説明

車両のフロア骨格構造

【課題】車体前方からの荷重をフロアサイドメンバからリヤフロアパネルに円滑に伝えて分散させ、リヤフロアパネルの前部の座屈変形を防止する。
【解決手段】フロアサイドメンバ21はメインフロアパネル11に、リヤサイドメンバはリヤフロアパネル12に配置され、フロアサイドメンバ21の上方には、リーンフォース3がメインフロアパネル11を間に置き上下方向で重ねられ、リーンフォース3の上面3aは、車体後方へ向かって上方に高く、リーンフォース3の前部3b及び側面の下部は、メインフロアパネル11に接合され、リーンフォース3の後端部3dは、リヤフロアパネル12の前部縦壁13aに接合されて、メインフロアパネル11、リヤフロアパネル12の前部13、リーンフォース3に囲まれた側面視で閉断面空間S1が形成される。フロアサイドメンバ21の後端下面部21bは、側面視で断面変化が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の下部に設けられるフロアパネル、サイドメンバ等を備えた車両のフロア骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両のフロア骨格構造では、車体の下部の全体にフロアパネルが設けられているとともに、該フロアパネルの車体幅方向の左右両側にサイドメンバが車体前後方向に沿って設けられている。このうち、サイドメンバは、車体のほぼ全長にわたって車体前後方向へ延在する骨格部材であり、車体の剛性を確保する上で重要な部材である。しかも、サイドメンバは、車体前方からの入力荷重を車体後方の部材に伝える際に主要な役割を担っている。
【0003】
ところで、車体前方からの荷重を車体後方の部材に効率良く伝えるには、左右両側に位置するサイドメンバの間隔が一定で、局所的に湾曲することのないように構成することが重要である。これによって、フロア骨格構造が必要な剛性を得、かつサイドメンバなどを軽量な部材とすることが可能となる。
しかし、コンパクト設計の小型車両の基本的な骨格構造では、車幅が狭いためにサイドメンバの車体幅方向の間隔も狭くなっている。また、車体幅方向の中心寄りに剛性部材を集中して配置することにより、車体前方からの入力荷重を効果的に受け止める構造を採用すると、サイドメンバの車体幅方向の間隔が狭くなる傾向になる。
このとき、リヤフロアの周辺では、車体後方に配置される燃料タンクなどの部材との干渉を避け、またはリヤタイヤの懸架装置を取付けるため、車体後方のリヤサイドメンバが車体幅方向の外側に位置することが要望されている。そのため、従来のフロア骨格構造では、車体後方側が車幅方向中心から外側に向けて湾曲した形状のサイドメンバが用いられ、あるいは、車体前後方向へ延びる部材を追加して、車体前方からの入力荷重を車体後方のリヤサイドメンバに伝えるようにすることにより、車体全体で荷重を吸収する構造としている。
【0004】
一方、コンパクト設計の小型車両の基本的な骨格構造においては、部材の追加によって重量増大を招くことを避ける必要がある。このため、従来の骨格構造の中には、フロントサイドメンバから外側に湾曲してメインフロアのサイドメンバを繋げ、車体外側の位置を維持して車体後方のリヤサイドメンバに繋げるタイプの構造がある(例えば、特許文献1参照)。
または、フロントサイドメンバから車体幅方向の間隔をほぼ同じに維持してメインフロアのサイドメンバを繋げ、車体外側に湾曲して車体後方のリヤサイドメンバに繋げるタイプの構造がある(例えば、特許文献2参照)。
さらには、サイドメンバをメインフロアとリヤフロアで分割し、メインフロアのサイドメンバの後方を湾曲させずにリヤフロアに結合させ、車体幅方向の位置を変えてリヤサイドメンバを設けるタイプの構造がある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−12677号公報
【特許文献2】特開2005−219521号公報
【特許文献3】特開2008−13078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される従来のフロア骨格構造では、大きな荷重を吸収する車体前部のサイドメンバに湾曲部が形成されているので、湾曲部の補強が必要になるとともに、変形パターンにおけるサイドメンバの折れ位置が湾曲部にならないような設計を行う必要があった。
また、特許文献2に示される従来のフロア骨格構造では、特にコンパクト設計の小型車両の基本的な骨格構造において、サイドメンバが湾曲する車体前後方向の長さが短く、急激に外側へ湾曲しているので、必要な骨格剛性を保持できない場合があった。しかも、このようなサイドメンバは、プレス成形も難しくなるので、生産性が低下するという問題があった。
さらに、特許文献3に示される従来のフロア骨格構造では、車体前方からの入力荷重の伝達がフロントサイドメンバからフロアサイドメンバに伝わっても、車体後方のリヤサイドメンバには伝わらずにリヤフロアの前部で受けて止まることになるので、当該リヤフロアの前部で荷重集中が起こりやすく、座屈変形の発生が懸念されている。このため、リヤフロアの箇所には、追加の補強手段を設ける必要があった。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車体前方からの荷重をフロアサイドメンバから車体後方のリヤフロアパネルに円滑に伝えて分散させることができ、リヤフロアパネルの前部での応力集中が起こらず、リヤフロアパネルの前部の座屈変形を防止することが可能な車両のフロア骨格構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車体の下部に設けられ、メインフロアパネル及びリヤフロアパネルを有するフロアパネルと、該フロアパネルの車体幅方向の両側に設けられ、車体前後方向へ延在するフロアサイドメンバ及びリヤサイドメンバを有するサイドメンバとを備え、前記フロアサイドメンバは前記メインフロアパネルに配置され、前記リヤサイドメンバは前記リヤフロアパネルに配置されている車両のフロア骨格構造において、前記フロアサイドメンバの上方には、車体前後方向へ延在するリーンフォースメントが前記メインフロアパネルを間に置いて車体上下方向で重ねて配置され、前記リーンフォースメントの上面は、車体後方へ向かって上方に高くなるように形成され、前記リーンフォースメントの前部及び長手方向側面の下部は、前記メインフロアパネルの上面に接合されているとともに、前記リーンフォースメントの後端は、前記リヤフロアパネルの前部に形成した縦壁に接合されることにより、前記メインフロアパネル、前記リヤフロアパネルの前部及び前記リーンフォースメントに囲まれた側面視で第1の閉断面空間が形成され、前記フロアサイドメンバの後端の下面は、前記メインフロアパネルへ向かって徐々に上方に高くなるように形成され、前記リーンフォースメントの上面の傾斜角度と前記フロアサイドメンバの後端の下面の傾斜角度とはほぼ同じで、かつ側面視で断面形状の変化が少ない形状に形成されている。
【0009】
また、本発明において、前記リヤフロアパネルの前部の車体後方側には、車体幅方向に延びるリヤフロアフロントクロスメンバが設けられ、該リヤフロアフロントクロスメンバは、前記リヤフロアパネルの下面に接合されることにより、前記リヤフロアパネル及び前記リヤフロアフロントクロスメンバに囲まれた側面視で第2の閉断面空間が形成され、該第2の閉断面空間は、前記第1の閉断面空間と隣接して配置されている。
さらに、本発明において、前記第1の閉断面空間と前記第2の閉断面空間とは、断面形状が車体前後及び上下方向に沿って連続して変化するように形成されている。
【0010】
また、本発明において、前記リーンフォースメントは、車体幅方向の断面形状がハット型に形成され、前記リーンフォースメントの左右両側の下部フランジは、前記フロアサイドメンバの上部に形成したフランジと一致して配置され、前記リーンフォースメントの下部フランジ、前記メインフロアパネル及び前記フロアサイドメンバのフランジが3枚重ね合わせられた状態で接合されている。
さらに、本発明において、前記リーンフォースメントの後端部の左右両側には、車体幅方向に延びる側部フランジが形成され、前記リヤフロアフロントクロスメンバの前端部には、車体下方に延びるフランジが形成され、前記リーンフォースメントの側部フランジ、前記リヤフロアパネルの前部の縦壁及び前記リヤフロアフロントクロスメンバのフランジが3枚重ね合わせられた状態で接合されている。
そして、本発明において、前記リーンフォースメントには、リヤシートの取付部が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
上述の如く、本発明に係る車両のフロア骨格構造は、車体の下部に設けられ、メインフロアパネル及びリヤフロアパネルを有するフロアパネルと、該フロアパネルの車体幅方向の両側に設けられ、車体前後方向へ延在するフロアサイドメンバ及びリヤサイドメンバを有するサイドメンバとを備え、前記フロアサイドメンバは前記メインフロアパネルに配置され、前記リヤサイドメンバは前記リヤフロアパネルに配置されているものであって、前記フロアサイドメンバの上方には、車体前後方向へ延在するリーンフォースメントが前記メインフロアパネルを間に置いて車体上下方向で重ねて配置され、前記リーンフォースメントの上面は、車体後方へ向かって上方に高くなるように形成され、前記リーンフォースメントの前部及び長手方向側面の下部は、前記メインフロアパネルの上面に接合されているとともに、前記リーンフォースメントの後端は、前記リヤフロアパネルの前部に形成した縦壁に接合されることにより、前記メインフロアパネル、前記リヤフロアパネルの前部及び前記リーンフォースメントに囲まれた側面視で第1の閉断面空間が形成され、前記フロアサイドメンバの後端の下面は、前記メインフロアパネルへ向かって徐々に上方に高くなるように形成され、前記リーンフォースメントの上面の傾斜角度と前記フロアサイドメンバの後端の下面の傾斜角度とはほぼ同じで、かつ側面視で断面形状の変化が少ない形状に形成されているので、フロアサイドメンバの後端とリーンフォースメントとでリヤフロアパネルの前部に向かって一定した側面視閉断面空間が存在することになり、リヤフロアパネルの前部の剛性を高めることができる。
したがって、本発明のフロア骨格構造によれば、車体前方からの荷重がメインフロアパネル及びフロアサイドメンバに掛かるとき、フロアサイドメンバの荷重を車体後方のリヤフロアパネルに円滑に伝え、車体前方からの荷重を車体後方のリヤフロアパネルに分散させることが可能となり、リヤフロアパネルの前部での応力集中が起こらず、車体前方からの荷重によるリヤフロアパネルの前部の座屈変形を防止することができる。
【0012】
また、本発明において、前記リヤフロアパネルの前部の車体後方側には、車体幅方向に延びるリヤフロアフロントクロスメンバが設けられ、該リヤフロアフロントクロスメンバは、前記リヤフロアパネルの下面に接合されることにより、前記リヤフロアパネル及び前記リヤフロアフロントクロスメンバに囲まれた側面視で第2の閉断面空間が形成され、該第2の閉断面空間は、前記第1の閉断面空間と隣接して配置されているので、フロアサイドメンバの荷重を高剛性のリヤフロアパネルの前部における閉断面部分に効率良く伝達することができる。しかも、車体幅方向に延びるリヤフロアパネルの前部の閉断面部分が車体前方からの荷重を車体後方の多くの部材に分散するので、車体前方からの荷重を効率良く吸収することができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記第1の閉断面空間と前記第2の閉断面空間とは、断面形状が車体前後及び上下方向に沿って連続して変化するように形成されているので、これら閉断面空間の連携が強くなり、車体前方からの荷重をより一層効率良く分散及び吸収することができる。
【0014】
そして、本発明において、前記リーンフォースメントは、車体幅方向の断面形状がハット型に形成され、前記リーンフォースメントの左右両側の下部フランジは、前記フロアサイドメンバの上部に形成したフランジと一致して配置され、前記リーンフォースメントの下部フランジ、前記メインフロアパネル及び前記フロアサイドメンバのフランジが3枚重ね合わせられた状態で接合されているので、溶接が確実に行える3枚重ねのスポット溶接によって結合することが可能となり、溶接点が剥がれるのを防止でき、閉断面空間の断面形状を確実に保持して車体前方からの荷重を吸収できる。
【0015】
また、本発明において、前記リーンフォースメントの後端部の左右両側には、車体幅方向に延びる側部フランジが形成され、前記リヤフロアフロントクロスメンバの前端部には、車体下方に延びるフランジが形成され、前記リーンフォースメントの側部フランジ、前記リヤフロアパネルの前部の縦壁及び前記リヤフロアフロントクロスメンバのフランジが3枚重ね合わせられた状態で接合されているので、上記発明と同様、溶接が確実に行える3枚重ねのスポット溶接によって結合することが可能となり、溶接点が剥がれるのを防止でき、閉断面空間の断面形状を確実に保持して車体前方からの荷重を吸収できる。
【0016】
さらに、本発明において、前記リーンフォースメントには、リヤシートの取付部が設けられているので、車体前方からの荷重が掛かって、シート自重や搭乗者重量の慣性力が働くことにより、リヤシートの取付部に大きな荷重が加わることになっても、このリヤシートからの荷重を高剛性のリーンフォースメントがしっかりと受け止め、吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るフロア骨格構造が適用される車両の室内側を車体前方斜め上から見たものであり、フロパネル及びリーンフォースメントを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフロア骨格構造が適用される車両の室外側を車体下方から見たものであり、フロパネル、サイドメンバ及びリヤフロアクロスメンバを示す斜視図である。
【図3】図1におけるフロパネルの一部を破断し、フロパネル、サイドメンバ、リーンフォースメント及びリヤフロアクロスメンバの位置関係を示す斜視図である。
【図4】図3におけるフロパネル、サイドメンバ、リーンフォースメント及びリヤフロアクロスメンバの接合関係を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るフロア骨格構造が適用される車両のリヤシートの取付部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図5は本発明の実施形態に係る車両のフロア骨格構造を示すものである。
【0019】
本発明の実施形態に係る車両は、図1〜図4に示すように、4ドア・セダンタイプの自動車であり、このタイプの車両のフロア骨格構造は、車体の下部の全体に設けられるフロパネル1と、このフロアパネル1の前体幅方向の左右両側に設けられる左右一対のサイドメンバ2とを備えている。フロアパネル1は、車体前後方向に沿って連続して配置されるメインフロアパネル11及びリヤフロアパネル12を有しており、リヤフロアパネル12は、メインフロアパネル11よりも一段高い位置に配設されている。このため、リヤフロアパネル12の車体前方側に位置する前部13は、車体下方へ向かって屈曲された縦壁13aが形成されており、この縦壁13aの下端部は、ほぼ水平に折り曲げられてメインフロアパネル11の後端部11aに接合されている。なお、メインフロアパネル11の車体幅方向のほぼ中央には、車室側へ突出する凸形状のフロアトンネル11bが車体前後方向へ沿って設けられている。
【0020】
また、左右一対のサイドメンバ2は、図2及び図3に示すように、車体前後方向へ延在するフロアサイドメンバ21及びリヤサイドメンバ22をそれぞれ有しており、これらフロアサイドメンバ21とリヤサイドメンバ22とは、車体前後方向で間隔を空けて配置されている。すなわち、サイドメンバ2は、フロアサイドメンバ21とリヤサイドメンバ22とによって構成された分割構造となっている。そのため、フロアサイドメンバ21は、フロアトンネル11bを間に置いた状態で、メインフロアパネル11の車体幅方向に間隔を空けて配置されている。また、リヤサイドメンバ22は、リヤフロアパネル12の車体幅方向に間隔を空けて配置され、フロアサイドメンバ21よりも車体外側に位置している。
【0021】
フロアサイドメンバ21及びリヤサイドメンバ22は、車体幅方向の断面形状がハット型にそれぞれ形成されており、フロアサイドメンバ21の上部の左右両側のフランジ部21aは、メインフロアパネル11の下面にスポット溶接などにより接合され、リヤサイドメンバ22の左右両側のフランジ部22aは、リヤフロアパネル12の下面にスポット溶接などにより接合されている。
【0022】
本実施形態の各フロアサイドメンバ21の上方には、図1〜図4に示すように、車体前後方向へ延在するリーンフォースメント3がメインフロアパネル11を間に置いて、それぞれ車体上下方向で重ねて配置されている。リーンフォースメント3の上面3aは、車体後方へ向かって徐々に高くなるような傾斜面状に形成されている。そして、リーンフォースメント3の前部3b及び長手方向側面3cの下部は、メインフロアパネル11の上面に接合されているとともに、リーンフォースメント3の後端部3dは、リヤフロアパネル12の前部13に形成した縦壁13aに接合されている。これにより、メインフロアパネル11の車体後方側には、メインフロアパネル11、リヤフロアパネル12の前部13の縦壁13a及びリーンフォースメント3の上面3aにて囲まれた側面視で三角形状の第1の閉断面空間S1が形成されている。
【0023】
一方、フロアサイドメンバ21の後端の下面部21bは、図2〜図4に示すように、メインフロアパネル11へ向かって徐々に上方に高くなるような傾斜面状に形成されており、下面部21bの後端部分は、ほぼ水平に折り曲げられてメインフロアパネル11の後端部11aの下面にスポット溶接などにより接合されている。しかも、リーンフォースメント3の上面3aの傾斜角度とフロアサイドメンバ21の後端の下面部21bの傾斜角度とはほぼ同じで、かつ側面視で断面形状の変化が少ない形状に形成されている。
【0024】
このようなリーンフォースメント3は、車体幅方向の断面形状がハット型に形成されており、リーンフォースメント3の左右両側の長手方向側面3cの下部には、車体幅方向へ延びる下部フランジ31がそれぞれ形成されている。また、リーンフォースメント3の後端部3dの左右両側には、車体幅方向へ延びる側部フランジ32がそれぞれ形成されている。
そして、リーンフォースメント3の左右両側の下部フランジ31は、フロアサイドメンバ21の上部に形成した左右両側のフランジ部21aの位置と一致して配置されており、これにより、リーンフォースメント3の下部フランジ31、メインフロアパネル11及びフロアサイドメンバ21のフランジ部21aが、3枚重ね合わせられた状態で、スポット溶接などにより接合されている。
【0025】
また、本実施形態のリヤフロアパネル12の前部13の車体後方側には、図2〜図4に示すように、車体幅方向に延びるリヤフロアフロントクロスメンバ4が設けられている。このリヤフロアフロントクロスメンバ4は、リヤフロアパネル12の下面に接合されるものであって、車体側面視で断面略L字状に形成されており、前端部には車体下方へ延びる前端フランジ4aが形成され、後端部には車体後方へ向かって水平に延びる後端フランジ4bが形成されている。そして、リーンフォースメント3の後端部3dの側部フランジ32、リヤフロアパネル12の前部13の縦壁13a及びリヤフロアフロントクロスメンバ4の前端フランジ4aが、3枚重ね合わせられた状態で、スポット溶接などにより接合されている。これにより、リヤフロアパネル12の車体前方側には、リヤフロアパネル12の前部13の縦壁13a及びリヤフロアフロントクロスメンバ4にて囲まれた側面視で三角形状の第2の閉断面空間S2が形成されている。
第2の閉断面空間S2は、第1の閉断面空間S1と隣接して配置されている。しかも、第1の閉断面空間S1と第2の閉断面空間S2とは、図3及び図4に示すように、断面形状が車体前後方向及び上下方向に沿って連続して変化するように形成されている。
【0026】
なお、リーンフォースメント3には、図5に示すように、車体後部のリヤフロアパネル12上に設置するリヤシート5の取付部51が設けられている。このリヤシート5は、不使用時において、シートバックをシートクッション上に折り畳んだ状態で、脚部52の回動軸を中心に車体前方へ回動させて起立姿勢を保持することが可能な折り畳み式シートであり、脚部52の下端に設けた取付部51が高剛性のリーンフォースメント3に接合されるようになっている。
【0027】
このように、本発明の実施形態に係る車両のフロア骨格構造においては、車体幅方向の断面形状をハット型とし、上面3aを車体後方へ向かって高くなるように形成した高剛性のリーンフォースメント3が、メインフロアパネル11を間に置いてフロアサイドメンバ21の上方に重ねて配置され、リーンフォースメント3の前部3b及び側面3cの下部がメインフロアパネル11の上面に接合され、フロアサイドメンバ21の上方に重ねて配置され、リーンフォースメント3の後端部3dがリヤフロアパネル12の前部13の縦壁13aに接合されることにより、メインフロアパネル11、リヤフロアパネル12の前部13及びリーンフォースメント3に囲まれた第1の閉断面空間S1が形成されており、フロアサイドメンバ21の後端の下面部21bが、メインフロアパネル11へ向かって徐々に上方に高くなり、リーンフォースメント3の上面3aの傾斜角度とフロアサイドメンバ21の下面部21bの傾斜角度とがほぼ同じで、かつ側面視において断面形状の変化が少なくなっているため、リヤフロアパネル12の前部13の剛性を高めることができる。また、本発明のフロア骨格構造において、車体前方からの荷重がメインフロアパネル11及びフロアサイドメンバ21に掛かる際、フロアサイドメンバ21の荷重が車体後方のリヤフロアパネル12に円滑に伝わり、当該リヤフロアパネル12で分散することが可能となるため、リヤフロアパネル12の前部13での応力集中が起こらず、車体前方からの荷重によるリヤフロアパネル12の前部13の座屈変形などを防止することができる。
【0028】
また、本実施形態のフロア骨格構造においては、リヤフロアパネル12の下面に接合される断面略L字状のリヤフロアフロントクロスメンバ4がリヤフロアパネル12の前部13の車体後方側に設けられ、リヤフロアパネル12及びリヤフロアフロントクロスメンバ4に囲まれた側面視において第2の閉断面空間S2が形成され、第2の閉断面空間S2と第1の閉断面空間S1とが隣接して配置され、断面形状が車体前後及び上下方向に沿って連続して変化するように形成されているため、閉断面空間の連携が強くなって、フロアサイドメンバ21への荷重がリヤフロアパネル12の前部13における高剛性の閉断面部分に効率良く伝達されることになり、車体前方からの荷重を車体後方の多くの部材に分散させて効率良く吸収することができる。
【0029】
しかも、本実施形態のフロア骨格構造においては、リーンフォースメント3の左右両側の下部フランジ31の設置位置が、フロアサイドメンバ21のフランジ部21aと一致して配置され、リーンフォースメント3の下部フランジ31、メインフロアパネル11及びフロアサイドメンバ21のフランジ部21aが3枚重ねで接合され、また、リーンフォースメント3の後端部3dに位置する左右両側の側部フランジ32、リヤフロアパネル12の前部13の縦壁13a及びリヤフロアフロントクロスメンバ4の前端フランジ4aが3枚重ねで接合されているため、接合した3枚の部材の結合強度を向上させることができ、閉断面空間の断面形状を保持して車体前方からの荷重を吸収できる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施形態のリーンフォースメント3の形状は、メインフロアパネル11の上面及びリヤフロアパネル12の前部13に接合することが可能であれば、車体幅方向の断面形状がハット型に限られず、種々の形状を選択することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 フロアパネル
2 サイドメンバ
3 リーンフォースメント
3a 上面
3b 前部
3c 長手方向側面
3d 後端部
4 リヤフロアフロントクロスメンバ
4a 前端フランジ
4b 後端フランジ
5 リヤシート
11 メインフロアパネル
12 リヤフロアパネル
13 リヤフロアパネルの前部
13a 縦壁
21 フロアサイドメンバ
21a フランジ部
21b 下面部
22 リヤサイドメンバ
22a フランジ部
31 下部フランジ
32 側部フランジ
S1 第1の閉断面空間
S2 第2の閉断面空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下部に設けられ、メインフロアパネル及びリヤフロアパネルを有するフロアパネルと、該フロアパネルの車体幅方向の両側に設けられ、車体前後方向へ延在するフロアサイドメンバ及びリヤサイドメンバを有するサイドメンバとを備え、前記フロアサイドメンバは前記メインフロアパネルに配置され、前記リヤサイドメンバは前記リヤフロアパネルに配置されている車両のフロア骨格構造において、
前記フロアサイドメンバの上方には、車体前後方向へ延在するリーンフォースメントが前記メインフロアパネルを間に置いて車体上下方向で重ねて配置され、前記リーンフォースメントの上面は、車体後方へ向かって上方に高くなるように形成され、前記リーンフォースメントの前部及び長手方向側面の下部は、前記メインフロアパネルの上面に接合されているとともに、前記リーンフォースメントの後端は、前記リヤフロアパネルの前部に形成した縦壁に接合されることにより、前記メインフロアパネル、前記リヤフロアパネルの前部及び前記リーンフォースメントに囲まれた側面視で第1の閉断面空間が形成され、
前記フロアサイドメンバの後端の下面は、前記メインフロアパネルへ向かって徐々に上方に高くなるように形成され、前記リーンフォースメントの上面の傾斜角度と前記フロアサイドメンバの後端の下面の傾斜角度とはほぼ同じで、かつ側面視で断面形状の変化が少ない形状に形成されていることを特徴とする車両のフロア骨格構造。
【請求項2】
前記リヤフロアパネルの前部の車体後方側には、車体幅方向に延びるリヤフロアフロントクロスメンバが設けられ、該リヤフロアフロントクロスメンバは、前記リヤフロアパネルの下面に接合されることにより、前記リヤフロアパネル及び前記リヤフロアフロントクロスメンバに囲まれた側面視で第2の閉断面空間が形成され、該第2の閉断面空間は、前記第1の閉断面空間と隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のフロア骨格構造。
【請求項3】
前記第1の閉断面空間と前記第2の閉断面空間とは、断面形状が車体前後及び上下方向に沿って連続して変化するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両のフロア骨格構造。
【請求項4】
前記リーンフォースメントは、車体幅方向の断面形状がハット型に形成され、前記リーンフォースメントの左右両側の下部フランジは、前記フロアサイドメンバの上部に形成したフランジと一致して配置され、前記リーンフォースメントの下部フランジ、前記メインフロアパネル及び前記フロアサイドメンバのフランジが3枚重ね合わせられた状態で接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のフロア骨格構造。
【請求項5】
前記リーンフォースメントの後端部の左右両側には、車体幅方向に延びる側部フランジが形成され、前記リヤフロアフロントクロスメンバの前端部には、車体下方に延びるフランジが形成され、前記リーンフォースメントの側部フランジ、前記リヤフロアパネルの前部の縦壁及び前記リヤフロアフロントクロスメンバのフランジが3枚重ね合わせられた状態で接合されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の車両のフロア骨格構造。
【請求項6】
前記リーンフォースメントには、リヤシートの取付部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両のフロア骨格構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76600(P2012−76600A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223814(P2010−223814)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】