車両のパワートレイン配設構造
【課題】パワートレインの後方シフト配置が達成でき、また、ヒップポイントの上昇を防止することができ、さらにキャタリスト発熱によるエンジンルームでの熱害を防止する車両のパワートレイン配設構造を提供する。
【解決手段】車室2の前部を仕切るダッシュパネル3と、ダッシュパネル3より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレーム16が設けられ、ダッシュパネル3に設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレイン20が設けられ、パワートレイン20は、エンジン21と、トランスミッション22とから成り、エンジン21の前方には排気管30に接続されたキャタリスト31が配設され、キャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33が設けられたことを特徴とする。
【解決手段】車室2の前部を仕切るダッシュパネル3と、ダッシュパネル3より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレーム16が設けられ、ダッシュパネル3に設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレイン20が設けられ、パワートレイン20は、エンジン21と、トランスミッション22とから成り、エンジン21の前方には排気管30に接続されたキャタリスト31が配設され、キャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33が設けられたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室の前部を仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルより左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレームと、が設けられると共に、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられたような車両のパワートレイン配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両のパワートレイン配設構造としては、図7、図8、図9に示す構造がある。
すなわち、エンジンルーム81と車室82とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル83を設け、このダッシュロアパネル83の後端部にはフロアパネル84を接続すると共に、このフロアパネル84には車室内方へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部85が形成されている。
【0003】
上述のエンジンルーム81内およびトンネル部85の車外側には、エンジン86とトランスミッション87とから成るパワートレイン88を配設するが、ヨー慣性モーメントを低減して走行安全性を向上させる目的で、上記ダッシュロアパネル83の車幅方向中央部には車両後方に凹入する凹部83aを形成し、エンジン86の後部を、この凹部83a内に設けている。
また、上記凹部83aを設けることにより、エンジン86を後退配置して、エンジンルーム81のコンパクト化と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0004】
この車両の駆動方式は前部機関後輪駆動タイプに構成されていて、縦置きに配置した上記パワートレイン88により、図示しない後輪を駆動するように構成している。
さらに、エンジン86の排気系には、排気ガスを浄化するキャタリスト89を設けるが、図7、図8、図9に示すこの従来構造においては、該キャタリスト89がフロントシート90(図9参照)の下方におけるトンネル部85の上方膨出部85aの車外側に設けられている。
【0005】
このキャタリスト89は排気温により早期に活性化する必要があるので、可及的エンジン86に近い上述のフロアパネル84の下部に設けられているため、次のような問題点があった。
つまり、フロア下方へのキャタリスト89の配置により、フロントシート90に着座する乗員のヒップポイントが必然的に上方位置になり、空力抵抗の関係上、ルーフ91の位置は下方に下げることが望ましいが、キャタリスト89が存在するので、ルーフ91の位置を下げることが不可能となる。
【0006】
また、キャタリスト89は反応時に発熱するので、乗員に熱害が及ぶ問題点があり、この熱害を防止するため、図9のキャタリスト89とトンネル部85の上方膨出部85aとの間にインシュレータなどを介設すると、さらにヒップポイントが上がる問題点があった。
なお、図中、92は前輪、93は熱交換器としてのラジエータ、94はサスクロス(詳しくはサスペンションクロスメンバ)、95はダッシュロアパネル83より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントサイドフレーム、96はバンパレイン、97はカウル部、98はボンネット、99はフロントウインドガラスである。
【0007】
一方、特許文献1には、ダッシュロアパネルの凹部にエンジンの後側一部を配設する一方、排気管を一旦エンジンの前方に取り回し、このエンジンの前方において車幅方向に延びるようにキャタリストを配設した構造が開示されている。
また、特許文献2には、ダッシュロアパネルの凹部にレシプロエンジンの後側一部を配設し、エンジン側方の排気マニホルド直下において、キャタリストを略上下方向に向けて配設した構造が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3にも、上記特許文献2と同様に、ダッシュロアパネルの凹部にレシプロエンジンの後部一部を配設し、エンジン側方の排気マニホルド直下において、キャタリストを略上下方向に向けて配設した構造が開示されている。
【0009】
これらの各特許文献1〜3に開示された構造によれば、キャタリストをエンジンルーム内に設けているので、ヒップポイントの上昇が防止できて、車体の全高を低くすることができるという利点がある面、反応時に発熱するキャタリストの熱害を防止する点については、開示されていない。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【特許文献2】特開2005−28911号公報
【特許文献3】特開2005−29057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられ、該パワートレインは、エンジンと、該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材を設けることで、パワートレインの後方シフト配置が達成でき、また、ヒップポイントの上昇を防止することができるのは勿論、キャタリスト発熱によるエンジンルームでの熱害を防止することができる車両のパワートレイン配設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による車両のパワートレイン配設構造は、車室の前部を仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルより左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレームが設けられると共に、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレインは、エンジンと該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材が設けられたものである。
上記構成によれば、ダッシュパネルの凹部内にパワートレインを設けるので、パワートレインの後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0012】
また、上記キャタリストはフロア下方に存在しないので、車室内への熱害防止を図ることができ、かつ、ヒップポイントが上がることがないため、空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる。
しかも、上述のキャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材を設けたので、キャタリスト発熱によるエンジンルームでの熱害を防止することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストは前後方向に長く配設され、上記隔壁部材は該キャタリストの下方を仕切ると共に、該隔壁部材を隔てた上記キャタリストと上下方向の反対側には補機が配設されたものである。
上記構成によれば、エンジンルーム内の前後方向スペースを有効利用して、キャタリストの配設ができ、また、隔壁部材による補機に対する熱害の防止を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記隔壁部材の上下に個別に走行風を案内する走行風案内手段が設けられたものである。
上記構成によれば、走行風案内手段は隔壁部材の上下にそれぞれ別々に走行風を案内するので、フレッシュなエアが隔壁部材の上下両方にそれぞれ導入されて、冷却性能の向上を図ることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記走行風案内手段は、上方冷却通路と下方冷却通路とで構成され、これら上下の冷却通路間にエアクリーナが配設されたものである。
上記構成によれば、上下の冷却通路間のデッドスペースを有効利用して、比較的大型の補機であるエアクリーナを配設することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストは車幅方向に延びて配設され、上記隔壁部材は該キャタリストの上方を仕切ると共に、該隔壁部材を隔てた上記キャタリストと上下方向の反対側には補機が配設されたものである。
上記構成によれば、上述のキャタリストを車幅方向に向けて配設したので、前後方向のスペース効率向上を図ることができ、しかも、上記隔壁部材を設けることで、補機に対する熱害を防止することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記隔壁部材は車幅方向で傾斜して配設され、該隔壁部材の傾斜に対応させて上記キャタリストも傾斜させて配設されたものである。
上記構成によれば、隔壁部材およびキャタリストの双方を共に、傾斜させたので、スペースの有効利用を図ることができ、エンジンルームのコンパクトを図りつつ、これら両者(隔壁部材、キャタリスト)の配設ができ、また、補機配設スペースの拡大を図ることもできる。
特に、隔壁部材の傾斜下部に対応するその上方には、比較して大きいスペースが形成されるので、該スペースを補機配設スペースとして用いることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記補機は、上記エンジンの吸気系と接続されたエアクリーナであることを特徴とする。
上記構成によれば、上述の隔壁部材でエアクリーナに対する熱害を防止しつつ、大型のエアクリーナを適切に配設することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストの前方においてエンジンルーム内の前方部には熱交換器が配設されたものである。
上記構成によれば、走行風にて熱交換器の冷却性を確保することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記補機は、潤滑油を用いるエンジン補機であり、該エンジン補機の下方に上記隔壁部材が位置するものである。
上記構成によれば、エンジン補機の潤滑油が上記キャタリストに対して当たるのを、上述の隔壁部材で防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられ、該パワートレインは、エンジンと、該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材を設けたので、パワートレインの後方シフト配置が達成でき、また、ヒップポイントの上昇を防止することができるのは勿論、キャタリスト発熱によるエンジンルームでの熱害を防止することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
パワートレインの後方シフト配置と、ヒップポイントの上昇防止と、エンジンルームでの熱害防止とを達成するという目的を、車室の前部を仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルより左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレームが設けられると共に、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造において、上記パワートレインは、エンジンと該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材が設けられるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のパワートレイン配設構造を示し、側面図で示す図1、平面図で示す図2、正面図で示す図3において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。このダッシュロアパネル3は車室2の前部を仕切るパネルである。
【0024】
上述のダッシュロアパネル3の下部後端部には、図1に示すようにフロアパネル4を、一体または一体的に接続すると共に、このフロアパネル4には車室内方
へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部5を形成している。このトンネル部5は車体剛性の中心となるもので、トンネル開口部の前部はエンジンルーム1と連通している。
【0025】
図2に示すように、上述のフロアパネル4の左右両サイドには、車両の前後方向に延びるサイドシル6,6を接合固定している。
このサイドシル6は、サイドシルインナ7とサイドシルアウタ8とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0026】
また、図2に示すように、上述のダッシュロアパネル3の車幅方向中央部には車両後方に凹入する凹部3aを形成する一方、図1に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上端部には、車幅方向に延びるダッシュアッパパネル9を接合固定し、このダッシュアッパパネル9の上部にはカウルパネル10を取付けて、車幅方向に延びるカウル閉断面11を備えたカウル部12を構成している。
【0027】
さらに、上述の車室2の前方には、フロントウインドガラス13が設けられ、このフロントウインドガラス13の上部はルーフ14前部のフロントヘッダで支持され、フロントウインドガラス13の左右両側部は、左右のフロントピラー15,15(図3参照)で支持され、フロントウインドガラス13の下部は、上述のカウルパネル10で支持されている。
【0028】
図2に示すように、ダッシュロアパネル3より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム16,16を設け、これら左右の各フロントサイドフレーム16,16の前端相互間には、バンパレイン17を車幅方向に向けて取付けている。
ここで、上述のフロントサイドフレーム16は、フロントサイドフレームインナとフロントサイドフレームアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0029】
また、図1に示すように、エンジンルーム1の上面部には、ボンネット18が開閉可能に設置されており、このボンネット18前端部下方には、走行風取入用の開口部19U,19Dを備えたフロントグリル19が配設されている。
【0030】
図1、図2に示すように、エンジンルーム1内およびトンネル部5の車外側には、図示しない後輪を駆動するパワートレイン20が設けられており、前部機関後輪駆動(いわゆるFR)タイプの車両を構成している。
上述のパワートレイン20は、縦置きエンジン21と、その後方に接続されたトランスミッション22とを備え、上記エンジン21の後部を上記凹部3a内に配設することにより、重量物としてのエンジン21乃至パワートレイン20の後退レイアウトを達成して、ヨー慣性モーメントの低減を図って、走行安全性を確保すると共に、エンジンルーム1のコンパクト化と、フロントノーズの短縮とを図るように構成している。
【0031】
ここで、上述のエンジン21は、フロントサイドハウジング23,フロントロータハウジング24、インタミディエイトサイドハウジング25、リヤロータハウジング26、リヤサイドハウジング27を備えたロータリエンジンで構成され、各ロータハウジング24,26内を回転するロータの回転力を、エキセントリックシャフトに伝達して出力するものである。
【0032】
図2に示すように、トランスミッション22にはプロペラシャフト28が接続されていて、トランスミッション22の出力を該プロペラシャフト28を介して、図示しないリヤディファレンシャル装置に伝達し、このリヤディファレンシャル装置の差動出力を、リヤアクスルシャフトを介して左右の後輪に伝達すべく構成している。
また、上述のリヤディファレンシャル装置のワインドアップ振動を抑制すると共に、パワートレイン20からのロール方向の動きを許容する目的で、トランスミッション22のミッションケースと、リヤディファレンシャル装置のデフケースとの間には、車両の前後方向に延びるパワープラントフレーム29(いわゆるPPF)が取付けられており、このパワープラントフレーム29および上述のプロペラシャフト28は図2に示すように、トンネル部5内に配設されている。
【0033】
図1、図2に示すように、エンジン21の排気ポートには排気マニホルド30を接続し、この排気マニホルド30の下流部をエンジン21の右側側方から前方に向けて延出し、この延出端部には排気ガス浄化用にキャタリスト31を設けている。
図1、図2に示すように、上述のキャタリスト31は前後方向に長い方向で、エンジン21の前方かつ側方に配設され、このキャタリスト31の下流には、一旦車幅方向外側方つまり右横方向に延びた後に、車両後方に延びるエキゾーストパイプ32が接続されており、該エキゾーストパイプ32の過半部は図2に示すように、上述のトンネル部5の車外側に配設されている。
【0034】
しかも、図1〜図3に示すように、上述のキャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33を設けている。図1〜図3で示すこの実施例1では該隔壁部材33は上述のキャタリスト31の下方を仕切るように構成している。
また、上述の隔壁部材33は板状部材にて方形状に形成され、該隔壁部材33を略水平方向に配置して、エンジンルーム1内を上下方向に仕切っている。ここで、上述の隔壁部材33の横幅(車は車幅方向の長さ)は、左右一対のフロントサイドフレーム16,16間の間隔と略同等に形成され、隔壁部材33の前後方向の長さは、後述するラジエータユニットとエンジン21の前部との間を仕切るのに充分な長さに設定されている。
【0035】
さらに、上述の隔壁部材33を隔てた上記キャタリスト31と上下方向の反対側、すなわち、隔壁部材33の下方には、図1、図3に示すように、補機としてのオルタネータ34およびスタータモータ35が配設されている。オルタネータ34は交流発電機であり、また、スタータモータ35はエンジン21の始動用モータである。
【0036】
図1、図2に示すように、上述のキャタリスト31および隔壁部材33の前方においてエンジンルーム1内の前方部には、エンジン21を冷却するための熱交換器としてのラジエータ36が配設されている。
図1、図2に示すように、このラジエータ36は略垂直方向に向けて配設されると共に、該ラジエータ36の後部にはクーリングファン37が配設され、これらラジエータ36およびクーリングファン37はラジエータユニットとして一体化されている。また、このラジエータ36はエンジン冷却水を、走行風を利用して冷却(熱交換)するものである。
【0037】
さらに、図1に示すように、上述の隔壁部材33の上下に個別に走行風を案内する走行風案内手段が設けられている。
この走行風案内手段は、上部ダクト40で形成された上方冷却通路41と、下部ダクト42で形成された下方冷却通路43とで構成されている。図1に示すように、上述の上部ダクト40はフロントグリル19の上側の開口部19Uと、ラジエータ36の上域部との間に対応して、前後方向に延びるように形成されており、下部ダクト42はフロントグリル19の下側の開口部19Dと、ラジエータ36の下域部との間に対応して、前後方向に延びるように形成されている。
【0038】
そして、上側の開口部19Uから上方冷却通路41に流入した走行風でラジエータ36を冷却した後に、該走行風を隔壁部材33の上方に案内して、キャタリスト31を冷却し、また、下側の開口部19Dから下方冷却通路43に流入した走行風でラジエータ36を冷却した後に、該走行風を隔壁部材33の下方に案内して、補機としてのオルタネータ34およびスタータモータ35を冷却するように構成している。
【0039】
さらに、上下の各冷却通路41,43間、すなわち上部ダクト40と下部ダクト42との間には、そのデッドスペースを有効利用して、エアクリーナ50が配設されている。このエアクリーナ50は所定の容積(いわゆる所定の大きさ)を有すると共に、前部には吸気入口51を備え、その内部にはエレメント(図示せず)を有すると共に、該エアクリーナ50の下流側は、吸気管および吸気マニホルドを介して、エンジン21の吸気系としての吸気ポートに接続されている。
【0040】
なお、この実施例のエンジン21はロータリエンジンであるから、上述の吸気マニホルドと、排気マニホルド30とは、エンジン21の同一の側面部に設けられる。また、図3に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム16,16の下部には、サスペンションクロスメンバ60を取付け、このサスペンションクロスメンバ60にはサスペンションアームとしてのアッパアーム61およびロアアーム62を揺動可能に設け、これら上下の各アーム61,62で左右の前輪63,63をそれぞれ支持している。
【0041】
さらに、図1に示すように、上述のフロントサイドフレーム16の後部にはキックアップ部16Kを一体形成し、このキックアップ部16Kをダッシュロアパネル3の前面に沿設すると共に、フロントサイドフレーム16の下部後端をフロアパネル4の下部に延出して、この延出部には図2に平面図で示すように、フロアフレーム64がフロントサイドフレーム16と前後方向に略一直線状に連続するように設けられている。
【0042】
上記構成において、隔壁部材33の上部に設けられたキャタリスト31は、その反応時に発熱するが、このキャタリスト31と、補機としてのオルタネータ34、スタータモータ35との間を、隔壁部材33で上下方向に仕切っているので、キャタリスト31の熱害がオルタネータ34、スタータモータ35または、他の補機に及ぶのを、防止することができる。
【0043】
このように、図1〜図3で示した実施例の車両のパワートレイン配設構造は、車室2の前部を仕切るダッシュロアパネル3と、該ダッシュロアパネル3より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントサイドフレーム16,16が設けられると共に、上記ダッシュロアパネル3に設けられた凹部3a内に車輪(後輪参照)を駆動するパワートレイン20が設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレイン20は、エンジン21と該エンジン21に接続されたトランスミッション22とから成り、上記エンジン21の前方には排気管(排気マニホルド30参照)に接続されたキャタリスト31が配設され、該キャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33が設けられたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、ダッシュロアパネル3の凹部3a内にパワートレイン20を設けるので、パワートレイン20の後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0044】
また、上記キャタリスト31はフロア下方に存在しないので、車室2内への熱害防止を図ることができ、かつ、ヒップポイントが上がることがないため、空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる。
しかも、上述のキャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33を設けたので、キャタリスト31発熱によるエンジンルーム1での熱害を防止することができる。
【0045】
さらに、上記キャタリスト31は前後方向に長く配設され、上記隔壁部材33は該キャタリスト31の下方を仕切ると共に、該隔壁部材33を隔てた上記キャタリスト31と上下方向の反対側には補機(オルタネータ34、スタータモータ35参照)が配設されたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、エンジンルーム1内の前後方向スペースを有効利用して、キャタリスト31の配設ができ、また、隔壁部材33による補機(オルタネータ34、スタータモータ35参照)に対する熱害の防止を図ることができる。
【0046】
また、上記隔壁部材33の上下に個別に走行風を案内する走行風案内手段(上方冷却通路41、下方冷却通路43参照)が設けられたものである(図1参照)。
この構成によれば、走行風案内手段(上方冷却通路41、下方冷却通路43参照)は隔壁部材33の上下にそれぞれ別々に走行風を案内するので、フレッシュなエアが隔壁部材33の上下両方にそれぞれ導入されて、冷却性能の向上を図ることができる。
【0047】
さらに、上記走行風案内手段は、上方冷却通路41と下方冷却通路43とで構成され、これら上下の冷却通路41,43間にエアクリーナ50が配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、上下の冷却通路41,43間のデッドスペースを有効利用して、比較的大型の補機であるエアクリーナ50を配設することができる。
【0048】
加えて、上記キャタリスト31の前方においてエンジンルーム1内の前方部には熱交換器(ラジエータ36参照)が配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、走行風にて熱交換器(ラジエータ36参照)の冷却性を確保することができる。
【実施例2】
【0049】
図4、図5、図6は車両のパワートレイン配設の他の実施例を示すものである。
図4〜図6に示すように、エンジン21の排気ポートには先の実施例1と同様に排気マニホルド30を接続し、この排気マニホルド30の下流部をエンジン21の右側側方から前方に向けて延出した後に、その延出前端部を車幅方向内方に屈曲形成し、この屈曲下流端部にはキャタリスト31を車幅方向に延びるように接続している。
【0050】
車幅方向に延びて配設された上記キャタリスト31の下流には、平面視で略U字状に延びた後(U字部32a参照)に、車両後方に延びるエキゾーストパイプ32が接続されており、このエキゾーストパイプ32の過半部は、図4、図5に示すように、上述のトンネル部5の車外側に配設されている。
しかも、図4〜図6に示すように、上述のキャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33を設けている。図4〜図6で示すこの実施例2では、該隔壁部材33は上述のキャタリスト31の上方を仕切るように構成している。
【0051】
また、図6に正面図で示すように、この隔壁部材33は車幅方向で傾斜して配設されている。詳しくは、該隔壁部材33は車両右側が高く、車両左側が低くなるように傾斜して配設されており、この隔壁部材33の下方に位置する上記キャタリスト31も該隔壁部材33の傾斜に対応して、その右側(上流側)が高く、左側(下流側)が低くなるように傾斜して配設されている。
【0052】
さらに、このスラント配置された隔壁部材33を隔てた上記キャタリスト31と上下方向の反対側、すなわち、隔壁部材33の上方において、キャタリスト31よりも前方には大型の補機としてのエアクリーナ50を配設し、キャタリスト31よりも後方には潤滑油を用いるモータやコンプレッサなどのエンジン補機70を配設している。
【0053】
特に、上述のエアクリーナ50は大型の補機であるため、隔壁部材33を上述の如く傾斜配設した傾斜下部側(車両左側)の上方に形成される比較的大きいスペースを有効利用して配置したものであり、このエアクリーナ50の浄化空気出口部(つまり下流部)は、吸気管および吸気マニホルドを介して、エンジン21の吸気系としての吸気ポートに接続される。
また、上述の潤滑油を用いるモータやコンプレッサなどのエンジン補機70に対して、その下方に隔壁部材33が位置するように構成したものである。
【0054】
図5に示すように、平面から見て上述のエンジン21の前方にはキャタリスト31が位置しており、このキャタリスト31の前方にはエアクリーナ50が位置しており、このエアクリーナ50よりもさらに前方には、エンジンルーム1内の最前部に位置するように熱交換器としてのラジエータ36が配設されている。
このラジエータ36も先の実施例1と同様に、略垂直方向に向けて配設されると共に、該ラジエータ36の後部にはクーリングファン37が配設され、これらラジエータ36およびクーリングファン37はエンジン冷却水を、走行風を利用して冷却(熱交換)するものである。
【0055】
このように、図4〜図6で示した実施例の車両のパワートレイン配設構造も、車室2の前部を仕切るダッシュロアパネル3と、該ダッシュロアパネル3より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントサイドフレーム16,16が設けられると共に、上記ダッシュロアパネル3に設けられた凹部3a内に車輪(後輪参照)を駆動するパワートレイン20が設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレイン20は、エンジン21と該エンジン21に接続されたトランスミッション22とから成り、上記エンジン21の前方には排気管(排気マニホルド30参照)に接続されたキャタリスト31が配設され、該キャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33が設けられたものである(図4、図5参照)。
この構成によれば、ダッシュロアパネル3の凹部3a内にパワートレイン20を設けるので、パワートレイン20の後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0056】
また、上記キャタリスト31はフロア下方に存在しないので、車室2内への熱害防止を図ることができ、かつ、ヒップポイントが上がることがないため、空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる。
しかも、上述のキャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33を設けたので、キャタリスト31発熱によるエンジンルーム1での熱害を防止することができる。
【0057】
さらに、上記キャタリスト31は車幅方向に延びて配設され、上記隔壁部材33は該キャタリスト31の上方を仕切ると共に、該隔壁部材33を隔てた上記キャタリスト31と上下方向の反対側には補機(エンジン補機70またはエアクリーナ50参照)が配設されたものである(図6参照)。
この構成によれば、上述のキャタリスト31を車幅方向に向けて配設したので、前後方向のスペース効率向上を図ることができ、しかも、上記隔壁部材33を設けることで、補機(エンジン補機70またはエアクリーナ50参照)に対する熱害を防止することができる。
【0058】
また、上記隔壁部材33は車幅方向で傾斜して配設され、該隔壁部材33の傾斜に対応させて上記キャタリスト31も傾斜させて配設されたものである(図6参照)。
この構成によれば、隔壁部材33およびキャタリスト31の双方を共に、傾斜させたので、スペースの有効利用を図ることができ、エンジンルーム1のコンパクトを図りつつ、これら両者(隔壁部材33、キャタリスト31)の配設ができ、また、補機配設スペースの拡大を図ることもできる。
加えて、上記補機は、上記エンジン21の吸気系と接続されたエアクリーナ50であるから、上述の隔壁部材33でエアクリーナ50に対する熱害を防止しつつ、大型のエアクリーナ50を適切に配設することができる。
【0059】
さらに、上記補機は、潤滑油を用いるエンジン補機70であり、該エンジン補機70の下方に上記隔壁部材33が位置するものである(図6参照)。
この構成によれば、エンジン補機70の潤滑油が上記キャタリスト31に対して当たるのを、上述の隔壁部材33で防止することができる。
【0060】
図4〜図6で示したこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1と同様であるから、図4〜図6において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネル3に対応し、
以下同様に、
エンジンは、ロータリエンジンに対応し、
フロントフレームは、フロントサイドフレーム16に対応し、
排気管は、排気マニホルド30に対応し、
補機は、オルタネータ34、スタータモータ35、エアクリーナ50またはエンジン補機70に対応し、
走行風案内手段は、上方冷却通路41、下方冷却通路43に対応し、
熱交換器は、ラジエータ36に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の車両のパワートレイン配設構造を示す側面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】図1の要部の正面図
【図4】車両のパワートレイン配設構造の他の実施例を示す側面図
【図5】図4の要部の平面図
【図6】図4の要部の正面図
【図7】従来の車両のパワートレイン配設構造を示す側面図
【図8】図7の要部の平面図
【図9】図7の要部の正面図
【符号の説明】
【0063】
2…車室
3…ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
3a…凹部
16…フロントサイドフレーム(フロントフレーム)
20…パワートレイン
21…エンジン
30…排気マニホルド(排気管)
31…キャタリスト
33…隔壁部材
34…オルタネータ(補機)
35…スタータモータ(補機)
41…上方冷却通路(走行風案内手段)
43…下方冷却通路(走行風案内手段)
50…エアクリーナ(補機)
70…エンジン補機(補機)
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室の前部を仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルより左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレームと、が設けられると共に、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられたような車両のパワートレイン配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両のパワートレイン配設構造としては、図7、図8、図9に示す構造がある。
すなわち、エンジンルーム81と車室82とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル83を設け、このダッシュロアパネル83の後端部にはフロアパネル84を接続すると共に、このフロアパネル84には車室内方へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部85が形成されている。
【0003】
上述のエンジンルーム81内およびトンネル部85の車外側には、エンジン86とトランスミッション87とから成るパワートレイン88を配設するが、ヨー慣性モーメントを低減して走行安全性を向上させる目的で、上記ダッシュロアパネル83の車幅方向中央部には車両後方に凹入する凹部83aを形成し、エンジン86の後部を、この凹部83a内に設けている。
また、上記凹部83aを設けることにより、エンジン86を後退配置して、エンジンルーム81のコンパクト化と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0004】
この車両の駆動方式は前部機関後輪駆動タイプに構成されていて、縦置きに配置した上記パワートレイン88により、図示しない後輪を駆動するように構成している。
さらに、エンジン86の排気系には、排気ガスを浄化するキャタリスト89を設けるが、図7、図8、図9に示すこの従来構造においては、該キャタリスト89がフロントシート90(図9参照)の下方におけるトンネル部85の上方膨出部85aの車外側に設けられている。
【0005】
このキャタリスト89は排気温により早期に活性化する必要があるので、可及的エンジン86に近い上述のフロアパネル84の下部に設けられているため、次のような問題点があった。
つまり、フロア下方へのキャタリスト89の配置により、フロントシート90に着座する乗員のヒップポイントが必然的に上方位置になり、空力抵抗の関係上、ルーフ91の位置は下方に下げることが望ましいが、キャタリスト89が存在するので、ルーフ91の位置を下げることが不可能となる。
【0006】
また、キャタリスト89は反応時に発熱するので、乗員に熱害が及ぶ問題点があり、この熱害を防止するため、図9のキャタリスト89とトンネル部85の上方膨出部85aとの間にインシュレータなどを介設すると、さらにヒップポイントが上がる問題点があった。
なお、図中、92は前輪、93は熱交換器としてのラジエータ、94はサスクロス(詳しくはサスペンションクロスメンバ)、95はダッシュロアパネル83より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントサイドフレーム、96はバンパレイン、97はカウル部、98はボンネット、99はフロントウインドガラスである。
【0007】
一方、特許文献1には、ダッシュロアパネルの凹部にエンジンの後側一部を配設する一方、排気管を一旦エンジンの前方に取り回し、このエンジンの前方において車幅方向に延びるようにキャタリストを配設した構造が開示されている。
また、特許文献2には、ダッシュロアパネルの凹部にレシプロエンジンの後側一部を配設し、エンジン側方の排気マニホルド直下において、キャタリストを略上下方向に向けて配設した構造が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3にも、上記特許文献2と同様に、ダッシュロアパネルの凹部にレシプロエンジンの後部一部を配設し、エンジン側方の排気マニホルド直下において、キャタリストを略上下方向に向けて配設した構造が開示されている。
【0009】
これらの各特許文献1〜3に開示された構造によれば、キャタリストをエンジンルーム内に設けているので、ヒップポイントの上昇が防止できて、車体の全高を低くすることができるという利点がある面、反応時に発熱するキャタリストの熱害を防止する点については、開示されていない。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【特許文献2】特開2005−28911号公報
【特許文献3】特開2005−29057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられ、該パワートレインは、エンジンと、該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材を設けることで、パワートレインの後方シフト配置が達成でき、また、ヒップポイントの上昇を防止することができるのは勿論、キャタリスト発熱によるエンジンルームでの熱害を防止することができる車両のパワートレイン配設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による車両のパワートレイン配設構造は、車室の前部を仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルより左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレームが設けられると共に、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレインは、エンジンと該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材が設けられたものである。
上記構成によれば、ダッシュパネルの凹部内にパワートレインを設けるので、パワートレインの後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0012】
また、上記キャタリストはフロア下方に存在しないので、車室内への熱害防止を図ることができ、かつ、ヒップポイントが上がることがないため、空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる。
しかも、上述のキャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材を設けたので、キャタリスト発熱によるエンジンルームでの熱害を防止することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストは前後方向に長く配設され、上記隔壁部材は該キャタリストの下方を仕切ると共に、該隔壁部材を隔てた上記キャタリストと上下方向の反対側には補機が配設されたものである。
上記構成によれば、エンジンルーム内の前後方向スペースを有効利用して、キャタリストの配設ができ、また、隔壁部材による補機に対する熱害の防止を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記隔壁部材の上下に個別に走行風を案内する走行風案内手段が設けられたものである。
上記構成によれば、走行風案内手段は隔壁部材の上下にそれぞれ別々に走行風を案内するので、フレッシュなエアが隔壁部材の上下両方にそれぞれ導入されて、冷却性能の向上を図ることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記走行風案内手段は、上方冷却通路と下方冷却通路とで構成され、これら上下の冷却通路間にエアクリーナが配設されたものである。
上記構成によれば、上下の冷却通路間のデッドスペースを有効利用して、比較的大型の補機であるエアクリーナを配設することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストは車幅方向に延びて配設され、上記隔壁部材は該キャタリストの上方を仕切ると共に、該隔壁部材を隔てた上記キャタリストと上下方向の反対側には補機が配設されたものである。
上記構成によれば、上述のキャタリストを車幅方向に向けて配設したので、前後方向のスペース効率向上を図ることができ、しかも、上記隔壁部材を設けることで、補機に対する熱害を防止することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記隔壁部材は車幅方向で傾斜して配設され、該隔壁部材の傾斜に対応させて上記キャタリストも傾斜させて配設されたものである。
上記構成によれば、隔壁部材およびキャタリストの双方を共に、傾斜させたので、スペースの有効利用を図ることができ、エンジンルームのコンパクトを図りつつ、これら両者(隔壁部材、キャタリスト)の配設ができ、また、補機配設スペースの拡大を図ることもできる。
特に、隔壁部材の傾斜下部に対応するその上方には、比較して大きいスペースが形成されるので、該スペースを補機配設スペースとして用いることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記補機は、上記エンジンの吸気系と接続されたエアクリーナであることを特徴とする。
上記構成によれば、上述の隔壁部材でエアクリーナに対する熱害を防止しつつ、大型のエアクリーナを適切に配設することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストの前方においてエンジンルーム内の前方部には熱交換器が配設されたものである。
上記構成によれば、走行風にて熱交換器の冷却性を確保することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記補機は、潤滑油を用いるエンジン補機であり、該エンジン補機の下方に上記隔壁部材が位置するものである。
上記構成によれば、エンジン補機の潤滑油が上記キャタリストに対して当たるのを、上述の隔壁部材で防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられ、該パワートレインは、エンジンと、該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材を設けたので、パワートレインの後方シフト配置が達成でき、また、ヒップポイントの上昇を防止することができるのは勿論、キャタリスト発熱によるエンジンルームでの熱害を防止することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
パワートレインの後方シフト配置と、ヒップポイントの上昇防止と、エンジンルームでの熱害防止とを達成するという目的を、車室の前部を仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルより左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレームが設けられると共に、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造において、上記パワートレインは、エンジンと該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材が設けられるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のパワートレイン配設構造を示し、側面図で示す図1、平面図で示す図2、正面図で示す図3において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。このダッシュロアパネル3は車室2の前部を仕切るパネルである。
【0024】
上述のダッシュロアパネル3の下部後端部には、図1に示すようにフロアパネル4を、一体または一体的に接続すると共に、このフロアパネル4には車室内方
へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部5を形成している。このトンネル部5は車体剛性の中心となるもので、トンネル開口部の前部はエンジンルーム1と連通している。
【0025】
図2に示すように、上述のフロアパネル4の左右両サイドには、車両の前後方向に延びるサイドシル6,6を接合固定している。
このサイドシル6は、サイドシルインナ7とサイドシルアウタ8とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0026】
また、図2に示すように、上述のダッシュロアパネル3の車幅方向中央部には車両後方に凹入する凹部3aを形成する一方、図1に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上端部には、車幅方向に延びるダッシュアッパパネル9を接合固定し、このダッシュアッパパネル9の上部にはカウルパネル10を取付けて、車幅方向に延びるカウル閉断面11を備えたカウル部12を構成している。
【0027】
さらに、上述の車室2の前方には、フロントウインドガラス13が設けられ、このフロントウインドガラス13の上部はルーフ14前部のフロントヘッダで支持され、フロントウインドガラス13の左右両側部は、左右のフロントピラー15,15(図3参照)で支持され、フロントウインドガラス13の下部は、上述のカウルパネル10で支持されている。
【0028】
図2に示すように、ダッシュロアパネル3より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム16,16を設け、これら左右の各フロントサイドフレーム16,16の前端相互間には、バンパレイン17を車幅方向に向けて取付けている。
ここで、上述のフロントサイドフレーム16は、フロントサイドフレームインナとフロントサイドフレームアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0029】
また、図1に示すように、エンジンルーム1の上面部には、ボンネット18が開閉可能に設置されており、このボンネット18前端部下方には、走行風取入用の開口部19U,19Dを備えたフロントグリル19が配設されている。
【0030】
図1、図2に示すように、エンジンルーム1内およびトンネル部5の車外側には、図示しない後輪を駆動するパワートレイン20が設けられており、前部機関後輪駆動(いわゆるFR)タイプの車両を構成している。
上述のパワートレイン20は、縦置きエンジン21と、その後方に接続されたトランスミッション22とを備え、上記エンジン21の後部を上記凹部3a内に配設することにより、重量物としてのエンジン21乃至パワートレイン20の後退レイアウトを達成して、ヨー慣性モーメントの低減を図って、走行安全性を確保すると共に、エンジンルーム1のコンパクト化と、フロントノーズの短縮とを図るように構成している。
【0031】
ここで、上述のエンジン21は、フロントサイドハウジング23,フロントロータハウジング24、インタミディエイトサイドハウジング25、リヤロータハウジング26、リヤサイドハウジング27を備えたロータリエンジンで構成され、各ロータハウジング24,26内を回転するロータの回転力を、エキセントリックシャフトに伝達して出力するものである。
【0032】
図2に示すように、トランスミッション22にはプロペラシャフト28が接続されていて、トランスミッション22の出力を該プロペラシャフト28を介して、図示しないリヤディファレンシャル装置に伝達し、このリヤディファレンシャル装置の差動出力を、リヤアクスルシャフトを介して左右の後輪に伝達すべく構成している。
また、上述のリヤディファレンシャル装置のワインドアップ振動を抑制すると共に、パワートレイン20からのロール方向の動きを許容する目的で、トランスミッション22のミッションケースと、リヤディファレンシャル装置のデフケースとの間には、車両の前後方向に延びるパワープラントフレーム29(いわゆるPPF)が取付けられており、このパワープラントフレーム29および上述のプロペラシャフト28は図2に示すように、トンネル部5内に配設されている。
【0033】
図1、図2に示すように、エンジン21の排気ポートには排気マニホルド30を接続し、この排気マニホルド30の下流部をエンジン21の右側側方から前方に向けて延出し、この延出端部には排気ガス浄化用にキャタリスト31を設けている。
図1、図2に示すように、上述のキャタリスト31は前後方向に長い方向で、エンジン21の前方かつ側方に配設され、このキャタリスト31の下流には、一旦車幅方向外側方つまり右横方向に延びた後に、車両後方に延びるエキゾーストパイプ32が接続されており、該エキゾーストパイプ32の過半部は図2に示すように、上述のトンネル部5の車外側に配設されている。
【0034】
しかも、図1〜図3に示すように、上述のキャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33を設けている。図1〜図3で示すこの実施例1では該隔壁部材33は上述のキャタリスト31の下方を仕切るように構成している。
また、上述の隔壁部材33は板状部材にて方形状に形成され、該隔壁部材33を略水平方向に配置して、エンジンルーム1内を上下方向に仕切っている。ここで、上述の隔壁部材33の横幅(車は車幅方向の長さ)は、左右一対のフロントサイドフレーム16,16間の間隔と略同等に形成され、隔壁部材33の前後方向の長さは、後述するラジエータユニットとエンジン21の前部との間を仕切るのに充分な長さに設定されている。
【0035】
さらに、上述の隔壁部材33を隔てた上記キャタリスト31と上下方向の反対側、すなわち、隔壁部材33の下方には、図1、図3に示すように、補機としてのオルタネータ34およびスタータモータ35が配設されている。オルタネータ34は交流発電機であり、また、スタータモータ35はエンジン21の始動用モータである。
【0036】
図1、図2に示すように、上述のキャタリスト31および隔壁部材33の前方においてエンジンルーム1内の前方部には、エンジン21を冷却するための熱交換器としてのラジエータ36が配設されている。
図1、図2に示すように、このラジエータ36は略垂直方向に向けて配設されると共に、該ラジエータ36の後部にはクーリングファン37が配設され、これらラジエータ36およびクーリングファン37はラジエータユニットとして一体化されている。また、このラジエータ36はエンジン冷却水を、走行風を利用して冷却(熱交換)するものである。
【0037】
さらに、図1に示すように、上述の隔壁部材33の上下に個別に走行風を案内する走行風案内手段が設けられている。
この走行風案内手段は、上部ダクト40で形成された上方冷却通路41と、下部ダクト42で形成された下方冷却通路43とで構成されている。図1に示すように、上述の上部ダクト40はフロントグリル19の上側の開口部19Uと、ラジエータ36の上域部との間に対応して、前後方向に延びるように形成されており、下部ダクト42はフロントグリル19の下側の開口部19Dと、ラジエータ36の下域部との間に対応して、前後方向に延びるように形成されている。
【0038】
そして、上側の開口部19Uから上方冷却通路41に流入した走行風でラジエータ36を冷却した後に、該走行風を隔壁部材33の上方に案内して、キャタリスト31を冷却し、また、下側の開口部19Dから下方冷却通路43に流入した走行風でラジエータ36を冷却した後に、該走行風を隔壁部材33の下方に案内して、補機としてのオルタネータ34およびスタータモータ35を冷却するように構成している。
【0039】
さらに、上下の各冷却通路41,43間、すなわち上部ダクト40と下部ダクト42との間には、そのデッドスペースを有効利用して、エアクリーナ50が配設されている。このエアクリーナ50は所定の容積(いわゆる所定の大きさ)を有すると共に、前部には吸気入口51を備え、その内部にはエレメント(図示せず)を有すると共に、該エアクリーナ50の下流側は、吸気管および吸気マニホルドを介して、エンジン21の吸気系としての吸気ポートに接続されている。
【0040】
なお、この実施例のエンジン21はロータリエンジンであるから、上述の吸気マニホルドと、排気マニホルド30とは、エンジン21の同一の側面部に設けられる。また、図3に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム16,16の下部には、サスペンションクロスメンバ60を取付け、このサスペンションクロスメンバ60にはサスペンションアームとしてのアッパアーム61およびロアアーム62を揺動可能に設け、これら上下の各アーム61,62で左右の前輪63,63をそれぞれ支持している。
【0041】
さらに、図1に示すように、上述のフロントサイドフレーム16の後部にはキックアップ部16Kを一体形成し、このキックアップ部16Kをダッシュロアパネル3の前面に沿設すると共に、フロントサイドフレーム16の下部後端をフロアパネル4の下部に延出して、この延出部には図2に平面図で示すように、フロアフレーム64がフロントサイドフレーム16と前後方向に略一直線状に連続するように設けられている。
【0042】
上記構成において、隔壁部材33の上部に設けられたキャタリスト31は、その反応時に発熱するが、このキャタリスト31と、補機としてのオルタネータ34、スタータモータ35との間を、隔壁部材33で上下方向に仕切っているので、キャタリスト31の熱害がオルタネータ34、スタータモータ35または、他の補機に及ぶのを、防止することができる。
【0043】
このように、図1〜図3で示した実施例の車両のパワートレイン配設構造は、車室2の前部を仕切るダッシュロアパネル3と、該ダッシュロアパネル3より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントサイドフレーム16,16が設けられると共に、上記ダッシュロアパネル3に設けられた凹部3a内に車輪(後輪参照)を駆動するパワートレイン20が設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレイン20は、エンジン21と該エンジン21に接続されたトランスミッション22とから成り、上記エンジン21の前方には排気管(排気マニホルド30参照)に接続されたキャタリスト31が配設され、該キャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33が設けられたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、ダッシュロアパネル3の凹部3a内にパワートレイン20を設けるので、パワートレイン20の後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0044】
また、上記キャタリスト31はフロア下方に存在しないので、車室2内への熱害防止を図ることができ、かつ、ヒップポイントが上がることがないため、空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる。
しかも、上述のキャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33を設けたので、キャタリスト31発熱によるエンジンルーム1での熱害を防止することができる。
【0045】
さらに、上記キャタリスト31は前後方向に長く配設され、上記隔壁部材33は該キャタリスト31の下方を仕切ると共に、該隔壁部材33を隔てた上記キャタリスト31と上下方向の反対側には補機(オルタネータ34、スタータモータ35参照)が配設されたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、エンジンルーム1内の前後方向スペースを有効利用して、キャタリスト31の配設ができ、また、隔壁部材33による補機(オルタネータ34、スタータモータ35参照)に対する熱害の防止を図ることができる。
【0046】
また、上記隔壁部材33の上下に個別に走行風を案内する走行風案内手段(上方冷却通路41、下方冷却通路43参照)が設けられたものである(図1参照)。
この構成によれば、走行風案内手段(上方冷却通路41、下方冷却通路43参照)は隔壁部材33の上下にそれぞれ別々に走行風を案内するので、フレッシュなエアが隔壁部材33の上下両方にそれぞれ導入されて、冷却性能の向上を図ることができる。
【0047】
さらに、上記走行風案内手段は、上方冷却通路41と下方冷却通路43とで構成され、これら上下の冷却通路41,43間にエアクリーナ50が配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、上下の冷却通路41,43間のデッドスペースを有効利用して、比較的大型の補機であるエアクリーナ50を配設することができる。
【0048】
加えて、上記キャタリスト31の前方においてエンジンルーム1内の前方部には熱交換器(ラジエータ36参照)が配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、走行風にて熱交換器(ラジエータ36参照)の冷却性を確保することができる。
【実施例2】
【0049】
図4、図5、図6は車両のパワートレイン配設の他の実施例を示すものである。
図4〜図6に示すように、エンジン21の排気ポートには先の実施例1と同様に排気マニホルド30を接続し、この排気マニホルド30の下流部をエンジン21の右側側方から前方に向けて延出した後に、その延出前端部を車幅方向内方に屈曲形成し、この屈曲下流端部にはキャタリスト31を車幅方向に延びるように接続している。
【0050】
車幅方向に延びて配設された上記キャタリスト31の下流には、平面視で略U字状に延びた後(U字部32a参照)に、車両後方に延びるエキゾーストパイプ32が接続されており、このエキゾーストパイプ32の過半部は、図4、図5に示すように、上述のトンネル部5の車外側に配設されている。
しかも、図4〜図6に示すように、上述のキャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33を設けている。図4〜図6で示すこの実施例2では、該隔壁部材33は上述のキャタリスト31の上方を仕切るように構成している。
【0051】
また、図6に正面図で示すように、この隔壁部材33は車幅方向で傾斜して配設されている。詳しくは、該隔壁部材33は車両右側が高く、車両左側が低くなるように傾斜して配設されており、この隔壁部材33の下方に位置する上記キャタリスト31も該隔壁部材33の傾斜に対応して、その右側(上流側)が高く、左側(下流側)が低くなるように傾斜して配設されている。
【0052】
さらに、このスラント配置された隔壁部材33を隔てた上記キャタリスト31と上下方向の反対側、すなわち、隔壁部材33の上方において、キャタリスト31よりも前方には大型の補機としてのエアクリーナ50を配設し、キャタリスト31よりも後方には潤滑油を用いるモータやコンプレッサなどのエンジン補機70を配設している。
【0053】
特に、上述のエアクリーナ50は大型の補機であるため、隔壁部材33を上述の如く傾斜配設した傾斜下部側(車両左側)の上方に形成される比較的大きいスペースを有効利用して配置したものであり、このエアクリーナ50の浄化空気出口部(つまり下流部)は、吸気管および吸気マニホルドを介して、エンジン21の吸気系としての吸気ポートに接続される。
また、上述の潤滑油を用いるモータやコンプレッサなどのエンジン補機70に対して、その下方に隔壁部材33が位置するように構成したものである。
【0054】
図5に示すように、平面から見て上述のエンジン21の前方にはキャタリスト31が位置しており、このキャタリスト31の前方にはエアクリーナ50が位置しており、このエアクリーナ50よりもさらに前方には、エンジンルーム1内の最前部に位置するように熱交換器としてのラジエータ36が配設されている。
このラジエータ36も先の実施例1と同様に、略垂直方向に向けて配設されると共に、該ラジエータ36の後部にはクーリングファン37が配設され、これらラジエータ36およびクーリングファン37はエンジン冷却水を、走行風を利用して冷却(熱交換)するものである。
【0055】
このように、図4〜図6で示した実施例の車両のパワートレイン配設構造も、車室2の前部を仕切るダッシュロアパネル3と、該ダッシュロアパネル3より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントサイドフレーム16,16が設けられると共に、上記ダッシュロアパネル3に設けられた凹部3a内に車輪(後輪参照)を駆動するパワートレイン20が設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレイン20は、エンジン21と該エンジン21に接続されたトランスミッション22とから成り、上記エンジン21の前方には排気管(排気マニホルド30参照)に接続されたキャタリスト31が配設され、該キャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33が設けられたものである(図4、図5参照)。
この構成によれば、ダッシュロアパネル3の凹部3a内にパワートレイン20を設けるので、パワートレイン20の後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0056】
また、上記キャタリスト31はフロア下方に存在しないので、車室2内への熱害防止を図ることができ、かつ、ヒップポイントが上がることがないため、空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる。
しかも、上述のキャタリスト31を上下方向で仕切る隔壁部材33を設けたので、キャタリスト31発熱によるエンジンルーム1での熱害を防止することができる。
【0057】
さらに、上記キャタリスト31は車幅方向に延びて配設され、上記隔壁部材33は該キャタリスト31の上方を仕切ると共に、該隔壁部材33を隔てた上記キャタリスト31と上下方向の反対側には補機(エンジン補機70またはエアクリーナ50参照)が配設されたものである(図6参照)。
この構成によれば、上述のキャタリスト31を車幅方向に向けて配設したので、前後方向のスペース効率向上を図ることができ、しかも、上記隔壁部材33を設けることで、補機(エンジン補機70またはエアクリーナ50参照)に対する熱害を防止することができる。
【0058】
また、上記隔壁部材33は車幅方向で傾斜して配設され、該隔壁部材33の傾斜に対応させて上記キャタリスト31も傾斜させて配設されたものである(図6参照)。
この構成によれば、隔壁部材33およびキャタリスト31の双方を共に、傾斜させたので、スペースの有効利用を図ることができ、エンジンルーム1のコンパクトを図りつつ、これら両者(隔壁部材33、キャタリスト31)の配設ができ、また、補機配設スペースの拡大を図ることもできる。
加えて、上記補機は、上記エンジン21の吸気系と接続されたエアクリーナ50であるから、上述の隔壁部材33でエアクリーナ50に対する熱害を防止しつつ、大型のエアクリーナ50を適切に配設することができる。
【0059】
さらに、上記補機は、潤滑油を用いるエンジン補機70であり、該エンジン補機70の下方に上記隔壁部材33が位置するものである(図6参照)。
この構成によれば、エンジン補機70の潤滑油が上記キャタリスト31に対して当たるのを、上述の隔壁部材33で防止することができる。
【0060】
図4〜図6で示したこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1と同様であるから、図4〜図6において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネル3に対応し、
以下同様に、
エンジンは、ロータリエンジンに対応し、
フロントフレームは、フロントサイドフレーム16に対応し、
排気管は、排気マニホルド30に対応し、
補機は、オルタネータ34、スタータモータ35、エアクリーナ50またはエンジン補機70に対応し、
走行風案内手段は、上方冷却通路41、下方冷却通路43に対応し、
熱交換器は、ラジエータ36に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の車両のパワートレイン配設構造を示す側面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】図1の要部の正面図
【図4】車両のパワートレイン配設構造の他の実施例を示す側面図
【図5】図4の要部の平面図
【図6】図4の要部の正面図
【図7】従来の車両のパワートレイン配設構造を示す側面図
【図8】図7の要部の平面図
【図9】図7の要部の正面図
【符号の説明】
【0063】
2…車室
3…ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
3a…凹部
16…フロントサイドフレーム(フロントフレーム)
20…パワートレイン
21…エンジン
30…排気マニホルド(排気管)
31…キャタリスト
33…隔壁部材
34…オルタネータ(補機)
35…スタータモータ(補機)
41…上方冷却通路(走行風案内手段)
43…下方冷却通路(走行風案内手段)
50…エアクリーナ(補機)
70…エンジン補機(補機)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前部を仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルより左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレームが設けられると共に、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、
上記パワートレインは、エンジンと該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、
上記エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、
該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材が設けられた
車両のパワートレイン配設構造。
【請求項2】
上記キャタリストは前後方向に長く配設され、
上記隔壁部材は該キャタリストの下方を仕切ると共に、該隔壁部材を隔てた上記キャタリストと上下方向の反対側には補機が配設された
請求項1記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項3】
上記隔壁部材の上下に個別に走行風を案内する走行風案内手段が設けられた
請求項1または2記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項4】
上記走行風案内手段は、上方冷却通路と下方冷却通路とで構成され、
これら上下の冷却通路間にエアクリーナが配設された
請求項3記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項5】
上記キャタリストは車幅方向に延びて配設され、
上記隔壁部材は該キャタリストの上方を仕切ると共に、該隔壁部材を隔てた上記キャタリストと上下方向の反対側には補機が配設された
請求項1記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項6】
上記隔壁部材は車幅方向で傾斜して配設され、該隔壁部材の傾斜に対応させて上記キャタリストも傾斜させて配設された
請求項5記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項7】
上記補機は、上記エンジンの吸気系と接続されたエアクリーナである
請求項5記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項8】
上記キャタリストの前方においてエンジンルーム内の前方部には熱交換器が配設された
請求項1〜7の何れか1に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項9】
上記補機は、潤滑油を用いるエンジン補機であり、
該エンジン補機の下方に上記隔壁部材が位置する
請求項5記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項1】
車室の前部を仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルより左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントフレームが設けられると共に、上記ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、
上記パワートレインは、エンジンと該エンジンに接続されたトランスミッションとから成り、
上記エンジンの前方には排気管に接続されたキャタリストが配設され、
該キャタリストを上下方向で仕切る隔壁部材が設けられた
車両のパワートレイン配設構造。
【請求項2】
上記キャタリストは前後方向に長く配設され、
上記隔壁部材は該キャタリストの下方を仕切ると共に、該隔壁部材を隔てた上記キャタリストと上下方向の反対側には補機が配設された
請求項1記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項3】
上記隔壁部材の上下に個別に走行風を案内する走行風案内手段が設けられた
請求項1または2記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項4】
上記走行風案内手段は、上方冷却通路と下方冷却通路とで構成され、
これら上下の冷却通路間にエアクリーナが配設された
請求項3記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項5】
上記キャタリストは車幅方向に延びて配設され、
上記隔壁部材は該キャタリストの上方を仕切ると共に、該隔壁部材を隔てた上記キャタリストと上下方向の反対側には補機が配設された
請求項1記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項6】
上記隔壁部材は車幅方向で傾斜して配設され、該隔壁部材の傾斜に対応させて上記キャタリストも傾斜させて配設された
請求項5記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項7】
上記補機は、上記エンジンの吸気系と接続されたエアクリーナである
請求項5記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項8】
上記キャタリストの前方においてエンジンルーム内の前方部には熱交換器が配設された
請求項1〜7の何れか1に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項9】
上記補機は、潤滑油を用いるエンジン補機であり、
該エンジン補機の下方に上記隔壁部材が位置する
請求項5記載の車両のパワートレイン配設構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−226974(P2009−226974A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71654(P2008−71654)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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