説明

車両のインレットボックスの取付け構造

【課題】本発明は、アウタパネルの内側からインレットボックスをそのアウタパネルにネジ止めする際のインレットボックスのネジ止め効率を向上させること。また、ネジ止め効率を向上させることで、インレットボックスの交換等が困難にならないようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車両のインレットボックスの取付け構造では、インレットボックス20の外周面に、そのインレットボックス20のフランジ部21fがアウタパネル2の穴部2jの周縁2fに外側からセットされた状態で、アウタパネル2の内側から穴部2jの周縁2fに係合する係合爪220が形成されており、係合爪220は、アウタパネル2の内側からの係合解除操作により穴部2jの周縁2fから外れるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のアウタパネルの窪みに形成された穴部からインレットボックスを挿入し、そのインレットボックスの開口周縁に形成されているフランジ部を前記穴部の周縁に外側から重ね、前記インレットボックスのフランジ部を前記穴部の周縁にネジ止めする車両のインレットボックスの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した車両のインレットボックスの取付け構造に関する技術が特許文献1に記載されている。
前記車両のインレットボックスの取付け構造では、先ず、図14に示すように、車両のアウタパネル101の窪みに形成された穴部103からインレットボックス110の円筒部113を挿入する。そして、インレットボックス110の開口周縁に形成されているフランジ部114を前記穴部103の周縁102に外側から重ねる。次に、この状態で、インレットボックス110のフランジ部114をアウタパネル101の外側から穴部103の周縁102にネジ止めする。これにより、アウタパネル101に対するインレットボックス110の取付けが終了する。
なお、アウタパネル101には、ヒンジ機構(図示省略)を介してアウタパネル101の窪みを塞げるように構成された蓋部(図示省略)が連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−125949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、インレットボックス110のフランジ部114が外側からアウタパネル101の穴部103の周縁102にネジ止めされる構成では、前記蓋部(図示省略)が開かれた状態でインレットボックス110の取り外しが容易になる。このため、盗難防止の観点から好ましくない。
また、前記蓋部が開かれた状態でネジの頭部が見えるため、見栄えも低下する。
上記問題点を解決するために、アウタパネル101の内側からインレットボックス110のフランジ部114をアウタパネル101の穴部103の周縁102にネジ止めする方法が考えられる。しかし、インレットボックス110は、一般的にアウタパネル101の側面に取付けられる構成のため、ネジ止めの際にインレットボックス110に対して外に押されるような力が加わると、そのインレットボックス110がアウタパネル101から外れることがある。また、インレットボックス110がネジ止め位置からずれてしまうことがある。このため、作業効率が悪い。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、アウタパネルの内側からインレットボックスをそのアウタパネルにネジ止めする際のインレットボックスのネジ止め効率を向上させること。また、ネジ止め効率を向上させることで、インレットボックスの交換等が困難にならないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車両のアウタパネルの窪みに形成された穴部からインレットボックスを挿入し、そのインレットボックスの開口周縁に形成されているフランジ部を前記穴部の周縁に外側からセットし、前記アウタパネルの内側から前記インレットボックスのフランジ部を前記穴部の周縁にネジ止めする車両のインレットボックスの取付け構造であって、前記インレットボックスの外周面には、そのインレットボックスのフランジ部が前記穴部の周縁に外側からセットされた状態で、前記アウタパネルの内側から前記穴部の周縁に係合する係合爪が形成されており、前記係合爪は、前記アウタパネルの内側からの係合解除操作により前記穴部の周縁から外れるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、インレットボックスのフランジ部がアウタパネルの穴部の周縁に外側からセットされた状態で、インレットボックスの外周面の係合爪がアウタパネルの内側から前記穴部の周縁に係合するようになる。
このため、アウタパネルの内側からインレットボックスのフランジ部をそのアウタパネルの穴部の周縁にネジ止めする際、インレットボックスに対して外に押す力が加わっても、前記インレットボックスがアウタパネルから外れたり、位置ずれを起こすことがない。したがって、アウタパネルに対するインレットボックスのネジ止め効率が向上するようになる。
さらに、インレットボックスの係合爪は、アウタパネルの内側からの係合解除操作により穴部の周縁から外れるように構成されている。このため、前記インレットボックスの交換時等に係合爪がインレットボックスの取り外しを妨げることがない。
【0008】
請求項2の発明によると、アウタパネルの穴部の周縁には位置決め孔が形成されており、インレットボックスのフランジ部には前記位置決め孔に挿通される湾曲位置決めピンが設けられており、前記湾曲位置決めピンは、前記アウタパネルの穴部に対する前記インレットボックスの挿入軌跡に合わせて湾曲していることを特徴とする。
このため、インレットボックスの湾曲位置決めピンをアウタパネルの位置決め孔に通すことで、インレットボックスを正しい挿入軌跡でアウタパネルの穴部に挿入できるようになる。したがって、インレットボックスの形状が複雑な場合でも、インレットボックスをアウタパネルにセットし易くなる。また、アウタパネル表面の疵付きも防止できるようになる。
【0009】
請求項3の発明によると、インレットボックスには、そのインレットボックスの開口を開閉する蓋部がヒンジ機構を介して連結されており、前記ヒンジ機構を構成するヒンジピンと前記蓋部のヒンジ孔間は突条と溝部の嵌合により回り止めがなされ、さらに前記蓋部を所定位置に保持するバネ力が前記ヒンジピンに対して加わる構成であり、前記ヒンジピンの回転方向において係合する突条の側面と溝部の側面とは、回転トルクに対して垂直に設けられていることを特徴とする。
このため、バネによる回転力をヒンジピンから蓋部に伝達する際に、前記突条の側面と溝部の側面間で半径方向の滑り、あるいはガタが発生せず、前記回転力が効率的に伝わるようになる。したがって、前記突条と溝部の嵌合部分で磨耗が生じ難くなる。
請求項4の発明によると、インレットボックス内には、車両のバッテリを充電する際に電源側コネクタが接続される充電用コネクタが収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、アウタパネルの内側からインレットボックスをそのアウタパネルにネジ止めする際のインレットボックスのネジ止め効率が向上する。また、ネジ止め効率が向上しても、インレットボックスが交換し難くなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係るインレットボックスの取付け構造を備える車両の斜視図である。
【図2】本実施形態に係るインレットボックスアッセンブリを表側から見た斜視図である。
【図3】車両のアウタパネル、及び前記インレットボックスアッセンブリを車両内側から見た斜視図である。
【図4】前記インレットボックスの裏側を前上方から見た斜視図である。
【図5】前記インレットボックスの裏側を後下方から見上げた斜視図である。
【図6】図4のVI矢視拡大図である。
【図7】図5のVII矢視拡大図である。
【図8】本実施形態に係るインレットボックスアッセンブリの平断面図、及びインレットボックスの取付け構造を現す平断面図である。
【図9】図8のIX矢視拡大図である。
【図10】前記インレットボックスと蓋部とを連結するヒンジ機構を表す平断面図である。
【図11】ヒンジ機構のヒンジピンと蓋部側のヒンジ孔とを表す斜視図である。
【図12】ヒンジ機構のヒンジピンと蓋部側のヒンジ孔との回り止め機構を表す断面図である。
【図13】インレットボックスアッセンブリをアウタパネルにセットする手順を表す側面図である(A図、B図、C図)。
【図14】従来の車両のインレットボックス取付け構造を表す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、図1から図13に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のインレットボックスの取付け構造について説明する。
本実施形態に係る車両のインレットボックスの取付け構造は、ハイブリッド車や電気自動車等の充電コネクタが装着される樹脂製のインレットボックスアッセンブリをそれらの車両のアウタパネルに取付けるための構造である。
ここで、図中の前後左右、及び上下は、前記インレットボックスアッセンブリを備える車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0013】
<インレットボックスアッセンブリ10について>
インレットボックスアッセンブリ10は、図2、図8等に示すように、樹脂製のインレットボックス20と、そのインレットボックス20の開口22を開閉する樹脂製の蓋部30と、前記インレットボックス20に対して蓋部30を回動可能な状態で連結するヒンジ機構40とから構成されている。
そして、インレットボックスアッセンブリ10を構成するインレットボックス20が、図1、図3に示すように、車両のアウタパネル2の側面所定位置に取付けられる。
【0014】
<インレットボックス20について>
インレットボックス20は、図4、図5、図8等に示すように、充電コネクタ50(図8参照)を収納するボックス本体部21と、そのボックス本体部21の側面前部から前方に張り出す前方張出し部23とから構成されている。ボックス本体部21は略カップ状に形成されており、そのボックス本体部21の開口22(図8参照)の周縁に円形のフランジ部21f(図4、図5参照)が形成されている。そして、前記フランジ部21fの周縁に沿ってゴム製のシール材21eが装着されている。また、ボックス本体部21の底部21bには、そのボックス本体部21に収納された充電コネクタ50に接続されるケーブル(図示省略)が通される床面開口21hが形成されている。
【0015】
ボックス本体部21のフランジ部21fの裏側には、図3〜図5に示すように、インレットボックス20を車両のアウタパネル2に取付けるためのボルト215がそのフランジ部21fの裏面に対してほぼ直角に突出するように形成されている。ボルト215は、図4、図5に示すように、ボックス本体部21の上側と下側とに二本づつ配置されるように、フランジ部21fの周方向に約90°間隔で設けられている。
また、車両のアウタパネル2には、図1、図3等に示すように、インレットボックスアッセンブリ10の蓋部30等が収納される円形の窪み2kが形成されており、その窪み2kの底の位置にインレットボックス20が挿入される略十字形の穴部2jが形成されている。そして、前記穴部2jの周縁2f、即ち、窪み2kの底の位置に、図3に示すように、インレットボックス20のフランジ部21fに設けられた四本のボルト215がそれぞれ挿通されるボルト孔2bが形成されている。これにより、インレットボックス20は、四本のボルト215がアウタパネル2のボルト孔2bに通され、アウタパネル2の内側から各々のボルト215にナットNが締め付けられることで、車両に取付けられる。
【0016】
インレットボックス20(ボックス本体部21)のフランジ部21fの裏側には、図4、図6等に示すように、前側上部のボルト215の後側位置に湾曲位置決めピン216が形成されている。また、前記フランジ部21fの裏側には、図5に示すように、後側下部のボルト215の前側位置に補助位置決めピン217が形成されている。
湾曲位置決めピン216、及び補助位置決めピン217は、アウタパネル2のボルト孔2bに対するインレットボックス20(ボックス本体部21)のボルト215の位置決めを行うためのピンであり、図3に示すように、前記アウタパネル2の穴部2jの周縁2fに形成された第1位置決め孔2x、第2位置決め孔2yにそれぞれ通されるようになっている。即ち、湾曲位置決めピン216は、インレットボックス20がアウタパネル2の穴部2jに挿入される初期段階から第1位置決め孔2xに通されるように所定長さ寸法で形成されており、そのインレットボックス20の挿入軌跡(後記する)に一致するように湾曲している。
また、補助位置決めピン217は、インレットボックス20の挿入終了時、即ち、そのインレットボックス20のフランジ部21fのボルト215がアウタパネル2の穴部2jの周縁2fに形成されたボルト孔2bに通される直前に第2位置決め孔2yに通されるように構成されている。
【0017】
インレットボックス20のボックス本体部21には、図5、図7等に示すように、そのボックス本体部21の後端位置に係合爪220が形成されている。係合爪220は、インレットボックス20がアウタパネル2の穴部2jに挿入されて、そのインレットボックス20のフランジ部21fがアウタパネル2の穴部2jの周縁2fに外側からセットされた状態で、前記インレットボックス20がアウタパネル2から外れるのを防止する爪である。即ち、インレットボックス20のフランジ部21fのボルト215、湾曲位置決めピン216、補助位置決めピン217がアウタパネル2のボルト孔2b、第1位置決め孔2x、第2位置決め孔2yにそれぞれ挿通させられた状態で、前記係合爪220はそのアウタパネル2の内側からアウタパネル2の穴部2jの周縁2fに係合可能なように構成されている。
【0018】
係合爪220は、図7、図9等に示すように、インレットボックス20(ボックス本体部21)の後端位置でフランジ部21f側が開放されるように断面略U字形の溝状に形成された爪支持部222(図9参照)と、その爪支持部222の後端壁部222bからコ字形に切り離されて、溝の底部分で前記爪支持部222と一体化されている爪本体224とから構成されている。そして、樹脂の弾性により、爪本体224は、図9に示すように、爪支持部222の溝の底部分近傍を中心にしてボックス本体部21の半径方向外側、あるいは内側に湾曲が可能となる。また、爪本体224の先端、即ち、湾曲中心から最も離れた部位には、フランジ部21fと平行にエッジ部225が形成されている。そして、爪本体224のエッジ部225がアウタパネル2の内側からそのアウタパネル2の穴部2jの周縁2fに係合可能となっている。
ここで、図9の二点鎖線に示すように、手動操作で爪本体224を弾性力に抗してボックス本体部21の半径方向内側に湾曲させることにより、その爪本体224のエッジ部225をアウタパネル2の穴部2jの周縁2fから外すことができる。なお、インレットボックス20をアウタパネル2の穴部2jに挿入する際には、爪本体224が穴部2jの縁を摺動することで、その爪本体224が弾性力に抗して二点鎖線の位置まで弾性変形するようになる。
【0019】
インレットボックス20の前方張出し部23は、ボックス本体部21側で開放した略角形の袋状に形成されている。そして、インレットボックス20の前方張出し部23内に、図8に示すように、インレットボックスアッセンブリ10の蓋部30を構成する平面略U字形のヒンジレバー35がヒンジ機構40の回動中心回りに回動可能なように収納されている。
また、インレットボックス20の前方張出し部23の前端右側には、図4、図5に示すように、上壁部と下壁部とにヒンジ機構40のヒンジピン41を構成する大径筒部433とピン本体部41uの先端部とがそれぞれ通される上側軸受部23jと下側軸受部23kとが形成されている。
【0020】
<蓋部30について>
蓋部30は、図2、図8に示すように、インレットボックス20のフランジ部21fと同軸位置に配置された状態で、そのインレットボックス20の開口22を塞ぐ円板状の蓋本体32と、上記したように、ヒンジ機構40を介して蓋本体32をインレットボックス20に連結するヒンジレバー35とから構成されている。蓋本体32は、インレットボックス20のフランジ部21fとほぼ等しい外径寸法に設定されており、アウタパネル2の円形の窪み2kに収納されるように構成されている。蓋本体32は、図8等に示すように、表面板部32fと裏面板部32uとが合わせられることにより構成されている。そして、裏面板部32uの中央位置に充電コネクタ50のカバー部32cが形成されている。また、裏面板部32uの前端部分にヒンジレバー35の回動自由端側が連結されている。
【0021】
<ヒンジ機構40について>
ヒンジ機構40は、インレットボックス20に対して蓋部30をほぼ水平に回動可能な状態で連結する機構である。ヒンジ機構40は、図11に示すように、ヒンジピン41と、そのヒンジピン41の基端部に相対回転不能な状態で形成された板状レバー43と、図4等に示すように、前記板状レバー43とインレットボックス20の前方張出し部23間に設けられたコイルバネ45とから構成されている。
ヒンジピン41は、図11に示すように、ピン本体部41uと筒状部430とから構成されており、ピン本体部41uの基端部が筒状部430と一体化されている。筒状部430は、先端側に位置する小径の回り止め部435と、基端部側に位置する大径の大径筒部433とから構成されている。そして、前記回り止め部435の外周面に軸方向に延びる一本の突条435tが形成されている。突条435tは、図12に示すように、円周方向における一端面435sと他端面435uとがヒンジピン41の回転中心Oを中心とする仮想半径線Rと重なるように形成されている。即ち、突条435tは、図12に示すように、横断面形状が略扇形に形成されている。
板状レバー43は、図11に示すように、二つの円板が連続した略瓢箪形の板状部材であり、その板状レバー43を構成する一方の円板がヒンジピン41の大径筒部433と一体化されている。
【0022】
蓋部30のヒンジレバー35の基端部には、図11に示すように、ヒンジ機構40のヒンジピン41のピン本体部41uが通される貫通孔35kと、回り止め部435が通される回り止め孔35xが形成されている。そして、ヒンジレバー35の回り止め孔35xにヒンジピン41の回り止め部435の突条435tが軸方向から嵌合される溝部35zが形成されている。前記溝部35zの円周方向における一側面351と他側面352は、図12に示すように、ヒンジピン41の回転中心Oを中心とする仮想半径線Rと重なるように形成されており、ヒンジピン41(回り止め部435)の突条435tの一端面435sと他端面435uとが面接触可能なように構成されている。
即ち、ヒンジピン41の回り止め部435の突条435tと、ヒンジレバー35の回り止め孔35xの溝部35zとは円周方向において係合しており、前記突条435tの側面(一端面435s、他端面435u)と溝部35zの側面(一側面351、他側面352)とは回転トルクに対して垂直に設けられている。
【0023】
<インレットボックスアッセンブリ10の組立について>
次に、インレットボックスアッセンブリ10の組立について説明する。
先ず、図8に示すように、インレットボックス20の開口22から蓋部30のヒンジレバー35をインレットボックス20の前方張出し部23の位置まで挿入する。次に、蓋部30のヒンジレバー35の貫通孔35k、回り止め孔35xをインレットボックス20の前方張出し部23に設けられた下側軸受部23kと上側軸受部23jに同軸に保持する。この状態で、インレットボックス20の上側軸受部23j側からヒンジ機構40のヒンジピン41を挿入する。これにより、ヒンジピン41のピン本体部41uがヒンジレバー35の貫通孔35kに通され、さらに、図5に示すように、ピン本体部41uの先端部がインレットボックス20の下側軸受部23kに通されるようになる。また、ヒンジピン41の回り止め部435が蓋部30のヒンジレバー35の回り止め孔35xに通されて、図12に示すように、回り止め部435の突条435tが回り止め孔35xの溝部35zと嵌合する。さらに、ヒンジピン41の大径筒部433が、図4に示すように、インレットボックス20の上側軸受部23jに通されるようになる。これにより、蓋部30のヒンジレバー35とヒンジピン41は、インレットボックス20の上側軸受部23jと下側軸受部23kを中心に回動が可能になる。
【0024】
次に、図4に示すように、ヒンジ機構40の板状レバー43とインレットボックス20の前方張出し部23間にコイルバネ45が装着される。コイルバネ45は、蓋部30に対してインレットボックス20の開口22を全閉させる方向の回転力と、前記開口22を全開させる方向の回転力を付与できるように構成されている。前述のように、ヒンジピン41の回り止め部435と蓋部30の回り止め孔35xは突条435tと溝部35zの嵌合により回り止めがなされている。このため、コイルバネ45のバネ力(回転力)は、板状レバー43、ヒンジピン41の回り止め部435から突条435t、溝部35zを介して蓋部30に加わるようになる。ここで、ヒンジピン41の回転方向において係合する突条435tの側面(一端面435s、他端面435u)と溝部35zの側面(一側面351、他側面352)とは、回転力(回転トルク)に対して垂直に設けられている。
このため、コイルバネ45による回転力を板状レバー43、ヒンジピン41から蓋部30に伝達する際に、前記突条435tの一端面435s、他端面435uと溝部35zの一側面351、他側面352間で半径方向の滑り、あるいはガタが発生せず、前記回転力が効率的に伝わるようになる。したがって、前記突条435tと溝部35zの嵌合部分で磨耗が生じ難くなる。
即ち、蓋部30の回り止め孔35xが本発明のヒンジ孔に相当する。
【0025】
<車両のアウタパネル2に対するインレットボックスアッセンブリ10の取付けについて>
次に、車両のアウタパネル2に対するインレットボックスアッセンブリ10の取付けについて説明する。
インレットボックスアッセンブリ10をアウタパネル2に取付ける場合には、先ず、インレットボックスアッセンブリ10を傾斜させた状態でインレットボックス20の前方張出し部23をアウタパネル2の穴部2jに挿入する。次に、図13(A)に示すように、インレットボックス20のフランジ部21fに形成された湾曲位置決めピン216の先端をアウタパネル2の穴部2jの周縁2fに形成された第1位置決め孔2xに通す。そして、図13(B)(C)に示すように、湾曲位置決めピン216を第1位置決め孔2xに通しながらインレットボックス20をアウタパネル2の穴部2jに挿入する。また、挿入過程で、インレットボックス20のフランジ部21fの補助位置決めピン217をアウタパネル2の穴部2jの周縁2fに形成された第2位置決め孔2yに通すことで、フランジ部21fのボルト215と穴部2jの周縁2fのボルト孔2bとの位置合わせができるようになる。次に、フランジ部21fのボルト215を穴部2jの周縁2fのボルト孔2bに通すことで、図8に示すように、インレットボックス20のフランジ部21fと蓋部30の蓋本体32がアウタパネル2の円形の窪み2kに収納される。
【0026】
また、インレットボックス20のフランジ部21fをアウタパネル2の穴部2jの周縁2fにセットする際に、インレットボックス20の係合爪220の爪本体224を穴部2jの縁に摺動させながら弾性力に抗して半径方向内側に変形させ、その穴部2jを通過させる(図9の二点鎖線参照)。これにより、インレットボックス20の係合爪220の爪本体224が前記穴部2jを通過した後、弾性力で半径方向外側に変形し(図9の実線部参照)、その爪本体224のエッジ部225がアウタパネル2の内側から穴部2jの周縁2fに係合するようになる。
次に、図3に示すように、インレットボックス20のフランジ部21fの各ボルト215に対してアウタパネル2の内側からナットNを締め付けて、インレットボックスアッセンブリ10をアウタパネル2に取付ける。このとき、インレットボックス20に対して外側に押し出す方向の力が加わっても、インレットボックス20の爪本体224のエッジ部225がアウタパネル2の穴部2jの周縁2fに係合することで、アウタパネル2に対するインレットボックス20の外れ、あるいは位置ずれ防止を図ることができる。
【0027】
<本実施形態に係るインレットボックス20の取付け構造の長所について>
本実施形態に係るインレットボックス20の取付け構造によると、インレットボックス20のフランジ部21fがアウタパネル2の穴部2jの周縁2fに外側からセットされた状態で、インレットボックス20の外周面の係合爪220がアウタパネル2の内側から穴部2jの周縁2fに係合するようになる。
このため、アウタパネル10の内側からインレットボックス20のフランジ部21fをそのアウタパネル2の穴部2jの周縁2fにネジ止めする際、インレットボックス20に対して外に押す力が加わっても、インレットボックス20がアウタパネル2から外れたり、位置ずれを起こすことがない。したがって、アウタパネル2に対するインレットボックス20のネジ止めの効率が向上する。
さらに、インレットボックス20の係合爪220は、アウタパネル2の内側からの係合解除操作により穴部2jの周縁2fから外れるように構成されている。このため、インレットボックス20の交換時等に係合爪220がインレットボックス20の取り外しを妨げることがない。
【0028】
また、アウタパネル2の穴部2jの周縁2fには第1位置決め孔2xが形成されており、インレットボックス20のフランジ部21fには第1位置決め孔2xに挿通される湾曲位置決めピン216が設けられており、その湾曲位置決めピン216がインレットボックス20の挿入軌跡に合わせて湾曲している。 このため、インレットボックス20の湾曲位置決めピン216をアウタパネル2の第1位置決め孔2xに通すことで、インレットボックス20を正しい挿入軌跡でアウタパネル2の穴部2jに挿入できるようになる。したがって、インレットボックス20の形状が複雑な場合でも、インレットボックス20をアウタパネル2にセットし易くなる。
【0029】
また、インレットボックス20には、そのインレットボックス20の開口22を開閉する蓋部30がヒンジ機構40を介して連結されており、前記ヒンジ機構40の板状レバー43の回り止め部435(ヒンジピン)と蓋部30の回り止め孔35x(ヒンジ孔)は突条435tと溝部35zの嵌合により回り止めがなされている。さらに蓋部30を所定位置(全閉位置、全開位置)に保持するコイルバネ45のバネ力(回転力)は、板状レバー43の回り止め部435から突条435t、溝部35zを介して蓋部30に加わるようになる。ここで、板状レバー43の回り止め部435の回転方向において係合する突条435tの側面(一端面435s、他端面435u)と溝部35zの側面(一側面351、他側面352)とは、回転力(回転トルク)に対して垂直に設けられている。
このため、コイルバネ45による回転力をヒンジ機構40の回り止め部435(ヒンジピン)から蓋部30に伝達する際に、前記突条435tの一端面435s、他端面435uと溝部35zの一側面351、他側面352間で半径方向の滑り、あるいはガタが発生せず、前記回転力が効率的に伝わるようになる。したがって、前記突条435tと溝部35zの嵌合部分で磨耗が生じ難くなる。
【0030】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、インレットボックス20の後端位置に係合爪220を一セット設ける例を示したが、前記係合爪220をインレットボックス20の周方向に複数セット設けることも可能である。
また、板状レバー43の回り止め部435(ヒンジピン)の突条435tと、蓋部30の回り止め孔35x(ヒンジ孔)の溝部35zとを円周方向に一セット設ける例を示したが、突条435tと溝部35zとを円周方向に複数セット設けることも可能である。
また、本実施形態では充電コネクタ50を備えるインレットボックス20に本発明を適用する例をしめしたが、フューエルインレットボックスに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0031】
20・・・・インレットボックス
21f・・・フランジ部
216・・・湾曲位置決めピン
22・・・・開口
30・・・・蓋部
35z・・・溝部
351・・・一側面
352・・・他側面
41・・・・ヒンジピン
435・・・回り止め部
435t・・突条
435s・・一端面
435u・・他端面
45・・・・コイルバネ
220・・・係合爪
224・・・爪本体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアウタパネルの窪みに形成された穴部からインレットボックスを挿入し、そのインレットボックスの開口周縁に形成されているフランジ部を前記穴部の周縁に外側からセットし、前記アウタパネルの内側から前記インレットボックスのフランジ部を前記穴部の周縁にネジ止めする車両のインレットボックスの取付け構造であって、
前記インレットボックスの外周面には、そのインレットボックスのフランジ部が前記穴部の周縁に外側からセットされた状態で、前記アウタパネルの内側から前記穴部の周縁に係合する係合爪が形成されており、
前記係合爪は、前記アウタパネルの内側からの係合解除操作により前記穴部の周縁から外れるように構成されていることを特徴とする車両のインレットボックスの取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のインレットボックスの取付け構造であって、
前記アウタパネルの穴部の周縁には位置決め孔が形成されており、
前記インレットボックスのフランジ部には前記位置決め孔に挿通される湾曲位置決めピンが設けられており、
前記湾曲位置決めピンは、前記アウタパネルの穴部に対する前記インレットボックスの挿入軌跡に合わせて湾曲していることを特徴とする車両のインレットボックスの取付け構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両のインレットボックスの取付け構造であって、
前記インレットボックスには、そのインレットボックスの開口を開閉する蓋部がヒンジ機構を介して連結されており、
前記ヒンジ機構を構成するヒンジピンと前記蓋部のヒンジ孔間は突条と溝部の嵌合により回り止めがなされ、さらに前記蓋部を所定位置に保持するバネ力が前記ヒンジピンに対して加わる構成であり、
前記ヒンジピンの回転方向において係合する突条の側面と溝部の側面とは、回転トルクに対して垂直に設けられていることを特徴とする車両のインレットボックスの取付け構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車両のインレットボックスの取付け構造であって、
前記インレットボックス内には、車両のバッテリを充電する際に電源側コネクタが接続される充電用コネクタが収納されていることを特徴とする車両のインレットボックスの取付け構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−240443(P2012−240443A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109342(P2011−109342)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】