説明

車両のアンダボデー構造

【課題】 リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持しつつ車室内足元スペースを広くする。
【解決手段】 ロッカ閉断面18に連結されたクロスメンバ閉断面34は、クロスメンバ閉断面34の上部において車体後方に幅広とされた上閉断面38と、クロスメンバ閉断面34の下部において車体前方に幅広とされた下閉断面36と、上閉断面38と下閉断面36とを連結する連結閉断面40とからなり、下閉断面36の上方が、車室足元スペースとなると共に、リヤサイドメンバ閉断面31の前端は、クロスメンバ閉断面34の上閉断面部38に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両のロッカ後部における車両のアンダボデー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のロッカ後部におけるアンダボデー構造においては、ロッカ(ロッカパネルともいう)の後部に、リヤサイドメンバ(リヤフロアサイドメンバともいう)の前端部に形成した湾曲部を連結した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、この構成では、フロアパネルとで車幅方向に沿って延びる閉断面を構成するクロスメンバ(リヤフロアクロスメンバともいう)の車幅方向の端部を後方へ屈曲し、前記リヤサイドメンバの湾曲開始点に接合している。
【特許文献1】特開平4−043176
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の車両のアンダボデー構造では、車体後方からの入力される荷重の集中を緩和し、リヤサイドメンバの変形を防止するために、リヤサイドメンバの前端部に形成した湾曲部を車体前方に太くし断面積を大きくすると共に、クロスメンバの車幅方向端部も車体前後方向に太くし断面積を大きくしている。この結果、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の剛性は高くなるが、ロッカ後部の車幅方向内側におけるフロア上の車室内足元スペースが狭くなる。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持しつつ車室内足元スペースを広くできる車両のアンダボデー構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明における車両のアンダボデー構造は、車幅方向に沿って延びる閉断面を備え、この閉断面は、下部において車体前後方向内方に幅広とされた下閉断面と、前記下閉断面の車体前後方向外側部に連結され上方へ延びる連結閉断面とを備えたクロスメンバを有することを特徴とする。
【0006】
クロスメンバの閉断面が、下部において車体前後方向内方に幅広とされた下閉断面と、下閉断面の車体前後方向外側部に連結され上方へ延びる連結閉断面とからなる。このため、クロスメンバ閉断面の下閉断面の上方が車室足元スペースとなると共に、リヤサイドメンバとロッカとの結合部となるクロスメンバ閉断面の断面積が下閉断面と連結閉断面とによって大きくなり、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持する。
【0007】
なお、車体前後方向の2つの部位について、車体前後方向中央に近い部位を車体前後方向内側(内方)と記載し、車体前後方向中央から遠い部位を車体前後方向外側(外方)と記載する。
【0008】
請求項2記載の本発明における車両のアンダボデー構造は、車幅方向に沿って延びる閉断面を備え、この閉断面は、上部において車体前後方向外方に幅広とされた上閉断面と、下部において車体前後方向内方に幅広とされた下閉断面と、前記上閉断面と前記下閉断面とを連結する連結閉断面とを備えたクロスメンバを有することを特徴とする。
【0009】
クロスメンバの閉断面が、上部において車体前後方向外方に幅広とされた上閉断面と、下部において車体前後方向内方に幅広とされた下閉断面と、上閉断面と下閉断面とを連結する連結閉断面とからなる。このため、クロスメンバ閉断面の下閉断面の上方が車室足元スペースとなると共に、リヤサイドメンバとロッカとの結合部となるクロスメンバ閉断面の断面積が上閉断面と下閉断面と連結閉断面とによって大きくなり、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持する。
【0010】
請求項3記載の本発明における車両のアンダボデー構造は、車体前後方向に沿って延びるロッカ閉断面を備えるロッカと、
前記ロッカ閉断面の車体前後方向外側に車体前後方向に沿って延びるサイドメンバ閉断面を備えるサイドメンバと、
車幅方向に沿って延び、前記ロッカ閉断面に連結する閉断面を備え、この閉断面は、上部において車体前後方向外方に幅広とされた上閉断面と、下部において車体前後方向内方に幅広とされた下閉断面と、前記上閉断面と前記下閉断面とを連結する連結閉断面とを備え、前記サイドメンバ閉断面が前記上閉断面に連結されたクロスメンバと、
を有することを特徴とする。
【0011】
サイドメンバ閉断面とロッカ閉断面との連結部となるクロスメンバの閉断面が、上部において車体前後方向外方に幅広とされた上閉断面と、下部において車体前後方向内方に幅広とされた下閉断面と、上閉断面と下閉断面とを連結する連結閉断面とからなる。このため、クロスメンバ閉断面の下閉断面の上方が車室足元スペースとなると共に、リヤサイドメンバとロッカとの結合部となるクロスメンバ閉断面の断面積が上閉断面と下閉断面と連結閉断面とによって大きくなり、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持する。
【0012】
請求項4記載の本発明における車両のアンダボデー構造は、車体前後方向に沿って延びるロッカ閉断面を備えるロッカと、前記ロッカ閉断面の後方に車体前後方向に沿って延びるリヤサイドメンバ閉断面を備えるリヤサイドメンバと、車幅方向に沿って延び、前記ロッカ閉断面に連結する閉断面を備え、この閉断面は、上部において車体後方に幅広とされた上閉断面と、下部において車体前方に幅広とされた下閉断面と、前記上閉断面と前記下閉断面とを連結する連結閉断面とを備え、前記リヤサイドメンバ閉断面が前記上閉断面に連結されたクロスメンバと、を有することを特徴とする。
【0013】
リヤサイドメンバ閉断面とロッカ閉断面との連結部となるクロスメンバの閉断面が、上部において車体後方に幅広とされた上閉断面と、下部において車体前方に幅広とされた下閉断面と、上閉断面と下閉断面とを連結する連結閉断面とからなる。このため、クロスメンバ閉断面の下閉断面の上方が車室足元スペースとなると共に、リヤサイドメンバとロッカとの結合部となるクロスメンバ閉断面の断面積が上閉断面と下閉断面と連結閉断面とによって大きくなり、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持する。
【0014】
請求項5記載の本発明は請求項4に記載の車両のアンダボデー構造において、車幅方向に傾斜して延びるアンダリインフォースメント閉断面を備え、後端部が前記下閉断面に連結されたアンダリインフォースメントを有することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の内容に加えて、リヤサイドメンバ閉断面からクロスメンバの閉断面に入力した荷重は、クロスメンバの閉断面からロッカ閉断面とアンダリインフォースメント閉断面に分散伝達されると共に、車幅方向に傾斜して延びるアンダリインフォースメント閉断面に分散された荷重は、アンダリインフォースメント閉断面に沿って荷重入力側に対して車体の車幅方向反対側にも伝達される。
【0016】
請求項6記載の本発明は請求項5に記載の車両のアンダボデー構造において、前記下閉断面に連結された車両懸架装置を有することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の内容に加えて、車両懸架装置からクロスメンバの閉断面に入力した荷重は、クロスメンバの閉断面からロッカ閉断面とアンダリインフォースメント閉断面に伝達されると共に、アンダリインフォースメント閉断面に沿って荷重入力側に対して車体の車幅方向反対側にも分散される。
【0018】
請求項7記載の本発明は請求項4〜6の何れか1項に記載の車両のアンダボデー構造において、前記ロッカ閉断面の後部が、車体前後方向から見て前記リヤサイドメンバ閉断面と重なる位置で前記上閉断面と連結していることを特徴とする。
【0019】
請求項4〜6の何れか1項に記載の内容に加えて、リヤサイドメンバ閉断面からクロスメンバの上閉断面に入力した荷重は、車体前後方向から見てリヤサイドメンバ閉断面と重なる位置でクロスメンバの上閉断面と連結しているロッカ閉断面の後部から車体前後方向に対して直線的にロッカ閉断面に伝達される。
【0020】
請求項8記載の本発明は請求項4〜7の何れか1項に記載の車両のアンダボデー構造において、前記ロッカと前記クロスメンバの閉断面との接合部、前記リヤサイドメンバと前記クロスメンバの閉断面との接合部、前記アンダリインフォースメントと前記クロスメンバの閉断面との接合部、の少なくとも一つの接合面が車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合であることを特徴とする。
【0021】
請求項4〜7の何れか1項に記載の内容に加えて、車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合部であるロッカとクロスメンバの閉断面との接合部、リヤサイドメンバとクロスメンバの閉断面との接合部、アンダリインフォースメントとクロスメンバの閉断面との接合部、の少なくとも一つの接合部を介して、圧縮荷重のみならず車体前後方向と車幅方向の引張り荷重が伝達される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の本発明における車両のアンダボデー構造は、上記の構成とすることで、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持しつつ車室内足元スペースを広くできる。
【0023】
請求項2記載の本発明における車両のアンダボデー構造は、上記の構成とすることで、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持しつつ車室内足元スペースを広くできる。
【0024】
請求項3記載の本発明における車両のアンダボデー構造は、上記の構成とすることで、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持しつつ車室内足元スペースを広くできる。
【0025】
請求項4記載の本発明における車両のアンダボデー構造は、上記の構成とすることで、リヤサイドメンバとロッカとの結合部の充分な剛性を維持しつつ車室内足元スペースを広くできる。
【0026】
請求項5記載の本発明は請求項4に記載の車両のアンダボデー構造において、車幅方向に傾斜して延びるアンダリインフォースメント閉断面を備え、後端部が下閉断面に連結されたアンダリインフォースメントを有するため、請求項4記載の効果に加えて、荷重集中による荷重入力側の変形を抑制できる。
【0027】
請求項6記載の本発明は請求項5に記載の車両のアンダボデー構造において、下閉断面に連結された車両懸架装置を有するため、請求項2記載の効果に加えて、車両懸架装置からの荷重集中による荷重入力側の変形を抑制できる。
【0028】
請求項7記載の本発明は請求項4〜6の何れか1項に記載の車両のアンダボデー構造において、ロッカ閉断面の後部が、車体前後方向から見てリヤサイドメンバ閉断面と重なる位置で上閉断面と連結しているため、請求項4〜6の何れか1項に記載の効果に加えて、リヤサイドメンバ閉断面からの荷重をロッカ閉断面に効率良く伝達できる。
【0029】
請求項8記載の本発明は請求項4〜7の何れか1項に記載の車両のアンダボデー構造において、ロッカとクロスメンバの閉断面との接合部、リヤサイドメンバとクロスメンバの閉断面との接合部、アンダリインフォースメントとクロスメンバの閉断面との接合部、の少なくとも一つの接合面が車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合であるため、請求項4〜7の何れか1項に記載の効果に加えて、圧縮荷重のみならず、車体前後方向と車幅方向の引張り荷重を効果的に伝達できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明における車両のアンダボデー構造の一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
【0031】
なお、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0032】
図1に示される如く、本実施形態の車両のアンダボデー構造では、車体10における車室下部の車幅方向両端部に左右一対のロッカ12が車体前後方向に沿って取付けられている(車体左側のロッカは図示省略)。
【0033】
図4に示される如く、ロッカ12は、ロッカ12の車幅方向外側部を構成するロッカアウタパネル14と、ロッカ12の車幅方向内側部を構成するロッカインナパネル16とで構成されている。ロッカアウタパネル14は、車体前後方向から見た断面形状が開口部を車幅内方へ向けた略C字状とされており、上部が階段状に屈曲され、更に下方への延設部が曲線状に屈曲されている。また、ロッカアウタパネル14の開口端部には、互いに離反する方向へ上フランジ14Aと下フランジ14Bが屈曲形成されている。
【0034】
一方、ロッカインナパネル16は車体前後方向から見た断面形状が開口部を車幅外方へ向けた略コ字型に形成されている。また、ロッカインナパネル16の開口端部には、互いに離反する方向へ上フランジ16Aと下フランジ16Bが屈曲形成されている。これらの上フランジ16Aと下フランジ16Bは、ロッカアウタパネル14の上フランジ14Aと下フランジ14Bとに、それぞれ溶着されており、ロッカ12は車体前後方向に沿って延びるロッカ閉断面18を有する構造となっている。
【0035】
なお、ロッカインナパネル16の縦壁部16Cにおいては、上部16Dが下部16Eに比べて車幅方向内側へ突出している。
【0036】
図1に示される如く、ロッカインナパネル16の上壁部16Fの後端には、車体上方へ向かって上フランジ16Gが形成されており、この上フランジ16Gがホイルハウスインナ19の前部19Aに溶着されている。
【0037】
ロッカ12の車体後方側には、ロッカ12に対して車体内側へオフセツトされた状態で、リヤフロアサイドメンバ20が車体前後方向に沿って取付けられている。
【0038】
図2に示される如く、リヤフロアサイドメンバ20は、車体前後方向から見た断面が開口部を車幅方向外側へ向けたコ字状とされ、上壁部20Aの車幅方向外側端部には、車体上方側へ屈曲されたフランジ20Bが形成されており、このフランジ20Bは、ホイルハウスインナ19の縦壁部19Bに溶着されている。また、リヤフロアサイドメンバ20の下壁部20Cの車幅方向外側端部には、車体下方側へ屈曲されたフランジ20Dが形成されており、このフランジ20Dは、ホイルハウスインナ19の縦壁部19Bに溶着されている。
【0039】
従って、リヤフロアサイドメンバ20はホイルハウスインナ19とで車体前後方向に沿って延びるリヤサイドメンバ閉断面31を形成している。また、リヤフロアサイドメンバ20の縦壁部20Eの前端部には、車幅方向内側へ屈曲されたフランジ20Fが形成されている。
【0040】
左右のロッカ12間と左右のホイルハウスインナ19間には、フロアパネル26が掛け渡されている。このフロアパネル26の後部26Aは前部26Bに比べて高くなっており、後部26Aと前部26Bの境には縦壁部26Cが形成されている。
【0041】
フロアパネル26の後部26Aの車幅方向外側縁部には、上方へ向けてフランジ26Dが形成されており、フランジ26Dはホイルハウスインナ19の縦壁部19Bに溶着されている。また、フロアパネル26の縦壁部26Cの車幅方向外側縁部には、前方へ向けてフランジ26Eが形成されており、フランジ26Eはホイルハウスインナ19の縦壁部19Bに溶着されている。
【0042】
フロアパネル26の前部26Bの車幅方向外側縁部26Fは、ロッカインナパネル16の縦壁部16Cにおける上部16Dと下部16Eとの境に略水平に形成された下壁部16Lの下面に溶着されている。このため、フロアパネル26の前部26Bの車幅方向外側縁部26Fと、ロッカインナパネル16の下壁部16Lとの溶着接合面が、車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合となっている。
【0043】
また、フロアパネル26の下方側には縦壁部26Cに沿ってクロスメンバ30が車幅方向に取付けられている。
【0044】
図1に示される如く、クロスメンバ30の下壁部30Aは、フロアパネル26の前部26Bの下方に前部26Bと並行に取付けられている。クロスメンバ30の下壁部30Aの前端部には、車体上方に向かって前壁部30Bが形成されており、前壁部30Bの上端部には車体前方へ向ってフランジ30Cが形成されている。クロスメンバ30のフランジ30Cは、フロアパネル26の前部26Bの下面に溶着されている。
【0045】
なお、クロスメンバ30の前端のフランジ30Cは、ホイルハウスインナ19の前端部19Cと車体前後方向において略一致した位置にある。
【0046】
クロスメンバ30の下壁部30Aの後端部には、車体上方に向かって後壁部30Dが形成されており、後壁部30Dはフロアパネル26の縦壁部26Cの後方に並行に取付けられている。クロスメンバ30の後壁部30Dの上部には車体後方へ突出した段部30Eが形成されており、段部30Eの上端部には後方へ向ってフランジ30Fが形成されている。また、クロスメンバ30のフランジ30Fは、フロアパネル26の後部26Aの下面に溶着されている。従って、クロスメンバ30はフロアパネル26とで車幅方向に沿って延びるクロスメンバ閉断面34を形成している。
【0047】
図3に示される如く、クロスメンバ閉断面34の車幅方向から見た断面形状は、クロスメンバ30の下壁部30Aに沿って形成され縦壁部26Cから車体前方へ向って幅広とされた下閉断面部36と、フロアパネル26の後部26Aに沿って形成され縦壁部26Cから車体後方へ向って幅広とされた上閉断面部38と、フロアパネル26の縦壁部26Cに沿って車体上下方向に形成され、下閉断面部36と上閉断面部38を連結する連結閉断面部40とで構成されている。
【0048】
図2に示される如く、クロスメンバ30の前壁部30Bの車幅方向外側端部には車体前方へ向ってフランジ30Gが形成されており、このフランジ30Gは、ロッカインナパネル16の縦壁部16Cの下部16Eに溶着されている。また、クロスメンバ30の下壁部30Aの車幅方向外側端部には下方へ向ってフランジ30Hが形成されており、このフランジ30Hも、ロッカインナパネル16の縦壁部16Cの下部16Eに溶着されている。
【0049】
クロスメンバ30の後壁部30Dと段部30Eの車幅方向外側端部には車体後方へ向ってフランジ30Jが形成されており、このフランジ30Jは、ホイルハウスインナ19の縦壁部19Bに溶着されている。
【0050】
図3に示される如く、クロスメンバ30の段部30Eにおける下壁部30Kの車幅方向両端部30Lの下面には、リヤフロアサイドメンバ20の下壁部20Cの延長された前端部20Gが溶着されており、クロスメンバ30のフランジ30Fにおける車幅方向両端部30Mの下面には、リヤフロアサイドメンバ20の上壁部20Aの前端部20Hが溶着されている。このため、クロスメンバ30の段部30Eにおける下壁部30Kの車幅方向両端部30Lの下面と、リヤフロアサイドメンバ20の下壁部20Cの前端部20Gとの溶着と、クロスメンバ30のフランジ30Fにおける車幅方向両端部30Mの下面とリヤフロアサイドメンバ20の上壁部20Aの前端部20Hとの溶着接合面が車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合となっている。
【0051】
また、リヤフロアサイドメンバ20のフランジ20Fは、クロスメンバ30の段部30Eの後面に溶着されている。
【0052】
従って、図3に示される如く、リヤサイドメンバ閉断面31の前端は、クロスメンバ閉断面34の上閉断面部38に段部30Eを介して連結されている。
【0053】
図2に示される如く、ロッカインナパネル16の後部は、車体後方へ向かって車幅方向内側へ末広がりとなっている。これによって、図4に示される如く、ロッカインナパネル16の後部においては、車体前後方向から見て、ロッカ閉断面18の車幅方向内側上部18Aと、クロスメンバ閉断面34の車幅方向外側上部34Aとが重なっている。また、ロッカインナパネル16の後部においては、車体前後方向から見て、ロッカ閉断面18の車幅方向内側上部18Aと、リヤサイドメンバ閉断面31の車幅方向外側端部とが重なっている。
【0054】
図2に示される如く、ロッカインナパネル16の縦壁部16Cにおける上部16Dの後端には、車幅方向内側へ向かってフランジ16Hが形成されており、図1に示される如く、このフランジ16Hは、フロアパネル26の縦壁部26Cの前面に溶着されている。
【0055】
図2に示される如く、ロッカインナパネル16の縦壁部16Cにおける下部16Eの後端には、車幅方向内側へ向かってフランジ16Kが形成されており、このフランジ16Kは、ホイルハウスインナ19の前部19Aに溶着されている。
【0056】
図2に示される如く、クロスメンバ30の下壁部30Aの車幅方向外側近傍には、車体上方へ矩形状に膨らんだ凸部44が形成されている。この凸部44には、車両懸架装置としてのサスペンションブシュ64の上部が下方側から挿入されており、図1に示される如く、サスペンションブシュ64は、リヤサスペンション63のアーム63Aの前端に取付けられている。
【0057】
図4に示される如く、サスペンションブシュ64は外筒64Aと内筒64Bとの間にゴム材64Cを充填した構成となっており、軸方向を車幅方向にして取付けられている。また、内筒64Bの両端部64Dは板状とされており、両端部64Dの中央部には貫通孔65が穿設されている。
【0058】
この貫通孔65には、車体下方側からボルト66が挿入されている。これらのボルト66は、クロスメンバ30の下壁部30Aに穿設された貫通孔67を挿通し、クロスメンバ30の下壁部30Aの上面に固定されたナット68に締結されている。
【0059】
図1に示される如く、左右のロッカ12の車幅方向内側には、アンダリインフォースメント70が平面視でその長手方向を車幅方向に傾斜して取付けられおり、アンダリインフォースメント70は車体前方の車幅方向内側部から車体後方の車幅方向外側部に向かって取付けられている。
【0060】
図2に示される如く、アンダリインフォースメント70の車体前後方向から見た断面形状は、開口部を上方に向けたハット断面形状となっており、両側壁部70Aの上端部に形成したフランジ70Bがフロアパネル26の前部26Bの下面に溶着されている。
【0061】
従って、アンダリインフォースメント70とフロアパネル26の前部26Bとで車体前方の車幅方向内側部から車体後方の車幅方向外側部に向かって延びるアンダリインフォースメント閉断面72が形成されている。
【0062】
アンダリインフォースメント70の下壁部70Cの後端部70Dは、クロスメンバ30の下壁部30Aの下面におけるサスペンションブシュ64の取付け部位の前方に溶着されている。このため、アンダリインフォースメント70の下壁部70Cの後端部70Dと、クロスメンバ30の下壁部30Aの下面との溶着接合面は車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合となっている。
【0063】
また、アンダリインフォースメント70の両側壁部70Aの後端部には、互いに離間する方向へフランジEが形成されており、これらのフランジ70Eは、クロスメンバ30の前壁部30Bの前面に溶着されている。
【0064】
図5に示される如く、アンダリインフォースメント70の前端部70Fは、フロアパネル26のトンネル部74における側壁部74Aの車幅方向外側近傍に達しており、トンネル部74に沿って車体前方へ向かって屈曲されている。
【0065】
図6に示される如く、フロアパネル26のトンネル部74の車体前後方向から見た断面形状は台形状とされており、左右の側壁部74Aの下端がフロアパネル26の基部26Gに連続している。また、フロアパネル26の基部26Gの下面側には、トンネルリインフォースメント78が車体前後方向に沿って取付けられており、トンネルリインフォースメント78はトンネル部74の車幅方向両側に取付けられている。
【0066】
トンネルリインフォースメント78の車体前後方向から見た断面形状は、開口部を上方へ向けたコ字状になっている。トンネルリインフォースメント78の車幅方向内側側壁部78Aの上端部78Bは、トンネル部74の側壁部74Aにおける下部の車幅方向内側面74Bに溶着されている。トンネルリインフォースメント78の車幅方向外側側壁部78Bの上端部には、車幅方向外側に向かってフランジ78Dが形成されており、このフランジ78Dは、フロアパネル26の基部26Gの下面に溶着されている。従って、フロアパネル26とトンネルリインフォースメント78とで車体前後方向に沿って延びるトンネルリインフォースメント閉断面80が形成されている。
【0067】
アンダリインフォースメント70の前端部70Fは、トンネルリインフォースメント閉断面80内に挿入されており、アンダリインフォースメント70の前端部70Fの車体前後方向から見た断面形状は、開口部を上方へ向けたコ字状になっている。アンダリインフォースメント70の前端部70Fの車幅方向内側側壁部70Gは、トンネルリインフォースメント78の車幅方向内側側壁部78Aに溶着されており、アンダリインフォースメント70の前端部70Fの下壁部70Hは、トンネルリインフォースメント78の下壁部78Eに溶着されている。また、アンダリインフォースメント70の前端部70Fの車幅方向外側側壁部70Jは、トンネルリインフォースメント78の車幅方向外側側壁部78Cに溶着されており、アンダリインフォースメント70の前端部70Fにおける車幅方向外側側壁部70Jの上端部に車幅方向外側に向けて形成されたフランジ70Kは、トンネルリインフォースメント78のフランジ78Dとフロアパネル26の基部26Gとの間に溶着されている。
【0068】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0069】
本実施形態では、車両後突時に車体後方からリヤフロアサイドメンバ20へ入力した荷重(図1の矢印F1)は、リヤサイドメンバ閉断面31に沿って車体前方へと伝わり、クロスメンバ閉断面34の上閉断面部38へ伝達される。ここで、図3に示される如く、クロスメンバ閉断面34は、クロスメンバ閉断面34の上部において車体後方に幅広とされた上閉断面38と、クロスメンバ閉断面34の下部において車体前方に幅広とされた下閉断面36と、上閉断面38と下閉断面36とを連結する連結閉断面40とからなる。
【0070】
このため、図4に示される如く、クロスメンバ閉断面34の下閉断面36の上方が、乗員の足80を納める車室足元スペースとなる。また、図3に示される如く、リヤサイドメンバ20とロッカ12との結合部となるクロスメンバ閉断面34が側面視で屈曲した大きな閉断面になり、リヤサイドメンバ20とロッカ12との結合部の充分な剛性を維持できる。
【0071】
また、図4に示される如く、リヤサイドメンバ閉断面31の車体前方への延長線上となる部位には、クロスメンバ閉断面34を挟んでロッカ閉断面18の車幅方向内側上部18Aが形成されている。
【0072】
この結果、図1及び図3に示される如く、リヤサイドメンバ閉断面31からクロスメンバ閉断面34に入力した荷重F1の一部F2は、リヤサイドメンバ閉断面31から車体前後方向に対して直線的にロッカ閉断面18に伝達される。このため、リヤサイドメンバ閉断面31からの荷重をロッカ閉断面18に効率良く伝達できる。
【0073】
また、クロスメンバ閉断面34の下閉断面部36には、アンダリインフォースメント70とフロアパネル26とにより形成されたアンダリインフォースメント閉断面72の後端部が連結されている。
【0074】
この結果、荷重F1の一部F3は、クロスメンバ閉断面34を介してアンダリインフォースメント閉断面72に伝達される。このため、アンダリインフォースメント閉断面72によって、荷重F3を車幅方向中央部のトンネルリインフォースメント78に伝達でき、荷重入力側に対して車体の車幅方向反対側にも伝達できる。このため、荷重集中による荷重入力側の変形を抑制できる。
【0075】
このように、本実施形態では、従来構造のように車室内足元スペースを狭くすること無く、車両後突時の荷重分散を効果的に行なうことができる。また、車室内足元スペースが広いため、車室の居住性及び車室への乗降性を向上できる。
【0076】
また、本実施形態では、図3に示される如く、車両後突時または車両走行時にリヤタイヤからリヤサスペンション63を伝わってくる荷重F4が、サスペンションブシュ64からクロスメンバ閉断面34の下閉断面部36に伝達され、サスペンションブシュ64の直前において、下閉断面部36に結合されたアンダリインフォースメント閉断面72に伝達される。この結果、リヤタイヤからサスペンションアーム63を伝わってくる荷重をロッカ閉断面18とアンダリインフォースメント閉断面72とに分散できると共に、アンダリインフォースメント閉断面72によってトンネルリインフォースメント78に伝達でき、荷重入力側に対して車体の車幅方向反対側に伝達できる。このため、荷重集中による荷重入力側の変形を抑制できる。また、アンダリインフォースメント閉断面72を形成したことで、車体の捩じり剛性も高くなる。
【0077】
また、本実施形態では、フロアパネル26の前部26Bの車幅方向外側縁部26Fと、ロッカインナパネル16の下壁部16Lとの溶着接合面が車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合となっている。また、クロスメンバ30の段部30Eにおける下壁部30Kの車幅方向両端部30Lの下面と、リヤフロアサイドメンバ20の下壁部20Cの前端部20Gとの溶着接合面、クロスメンバ30のフランジ30Fにおける車幅方向両端部30Mの下面とリヤフロアサイドメンバ20の上壁部20Aの前端部20Hとの溶着接合面、及びアンダリインフォースメント70の下壁部70Cの後端部70Dと、クロスメンバ30の下壁部30Aの下面との溶着接合面、が車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合となっている。
【0078】
この結果、車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合となっているこれらの結合部を介して、圧縮荷重のみならず車体前後方向と車幅方向の引張り荷重が伝達される。このため、圧縮荷重のみならず、車体前後方向と車幅方向の引張り荷重を効果的に伝達できる。
【0079】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、車両懸架装置はサスペンションブシュ64に限定されず、リヤタイヤを支持する他の車両懸架装置であっても良い。
【0080】
また、本発明における車両のアンダボデー構造は、車体前部にも適用可能である。
【0081】
また、図3に2点鎖線で示される如く、クロスメンバ30の段部30Eを無くし、クロスメンバ閉断面34の形状を逆L字状とし、クロスメンバ閉断面34の上端後部にリヤサイドメンバ閉断面31を連結した構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のアンダボデー構造を示す車体斜め前方内側から見た斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両のアンダボデー構造を示す車体斜め前方内側から見た図1の分解斜視図である。
【図3】図1の3−3線に沿った拡大断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両のアンダボデー構造におけるアンダリインフォースメントの前部を示す車体斜め後方から見た斜視図である。
【図6】図5の6−6線に沿った拡大断面斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
12 ロッカ
18 ロッカ閉断面
20 リヤフロアサイドメンバ
26 フロアパネル
30 クロスメンバ
31 リヤサイドメンバ閉断面
34 クロスメンバ閉断面(クロスメンバの閉断面)
36 クロスメンバ閉断面の下閉断面部
38 クロスメンバ閉断面の上閉断面部
40 クロスメンバ閉断面の連結閉断面部
63 リヤサスペンション
64 サスペンションブシュ(車両懸架装置)
70 アンダリインフォースメント
72 アンダリインフォースメント閉断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に沿って延びる閉断面を備え、この閉断面は、下部において車体前後方向内方に幅広とされた下閉断面と、前記下閉断面の車体前後方向外側部に連結され上方へ延びる連結閉断面とを備えたクロスメンバを有することを特徴とする車両のアンダボデー構造。
【請求項2】
車幅方向に沿って延びる閉断面を備え、この閉断面は、上部において車体前後方向外方に幅広とされた上閉断面と、下部において車体前後方向内方に幅広とされた下閉断面と、前記上閉断面と前記下閉断面とを連結する連結閉断面とを備えたクロスメンバを有することを特徴とする車両のアンダボデー構造。
【請求項3】
車体前後方向に沿って延びるロッカ閉断面を備えるロッカと、
前記ロッカ閉断面の車体前後方向外側に車体前後方向に沿って延びるサイドメンバ閉断面を備えるサイドメンバと、
車幅方向に沿って延び、前記ロッカ閉断面に連結する閉断面を備え、この閉断面は、上部において車体前後方向外方に幅広とされた上閉断面と、下部において車体前後方向内方に幅広とされた下閉断面と、前記上閉断面と前記下閉断面とを連結する連結閉断面とを備え、前記サイドメンバ閉断面が前記上閉断面に連結されたクロスメンバと、
を有することを特徴とする車両のアンダボデー構造。
【請求項4】
車体前後方向に沿って延びるロッカ閉断面を備えるロッカと、
前記ロッカ閉断面の後方に車体前後方向に沿って延びるリヤサイドメンバ閉断面を備えるリヤサイドメンバと、
車幅方向に沿って延び、前記ロッカ閉断面に連結する閉断面を備え、この閉断面は、上部において車体後方に幅広とされた上閉断面と、下部において車体前方に幅広とされた下閉断面と、前記上閉断面と前記下閉断面とを連結する連結閉断面とを備え、前記リヤサイドメンバ閉断面が前記上閉断面に連結されたクロスメンバと、
を有することを特徴とする車両のアンダボデー構造。
【請求項5】
車幅方向に傾斜して延びるアンダリインフォースメント閉断面を備え、後端部が前記下閉断面に連結されたアンダリインフォースメントを有することを特徴とする請求項4に記載の車両のアンダボデー構造。
【請求項6】
前記下閉断面に連結された車両懸架装置を有することを特徴とする請求項5に記載の車両のアンダボデー構造。
【請求項7】
前記ロッカ閉断面の後部が、車体前後方向から見て前記リヤサイドメンバ閉断面と重なる位置で前記上閉断面と連結していることを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の車両のアンダボデー構造。
【請求項8】
前記ロッカと前記クロスメンバの閉断面との接合部、前記リヤサイドメンバと前記クロスメンバの閉断面との接合部、前記アンダリインフォースメントと前記クロスメンバの閉断面との接合部、の少なくとも一つの接合面が車体前後方向と車幅方向に対して剪断方向の結合であることを特徴とする請求項4〜7の何れか1項に記載の車両のアンダボデー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−82779(P2006−82779A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271951(P2004−271951)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】