説明

車両が動物に衝突することを回避するためのシステム

本発明は、動いている車両の前で道路を横切ろうとする動物に車両が衝突することを回避するためのシステムおよび方法を開示する。かかるシステムは、25,000Hz以上の周波数の指向性の音波を放射して、少なくとも一つのRF放射体を直接に動かす視覚システムを備える。動物を道路の端部に追い払うように、周波数が道路の中心から道路の端部に減少する状態で、音波が正面に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前で道路を急に横切る動物に車両が衝突することを回避するための車載のデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
統計データは、1984乃至1993年に40,000の道路での事故がイタリアで起こっており、道路を横切る動物、特に廃棄された犬により、4,000人が負傷し、200人が亡くなっている。イタリアのテューリン(Turin)州を含む領域だけでも、2001年の後半に、道路を横断する野生動物、特に野生のイノシシ、コジカ、狐、雄ジカとアナグマにより、157件の事故があった。
【0003】
一般に、ヨーロッパでは、動物と車両とを含む事故の数は、大型哺乳動物だけを考えれば、507,000件であると算出されている。ヨーロッパの約1,000,000件に対して100件の死亡、30,000件の負傷した人々および損害がある。イタリアの各州の対応する数字は、毎年、約100件の事故である。
【0004】
同様に、特に雄ジカを含む事故に関する限り、警報統計が合衆国からもたらされる。毎年、合衆国において前記動物との726,000件の事故があり、約1,000,000ドルの損害がある。合衆国では、常に、この種の事故により、毎年、29,000人が負傷し、200人が亡くなっている。
【0005】
この問題の解決策を踏まえて、いくつかの解決策が既に提案されている。それらのすべては、車両が移動する領域から動物を離すように超音波を使用することを提案している。かかる解決策は、インターナショナル・ロード・ダイナミクッス社によって市販されているいわゆる「野生動物警戒システム」を含んでいる。それは、統計的に、動物が最も頻繁に横切る領域で、車両の通過を検出するシステムおよび静止位置にある超音波放射体の設置により、その目的を達成する。センサーは、車両の到着を検出し、そして超音波放射体を作動させる。また、必要ならば、動物を怖がらせて、動物が道路を横断するのを防ぐ照明の帯(light band)そして/または匂い放射体(scent emitter)を作動させる。作動されるべき第一のシステムは、道路両側に次のものの作動に導く。
【0006】
超音波放射は、同時に人間を困惑させずに、動物を退散させる優れたシステムである。動物は、一般に、人間よりもはるかに高い音を敏感に感じる閾値を有する。動物は、ヒトの耳よりも低強度の音を聞くことができる。例えば、人間の可聴範囲が64乃至23,000Hzであるが、犬の対応する可聴範囲が67乃至45,000Hzであり、猫の可聴範囲が45乃至64,000Hzであり、雌牛の可聴範囲が23乃至35,000Hzであり、羊の可聴範囲が100乃至30,000Hzであり、ウサギの可聴範囲が360乃至42,000Hzである。科学調査は、臨界の知覚可能な範囲内の音の生成するならば、多くの動物が非常に不安で恐怖を感じて音源から逃げようとすることを示している。同時に、人間が超音波によって困惑することはない。超音波は、ヒトの聞こえる閾値を越えた周波数範囲に属する。人間においては、鼓膜は、動物よりはるかに低い特定の共振周波数を有しており、したがって、超音波周波数で振動することができない。ヒトの耳は周波数20,000Hzまでの音を知覚することができる。
【0007】
上記のことを考えると、車両に設置される車載デバイスも、車両の前で道路を横切る動物を遠ざけるようにするために用いられている。例えば、動物が車両の前で移動することを防止するために超音波を生成する電子警報システムが開示されている。(例えば、特許文献1。)前記デバイスは、一定のピーク・トゥ・ピーク電圧(tension)を有する矩形波形の電気的なパルスを生成する、単純化されたパイロット回路を含んでいる。パイロット回路は、連続して周期的な波の周波数を増加させ、その後、連続して波の周波数を減少させる前記の矩形波を生成する。連結された変換器は、矩形波を正弦波に変換する。電気的な電圧が高いピーク・トゥ・ピーク電圧を有する。その結果、圧電変換器は、周波数を周期的に増加させたあと、周期的に周波数を減少させ、変換器を過熱させたり早期に壊れさせることなく、サイレン(siren)の効果をシミュレートする超音波を放射する。このように得られた超音波の効果は、動物を困惑させて、動物が車両の前で道路を急に横断することを防止する。
【0008】
しかしながら、かかるデバイスは有用であるが、かかるデバイスは警報システムを動かすためにドライバーによる活動的な働きや介入(intervention)を意味する。
【0009】
動物を遠ざけるために超音波を放射する静止システムも知られている。(例えば、特許文献2及び3。)
【0010】
【特許文献1】米国特許明細書5,278,537号(US-A-5,278,537)
【特許文献2】スイス特許明細書52357号(CH-A-52357)
【特許文献3】米国特許明細書4,001,817号(US-A-4,001,817)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、車両が動物と衝突することを回避するための新しいデバイスおよび新方式を提案することを目的としている。それは、道路の近くに静止システムを設置することを意味していない。本発明は、車両に搭載して設置するだけである。本発明は、動物が横切ることに起因した事故の危険をなくすか減らすこと、自動車の運転から運転者の注意をそらすことなく全ての点において、既知のデバイスよりも有効である。
【0012】
前記目的の達成を踏まえて、本発明の目的は、車両の前で道路を急に横切る動物に車両が衝突することを回避するために、車両に設置される車載システムを提供することである。当該システムは、車両の近くの一つ以上の動物の存在の検出する視覚システムと、前記視覚システムからの出力信号を受け入れて、そして次に警報システムを作動させるための信号を作動させる電子制御システムと、その存在が検出された動物を遠方に導くように前記作動信号によって作動する指向性の高周波の音波(つまり、25,000Hz以上の周波数)を放射する手段と、を備える。
【0013】
好ましくは、前述の視覚システムは、昼間での操作を行うための手段、および視界不良状態(例えば夜間)での操作を行うための手段の両方を装備している。第一の種類の手段は、CCDまたはCMOSの技術に基づいたセンサーを装備したカメラから構成することができる。好ましくは、第二のタイプの視覚的な手段は、例えば900nm波長の発光LEDを備えるマトリックスに基づいた照明装置につながった赤外線センサーを備えたCMOSカメラと、および/または可視フィルタを備えたプロジェクターから構成される。他の態様として、抵抗性のボロメーター(bolometer)のマトリックスまたは熱電気のセンサーのマトリックスから構成される熱カメラ又はシステムが用いられる。
【0014】
本発明のさらに好ましい態様によれば、前述の電子制御手段は、視覚システムによって検出されたときにその像(figure)に基づいて動物の存在を検出するようにプログラムされている。電子中央ユニット(electronic central unit)は、それが出会う様々な形状および像(figure)のスクリーニングを実行することができる。動物を検出した後に、遠ざけるべき特定のタイプの動物に適するように、放射手段が異なった周波数の信号を発することを備えることができる。
【0015】
可能な変形例の1つでは、動物を立ち去らせるように、周波数(frequency degree)が道路の中心から道路の端部に向けて減少して、デバイスは前面方向に音波を方向づけるべきである。電子制御システムは、発生している危険な状況をドライバーに警告をする光/音の信号を発するように、車の計器板上のディスプレイに接続することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点は、単なる非限定的な実施例として提供される添付図面を参照しながら行う次の説明から明白になるであろう。
【0017】
図1では、参照符号1が、MEMS技術に基づく、高周波(RF)の指向性の波、特に少なくとも25,000Hz以上の周波数を有する放射体(emitter)2を備える本発明に係るデバイスを全体的に示している。放射体2の作動は、視覚システム6から出力信号5を受け入れた後に電子制御システム4によって発せられた信号3によって決定される。既に述べられたように、それは、昼間での操作を行うためにCCDまたはCMOSのセンサーを装備したカメラと、視界不良状態(例えば夜間)での操作を行うためにIRセンサーを装備したCMOSカメラとから構成することができる。IRセンサーは、発光LEDのマトリックスに基づいた照明装置につながっている(波長の関数(ピークが約900nmで提供されている)として前記マトリックスによって放射された光の強度の変化を示す図5を参照すること)。IRセンサーは、あるいはその代わりに、可視光線を装備したプロジェクターにつながっている(図5の下の図形を参照すること)。視覚システム6、電子中央ユニット4および放射体2から成る組み立て体は、ガラス板8につながったハウジング7内部に配置されている。このように実行されたデバイスは、内部のバックミラーと同じ高さで車両のフロントガラスに、つまり図2のSで示した位置に配置することができる。代案として、当該システムは、ライトに、つまりTで示された位置に配置することができる。
【0018】
可能な変形例では、視覚システム、RF放射体および電子制御システムは、独立した別個のデバイスである。視覚システムは、バックミラーと同じ高さのフロントガラスにつまりSの位置に配置される。しかしながら、ユーザーの邪魔になることを避けるために及び車の中にいる動物から導き出されるトラブルを避けるために、放射体はT位置に配置される。
【0019】
操作の間に、車両が移動しているときに、車両V(図3)のS位置に配置された視覚システムは、画像を得る。電子中央制御ユニットは、画像スクリーニングを実行するようにプログラムされている。これらの画像のうちの1つが、制御ユニットシステムにおいて蓄えられた画像のデータベースにおいて含まれていたもののうちの1つと合致したときに、アラーム作動信号が発せられる。視界が優れている場合(例えば昼間)、あるいは視界が良くない場合(例えば夜間)、すべての瞬間で最良の検出効率を達成するように、システムは異なった操作を提供することができる。一旦、動物のボディが検出されたならば、RF放射体が作動する。RF放射体は、動物が優先方向(図4)に動くように、道路の中心から始まって、道路の側方部分に向けて減少して、前記ボディの方に向けて高周波で低強度の音波を送る。
【0020】
本発明の基本概念が同じままであるが、本発明の枠組みを残すことなく、構造の細部および実施形態は、記載され且つ示されたものに関して幅広く変更できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るシステムの構造を示す図である。
【図2】本発明に係るシステムを装備した車両を示す。
【図3】警報システムが働く前に、本発明に係るシステムを装備した車両を示す。
【図4】警報システムが働いた後に、本発明に係るシステムを装備した車両を示す。
【図5】IRセンサーにつながって用いられる照明装置の2つの異なった解決策を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前で道路を急に横切ろうとする動物と車両が衝突することを回避するために、車両に設置される車載システムであって、
車両の近くの一つ以上の動物の存在を検出する視覚システムと、
前記視覚システムからの出力信号を受け入れて、次に作動信号を作動させる電子制御システムと、
指向性の高周波つまり25,000Hz以上の周波数を放射して、その存在が検出された動物を遠方に追い払うように前記作動信号によって作動する手段と、
を備えることを特徴とする車載システム。
【請求項2】
前記視覚システムが、昼間での操作を行うための手段、及び夜間等の視界不良状態での操作を行うための手段の両方を装備していることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
昼間操作を行うための前記手段が、CCDまたはCMOS技術に基づいたセンサーを装備したカメラから構成されていることを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記視界不良状態での操作を行うための手段が、発光LEDのマトリックスに基づいた照明デバイスと、可視フィルタを備えたプロジェクターから構成されるシステムと、熱カメラから構成されるシステムと、抵抗性のボロメーターのマトリックス及び熱電気センサーのマトリックスから構成されるシステムとの中から選択されたシステムにつながった赤外線センサーを装備したCMOSカメラから構成されていることを特徴とする、請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記照明デバイスが、約900nmの波長を備えた発光LEDのマトリックスに基づくことを特徴とする、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
視覚システムが出会う様々な形状および像(figure)のスクリーニングを実行して、視覚システムによって検出されるときにその像に基づいて動物の存在を検出するように、前述の電子制御手段がプログラムされていることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
動物を遠方に追い払うように、それが前面方向に音波を向けており、周波数(frequency degree)が道路の中心から道路の端部の方に減少していることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
発生している危険な状況をドライバーに知らせる光/音の信号を発するように、電子制御システムが車両計器板上のディスプレイに接続されていることを特徴とする、請求項1記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−502729(P2006−502729A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544561(P2004−544561)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004332
【国際公開番号】WO2004/034782
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(598031246)チ・エレ・エッフェ・ソシエタ・コンソルティーレ・ペル・アチオニ (86)
【氏名又は名称原語表記】C.R.F. Societa Consortile per Azioni
【Fターム(参考)】