説明

車両のカウル構造

【課題】 車両走行中のフロントウインドシールドガラスの振動を低減でき、且つ衝突体がフロントウインドシールドガラスの下部に衝突した際に衝突エネルギ吸収量を大きくする。
【解決手段】 カウルアウタ22の支持部22Bを支持するブレース30の下側取付部30Cは、カウルインナ24の縦壁部24Aの回転中心より車体前方においてボルト36によってカウルインナ24の固定部24Eに固定されている。カウルインナ24の縦壁部24Aが車体後方へ回転し、ブレース30に引張り力が作用するとボルト36による締結が解除されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に適用される車両のカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に適用される車両のカウル構造においては、カウルボックスが上方からの衝撃を受けた場合に、カウルトップのエンジンルーム側の縦壁に設けられたエネルギ吸収部が縮み変形すると同時に、カウルトップの車外側の上壁に設けられたエネルギ吸収部が伸び変形して、衝撃を吸収する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平5−8763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この特許文献1の車両のカウル構造においては、フロントウインドシールドガラスの下部を支持し、車両走行中のフロントウインドシールドガラスの振動を低減する部位に、ダッシュアッパの底壁と前壁とに跨るパネル材で構成された補強部材が設けられ、支持剛性が向上している。この結果、フロントウインドシールドガラスの下部に衝突体が衝突した場合には、フロントウインドシールドガラスの下部を支持する部位が車体下方へ変形し難くなっている。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、車両走行中のフロントウインドシールドガラスの振動を低減でき、且つ衝突体がフロントウインドシールドガラスの下部に衝突した際に衝突エネルギ吸収量を大きくできる車両のカウル構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明は、車幅方向から見た断面形状が車体前方を開口部とする枠形状とされ、開口部の上部がフロントウインドシールドガラスの支持部とされた車両のカウル構造であって、前記開口部の上部と下部とを連結し、圧縮力に対して強く引張り力に対して弱い支持部材を有することを特徴とする。
【0006】
支持部材によって、車幅方向から見た断面形状が車体前方を開口部とする枠形状とされ、開口部の上部がフロントウインドシールドガラスの支持部とされた車両のカウルにおける開口部の上部と下部とを圧縮力に対して強い支持部材で連結するため、フロントウインドシールドガラスの支持剛性が向上し、車両走行中のフロントウインドシールドガラスの振動が低減する。また、フロントウインドシールドガラスの下部に衝突体が衝突し、カウルの変形によって支持部材に引張り力が作用した場合には、支持部材が引張り力に対して弱いため、支持部材によってカウルの変形が妨げられることがなく、フロントウインドシールドガラスの下部を支持する部位の衝撃吸収ストロークを大きくできる。
【0007】
請求項2記載の本発明の車両のカウル構造は、車体前方上部がフロントウインドシールドガラスの支持部とされるカウルアウタと、車体上方端部が前記カウルアウタの車体後方側へ取付けられて、前記カウルアウタを支持する共に、前記カウルアウタからの下向き荷重を受けて車体上方端部が車体下方部を中心に車体後方へ回転するカウルインナと、前記カウルアウタの車体前方下部と前記回転中心より車体前方側とを連結し、前記カウルアウタの車体前方下部を支持すると共に、前記カウルアウタからの引張り力を受けて前記連結を解除する支持部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
支持部材によって、車体前方上部がフロントウインドシールドガラスの支持部とされるカウルアウタの車体前方下部と回転中心より車体前方側とを連結し、カウルアウタの車体前方下部を支持するため、フロントウインドシールドガラスの支持剛性が向上し、車両走行中のフロントウインドシールドガラスの振動が低減する。また、フロントウインドシールドガラスの下部に衝突体が衝突した場合には、カウルアウタからの下向き荷重を受けてカウルインナの車体上方端部が車体下方部を中心に車体後方へ回転する。この際、カウルアウタの車体前方下部とカウルインナの回転中心より車体前方側とを連結している支持部材はカウルアウタからの引張り力を受け連結を解除する。このため、支持部材の引張り力によってカウルインナの回転が妨げられることがなく、フロントウインドシールドガラスの下部を支持するカウルアウタの衝撃吸収ストロークを大きくできる。
【0009】
請求項3記載の本発明は請求項2記載の車両のカウル構造において、前記支持部材と前記回転中心より車体前方側との一方に形成された切欠と、前記支持部材と前記回転中心より車体前方側との他方に設けられ、軸部が前記切欠に挿入され頭部が前記切欠の周縁部を前記固定部に押圧する締結手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
支持部材と回転中心より車体前方側との一方に形成された切欠に、支持部材と回転中心より車体前方側との他方に設けられた締結手段の軸部が挿入されているため、フロントウインドシールドガラスから支持部材に作用する下方への圧縮力に対しては、締結手段の軸部と切欠の底部とが当り、切欠は締結手段の軸部から外れない。一方、カウルインナが回転する際に作用する上方への引張り力に対しては、締結手段の軸部が切欠の開口部を通過し、締結が解除される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明の車両のカウル構造は、車両走行中のフロントウインドシールドガラスの振動を低減でき、且つ衝突体がフロントウインドシールドガラスの下部に衝突した際に衝突エネルギ吸収量を大きくできる。
【0012】
請求項2記載の本発明の車両のカウル構造は、車両走行中のフロントウインドシールドガラスの振動を低減でき、且つ衝突体がフロントウインドシールドガラスの下部に衝突した際に衝突エネルギ吸収量を大きくできる。
【0013】
請求項3記載の本発明の車両のカウル構造は、簡単な構成で、車両走行中のフロントウインドシールドガラスの振動を低減でき、且つ衝突体がフロントウインドシールドガラスの下部に衝突した際に衝突エネルギ吸収量を大きくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における車両のカウル構造の一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0015】
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0016】
図5に示される如く、本実施形態の車体10は、車体10の前部上面にフロントフード12を備えており、フロントフード12の車体後方上側にフロントウインドシールドガラス14を備えている。
【0017】
図1に示される如く、フロントウインドシールドガラス14の下端縁部14Aの上面には、板状のカウルルーバ18の後端18Aが取付けられており、カウルルーバ18は、フロントフード12とフロントウインドシールドガラス14との間に、車幅方向に沿って取付けられている。なお、カウルルーバ18の前端18Bは、フロントフード12の後端12Aをシール部材19を介して車体下方側から支持しており、カウルルーバ18には雨水を下方へ通すためのスリット(図示省略)が形成されている。
【0018】
フロントウインドシールドガラス14の下部14Bとカウルルーバ18との下方には、カウル20がその長手方向を車幅方向に沿って車体10へ固定配置されており、カウル20の車幅方向から見た断面形状は車体上方が開口した枠状になっている。
【0019】
図2に示される如く、カウル20の車幅方向両端は、エンジンルーム21の左右の側壁の上縁に沿って車体前後方向に延びる左右のエプロンアッパメンバ23の後端23Aと、左右のフロントピラー25の上下方向中間部25Aとの連結部に結合されている。
【0020】
図1に示される如く、カウル20は板材の組み合わせによって構成されており、カウルアウタ22、カウルインナ24、カウルフロント26及び支持部材としてのブレース30を備えている。
【0021】
カウルアウタ22の前後方向中間部22Aは車体前側上方から車体後側下方へ向かって傾斜しており、前後方向中間部22Aの上端部からは、車体前方下側へ屈曲された支持部22Bが形成されている。支持部22Bの上面には、接着剤25によってフロントウインドシールドガラス14の下部14Bが固定されており、支持部22Bはフロントウインドシールドガラス14の下部14Bを車体下方側から支持している。また、カウルアウタ22の前後方向中間部22Aにおける下端部には、略車体後方へ屈曲されたフランジ22Cが形成されており、フランジ22Cがカウルインナ24との結合部となっている。
【0022】
カウルインナ24の縦壁部24Aは、車体前側下方から車体後側上方へ向かって傾斜しており、縦壁部24Aの上端は、略車体後方に向かって屈曲されフランジ24Bとなっている。カウルインナ24のフランジ24Bは、カウルアウタ22のフランジ22Cの下面に結合されている。カウルインナ24の縦壁部24Aの下端からは車体前方に向かって屈曲された底壁部24Cが形成されており、カウルインナ24における縦壁部24Aと底壁部24Cとの境は、屈曲部24Dとなっている。
【0023】
従って、カウルアウタ22とカウルインナ24との車幅方向から見た断面形状は車体前方を開口部となっている。
【0024】
また、カウルインナ24の底壁部24Cの前端部は、車体下方に向かって屈曲され固定部24Eとなっており、この固定部24Eの下部のエンジンルーム側面(車体前方側面)には、ダッシュパネル27の上端縁部27Aが結合されている。
【0025】
カウルフロント26の底壁部26Aの後端部からは、車体上方に向かって屈曲されたフランジ26Bが形成されており、このフランジ26Bの車体後側面とダッシュパネル27の上端縁部27Aの車体前側面とが結合されている。また、カウルフロント26の底壁部26Aの前端部からは、車体斜め前方上側に向かって屈曲された前壁部26Cが形成されている。カウルフロント26の前壁部26Cの上端部には、車体前方に向けてフランジ26Dが形成されている。カウルフロント26のフランジ26Dは、カウルルーバ18の前端18B近傍に車体下方側に向かって形成した凹部18Cを車体下方側から支持している。
【0026】
カウルインナ24の底壁部24Cの車体下方側には、ダッシュリインフォースメント28が、その長手方向を車幅方向に沿って配置されており、ダッシュリインフォースメント28の車幅方向から見た断面形状はL字状となっている。ダッシュリインフォースメント28の後壁部28Aの上端部には、車体後方へ向ってフランジ28Bが形成されており、このフランジ28Bがカウルインナ24の底壁部24Cの下面に結合されている。また、ダッシュリインフォースメント28の下壁部28Cの前端部には、車体下方へ向ってフランジ28Dが形成されており、このフランジ28Dがカウルインナ24の固定部24Eの車体後側面に結合されている。
【0027】
図2に示される如く、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bにおける車両走行時に車体上下方向の振動振幅が大きくなる部位P1、P2、P3の下方には、それぞれブレース30が取付けられている。
【0028】
なお、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bにおける車両走行時に車体上下方向の振動振幅が大きくなる部位P1、P2、P3は、各車体の特性によって異なるため、それぞれの車体に応じて決まる車幅方向に沿った部分的な位置となる。例えば、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bの車幅方向全長の1/4、2/4及び3/4となる3点P1、P2、P3が、車両走行時に車体上下方向の振動振幅が大きくなる部位となる車体においては、点P1、P2、P3の下方にそれぞれブレース30を取付ける。
【0029】
図4に示される如く、ブレース30は帯状の板材で構成されている。また、ブレース30の基部30Aの上端部は上側取付部30Bとなっており、ブレース30の下端に形成された折れ部32からは略車体下方へ屈曲された下側取付部30Cが形成されている。
【0030】
ブレース30の下側取付部30Cの下端における車幅方向中央部には車体下方側から切欠34が形成されている。この切欠34には、車体前方側から車体後方側に向って締結手段としてのボルト36の軸部としての螺子部36Aが挿通されている。また、ボルト36の螺子部36Aは、カウルインナ24の固定部24Eの上部に形成された取付孔38を貫通し、カウルインナ24の固定部24Eの車体後方側に取付けられたナット40に螺合している。
【0031】
従って、ブレース30の下側取付部30Cは、切欠34の周縁部をボルト36の頭部36Bによってカウルインナ24の固定部24Eに押圧されており、これによって、通常状態ではカウルインナ24の固定部24Eに固定されている。一方、ブレース30に車体上方へ向う所定値以上の引張り力(図4の矢印F1)が作用した場合に、ボルト36の頭部36Bとカウルインナ24の固定部24Eとの間の摩擦力に打ち勝って、ボルト36がブレース30の切欠34から抜け出し、ブレース30とカウルインナ24との連結が解除されるようになっている。
【0032】
図1に示される如く、カウルアウタ22の支持部22Bの前端部には、車体斜め前側下方へ向かってフランジ22Dが形成されている。このカウルアウタ22のフランジ22Dの車体後側面に、ブレース30の上側取付部30Bが溶接等によって下側取付部30Cより強固に結合されている。
【0033】
なお、ブレース30の基部30Aは車体前方下側から車体後方上側に向かって傾斜している。
【0034】
従って、車両走行時にフロントウインドシールドガラス14の下部14Bの振動振幅が大きくなる部位P1、P2、P3を取付けるカウルアウタ22の支持部22Bの部位を、それぞれブレース30によって支持することで、フロントウインドシールドガラス14の振動をブレース30の剛性によって抑制できるようになっている。
【0035】
また、図3に示される如く、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bに衝突体Kが衝突し、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bに車体前方上側から車体後方下側へ向かって下向きの荷重(図3の矢印F2)が作用した場合には、この荷重F2によって、カウルインナ24の縦壁部24Aが屈曲部24Dを中心に車体後方(図3の矢印A)方向へ回転する(倒れる)。この際、カウルアウタ22が前後方向中間部22Aと支持部22Bとの間の屈曲部(図1のN1)と、前後方向中間部22Aとフランジ22Cとの間の屈曲部(図1のN2)とを中心として屈曲変形する(伸びる)。また、ブレース30の基部30Aが折れ部32を中心に後方(図3の矢印B方向)へ回転すると共に、ブレース30には、カウルアウタ22からの引っ張り力によって車体上方へ向う所定値以上の引張り力(図3及び図4の矢印F1)が作用するようになっている。
【0036】
従って、ボルト36によるブレース30のカウルインナ24への締結力に比べて、引張り力F1が大きくなり、ボルト36の螺子部36Aが切欠34の開口部34Bを通過し、ボルト36による締結が外れることで、ブレース30とカウルインナ24との連結が解除されるようになっている。
【0037】
この結果、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bに衝突体Kが衝突し、車体前方上側から車体後方下側へ向かって下向き荷重(図3の矢印F2)が作用した場合には、ブレース30とカウルインナ24の固定部24Eとの連結が解除されることで、ブレース30の引張り力によってカウルインナ24の縦壁部24Aの回転が妨げられることがなく、カウルインナ24の縦壁部24Aが屈曲部24Dを中心にして車体後方へ大きく回転するようになっている。
【0038】
また、ブレース30の下側取付部30Cの下端部に下方から形成された切欠34に、ボルト36の螺子部36Aが挿入されているため、フロントウインドシールドガラス14からブレース30に作用する下方への圧縮力(図4の矢印F3)に対しては、ボルト36の螺子部36Aと切欠34の底部34Aとが当り、切欠34はボルト36の螺子部36Aから外れないようになっている。
【0039】
なお、図1に示される如く、カウルインナ24の側断面形状に沿った縦壁部24Aと底壁部24Cとの長さの合計L1は、ブレース30とカウルアウタ22との側断面形状に沿ったブレース30の基部30Aと上側取付部30Bとカウルアウタ22の支持部22Bと前後方向中間部22Aとの長さの合計L2より長くなっており(L1>L2)、カウルインナ24の縦壁部24Aが車体後方へ回転する際に、カウルアウタ22の屈曲部(図1のN1、N2)が伸びてもブレース30に車体上方へ向う引張り力が作用するようになっている。
【0040】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0041】
本実施形態では、図2に示される如く、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bにおける車両走行時に振動振幅が大きくなる部位P1、P2、p3の下方に、それぞれブレース30が取付けられている。また、図1に示される如く、ブレース30の上側取付部30Bはカウルアウタ22における支持部22Bの車体前方側に形成したフランジ22Dの後面に結合されており、ブレース30の下側取付部30Cは、カウルインナ24の固定部24Eの前面に結合されている。
【0042】
従って、所定の剛性が確保されたブレース30によって、車両走行時に振動振幅が大きくなるフロントウインドシールドガラス14の下部14Bの部位P1、P2、P3を支持することができる。このため、車両走行時に発生するフロントウインドシールドガラス14の振動を効果的に抑制できる。
【0043】
なお、ブレース30の下側取付部30Cの下端部に下方から形成された切欠34に、ボルト36の螺子部36Aが挿入されているため、フロントウインドシールドガラス14からブレース30に作用する下方への圧縮力(図4の矢印F3)に対して、ボルト36の螺子部36Aと切欠34の底部34Aとが当り、切欠34はボルト36の螺子部36Aから外れない。
【0044】
一方、図3に示される如く、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bに衝突体Kが衝突し、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bに車体前方上側から車体後方下側へ向かって下向き荷重(図3の矢印F2)が作用した場合には、この荷重F2によって、カウルインナ24の縦壁部24Aが屈曲部24Dを中心に車体後方(図3の矢印A)方向へ回転する。この際、カウルアウタ22が前後方向中間部22Aと支持部22Bとの間の屈曲部(図1のN1)と、前後方向中間部22Aとフランジ22Cとの間の屈曲部(図1のN2)とを中心として屈曲変形する(伸びる)。また、ブレース30の基部30Aが折れ部32を中心に後方(図3の矢印B方向)へ回転すると共に、ブレース30には、カウルアウタ22からの引っ張り力によって車体上方へ向う所定値以上の引張り力(図3及び図4の矢印F1)が作用する。
【0045】
この際、引張り力F1が、ボルト36によるブレース30のカウルインナ24への締結力に比べて大きくなると、ボルト36の螺子部36Aが切欠34の開口部34Bを通過しボルト36による締結が外れ、ブレース30とカウルインナ24との連結が解除される。このため、ブレース30の引張り力によってカウルインナ24の矢印A方向への回転が妨げられることがなく、カウルインナ24は図3に示される位置より更に後方へ大きく回転することができる。
【0046】
従って、本実施形態では、フロントウインドシールドガラス14の下部14Bを支持するカウルアウタ22の支持部22Bの衝撃吸収ストロークを大きくできるため、カウル20の衝突エネルギ吸収量を大きくでき、衝突体Kの障害値を充分に下げることができる。
【0047】
また、本実施形態では、図1に示される如く、カウルインナ24の側断面形状に沿った縦壁部24Aと底壁部24Cとの長さの合計L1が、ブレース30とカウルアウタ22との側断面形状に沿ったブレース30の基部30Aと上側取付部30Bとカウルアウタ22の支持部22Bと前後方向中間部22Aとの長さの合計L2より長くなっている(L1>L2)。この結果、カウルインナ24の縦壁部24Aが車体後方へ回転する際に、カウルアウタ22の屈曲部(図1のN1、N2)が伸びてもブレース30に車体上方へ向う引張り力が作用するため、ブレース30とカウルインナ24との連結が確実に解除される。
【0048】
また、本実施形態では、ボルト36によるブレース30のカウルインナ24への締結力を調整することで、車両走行中のフロントウインドシールドガラスの振動低減と、衝突体がフロントウインドシールドガラスの下部に衝突した際のカウルの衝撃吸収と、を簡単な構成で容易に両立できる。
【0049】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、カウルの車幅方向から見た断面形状は、上記実施形態の断面形状に限定さず、カウルアウタからの下向き荷重を受けてカウルインナの車体上方端部が車体下方部を中心に車体後方へ回転する構成であれば他の形状としても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、カウルアウタ22とカウルインナ24とを別部材としたが、これに代えて、カウルアウタ22とカウルインナ24とを一体構造とし、車幅方向から見た断面形状が車体前方を開口部とする枠形状としても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、図1に示される如く、ボルト36の締結力によって、ブレース30の下側取付部30Cをカウルインナ24の固定部24Eに固定したが、ビス等のボルト36以外の締結手段によって、ブレース30の下側取付部30Cをカウルインナ24の固定部24Eに固定した構成としても良い。
【0052】
また、ブレース30に作用する車体上方へ向う所定値以上の引張り力でカウルアウタ22とカウルインナ24の固定部24Eとの連結を解除する構成であれば、クリップ等の固定部材によって固定する構成や、カシメ、接着等で固定する構成としても良い。
【0053】
また、ブレース30の下側取付部30Cに代えて、またはブレース30の下側取付部30Cに加えて、ブレース30の上側取付部30Bとカウルアウタ22のフランジ22Dとの連結部をブレース30に作用する所定値以上の引張り力で解除する構成としても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、所定値以上の引張り力によって連結部材としてのブレース30の連結部が解除する構成としたが、これに代えて、連結部材を圧縮力に対しては強く、引張り力に対しては弱くし、所定値以上の引張り力が作用した場合に連結部材に伸び、破断等が発生する構成とししても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、図1に示される如く、ブレース30の下側取付部30Cをカウルインナ24の固定部24Eに結合したが、これに代えて、ブレース30の下側取付部30Cをカウルインナ24における底壁部24C等の他の部位に結合した構成としても良い。
【0056】
また、カウル20の支持部材は、ブレース30に限定されず、カウルアウタの車体前方下部と支持部材とを連結しカウルアウタの車体前方下部を支持すると共に、カウルアウタからの引張り力を受けてカウルアウタと支持部材との少なくとも一方の連結を解除する部材であれば、他の支持部材でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図5の1−1線に沿った拡大断面である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両のカウル構造を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両のカウル構造の変形状態を示す図1に対応する断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両のカウル構造のブレースを示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両のカウル構造が適用された車体前部を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
14 フロントウインドシールドガラス
20 カウル
22 カウルアウタ
24 カウルインナ
24E カウルインナの固定部
26 カウルフロント
27 ダッシュパネル
28 ダッシュリインフォースメント
30 ブレース(支持部材)
34 切欠
36 ボルト(締結手段)
38 取付孔
40 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向から見た断面形状が車体前方を開口部とする枠形状とされ、開口部の上部がフロントウインドシールドガラスの支持部とされた車両のカウル構造であって、
前記開口部の上部と下部とを連結し、圧縮力に対して強く引張り力に対して弱い支持部材を有することを特徴とする車両のカウル構造。
【請求項2】
車体前方上部がフロントウインドシールドガラスの支持部とされるカウルアウタと、
車体上方端部が前記カウルアウタの車体後方側へ取付けられて、前記カウルアウタを支持する共に、前記カウルアウタからの下向き荷重を受けて車体上方端部が車体下方部を中心に車体後方へ回転するカウルインナと、
前記カウルアウタの車体前方下部と前記回転中心より車体前方側とを連結し、前記カウルアウタの車体前方下部を支持すると共に、前記カウルアウタからの引張り力を受けて前記連結を解除する支持部材と、
を有することを特徴とする車両のカウル構造。
【請求項3】
前記支持部材と前記回転中心より車体前方側との一方に形成された切欠と、
前記支持部材と前記回転中心より車体前方側との他方に設けられ、軸部が前記切欠に挿入され頭部が前記切欠の周縁部を前記固定部に押圧する締結手段と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の車両のカウル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−256465(P2006−256465A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75814(P2005−75814)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】