説明

車両のフロントウインドシールド支持構造

【課題】 コンパクトな構造でフロントウインドシールドに入力する衝突荷重を効果的に吸収する。
【解決手段】 ダッシュボードアッパー14の補強部16の上部にフロントウインドシールド18の下端を支持するウインドシールドサポート17を、フロントウインドシールド18を支持する上部が相互に連結され、かつダッシュボードアッパー14に接続される下部が相互に連結された前側部材21および後側部材20で構成し、前側部材21を上下方向中間部が前側に突出するように断面く字状に屈曲させ、後側部材20を上下方向中間部が後側に突出するように断面く字状に屈曲させてボックス状断面を構成したので、フロントウインドシールド18に衝突荷重が入力したときに、前側部材21および後側部材20の上下方向中間部を相互に離反するように潰れ変形させることで、潰れ残り空間が発生するのを最小限に抑えて衝撃吸収効果を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュボードアッパーの補強部の上部にウインドシールドサポートを介してフロントウインドシールドの下端を支持する車両のフロントウインドシールド支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動車のダッシュパネル3の上縁に沿って車幅方向に延びるカウル1を、下側の底壁部11、後側の縦壁部12、上側の上壁部13および前側の複数の衝撃吸収部材2を有するボックス断面に構成し、上壁部13にフロントガラス70の下端を支持し、フロントガラス70に衝突荷重が加わったときに、縦壁部12の中間部に形成された易変形部14および複数の衝撃吸収部材2を上下方向に潰れ変形させて衝撃を吸収するものが記載されている。
【特許文献1】特開2004−217144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで上記特許文献1に記載されたものは、フロントガラス70に衝突荷重が加わったときに縦壁部12および衝撃吸収部材2が共に前方に変形して上下方向に潰れ変形するので、その潰れ代が小さくなって充分な衝撃吸収効果が得られないだけでなく、カウル1の内部空間がエアコンの気液分離部となっているので、カウル1が大型化して設計自由度が低下する問題がある。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、コンパクトな構造でフロントウインドシールドに入力する衝突荷重を効果的に吸収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ダッシュボードアッパーの補強部の上部にウインドシールドサポートを介してフロントウインドシールドの下端を支持する車両のフロントウインドシールド支持構造において、前記ウインドシールドサポートは、前記フロントウインドシールドを支持する上部が相互に連結され、かつ前記ダッシュボードアッパーに接続される下部が相互に連結された前側部材および後側部材からなり、前記前側部材は上下方向中間部が前側に突出するように断面く字状に屈曲し、かつ前記後側部材は上下方向中間部が後側に突出するように断面く字状に屈曲し、前記前側部材および前記後側部材でボックス状断面を構成することを特徴とする車両のフロントウインドシールド支持構造が提案される。
【0006】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、エアコンディショナーの気液分離室を前記前側部材の前方におけるダッシュボードアッパーの上方に形成したことを特徴とする車両のフロントウインドシールド支持構造が提案される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の構成によれば、ダッシュボードアッパーの補強部の上部にフロントウインドシールドの下端を支持するウインドシールドサポートを、フロントウインドシールドを支持する上部が相互に連結され、かつダッシュボードアッパーに接続される下部が相互に連結された前側部材および後側部材で構成し、かつ前側部材を上下方向中間部が前側に突出するように断面く字状に屈曲させ、後側部材を上下方向中間部が後側に突出するように断面く字状に屈曲させてボックス状断面を構成したので、フロントウインドシールドに衝突荷重が入力したときに、前側部材および後側部材の上下方向中間部が相互に離反するように潰れ変形させることで、潰れ残り空間が発生するのを最小限に抑えて衝撃吸収効果を高めることができる。
【0008】
また請求項2の構成によれば、エアコンディショナーの気液分離室を前側部材の前方におけるダッシュボードアッパーの上方に形成したので、前側部材および後側部材の間に気液分離室を形成する場合に比べてウインドシールドサポートを小型化し、コンパクトな構造で衝撃吸収を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図6は本発明の実施の形態を示すもので、図1はフロントウインドシールドの下端の支持部の縦断面図、図2はウインドシールドサポートの分解斜視図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図2の4−4線断面図、図5は図2の5−5線断面図、図6は図2の6−6線断面図である。
【0011】
図1に示すように、自動車の車室11とエンジンルーム12とを仕切るダッシュボードロア13の上端に、上向きに開放した樋状のダッシュボードアッパー14の下面が連結される。ダッシュボードアッパー14の後部下面に樋状の補強ビーム15が連結され、ダッシュボードアッパー14の後部および補強ビーム15によりボックス断面の補強部16が構成される。補強部16の上方にウインドシ−ルドサポート17を介してフロントウインドシールド18の下端が支持されており、ダッシュボードアッパー14、ウインドシ−ルドサポート17および補強ビ−ム15の後部がダッシュボード19により覆われる。
【0012】
ウインドシ−ルドサポート17は、後側に位置する後側部材20と、前側に位置する前側部材21とで構成されており、後側部材20の上壁20aの上面にダムラバー22および接着剤23を介してフロントウインドシールド18の下端が固定される。カウルカバー24の後部が後側部材20の上壁20aにクリップ25…で固定され、かつ前部がダッシュボードアッパー14の前部にエプトシール26を介してクリップ30…で固定される。カウルカバー24の上面にブラケット27を介して支持したウエザーストリップ28が、ボンネットフ−ド29の下面に当接する。
【0013】
図2〜図4に示すように、後側部材20は前記上壁20aの後端に折れ線aを介して連なる第1斜壁20bと、第1斜壁20bの下端に折れ線bを介して連なる第2斜壁20cと、第2斜壁20cの下端に折れ線cを介して連なる下壁20dとを一体に備える。第1斜壁20bには複数のビード20f…が形成され、第2斜壁20cには複数のビード20g…が形成され、第1、第2斜壁20b,20cに跨がるように複数のビード20h…が形成される。
【0014】
図2、図5および図6に示すように、前側部材21は上壁21aと、上壁21aの後端に折れ線dを介して連なる第1斜壁21bと、第1斜壁21bの下端に折れ線eを介して連なる第2斜壁21cと、第2斜壁21cの下端に折れ線fを介して連なる、複数に分割された下壁21d…とを一体に備える。第1、第2斜壁21b,21cに跨がるように複数の肉抜き孔21f…と複数のビード21g…とが形成される。
【0015】
しかして、後側部材20の上壁20aと前側部材21の上壁21aとが重ね合わされて溶接され、また後側部材20の下壁20dおよび前側部材21の下壁21d…がダッシュボードアッパー14の上面に溶接される。そして補強ビーム15の前後部がダッシュボードアッパー14の下面に溶接される。
【0016】
この状態で、図1に示すように、ウインドシ−ルドサポート17の前方において、ダッシュボードアッパー14とカウルカバー24との間に、エアコンディショナーの気液分離室31が区画される。
【0017】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0018】
車両のフロントバンパーによりボンネットフード29上に撥ね上げられた物体がフロントウインドシールド18に衝突したとき、図1に鎖線で示すように、剛性の高い補強部16は変形し難いため、その補強部16とフロントウインドシールド18との間に配置されたウインドシ−ルドサポート17が上下方向に潰れることで、衝撃を効果的に吸収することができる。
【0019】
即ち、通常時は菱形状の断面を有するフロントウインドシールド18に上下方向の圧縮力が作用すると、後側部材20のく字状に屈曲する第1斜壁20bおよび第2斜壁20cが、固定された上壁20aおよび下壁20dに対して折れ線a,b,cにおいて折れ曲がり、かつ前側部材21のく字状に屈曲する第1斜壁21bおよび第2斜壁21cが、固定された上壁21aおよび下壁21d…に対して折れ線d,e,fにおいて折れ曲がることで、ウインドシ−ルドサポート17が上下方向に押し潰されて衝撃を吸収する。
【0020】
このとき、後側部材20の第1斜壁20bにビード20f…を設け、かつ第2斜壁20cにビード20g…を設けたことで第1、第2斜壁20b,20cの面剛性を高め、後側部材20の第1、第2斜壁20b,20c間の折れ線bを後方に向けて確実に折り曲げることができる。しかも第1、第2斜壁20b,20cに跨がるビード20h…を設けたことで、第1、第2斜壁20b,20cの面剛性を高めるとともに、後側部材20をプレス成形する際のバックリングを防止することができる。
【0021】
また前側部材21の第1斜壁21bおよび第2斜壁21cに跨がるように肉抜き孔21f…を設けたことで、前側部材21の第1、第2斜壁21b,21c間の折れ線bを前方に向けて確実に折り曲げることができる。このとき、第1、第2斜壁21b,21cに跨がるビード21g…を設けたことで、第1、第2斜壁21b,21cの面剛性を高めるとともに、前側部材21をプレス成形する際のバックリングを防止することができる。更に、前側部材21に複数の下壁21d…を離散的に設けたので、折れ線fでの折れ曲がりを確実なものにすることができる。
【0022】
このように、菱形に配置された後側部材20の第1、第2斜壁20b,20cと前側部材21の第1、第2斜壁21b,21cとが、殆ど平坦になって空間が消滅するまで潰れることで、ウインドシ−ルドサポート17の潰れ代を拡大して最大限の衝撃吸収効果を発揮させることができる。
【0023】
またエアコンディショナーの気液分離室31をウインドシ−ルドサポート17から分離し、ウインドシ−ルドサポート17の前方のダッシュボードアッパー14とカウルカバー24との間に形成したので、ウインドシ−ルドサポート17の断面積を衝撃吸収に必要な最小限の大きさとし、その設計自由度を高めることができる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】フロントウインドシールドの下端の支持部の縦断面図
【図2】ウインドシールドサポートの分解斜視図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】図2の4−4線断面図
【図5】図2の5−5線断面図
【図6】図2の6−6線断面図
【符号の説明】
【0026】
14 ダッシュボードアッパー
16 補強部
17 ウインドシールドサポート
18 フロントウインドシールド
20 後側部材
21 前側部材
31 気液分離室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュボードアッパー(14)の補強部(16)の上部にウインドシールドサポート(17)を介してフロントウインドシールド(18)の下端を支持する車両のフロントウインドシールド支持構造において、
前記ウインドシールドサポート(17)は、前記フロントウインドシールド(18)を支持する上部が相互に連結され、かつ前記ダッシュボードアッパー(14)に接続される下部が相互に連結された前側部材(21)および後側部材(20)からなり、
前記前側部材(21)は上下方向中間部が前側に突出するように断面く字状に屈曲し、かつ前記後側部材(20)は上下方向中間部が後側に突出するように断面く字状に屈曲し、前記前側部材(21)および前記後側部材(20)でボックス状断面を構成することを特徴とする車両のフロントウインドシールド支持構造。
【請求項2】
エアコンディショナーの気液分離室(31)を前記前側部材(21)の前方におけるダッシュボードアッパー(14)の上方に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の車両のフロントウインドシールド支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−213617(P2008−213617A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52414(P2007−52414)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】