説明

車両のサスペンション組立方法およびその装置

【課題】車両用サスペンションの組立において、組み付けられているコイルスプリングが指示された仕様のものであるかの判定を行い、該スプリングの誤組付けを防止する。
【解決手段】ショックアブゾーバ2の外筒に設けられたバネ受部材2aに一端が支持されたコイルスプリング3の他端をマウント部材4を介して押圧し、該マウント部材4が所定の測定位置に達するまでコイルスプリング3を圧縮したときに、ロードセルによって検出される圧縮荷重が、その測定値について予め設定されたばらつき範囲に入っているか否かにより、組み付けられているコイルスプリング3が指示された仕様のものか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のストラット型サスペンションの組立方法および組立装置に関し、車両の生産技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車両の懸架装置として用いられるストラット型のサスペンションは、例えば特許文献1に示されているように、ショックアブゾーバの外筒に設けたバネ受部材と、該ショックアブゾーバのピストンロッドの先端に取り付けた車体へのマウント部材との間にコイルスプリングを装着した構成であり、その組立は次のように行われる。
【0003】
即ち、コイルスプリングの一端をショックアブゾーバの外筒に設けたバネ受部材に支持させた状態で、該コイルスプリングの他端をマウント部材を介して押圧して該コイルスプリングを所定ストローク圧縮することにより、ショックアブゾーバのピストンロッドの先端を前記マウント部材より上方へ突出させる。そして、この状態で、ナット等の締結部材を該ピストンロッドの先端に締結することにより、該ロッド先端にマウント部材を取り付けるのである。
【0004】
その場合に、コイルスプリングは、サスペンションの種類に応じてバネ定数や自由長等の仕様が異なる複数種のものから正しく選択して組み付ける必要があり、そのため、従来では、例えばコイルスプリングに仕様ごとに異なる色彩の目印を付しておき、その目印にしたがって選択して組み付ける、といった方法が採用されていた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−103940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、同一車種の車両についても、例えば2輪駆動車と4輪駆動車とで車重や車高が異なったり、スポーツタイプとノーマルタイプの車両、或いは仕向け先等によって異なる懸架特性が要求されるなど、サスペンションの種類が多様化して、これに組み付けるコイルスプリングの仕様が増加する傾向にあり、そのため、前述のような目印の色分け等では、作業者が誤って異なる仕様のコイルスプリングを組み付ける誤組付けが増大するおそれがある。
【0007】
そして、サスペンションの場合、コイルスプリングが組みつけられた後に、その仕様が当該サスペンショの種類に適合したものであるか否かのチェックが容易でない、という実情がある。
【0008】
そこで、本発明は、サスペンションの組立時に、仕様通りのコイルスプリングが組み付けられているか否かを組立ながら自動的にチェックすることができる方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、請求項1に記載の発明は、ショックアブゾーバの外筒に設けられたバネ受部材に一端が支持されたコイルスプリングの他端をマウント部材を介して押圧し、該マウント部材が所定の取付位置に達するまでコイルスプリングを圧縮した状態で、該マウント部材を前記ショックアブゾーバのピストンロッドの先端に取り付ける車両のサスペンション組立方法であって、前記コイルスプリングを予め設定された測定位置まで圧縮したときの圧縮荷重を測定すると共に、この測定によって得られた圧縮荷重が、組み付けが指示されている仕様のコイルスプリングについて予め設定された前記測定位置での荷重のばらつき範囲内にあるか否かを判定し、その範囲内にあるときに、組み付けられているコイルスプリングが指示された仕様のものであると判定して、前記取付位置でマウント部材をピストンロッドの先端に取り付けることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両のサスペンション組立方法において、前記測定位置を複数位置設定し、各測定位置でそれぞれ圧縮荷重を測定すると共に、各測定位置における圧縮荷重が、組み付けが指示されている仕様のコイルスプリングについて予め設定された各測定位置での荷重のばらつき範囲内にあるか否かを判定し、全ての測定位置でその範囲内にあるときに、組み付けられているコイルスプリングが指示された仕様のものであると判定することを特徴とする。
【0012】
そして、請求項3に記載の発明は、ショックアブゾーバの外筒に設けられたバネ受部材に一端が支持されたコイルスプリングの他端をマウント部材を介して押圧して該コイルスプリングを圧縮する圧縮手段と、該圧縮手段により前記マウント部材が所定の取付位置に達するまでコイルスプンリングが圧縮された状態で、該マウント部材を前記ショックアブゾーバのピストンロッドの先端に取り付ける取付手段とを有する車両のサスペンション組立装置であって、前記圧縮手段によりコイルスプリングを予め設定された測定位置まで圧縮したときの圧縮荷重を測定する荷重測定手段と、該測定手段によって得られた圧縮荷重が、組み付けが指示されている仕様のコイルスプリングについて予め設定された前記測定位置での荷重のばらつき範囲内にあるか否かを判定し、その範囲内にあるときに組み付けられているコイルスプリングが指示された仕様のものであると判定する判定手段と、該判定手段により組み付けられているコイルスプリングが指示された仕様のものであると判定されたときに、前記取付位置でマウント部材をピストンロッドの先端に取り付けるように前記取付手段を作動させる制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように構成したことにより、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0014】
まず、請求項1の発明に係る方法によれば、サスペンションの組立に際して、コイルスプリングの一端がショックアブゾーバの外筒に設けられたバネ受部材に支持された状態で、その他端をマウント部材を介して押圧して、該スプリングを予め設定された測定位置まで圧縮したときに、該スプリングの圧縮荷重が測定される。
【0015】
その場合に、その測定位置では、組み付けが指示されている仕様のコイルスプリングの圧縮荷重のばらつき範囲が他のコイルスプリングの圧縮荷重のばらつき範囲とオーバーラップしなければ、測定した荷重がそのばらつき範囲内にあるか否かによって、組み付けようとしてるコイルスプリングが指示された仕様のものであるか否かが判定されることになる。
【0016】
つまり、仕様の異なる複数種の各コイルスプリングについて、それぞれの荷重特性に基づき、圧縮荷重のばらつき範囲が他のコイルスプリングとオーバーラップしない測定位置を予め設定しておけば、特定のコイルスプリングの組み付けが指示されたときに、そのコイルスプリングについて設定された測定位置で圧縮荷重を測定し、該荷重がばらつき範囲内にあるか否かを判定することにより、組み付けようとしているコイルスプリングの仕様が指示されたものであるか否かが判定されることになるのである。
【0017】
そして、組み付けようとしているコイルスプリングが指示された仕様のものである場合にのみ、所定の取付位置でマウント部材をピストンロッドの先端に取り付けるので、指示されたものと異なる仕様のコイルスプリングを誤って組み付けることが防止される。
【0018】
ここで、前記測定位置は、一ヶ所の場合、マウント部材の取付位置と一致する場合と、該取付位置までコイルスプリングを圧縮するまでの間の途中の位置である場合とがある。
【0019】
ところで、選択可能なコイルスプリングの種類が多くなると、圧縮荷重のばらつき範囲が他の全てのコイルスプリングとオーバーラップしない測定位置が存在しないものが現れてくる。この場合、一ヶ所の測定位置だけでは、そのスプリングと他のスプリングとの判別ができない可能性が生じる。
【0020】
そこで、請求項2の発明では、そのようなコイルスプリングについては、測定位置を複数設定し、各測定位置でそれぞれ圧縮荷重を測定して、全ての測定位置で圧縮荷重が予め設定された範囲内にある場合に、組み付けようとしているコイルスプリングが指示された仕様のものであると判定する。
【0021】
つまり、各スプリングごとに、圧縮荷重のばらつき範囲が複数の測定位置の全てで当該スプリングとオーバーラップする他のスプリングが存在しないように、その複数の測定位置を予め設定しておけば、全ての測定位置で圧縮荷重が予め設定されたばらつき範囲内にある場合に、組み付けようとしているコイルスプリングが指示されたものであると判定するが可能となるのである。
【0022】
そして、請求項3の発明に係るサスペンションの組立装置によれば、それを作動させることにより前記請求項1の方法が実施され、該方法についての前記効果が達成されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明するサスペンション組立装置は、本発明に係るサスペンション組立装置の実施の形態を構成すると同時に、この装置の動作は、本発明に係るサスペンション組立方法の実施の形態を構成するものである。
【0024】
まず、図1により、サスペンション1の概略の構成を説明すると、該サスペンション1は、主たる構成部材として、ショックアブゾーバ2と、コイルスプリング3と、マウント部材4とを有し、ショックアブゾーバ2の外筒に設けられたバネ受部材2aと、該ショックアブゾーバ2の外筒から突出したピストンロッド2bの先端にナット5を用いて取り付けられたマウント部材4との間に、前記コイルスプリング3を圧縮した状態で装着した構成とされている。
【0025】
次に、図2により、このサスペンションを組み立るサスペンション組立装置10について説明すると、該装置10の本体11の下部には、同一車両に組みつけられる一対のサスペンション1、1のショックアブゾーバ2、2を左右両側に立てた状態で支持する架台12が設けられていると共に、該本体11の上面中央にはサーボモータ13が備えられ、該モータ13によって回転駆動されるネジ軸14が本体11内の上部から垂下されている。
【0026】
そして、本体11内には、図示しないガイド部材により昇降可能に支持された昇降ユニット20が配備され、該ユニット20のベースプレート21に取り付けられたメネジ部材22が前記ネジ軸14に螺合されていることにより、前記サーボモータ13によりネジ軸14が回転駆動されれば、昇降ユニット20の全体が昇降するようになっている。
【0027】
この昇降ユニット20は、前記メネジ部材22が取り付けられたベースプレート21に加えて、その下方に配置されたナットランナ支持プレート23を有し、該ナットランナ支持プレート23に、下方の架台12に立てられる一対のショックアブゾーバ2、2と軸線が一致するように、一対のナットランナ24、24が設置されている。
【0028】
そして、前記ベースプレート21上に設置されたシリンダ25、25の下方に延びるピストンロッド25a、25aの先端に前記ナットランナ支持プレート23が取り付けられており、これらのシリンダ25、25の作動により、昇降ユニット20内で、ナットランナ支持プレート23及び該プレート23に支持されたナットランナ24、24が、ベースプレート21に対して相対的に昇降するようになっている。
【0029】
さらに、前記ナットランナ支持プレート23の下方には、一対の押え部材26、26が配備されている、これらの押え部材26、26は、上下方向に延びる一対の連結ロッド27、27を介して上方のベースプレート21とそれぞれ連結され、該ベースプレート21の昇降、即ちサーボモータ13の作動による昇降ユニット20の昇降と一体的に昇降するようになっている。
【0030】
その場合に、前記連結ロッド27、27の下端部と押え部材26、26の各結合部には、それぞれロードセル28、28が介設されており、両連結ロッドに27、27に作用する軸方向の荷重をそれぞれ測定することができるようなっている。なお、ロードセル28、28の設置位置は、例えば連結ロッド27、27とベースプレート21の結合部や、連結ロッド27、27の中間部等でもよく、要するに両連結ロッドに27、27に作用する荷重をそれぞれ測定することができる位置であればよい。
【0031】
そして、両押え部材26、26の下面には、前記一対のショックアブゾーバ2、2及び一対のナットランナ24、24と軸線を一致させて、これらの間に位置するように、一対のマウント部材保持治具29、29が取り付けられており、該治具29、29の下面に、サスペンション1のマウント部材4がマグネット29a、29aを利用して保持されるようになっている。
【0032】
次に、このサスペンション組立装置10の制御システムを説明すると、図3に示すように、この組立装置10はコントロールユニット30を有し、このコントロールユニット30に、サスペンションの組立を総合的に管理する生産管理システム31からの次に組み立てるサスペンションについての少なくともコイルスプリングの仕様を含む生産情報と、組立装置10を起動させる起動スイッチ32からの信号と、該組立装置10に組み込まれた一対のロードセル28、28からの測定荷重を示す信号とが入力されるようになっており、さらに、このコントロールユニット30には、コイルスプリングの仕様判定用データを記録した記憶装置33が接続されている。
【0033】
そして、前記起動スイッチ32からの信号と、生産管理システム31からの生産情報と、記憶装置33にから読み取った仕様判定用データと、ロードセル28、28からの荷重信号とに基づき、サーボモータ13、ナットランナ24、24、シリンダ25、25、及び警報器34にそれぞれ制御信号を出力するようになっている。
【0034】
ここで、前記記憶装置33に記録されている仕様判定用データの内容を図4に示すテーブルを用いて説明すると、この記憶装置33には、コイルスプリングの各仕様A、B、C…ごとに、圧縮荷重の測定位置の数と、各測定位置についての昇降ユニット20の初期位置からの下降ストローク、及び当該スプリングの荷重特性に基づいて予め設定されたその測定位置での圧縮荷重のばらつき範囲とが記録されている。
【0035】
その場合に、各測定位置とばらつき範囲は、どのように設定されているかを図5によって説明すると、例えば3種類の仕様A、B、Cのコイルスプリングの選択が可能であるとして、図示の第1測定位置では、仕様Aと仕様Cのスプリングのばらつき範囲がオーバーラップし、第2測定位置では、仕様Aと仕様Bのばらつき範囲がオーバーラップするが、仕様Aのスプリングについてみれば、第1、第2測定位置の両方でばらつき範囲がオーバーラップする他のスプリングは存在しない。
【0036】
そこで、仕様Aのコイルスプリングの組み付けが指示されている場合に、まず、第1測定位置で圧縮荷重を測定して、その値が仕様Aのばらつき範囲内にあれば、組み付けようとしているコイルスプリングは少なくとも仕様Bのものではないことが判明し、次に、第2測定位置で圧縮荷重を測定して、その値も仕様Aのばらつき範囲内にあれば、組み付けようとしているコイルスプリングは仕様Cでもないことが判明し、その結果、組み付けようとしているコイルスプリングは仕様Aであることが判定されるのである。
【0037】
なお、図5に示す第1、第2測定位置は、仕様Bと仕様Cのスプリングのばらつき範囲がいずれもオーバーラップするから、これらの測定位置での測定では、組み付けようとしているコイルスプリングの仕様がBかCかの判定ができない可能性がある。つまり、前記のような測定位置の設定は、各仕様ごとに、圧縮荷重のばらつき範囲が、1又は複数の測定位置の全てで、その仕様のスプリングとオーバーラップする他の仕様のスプリングが存在しないように行われるのであり、このようにして設定されたデータが前記記憶装置33に記憶されており、このデータを用いることにより、選択可能な(誤組付けの可能性がある)コイルスプリングの仕様が多くなっても、指示された使用のものであるかどうかの判定が可能となるのである。
【0038】
次に、前記コントロールユニット30の制御によるコイルスプリングの判定処理を含むサスペンショの組立動作を、図6に示すフローチャートに従って説明する。
【0039】
まず、図2に示すように、次に組み立てる1対のサスペンショのショックアブゾーバ2、2を組立装置10の架台12に立て、その外筒に設けられたバネ受部材2a、2aにコイルスプリング3、3の下端を支持させ、かつ治具29、29にマウント部材4、4を保持させる。そして、この状態で起動スイッチ32をオン操作する。
【0040】
このとき、コントロールユニット30のフローチャートに示す動作が開始し、まず、ステップS1で、生産管理システム31から生産情報を読み込み、次に組み立てるサスペンショのコイルスプリング3、3の仕様を取得する。そして、ステップS2で、図4に示すテーブルから、その仕様についての判定用データ、即ち、測定位置の数、各測定位置までの昇降ユニット20の初期位置からのストローク、及び各測定位置での圧縮荷重のばらつき範囲を読み取る。
【0041】
今、例えば、次に組み込むべきことを指示されたコイルスプリング3、3の仕様がAであったとすると、測定位置の数が2であること、それらの測定位置が、初期位置からストロークSA1、SA2の位置であること、荷重のばらつき範囲が、第1測定位置SA1では、WA1L〜WA1U、第2測定位置SA2では、WA2L〜WA2Uであることが読み出される。
【0042】
次に、ステップS3で、測定位置の数をカウントするカウンタの値Iを0にイニシャライズし、ステップS4で、そのカウンタIが前記ステップS2でテーブルルから読み取った測定位置の数I0(仕様Aでは「2」)であるか否かを判定する。そして、最初は、I≠I0であるから、ステップS5を実行し、カウンタ値Iに1を加算した上で(I=1)、ステップS6以下のスプリングの仕様の判別ないし組みつけの動作を実行する。
【0043】
つまり、まずステップS6で、サーボモータ13を所定量回転させ、昇降ユニット20を読み出した1番目のストロークSA1だけ下降させる。このとき、昇降ニット20におけるベースプレート21及び押え部材26、26が一体的に下降し、治具29、29に保持されたマウント部材4、4が、前記ストロークSA1だけ下降することになるが、その途中で該マウント部材4、4がコイルスプリング3、3の上端に当接し、その後は、該スプリング3、3を圧縮しながら下降することになる。したがって、前記ベースプレート21と押え部材26、26とを連結している連結ロッド27、27にコイルスプリング3、3の反力として軸方向の圧縮荷重が作用し、その荷重がロードセル28、28によってそれぞれ測定されることになる。
【0044】
そこで、ステップS7として、マウント部材4、4をストロークSA1だけ下降させた第1測定位置において、ロードセル28、28からの信号が示す圧縮荷重を入力し、ステップS8で、その荷重が仕様Aのコイルスプリング3、3の第1測定位置での圧縮荷重のばらつき範囲WA1L〜WA1Uに入っているか否かを判定し、YESのときには、前記ステップS4に戻る。
【0045】
仕様Aのスプリングの場合、測定位置の数I0は「2」であり、現在カウンタ値Iは「1」であるから、ステップS4から、次に前記ステップS5〜S8を再度実行する。そして、1回目と同様にして、カウンタ値Iを「2」にした上で、2回目の測定位置(初期位置からのストロークSA2)での圧縮荷重がばらつき範囲WA2L〜WA2Uに入っているか否かを判定する。
【0046】
この判定の結果がYESの場合、仕様Aについて設定された2ヶ所の測定位置で、圧縮荷重がいずれもばらつき範囲に入っていたことになるが、これらの測定位置は、その全てで仕様Aのスプリングとばらつき範囲がオーバーラップする他の仕様のスプリングが存在しないように設定されており、したがって、現在組み込もうとしているスプリングは指示された仕様Aのスプリングであることが判明することになる。
【0047】
その場合、ステップS8から再度ステップS4に戻ることになるが、スプリングAの場合、I0=2であり、現在のカウンタ値Iは「2」であるから、次にステップS9を実行し、さらにサーボモータ13を作動させて、マウント部材4、4をピストンロッド2b、2bへの取付位置まで下降させると共に、ステップS10でシリンダ25、25を作動させてナットランナ24、24を下降させると共に、該ナットランナ24、24を作動させて、ナット5、5をマウント部材4、4より上方へ突出するピストンロッド2b、2bの先端に締め付ける。なお、最後の測定位置がマウント部材4、4の取付位置であるときには、前記ステップS9は省略されることになる。
【0048】
これにより、指示された仕様Aのコイルスプリング3、3が組み込まれて、サスペンションの組立が完了し、その後、ステップS11で、前記ナットランナ24、24を停止させた上で、シリンダ25、25により該ナットランナ24、24を上昇させ、また、サーボモータ13を逆方向に回転させて昇降ユニット20を初期位置に戻し、組立装置10を次の一対のサスペンショの組立準備体制に復帰させる。
【0049】
なお、以上の説明は測定位置の数が「2」の仕様Aのコイルスプリングについて行ったが、測定位置の数が「3」であれば、前記ステップS4〜S8を3回繰り返し行うことになり、「1」であれば、1回で終了する。
【0050】
そして、いずれの場合においても、少なくとも一方のロードセル28の信号が示す荷重がばらつき範囲に入っておらず、前記ステップS8の判定結果がNOのときは、組み込まれようとしているコイルスプリングが指示された仕様のものと異なることになり、この場合、直ちにステップS12を実行し、警報が発せられる。これにより、コイルスプリングの仕様が異なることが作業者に知らされ、所定の修復作業を行うことにより、該スプリングの誤組付けが回避されることになる。
【0051】
なお、以上の実施の形態では、一対のサスペンション1、1を組立装置10で同時に測定して組み立てるようにしているが、本発明は、単一のサスペンション1を組み立てる組立装置にも当然適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明によれば、車両用サスペンションの組立に際し、その組立を行いながら、コイルスプリングの誤組付けが未然に防止されることになり、車両の組立現場において有効に活用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の対象となるサスペンショの概略図である。
【図2】実施の形態に係るサスペンション組立装置の全体構成図である。
【図3】同装置の制御システムズである。
【図4】コイルスプリングの仕様判定データテーブルの説明図である。
【図5】仕様判定データの説明図である。
【図6】仕様判定動作を含むサスペンションの組立動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 サスペンション
2 ショックアブゾーバ
2a バネ受部材
2b ピストンロッド
3 コイルスプリング
4 マウント部材
5 ナット
10 組立装置
24 ナットランナ(取付手段)
28 ロードセル(荷重測定手段)
30 コントロールユニット(判定手段、制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに穴を形成する穴開け装置であって、
ワークに穴を打ち抜くパンチ部材と、
前記パンチ部材と別体であって、ワークの穴形成部分を加熱する加熱手段とを有することを特徴とする穴開け装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の穴開け装置において、
前記加熱手段は、ワークの穴形成部分と当接する当接部材を有し、該当接部材を介してワークの穴形成部分を加熱することを特徴とする穴開け装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の穴開け装置において、
当接部材は電極であって、
前記加熱手段は、電極とワークとの間を通電することにより該ワークの穴形成部分を加熱する通電手段を有することを特徴とする穴開け装置。
【請求項4】
前記請求項2または3のいずれかに記載の穴開け装置において、
前記パンチ部材は筒形状であり、
前記当接部材は棒形状であり、該当接部材が前記パンチ部材内に配置されていることを特徴とする穴開け装置。
【請求項5】
前記請求項2または3のいずれかに記載の穴開け装置において、
前記当接部材は筒形状であり、
前記パンチ部材は棒形状であり、該パンチ部材が当接部材内に配置されていることを特徴とする穴開け装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1つに記載の穴開け装置において、
ワークをプレス成形するプレス装置に組み込まれていることを特徴とする穴開け装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載の穴開け装置において、
前記加熱手段は、プレス成形中にワークの穴形成部分の加熱を開始し、
前記パンチ部材は、プレス成形後の型開き前に該部分に穴を打ち抜くように構成されていることを特徴とする穴開け装置。
【請求項8】
予め加熱されたワークがプレス装置でプレス成形される際に該ワークに穴を形成する穴開け方法において、
前記プレス装置の型を通じて放熱されているワークの穴形成部分を加熱手段によって加熱し、その加熱された穴形成部分にパンチ部材によって穴を打ち抜くことを特徴とする穴開け方法。
【請求項9】
前記請求項8に記載の穴開け方法において、
前記加熱手段は、ワークの穴形成部分と当接する電極と、前記電極とワークとの間を通電することにより該ワークの穴形成部分を加熱する通電手段とを有し、かつ前記加熱手段と前記パンチ部材とが前記プレス装置に組み込まれていることを特徴とする穴開け方法。
【請求項10】
前記請求項8または9のいずれかに記載の穴開け方法において、
前記加熱手段は、プレス成形中に、ワークの穴形成部分の加熱を開始し、
前記パンチ部材は、プレス成形後の型開き前に該部分に穴を打ち抜くように構成されていることを特徴とする穴開け方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1つに記載の穴開け方法において、
ワークは、引張強度約600MPa以上の高張力鋼であることを特徴とする穴開け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−320489(P2007−320489A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154887(P2006−154887)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】