説明

車両および車両の制御方法

【課題】ハイブリッド車両において、蓄電装置等の異常により回転電機が駆動できなくなった場合であっても、エンジンの始動を可能にする。
【解決手段】ハイブリッド車両100は、蓄電装置110と、エンジン160と、モータジェネレータ130,135とを備える。モータジェネレータ130,135は、蓄電装置110からの電力を用いて駆動力を生成するとともに、駆動輪150の回転力を用いて発電が可能である。ECU300は、エンジン160およびモータジェネレータ130,135からの駆動力を協調的に制御して車両100を走行させる。ECU300は、蓄電装置110からの電力を供給することができず、かつ、車速が予め定められた基準車速を上回る状態において、エンジン160の始動要求を受けた場合は、モータジェネレータ130において発電動作を行なわせてエンジン160の回転速度を上昇させエンジン160を始動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両および車両の制御方法に関し、より特定的には、ハイブリッド車両におけるエンジンの始動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。このような車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。そして、これらの車両に搭載される蓄電装置を発電効率の高い商用電源により充電する技術が提案されている。
【0003】
このうち、ハイブリッド自動車は、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて回転電機により生成される駆動力と、内燃機関により生成される駆動力とを用いて走行する。そして、内燃機関の始動は、回転電機によりエンジンがクランキングされることによって行なわれる場合がある。
【0004】
この場合、蓄電装置に異常等が発生し、回転電機の駆動ができなくなった場合には、エンジンの始動ができなくなってしまう。
【0005】
特開平10−234105号公報(特許文献1)は、ハイブリッド車両において、バッテリの故障によりモータジェネレータが駆動できなくなった場合に、モータジェネレータの3相を短絡させることにより発生される誘導起電力による磁界を利用してロータの回転を制動し、これによってエンジンの反力を受けることによって車両を発進させる技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−234105号公報
【特許文献2】特許第3536658号公報
【特許文献3】特許第3622501号公報
【特許文献4】特許第4035805号公報
【特許文献5】特開2007−055291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開平10−234105号公報(特許文献1)に開示される技術は、エンジンが起動状態において、車両を発進させる場合の制御に関するものであり、エンジンが始動されていることが前提とされている。
【0008】
そして、特開平10−234105号公報(特許文献1)においては、蓄電装置に異常等が発生し回転電機の駆動ができなくなった場合における、エンジンを始動する手法については開示されていない。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ハイブリッド車両において、蓄電装置等の異常により回転電機が駆動できなくなった場合であっても、エンジンの始動を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による車両は、蓄電装置と、内燃機関と、電動駆動部と、制御装置とを備える。電動駆動部は、蓄電装置からの電力を用いて車両の駆動力を生成するとともに、車両の駆動輪の回転力を用いて発電をすることができる。制御装置は、内燃機関からの駆動力と電動駆動部からの駆動力とを協調的に制御して車両を走行させる。そして、制御装置は、蓄電装置からの電力を用いて電動駆動部を駆動することができず、かつ、車速が予め定められた基準車速を上回る状態において、内燃機関の始動要求を受けた場合は、電動駆動部において発電動作を行なわせることによって内燃機関の回転速度を上昇させて内燃機関を始動する。
【0011】
好ましくは、電動駆動部は、車両の駆動輪の回転力を用いて発電が可能な第1の回転電機と、蓄電装置からの電力を用いて車両の駆動力を生成することが可能な第2の回転電機とを含む。制御装置は、蓄電装置からの電力を用いて第1および第2の回転電機を駆動することができず、かつ、車速が基準車速を上回る状態において、始動要求を受けた場合は、第1の回転電機において発電動作を行なわせることによって内燃機関の回転速度を上昇させて内燃機関を始動する。
【0012】
好ましくは、制御装置は、内燃機関を始動する際に、第1の回転電機により発電された電力を第2の回転電機によって消費させる。
【0013】
好ましくは、制御装置は、内燃機関の回転速度が予め定められたしきい値を上回った場合に、燃料噴射を開始して内燃機関を始動する。
【0014】
本発明による車両の制御方法は、蓄電装置と、内燃機関と、回転電機とを含み、内燃機関からの駆動力と回転電機からの駆動力とが協調的に制御されることにより走行する車両についての制御方法である。回転電機は、蓄電装置からの電力を用いて車両の駆動力を生成するとともに、車両の駆動輪の回転力を用いて発電が可能である。制御方法は、蓄電装置からの電力を用いて回転電機を駆動することができるか否かを判定するステップと、車速が予め定められた基準車速を上回るか否かを判定するステップと、蓄電装置からの電力を用いて回転電機を駆動することができず、かつ、車速が基準車速を上回る状態において、内燃機関の始動要求を受けた場合に、回転電機において発電動作を行なわせるステップと、内燃機関の回転速度が予め定められたしきい値を上回った場合に、燃料噴射を開始して内燃機関を始動するステップとを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハイブリッド車両において、蓄電装置等の異常により回転電機が駆動できなくなった場合に、であっても、エンジンの始動を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に従う車両の全体ブロック図である。
【図2】エンジン始動制御の概要を説明するための第1の図である。
【図3】エンジン始動制御の概要を説明するための第2の図である。
【図4】エンジン始動制御の概要を説明するための第3の図である。
【図5】エンジン始動制御の概要を説明するための第4の図である。
【図6】本実施の形態において、ECUで実行されるエンジン始動制御を説明するための機能ブロック図である。
【図7】本実施の形態において、ECUで実行されるエンジン始動制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
図1は、本実施の形態に従う車両100の全体ブロック図である。図1を参照して、車両100は、蓄電装置110と、システムメインリレー(System Main Relay:SMR)115と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)120と、電動駆動部125と、動力伝達ギヤ140と、駆動輪150と、内燃機関であるエンジン160と、制御装置であるECU(Electronic Control Unit)300とを備える。また、PCU120は、コンバータ121と、インバータ122,123と、コンデンサC1,C2とを含む。電動駆動部125は、モータジェネレータ130,135と、速度検出器170,175とを含む。
【0019】
蓄電装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池または鉛蓄電池などの二次電池、あるいは電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
【0020】
蓄電装置110は、電力線PL1および接地線NL1を介してPCU120に接続される。そして、蓄電装置110は、車両100の駆動力を発生させるための電力をPCU120に供給する。また、蓄電装置110は、モータジェネレータ130,135で発電された電力を蓄電する。蓄電装置110の出力はたとえば200V程度である。
【0021】
SMR115に含まれるリレーは、蓄電装置110とPCU120とを結ぶ電力線PL1および接地線NL1にそれぞれ介挿される。そして、SMR115は、ECU300からの制御信号SE1に基づいて、蓄電装置110とPCU120との間での電力の供給と遮断とを切換える。
【0022】
コンバータ121は、ECU300からの制御信号PWCに基づいて、電力線PL1および接地線NL1と電力線PL2および接地線NL1との間で電圧変換を行なう。
【0023】
インバータ122,123は、電力線PL2および接地線NL1に並列に接続される。インバータ122,123は、ECU300からの制御信号PWI1,PWI2にそれぞれ基づいて、コンバータ121から供給される直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ130,135をそれぞれ駆動する。
【0024】
コンデンサC1は、電力線PL1および接地線NL1の間に設けられ、電力線PL1および接地線NL1間の電圧変動を減少させる。また、コンデンサC2は、電力線PL2および接地線NL1の間に設けられ、電力線PL2および接地線NL1間の電圧変動を減少させる。
【0025】
モータジェネレータ130,135は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
【0026】
モータジェネレータ130,135の出力トルクは、減速機やプラネタリギヤに代表される動力分割機構を含んで構成される動力伝達ギヤ140を介して駆動輪150に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ130,135は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪150の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU120によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
【0027】
また、モータジェネレータ130,135は動力伝達ギヤ140を介してエンジン160とも結合される。そして、ECU300により、モータジェネレータ130,135およびエンジン160が協調的に動作されて必要な車両駆動力が発生される。さらに、モータジェネレータ130,135は、エンジン160の回転または駆動輪150の回転により発電が可能であり、この発電電力を用いて蓄電装置110を充電することができる。実施の形態1においては、モータジェネレータ135を専ら駆動輪150を駆動するための電動機として用い、モータジェネレータ130を専らエンジン160により駆動される発電機として用いるものとする。
【0028】
モータジェネレータ130の出力軸は、動力伝達ギヤ140に含まれるプラネタリギヤ(図示せず)のサンギヤに結合される。モータジェネレータ135の出力軸は減速機を介してラネタリギヤのリングギヤに結合される。また、エンジン160の出力軸はプラネタリギヤのプラネタリキャリアに結合される。
【0029】
なお、図1においては、モータジェネレータが2つ設けられる構成が例として示されるが、エンジン160によって発電が可能なモータジェネレータを備える構成であれば、モータジェネレータの数はこれに限定されず、モータジェネレータが1つの場合、あるいは2つより多くのモータジェネレータを設ける構成としてもよい。
【0030】
モータジェネレータ130,135には、モータジェネレータ130,135の回転速度を検出するための速度検出器170,175がそれぞれ設けられる。そして、速度検出器170,175によって検出された回転速度MRN1,MRN2は、ECU300へ出力される。なお、速度検出器170,175に代えて、角度センサを設けることも可能であり、この場合には、ECU300は、モータジェネレータ130,135の回転速度MRN1,MRN2を、検出された回転角に基づいて演算により算出する。
【0031】
車両100は、さらに低電圧系(補機系)の構成として、DC/DCコンバータ180と、補機負荷190と、補機バッテリ195と、を含む。
【0032】
DC/DCコンバータ180は、電力線PL1および接地線NL1に接続され、ECU300からの制御信号PWDに基づいて、蓄電装置110から供給される直流電圧を降圧する。そして、DC/DCコンバータ180は、電力線PL3を介して、補機負荷190、補機バッテリ195、およびECU300などの車両全体の低電圧系に電力を供給する。
【0033】
補機負荷190には、たとえばランプ類、ワイパー、ヒータ、オーディオ、ナビゲーションシステムなどが含まれる。
【0034】
補機バッテリ195は、代表的には鉛蓄電池によって構成される。補機バッテリ195は、補機負荷190およびECU300に電源電圧を供給することが可能である。また、補機バッテリ195は、DC/DCコンバータ180からの電力により充電可能である。補機バッテリ195の出力電圧は、蓄電装置110の出力電圧よりも低く、たとえば12V程度である。
【0035】
ECU300は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両100および各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0036】
ECU300は、蓄電装置110に備えられる電圧センサ,電流センサ(いずれも図示せず)からの電圧VBおよび電流IBの検出値に基づいて、蓄電装置110の充電状態SOC(State of Charge)を演算する。
【0037】
ECU300は、エンジン160から、エンジン回転速度NEを含むエンジン160の動作状態を含む情報を取得する。また、ECU300は、ユーザの操作によるエンジン160の始動要求信号STを取得する。ECU300は、これらの情報に基づいて制御信号DRVを生成し、エンジン160を制御する。
【0038】
なお、図1においては、ECU300として1つの制御装置を設ける構成としているが、たとえば、PCU120用の制御装置や蓄電装置110用の制御装置などのように、機能ごとまたは制御対象機器ごとに個別の制御装置を設ける構成としてもよい。
【0039】
このようなハイブリッド車両100において、エンジン160を始動する場合には、蓄電装置110の電力によりモータジェネレータ130,135を駆動することによって、エンジン160をクランキングする場合がある。
【0040】
ところが、たとえば蓄電装置110やSMR115に故障が発生し、モータジェネレータ130,135へ電力が供給できない状態となった場合には、蓄電装置110からの電力を用いてモータジェネレータ130,135を駆動してエンジン160を始動することができない。
【0041】
特に、モータジェネレータ130,135からの駆動力のみを用いて走行する、いわゆるEV(Electric Vehicle)走行を行なっている最中に、蓄電装置110やSMR115の故障により、蓄電装置110から電力が供給できない状態が発生した場合、モータジェネレータ130,135による駆動力を得ることはできない。また、エンジン160の駆動もできないため、惰性による走行ができなくなった時点で車両が停止してしまう。そうすると、退避走行ができないため、道路の真ん中で車両が立ち往生してしまうおそれがある。
【0042】
また、蓄電装置110やSMR115には故障が発生していない場合に、たとえば、SMR115を接続しないまま下り坂を惰性で走行し始めたようなときには、その状態でSMR115を接続すると、接続時にSMR115に大きな電流が流れてしまいSMR115の接点が溶着するおそれがあるので、SMR115を接続することができない。そうすると、モータジェネレータ130,135およびエンジン160のいずれも車両駆動力を生成することができない。
【0043】
そこで、本実施の形態においては、上述のようにモータジェネレータへの電力が供給できない場合であっても、惰性で走行しているときには、駆動輪からの回転力を用いてモータジェネレータによってエンジンの回転速度を上昇させることによって、エンジンの始動を行なうエンジン始動制御を行なう。
【0044】
図2から図5の共線図を用いて、本実施の形態におけるエンジン始動制御の概要について説明する。上述のように、モータジェネレータ130,135およびエンジン160は、プラネタリギヤのサンギヤ、リングギヤ、およびプラネタリキャリアにそれぞれ結合される。
【0045】
蓄電装置110からの電力の授受ができず、かつエンジン160が停止した状態で、惰性により車両100が前進側に走行している場合を考える。この場合は、図2に示されるように、エンジン160の回転速度NEはゼロであり、モータジェネレータ135(MG2)の回転速度MRN2は正回転、そして、モータジェネレータ130(MG1)の回転速度MRN1は負回転の状態で釣り合った状態となっている。
【0046】
この状態から、図3に示すように、モータジェネレータ130に対して正トルクを与えるような制御信号PWI1が、ECU300から供給される。すなわち、モータジェネレータ130に発電動作を行なわせる。これによって、モータジェネレータ130の回転速度は低下しゼロに近づく。
【0047】
このとき、蓄電装置110への充電電力の供給ができないので、このままでは、モータジェネレータ130によって発電された電力によって、PCU120に含まれる機器が過電圧となるおそれがある。そのため、モータジェネレータ130と同様に、モータジェネレータ135に正トルクを与えるような制御信号PWI2が供給される。これによって、モータジェネレータ135によって、モータジェネレータ130によって発電された電力が消費され、エネルギバランスが維持される。
【0048】
そうすると、図4のように、破線の直線W10が、実線の直線W20のように移行し、エンジン160の回転速度NEが上昇する。そして、エンジン160が始動可能な回転速度まで回転速度NEが上昇したところで、エンジン160のシリンダ内に燃料が噴射され、エンジン160が始動される。
【0049】
エンジン160が始動されて自立運転状態となると、図5のように、モータジェネレータ130,135には、モータジェネレータ130による発電電力とモータジェネレータ135による消費電力がバランスするようにトルク指令値が設定され、その指令値に基づいた制御信号PWI1,PWI2がECU300から出力される。このようにすることによって、蓄電装置110からの電力の授受ができない状態であっても、発電電力と消費電力との収支が破綻することなく、また、モータジェネレータ130,135の回転速度を安定させながら、バッテリレス走行を行なうことが可能となる。
【0050】
図6は、本実施の形態において、ECU300で実行されるエンジン始動制御を説明するための機能ブロック図である。図6の機能ブロック図に記載された各機能ブロックは、ECU300によるハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
【0051】
図1および図6を参照して、ECU300は、判定部310と、モータ制御部320と、エンジン制御部330とを含む。
【0052】
判定部310は、ユーザ操作によるエンジン160の始動要求信号STと、蓄電装置110からの電力供給ができない異常が生じたことを示す故障信号FLRと、モータジェネレータ135の回転速度MRN2とを受ける。ここで、故障信号FLRは、たとえば、蓄電装置110の電圧VB,電流IBや、SMR115の状態によって判定される信号である。
【0053】
判定部310は、これらの情報に基づいて、蓄電装置110からの電力供給が不可能であり、かつ、その状態でユーザによりエンジン160の始動操作がされたか否かを判定する。さらに判定部310は、モータジェネレータ135の回転速度MRN2に基づいて、車速が所定の速度以上であるか否かを判定する。
【0054】
そして、判定部310は、上記の条件が成立した場合には、始動要求フラグFLGをオンに設定して、モータ制御部320およびエンジン制御部330へ出力する。
【0055】
モータ制御部320は、判定部310からの始動要求フラグFLG、およびモータジェネレータ130,135の回転速度MRN1,MRN2を受ける。モータ制御部320は、始動要求フラグFLGがオンに設定された場合には、エンジン160の回転速度NEが始動可能な回転速度まで上昇し、かつ、モータジェネレータ130,135による電力収支がバランスするように、制御信号PWI1,PWI2を生成してインバータ122,123を制御する。また、モータ制御部320は、エンジン160の始動後においては、ユーザの操作に基づいて、必要とされる駆動力を出力しつつ、モータジェネレータ130,135の電力収支をバランスさせるようにインバータ122,123を制御する。
【0056】
エンジン制御部330は、判定部310からの始動要求フラグFLG、およびエンジン160の回転速度NEを受ける。エンジン制御部330は、始動要求フラグFLGがオンに設定され、モータジェネレータ130,135によってエンジン160の回転速度NEが、始動可能な所定の回転速度に到達したことに応答して、燃料噴射量などの情報を含むエンジン160の制御信号DRVを出力し、エンジン160を始動させる。
【0057】
エンジン160の始動が完了し自立運転が行なわれると、エンジン制御部330は、ユーザによるアクセルペダルの操作量などに基づいて、所望のトルクが出力されるようにエンジン160を制御する。
【0058】
図7は、本実施の形態において、ECU300で実行されるエンジン始動制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図7に示されるフローチャートは、ECU300に予め格納されたプログラムがメインルーチンから呼び出されて、所定周期で実行されることによって処理が実現される。あるいは、一部または全部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)で処理を実現することも可能である。
【0059】
図1および図7を参照して、ECU300は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、蓄電装置110からの電力供給が不能となる異常が生じているか否かを判定する。
【0060】
蓄電装置110からの電力供給が不能となる異常が生じていない場合(S100にてNO)は、蓄電装置110からの電力を用いてモータジェネレータ130,135を駆動することもできるし、モータジェネレータ130を用いてエンジン160を始動することも可能である。そのため、本制御を実行する必要はないので、ECU300は処理を終了し、メインルーチンに処理を戻す。
【0061】
蓄電装置110からの電力供給が不能となる異常が生じている場合(S100にてYES)は、処理がS110に進められ、ECU300は、次にユーザによりエンジン160の始動要求がされているか(始動要求信号STがオンか)否かを判定する。
【0062】
エンジン160の始動要求がされていない場合(始動要求信号STがオフの場合)(S110にてNO)は、エンジン160を始動する必要はないので、ECU300は処理を終了し、メインルーチンに処理を戻す。
【0063】
エンジン160の始動要求がされている場合(始動要求信号STがオフの場合)(S110にてNO)は、処理がS120に進められ、ECU300は、モータジェネレータ135の回転速度MRN2が所定の基準速度α以上であるか否かを判定することによって、車速が基準車速以上であるか否かを判定する。
【0064】
回転速度MRN2が所定の基準速度αより小さい場合(S120にてNO)は、モータジェネレータ130,135を制御しても、始動可能なエンジン回転速度までエンジン160の回転速度NEを上昇させることができないため、ECU300は処理を終了し、メインルーチンに処理を戻す。
【0065】
回転速度MRN2が所定の基準速度α以上の場合(S120にてYES)は、S130に処理が進められ、モータジェネレータ130により発電させつつ、その発電電力をモータジェネレータ135により消費して反力をキャンセルさせながら、エンジン160の回転速度NEを上昇させる。そして、ECU300は、S140にて、エンジン160の回転速度NEが、始動が可能なしきい値β以上まで上昇したか否かを判定する。
【0066】
エンジン160の回転速度NEがしきい値βより小さい場合(S140にてNO)は、まだエンジン160の始動が行なえないので、ECU300は、メインルーチンの処理を戻して、回転速度NEがしきい値βに到達するのを待つ。
【0067】
そして、エンジン160の回転速度NEがしきい値β以上となった場合(S140にてYES)は、処理がS150に進められ、ECU300は、エンジン160を始動させるとともに、モータジェネレータ130による発電電力とモータジェネレータ135による消費電力との電力収支がバランスするように、バッテリレス制御を開始する。
【0068】
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、ハイブリッド車両において、蓄電装置からの電力供給ができない状態であっても、所定の車速を有している場合には、エンジンの始動を行なうことが可能となる。これによって、EV走行実施中に、蓄電装置からの電力が途絶する異常が発生した場合であっても、エンジンを始動して退避走行をすることが可能となる。
【0069】
なお、上述の説明においては、2つのモータジェネレータを有する構成を例にして説明したが、駆動輪の回転力を用いて発電を行ない、エンジンの回転速度を上昇させることができる構成であれば、1つまたは3つ以上のモータジェネレータを有する構成であってもよい。ただし、モータジェネレータが1つの場合には、モータジェネレータによる発電電力によって機器が過電圧となることを防止するために、この発電電力を消費または蓄える機器(たとえば、抵抗やキャパシタ)を追加的に備えたり、補機負荷を用いて消費したりする必要があることに注意すべきである。また、モータジェネレータとエンジンとを結合する構成についても、プラネタリギヤの各ギヤに結合する対象を異なる態様としたり、クラッチ等の摩擦係合要素を介して結合したりするなどの様々な構成を採用することも可能である。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
100 車両、110 蓄電装置、115 SMR、120 PCU、121 コンバータ、122,123 インバータ、125 電動駆動部、130,135 モータジェネレータ、140 動力伝達ギヤ、150 駆動輪、160 エンジン、170,175 速度検出器、180 DC/DCコンバータ、190 補機負荷、195 補機バッテリ、300 ECU、310 判定部、320 モータ制御部、330 エンジン制御部、C1,C2 コンデンサ、NL1 接地線、PL1〜PL3 電力線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
蓄電装置と、
内燃機関と、
前記蓄電装置からの電力を用いて前記車両の駆動力を生成するとともに、前記車両の駆動輪の回転力を用いて発電が可能な電動駆動部と、
前記内燃機関からの駆動力と前記電動駆動部からの駆動力とを協調的に制御して前記車両を走行させるように構成された制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記蓄電装置からの電力を用いて前記電動駆動部を駆動することができず、かつ、車速が予め定められた基準車速を上回る状態において、前記内燃機関の始動要求を受けた場合は、前記電動駆動部において発電動作を行なわせることによって前記内燃機関の回転速度を上昇させて前記内燃機関を始動する、車両。
【請求項2】
前記電動駆動部は、
前記車両の駆動輪の回転力を用いて発電が可能な第1の回転電機と、
前記蓄電装置からの電力を用いて前記車両の駆動力を生成することが可能な第2の回転電機とを含み、
前記制御装置は、前記蓄電装置からの電力を用いて前記第1および第2の回転電機を駆動することができず、かつ、前記車速が前記基準車速を上回る状態において、前記始動要求を受けた場合は、前記第1の回転電機において発電動作を行なわせることによって前記内燃機関の回転速度を上昇させて前記内燃機関を始動する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記内燃機関を始動する際に、前記第1の回転電機により発電された電力を前記第2の回転電機によって消費させる、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内燃機関の回転速度が予め定められたしきい値を上回った場合に、燃料噴射を開始して前記内燃機関を始動する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
車両の制御方法であって、
前記車両は、
蓄電装置と、
内燃機関と、
前記蓄電装置からの電力を用いて前記車両の駆動力を生成するとともに、前記車両の駆動輪の回転力を用いて発電が可能な回転電機とを含み、
前記車両は、前記内燃機関からの駆動力と前記回転電機からの駆動力とが協調的に制御されることにより走行し、
前記制御方法は、
前記蓄電装置からの電力を用いて前記回転電機を駆動することができるか否かを判定するステップと、
車速が予め定められた基準車速を上回るか否かを判定するステップと、
前記蓄電装置からの電力を用いて前記回転電機を駆動することができず、かつ、前記車速が前記基準車速を上回る状態において、前記内燃機関の始動要求を受けた場合に、前記回転電機において発電動作を行なわせるステップと、
前記内燃機関の回転速度が予め定められたしきい値を上回った場合に、燃料噴射を開始して前記内燃機関を始動するステップとを備える、車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−180004(P2012−180004A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43964(P2011−43964)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】