説明

車の車輪のタイヤを成形し硬化させる方法および装置

車の車輪のタイヤを成形し硬化させる方法は、グリーンタイヤ(50)を、形状が該グリーンタイヤ(50)の内面に実質的に従う外面を有する環状支持体(10)上で製造するステップと、該環状支持体(10)を加熱することにより、熱を該環状支持体(10)に接触するタイヤの内面に伝達するステップと、該グリーンタイヤ(50)の該内面を、少なくとも1つの加圧二次作動流体により該環状支持体(10)の該外面に対して押圧するステップと、該環状支持体(10)の該外面と該グリーンタイヤ(50)の該内面との間の少なくとも1つの拡散間隙内を通過する加圧一次作動流体により、加硫用金型(102)内に画定される成形キャビティ(104)の壁に対し、該グリーンタイヤ(50)の外面を押圧するステップと、を含み、該加圧一次作動流体は、該グリーンタイヤの加硫をもたらすために該グリーンタイヤ(50)に熱を供給するように加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車の車輪のタイヤを成形し硬化させる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの生産サイクルでは、種々のタイヤ部品を作製しかつ/または組み立てる製造(building)工程に続き、通常特定のトレッドパターンを示す所望の形状に従ってタイヤ構造を画定することを目的とする、成形および硬化工程が行われる。
【0003】
その目的のために、タイヤは、加硫用金型の内部に画定され、得られるタイヤの外面の形状構成に従って形作られた、成形用キャビティに閉じ込められる。
【0004】
一般に、タイヤは、ラジアル面、すなわちタイヤの回転軸を含む面に位置する補強コードによって強化される、1つまたは複数のカーカスプライを含む円環状でリング状のカーカスを備える。各カーカスプライの端部には、通常ビードコアとして知られる少なくとも1つの環状補強金属構造が一体的に関連付けられており、それは、ビードすなわち上記タイヤの半径方向内端における補強部分を構成し、その機能は、タイヤを対応する取付リムと組み立てることができるようにすることである。上記カーカスに対して、トレッドバンドと呼ばれるエラストマ材料のバンドがクラウン状に配置されており、そこでは、硬化および加硫ステップの最後に、地面と接触するための隆起パターンが形成される。カーカスとトレッドバンドとの間に、通常ベルト構造として知られる補強構造が配置される。自動車用のタイヤの場合、この構造は通常、通常金属材料からなる補強コードが設けられたゴム引きされた生地の少なくとも2つの半径方向に重ねられたストリップを備え、補強コードは、各ストリップにおいて平行にかつ隣接するストリップのコードと交差した関係で配置され、好ましくはタイヤの赤道面に対して対称に配置される。
【0005】
上記ベルト構造はさらに、その半径方向外側位置において、少なくとも下にあるストリップの端部に、円周方向に(0度で)配置される繊維または金属コードの第3の層を同様に備えることが好ましい。
【0006】
最後に、チューブレス、すなわちエアチューブのないタイヤでは、タイヤの気密性を確実にするため、不浸透性機能を有する概してライナと呼ばれる半径方向内側層が存在する。
【0007】
本発明の目的のために、「エラストマ材料」という用語は、少なくとも1つのエラストマポリマと少なくとも1つの補強充填材とを備える組成物であることが意図される、ということを指摘しておくべきである。この組成物はさらに、たとえば架橋剤および/または可塑剤等の添加剤を含むことが好ましい。架橋剤が存在することにより、この材料を、加熱を通して架橋することができ、それにより最終製造物品が形成される。
【0008】
金型内に、剛性な環状支持体上に置かれたグリーンタイヤが配置される成形および硬化方法がある。この方法は、その前の製造工程に続き、外側輪郭が、製作されることが望まれるタイヤの半径方向内側面の輪郭に一致する、環状支持体の、その上に供給される、限られた数の基本の半製品から開始して製作されるタイヤに対して採用されることが好ましい。上記環状支持体は、複数のステーション間で好ましくはロボット化システムによって移動させられ、ステーションの各々では、自動化シーケンスを通して、タイヤの特定の製造ステップが実施される(たとえば、本願と同一の出願人の名義である文書EP0928680号を参照)。
【0009】
本願と同一の出願人の名義でEP0976533号として発行された欧州特許出願は、車の車輪のタイヤを成形し硬化させる方法および装置であって、環状支持体上に構築されたグリーンタイヤを加硫用金型内に閉じ込め、その後、環状支持体の外面とタイヤの内面との間に形成された流体拡散のための少なくとも1つの間隙内に、蒸気または他の加圧流体を供給する、方法および装置を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
出願人は、上記例示したタイプの方法により、成形および硬化ステップの最後に、得られたタイヤが時にいくつかの欠点を示す場合がある、ということを確かめることができた。これは主に、同じ環状支持体上で直接組み立てられ硬化されたタイヤの場合、加硫用ブラダの効果がないため、作動流体(すなわち、加硫流体)が直接タイヤの最内層に接触することになるために発生する。上記ブラダは、加硫用金型のグリーンタイヤ内に存在する場合、金型に対するエラストマ材料の一様な拡散を可能にするとともに、たとえば接合によるわずかな作業上の過失、わずかな手作業による誤りまたは製造ドラムの誤差もまた補正する。実際には、従来の製造工程では、すなわち、大型サイズですらある半製品(例えばカーカスプライ、ベルトストリップ、トレッドバンド等)が円柱状の製造ドラム上で組み立てられ、グリーンタイヤがドラム自体に関連する適当な装置(たとえば、機械式または空気式装置)によって円環状形態に形作られる場合、加工作業の最後に、製造および形成ドラムから外され、したがって上記加硫用ブラダを内部に収容することができる、グリーンタイヤが得られる。
【0011】
特に、出願人は、環状支持体上に直接製造されるタイヤの成形および硬化中に、加圧作動流体が環状支持体の外面とグリーンタイヤの内面との間に供給される間に、まだ未硬化状態にある、すなわちプラスチック状態にあるエラストマ材料のさまざまな部品が、設計仕様に対して変則的な構成をとる可能性がある、ということを確かめることができた。特に、タイヤが上記作動流体によって膨張させられるため、1つのまたは複数のカーカスプライは、ビード領域のそれらの位置から移動して滑り落ちる可能性がある。このようにして、成形ステップによって確定される1つまたは複数のカーカスプライの張力は、完成したタイヤに対して意図される張力より低い。
【0012】
カーカスプライと同様に、グリーンタイヤの他の部品も、この工程の最初の何分かの間に、すなわちエラストマ材料のプラスチックの特徴がより多く存在する時に、内部加硫圧力のための互いに対して摺動する可能性がある。この現象は、ビード領域においてより多く発生し、カーカスプライが部分的に滑り落ちることに加えて、ビード自体に段および不連続性の形成をもたらす、材料の不足または蓄積の現象が観察される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
出願人は、ビードと、タイヤの最内面、すなわち加硫中に作動流体と最初に接触する環状支持体と接触するタイヤ部分と、の形状を少なくとも部分的に固定(fix)することにより、上述した欠点を克服することができる、ということがわかった。
【0014】
より詳細には、出願人は、グリーンタイヤを外側から内側に押圧し、同時に上記タイヤの内面に熱を供給することにより、タイヤの最内層およびビード領域の少なくとも部分的な加硫が得られ、それにより、後に、完成したタイヤに均質性の欠如および不均一性をもたらすことなく成形および硬化ステップを行うことができる、ということがわかった。
【0015】
実際には、成形および硬化状態における作動流体は、すでに部分的に加硫されしたがってもはや材料のプラスチックの性質は示さず略弾性な(elastic)性質を示すタイヤの部分と、直接接触する。この場合、最外タイヤ層に属するエラストマ材料の、金型に対する一様の拡散が得られる。さらに、加硫圧力による1つまたは複数のカーカスプライの張力によって、ビードにおいてプライが滑り落ちることがない。それは、1つまたは複数のプライが、その部分的な加硫に続いて、この領域に存在するエラストマ材料と実質的に一体的になるためである。
【0016】
第1態様では、本発明は、車の車輪のタイヤを成形し硬化させる方法であって、グリーンタイヤを、形状が実質的に該グリーンタイヤの内面の形状と一致する外面を有する環状支持体上で製造するステップと、該環状支持体を加熱することにより、熱を該環状支持体に接触するタイヤの内面に伝達するステップと、該グリーンタイヤの該内面を、少なくとも1つの加圧二次作動流体を通して(through at least one secondary working fluid under pressure)該環状支持体の該外面に対して押圧するステップと、該環状支持体の該外面と該グリーンタイヤの該内面との間の少なくとも1つの拡散間隙内(inat least one diffusion gap)を通過する加圧一次作動流体を通して、加硫用金型内に画定される成形キャビティの壁に対し、該グリーンタイヤの外面を押圧するステップと、を含み、該加圧一次作動流体が、該グリーンタイヤに熱を供給することにより該タイヤの加硫をもたらすように加熱される方法に関する。
【0017】
第2態様では、本発明は、車の車輪のタイヤを成形し硬化させる装置であって、成形キャビティ内でグリーンタイヤを支持するように適合された環状支持体を収容するように配置された気密加硫用金型と、該環状支持体を通して形成され該環状支持体の外面に通じており、少なくとも1つの加圧一次作動流体を供給することにより、該加圧一次作動流体の該グリーンタイヤの内面に向う移動を可能にするように適合された少なくとも1つの通路装置(passage device)と、該グリーンタイヤを該環状支持体の該外面上に外側から内側に押圧するために、該加硫用金型に動作可能に関連付けられ、加圧二次作動流体を供給する供給装置と、該環状支持体を加熱する加熱装置と、該グリーンタイヤに熱を伝達し該グリーンタイヤの加硫をもたらすように該一次作動流体を加熱する加熱装置と、を備える装置に関する。
【0018】
第3態様では、本発明は、車の車輪のタイヤを成形し硬化させる装置であって、成形キャビティ内でグリーンタイヤを支持するように適合された環状支持体を収容するように配置された加硫用金型と、該環状支持体を通して形成され該環状支持体の外面に通じており、少なくとも1つの加圧一次作動流体を供給することにより、該加圧一次作動流体の該グリーンタイヤの内面に向う移動を可能にするように適合された少なくとも1つの通路装置と、該グリーンタイヤに熱を伝達し該グリーンタイヤの加硫をもたらすように該一次作動流体を加熱する加熱装置と、該環状支持体を収容するように配置された気密容器と、該グリーンタイヤを該環状支持体の該外面上に外側から内側に押圧するために、該気密容器に動作可能に関連付けられ、加圧二次作動流体を供給する供給装置と、該環状支持体を加熱する加熱装置と、を備える装置に関する。
【0019】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明による車の車輪のタイヤを成形し硬化させる方法および装置のいくつかの好ましいが排他的ではない実施形態の詳細な説明からより明らかとなろう。
【0020】
この説明を、以下、限定しない例として与えられる添付図面を参照して詳しく行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1を参照すると、本発明の第1実施形態による車の車輪のタイヤのための成形および硬化装置が、概して参照数字101によって識別されている。
【0022】
装置101は、気密容器103に動作可能に関連付けられた加硫用金型102を備える。
【0023】
好ましくは、金型102を、容器103の基部103Aと閉鎖部103Bとに夫々係合する下半部102Aと上半部102Bとから構成することができる。
【0024】
例として示す実施形態では、金型102の下半部102Aと上半部102Bとの各々は、チーク、すなわち下部チーク130Aおよび上部チーク130B夫々と、下部セクタ131Aおよび上部セクタ131B夫々から構成されるセクタのクラウンと、を有する。
【0025】
下半部102Aと上半部102Bとは、互いから間隔が空けられている開位置と、互いに近接して、成形キャビティ104を形成する図1および図2に示す閉位置と、の間で互いに移動可能であり、上記チーク及び上記セクタによって画定される成形キャビティの内壁は、成形および加硫ステップの最後に達成されるタイヤの外面の幾何学的形状を再現する。
【0026】
より詳細には、チークは、対向するタイヤサイドウォールの外面を形成するように設計されており、セクタは、内部に、所望の「トレッドパターン」に従って適当に配置される一連の切込みならびに縦方向および/または横方向の溝を作成することにより、タイヤ自体のいわゆるトレッドバンドを形成するように設計される。
【0027】
装置101は、さらに、タイヤの内面の形状を実質的に再現する外面を有する、金属または他の剛性材料の少なくとも1つの環状支持体10の使用を企図する。環状支持体10は、取り除くことができるドラムから作製されることが都合よく、すなわち、円周方向のセグメントから作製され、そのうちの少なくともいくつかが求心的に移動可能であることにより、作業が終了すると環状支持体を分解しタイヤから容易に除去することができる。
【0028】
装置101は、さらに、蒸気、窒素または他の実質的に不活性なガスもしくはそれらの混合物等、加圧一次作動流体のための少なくとも1つのダクト110(図2)を備える。その流体は、以下によりよく説明するように、タイヤの成形および加硫のために使用される。
【0029】
また、装置101には、加熱流体が通過するための複数のダクト105の形態であることが好ましい、金型102のための加熱装置があることも好ましい。
【0030】
装置101はまた、グリーンタイヤ50がその上に先に製造された環状支持体10を含むように適合された気密装置を備えることも好ましい。
【0031】
図1および図2に示すように、好ましい実施形態の上記気密装置は、上記金型102内に封入し統合させることが可能であり、その中で気密キャビティを画定する。この場合、上記金型102は、上記タイヤの加硫のために使用される一次作動流体を逃すための排出口に近接して配置される複数のシール106と、2つの半部102Aおよび102Bの対向する面に配置された少なくとも1つの円周方向のシール107と、を備える。
【0032】
上記円周方向のシール107は、Oリング、または好ましくは、対向する面の間に、以下に説明する方法の圧力および温度に耐えることができる密封要素が設けられる一連の重ね合された金属リングから構成されてもよい。
【0033】
本実施形態では、上記金型102に、二次作動流体のための供給装置が動作可能に関連付けられている。上記装置は、少なくとも1つの供給ダクト108と1つの排出ダクト109とを備え、それらは、以下によりよく説明するように、上記環状支持体10の外面に対して上記グリーンタイヤ50の内面を外側から内側に押圧するように、空気、窒素または他の実質的に不活性のガス等の加圧された上記二次作動流体を、上記金型102内に夫々供給しそこから排出する。
【0034】
別法として、金型自体の外部に、気密装置200を設けてもよい(図3)。上記装置は、図1および図2に示す金型102と実質的に同じ外側形状であるが、明らかに、その中には、上述したチーク130Aおよび130Bもセクタ131Aおよび131Bも、すなわちタイヤ成形のために意図されたそれらの部品が存在しない。より詳細には、上記装置200は、夫々基部203Aと閉鎖部203Bとに係合する1つの下半部202Aおよび1つの上半部202Bと、2つの半部202Aおよび202Bの対向する面に置かれた少なくとも1つの円周方向のシール207と、を備える。また、二次作動流体のための供給装置が上記装置200に設けられており、かつ上記装置200に関連している。この供給装置は、以下によりよく説明するように、上記環状支持体10の外面に対して上記グリーンタイヤ50の内面を外側から内側に押圧するように、空気、窒素および他の実質的に不活性のガス等の上記加圧二次作動流体を上記装置200内に夫々供給しそこから排出する、少なくとも1つの供給ダクト208と1つの排出ダクト209とを備える。
【0035】
好ましくは、図3Bに示すように、上記装置200は、少なくとも、上記金型102において実質的にチーク130Aおよび130Bによって占有される位置に配置される加熱装置250(図3Bでは4つ)を備えてもよい。以下においてよりよく理解されるように、上記加熱装置250は、有利なことに、グリーンタイヤ50のビード領域の外面に熱を伝達し、上記領域の上記部分的加硫に役立つ。
【0036】
任意に、上記装置200は、上記加圧一次作動流体のための少なくとも1つのダクト210を提供してもよく、その流体は、後によりよく説明するように、上記環状支持体10の外面を加熱するために使用される。
【0037】
上記装置250に、電気抵抗器(図には示さず)を備えてもよく、または別法として、上記装置250を上記ダクト210に接続してもよい。
【0038】
さらに、上記装置200がある場合、図1および図2に関連して上述したように、装置101には気密金型は不要である。
【0039】
ダクト110(または210)は、上記環状支持体10のセンタリングシャンクのうちの少なくとも1つに沿って形成される、たとえば接続ダクト(図示せず)を介して、少なくとも1つの通路装置に動作可能に関連付けられることにより、上記環状支持体10内の上記加圧一次作動流体の拡散を可能にする。
【0040】
上記通路装置は、環状支持体10に形成された適当な分岐を備え、上記一次作動流体は、それを通って、環状支持体の円周方向拡張部に都合よく配置され寸法が決められた、環状支持体自体の外面に通じている複数のダクト開口に達する。配置および寸法は、上記環状支持体10内に生のエラストマ材料が導入されないような性質のものである。
【0041】
そして、上記成形キャビティ104の下部に、あり得る凝縮物を排出するように適合されたダクト111が設けられることが好ましい。
【0042】
本発明の方法によれば、グリーンタイヤ50は環状支持体10上に、それがタイヤと共に、開いた状態に配置された気密加硫用金型102にまたは上記金型から切り離されている場合は上記気密装置200に挿入される前に、配置される。
【0043】
特に、環状支持体10上のタイヤの係合を、支持体自体の上で直接タイヤを製造することによって都合よく達成することができる。このように環状支持体10は、タイヤ形成において同時に発生するライナ、カーカスプライ、ビードにおける補強構造、ベルトストリップ、サイドウォールおよびトレッドバンド等の異なる部品の堆積のための剛性コアとして利用されることが有利である。より詳細には、上記タイヤ部品は、例として、エラストマ材料のストリップ、内部に複数の繊維または金属性のコードを備えるエラストマ材料のストリップ状の要素、高張力鋼から作製されることが好ましい金属コード等の、半製品を上記環状支持体10上に堆積させることにより得られることが好ましい。環状支持体10上にタイヤ部品を置く手続きに対するさらなる特徴については、たとえば、本願と同一の出願人の名義でEP0929680号として発行された欧州特許出願に述べられている。
【0044】
上記金型102(または上記気密装置200)内にグリーンタイヤ50を支持する上記環状支持体10が配置されると、装置101の作業として、装置自体を閉鎖し、成形および硬化作業を開始する。
【0045】
より詳細には、ダクト108(または208)により、上記加圧二次流体(図4において「b」で識別)が、上記グリーンタイヤ50の外面と上記金型102(または上記装置200)の内面との間に含まれるキャビティ内に送出される。実質的に同時に、図4に示すように、ダクト110(または210)により、上記加圧一次作動流体(図4において「a」で識別)が、上記二次作動流体の圧力より低い圧力で、上記環状支持体10内に送出される。過渡現象は、30秒間と1分間との間に含まれる時間を有し、定常状態において30秒間から6分間の時間、差圧は10バールより低く、好ましくは約1〜2バールである。一次作動流体の方が圧力が低いため、それは、上述したダクトを通って逃げることなく上記環状支持体10内に残る。このように、このステップ中に、グリーンタイヤ50は外側から内側に押圧されるため、好ましくはライナを有するその内面は、環状支持体10の外面に押圧される。
【0046】
上記二次作動流体は、室温で、概して8バールと18バールとの間に含まれる圧力で供給され、このステップでは好ましくは蒸気から形成される上記一次作動流体は、16バールより低い圧力かつ概しておよそ170℃と210℃との間に含まれる温度で供給されることが好ましい。
【0047】
図4に示す例では、過渡現象は約1分間持続し、定常状態の二次作動流体の圧力は約16バールであり、一次作動流体の圧力は約14バールであり、したがって差圧は約2バールである。
【0048】
上述したように、定常状態では、このステップは、数分間(図4に示す例では約2分間)持続する。この期間中、一次作動流体は、環状支持体10を加熱し、環状支持体10は、タイヤの内面に、したがってビード領域と好ましくはライナとに熱を伝達する。上記金型102内に気密装置が封入され統合される場合、上記ステップ中、チーク130Aおよび130Bは、上記ダクト105内に供給される上記加熱流体によって加熱される。この熱は、実質的にビード領域の外面に伝達される。さらに、金型102の外部に気密装置200が設けられる場合、上記ビード領域の外面を、上述したように上記抵抗器または上記一次作動流体によって駆動される上記装置250によって加熱してもよい。この加熱によって、タイヤの上記部品は完全に硬化しないが、いずれの場合も、部品自体に弾性の特徴を与えることで十分である。特に、1つまたは複数のカーカスプライは、ビードにしっかりと固定されており、内側タイヤ面、好ましくはライナは、以下に示す成形および加硫工程の後続する圧力に対し、裂けることなく耐えるほど十分に弾性になる。このステップの終了には、好ましくは2分間より短い期間(図示する例では1分間)、二次作動流体を排出ダクト109(または209)を通して排出することが含まれる。
【0049】
金型102が気密である場合、後続するステップは、上記タイヤの成形および完全な硬化を直ちに開始する(図2および図4に示すように)。上記ステップは、カーカスプライに対し所望の張力を与えてタイヤを成形し硬化させる目的で、上記一次作動流体圧力を、18バールと35バールとの間に含まれる値、好ましくは26〜28バールまで上昇させることで開始する。
【0050】
このステップでは、一次作動流体は蒸気−窒素混合物を含むことが好ましいが、蒸気のみまたは空気または他の実質的に不活性のガスと混合された蒸気、もしくは空気、窒素および他の実質的に不活性のガス等の1つまたは複数のガスから構成されてもよい。
【0051】
上記一次作動流体によって生成される圧力は、環状支持体10の外面と硬化されるタイヤの内面との間に生成される拡散間隙に達する。
【0052】
優先的な実施形態では、拡散間隙が、上記一次作動流体によって与えられた推力(thrust)の効果によってもたらされるタイヤの膨張に続いて、すぐに生成される。言い換えれば、タイヤを成形キャビティ104の壁に対して押圧することは、タイヤの外面を成形キャビティ104の内壁に完全に付着させるまで、タイヤ自体に課される膨張と同時に発生する。そして、上記押圧動作が熱の適用と同時に発生することにより、タイヤ自体を形成するエラストマ材料の架橋と、タイヤの結果としての幾何学的かつ構造的画定とがもたらされる。タイヤが成形されるようにする所望の圧力を確定する上記一次作動流体はまた、加硫に必要な熱も供給する。
【0053】
関連する方法では、成形および硬化作業を完了するためにタイヤに課される上記膨張の間、タイヤの内面(好ましくはライナおよびビードの一部)は、上述したように弾性状態であり、すなわち、これらのタイヤ部品は上述した理由で部分的に硬化される。
【0054】
この場合、内部タイヤ面は、従来の加硫方法における加硫用ブラダのように振る舞う。従来の加硫方法では、膨張式ブラダが、環状支持体の支援なしに製造されたグリーンタイヤの内面に対し、金型壁に対してそれを成形するために作用し、異なる半製品に存在するエラストマ材料を実質的に均一に分散させる。
【0055】
したがって、本発明の方法では、膨張式ブラダが存在しないが、すでに優れた弾性の特徴を有する内部タイヤ面(好ましくはライナ)が、一次作動流体圧力をタイヤ全体に実質的に均一に伝達し、従来の方法の膨張式ブラダのように振る舞う。したがって、均一な成形のおかげで、実質的に公称設計特徴(nominal design features)を満たす加硫されたタイヤが得られる。
【0056】
上記気密装置200が上記金型102とは別々に与えられる場合、上記二次作動流体を排出するステップの最後に、タイヤは、上記装置から自動化された方法でまたは手動で抜き取られ、金型内に配置される。そこでは、上述した方法と実質的に同じ方法で、成形および硬化ステップが行われる。
【0057】
内部タイヤ面を環状支持体10の外面に押圧するための外側から内側へのタイヤ押圧ステップ中、上記内部タイヤ面の加熱を、上述したように環状支持体を通して運ばれる上記加圧一次作動流体を使用することにより、またはたとえば電気抵抗器を用いて上記一次作動流体の使用とは無関係に環状支持体を加熱することにより、行ってもよい、ということに留意すべきである。最後に述べた場合では、差圧が上述した範囲内で維持される場合、二次作動流体の圧力はまた数バール(2または3バール)であってもよい。
【0058】
最後に、本発明の方法において、グリーンタイヤ50の内面を環状支持体10の上記外面に押圧する上記ステップを、上記環状支持体を加熱する前、後、または加熱と同時に行ってもよい、ということが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本方法のステップ中の本発明による装置の好ましい実施形態の部分的な垂直図である。
【図2】本方法のさらなるステップ中の本発明による装置の好ましい実施形態の部分的な垂直図である。
【図3】本発明による装置の実施形態に属する装置の部分的な垂直図である。
【図3B】本発明による装置の別の実施形態に属する装置の部分的な垂直図である。
【図4】関係する方法を実施するために使用される作動流体に関して所定時間に亙る圧力の過程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車の車輪のタイヤを成形し硬化させる方法であって、
グリーンタイヤ(50)を、形状が実質的に該グリーンタイヤ(50)の内面の形状と一致する外面を有する環状支持体(10)上で製造するステップと、該環状支持体(10)を加熱することにより、熱を該環状支持体(10)に接触する該タイヤの該内面に伝達するステップと、該グリーンタイヤ(50)の該内面を、少なくとも1つの加圧二次作動流体を通して該環状支持体(10)の該外面に対して押圧するステップと、該環状支持体(10)の該外面と該グリーンタイヤ(50)の該内面との間の少なくとも1つの拡散間隙内を通過する加圧一次作動流体を通して、加硫用金型(102)内に画定される成形キャビティ(104)の壁に対し、該グリーンタイヤ(50)の外面を押圧するステップと、を含み、該加圧一次作動流体が、該グリーンタイヤ(50)に熱を供給することにより該タイヤの加硫をもたらすように加熱される、方法。
【請求項2】
前記環状支持体(10)の加熱が、電気抵抗器によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環状支持体(10)の加熱が、該環状支持体(10)内に運ばれる前記一次作動流体を通して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記グリーンタイヤ(50)の前記内面を前記加圧二次作動流体により前記環状支持体(10)の前記外面に対して押圧する前記ステップ中、該二次作動流体の圧力が、前記一次作動流体の圧力より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一次作動流体の前記圧力が、16バール未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記二次作動流体の前記圧力が、8バールと18バールとの間に含まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記グリーンタイヤ(50)の外面を前記一次作動流体を用いて前記成形キャビティ(104)の前記壁に対して押圧する前記ステップ中、該一次作動流体の圧力が、18バールと35バールとの間に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記一次作動流体の温度が、170℃と210℃との間に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記一次作動流体が、蒸気と窒素とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記グリーンタイヤ(50)の前記内面を前記環状支持体(10)の前記外面に対して押圧する前記ステップが、該環状支持体(10)に接触する該タイヤの該内面に熱を伝達するために該環状支持体(10)を加熱する前記ステップの前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記グリーンタイヤ(50)の前記内面を前記環状支持体(10)の前記外面に対して押圧する前記ステップが、該環状支持体(10)に接触する該タイヤの該内面に熱を伝達するために該環状支持体(10)を加熱する前記ステップの後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記グリーンタイヤ(50)の前記内面を前記環状支持体(10)の前記外面に対して押圧する前記ステップが、該環状支持体(10)に接触する該タイヤの該内面に熱を伝達するために該環状支持体(10)を加熱する前記ステップと実質的に同時に行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記グリーンタイヤ(50)のビード領域の外面に熱を伝達するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
車の車輪のタイヤを成形し硬化させる装置(101)であって、
成形キャビティ(104)内でグリーンタイヤ(50)を支持するように適合された環状支持体(10)を収容するように配置された気密加硫用金型(102)と、該環状支持体(10)を通して形成され該環状支持体(10)の外面に通じており、少なくとも1つの加圧一次作動流体を供給することにより、該加圧一次作動流体の該グリーンタイヤ(50)の内面に向う移動を可能にするように適合された少なくとも1つの通路装置と、該グリーンタイヤ(50)を該環状支持体(10)の該外面上に外側から内側に押圧するために、該加硫用金型(102)に動作可能に関連付けられ、加圧二次作動流体を供給する供給装置と、該環状支持体(10)を加熱する加熱装置と、該グリーンタイヤ(50)に熱を伝達し該グリーンタイヤの加硫をもたらすように該一次作動流体を加熱する加熱装置と、を具備する装置。
【請求項15】
加圧二次作動流体の前記供給装置が、少なくとも1つの供給ダクト(108)と1つの排出ダクト(109)とを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記一次作動流体が、前記環状支持体(10)を加熱するように設計される、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記環状支持体(10)の前記加熱装置が、電気抵抗器を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記気密金型(102)が、夫々基部(103A)と閉鎖部(103B)とに係合する下半部(102A)および上半部(102B)と、該2つの半部(102A、102B)の対向する面に配置された少なくとも1つの円周方向のシール(107)と、前記一次作動流体を放出するように意図された排出口に近接して配置された複数のシール(106)と、を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
車の車輪のタイヤを成形し硬化させる装置であって、
成形キャビティ内でグリーンタイヤ(50)を支持するように適合された環状支持体(10)を収容するように配置された加硫用金型と、該環状支持体(10)を通して形成され該環状支持体(10)の外面に通じており、少なくとも1つの加圧一次作動流体を供給することにより、該加圧一次作動流体の該グリーンタイヤ(50)の内面に向う移動を可能にするように適合された少なくとも1つの通路装置と、該グリーンタイヤ(50)に熱を伝達し該グリーンタイヤの加硫をもたらすように該一次作動流体を加熱する加熱装置と、該環状支持体(10)を収容するように配置された気密装置(200)と、該グリーンタイヤ(50)を該環状支持体(10)の該外面上に外側から内側に押圧するために、該気密装置(200)に動作可能に関連付けられ、加圧二次作動流体を供給する供給装置と、該環状支持体(10)を加熱する加熱装置と、を具備する装置。
【請求項20】
前記気密装置(200)は、夫々基部(203A)と閉鎖部(203)とに係合する下半部(202A)および上半部(202B)と、該2つの半部(202A、202B)の対向する面に配置された少なくとも1つの円周方向のシール(207)と、を備える、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記加圧二次作動流体の前記供給装置が、該装置(200)内に、該二次作動流体を夫々供給しそこから排出する少なくとも1つの供給ダクト(208)と1つの排出ダクト(209)とを備える、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記気密装置(200)が、前記一次作動流体を供給する少なくとも1つのダクト(210)を備える、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記環状支持体(10)の前記加熱装置が、電気抵抗器を備える、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記気密装置(200)が、少なくとも、前記グリーンタイヤ(50)の外面に熱を伝達する加熱装置(250)を備える、請求項19に記載の装置。
【請求項25】
前記加熱装置(250)が、電気抵抗器によって駆動される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記加熱装置(250)が、前記一次作動流体によって駆動される、請求項22または24に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−506254(P2006−506254A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552577(P2004−552577)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012631
【国際公開番号】WO2004/045837
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(598164186)ピレリ・プネウマティチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (123)
【Fターム(参考)】