有する共振器空洞からのパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であってよい。出力反射器は、ラマンシフト周波数において部分的な透過性を有してもよい。少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0023】
第3の態様の一構成によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、複数の反射器を有する共振器空洞と、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように共振器空洞内に配置され、且つ、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質と、異なる波長の空洞内の共振光を空間的に分散させて共振器空洞内に二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために共振器空洞内に配置される分散素子と、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射して二つ又は複数の結合共振器空洞を形成するように配置された二つ又は複数の調節可能な反射器であって、それぞれの調節可能な反射器は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、その個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合させてもよく、調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応する周波数を有する共振器空洞からのパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であってもよく、出力反射器は、ラマンシフト周波数において部分的な透過性を有する、二つ又は複数の調節可能な反射器と、を有する。
【0024】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0025】
第4の態様によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、異なる周波数の光を共振させるようにそれぞれが適合されている少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器を有してもよい。複数の反射器のうちの少なくとも二つは、調節可能な反射器であってよく、それぞれの調節可能な反射器は、個々の結合共振器空洞と関連付けられている。本システムは、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を更に有してもよい。ラマン活性媒質は、結合共振器空洞のそれぞれ内に配置してもよく、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合させてもよい。本システムは、異なる周波数の光を空間的に分散させて少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために結合共振器空洞のそれぞれ内に配置される分散素子を更に有してもよい。空間的に分離されたビームのそれぞれは、個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有してもよい。調節可能な反射器のそれぞれは、結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、個々の結合共振器空洞の光学長を独立的に調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている。少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0026】
第4の態様の一構成によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、異なる周波数の光を共振させるように適合された少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器であって、複数の反射器のうちの少なくとも二つは、調節可能な反射器であり、それぞれの調節可能な反射器は、個々の結合共振器空洞と関連付けられている複数の反射器と、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質であって、ラマン活性媒質は、結合共振器空洞のそれぞれ内に配置され、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合されている固体ラマン活性媒質と、異なる周波数の光を空間的に分散させて少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために結合共振器空洞のそれぞれ内に配置される分散素子であって、空間的に分離されたビームのそれぞれは、個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有する分散素子と、を有し、調節可能な反射器のそれぞれは、結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、個々の結合共振器空洞の光学長を独立的に調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合させてもよい。
【0027】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0028】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様の調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、個々の共振器空洞内において共振している光の一部を出力するように適合させてもよい。或いは、この代わりに、調節可能な反射器のうちの何れか以外の反射器を共振器空洞内において共振している一つ又は複数の選択された出力周波数を有する光の一部を出力するように適合させてもよい。
【0029】
第2〜第4の態様のシステムの例示用の一構成は、空間的に分離された異なる周波数の光を共振させるようにそれぞれの空洞が適合されている三つの結合共振器空洞と、三つの調節可能な反射器であって、それぞれが、他の調節可能な反射器のそれぞれと関連付けられた共振器空洞と異なる共振器空洞と関連付けられ、且つ、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、自身が関連付けられた個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振している異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合された三つの調節可能な反射器と、を有してもよい。
【0030】
第2〜第4の態様のシステムの例示用の一代替構成は、空間的に分離された異なる周波数の光を共振させるようにそれぞれの空洞が適合されている四つ以上の結合共振器空洞と、四つ以上の調節可能な反射器であって、それぞれが、異なる共振器空洞と関連付けられ、且つ、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振している異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合された四つ以上の調節可能な反射器と、を有してもよい。
【0031】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様の分散素子は、共振器空洞内において二つ以上のラマンシフトビームを空間的に分散させてもよい。これらのラマンシフトビームは、ポンプビームの周波数との関係において、ラマン活性媒質の1次ストークス次数、2次ストークス次数、3次ストークス次数、又は更に高次のストークス次数に対応してもよい。それぞれの個々の空間的に分離されたビームと関連付けられた調節可能な反射器のそれぞれは、空間的に分離された共振ビームの個々のストークス次数に対応するように構成してもよい。分散素子は、格子、プリズム、及び一対のプリズムからなる群から選択されてもよい。
【0032】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のラマンシフト周波数は、ラマン活性媒質の特性ラマンシフトだけ、ポンプビームをラマンシフトさせることから得られるポンプビームの1次ストークス周波数、2次ストークス周波数、3次ストークス周波数、又は更に高次のストークス周波数であってよい。第2〜第4の態様の空間的に分離されたビームのそれぞれは、ラマン活性媒質の特性ラマンシフトだけ、ポンプビームをラマンシフトさせることから得られるポンプビームの1次ストークス周波数、2次ストークス周波数、3次ストークス周波数、又は更に高次のストークス周波数であってよい。
【0033】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様の調節可能な反射器は、選択された反射器を共振器空洞の光軸に沿って平行移動させ、これにより、共振器空洞の光学長を調節するように構成してもよい。共振器空洞の光軸は、共振器空洞の共振光学モードと一致するように規定してもよい。
【0034】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様の調節可能な反射器は、共振器空洞内のラマン変換光の+/−20ピコ秒のラウンドトリップ時間差に等しい長さだけ、共振器空洞の長さを調節するように構成してもよい。
【0035】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のラマンレーザーは、連続波モードロックラマンレーザーであってよい。
【0036】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様において、結合共振器空洞のそれぞれは、ポンプビームの周波数についてラマン活性媒質のストークス周波数に対応する周波数の光を共振させるように適合させてもよい。これらの結合共振器空洞は、部分的に一致したものであってもよく、結合共振器空洞のうちのそれぞれの空洞の共振器モード及び/又は光軸は、レーザーシステムの空洞の一部分内において空間的に一致したものであってもよい。
【0037】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のポンプビームは、モードロックポンプ源によって供給してもよい。ポンプ源は、連続波モードロックポンプ源であってもよい。ポンプ源は、ポンプ共振器空洞を含むポンプレーザーを有してもよく、この場合に、ポンプ共振器空洞は、共振器空洞と結合されている。共振器空洞の少なくとも一部分は、結合空洞構成においてポンプ源共振器空洞の少なくとも一部分を有してもよい。
【0038】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様におけるポンプビームは、共振器を同期ポンピングするように適合させてもよく、且つ、基本ビームのその基本波長(例えば、1.06μm又は1.3μm)又は2次高調波又は3次高調波又は4次高調波において動作するNdドープレーザー、Ti:サファイアレーザー、その他の希土類又は遷移金属イオンレーザー、アルゴンレーザー、色素レーザー、光パラメトリック発振器、光ポンピング垂直外部空洞面発光レーザー(Vertical External−Cavity Surface−Emitting Laser:VECSEL)源を含む光ポンピング半導体レーザーを含む半導体レーザー、及びファイバレーザーからなる群から選択されたポンプ源によって供給してもよい。ポンプ源は、Qスイッチングポンプ源であってもよい。ポンプ源は、モードロックポンプ源であってもよい。このポンプ源のグループは、当業者であれば理解するように、排他的ではなく、且つ、先程列挙されたものを代替するポンプ源を使用してもよい。
【0039】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のシステムは、同期ポンピングラマンレーザーシステムであってよい。
【0040】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のシステムにおいて、ポンプ源は、ポンプ共振器空洞を含むポンプレーザーを有してもよく、この場合に、ポンプ共振器空洞は、ラマンレーザーシステムの共振器空洞と結合されている。
【0041】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のシステムは、0.05〜40ピコ秒のパルス幅のパルスを有するパルス化出力ビームを供給してもよい。或いは、この代わりに、出力ビームは、1〜40ピコ秒のパルス幅、1〜20ピコ秒のパルス幅、1〜10ピコ秒のパルス幅、1〜5ピコ秒のパルス幅、50〜1000フェムト秒のパルス幅、又は50〜200フェムト秒のパルス幅のパルスを有してもよい。
【0042】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様の出力反射器は、ラマン変換周波数において部分的な透過性を有してもよい。出力反射器は、ラマン変換周波数において最大で約80%の透過性を有してもよい。或いは、この代わりに、出力反射器は、ラマン変換周波数において最大で約90%の透過性を有してもよい。ラマン変換周波数の約10%超が共振器空洞内において共振してもよい。いくつかの構成において、レーザーシステムは、高利得レーザーシステムであってもよい。レーザーシステムの利得は、3超、5超、又は10超であってもよい。レーザーシステムの利得は、約1〜10、約2〜10、約3〜10、約4〜10、又は約5〜10であってもよい。その他の構成において、レーザーシステムは、0.01(1%)〜1の利得を有する低利得レーザーシステムであってもよい。
【0043】
第1の態様のシステムは、共振器空洞内において共振している一つ又は複数のビームの周波数変換のために共振器空洞内に配置される非線形媒質を更に有してもよい。第2〜第4の態様のうちの何れかの態様のシステムは、一つ又は複数の共振器空洞内において共振している一つ又は複数のビームの周波数変換のために共振器空洞内に配置される非線形媒質を更に有してもよい。非線形媒質は、一つ又は複数の共振器空洞内において共振している選択された周波数の2次高調波生成又は3次高調波生成のために構成してもよい。非線形媒質は、一つ又は複数の共振器空洞内において共振している少なくとも二つの周波数の和周波数生成又は差周波数生成のために構成してもよい。
【0044】
第5の態様によれば、同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法が提供される。この方法は、複数の反射器を有する共振器空洞を提供することを含んでもよい。少なくとも一つの反射器は、共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合させてもよい。本方法は、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するために、固体ラマン活性媒質を共振器空洞内に配置することを更に含んでもよい。本方法は、共振器の光学長を調節するための共振器調節器を提供することを更に含んでもよい。本方法は、共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内においてポンプパルスと空間的且つ時間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、共振器調節器を調節して空洞の光学長を調節し、共振するラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度と整合させることを更に含んでもよい。少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0045】
第5の態様の一構成によれば、同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法が提供され、この方法は、複数の反射器を有する共振器空洞であって、少なくとも一つの反射器が、共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合されている共振器空洞を提供し、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するために、固体ラマン活性媒質を共振器空洞内に配置し、共振器の光学長を調節するための共振器調節器を提供し、共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内においてポンプパルスと空間的且つ時間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、共振器調節器を調節して空洞の光学長を調節し、共振するラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度と整合させること、を含む。
【0046】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0047】
調節器は、共振器空洞の選択された反射器に対して装着された平行移動装置であってもよい。空洞の光学長の調節は、選択された反射器を共振器空洞の光軸に沿って平行移動装置によって平行移動させ、これにより、共振器空洞の光学長を調節することを含んでもよい。平行移動装置は、空洞長の約+/−1cmに対応した共振器空洞内のラマン変換光の+/−33ピコ秒のラウンドトリップ時間に等しい長さだけ、共振器空洞の光学長を調節するように構成してもよい。又、第1〜第4の態様のうちの何れかの態様の共振器調節器は、マイクロメートルレベル(例えば、約1〜100μm)における又はこれ未満(例えば、500〜1000nm)における共振器空洞の長さの微細調節のために構成してもよい。
【0048】
第6の態様によれば、マルチ波長同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法が提供される。この方法は、複数の反射器を有する共振器空洞を提供することを含んでもよい。本方法は、パルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するために、固体ラマン活性媒質を共振器空洞内に配置することを更に含んでもよい。ポンプビームは、ポンプ繰り返し速度を有してもよい。本方法は、異なる波長の空洞内の共振光を空間的に分散させて二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを共振器空洞内に生成するために共振器空洞内に配置される分散素子を提供することを更に含んでもよい。本方法は、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射して二つ又は複数の結合共振器空洞を形成するように配置された二つ又は複数の調節可能な反射器を提供することを更に含んでもよい。本方法は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、それぞれの調節可能な反射器を調節し、その個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させることを更に含んでもよい。少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0049】
第6の態様の一構成によれば、マルチ波長同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法が提供され、この方法は、複数の反射器を有する共振器空洞を提供し、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するために、固体ラマン活性媒質を共振器空洞内に配置し、異なる波長の空洞内の共振光を空間的に分散させて二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを共振空洞内に生成するために共振器空洞内に配置される分散素子を提供し、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射して二つ又は複数の結合共振器空洞を形成するように配置される二つ又は複数の調節可能な反射器を提供し、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、それぞれの調節可能な反射器を調節し、その個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させること、を含む。
【0050】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0051】
調節可能な反射器は、それぞれ、自身に装着された平行移動装置を有してもよい。結合共振器空洞のそれぞれの光学長の調節は、個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光軸に沿って個々の調節可能な反射器のそれぞれを平行移動させ、これにより、要求に従って、それぞれの空間的に分離されたビームによって観察される共振器空洞の光学長を延長又は短縮させることを含んでもよい。
【0052】
第7の実施形態によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供する方法が提供される。この方法は、少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器を提供することを含んでもよい。少なくとも二つの結合共振器空洞は、異なる周波数の光を共振させるように適合させてもよい。複数の反射器のうちの少なくとも二つは、調節可能な反射器であってもよい。それぞれの調節可能な反射器を個々の結合共振器空洞と関連付けてもよい。本方法は、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を提供することを更に含んでもよい。ラマン活性媒質は、結合共振器空洞のそれぞれ内に配置してもよい。ラマン活性媒質は、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合させてもよい。本方法は、異なる周波数の光を空間的に分散させて少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために結合共振器空洞のそれぞれ内に配置される分散素子を提供することを更に含んでもよい。空間的に分離されたビームのそれぞれは、個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有してもよい。本方法は、結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、調節可能な反射器のそれぞれを独立的に調節して個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させることを更に有してもよい。少なくとも一つの反射器は、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームを入射させるように適合させてもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0053】
第7の態様の一構成によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供する方法が提供され、この方法は、異なる周波数の光を共振させるように適合された少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器であって、複数の反射器のうちの少なくとも二つが、調節可能な反射器であり、それぞれの調節可能な反射器が、個々の結合共振器空洞と関連付けられている複数の反射器を提供し、結合共振器空洞のそれぞれ内に配置され、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合されている固体ラマン活性媒質であって、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を提供し、異なる周波数の光を空間的に分散させて、それぞれが個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有する少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために結合共振器空洞のそれぞれ内に配置された分散素子を提供し、結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、調節可能な反射器のそれぞれを独立的に調節して個々の結合共振器空洞の光学波長を調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させること、を含む。
【0054】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0055】
第5〜第7の態様のうちの何れかの態様において、本方法は、一つ又は複数の周波数の光を一つ又は複数の共振器空洞内において周波数変換するために一つ又は複数の共振器空洞内に非線形材料を提供することを更に含んでもよい。非線形媒質は、一つ又は複数の共振器空洞内において共振する選択された周波数の2次高調波生成又は3次高調波生成のために構成してもよい。非線形媒質は、一つ又は複数の共振器空洞内において共振する少なくとも二つの周波数の和周波数生成又は差周波数生成のために構成してもよい。
【0056】
第8の態様によれば、同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、連続波モードロックポンプビームを入射させるように適合された第1共振器空洞を有してもよい。共振器空洞は、第1固体ラマン活性媒質内のポンプビームを第1変換周波数を有する第1ラマン変換ビームに変換するように更に適合させてもよい。共振器空洞は、第1共振器空洞から第1ラマンビームの一部を出力するように更に適合させてもよい。第1共振器空洞は、第1共振器空洞の光学長を調節して第1共振器空洞内のラマン変換ビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度に整合させるための第1調節器を有してもよい。
【0057】
第8の態様の第1の構成によれば、同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、連続波モードロックポンプビームを入射させ、第1固体ラマン活性媒質内のポンプビームを第1変換周波数を有する第1ラマン変換ビームに変換し、且つ、第1共振器空洞から第1ラマンビームの一部を出力するように適合された第1共振器空洞を有し、第1共振器空洞は、第1共振器空洞の光学長を調節して第1共振器空洞内のラマン変換ビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度に整合させるための第1調節器を有する。
【0058】
第8の態様の第2の構成によれば、第1の構成による同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、第1ラマン変換ビームを入射させ、第1ラマン変換ビームを第2固体ラマン活性媒質内において第2ラマン変換ビームに変換し、且つ、第2共振器空洞から第2ラマン変換ビームの一部を出力するように適合された第2共振器空洞を更に有し、第2共振器空洞は、第2共振器空洞の光学長を調節して第2共振器空洞内の第2ラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を第1ラマン変換ビームの繰り返し速度に整合させるための第2調節器を有する。
【0059】
第8の態様の第3の構成によれば、同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、複数の縦続接続された共振器空洞を有し、それぞれの縦続接続された共振器空洞は、前の共振器空洞から出力されたビームを入射させ、入力されたビームをそれぞれの縦続接続された空洞内の固体ラマン活性媒質内において変換し、且つ、ラマン変換ビームを出力するように適合されており、それぞれの縦続接続された共振器空洞は、対応する共振器空洞の光学長を調節し、その内部において共振しているラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を入力されたビームの繰り返し速度に整合させるための調節器を有する。
【0060】
第9の態様によれば、同期ポンピング連続波モードロックマルチ波長ラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、複数の結合共振器空洞を有してもよく、それぞれの結合共振器空洞は、その内部において異なる周波数を共振させるように適合されている。本システムは、ポンプビームによってポンピングされるように適合されると共に複数の結合共振器空洞のそれぞれ内に位置するように配置された固体ラマン活性媒質を更に有してもよい。本システムは、個々の共振器空洞と関連付けられた複数の調節器を更に有してもよく、このそれぞれは、個々の空洞の光学長を調節し、その内部において共振しているビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度に整合させるように適合されている。結合共振器空洞のうちの少なくとも一つは、その内部において共振するビームの一部を出力するように適合させてもよい。
【0061】
第9の態様の一構成によれば、同期ポンピング連続波モードロックマルチ波長ラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、複数の結合共振器空洞であって、それぞれの結合共振器空洞は、その内部において異なる周波数を共振させるように適合されている複数の結合共振器空洞と、ポンプビームによってポンピングされるように適合されると共に複数の結合共振器空洞のそれぞれ内に位置するように配置された固体ラマン活性媒質と、個々の共振器空洞と関連付けられた複数の調節器であって、このそれぞれは、個々の空洞の光学長を調節し、その内部において共振しているビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度に整合させるように適合されている複数の調節器と、を有し、結合共振器空洞のうちの少なくとも一つは、その内部において共振するビームの一部を出力するように適合されている。
【0062】
第1〜第9の態様のうちの何れかの態様のラマン活性媒質は、KGW(タングステン酸カリウムガドリニウム)、KYW(タングステン酸カリウムイットリウム)、Ba(NO3)2(硝酸バリウム)、LiIO3(ヨウ素酸リチウム)、MgO:LiNbO3(酸化マグネシウムドープニオブ酸リチウム)、BaWO4(タングステン酸バリウム)、PbWO4(タングステン酸鉛)、CaWO4(タングステン酸カルシウム)、その他の適切なタングステン酸塩又はモリブデン酸塩、ダイアモンド、シリコン、GdYVO4(バナジウム酸ガドリニウム)、YVO4(バナジウム酸イットリウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、及びラマン活性を有するその他の適切な結晶質又はガラス材料の群から選択してもよい。ラマン活性媒質は、ラマン活性光ファイバであってもよい。
【0063】
第1〜第7の態様のうちの何れかの態様の非線形媒質は、LBO、LTBO、BBO、KBO、KTP、RTA、RTP、KTA、ADP、LiIO3、KD*P、LiNbO3、及び周期分極したLiNbO3、又はこれらに代わる適切な非線形媒質の群から選択してもよい。
【0064】
第1〜第9の態様のうちの何れかの態様におけるポンプビームは、共振器を同期ポンピングするように適合させてもよく、且つ、基本ビームのその基本波長(例えば、1.06μm又は1.3μm)又は2次高調波又は3次高調波又は4次高調波において動作するNdドープレーザー、Ti:サファイアレーザー、その他の希土類又は遷移金属イオンレーザー、アルゴンレーザー、色素レーザー、光パラメトリック発振器、光ポンピング垂直外部空洞面発光レーザー(VECSEL)源を含む光ポンピング半導体レーザーを含む半導体レーザー、及びファイバレーザーの群から選択されたポンプ源によって供給してもよい。ポンプ源は、Qスイッチングポンプ源であってもよい。ポンプ源は、モードロックポンプ源であってもよい。ポンプ源のこのグループは、当業者には理解されるように、排他的ではなく、且つ、先程列挙されたものに代わるポンプ源を使用してもよい。
【0065】
以下、一例としてのみ、添付図面を参照し、ラマンレーザーシステムの構成について説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの概略構成である。
【図1B】本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの概略構成である。
【図1C】非共線的ポンピング構成を利用する本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの代替構成である。
【図1D】本明細書に開示されている一連の縦続接続された同期ポンピングラマンレーザーシステムから形成されたマルチ波長ラマンレーザーシステムである。
【図2】本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの例示用の構成である。
【図3A】図2の構成における空洞長離調の関数としての平均出力パワーのグラフである。
【図3B】図2の構成における空洞長離調の関数としての出力パルス持続時間のグラフであり、主曲線の上方の軌跡は、異なる長さにおける計測された自己相関関数を表している。
【図4A】本明細書に開示されている図2の構成のパルス持続時間及び出力パワーのグラフである。
【図4B】本明細書に開示されている図2の構成のパルス持続時間及び出力パワーのグラフである。
【図5】本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの更なる構成である。
【図6A】本明細書に開示されている図5の構成の更なる構成の出力パワー及びパルス持続時間のグラフを示す。
【図6B】本明細書に開示されている図5の構成の更なる構成の出力パワー及びパルス持続時間のグラフを示す。
【図7】ラマンレーザーの空洞長離調の三つの値においてラマンレーザーシステム内のラマン結晶の前及び後の両方における本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーの数値分析から得られたパルス形状の一連のグラフである。
【図8】本明細書に開示されているマルチ波長同期ポンピングラマンレーザーの構成である。
【図9】図8のマルチ波長ラマンレーザー構成における1次ストークス(塗りつぶされていない円)及び2次ストークス(塗りつぶされていない正方形)の生成のための最適化された共振器のスロープ効率のグラフを示す。
【図10】図8のラマンレーザーシステムの1次ストークス出力における空洞長離調に対するパルス持続時間及び出力パワーの依存性のグラフを示す。
【図11】図8のラマンレーザーシステムにおける2次ストークス空洞長の関数としての出力パワー及びパルス持続時間のグラフである。
【図12】本明細書に開示されているマルチ波長同期ポンピングラマンレーザーの更なる構成である。
【図13A】本明細書に開示されている結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステムの例示用の構成の概略構成である。
【図13B】本明細書に開示されている結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステムの例示用の構成の概略構成である。
【図13C】本明細書に開示されているマルチ波長同期ポンピング超高速ラマンレーザーシステムに対する図13A及び図13Bのシステムの可能な適合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
定義
以下の定義は、一般的な定義として提供されるものであり、したがって、本発明の範囲をこれらの用語のみに限定するものではなく、以下の説明を十分に理解できるように提案するものである。
【0068】
特記しない限り、本明細書に使用されているすべての技術的且つ科学的な用語は、一般的に当業者が理解しているものと同一の意味を有している。本発明においては、以下の用語は、以下のように定義される。
【0069】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書においては、その冠詞の一つ又は複数の(即ち、少なくとも一つの)文法的な目的語を意味するために使用されている。一例として、「an element(一つの要素)」は、一つの要素又は複数の要素を意味している。
【0070】
「約(about)」という用語は、本明細書においては、基準量に対して、最大で30%だけ、好ましくは、最大で20%だけ、且つ、更に好ましくは、最大で10%だけ変化する量を意味するために使用されている。
【0071】
本明細書の全体を通じて、文脈がその他の意味を必要としていない限り、「有する(comprise)」、「有する(comprises)」、及び「有する(comprising)」という用語は、記述対象のステップ又は要素或いはステップ又は要素の群の包含を意味しており、任意のその他のステップ又は要素或いはステップ又は要素の群の排除を意味するものではないものと理解されたい。
【0072】
本発明を実施又は試験する際には、本明細書に記述されているものに類似した又はそれらと等価な任意の方法及び材料を使用することもできるが、好適な方法及び材料について記述することとする。本明細書に記述されている方法、装置、及びシステムは、様々な方法により、且つ、様々な目的のために、実施してもよいことを理解されたい。本明細書における説明は、例示を目的としたものに過ぎない。
【0073】
詳細な説明
本明細書には、CWモードロックポンプレーザー源によって同期ポンピングされる結晶質ラマンレーザーシステムを使用してnJパルスエネルギー及びCWパルス列を必要としている用途に更に適した黄色−オレンジ色スペクトル領域の出力を生成するシステム、方法、及び装置が開示されている。
【0074】
本出願は、一般的に、固体同期ポンピングラマンレーザーを有するレーザーシステム及びこのレーザーシステムの動作方法について記述しており、この場合に、例えば、ポンプ源は、例えば、同調可能なTi:サファイアレーザー又はネオジムに基づいたレーザーなどの任意の適切なパルス化ポンプ源であってよい。その他の構成においては、ポンプ源は、後述する更に高次のストークスビームに対する縦続接続変換構成において本明細書に記述されている例示用のラマンレーザーシステムのうちの任意のものによるラマンレーザーシステムであってもよい。ラマンレーザーは、レーザーの効率的な周波数変換のために理想的な成熟しつつある技術である。誘導ラマンシフト(Stimulated Raman Shift:SRS)は、ポンプ波長をシフトさせて更に長い「ストークス」波長を生成する非線形のプロセスである。この周波数ダウンシフトは、選択された特定のラマン結晶によって左右される。ラマンレーザーシステムにおいては、システムのコンポーネント及び設計の適切な選択を通じて、波長シフトを更に高次のものに縦続接続し、これにより、「2次ストークス」や「3次ストークス」などを生成してもよい。通常、これらのストークス波長は、光学空洞内において共振することにより、更に効率的な変換、高ビーム品質、及び縦続接続プロセスに対する向上した制御機能を付与する。
【0075】
ラマンレーザーは、いくつかの主要な長所を有する。OPOとは異なり、これらのレーザーは、結晶の温度又は角度の影響を受けることがまったくない。この結果、これらを商品化することは、簡単であり、且つ、安定している。ラマン結晶は、時間に伴って劣化することがなく、実際に、最良のラマン物質のいくつかは、バナジウム酸イットリウム(YVO4)などの標準的な商用レーザー物質である。ラマンプロセスは、波長依存性を有しておらず、したがって、システムは、赤外、可視、或いは、場合によっては、紫外領域のポンプレーザーを使用してポンピングしてもよい。ストークスシフトは、例えば、KGW(タングステン酸カリウムガドリニウム)、KYW(タングステン酸カリウムイットリウム)、硝酸バリウム、ヨウ素酸リチウム、タングステン酸バリウム、タングステン酸鉛、タングステン酸カルシウム、その他のタングステン酸塩及びモリブデン酸塩、ダイアモンド、バナジウム酸ガドリニウム及びバナジウム酸イットリウム、及びラマン活性を有するその他の結晶質材料を含む十分に試験された一連のラマン結晶のうちから選択することにより、大きく又は小さくなるように選択することができる。
【0076】
又、単一のラマンレーザー内において、縦続接続されたストークス波長の任意のものの効率的な生成を高速で切り替えることができるように、レーザーシステムを設計することができる。標準的な周波数倍増(standard frequency doubling:SHG)及び和周波数生成(Sum−Frequnecy Generation:SFG)を使用してラマン波長を混合することにより、更に大きな柔軟性を実現することができる。例えば、1064nmにおいてポンピングされる縦続接続ラマンレーザーからの波長を混合することにより、到達することが困難な550〜700nmの領域全体に対するアクセスが、後述する単一のレーザーから得られる。この周波数混合は、ラマンレーザー内において効率的に実行することが可能であり、且つ、高速で切り替えることによって潜在的な出力波長のなかから選択することができる。
【0077】
その内容のすべてが相互参照によって本明細書に包含される本発明者による国際特許出願第PCT/AU2007/000433号に開示されているものなどの連続波レーザーと比べて、超高速ラマンレーザーは、複雑であり、且つ、設計上の考慮事項が非常に異なっている。このような超短パルス化システムにとっては、単純な共振器は有用ではなく、ポンプパルスが、共振空洞場が形成できないほどに短い。共振器がない場合には、シングルパスラマンレーザーは、低ビーム品質と縦続接続プロセスに対する不十分な制御機能という問題を抱えることになる。
【0078】
この問題を克服するために、本明細書に開示されているシステムは、同期ポンピング法を使用しており、この技法については、非常に大規模なQスイッチングモードロックポンプ源の状況において既に研究が行われており[例えば、Straka他、Opt. Comm. 178、175〜180(2000)、或いは、Chunaev他、Laser Phys. Lett. 5、589〜592(2008)を参照されたい]、この場合には、ラマン共振器のラウンドトリップ時間をポンプパルス間の時間に整合させている。この方式により、それぞれの連続したポンプパルスが共振器内においてストークスパルスを増幅する状態において、一つ又は複数のストークス場を空洞内において共振させてもよい。詳細に後述するように、これらのレーザーは、パルス持続時間が物質応答時間を下回るSRSの「過渡的状態」において動作しており、且つ、光場と、関与する物質と、の間の相互作用の力学を理解するためには、理論的なモデルが必要とされる。
【0079】
本明細書には、次のものを含む同期ポンピングcwモードロックラマンレーザーシステムの様々な構成が開示されている。
【0080】
・周波数倍増されたモードロックNd:YVO4レーザーによってポンピングされる559nmにおいて動作する単一波長同期ポンピングラマンレーザー:開示されている例示用のレーザー構成は、25.6%の全体(緑色−黄色)効率においてCWモードロック出力を生成した。空洞長が完全な同期状態よりもわずかに長い際に、10psのポンプパルスから3.2psの出力パルスへの圧縮が観察された。
【0081】
・マルチ空洞構成において縦続接続ラマンシフトを使用して二つの異なる波長を生成するマルチ波長同期ポンピングモードロックラマンレーザーシステム:開示されている例示用の構成は、559nmにおいて2.4Wを、そして、589nmにおいて1.4Wを生成し、スロープ効率は、1次ストークス波長及び2次ストークス波長の両方において最大で52%であった。生成されたパルスのピークパワーは、パルス短縮の結果として、ほとんどポンプパルスと同じ程度に大きかった。
【0082】
・マルチ空洞構成において縦続接続ラマンシフトを使用して三つ以上の異なる波長を生成するマルチ波長同期ポンピングモードロックラマンレーザーシステム
【0083】
・縦続接続ラマンシフトと非線形周波数変換法の一つ又は複数の組合せを使用して一つ又は複数の選択可能な出力波長を生成する選択可能なマルチ波長同期ポンピングモードロックラマンレーザーシステム用のシステム及び方法
【0084】
・連続同調可能ポンピングモードロックラマンレーザーシステム
【0085】
これらのレーザーシステムは、マルチ波長及び選択可能な波長の出力を伴う、且つ、可変パルス圧縮を伴うレーザーシステムのための、UVから赤外までの範囲の全体にアクセスすることができる一群の超高速ラマンレーザーシステムを提供するように設計可能であるという利点を有する。この一群のレーザーシステムは、限定を伴うことなしにバイオフォトニクス及び二光子顕微鏡法を含む様々な用途に対して広範な影響を有する。例えば、二光子顕微鏡法は、特に、厚い組織サンプル内における、且つ、生体サンプルに対する損傷の回避が必要とされる、細胞の3D撮像に使用される定評のあるツールである。二光子顕微鏡法の別の用途は、分子アンケージングと呼ばれるケージ化化合物の空間分解光放出(spatially−resolved photorelease)である。これは、例えば、神経障害及び薬物摂取の研究に有用な化学物質又は薬剤の非常に局所的な放出のための定量的な技法である。これらの用途においては、既存の超高速供給源のスペクトルカバレージのギャップが研究の可能性を制限している。最も関心を集めているのが、且つ、本明細書に開示されているレーザーシステムが特に適しているのが、黄色/赤色のスペクトル領域であるという点が重要である。
【0086】
その他の利点と、本明細書に開示されているレーザーシステムから利益を享受する用途と、には、次のものが含まれる。
【0087】
蛍光ラベルを導入する代わりに固有の発蛍光団(トリプトファン、NADH、及びFADなど)の使用が可能となる:固有の発蛍光団は、適合性を有するラベルの必要性を除去することにより、サンプルが変化する可能性を回避し、且つ、撮像プロセスを単純化する。従来の主要な障害は、必要とされる励起波長であり、トリプトファンは、280nm周辺のピーク単一光子励起波長を有しており、これは、黄色スペクトル領域内の二光子励起波長に対応している。ラマン方式は、必要な波長を提供する。
【0088】
分子アンケージングのためのマルチ光子閃光光分解:この強力な二光子に基づいたツールの定量細胞生理学における採用は、ケージング分子に整合したレーザー源の入手可能性により、制限されてきた。これらは、通常、330nm周辺において単一光子アンケージング応答を有しており、且つ、したがって、二光子アンケージング波長は、約660nmである。ラマン方式は、必要な波長を提供する。
【0089】
レシオメトリック顕微鏡法:同時に二つの励起波長を使用するレシオメトリック顕微鏡法を使用し、化学種の濃度を計測することができる。例えば、二つの異なる励起波長によってマーカーの蛍光の比率を計測することにより、Ca2+の細胞内活動、代謝の重要情報、及び生体系のシグナリングの追跡を実現することができる。この用途は、具体的には、デュアル波長出力を供給する能力を有するレーザーシステムから利益を享受することができる。ラマンレーザーは、必要な波長の両方を同時に生成することが可能であり、且つ、したがって、これらのタイプの計測には、理想的且つ簡単な供給源である。厚い組織のCa2+の監視の場合には、マルチ光子法が必要とされ、且つ、したがって、黄色/オレンジ色領域におけるデュアル波長出力を有する超短パルス化レーザー源が必要とされる。本明細書に開示されているデュアル波長ラマンレーザーは、この到達が困難な領域内の必要とされる両方の波長(約680nmと約720nm)を同時に生成する能力を有しており、且つ、適切な染料(例えば、FURA−2AM染料)を使用するレシトメトリックCa2+監視を実行する。
【0090】
バイオフォトニクス以外においても、波長の多様な超高速レーザーは、その他の産業分野の用途に結び付くことになる。例えば、ディスプレイにおいては、波長の多様な超高速レーザーは、スペックルの低減をもたらし、二光子顕微鏡法の別の用途は、光データストレージをターゲットとしたマイクロリソグラフィである。
【0091】
超高速ラマンレーザー
図1Aを参照すれば、超高速(ピコ秒/フェムト秒)ラマンレーザーシステム10の例示用の構成が概略的に示されている。ラマンレーザーシステム10は、複数の反射器によって規定された共振器空洞15を有する。図示の構成には、四つの反射器11、12、13、及び14が示されているが、三つの反射器のみを有する共振器空洞を実現してもよく、その場合には、その3反射器空洞は、単一の「長い」アームを有してもよく、且つ、「湾曲」した反射器のうちの一つ(即ち、図1Aの反射器11又は反射器12のうちの何れか)を再帰反射器としてアライメントされた状態にしてもよいことを理解されたい。当業者には理解されるように、更なる構成においては、四つを上回る数(5、6、又はこれを上回る数)の反射器を利用してもよい。本構成においては、少なくとも一つの反射器(例えば、反射器11)は、パルス化ポンプビーム17を共振器空洞15に入射させるために適合された入力反射器として構成されており、ポンプビームは、既知のポンプ繰り返し速度を有する。この構成においては、ポンプパルスの伝播方向17aは、共振器空洞15内に配置されたラマン活性媒質20内において共振器軸15aと共線状態になるように構成されている。後述する代替構成においては、非共線的ポンピング構成を使用してもよい。更には、少なくとも一つの反射器(例えば、反射器14)は、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応した周波数において共振器空洞15からパルス化出力ビーム21を出力するために適合された出力反射器として構成されている。出力反射器14は、共振器空洞15内の共振ビームの一部が空洞を出射して出力ビーム21を形成することができるように、ラマン変換周波数において少なくとも部分的な透過性を有する。その他の構成においては、この代わりに、異なる共振器反射器(例えば、反射器13)を出力反射器として構成してもよい。
【0092】
固体ラマン活性媒質(水晶)20は、ポンプビームのポンプパルス17によってポンピングされるように、共振器空洞15内に配置されると共に空洞15内において位置決めされている。ポンプビームは、外部ポンプ源(図示されてはいない)によって生成される。ラマン活性媒質20は、ラマン活性媒質20に入射するポンプパルス17を共振器空洞15内において共振するラマン変換周波数(1次ストークス周波数)を有する共振パルス16にラマン変換するために適合されている。
【0093】
レーザーシステム10は、空洞15の光学長を調節するように適合された共振器調節器18を更に有する。共振器調節器18は、選択された反射器(例えば、反射器14)を共振器の光軸15a(この場合には、この光軸は、共振器15の共振モードと一致するように規定されている)に沿って移動させて共振パルス16によって観察される共振器空洞15の光学長を調節するように、特定の構成において構成されている。動作の際には、共振器15の光学長の調節を実行し、それぞれの共振パルス16が空洞15のそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質20内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質20内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、空洞15内において共振しているパルス16のラウンドトリップ時間をポンプパルス17の繰り返し速度のものと整合させる。本構成においては、共振器調節器18は、反射器が共振器空洞15の軸に沿って平行移動することができるように共振器反射器(例えば、出力反射器14)を線形平行移動装置に対して装着することにより、実現されている。空洞を延長させるための正の離調であるか又は空洞を短縮させるための負な離調であってよい小さな距離Δxだけの共振器空洞15の長さのこの「離調」により、共振パルス16とポンプパルス17は、同期ポンピング構成における共振パルス16のそれぞれのラウンドトリップにおいて、ラマン結晶20内において一致した状態になることができる。この結果、共振パルス16は、ラマン結晶20を通過するのに伴って、一致した状態にあるポンプパルス17からラマン利得を得ることになる。
【0094】
後述するその他の構成においては、ラマン活性媒質は、ラマン結晶20に入射する空洞15内において共振している任意の共振光パルス(例えば、パルス16)を縦続接続ラマン変換において更に高次のストークス周波数にラマン変換してもよい。
【0095】
レーザーシステムのラマン活性媒質は、好適には、KGW、LiIO3、Ba(NO3)2、或いは、KDP(燐酸二水素カリウム)、KD*P(重水素化)、KTP、RTP、YVO4、GdVO4、BaWO4、PbWO4、ニオブ酸リチウム、酸化マグネシウムドープニオブ酸リチウム、ダイアモンド、シリコン、及び様々なタングステン酸塩(KYW、CaWO4)、及びモリブデン酸塩又はバナジウム酸塩、又はラマン活性を有するその他の適切な結晶質又はガラス材料などのその他の適切なラマン活性物質の単一結晶である。ラマン活性媒質は、ラマン活性光ファイバであってもよい。その他の適切なラマン活性結晶は、CRC Handbook of Laser、或いは、Pantell及びPuthoffによる文献「Quantum Electronics」に記述されている。ラマン活性材料であるダイアモンド、MgO:LiNbO3、KGW、LiIO3、及びBa(NO3)2、YVO4、及びGdVO4は、少なくとも次の理由から、好ましい。
【0096】
・ダイアモンドは、非常に大きな熱伝導性、大きなラマンシフト(1332cm-1)、及び大きなラマン利得を有する。
【0097】
・MgO:LiNbO3は、非常に短い位相緩和時間(<0.5ps)を有し、且つ、その結果、大きなパルス圧縮/パルス短縮を可能にすることができる。256cm-1及び628cm-1を含むいくつかのラマンシフトが可能である。
【0098】
・KGWは、大きな損傷閾値を有する二軸結晶であり、且つ、768及び901cm-1のラマンシフトを提供する能力を有する。
【0099】
・Ba(NO3)2は、低閾値動作をもたらす高利得係数(1064nmのポンピングによって11cm/GW)を有する等方性結晶であり、且つ、1048.6cm-1のラマンシフトを提供することができる。
【0100】
・LiIO3は、ポンプ伝播方向及び偏光ベクトルとの関係における結晶のカット及び向きに依存する複雑なラマンスペクトルを有する有極短軸結晶であり、且つ、745cm-1と848cm-1の間のラマンシフトを提供することができるが(これらは、例えば、眼科及び皮膚科を含む医療用途に有用な578nmなどの特定用途用の波長をターゲットとしている際に有用である)、Ba(NO3)2(約400MW/cm2)と比べて小さな損傷閾値(100W/cm2)を有する。KGWは、約10GWcm-2というはるかに大きな損傷閾値を有する。
【0101】
・YVO4、GdVO4は、良好な熱特性、大きなラマン利得係数、及び大きな損傷閾値を特徴とする短軸結晶である。
【0102】
・LiIO3、YVO4、及びGdVO4は、いずれも、良好なスロープ効率を有し(最大スロープ効率は、基本光子エネルギーに対するストークスの比率によって決定され、且つ、最小値は、出力結合に対する共振器空洞内の損失の比率及び当業者には理解されるその他の要因によって設定される)、三つのすべてについて、70〜80%の光−光変換効率が報告されている。
【0103】
レーザーシステムは、好ましくは、ラマン活性媒質の光学的損傷が回避されるように動作する。表1は、一連の例示用のラマン活性媒質のラマンシフトを示しており、且つ、表2は、いくつかの例示用のラマン活性媒質のラマンシフト及び対応するストークス波長を示している。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
マルチ波長超高速ラマンレーザー
図1Bに概略的に示されているように図1Aの構成を変更し、マルチ波長超高速ラマンレーザーシステム50を提供してもよい。例えば、出力反射器14を除去し、且つ、共振器空洞15を延長させて、例えば、一対のプリズムP1 51及びP2 52などの分散素子を包含することにより、システム10を変更してマルチ波長システム50を実現してもよい。分散素子は、異なる波長/周波数の共振器空洞内の共振光を空間的に分散させて複数の空間的に分離された共振ビーム53、共振ビーム54、及び共振ビーム55を生成する。システム50は、複数の調節可能な反射器53a、反射器54a、及び反射器55aを有し、これらのそれぞれは、空間的に分離されたビーム50a、ビーム50b、及びビーム50cの個々のものを共振させ、これにより、複数の異なるが結合された共振器空洞を提供するようにアライメントされている。このラマンシステムにおいては、異なる周波数の空間的に分離されたビーム53、ビーム54、及びビーム55は、ラマン活性媒質20内における縦続接続ラマン変換プロセスによって生成されるポンプビーム17の連続したストークス次数に対応している。調節可能な反射器をそれぞれが有する結合された空洞は、共振するストークス次数のそれぞれによって観察される空洞長を調節することができるように共振器調節器を反射器53a、反射器54a、反射器55aのそれぞれに設けることにより、それぞれの空洞長に対する独立した制御を可能にしている。又、空間的に分離されたビームのそれぞれに対するアクセスが容易になるように、図示のように、更なるスクレーパ反射器56及びスクレーパ反射器57も使用されている。調節可能な反射器53a、反射器54a、及び反射器55aのそれぞれは、個々の結合共振器内においてそれぞれが共振している異なる周波数のパルスが、それぞれ、それぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質20内において相互に且つ/又はポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致するように、その個々の空間的に分離された共振ビーム(それぞれ、53、54、及び55)によって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を、ポンプパルス17のポンプビーム繰り返し速度と、又は異なるが結合された共振器空洞内において共振している異なる周波数の一つ又は複数のビーム16a、ビーム16b、及び/又はビーム16cの繰り返し速度と、整合させるように適合されている。
【0107】
例示用のラマンレーザーシステム50は、共振光がレーザーシステムの1次ストークス次数、2次ストークス次数、及び3次ストークス次数に対応する三つの空間的に分離されたビームに分離され、且つ、それぞれが反射器53a、54a、及び55a上に入射する様子を示している。システムを動作させることが望ましい必要とされる波長に応じて、更に少ない数の又は更に多い数の反射器を使用してもよいことを理解されたい。例えば、レーザーは、2次ストークス光の出力のみが必要とされる場合があり、この場合には、反射器55及びスクレーパ反射器56を除去してもよい。個々の空洞は、必要に応じて、縦続接続を変更するために遮断することもできる。
【0108】
本明細書の例に記述されている準備作業において、非常に効率的な動作(50%を上回るスロープ効率)を実現することができることと、ポンプパルスよりも短い持続時間(10psのポンプレーザーにおいて、短い場合には3ps[4])を有するストークス出力パルスを生成することができることが判明した。以下、最大で三つのストークス波長を生成する縦続接続されたラマンシステムについて説明する。
【0109】
本明細書に開示されているラマンレーザーシステムは、システムから入手可能な出力波長の設計における大きな柔軟性を提供することを理解されたい。この波長の柔軟性に関する能力は、1)ポンプレーザー波長の選択肢と、2)ラマン結晶の選択肢と、3)共振器の設計と、4)空洞内周波数混合と、に起因している。これらのシステムにおいては、ポンプ源が非常に重要な選択肢であり、その理由は、ストークス次数のそれぞれがラマン結晶内において生成される元となる初期ポンプ波長が、ポンプ源により、即ち、選択された特定のラマン媒質のラマンシフト特性によるラマン結晶内におけるSRSによる周波数変換により、設定されるためである。
【0110】
この説明対象のレーザーシステムは、従来の超短パルスレーザーから入手可能な波長の範囲を根本的に拡張する能力を有しており、且つ、縦続接続された共振器からの同時マルチ波長出力を可能にする。これは、縦続接続共振器設計を使用し、要求に従って、単一出力ビームにおいて(図1Bの反射器13を通じて)、或いは、別個の複数のビームにおいて(図1Bの反射器53a、54a、及び55aの一つ又は複数のものを通じて)、いくつかの波長を同時に出力することができるレーザーを実証することにより、実現されている。これらの反射器の反射率を調節することにより、共振波長間のエネルギー分布を制御してもよい。又、ラマン結晶20を適切に選択することにより、出力波長の様々な組が可能となり、例えば、YVO4又はKGd(WO4)2は、532nmのポンプ源によってポンピングされた際に、559nm、588nm、及び608nm周辺の出力を供給することになり、ダイアモンドは、同一の532nmのポンプ源を使用してポンピングされた際に、573nm、620nm、及び675nm周辺の波長を供給することになる。レーザーシステムを紫外(UV)又は赤外(IR)のポンプ源によってポンピングすることにより、例えば、373nm、392nm、及び414nm(即ち、355nmのポンプビームによってポンピングされた際に)又は(1064nmのポンプビームによってポンピングされた際に)1177nm、1316nm、及び1495nmにおける同時出力が得られることになる。ラマン結晶の選択肢は、時間的特性に対して影響を及ぼすことになり、且つ、これらの影響については、パルス圧縮の検討と共に、本明細書において説明する。
【0111】
この開示対象のラマンレーザーシステムは、例えば、Ti:サファイアレーザーなどの同調可能なポンプ源を使用してラマンレーザーシステムを同期ポンピングした際に、同調可能な超高速ラマンレーザーを提供する能力をも有しており、且つ、例えば、それぞれ、867〜1147nm又は937−1272nmの同調可能なストークス又は2次ストークス出力を、それぞれ、約20%〜30%の全体効率において得ることができるものと期待される。又、Ti:サファイアレーザーの2次高調波によってポンピングして417〜543nm、433〜573nm、470〜639nmなどの同調範囲を得ることにより、可視領域における入手可能なポンプパワーの約10%〜約30%という期待効率によってこの概念を可視スペクトル領域にまで拡張することも可能であり、或いは、この代わりに、例えば、現在入手可能なポンプ源を使用して入手可能な赤外ポンプパワーレベルの約10%〜15%という効率を得ることもできる。
【0112】
これらの同調可能な構成においては、例えば、図1Cに示されているように、非共線的ポンピングを使用し、即ち、ダイクロイック入力反射器に対するニーズを回避することにより、ポンプビームの完全同調を許容してもよい。現在入手可能なポンプ源を使用することにより、少なくとも約100fsのパルスを得ることができるものと想定されるが、これらのパルス長においては、SRSプロセスは、極めて過渡的なものになり、且つ、この状況(BaNO3などの高速物質が最良に動作する可能性が高い)におけるレーザーシステムの最適化は、最大出力と、可能な最短の出力パルスを得る方法とのうちの何れか又は両方について、簡単ではなくなる可能性が高い。実際に、特に、高Q(即ち、共振器反射器上における高反射率)及び低閾値構成のレーザーシステムにおいては、ラマン結晶の群速度分散(Group Velocity Dispersion:GVD)を妨げるために分散補償が必要となろう。図1Cとの関係において前述した非共線的ポンピング構成においては、ポンプビームは、共振器空洞内において共振するパルスとラマン活性媒質内において実質的にオーバーラップしてはいるが、ポンプビームは、ラマン活性媒質を通過する共振ビームとの正確な共線状態にはない。
【0113】
又、この開示対象のラマンレーザーシステムは、波長の選択肢を増大させると共に波長を選択可能とするための空洞内周波数混合にも容易に適合可能であり、その理由は、共振器空洞内の大きな空洞内場に起因し、空洞内和周波数混合によって極めて効率的な周波数の上方変換が可能であるためである。
【0114】
したがって、図1Bの挿入図60に概略的に示されている更なる構成においては、例えば、反射器13を湾曲した反射器61によって置換すると共にこちらも湾曲した反射器であってよい更なる反射器62を追加することにより、図1A及び図1Bのシステムに対して空洞内非線形変換の機能が追加された超高速ラマンレーザーシステムを実現してもよく、この場合に、二つの新しい反射器の追加によって形成された共振器の光軸の角度は、共振器モードにおける非点収差を極小化するために小さい。反射器61及び62の組合せは、反射器61及び62の中間の共振器空洞内に追加のビームウエストを提供するように選択される(或いは、この代わりに、反射器62は、平らな反射器であってもよく、この場合には、新しいビームウエストは、反射器62に位置することになる)。非線形変換を実現するために、少なくとも一つの非線形媒質65が、共振器空洞内において、反射器61及び62によって形成された新しいビームウエストに配置される。非線形媒質65は、固体媒質であってよく、且つ、当業者には理解されるように、空洞15内において共振している選択された波長の高調波変換(例えば、2次高調波生成)を提供するか、或いは、二つ以上の共振波長の間における和又は差周波数混合を提供するために、選択してもよい。更なる構成(図示されはいない)は、反射器13と反射器12の中間にビームウエストを提供するように、且つ、先程と同様に、この新しいビームウエストに非線形媒質65を配置するように、単純に反射器13を選択するというものとなろう。更には、更なる構成においては、空洞は、複数の非線形媒質のために構成してもよい。例えば、反射器61及び62の間と、更には、反射器61及び12の中間と、の両方のアーム内にビームウエストを提供するように、且つ、新しいビームウエストのそれぞれに非線形媒質を配置するように、反射器61を選択してもよい。当業者には理解される更なる類似の構成も本構成に包含されるものと想定される。
【0115】
更には、非線形媒質65の角度を制御することにより、ラマン縦続接続を制御することが可能であり、且つ、出力波長を高速で切り替えることができる。この方式の場合に追加される複雑性には、群速度のウォークオフと、縦続接続されたストークスパルスが必ずしも完全には時間的にオーバーラップしていないという事実と、が含まれ、この場合に、別個の共振器長を制御する能力(即ち、反射器53a、54a、及び55aを使用することによるもの)が極めて有用である。前述のように共振器空洞に配置されたLBO(可視生成用)又はBBO(UV生成用)などの標準的な物質を使用することにより、効率的なシステムを実現することが可能であり、この場合に、ユーザーは、赤外ラマンレーザーからのいくつかの可視波長(例えば、KGWを使用した場合の559nm、588nm、608nm、或いは、ダイアモンドを使用した場合の約572nm、620nm、及び675nm)のなかから選択することができる。同時出力(出力エネルギーがレーザー波長間において共有される)と選択可能な出力(LBO/BBO結晶を構成することによって出力エネルギーが一つの選択可能な波長に注入される)の相違点に留意されたい。又、この方式は、532nmにおいてポンピングされるラマンレーザーからの選択可能なUV波長に対しても適用可能であり、この場合に、選択可能な波長は、例えば、373nm、392nm、及び414nmであってよいであろう。
【0116】
この代わりに、同期ポンピングラマンレーザーシステム10及び50の更なる構成は、図1Cに示されている非共線的ポンピング構成70を利用してもよい。このような非共線的ポンピング構成においては、ポンプビームは、ラマン活性媒質内において共振ビームとの共線状態にはない。ポンプビームパルス17は、共振空洞15内において共振しているパルス16とラマン活性媒質20内において実質的にオーバーラップしてはいるが、ポンプビームの伝播方向71は、ラマン活性媒質を通じて共振器空洞15の光軸15aとの正確な共線状態にはなく、むしろ、光軸との間に角度72を有する。以前のものと同様に、共振器空洞15の光学長は、空洞15内において共振しているパルス16のラウンドトリップ時間がポンプパルス17の繰り返し速度に対して整合され、この結果、それぞれの共振パルス16がそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質20内においてポンプパルス17と時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルス16をラマン増幅するように、調節される。
【0117】
図1Cに示されている非共線的ポンピング構成の利点は、反射器のうちの何れかを通じてではなく共振器反射器を通過するようにポンプパルスを構成することができるという点にある。例えば、図1Cに示されているように、ポンプパルス17は、共振器反射器11aの近傍を通過している。したがって、ポンプパルス17の高透過性と、共振パルスの高反射率と、のために構成することを要する入力反射器に対するニーズが存在していないことから、共振器反射器の要件(特に、この例においては、反射器11aのもの)を緩和してもよい。図1Cに示されている非共線的ポンピング構成は、要求に従って、本明細書に開示されているレーザーシステムのそれぞれにおいて利用してもよいことを理解されたい。
【0118】
図1Dに示されているように、マルチ波長ラマンレーザーシステムの更なる例示用の構成90においては、一連の縦続接続されたラマンレーザーシステムからラマンレーザーシステムを形成してもよい。この例示用の構成90においては、連続した縦続接続された段92、94、及び96のそれぞれは、例えば、(図1Aの)レーザーシステム10のものに類似したラマンレーザーシステムであってよいが、必要に応じて、それぞれの段の望ましい出力波長に応じて、本明細書に開示されているその他の構成又は均等物により、これらの段のそれぞれを代替してもよい。第1段のポンプ源は、例えば、Ti:サファイアレーザー又はネオジムに基づいたレーザーなどの外部ポンプ源であってよいが、それぞれの後続段のポンプ源は、前の段から出力されたラマン変換ビームである。この縦続接続システム90においては、波長λPUMP91を有するポンプビームが、第1段92に入力され、且つ、これが、第1段92から出力される波長λRC1を有する第1ラマン変換ビーム93にラマン変換される。第2段94は、第1ラマン変換ビーム93を受け取り、且つ、このビームを第2段94から出力される波長λRC2を有する第2ラマン変換ビーム95にラマン変換する。同様に、第3段96は、第2ラマン変換ビーム95を受け取り、このビームを第2段94から出力される波長λRC3を有する第3ラマン変換ビーム97に変換し、以下同様に継続する。それぞれの段において、ラマン活性媒質は、入力ビームのそれぞれが同一のラマンシフトだけシフトされるように、それぞれのその他の段のものと同一であってよい。この場合に、波長λRC1、λRC2、及びλRC3を有するビームのそれぞれは、ポンプビームλPUMPの1次ストークスラマン変換波長、2次ストークスラマン変換波長、及び3次ストークスラマン変換波長を有することになる。或いは、この代わりに、それぞれの段におけるラマン活性媒質は、それぞれの段において異なるラマン周波数シフトを実現するために、異なるラマン活性媒質であってもよい。当然のことながら、それぞれの段92、94、及び96などの反射器は、個々の入力ビームを入力すると共に個々のラマン変換ビームを出力するように構成されていることを理解されたい。例えば、段94の入力反射器(図示されてはいない)は、波長λRC1を有する第1ラマン変換ビームを入力するように適合されており、段94の共振器反射器(図示されてはいない)は、波長λRC1有する第2ラマン変換ビームの波長を有する光を共振させるように適合されており、且つ、段94の出力カプラ(図示されてはいない)は、波長λRC1を有する共振ビームの一部を出力するように適合されており、且つ、これは、それぞれの後続の段についても同様である。
【0119】
ラマンレーザーパルス圧縮
超高速ラマンレーザーの力学は、二つの主要な効果に起因して複雑であり、即ち、第1に、SRSは、非瞬間的であって、当然、ストークスパルスのトレーリングエッジにおける相対的に大きな利得をもたらし、第2に、群速度は、ラマン結晶を通じて伝播するのに伴って、パルス及びそれぞれのストークス波長について異なる。これらの効果に起因し、ラマンレーザー空洞の長さは、ストークスパルスの効率及びパルス形状に対して強力な影響を及ぼすことになる。実際に、いくつかの状況においては、効率的な動作を維持しつつ、大きなパルス短縮が観察された。類似の圧縮が同期OPOにおいても観察されたが、この場合には、ピコ秒の状況におけるSRSの非瞬間的特性の重要性に伴う更なる複雑性が存在している。
【0120】
本明細書には、異なるラマン物質を使用して相対的に高度なパルス圧縮を実現するという効果に関する研究結果が開示されており、究極の目標は、ピコ秒パルスをフェムト秒の領域に圧縮することにある。ラマン媒質の位相緩和時間は、BaWO4の場合の〜10psからLiNbO3の場合の200fsまで、物質間において桁を跨って変化する重要なパラメータであることが判明している。又、群速度分散及び縦続接続も、パルス圧縮に対して影響を及ぼす。以下の例に記述されている準備作業は、空洞長の微細調節により、選択可能且つ/又は変化可能なパルス持続時間を有する超高速レーザーシステムを得ることができることを示している。
【0121】
更には、光アイソレータを使用して単方向動作を強制することにより、パルス圧縮を強化するために逆伝播リングレーザー設計を利用してもよく、ラマンプロセスは、後退及び前進方向において類似の利得を有しており、且つ、シミュレーションの初期の結果は、この方法によって極端なパルス圧縮が実現されるであろうことを示している。
【0122】
又、本明細書には、有限差分モデル、場の振幅のモデル化、完全に一般的な過渡誘導ラマン散乱等式を使用し、且つ、群速度ウォークオフを含むレーザーシステムの数値モデルも開示されている。このモデル化は、以下の例において観察されるように、基礎をなす物理的過程に対する知見を提供し、実験を最適な状況に導くと共に、実験における観察結果との優れた一致を提供している。
【0123】
繰り返し速度の増大
本明細書に記述されているラマンレーザーシステムは、出力パルスに対する要件に応じて、更なる構成において変更してもよい。例えば、ポンプ繰り返し速度のものを下回るラウンドトリップ時間を実現するための相対的に短いラマン共振器空洞を有することにより、ラマンレーザーは、ポンプ源よりも大きな繰り返し速度において出力を生成してもよい。例えば、ラマン共振器空洞が、ポンプ繰り返し速度の長さの半分のラウンドトリップ時間を提供するための光学長を有するように構成されている場合には、ラマンレーザーは、ポンプ源の繰り返し速度の2倍で動作することになる。或いは、この代わりに、ポンプ繰り返し速度の3分の2のラウンドトリップ時間を有するラマン共振器空洞の場合には、ラマンレーザーは、ポンプの繰り返し速度の3倍で動作することになる。4分の3の長さの場合には、ラマンレーザーは、繰り返し速度の4倍で動作することになり、以下同様である。ポンプ繰り返し速度のその他の合理的な端数も、ラマンレーザーシステムの動作における繰り返し速度の改善をもたらす。このような繰り返し速度の増大は、繰り返し速度が大きいほど高速且つ微細な空間的走査が実現される走査顕微鏡法などの用途に有用であろう。例えば、80MHzポンプレーザーと、4分の3の長さを有するラマン空洞と、を使用することにより、ラマンレーザーシステムは、320MHzの繰り返し速度において動作することになり、且つ、したがって、走査顕微鏡は、各地点を4倍の速度においてサンプリングすることが可能であり、即ち、4分の1の時間でエリアをサンプリングするか、或いは、x及びy方向における2倍の分解能においてサンプリングする。
【0124】
例
例1:超高速同期ポンピングラマンレーザーシステム
この例においては、単一波長同期ポンピングラマンレーザーシステム100が図2に概略的に開示されており、ここで、HWP107は、532nmにおける半波長板であり、PBSは、偏光ビームスプリッタ108であり、且つ、Δxは、共振器空洞120の軸に沿って出力反射器M4 104を平行移動させることによる可能な空洞離調を表している。又、モード整合を考慮して、即ち、結晶110内のポンプビームのビームサイズをラマン結晶110の位置における空洞モードのサイズと整合させるように、ラマン結晶110内におけるポンプビーム116のビーム直径を調節するために、モード整合テレスコープシステム118も利用されている。
【0125】
この説明対象の例においては、図2のレーザーシステム100は、誘導ラマン散乱(SRS)利得媒質として500mm長のKGWラマン結晶110を有する。ラマン結晶110は、532nmにおいて反射防止(AntiReflection:AR)被覆されている。結晶110は、モードロックNd:YVO4ポンプレーザー115からのポンプビーム116がKGWラマン結晶110のNp軸に沿って伝播するように、方向付けされている。反射器M1 101、M2 102、M3 103、及びM4 104を有する4反射器Z字形折り畳み(z−fold)空洞を利用している。この構成においては、反射器M1 101は、20cmの曲率半径(Radius Of Curvature:ROC)を有するダイクロイック入力反射器となるように選択されており、M2 102は、20cmのROCを有すると共に共振器空洞120内のラマンシフト共振光130の波長(532nmの波長を有するポンプビームを使用した場合に559nm)において高度な反射性を有する湾曲した反射器となるように選択されており、M3 103は、共振波長において平坦な(平らな)高反射器となるように選択されており、且つ、M4 104は、共振ラマンシフト光130の波長において約5%の透過率を有する出力反射器(出力カプラ)となるように選択されている。
【0126】
反射器M1 101及びM2 102は、約23cmだけ離隔させた。この反射器の離隔は、KGWラマン結晶110の中心に約33μmの半径の共振器モードウエストを形成し、これは、ラマン結晶110内におけるポンプビーム116のビームウエストに整合していた。この構成において、最小レーザー発振閾値を実現するために空洞120を最適化した。Z字形折り畳み空洞120の角度は、空洞モードの非点収差を可能な限り極小化するために(当然のことながら、当業者には理解されるように、角度が小さいほど、共振器内のこの非点収差は低減されることになる)、可能な限り小さく設定した(この例においては、約4度であった)。反射器M1 101は、ラマン結晶110の効率的なポンピングと、ラマン波長559nmにおける高反射率と、を許容するために、532nmにおいて約90%の透過率を有するダイクロイック反射器となるように選択した。このレーザーシステム100は、(KGWラマン結晶110の特性ラマンシフトに起因して、532nmのポンプビームから)、出力ストークス光131が、この構成においては559nmの第1ストークス波長において約5%の透過率を有する出力反射器M4 104を通じて、共振器120から出力されるように設計されているが、共振器320のその他の反射器101、102、及び103を通じたラマンシフトされた第1ストークス光130の多少の漏洩も存在していた。したがって、この例において報告される出力パワーは、第1ストークス波長を有する様々な反射器M1〜M4を通じて出射されたパワーの合計である。理想に近い性能を有する反射器を(例えば、イオン−ビーム−スパッタリング被覆技術を使用して)製造することが可能であり、且つ、したがって、報告される第1ストークス波長を有する合計出力パワーは、最適化された構成においては、単一ビーム131内において容易に実現可能であることが容易に理解されよう。
【0127】
この例においては、ポンプ源115は、周波数倍増されたCWモードロックNd:YVC4レーザー(Spectra−Physics社のVanguard 2000−HM532)であった。M1 101を通じて、二つのモード整合レンズ118(f1=20cm、f2=15cm)により、2Wのポンピング放射を空洞モードサイズに整合された状態においてKGWラマン結晶110内に直接的に合焦した。ポンプパルスの持続時間は、10psであり、繰り返し速度は、80MHzであった。ポンプビーム116は、偏光され、且つ、ラマン結晶110は、この偏光光がKGWラマン結晶110のNm軸とアライメントし、これにより、532nmのポンプ光116から559nmの第1ストークス光130(共振器120内において共振しているもの)及び131(共振器120から出力されるもの)への変換に対応したKGW結晶内における901cm-1のラマンシフトに対して整合するように、構成されていた。
【0128】
図3A及び図3Bにおいて観察されるように、レーザーシステム100の平均出力パワー及び時間自己相関関数を空洞長の離調Δxの関数として計測した。空洞長離調Δxは、本明細書においては、Δx=0がポンプパルスと共振ラマンシフト光130の完全な同期状態に対応し、これにより、ポンプパルスと共振ラマンシフト光130が共振パルスのそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン結晶110内においてオーバーラップするようにレーザー動作のための最小閾値に対応した空洞長からの共振器120の長さの差として規定されている。Δxが正の値である場合には、空洞120内の共振ストークスパルス130は、それぞれのラウンドトリップにおいてポンプパルス116からわずかに遅れており、Δxが負である際には、共振ストークスパルス130は、ポンプパルス116よりも先行している。この離調Δxは、共振器空洞120の光軸に沿った高精度な平行移動段(図示されてはない)によってM4 104の位置を変更することによって実行された。
【0129】
空洞長に対する出力パワーの依存性が図3Aに示されており、且つ、観察することができるように、最大出力パワー135は、Δx=−60μmの空洞離調において観察された。出力パワーは、Δx>−60μmにおいては、急速に低下しており、且つ、Δx<−60μmにおいては、ゆっくりと減少した。ラマンシフトされた出力ビーム131の(DataRay Inc.社のBeam Scope P8を使用して)計測されたビーム品質は、M2<1.05というMの二乗値を有することが観察され、これは、M2=1.2というビーム品質を有するポンプビーム116のものよりもわずかに良好であった。
【0130】
図3Bは、市販の非共線的2次高調波自己相関器(Femtochrome Research Inc.社のFR−103XL)を使用して空洞離調の関数として計測された出力パルス持続時間を示している。主曲線の上方のトレース141、143、及び145は、異なる空洞長において計測された自己相関関数を表している。最大出力パワーの条件下において、ストークスパルス持続時間は、10psというポンプパルス持続時間と比べて、約8.5psであった。しかしながら、更に大きなΔxの場合には、出力パルスの大幅な短縮が観察され、空洞長が+8μmに離調され、且つ、ポンプが1.6Wの最大パワーに設定された際に、3.2psという最小パルス持続時間が観察された。プロットのこの部分の拡大図が、図3Bの挿入図150に示されている。自己相関トレースからのパルス持続時間Δτの判定においては、すべてのΔxについてガウス曲線状のパルス形状を仮定した。但し、空洞の離調に伴って、トレースの形状の変化が観察された。Δx<−50μm又はΔx>10μmの空洞の場合には、自己相関は、ガウス曲線に近接していた。最短パルスの場合には、自己相関は、更に強力なピークを有し、双曲正割−二乗(sech−squared)又は片側指数(single−sided−exponential)パルス形状と一致していた。これらのフィッティングを使用することにより、3ps未満の最小値にまで低下する図3Aに示されているものよりも短いパルス持続時間が得られることになろう。最大圧縮の位置から離れることにより、自己相関は、成長するペデスタルを示し、これが、約−45μmの空洞長離調における計測パルス持続時間の不連続性の原因である。
【0131】
図4は、レーザーシステム100のポンプパワーに対するパルス持続時間の依存性を示している。ポンプパワーのそれぞれの値における平均パルス持続時間のそれぞれの計測値161ごとに、最適なパルス圧縮において空洞長を調節した。低いポンプパワーの場合には、最良の圧縮は、Δx=0に近接した離調によって実現された。パワーの増大に伴って、パルス持続時間は、3.5ps未満に急速に減少したが、ポンプパワーが1.4Wから1.6Wに増大するのに伴って、更なる短縮をほとんど示さなかった。
【0132】
図4Bは、(i)最大出力パワーにおいて離調された空洞(塗りつぶされた正方形163)と、(ii)最短パルス持続時間において離調された空洞(塗りつぶされていない円165)と、という二つの異なる状況における平均出力パワーのグラフを示している。第1の状況において動作している際には、最大CW出力パワーは、1.6Wの入射パワーにおいて410mWであり、25.6%という最大緑色−黄色光変換効率に到達した。この場合のスロープ効率は、42%であった。第2の状況である最小パルス持続時間における動作の場合には、最大計測出力パワーは、290mWであり、これは、18%の光変換効率であった。但し、この第2の状況におけるスロープ効率は、ポンプパワーが>0.9Wである際に、大幅な降下を示した。このスロープの変化は、後述するように、発振器内におけるパルス圧縮の効果に起因している。計測された最低レーザー発振閾値は、(定義によって)Δx=0におけるものであり、この場合に、ポンプパワーは、360mWであった。2次ストークス次数又は更に高次のストークス次数へのラマン変換の縦続接続は、観察されなかったが、恐らく、これは、2次Stoke波長における大きな98%というラウンドトリップ空洞損失によるものであろう。
【0133】
検討
この例に提示されている結果の主要な特徴は、パルス短縮のために必要とされる非常に繊細な条件であり、空洞離調は、約3mmという10psポンプパルスの空間的な広がりと比べて、わずかに〜80μmの範囲であった。この繊細さは、通常は20〜40の別個のpsパルス列を生成するQスイッチモードロックレーザーによって同期ポンピングされる結晶質及びガスピコ秒ラマン発振器を使用する別のグループによって報告されているシステムの動作とは、非常に異なっている。それらの実験においては、ストークス場は、わずかに数十回のラウンドトリップにおいてノイズから生成されている。これは、それぞれのパスにおけるストークスパルスの強力な整形を伴うラウンドトリップ当たりに数百パーセントの利得を必要としており、その結果、許容される空洞離調に対する限度が格段に緩和されることになる。これらのシステムは、ラマン媒質内において生成される高利得に依存していることから、効果的な圧縮のために格段に大きなピークパワーが必要とされ、且つ、したがって、最大で1mJというエネルギーを有するピコ秒パルスが使用されている。
【0134】
連続したモードロックパルス列の場合には、この例と同様に、ラウンドトリップ利得は、出力結合と同一のレベルであった。この状況は、同期ポンピング光パラメトリック発振器(OPO)に関する以前の研究におけるものと非常に近接しており[例えば、Rauscher他、Opt. Lett. 20、2003〜2005(1995)を参照されたい]、且つ、このラマンレーザーシステムとRauscher他のOPOの間には、動作特性における多数の類似性が観察される。例えば、パルス圧縮は、わずかに正の離調において非常に小さな領域内において発生しており、且つ、より長い空洞及びより短い空洞の場合には、圧縮は、格段に小さく、負の離調に対応するサイズにおいて相対的に長いプラトーを有する。同期ポンピングOPOにおけるパルスの圧縮は、ポンプと生成されたパルスの間の群速度の不整合によって生成され、20を上回る圧縮比が得られる。このようなOPOを伴う従来の実験においては、相対的に大きな群速度に起因し、アイドラがポンプパルスを追い越すものと考えられた。したがって、アイドラが追い抜くのに伴って、アイドラのリーディングエッジは、増幅され、且つ、ポンプパルスを使い果たし、且つ、アイドラパルスのトレーリングエッジは、ポンプパルスの既に使い果たされた部分と相互作用するために、小さな利得を経験することになる。このアイドラパルスのリーディングエッジの選択的な増幅がパルス圧縮をもたらしている。
【0135】
本ラマンレーザーシステム100の圧縮特性も類似しており、群速度の不整合がパルス圧縮を駆動している可能性が高い。KGWラマン結晶110用のSellmeier等式[例えば、Pujol他のAppl. Phys. B68、187〜197(1999)に公開されている]を使用することにより、83fs/mmという群遅延の不整合が算出され、これは、Rauscher他の場合のOPO内のポンプとアイドラの間のパス当たりに1.6psという不整合と比べて、空洞ウエストの25mmという共焦点長において、ストークスパルスがそれぞれのパスにおいて2.1psだけポンプパルスを追い越すという結果をもたらす。これは、圧縮を許容するために10psのポンプパルスの十分に大きな割合を占めているが、3.2psの圧縮されたパルスは、10psのポンプパルスの全体と相互作用しないため、効率を犠牲にしている。KGWにおける大きな群遅延分散(559nmにおいて458fs2/mm)は、ポンプ及びストークス波長の間における相対的に小さな差にも拘らず、Rauscher他において算出されたものと類似した群遅延の不整合を結果的にもたらすことに留意されたい。
【0136】
この説明対象のラマンレーザーシステム100とOPOの主要な相違点は、瞬間的なχ(2)相互作用が非瞬間的なχ(3)ラマン相互作用によって置換されているという点にある。誘導ラマン散乱(SRS)相互作用においては、位相緩和時間T2にわたって振動モードのコヒーレントな発振の増強が存在し、この位相緩和時間は、この例のラマンレーザーシステム100のKGW内における901cm-1モードの場合には、1.96psに等しい。T2以下に匹敵する持続時間を有するストークスパルスの場合には(所謂、過渡的SRS)、この増強は、ストークスパルスのトレーリングエッジにおけるポンプの散乱の改善をもたらす。したがって、この結果、OPOの場合と比べて、パルスの尾部の増幅が改善され、これが、ストークスパルス持続時間がT2に接近した際にこの例において観察される圧縮の有効性の制限をもたらす要因である可能性が高い。又、過渡的SRSの影響は、恐らくは、システム100が負の方向においてはるかに大きな空洞長離調を許容することができるという事実の原因であり、この場合には、ストークスパルスがポンプパルスよりも先行しており、したがって、この結果、ストークスパルスの尾部における最大散乱強度がポンプパルスのピークと良好にアライメントされることになる。
【0137】
この例における結論として、CW同期ポンピングモードロックラマン発振器の動作によって黄色の強力な短パルス放射を生成する簡単且つ効率的な方法が実証されている。システム100のこの説明対象の構成においては、出力パルスは、(10psポンプから)3psにまで圧縮され、559nmにおいて0.29Wを生成し、緑色−黄色変換効率は、最良の圧縮が発生した際に、最大で18%であった。この技法は、安定した結晶質技術を使用する業界標準のモードロックレーザーの容易な波長変換を許容すると共に、短パルス黄色−オレンジ色放射の簡単で信頼性が高い供給源が必要とされている場合に理想的である。
【0138】
例2:超高速同期ポンピングダイアモンドラマンレーザーシステム
この例においては、例1に開示されているレーザーシステム100のものに類似したレーザーシステムの更なる構成においてモードロックレーザーによって同期ポンピングされるラマン媒質としてダイアモンドを有するモードロックラマンレーザーの図5に概略的に示されている例示用の構成200について説明する。ラマン結晶としてダイアモンドを使用することにより、能力の範囲が大幅に拡張される。KGW(768及び901cm-1)のものと比べたダイアモンド(1332cm-1)の相対的に大きなストークスシフトは、532nmのポンプレーザーを使用する際に、単一のストークスシフトからの573nmの出力波長を可能にする。又、ダイアモンドは、格段に大きな利得係数を有しており、相対的に小さな結晶を使用することが可能となる。KGWの場合の3.2psと比べたダイアモンドの相対的に長い位相緩和時間(6.8ps)は、後述するように、パルス持続時間に対して相対的に大きな限度を課すと共に同期ポンピングラマンレーザーにおけるパルス圧縮限度用のモデルの試験を可能にするものと期待される。又、ダイアモンドの優れた熱伝導性は、迅速な熱の除去と、したがって、潜在的に非常に大きな平均出力パワーと、をも許容する。
【0139】
この構成においては、レーザーシステム200は、ラマン活性媒質として6.7mm長のダイアモンド結晶210を使用することにより、573nmの第1ストークス波長において最大で2.2Wを生成することが観察された。以下、数値モデルを使用し、このシステムの力学について説明し、これにより、パルス持続時間がいくつかの状況において短縮される理由を示すこととする。
【0140】
ダイアモンドレーザー空洞220は、図5に概略的に示されているように、それぞれが+200mmの曲率半径(RoC)を有する二つの湾曲した反射器M1及びM2(それぞれ、201及び202)と、二つの平らな反射器M3及びM4(それぞれ、203及び204)と、から構成されたZ字形折り畳み構成であり、反射器M1 201は、ダイクロイック入力反射器であり、反射器M4 204は、出力反射器/カプラである。空洞220の折り畳み角度は、6.7mmのブリュースターカットのダイアモンドラマン結晶210によって導入される非点収差を補償するために、約6度に設定した。モードロックNd:YAGポンプレーザー215は、この例においては、非線形媒質214(例えば、LBO結晶)内における2次高調波倍増プロセスを使用することにより、532nmに周波数倍増され、且つ、ダイアモンドラマン結晶210内においてレーザー空洞220の32μm(1/e2半径)のモードウエストに略整合するように、反射器M1 201を通じて、レンズL1 217により、ダイアモンド結晶210内に合焦されている。532nmにおける最大で7.5Wのポンプ光216が、ダイアモンド結晶210に入射しており、この場合に、このポンプ光216は、78MHzの繰り返し速度を有する26psのパルスから構成されたパルス列を有していた。この構成においては、反射器M1 201、M2 202、及びM3 203は、(例えば、適切な光学被覆を使用して)573nmの1次ストークス波長において高度な反射性を有するように適合された。出力カプラ反射器M4 204は、573nmの1次ストークス波長において約12%の透過性を有するように適合された。
【0141】
例1と同様に、反射器M4 204の位置Δxは、レーザーの性能を最適化するために同調させてもよく、この場合に、Δx=0は、最低レーザー閾値を有する際に計測された空洞長として規定され、且つ、負の値は、短縮された空洞に対応している。
【0142】
まず、共振器空洞220のΔx=+50μmの離調において実現された出力ビーム231の最大出力パワーにおいてレーザーを最適化することにより、532nmのポンプ光216の7.5Wの入力ポンプパワーにおいて、573nmにおける2.21Wの出力パワーを計測した。レーザー閾値は、約2Wであるものと計測され、これは、この構成において、約41%というスロープ効率と、約29%という絶対効率と、をもたらした。
【0143】
図6A及び図6Bは、それぞれ、7Wの入力ポンプパワーにおいて計測されたΔxの関数としての573nmの出力の出力パワーとパルス持続時間のグラフを示している。図6Aは、パワー出力214を示している。図6Bに示されているパルス持続時間243は、走査2次高調波生成自己相関器によって計測され、パルス持続時間は、パルスが時間に伴うガウス曲線であるものと仮定して推定した。図6Aにおいて観察することができるように、出力パワーは、レーザー空洞220の長さの離調Δxの正と負の変化において極めて異なる方式で変化した。図6A及び図6Bにおいて観察することができるように、レーザー出力ビーム231の出力パワーに対する影響を最小限に抑制しつつ最大でΔx=−800μmという大きな負の離調(これは、ラウンドトリップ当たりに5.3psという時間的不整合に対応している)を許容することができた一方で、ちょうど+200μmの正の離調(1.3ps)により、レーザー動作が停止した。最大出力パワーは、+50μmの離調において観察され、この場合に、出力ビーム231のパルス持続時間は、図6Bにおいて観察することができるように、(ポンプ光216の26psというパルス持続時間と比較して)約21.3psになるものと計測された。短い空洞長においては、出力231のパルス持続時間は、Δx=−750μmにおける約30psの最大値まで単調に増大することが観察され、出力パワーは、〜50%だけ、減少した。長い空洞長の場合には、出力231のパルス持続時間は、Δx=+200μmにおける9psまで急激に減少し、出力パワーは、ちょうど前述の閾値まで急激に減少しており、したがって、この構成においては、パルスが短縮された状況において、出力ピークパワーの改善は観察されなかった。
【0144】
数値モデル化
上述の例2のダイアモンドレーザーの動作について説明するために、過渡ラマン散乱用の等式を使用して数値モデルを生成した。当然のことながら、この数値モデルは、当業者には理解されるように、異なるラマン活性媒質を有する同期ポンピングラマンレーザーシステムに対しても、まったく同様に適用することができる。この数値モデルは、フォノン励起のみならず、ストークス及びポンプパルスの振幅をも追跡し、且つ、結晶を通じたパルス間の群速度ウォークオフをも説明する。これらの等式は、例えば、Penzkofer他の[Progress in Quantum Electronics 6、55〜140(1979)]に付与されており(彼らの等式77〜79)、ストークス及びポンプパルスについて異なる群速度を使用しており、且つ、余分なフォノンの数が小さいという仮定を伴っている。有限差分法を使用して時間及び空間依存性等式を空間グリッド上における時間依存性等式の高精度な1次の組に変換した後に、Runge−Kuttaアルゴリズムを使用し、これらの等式を数値解析した。このアルゴリズムは、一つのパスからの出力ストークス場を後続のパスの入力ストークス場として使用することにより、結晶を通じたシングルパスのシーケンスについて解明するように適合されており、このシミュレーションは、ストークスパルスがその安定状態プロファイルに到達した際に終了する。共振したストークス場の数値的分散を回避するために、これらの等式をストークス群速度において移動するフレーム内において解いた。このモデルにおいては、それぞれのラウンドトリップの後に再循環する前に、ストークスパルスを遅延又は前進させることにより、空洞長の離調をシミュレートしている。このモデルにおいては、このダイアモンドラマンレーザーシステム200をシミュレートするために、ポンプパワー(7W)、持続時間(ガウス時間プロファイルを仮定して26ps)、空洞モードウエスト(31μm)、出力結合(12%)、及びダイアモンド長(6.7mm)という実験によって判明しているパラメータを使用した。
【0145】
自己相関計測をシミュレートして実験値との比較を許容することにより、シミュレートされた出力パワー242(図6A)及び出力パルス持続時間244(図6B)を出力パルスプロファイルから算出したが、図示されているように、実験データとの間に優れた一致が得られており、これは、同期ポンピングラマンレーザーシステムの主要な物理的プロセスのすべてが、この(単純化された)モデルに含まれていることを示している。実験データとの一致を実現するために、ラマン利得の50cm/GWへの設定と、573nmにおけるラマン共振器の受動的損失の13%への設定と、という二つのパラメータのみを数値モデルにおいて調節した。数値結果が小さな変化の影響を受けないように、フォノン位相緩和時間を6.8psに設定した。これらの値は、期待値と一致しており、532nmにおけるラマン利得は、詳細に判明していないが、その他の波長における計測値は、この値に近接することを示唆しており、空洞の受動的損失は、ラウンドトリップ当たりに6%という既知の反射器の漏れと、ダイアモンドのブリュースター面からの散乱、吸収、及び反射に起因した未知の寄与分(偏光解消に起因して大きくなりうる損失)と、を有する。
【0146】
パルス短縮メカニズムを解明するために、数値モデルを使用し、ストークスパルス生成を図5の同期ポンピングラマンレーザーシステム200の空洞長の関数として分析した。図7には、異なるΔxの範囲について、ダイアモンドを通過する前と後の両方におけるパルス及びストークスパルスのパルス形状が示されている。その群速度において結晶を通じて移動するストークスパルスが時間に伴ってシフトしないように、時間軸を設定している。これにより、結晶の入口と出口におけるパルスの相対的なタイミングと、ポンプを使い果たす方法と、を検討することができる。
【0147】
図7は、−900μm(上段フレーム281及び282)、+60μm(中段フレーム283及び284)、及び+180μm(下段フレーム285及び286)という空洞長の離調Δxにおけるダイアモンドラマン結晶210の単一の通過の前(左側プロット)と後(右側プロット)のポンプ(点線)パルスとストークス(実線)パルスのパルス形状を示している。まず、最大パワー出力であるΔx=+60μmに対応した空洞長におけるレーザーシステム200のダイアモンドラマン結晶210の通過の前(フレーム283)と後(フレーム284)のポンプ及びストークスパルスを示す図7の中段のフレーム283及び284のプロットのペアを検討しよう。ストークスパルス291及びポンプパルス292は、十分にオーバーラップしており、且つ、ポンプパルス292は、ラマン結晶を通過した後には、均一に且つ有効に使い果たされていることを観察することができる。
【0148】
図7の上段のフレーム281及び282のプロットのペアは、Δx=−900μm(相対的に短い空洞)という共振器空洞220の空洞長離調における同一のパラメータを示している。この長さの離調の場合には、増幅されていないストークスパルスのラウンドトリップ時間がポンプパルス間の時間よりも短い。但し、それにも拘らず、安定状態においては、ストークスのラウンドトリップ時間は、ポンプのパルス間周期に等しくなければならず、これは、後の時間においてパルスを事実上遅延させるストークスパルスの増幅により、即ち、フレーム282において観察されるそのトレーリングエッジの選択的な増幅により、実現されている。当然のことながら、出力ストークスパルスは、ラウンドトリップ損失と負のΔxに対応する時間進行の適用の後には、安定状態において必要とされるように、入力ストークスパルスと同一である。
【0149】
この必要とされるストークスパルスのトレーリングエッジの選択的な増幅は、当然のことながら、過渡ラマン散乱の状況においては、好ましい。ポンプ及びストークスパルスのリーディングエッジとの相互作用よって結晶内に蓄積されるフォノンは、トレーリングエッジが最大ラマン散乱断面を経験することに結び付く。この自然な傾向が、正の離調とは対照的に、大きな負の離調を許容することができる理由である。
【0150】
図7の下段のフレーム285及び286のプロットのペアは、Δx=+180μm(相対的に長い空洞)の共振器空洞長離調におけるパルス増幅の数値的な結果を示している。この場合には、それぞれのラウンドトリップにおいてストークスパルスを前進させるために、ポンプパルスのリーディングエッジを選択的に増幅しなければならない。尾部を増幅する自然な傾向を克服するために、リーディングエッジがポンプパルスのピークと一致してその利得を極大化させるように、ストークスパルスをポンプパルスのウィング内に配置しなければならない。この構成によっても、パルスは、わずかな量のみ、前進することが可能であり、且つ、したがって、許容できるのは、非常にわずかな正の離調である。パルス短縮が、ポンプパルスとの不十分なオーバーラップから、且つ、ポンプパワーの効率的な抽出を犠牲として、生じていることが明らかである。
【0151】
この効率的なパルス圧縮の欠如は、50mm長のKGW結晶が10psのポンプパルスから3.2psのパルスを効率的に生成することができるKGd(WO4)2(KGW)ラマン結晶を使用した前述の例1の類似のラマンレーザーシステム100に伴う以前の結果と対照的である。数値モデルは、効率的な圧縮にとって重要な要因は、結晶のそれぞれの通過の際のストークスパルスとポンプパルスの間の大きな群速度ウォークオフであり、これにより、相対的に短いストークスパルスは、ポンプパルスの全体と連携し、且つ、ポンプパルスの全体からエネルギーを抽出することができることを示している。この必要とされるウォークオフは、短いポンプパルスの場合に、且つ、大きな群速度分散(Group Velocity Dispersion:GVD)を有する長いラマン媒質の場合に、相対的に容易に実現される。この例においては、上述の例1のものと比べて、ダイアモンド結晶が7分の1と短く、且つ、ポンプパルスが2.6倍の長さであるため、圧縮が妨げられている。
【0152】
要すれば、この例2は、573nmの1次ストークス波長において2.2Wを生成するモードロックNd:YAGレーザーによって532nmにおいて同期ポンピングされるダイアモンドラマンレーザーを開示している。空洞長の離調に伴うレーザー動作の極端な非対称性は、過渡ラマン散乱の状況において動作している結果として説明される。
【0153】
例3:超高速同期ポンピングマルチ波長ラマンレーザーシステム
この例においては、例1のレーザーシステム100のものに類似しているがマルチ波長及び選択可能な波長出力のために構成されている更なるラマンレーザーシステム300について説明する。
【0154】
マルチ波長レーザーシステム300の構成が図8に概略的に示されており、この場合には、ラマン結晶310(SRS利得媒質)は、50×5×5mmのタングステン酸カリウムガドリニウム(KGW)結晶である。ラマン結晶310は、結晶表面における反射損失を極小化するために、垂直入射用の532nmにおける反射防止被覆を有する。このKGWラマン結晶310をそのNm軸に沿ってポンピングして901cm-1のラマンシフトを532nmのポンプビーム316と整合させることにより、559nmの1次ストークス波長及び589nmの2次ストークス波長を供給した。ポンプビーム316は、この構成においては78MHzの繰り返し速度によって1064nmにおいて22Wを生成するCWモードロックNd:YAGレーザーであるポンプ源315から得た。1064nmのポンプ放射316を3.5cm長の三ホウ酸リチウム(LBO)結晶内における非臨界位相整合2次高調波生成によって周波数倍増し、約7Wの光学パワー及び約28psのパルス持続時間を有する532nmのポンプビーム316を供給した。レンズL1 317を使用し、ポンプビーム316をラマン結晶310内に合焦したが、このレンズは、ラマン結晶310内のポンプビーム316のビームウエストをラマン結晶310内の共振器空洞320の共振器モードのウエストサイズと整合させるように適合されていた。
【0155】
図8に示されているこの設計における共振器空洞320の設計は、基本的に、Z字形折り畳み設計であった。この構成においてはそれぞれが20cmの曲率半径を有するように選択されている凹状反射器M1及びM2(それぞれ、301及び302)は、約23cmだけ離隔させた。この反射器の離隔は、KGWラマン結晶310内においてセンタリングされた33μmの共振器空洞モードウエスト半径をもたらした。以前の例におけると同様に、Z字形折り畳み空洞320の角度は、空洞モードの非点収差を極小化するために小さく維持した。縦続接続プロセスの効果的な制御のために、高分散F5プリズムP1及びP2のペア(それぞれ、341及び343)が、共振器空洞320内において共振している共振ビーム330からのストークス波長(例えば、1次ストークスビーム331及び2次ストークス空洞内ビーム332)を異なる端部反射器304及び305上にそれぞれ空間的に分離し、これにより、空洞320内において共振しているそれぞれのストークスモードの空洞長と出力結合の両方の独立した制御を有する別個の結合共振器空洞を形成している。1次ストークスモード331は、端部反射器M4 304に入射するように構成されており、2次ストークスモードは、存在する場合には、小さなスクレーパ反射器344により、端部反射器M5 305に導いた。反射器M1、M2、及びM3(301、302、及び303)は、それぞれ、共振ビーム330内のすべてのストークス波長について高反射率(99%を上回る反射率)を有するように選択した。この構成のレーザーシステム300は、ストークス放射が反射器M4 304及び反射器M5 305のうちの何れかを通じて出力されるように設計されているが、共振器320のその他の空洞反射器を通じた559nmの1次ストークス波長における及び589nmの2次ストークス波長における出力光の多少の漏れも存在していた。したがって、この例について以下に報告されている出力パワーは、共振器反射器のそれぞれからのすべての記録された出力の(即ち、出力カプラと、その他の不完全な共振器反射器301、302、及び303などを通じたわずかな漏れと、の)合計である。以前の例のそれぞれにおけると同様に、出力結合反射器M4 304及びM5 305は、それぞれ、共振器空洞330の軸に沿って平行移動することにより、共振波長モード331及び332のそれぞれのモードの空洞内場の循環がポンプレーザー315のパルス間周期と同期することを保証するための正しい空洞長を実現するように適合させた。
【0156】
1次ストークス波長のみにおいて光を出力するようにラマンレーザーシステム300を最適化させた際に、この構成において使用される反射器M4 304は、559nmにおいて80%の透過性を有する出力カプラであった。このモードにおいては、2次ストークス波長に対する更なる縦続接続は存在しなかった。図9は、1次ストークス(塗りつぶされていない円351)のスロープ効率のグラフを示している。図9において観察することができるように、1次ストークス波長における最大CW出力パワーは、6.5Wの入射パワーにおいて、559nmにおける約2.5Wであり、38.4%の最大緑色−黄色光変換効率に到達し、且つ、52%のスロープ効率を有していた。
【0157】
2次ストークス波長に対して縦続接続するようにラマンレーザーシステム300を最適化させた際に、共振する1次ストークス場331及び2次ストークス場332の両方は、レーザー結晶内においてオーバーラップしたが、反射器M4 304及びM5 305上に空間的に分離され、M4 304は、559nmの1次ストークス波長において高反射器であり、且つ、M5 305は、589nmの2次ストークス波長において80%の出力カプラであった。それぞれのストークス波長において最適な空洞長に効果的に整合させるために、それぞれの空洞長の微細調節が必要であった。図9は、2次ストークス(塗りつぶされていない正方形352)のスロープ効率をも示しており、2次ストークス波長589nmにおける最大出力パワーは、1.4Wであり、これは、21.5%の光変換効率であった。2次ストークス出力波長に対して縦続接続するためのスロープ効率は、この場合にも、52%であった。
【0158】
上述の結果においては、最大の出力パワーを実現するために空洞長を最適化させた。但し、異なる空洞長離調において、レーザーは、上述の例2において提示したモデル化の結果において実証された非瞬間的ラマン効果とポンプ場の使い果たしの間における複雑な相互作用に起因し、大きなパルス圧縮を示した。出力パルス形状の正確な取得は、レーザーの空洞内力学を正しく解釈するために非常に重要であり、パルスプロファイルを回復するために、本発明者らは、非同期相互相関法を使用した。図10は、1次ストークス出力(Δx1)におけるマイクロメートル(μm)を単位とする空洞長離調Δxに対するパルス持続時間及び出力パワーの依存性のグラフを示している。上述のように、それぞれの波長における空洞長離調(Δx1及びΔx2)は、それぞれの波長におけるレーザー動作の最小閾値に対応するものからの空洞長の差として規定されている。図10において観察することができるように、空洞離調が略Δx1=+500μmである際に、パルス圧縮がその最大値に到達することが観察された。この空洞離調における最短パルスは、559nmの1次ストークス波長における出力パルスの相互相関から得られた挿入図361によって示されているパルス形状を有しており、6.5psの持続時間を有し(圧縮比>4)、且つ、鋭いリーディングエッジを伴って非対称であった。強力な圧縮の領域内においては、出力パワーは低減されたが、ピークパワーは、依然として増大しており、559nmにおける最大ピークパワーは、Δx1=+450μmの空洞長において、1.92kWであった。Δx1<+200μmの空洞長離調においては、出力パワー及びパルス持続時間は、(図の範囲を十分に超える)Δx1=−2500μmまで延在する長いプラトーを示した。この領域内においては、ピークパワーは、約1.4kWであり、且つ、こちらも559nmの1次ストークス波長における出力パルスの相互相関から得られた挿入図363によって示されているものに類似したパルス形状を有していた。
【0159】
2次ストークス空洞長(Δx2)の関数としての出力パワー及びパルス持続時間が図11に示されている。この場合には、589nmの2次ストークス波長における出力パワーを極大化させるために、反射器M4 304及びM5 305を同時に平行移動させることにより、1次ストークス及び2次ストークスの空洞長を調節した。図11に示されている結果は、Δx1=280μmに固定された1次ストークス空洞長を設定することにより、計測した。出力パルスは、空洞離調が約Δx2=+200μmである際に最短であり、且つ、挿入図371によって示されているパルス形状を有することが観察された。これらのパルスは、5.5psの持続時間を有し(緑色からオレンジ色への圧縮比>5)、且つ、挿入図の相互相関されたトレース371に示されているように、小さな肩部を示した。負の離調Δxの場合には、パルス幅(塗りつぶされた円372)は、出力パワー(塗りつぶされていない正方形374)の減少に伴って、約10ps以上に徐々に増大した(挿入図の相互相関トレース373を参照されたい)。
【0160】
1次ストークスパルスの圧縮の動作とは対照的に、この場合には、出力パワーは、パルス圧縮が発生した際にその最大値に近接しており、これは、2次ストークスの圧縮メカニズムが1次ストークスとは異なることを示している。2.96kWの最大ピークパワーがΔx2=+100μmにおいて計測され、且つ、最大出力パワーは、1.4Wであった。表3は、様々な構成における1次ストークス及び2次ストークスの結果を要約している。
【0161】
【表3】
【0162】
結論として、この例は、559nmにおいて2.5Wを、そして、589nmにおいて1.4Wを生成する縦続接続された連続波モードロックラマンレーザーシステム300を実証している。それぞれのストークス次数における出力結合及び空洞長の独立的な最適化により、1次ストークス及び2次ストークスにおいて、最大で52%のスロープ効率が得られた。最大で38.4%及び21.5%という全体的な緑色−黄色及び緑色−オレンジ色効率が、それぞれ、実証されており、且つ、得られた最短パルスは、559nmにおいては、6.5psに、そして、589nmにおいては、5.5psに対応している。
【0163】
例4:超高速同期ポンピングマルチ波長ラマンレーザーシステム
本明細書に開示されているマルチ波長同期ポンピングラマンレーザーシステムの更なる構成380は、図12に概略的に示されているように実現され、同一の符号は、前述の例3の図8に示されている構成と同一のコンポーネントを示している。ラマンレーザーシステム380は、共振器空洞320内において3次ストークス波長333を共振させるようにアライメントされた第3共振器空洞を追加することにより、即ち、更なるスクレーパ反射器345と、更なる端部反射器306と、を追加することにより、実現されている。この更なる構成により、この構成における620nmの3次ストークス波長の出力光350は、100mW超の出力パワーを有するように実現された。この場合には、2次ストークス共振モード332用の出力結合反射器M5 305が高反射器によって置換されているが、その他の反射器を通じた2次ストークス場の大きな漏れが、この場の大きな損失として機能し、且つ、したがって、このレーザーは、620nmを生成するために最適化された状態からは、ほど遠かった。当業者には理解されるように、このレーザーシステムの更なる構成における共振器反射器被覆の更なる最適化により、620nmにおける更に大きな出力パワーを予想することができる。
【0164】
この技法を使用することにより、更なる縦続接続も可能であることものと予想される。又、1064nmのポンプ放射を使用した赤外縦続接続を生成するための類似のレーザーシステムの構築も、明らかに可能である。
【0165】
例5:結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステム
図13Aを参照すれば、結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステム400の例示用の構成が概略的に示されている。この特定の構成においては、垂直外部空洞面発光レーザー(VECSEL)をポンプレーザーとして使用しているが、当業者であれば、例えば、基本ビームの基本波長(例えば、1.06μm又は1.3μm)又は2次高調波又は3次高調波又は4次高調波において動作するNdドープレーザー、或いは、その他の希土類又は遷移金属イオンレーザー(例えば、エルビウム、イッテルビウム、ホルミウム、ツリウム、セリウム、ガドリニウム、プラセオジミウム、又はジスプロシウムドープレーザー、或いは、このような一つ又は複数の希土類ドーパントの組合せ)、Ti:サファイアレーザー、アルゴンレーザー、色素レーザー、光パラメトリック発振器、又は半導体レーザーなどの代替ポンプ源を有するように類似の結合空洞構成を設計してもよいことを理解するであろう。
【0166】
この構成においては、光ポンピングされる半導体利得素子415は、反射器404(これは、この例においては、出力カプラでもある)、半導体可飽和吸収ミラー(Semiconductor Saturable Absorber Mirror:SESAM)406、及びダイクロイックミラー403によって形成されたポンプ共振器空洞412内にポンプビーム408(実線)を生成し、且つ、このポンプ空洞412内に固体ラマン活性媒質410を含む。ラマン活性媒質410は、反射器404及び調節可能な反射器405によって形成されたストークス共振器空洞411内に配置されている。観察することができるように、ストークス共振器空洞411は、ポンプレーザー空洞412の一部と一致している。動作の際には、ポンプビーム408は、ラマン活性媒質410によってラマンシフトし、ポンプビーム408のラマンシフト周波数に対応する周波数を有するストークス共振器空洞411内において共振するラマンシフトストークス光ビーム407(破線)を生成する。SESAM406は、VECSEL415によって生成されたポンプビーム408をモードロックさせる。
【0167】
ダイクロイック反射器403は、共振するストークスビーム406の波長に対して実質的に完全な透過性(即ち、95%超の透過性)を有すると共にポンプビーム408の波長を有する光に対して実質的に完全な反射性(95%超の反射性)を有するように、(ミラー被覆及び入射角によって)適合されている。したがって、この構成は、それぞれ、ポンプ及びストークス空洞412及び411の長さの別個の制御を許容している。
【0168】
反射器404は、ポンプビーム408の波長を有する光に対しては、高度な反射性を有するように、且つ、ラマン変換周波数においては、少なくとも部分的な透過性を有して共振器空洞411内のストークス共振ビーム407の一部が空洞を出射して出力ビーム409を形成することを許容するように、適合されている。反射器405は、ラマンシフトストークス光ビーム407の波長を有する光に対して高度な反射性を有するように適合されている。
【0169】
この構成における任意選択のレンズ401及び402は、ラマン活性媒質410内においてポンプ及びストークス共振光を合焦する。或いは、この代わりに、レンズ401及び/又は402は、完全に省略してもよく、或いは、湾曲した反射器によって置換してもよい(例えば、反射器403及び/又は404及び/又は405は、任意選択により、ラマン活性媒質410内において光を合焦するために湾曲していてもよい)。
【0170】
動作の際には、調節可能な反射器405の位置を(反射器405及び404によって形成された)ストークス共振器空洞411の光軸に沿って移動させ、ストークス空洞411を同調させる。ストークス空洞411の同調は、共振するストークスパルスが空洞411のそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質410内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質410内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、ポンプ空洞412内において共振しているポンプビーム408のパルスのラウンドトリップ時間をストークス空洞411内において共振しているストークスビーム407のパルスの繰り返し速度のものと整合されるために実行される。
【0171】
図13Bを参照すれば、結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステムの更なる例示用の構成420が、光ポンピングされるVECSELを有する状態において示されている。図13Aにおけると同様に、光ポンピングされる半導体利得素子435は、反射器424及び432とSESAM426によって形成されたポンプ空洞412内においてポンプビーム426(実線)を生成する。固体ラマン活性媒質(水晶)430は、反射器424(これは、出力カプラでもある)、ダイクロイック反射器433、及び調節可能なミラー425によって形成されたストークス共振器空洞411a内に配置されている。前述のように、ストークス共振器空洞411aは、ポンプレーザー空洞412の一部と一致している。動作の際には、ポンプビーム428は、ラマン活性媒質430によってラマンシフトし、ポンプビーム428のラマンシフト周波数に対応する周波数を有するストークス共振器空洞411a内において共振するラマンシフトストークス光ビーム427(破線)を生成する。
【0172】
以前のものと同様に、ダイクロイックミラー426は、共振ストークスビーム427の波長(周波数)に対しては、実質的に完全な透過性(即ち、95%超の透過性)を有すると共にポンプビーム428の波長(周波数)を有する光に対しては、実質的に完全な反射性(95%超の反射性)を有するように、(ミラー被覆及び入射角度によって)適合されている。したがって、この構成は、それぞれ、ポンプ及びストークス空洞412及び411の長さの別個の制御を許容している。
【0173】
反射器424は、ポンプビーム428の波長を有する光に対しては高度な反射性を有するように、且つ、ラマン変換周波数においては少なくとも部分的な透過性を有して共振器空洞411a内のストークス共振ビーム427の一部が空洞を出射して出力ビーム429を形成することを許容するように、適合されている。
【0174】
反射器425は、ラマンシフトストークス光ビーム427の波長を有する光に対して高度な反射性を有するように適合されている。レンズ421及び422は、結晶内において光を合焦するが、以前のものと同様に、完全に省略してもよく、或いは、湾曲した共振器反射器(例えば、反射器424及び/又は433及び/又は425)によって置換してもよい。
【0175】
動作の際には、調節可能な反射器425の位置を(反射器425、426、及び424によって形成された)ストークス共振器空洞411aの光軸に沿って移動させ、ストークス空洞411aを同調させる。SESAM426は、VECSEL435によって生成されたポンプビームをモードロックさせる。
【0176】
次に図13Cを参照すれば、当業者であれば、図1Cの変更済みの装置440によって概略的に示されているように、図1Aの装置を変更して図1Bの装置を製造するのに必要なものに類似した方式によって図13A及び図13Bの構成を変更することにより、マルチ波長システムを実現してもよいことを理解するであろう。
【0177】
図13Cにおいて、ビーム407/427は、それぞれ、ストークス共振器空洞411及び411a内において共振する図13A及び図13Bの個々のラマンシフトビームを表している。ラマンシフトビームは、プリズムペア441及び443によって分散され、それぞれ、調節可能な反射器444a、444b、及び444cによって反射される複数の空間的に分離された共振ビーム442a、442b、及び442cを生成している。
【0178】
図13Cに示されているように変更されたマルチ波長システムにおいては、(それぞれ、図13A及び図13Bの)反射器404及び424が、ストークス空洞内において共振しているラマンシフトビーム(それぞれ、411及び411a)の波長に対して高度な反射性を有するようにすることが有利であろう。したがって、この場合には、これらの反射器からのラマン出力(即ち、それぞれ、出力ビーム209及び429)は存在しない。その代わりに、調節可能なミラー444a、444b、及び444cが、それぞれ、ラマンシフトビーム442a、442b、及び442cに対して少なくとも部分的な透過性を有するようにすることが好ましい。したがって、反射器444a、444b、及び444cは、それぞれ、ラマンシフトストークス出力ビーム445a、445b、及び445cをそれぞれ供給するためのその上部に入射する個々のストークスシフト周波数用の出力カプラである。
【0179】
検討
上述のこの構成においては、1次ストークスとポンプの間の50mmのKGWラマン結晶(即ち、例1、例3、及び例4)における群遅延差は、4.2psであり、2次ストークス及び1次ストークスの間にも類似の遅延を有する。これは、正規分散であり、長い波長ほど、高速で伝播する。1次ストークス及び2次ストークスの間の大きな差が、2次ストークス生成を最適化するために別個に調節可能な空洞が必要とされる理由である。生成されたパルスの連続的な圧縮は、部分的には、この結晶を通じた群遅延の不整合によって生成されるが、この場合に、不整合は、ポンプパルス持続時間と比べて相対的に小さく、且つ、したがって、1次ストークスパルスの圧縮は、更に短いポンプパルスほどに効果的ではなかった。プリズムペアによって生成される群遅延差(GDD)は、1次ストークス及び2次ストークスの間においては、約−1psであり、且つ、したがって、上述の例のKGWラマンレーザー結晶310のGDDを部分的に補償している。原則的には、格段に大きなプリズムの離隔により、プリズムのペアを使用し、1次ストークス及び2次ストークスの相対的な空洞長を最適化することできよう。但し、プリズムを使用して波長を異なる端部反射器上に分離することにより、経路長の同調とそれぞれの反射器の反射率の個別の適合の両方のために格段に大きな柔軟性が許容される。
【0180】
共振器空洞内におけるパルスの動作に対する空洞長の離調の効果を理解することが重要である。まず、ポンプ及び1次ストークスパルスの動作について検討しよう。空洞離調がゼロである場合には、ストークス群速度におけるラウンドトリップ時間は、ポンプ源のパルス間周期と正確に等しい。波長の間の群遅延差は、結晶の通過の際に、2.2psだけ、ストークスパルスがポンプパルスを追い越すことを意味しているが、空洞長は、それぞれのラウンドトリップの後にこれらのパルスの相対的な位置が同一になるようなものになっている。
【0181】
空洞を延長させた場合には、初めは、それぞれのラウンドトリップにおいて、ポンプパルスと比べて、ストークスパルスは、後から到着するに違いないと思われる。しかしながら、レーザーは、安定状態において動作しているため、それぞれのラウンドトリップの後のポンプ及びストークスパルスの相対的な位置は、実際には、依然として同一でなければならない。この遅延は、実際には、それぞれのラウンドトリップにおいて、結晶を通過する際のストークスパルスの整形によって妨げられており、これは、この場合には、増幅されたストークスパルスがわずかに前進した位置に形成されるようなストークスパルスのリーディングエッジの選択的な増幅による。空洞離調が更に大きくなるのに伴って、更に大きなパルス整形が発生しなければならず、これには更に大きな利得が必要とされ、したがって、最終的に、レーザーは、閾値未満に降下する。
【0182】
空洞長離調の符号に伴うレーザー動作の強力な非対称性が存在している。これは、レーザーシステムが過渡ラマン散乱の状況において動作しているという事実に起因する。励起振動の位相緩和時間の20倍未満のパルス持続時間の場合には、過渡的な効果を考慮しなければならない。この説明対象の構成のポンプパルス持続時間は、28psであり、且つ、KGWの位相緩和時間は、2.1psであり、且つ、したがって、それぞれのパルスにおけるフォノンの蓄積も考慮しなければならない。この蓄積により、ストークスパルスのトレーリングエッジにおけるストークス利得が格段に大きくなる。負の離調は、ストークスパルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて少し早期に結晶に到達することに、且つ、したがって、トレーリングエッジにおいて最大の増幅を必要とすることに対応しており、これは、当然のことながら、過渡的な散乱の状況においては、好ましく、且つ、正の離調よりも、格段に大きな負の離調を許容することができることを意味している。
【0183】
パルス圧縮は、ストークスパルスが異なる速度に起因して結晶を通過する際にポンプパルスを掃引し、これにより、短いストークスパルスが長いポンプパルスからエネルギーを外部に掃引できるようにした結果として得られる。圧縮は、ストークスパルスがポンプパルスの少し後に結晶に到着することに対応している正の離調において最も効果的である。この場合には、その位置を前進させるためのパルスの整形が、ポンプパルスを通じたストークスパルスの掃引を強化し、これにより、圧縮効果が強化される。ストークスパルスのリーディングエッジは、ポンプパルスの使い果たされていない領域を通じて前進しているため、図9の正の離調において計測されているように、リーディングエッジの急勾配化が観察される。この圧縮及び過渡ラマン散乱の効果について十分に理解するためには、ラマン結晶としてダイアモンドを使用する類似のレーザーシステムとの関係において上述の例2において説明した数値モデル化が必要である。
【0184】
以上において記述/図示した方法及びシステムは、シングル及びマルチ波長システムの両方において、同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムを少なくとも実質的に実現することを理解されたい。
【0185】
本明細書に記述されると共に/又は添付図面に図示されている方法及びシステムは、一例としてのみ提示されており、且つ、本発明の範囲を限定するものではない。特記されていない限り、ラマンンレーザーシステムの個々の態様及びコンポーネントは、変更してもよく、或いは、既知の均等物又は将来開発される又は将来許容可能な代替物であることが判明する現在は未知の代替品によって置換してもよい。又、本明細書に開示されているラマンレーザーシステムは、特許請求された本発明の範囲及び精神を逸脱することなしに、様々な用途のために変更してもよく、その理由は、潜在的な用途の範囲が大きいためであり、且つ、本ラマンレーザーシステムが多くのそのような変形に対して適合可能となるように意図されているためである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高速ラマンレーザーシステム及びその動作方法に関し、且つ、更に詳しくは、モードロックラマンレーザーシステム及び動作方法に関し、且つ、以下、本発明について、この用途を参照して説明することとする。但し、本発明は、この特定の使用分野に限定されるものではないことを理解されたい。
【背景技術】
【0002】
本明細書における背景技術に関するすべての説明は、その背景技術が先行技術であることの是認として見なすべきではなく、且つ、その背景技術が周知であるか又は当技術分野における共通の一般的知識の一部を構成していることの是認として見なすべきでもない。
【0003】
超高速レーザーは、研究室において一般的なものであり、且つ、現時点における主なタイプは、以下のとおりである。即ち、ネオジムに基づいたレーザー(Nd:YVO4及びNd:YAGなど)は、約1064nmにおいてピコ秒パルスを生成し、且つ、532nm及び355nmに周波数倍増又は三倍増することが可能であり、Ti:サファイアレーザーは、数フェムト秒という短いパルスを有することが可能であり、且つ、700〜950nmの波長範囲において動作することが可能であり(且つ、350〜525nmに到達するように周波数倍増することが可能であり)、Yb3+又はEr3+ドーパントに基づいたファイバレーザーは、それぞれ、1060nm及び1500nm周辺において動作し、光ポンピング半導体「VECSEL」レーザーは、可視領域及び赤外領域における個別の波長について設計することができる相対的に新しいタイプの供給源であり、古い技術である色素レーザーは、可視波長に対する同調可能なアクセスを許容しているが、望ましくない発癌性染料の取扱い及び交換に起因し、絶滅したも同然の状態にある。
【0004】
レーザー研究室以外においては、且つ、特に、バイオフォトニクスの分野においては、同調可能なTi:サファイアレーザーとネオジムレーザーという二つの「業界標準」レーザーのみが主に使用されている。これらのレーザーは、十分なスペクトルカバレージを提供しておらず、且つ、550nm〜700nmの黄色から赤色の領域が、カバレージが不十分な一つの主要なエリアである。原則的には、その他のレーザー及びOPO技術を追加することによって十分な波長カバレージを提供することが可能であろうが、広範に利用可能なものにするには、これは、実際には、あまりに面倒で、複雑であって、且つ、高価であり、且つ、したがって、研究者は、波長の制約によって課される制限に直面することになる。したがって、可視領域における、特に、500〜700nmにおけるピコ秒パルスレーザー源の開発に対する多大な関心が存在している。
【0005】
二光子蛍光顕微鏡法は、通常は700〜1000nmの範囲において動作する同調可能な超短パルスTi:サファイアレーザーとの関連において広く使用されている定評のある生物学的撮像法である。但し、更に短い波長において、特に、500〜650nmにおいて動作することができる超短パルスレーザーに対する需要が増大しており、その理由は、この技法は、コントラストメカニズムとして機能する内生的自己蛍光構造又は合成発蛍光団を利用することによって様々な生物学的サンプルの二光子吸収帯域を整合させるために更に短い波長の放射を使用することが可能であり、更に短い波長により、二光子蛍光の適用分野が更に様々な生物学的分子にまで広がることになるためである。励起の非線形特性に鑑み、レーザー源は、調査対象の生物学的サンプルに対する損傷を回避するために低い平均パワーを維持しつつ、非線形二光子プロセスを改善するするために大きなピークパワーを有するパルスを生成可能であることが望ましい。対象の発蛍光団の吸収帯域に対する完全な波長の整合は、それらの帯域が相当に幅が広くなる傾向を有しているため(20〜30nm)、通常は、必要とされない。又、高分解能を実現するためには、ビーム品質も、高くなければならず、且つ、サンプルの高速走査のためには、高い繰り返し速度が必要とされる。
【0006】
500〜700nmにおける超短パルス化出力の生成については、様々な方法によって対処されている。例えば、光パラメトリック発振器(Optical Parametric Oscillator:OPO)を使用してUVからIRまでの同調可能な超高速放射を生成しており、例えば、ポンプと信号の空洞内和周波数混合を伴う1047nmでポンピングされるOPOは、608〜641nmの範囲において同調可能なフェムト秒出力をもたらすことが既に実証されている[例えば、非特許文献1を参照されたい]。しかしながら、これらのシステムは、通常、高価且つ複雑であり、且つ、水晶の温度及び角度の非常に厳格な制御を必要としている。又、OPOに使用されている水晶は、多くの場合に、湿りやすく、したがって、時間に伴って劣化する(グレートラッキング)。更には、ポンプ波長に近接した波長にアクセスすることができず、且つ、したがって、黄色の生成のためには、効率を犠牲にして、ネオジムポンピングOPOを355nmにおいてポンピングしなければならない。専門家ではないユーザーがOPOをあまり採用していないのは、これらの複雑性がその理由であろう。同調可能な可視色素レーザー技術を代替する固体レーザーの開発が多くのレーザー物理学者の長期目標となっており、且つ、この観点において、OPOは、明らかな潜在力を有してはいるが、その採用は、主には複雑性の問題に起因して大部分が物理学研究室に限られている。
【0007】
別の方式は、フェムト秒Ti:サファイアレーザーの出力によってフォトニック結晶ファイバをポンピングし、数ピコ秒のパルスを伴う500〜600nmの範囲のブロードバンドの同調可能な可視放射を生成するというものであるが[例えば、非特許文献2]、この供給源と関連する平均パワーは小さく、許容されるのは、閾値近傍の二光子吸収のみである。第3の可能性は、三光子吸収のために、フェムト秒パルス化Ti:サファイアレーザー又はNdに基づいたレーザーを利用するというものである。但し、三光子吸収のためのピークパワー要件は、二光子顕微鏡法のためのものを大幅に上回っており、且つ、したがって、この技法は、生物学的撮像における制限された用途を有している。したがって、特定の望ましい可視及びIR波長におけるピコ秒パルスの効率的な生成を提供する、向上した簡便さ、向上した効率、及び費用の低減を提供することができる別の代替肢の探求に対する強い関心と動機付けが存在しており、且つ、可視波長の広い範囲における短パルスの生成は、二光子顕微鏡法を含むバイオフォトニクスにおけるいくつかの用途にとって有益であろう。
【0008】
新しい波長にアクセスするための従来のレーザーにおけるラマンシフトは、十分に定評のある技法である。具体的には、IR、可視、及びUVの出力を効率的に生成するために、様々な構成において、結晶質媒質内における誘導ラマン散乱(Stimulated Raman Scattering:SRS)が利用されている。SRSは、ラマン媒質を通じたシングル又はダブルパスのみを使用することにより、大きなピークパワーを有するパルスのために非常に効率的に動作することができる。ラマン媒質の周辺に空洞を配置して一つ又は複数のストークス波長を共振させることは、いくつかの重要な利点を有しており、即ち、これは、低パワーパルスの変換を許容しており、これは、ビーム品質を改善し、且つ、これは、任意の望ましい次数を選択的に出力することができるように、或いは、この代わりに、複数の波長を同時に出力することができるように、2次以上のストークス次数へのSRSプロセスの変換及び縦続接続に対する効果的な制御を許容している。
【0009】
数ナノ秒以上の持続時間を有するポンプパルスの場合には、短いラマン共振器によって単一のポンプパルスの効果的なSRS変換を許容することができる。ラマン媒質の通過時間よりも短いピコ秒パルスの場合には、もはや、単純な共振器は使用不能である。共振器を伴うことなしにラマン媒質の1又は2パス内におけるピコ秒ストークス生成を効率的なものにすることは可能であるが、パルスパワー閾値は、共振ラマンレーザーのものよりも格段に大きく、出力スペクトルの制御は容易ではなく、且つ、出力ビームは、大部分の用途の需要を満たすために十分な品質を有してはいない。解決策は、パルス列によってポンピングされる共振器を使用し、モードロックポンプレーザーのものに整合した空洞長を有する外部共振器を「同期モードロック」するというものである。同期ポンピングレーザーは、ポンプレーザーのパルス間周期をラマンレーザー共振器のラウンドトリップ時間と整合させて多数のパルスにわたってラマン共振器内に強力な循環ピコ秒パルスを形成するステップに依存している。いくつかのグループが、可視及びIR領域の波長範囲の生成を可能にするQスイッチングモードロックレーザーからの有限のパルス列によって同期ポンピングされる結晶質及び気体ピコ秒ラマン発振器について報告している。但し、これらの方式は、いずれも、μJのレベルの、或いは、場合によっては、mJのレベルのパルスエネルギーを利用しており、相対的に小さなデューティサイクルを有するという欠点を有し、且つ、相対的に大きく且つ複雑なレーザーシステムを必要としている。又、Qスイッチングされる列内の連続パルスは、異なるピークパワーを有しており、この結果、これらは、撮像及び走査顕微鏡法などの走査用途に適していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】McConnell他、Opt. Lett. 28、1742〜1744(2003)
【非特許文献2】Palero他、Opt. Express 13、5363〜5368(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、これらの従来技術の欠点のうちの一つ又は複数のものを実質的に克服するか又は少なくとも改善すること、或いは、既存の超高速レーザーシステムの有用な代替肢を少なくとも提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によれば、同期ポンピングラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、複数の反射器を有する共振器空洞を有してもよい。少なくとも一つの反射器は、共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するように適合された出力反射器であってよい。パルス化出力ビームは、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応した周波数を有してもよい。出力反射器は、ラマン変換周波数において部分的な透過性を有してもよい。出力反射器は、ラマン変換周波数において最大で約80%の透過性を有してもよい。或いは、この代わりに、出力反射器は、ラマン変換周波数において最大で約90%の透過性を有してもよい。ラマン変換周波数の約10%超が、共振器空洞内において共振してもよい。いくつかの構成において、レーザーシステムは、高利得レーザーシステムであってよい。レーザーシステムの利得は、3超、5超、又は10超であってもよい。レーザーシステムの利得は、約1〜10、約2〜10、約3〜10、約4〜10、又は約5〜10であってもよい。その他の構成において、レーザーシステムは、0.01(1%)〜1の利得を有する低利得レーザーシステムであってもよい。
【0013】
本システムは、パルス化ポンプビームによってポンピングされるように共振器空洞内に配置された固体ラマン活性媒質を更に有してもよい。パルス化ポンプビームは、ポンプ繰り返し速度を有してもよい。ラマン活性媒質は、ラマン活性媒質に入射するポンプパルスをラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換してもよい。このラマン変換されたパルスは、共振器空洞内において共振してもよい。本システムは、共振器の光学長を調節し、共振するラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度と整合させるための共振器調節器を更に有してもよい。共振器の光学長は、共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、調節してもよい。
【0014】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0015】
第1の態様の一構成によれば、同期ポンピングラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、複数の反射器を有する共振器空洞であって、少なくとも一つの反射器は、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応した周波数を有する共振器空洞からのパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であってよく、出力反射器は、ラマン変換周波数において部分的な透過性を有してもよい、共振器空洞と、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように共振器空洞内に配置された固体ラマン活性媒質であって、ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するための固体ラマン活性媒質と、共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、共振器の光学長を調節して共振するラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度と整合させるための共振器調節器と、を有する。
【0016】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0017】
共振器調節器は、選択された共振器を共振器空洞の光軸に沿って平行移動させ、これにより、共振器空洞の光学長を調節するように構成してもよい。共振器空洞の光軸は、共振器空洞の共振光学モードと一致するように規定してもよい。
【0018】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様の共振器調節器は、空洞長の約+/−1cmに対応する共振器空洞内のラマン変換光の+/−33ピコ秒のラウンドトリップ時間差に等しい長さだけ、共振器空洞の長さを調節するように構成してもよい。又、第1〜第4の態様のうちの何れかの態様の共振器調節器は、マイクロメートルレベル(例えば、約1〜100μm)における又はこれ未満(例えば、500〜1000nm)における共振器空洞の長さの微細調節のために構成してもよい。
【0019】
第1の態様の更なる構成によれば、本システムは、マルチ波長動作のために適合させてもよく、この場合に、共振器空洞は、プライマリ共振器空洞であり、且つ、プライマリ共振器空洞からのパルス化出力ビームは、プライマリ周波数変換ビームである。本システムは、複数のセカンダリ反射器を有するセカンダリ共振器空洞であって、少なくとも一つのセカンダリ反射器は、プライマリ出力ビームのセカンダリラマン変換周波数に対応した周波数を有するセカンダリ共振器空洞からのセカンダリパルス化周波数変換出力ビームを出力するために適合されたセカンダリ出力反射器であり、セカンダリ出力反射器は、セカンダリラマン変換周波数において部分的な透過性を有する、セカンダリ共振器空洞と、プライマリ周波数変換ビームによってポンピングされるようにセカンダリ共振器空洞内に配置された第2固体ラマン活性媒質であって、ラマン活性媒質上に入射するプライマリ周波数変換ビームのパルスをセカンダリ共振器空洞内において共振するセカンダリラマン変換周波数を有するセカンダリ共振パルスにラマン変換するための第2固体ラマン活性媒質と、セカンダリ共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて第2ラマン活性媒質内においてプライマリ周波数変換ビームのパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、第2ラマン活性媒質内においてセカンダリラマン変換周波数を有するセカンダリ共振パルスをラマン増幅するように、セカンダリ共振器の光学長を調節して共振セカンダリラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をプライマリ周波数変換ビームの繰り返し速度と整合させるためのセカンダリ共振器調節器と、を更に有してもよい。少なくとも一つのセカンダリ反射器は、プライマリ周波数変換ビームをセカンダリ共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、セカンダリ共振器空洞に対するプライマリ周波数変換ビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0020】
第2の態様によれば、第1の態様のシステムをマルチ波長動作のために適合させてもよい。このマルチ波長システムは、異なる波長の共振器空洞内の共振光を空間的に分散させて二つ以上の結合共振器空洞内に二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために共振器空洞内に配置される分散素子を有してもよい。本システムは、空間的に分離された共振ビームのそれぞれに対応する二つ又は複数の調節可能な反射器を更に有してもよい。調節可能な反射器のそれぞれは、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射するように配置してもよい。それぞれの調節可能な反射器は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、それぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ポンプパルス又は共振ビームのパルスを伴うマルチ波長ラマンレーザーシステムを提供するように、その個々の空間的に分離された共振ビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合させてもよい。
【0021】
第2の態様の一構成によれば、マルチ波長動作のために適合された第1の態様によるラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、異なる波長の共振器空洞内の共振光を空間的に分散させて二つ以上の結合共振器空洞内に二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために共振器空洞内に配置された分散素子と、空間的に分離された共振ビームのそれぞれに対応する二つ又は複数の調節可能な反射器であって、それぞれの調節可能な反射器は、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射するように配置されており、且つ、それぞれの調節可能な反射器は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供するように、その個々の空間的に分離された共振ビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている、二つ又は複数の調節可能な反射器と、を更に有する。
【0022】
第3の態様によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、複数の反射器を有する共振器空洞を有してもよい。本システムは、パルス化ポンプビームによってポンピングされるように共振器空洞内に配置され、且つ、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を更に有してもよい。ポンプビームは、ポンプ繰り返し速度を有してもよい。本システムは、異なる波長の空洞内の共振光を空間的に分散させて共振器空洞内に二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために共振器空洞内に配置された分散素子を更に有してもよい。本システムは、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射して複数の結合共振器空洞を形成するように配置された二つ又は複数の調節可能な反射器を更に有してもよい。それぞれの調節可能な反射器は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、その個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合させてもよい。調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応した周波数を有する共振器空洞からのパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であってよい。出力反射器は、ラマンシフト周波数において部分的な透過性を有してもよい。少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0023】
第3の態様の一構成によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、複数の反射器を有する共振器空洞と、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように共振器空洞内に配置され、且つ、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質と、異なる波長の空洞内の共振光を空間的に分散させて共振器空洞内に二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために共振器空洞内に配置される分散素子と、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射して二つ又は複数の結合共振器空洞を形成するように配置された二つ又は複数の調節可能な反射器であって、それぞれの調節可能な反射器は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、その個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合させてもよく、調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応する周波数を有する共振器空洞からのパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であってもよく、出力反射器は、ラマンシフト周波数において部分的な透過性を有する、二つ又は複数の調節可能な反射器と、を有する。
【0024】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0025】
第4の態様によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、異なる周波数の光を共振させるようにそれぞれが適合されている少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器を有してもよい。複数の反射器のうちの少なくとも二つは、調節可能な反射器であってよく、それぞれの調節可能な反射器は、個々の結合共振器空洞と関連付けられている。本システムは、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を更に有してもよい。ラマン活性媒質は、結合共振器空洞のそれぞれ内に配置してもよく、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合させてもよい。本システムは、異なる周波数の光を空間的に分散させて少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために結合共振器空洞のそれぞれ内に配置される分散素子を更に有してもよい。空間的に分離されたビームのそれぞれは、個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有してもよい。調節可能な反射器のそれぞれは、結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、個々の結合共振器空洞の光学長を独立的に調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている。少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0026】
第4の態様の一構成によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、異なる周波数の光を共振させるように適合された少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器であって、複数の反射器のうちの少なくとも二つは、調節可能な反射器であり、それぞれの調節可能な反射器は、個々の結合共振器空洞と関連付けられている複数の反射器と、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質であって、ラマン活性媒質は、結合共振器空洞のそれぞれ内に配置され、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合されている固体ラマン活性媒質と、異なる周波数の光を空間的に分散させて少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために結合共振器空洞のそれぞれ内に配置される分散素子であって、空間的に分離されたビームのそれぞれは、個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有する分散素子と、を有し、調節可能な反射器のそれぞれは、結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、個々の結合共振器空洞の光学長を独立的に調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合させてもよい。
【0027】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0028】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様の調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、個々の共振器空洞内において共振している光の一部を出力するように適合させてもよい。或いは、この代わりに、調節可能な反射器のうちの何れか以外の反射器を共振器空洞内において共振している一つ又は複数の選択された出力周波数を有する光の一部を出力するように適合させてもよい。
【0029】
第2〜第4の態様のシステムの例示用の一構成は、空間的に分離された異なる周波数の光を共振させるようにそれぞれの空洞が適合されている三つの結合共振器空洞と、三つの調節可能な反射器であって、それぞれが、他の調節可能な反射器のそれぞれと関連付けられた共振器空洞と異なる共振器空洞と関連付けられ、且つ、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、自身が関連付けられた個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振している異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合された三つの調節可能な反射器と、を有してもよい。
【0030】
第2〜第4の態様のシステムの例示用の一代替構成は、空間的に分離された異なる周波数の光を共振させるようにそれぞれの空洞が適合されている四つ以上の結合共振器空洞と、四つ以上の調節可能な反射器であって、それぞれが、異なる共振器空洞と関連付けられ、且つ、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振している異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合された四つ以上の調節可能な反射器と、を有してもよい。
【0031】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様の分散素子は、共振器空洞内において二つ以上のラマンシフトビームを空間的に分散させてもよい。これらのラマンシフトビームは、ポンプビームの周波数との関係において、ラマン活性媒質の1次ストークス次数、2次ストークス次数、3次ストークス次数、又は更に高次のストークス次数に対応してもよい。それぞれの個々の空間的に分離されたビームと関連付けられた調節可能な反射器のそれぞれは、空間的に分離された共振ビームの個々のストークス次数に対応するように構成してもよい。分散素子は、格子、プリズム、及び一対のプリズムからなる群から選択されてもよい。
【0032】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のラマンシフト周波数は、ラマン活性媒質の特性ラマンシフトだけ、ポンプビームをラマンシフトさせることから得られるポンプビームの1次ストークス周波数、2次ストークス周波数、3次ストークス周波数、又は更に高次のストークス周波数であってよい。第2〜第4の態様の空間的に分離されたビームのそれぞれは、ラマン活性媒質の特性ラマンシフトだけ、ポンプビームをラマンシフトさせることから得られるポンプビームの1次ストークス周波数、2次ストークス周波数、3次ストークス周波数、又は更に高次のストークス周波数であってよい。
【0033】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様の調節可能な反射器は、選択された反射器を共振器空洞の光軸に沿って平行移動させ、これにより、共振器空洞の光学長を調節するように構成してもよい。共振器空洞の光軸は、共振器空洞の共振光学モードと一致するように規定してもよい。
【0034】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様の調節可能な反射器は、共振器空洞内のラマン変換光の+/−20ピコ秒のラウンドトリップ時間差に等しい長さだけ、共振器空洞の長さを調節するように構成してもよい。
【0035】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のラマンレーザーは、連続波モードロックラマンレーザーであってよい。
【0036】
第2〜第4の態様のうちの何れかの態様において、結合共振器空洞のそれぞれは、ポンプビームの周波数についてラマン活性媒質のストークス周波数に対応する周波数の光を共振させるように適合させてもよい。これらの結合共振器空洞は、部分的に一致したものであってもよく、結合共振器空洞のうちのそれぞれの空洞の共振器モード及び/又は光軸は、レーザーシステムの空洞の一部分内において空間的に一致したものであってもよい。
【0037】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のポンプビームは、モードロックポンプ源によって供給してもよい。ポンプ源は、連続波モードロックポンプ源であってもよい。ポンプ源は、ポンプ共振器空洞を含むポンプレーザーを有してもよく、この場合に、ポンプ共振器空洞は、共振器空洞と結合されている。共振器空洞の少なくとも一部分は、結合空洞構成においてポンプ源共振器空洞の少なくとも一部分を有してもよい。
【0038】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様におけるポンプビームは、共振器を同期ポンピングするように適合させてもよく、且つ、基本ビームのその基本波長(例えば、1.06μm又は1.3μm)又は2次高調波又は3次高調波又は4次高調波において動作するNdドープレーザー、Ti:サファイアレーザー、その他の希土類又は遷移金属イオンレーザー、アルゴンレーザー、色素レーザー、光パラメトリック発振器、光ポンピング垂直外部空洞面発光レーザー(Vertical External−Cavity Surface−Emitting Laser:VECSEL)源を含む光ポンピング半導体レーザーを含む半導体レーザー、及びファイバレーザーからなる群から選択されたポンプ源によって供給してもよい。ポンプ源は、Qスイッチングポンプ源であってもよい。ポンプ源は、モードロックポンプ源であってもよい。このポンプ源のグループは、当業者であれば理解するように、排他的ではなく、且つ、先程列挙されたものを代替するポンプ源を使用してもよい。
【0039】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のシステムは、同期ポンピングラマンレーザーシステムであってよい。
【0040】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のシステムにおいて、ポンプ源は、ポンプ共振器空洞を含むポンプレーザーを有してもよく、この場合に、ポンプ共振器空洞は、ラマンレーザーシステムの共振器空洞と結合されている。
【0041】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様のシステムは、0.05〜40ピコ秒のパルス幅のパルスを有するパルス化出力ビームを供給してもよい。或いは、この代わりに、出力ビームは、1〜40ピコ秒のパルス幅、1〜20ピコ秒のパルス幅、1〜10ピコ秒のパルス幅、1〜5ピコ秒のパルス幅、50〜1000フェムト秒のパルス幅、又は50〜200フェムト秒のパルス幅のパルスを有してもよい。
【0042】
第1〜第4の態様のうちの何れかの態様の出力反射器は、ラマン変換周波数において部分的な透過性を有してもよい。出力反射器は、ラマン変換周波数において最大で約80%の透過性を有してもよい。或いは、この代わりに、出力反射器は、ラマン変換周波数において最大で約90%の透過性を有してもよい。ラマン変換周波数の約10%超が共振器空洞内において共振してもよい。いくつかの構成において、レーザーシステムは、高利得レーザーシステムであってもよい。レーザーシステムの利得は、3超、5超、又は10超であってもよい。レーザーシステムの利得は、約1〜10、約2〜10、約3〜10、約4〜10、又は約5〜10であってもよい。その他の構成において、レーザーシステムは、0.01(1%)〜1の利得を有する低利得レーザーシステムであってもよい。
【0043】
第1の態様のシステムは、共振器空洞内において共振している一つ又は複数のビームの周波数変換のために共振器空洞内に配置される非線形媒質を更に有してもよい。第2〜第4の態様のうちの何れかの態様のシステムは、一つ又は複数の共振器空洞内において共振している一つ又は複数のビームの周波数変換のために共振器空洞内に配置される非線形媒質を更に有してもよい。非線形媒質は、一つ又は複数の共振器空洞内において共振している選択された周波数の2次高調波生成又は3次高調波生成のために構成してもよい。非線形媒質は、一つ又は複数の共振器空洞内において共振している少なくとも二つの周波数の和周波数生成又は差周波数生成のために構成してもよい。
【0044】
第5の態様によれば、同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法が提供される。この方法は、複数の反射器を有する共振器空洞を提供することを含んでもよい。少なくとも一つの反射器は、共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合させてもよい。本方法は、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するために、固体ラマン活性媒質を共振器空洞内に配置することを更に含んでもよい。本方法は、共振器の光学長を調節するための共振器調節器を提供することを更に含んでもよい。本方法は、共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内においてポンプパルスと空間的且つ時間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、共振器調節器を調節して空洞の光学長を調節し、共振するラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度と整合させることを更に含んでもよい。少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0045】
第5の態様の一構成によれば、同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法が提供され、この方法は、複数の反射器を有する共振器空洞であって、少なくとも一つの反射器が、共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合されている共振器空洞を提供し、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するために、固体ラマン活性媒質を共振器空洞内に配置し、共振器の光学長を調節するための共振器調節器を提供し、共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内においてポンプパルスと空間的且つ時間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、共振器調節器を調節して空洞の光学長を調節し、共振するラマン変換パルスのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度と整合させること、を含む。
【0046】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0047】
調節器は、共振器空洞の選択された反射器に対して装着された平行移動装置であってもよい。空洞の光学長の調節は、選択された反射器を共振器空洞の光軸に沿って平行移動装置によって平行移動させ、これにより、共振器空洞の光学長を調節することを含んでもよい。平行移動装置は、空洞長の約+/−1cmに対応した共振器空洞内のラマン変換光の+/−33ピコ秒のラウンドトリップ時間に等しい長さだけ、共振器空洞の光学長を調節するように構成してもよい。又、第1〜第4の態様のうちの何れかの態様の共振器調節器は、マイクロメートルレベル(例えば、約1〜100μm)における又はこれ未満(例えば、500〜1000nm)における共振器空洞の長さの微細調節のために構成してもよい。
【0048】
第6の態様によれば、マルチ波長同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法が提供される。この方法は、複数の反射器を有する共振器空洞を提供することを含んでもよい。本方法は、パルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するために、固体ラマン活性媒質を共振器空洞内に配置することを更に含んでもよい。ポンプビームは、ポンプ繰り返し速度を有してもよい。本方法は、異なる波長の空洞内の共振光を空間的に分散させて二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを共振器空洞内に生成するために共振器空洞内に配置される分散素子を提供することを更に含んでもよい。本方法は、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射して二つ又は複数の結合共振器空洞を形成するように配置された二つ又は複数の調節可能な反射器を提供することを更に含んでもよい。本方法は、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、それぞれの調節可能な反射器を調節し、その個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させることを更に含んでもよい。少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0049】
第6の態様の一構成によれば、マルチ波長同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法が提供され、この方法は、複数の反射器を有する共振器空洞を提供し、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するために、固体ラマン活性媒質を共振器空洞内に配置し、異なる波長の空洞内の共振光を空間的に分散させて二つ又は複数の空間的に分離された共振ビームを共振空洞内に生成するために共振器空洞内に配置される分散素子を提供し、個々の空間的に分離された共振ビームがその上部に入射して二つ又は複数の結合共振器空洞を形成するように配置される二つ又は複数の調節可能な反射器を提供し、空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、それぞれの調節可能な反射器を調節し、その個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させること、を含む。
【0050】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0051】
調節可能な反射器は、それぞれ、自身に装着された平行移動装置を有してもよい。結合共振器空洞のそれぞれの光学長の調節は、個々の空間的に分離されたビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光軸に沿って個々の調節可能な反射器のそれぞれを平行移動させ、これにより、要求に従って、それぞれの空間的に分離されたビームによって観察される共振器空洞の光学長を延長又は短縮させることを含んでもよい。
【0052】
第7の実施形態によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供する方法が提供される。この方法は、少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器を提供することを含んでもよい。少なくとも二つの結合共振器空洞は、異なる周波数の光を共振させるように適合させてもよい。複数の反射器のうちの少なくとも二つは、調節可能な反射器であってもよい。それぞれの調節可能な反射器を個々の結合共振器空洞と関連付けてもよい。本方法は、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を提供することを更に含んでもよい。ラマン活性媒質は、結合共振器空洞のそれぞれ内に配置してもよい。ラマン活性媒質は、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合させてもよい。本方法は、異なる周波数の光を空間的に分散させて少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために結合共振器空洞のそれぞれ内に配置される分散素子を提供することを更に含んでもよい。空間的に分離されたビームのそれぞれは、個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有してもよい。本方法は、結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、調節可能な反射器のそれぞれを独立的に調節して個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させることを更に有してもよい。少なくとも一つの反射器は、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームを入射させるように適合させてもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0053】
第7の態様の一構成によれば、マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供する方法が提供され、この方法は、異なる周波数の光を共振させるように適合された少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器であって、複数の反射器のうちの少なくとも二つが、調節可能な反射器であり、それぞれの調節可能な反射器が、個々の結合共振器空洞と関連付けられている複数の反射器を提供し、結合共振器空洞のそれぞれ内に配置され、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合されている固体ラマン活性媒質であって、その上部に入射する共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を提供し、異なる周波数の光を空間的に分散させて、それぞれが個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有する少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために結合共振器空洞のそれぞれ内に配置された分散素子を提供し、結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、調節可能な反射器のそれぞれを独立的に調節して個々の結合共振器空洞の光学波長を調節し、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度又は共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させること、を含む。
【0054】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であってもよい。或いは、この代わりに、パルス化ポンプビームは、非共線的ポンピング構成において供給してもよい。
【0055】
第5〜第7の態様のうちの何れかの態様において、本方法は、一つ又は複数の周波数の光を一つ又は複数の共振器空洞内において周波数変換するために一つ又は複数の共振器空洞内に非線形材料を提供することを更に含んでもよい。非線形媒質は、一つ又は複数の共振器空洞内において共振する選択された周波数の2次高調波生成又は3次高調波生成のために構成してもよい。非線形媒質は、一つ又は複数の共振器空洞内において共振する少なくとも二つの周波数の和周波数生成又は差周波数生成のために構成してもよい。
【0056】
第8の態様によれば、同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、連続波モードロックポンプビームを入射させるように適合された第1共振器空洞を有してもよい。共振器空洞は、第1固体ラマン活性媒質内のポンプビームを第1変換周波数を有する第1ラマン変換ビームに変換するように更に適合させてもよい。共振器空洞は、第1共振器空洞から第1ラマンビームの一部を出力するように更に適合させてもよい。第1共振器空洞は、第1共振器空洞の光学長を調節して第1共振器空洞内のラマン変換ビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度に整合させるための第1調節器を有してもよい。
【0057】
第8の態様の第1の構成によれば、同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、連続波モードロックポンプビームを入射させ、第1固体ラマン活性媒質内のポンプビームを第1変換周波数を有する第1ラマン変換ビームに変換し、且つ、第1共振器空洞から第1ラマンビームの一部を出力するように適合された第1共振器空洞を有し、第1共振器空洞は、第1共振器空洞の光学長を調節して第1共振器空洞内のラマン変換ビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度に整合させるための第1調節器を有する。
【0058】
第8の態様の第2の構成によれば、第1の構成による同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、第1ラマン変換ビームを入射させ、第1ラマン変換ビームを第2固体ラマン活性媒質内において第2ラマン変換ビームに変換し、且つ、第2共振器空洞から第2ラマン変換ビームの一部を出力するように適合された第2共振器空洞を更に有し、第2共振器空洞は、第2共振器空洞の光学長を調節して第2共振器空洞内の第2ラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を第1ラマン変換ビームの繰り返し速度に整合させるための第2調節器を有する。
【0059】
第8の態様の第3の構成によれば、同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、複数の縦続接続された共振器空洞を有し、それぞれの縦続接続された共振器空洞は、前の共振器空洞から出力されたビームを入射させ、入力されたビームをそれぞれの縦続接続された空洞内の固体ラマン活性媒質内において変換し、且つ、ラマン変換ビームを出力するように適合されており、それぞれの縦続接続された共振器空洞は、対応する共振器空洞の光学長を調節し、その内部において共振しているラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を入力されたビームの繰り返し速度に整合させるための調節器を有する。
【0060】
第9の態様によれば、同期ポンピング連続波モードロックマルチ波長ラマンレーザーシステムが提供される。このシステムは、複数の結合共振器空洞を有してもよく、それぞれの結合共振器空洞は、その内部において異なる周波数を共振させるように適合されている。本システムは、ポンプビームによってポンピングされるように適合されると共に複数の結合共振器空洞のそれぞれ内に位置するように配置された固体ラマン活性媒質を更に有してもよい。本システムは、個々の共振器空洞と関連付けられた複数の調節器を更に有してもよく、このそれぞれは、個々の空洞の光学長を調節し、その内部において共振しているビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度に整合させるように適合されている。結合共振器空洞のうちの少なくとも一つは、その内部において共振するビームの一部を出力するように適合させてもよい。
【0061】
第9の態様の一構成によれば、同期ポンピング連続波モードロックマルチ波長ラマンレーザーシステムが提供され、このシステムは、複数の結合共振器空洞であって、それぞれの結合共振器空洞は、その内部において異なる周波数を共振させるように適合されている複数の結合共振器空洞と、ポンプビームによってポンピングされるように適合されると共に複数の結合共振器空洞のそれぞれ内に位置するように配置された固体ラマン活性媒質と、個々の共振器空洞と関連付けられた複数の調節器であって、このそれぞれは、個々の空洞の光学長を調節し、その内部において共振しているビームのラウンドトリップ時間をポンプビームの繰り返し速度に整合させるように適合されている複数の調節器と、を有し、結合共振器空洞のうちの少なくとも一つは、その内部において共振するビームの一部を出力するように適合されている。
【0062】
第1〜第9の態様のうちの何れかの態様のラマン活性媒質は、KGW(タングステン酸カリウムガドリニウム)、KYW(タングステン酸カリウムイットリウム)、Ba(NO3)2(硝酸バリウム)、LiIO3(ヨウ素酸リチウム)、MgO:LiNbO3(酸化マグネシウムドープニオブ酸リチウム)、BaWO4(タングステン酸バリウム)、PbWO4(タングステン酸鉛)、CaWO4(タングステン酸カルシウム)、その他の適切なタングステン酸塩又はモリブデン酸塩、ダイアモンド、シリコン、GdYVO4(バナジウム酸ガドリニウム)、YVO4(バナジウム酸イットリウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、及びラマン活性を有するその他の適切な結晶質又はガラス材料の群から選択してもよい。ラマン活性媒質は、ラマン活性光ファイバであってもよい。
【0063】
第1〜第7の態様のうちの何れかの態様の非線形媒質は、LBO、LTBO、BBO、KBO、KTP、RTA、RTP、KTA、ADP、LiIO3、KD*P、LiNbO3、及び周期分極したLiNbO3、又はこれらに代わる適切な非線形媒質の群から選択してもよい。
【0064】
第1〜第9の態様のうちの何れかの態様におけるポンプビームは、共振器を同期ポンピングするように適合させてもよく、且つ、基本ビームのその基本波長(例えば、1.06μm又は1.3μm)又は2次高調波又は3次高調波又は4次高調波において動作するNdドープレーザー、Ti:サファイアレーザー、その他の希土類又は遷移金属イオンレーザー、アルゴンレーザー、色素レーザー、光パラメトリック発振器、光ポンピング垂直外部空洞面発光レーザー(VECSEL)源を含む光ポンピング半導体レーザーを含む半導体レーザー、及びファイバレーザーの群から選択されたポンプ源によって供給してもよい。ポンプ源は、Qスイッチングポンプ源であってもよい。ポンプ源は、モードロックポンプ源であってもよい。ポンプ源のこのグループは、当業者には理解されるように、排他的ではなく、且つ、先程列挙されたものに代わるポンプ源を使用してもよい。
【0065】
以下、一例としてのみ、添付図面を参照し、ラマンレーザーシステムの構成について説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの概略構成である。
【図1B】本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの概略構成である。
【図1C】非共線的ポンピング構成を利用する本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの代替構成である。
【図1D】本明細書に開示されている一連の縦続接続された同期ポンピングラマンレーザーシステムから形成されたマルチ波長ラマンレーザーシステムである。
【図2】本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの例示用の構成である。
【図3A】図2の構成における空洞長離調の関数としての平均出力パワーのグラフである。
【図3B】図2の構成における空洞長離調の関数としての出力パルス持続時間のグラフであり、主曲線の上方の軌跡は、異なる長さにおける計測された自己相関関数を表している。
【図4A】本明細書に開示されている図2の構成のパルス持続時間及び出力パワーのグラフである。
【図4B】本明細書に開示されている図2の構成のパルス持続時間及び出力パワーのグラフである。
【図5】本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーシステムの更なる構成である。
【図6A】本明細書に開示されている図5の構成の更なる構成の出力パワー及びパルス持続時間のグラフを示す。
【図6B】本明細書に開示されている図5の構成の更なる構成の出力パワー及びパルス持続時間のグラフを示す。
【図7】ラマンレーザーの空洞長離調の三つの値においてラマンレーザーシステム内のラマン結晶の前及び後の両方における本明細書に開示されている同期ポンピングラマンレーザーの数値分析から得られたパルス形状の一連のグラフである。
【図8】本明細書に開示されているマルチ波長同期ポンピングラマンレーザーの構成である。
【図9】図8のマルチ波長ラマンレーザー構成における1次ストークス(塗りつぶされていない円)及び2次ストークス(塗りつぶされていない正方形)の生成のための最適化された共振器のスロープ効率のグラフを示す。
【図10】図8のラマンレーザーシステムの1次ストークス出力における空洞長離調に対するパルス持続時間及び出力パワーの依存性のグラフを示す。
【図11】図8のラマンレーザーシステムにおける2次ストークス空洞長の関数としての出力パワー及びパルス持続時間のグラフである。
【図12】本明細書に開示されているマルチ波長同期ポンピングラマンレーザーの更なる構成である。
【図13A】本明細書に開示されている結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステムの例示用の構成の概略構成である。
【図13B】本明細書に開示されている結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステムの例示用の構成の概略構成である。
【図13C】本明細書に開示されているマルチ波長同期ポンピング超高速ラマンレーザーシステムに対する図13A及び図13Bのシステムの可能な適合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
定義
以下の定義は、一般的な定義として提供されるものであり、したがって、本発明の範囲をこれらの用語のみに限定するものではなく、以下の説明を十分に理解できるように提案するものである。
【0068】
特記しない限り、本明細書に使用されているすべての技術的且つ科学的な用語は、一般的に当業者が理解しているものと同一の意味を有している。本発明においては、以下の用語は、以下のように定義される。
【0069】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書においては、その冠詞の一つ又は複数の(即ち、少なくとも一つの)文法的な目的語を意味するために使用されている。一例として、「an element(一つの要素)」は、一つの要素又は複数の要素を意味している。
【0070】
「約(about)」という用語は、本明細書においては、基準量に対して、最大で30%だけ、好ましくは、最大で20%だけ、且つ、更に好ましくは、最大で10%だけ変化する量を意味するために使用されている。
【0071】
本明細書の全体を通じて、文脈がその他の意味を必要としていない限り、「有する(comprise)」、「有する(comprises)」、及び「有する(comprising)」という用語は、記述対象のステップ又は要素或いはステップ又は要素の群の包含を意味しており、任意のその他のステップ又は要素或いはステップ又は要素の群の排除を意味するものではないものと理解されたい。
【0072】
本発明を実施又は試験する際には、本明細書に記述されているものに類似した又はそれらと等価な任意の方法及び材料を使用することもできるが、好適な方法及び材料について記述することとする。本明細書に記述されている方法、装置、及びシステムは、様々な方法により、且つ、様々な目的のために、実施してもよいことを理解されたい。本明細書における説明は、例示を目的としたものに過ぎない。
【0073】
詳細な説明
本明細書には、CWモードロックポンプレーザー源によって同期ポンピングされる結晶質ラマンレーザーシステムを使用してnJパルスエネルギー及びCWパルス列を必要としている用途に更に適した黄色−オレンジ色スペクトル領域の出力を生成するシステム、方法、及び装置が開示されている。
【0074】
本出願は、一般的に、固体同期ポンピングラマンレーザーを有するレーザーシステム及びこのレーザーシステムの動作方法について記述しており、この場合に、例えば、ポンプ源は、例えば、同調可能なTi:サファイアレーザー又はネオジムに基づいたレーザーなどの任意の適切なパルス化ポンプ源であってよい。その他の構成においては、ポンプ源は、後述する更に高次のストークスビームに対する縦続接続変換構成において本明細書に記述されている例示用のラマンレーザーシステムのうちの任意のものによるラマンレーザーシステムであってもよい。ラマンレーザーは、レーザーの効率的な周波数変換のために理想的な成熟しつつある技術である。誘導ラマンシフト(Stimulated Raman Shift:SRS)は、ポンプ波長をシフトさせて更に長い「ストークス」波長を生成する非線形のプロセスである。この周波数ダウンシフトは、選択された特定のラマン結晶によって左右される。ラマンレーザーシステムにおいては、システムのコンポーネント及び設計の適切な選択を通じて、波長シフトを更に高次のものに縦続接続し、これにより、「2次ストークス」や「3次ストークス」などを生成してもよい。通常、これらのストークス波長は、光学空洞内において共振することにより、更に効率的な変換、高ビーム品質、及び縦続接続プロセスに対する向上した制御機能を付与する。
【0075】
ラマンレーザーは、いくつかの主要な長所を有する。OPOとは異なり、これらのレーザーは、結晶の温度又は角度の影響を受けることがまったくない。この結果、これらを商品化することは、簡単であり、且つ、安定している。ラマン結晶は、時間に伴って劣化することがなく、実際に、最良のラマン物質のいくつかは、バナジウム酸イットリウム(YVO4)などの標準的な商用レーザー物質である。ラマンプロセスは、波長依存性を有しておらず、したがって、システムは、赤外、可視、或いは、場合によっては、紫外領域のポンプレーザーを使用してポンピングしてもよい。ストークスシフトは、例えば、KGW(タングステン酸カリウムガドリニウム)、KYW(タングステン酸カリウムイットリウム)、硝酸バリウム、ヨウ素酸リチウム、タングステン酸バリウム、タングステン酸鉛、タングステン酸カルシウム、その他のタングステン酸塩及びモリブデン酸塩、ダイアモンド、バナジウム酸ガドリニウム及びバナジウム酸イットリウム、及びラマン活性を有するその他の結晶質材料を含む十分に試験された一連のラマン結晶のうちから選択することにより、大きく又は小さくなるように選択することができる。
【0076】
又、単一のラマンレーザー内において、縦続接続されたストークス波長の任意のものの効率的な生成を高速で切り替えることができるように、レーザーシステムを設計することができる。標準的な周波数倍増(standard frequency doubling:SHG)及び和周波数生成(Sum−Frequnecy Generation:SFG)を使用してラマン波長を混合することにより、更に大きな柔軟性を実現することができる。例えば、1064nmにおいてポンピングされる縦続接続ラマンレーザーからの波長を混合することにより、到達することが困難な550〜700nmの領域全体に対するアクセスが、後述する単一のレーザーから得られる。この周波数混合は、ラマンレーザー内において効率的に実行することが可能であり、且つ、高速で切り替えることによって潜在的な出力波長のなかから選択することができる。
【0077】
その内容のすべてが相互参照によって本明細書に包含される本発明者による国際特許出願第PCT/AU2007/000433号に開示されているものなどの連続波レーザーと比べて、超高速ラマンレーザーは、複雑であり、且つ、設計上の考慮事項が非常に異なっている。このような超短パルス化システムにとっては、単純な共振器は有用ではなく、ポンプパルスが、共振空洞場が形成できないほどに短い。共振器がない場合には、シングルパスラマンレーザーは、低ビーム品質と縦続接続プロセスに対する不十分な制御機能という問題を抱えることになる。
【0078】
この問題を克服するために、本明細書に開示されているシステムは、同期ポンピング法を使用しており、この技法については、非常に大規模なQスイッチングモードロックポンプ源の状況において既に研究が行われており[例えば、Straka他、Opt. Comm. 178、175〜180(2000)、或いは、Chunaev他、Laser Phys. Lett. 5、589〜592(2008)を参照されたい]、この場合には、ラマン共振器のラウンドトリップ時間をポンプパルス間の時間に整合させている。この方式により、それぞれの連続したポンプパルスが共振器内においてストークスパルスを増幅する状態において、一つ又は複数のストークス場を空洞内において共振させてもよい。詳細に後述するように、これらのレーザーは、パルス持続時間が物質応答時間を下回るSRSの「過渡的状態」において動作しており、且つ、光場と、関与する物質と、の間の相互作用の力学を理解するためには、理論的なモデルが必要とされる。
【0079】
本明細書には、次のものを含む同期ポンピングcwモードロックラマンレーザーシステムの様々な構成が開示されている。
【0080】
・周波数倍増されたモードロックNd:YVO4レーザーによってポンピングされる559nmにおいて動作する単一波長同期ポンピングラマンレーザー:開示されている例示用のレーザー構成は、25.6%の全体(緑色−黄色)効率においてCWモードロック出力を生成した。空洞長が完全な同期状態よりもわずかに長い際に、10psのポンプパルスから3.2psの出力パルスへの圧縮が観察された。
【0081】
・マルチ空洞構成において縦続接続ラマンシフトを使用して二つの異なる波長を生成するマルチ波長同期ポンピングモードロックラマンレーザーシステム:開示されている例示用の構成は、559nmにおいて2.4Wを、そして、589nmにおいて1.4Wを生成し、スロープ効率は、1次ストークス波長及び2次ストークス波長の両方において最大で52%であった。生成されたパルスのピークパワーは、パルス短縮の結果として、ほとんどポンプパルスと同じ程度に大きかった。
【0082】
・マルチ空洞構成において縦続接続ラマンシフトを使用して三つ以上の異なる波長を生成するマルチ波長同期ポンピングモードロックラマンレーザーシステム
【0083】
・縦続接続ラマンシフトと非線形周波数変換法の一つ又は複数の組合せを使用して一つ又は複数の選択可能な出力波長を生成する選択可能なマルチ波長同期ポンピングモードロックラマンレーザーシステム用のシステム及び方法
【0084】
・連続同調可能ポンピングモードロックラマンレーザーシステム
【0085】
これらのレーザーシステムは、マルチ波長及び選択可能な波長の出力を伴う、且つ、可変パルス圧縮を伴うレーザーシステムのための、UVから赤外までの範囲の全体にアクセスすることができる一群の超高速ラマンレーザーシステムを提供するように設計可能であるという利点を有する。この一群のレーザーシステムは、限定を伴うことなしにバイオフォトニクス及び二光子顕微鏡法を含む様々な用途に対して広範な影響を有する。例えば、二光子顕微鏡法は、特に、厚い組織サンプル内における、且つ、生体サンプルに対する損傷の回避が必要とされる、細胞の3D撮像に使用される定評のあるツールである。二光子顕微鏡法の別の用途は、分子アンケージングと呼ばれるケージ化化合物の空間分解光放出(spatially−resolved photorelease)である。これは、例えば、神経障害及び薬物摂取の研究に有用な化学物質又は薬剤の非常に局所的な放出のための定量的な技法である。これらの用途においては、既存の超高速供給源のスペクトルカバレージのギャップが研究の可能性を制限している。最も関心を集めているのが、且つ、本明細書に開示されているレーザーシステムが特に適しているのが、黄色/赤色のスペクトル領域であるという点が重要である。
【0086】
その他の利点と、本明細書に開示されているレーザーシステムから利益を享受する用途と、には、次のものが含まれる。
【0087】
蛍光ラベルを導入する代わりに固有の発蛍光団(トリプトファン、NADH、及びFADなど)の使用が可能となる:固有の発蛍光団は、適合性を有するラベルの必要性を除去することにより、サンプルが変化する可能性を回避し、且つ、撮像プロセスを単純化する。従来の主要な障害は、必要とされる励起波長であり、トリプトファンは、280nm周辺のピーク単一光子励起波長を有しており、これは、黄色スペクトル領域内の二光子励起波長に対応している。ラマン方式は、必要な波長を提供する。
【0088】
分子アンケージングのためのマルチ光子閃光光分解:この強力な二光子に基づいたツールの定量細胞生理学における採用は、ケージング分子に整合したレーザー源の入手可能性により、制限されてきた。これらは、通常、330nm周辺において単一光子アンケージング応答を有しており、且つ、したがって、二光子アンケージング波長は、約660nmである。ラマン方式は、必要な波長を提供する。
【0089】
レシオメトリック顕微鏡法:同時に二つの励起波長を使用するレシオメトリック顕微鏡法を使用し、化学種の濃度を計測することができる。例えば、二つの異なる励起波長によってマーカーの蛍光の比率を計測することにより、Ca2+の細胞内活動、代謝の重要情報、及び生体系のシグナリングの追跡を実現することができる。この用途は、具体的には、デュアル波長出力を供給する能力を有するレーザーシステムから利益を享受することができる。ラマンレーザーは、必要な波長の両方を同時に生成することが可能であり、且つ、したがって、これらのタイプの計測には、理想的且つ簡単な供給源である。厚い組織のCa2+の監視の場合には、マルチ光子法が必要とされ、且つ、したがって、黄色/オレンジ色領域におけるデュアル波長出力を有する超短パルス化レーザー源が必要とされる。本明細書に開示されているデュアル波長ラマンレーザーは、この到達が困難な領域内の必要とされる両方の波長(約680nmと約720nm)を同時に生成する能力を有しており、且つ、適切な染料(例えば、FURA−2AM染料)を使用するレシトメトリックCa2+監視を実行する。
【0090】
バイオフォトニクス以外においても、波長の多様な超高速レーザーは、その他の産業分野の用途に結び付くことになる。例えば、ディスプレイにおいては、波長の多様な超高速レーザーは、スペックルの低減をもたらし、二光子顕微鏡法の別の用途は、光データストレージをターゲットとしたマイクロリソグラフィである。
【0091】
超高速ラマンレーザー
図1Aを参照すれば、超高速(ピコ秒/フェムト秒)ラマンレーザーシステム10の例示用の構成が概略的に示されている。ラマンレーザーシステム10は、複数の反射器によって規定された共振器空洞15を有する。図示の構成には、四つの反射器11、12、13、及び14が示されているが、三つの反射器のみを有する共振器空洞を実現してもよく、その場合には、その3反射器空洞は、単一の「長い」アームを有してもよく、且つ、「湾曲」した反射器のうちの一つ(即ち、図1Aの反射器11又は反射器12のうちの何れか)を再帰反射器としてアライメントされた状態にしてもよいことを理解されたい。当業者には理解されるように、更なる構成においては、四つを上回る数(5、6、又はこれを上回る数)の反射器を利用してもよい。本構成においては、少なくとも一つの反射器(例えば、反射器11)は、パルス化ポンプビーム17を共振器空洞15に入射させるために適合された入力反射器として構成されており、ポンプビームは、既知のポンプ繰り返し速度を有する。この構成においては、ポンプパルスの伝播方向17aは、共振器空洞15内に配置されたラマン活性媒質20内において共振器軸15aと共線状態になるように構成されている。後述する代替構成においては、非共線的ポンピング構成を使用してもよい。更には、少なくとも一つの反射器(例えば、反射器14)は、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応した周波数において共振器空洞15からパルス化出力ビーム21を出力するために適合された出力反射器として構成されている。出力反射器14は、共振器空洞15内の共振ビームの一部が空洞を出射して出力ビーム21を形成することができるように、ラマン変換周波数において少なくとも部分的な透過性を有する。その他の構成においては、この代わりに、異なる共振器反射器(例えば、反射器13)を出力反射器として構成してもよい。
【0092】
固体ラマン活性媒質(水晶)20は、ポンプビームのポンプパルス17によってポンピングされるように、共振器空洞15内に配置されると共に空洞15内において位置決めされている。ポンプビームは、外部ポンプ源(図示されてはいない)によって生成される。ラマン活性媒質20は、ラマン活性媒質20に入射するポンプパルス17を共振器空洞15内において共振するラマン変換周波数(1次ストークス周波数)を有する共振パルス16にラマン変換するために適合されている。
【0093】
レーザーシステム10は、空洞15の光学長を調節するように適合された共振器調節器18を更に有する。共振器調節器18は、選択された反射器(例えば、反射器14)を共振器の光軸15a(この場合には、この光軸は、共振器15の共振モードと一致するように規定されている)に沿って移動させて共振パルス16によって観察される共振器空洞15の光学長を調節するように、特定の構成において構成されている。動作の際には、共振器15の光学長の調節を実行し、それぞれの共振パルス16が空洞15のそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質20内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質20内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、空洞15内において共振しているパルス16のラウンドトリップ時間をポンプパルス17の繰り返し速度のものと整合させる。本構成においては、共振器調節器18は、反射器が共振器空洞15の軸に沿って平行移動することができるように共振器反射器(例えば、出力反射器14)を線形平行移動装置に対して装着することにより、実現されている。空洞を延長させるための正の離調であるか又は空洞を短縮させるための負な離調であってよい小さな距離Δxだけの共振器空洞15の長さのこの「離調」により、共振パルス16とポンプパルス17は、同期ポンピング構成における共振パルス16のそれぞれのラウンドトリップにおいて、ラマン結晶20内において一致した状態になることができる。この結果、共振パルス16は、ラマン結晶20を通過するのに伴って、一致した状態にあるポンプパルス17からラマン利得を得ることになる。
【0094】
後述するその他の構成においては、ラマン活性媒質は、ラマン結晶20に入射する空洞15内において共振している任意の共振光パルス(例えば、パルス16)を縦続接続ラマン変換において更に高次のストークス周波数にラマン変換してもよい。
【0095】
レーザーシステムのラマン活性媒質は、好適には、KGW、LiIO3、Ba(NO3)2、或いは、KDP(燐酸二水素カリウム)、KD*P(重水素化)、KTP、RTP、YVO4、GdVO4、BaWO4、PbWO4、ニオブ酸リチウム、酸化マグネシウムドープニオブ酸リチウム、ダイアモンド、シリコン、及び様々なタングステン酸塩(KYW、CaWO4)、及びモリブデン酸塩又はバナジウム酸塩、又はラマン活性を有するその他の適切な結晶質又はガラス材料などのその他の適切なラマン活性物質の単一結晶である。ラマン活性媒質は、ラマン活性光ファイバであってもよい。その他の適切なラマン活性結晶は、CRC Handbook of Laser、或いは、Pantell及びPuthoffによる文献「Quantum Electronics」に記述されている。ラマン活性材料であるダイアモンド、MgO:LiNbO3、KGW、LiIO3、及びBa(NO3)2、YVO4、及びGdVO4は、少なくとも次の理由から、好ましい。
【0096】
・ダイアモンドは、非常に大きな熱伝導性、大きなラマンシフト(1332cm-1)、及び大きなラマン利得を有する。
【0097】
・MgO:LiNbO3は、非常に短い位相緩和時間(<0.5ps)を有し、且つ、その結果、大きなパルス圧縮/パルス短縮を可能にすることができる。256cm-1及び628cm-1を含むいくつかのラマンシフトが可能である。
【0098】
・KGWは、大きな損傷閾値を有する二軸結晶であり、且つ、768及び901cm-1のラマンシフトを提供する能力を有する。
【0099】
・Ba(NO3)2は、低閾値動作をもたらす高利得係数(1064nmのポンピングによって11cm/GW)を有する等方性結晶であり、且つ、1048.6cm-1のラマンシフトを提供することができる。
【0100】
・LiIO3は、ポンプ伝播方向及び偏光ベクトルとの関係における結晶のカット及び向きに依存する複雑なラマンスペクトルを有する有極短軸結晶であり、且つ、745cm-1と848cm-1の間のラマンシフトを提供することができるが(これらは、例えば、眼科及び皮膚科を含む医療用途に有用な578nmなどの特定用途用の波長をターゲットとしている際に有用である)、Ba(NO3)2(約400MW/cm2)と比べて小さな損傷閾値(100W/cm2)を有する。KGWは、約10GWcm-2というはるかに大きな損傷閾値を有する。
【0101】
・YVO4、GdVO4は、良好な熱特性、大きなラマン利得係数、及び大きな損傷閾値を特徴とする短軸結晶である。
【0102】
・LiIO3、YVO4、及びGdVO4は、いずれも、良好なスロープ効率を有し(最大スロープ効率は、基本光子エネルギーに対するストークスの比率によって決定され、且つ、最小値は、出力結合に対する共振器空洞内の損失の比率及び当業者には理解されるその他の要因によって設定される)、三つのすべてについて、70〜80%の光−光変換効率が報告されている。
【0103】
レーザーシステムは、好ましくは、ラマン活性媒質の光学的損傷が回避されるように動作する。表1は、一連の例示用のラマン活性媒質のラマンシフトを示しており、且つ、表2は、いくつかの例示用のラマン活性媒質のラマンシフト及び対応するストークス波長を示している。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
マルチ波長超高速ラマンレーザー
図1Bに概略的に示されているように図1Aの構成を変更し、マルチ波長超高速ラマンレーザーシステム50を提供してもよい。例えば、出力反射器14を除去し、且つ、共振器空洞15を延長させて、例えば、一対のプリズムP1 51及びP2 52などの分散素子を包含することにより、システム10を変更してマルチ波長システム50を実現してもよい。分散素子は、異なる波長/周波数の共振器空洞内の共振光を空間的に分散させて複数の空間的に分離された共振ビーム53、共振ビーム54、及び共振ビーム55を生成する。システム50は、複数の調節可能な反射器53a、反射器54a、及び反射器55aを有し、これらのそれぞれは、空間的に分離されたビーム50a、ビーム50b、及びビーム50cの個々のものを共振させ、これにより、複数の異なるが結合された共振器空洞を提供するようにアライメントされている。このラマンシステムにおいては、異なる周波数の空間的に分離されたビーム53、ビーム54、及びビーム55は、ラマン活性媒質20内における縦続接続ラマン変換プロセスによって生成されるポンプビーム17の連続したストークス次数に対応している。調節可能な反射器をそれぞれが有する結合された空洞は、共振するストークス次数のそれぞれによって観察される空洞長を調節することができるように共振器調節器を反射器53a、反射器54a、反射器55aのそれぞれに設けることにより、それぞれの空洞長に対する独立した制御を可能にしている。又、空間的に分離されたビームのそれぞれに対するアクセスが容易になるように、図示のように、更なるスクレーパ反射器56及びスクレーパ反射器57も使用されている。調節可能な反射器53a、反射器54a、及び反射器55aのそれぞれは、個々の結合共振器内においてそれぞれが共振している異なる周波数のパルスが、それぞれ、それぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質20内において相互に且つ/又はポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致するように、その個々の空間的に分離された共振ビーム(それぞれ、53、54、及び55)によって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、これにより、対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を、ポンプパルス17のポンプビーム繰り返し速度と、又は異なるが結合された共振器空洞内において共振している異なる周波数の一つ又は複数のビーム16a、ビーム16b、及び/又はビーム16cの繰り返し速度と、整合させるように適合されている。
【0107】
例示用のラマンレーザーシステム50は、共振光がレーザーシステムの1次ストークス次数、2次ストークス次数、及び3次ストークス次数に対応する三つの空間的に分離されたビームに分離され、且つ、それぞれが反射器53a、54a、及び55a上に入射する様子を示している。システムを動作させることが望ましい必要とされる波長に応じて、更に少ない数の又は更に多い数の反射器を使用してもよいことを理解されたい。例えば、レーザーは、2次ストークス光の出力のみが必要とされる場合があり、この場合には、反射器55及びスクレーパ反射器56を除去してもよい。個々の空洞は、必要に応じて、縦続接続を変更するために遮断することもできる。
【0108】
本明細書の例に記述されている準備作業において、非常に効率的な動作(50%を上回るスロープ効率)を実現することができることと、ポンプパルスよりも短い持続時間(10psのポンプレーザーにおいて、短い場合には3ps[4])を有するストークス出力パルスを生成することができることが判明した。以下、最大で三つのストークス波長を生成する縦続接続されたラマンシステムについて説明する。
【0109】
本明細書に開示されているラマンレーザーシステムは、システムから入手可能な出力波長の設計における大きな柔軟性を提供することを理解されたい。この波長の柔軟性に関する能力は、1)ポンプレーザー波長の選択肢と、2)ラマン結晶の選択肢と、3)共振器の設計と、4)空洞内周波数混合と、に起因している。これらのシステムにおいては、ポンプ源が非常に重要な選択肢であり、その理由は、ストークス次数のそれぞれがラマン結晶内において生成される元となる初期ポンプ波長が、ポンプ源により、即ち、選択された特定のラマン媒質のラマンシフト特性によるラマン結晶内におけるSRSによる周波数変換により、設定されるためである。
【0110】
この説明対象のレーザーシステムは、従来の超短パルスレーザーから入手可能な波長の範囲を根本的に拡張する能力を有しており、且つ、縦続接続された共振器からの同時マルチ波長出力を可能にする。これは、縦続接続共振器設計を使用し、要求に従って、単一出力ビームにおいて(図1Bの反射器13を通じて)、或いは、別個の複数のビームにおいて(図1Bの反射器53a、54a、及び55aの一つ又は複数のものを通じて)、いくつかの波長を同時に出力することができるレーザーを実証することにより、実現されている。これらの反射器の反射率を調節することにより、共振波長間のエネルギー分布を制御してもよい。又、ラマン結晶20を適切に選択することにより、出力波長の様々な組が可能となり、例えば、YVO4又はKGd(WO4)2は、532nmのポンプ源によってポンピングされた際に、559nm、588nm、及び608nm周辺の出力を供給することになり、ダイアモンドは、同一の532nmのポンプ源を使用してポンピングされた際に、573nm、620nm、及び675nm周辺の波長を供給することになる。レーザーシステムを紫外(UV)又は赤外(IR)のポンプ源によってポンピングすることにより、例えば、373nm、392nm、及び414nm(即ち、355nmのポンプビームによってポンピングされた際に)又は(1064nmのポンプビームによってポンピングされた際に)1177nm、1316nm、及び1495nmにおける同時出力が得られることになる。ラマン結晶の選択肢は、時間的特性に対して影響を及ぼすことになり、且つ、これらの影響については、パルス圧縮の検討と共に、本明細書において説明する。
【0111】
この開示対象のラマンレーザーシステムは、例えば、Ti:サファイアレーザーなどの同調可能なポンプ源を使用してラマンレーザーシステムを同期ポンピングした際に、同調可能な超高速ラマンレーザーを提供する能力をも有しており、且つ、例えば、それぞれ、867〜1147nm又は937−1272nmの同調可能なストークス又は2次ストークス出力を、それぞれ、約20%〜30%の全体効率において得ることができるものと期待される。又、Ti:サファイアレーザーの2次高調波によってポンピングして417〜543nm、433〜573nm、470〜639nmなどの同調範囲を得ることにより、可視領域における入手可能なポンプパワーの約10%〜約30%という期待効率によってこの概念を可視スペクトル領域にまで拡張することも可能であり、或いは、この代わりに、例えば、現在入手可能なポンプ源を使用して入手可能な赤外ポンプパワーレベルの約10%〜15%という効率を得ることもできる。
【0112】
これらの同調可能な構成においては、例えば、図1Cに示されているように、非共線的ポンピングを使用し、即ち、ダイクロイック入力反射器に対するニーズを回避することにより、ポンプビームの完全同調を許容してもよい。現在入手可能なポンプ源を使用することにより、少なくとも約100fsのパルスを得ることができるものと想定されるが、これらのパルス長においては、SRSプロセスは、極めて過渡的なものになり、且つ、この状況(BaNO3などの高速物質が最良に動作する可能性が高い)におけるレーザーシステムの最適化は、最大出力と、可能な最短の出力パルスを得る方法とのうちの何れか又は両方について、簡単ではなくなる可能性が高い。実際に、特に、高Q(即ち、共振器反射器上における高反射率)及び低閾値構成のレーザーシステムにおいては、ラマン結晶の群速度分散(Group Velocity Dispersion:GVD)を妨げるために分散補償が必要となろう。図1Cとの関係において前述した非共線的ポンピング構成においては、ポンプビームは、共振器空洞内において共振するパルスとラマン活性媒質内において実質的にオーバーラップしてはいるが、ポンプビームは、ラマン活性媒質を通過する共振ビームとの正確な共線状態にはない。
【0113】
又、この開示対象のラマンレーザーシステムは、波長の選択肢を増大させると共に波長を選択可能とするための空洞内周波数混合にも容易に適合可能であり、その理由は、共振器空洞内の大きな空洞内場に起因し、空洞内和周波数混合によって極めて効率的な周波数の上方変換が可能であるためである。
【0114】
したがって、図1Bの挿入図60に概略的に示されている更なる構成においては、例えば、反射器13を湾曲した反射器61によって置換すると共にこちらも湾曲した反射器であってよい更なる反射器62を追加することにより、図1A及び図1Bのシステムに対して空洞内非線形変換の機能が追加された超高速ラマンレーザーシステムを実現してもよく、この場合に、二つの新しい反射器の追加によって形成された共振器の光軸の角度は、共振器モードにおける非点収差を極小化するために小さい。反射器61及び62の組合せは、反射器61及び62の中間の共振器空洞内に追加のビームウエストを提供するように選択される(或いは、この代わりに、反射器62は、平らな反射器であってもよく、この場合には、新しいビームウエストは、反射器62に位置することになる)。非線形変換を実現するために、少なくとも一つの非線形媒質65が、共振器空洞内において、反射器61及び62によって形成された新しいビームウエストに配置される。非線形媒質65は、固体媒質であってよく、且つ、当業者には理解されるように、空洞15内において共振している選択された波長の高調波変換(例えば、2次高調波生成)を提供するか、或いは、二つ以上の共振波長の間における和又は差周波数混合を提供するために、選択してもよい。更なる構成(図示されはいない)は、反射器13と反射器12の中間にビームウエストを提供するように、且つ、先程と同様に、この新しいビームウエストに非線形媒質65を配置するように、単純に反射器13を選択するというものとなろう。更には、更なる構成においては、空洞は、複数の非線形媒質のために構成してもよい。例えば、反射器61及び62の間と、更には、反射器61及び12の中間と、の両方のアーム内にビームウエストを提供するように、且つ、新しいビームウエストのそれぞれに非線形媒質を配置するように、反射器61を選択してもよい。当業者には理解される更なる類似の構成も本構成に包含されるものと想定される。
【0115】
更には、非線形媒質65の角度を制御することにより、ラマン縦続接続を制御することが可能であり、且つ、出力波長を高速で切り替えることができる。この方式の場合に追加される複雑性には、群速度のウォークオフと、縦続接続されたストークスパルスが必ずしも完全には時間的にオーバーラップしていないという事実と、が含まれ、この場合に、別個の共振器長を制御する能力(即ち、反射器53a、54a、及び55aを使用することによるもの)が極めて有用である。前述のように共振器空洞に配置されたLBO(可視生成用)又はBBO(UV生成用)などの標準的な物質を使用することにより、効率的なシステムを実現することが可能であり、この場合に、ユーザーは、赤外ラマンレーザーからのいくつかの可視波長(例えば、KGWを使用した場合の559nm、588nm、608nm、或いは、ダイアモンドを使用した場合の約572nm、620nm、及び675nm)のなかから選択することができる。同時出力(出力エネルギーがレーザー波長間において共有される)と選択可能な出力(LBO/BBO結晶を構成することによって出力エネルギーが一つの選択可能な波長に注入される)の相違点に留意されたい。又、この方式は、532nmにおいてポンピングされるラマンレーザーからの選択可能なUV波長に対しても適用可能であり、この場合に、選択可能な波長は、例えば、373nm、392nm、及び414nmであってよいであろう。
【0116】
この代わりに、同期ポンピングラマンレーザーシステム10及び50の更なる構成は、図1Cに示されている非共線的ポンピング構成70を利用してもよい。このような非共線的ポンピング構成においては、ポンプビームは、ラマン活性媒質内において共振ビームとの共線状態にはない。ポンプビームパルス17は、共振空洞15内において共振しているパルス16とラマン活性媒質20内において実質的にオーバーラップしてはいるが、ポンプビームの伝播方向71は、ラマン活性媒質を通じて共振器空洞15の光軸15aとの正確な共線状態にはなく、むしろ、光軸との間に角度72を有する。以前のものと同様に、共振器空洞15の光学長は、空洞15内において共振しているパルス16のラウンドトリップ時間がポンプパルス17の繰り返し速度に対して整合され、この結果、それぞれの共振パルス16がそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質20内においてポンプパルス17と時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質内においてラマン変換周波数を有する共振パルス16をラマン増幅するように、調節される。
【0117】
図1Cに示されている非共線的ポンピング構成の利点は、反射器のうちの何れかを通じてではなく共振器反射器を通過するようにポンプパルスを構成することができるという点にある。例えば、図1Cに示されているように、ポンプパルス17は、共振器反射器11aの近傍を通過している。したがって、ポンプパルス17の高透過性と、共振パルスの高反射率と、のために構成することを要する入力反射器に対するニーズが存在していないことから、共振器反射器の要件(特に、この例においては、反射器11aのもの)を緩和してもよい。図1Cに示されている非共線的ポンピング構成は、要求に従って、本明細書に開示されているレーザーシステムのそれぞれにおいて利用してもよいことを理解されたい。
【0118】
図1Dに示されているように、マルチ波長ラマンレーザーシステムの更なる例示用の構成90においては、一連の縦続接続されたラマンレーザーシステムからラマンレーザーシステムを形成してもよい。この例示用の構成90においては、連続した縦続接続された段92、94、及び96のそれぞれは、例えば、(図1Aの)レーザーシステム10のものに類似したラマンレーザーシステムであってよいが、必要に応じて、それぞれの段の望ましい出力波長に応じて、本明細書に開示されているその他の構成又は均等物により、これらの段のそれぞれを代替してもよい。第1段のポンプ源は、例えば、Ti:サファイアレーザー又はネオジムに基づいたレーザーなどの外部ポンプ源であってよいが、それぞれの後続段のポンプ源は、前の段から出力されたラマン変換ビームである。この縦続接続システム90においては、波長λPUMP91を有するポンプビームが、第1段92に入力され、且つ、これが、第1段92から出力される波長λRC1を有する第1ラマン変換ビーム93にラマン変換される。第2段94は、第1ラマン変換ビーム93を受け取り、且つ、このビームを第2段94から出力される波長λRC2を有する第2ラマン変換ビーム95にラマン変換する。同様に、第3段96は、第2ラマン変換ビーム95を受け取り、このビームを第2段94から出力される波長λRC3を有する第3ラマン変換ビーム97に変換し、以下同様に継続する。それぞれの段において、ラマン活性媒質は、入力ビームのそれぞれが同一のラマンシフトだけシフトされるように、それぞれのその他の段のものと同一であってよい。この場合に、波長λRC1、λRC2、及びλRC3を有するビームのそれぞれは、ポンプビームλPUMPの1次ストークスラマン変換波長、2次ストークスラマン変換波長、及び3次ストークスラマン変換波長を有することになる。或いは、この代わりに、それぞれの段におけるラマン活性媒質は、それぞれの段において異なるラマン周波数シフトを実現するために、異なるラマン活性媒質であってもよい。当然のことながら、それぞれの段92、94、及び96などの反射器は、個々の入力ビームを入力すると共に個々のラマン変換ビームを出力するように構成されていることを理解されたい。例えば、段94の入力反射器(図示されてはいない)は、波長λRC1を有する第1ラマン変換ビームを入力するように適合されており、段94の共振器反射器(図示されてはいない)は、波長λRC1有する第2ラマン変換ビームの波長を有する光を共振させるように適合されており、且つ、段94の出力カプラ(図示されてはいない)は、波長λRC1を有する共振ビームの一部を出力するように適合されており、且つ、これは、それぞれの後続の段についても同様である。
【0119】
ラマンレーザーパルス圧縮
超高速ラマンレーザーの力学は、二つの主要な効果に起因して複雑であり、即ち、第1に、SRSは、非瞬間的であって、当然、ストークスパルスのトレーリングエッジにおける相対的に大きな利得をもたらし、第2に、群速度は、ラマン結晶を通じて伝播するのに伴って、パルス及びそれぞれのストークス波長について異なる。これらの効果に起因し、ラマンレーザー空洞の長さは、ストークスパルスの効率及びパルス形状に対して強力な影響を及ぼすことになる。実際に、いくつかの状況においては、効率的な動作を維持しつつ、大きなパルス短縮が観察された。類似の圧縮が同期OPOにおいても観察されたが、この場合には、ピコ秒の状況におけるSRSの非瞬間的特性の重要性に伴う更なる複雑性が存在している。
【0120】
本明細書には、異なるラマン物質を使用して相対的に高度なパルス圧縮を実現するという効果に関する研究結果が開示されており、究極の目標は、ピコ秒パルスをフェムト秒の領域に圧縮することにある。ラマン媒質の位相緩和時間は、BaWO4の場合の〜10psからLiNbO3の場合の200fsまで、物質間において桁を跨って変化する重要なパラメータであることが判明している。又、群速度分散及び縦続接続も、パルス圧縮に対して影響を及ぼす。以下の例に記述されている準備作業は、空洞長の微細調節により、選択可能且つ/又は変化可能なパルス持続時間を有する超高速レーザーシステムを得ることができることを示している。
【0121】
更には、光アイソレータを使用して単方向動作を強制することにより、パルス圧縮を強化するために逆伝播リングレーザー設計を利用してもよく、ラマンプロセスは、後退及び前進方向において類似の利得を有しており、且つ、シミュレーションの初期の結果は、この方法によって極端なパルス圧縮が実現されるであろうことを示している。
【0122】
又、本明細書には、有限差分モデル、場の振幅のモデル化、完全に一般的な過渡誘導ラマン散乱等式を使用し、且つ、群速度ウォークオフを含むレーザーシステムの数値モデルも開示されている。このモデル化は、以下の例において観察されるように、基礎をなす物理的過程に対する知見を提供し、実験を最適な状況に導くと共に、実験における観察結果との優れた一致を提供している。
【0123】
繰り返し速度の増大
本明細書に記述されているラマンレーザーシステムは、出力パルスに対する要件に応じて、更なる構成において変更してもよい。例えば、ポンプ繰り返し速度のものを下回るラウンドトリップ時間を実現するための相対的に短いラマン共振器空洞を有することにより、ラマンレーザーは、ポンプ源よりも大きな繰り返し速度において出力を生成してもよい。例えば、ラマン共振器空洞が、ポンプ繰り返し速度の長さの半分のラウンドトリップ時間を提供するための光学長を有するように構成されている場合には、ラマンレーザーは、ポンプ源の繰り返し速度の2倍で動作することになる。或いは、この代わりに、ポンプ繰り返し速度の3分の2のラウンドトリップ時間を有するラマン共振器空洞の場合には、ラマンレーザーは、ポンプの繰り返し速度の3倍で動作することになる。4分の3の長さの場合には、ラマンレーザーは、繰り返し速度の4倍で動作することになり、以下同様である。ポンプ繰り返し速度のその他の合理的な端数も、ラマンレーザーシステムの動作における繰り返し速度の改善をもたらす。このような繰り返し速度の増大は、繰り返し速度が大きいほど高速且つ微細な空間的走査が実現される走査顕微鏡法などの用途に有用であろう。例えば、80MHzポンプレーザーと、4分の3の長さを有するラマン空洞と、を使用することにより、ラマンレーザーシステムは、320MHzの繰り返し速度において動作することになり、且つ、したがって、走査顕微鏡は、各地点を4倍の速度においてサンプリングすることが可能であり、即ち、4分の1の時間でエリアをサンプリングするか、或いは、x及びy方向における2倍の分解能においてサンプリングする。
【0124】
例
例1:超高速同期ポンピングラマンレーザーシステム
この例においては、単一波長同期ポンピングラマンレーザーシステム100が図2に概略的に開示されており、ここで、HWP107は、532nmにおける半波長板であり、PBSは、偏光ビームスプリッタ108であり、且つ、Δxは、共振器空洞120の軸に沿って出力反射器M4 104を平行移動させることによる可能な空洞離調を表している。又、モード整合を考慮して、即ち、結晶110内のポンプビームのビームサイズをラマン結晶110の位置における空洞モードのサイズと整合させるように、ラマン結晶110内におけるポンプビーム116のビーム直径を調節するために、モード整合テレスコープシステム118も利用されている。
【0125】
この説明対象の例においては、図2のレーザーシステム100は、誘導ラマン散乱(SRS)利得媒質として500mm長のKGWラマン結晶110を有する。ラマン結晶110は、532nmにおいて反射防止(AntiReflection:AR)被覆されている。結晶110は、モードロックNd:YVO4ポンプレーザー115からのポンプビーム116がKGWラマン結晶110のNp軸に沿って伝播するように、方向付けされている。反射器M1 101、M2 102、M3 103、及びM4 104を有する4反射器Z字形折り畳み(z−fold)空洞を利用している。この構成においては、反射器M1 101は、20cmの曲率半径(Radius Of Curvature:ROC)を有するダイクロイック入力反射器となるように選択されており、M2 102は、20cmのROCを有すると共に共振器空洞120内のラマンシフト共振光130の波長(532nmの波長を有するポンプビームを使用した場合に559nm)において高度な反射性を有する湾曲した反射器となるように選択されており、M3 103は、共振波長において平坦な(平らな)高反射器となるように選択されており、且つ、M4 104は、共振ラマンシフト光130の波長において約5%の透過率を有する出力反射器(出力カプラ)となるように選択されている。
【0126】
反射器M1 101及びM2 102は、約23cmだけ離隔させた。この反射器の離隔は、KGWラマン結晶110の中心に約33μmの半径の共振器モードウエストを形成し、これは、ラマン結晶110内におけるポンプビーム116のビームウエストに整合していた。この構成において、最小レーザー発振閾値を実現するために空洞120を最適化した。Z字形折り畳み空洞120の角度は、空洞モードの非点収差を可能な限り極小化するために(当然のことながら、当業者には理解されるように、角度が小さいほど、共振器内のこの非点収差は低減されることになる)、可能な限り小さく設定した(この例においては、約4度であった)。反射器M1 101は、ラマン結晶110の効率的なポンピングと、ラマン波長559nmにおける高反射率と、を許容するために、532nmにおいて約90%の透過率を有するダイクロイック反射器となるように選択した。このレーザーシステム100は、(KGWラマン結晶110の特性ラマンシフトに起因して、532nmのポンプビームから)、出力ストークス光131が、この構成においては559nmの第1ストークス波長において約5%の透過率を有する出力反射器M4 104を通じて、共振器120から出力されるように設計されているが、共振器320のその他の反射器101、102、及び103を通じたラマンシフトされた第1ストークス光130の多少の漏洩も存在していた。したがって、この例において報告される出力パワーは、第1ストークス波長を有する様々な反射器M1〜M4を通じて出射されたパワーの合計である。理想に近い性能を有する反射器を(例えば、イオン−ビーム−スパッタリング被覆技術を使用して)製造することが可能であり、且つ、したがって、報告される第1ストークス波長を有する合計出力パワーは、最適化された構成においては、単一ビーム131内において容易に実現可能であることが容易に理解されよう。
【0127】
この例においては、ポンプ源115は、周波数倍増されたCWモードロックNd:YVC4レーザー(Spectra−Physics社のVanguard 2000−HM532)であった。M1 101を通じて、二つのモード整合レンズ118(f1=20cm、f2=15cm)により、2Wのポンピング放射を空洞モードサイズに整合された状態においてKGWラマン結晶110内に直接的に合焦した。ポンプパルスの持続時間は、10psであり、繰り返し速度は、80MHzであった。ポンプビーム116は、偏光され、且つ、ラマン結晶110は、この偏光光がKGWラマン結晶110のNm軸とアライメントし、これにより、532nmのポンプ光116から559nmの第1ストークス光130(共振器120内において共振しているもの)及び131(共振器120から出力されるもの)への変換に対応したKGW結晶内における901cm-1のラマンシフトに対して整合するように、構成されていた。
【0128】
図3A及び図3Bにおいて観察されるように、レーザーシステム100の平均出力パワー及び時間自己相関関数を空洞長の離調Δxの関数として計測した。空洞長離調Δxは、本明細書においては、Δx=0がポンプパルスと共振ラマンシフト光130の完全な同期状態に対応し、これにより、ポンプパルスと共振ラマンシフト光130が共振パルスのそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン結晶110内においてオーバーラップするようにレーザー動作のための最小閾値に対応した空洞長からの共振器120の長さの差として規定されている。Δxが正の値である場合には、空洞120内の共振ストークスパルス130は、それぞれのラウンドトリップにおいてポンプパルス116からわずかに遅れており、Δxが負である際には、共振ストークスパルス130は、ポンプパルス116よりも先行している。この離調Δxは、共振器空洞120の光軸に沿った高精度な平行移動段(図示されてはない)によってM4 104の位置を変更することによって実行された。
【0129】
空洞長に対する出力パワーの依存性が図3Aに示されており、且つ、観察することができるように、最大出力パワー135は、Δx=−60μmの空洞離調において観察された。出力パワーは、Δx>−60μmにおいては、急速に低下しており、且つ、Δx<−60μmにおいては、ゆっくりと減少した。ラマンシフトされた出力ビーム131の(DataRay Inc.社のBeam Scope P8を使用して)計測されたビーム品質は、M2<1.05というMの二乗値を有することが観察され、これは、M2=1.2というビーム品質を有するポンプビーム116のものよりもわずかに良好であった。
【0130】
図3Bは、市販の非共線的2次高調波自己相関器(Femtochrome Research Inc.社のFR−103XL)を使用して空洞離調の関数として計測された出力パルス持続時間を示している。主曲線の上方のトレース141、143、及び145は、異なる空洞長において計測された自己相関関数を表している。最大出力パワーの条件下において、ストークスパルス持続時間は、10psというポンプパルス持続時間と比べて、約8.5psであった。しかしながら、更に大きなΔxの場合には、出力パルスの大幅な短縮が観察され、空洞長が+8μmに離調され、且つ、ポンプが1.6Wの最大パワーに設定された際に、3.2psという最小パルス持続時間が観察された。プロットのこの部分の拡大図が、図3Bの挿入図150に示されている。自己相関トレースからのパルス持続時間Δτの判定においては、すべてのΔxについてガウス曲線状のパルス形状を仮定した。但し、空洞の離調に伴って、トレースの形状の変化が観察された。Δx<−50μm又はΔx>10μmの空洞の場合には、自己相関は、ガウス曲線に近接していた。最短パルスの場合には、自己相関は、更に強力なピークを有し、双曲正割−二乗(sech−squared)又は片側指数(single−sided−exponential)パルス形状と一致していた。これらのフィッティングを使用することにより、3ps未満の最小値にまで低下する図3Aに示されているものよりも短いパルス持続時間が得られることになろう。最大圧縮の位置から離れることにより、自己相関は、成長するペデスタルを示し、これが、約−45μmの空洞長離調における計測パルス持続時間の不連続性の原因である。
【0131】
図4は、レーザーシステム100のポンプパワーに対するパルス持続時間の依存性を示している。ポンプパワーのそれぞれの値における平均パルス持続時間のそれぞれの計測値161ごとに、最適なパルス圧縮において空洞長を調節した。低いポンプパワーの場合には、最良の圧縮は、Δx=0に近接した離調によって実現された。パワーの増大に伴って、パルス持続時間は、3.5ps未満に急速に減少したが、ポンプパワーが1.4Wから1.6Wに増大するのに伴って、更なる短縮をほとんど示さなかった。
【0132】
図4Bは、(i)最大出力パワーにおいて離調された空洞(塗りつぶされた正方形163)と、(ii)最短パルス持続時間において離調された空洞(塗りつぶされていない円165)と、という二つの異なる状況における平均出力パワーのグラフを示している。第1の状況において動作している際には、最大CW出力パワーは、1.6Wの入射パワーにおいて410mWであり、25.6%という最大緑色−黄色光変換効率に到達した。この場合のスロープ効率は、42%であった。第2の状況である最小パルス持続時間における動作の場合には、最大計測出力パワーは、290mWであり、これは、18%の光変換効率であった。但し、この第2の状況におけるスロープ効率は、ポンプパワーが>0.9Wである際に、大幅な降下を示した。このスロープの変化は、後述するように、発振器内におけるパルス圧縮の効果に起因している。計測された最低レーザー発振閾値は、(定義によって)Δx=0におけるものであり、この場合に、ポンプパワーは、360mWであった。2次ストークス次数又は更に高次のストークス次数へのラマン変換の縦続接続は、観察されなかったが、恐らく、これは、2次Stoke波長における大きな98%というラウンドトリップ空洞損失によるものであろう。
【0133】
検討
この例に提示されている結果の主要な特徴は、パルス短縮のために必要とされる非常に繊細な条件であり、空洞離調は、約3mmという10psポンプパルスの空間的な広がりと比べて、わずかに〜80μmの範囲であった。この繊細さは、通常は20〜40の別個のpsパルス列を生成するQスイッチモードロックレーザーによって同期ポンピングされる結晶質及びガスピコ秒ラマン発振器を使用する別のグループによって報告されているシステムの動作とは、非常に異なっている。それらの実験においては、ストークス場は、わずかに数十回のラウンドトリップにおいてノイズから生成されている。これは、それぞれのパスにおけるストークスパルスの強力な整形を伴うラウンドトリップ当たりに数百パーセントの利得を必要としており、その結果、許容される空洞離調に対する限度が格段に緩和されることになる。これらのシステムは、ラマン媒質内において生成される高利得に依存していることから、効果的な圧縮のために格段に大きなピークパワーが必要とされ、且つ、したがって、最大で1mJというエネルギーを有するピコ秒パルスが使用されている。
【0134】
連続したモードロックパルス列の場合には、この例と同様に、ラウンドトリップ利得は、出力結合と同一のレベルであった。この状況は、同期ポンピング光パラメトリック発振器(OPO)に関する以前の研究におけるものと非常に近接しており[例えば、Rauscher他、Opt. Lett. 20、2003〜2005(1995)を参照されたい]、且つ、このラマンレーザーシステムとRauscher他のOPOの間には、動作特性における多数の類似性が観察される。例えば、パルス圧縮は、わずかに正の離調において非常に小さな領域内において発生しており、且つ、より長い空洞及びより短い空洞の場合には、圧縮は、格段に小さく、負の離調に対応するサイズにおいて相対的に長いプラトーを有する。同期ポンピングOPOにおけるパルスの圧縮は、ポンプと生成されたパルスの間の群速度の不整合によって生成され、20を上回る圧縮比が得られる。このようなOPOを伴う従来の実験においては、相対的に大きな群速度に起因し、アイドラがポンプパルスを追い越すものと考えられた。したがって、アイドラが追い抜くのに伴って、アイドラのリーディングエッジは、増幅され、且つ、ポンプパルスを使い果たし、且つ、アイドラパルスのトレーリングエッジは、ポンプパルスの既に使い果たされた部分と相互作用するために、小さな利得を経験することになる。このアイドラパルスのリーディングエッジの選択的な増幅がパルス圧縮をもたらしている。
【0135】
本ラマンレーザーシステム100の圧縮特性も類似しており、群速度の不整合がパルス圧縮を駆動している可能性が高い。KGWラマン結晶110用のSellmeier等式[例えば、Pujol他のAppl. Phys. B68、187〜197(1999)に公開されている]を使用することにより、83fs/mmという群遅延の不整合が算出され、これは、Rauscher他の場合のOPO内のポンプとアイドラの間のパス当たりに1.6psという不整合と比べて、空洞ウエストの25mmという共焦点長において、ストークスパルスがそれぞれのパスにおいて2.1psだけポンプパルスを追い越すという結果をもたらす。これは、圧縮を許容するために10psのポンプパルスの十分に大きな割合を占めているが、3.2psの圧縮されたパルスは、10psのポンプパルスの全体と相互作用しないため、効率を犠牲にしている。KGWにおける大きな群遅延分散(559nmにおいて458fs2/mm)は、ポンプ及びストークス波長の間における相対的に小さな差にも拘らず、Rauscher他において算出されたものと類似した群遅延の不整合を結果的にもたらすことに留意されたい。
【0136】
この説明対象のラマンレーザーシステム100とOPOの主要な相違点は、瞬間的なχ(2)相互作用が非瞬間的なχ(3)ラマン相互作用によって置換されているという点にある。誘導ラマン散乱(SRS)相互作用においては、位相緩和時間T2にわたって振動モードのコヒーレントな発振の増強が存在し、この位相緩和時間は、この例のラマンレーザーシステム100のKGW内における901cm-1モードの場合には、1.96psに等しい。T2以下に匹敵する持続時間を有するストークスパルスの場合には(所謂、過渡的SRS)、この増強は、ストークスパルスのトレーリングエッジにおけるポンプの散乱の改善をもたらす。したがって、この結果、OPOの場合と比べて、パルスの尾部の増幅が改善され、これが、ストークスパルス持続時間がT2に接近した際にこの例において観察される圧縮の有効性の制限をもたらす要因である可能性が高い。又、過渡的SRSの影響は、恐らくは、システム100が負の方向においてはるかに大きな空洞長離調を許容することができるという事実の原因であり、この場合には、ストークスパルスがポンプパルスよりも先行しており、したがって、この結果、ストークスパルスの尾部における最大散乱強度がポンプパルスのピークと良好にアライメントされることになる。
【0137】
この例における結論として、CW同期ポンピングモードロックラマン発振器の動作によって黄色の強力な短パルス放射を生成する簡単且つ効率的な方法が実証されている。システム100のこの説明対象の構成においては、出力パルスは、(10psポンプから)3psにまで圧縮され、559nmにおいて0.29Wを生成し、緑色−黄色変換効率は、最良の圧縮が発生した際に、最大で18%であった。この技法は、安定した結晶質技術を使用する業界標準のモードロックレーザーの容易な波長変換を許容すると共に、短パルス黄色−オレンジ色放射の簡単で信頼性が高い供給源が必要とされている場合に理想的である。
【0138】
例2:超高速同期ポンピングダイアモンドラマンレーザーシステム
この例においては、例1に開示されているレーザーシステム100のものに類似したレーザーシステムの更なる構成においてモードロックレーザーによって同期ポンピングされるラマン媒質としてダイアモンドを有するモードロックラマンレーザーの図5に概略的に示されている例示用の構成200について説明する。ラマン結晶としてダイアモンドを使用することにより、能力の範囲が大幅に拡張される。KGW(768及び901cm-1)のものと比べたダイアモンド(1332cm-1)の相対的に大きなストークスシフトは、532nmのポンプレーザーを使用する際に、単一のストークスシフトからの573nmの出力波長を可能にする。又、ダイアモンドは、格段に大きな利得係数を有しており、相対的に小さな結晶を使用することが可能となる。KGWの場合の3.2psと比べたダイアモンドの相対的に長い位相緩和時間(6.8ps)は、後述するように、パルス持続時間に対して相対的に大きな限度を課すと共に同期ポンピングラマンレーザーにおけるパルス圧縮限度用のモデルの試験を可能にするものと期待される。又、ダイアモンドの優れた熱伝導性は、迅速な熱の除去と、したがって、潜在的に非常に大きな平均出力パワーと、をも許容する。
【0139】
この構成においては、レーザーシステム200は、ラマン活性媒質として6.7mm長のダイアモンド結晶210を使用することにより、573nmの第1ストークス波長において最大で2.2Wを生成することが観察された。以下、数値モデルを使用し、このシステムの力学について説明し、これにより、パルス持続時間がいくつかの状況において短縮される理由を示すこととする。
【0140】
ダイアモンドレーザー空洞220は、図5に概略的に示されているように、それぞれが+200mmの曲率半径(RoC)を有する二つの湾曲した反射器M1及びM2(それぞれ、201及び202)と、二つの平らな反射器M3及びM4(それぞれ、203及び204)と、から構成されたZ字形折り畳み構成であり、反射器M1 201は、ダイクロイック入力反射器であり、反射器M4 204は、出力反射器/カプラである。空洞220の折り畳み角度は、6.7mmのブリュースターカットのダイアモンドラマン結晶210によって導入される非点収差を補償するために、約6度に設定した。モードロックNd:YAGポンプレーザー215は、この例においては、非線形媒質214(例えば、LBO結晶)内における2次高調波倍増プロセスを使用することにより、532nmに周波数倍増され、且つ、ダイアモンドラマン結晶210内においてレーザー空洞220の32μm(1/e2半径)のモードウエストに略整合するように、反射器M1 201を通じて、レンズL1 217により、ダイアモンド結晶210内に合焦されている。532nmにおける最大で7.5Wのポンプ光216が、ダイアモンド結晶210に入射しており、この場合に、このポンプ光216は、78MHzの繰り返し速度を有する26psのパルスから構成されたパルス列を有していた。この構成においては、反射器M1 201、M2 202、及びM3 203は、(例えば、適切な光学被覆を使用して)573nmの1次ストークス波長において高度な反射性を有するように適合された。出力カプラ反射器M4 204は、573nmの1次ストークス波長において約12%の透過性を有するように適合された。
【0141】
例1と同様に、反射器M4 204の位置Δxは、レーザーの性能を最適化するために同調させてもよく、この場合に、Δx=0は、最低レーザー閾値を有する際に計測された空洞長として規定され、且つ、負の値は、短縮された空洞に対応している。
【0142】
まず、共振器空洞220のΔx=+50μmの離調において実現された出力ビーム231の最大出力パワーにおいてレーザーを最適化することにより、532nmのポンプ光216の7.5Wの入力ポンプパワーにおいて、573nmにおける2.21Wの出力パワーを計測した。レーザー閾値は、約2Wであるものと計測され、これは、この構成において、約41%というスロープ効率と、約29%という絶対効率と、をもたらした。
【0143】
図6A及び図6Bは、それぞれ、7Wの入力ポンプパワーにおいて計測されたΔxの関数としての573nmの出力の出力パワーとパルス持続時間のグラフを示している。図6Aは、パワー出力214を示している。図6Bに示されているパルス持続時間243は、走査2次高調波生成自己相関器によって計測され、パルス持続時間は、パルスが時間に伴うガウス曲線であるものと仮定して推定した。図6Aにおいて観察することができるように、出力パワーは、レーザー空洞220の長さの離調Δxの正と負の変化において極めて異なる方式で変化した。図6A及び図6Bにおいて観察することができるように、レーザー出力ビーム231の出力パワーに対する影響を最小限に抑制しつつ最大でΔx=−800μmという大きな負の離調(これは、ラウンドトリップ当たりに5.3psという時間的不整合に対応している)を許容することができた一方で、ちょうど+200μmの正の離調(1.3ps)により、レーザー動作が停止した。最大出力パワーは、+50μmの離調において観察され、この場合に、出力ビーム231のパルス持続時間は、図6Bにおいて観察することができるように、(ポンプ光216の26psというパルス持続時間と比較して)約21.3psになるものと計測された。短い空洞長においては、出力231のパルス持続時間は、Δx=−750μmにおける約30psの最大値まで単調に増大することが観察され、出力パワーは、〜50%だけ、減少した。長い空洞長の場合には、出力231のパルス持続時間は、Δx=+200μmにおける9psまで急激に減少し、出力パワーは、ちょうど前述の閾値まで急激に減少しており、したがって、この構成においては、パルスが短縮された状況において、出力ピークパワーの改善は観察されなかった。
【0144】
数値モデル化
上述の例2のダイアモンドレーザーの動作について説明するために、過渡ラマン散乱用の等式を使用して数値モデルを生成した。当然のことながら、この数値モデルは、当業者には理解されるように、異なるラマン活性媒質を有する同期ポンピングラマンレーザーシステムに対しても、まったく同様に適用することができる。この数値モデルは、フォノン励起のみならず、ストークス及びポンプパルスの振幅をも追跡し、且つ、結晶を通じたパルス間の群速度ウォークオフをも説明する。これらの等式は、例えば、Penzkofer他の[Progress in Quantum Electronics 6、55〜140(1979)]に付与されており(彼らの等式77〜79)、ストークス及びポンプパルスについて異なる群速度を使用しており、且つ、余分なフォノンの数が小さいという仮定を伴っている。有限差分法を使用して時間及び空間依存性等式を空間グリッド上における時間依存性等式の高精度な1次の組に変換した後に、Runge−Kuttaアルゴリズムを使用し、これらの等式を数値解析した。このアルゴリズムは、一つのパスからの出力ストークス場を後続のパスの入力ストークス場として使用することにより、結晶を通じたシングルパスのシーケンスについて解明するように適合されており、このシミュレーションは、ストークスパルスがその安定状態プロファイルに到達した際に終了する。共振したストークス場の数値的分散を回避するために、これらの等式をストークス群速度において移動するフレーム内において解いた。このモデルにおいては、それぞれのラウンドトリップの後に再循環する前に、ストークスパルスを遅延又は前進させることにより、空洞長の離調をシミュレートしている。このモデルにおいては、このダイアモンドラマンレーザーシステム200をシミュレートするために、ポンプパワー(7W)、持続時間(ガウス時間プロファイルを仮定して26ps)、空洞モードウエスト(31μm)、出力結合(12%)、及びダイアモンド長(6.7mm)という実験によって判明しているパラメータを使用した。
【0145】
自己相関計測をシミュレートして実験値との比較を許容することにより、シミュレートされた出力パワー242(図6A)及び出力パルス持続時間244(図6B)を出力パルスプロファイルから算出したが、図示されているように、実験データとの間に優れた一致が得られており、これは、同期ポンピングラマンレーザーシステムの主要な物理的プロセスのすべてが、この(単純化された)モデルに含まれていることを示している。実験データとの一致を実現するために、ラマン利得の50cm/GWへの設定と、573nmにおけるラマン共振器の受動的損失の13%への設定と、という二つのパラメータのみを数値モデルにおいて調節した。数値結果が小さな変化の影響を受けないように、フォノン位相緩和時間を6.8psに設定した。これらの値は、期待値と一致しており、532nmにおけるラマン利得は、詳細に判明していないが、その他の波長における計測値は、この値に近接することを示唆しており、空洞の受動的損失は、ラウンドトリップ当たりに6%という既知の反射器の漏れと、ダイアモンドのブリュースター面からの散乱、吸収、及び反射に起因した未知の寄与分(偏光解消に起因して大きくなりうる損失)と、を有する。
【0146】
パルス短縮メカニズムを解明するために、数値モデルを使用し、ストークスパルス生成を図5の同期ポンピングラマンレーザーシステム200の空洞長の関数として分析した。図7には、異なるΔxの範囲について、ダイアモンドを通過する前と後の両方におけるパルス及びストークスパルスのパルス形状が示されている。その群速度において結晶を通じて移動するストークスパルスが時間に伴ってシフトしないように、時間軸を設定している。これにより、結晶の入口と出口におけるパルスの相対的なタイミングと、ポンプを使い果たす方法と、を検討することができる。
【0147】
図7は、−900μm(上段フレーム281及び282)、+60μm(中段フレーム283及び284)、及び+180μm(下段フレーム285及び286)という空洞長の離調Δxにおけるダイアモンドラマン結晶210の単一の通過の前(左側プロット)と後(右側プロット)のポンプ(点線)パルスとストークス(実線)パルスのパルス形状を示している。まず、最大パワー出力であるΔx=+60μmに対応した空洞長におけるレーザーシステム200のダイアモンドラマン結晶210の通過の前(フレーム283)と後(フレーム284)のポンプ及びストークスパルスを示す図7の中段のフレーム283及び284のプロットのペアを検討しよう。ストークスパルス291及びポンプパルス292は、十分にオーバーラップしており、且つ、ポンプパルス292は、ラマン結晶を通過した後には、均一に且つ有効に使い果たされていることを観察することができる。
【0148】
図7の上段のフレーム281及び282のプロットのペアは、Δx=−900μm(相対的に短い空洞)という共振器空洞220の空洞長離調における同一のパラメータを示している。この長さの離調の場合には、増幅されていないストークスパルスのラウンドトリップ時間がポンプパルス間の時間よりも短い。但し、それにも拘らず、安定状態においては、ストークスのラウンドトリップ時間は、ポンプのパルス間周期に等しくなければならず、これは、後の時間においてパルスを事実上遅延させるストークスパルスの増幅により、即ち、フレーム282において観察されるそのトレーリングエッジの選択的な増幅により、実現されている。当然のことながら、出力ストークスパルスは、ラウンドトリップ損失と負のΔxに対応する時間進行の適用の後には、安定状態において必要とされるように、入力ストークスパルスと同一である。
【0149】
この必要とされるストークスパルスのトレーリングエッジの選択的な増幅は、当然のことながら、過渡ラマン散乱の状況においては、好ましい。ポンプ及びストークスパルスのリーディングエッジとの相互作用よって結晶内に蓄積されるフォノンは、トレーリングエッジが最大ラマン散乱断面を経験することに結び付く。この自然な傾向が、正の離調とは対照的に、大きな負の離調を許容することができる理由である。
【0150】
図7の下段のフレーム285及び286のプロットのペアは、Δx=+180μm(相対的に長い空洞)の共振器空洞長離調におけるパルス増幅の数値的な結果を示している。この場合には、それぞれのラウンドトリップにおいてストークスパルスを前進させるために、ポンプパルスのリーディングエッジを選択的に増幅しなければならない。尾部を増幅する自然な傾向を克服するために、リーディングエッジがポンプパルスのピークと一致してその利得を極大化させるように、ストークスパルスをポンプパルスのウィング内に配置しなければならない。この構成によっても、パルスは、わずかな量のみ、前進することが可能であり、且つ、したがって、許容できるのは、非常にわずかな正の離調である。パルス短縮が、ポンプパルスとの不十分なオーバーラップから、且つ、ポンプパワーの効率的な抽出を犠牲として、生じていることが明らかである。
【0151】
この効率的なパルス圧縮の欠如は、50mm長のKGW結晶が10psのポンプパルスから3.2psのパルスを効率的に生成することができるKGd(WO4)2(KGW)ラマン結晶を使用した前述の例1の類似のラマンレーザーシステム100に伴う以前の結果と対照的である。数値モデルは、効率的な圧縮にとって重要な要因は、結晶のそれぞれの通過の際のストークスパルスとポンプパルスの間の大きな群速度ウォークオフであり、これにより、相対的に短いストークスパルスは、ポンプパルスの全体と連携し、且つ、ポンプパルスの全体からエネルギーを抽出することができることを示している。この必要とされるウォークオフは、短いポンプパルスの場合に、且つ、大きな群速度分散(Group Velocity Dispersion:GVD)を有する長いラマン媒質の場合に、相対的に容易に実現される。この例においては、上述の例1のものと比べて、ダイアモンド結晶が7分の1と短く、且つ、ポンプパルスが2.6倍の長さであるため、圧縮が妨げられている。
【0152】
要すれば、この例2は、573nmの1次ストークス波長において2.2Wを生成するモードロックNd:YAGレーザーによって532nmにおいて同期ポンピングされるダイアモンドラマンレーザーを開示している。空洞長の離調に伴うレーザー動作の極端な非対称性は、過渡ラマン散乱の状況において動作している結果として説明される。
【0153】
例3:超高速同期ポンピングマルチ波長ラマンレーザーシステム
この例においては、例1のレーザーシステム100のものに類似しているがマルチ波長及び選択可能な波長出力のために構成されている更なるラマンレーザーシステム300について説明する。
【0154】
マルチ波長レーザーシステム300の構成が図8に概略的に示されており、この場合には、ラマン結晶310(SRS利得媒質)は、50×5×5mmのタングステン酸カリウムガドリニウム(KGW)結晶である。ラマン結晶310は、結晶表面における反射損失を極小化するために、垂直入射用の532nmにおける反射防止被覆を有する。このKGWラマン結晶310をそのNm軸に沿ってポンピングして901cm-1のラマンシフトを532nmのポンプビーム316と整合させることにより、559nmの1次ストークス波長及び589nmの2次ストークス波長を供給した。ポンプビーム316は、この構成においては78MHzの繰り返し速度によって1064nmにおいて22Wを生成するCWモードロックNd:YAGレーザーであるポンプ源315から得た。1064nmのポンプ放射316を3.5cm長の三ホウ酸リチウム(LBO)結晶内における非臨界位相整合2次高調波生成によって周波数倍増し、約7Wの光学パワー及び約28psのパルス持続時間を有する532nmのポンプビーム316を供給した。レンズL1 317を使用し、ポンプビーム316をラマン結晶310内に合焦したが、このレンズは、ラマン結晶310内のポンプビーム316のビームウエストをラマン結晶310内の共振器空洞320の共振器モードのウエストサイズと整合させるように適合されていた。
【0155】
図8に示されているこの設計における共振器空洞320の設計は、基本的に、Z字形折り畳み設計であった。この構成においてはそれぞれが20cmの曲率半径を有するように選択されている凹状反射器M1及びM2(それぞれ、301及び302)は、約23cmだけ離隔させた。この反射器の離隔は、KGWラマン結晶310内においてセンタリングされた33μmの共振器空洞モードウエスト半径をもたらした。以前の例におけると同様に、Z字形折り畳み空洞320の角度は、空洞モードの非点収差を極小化するために小さく維持した。縦続接続プロセスの効果的な制御のために、高分散F5プリズムP1及びP2のペア(それぞれ、341及び343)が、共振器空洞320内において共振している共振ビーム330からのストークス波長(例えば、1次ストークスビーム331及び2次ストークス空洞内ビーム332)を異なる端部反射器304及び305上にそれぞれ空間的に分離し、これにより、空洞320内において共振しているそれぞれのストークスモードの空洞長と出力結合の両方の独立した制御を有する別個の結合共振器空洞を形成している。1次ストークスモード331は、端部反射器M4 304に入射するように構成されており、2次ストークスモードは、存在する場合には、小さなスクレーパ反射器344により、端部反射器M5 305に導いた。反射器M1、M2、及びM3(301、302、及び303)は、それぞれ、共振ビーム330内のすべてのストークス波長について高反射率(99%を上回る反射率)を有するように選択した。この構成のレーザーシステム300は、ストークス放射が反射器M4 304及び反射器M5 305のうちの何れかを通じて出力されるように設計されているが、共振器320のその他の空洞反射器を通じた559nmの1次ストークス波長における及び589nmの2次ストークス波長における出力光の多少の漏れも存在していた。したがって、この例について以下に報告されている出力パワーは、共振器反射器のそれぞれからのすべての記録された出力の(即ち、出力カプラと、その他の不完全な共振器反射器301、302、及び303などを通じたわずかな漏れと、の)合計である。以前の例のそれぞれにおけると同様に、出力結合反射器M4 304及びM5 305は、それぞれ、共振器空洞330の軸に沿って平行移動することにより、共振波長モード331及び332のそれぞれのモードの空洞内場の循環がポンプレーザー315のパルス間周期と同期することを保証するための正しい空洞長を実現するように適合させた。
【0156】
1次ストークス波長のみにおいて光を出力するようにラマンレーザーシステム300を最適化させた際に、この構成において使用される反射器M4 304は、559nmにおいて80%の透過性を有する出力カプラであった。このモードにおいては、2次ストークス波長に対する更なる縦続接続は存在しなかった。図9は、1次ストークス(塗りつぶされていない円351)のスロープ効率のグラフを示している。図9において観察することができるように、1次ストークス波長における最大CW出力パワーは、6.5Wの入射パワーにおいて、559nmにおける約2.5Wであり、38.4%の最大緑色−黄色光変換効率に到達し、且つ、52%のスロープ効率を有していた。
【0157】
2次ストークス波長に対して縦続接続するようにラマンレーザーシステム300を最適化させた際に、共振する1次ストークス場331及び2次ストークス場332の両方は、レーザー結晶内においてオーバーラップしたが、反射器M4 304及びM5 305上に空間的に分離され、M4 304は、559nmの1次ストークス波長において高反射器であり、且つ、M5 305は、589nmの2次ストークス波長において80%の出力カプラであった。それぞれのストークス波長において最適な空洞長に効果的に整合させるために、それぞれの空洞長の微細調節が必要であった。図9は、2次ストークス(塗りつぶされていない正方形352)のスロープ効率をも示しており、2次ストークス波長589nmにおける最大出力パワーは、1.4Wであり、これは、21.5%の光変換効率であった。2次ストークス出力波長に対して縦続接続するためのスロープ効率は、この場合にも、52%であった。
【0158】
上述の結果においては、最大の出力パワーを実現するために空洞長を最適化させた。但し、異なる空洞長離調において、レーザーは、上述の例2において提示したモデル化の結果において実証された非瞬間的ラマン効果とポンプ場の使い果たしの間における複雑な相互作用に起因し、大きなパルス圧縮を示した。出力パルス形状の正確な取得は、レーザーの空洞内力学を正しく解釈するために非常に重要であり、パルスプロファイルを回復するために、本発明者らは、非同期相互相関法を使用した。図10は、1次ストークス出力(Δx1)におけるマイクロメートル(μm)を単位とする空洞長離調Δxに対するパルス持続時間及び出力パワーの依存性のグラフを示している。上述のように、それぞれの波長における空洞長離調(Δx1及びΔx2)は、それぞれの波長におけるレーザー動作の最小閾値に対応するものからの空洞長の差として規定されている。図10において観察することができるように、空洞離調が略Δx1=+500μmである際に、パルス圧縮がその最大値に到達することが観察された。この空洞離調における最短パルスは、559nmの1次ストークス波長における出力パルスの相互相関から得られた挿入図361によって示されているパルス形状を有しており、6.5psの持続時間を有し(圧縮比>4)、且つ、鋭いリーディングエッジを伴って非対称であった。強力な圧縮の領域内においては、出力パワーは低減されたが、ピークパワーは、依然として増大しており、559nmにおける最大ピークパワーは、Δx1=+450μmの空洞長において、1.92kWであった。Δx1<+200μmの空洞長離調においては、出力パワー及びパルス持続時間は、(図の範囲を十分に超える)Δx1=−2500μmまで延在する長いプラトーを示した。この領域内においては、ピークパワーは、約1.4kWであり、且つ、こちらも559nmの1次ストークス波長における出力パルスの相互相関から得られた挿入図363によって示されているものに類似したパルス形状を有していた。
【0159】
2次ストークス空洞長(Δx2)の関数としての出力パワー及びパルス持続時間が図11に示されている。この場合には、589nmの2次ストークス波長における出力パワーを極大化させるために、反射器M4 304及びM5 305を同時に平行移動させることにより、1次ストークス及び2次ストークスの空洞長を調節した。図11に示されている結果は、Δx1=280μmに固定された1次ストークス空洞長を設定することにより、計測した。出力パルスは、空洞離調が約Δx2=+200μmである際に最短であり、且つ、挿入図371によって示されているパルス形状を有することが観察された。これらのパルスは、5.5psの持続時間を有し(緑色からオレンジ色への圧縮比>5)、且つ、挿入図の相互相関されたトレース371に示されているように、小さな肩部を示した。負の離調Δxの場合には、パルス幅(塗りつぶされた円372)は、出力パワー(塗りつぶされていない正方形374)の減少に伴って、約10ps以上に徐々に増大した(挿入図の相互相関トレース373を参照されたい)。
【0160】
1次ストークスパルスの圧縮の動作とは対照的に、この場合には、出力パワーは、パルス圧縮が発生した際にその最大値に近接しており、これは、2次ストークスの圧縮メカニズムが1次ストークスとは異なることを示している。2.96kWの最大ピークパワーがΔx2=+100μmにおいて計測され、且つ、最大出力パワーは、1.4Wであった。表3は、様々な構成における1次ストークス及び2次ストークスの結果を要約している。
【0161】
【表3】
【0162】
結論として、この例は、559nmにおいて2.5Wを、そして、589nmにおいて1.4Wを生成する縦続接続された連続波モードロックラマンレーザーシステム300を実証している。それぞれのストークス次数における出力結合及び空洞長の独立的な最適化により、1次ストークス及び2次ストークスにおいて、最大で52%のスロープ効率が得られた。最大で38.4%及び21.5%という全体的な緑色−黄色及び緑色−オレンジ色効率が、それぞれ、実証されており、且つ、得られた最短パルスは、559nmにおいては、6.5psに、そして、589nmにおいては、5.5psに対応している。
【0163】
例4:超高速同期ポンピングマルチ波長ラマンレーザーシステム
本明細書に開示されているマルチ波長同期ポンピングラマンレーザーシステムの更なる構成380は、図12に概略的に示されているように実現され、同一の符号は、前述の例3の図8に示されている構成と同一のコンポーネントを示している。ラマンレーザーシステム380は、共振器空洞320内において3次ストークス波長333を共振させるようにアライメントされた第3共振器空洞を追加することにより、即ち、更なるスクレーパ反射器345と、更なる端部反射器306と、を追加することにより、実現されている。この更なる構成により、この構成における620nmの3次ストークス波長の出力光350は、100mW超の出力パワーを有するように実現された。この場合には、2次ストークス共振モード332用の出力結合反射器M5 305が高反射器によって置換されているが、その他の反射器を通じた2次ストークス場の大きな漏れが、この場の大きな損失として機能し、且つ、したがって、このレーザーは、620nmを生成するために最適化された状態からは、ほど遠かった。当業者には理解されるように、このレーザーシステムの更なる構成における共振器反射器被覆の更なる最適化により、620nmにおける更に大きな出力パワーを予想することができる。
【0164】
この技法を使用することにより、更なる縦続接続も可能であることものと予想される。又、1064nmのポンプ放射を使用した赤外縦続接続を生成するための類似のレーザーシステムの構築も、明らかに可能である。
【0165】
例5:結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステム
図13Aを参照すれば、結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステム400の例示用の構成が概略的に示されている。この特定の構成においては、垂直外部空洞面発光レーザー(VECSEL)をポンプレーザーとして使用しているが、当業者であれば、例えば、基本ビームの基本波長(例えば、1.06μm又は1.3μm)又は2次高調波又は3次高調波又は4次高調波において動作するNdドープレーザー、或いは、その他の希土類又は遷移金属イオンレーザー(例えば、エルビウム、イッテルビウム、ホルミウム、ツリウム、セリウム、ガドリニウム、プラセオジミウム、又はジスプロシウムドープレーザー、或いは、このような一つ又は複数の希土類ドーパントの組合せ)、Ti:サファイアレーザー、アルゴンレーザー、色素レーザー、光パラメトリック発振器、又は半導体レーザーなどの代替ポンプ源を有するように類似の結合空洞構成を設計してもよいことを理解するであろう。
【0166】
この構成においては、光ポンピングされる半導体利得素子415は、反射器404(これは、この例においては、出力カプラでもある)、半導体可飽和吸収ミラー(Semiconductor Saturable Absorber Mirror:SESAM)406、及びダイクロイックミラー403によって形成されたポンプ共振器空洞412内にポンプビーム408(実線)を生成し、且つ、このポンプ空洞412内に固体ラマン活性媒質410を含む。ラマン活性媒質410は、反射器404及び調節可能な反射器405によって形成されたストークス共振器空洞411内に配置されている。観察することができるように、ストークス共振器空洞411は、ポンプレーザー空洞412の一部と一致している。動作の際には、ポンプビーム408は、ラマン活性媒質410によってラマンシフトし、ポンプビーム408のラマンシフト周波数に対応する周波数を有するストークス共振器空洞411内において共振するラマンシフトストークス光ビーム407(破線)を生成する。SESAM406は、VECSEL415によって生成されたポンプビーム408をモードロックさせる。
【0167】
ダイクロイック反射器403は、共振するストークスビーム406の波長に対して実質的に完全な透過性(即ち、95%超の透過性)を有すると共にポンプビーム408の波長を有する光に対して実質的に完全な反射性(95%超の反射性)を有するように、(ミラー被覆及び入射角によって)適合されている。したがって、この構成は、それぞれ、ポンプ及びストークス空洞412及び411の長さの別個の制御を許容している。
【0168】
反射器404は、ポンプビーム408の波長を有する光に対しては、高度な反射性を有するように、且つ、ラマン変換周波数においては、少なくとも部分的な透過性を有して共振器空洞411内のストークス共振ビーム407の一部が空洞を出射して出力ビーム409を形成することを許容するように、適合されている。反射器405は、ラマンシフトストークス光ビーム407の波長を有する光に対して高度な反射性を有するように適合されている。
【0169】
この構成における任意選択のレンズ401及び402は、ラマン活性媒質410内においてポンプ及びストークス共振光を合焦する。或いは、この代わりに、レンズ401及び/又は402は、完全に省略してもよく、或いは、湾曲した反射器によって置換してもよい(例えば、反射器403及び/又は404及び/又は405は、任意選択により、ラマン活性媒質410内において光を合焦するために湾曲していてもよい)。
【0170】
動作の際には、調節可能な反射器405の位置を(反射器405及び404によって形成された)ストークス共振器空洞411の光軸に沿って移動させ、ストークス空洞411を同調させる。ストークス空洞411の同調は、共振するストークスパルスが空洞411のそれぞれのラウンドトリップにおいてラマン活性媒質410内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、これにより、ラマン活性媒質410内においてラマン変換周波数を有する共振パルスをラマン増幅するように、ポンプ空洞412内において共振しているポンプビーム408のパルスのラウンドトリップ時間をストークス空洞411内において共振しているストークスビーム407のパルスの繰り返し速度のものと整合されるために実行される。
【0171】
図13Bを参照すれば、結合空洞同期ポンピングラマンレーザーシステムの更なる例示用の構成420が、光ポンピングされるVECSELを有する状態において示されている。図13Aにおけると同様に、光ポンピングされる半導体利得素子435は、反射器424及び432とSESAM426によって形成されたポンプ空洞412内においてポンプビーム426(実線)を生成する。固体ラマン活性媒質(水晶)430は、反射器424(これは、出力カプラでもある)、ダイクロイック反射器433、及び調節可能なミラー425によって形成されたストークス共振器空洞411a内に配置されている。前述のように、ストークス共振器空洞411aは、ポンプレーザー空洞412の一部と一致している。動作の際には、ポンプビーム428は、ラマン活性媒質430によってラマンシフトし、ポンプビーム428のラマンシフト周波数に対応する周波数を有するストークス共振器空洞411a内において共振するラマンシフトストークス光ビーム427(破線)を生成する。
【0172】
以前のものと同様に、ダイクロイックミラー426は、共振ストークスビーム427の波長(周波数)に対しては、実質的に完全な透過性(即ち、95%超の透過性)を有すると共にポンプビーム428の波長(周波数)を有する光に対しては、実質的に完全な反射性(95%超の反射性)を有するように、(ミラー被覆及び入射角度によって)適合されている。したがって、この構成は、それぞれ、ポンプ及びストークス空洞412及び411の長さの別個の制御を許容している。
【0173】
反射器424は、ポンプビーム428の波長を有する光に対しては高度な反射性を有するように、且つ、ラマン変換周波数においては少なくとも部分的な透過性を有して共振器空洞411a内のストークス共振ビーム427の一部が空洞を出射して出力ビーム429を形成することを許容するように、適合されている。
【0174】
反射器425は、ラマンシフトストークス光ビーム427の波長を有する光に対して高度な反射性を有するように適合されている。レンズ421及び422は、結晶内において光を合焦するが、以前のものと同様に、完全に省略してもよく、或いは、湾曲した共振器反射器(例えば、反射器424及び/又は433及び/又は425)によって置換してもよい。
【0175】
動作の際には、調節可能な反射器425の位置を(反射器425、426、及び424によって形成された)ストークス共振器空洞411aの光軸に沿って移動させ、ストークス空洞411aを同調させる。SESAM426は、VECSEL435によって生成されたポンプビームをモードロックさせる。
【0176】
次に図13Cを参照すれば、当業者であれば、図1Cの変更済みの装置440によって概略的に示されているように、図1Aの装置を変更して図1Bの装置を製造するのに必要なものに類似した方式によって図13A及び図13Bの構成を変更することにより、マルチ波長システムを実現してもよいことを理解するであろう。
【0177】
図13Cにおいて、ビーム407/427は、それぞれ、ストークス共振器空洞411及び411a内において共振する図13A及び図13Bの個々のラマンシフトビームを表している。ラマンシフトビームは、プリズムペア441及び443によって分散され、それぞれ、調節可能な反射器444a、444b、及び444cによって反射される複数の空間的に分離された共振ビーム442a、442b、及び442cを生成している。
【0178】
図13Cに示されているように変更されたマルチ波長システムにおいては、(それぞれ、図13A及び図13Bの)反射器404及び424が、ストークス空洞内において共振しているラマンシフトビーム(それぞれ、411及び411a)の波長に対して高度な反射性を有するようにすることが有利であろう。したがって、この場合には、これらの反射器からのラマン出力(即ち、それぞれ、出力ビーム209及び429)は存在しない。その代わりに、調節可能なミラー444a、444b、及び444cが、それぞれ、ラマンシフトビーム442a、442b、及び442cに対して少なくとも部分的な透過性を有するようにすることが好ましい。したがって、反射器444a、444b、及び444cは、それぞれ、ラマンシフトストークス出力ビーム445a、445b、及び445cをそれぞれ供給するためのその上部に入射する個々のストークスシフト周波数用の出力カプラである。
【0179】
検討
上述のこの構成においては、1次ストークスとポンプの間の50mmのKGWラマン結晶(即ち、例1、例3、及び例4)における群遅延差は、4.2psであり、2次ストークス及び1次ストークスの間にも類似の遅延を有する。これは、正規分散であり、長い波長ほど、高速で伝播する。1次ストークス及び2次ストークスの間の大きな差が、2次ストークス生成を最適化するために別個に調節可能な空洞が必要とされる理由である。生成されたパルスの連続的な圧縮は、部分的には、この結晶を通じた群遅延の不整合によって生成されるが、この場合に、不整合は、ポンプパルス持続時間と比べて相対的に小さく、且つ、したがって、1次ストークスパルスの圧縮は、更に短いポンプパルスほどに効果的ではなかった。プリズムペアによって生成される群遅延差(GDD)は、1次ストークス及び2次ストークスの間においては、約−1psであり、且つ、したがって、上述の例のKGWラマンレーザー結晶310のGDDを部分的に補償している。原則的には、格段に大きなプリズムの離隔により、プリズムのペアを使用し、1次ストークス及び2次ストークスの相対的な空洞長を最適化することできよう。但し、プリズムを使用して波長を異なる端部反射器上に分離することにより、経路長の同調とそれぞれの反射器の反射率の個別の適合の両方のために格段に大きな柔軟性が許容される。
【0180】
共振器空洞内におけるパルスの動作に対する空洞長の離調の効果を理解することが重要である。まず、ポンプ及び1次ストークスパルスの動作について検討しよう。空洞離調がゼロである場合には、ストークス群速度におけるラウンドトリップ時間は、ポンプ源のパルス間周期と正確に等しい。波長の間の群遅延差は、結晶の通過の際に、2.2psだけ、ストークスパルスがポンプパルスを追い越すことを意味しているが、空洞長は、それぞれのラウンドトリップの後にこれらのパルスの相対的な位置が同一になるようなものになっている。
【0181】
空洞を延長させた場合には、初めは、それぞれのラウンドトリップにおいて、ポンプパルスと比べて、ストークスパルスは、後から到着するに違いないと思われる。しかしながら、レーザーは、安定状態において動作しているため、それぞれのラウンドトリップの後のポンプ及びストークスパルスの相対的な位置は、実際には、依然として同一でなければならない。この遅延は、実際には、それぞれのラウンドトリップにおいて、結晶を通過する際のストークスパルスの整形によって妨げられており、これは、この場合には、増幅されたストークスパルスがわずかに前進した位置に形成されるようなストークスパルスのリーディングエッジの選択的な増幅による。空洞離調が更に大きくなるのに伴って、更に大きなパルス整形が発生しなければならず、これには更に大きな利得が必要とされ、したがって、最終的に、レーザーは、閾値未満に降下する。
【0182】
空洞長離調の符号に伴うレーザー動作の強力な非対称性が存在している。これは、レーザーシステムが過渡ラマン散乱の状況において動作しているという事実に起因する。励起振動の位相緩和時間の20倍未満のパルス持続時間の場合には、過渡的な効果を考慮しなければならない。この説明対象の構成のポンプパルス持続時間は、28psであり、且つ、KGWの位相緩和時間は、2.1psであり、且つ、したがって、それぞれのパルスにおけるフォノンの蓄積も考慮しなければならない。この蓄積により、ストークスパルスのトレーリングエッジにおけるストークス利得が格段に大きくなる。負の離調は、ストークスパルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて少し早期に結晶に到達することに、且つ、したがって、トレーリングエッジにおいて最大の増幅を必要とすることに対応しており、これは、当然のことながら、過渡的な散乱の状況においては、好ましく、且つ、正の離調よりも、格段に大きな負の離調を許容することができることを意味している。
【0183】
パルス圧縮は、ストークスパルスが異なる速度に起因して結晶を通過する際にポンプパルスを掃引し、これにより、短いストークスパルスが長いポンプパルスからエネルギーを外部に掃引できるようにした結果として得られる。圧縮は、ストークスパルスがポンプパルスの少し後に結晶に到着することに対応している正の離調において最も効果的である。この場合には、その位置を前進させるためのパルスの整形が、ポンプパルスを通じたストークスパルスの掃引を強化し、これにより、圧縮効果が強化される。ストークスパルスのリーディングエッジは、ポンプパルスの使い果たされていない領域を通じて前進しているため、図9の正の離調において計測されているように、リーディングエッジの急勾配化が観察される。この圧縮及び過渡ラマン散乱の効果について十分に理解するためには、ラマン結晶としてダイアモンドを使用する類似のレーザーシステムとの関係において上述の例2において説明した数値モデル化が必要である。
【0184】
以上において記述/図示した方法及びシステムは、シングル及びマルチ波長システムの両方において、同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステムを少なくとも実質的に実現することを理解されたい。
【0185】
本明細書に記述されると共に/又は添付図面に図示されている方法及びシステムは、一例としてのみ提示されており、且つ、本発明の範囲を限定するものではない。特記されていない限り、ラマンンレーザーシステムの個々の態様及びコンポーネントは、変更してもよく、或いは、既知の均等物又は将来開発される又は将来許容可能な代替物であることが判明する現在は未知の代替品によって置換してもよい。又、本明細書に開示されているラマンレーザーシステムは、特許請求された本発明の範囲及び精神を逸脱することなしに、様々な用途のために変更してもよく、その理由は、潜在的な用途の範囲が大きいためであり、且つ、本ラマンレーザーシステムが多くのそのような変形に対して適合可能となるように意図されているためである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラマンレーザーシステムであって、
複数の反射器を有する共振器空洞であって、少なくとも一つの反射器は、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応する周波数において前記共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であり、前記出力反射器は、前記ラマン変換周波数において部分的に透過性を有する共振器空洞と、
ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように前記共振器空洞内に配置された固体ラマン活性媒質であって、前記ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを前記共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するための固体ラマン活性媒質と、
前記共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、前記ラマン活性媒質内において前記ラマン変換周波数を有する前記共振パルスをラマン増幅するように、前記共振器の光学長を調節して前記共振ラマン変換パルスのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度と整合させるための共振器調節器と、
を有するシステム。
【請求項2】
前記共振器空洞のうちの少なくとも一つの反射器は、前記パルス化ポンプビームを前記共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器である請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ラマンシフト周波数は、前記ラマン活性媒質の特性ラマンシフトだけ、前記ポンプビームをラマンシフトさせることによって得られる前記ポンプビームの1次ストークス周波数、2次ストークス周波数、又は3次ストークス周波数である請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記共振器調節器は、選択された反射器を前記共振器空洞の光軸に沿って平行移動させることにより、前記共振器空洞の光学長を調節するように構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記共振器調節器は、前記共振器空洞内の前記ラマン変換光の+/−20ピコ秒のラウンドトリップ時間差に等しい長さだけ、前記共振器空洞の長さを調節するように構成されている請求項1〜4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ラマンレーザーは、連続波モードロックラマンレーザーである請求項1〜5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記共振器空洞は、プライマリ共振器空洞であり、
前記プライマリ共振器空洞からの前記パルス化出力ビームは、プライマリ周波数変換ビームであり、
前記システムは、
複数のセカンダリ反射器を有するセカンダリ共振器空洞であって、少なくとも一つのセカンダリ反射器は、前記プライマリ出力ビームのセカンダリラマン変換周波数に対応する周波数において前記セカンダリ共振器空洞からセカンダリパルス化周波数変換出力ビームを出力するために適合されたセカンダリ出力反射器であり、前記セカンダリ出力反射器は、前記セカンダリラマン変換周波数において部分的な透過性を有する、セカンダリ共振器空洞と、
前記プライマリ周波数変換ビームによってポンピングされるように前記セカンダリ共振器空洞内に配置された第2固体ラマン活性媒質であって、前記ラマン活性媒質上に入射する前記プライマリ周波数変換ビームのパルスを前記セカンダリ共振器空洞内において共振するセカンダリラマン変換周波数を有するセカンダリ共振パルスにラマン変換するための第2固体ラマン活性媒質と、
前記セカンダリ共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて前記第2ラマン活性媒質内において前記プライマリ周波数変換ビームのパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、前記セカンダリラマン活性媒質内において前記セカンダリラマン変換周波数を有する前記セカンダリ共振パルスをラマン増幅するように、前記セカンダリ共振器の光学長を調節して前記共振セカンダリラマン変換パルスのラウンドトリップ時間を前記プライマリ周波数変換ビームの繰り返し速度と整合させるためのセカンダリ共振器調節器と、
を更に有する、マルチ波長動作のための請求項1〜6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも一つのセカンダリ反射器は、前記プライマリ周波数変換ビームを前記セカンダリ共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器である請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、
異なる波長の前記共振器空洞内の共振光を空間的に分散させて複数の結合共振器空洞内に複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために前記共振器空洞内に配置される分散素子と、
前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれに対応する複数の調節可能な反射器であって、それぞれの調節可能な反射器は、個々の空間的に分離された共振ビームが上部に入射するように配置されており、且つ、それぞれの調節可能な反射器は、前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致することにより、マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供するように、前記個々の空間的に分離された共振ビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節することにより、前記対応する空間的に分離されたビームの前記ラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は前記共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている、複数の調節可能な反射器と、
を有するマルチ波長動作のための請求項1〜8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
マルチ波長ラマンレーザーシステムであって、
複数の反射器を有する共振器空洞と、
ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように前記共振器空洞内に配置され、且つ、上部に入射する前記共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質と、
異なる波長の前記空洞内において共振する光を空間的に分散させて前記共振器空洞内に複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために前記共振器空洞内に配置された分散素子と、
個々の空間的に分離された共振ビームが上部に入射して複数の結合共振器空洞を形成するように配置された複数の調節可能な反射器であって、それぞれの調節可能な反射器は、前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は異なる周波数の共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、前記空間的に分離されたビームによって観察される前記個々の結合共振器空洞の光学長を調節することにより、前記対応する空間的に分離されたビームの前記ラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は前記共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている、複数の調節可能な反射器と、を有し、
前記調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、前記ポンプビームのラマンシフト周波数に対応する周波数において前記共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であり、前記出力反射器は、前記ラマンシフト周波数において部分的な透過性を有する、システム。
【請求項11】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを前記共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器である請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記分散素子は、前記共振器空洞内において複数のラマンシフトビームを空間的に分散させ、前記ラマンシフトビームは、前記ラマン活性媒質の1次ストークス次数、2次ストークス次数、3次ストークス次数、又は更に高次のストークス次数に対応する請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
それぞれの個々の空間的に分離されたビームと関連付けられた前記調節可能な反射器のそれぞれは、前記空間的に分離された共振ビームの前記個々のストークス次数に対応するように構成されている請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記分散素子は、格子、プリズム、及び一対のプリズムからなる群から選択される請求項10〜13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ポンプのポンプ源は、モードロックポンプ源である請求項1〜14の何れか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記ポンプのポンプ源は、連続波モードロックポンプ源である請求項1〜15の何れか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記ポンプのポンプ源は、ポンプ共振器空洞を含むポンプレーザーを有し、前記ポンプ共振器空洞は、前記共振器空洞と結合されている請求項1〜16の何れか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは、同期ポンピングラマンレーザーシステムである請求項1〜17の何れか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記パルス化出力ビームは、0.05〜40ピコ秒のパルス幅のパルスを有する請求項1〜18の何れか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記ラマン活性媒質は、KGW(タングステン酸カリウムガドリニウム)、KYW(タングステン酸カリウムイットリウム)、Ba(NO3)2(硝酸バリウム)、LiIO3(ヨウ素酸リチウム)、MgO:LiNbO3(酸化マグネシウムドープニオブ酸リチウム)、BaWO4(タングステン酸バリウム)、PbWO4(タングステン酸鉛)、CaWO4(タングステン酸カルシウム)、その他の適切なタングステン酸塩又はモリブデン酸塩、ダイアモンド、シリコン、GdYVO4(バナジウム酸ガドリニウム)、YVO4(バナジウム酸イットリウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、ラマン活性を有するその他の適切な結晶質又はガラス材料、及びラマン活性光ファイバからなる群から選択される請求項1〜19の何れか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記共振器空洞内において共振する一つ又は複数のビームの周波数変換のために前記共振器空洞内に配置された非線形媒質を更に有する請求項1〜20の何れか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記非線形媒質は、前記共振器空洞内において共振する選択されたビームの2次高調波生成又は3次高調波生成のために構成されている請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記非線形媒質は、前記共振器空洞内において共振する少なくとも二つのビームの和周波数生成又は差周波数生成のために構成されている請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記非線形媒質は、LBO、LTBO、BBO、KBO、KTP、RTA、RTP、KTA、ADP、LiIO3、KD*P、LiNbO3、及び周期分極したLiNbO3からなる群から選択される請求項21〜23の何れか一項に記載のシステム。
【請求項25】
マルチ波長ラマンレーザーシステムであって、
異なる周波数の光を共振させるように適合された少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器であって、前記複数の反射器のうちの少なくとも二つは、調節可能な反射器であり、それぞれの調節可能な反射器は、個々の結合共振器空洞と関連付けられている複数の反射器と、
上部に入射する前記共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質であって、前記ラマン活性媒質は、前記結合共振器空洞のそれぞれ内に配置され、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合されている固体ラマン活性媒質と、
異なる周波数の光を空間的に分散させて少なくとも二つの空間的に分散されたビームを形成するために前記結合共振器空洞のそれぞれ内に配置された分散素子であって、前記空間的に分離されたビームのそれぞれは、個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有する分散素子と、を有し、
前記調節可能な反射器のそれぞれは、前記結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は異なる周波数の共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、個々の結合共振器空洞の光学長を独立的に調節して前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている、システム。
【請求項26】
少なくとも一つの反射器は、前記パルス化ポンプビームを入射させるように適合されている請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、前記個々の共振器空洞内において共振する光の一部分を出力するように適合されている請求項25又は26に記載のシステム。
【請求項28】
前記調節可能な反射器のうちの何れか以外の反射器が、前記共振器空洞内において共振する一つ又は複数の選択された出力周波数を有する光の一部分を出力するように適合されている請求項25〜27の何れか一項に記載のシステム。
【請求項29】
三つの結合共振器空洞であって、それぞれの空洞は、空間的に分離された異なる周波数の光を共振させるように適合されている三つの結合共振器空洞と、
三つの調節可能な反射器であって、それぞれが、他の調節可能な反射器のそれぞれと関連付けられた共振器空洞と異なる共振器空洞と関連付けられ、且つ、前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、関連付けられた前記結合共振器空洞の光学長を調節して前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている三つの調節可能な反射器と、
を有する請求項25〜28の何れか一項に記載のシステム。
【請求項30】
四つ以上の結合共振器空洞であって、それぞれの空洞は、空間的に分離された異なる周波数の光を共振させるように適合されている四つ以上の結合共振器空洞と、
四つの以上の調節可能な反射器であって、それぞれが、他の調節可能な反射器のそれぞれと関連付けられた共振器空洞と異なる共振器空洞と関連付けられ、且つ、前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、関連付けられた前記個々の結合共振器空洞の光学長を調節して前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている四つ以上の調節可能な反射器と、
を有する請求項25〜28の何れか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記結合共振器空洞のそれぞれは、前記ポンプビームの周波数について前記ラマン活性媒質のストークス周波数に対応する周波数の光を共振させるように適合されている請求項25又は29に記載のシステム。
【請求項32】
同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法であって、
複数の反射器を有する共振器空洞であって、少なくとも一つの反射器が、前記共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合されている共振器空洞を提供し、
固体ラマン活性媒質を、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、前記固体ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを前記共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するために、前記共振器空洞内に配置し、
前記共振器の光学長を調節するための共振器調節器を提供し、
前記共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内においてポンプパルスと空間的且つ時間的の両方において一致し、前記ラマン活性媒質内において前記ラマン変換周波数を有する前記共振パルスをラマン増幅するように、前記共振器調節器を調節して前記空洞の光学長を調節し、前記共振ラマン変換パルスのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度と整合させること、
を含む方法。
【請求項33】
少なくとも一つの共振器反射器は、前記パルス化ポンプビームを前記共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記調節器は、前記共振器空洞の選択された反射器に対して装着された平行移動装置であり、且つ、前記空洞の前記光学長の調節は、前記共振器空洞の光軸に沿って前記平行移動装置によって前記選択された反射器を平行移動させることにより、前記共振器空洞の前記光学長を調節することを含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記平行移動装置は、前記共振器空洞内の前記ラマン変換光の+/−20ピコ秒のラウンドトリップ時間差に等しい長さだけ、前記共振器空洞の光学長を調節するように構成されている請求項34に記載の方法。
【請求項36】
マルチ波長同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法であって、
複数の反射器を有する共振器空洞を提供し、
固体ラマン活性媒質を、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、前記固体ラマン活性媒質上に入射した前記共振器空洞内の光をラマン変換するために、前記共振器空洞内に配置し、
異なる波長の前記空洞内の共振光を空間的に分散させて前記共振器空洞内に複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために前記共振器空洞内に配置される分散素子を提供し、
個々の空間的に分離された共振ビームが上部に入射して複数の結合共振器空洞を形成するように配置された複数の調節可能な反射器を提供し、
前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は異なる周波数の共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、それぞれの調節可能な反射器を調節して前記個々の空間的に分離されたビームによって観察される前記個々の結合共振器空洞の光学長を調節することにより、前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させること、
を含む方法。
【請求項37】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを前記共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であり、前記ポンプビームは、ポンプ繰り返し速度を有する請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記調節可能な反射器は、それぞれ、自身に装着された平行移動装置を有し、且つ、前記結合共振器空洞のそれぞれの光学長の調節は、前記個々の空間的に分離されたビームによって観察される前記個々の結合共振器空洞の光軸に沿って前記個々の調節可能な反射器のそれぞれを平行移動させることにより、要求に従って、それぞれの空間的に分離されたビームによって観察される前記共振器空洞の光学長を延長又は短縮させることを含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供する方法であって、
異なる周波数の光を共振させるように適合された少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器であって、前記複数の反射器のうちの少なくとも二つが、調節可能な反射器であり、それぞれの調節可能な反射器が、個々の結合共振器空洞と関連付けられている複数の反射器を提供し、
前記結合共振器空洞のそれぞれ内に配置され、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合されている固体ラマン活性媒質であって、上部に入射する前記共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を提供し、
異なる周波数の光を空間的に分散させて、それぞれが個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有する少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために前記結合共振器空洞のそれぞれ内に配置された分散素子を提供し、
前記結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は異なる周波数の共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、前記調節可能な反射器のそれぞれを独立的に調節して個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させること、
を含む方法。
【請求項40】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを入射させるように適合されている請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
実質的に添付図面及び/又は例に示されている本発明の実施形態のうちの何れかを参照して本明細書に記述されているラマンレーザーシステム。
【請求項42】
同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステム。
【請求項43】
第1共振器空洞であって、連続波モードロックポンプビームを入射させ、第1固体ラマン活性媒質内において前記ポンプビームを第1変換周波数を有する第1ラマン変換ビームに変換し、且つ、前記第1ラマンビームの一部分を前記第1共振器空洞から出力するように適合された第1共振器空洞を有し、前記第1共振器空洞は、前記第1共振器空洞の光学長を調節して前記第1共振器空洞内の前記ラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度に整合させるための第1調節器を有する請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
第2共振器空洞であって、前記第1ラマン変換ビームを入射させ、前記第1ラマン変換ビームを第2固体ラマン活性媒質内において第2ラマン変換ビームに変換し、且つ、前記第2ラマン変換ビームの一部分を前記第2共振器空洞から出力するように適合された第2共振器空洞を有し、前記第2共振器空洞は、前記第2共振器空洞の光学長を調節して前記第2共振器空洞内の前記第2ラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を前記第1ラマン変換ビームの繰り返し速度に整合させるための第2調節器を有する請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
複数の縦続接続された共振器空洞を有し、それぞれの縦続接続された共振器空洞は、前の共振器空洞から出力されたビームを入射させ、それぞれの縦続接続された空洞内の固体ラマン活性媒質内において前記入力されたビームを変換し、且つ、ラマン変換ビームを出力するように適合されており、それぞれの縦続接続された共振器空洞は、対応する共振器空洞の光学長を調節し、内部において共振する前記ラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を前記入力されたビームの繰り返し速度に整合させるための調節器を有する請求項42に記載のシステム。
【請求項46】
同期ポンピング連続波モードロックマルチ波長ラマンレーザーシステム。
【請求項47】
複数の結合共振器空洞であって、それぞれの結合共振器空洞は、異なる周波数を内部において共振させるように適合されている複数の結合共振器空洞と、
ポンプビームによってポンピングされるように適合され、且つ、前記複数の結合共振器空洞のそれぞれ内に位置するように配置された固体ラマン活性媒質と、
個々の共振器空洞と関連付けられた複数の調節器であって、それぞれが、前記個々の空洞の光学長を調節し、内部において共振するビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度に整合させるように適合されている複数の調節器と、を有し、
前記結合共振器空洞のうちの少なくとも一つは、内部において共振する前記ビームの一部分を出力するように適合されている、請求項46に記載のシステム。
【請求項1】
ラマンレーザーシステムであって、
複数の反射器を有する共振器空洞であって、少なくとも一つの反射器は、ポンプビームのラマンシフト周波数に対応する周波数において前記共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であり、前記出力反射器は、前記ラマン変換周波数において部分的に透過性を有する共振器空洞と、
ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように前記共振器空洞内に配置された固体ラマン活性媒質であって、前記ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを前記共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するための固体ラマン活性媒質と、
前記共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内においてポンプパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、前記ラマン活性媒質内において前記ラマン変換周波数を有する前記共振パルスをラマン増幅するように、前記共振器の光学長を調節して前記共振ラマン変換パルスのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度と整合させるための共振器調節器と、
を有するシステム。
【請求項2】
前記共振器空洞のうちの少なくとも一つの反射器は、前記パルス化ポンプビームを前記共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器である請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ラマンシフト周波数は、前記ラマン活性媒質の特性ラマンシフトだけ、前記ポンプビームをラマンシフトさせることによって得られる前記ポンプビームの1次ストークス周波数、2次ストークス周波数、又は3次ストークス周波数である請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記共振器調節器は、選択された反射器を前記共振器空洞の光軸に沿って平行移動させることにより、前記共振器空洞の光学長を調節するように構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記共振器調節器は、前記共振器空洞内の前記ラマン変換光の+/−20ピコ秒のラウンドトリップ時間差に等しい長さだけ、前記共振器空洞の長さを調節するように構成されている請求項1〜4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ラマンレーザーは、連続波モードロックラマンレーザーである請求項1〜5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記共振器空洞は、プライマリ共振器空洞であり、
前記プライマリ共振器空洞からの前記パルス化出力ビームは、プライマリ周波数変換ビームであり、
前記システムは、
複数のセカンダリ反射器を有するセカンダリ共振器空洞であって、少なくとも一つのセカンダリ反射器は、前記プライマリ出力ビームのセカンダリラマン変換周波数に対応する周波数において前記セカンダリ共振器空洞からセカンダリパルス化周波数変換出力ビームを出力するために適合されたセカンダリ出力反射器であり、前記セカンダリ出力反射器は、前記セカンダリラマン変換周波数において部分的な透過性を有する、セカンダリ共振器空洞と、
前記プライマリ周波数変換ビームによってポンピングされるように前記セカンダリ共振器空洞内に配置された第2固体ラマン活性媒質であって、前記ラマン活性媒質上に入射する前記プライマリ周波数変換ビームのパルスを前記セカンダリ共振器空洞内において共振するセカンダリラマン変換周波数を有するセカンダリ共振パルスにラマン変換するための第2固体ラマン活性媒質と、
前記セカンダリ共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて前記第2ラマン活性媒質内において前記プライマリ周波数変換ビームのパルスと時間的且つ空間的の両方において一致し、前記セカンダリラマン活性媒質内において前記セカンダリラマン変換周波数を有する前記セカンダリ共振パルスをラマン増幅するように、前記セカンダリ共振器の光学長を調節して前記共振セカンダリラマン変換パルスのラウンドトリップ時間を前記プライマリ周波数変換ビームの繰り返し速度と整合させるためのセカンダリ共振器調節器と、
を更に有する、マルチ波長動作のための請求項1〜6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも一つのセカンダリ反射器は、前記プライマリ周波数変換ビームを前記セカンダリ共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器である請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、
異なる波長の前記共振器空洞内の共振光を空間的に分散させて複数の結合共振器空洞内に複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために前記共振器空洞内に配置される分散素子と、
前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれに対応する複数の調節可能な反射器であって、それぞれの調節可能な反射器は、個々の空間的に分離された共振ビームが上部に入射するように配置されており、且つ、それぞれの調節可能な反射器は、前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致することにより、マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供するように、前記個々の空間的に分離された共振ビームによって観察される個々の結合共振器空洞の光学長を調節することにより、前記対応する空間的に分離されたビームの前記ラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は前記共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている、複数の調節可能な反射器と、
を有するマルチ波長動作のための請求項1〜8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
マルチ波長ラマンレーザーシステムであって、
複数の反射器を有する共振器空洞と、
ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように前記共振器空洞内に配置され、且つ、上部に入射する前記共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質と、
異なる波長の前記空洞内において共振する光を空間的に分散させて前記共振器空洞内に複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために前記共振器空洞内に配置された分散素子と、
個々の空間的に分離された共振ビームが上部に入射して複数の結合共振器空洞を形成するように配置された複数の調節可能な反射器であって、それぞれの調節可能な反射器は、前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は異なる周波数の共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、前記空間的に分離されたビームによって観察される前記個々の結合共振器空洞の光学長を調節することにより、前記対応する空間的に分離されたビームの前記ラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は前記共振器空洞内において共振しているビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている、複数の調節可能な反射器と、を有し、
前記調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、前記ポンプビームのラマンシフト周波数に対応する周波数において前記共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合された出力反射器であり、前記出力反射器は、前記ラマンシフト周波数において部分的な透過性を有する、システム。
【請求項11】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを前記共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器である請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記分散素子は、前記共振器空洞内において複数のラマンシフトビームを空間的に分散させ、前記ラマンシフトビームは、前記ラマン活性媒質の1次ストークス次数、2次ストークス次数、3次ストークス次数、又は更に高次のストークス次数に対応する請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
それぞれの個々の空間的に分離されたビームと関連付けられた前記調節可能な反射器のそれぞれは、前記空間的に分離された共振ビームの前記個々のストークス次数に対応するように構成されている請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記分散素子は、格子、プリズム、及び一対のプリズムからなる群から選択される請求項10〜13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ポンプのポンプ源は、モードロックポンプ源である請求項1〜14の何れか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記ポンプのポンプ源は、連続波モードロックポンプ源である請求項1〜15の何れか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記ポンプのポンプ源は、ポンプ共振器空洞を含むポンプレーザーを有し、前記ポンプ共振器空洞は、前記共振器空洞と結合されている請求項1〜16の何れか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは、同期ポンピングラマンレーザーシステムである請求項1〜17の何れか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記パルス化出力ビームは、0.05〜40ピコ秒のパルス幅のパルスを有する請求項1〜18の何れか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記ラマン活性媒質は、KGW(タングステン酸カリウムガドリニウム)、KYW(タングステン酸カリウムイットリウム)、Ba(NO3)2(硝酸バリウム)、LiIO3(ヨウ素酸リチウム)、MgO:LiNbO3(酸化マグネシウムドープニオブ酸リチウム)、BaWO4(タングステン酸バリウム)、PbWO4(タングステン酸鉛)、CaWO4(タングステン酸カルシウム)、その他の適切なタングステン酸塩又はモリブデン酸塩、ダイアモンド、シリコン、GdYVO4(バナジウム酸ガドリニウム)、YVO4(バナジウム酸イットリウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、ラマン活性を有するその他の適切な結晶質又はガラス材料、及びラマン活性光ファイバからなる群から選択される請求項1〜19の何れか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記共振器空洞内において共振する一つ又は複数のビームの周波数変換のために前記共振器空洞内に配置された非線形媒質を更に有する請求項1〜20の何れか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記非線形媒質は、前記共振器空洞内において共振する選択されたビームの2次高調波生成又は3次高調波生成のために構成されている請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記非線形媒質は、前記共振器空洞内において共振する少なくとも二つのビームの和周波数生成又は差周波数生成のために構成されている請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記非線形媒質は、LBO、LTBO、BBO、KBO、KTP、RTA、RTP、KTA、ADP、LiIO3、KD*P、LiNbO3、及び周期分極したLiNbO3からなる群から選択される請求項21〜23の何れか一項に記載のシステム。
【請求項25】
マルチ波長ラマンレーザーシステムであって、
異なる周波数の光を共振させるように適合された少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器であって、前記複数の反射器のうちの少なくとも二つは、調節可能な反射器であり、それぞれの調節可能な反射器は、個々の結合共振器空洞と関連付けられている複数の反射器と、
上部に入射する前記共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質であって、前記ラマン活性媒質は、前記結合共振器空洞のそれぞれ内に配置され、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合されている固体ラマン活性媒質と、
異なる周波数の光を空間的に分散させて少なくとも二つの空間的に分散されたビームを形成するために前記結合共振器空洞のそれぞれ内に配置された分散素子であって、前記空間的に分離されたビームのそれぞれは、個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有する分散素子と、を有し、
前記調節可能な反射器のそれぞれは、前記結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は異なる周波数の共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、個々の結合共振器空洞の光学長を独立的に調節して前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている、システム。
【請求項26】
少なくとも一つの反射器は、前記パルス化ポンプビームを入射させるように適合されている請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記調節可能な反射器のうちの少なくとも一つは、前記個々の共振器空洞内において共振する光の一部分を出力するように適合されている請求項25又は26に記載のシステム。
【請求項28】
前記調節可能な反射器のうちの何れか以外の反射器が、前記共振器空洞内において共振する一つ又は複数の選択された出力周波数を有する光の一部分を出力するように適合されている請求項25〜27の何れか一項に記載のシステム。
【請求項29】
三つの結合共振器空洞であって、それぞれの空洞は、空間的に分離された異なる周波数の光を共振させるように適合されている三つの結合共振器空洞と、
三つの調節可能な反射器であって、それぞれが、他の調節可能な反射器のそれぞれと関連付けられた共振器空洞と異なる共振器空洞と関連付けられ、且つ、前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、関連付けられた前記結合共振器空洞の光学長を調節して前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている三つの調節可能な反射器と、
を有する請求項25〜28の何れか一項に記載のシステム。
【請求項30】
四つ以上の結合共振器空洞であって、それぞれの空洞は、空間的に分離された異なる周波数の光を共振させるように適合されている四つ以上の結合共振器空洞と、
四つの以上の調節可能な反射器であって、それぞれが、他の調節可能な反射器のそれぞれと関連付けられた共振器空洞と異なる共振器空洞と関連付けられ、且つ、前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、関連付けられた前記個々の結合共振器空洞の光学長を調節して前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させるように適合されている四つ以上の調節可能な反射器と、
を有する請求項25〜28の何れか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記結合共振器空洞のそれぞれは、前記ポンプビームの周波数について前記ラマン活性媒質のストークス周波数に対応する周波数の光を共振させるように適合されている請求項25又は29に記載のシステム。
【請求項32】
同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法であって、
複数の反射器を有する共振器空洞であって、少なくとも一つの反射器が、前記共振器空洞からパルス化出力ビームを出力するために適合されている共振器空洞を提供し、
固体ラマン活性媒質を、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、前記固体ラマン活性媒質上に入射するポンプパルスを前記共振器空洞内において共振するラマン変換周波数を有する共振パルスにラマン変換するために、前記共振器空洞内に配置し、
前記共振器の光学長を調節するための共振器調節器を提供し、
前記共振パルスがそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内においてポンプパルスと空間的且つ時間的の両方において一致し、前記ラマン活性媒質内において前記ラマン変換周波数を有する前記共振パルスをラマン増幅するように、前記共振器調節器を調節して前記空洞の光学長を調節し、前記共振ラマン変換パルスのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度と整合させること、
を含む方法。
【請求項33】
少なくとも一つの共振器反射器は、前記パルス化ポンプビームを前記共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記調節器は、前記共振器空洞の選択された反射器に対して装着された平行移動装置であり、且つ、前記空洞の前記光学長の調節は、前記共振器空洞の光軸に沿って前記平行移動装置によって前記選択された反射器を平行移動させることにより、前記共振器空洞の前記光学長を調節することを含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記平行移動装置は、前記共振器空洞内の前記ラマン変換光の+/−20ピコ秒のラウンドトリップ時間差に等しい長さだけ、前記共振器空洞の光学長を調節するように構成されている請求項34に記載の方法。
【請求項36】
マルチ波長同期ポンピングラマンレーザーを提供する方法であって、
複数の反射器を有する共振器空洞を提供し、
固体ラマン活性媒質を、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように、且つ、前記固体ラマン活性媒質上に入射した前記共振器空洞内の光をラマン変換するために、前記共振器空洞内に配置し、
異なる波長の前記空洞内の共振光を空間的に分散させて前記共振器空洞内に複数の空間的に分離された共振ビームを生成するために前記共振器空洞内に配置される分散素子を提供し、
個々の空間的に分離された共振ビームが上部に入射して複数の結合共振器空洞を形成するように配置された複数の調節可能な反射器を提供し、
前記空間的に分離された共振ビームのそれぞれが、それぞれ、ポンプパルス又は異なる周波数の共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、それぞれの調節可能な反射器を調節して前記個々の空間的に分離されたビームによって観察される前記個々の結合共振器空洞の光学長を調節することにより、前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させること、
を含む方法。
【請求項37】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを前記共振器空洞に入射させるために適合された入力反射器であり、前記ポンプビームは、ポンプ繰り返し速度を有する請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記調節可能な反射器は、それぞれ、自身に装着された平行移動装置を有し、且つ、前記結合共振器空洞のそれぞれの光学長の調節は、前記個々の空間的に分離されたビームによって観察される前記個々の結合共振器空洞の光軸に沿って前記個々の調節可能な反射器のそれぞれを平行移動させることにより、要求に従って、それぞれの空間的に分離されたビームによって観察される前記共振器空洞の光学長を延長又は短縮させることを含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
マルチ波長ラマンレーザーシステムを提供する方法であって、
異なる周波数の光を共振させるように適合された少なくとも二つの結合共振器空洞を規定する複数の反射器であって、前記複数の反射器のうちの少なくとも二つが、調節可能な反射器であり、それぞれの調節可能な反射器が、個々の結合共振器空洞と関連付けられている複数の反射器を提供し、
前記結合共振器空洞のそれぞれ内に配置され、且つ、ポンプ繰り返し速度を有するパルス化ポンプビームによってポンピングされるように適合されている固体ラマン活性媒質であって、上部に入射する前記共振器空洞内の光をラマン変換するための固体ラマン活性媒質を提供し、
異なる周波数の光を空間的に分散させて、それぞれが個々の結合共振器空洞内において共振するように適合された周波数を有する少なくとも二つの空間的に分離されたビームを形成するために前記結合共振器空洞のそれぞれ内に配置された分散素子を提供し、
前記結合共振器空洞のそれぞれ内において共振する光のパルスが、それぞれ、ポンプパルス又は異なる周波数の共振ビームのパルスとそれぞれのラウンドトリップにおいて前記ラマン活性媒質内において時間的且つ空間的の両方において一致するように、前記調節可能な反射器のそれぞれを独立的に調節して個々の結合共振器空洞の光学長を調節し、前記対応する空間的に分離されたビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度又は異なる共振器空洞内において共振する異なる周波数のビームの繰り返し速度と整合させること、
を含む方法。
【請求項40】
少なくとも一つの反射器は、パルス化ポンプビームを入射させるように適合されている請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
実質的に添付図面及び/又は例に示されている本発明の実施形態のうちの何れかを参照して本明細書に記述されているラマンレーザーシステム。
【請求項42】
同期ポンピング連続波モードロックラマンレーザーシステム。
【請求項43】
第1共振器空洞であって、連続波モードロックポンプビームを入射させ、第1固体ラマン活性媒質内において前記ポンプビームを第1変換周波数を有する第1ラマン変換ビームに変換し、且つ、前記第1ラマンビームの一部分を前記第1共振器空洞から出力するように適合された第1共振器空洞を有し、前記第1共振器空洞は、前記第1共振器空洞の光学長を調節して前記第1共振器空洞内の前記ラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度に整合させるための第1調節器を有する請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
第2共振器空洞であって、前記第1ラマン変換ビームを入射させ、前記第1ラマン変換ビームを第2固体ラマン活性媒質内において第2ラマン変換ビームに変換し、且つ、前記第2ラマン変換ビームの一部分を前記第2共振器空洞から出力するように適合された第2共振器空洞を有し、前記第2共振器空洞は、前記第2共振器空洞の光学長を調節して前記第2共振器空洞内の前記第2ラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を前記第1ラマン変換ビームの繰り返し速度に整合させるための第2調節器を有する請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
複数の縦続接続された共振器空洞を有し、それぞれの縦続接続された共振器空洞は、前の共振器空洞から出力されたビームを入射させ、それぞれの縦続接続された空洞内の固体ラマン活性媒質内において前記入力されたビームを変換し、且つ、ラマン変換ビームを出力するように適合されており、それぞれの縦続接続された共振器空洞は、対応する共振器空洞の光学長を調節し、内部において共振する前記ラマン変換ビームのラウンドトリップ時間を前記入力されたビームの繰り返し速度に整合させるための調節器を有する請求項42に記載のシステム。
【請求項46】
同期ポンピング連続波モードロックマルチ波長ラマンレーザーシステム。
【請求項47】
複数の結合共振器空洞であって、それぞれの結合共振器空洞は、異なる周波数を内部において共振させるように適合されている複数の結合共振器空洞と、
ポンプビームによってポンピングされるように適合され、且つ、前記複数の結合共振器空洞のそれぞれ内に位置するように配置された固体ラマン活性媒質と、
個々の共振器空洞と関連付けられた複数の調節器であって、それぞれが、前記個々の空洞の光学長を調節し、内部において共振するビームのラウンドトリップ時間を前記ポンプビームの繰り返し速度に整合させるように適合されている複数の調節器と、を有し、
前記結合共振器空洞のうちの少なくとも一つは、内部において共振する前記ビームの一部分を出力するように適合されている、請求項46に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【公表番号】特表2013−515357(P2013−515357A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545017(P2012−545017)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001726
【国際公開番号】WO2011/075780
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(500125504)マックォーリー・ユニバーシティ (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001726
【国際公開番号】WO2011/075780
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(500125504)マックォーリー・ユニバーシティ (3)
【Fターム(参考)】
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