説明

車両のキーレスエントリシステム

【課題】無線携帯キーの少ない操作で、ユーザの所望する乗降用ドアの開錠/施錠を行うことが可能な車両のキーレスエントリシステムを提供する。
【解決手段】車両の乗降用ドアの近傍に複数の受信機を設置し、どの受信機が一番強く電波を受信しているかにより、ユーザがどの乗降用ドアに一番近く、どの乗降用ドアを操作(開錠/施錠)しようとしているかを判断し、その乗降用ドアのみ開錠/施錠作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキーレスエントリシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、代表的な車両である自動車においては、携帯型の無線携帯キーの操作に応じて、ドアのロック/アンロック(施錠/開錠)を行う所謂キーレスエントリシステムが普及している。
【0003】
無線携帯キーの形態も様々で、ロック用とアンロック用のボタンが別々に設けられた所謂2ボタン式のものや、1つのボタンでロック/アンロックを行う所謂1ボタン式のものがある。2ボタン式の場合、ロック/アンロック操作に応じて全席を同時にロック/アンロック作動させる。仕向け地によっては、アンロック操作を1回行うと運転席のみアンロックし、もう一度アンロック操作すると全席アンロックするものもある。また、1ボタン式の場合、運転席がロック状態の場合は全席アンロックとなり、運転席がアンロック状態の場合は全席ロックとなる。
【0004】
いわゆるスマートキーレスエントリシステムでは、ドアのアウターハンドル(ドアノブ)を操作すると、そのドアがアンロック状態となるものもある(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−352243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スマートキーレスエントリシステムではない通常のキーレスエントリシステムでは、2ボタン式,1ボタン式のいずれにおいても、任意のドアのみロック/アンロックすることができない。そのため、右側の後部座席の荷物を取り出すために(全席)アンロックすると、左側の後部座席に座っている子供が勝手にドアを開けてしまい、ドアが壁などに接触したり、子供が道路へ落ちたりすることがありうる。また、防犯上の観点からも必要でないドアをアンロックするのは望ましくない。
【0007】
また、1ボタン式の場合、運転席のロック/アンロック状態に応じて全席をロック/アンロックするため、運転席から降車し、後部座席や助手席側へ回って子供や荷物を降ろそうとすると、次の操作では全席ロック状態となってしまい、アンロック状態とするためには、さらに1回アンロック操作を行う必要があった。
【0008】
上記問題を背景として、本発明の課題は、無線携帯キーの少ない操作で、ユーザの所望する乗降用ドアの開錠/施錠を行うことが可能な車両のキーレスエントリシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するための車両のキーレスエントリシステムは、車両に搭載され、無線携帯キーから送信された無線信号を受信する受信機と、車両の乗降用ドアを閉鎖して施錠する施錠状態と、乗降用ドアの施錠を解除する開錠状態とに切り替え作動するドアロック機構と、無線信号に含まれる、乗降用ドアの施錠/開錠を指示するドアロック制御コマンドに基づいて、ドアロック機構の施錠/開錠を行うドアロック制御手段と、を備える車両のキーレスエントリシステムであって、受信機は、乗降用ドアに対応して該乗降用ドアの近傍に設置され、受信された無線信号の受信感度を検出する受信感度検出手段と、無線信号の受信感度に基づいて、施錠/開錠を行う乗降用ドアを選択する乗降用ドア選択手段と、を備え、ドアロック制御手段は、選択された乗降用ドアのドアロック機構の施錠/開錠を行うことを特徴とする。
【0010】
上記構成によって、2ボタン式,1ボタン式のいずれの場合でも、ユーザが操作したい任意のドアのみ施錠/開錠することができる。
【0011】
また、本発明の車両のキーレスエントリシステムにおける乗降用ドア選択手段は、無線信号の受信感度の最も高い受信機に対応する乗降用ドアを選択するように構成される。
【0012】
ユーザは操作したい乗降用ドアの近くで無線携帯キーを操作することが多い。上記構成によって、乗降用ドア毎に受信機を設置しておけば、ユーザが操作したい乗降用ドアを特定でき、その乗降用ドアのみのドアロック機構の施錠/開錠を行うので、荷物を取り出すことができる等の利便性を確保でき、他の座席に座っている子供が勝手にドアを開けるようなことを防止できる。
【0013】
また、本発明の車両のキーレスエントリシステムは、予め定められた抑制条件を満たす場合、施錠/開錠を行う乗降用ドアの選択を抑制する乗降用ドア選択抑制手段を備えるように構成される。
【0014】
上記構成によって、特定の乗降用ドアの施錠/開錠をユーザの選択によって行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の車両のキーレスエントリシステムは、受信機が、無線携帯キーから予め定められた制御コマンドを受信したことを抑制条件とするように構成される。
【0016】
上記構成によって、無線携帯キーではない他の手段を新たに追加することなく、既存の車両のキーレスエントリシステムの範囲内で、特定の乗降用ドアの施錠/開錠を行うことを選択することができる。
【0017】
また、本発明の車両のキーレスエントリシステムは、受信機が、無線携帯キーから予め定められた制御コマンドを、予め定められた時間を超えて連続して受信したことを抑制条件とするように構成される。
【0018】
予め定められた制御コマンドを、予め定められた時間を超えて連続して受信することは、無線携帯キーの予め定められたボタンを予め定められた時間を超えて押下し続ける(所謂、長押し)ことによって可能である。上記構成によって、無線携帯キーの構成を変更することなく、コスト上昇を抑制しつつ、特定の乗降用ドアの施錠/開錠を行うことを選択することができる。
【0019】
また、本発明の車両のキーレスエントリシステムは、受信機が、無線携帯キーから予め定められた制御コマンドを、予め定められた時間内に複数回受信したことを抑制条件とするように構成される。
【0020】
無線携帯キーから予め定められた制御コマンドを、予め定められた時間内に複数回受信することは、無線携帯キーの予め定められたボタンを例えば2度押し(パソコンでいえば、マウスのダブルクリック操作)することによって可能である。上記構成によっても、無線携帯キーの構成を変更することなく、コスト上昇を抑制しつつ、特定の乗降用ドアの施錠/開錠を行うことを選択することができる。
【0021】
また、本発明の車両のキーレスエントリシステムは、無線信号の受信感度が予め定められた受信感度閾値を下回ったことを抑制条件とするように構成される。
【0022】
無線信号の受信感度が小さいということは、車両から比較的離れた場所で無線携帯キーを操作しているということである。この場合のユーザの心理は、特定の乗降用ドアの施錠/開錠を行うというよりも、とにかくいずれかの乗降用ドアの施錠/開錠を行いたいというものである。上記構成によっても、無線携帯キーの構成を変更することなく、コスト上昇を抑制しつつ、特定の乗降用ドアあるいはそれ以外の乗降用ドアの施錠/開錠を行うことを選択することができる。
【0023】
また、本発明の車両のキーレスエントリシステムにおける受信機は、タイヤ空気圧を直接検出する空気圧センサおよび検出されたタイヤ空気圧の信号を無線により車体側に送信する無線送信手段を含む車輪側装置と、車輪に近接して車体側に配置され、無線で送信されたタイヤ空気圧の信号を受信する無線受信手段を含む車体側装置と、を備える車両のタイヤ空気圧監視システムにおける無線受信手段を用いるように構成される。
【0024】
近年、自動車等の車両のタイヤ空気圧を直接検知してそのタイヤ空気圧の監視を行うタイヤ空気圧監視システムが普及しつつある。例えば、各車輪のタイヤ内に設置されたタイヤ空気圧検出センサより検出・送信されたタイヤ空気圧情報を含む無線信号を、車輪の回転速度検出に用いられる車輪速センサに内蔵された無線受信アンテナで受信することによって、コストダウンと組み立ての簡素化を図り、かつ該無線受信アンテナは、キーレスエントリシステムの無線携帯キーから送信される無線信号を受信可能に構成され、無線携帯キーからの信号を広範囲で受信することができ、キーレスエントリシステムの使い勝手を向上させたタイヤ空気圧監視システムが考案されている(特許文献2参照)。
【0025】
また、タイヤ空気圧監視システムとキーレスエントリシステムを搭載した車両において、タイヤ空気圧監視システムの送信ユニットがタイヤ空気圧情報を送信したときに、キーレスエントリシステムの無線携帯キーの位置を検出するようにして、各タイヤに設けられた送信ユニットの位置を特定することが可能な装置が考案されている(特許文献3参照)。
【0026】
【特許文献2】特開2007−008206号公報
【特許文献3】特開2007−276642号公報
【0027】
特許文献2の構成では、無線携帯キーの電波の受信可能な範囲を拡大することを目的としており、無線携帯キーの位置を特定することは行われない。
【0028】
また、特許文献3の構成では、タイヤに設けられた送信ユニットの位置を特定することを目的としている。そして、無線携帯キーの位置を検出する手段が別に設けられ、車両側から無線携帯キーを探索しているため、コスト上昇を伴うという問題がある。また、無線携帯キーの電波の受信可能な範囲を拡大することを目的とはしていない。
【0029】
上記の本発明の構成によって、特許文献2の構成あるいは特許文献3の構成、特許文献2と特許文献3とを組み合わせた構成とは異なる、コストダウンと組み立ての簡素化と、無線携帯キーの位置を特定し、さらに、ユーザが操作したい乗降用ドアを特定でき、その乗降用ドアのみのドアロック機構の施錠/開錠を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1に、車両のキーレスエントリシステム(以降、キーレスエントリシステムと略称する)の構成を示す。キーレスエントリシステムは、無線携帯キー1とドアロック・アンロック制御装置(以降、ドアロックECUと略称する)100とを含んで構成される。
【0031】
無線携帯キー1には、車両の各ドアのロック(施錠)を行うためのロックボタン1a,アンロック(開錠)を行うためのアンロックボタン1bを備えている。このロックボタン1a,アンロックボタン1bを押下すると、無線携帯キー1に含まれる図示しない無線通信部を介して、ドアロックECU100に対して、ロックあるいはアンロックを指示するためのロックコマンドあるいはアンロックコマンド(制御コマンド)を無線信号により送信する。無線携帯キー1は、通常のメカキーと一体型に構成されていてもよい。
【0032】
ドアロックECU100は、無線通信部6a〜6b(アンテナ14a〜14bを含む),運転席用のドアロックアクチュエータ(ACTR)8,運転席以外のドアロックアクチュエータ9(9a〜9c),運転席のロックポジションスイッチ12,運転席以外の座席のロックポジションスイッチ13(13a〜13c),およびこれらが接続された制御部4を含んで構成されている。
【0033】
無線通信部6a〜6bは、無線携帯キー1と無線通信可能に構成され、アンテナ14a〜14bを介して無線携帯キー1から受信したドアロック制御コマンドを制御部4に送る。
【0034】
制御部4は、周知のCPU4a,ROM4b,RAM4c,入出力部(I/O)4d,フラッシュメモリ4f等が内部バス4gにより接続されたマイコンハードウェアとして構成されている。CPU4aは、ROM4b等に記憶された制御プログラム(図示せず)を所定時間ごとに繰り返し実行し、その実行に応じた制御信号をドアロックアクチュエータ(8,9)等に出力する。なお、制御部4が本発明のドアロック制御手段,乗降用ドア選択手段に相当する。
【0035】
フラッシュメモリ4fは、制御部4に電源が供給されなくても記憶内容を保持するもので、キーレスエントリシステムの動作に必要な情報が記憶される。
【0036】
ドアロックアクチュエータ8,9は、周知のドアロック機構に含まれ、制御部4の制御指令に基づいて、該当する席のドアのドアロック機構のロック/アンロックを行うものである。すなわち、制御部4から送られるロック制御信号により、ドアロック機構をロック状態とするように作動し、制御部4から送られるアンロック制御信号により、ドアロック機構をアンロック状態とするように作動する。
【0037】
ロックポジションスイッチ12,13は、該当する席のドアロック機構の状態(ロック/アンロック)を検出して制御部4へ出力するためのもので、例えば、該スイッチがオン状態であればアンロック状態、オフ状態であればロック状態である。なお、ロックポジションスイッチ12が本発明の運転席ドアロック状態検出手段に相当する。
【0038】
図2に、無線通信部6a〜6bを、車両のタイヤ空気圧監視システムの無線受信手段と兼用した構成を示す。図2の例は、該無線受信手段を車輪側センサと一体構成としたものであるが、車輪側センサと別構成としてもよい。なお、無線通信部6a〜6bが本発明の受信機,受信感度検出手段に相当する。
【0039】
各車輪1a,1b,1c,1dには、車輪側装置として、ABS用の車輪回転速度(以下、「車輪速」という)を検出するための回転型の磁気エンコーダ2a,2b,2c,2dと、各タイヤの空気圧を検出するためのタイヤ空気圧検出センサ3a,3b,3c,3dとが装着されている。ここで、磁気エンコーダ2a〜2dは、ハブベアリング(図示せず)に装着され、タイヤ空気圧検出センサ3a〜3dは、ホイールのリム面(図示せず)に装着されている。なお、ハブベアリングも車輪1a〜1dの一部に含まれるとする。
【0040】
また、車体5における各車輪1a〜1dの近傍のホイールハウジング(図示せず)には、それぞれ、無線通信部6a,6b,6c,6dが設置されている。これらの無線通信部6a〜6dには、それぞれ、車輪速センサである各磁気エンコーダ2a〜2dからの磁気パルスを検出する磁気検出素子(図示せず)と、各タイヤ空気圧検出センサ3a〜3dからタイヤ空気圧の無線信号を受信するアンテナ14a〜14dとが内蔵されている。
【0041】
さらに、車体5には、車体側装置として、磁気エンコーダ2a〜2dからそれぞれの車輪速情報を取得し、各車輪1a〜1dのスリップ率を一定にするようにABS制御を行うABS制御ユニット17と、各タイヤ空気圧検出センサ3a〜3dが検出したタイヤ空気圧情報を各無線通信部6a〜6dに内蔵されたアンテナ14a〜14dを経由して取得し、各車輪1a〜1dのそれぞれのタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視ユニット18と、アンテナ14a〜14dが受信した無線信号によって車両ドアの施錠/開錠を行うキーレスエントリシステムを実現するドアロックECU100の制御部4とが搭載されている。
【0042】
なお、ABS制御ユニット17が行うABS制御は、各磁気エンコーダ2a〜2dが検出した各車輪速のうち、例えば、最も速い車輪速を抽出してこれを擬似車速とし、この擬似車速の信号に基づいて各車輪1a〜1dのスリップ率が理想スリップ率となるように制御することによって、各車輪1a〜1dのスリップ率を一定にして安定したブレーキ制御を行うものである。このようなABS制御は周知の技術であり、かつ、本実施形態とは直接的には関係が無いので、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図3に、タイヤ空気圧監視システムの機能を表わすブロック図を示す。なお、図3では、説明を簡単にするために、一つの車輪1における車輪速とタイヤ空気圧の検出系統が描かれている。すなわち、一つの車輪1に設けられた磁気エンコーダ2とタイヤ空気圧検出センサ3とに対応して、車体側には一つの無線通信部6が配置されている。そして、この無線通信部6とABS制御ユニット17とが接続されている。
【0044】
各車輪1a〜1dのタイヤに搭載された各タイヤ空気圧検出センサ3a〜3d(図3では3)は、無線送信手段31、無線送信アンテナ32および空気圧センサであるピエゾ圧電素子34を備え、内蔵のリチウム電池33を用いて駆動される。そして、タイヤ空気圧の圧力値の大きさによってピエゾ圧電素子34の撓み量が変わって発生電圧を変化させる。この発生電圧の変化の情報は、所定のタイミングで無線送信され、その発生電圧に対応した高周波信号を各無線通信部6a〜6dに内蔵されたアンテナアンテナ14a〜14d(無線受信手段)が受信する。そして、タイヤ空気圧監視ユニット18へ転送することにより、タイヤ空気圧監視ユニット18は、各車輪1a〜1dのタイヤ空気圧を監視することができる。このようなタイヤ空気圧監視制御は周知の技術であり、かつ、本実施形態とは直接的には関係が無いので、その詳細な説明は省略する。
【0045】
さらに、無線受信アンテナ14が受信した無線データ信号は、周知の結合回路15,無線IC16を介して、ABS制御ユニット17,タイヤ空気圧監視ユニット18,および制御部4に入力されている。
【0046】
図4を用いて、乗降用ドアのロック(施錠)/アンロック(開錠)を制御する、ドアロック/アンロック制御処理(以下、ドアロック制御処理と略称することもある)について説明する。なお、本処理は、ROM4b等に記憶された制御プログラム(図示せず)に含まれ、制御プログラムの他の処理とともにを所定時間ごとにCPU4aにより繰り返し実行される。まず、施錠/開錠を行う乗降用ドアの選択を抑制する抑制条件が成立しているか否かを調べる。すなわち、RAM4cあるいはフラッシュメモリ4fに記憶される抑制条件成立フラグの内容を参照する。
【0047】
抑制条件成立フラグがセットされ、抑制条件が成立している場合(S11:Yes)、以下のような通常のロック/アンロック制御を行う(S21)。
・ 1ボタン式の場合には、運転席のロックポジションスイッチ12の状態に基づいて、運転席がロック状態の場合は全席アンロックとし、運転席がアンロック状態の場合は全席ロックとする。
・ 2ボタン式の場合には、押されたボタン(受信した制御コマンド)に基づく制御を行う。
【0048】
抑制条件成立フラグがクリアされ、抑制条件が成立していない場合(S11:No)、各無線受信部(6a〜6d)の受信感度情報を取得する(S12)。受信感度は、例えば、受信した無線信号の振幅の電圧レベルを測定してA/D変換することで求められる。
【0049】
次に、取得した受信感度情報から、運転席受信機(無線受信部6b)の受信感度が最大の場合(S13:Yes)、運転席のみロック/アンロック制御を行う(S17)。
【0050】
同様に、助手席受信機(無線受信部6a)の受信感度が最大の場合(S14:Yes)、助手席のみロック/アンロック制御を行う(S18)。右後部座席受信機(無線受信部6d)の受信感度が最大の場合(S15:Yes)、右後部座席のみロック/アンロック制御を行う(S19)。左後部座席受信機(無線受信部6c)の受信感度が最大の場合(S16:Yes)、左後部座席のみロック/アンロック制御を行う(S20)。
【0051】
次に、抑制条件が成立しているか否かを判定する処理について説明する。なお、本処理は、ROM4b等に記憶された制御プログラム(図示せず)に含まれ、CPU4aにより実行される。判定方法は、以下のいずれか一つ以上を用いる。
・ ロックボタン1aあるいはアンロックボタン1bを長押ししたか否か。
・ 無線携帯キー1の同じボタンを予め定められた時間内に複数回(例えば2回)操作したか否か。
・ ロックボタン1aおよびアンロックボタン1bが、半押し・全押しを検出できるスイッチで構成され、これらのボタン全押ししたか否か。
・ 車両から予め定められた距離以上離れた場所で無線携帯キー1を操作したか否か。すなわち、無線受信部(6a〜6d)の受信感度が予め定められた受信感度閾値を下回るか否か。
【0052】
(抑制条件成立判定処理1)
図5および図7を用いて、抑制条件成立判定処理の一つである、無線携帯キー1のボタンを長押しているか否かを判定する長押し判定処理について説明する。無線携帯キー1では、ボタンを押下すると、押下している間、その押下したボタンに対応する制御コマンドが送信される。また、ボタンを押下している時間の長さによらず、例えば少なくとも3回のような予め定められた個数の制御コマンドが、予め定められた間隔T1をおいて送信される(図6参照)。なお、図5,図6において、「UL」は、アンロックボタン1bが押下されたことを示している。
【0053】
まず、無線携帯キー1から制御コマンドを受信していない状態から、制御コマンドを受信した状態に遷移した場合(S31:Yes)、RAM4cに記憶される制御コマンドカウンタをクリアする(S32)。次に、受信した制御コマンドを取得してRAM4cに記憶する(S33)。そして、制御コマンドカウンタを更新(インクリメント)する(S34)。
【0054】
制御コマンドカウンタの値が、予め定められた値N1を上回る場合(S35:Yes)、抑制条件が成立したと判定し、RAM4cに記憶される抑制条件成立フラグをセットし、制御コマンドカウンタをクリアする(S36)。
【0055】
一方、制御コマンドカウンタの値が、予め定められた値N1を下回る場合(S35:No)、制御コマンドを継続して受信中である否か、すなわち、無線携帯キー1からの電波を継続して受信しているか否かを調べる。制御コマンドを継続して受信中である場合(S37:Yes)、ステップS33へ戻り、それ以降の処理を実行する。
【0056】
一方、制御コマンドを継続して受信中しなかった場合、すなわち、無線携帯キー1からの電波が途切れた場合(S37:No)、抑制条件が成立しなかったと判定し、RAM4cに記憶される抑制条件成立フラグをクリアし、制御コマンドカウンタをクリアする(S38)。
【0057】
長押しの判定条件を、継続して受信した制御コマンドの個数により行う方法の他に、制御コマンドを継続して受信した時間によって行ってもよい。図5のように、制御コマンド1個あたりの受信時間は、制御コマンドのデータ長+送信間隔T1である。よって、図7において、制御コマンドカウンタの代わりにタイマを用いればよい。つまり、ステップS32にタイマをスタートさせる(タイマはバックグラウンドで作動)。そして、ステップS35では、タイマ値が、(データ長+送信間隔T1)×N1のような、予め定められた値を超えた場合に、抑制条件が成立したと判定する。また、無線携帯キー1が、長押しを示す制御コマンドを送信可能な構成としてもよい。
【0058】
(抑制条件成立判定処理2)
図6および図8を用いて、抑制条件成立判定処理の一つである、無線携帯キー1のボタンを2度押したか否かを判定する2度押し判定処理について説明する。まず、無線携帯キー1から制御コマンドを受信していない状態では(S51:No)、RAM4cに記憶される2度押しカウンタ(図8では、単に「カウンタ」と表記)を更新(インクリメント)する(S57)。なお、2度押しカウンタはバックグラウンドで作動する。そして、無線携帯キー1から制御コマンドを受信していない状態から、制御コマンドを受信した状態に遷移した場合(S51:Yes)、受信した制御コマンドを取得してRAM4cに一時記憶し、2度押しカウンタをクリアする(S52)。
【0059】
次に、今回受信した制御コマンドと、RAM4cに記憶された前回受信した制御コマンドとを比較する(S53)。比較の結果、両者が異なる場合(S54:No)、前回受信した制御コマンドの内容を、今回受信した制御コマンドに置き換える(S59)。
【0060】
一方、今回受信した制御コマンドと、RAM4cに記憶された前回受信した制御コマンドとが同じ場合(S54:Yes)、2度押しカウンタの値が予め定められた値N2(予め定められた時間に相当)を下回る場合(S55:Yes)、2度押しであり抑制条件が成立したと判定し、RAM4cに記憶される抑制条件成立フラグをセットし、2度押しカウンタをクリアする(S56)。
【0061】
一方、2度押しカウンタの値が予め定められた値N2を上回る場合(S55:No)、2度押しではなく抑制条件が成立しなかったと判定し、RAM4cに記憶される抑制条件成立フラグをクリアし、2度押しカウンタをクリアする(S58)。
【0062】
(抑制条件成立判定処理3)
図9を用いて、抑制条件成立判定処理の一つである、無線携帯キー1のボタンを全押しているか否かを判定する全押し判定処理について説明する。本処理は、ロックボタン1aおよびアンロックボタン1bが、半押し・全押しを検出できるスイッチで構成されていることが前提条件となる。まず、無線携帯キー1からの電波を受信した場合、制御コマンドを取得する(S71)。
【0063】
取得した制御コマンドが、例えばロックボタン1aおよびアンロックボタン1bの半押し状態を示すものである場合(S72:Yes)、抑制条件が成立しなかったと判定し、RAM4cに記憶される抑制条件成立フラグをクリアする(S75)。
【0064】
一方、取得した制御コマンドが、例えばロックボタン1aおよびアンロックボタン1bの半押し状態を示すものでなく(S72:No)、全押し状態を示すものである場合(S73:Yes)、抑制条件が成立したと判定し、RAM4cに記憶される抑制条件成立フラグをセットする(S74)。
【0065】
(抑制条件成立判定処理4)
図10を用いて、抑制条件成立判定処理の一つである、受信感度判定処理について説明する。まず、無線携帯キー1からの電波(すなわち何らかの制御コマンド)を受信した場合(S91:Yes)、上述のような方法で、各無線通信部(6a〜6d)における電波の受信感度に関する情報を取得する(S92)。
【0066】
そして、全ての無線通信部(図10では「受信機」と表記)において、受信感度が予め定められた受信感度閾値を下回る場合(S93:Yes)、抑制条件が成立したと判定し、RAM4cに記憶される抑制条件成立フラグをセットする(S94)。一方、少なくとも一つの無線通信部の受信感度が予め定められた受信感度閾値を上回る場合(S93:No)、抑制条件が成立しなかったと判定し、RAM4cに記憶される抑制条件成立フラグをクリアする(S95)。
【0067】
上述の判断処理において、少なくとも一つの無線通信部の受信感度が予め定められた受信感度閾値を下回る場合に、抑制条件が成立したと判定してもよい。
【0068】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】キーレスエントリシステムの構成を示す図。
【図2】無線通信部の取り付け例を示す図。
【図3】キーレスエントリシステムとタイヤ空気圧監視システムとの接続構成を示す図。
【図4】ドアロック/アンロック制御処理を説明するフロー図。
【図5】長押し判定処理を説明する図。
【図6】2度押し判定処理を説明する図。
【図7】長押し判定処理を説明するフロー図。
【図8】2度押し判定処理を説明するフロー図。
【図9】全押し判定処理を説明するフロー図。
【図10】受信感度判定処理を説明するフロー図。
【符号の説明】
【0070】
1 無線携帯キー
1a ロックボタン
1b アンロックボタン
3(3a〜3d) 空気圧センサ
6a〜6b 無線通信部(受信機,受信感度検出手段)
4 制御部(ドアロック制御手段,乗降用ドア選択手段)
8 ドアロックアクチュエータ(運転席)
9 ドアロックアクチュエータ(運転席以外)
12 ロックポジションスイッチ(運転席)
13 ロックポジションスイッチ(運転席以外)
18 タイヤ空気圧監視ユニット
100 ドアロックECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、無線携帯キーから送信された無線信号を受信する受信機と、
前記車両の乗降用ドアを閉鎖して施錠する施錠状態と、前記乗降用ドアの施錠を解除する開錠状態とに切り替え作動するドアロック機構と、
前記無線信号に含まれる、前記乗降用ドアの施錠/開錠を指示するドアロック制御コマンドに基づいて、前記ドアロック機構の施錠/開錠を行うドアロック制御手段と、を備える車両のキーレスエントリシステムであって、
前記受信機は、前記乗降用ドアに対応して該乗降用ドアの近傍に設置され、
前記受信された無線信号の受信感度を検出する受信感度検出手段と、
前記無線信号の受信感度に基づいて、施錠/開錠を行う乗降用ドアを選択する乗降用ドア選択手段と、を備え、
前記ドアロック制御手段は、選択された前記乗降用ドアのドアロック機構の施錠/開錠を行うことを特徴とする車両のキーレスエントリシステム。
【請求項2】
前記乗降用ドア選択手段は、前記無線信号の受信感度の最も高い前記受信機に対応する乗降用ドアを選択する請求項1に記載の車両のキーレスエントリシステム。
【請求項3】
予め定められた抑制条件を満たす場合、施錠/開錠を行う前記乗降用ドアの選択を抑制する乗降用ドア選択抑制手段を備える請求項1または請求項2に記載の車両のキーレスエントリシステム。
【請求項4】
前記受信機が、前記無線携帯キーから予め定められた制御コマンドを受信したことを前記抑制条件とする請求項3に記載の車両のキーレスエントリシステム。
【請求項5】
前記受信機が、前記無線携帯キーから予め定められた制御コマンドを、予め定められた時間を超えて連続して受信したことを前記抑制条件とする請求項3または請求項4に記載の車両のキーレスエントリシステム。
【請求項6】
前記受信機が、前記無線携帯キーから予め定められた制御コマンドを、予め定められた時間内に複数回受信したことを前記抑制条件とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両のキーレスエントリシステム。
【請求項7】
前記無線信号の受信感度が予め定められた受信感度閾値を下回ったことを前記抑制条件とする請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両のキーレスエントリシステム。
【請求項8】
前記受信機は、
タイヤ空気圧を直接検出する空気圧センサおよび検出されたタイヤ空気圧の信号を無線により車体側に送信する無線送信手段を含む車輪側装置と、車輪に近接して車体側に配置され、前記無線で送信されたタイヤ空気圧の信号を受信する無線受信手段を含む車体側装置と、を備える車両のタイヤ空気圧監視システムにおける前記無線受信手段を用いるものである請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両のキーレスエントリシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−167638(P2009−167638A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4797(P2008−4797)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】