距離測定装置
【課題】距離測定装置に入射した光が前方の搬送台車からの反射光であるか否かを高精度で識別でき、誤検知による搬送台車の誤停止等を解消できる距離測定装置を提供する。
【解決手段】軌道に沿って走行する搬送台車の前部に、変調された測定光を平面状に走査する走査部と、走査部で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部とからなる測距装置を配置し、測距装置により前方を走行する搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置であって、走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する識別部を備える。
【解決手段】軌道に沿って走行する搬送台車の前部に、変調された測定光を平面状に走査する走査部と、走査部で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部とからなる測距装置を配置し、測距装置により前方を走行する搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置であって、走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する識別部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道に沿って走行する搬送台車の前部に、変調された測定光を平面状に走査する走査部と、走査部で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部とからなる測距装置を配置し、前記測距装置により前方を走行する搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造設備では、各製造装置間で半導体ウェハを自動搬送するために、各製造装置に設けられたロードポート上に載置された複数枚の半導体ウェハが収容されたウェハキャリア装置を搬送する搬送台車が用いられている。
【0003】
搬送台車は、人や機械との接触を回避するため、製造設備の上部空間に設置された走行レール、つまり軌道に沿って自走する走行部と、走行部に支持される物品収容部で構成され、搬送対象物を掴むチャック機構を備えた昇降体を所定の昇降経路に沿って昇降させる昇降機構が組み込まれている。
【0004】
軌道は、製造設備のレイアウトに従ってウェハキャリア装置を搬送するべく、単純な直線部のみならず、カーブ、分岐部、合流部等を備えた複雑な形状であり、同一の軌道を複数の搬送台車が走行する。
【0005】
近年、ウェハキャリア装置の搬送効率を上げるために、同一軌道で多数の搬送台車が高速走行することが要求され、それに伴って搬送台車間の車間距離が短くなっている。
【0006】
そのため、特許文献1では、図15に示すように、搬送台車8の追突を回避するために、搬送台車8にレーザ距離計等の車間距離センサを備え、車間距離センサで計測された車間距離に基づいて前方の搬送台車6との相対速度を算出し、相対速度に基づいて自車の走行速度を制御する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、図16に示すように、各搬送車V,V´に、自身と直前の搬送車との距離を検知する光センサ装置1が取付けられ、後方の搬送車Vの光センサ装置1から投光された光を直前の搬送車V´に当て、両搬送車の距離を検知して該距離が一定値以下となった場合に、後方の搬送車を減速または停止させて両搬送車の衝突を防止する装置が開示されている。
【0008】
そして、レールRの曲線部の外側に、該レールRに略沿って反射板3を設置して、後方の搬送車Vの光センサ装置1から投光された光を反射板3によって反射させて、レールRの曲線部を走行中の直前の搬送車V´に当てることにより、レールRの曲線部を相前後して走行する2台の搬送車間の距離を検知するように構成されている。
【0009】
レールRの曲線部は壁面の近傍に設けられることが多く、搬送車Vから投光され、壁面で反射した光を検知することにより壁面を障害物と誤検知して搬送車Vが停止するという問題を解消するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−25745号公報
【特許文献2】特開2001−249718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載された技術では、前方の搬送台車が軌道のカーブを走行するような場合に、測定光の光軸から前方の搬送台車が逸脱するために、前方の搬送台車を検知できなくなるばかりか、工場内に設置された各種設備や他の走行台車等からの反射光を前方を走行する搬送台車からの反射光と誤検知する虞がある。
【0012】
また、特許文献2に記載された技術では、前方の搬送台車が軌道のカーブを走行するような場合であっても、前方の搬送台車を検知できるようになるが、そのためにレールに沿った反射板の設置スペースが必要となる。しかし、高度に集積化された半導体製造設備では、軌道間の間隔が狭くなり、レールに沿って反射板を設置するようなスペースを確保することができないという問題がある。
【0013】
さらに何れの技術でも、搬送台車に備えた距離測定装置に、前方の搬送台車から反射された光以外の迷光が入射すると、前方の搬送台車と誤検知して搬送台車が停止または減速する虞が解消されるものではなかった。
【0014】
本発明の目的は、上述の問題に鑑み、距離測定装置に入射した光が前方の搬送台車からの反射光であるか否かを高精度で識別でき、誤検知による搬送台車の誤停止等を解消できる距離測定装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、本発明による距離測定装置の第一の特徴構成は、軌道に沿って走行する搬送台車の前部に、変調された測定光を平面状に走査する走査部と、走査部で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部とからなる測距装置を配置し、前記測距装置により前方を走行する搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置であって、前記走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、前記距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する識別部を備えている点にある。
【0016】
走査部により平面状に走査された測定光が前方の搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材に照射されると、測定光が再帰性反射部材から測距装置に向けて反射され、距離演算部により測定光と反射光との時間遅れから再帰性反射部材までの距離が算出され、測定光の走査角度毎に再帰性反射部材までの距離が求まる。
【0017】
つまり、走査部により走査された測定光の走査角度毎に、距離演算部により距離が求められ、さらにそのときの反射光の強度が得られる。再帰性反射部材は一定の幅があり、平面状に走査された測定光が再帰性反射部材に入射した各入射点から再帰性反射した反射光に基づいて、当該再帰性反射部材の幅を検知することができる。一方、測定光が製造装置やその他の設備の金属カバー等に照射された場合には鏡面反射するため、測定光の光軸と垂直な反射面に照射された光であれば測距装置により検知され、測定光の光軸と反射面が僅かでも傾斜していれば測距装置により検知されない。
【0018】
そこで、識別部は、走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、前記距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別することができる。
【0019】
例えば、所定範囲の走査角度で連続的に略一定の距離が検知されると、再帰性反射部材からの反射光であると識別でき、所定範囲の走査角度の一点で距離が検知されると、鏡面反射による反射光であり再帰性反射部材からの反射光でないと識別できるようになる。
【0020】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述した第一の特徴構成に加えて、前記識別部は、前記走査部により走査された測定光に対して得られた相関関係と、前記走査部により過去に走査された測定光に対して得られた相関関係に基づいてその連続性を評価して、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する点にある。
【0021】
上述の構成によれば、走査部により測定光が走査される度に得られる走査角度毎の距離や反射光の強度を、過去に得られた走査角度毎の距離や反射光の強度と対比して、その差に基づいて同一の再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別することができるようになる。
【0022】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記再帰性反射部材はマイクロプリズム方式の再帰性反射部材であり、前記測距装置は、単一モードで発光するレーザダイオードでなる測定光用の光源と、反射光を受光する受光部とが光軸上に対向配置され、前記光源からの光を検出物に向けて反射する第一ミラーと、検出物からの反射光を前記受光部に向けて反射する第二ミラーを、前記光軸を軸心として回転する回転機構により構成される走査部と、前記第一ミラーから検出物に向けて反射する光路に備えた第一方向に偏光する第一偏光素子と、検知対象物から前記第二ミラーに入射する反射光の光路に備えた第一方向と異なる第二方向に偏光する第二偏光素子により構成されている点にある。
【0023】
単一モードで発光するレーザダイオードは、所定方向に直線偏光した光を出力する特性がある。例えば、第一ミラーにより測距装置の正面に向けて測定光を反射すると、測定光の偏光方向が維持され、当該偏光方向が第一方向と平行であれば第一偏光素子を介して測定光が照射される。
【0024】
マイクロプリズム方式の再帰性反射部材に入射した光は、プリズムにより偏光方向が第二方向に回転して反射されるという特性がある。そのため、反射光の光路に第二方向に偏光する第二偏光素子を備えると、再帰性反射部材に入射した光のみが受光素子に導かれるようになるので、迷光を誤って検知することが回避できるようになるのである
【0025】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述した第三の特徴構成に加えて、走査角度に応じて前記第一偏光素子から出力される測定光の減衰特性に基づいて、前記受光部で受光された反射光の強度を補正する補正演算部を備えている点にある。
【0026】
第三の特徴構成によれば、第一ミラーが回転することにより、レーザダイオードから出力された光の偏光角度が次第に傾き、第一偏光素子を透過する測定光の強度が減衰する。強度の減衰はcosθの二乗則に従う。そこで、補正演算部により、受光部で受光された反射光の強度をcosθの逆二乗則により補正することにより、第一ミラーの回転による強度の減衰の影響を排除した反射光の強度が求まるようになる。
【0027】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記搬送台車は、前記軌道に沿って走行する走行部と、走行部に支持される物品収容部で構成され、前記軌道は、前記走行部に備えた走行車輪を支持する支持部と前記支持部と連接され、前記走行部を囲むカバー部材で構成され、前記測距装置及び前記再帰性反射部材が、前記軌道の内部に位置するように前記走行部に配置されている点にある。
【0028】
軌道の内部に位置する走行部に測距装置及び再帰性反射部材を備えると、外光が軌道を構成するカバー部材で遮断されるため、測定光に起因する迷光以外の迷光を排除できるようになる。また、前方を走行する搬送台車が軌道のカーブを通過し、測定光の光軸が再帰性反射部材からずれるような場合であっても、測定光がカバー部材の内面で反射して、前方を走行する搬送台車に設置された再帰性反射部材に入射し、再帰性反射部材からの反射光がカバー部材の内面で反射して、測距装置に導かれるので、前方を走行する搬送台車との車間距離を良好に検知できるようになる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明した通り、本発明によれば、距離測定装置に入射した光が前方の搬送台車からの反射光であるか否かを高精度で識別でき、誤検知による搬送台車の誤停止等を解消できる距離測定装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】半導体デバイスの製造設備における製造装置,ウェハキャリア装置,搬送台車等の概略斜視図
【図2】搬送台車及びウェハキャリア装置の概略図
【図3】搬送台車及びウェハキャリア装置の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図4】走行レール及び走行部の説明図
【図5】測距装置の説明図
【図6】(a)はレーザの説明図、(b)は測定光と反射光に基づく距離算出の説明図
【図7】(a)は再帰性反射部材の説明図、(b)は再帰性反射部材での反射による偏光方向の変化の説明図
【図8】搬送台車の各機能ブロック図
【図9】測距装置の各機能ブロック図
【図10】走査部の走査角度と測定光の偏光方向の説明図
【図11】(a)は走査角度と、偏光素子を備えることによる測定光の強度の減衰の説明図、(b)は補正演算部による測定光の強度の補正の説明図
【図12】(a)は距離測定装置による再帰性反射部材検知の説明図、(b)は走査角度と距離の説明図、(c)は前方の搬送台車の検知する説明図
【図13】(a)は走査角度と強度の説明図、(b)は距離と強度の説明図
【図14】(a)はカーブで走査される走査光に対応して検知される再帰性反射部材の時系列的な距離特性の説明図、(b)はカーブで走査される走査光及び反射光の光路の説明図
【図15】従来技術の説明図
【図16】従来技術の説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明による距離測定装置を、半導体デバイスの製造設備に備えられた無人の搬送台車に適用した実施形態を説明する。尚、以下の説明で用いる図面に付した符号は、従来技術の説明に用いた図面に付した符号とは無関係である。
【0032】
図1,図2,図3に示すように、半導体デバイスの製造設備1では、半導体ウェハに順次所定の処理を施すための各種の製造装置2(2a〜2l)が設けられ、各製造装置2に沿って天井に軌道としての走行レール10が吊設され、走行レール10には複数の搬送台車20が走行自在に備えられている。
【0033】
搬送台車20は各製造装置2のロードポート3上に載置された複数枚の半導体ウェハが収容されたウェハキャリア装置4を掴持して、コントローラ90からの指令に基づいて各製造装置2間やウェハキャリア装置4を一時的に保管しておくストッカ5間を往来するように構成されている。
【0034】
製造装置2(2a〜2l)は、製造工程毎にベイ6,7に分けられ設置されている。
【0035】
走行レール10は、単純な直線部のみならず、カーブ、分岐部、合流部等を備えた複雑な形状をしている。例えば、各ベイ6,7間を結ぶ工程間レール10a、各ベイ6,7に設置された製造装置2間を結ぶ工程内レール10b、工程間レール10aと工程内レール10bを結ぶ分岐レール10c、工程内レール10b内を走行する搬送台車1を一時退避させる退避レール10d、搬送台車20がストッカ5へウェハキャリア装置4を積降するためのバイパスレール10e等で構成されている。
【0036】
分岐レール10cは、工程間レール10aと工程内レール10bとを接続するレールであり、走行する搬送台車20は、分岐レール10cに沿って走行することで、工程間レール10aと工程内レール10bを互いに往来する。
【0037】
退避レール10dは、工程内レール10bから分岐して設けられ、例えば、搬送台車20のメンテナンス等ために、工程内レール10bから搬送台車20を一時退避させる場合に用いられる。
【0038】
バイパスレール10eは、工程間レール10aから分岐し、工程間レール10aを走行する搬送台車20に掴持されたウェハキャリア装置4をストッカ5に一時保管する場合等に用いられる。
【0039】
走行レール10は、その断面が下方に開口する凹形状に形成されている。具体的には、後述する走行部21に備えた走行車輪27を支持する支持部11と支持部11と連接され、走行部21を囲むカバー部材12で構成されている。尚、走行レール10は、軽さと強度とアルミニウムの引抜材で形成され、支持部材13によって適当な間隔で天井から吊設されているが、材質及び天井への設置方向はこれに限らない。
【0040】
直線状に配置された走行レールでは、カバー部材12のうち側壁部が部分的に開口され、軽量化が図られている。
【0041】
図2,図3,図4に示すように、搬送台車20は、走行レール10の支持部11に沿って走行する走行部21と、走行部21に支持される物品収容部22で構成されている。
【0042】
走行部21は、基台となるメインフレーム26と、メインフレーム26の前後に備えられた車軸に軸支された左右一対の走行車輪27と、走行車輪27を駆動する走行用モータ28(図示せず)を備えている。
【0043】
さらに、メインフレーム26には、走行レール10のカバー部材12内面と略接触状態となる位置に左右一対のガイド車輪(図示せず)が設けられ、前記ガイド車輪によって走行部21は進行方向の左右にずれることなく走行できるように構成されている。
【0044】
さらに、メインフレームには、走行レール10のカバー部材12内に設けられた分岐用ガイド(図示せず)を選択する分岐ローラ(図示せず)が設けられ、例えば、工程間レール10aから分岐レール10cへと走行経路を切り替える際には、コントローラ90の指令を受けて、搬送台車20の、前記分岐ローラが前記分岐用ガイドの何れか一方を選択することで、走行経路が切り替わるように構成されている。
【0045】
尚、走行部21は、走行用モータ28で走行車輪27を駆動して走行する構成に限らず、走行レール10内に敷設された永久磁石と、走行部21側に備えられたコアによりリニアモータを構成して走行する構成であってもよい。
【0046】
メインフレーム26の上部には、左右に給電ユニット30が備えられている。給電ユニット30は、E字形状のコア31とコア31の一部に巻回されたコイル32で構成されている。
【0047】
カバー部材12の内壁側面に給電線ホルダ14で支持された給電線15には高周波電力が印加され、コイル32に前記高周波電力が誘導され非接触で電力伝達が行われる。尚、搬送台車20に必要な電力はすべてこの非接触の給電方式により供給される。
【0048】
尚、コントローラ90からの指令は、給電線15及び給電ユニット30を介して、後述する搬送台車20の走行部21に備えられた通信部75に伝達される。
【0049】
尚、搬送台車1への給電手段としては、上述した給電ユニット30と給電線5とによる非接触の給電方式に限定されるものではない。
【0050】
物品収容部22には、ウェハキャリア装置4を掴むチャック機構23を備えた昇降体24を所定の昇降経路に沿って昇降させる昇降機構としての昇降用モータ25(図示せず)が組み込まれている。
【0051】
昇降体24は、昇降機構22と複数のベルト29で連結されている。昇降用モータ25は、ベルト29を巻き取り、繰り出しをすることで、昇降体24を昇降させるように構成されている。尚、ベルト29には走行部21からチャック機構23へ給電する給電線や信号線が組み込まれている。
【0052】
チャック機構23は、ウェハキャリア装置4の上面の被掴持部4aを掴持するための一対の爪部と掴持用モータ33(図示せず)で構成され、掴持用モータ33を駆動することで前記爪部が掴持姿勢または開放姿勢となることでウェハキャリア装置4の被掴持部4aを掴持または開放するように構成されている。
【0053】
さらに、走行部21のメインフレーム26の進行方向前部には、前方を走行する搬送台車の後部に設置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する測距装置40が備えられ、進行方向後部には、後方を走行する搬送台車の前部に設置された測距装置40からの投光を反射する再帰性反射部材60が備えられている。測距装置40及び再帰性反射部材60は、走行レール10の内部に位置するように走行部21に配置されて、搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置を構成する。
【0054】
尚、本実施形態では搬送台車20は走行経路に沿って前進のみする構成であるため、前方を走行する搬送台車20を検知できるように、搬送台車20の前部のみ測距装置40を設け、後部のみ再帰性反射部材60を設けている。搬送台車20を前後方向に走行可能な構成とする場合は、搬送台車20の前部及び後部のそれぞれに測距装置40と再帰性反射部材60を備えている。
【0055】
図7(a)に示すように、再帰性反射部材60として、それぞれ直角に交わる3つの反射面61,62,63が複数並んだマイクロプリズム方式の再帰性反射部材が用いられ、搬送台車20の走行部21の進行方向の後部であって、後方の搬送台車20の測距装置40からの光を反射可能な適当な高さに取付けられている。マイクロプリズム方式の再帰性反射部材では、測定光が再帰性反射部材60に対して入射角が45度以下の角度で入射したときに再帰性反射し、45度より大きい角度で入射したときには再帰性反射特性が発現しない。
【0056】
図5に示すように、測距装置40は、略円筒状のハウジング50の内部に、測定光用の光源41aからの光を所定の変調信号により変調して測定光として出力する投光部41と、測定光を測距対象空間に向けて回転走査する走査部47と、走査された測定光が検出物で反射した反射光を光電変換素子により検知する受光部42と、投光部41から出力される測定光と、検出物で反射した反射光に基づいて物体までの距離を演算する距離演算部等を備えた制御回路80を備えている。
【0057】
測距装置40について詳述する。測距装置40のハウジング50は、径の異なる円筒が段差部51を介して、図5中の上下方向に二つ重なり、さらに上下が閉じられた形状で、段差部51より上部の周壁部52の全周から一部を除いた側壁(図5では右側壁に示している)に亘って上下方向に一定の幅を有する透光窓53が、ハウジング50沿って曲面状に形成され、この透光窓53を介して、投光部41から出力された測定光と、検出物からの反射光が往来可能となっている。
【0058】
尚、透光窓53以外のハウジング50の内周面は、光の完全な遮光かつ反射防止のために、表面に凹凸を設けた暗幕等の吸光部材で被覆される光吸収壁で構成されている。
【0059】
投光部41は、単一モードで発光するレーザダイオードで構成される光源41aが、図5中下向きに測定光を出力するように配置されている。
【0060】
図6(a)に示すように、単一モードで発光するレーザダイオードは、接合面に垂直な偏光特性をもち、レーザダイオードの出射ビームは、接合面で光が広がっている方向には狭い放射角度で出射され、狭く閉じ込められている方向には広い放射角度で出射される特性がある。よって、投光部41は光源41aから下向きに出力された光の光路上に光学レンズ54を備え、光のビーム径を一定にするように構成されている。
【0061】
走査部47は、光源41aからの光を検出物に向けて反射する第一ミラー44と検出物からの反射光を受光部42に向けて反射する第二ミラー45と、反射光の光路上に反射光を集束する受光レンズ55を備え、回転機構46としてのモータにより回転するように構成されている。尚、走査部47の回転軸心は、光源41aの光軸43と一致するように構成されている。
【0062】
第一ミラー44と第二ミラー45は光軸43に対してそれぞれ45度傾斜し、測定光の光軸と反射光の光軸が平行となるように配置されている。
【0063】
さらに走査部47は、光学的スリットを有するスリット板56を備え、ハウジング50内周面に設置されたフォトインタラプタ57と協働して、走査部47の走査角度を検知する走査角度検知部58を構成する。
【0064】
受光部42は、例えば、アバランシェフォトダイオードなどの受光素子と、光電変換された信号を増幅する増幅回路を備えて構成されている。走査部47の内部に収容された状態で、光軸43上で光源41aと対向するように配置されている。
【0065】
詳述すると、受光部42は、走査部47を支承する中空軸59の上端面に配置されており、回転機構46による走査部47の回転動作とは無関係に、常に静止状態を維持するようになっている。また、受光部42からの出力信号は、中空軸59の内部空間に挿通された信号線(図示せず)により後述の制御回路80に接続されている。
【0066】
さらに、透光窓53の外周面には、第一ミラー44から検出物に向けて反射する光路に第一方向に偏光する第一偏光素子48が貼り付けられ、検知対象物から第二ミラー45に入射する反射光の光路に第一方向と異なる第二方向に偏光する第二偏光素子49が貼り付けられている。
【0067】
尚、透光窓53が、偏光特性を備えていない例えばアクリル樹脂やガラス等の素材で構成される場合には、偏光素子48,49を透光窓53の内面側に貼り付けてもよい。
【0068】
第一偏光素子48及び第二偏光素子49はそれぞれ偏光フィルタであって、第一偏光素子48は、光源41aからの光のうち、例えば図5中上下方向を偏光面とした光(以下、「第一方向の光L1」と記す)のみの通過を許容し、第二偏光素子49は、第一方向の光L1と異なる方向(例えば90度)を偏光面とした光(以下、「第二方向の光L2」と記す)のみの通過を許容するように備えられる。
【0069】
図7(b)に示すように、測距装置40の第一偏光素子48を介して投光された第一方向に偏光する光L1が、再帰性反射部材60に入射すると、まず反射面61に反射し、次に反射面62に反射し、さらに反射面63に反射する過程で、上下方向の偏光面から左右方向の偏光面に90度回転した第二方向に偏光する光L2となり、第二偏光素子49を透過した後に受光部42で検知される。
【0070】
これに対して、測定光が走行レール10の側壁に形成された開口を通過して外部の金属性設備カバー等から反射し、或いは走行レール10内部に備えた給電線ホルダ14等に照射され、内壁面で反射した反射光は、第一方向の光L1の偏光面が維持されるため、第二偏光素子49を通過せず、受光部42により受光されることがない。また、一般的に金属は鏡面反射するため、測定光の入射角度が90度でない場合には、反射光が受光部42により受光されることがない。このようにして、測距装置40は、迷光を誤って検知することが回避でき、前方を走行する搬送台車20の後部に配置した再帰性反射部材60のみを検知することができる。
【0071】
次に、搬送台車20及び測距装置40の各制御部について詳述する。
【0072】
図8に示すように、搬送台車20の走行部21のメインフレーム26内には、CPUや、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータで構成され、走行部21を制御する走行部制御部70が備えられている。
【0073】
走行部制御部70は、各搬送台車20を制御する中央のコントローラ90から出力される指令信号71を、走行レール10のカバー部材12内に配置した給電線15給電ユニット30を介して通信部75で受信し、走行用モータ28を駆動したり、前記分岐ローラを駆動して走行経路を切り替えたり、昇降体24の昇降用モータ25を制御するように構成され、さらに、後述する制御装置40の制御回路80からの信号が伝達されるように構成されている。
【0074】
尚、搬送台車20は、コントローラ90より指定された製造装置2のロードポート3上であることを検知するセンサ等を適宜備え、走行部制御部70には前記センサからの信号が入力されるように構成されている。
【0075】
チャック機構制御部73は、ベルト29に組み込まれた信号線74を介して走行部制御部72と電気的に接続され、走行部制御部72と同じくコントローラ90からの指令信号71に基づいて、掴持用モータ33を駆動して爪部を駆動して、ウェアキャリア装置4の被掴持部4aを掴持または開放するように構成されている。尚、爪部がウェアキャリア装置4の被掴持部4aを掴持または開放したことを検知するセンサ等は適宜備えればよい。
【0076】
図9に示すように、測距装置40のハウジング50内の下部には、測距装置40の制御回路80が備えられている。
【0077】
制御回路80は、CPUや、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータや測距用の演算回路等を備えて構成され、これらにより、投光部41の発光タイミングを制御する発光制御部84と、走査部47で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部81と、走査部47により走査された測定光の複数の走査角度θと、距離演算部81により算出された各走査角度θに対応する距離Dと、各走査角度θに対応する反射光の強度Iのうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する識別部82と、走査角度θに応じて第一偏光素子48から出力される測定光の減衰特性に基づいて、受光部42で受光された反射光の強度Iを補正する補正演算部83等が構成されている。
【0078】
距離演算部81は、TOF方式によって、測距装置40から再帰性反射部材60までの距離を算出する。
【0079】
TOF方式とは、図6(b)に示すように、発光制御部84のパルス信号に基づいて投光部41からレーザ光をパルス光に変調した測定光を出力し、測定光の発光信号と受光部42で受光した検出物(再帰性反射部材60)からの反射光の受信信号との時間遅れに基づいて、以下の数式1により距離を算出する方式である。ここに、Cは光速、ΔTは時間差である。
【0080】
〔数1〕
L=(1/2)×C/ΔT
【0081】
尚、本実施形態では、測距装置40の距離の演算方式として、TOF方式を採用しているが、AM方式を採用してもよい。AM方式とはレーザ光を正弦波で変調した測定光を出力し、検出物で反射して帰ってきた反射光と測定光の位相差に基づいて、以下の数式2により距離を算出する方式である。ここに、φは計測された位相差、Cは光速、Fは変調周波数である。
【0082】
〔数2〕
L=(1/2)×(φ/2π)×C/F
【0083】
走査部47に備えられたスリット板56のスリット間隔は予め設定された回転体の基準位置で他と異なるように形成されており、走査角度検知部58は、パルス信号の波形に基づいて基準位置を検知し、基準位置からのパルス数をカウントすることにより基準位置からの走査角度θを算出するように構成されている。
【0084】
ここで、走査角度θに応じて第一偏光素子48から出力される測定光の減衰特性について説明する。
【0085】
図10に示すように、搬送台車の進行方向前方正面(走査角度θ=0度とする)に第一方向に直線偏光した光を出力するようにレーザダイオードを配置したとき、第一ミラー44により測距装置40の正面に向けて、偏光方向が維持された状態で反射された測定光は、第一偏光素子48を介して進行方向前方正面に照射される。光の強度Iは、電界Eの大きさの二乗に比例するため、このときの測定光の強度I0は、I0=E02cos2(0)となる。
【0086】
しかし、走査部47の回転に伴い第一ミラー44が回転すると、レーザダイオードの垂直な偏光特性に対して、第一ミラー44で反射された測定光の偏光角度が次第に傾くことになる。例えば、走査角度θ=±45度のときに、第一偏光素子48を通過した測定光の強度I45は、I45=E452cos2(45)となる。
【0087】
つまり、走査角度θのときの光の強度Iθは、Iθ=I0cos2θで表され、走査角度θが0度から±90度になるにつれて減衰する。よって、図11(a)に示すように、走査角度θ=0のとき測定光は第一偏光素子48から出射され、走査角度θ=±90度のとき測定光は第一偏光素子48から出射されなくなる。
【0088】
そこで、図11(b)に示すように、補正演算部83は、受光部42で受光された反射光の強度をcosθの逆二乗則により補正する。これにより、第一ミラー44の回転による強度の減衰の影響を排除した測定光の強度が求まる。以後、反射光の強度Iとは、補正演算部83で補正された強度をいう。
【0089】
走査部47により平面状(ここでは、水平面状であるが、垂直面状、または水平面から所定角度傾斜した平面状であってもよい。)に走査された測定光が前方の搬送台車20の再帰性反射部材60に照射されると、測定光が再帰性反射部材60から測距装置40に向けて反射され、距離演算部81により測定光と反射光との時間遅れから再帰性反射部材60までの距離が算出され、測定光の走査角度θ毎に再帰性反射部材60までの距離が求まり、さらにそのときの反射光の強度が得られる。再帰性反射部材60は一定の幅があり、平面状に走査された測定光が再帰性反射部材60に入射した各入射点から再帰性反射した反射光に基づいて、当該再帰性反射部材60の幅を検知することができる。
【0090】
しかし、測定光が製造装置やその他の設備の金属カバー等に照射された場合には鏡面反射するため、測定光の光軸と垂直な反射面に照射された光であれば測距装置40により検知されるものの、測定光の光軸と反射面が僅かでも傾斜していれば反射光は測距装置40により検知されないため、測定光の操作角度に対してある幅で連続的に反射光が検知されることはない。
【0091】
そこで、識別部82は、走査部47により走査されて得られ、制御回路80のRAMに記憶された測定光の複数の走査角度θと、距離演算部81により算出された各走査角度θに対応する距離Dと、各走査角度θに対応する反射光の強度Iの少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別し、走行部制御部70に当該識別したデータを送信するように構成されている。
【0092】
まず、識別部82が、走査部47により走査された測定光の複数の走査角度θと、距離演算部83により算出された各走査角度θに対応する距離Dとの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する場合について説明する。
【0093】
再帰性反射部材60は一定の幅があるので、平面状に走査された測定光が再帰性反射部材60に入射した各入射点から再帰性反射した反射光に基づいて、当該再帰性反射部材60の幅を検知することができる。
【0094】
例えば、図12(a)に示すように、距離Dxでは、再帰性反射部材60は、走査角度θ=0±θxの範囲で検知され、その幅はAx=2Dxtanθxであることが分かっている。
【0095】
例えば、制御回路80のROMには、距離演算部83により算出された再帰性反射部材60までの距離Dxと、再帰性反射部材60の幅Axに対応する走査角度範囲θとの相関関係を規定するテーブルデータが格納されている。つまり、再帰性反射部材までの距離Dxが長くなると測距装置により検知される幅Ax、つまり走査角度範囲θが狭くなり、距離Dxが短くなると測距装置により検知される幅Ax、つまり走査角度範囲θが広くなるという相関関係が成立するため、距離演算部81により算出された再帰性反射部材60までの距離Dx毎に再帰性反射部材60の幅に対応する走査角度の上限と下限を示す許容範囲を規定したテーブルデータが記憶されている。例えば、識別部82は、一回の走査時に算出した検出物までの平均距離とそのときの検出物に対応する走査角度範囲が、ROMに記憶された許容範囲に入っていれば、検知された反射光は再帰性反射部材からの反射光であると識別する。
【0096】
図12(b)に示すように、測距装置40が、搬送台車20aの進行方向前方に距離D1で走査角度範囲θ=0±θ1の物体を検知したとする。このとき物体の幅はA1=2D1tanθ1となる。
【0097】
識別部82は、検知によってRAMに記憶された距離D1と走査角度(幅A1)と、前記ROMに記憶されている距離D1と走査角度(幅A1)の相関関係のテーブルデータと比較し、当該反射光は、図12(c)に示すように、前方の搬送台車20bの再帰性反射部材60bからの反射光であると識別する。尚、搬送台車20aの進行方向前方正面距離D3の位置に、幅Bの物体が検知されても、識別部82は、前記ROMに記憶されている距離D3における幅に比べて小さすぎるため、再帰性反射部材からの反射光でないと識別することができる。
【0098】
このように、識別部82が、反射光が前方を走行する搬送台車20bの再帰性反射部材60bからのものであると識別すると、走行部制御部70に距離データを伝達し、走行部制御部70は、走行用モータ28を制御して、搬送台車20の走行速度を制御する。通常、搬送台車20は、3m/sの速度で走行制御されているが、例えば、前方の搬送台車との距離が5m以下であれば搬送台車20を減速制御をし、1m以下であれば搬送台車20を停止制御をし、300mm以下であれば搬送台車20を完全に停止することで搬送台車同士の衝突を防止することができる。
【0099】
次に、識別部82が、走査部47により走査された測定光の複数の走査角度θxと、各走査角度θxに対応する反射光の強度Ixとの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する場合について説明する。
【0100】
例えば、制御回路80のROMには、再帰性反射部材60が検知される走査角度範囲θと強度Ixの相関関係のテーブルデータ、例えば、走査角度範囲θが大きいとき、つまり、再帰性反射部材までの距離が短いときは検知される強度Ixが強くなり、走査角度範囲θが小さいとき、つまり、再規制反射部材までの距離が長いときは強度Ixが弱くなるという相関関係が成立するため、補正演算部83により補正された強度Ix毎に再帰性反射部材60の幅に対応する走査角度の上限と下限を示す許容範囲を規定したテーブルデータが記憶されている。例えば、識別部82は、一回の走査時に算出した検出物までの平均強度とそのときの検出物に対応する走査角度範囲が、ROMに記憶された許容範囲に入っていれば、検知された反射光は再帰性反射部材からの反射光であると識別することができる。
【0101】
また例えば、図13(a)に示すように、測距装置40が走査角度範囲θ=0±θ1で強度がほぼ一定値I1である反射光を検知したとする。識別部82は、検知によってRAMに記憶された走査角度範囲θ=0±θ1の範囲と強度I1と、前記ROMに記憶されている走査角度範囲θ=0±θ1のときの強度I1とを比較して、その差が許容範囲内にあれば、当該反射光は、図12(c)に示すように、前方の搬送台車20bの再帰性反射部材60bからの反射光であると識別する。尚、搬送台車20aの進行方向前方正面の走査角度範囲θ=Cに亘って強度I3の反射光が検知されても、識別部82は、前記ROMに記憶されているテーブルデータと比較し、再帰性反射部材からの反射光でないと識別する。この場合、強度I3が検知される範囲が走査角度範囲θ=Cでは小さすぎるため、再帰性反射部材からの反射光でないと識別できるのである。
【0102】
次に、識別部82が、距離演算部81により算出された各走査角度θに対応する距離Dxと、各走査角度θに対応する反射光の強度Ixとの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する場合について説明する。
【0103】
例えば、制御回路80のROMには、各走査角度θに対応する距離Dxと、反射光の強度Ix、つまり、光の強度Ixは光源41からの距離Dxの二乗に反比例するため、反射光の強度Ixが大きくなれば再帰性反射部材までの距離はDxは短くなり、反射光の強度Ixが小さくなれば再帰性反射部材までの距離Dxは長くなるという相関関係が成立するため、距離Dxに対する反射光の強度Ixの許容範囲を規定したテーブルデータ、または、反射光の強度Ixに対する距離Dxの許容範囲を規定したテーブルデータが記憶されている。例えば、識別部82は検知された反射光の距離Dxに対する反射光の強度IxがROMに記憶された反射光の強度Ixの許容範囲内であれば、検知された反射光は再帰性反射部材からの反射光であると識別することができる。
【0104】
図13(b)に示すように、測距装置40が、距離D1で強度I1の反射光を検知したとする。識別部82は、検知によってRAMに記憶された距離D1における強度I1と、前記ROMに記憶されている距離D1のときの強度I1を比較して、強度I1が許容範囲内であれば、当該反射光は、図12(c)に示すように、前方の搬送台車20bの再帰性反射部材60bからの反射光であると識別する。尚、距離D3で強度I3の反射光が検知されても、識別部82は、前記ROMに記憶されているテーブルデータに記憶された所定範囲外であるため、再帰性反射部材からの反射光でないと識別する。この場合、強度I3が検知される距離D3では小さすぎるため、再帰性反射部材からの反射光でないと識別できるのである
【0105】
上述の説明では、二台の搬送台車が直線状の走行レール10に沿って走行する場合について説明したが、例えば、図14(a)に示すように、前方を走行する搬送台車20が右方向にカーブする場合、搬送台車は減速しながら右方向に移動することになるので、検知される反射光に基づく走査角度θと距離Dは、図中右下方向矢印で示す方向に移動することとなる。尚、反射光が検出される走査角度の範囲は、前方の搬送台車の再帰性反射部材の角度が、後方の搬送台車の測距装置の測定光の光軸に対して傾くため、検知される走査角度はθ=0±θ1より小さくなる。
【0106】
さらに、図14(b)に示すように、前方を走行する搬送台車20bが軌道のカーブを通過し、後方の搬送台車20aの測距装置の測定光の光軸が再帰性反射部材60からずれるような場合であっても、測定光がカバー部材12の内面で反射して、前方を走行する搬送台車20bに設置された再帰性反射部材60bに入射し、再帰性反射部材60bからの反射光がカバー部材の内面で反射して、測距装置40aに導かれるので、前方を走行する搬送台車20bとの車間距離を良好に検知できるようになる。
【0107】
上述の実施形態では、識別部82は、走査部47の一走査毎に反射光に基づいて再帰性反射部材からの反射光か否かを識別する構成について説明したが、識別部82は、走査部47により走査された測定光に対して得られた相関関係と、走査部47により過去に走査された測定光に対して得られた相関関係に基づいて、その連続性を評価して、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別するように構成してもよい。
【0108】
この場合、識別部82は、ある走査によって得られ制御回路80のRAMに記憶された走査角度範囲θ、距離D、強度Iと、次の走査によって得られ制御回路80のRAMに記憶された走査角度範囲θ、距離D、強度Iをそれぞれ比較し、その差が所定の許容範囲内であれば、連続性があると評価して、前記再帰性反射部材からの反射光であると識別する。また、走査角度範囲θ、距離D、強度Iの何れかの組み合わせで識別してもよい。この場合、許容範囲は、前回と今回の算出距離を算出時間差で除して前方車両との相対速度を算出し、当該相対速度毎に予め設定された値である。
【0109】
例えば、図12(b)に示すように、走査角度範囲θ=0±θ1に亘って距離D1を検知した次の走査で、走査角度範囲θ=0±θ2に亘って距離D2が検知されたとする。すると識別部82は、当該反射光が再帰性反射部材60からのものであるか否かを識別し、さらに、前回の走査で得られた結果と比較し、この場合は、再帰性反射部材60までの距離が近づいていることが識別できる。
【0110】
さらに、図13(a)に示すように、走査角度範囲θ=0±θ1に亘って強度I1を検知した次の走査で、走査角度範囲θ=0±θ2に亘って強度I2が検知されたとする。すると識別部82は、当該反射光が再帰性反射部材60からのものであるか否かを識別し、さらに、前回の走査で得られた結果と比較し、この場合は、再帰性反射部材60までの距離が近づいていることが識別できる。
【0111】
さらに、図13(b)に示すように、距離D1のときに反射光の強度I1を検知した次の走査で、距離D2のときに反射光の強度I2が検知されたとする。すると識別部82は、当該反射光が再帰性反射部材60からのものであるか否かを識別し、さらに、前回の走査で得られた結果と比較し、この場合は、再帰性反射部材60までの距離が近づいていることが識別できる。
【0112】
このように、走査部47により測定光が走査される度に得られる走査角度θ毎の距離Dや反射光の強度Iを、過去に得られた走査角度θ毎の距離Dや反射光Iの強度と対比して、その差に基づいて同一の再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別することができるようになる。
【0113】
尚、上述の説明では、識別部82が、走査部47で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部81と、走査部47により走査された測定光の複数の走査角度θと、距離演算部81により算出された各走査角度θに対応する距離Dと、各走査角度θに対応する反射光の強度Iのうち、何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する構成について説明したが、走査角度θ、距離D、反射光強度Iのすべてを組み合わせて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する構成であってもよい。走行レール10の内部に位置する走行部21に測距装置40及び再帰性反射部材60を備えているため、外光が軌道を構成するカバー部材12で遮断されるため、測定光に起因する迷光以外の迷光を排除できるのである。
【0114】
上述した実施形態では、測距装置40の走査角度の走査範囲について明示しなかったが、搬送台車20の進行方向前方正面を測距装置40の走査角度θ=0度としたときに、走査角度θ=0±30度の範囲を測距できれば、走行レール10の水平方向の幅が400mm、再帰性反射部材60の幅が200mmである場合は、直線部の走行レール10の前方正面に約180mm程度の近距離であっても再帰性反射部材60の水平方向の全てを検知できるので、搬送台車間の距離を短くすることができ、走行レールを走行する搬送台車の数を増やすことができるので、ウェハキャリア装置の搬送効率を高めることができる。
【0115】
また、軌道の曲線部で中央部の曲率半径Rが最大で500mmである場合には、測距装置40が、進行方向前方正面を走査角度θ=0度としたときに走査角度θ=0±30度の範囲を走査すれば、十分に再帰性反射部材60dが検知できるが、走査角度範囲は曲線部で中央部の曲率半径Rの値等に応じて適宜設定することができる。
【0116】
尚、本実施形態では、回転機構による第一ミラー及び第二ミラー45の回転速度を2400rpmに設定されているため、測定光は1秒間に40回走査され、走査角度−30度から+30度まで約4.2msecで一回走査される。そして、一回の走査中に、0.2度刻みで距離が算出されるように構成されている。
【0117】
上述した実施形態では、再帰性反射部材としてマイクロプリズム方式の再帰性反射部材を用い、測距装置が、単一モードで発光するレーザダイオードでなる測定光用の光源と、反射光を受光する受光部とが光軸上に対向配置され、光源からの光を検出物に向けて反射する第一ミラーと、検出物からの反射光を受光部に向けて反射する第二ミラーを、光軸を軸心として回転する回転機構により構成される走査部と、第一ミラーから検出物に向けて反射する光路に備えた第一方向に偏光する第一偏光素子と、検知対象物から前記第二ミラーに入射する反射光の光路に備えた第一方向と異なる第二方向に偏光する第二偏光素子により構成された例を説明したが、本発明による距離測定装置はこのような構成に限るものではない。
【0118】
例えば、マルチモードで発光するレーザダイオードや発光ダイオードでなる測定光用の光源と、反射光を受光する受光部とが光軸上に対向配置され、光源からの光を検出物に向けて反射する第一ミラーと、検出物からの反射光を受光部に向けて反射する第二ミラーを、光軸を軸心として回転する回転機構により構成される走査部で構成され、第一及び第二偏光素子を備えていない測距装置を用いてもよい。
【0119】
この場合にも、走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する識別部を備えることにより、再帰性反射部材からの反射光であるか、ノイズ光であるかを適切に識別して、前方を走行する搬送台車との車間距離を正確に検知することができる。
【0120】
尚、この場合、マイクロプリズム方式の再帰性反射部材に替えて、ガラスビーズ方式の再帰性反射部材を用いることも可能である。ガラスビーズ方式の再帰性反射部材は、反射膜を備えた基材にガラスビーズでなる反射層を備えて構成され、光がガラスビーズに入射するときに屈折され、球面上の一点で焦点を結び、ガラスビーズの裏の反射膜により反射され、ガラスビーズを出るときに再度屈曲して、入射光と平行に光源方向に反射される。
【0121】
上述した実施形態では、測距装置及び再帰性反射部材が、軌道の内部に位置するように走行部に配置された構成を説明したが、測距装置及び再帰性反射部材が、軌道の外部に位置するように搬送台車に配置されてもよい。
【0122】
上述した実施形態では、本発明による距離測定装置が、半導体デバイスの製造設備に用いられる場合を説明したが、本発明による距離測定装置は、軌道に複数の搬送台車が走行する任意の荷物搬送装置に用いることができる。
【0123】
上述の実施形態は何れも本発明の一実施例に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
1:製造設備
2(2a〜2l):製造装置
3:ロードポート
4:ウェハキャリア装置
4a:被掴持部
5:ストッカ
6,7:ベイ
21:走行部
27:走行車輪
10:走行レール
10a:工程間レール
10b:工程内レール
10c:分岐レール
10d:退避レール
10e:バイパスレール
11:支持部
12:カバー部材
13:支持部材
14:給電線ホルダ
15:給電線
20:搬送台車
21:走行部
22:物品収容部
23:チャック機構
24:昇降体
25:昇降用モータ
26:インフレーム
27:走行車輪
28:走行用モータ
29:ベルト
30:給電ユニット
31:コア
32:コイル
33:掴持用モータ
40:測距装置
60:再帰性反射部材
61,62,63:反射面
50:ハウジング
41:投光部
41a:光源
42:受光部
43:光軸
44:第一ミラー
45:第二ミラー
46:回転機構
47:走査部
48:第一偏光素子
49:第二偏光素子
50:ハウジング
51:段差部
52:周壁部
53:透光窓
54:光学レンズ
56:スリット板
55:受光レンズ
57:フォトインタラプタ
58:走査角度検知部
59:中空軸
L1:第一方向の光
L2:第二方向の光
70:走行部制御部
71:指令信号
72:走行部制御部
73:チャック機構制御部
74:信号線
75:通信部
80:制御回路
81:距離演算部
82:識別部
83:補正演算部
84:発光制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道に沿って走行する搬送台車の前部に、変調された測定光を平面状に走査する走査部と、走査部で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部とからなる測距装置を配置し、前記測距装置により前方を走行する搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造設備では、各製造装置間で半導体ウェハを自動搬送するために、各製造装置に設けられたロードポート上に載置された複数枚の半導体ウェハが収容されたウェハキャリア装置を搬送する搬送台車が用いられている。
【0003】
搬送台車は、人や機械との接触を回避するため、製造設備の上部空間に設置された走行レール、つまり軌道に沿って自走する走行部と、走行部に支持される物品収容部で構成され、搬送対象物を掴むチャック機構を備えた昇降体を所定の昇降経路に沿って昇降させる昇降機構が組み込まれている。
【0004】
軌道は、製造設備のレイアウトに従ってウェハキャリア装置を搬送するべく、単純な直線部のみならず、カーブ、分岐部、合流部等を備えた複雑な形状であり、同一の軌道を複数の搬送台車が走行する。
【0005】
近年、ウェハキャリア装置の搬送効率を上げるために、同一軌道で多数の搬送台車が高速走行することが要求され、それに伴って搬送台車間の車間距離が短くなっている。
【0006】
そのため、特許文献1では、図15に示すように、搬送台車8の追突を回避するために、搬送台車8にレーザ距離計等の車間距離センサを備え、車間距離センサで計測された車間距離に基づいて前方の搬送台車6との相対速度を算出し、相対速度に基づいて自車の走行速度を制御する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、図16に示すように、各搬送車V,V´に、自身と直前の搬送車との距離を検知する光センサ装置1が取付けられ、後方の搬送車Vの光センサ装置1から投光された光を直前の搬送車V´に当て、両搬送車の距離を検知して該距離が一定値以下となった場合に、後方の搬送車を減速または停止させて両搬送車の衝突を防止する装置が開示されている。
【0008】
そして、レールRの曲線部の外側に、該レールRに略沿って反射板3を設置して、後方の搬送車Vの光センサ装置1から投光された光を反射板3によって反射させて、レールRの曲線部を走行中の直前の搬送車V´に当てることにより、レールRの曲線部を相前後して走行する2台の搬送車間の距離を検知するように構成されている。
【0009】
レールRの曲線部は壁面の近傍に設けられることが多く、搬送車Vから投光され、壁面で反射した光を検知することにより壁面を障害物と誤検知して搬送車Vが停止するという問題を解消するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−25745号公報
【特許文献2】特開2001−249718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載された技術では、前方の搬送台車が軌道のカーブを走行するような場合に、測定光の光軸から前方の搬送台車が逸脱するために、前方の搬送台車を検知できなくなるばかりか、工場内に設置された各種設備や他の走行台車等からの反射光を前方を走行する搬送台車からの反射光と誤検知する虞がある。
【0012】
また、特許文献2に記載された技術では、前方の搬送台車が軌道のカーブを走行するような場合であっても、前方の搬送台車を検知できるようになるが、そのためにレールに沿った反射板の設置スペースが必要となる。しかし、高度に集積化された半導体製造設備では、軌道間の間隔が狭くなり、レールに沿って反射板を設置するようなスペースを確保することができないという問題がある。
【0013】
さらに何れの技術でも、搬送台車に備えた距離測定装置に、前方の搬送台車から反射された光以外の迷光が入射すると、前方の搬送台車と誤検知して搬送台車が停止または減速する虞が解消されるものではなかった。
【0014】
本発明の目的は、上述の問題に鑑み、距離測定装置に入射した光が前方の搬送台車からの反射光であるか否かを高精度で識別でき、誤検知による搬送台車の誤停止等を解消できる距離測定装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、本発明による距離測定装置の第一の特徴構成は、軌道に沿って走行する搬送台車の前部に、変調された測定光を平面状に走査する走査部と、走査部で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部とからなる測距装置を配置し、前記測距装置により前方を走行する搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置であって、前記走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、前記距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する識別部を備えている点にある。
【0016】
走査部により平面状に走査された測定光が前方の搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材に照射されると、測定光が再帰性反射部材から測距装置に向けて反射され、距離演算部により測定光と反射光との時間遅れから再帰性反射部材までの距離が算出され、測定光の走査角度毎に再帰性反射部材までの距離が求まる。
【0017】
つまり、走査部により走査された測定光の走査角度毎に、距離演算部により距離が求められ、さらにそのときの反射光の強度が得られる。再帰性反射部材は一定の幅があり、平面状に走査された測定光が再帰性反射部材に入射した各入射点から再帰性反射した反射光に基づいて、当該再帰性反射部材の幅を検知することができる。一方、測定光が製造装置やその他の設備の金属カバー等に照射された場合には鏡面反射するため、測定光の光軸と垂直な反射面に照射された光であれば測距装置により検知され、測定光の光軸と反射面が僅かでも傾斜していれば測距装置により検知されない。
【0018】
そこで、識別部は、走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、前記距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別することができる。
【0019】
例えば、所定範囲の走査角度で連続的に略一定の距離が検知されると、再帰性反射部材からの反射光であると識別でき、所定範囲の走査角度の一点で距離が検知されると、鏡面反射による反射光であり再帰性反射部材からの反射光でないと識別できるようになる。
【0020】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述した第一の特徴構成に加えて、前記識別部は、前記走査部により走査された測定光に対して得られた相関関係と、前記走査部により過去に走査された測定光に対して得られた相関関係に基づいてその連続性を評価して、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する点にある。
【0021】
上述の構成によれば、走査部により測定光が走査される度に得られる走査角度毎の距離や反射光の強度を、過去に得られた走査角度毎の距離や反射光の強度と対比して、その差に基づいて同一の再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別することができるようになる。
【0022】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記再帰性反射部材はマイクロプリズム方式の再帰性反射部材であり、前記測距装置は、単一モードで発光するレーザダイオードでなる測定光用の光源と、反射光を受光する受光部とが光軸上に対向配置され、前記光源からの光を検出物に向けて反射する第一ミラーと、検出物からの反射光を前記受光部に向けて反射する第二ミラーを、前記光軸を軸心として回転する回転機構により構成される走査部と、前記第一ミラーから検出物に向けて反射する光路に備えた第一方向に偏光する第一偏光素子と、検知対象物から前記第二ミラーに入射する反射光の光路に備えた第一方向と異なる第二方向に偏光する第二偏光素子により構成されている点にある。
【0023】
単一モードで発光するレーザダイオードは、所定方向に直線偏光した光を出力する特性がある。例えば、第一ミラーにより測距装置の正面に向けて測定光を反射すると、測定光の偏光方向が維持され、当該偏光方向が第一方向と平行であれば第一偏光素子を介して測定光が照射される。
【0024】
マイクロプリズム方式の再帰性反射部材に入射した光は、プリズムにより偏光方向が第二方向に回転して反射されるという特性がある。そのため、反射光の光路に第二方向に偏光する第二偏光素子を備えると、再帰性反射部材に入射した光のみが受光素子に導かれるようになるので、迷光を誤って検知することが回避できるようになるのである
【0025】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述した第三の特徴構成に加えて、走査角度に応じて前記第一偏光素子から出力される測定光の減衰特性に基づいて、前記受光部で受光された反射光の強度を補正する補正演算部を備えている点にある。
【0026】
第三の特徴構成によれば、第一ミラーが回転することにより、レーザダイオードから出力された光の偏光角度が次第に傾き、第一偏光素子を透過する測定光の強度が減衰する。強度の減衰はcosθの二乗則に従う。そこで、補正演算部により、受光部で受光された反射光の強度をcosθの逆二乗則により補正することにより、第一ミラーの回転による強度の減衰の影響を排除した反射光の強度が求まるようになる。
【0027】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記搬送台車は、前記軌道に沿って走行する走行部と、走行部に支持される物品収容部で構成され、前記軌道は、前記走行部に備えた走行車輪を支持する支持部と前記支持部と連接され、前記走行部を囲むカバー部材で構成され、前記測距装置及び前記再帰性反射部材が、前記軌道の内部に位置するように前記走行部に配置されている点にある。
【0028】
軌道の内部に位置する走行部に測距装置及び再帰性反射部材を備えると、外光が軌道を構成するカバー部材で遮断されるため、測定光に起因する迷光以外の迷光を排除できるようになる。また、前方を走行する搬送台車が軌道のカーブを通過し、測定光の光軸が再帰性反射部材からずれるような場合であっても、測定光がカバー部材の内面で反射して、前方を走行する搬送台車に設置された再帰性反射部材に入射し、再帰性反射部材からの反射光がカバー部材の内面で反射して、測距装置に導かれるので、前方を走行する搬送台車との車間距離を良好に検知できるようになる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明した通り、本発明によれば、距離測定装置に入射した光が前方の搬送台車からの反射光であるか否かを高精度で識別でき、誤検知による搬送台車の誤停止等を解消できる距離測定装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】半導体デバイスの製造設備における製造装置,ウェハキャリア装置,搬送台車等の概略斜視図
【図2】搬送台車及びウェハキャリア装置の概略図
【図3】搬送台車及びウェハキャリア装置の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図4】走行レール及び走行部の説明図
【図5】測距装置の説明図
【図6】(a)はレーザの説明図、(b)は測定光と反射光に基づく距離算出の説明図
【図7】(a)は再帰性反射部材の説明図、(b)は再帰性反射部材での反射による偏光方向の変化の説明図
【図8】搬送台車の各機能ブロック図
【図9】測距装置の各機能ブロック図
【図10】走査部の走査角度と測定光の偏光方向の説明図
【図11】(a)は走査角度と、偏光素子を備えることによる測定光の強度の減衰の説明図、(b)は補正演算部による測定光の強度の補正の説明図
【図12】(a)は距離測定装置による再帰性反射部材検知の説明図、(b)は走査角度と距離の説明図、(c)は前方の搬送台車の検知する説明図
【図13】(a)は走査角度と強度の説明図、(b)は距離と強度の説明図
【図14】(a)はカーブで走査される走査光に対応して検知される再帰性反射部材の時系列的な距離特性の説明図、(b)はカーブで走査される走査光及び反射光の光路の説明図
【図15】従来技術の説明図
【図16】従来技術の説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明による距離測定装置を、半導体デバイスの製造設備に備えられた無人の搬送台車に適用した実施形態を説明する。尚、以下の説明で用いる図面に付した符号は、従来技術の説明に用いた図面に付した符号とは無関係である。
【0032】
図1,図2,図3に示すように、半導体デバイスの製造設備1では、半導体ウェハに順次所定の処理を施すための各種の製造装置2(2a〜2l)が設けられ、各製造装置2に沿って天井に軌道としての走行レール10が吊設され、走行レール10には複数の搬送台車20が走行自在に備えられている。
【0033】
搬送台車20は各製造装置2のロードポート3上に載置された複数枚の半導体ウェハが収容されたウェハキャリア装置4を掴持して、コントローラ90からの指令に基づいて各製造装置2間やウェハキャリア装置4を一時的に保管しておくストッカ5間を往来するように構成されている。
【0034】
製造装置2(2a〜2l)は、製造工程毎にベイ6,7に分けられ設置されている。
【0035】
走行レール10は、単純な直線部のみならず、カーブ、分岐部、合流部等を備えた複雑な形状をしている。例えば、各ベイ6,7間を結ぶ工程間レール10a、各ベイ6,7に設置された製造装置2間を結ぶ工程内レール10b、工程間レール10aと工程内レール10bを結ぶ分岐レール10c、工程内レール10b内を走行する搬送台車1を一時退避させる退避レール10d、搬送台車20がストッカ5へウェハキャリア装置4を積降するためのバイパスレール10e等で構成されている。
【0036】
分岐レール10cは、工程間レール10aと工程内レール10bとを接続するレールであり、走行する搬送台車20は、分岐レール10cに沿って走行することで、工程間レール10aと工程内レール10bを互いに往来する。
【0037】
退避レール10dは、工程内レール10bから分岐して設けられ、例えば、搬送台車20のメンテナンス等ために、工程内レール10bから搬送台車20を一時退避させる場合に用いられる。
【0038】
バイパスレール10eは、工程間レール10aから分岐し、工程間レール10aを走行する搬送台車20に掴持されたウェハキャリア装置4をストッカ5に一時保管する場合等に用いられる。
【0039】
走行レール10は、その断面が下方に開口する凹形状に形成されている。具体的には、後述する走行部21に備えた走行車輪27を支持する支持部11と支持部11と連接され、走行部21を囲むカバー部材12で構成されている。尚、走行レール10は、軽さと強度とアルミニウムの引抜材で形成され、支持部材13によって適当な間隔で天井から吊設されているが、材質及び天井への設置方向はこれに限らない。
【0040】
直線状に配置された走行レールでは、カバー部材12のうち側壁部が部分的に開口され、軽量化が図られている。
【0041】
図2,図3,図4に示すように、搬送台車20は、走行レール10の支持部11に沿って走行する走行部21と、走行部21に支持される物品収容部22で構成されている。
【0042】
走行部21は、基台となるメインフレーム26と、メインフレーム26の前後に備えられた車軸に軸支された左右一対の走行車輪27と、走行車輪27を駆動する走行用モータ28(図示せず)を備えている。
【0043】
さらに、メインフレーム26には、走行レール10のカバー部材12内面と略接触状態となる位置に左右一対のガイド車輪(図示せず)が設けられ、前記ガイド車輪によって走行部21は進行方向の左右にずれることなく走行できるように構成されている。
【0044】
さらに、メインフレームには、走行レール10のカバー部材12内に設けられた分岐用ガイド(図示せず)を選択する分岐ローラ(図示せず)が設けられ、例えば、工程間レール10aから分岐レール10cへと走行経路を切り替える際には、コントローラ90の指令を受けて、搬送台車20の、前記分岐ローラが前記分岐用ガイドの何れか一方を選択することで、走行経路が切り替わるように構成されている。
【0045】
尚、走行部21は、走行用モータ28で走行車輪27を駆動して走行する構成に限らず、走行レール10内に敷設された永久磁石と、走行部21側に備えられたコアによりリニアモータを構成して走行する構成であってもよい。
【0046】
メインフレーム26の上部には、左右に給電ユニット30が備えられている。給電ユニット30は、E字形状のコア31とコア31の一部に巻回されたコイル32で構成されている。
【0047】
カバー部材12の内壁側面に給電線ホルダ14で支持された給電線15には高周波電力が印加され、コイル32に前記高周波電力が誘導され非接触で電力伝達が行われる。尚、搬送台車20に必要な電力はすべてこの非接触の給電方式により供給される。
【0048】
尚、コントローラ90からの指令は、給電線15及び給電ユニット30を介して、後述する搬送台車20の走行部21に備えられた通信部75に伝達される。
【0049】
尚、搬送台車1への給電手段としては、上述した給電ユニット30と給電線5とによる非接触の給電方式に限定されるものではない。
【0050】
物品収容部22には、ウェハキャリア装置4を掴むチャック機構23を備えた昇降体24を所定の昇降経路に沿って昇降させる昇降機構としての昇降用モータ25(図示せず)が組み込まれている。
【0051】
昇降体24は、昇降機構22と複数のベルト29で連結されている。昇降用モータ25は、ベルト29を巻き取り、繰り出しをすることで、昇降体24を昇降させるように構成されている。尚、ベルト29には走行部21からチャック機構23へ給電する給電線や信号線が組み込まれている。
【0052】
チャック機構23は、ウェハキャリア装置4の上面の被掴持部4aを掴持するための一対の爪部と掴持用モータ33(図示せず)で構成され、掴持用モータ33を駆動することで前記爪部が掴持姿勢または開放姿勢となることでウェハキャリア装置4の被掴持部4aを掴持または開放するように構成されている。
【0053】
さらに、走行部21のメインフレーム26の進行方向前部には、前方を走行する搬送台車の後部に設置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する測距装置40が備えられ、進行方向後部には、後方を走行する搬送台車の前部に設置された測距装置40からの投光を反射する再帰性反射部材60が備えられている。測距装置40及び再帰性反射部材60は、走行レール10の内部に位置するように走行部21に配置されて、搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置を構成する。
【0054】
尚、本実施形態では搬送台車20は走行経路に沿って前進のみする構成であるため、前方を走行する搬送台車20を検知できるように、搬送台車20の前部のみ測距装置40を設け、後部のみ再帰性反射部材60を設けている。搬送台車20を前後方向に走行可能な構成とする場合は、搬送台車20の前部及び後部のそれぞれに測距装置40と再帰性反射部材60を備えている。
【0055】
図7(a)に示すように、再帰性反射部材60として、それぞれ直角に交わる3つの反射面61,62,63が複数並んだマイクロプリズム方式の再帰性反射部材が用いられ、搬送台車20の走行部21の進行方向の後部であって、後方の搬送台車20の測距装置40からの光を反射可能な適当な高さに取付けられている。マイクロプリズム方式の再帰性反射部材では、測定光が再帰性反射部材60に対して入射角が45度以下の角度で入射したときに再帰性反射し、45度より大きい角度で入射したときには再帰性反射特性が発現しない。
【0056】
図5に示すように、測距装置40は、略円筒状のハウジング50の内部に、測定光用の光源41aからの光を所定の変調信号により変調して測定光として出力する投光部41と、測定光を測距対象空間に向けて回転走査する走査部47と、走査された測定光が検出物で反射した反射光を光電変換素子により検知する受光部42と、投光部41から出力される測定光と、検出物で反射した反射光に基づいて物体までの距離を演算する距離演算部等を備えた制御回路80を備えている。
【0057】
測距装置40について詳述する。測距装置40のハウジング50は、径の異なる円筒が段差部51を介して、図5中の上下方向に二つ重なり、さらに上下が閉じられた形状で、段差部51より上部の周壁部52の全周から一部を除いた側壁(図5では右側壁に示している)に亘って上下方向に一定の幅を有する透光窓53が、ハウジング50沿って曲面状に形成され、この透光窓53を介して、投光部41から出力された測定光と、検出物からの反射光が往来可能となっている。
【0058】
尚、透光窓53以外のハウジング50の内周面は、光の完全な遮光かつ反射防止のために、表面に凹凸を設けた暗幕等の吸光部材で被覆される光吸収壁で構成されている。
【0059】
投光部41は、単一モードで発光するレーザダイオードで構成される光源41aが、図5中下向きに測定光を出力するように配置されている。
【0060】
図6(a)に示すように、単一モードで発光するレーザダイオードは、接合面に垂直な偏光特性をもち、レーザダイオードの出射ビームは、接合面で光が広がっている方向には狭い放射角度で出射され、狭く閉じ込められている方向には広い放射角度で出射される特性がある。よって、投光部41は光源41aから下向きに出力された光の光路上に光学レンズ54を備え、光のビーム径を一定にするように構成されている。
【0061】
走査部47は、光源41aからの光を検出物に向けて反射する第一ミラー44と検出物からの反射光を受光部42に向けて反射する第二ミラー45と、反射光の光路上に反射光を集束する受光レンズ55を備え、回転機構46としてのモータにより回転するように構成されている。尚、走査部47の回転軸心は、光源41aの光軸43と一致するように構成されている。
【0062】
第一ミラー44と第二ミラー45は光軸43に対してそれぞれ45度傾斜し、測定光の光軸と反射光の光軸が平行となるように配置されている。
【0063】
さらに走査部47は、光学的スリットを有するスリット板56を備え、ハウジング50内周面に設置されたフォトインタラプタ57と協働して、走査部47の走査角度を検知する走査角度検知部58を構成する。
【0064】
受光部42は、例えば、アバランシェフォトダイオードなどの受光素子と、光電変換された信号を増幅する増幅回路を備えて構成されている。走査部47の内部に収容された状態で、光軸43上で光源41aと対向するように配置されている。
【0065】
詳述すると、受光部42は、走査部47を支承する中空軸59の上端面に配置されており、回転機構46による走査部47の回転動作とは無関係に、常に静止状態を維持するようになっている。また、受光部42からの出力信号は、中空軸59の内部空間に挿通された信号線(図示せず)により後述の制御回路80に接続されている。
【0066】
さらに、透光窓53の外周面には、第一ミラー44から検出物に向けて反射する光路に第一方向に偏光する第一偏光素子48が貼り付けられ、検知対象物から第二ミラー45に入射する反射光の光路に第一方向と異なる第二方向に偏光する第二偏光素子49が貼り付けられている。
【0067】
尚、透光窓53が、偏光特性を備えていない例えばアクリル樹脂やガラス等の素材で構成される場合には、偏光素子48,49を透光窓53の内面側に貼り付けてもよい。
【0068】
第一偏光素子48及び第二偏光素子49はそれぞれ偏光フィルタであって、第一偏光素子48は、光源41aからの光のうち、例えば図5中上下方向を偏光面とした光(以下、「第一方向の光L1」と記す)のみの通過を許容し、第二偏光素子49は、第一方向の光L1と異なる方向(例えば90度)を偏光面とした光(以下、「第二方向の光L2」と記す)のみの通過を許容するように備えられる。
【0069】
図7(b)に示すように、測距装置40の第一偏光素子48を介して投光された第一方向に偏光する光L1が、再帰性反射部材60に入射すると、まず反射面61に反射し、次に反射面62に反射し、さらに反射面63に反射する過程で、上下方向の偏光面から左右方向の偏光面に90度回転した第二方向に偏光する光L2となり、第二偏光素子49を透過した後に受光部42で検知される。
【0070】
これに対して、測定光が走行レール10の側壁に形成された開口を通過して外部の金属性設備カバー等から反射し、或いは走行レール10内部に備えた給電線ホルダ14等に照射され、内壁面で反射した反射光は、第一方向の光L1の偏光面が維持されるため、第二偏光素子49を通過せず、受光部42により受光されることがない。また、一般的に金属は鏡面反射するため、測定光の入射角度が90度でない場合には、反射光が受光部42により受光されることがない。このようにして、測距装置40は、迷光を誤って検知することが回避でき、前方を走行する搬送台車20の後部に配置した再帰性反射部材60のみを検知することができる。
【0071】
次に、搬送台車20及び測距装置40の各制御部について詳述する。
【0072】
図8に示すように、搬送台車20の走行部21のメインフレーム26内には、CPUや、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータで構成され、走行部21を制御する走行部制御部70が備えられている。
【0073】
走行部制御部70は、各搬送台車20を制御する中央のコントローラ90から出力される指令信号71を、走行レール10のカバー部材12内に配置した給電線15給電ユニット30を介して通信部75で受信し、走行用モータ28を駆動したり、前記分岐ローラを駆動して走行経路を切り替えたり、昇降体24の昇降用モータ25を制御するように構成され、さらに、後述する制御装置40の制御回路80からの信号が伝達されるように構成されている。
【0074】
尚、搬送台車20は、コントローラ90より指定された製造装置2のロードポート3上であることを検知するセンサ等を適宜備え、走行部制御部70には前記センサからの信号が入力されるように構成されている。
【0075】
チャック機構制御部73は、ベルト29に組み込まれた信号線74を介して走行部制御部72と電気的に接続され、走行部制御部72と同じくコントローラ90からの指令信号71に基づいて、掴持用モータ33を駆動して爪部を駆動して、ウェアキャリア装置4の被掴持部4aを掴持または開放するように構成されている。尚、爪部がウェアキャリア装置4の被掴持部4aを掴持または開放したことを検知するセンサ等は適宜備えればよい。
【0076】
図9に示すように、測距装置40のハウジング50内の下部には、測距装置40の制御回路80が備えられている。
【0077】
制御回路80は、CPUや、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータや測距用の演算回路等を備えて構成され、これらにより、投光部41の発光タイミングを制御する発光制御部84と、走査部47で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部81と、走査部47により走査された測定光の複数の走査角度θと、距離演算部81により算出された各走査角度θに対応する距離Dと、各走査角度θに対応する反射光の強度Iのうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する識別部82と、走査角度θに応じて第一偏光素子48から出力される測定光の減衰特性に基づいて、受光部42で受光された反射光の強度Iを補正する補正演算部83等が構成されている。
【0078】
距離演算部81は、TOF方式によって、測距装置40から再帰性反射部材60までの距離を算出する。
【0079】
TOF方式とは、図6(b)に示すように、発光制御部84のパルス信号に基づいて投光部41からレーザ光をパルス光に変調した測定光を出力し、測定光の発光信号と受光部42で受光した検出物(再帰性反射部材60)からの反射光の受信信号との時間遅れに基づいて、以下の数式1により距離を算出する方式である。ここに、Cは光速、ΔTは時間差である。
【0080】
〔数1〕
L=(1/2)×C/ΔT
【0081】
尚、本実施形態では、測距装置40の距離の演算方式として、TOF方式を採用しているが、AM方式を採用してもよい。AM方式とはレーザ光を正弦波で変調した測定光を出力し、検出物で反射して帰ってきた反射光と測定光の位相差に基づいて、以下の数式2により距離を算出する方式である。ここに、φは計測された位相差、Cは光速、Fは変調周波数である。
【0082】
〔数2〕
L=(1/2)×(φ/2π)×C/F
【0083】
走査部47に備えられたスリット板56のスリット間隔は予め設定された回転体の基準位置で他と異なるように形成されており、走査角度検知部58は、パルス信号の波形に基づいて基準位置を検知し、基準位置からのパルス数をカウントすることにより基準位置からの走査角度θを算出するように構成されている。
【0084】
ここで、走査角度θに応じて第一偏光素子48から出力される測定光の減衰特性について説明する。
【0085】
図10に示すように、搬送台車の進行方向前方正面(走査角度θ=0度とする)に第一方向に直線偏光した光を出力するようにレーザダイオードを配置したとき、第一ミラー44により測距装置40の正面に向けて、偏光方向が維持された状態で反射された測定光は、第一偏光素子48を介して進行方向前方正面に照射される。光の強度Iは、電界Eの大きさの二乗に比例するため、このときの測定光の強度I0は、I0=E02cos2(0)となる。
【0086】
しかし、走査部47の回転に伴い第一ミラー44が回転すると、レーザダイオードの垂直な偏光特性に対して、第一ミラー44で反射された測定光の偏光角度が次第に傾くことになる。例えば、走査角度θ=±45度のときに、第一偏光素子48を通過した測定光の強度I45は、I45=E452cos2(45)となる。
【0087】
つまり、走査角度θのときの光の強度Iθは、Iθ=I0cos2θで表され、走査角度θが0度から±90度になるにつれて減衰する。よって、図11(a)に示すように、走査角度θ=0のとき測定光は第一偏光素子48から出射され、走査角度θ=±90度のとき測定光は第一偏光素子48から出射されなくなる。
【0088】
そこで、図11(b)に示すように、補正演算部83は、受光部42で受光された反射光の強度をcosθの逆二乗則により補正する。これにより、第一ミラー44の回転による強度の減衰の影響を排除した測定光の強度が求まる。以後、反射光の強度Iとは、補正演算部83で補正された強度をいう。
【0089】
走査部47により平面状(ここでは、水平面状であるが、垂直面状、または水平面から所定角度傾斜した平面状であってもよい。)に走査された測定光が前方の搬送台車20の再帰性反射部材60に照射されると、測定光が再帰性反射部材60から測距装置40に向けて反射され、距離演算部81により測定光と反射光との時間遅れから再帰性反射部材60までの距離が算出され、測定光の走査角度θ毎に再帰性反射部材60までの距離が求まり、さらにそのときの反射光の強度が得られる。再帰性反射部材60は一定の幅があり、平面状に走査された測定光が再帰性反射部材60に入射した各入射点から再帰性反射した反射光に基づいて、当該再帰性反射部材60の幅を検知することができる。
【0090】
しかし、測定光が製造装置やその他の設備の金属カバー等に照射された場合には鏡面反射するため、測定光の光軸と垂直な反射面に照射された光であれば測距装置40により検知されるものの、測定光の光軸と反射面が僅かでも傾斜していれば反射光は測距装置40により検知されないため、測定光の操作角度に対してある幅で連続的に反射光が検知されることはない。
【0091】
そこで、識別部82は、走査部47により走査されて得られ、制御回路80のRAMに記憶された測定光の複数の走査角度θと、距離演算部81により算出された各走査角度θに対応する距離Dと、各走査角度θに対応する反射光の強度Iの少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別し、走行部制御部70に当該識別したデータを送信するように構成されている。
【0092】
まず、識別部82が、走査部47により走査された測定光の複数の走査角度θと、距離演算部83により算出された各走査角度θに対応する距離Dとの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する場合について説明する。
【0093】
再帰性反射部材60は一定の幅があるので、平面状に走査された測定光が再帰性反射部材60に入射した各入射点から再帰性反射した反射光に基づいて、当該再帰性反射部材60の幅を検知することができる。
【0094】
例えば、図12(a)に示すように、距離Dxでは、再帰性反射部材60は、走査角度θ=0±θxの範囲で検知され、その幅はAx=2Dxtanθxであることが分かっている。
【0095】
例えば、制御回路80のROMには、距離演算部83により算出された再帰性反射部材60までの距離Dxと、再帰性反射部材60の幅Axに対応する走査角度範囲θとの相関関係を規定するテーブルデータが格納されている。つまり、再帰性反射部材までの距離Dxが長くなると測距装置により検知される幅Ax、つまり走査角度範囲θが狭くなり、距離Dxが短くなると測距装置により検知される幅Ax、つまり走査角度範囲θが広くなるという相関関係が成立するため、距離演算部81により算出された再帰性反射部材60までの距離Dx毎に再帰性反射部材60の幅に対応する走査角度の上限と下限を示す許容範囲を規定したテーブルデータが記憶されている。例えば、識別部82は、一回の走査時に算出した検出物までの平均距離とそのときの検出物に対応する走査角度範囲が、ROMに記憶された許容範囲に入っていれば、検知された反射光は再帰性反射部材からの反射光であると識別する。
【0096】
図12(b)に示すように、測距装置40が、搬送台車20aの進行方向前方に距離D1で走査角度範囲θ=0±θ1の物体を検知したとする。このとき物体の幅はA1=2D1tanθ1となる。
【0097】
識別部82は、検知によってRAMに記憶された距離D1と走査角度(幅A1)と、前記ROMに記憶されている距離D1と走査角度(幅A1)の相関関係のテーブルデータと比較し、当該反射光は、図12(c)に示すように、前方の搬送台車20bの再帰性反射部材60bからの反射光であると識別する。尚、搬送台車20aの進行方向前方正面距離D3の位置に、幅Bの物体が検知されても、識別部82は、前記ROMに記憶されている距離D3における幅に比べて小さすぎるため、再帰性反射部材からの反射光でないと識別することができる。
【0098】
このように、識別部82が、反射光が前方を走行する搬送台車20bの再帰性反射部材60bからのものであると識別すると、走行部制御部70に距離データを伝達し、走行部制御部70は、走行用モータ28を制御して、搬送台車20の走行速度を制御する。通常、搬送台車20は、3m/sの速度で走行制御されているが、例えば、前方の搬送台車との距離が5m以下であれば搬送台車20を減速制御をし、1m以下であれば搬送台車20を停止制御をし、300mm以下であれば搬送台車20を完全に停止することで搬送台車同士の衝突を防止することができる。
【0099】
次に、識別部82が、走査部47により走査された測定光の複数の走査角度θxと、各走査角度θxに対応する反射光の強度Ixとの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する場合について説明する。
【0100】
例えば、制御回路80のROMには、再帰性反射部材60が検知される走査角度範囲θと強度Ixの相関関係のテーブルデータ、例えば、走査角度範囲θが大きいとき、つまり、再帰性反射部材までの距離が短いときは検知される強度Ixが強くなり、走査角度範囲θが小さいとき、つまり、再規制反射部材までの距離が長いときは強度Ixが弱くなるという相関関係が成立するため、補正演算部83により補正された強度Ix毎に再帰性反射部材60の幅に対応する走査角度の上限と下限を示す許容範囲を規定したテーブルデータが記憶されている。例えば、識別部82は、一回の走査時に算出した検出物までの平均強度とそのときの検出物に対応する走査角度範囲が、ROMに記憶された許容範囲に入っていれば、検知された反射光は再帰性反射部材からの反射光であると識別することができる。
【0101】
また例えば、図13(a)に示すように、測距装置40が走査角度範囲θ=0±θ1で強度がほぼ一定値I1である反射光を検知したとする。識別部82は、検知によってRAMに記憶された走査角度範囲θ=0±θ1の範囲と強度I1と、前記ROMに記憶されている走査角度範囲θ=0±θ1のときの強度I1とを比較して、その差が許容範囲内にあれば、当該反射光は、図12(c)に示すように、前方の搬送台車20bの再帰性反射部材60bからの反射光であると識別する。尚、搬送台車20aの進行方向前方正面の走査角度範囲θ=Cに亘って強度I3の反射光が検知されても、識別部82は、前記ROMに記憶されているテーブルデータと比較し、再帰性反射部材からの反射光でないと識別する。この場合、強度I3が検知される範囲が走査角度範囲θ=Cでは小さすぎるため、再帰性反射部材からの反射光でないと識別できるのである。
【0102】
次に、識別部82が、距離演算部81により算出された各走査角度θに対応する距離Dxと、各走査角度θに対応する反射光の強度Ixとの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する場合について説明する。
【0103】
例えば、制御回路80のROMには、各走査角度θに対応する距離Dxと、反射光の強度Ix、つまり、光の強度Ixは光源41からの距離Dxの二乗に反比例するため、反射光の強度Ixが大きくなれば再帰性反射部材までの距離はDxは短くなり、反射光の強度Ixが小さくなれば再帰性反射部材までの距離Dxは長くなるという相関関係が成立するため、距離Dxに対する反射光の強度Ixの許容範囲を規定したテーブルデータ、または、反射光の強度Ixに対する距離Dxの許容範囲を規定したテーブルデータが記憶されている。例えば、識別部82は検知された反射光の距離Dxに対する反射光の強度IxがROMに記憶された反射光の強度Ixの許容範囲内であれば、検知された反射光は再帰性反射部材からの反射光であると識別することができる。
【0104】
図13(b)に示すように、測距装置40が、距離D1で強度I1の反射光を検知したとする。識別部82は、検知によってRAMに記憶された距離D1における強度I1と、前記ROMに記憶されている距離D1のときの強度I1を比較して、強度I1が許容範囲内であれば、当該反射光は、図12(c)に示すように、前方の搬送台車20bの再帰性反射部材60bからの反射光であると識別する。尚、距離D3で強度I3の反射光が検知されても、識別部82は、前記ROMに記憶されているテーブルデータに記憶された所定範囲外であるため、再帰性反射部材からの反射光でないと識別する。この場合、強度I3が検知される距離D3では小さすぎるため、再帰性反射部材からの反射光でないと識別できるのである
【0105】
上述の説明では、二台の搬送台車が直線状の走行レール10に沿って走行する場合について説明したが、例えば、図14(a)に示すように、前方を走行する搬送台車20が右方向にカーブする場合、搬送台車は減速しながら右方向に移動することになるので、検知される反射光に基づく走査角度θと距離Dは、図中右下方向矢印で示す方向に移動することとなる。尚、反射光が検出される走査角度の範囲は、前方の搬送台車の再帰性反射部材の角度が、後方の搬送台車の測距装置の測定光の光軸に対して傾くため、検知される走査角度はθ=0±θ1より小さくなる。
【0106】
さらに、図14(b)に示すように、前方を走行する搬送台車20bが軌道のカーブを通過し、後方の搬送台車20aの測距装置の測定光の光軸が再帰性反射部材60からずれるような場合であっても、測定光がカバー部材12の内面で反射して、前方を走行する搬送台車20bに設置された再帰性反射部材60bに入射し、再帰性反射部材60bからの反射光がカバー部材の内面で反射して、測距装置40aに導かれるので、前方を走行する搬送台車20bとの車間距離を良好に検知できるようになる。
【0107】
上述の実施形態では、識別部82は、走査部47の一走査毎に反射光に基づいて再帰性反射部材からの反射光か否かを識別する構成について説明したが、識別部82は、走査部47により走査された測定光に対して得られた相関関係と、走査部47により過去に走査された測定光に対して得られた相関関係に基づいて、その連続性を評価して、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別するように構成してもよい。
【0108】
この場合、識別部82は、ある走査によって得られ制御回路80のRAMに記憶された走査角度範囲θ、距離D、強度Iと、次の走査によって得られ制御回路80のRAMに記憶された走査角度範囲θ、距離D、強度Iをそれぞれ比較し、その差が所定の許容範囲内であれば、連続性があると評価して、前記再帰性反射部材からの反射光であると識別する。また、走査角度範囲θ、距離D、強度Iの何れかの組み合わせで識別してもよい。この場合、許容範囲は、前回と今回の算出距離を算出時間差で除して前方車両との相対速度を算出し、当該相対速度毎に予め設定された値である。
【0109】
例えば、図12(b)に示すように、走査角度範囲θ=0±θ1に亘って距離D1を検知した次の走査で、走査角度範囲θ=0±θ2に亘って距離D2が検知されたとする。すると識別部82は、当該反射光が再帰性反射部材60からのものであるか否かを識別し、さらに、前回の走査で得られた結果と比較し、この場合は、再帰性反射部材60までの距離が近づいていることが識別できる。
【0110】
さらに、図13(a)に示すように、走査角度範囲θ=0±θ1に亘って強度I1を検知した次の走査で、走査角度範囲θ=0±θ2に亘って強度I2が検知されたとする。すると識別部82は、当該反射光が再帰性反射部材60からのものであるか否かを識別し、さらに、前回の走査で得られた結果と比較し、この場合は、再帰性反射部材60までの距離が近づいていることが識別できる。
【0111】
さらに、図13(b)に示すように、距離D1のときに反射光の強度I1を検知した次の走査で、距離D2のときに反射光の強度I2が検知されたとする。すると識別部82は、当該反射光が再帰性反射部材60からのものであるか否かを識別し、さらに、前回の走査で得られた結果と比較し、この場合は、再帰性反射部材60までの距離が近づいていることが識別できる。
【0112】
このように、走査部47により測定光が走査される度に得られる走査角度θ毎の距離Dや反射光の強度Iを、過去に得られた走査角度θ毎の距離Dや反射光Iの強度と対比して、その差に基づいて同一の再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別することができるようになる。
【0113】
尚、上述の説明では、識別部82が、走査部47で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部81と、走査部47により走査された測定光の複数の走査角度θと、距離演算部81により算出された各走査角度θに対応する距離Dと、各走査角度θに対応する反射光の強度Iのうち、何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する構成について説明したが、走査角度θ、距離D、反射光強度Iのすべてを組み合わせて、再帰性反射部材60からの反射光であるか否かを識別する構成であってもよい。走行レール10の内部に位置する走行部21に測距装置40及び再帰性反射部材60を備えているため、外光が軌道を構成するカバー部材12で遮断されるため、測定光に起因する迷光以外の迷光を排除できるのである。
【0114】
上述した実施形態では、測距装置40の走査角度の走査範囲について明示しなかったが、搬送台車20の進行方向前方正面を測距装置40の走査角度θ=0度としたときに、走査角度θ=0±30度の範囲を測距できれば、走行レール10の水平方向の幅が400mm、再帰性反射部材60の幅が200mmである場合は、直線部の走行レール10の前方正面に約180mm程度の近距離であっても再帰性反射部材60の水平方向の全てを検知できるので、搬送台車間の距離を短くすることができ、走行レールを走行する搬送台車の数を増やすことができるので、ウェハキャリア装置の搬送効率を高めることができる。
【0115】
また、軌道の曲線部で中央部の曲率半径Rが最大で500mmである場合には、測距装置40が、進行方向前方正面を走査角度θ=0度としたときに走査角度θ=0±30度の範囲を走査すれば、十分に再帰性反射部材60dが検知できるが、走査角度範囲は曲線部で中央部の曲率半径Rの値等に応じて適宜設定することができる。
【0116】
尚、本実施形態では、回転機構による第一ミラー及び第二ミラー45の回転速度を2400rpmに設定されているため、測定光は1秒間に40回走査され、走査角度−30度から+30度まで約4.2msecで一回走査される。そして、一回の走査中に、0.2度刻みで距離が算出されるように構成されている。
【0117】
上述した実施形態では、再帰性反射部材としてマイクロプリズム方式の再帰性反射部材を用い、測距装置が、単一モードで発光するレーザダイオードでなる測定光用の光源と、反射光を受光する受光部とが光軸上に対向配置され、光源からの光を検出物に向けて反射する第一ミラーと、検出物からの反射光を受光部に向けて反射する第二ミラーを、光軸を軸心として回転する回転機構により構成される走査部と、第一ミラーから検出物に向けて反射する光路に備えた第一方向に偏光する第一偏光素子と、検知対象物から前記第二ミラーに入射する反射光の光路に備えた第一方向と異なる第二方向に偏光する第二偏光素子により構成された例を説明したが、本発明による距離測定装置はこのような構成に限るものではない。
【0118】
例えば、マルチモードで発光するレーザダイオードや発光ダイオードでなる測定光用の光源と、反射光を受光する受光部とが光軸上に対向配置され、光源からの光を検出物に向けて反射する第一ミラーと、検出物からの反射光を受光部に向けて反射する第二ミラーを、光軸を軸心として回転する回転機構により構成される走査部で構成され、第一及び第二偏光素子を備えていない測距装置を用いてもよい。
【0119】
この場合にも、走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する識別部を備えることにより、再帰性反射部材からの反射光であるか、ノイズ光であるかを適切に識別して、前方を走行する搬送台車との車間距離を正確に検知することができる。
【0120】
尚、この場合、マイクロプリズム方式の再帰性反射部材に替えて、ガラスビーズ方式の再帰性反射部材を用いることも可能である。ガラスビーズ方式の再帰性反射部材は、反射膜を備えた基材にガラスビーズでなる反射層を備えて構成され、光がガラスビーズに入射するときに屈折され、球面上の一点で焦点を結び、ガラスビーズの裏の反射膜により反射され、ガラスビーズを出るときに再度屈曲して、入射光と平行に光源方向に反射される。
【0121】
上述した実施形態では、測距装置及び再帰性反射部材が、軌道の内部に位置するように走行部に配置された構成を説明したが、測距装置及び再帰性反射部材が、軌道の外部に位置するように搬送台車に配置されてもよい。
【0122】
上述した実施形態では、本発明による距離測定装置が、半導体デバイスの製造設備に用いられる場合を説明したが、本発明による距離測定装置は、軌道に複数の搬送台車が走行する任意の荷物搬送装置に用いることができる。
【0123】
上述の実施形態は何れも本発明の一実施例に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
1:製造設備
2(2a〜2l):製造装置
3:ロードポート
4:ウェハキャリア装置
4a:被掴持部
5:ストッカ
6,7:ベイ
21:走行部
27:走行車輪
10:走行レール
10a:工程間レール
10b:工程内レール
10c:分岐レール
10d:退避レール
10e:バイパスレール
11:支持部
12:カバー部材
13:支持部材
14:給電線ホルダ
15:給電線
20:搬送台車
21:走行部
22:物品収容部
23:チャック機構
24:昇降体
25:昇降用モータ
26:インフレーム
27:走行車輪
28:走行用モータ
29:ベルト
30:給電ユニット
31:コア
32:コイル
33:掴持用モータ
40:測距装置
60:再帰性反射部材
61,62,63:反射面
50:ハウジング
41:投光部
41a:光源
42:受光部
43:光軸
44:第一ミラー
45:第二ミラー
46:回転機構
47:走査部
48:第一偏光素子
49:第二偏光素子
50:ハウジング
51:段差部
52:周壁部
53:透光窓
54:光学レンズ
56:スリット板
55:受光レンズ
57:フォトインタラプタ
58:走査角度検知部
59:中空軸
L1:第一方向の光
L2:第二方向の光
70:走行部制御部
71:指令信号
72:走行部制御部
73:チャック機構制御部
74:信号線
75:通信部
80:制御回路
81:距離演算部
82:識別部
83:補正演算部
84:発光制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って走行する搬送台車の前部に、変調された測定光を平面状に走査する走査部と、走査部で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部とからなる測距装置を配置し、前記測距装置により前方を走行する搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置であって、
前記走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、前記距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する識別部を備えている距離測定装置。
【請求項2】
前記識別部は、前記走査部により走査された測定光に対して得られた相関関係と、前記走査部により過去に走査された測定光に対して得られた相関関係に基づいてその連続性を評価して、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記再帰性反射部材はマイクロプリズム方式の再帰性反射部材であり、
前記測距装置は、単一モードで発光するレーザダイオードでなる測定光用の光源と、反射光を受光する受光部とが光軸上に対向配置され、前記光源からの光を検出物に向けて反射する第一ミラーと、検出物からの反射光を前記受光部に向けて反射する第二ミラーを、前記光軸を軸心として回転する回転機構により構成される走査部と、前記第一ミラーから検出物に向けて反射する光路に備えた第一方向に偏光する第一偏光素子と、検知対象物から前記第二ミラーに入射する反射光の光路に備えた第一方向と異なる第二方向に偏光する第二偏光素子により構成されている請求項1または2記載の距離測定装置。
【請求項4】
走査角度に応じて前記第一偏光素子から出力される測定光の減衰特性に基づいて、前記受光部で受光された反射光の強度を補正する補正演算部を備えている請求項3記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記搬送台車は、前記軌道に沿って走行する走行部と、走行部に支持される物品収容部で構成され、前記軌道は、前記走行部に備えた走行車輪を支持する支持部と前記支持部と連接され、前記走行部を囲むカバー部材で構成され、前記測距装置及び前記再帰性反射部材が、前記軌道の内部に位置するように前記走行部に配置されている請求項1から4の何れかに記載の距離測定装置。
【請求項1】
軌道に沿って走行する搬送台車の前部に、変調された測定光を平面状に走査する走査部と、走査部で走査された測定光と検出物からの反射光との時間遅れから検出物までの距離を算出する距離演算部とからなる測距装置を配置し、前記測距装置により前方を走行する搬送台車の後部に配置された再帰性反射部材からの反射光に基づいて搬送台車間の車間距離を検知する距離測定装置であって、
前記走査部により走査された測定光の複数の走査角度と、前記距離演算部により算出された各走査角度に対応する距離と、各走査角度に対応する反射光の強度のうち、少なくとも何れか二つの相関関係に基づいて、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する識別部を備えている距離測定装置。
【請求項2】
前記識別部は、前記走査部により走査された測定光に対して得られた相関関係と、前記走査部により過去に走査された測定光に対して得られた相関関係に基づいてその連続性を評価して、前記再帰性反射部材からの反射光であるか否かを識別する請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記再帰性反射部材はマイクロプリズム方式の再帰性反射部材であり、
前記測距装置は、単一モードで発光するレーザダイオードでなる測定光用の光源と、反射光を受光する受光部とが光軸上に対向配置され、前記光源からの光を検出物に向けて反射する第一ミラーと、検出物からの反射光を前記受光部に向けて反射する第二ミラーを、前記光軸を軸心として回転する回転機構により構成される走査部と、前記第一ミラーから検出物に向けて反射する光路に備えた第一方向に偏光する第一偏光素子と、検知対象物から前記第二ミラーに入射する反射光の光路に備えた第一方向と異なる第二方向に偏光する第二偏光素子により構成されている請求項1または2記載の距離測定装置。
【請求項4】
走査角度に応じて前記第一偏光素子から出力される測定光の減衰特性に基づいて、前記受光部で受光された反射光の強度を補正する補正演算部を備えている請求項3記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記搬送台車は、前記軌道に沿って走行する走行部と、走行部に支持される物品収容部で構成され、前記軌道は、前記走行部に備えた走行車輪を支持する支持部と前記支持部と連接され、前記走行部を囲むカバー部材で構成され、前記測距装置及び前記再帰性反射部材が、前記軌道の内部に位置するように前記走行部に配置されている請求項1から4の何れかに記載の距離測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−69671(P2011−69671A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219710(P2009−219710)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【特許番号】特許第4461199号(P4461199)
【特許公報発行日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000242600)北陽電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【特許番号】特許第4461199号(P4461199)
【特許公報発行日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000242600)北陽電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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