車両のステアリングハンガー取付構造
【課題】インストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることを可能にするとともに、ステアリングハンガーの取付けの剛性の向上を図ることを可能とする。
【解決手段】左右のピラー33,33間にステアリングハンガー43を渡すとともに、左右のピラ−33,33間にステアリングハンガー43を車幅外方からボルト(第1のボルト)46で固定し、左右のピラー33,33の車幅外方に車両用ドア24の開閉ヒンジ支点78を設けた車両10において、ピラー33が、車幅方向に設けるアウタパネル67と、車幅内方に設けるインナパネル68とで閉断面79に形成したものであり、この閉断面79内に設けることでボルト46を貫通させるカラー(第1のカラー)56を備え、このカラー56側方に、ボルト46の外径よりも大きなスリット65を設けた。
【解決手段】左右のピラー33,33間にステアリングハンガー43を渡すとともに、左右のピラ−33,33間にステアリングハンガー43を車幅外方からボルト(第1のボルト)46で固定し、左右のピラー33,33の車幅外方に車両用ドア24の開閉ヒンジ支点78を設けた車両10において、ピラー33が、車幅方向に設けるアウタパネル67と、車幅内方に設けるインナパネル68とで閉断面79に形成したものであり、この閉断面79内に設けることでボルト46を貫通させるカラー(第1のカラー)56を備え、このカラー56側方に、ボルト46の外径よりも大きなスリット65を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラ−にステアリングハンガーを取付ける車両のステアリングハンガー取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングハンガー取付構造として、ピラー外方からステアリングハンガーをボルトで取付けるものが実用に供されている。
実用の車両のステアリングハンガー取付構造は、ステアリングハンガーやインストルメントパネルの取付け若しくは取外しの際は車両用ドアを取外して組付け作業をすれば実用上十分であった。
【0003】
このような車両のステアリングハンガー取付構造として、車両用ドアを取外すことなくステアリングハンガーやインストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業をできるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−329606号公報(第5頁、図2)
【0004】
特許文献1の技術を説明する。
図11は従来の基本構成を説明する図であり、車両のステアリングハンガー取付構造200は、車体の左右に配置するピラー201(一方不図示)と、このピラー201にブラケット202を介して取付けるステアリングハンガー(ステアリングサポートメンバ)203と、このステアリングハンガー203に予め組付けするインストルメントパネル204と、ピラー201にブラケット202を取付けるボルト205と、からなり、車室206側からボルト205を取外してステアリングハンガー203を取外すことで、例えば、車両用ドア(不図示)を取外すことなくインストルメントパネル204やインストルメントパネル204取外し若しくは取付けを可能としたものである。
【0005】
しかし、車両のステアリングハンガー取付構造200では、ピラー201にブラケット202を介してステアリングハンガー203を取付け、このステアリングハンガー203にインストルメントパネル204を取付けるものなので、インストルメントパネル204の取外し若しくは取付け作業の改善は図れたものの、ステアリングハンガー203の取付けの剛性の向上を望むことには限界がある。やはり、剛性の高いピラー201に直接取付けたいものである。
【0006】
すなわち、インストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、ステアリングハンガーの取付けの剛性の向上を図ることができる車両のステアリングハンガー取付構造が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、ステアリングハンガーの取付けの剛性の向上を図ることができる車両のステアリングハンガー取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明のステアリングハンガー取付構造は、左右のピラー間にステアリングハンガーを渡すとともに、左右のピラ−間にステアリングハンガーを車幅外方からボルトで固定し、左右のピラーの車幅外方に車両用ドアの開閉ヒンジ支点を設けた車両において、ピラーが、車幅方向に設けるアウタパネルと、車幅内方に設けるインナパネルとで閉断面に形成したものであり、この閉断面内に設けることでボルトを貫通させるカラーを備え、このカラー側方に、ボルトの外径よりも大きなスリットを設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、カラーからピラーに保持するためのステー部を延出したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、カラーを、複数個一体的に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、ピラーが、車幅方向に設けるアウタパネルと、車幅内方に設けるインナパネルとで閉断面に形成したものであり、この閉断面内に設けることでボルトを貫通させるカラーを備え、このカラー側方に、ボルトの外径よりも大きなスリットを設けたので、ピラーのアウタパネルの車幅外方に車両用ドアなどの構造物があるときにも、カラーの途中からボルトを車両用ドアの開放側に向け傾けてボルトの取外し若しくは取付けをすることができる。これにより、メンテナンス修理でステアリングハンガーを取外す際、車両用ドアを取外すことがない。ピラーの閉断面内にカラーを設けるのでステアリングハンガーの取付剛性が向上できる。この結果、インストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、インストルメントパネルの取付けの剛性の向上を図ることができるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、カラーからピラーに保持するためのステー部を延出したので、カラーの取付性の向上を図ることができる。この結果、カラーの用途の拡大を図ることができるという利点がある。また、カラーは、プレス成形により容易に形成することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、カラーを、複数個一体的に形成したので、カラーの取付工数の低減を図ることができる。この結果、ステアリングハンガー取付構造のコストの低減を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造を採用した車両の斜視図である。
図中、10は車両、11は車体、13はフロントバンパ、14はボンネット、15は前照灯、16はフロントグリル、17はフロントフェンダ、18はフロントウインドウ、21はルーフ、22は前輪、23は後輪、24は車両用ドアとしての前ドア、25は後ドア、26はドアミラー、27はテールゲート、29はリヤバンパであり、本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造40(以下、「ステアリングハンガー取付構造40」と略記する)は、インストルメントパネル44の取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図るとともに、ステアリングハンガー43の取付けの剛性の向上を図った構造である。以下、詳細を説明する。
【0015】
図2は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造を採用したサイドボディの斜視図であり、サイドボディ31は、前方上部の骨組みを構成するフロントピラーアッパ(フロントピラー)32と、このフロントピラーアッパ32の前端から下方に延ばしたフロントピラーロア33(以下「ピラー33」と記載する)と、フロントピラー32の後端から後方に延ばしたルーフレール34と、ピラー33の下端から後方に延ばしたサイドシル35と、これらのルーフレール34及びサイドシル35の中間部を繋ぐセンタピラー36とを備える。
【0016】
ステアリングハンガー取付構造40は、ピラー33にステアリングハンカー組立体41を着脱自在に取付ける構造であり、ステアリングハンカー組立体41を、左右のピラー33,33(右の33は不図示)に取付ける左右のブラケット42,42(右の42は不図示)と、この左右のブラケット42,42に渡すステアリングハンガー43と、左右のブラケット42,42で支持するインストルメントパネル(パネル本体)44と、から構成する。
【0017】
図3は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の斜視図であり、ステアリングハンガー取付構造40は、先に説明したピラー33と、このピラー33に取付けるブラケット42と、このブラケット42に取付けるステアリングハンガー43と、ブラケット42で支持するインストルメントパネル44(図2参照)と、ブラケット42を取付ける第1〜第3のボルト46〜48と、ピラー33側に取付けることでブラケット42の仮置きを可能にする引っ掛け用ピン49と、ブラケット42に取付けることで第1〜第3のボルト46〜48をねじ込む第1〜第3のナット51〜53と、ピラー33側に設けることで第1〜第3のボルト46〜48を案内する第1〜第3のカラー56〜58と、から構成する。
59はブラケット42に形成した引っ掛け用ピン49に掛ける切り欠き部である。
【0018】
図4は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の第1のカラーの斜視図であり、カラーとしての第1のカラー56は、ボルト46を貫通させる貫通部61と、この貫通部61から側方に延出した延出部62と、この延出部62に折曲げ形成したステー部63と、このステー部63に開けた位置決め孔64と、貫通部61の側方に設けた第1のボルト46の外径よりも大きなスリット65と、からなる。
【0019】
すなわち、第1のカラー56は、貫通部61の軸線C1に対して矢印Aのように、第1のボルト46を傾けて、貫通部61に抜き差しすることを許容するものであり、貫通部61の入口61aから第1のボルト46の長さ以内に第1のボルト46を抜き差しするときに邪魔になる構造物があるときに好適な構造である。
【0020】
図5は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の第2のカラーの斜視図であり、第2のカラー57は、第2のカラー57の軸線C2に沿わして第2のボルト47を抜き差しするものであり、第2のカラー57の入口57aから第2のボルト47の長さを超える範囲に第2のボルト47を抜き差しするときに邪魔になる構造物がないときに採用すべき構造であると言える。
なお、第3のカラー58(図3参照)は、第2のカラー57に同一構造のカラーである。
【0021】
図6は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の断面図であり、ピラー33は、車幅方向に設けるアウタパネル67と、車幅内方に設けるインナパネル68と、これらのアウタパネル67とインナパネル68との間に設ける補強部材(スチフナ)69と、この補強部材69に取付けることでアウタパネル67とインナパネル68との間に渡した第1のカラー56と、を備えたことを示す。
【0022】
なお、71はアウタパネル67に設けたボルト貫通孔、72はインナパネル68に設けたボルト貫通孔、73は補強部材69に設けたボルト貫通孔、74はブラケット42に設けたボルト貫通孔、75は第1のカラーを位置決めする突起、76はピラー33に取付けたウェザストリップ、77は車両用ドア24に取付けたウェザストリップ、78は車両用ドア24の開閉ヒンジ支点、79はアウタパネル67とインナパネル68とで構成する閉断面である。
【0023】
ステアリングハンガー取付構造40は、左右のピラー33,33(一方不図示)間にステアリングハンガー43(図3参照)を渡すとともに、左右のピラ−33,33間にステアリングハンガー43を車幅外方からボルト(第1のボルト)46で固定し、左右のピラー33,33の車幅外方に車両用ドア24の開閉ヒンジ支点78を設けた車両10において、ピラー33が、車幅方向に設けるアウタパネル67と、車幅内方に設けるインナパネル68とで閉断面79に形成したものであり、この閉断面79内に設けることでボルト46を貫通させるカラー(第1のカラー)56を備え、このカラー56側方に、ボルト46の外径よりも大きなスリット65を設けたものとも言える。
【0024】
例えば、インストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、インストルメントパネルの取付けの剛性の向上を図ることができるとすれば、作業性の向上と品質の向上を両立することができるので好ましいことである。
【0025】
そこで、ピラー33が、車幅方向に設けるアウタパネル67と、車幅内方に設けるインナパネル68とで閉断面79に形成したものであり、この閉断面79内に設けることでボルト(第1のボルト)46を貫通させるカラー(第1のカラー)56を備え、このカラー56側方に、ボルト46の外径よりも大きなスリット65を設けたので、ピラー56のアウタパネル67の車幅外方に車両用ドア24などの構造物があるときにも、カラー56の途中からボルト46を車両用ドア24の開放側に向け傾けてボルト46の取外し若しくは取付けをすることができる。これにより、メンテナンス修理でステアリングハンガー43を取外す際、車両用ドアを取外すことがない。ピラー33の閉断面79内にカラー56を設けるのでステアリングハンガー43の取付剛性が向上できる。この結果、インストルメントパネル44の取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、インストルメントパネル44の取付けの剛性の向上を図ることができる。
【0026】
ステアリングハンガー取付構造40は、カラー(第1のカラー)56からピラー33に保持するためのステー部63を延出したものとも言える。
カラー56からピラー33に保持するためのステー部63を延出することで、カラー56の取付性の向上を図ることができる。この結果、カラー56の用途の拡大を図ることができる。また、カラー56は、プレス成形により容易に形成することができる。
【0027】
以上に述べたステアリングハンガー取付構造40の作用を説明する。
図7(a),(b)は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト取付状態の作用説明図であり、(a)は実施例のステアリングハンガー取付構造40を示し、(b)は比較例の車両のステアリングハンガー取付構造100(以下、「ステアリングハンガー取付構造100」と略記する)を示す。
(a)において、ステアリングハンガー取付構造40は、スリット65を備えた第1のカラー56をピラー33内部に設けたものである。
【0028】
(b)において、ステアリングハンガー取付構造100は、円筒のカラー101をピラー102内部に設けたものである。図中、103はボルト、104はアウタパネル、105はインナパネル、106は補強部材(スチフナ)、107はステアリングハンガー組立体、108はブラケット、109は車両用ドアである。
【0029】
図8(a),(b)は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト取外し開始直後の作用説明図であり、(a)は実施例の車両のステアリングハンガー取付構造40を示し、(b)は比較例の車両のステアリングハンガー取付構造100を示す。
(a)において、第1のボルト46を矢印a1の如く弛める。
(b)において、ボルト103をb1の如く弛める。ボルト103は車両用ドア109に当たる。ステアリングハンガー取付構造100では、円筒のカラー101をピラー102内部に設けたものなので、車両用ドア109を取外さないと、ボルト103の脱着はできない。
【0030】
図9(a),(b)は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト傾斜状態及びボルト取外し状態の作用説明図である。
(a)において、ステアリングハンガー取付構造40は、スリット65を備えた第1のカラー56をピラー33内部に設けたものなので、矢印a2の如く第1のボルト56を傾けることができる。
【0031】
(b)において、ステアリングハンガー取付構造40は、スリット65を備えた第1のカラー56をピラー33内部に設けたものなので、矢印a3の如く第1のボルト56を傾けてピラー33から抜くことができる。従って、車両用ドア24を取外すことなく、ステアリングハンガー組立体41(ステアリングハンガー43)を脱着することができる。
【0032】
図10は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の別実施例のカラーの斜視図であり、カラー複合体86は、ベース部91と、このベース部91の両端に設けることでボルト46を貫通させるカラー92,93と、これらのカラー92,93にそれぞれ設けることで第1のボルト46の外径よりも大きなスリット94,95と、ベース部91から折曲げることで形成したステー部96と、このステー部96に開けた位置決め孔97と、からなる。
【0033】
カラー複合体86は、カラー92,93を、複数個一体的に形成したものと言える。
カラー92,93を、複数個一体的に形成することで、カラー92,93の取付工数の低減を図ることができる。この結果、ステアリングハンガー取付構造40(図6参照)のコストの低減を図ることができる。
【0034】
尚、本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造は、図3に示すように、第1のボルト46を使用する部分にスリット65付きの第1のカラー56を設けたが、これに限るものではなく、車両用ドアなどの干渉状態に応じて適宜増加することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造を採用した車両の斜視図である。
【図2】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造を採用したサイドボディの斜視図である。
【図3】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の斜視図である。
【図4】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の第1のカラーの斜視図である。
【図5】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の第2のカラーの斜視図である。
【図6】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の断面図である。
【図7】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト取付状態の作用説明図である。
【図8】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト取外し開始直後の作用説明図である。
【図9】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト傾斜状態及びボルト取外し状態の作用説明図である。
【図10】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の別実施例のカラーの斜視図である。
【図11】従来の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
10…車両、24…車両用ドア、33…ピラー、40…ステアリングハンガー取付構造、41…ステアリングハンガー組立体、43…ステアリングハンガー、46…ボルト(第1のボルト)、56…カラー(第1のカラー)、63…ステー部、65…スリット、67…アウタパネル、78…開閉ヒンジ支点、79…閉断面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラ−にステアリングハンガーを取付ける車両のステアリングハンガー取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングハンガー取付構造として、ピラー外方からステアリングハンガーをボルトで取付けるものが実用に供されている。
実用の車両のステアリングハンガー取付構造は、ステアリングハンガーやインストルメントパネルの取付け若しくは取外しの際は車両用ドアを取外して組付け作業をすれば実用上十分であった。
【0003】
このような車両のステアリングハンガー取付構造として、車両用ドアを取外すことなくステアリングハンガーやインストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業をできるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−329606号公報(第5頁、図2)
【0004】
特許文献1の技術を説明する。
図11は従来の基本構成を説明する図であり、車両のステアリングハンガー取付構造200は、車体の左右に配置するピラー201(一方不図示)と、このピラー201にブラケット202を介して取付けるステアリングハンガー(ステアリングサポートメンバ)203と、このステアリングハンガー203に予め組付けするインストルメントパネル204と、ピラー201にブラケット202を取付けるボルト205と、からなり、車室206側からボルト205を取外してステアリングハンガー203を取外すことで、例えば、車両用ドア(不図示)を取外すことなくインストルメントパネル204やインストルメントパネル204取外し若しくは取付けを可能としたものである。
【0005】
しかし、車両のステアリングハンガー取付構造200では、ピラー201にブラケット202を介してステアリングハンガー203を取付け、このステアリングハンガー203にインストルメントパネル204を取付けるものなので、インストルメントパネル204の取外し若しくは取付け作業の改善は図れたものの、ステアリングハンガー203の取付けの剛性の向上を望むことには限界がある。やはり、剛性の高いピラー201に直接取付けたいものである。
【0006】
すなわち、インストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、ステアリングハンガーの取付けの剛性の向上を図ることができる車両のステアリングハンガー取付構造が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、ステアリングハンガーの取付けの剛性の向上を図ることができる車両のステアリングハンガー取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明のステアリングハンガー取付構造は、左右のピラー間にステアリングハンガーを渡すとともに、左右のピラ−間にステアリングハンガーを車幅外方からボルトで固定し、左右のピラーの車幅外方に車両用ドアの開閉ヒンジ支点を設けた車両において、ピラーが、車幅方向に設けるアウタパネルと、車幅内方に設けるインナパネルとで閉断面に形成したものであり、この閉断面内に設けることでボルトを貫通させるカラーを備え、このカラー側方に、ボルトの外径よりも大きなスリットを設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、カラーからピラーに保持するためのステー部を延出したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、カラーを、複数個一体的に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、ピラーが、車幅方向に設けるアウタパネルと、車幅内方に設けるインナパネルとで閉断面に形成したものであり、この閉断面内に設けることでボルトを貫通させるカラーを備え、このカラー側方に、ボルトの外径よりも大きなスリットを設けたので、ピラーのアウタパネルの車幅外方に車両用ドアなどの構造物があるときにも、カラーの途中からボルトを車両用ドアの開放側に向け傾けてボルトの取外し若しくは取付けをすることができる。これにより、メンテナンス修理でステアリングハンガーを取外す際、車両用ドアを取外すことがない。ピラーの閉断面内にカラーを設けるのでステアリングハンガーの取付剛性が向上できる。この結果、インストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、インストルメントパネルの取付けの剛性の向上を図ることができるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、カラーからピラーに保持するためのステー部を延出したので、カラーの取付性の向上を図ることができる。この結果、カラーの用途の拡大を図ることができるという利点がある。また、カラーは、プレス成形により容易に形成することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、カラーを、複数個一体的に形成したので、カラーの取付工数の低減を図ることができる。この結果、ステアリングハンガー取付構造のコストの低減を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造を採用した車両の斜視図である。
図中、10は車両、11は車体、13はフロントバンパ、14はボンネット、15は前照灯、16はフロントグリル、17はフロントフェンダ、18はフロントウインドウ、21はルーフ、22は前輪、23は後輪、24は車両用ドアとしての前ドア、25は後ドア、26はドアミラー、27はテールゲート、29はリヤバンパであり、本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造40(以下、「ステアリングハンガー取付構造40」と略記する)は、インストルメントパネル44の取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図るとともに、ステアリングハンガー43の取付けの剛性の向上を図った構造である。以下、詳細を説明する。
【0015】
図2は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造を採用したサイドボディの斜視図であり、サイドボディ31は、前方上部の骨組みを構成するフロントピラーアッパ(フロントピラー)32と、このフロントピラーアッパ32の前端から下方に延ばしたフロントピラーロア33(以下「ピラー33」と記載する)と、フロントピラー32の後端から後方に延ばしたルーフレール34と、ピラー33の下端から後方に延ばしたサイドシル35と、これらのルーフレール34及びサイドシル35の中間部を繋ぐセンタピラー36とを備える。
【0016】
ステアリングハンガー取付構造40は、ピラー33にステアリングハンカー組立体41を着脱自在に取付ける構造であり、ステアリングハンカー組立体41を、左右のピラー33,33(右の33は不図示)に取付ける左右のブラケット42,42(右の42は不図示)と、この左右のブラケット42,42に渡すステアリングハンガー43と、左右のブラケット42,42で支持するインストルメントパネル(パネル本体)44と、から構成する。
【0017】
図3は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の斜視図であり、ステアリングハンガー取付構造40は、先に説明したピラー33と、このピラー33に取付けるブラケット42と、このブラケット42に取付けるステアリングハンガー43と、ブラケット42で支持するインストルメントパネル44(図2参照)と、ブラケット42を取付ける第1〜第3のボルト46〜48と、ピラー33側に取付けることでブラケット42の仮置きを可能にする引っ掛け用ピン49と、ブラケット42に取付けることで第1〜第3のボルト46〜48をねじ込む第1〜第3のナット51〜53と、ピラー33側に設けることで第1〜第3のボルト46〜48を案内する第1〜第3のカラー56〜58と、から構成する。
59はブラケット42に形成した引っ掛け用ピン49に掛ける切り欠き部である。
【0018】
図4は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の第1のカラーの斜視図であり、カラーとしての第1のカラー56は、ボルト46を貫通させる貫通部61と、この貫通部61から側方に延出した延出部62と、この延出部62に折曲げ形成したステー部63と、このステー部63に開けた位置決め孔64と、貫通部61の側方に設けた第1のボルト46の外径よりも大きなスリット65と、からなる。
【0019】
すなわち、第1のカラー56は、貫通部61の軸線C1に対して矢印Aのように、第1のボルト46を傾けて、貫通部61に抜き差しすることを許容するものであり、貫通部61の入口61aから第1のボルト46の長さ以内に第1のボルト46を抜き差しするときに邪魔になる構造物があるときに好適な構造である。
【0020】
図5は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の第2のカラーの斜視図であり、第2のカラー57は、第2のカラー57の軸線C2に沿わして第2のボルト47を抜き差しするものであり、第2のカラー57の入口57aから第2のボルト47の長さを超える範囲に第2のボルト47を抜き差しするときに邪魔になる構造物がないときに採用すべき構造であると言える。
なお、第3のカラー58(図3参照)は、第2のカラー57に同一構造のカラーである。
【0021】
図6は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の断面図であり、ピラー33は、車幅方向に設けるアウタパネル67と、車幅内方に設けるインナパネル68と、これらのアウタパネル67とインナパネル68との間に設ける補強部材(スチフナ)69と、この補強部材69に取付けることでアウタパネル67とインナパネル68との間に渡した第1のカラー56と、を備えたことを示す。
【0022】
なお、71はアウタパネル67に設けたボルト貫通孔、72はインナパネル68に設けたボルト貫通孔、73は補強部材69に設けたボルト貫通孔、74はブラケット42に設けたボルト貫通孔、75は第1のカラーを位置決めする突起、76はピラー33に取付けたウェザストリップ、77は車両用ドア24に取付けたウェザストリップ、78は車両用ドア24の開閉ヒンジ支点、79はアウタパネル67とインナパネル68とで構成する閉断面である。
【0023】
ステアリングハンガー取付構造40は、左右のピラー33,33(一方不図示)間にステアリングハンガー43(図3参照)を渡すとともに、左右のピラ−33,33間にステアリングハンガー43を車幅外方からボルト(第1のボルト)46で固定し、左右のピラー33,33の車幅外方に車両用ドア24の開閉ヒンジ支点78を設けた車両10において、ピラー33が、車幅方向に設けるアウタパネル67と、車幅内方に設けるインナパネル68とで閉断面79に形成したものであり、この閉断面79内に設けることでボルト46を貫通させるカラー(第1のカラー)56を備え、このカラー56側方に、ボルト46の外径よりも大きなスリット65を設けたものとも言える。
【0024】
例えば、インストルメントパネルの取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、インストルメントパネルの取付けの剛性の向上を図ることができるとすれば、作業性の向上と品質の向上を両立することができるので好ましいことである。
【0025】
そこで、ピラー33が、車幅方向に設けるアウタパネル67と、車幅内方に設けるインナパネル68とで閉断面79に形成したものであり、この閉断面79内に設けることでボルト(第1のボルト)46を貫通させるカラー(第1のカラー)56を備え、このカラー56側方に、ボルト46の外径よりも大きなスリット65を設けたので、ピラー56のアウタパネル67の車幅外方に車両用ドア24などの構造物があるときにも、カラー56の途中からボルト46を車両用ドア24の開放側に向け傾けてボルト46の取外し若しくは取付けをすることができる。これにより、メンテナンス修理でステアリングハンガー43を取外す際、車両用ドアを取外すことがない。ピラー33の閉断面79内にカラー56を設けるのでステアリングハンガー43の取付剛性が向上できる。この結果、インストルメントパネル44の取付け若しくは取外し作業の作業性の向上を図ることができるとともに、インストルメントパネル44の取付けの剛性の向上を図ることができる。
【0026】
ステアリングハンガー取付構造40は、カラー(第1のカラー)56からピラー33に保持するためのステー部63を延出したものとも言える。
カラー56からピラー33に保持するためのステー部63を延出することで、カラー56の取付性の向上を図ることができる。この結果、カラー56の用途の拡大を図ることができる。また、カラー56は、プレス成形により容易に形成することができる。
【0027】
以上に述べたステアリングハンガー取付構造40の作用を説明する。
図7(a),(b)は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト取付状態の作用説明図であり、(a)は実施例のステアリングハンガー取付構造40を示し、(b)は比較例の車両のステアリングハンガー取付構造100(以下、「ステアリングハンガー取付構造100」と略記する)を示す。
(a)において、ステアリングハンガー取付構造40は、スリット65を備えた第1のカラー56をピラー33内部に設けたものである。
【0028】
(b)において、ステアリングハンガー取付構造100は、円筒のカラー101をピラー102内部に設けたものである。図中、103はボルト、104はアウタパネル、105はインナパネル、106は補強部材(スチフナ)、107はステアリングハンガー組立体、108はブラケット、109は車両用ドアである。
【0029】
図8(a),(b)は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト取外し開始直後の作用説明図であり、(a)は実施例の車両のステアリングハンガー取付構造40を示し、(b)は比較例の車両のステアリングハンガー取付構造100を示す。
(a)において、第1のボルト46を矢印a1の如く弛める。
(b)において、ボルト103をb1の如く弛める。ボルト103は車両用ドア109に当たる。ステアリングハンガー取付構造100では、円筒のカラー101をピラー102内部に設けたものなので、車両用ドア109を取外さないと、ボルト103の脱着はできない。
【0030】
図9(a),(b)は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト傾斜状態及びボルト取外し状態の作用説明図である。
(a)において、ステアリングハンガー取付構造40は、スリット65を備えた第1のカラー56をピラー33内部に設けたものなので、矢印a2の如く第1のボルト56を傾けることができる。
【0031】
(b)において、ステアリングハンガー取付構造40は、スリット65を備えた第1のカラー56をピラー33内部に設けたものなので、矢印a3の如く第1のボルト56を傾けてピラー33から抜くことができる。従って、車両用ドア24を取外すことなく、ステアリングハンガー組立体41(ステアリングハンガー43)を脱着することができる。
【0032】
図10は本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の別実施例のカラーの斜視図であり、カラー複合体86は、ベース部91と、このベース部91の両端に設けることでボルト46を貫通させるカラー92,93と、これらのカラー92,93にそれぞれ設けることで第1のボルト46の外径よりも大きなスリット94,95と、ベース部91から折曲げることで形成したステー部96と、このステー部96に開けた位置決め孔97と、からなる。
【0033】
カラー複合体86は、カラー92,93を、複数個一体的に形成したものと言える。
カラー92,93を、複数個一体的に形成することで、カラー92,93の取付工数の低減を図ることができる。この結果、ステアリングハンガー取付構造40(図6参照)のコストの低減を図ることができる。
【0034】
尚、本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造は、図3に示すように、第1のボルト46を使用する部分にスリット65付きの第1のカラー56を設けたが、これに限るものではなく、車両用ドアなどの干渉状態に応じて適宜増加することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造を採用した車両の斜視図である。
【図2】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造を採用したサイドボディの斜視図である。
【図3】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の斜視図である。
【図4】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の第1のカラーの斜視図である。
【図5】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の第2のカラーの斜視図である。
【図6】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の断面図である。
【図7】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト取付状態の作用説明図である。
【図8】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト取外し開始直後の作用説明図である。
【図9】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造のボルト傾斜状態及びボルト取外し状態の作用説明図である。
【図10】本発明に係る車両のステアリングハンガー取付構造の別実施例のカラーの斜視図である。
【図11】従来の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
10…車両、24…車両用ドア、33…ピラー、40…ステアリングハンガー取付構造、41…ステアリングハンガー組立体、43…ステアリングハンガー、46…ボルト(第1のボルト)、56…カラー(第1のカラー)、63…ステー部、65…スリット、67…アウタパネル、78…開閉ヒンジ支点、79…閉断面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のピラー間にステアリングハンガーを渡すとともに、左右のピラ−間に前記ステアリングハンガーを車幅外方からボルトで固定し、左右のピラーの車幅外方に車両用ドアの開閉ヒンジ支点を設けた車両において、
前記ピラーは、車幅方向に設けるアウタパネルと、車幅内方に設けるインナパネルとで閉断面に形成したものであり、この閉断面内に設けることで前記ボルトを貫通させるカラーを備え、
このカラー側方に、前記ボルトの外径よりも大きなスリットを設けたことを特徴とする車両のステアリングハンガー取付構造。
【請求項2】
前記カラーから前記ピラーに保持するためのステー部を延出したことを特徴とする請求項1記載の車両のステアリングハンガー取付構造。
【請求項3】
前記カラーを、複数個一体的に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両のステアリングハンガー取付構造。
【請求項1】
左右のピラー間にステアリングハンガーを渡すとともに、左右のピラ−間に前記ステアリングハンガーを車幅外方からボルトで固定し、左右のピラーの車幅外方に車両用ドアの開閉ヒンジ支点を設けた車両において、
前記ピラーは、車幅方向に設けるアウタパネルと、車幅内方に設けるインナパネルとで閉断面に形成したものであり、この閉断面内に設けることで前記ボルトを貫通させるカラーを備え、
このカラー側方に、前記ボルトの外径よりも大きなスリットを設けたことを特徴とする車両のステアリングハンガー取付構造。
【請求項2】
前記カラーから前記ピラーに保持するためのステー部を延出したことを特徴とする請求項1記載の車両のステアリングハンガー取付構造。
【請求項3】
前記カラーを、複数個一体的に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両のステアリングハンガー取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−284015(P2007−284015A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116754(P2006−116754)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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