説明

車両のドアハンドル装置

【課題】車両のドアハンドル装置に関し、利用者による直接の押下操作であっても、あるいはハンドル本体への回転操作による間接的な操作のいずれであっても押しボタンスイッチへの操作を可能にして利便性を向上させることを目的とする。
【解決手段】押しボタンスイッチ1が固定されたハンドルベース2にハンドル本体3を初期回転位置と操作回転位置との間に回転操作自在に連結した車両のドアハンドル装置7であって、
前記押しボタンスイッチ1は、利用者による直接押下操作が可能で、かつ、ハンドル本体3の初期回転位置から操作回転位置への回転操作時にハンドル本体3により押圧されて押下操作されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアの開閉操作に伴う電子部品を起動するためのスイッチを備えたハンドル装置としては、特許文献1、2記載のものが知られている。特許文献1記載のハンドル装置は、エスカッション(ハンドルベース)にアウトサイドハンドル(ハンドル本体)を回転操作可能に連結して形成され、ハンドルベースに開閉操作スイッチ(押しボタンスイッチ)が固定される。
【0003】
押しボタンスイッチは、押しボタン部をハンドルベース外部に露出させて固定され、当該押しボタン部を押下操作することによりドアロック装置の施解錠操作が行われる。
【0004】
これに対し、特許文献2記載のハンドル装置において、リミットスイッチ(押しボタンスイッチ)がドア内に配置されており、ハンドル本体への回転操作によりON、OFFされる。
【0005】
しかし、上述したいずれの従来例においても、押しボタンスイッチは、利用者による押下操作、あるいはハンドル本体への回転操作によって作動するために、使い勝手が悪いという欠点がある。
【特許文献1】特開2005-90087号公報
【特許文献2】特公平3-12192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、利用者による直接の押下操作であっても、あるいはハンドル本体への回転操作による間接的な操作のいずれであっても押しボタンスイッチへの操作を可能にして利便性を向上させた車両のドアハンドル装置を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、このハンドル装置を使用した車両のドアの施解錠制御システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ドアハンドル装置7はハンドルベース2にハンドル本体3を回転操作自在に連結して形成され、ハンドルベース2にはドアハンドル装置7、あるいは車体に搭載される電子装置を制御するための押しボタンスイッチ1が固定される。電子装置は、例えば、ドアの閉塞状態を維持するためにドアに固定されるドアロック装置8に対する施解錠操作手段であっても、あるいは夜間の照明装置であってもよい。
【0008】
押しボタンスイッチ1は、利用者が押圧操作可能な状態で、すなわち、押しボタン頭部6を外部に露出させた状態で配置される。押しボタンスイッチ1の位置は、特許文献1に記載されるように、ハンドル本体3の手掛け部4から離れた位置であっても、あるいは図5に示すように、初期回転姿勢において手掛け部4に重合する位置であってもよく、手掛け部4に重合する位置に押しボタンスイッチ1を配置する場合、ハンドル本体3の手掛け部4にはボタン露出開口5が開設される。
【0009】
本発明において、押しボタンスイッチ1は、上述した利用者による直接押下操作に加え、ハンドル本体3の初期回転位置から操作回転位置側への回転操作に同期して押下操作される。ハンドル本体3の回転操作と押しボタンスイッチ1の押下操作の同期は、例えば、押しボタンスイッチ1、あるいはハンドル本体3のいずれか一方、または双方に、ハンドル本体3の初期回転位置から操作回転位置側への回転操作と押しボタンスイッチ1への押下操作を連動させるための干渉部を設けておくことにより簡単に実現できる。
【0010】
押しボタンスイッチ1の押下を利用者による直接操作によっても、あるいはハンドル本体3の回転操作によっても可能とすることにより、利用者はハンドル操作時の状態によっていずれかを選択して押しボタンスイッチ1を操作することができるために、利便性が向上する。
【0011】
ハンドル本体3が初期回転位置から操作回転位置に至り、再び初期回転位置に復帰する1往復の間の押しボタンスイッチ1に対する押下操作の回数は、ハンドル本体3と押しボタンスイッチ1との干渉をハンドル本体3の操作途中で解除することにより、適宜設定することができる。1往復中の押しボタンスイッチ1の押下回数を複数回に設定すると、利用者による直接操作との区別をすることが可能になり、この回数を適宜の制御部9においてカウントすることにより、ハンドル本体3の操作に対して、利用者による直接操作とは異なった機能を割り当てることも可能になる。
【0012】
また、以上のハンドル装置7を利用した施解錠制御システムは、
上記ハンドル装置7と、
ロック状態において閉扉状態を維持し、ハンドル本体3の回転によりロック状態が解除されるとともに、施錠状態においてハンドル本体3からのロック解除操作が規制されるドアロック装置8と、
前記押しボタンスイッチ1の押下を検出した際に利用者が所持する認証信号発信器への認証信号出力要求信号を出力するとともに、認証信号発信器からの受信信号に対する認証成立を条件にドアロック装置8の施錠状態を解除駆動する制御部9と、を有し、
前記押しボタンスイッチ1は、ドアロック装置8に対するロック解除操作開始回転位置から所定角度初期回転位置寄りの回転位置においてハンドル本体3により押下操作されるように構成することができる。
【0013】
押しボタンスイッチ1を、ハンドル本体3の回転操作に同期させて、ドアロック装置8に対するロック解除操作開始回転位置手前で押下操作し、次いで、ロック解除操作開始回転位置に至るまでの間に制御部9が利用者が所持する認証信号発信器に対する認証、およびドアロック装置8の解錠操作を行うようにすると、利用者は、ハンドル本体3に対する1回の回転操作によってのみドアの開放操作を行うことが可能になる。
【0014】
この場合、利用者に解錠完了を知らせるために、ドアロック装置8の解錠操作完了時に適宜の信号音を発呼させることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、利用者による直接の押下操作であっても、あるいはハンドル本体への回転操作による間接的な操作のいずれであっても押しボタンスイッチへの操作が可能であるために、利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1(b)に車両のドア10の施解錠制御システムを示す。施解錠制御システムは、ドアハンドル装置7と、ドア10の閉塞状態を維持するドアロック装置8と、ドアロック装置8を施解錠操作する制御部9と、利用者が所持する認証信号発信器11とを有して構成される。
【0017】
ドアハンドル装置7は、ドア10に固定されるハンドルベース2にハンドル本体3を回転自在に連結して形成され、ハンドル本体3はロッド13を介してドアロック装置8に連結される。ハンドル本体3を回転操作すると、回転操作力はロッド13を介してドアロック装置8に伝達され、ドア10のロック状態が解除されてドア10の開放操作が可能になる。
【0018】
ドアロック装置8には施錠状態と解錠状態とが設定されており、施錠状態において、上記ハンドル本体3への操作によるロック解除操作が禁止され、上記制御部9は、適宜のアクチュエータによりドアロック装置8をハンドル本体3によるロック解除操作が許容される解錠状態と、上述した施錠状態との間を遷移させる。
【0019】
制御部9におけるドアロック装置8に対する施解錠操作は、利用者が所持する認証信号発信器11の認証成立を条件とする。後述する押しボタンスイッチ1が押下操作されると、制御部9は認証信号発信器11との間で交信を開始し、認証信号発信器11からの認証信号が認証されると、指定の施解錠操作が行われる。
【0020】
図2以下にドアハンドル装置7の詳細を示す。まず、ハンドル本体3は、手掛け部4の裏面から突出する操作アーム4aを備え、後述する枢軸13周りに回転自在に連結される。操作アーム4aには、カウンタウエイト14とロッドホルダ15が固定され、ロッドホルダ15には上述したロッド13の一端が連結される。
【0021】
ハンドル本体3は、図2(c)、図5(a)に示すように、操作力が付与されない初期回転位置と、図5(c)に示すように、手掛け部4をスルフトローク上方に引き上げた操作回転位置との間で回転操作可能であり、トーションスプリング16により初期回転位置側に付勢される。ロッド13を連結した状態で、ハンドル本体3を初期回転位置から操作回転位置まで回転操作すると、その途上のロック解除操作開始回転位置においてドアロック装置8のロック解除動作が開始される。
【0022】
また、ハンドル本体3の手掛け部4にはボタン露出開口5が開設される。ボタン露出開口5は、手掛け部4の上端縁近傍で、かつ、左右(車長方向)中心位置に配置される。図1において操作アーム4aは左右一方に形成されて全体が左右非対称形状となっているが、他方に同一形状の操作アーム4aを形成することにより、全ての要素が左右対称となるために、ロッドホルダ15、およびカウンタウエイト14の取付位置を変更するだけで容易に左右勝手違い仕様のハンドル装置7を製造することができる。
【0023】
一方、ハンドルベース2は、図1に示すように、初期位置において、全体がハンドル本体3の背後に隠れる位置、大きさに形成され、スタッドボルト17を使用してドア10に固定される。上記ハンドル本体3は、2本の枢軸13、13を使用してハンドルベース2に支持され、図2(a)に示すように、各枢軸13、13は、ハンドル本体3に開設した軸挿通孔3aを貫通して後述する押しボタンスイッチ1の側壁に突き当てられ、ハンドルベース2の左右中心位置に装着されるヒンジ受け部材18により抜け止めされる。
【0024】
図3、4に示すように、ヒンジ受け部材18は金属板材により形成され、ベース部18aの左右両端に折り曲げられるヒンジ片18bを備える。ヒンジ片18bは、先端にU字状の切欠18cを備え、ハンドルベース2に形成された受容凹部2aに挿入される。枢軸13には、上記切欠18cが嵌合可能な抜け止め用スリット13aが形成されており、受容凹部2aへのヒンジ片18bの挿入操作だけで枢軸13の抜け止め操作が完了する。
【0025】
また、ハンドルベース2の左右中心位置にはスイッチ保持孔2bが開設され、上述した押しボタンスイッチ1が保持される。図3、4に示すように、押しボタンスイッチ1は、スイッチ保持孔2bの背面側開口から挿入されて装着され、スイッチ保持孔2bに形成された内向きフランジにより正面側への脱落が防止されるとともに、ハンドルベース2をドア10に固定した状態で、該ドア10により背面側への脱離が規制されて所定位置に保持される。
【0026】
上記ヒンジ受け部材18はベース部18aによりスイッチ保持孔2bを閉塞する。ドア10への固定状態において金属製のヒンジ受け部材18とドア10との金属接触を防止するために、ヒンジ受け部材18のベース部18aとドア10との間には、合成樹脂製のシート部材19が介装される。シート部材19は、嵌合孔19aをハンドルベース2の嵌合突部2cに圧入することによりハンドルベース2に装着され、装着状態において、ハンドル装置7がドア10に固定するまでの間、押しボタンスイッチ1とヒンジ受け部材18とを仮保持し、脱落を規制する。
【0027】
図2(a)、図5(a)に示すように、スイッチ保持孔2bに保持した状態で押しボタンスイッチ1の押しボタン頭部6は、上記ボタン露出開口5から露出し、利用者による直接操作が可能とされる。この状態からハンドル本体3を操作回転位置側に回転操作すると、図5(b)に示すように、ボタン露出開口5の周縁が押しボタン頭部6に干渉し、押しボタンスイッチ1を押下操作する。
【0028】
ハンドル本体3の操作による押しボタンスイッチ1の操作は、ハンドル本体3がロック解除操作開始回転位置に達する手前で行われるように設定されており、押しボタンスイッチ1の押下を検出した制御部9は、ハンドル本体3がロック解除操作開始回転位置に至るまでに認証信号発信器との交信、認証、ドアロック装置8に対する解錠操作を完了する。
【0029】
この後、図5(c)に示すように、ハンドル本体3を操作回転位置まで回転させると、ボタン露出開口5の押しボタン頭部6への干渉が解消され、押しボタンスイッチ1は再びOFFに移行した後、初期回転位置までの復帰途上において、ON状態を経由してOFF状態に復帰する。
【0030】
なお、以上において、制御部9は、ハンドル本体3の1回の引き上げ操作だけで認証等が完了してドアロック装置8の解錠が終了するように構成する場合を示したが、上述したように、ハンドル本体3の操作に伴う押しボタンスイッチ1は、初期回転位置までに”OFF”、”ON”、”OFF”、”ON”、”OFF”と変化し、利用者による直接操作時と異なるために、これを利用して、利用者の直接操作による押しボタンスイッチ1の投入と、ハンドル本体3への回転操作による押しボタンスイッチ1の投入に対して異なった機能を割り当てることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図2】ハンドル装置を示す図で、(a)は図1(a)の2A-2A線断面図、(b)は(a)の2B-2B線断面図、(c)は図1(a)の2C-2C線断面図である。
【図3】ハンドル装置の組付けを示す図である。
【図4】ハンドル装置の組付けを示す断面図である。
【図5】手掛け部の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 押しボタンスイッチ
2 ハンドルベース
3 ハンドル本体
4 手掛け部
5 ボタン露出開口
6 ボタン頭部
7 ハンドル装置
8 ドアロック装置
9 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押しボタンスイッチが固定されたハンドルベースにハンドル本体を初期回転位置と操作回転位置との間に回転操作自在に連結した車両のドアハンドル装置であって、
前記押しボタンスイッチは、利用者による直接押下操作が可能で、かつ、ハンドル本体の初期回転位置から操作回転位置への回転操作時にハンドル本体により押圧されて押下操作される車両のドアハンドル装置。
【請求項2】
前記押しボタンスイッチは、初期回転位置においてハンドル本体の手掛け部に開設されたボタン露出開口からボタン頭部を露出させて配置される請求項1記載の車両のドアハンドル装置。
【請求項3】
前記押しボタンスイッチは、ハンドル本体の回転時にボタン頭部がボタン露出開口周縁壁に押されて押下操作される請求項2記載の車両のドアハンドル装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のハンドル装置と、
ロック状態において閉扉状態を維持し、ハンドル本体の回転によりロック状態が解除されるとともに、施錠状態においてハンドル本体からのロック解除操作が規制されるドアロック装置と、
前記押しボタンスイッチの押下を検出した際に利用者が所持する認証信号発信器への認証信号出力要求信号を出力するとともに、認証信号発信器からの受信信号に対する認証成立を条件にドアロック装置の施錠状態を解除駆動する制御部と、
を有し、
前記押しボタンスイッチは、ドアロック装置に対するロック解除操作開始回転位置から所定角度初期回転位置寄りの回転位置においてハンドル本体により押下操作され、
ハンドル本体への初期回転位置から操作回転位置までの操作中に認証、ドアロック装置に対する施錠状態の解除、ロック解除動作が完了可能な車両のドアの施解錠制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228251(P2009−228251A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72998(P2008−72998)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【Fターム(参考)】