説明

車両のアイドルストップスタート制御装置

【課題】盗難防止性能を維持しつつ、燃費改善と安全性向上とを両立可能な車両のアイドルストップスタート制御装置を提供する。
【解決手段】一端が第2制御ユニット6に接続され、他端が第1コイル部26bの他端に接続されたインターロックリレー駆動線27aと第1スイッチ26とによって第2スイッチ27を構成したため、インターロックスイッチ24aがオフ状態であっても、アイドルストップ後の自動再始動時、第2制御ユニット6の指令により第1コイル部26bに通電することが可能となり、スタータ3の始動が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドルストップスタート機構とエンジン始動時の安全状態を機械的に検知するインターロック機構と乗員が携帯する携帯機の認証コードを照合して始動可否を制御する認証コード照合機構とを協調制御可能な車両のアイドルストップスタート制御装置に関するものである。
【0002】
従来、燃費向上、排気エミッションの低減、振動や騒音の防止等を図るため、アイドルストップスタートシステム(ISS:Idle Stop Start System)が知られている。ISSは、車両の停車時に、所定のエンジン停止条件、例えば、車速が零、走行レンジ及びブレーキスイッチがオンの条件が成立したときは、エンジンを自動的に停止させ、所定の再始動条件、例えば、走行レンジ及びブレーキスイッチがオフの条件が成立したときは、エンジンを自動的に再始動させるよう構成されている。
【0003】
また、車両の盗難防止を図るため、認証コード照合システム(SKE:Smart Keyless Entry System)もまた知られている。SKEは、乗員が携帯する電子キー等の携帯用送受信装置(携帯機)と車両に搭載される車両側送受信装置(車載機)との間で無線交信を行い、携帯機から送信されてきたIDコードが車両側の正規のIDコードと認証されたときにエンジンの始動が許可されるよう構成されている。
【0004】
特許文献1は、ISSとSKEとを備える車両において、乗員による携帯機の車外への持出し可能性を判定し、持出し可能性が無いと判定したときは認証コードの照合を行うことなくエンジンを自動再始動し、持出し可能性が有ると判定したときは認証コードの照合をエンジンの自動再始動の条件とする技術を提案している。特許文献1によれば、盗難防止性能を低下させることなく、エンジンの自動再始動時に携帯機のID認証障害が生じることにより再始動ができなくなるという不具合を回避できる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−214357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、車両始動時の安全状態を機械的に保証するインターロックシステムが知られている。インターロックシステムは、通常のエンジン始動時、制御系の暴走等に起因する車両の飛び出し等を機械的に防止することを目的とするもので、例えばAT車では、PレンジまたはNレンジ状態に操作されたときのみ車両を始動可能とし、MT車では、クラッチカット状態に操作されたときのみ車両を始動可能に構成している。
【0007】
通常のエンジン始動、所謂車両の完全停止状態からのエンジン始動(第1始動)と、アイドルストップからのエンジン自動始動、所謂補機類は作動している状態で、エンジンの運転のみ停止した状態からのエンジン始動(第2始動)とは、同じエンジンの始動であっても実行されるときの環境が異なっている。つまり、第1始動は、例えば、駐車場におけるエンジン始動であり、第2始動は、例えば、運転中の交差点におけるエンジン始動である。
【0008】
特許文献1では、携帯機の持出し可能性が無い場合、認証コードの照合を行うことなく第2始動可能としたため、盗難防止性能と燃費改善とは両立しているものの、第1始動時における安全性向上についての検討は行われていない。また、特許文献1に提案される技術にインターロックシステムを組合せることも考えられるが、交差点におけるアイドルストップからの第2始動時、PレンジまたはNレンジに切替えて、更に、エンジンの始動操作を行う必要が生じ、円滑な走行という観点からは安全性の面で課題が残る。
【0009】
本発明の目的は、盗難防止性能を維持しつつ、燃費改善と安全性向上とを両立可能な車両のアイドルストップスタート制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両のアイドルストップスタート制御装置は、乗員が携帯する携帯機の認証コードと車両側で記憶する認証コードとが一致するか否かを判定する認証コード照合手段と、車両始動時の安全状態を検知するインターロック検知手段と、このインターロック検知手段による安全状態の検知と前記認証コード照合手段による認証コードの一致を条件としてエンジンの始動を許可するスタータ制御手段と、所定の自動停止条件が成立したとき、エンジンを自動停止させると共に、所定の自動再始動条件が成立したとき、エンジンを自動再始動させる自動停止再始動制御手段とを有する。
【0011】
請求項1の発明は、前記スタータ制御手段に接続され、オン状態で前記スタータモータを作動させる作動スイッチを備えたスタータ回路手段を有し、このスタータ回路手段は、前記インターロック検知手段の検知結果に基づき前記作動スイッチをオン作動させる第1スイッチ手段と、この第1スイッチ手段がオフ状態であっても、前記エンジンの自動再始動条件が成立したとき、前記作動スイッチをオン作動させる第2スイッチ手段とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明では、スタータモータを作動する作動スイッチを備えたスタータ回路手段が、作動スイッチをオン作動させる第1スイッチ手段と第1スイッチ手段と作動条件の異なる第2スイッチ手段とを有するため、2系統によるスタータモータの作動が可能になる。しかも、第1スイッチ手段に対して第2スイッチ手段を優先作動させるため、異なる作動条件の制御が併用可能にできる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1スイッチ手段は、前記作動スイッチをオン作動させるリレー手段で構成することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の発明において、車両の停止状態を維持させる自動ブレーキ制御手段を有し、この自動ブレーキ制御手段が作動している場合、前記第2スイッチ手段が前記作動スイッチをオン作動させることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、乗員が携帯する携帯機の認証コードと車両側で記憶する認証コードとが一致するか否かを判定する認証コード照合手段を有すると共に、車両始動時の安全状態が検知され、前記認証コード照合手段によって認証コードが一致したとき、エンジンのスタータモータを始動させる第1制御ユニットと、所定の自動停止条件が成立したとき、エンジンを自動停止させると共に、所定の自動再始動条件が成立したとき、エンジンを自動再始動させる第2制御ユニットとを有するものであって、前記エンジンの自動再始動条件が成立したとき、前記第2制御ユニットによる自動再始動を前記第1制御ユニットによる制御に優先させることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明では、前記第2制御ユニットによる自動再始動を前記第1制御ユニットによる制御に優先させるため、異なる作動条件の制御が併用可能にできる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、盗難防止性能を維持しつつ、燃費改善と安全性向上とを両立できる。
【0018】
つまり、安全性向上を図るインターロック検知手段の検知結果に基づき作動する第1スイッチ手段と燃費改善を図る自動停止再始動制御手段によって作動する第2スイッチ手段とにより、夫々の作動条件でスタータモータを作動させることができる。しかも、自動再始動時、第1スイッチ手段に対して第2スイッチ手段を優先させるため、インターロックの解除操作を行うことなく自動再始動可能となることから、始動時の安全性と走行時の安全性とを確保できる。
【0019】
請求項2の発明によれば、前記第1スイッチ手段は、前記作動スイッチをオン作動させるリレー手段であるため、簡易な構成でインターロック解除の擬似状態を形成することができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、車両の停止状態を維持させる自動ブレーキ制御手段を有し、この自動ブレーキ制御手段が作動している場合、前記第2スイッチ手段が前記作動スイッチをオン作動させるため、エンジン始動に伴うクリープ力による車両の飛び出し及びショックを防止することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、前記エンジンの自動再始動条件が成立したとき、前記第2制御ユニットによる自動再始動を前記第1制御ユニットによる制御に優先させるため、盗難防止性能を維持しつつ、燃費改善と安全性向上とを両立できる。
【0022】
つまり、前記第1制御ユニットと前記第2制御ユニットとにより、夫々の作動条件でスタータモータを作動させることができる。しかも、自動再始動時、前記第1制御ユニットに対して前記第2制御ユニットを優先させるため、インターロックの解除操作を行うことなく自動再始動可能となることから、始動時の安全性と走行時の安全性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施する為の最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明する。図1は本アイドルストップスタート制御装置のブロック図を示し、図2は本アイドルストップスタート制御装置の要部回路図を示す。
【0025】
図1に示すように、車両1のエンジン2は、図示しないトルクコンバータや自動変速機からなるパワートレインを介して車両1を駆動する。エンジン2はベルトを介してスタータモータ3と結合し、スタータモータ3の回転によって始動する。エンジン2の燃料噴射及び点火は統合コントローラ4の一部を構成する第2制御ユニット6によって制御される。
【0026】
車両1の動作を制御する統合コントローラ4は、第1制御ユニット5と、第2制御ユニット6と、第3制御ユニット7から構成しており、夫々のユニット5〜7はCAN8(通信回線)によって信号を送受信可能に接続されている。
【0027】
統合コントローラ4には、乗員が携帯する携帯用送受信機(携帯機)9の認証コード信号、エンジン2の回転数を検出するエンジン回転数センサ10の信号、車速を検出する車速センサ11の信号、ブレーキペダルが踏み込まれたときにオンとなるブレーキスイッチ12の信号、自動変速機のシフトレバーの操作位置によって走行レンジを検出するインヒビタスイッチ13のレンジ信号が入力される。
【0028】
また、統合コントローラ4には、エンジン2の冷却水温を検出する水温センサ14の信号、自動変速機の油温を検出する油温センサ15の信号、自動変速機の油圧を検出する油圧センサ16の信号、エアコンやスタータモータ3等の電気負荷への電力供給用バッテリ21の残量を検出するバッテリ残量センサ17の信号、ブレーキブースタ負圧を検出するブースタ負圧センサ18の信号、ブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ19の信号、アクセルペダルが踏み込まれたときにオンとなるアクセルスイッチ20の信号等が入力される。
【0029】
第1制御ユニット5は、内部に認証コード照合部51を有すると共に、携帯機9との間で無線交信が可能な車両側送受信装置(車載機)として機能するよう構成している。尚、車両1には、車載機5から携帯機9に向けてリクエスト信号を送信するため、室外用送信アンテナと室内用送信アンテナが夫々設置されている。また、携帯機9からのレスポンス信号としての固有の認証コード信号(IDコード)を受信する受信アンテナが車室内に設置されている。
【0030】
また、第1制御ユニット5は、図示しない車両1のスタート釦、ドアリクエストスイッチ及び受信アンテナ等から情報を入力して、ドアロックアクチュエータ、メータユニット及び車外用ブザー等に制御信号を出力するよう構成している。尚、第1制御ユニット5は、乗員による前記スタート釦のプッシュ動作に連動するエンジンスタートスイッチ22に接続されている。
【0031】
認証コード照合部51は、携帯機9からレスポンスされた認証コードと車両側で記憶する認証コードとが一致するか否かを判定するよう構成している。尚、認証コードの照合方法については、公知の技術のため、詳細な説明を省略する。
【0032】
乗員が携帯する携帯機9は、携帯機制御部91、図示しない受信アンテナ及び送信アンテナ等を有している。携帯機制御部91は、受信アンテナから情報を入力して、送信アンテナに制御信号を出力し、これにより、車載機5からのリクエスト信号の受信と、車載機5に向けたレスポンス信号としての認証コード信号の送信とを行う。尚、携帯機9は、駆動源の電池と、システムフェイル時等に車両1を強制始動可能な緊急キーを備えている。
【0033】
第2制御ユニット6は、スタータ3の作動を制御するスタータ制御部61とエンジン2のアイドルストップ及び再始動を制御する自動停止再始動制御部62とから構成され、エンジン2の燃料噴射及び点火等を制御している。
【0034】
スタータ制御部61は、スタータ回路部23と電気的に接続されており、インターロック検知部24による安全状態の検知と前記認証コード照合部51による認証コードの一致を成立条件としてエンジン2の始動を許可する信号をスタータ回路部23に送信するよう構成している。
【0035】
スタータ回路部23は、オン状態でスタータモータ3を作動させる作動スイッチ25と、インターロック検知部24の検知結果に基づき作動スイッチ25をオン作動させる第1スイッチ26と、この第1スイッチ26がオフ状態であっても、アイドルストップからのエンジン自動再始動、つまり、補機類等は作動している状態で、エンジン2の運転のみ停止された状態からのエンジン始動(第2始動)条件が成立したとき、作動スイッチ25をオン作動させる第2スイッチ27から構成している。
【0036】
図2に示すように、作動スイッチ25は、作動スイッチ部25aと作動コイル部25bとからなるリレー構造とされている。作動スイッチ部25aの一端はバッテリ21に接続され、作動スイッチ部25aの他端はスタータモータ3に接続されると共に、作動コイル部25bの一端側回線25cは第1制御ユニット5に接続される。作動コイル部25bが通電されたとき、作動スイッチ部25aはオン作動して、スタータモータ3にバッテリ21から電力が供給されるよう構成している。
【0037】
第1スイッチ26は、第1スイッチ部26aと第1コイル部26bとからなるリレー構造とされている。第1スイッチ部26aの一端は作動コイル部25bの他端に接続され、第1スイッチ部26aの他端は第2制御ユニット6に接続されると共に、第1コイル部26bの一端はバッテリ21に接続される。第1コイル部26bが通電されたとき、第1スイッチ部26aはオン作動して、作動コイル部25bに通電可能に構成している。
【0038】
第1コイル部26bの他端は、インターロック検知部24のインターロックスイッチ24aの一端に接続されている。インターロックスイッチ24aは、第1始動時の安全状態を確保するため、シフトレバーがNレンジまたはPレンジに操作されたとき、シフトレバーの機械的作動によりオン作動して、第1コイル部26bに通電するよう構成している。つまり、エンジン2の駆動力が車輪に伝わることがないNレンジまたはPレンジ状態、所謂インターロック解除条件を、シフトレバーの機械的作動に連動するインターロックスイッチ24aによって検知している。
【0039】
本実施例では、NレンジまたはPレンジをインターロック解除条件としているが、MT車に適用する場合は、エンジン2の駆動力が車輪に伝わらないクラッチカット状態、或いはギア位置がニュートラルであることをインターロック解除条件とすることも可能である。
【0040】
以上の構成によって、第1始動時、認証コードが一致しており、インターロック解除条件の成立、所謂インターロックスイッチ24aがオン状態の場合、第1スイッチ部26aがオン作動され、これにより第2制御ユニット6と作動コイル部25bとが電気的に接続される。ここで、エンジンスタートスイッチ22がオン作動された場合、第2制御ユニット6の指令に基づき作動コイル部25bが通電され、作動スイッチ部25aがオン作動することでスタータモータ3に電力が供給される。
【0041】
第2スイッチ27は、第1スイッチ26がオフ状態であっても、第2始動条件が成立したとき、作動スイッチ25をオン作動させるよう構成している。具体的には、一端が第2制御ユニット6に接続され、他端が第1コイル部26bの他端に接続されたインターロックリレー駆動線27aと第1スイッチ26とによって第2スイッチ27を構成している。つまり、インターロックスイッチ24aがオフ状態であっても、第2制御ユニット6の指令により第1コイル部26bに通電することが可能となり、これによりインターロック解除の擬似状態を形成している。
【0042】
自動停止再始動制御部62は、車両1が走行中、所定の自動停止条件が成立したとき、エンジン2を自動停止させると共に、所定の自動再始動条件が成立したとき、エンジン2を自動再始動させるよう構成している。
【0043】
アイドルストップ時における所定の自動停止条件は、以下の全ての項目に該当したときに条件成立としている。
・ 車速センサ11の検出値が零
・ ブレーキペダルが踏み込まれブレーキスイッチ12の検出値がオン
・ インヒビタスイッチ13によるシフトポジションの検出値が走行レンジ
・ エンジン水温センサ14の検出値が所定値以上
・ 自動変速機の油温センサ15の検出値が所定値以上
・ 自動変速機の油圧センサ16の検出値が所定値以上
・ バッテリ残量センサ17の検出値が所定値以上
・ ブースタ負圧センサ18の検出値の絶対値が所定値以上
尚、本実施例においては、前記(1)〜(8)の項目全ての成立を条件としているが、制御系の簡略化を狙いとして、少なくとも(1)〜(3)の成立を基礎条件とすることも可能であり、(4)〜(8)は車両1の仕様に基づき省略しても良い。
【0044】
第2始動時における所定の自動再始動条件は、(11)の項目の成立を必須条件とし、(12)〜(17)の項目の内、何れかの項目に該当すれば自動再始動条件成立と判定している。
(11)インヒビタスイッチ13によるシフトポジションの検出値が走行レンジ
(12)ブレーキスイッチ12の検出値がオフ
(13)エンジン水温センサ14の検出値が所定値未満
(14)自動変速機の油温センサ15の検出値が所定値未満
(15)バッテリ残量センサ17の検出値が所定値未満
(16)ブースタ負圧センサ18の検出値の絶対値が所定値未満
(17)アクセルペダルが踏み込まれアクセルスイッチ20の検出値がオン
尚、制御系の簡略化を狙いとして、自動再始動条件を、(11)及び(12)の項目のみで判定することも可能である。
【0045】
自動停止再始動制御部62は自動停止条件を判定し、自動停止条件が不成立の場合、所謂アイドルストップ実行不可能状態のとき、図示しないアイドルストップ報知装置を作動させて乗員に報知する。自動停止条件が成立の場合、所定時間、例えば3秒間車両1の停止状態が継続したとき、エンジン2の燃料噴射及び点火を停止する指令を送信する。
【0046】
また、第2始動時、自動停止再始動制御部62は自動再始動条件を判定し、自動再始動条件が成立の場合、スタータ制御部61にスタータモータ3の作動指令を送ると共に、エンジン2に対して燃料噴射の実行及び点火実行の指令を送信する。尚、スタータモータ3の作動指令は、エンジン回転数が所定回転数以上に達するまで継続される。
【0047】
第3制御ユニット7は、各車輪のブレーキ機構毎に設けられたABSバルブユニット28によって各車輪のブレーキ圧を制御し、各車輪がロック状態にならないよう各車輪の制動力を制御している。ABSバルブユニット28は、各車輪に設けられた図示しないディスクとマスタシリンダとの間に設けられ、モータ駆動式の油ポンプと切換バルブとアキュムレータとから構成している。ABSの構成は公知技術のため、詳細な説明を省略する。
【0048】
第3制御ユニット7内には、自動ブレーキ制御部71が設けられている。自動ブレーキ制御部71は、アイドルストップ時、車両1の停止状態を維持するため、ABSバルブユニット28を作動するよう構成している。ABSバルブユニット28による制動、所謂アイドルストップ制動は、自動停止条件の成立からアクセルスイッチ20によってオン状態が検出されるまで継続される。
【0049】
エンジン2により駆動されるオイルポンプを備えたAT車は、エンジン停止時には油圧源がないため、発進クラッチが解放された状態になる。第2始動時では、オイルポンプが駆動されるものの、発進クラッチの締結圧として十分な吐出圧が得られないことがあり、プリチャージフェーズが完了する前にイナーシャフェーズが開始された状態でオイルポンプの吐出圧が確保されると車両1の飛び出し及びショックが発生する。従って、アイドルストップ制動終了時期を、乗員による発進操作、つまり、アクセルスイッチ20オンの検出時期とすることで、プリチャージフェーズの完了期間を確保している。尚、応答性向上を優先して、ブレーキスイッチ12のオフ検出を制動終了時期とすることも可能である。
【0050】
自動ブレーキ制御部71は、ブレーキ液圧センサ19の検出値と所定の目標値に基づき、アイドルストップ制動時の目標制動力を制御している。目標制動力は、エンジン2の始動時に発生するクリープ力と等しい値とされ、道路勾配が所定値以上の場合、道路勾配の勾配率に比例して制動力が大きくなるよう目標制動力を補正し、ABSバルブユニット28を調整制御している。
【0051】
また、自動ブレーキ制御部71は、ブレーキ液圧が前記目標制動力以上の場合、アイドルストップ中のエンジンスタートスイッチ22のオン作動により、エンジン2の再始動が可能となるよう構成している。つまり、アイドルストップ時、ブレーキ液圧が前記目標制動力以上で且つエンジンスタートスイッチ22がオン場合、エンジンスタートスイッチ22のオン信号が第2制御ユニット6に送信され、第2制御ユニット6の指令によって第2スイッチ27がオン作動する。これにより、アイドルストップ中における乗員のスタート釦操作による再始動が、安全性を維持しながら可能となる。
【0052】
次に、図3のフローチャートに基づき、本アイドルストップスタート制御処理について説明する。尚、Si(i=1,2,…)は各ステップを示す。
【0053】
まず、走行レンジ、車速、ブレーキスイッチ等各種信号を読込む(S1)。尚、本制御処理は車両1が走行しているとき、数100msec毎に実行されている。次に、S2に移行し、アイドルストップ条件が成立しているか否か判定を行う。ここで、アイドルストップ条件は、前述した(1)〜(8)の項目の成立である。
【0054】
S2の判定の結果、アイドルストップ条件が成立の場合、S3に移行し、携帯機9が車室内に存在するか否かを判定する。S2の判定の結果、アイドルストップ条件が不成立の場合、S1に移行する。
【0055】
S3の判定の結果、携帯機9が車室内に存在する場合、S4に移行し、車速によって車両1が完全停止か否かを判定する。携帯機9から車載機5にレスポンスした認証コードと車両1側で記憶する認証コードとが一致するか否かによって車室内の存在を判定している。S3の判定の結果、携帯機9が車室内に存在しない場合、S1に移行する。
【0056】
S4の判定の結果、車両1が完全停止の場合、S5に移行し、再度、携帯機9が車室内に存在するか否かを判定する。S4の判定の結果、車両1が完全停止ではない場合、完全停止まで判定を継続する。
【0057】
S5の判定の結果、携帯機9が車室内に存在する場合、S6に移行し、ABSバルブユニット28を作動させて自動ブレーキ制御を実行する。再度、携帯機9の存在を確認する理由は、車両1が停止に至るまでにはある程度時間が必要とされ、また、走行環境によっては、ノイズ等により認証障害が発生するためである。S5の判定の結果、携帯機9が車室内に存在しない場合、S1に移行する。
【0058】
ABSバルブユニット28によって各車輪のブレーキ液圧を目標制動力になるよう調整制御した後、アイドルストップを実行する(S7)。アイドルストップ中は、エンジン2の燃料噴射及び点火等を停止しているが、エアコン等の所定の電気負荷は作動している。
【0059】
次に、S8の判定の結果、アイドルストップ再始動条件成立の場合、S9に移行する。ここで、アイドルストップ再始動条件は、前述した(11)の項目の成立を必須条件とし、(12)〜(17)の項目の内、何れかの項目に該当すれば自動再始動条件成立と判定している。S8の判定の結果、アイドルストップ再始動条件不成立の場合、S7に移行する。
【0060】
S9では、自動停止再始動制御部62が、スタータ制御部13にスタータモータ3の作動指令を送り、第2スイッチ27をオン作動させると共に、エンジン2に対して燃料噴射の実行及び点火実行の指令を送信する。スタータモータ3が始動(S10)後、S11に移行する。
【0061】
S11の判定の結果、エンジン2の再始動完了の場合、リターンすると共に、エンジン2の再始動完了でない場合、判定を継続する。エンジン2の再始動完了は、完爆すると共にエンジン2の回転数が所定回転数以上か否かによって判定している。尚、本実施例では、スタータモータ3の作動を再始動完了の時点まで継続している。
【0062】
次に、本実施例1に係る本アイドルストップスタート制御装置の作用、効果を説明する。
スタータ回路部23を設けたため、安全性向上を図るインターロック検知部24の検知結果に基づき作動する第1スイッチ26と燃費改善を図る自動停止再始動制御部62によって作動する第2スイッチ27とにより、夫々の作動条件でスタータモータ3を作動させることができる。
【0063】
しかも、第1コイル部26bの他端に接続されたインターロックリレー駆動線27aを設けたため、自動再始動時、インターロック条件で作動する第1スイッチ26に対して第2スイッチ27の作動を優先させることができる。これにより、インターロックの解除操作を行うことなく自動再始動可能となることから、始動時の安全性と走行時の安全性とを確保でき、アイドルストップスタート制御とインターロック制御と認証コード照合制御とを協調制御可能となる。
【0064】
第1スイッチ26を、作動スイッチ25をオン作動させるリレー構造としたため、簡易な構成でインターロック解除の擬似状態を形成することができる。また、車両1の停止状態を維持させる自動ブレーキ制御部71を設け、この自動ブレーキ制御部71を作動させた状態で、第2スイッチ27によって作動スイッチ25をオン作動させるため、エンジン始動に伴うクリープ力による車両1の飛び出し及びショックを防止することができる。
【0065】
しかも、自動ブレーキ制御部71は、道路勾配に応じた目標制動力となるようABSバルブユニット28を制御するため停止状態の維持が確実に実行できる。
また、作動コイル部25bの一端側回線25cは第1制御ユニット5に接続されるため、認証コード照合制御とアイドルストップスタート制御とが独立した制御系となり、盗難防止性の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0066】
次に、図4に基づき、実施例2を説明する。尚、図4は、本アイドルストップスタート制御装置の要部回路図を示す。また、実施例1と同様の構成は同じ符号を付している。
【0067】
実施例1と同様に、エンジン2はベルトを介してスタータモータ3と結合し、スタータモータ3の回転によって始動する。また、車両1の動作を制御する統合コントローラ4は、第1制御ユニット5と、第2制御ユニット6と、第3制御ユニット7から構成しており、夫々のユニット5〜7はCAN8によって信号を送受信可能に接続されている。
【0068】
統合コントローラ4には、携帯機9、エンジン回転数センサ10、車速センサ11、ブレーキスイッチ12、インヒビタスイッチ13、水温センサ14、油温センサ15、油圧センサ16、バッテリ残量センサ17、ブースタ負圧センサ18、ブレーキ液圧センサ19、アクセルスイッチ20の信号等が入力される。
【0069】
第1制御ユニット5は、内部に認証コード照合部51を有すると共に、携帯機9との間で無線交信が可能な車載機として機能するよう構成している。第1制御ユニット5内の認証コード照合部51は、携帯機9からレスポンスされた認証コードと車両側で記憶する認証コードとが一致するか否かを判定するよう構成している。
【0070】
第2制御ユニット6は、スタータ3の作動を制御するスタータ制御部61とエンジン2のアイドルストップ及び再始動を制御する自動停止再始動制御部62とから構成され、エンジン2の燃料噴射及び点火等を制御している。スタータ制御部61は、スタータ回路部23と電気的に接続されており、インターロック検知部24による安全状態の検知と前記認証コード照合部51による認証コードの一致を成立条件としてエンジン2の始動を許可する信号をスタータ回路部23に送信するよう構成している。
【0071】
スタータ回路部23は、オン状態でスタータモータ3を作動させる作動スイッチ25と、インターロック検知部24の検知結果に基づき作動スイッチ25をオン作動させる第1スイッチ26と、この第1スイッチ26がオフ状態であっても、第2始動条件が成立したとき、作動スイッチ25をオン作動させる第2スイッチ27から構成している。
【0072】
作動スイッチ25は、作動スイッチ部25aと作動コイル部25bとからなるリレー構造とされている。作動スイッチ部25aの一端はバッテリ21に接続され、作動スイッチ部25aの他端はスタータモータ3に接続されると共に、作動コイル部25bの一端側回線25cは第2制御ユニット6に接続される。
【0073】
第1スイッチ26は、第1スイッチ部26aと第1コイル部26bとからなるリレー構造とされる。第1スイッチ部26aの一端は作動コイル部25bの他端に接続され、第1スイッチ部26aの他端は第1制御ユニット6に接続されると共に、第1コイル部26bの一端はバッテリ21に接続される
【0074】
第1コイル部26bの他端は、インターロック検知部24のインターロックスイッチ24aの一端に接続されている。インターロックスイッチ24aは、第1始動時の安全状態を確保するため、シフトレバーがNレンジまたはPレンジに操作されたとき、シフトレバーの機械的作動によりオン作動して、第1コイル部26bに通電するよう構成している。
【0075】
第2スイッチ27は、第1スイッチ26がオフ状態であっても、第2始動条件が成立したとき、作動スイッチ25をオン作動させるよう構成している。具体的には、一端が第2制御ユニット6に接続され、他端が第1コイル部26bの他端に接続されたインターロックリレー駆動線27aと第1スイッチ26とによって第2スイッチ27を構成している。つまり、インターロックスイッチ24aがオフ状態であっても、第2制御ユニット6の指令により第1コイル部26bに通電することが可能となり、これによりインターロック解除の擬似状態を形成している。
【0076】
自動停止再始動制御部62は、車両1が走行中、所定の自動停止条件が成立したとき、エンジン2を自動停止させると共に、所定の自動再始動条件が成立したとき、エンジン2を自動再始動させるよう構成している。尚、自動停止条件及び自動再始動条件は、実施例1と同様である。
【0077】
第3制御ユニット7は、各車輪のブレーキ機構毎に設けられたABSバルブユニット28によって各車輪のブレーキ圧を制御し、各車輪がロック状態にならないよう各車輪の制動力を制御している。第3制御ユニット7内には、ABSバルブユニット28を制御する自動ブレーキ制御部71が設けられている。
【0078】
自動ブレーキ制御部71は、ブレーキ液圧センサ19の検出値と所定の目標値に基づき、アイドルストップ制動時の目標制動力を制御している。目標制動力は、エンジン2の始動時に発生するクリープ力と等しい値とされ、道路勾配が所定値以上の場合、道路勾配の勾配率に比例して制動力が大きくなるよう目標制動力を補正し、ABSバルブユニット28を調整制御している。
【0079】
次に、本実施例2に係る本アイドルストップスタート制御装置の作用、効果を説明する。
実施例1と同様に、スタータ回路部23を設けたため、安全性向上を図るインターロック検知部24の検知結果に基づき作動する第1スイッチ26と燃費改善を図る自動停止再始動制御部62によって作動する第2スイッチ27とにより、夫々の作動条件でスタータモータ3を作動させることができる。
【0080】
しかも、第1コイル部26bの他端に接続されたインターロックリレー駆動線27aを設けたため、自動再始動時、インターロック条件で作動する第1スイッチ26に対して第2スイッチ27の作動を優先させることができる。これにより、インターロックの解除操作を行うことなく自動再始動可能となることから、始動時の安全性と走行時の安全性とを確保でき、アイドルストップスタート制御とインターロック制御と認証コード照合制御とを協調制御可能となる。
【0081】
また、作動コイル部25bの一端側回線25cは第2制御ユニット6に接続されるため、スタータモータ3を始動する回路が、他の機構から独立した作動スイッチ25と第2制御ユニット6とから構成でき、簡易な回路構成にできる。
【0082】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、第1スイッチがリレー構造の例を説明したが、少なくとも、リレー機能を備えるものであればよく、トランジスタ、或いはFET(Field Effect Transistor)等により第1スイッチを構成しても良い。
【0083】
2〕前記実施例においては、第1制御ユニットと第2制御ユニットとを有する例を説明したが、アイドルストップスタート制御と認証コード照合制御とを単一のユニットで構成することも可能である。
【0084】
3〕前記実施例においては、AT車の例を説明したが、本発明をMT車に適用することも可能である。MT車に適用する場合、自動停止条件は、クラッチ−オフ、ニュートラルギア、車速零の項目が全て成立であり、自動再始動条件は、クラッチペダルの踏込みとする。また、インターロック条件は、クラッチカットスイッチ−オン、つまり、クラッチペダルの踏込み状態とする。
【0085】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施例1に係るアイドルストップスタート制御装置のブロック図である。
【図2】実施例1に係るアイドルストップスタート制御装置の要部回路図である。
【図3】実施例1に係るアイドルストップスタート制御処理のフローチャートである。
【図4】実施例2に係るアイドルストップスタート制御装置の要部回路図である。
【符号の説明】
【0087】
1 車両
2 エンジン
3 スタータモータ
23 スタータ回路部
24 インターロック検知部
25 作動スイッチ
26 第1スイッチ
26a 第1スイッチ部
26b 第1コイル部
27 第2スイッチ
27a インターロックリレー駆動線
28 ABSバルブユニット
51 認証コード照合部
61 スタータ制御部
62 自動停止再始動制御部
71 自動ブレーキ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が携帯する携帯機の認証コードと車両側で記憶する認証コードとが一致するか否かを判定する認証コード照合手段と、車両始動時の安全状態を検知するインターロック検知手段と、このインターロック検知手段による安全状態の検知と前記認証コード照合手段による認証コードの一致を条件としてエンジンの始動を許可するスタータ制御手段と、所定の自動停止条件が成立したとき、エンジンを自動停止させると共に、所定の自動再始動条件が成立したとき、エンジンを自動再始動させる自動停止再始動制御手段とを有する車両のアイドルストップスタート制御装置であって、
前記スタータ制御手段に接続され、オン状態で前記スタータモータを作動させる作動スイッチを備えたスタータ回路手段を有し、
このスタータ回路手段は、前記インターロック検知手段の検知結果に基づき前記作動スイッチをオン作動させる第1スイッチ手段と、この第1スイッチ手段がオフ状態であっても、前記エンジンの自動再始動条件が成立したとき、前記作動スイッチをオン作動させる第2スイッチ手段とを有することを特徴とする車両のアイドルストップスタート制御装置。
【請求項2】
前記第1スイッチ手段は、前記作動スイッチをオン作動させるリレー手段で構成することを特徴とする請求項1に記載の車両のアイドルストップスタート制御装置。
【請求項3】
車両の停止状態を維持させる自動ブレーキ制御手段を有し、
この自動ブレーキ制御手段が作動している場合、前記第2スイッチ手段が前記作動スイッチをオン作動することを特徴とする請求項1または2に記載の車両のアイドルストップスタート制御装置。
【請求項4】
乗員が携帯する携帯機の認証コードと車両側で記憶する認証コードとが一致するか否かを判定する認証コード照合手段を有すると共に、車両始動時の安全状態が検知され、前記認証コード照合手段によって認証コードが一致したとき、エンジンのスタータモータを始動させる第1制御ユニットと、所定の自動停止条件が成立したとき、エンジンを自動停止させると共に、所定の自動再始動条件が成立したとき、エンジンを自動再始動させる第2制御ユニットとを有する車両のアイドルストップスタート制御装置であって、
前記エンジンの自動再始動条件が成立したとき、前記第2制御ユニットによる自動再始動を前記第1制御ユニットによる制御に優先させることを特徴とする車両のアイドルストップスタート制御装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−116892(P2010−116892A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292095(P2008−292095)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】