説明

車両のフロントピラー構造

【課題】車両前面衝突時におけるフロントピラーの強度及び剛性を確保する。
【解決手段】車両のフロントピラー構造10は、ウィンドシールドガラス16の縦縁部16Aに沿って長手状に設けられたフロントピラー14を備えている。このフロントピラー14は、フロントシート側へ延びる一対の側壁部18,20と、この一対の側壁部18,20における各フロントシート側の端部を連結する車内側壁部62とを有しており、車内側壁部62には、フロントピラーの長手方向に沿って形成されたリブ64A,64B,64Cが立設されている。この構成よれば、リブ64A,64B,64Cによって、車両前面衝突時におけるフロントピラー14の強度及び剛性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイドロフォーム成形によって中空状に形成されたフロントピラーを備えた車両のフロントピラー構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−182079号公報
【特許文献2】特開平5−58340号公報
【特許文献3】特開平7−131224号公報
【特許文献4】特開平10−181466号公報
【特許文献5】実開昭57−189975号公報
【特許文献6】実開平1−114346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の構造においては、車両前面衝突時におけるフロントピラーの強度及び剛性が確保されることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、車両前面衝突時におけるフロントピラーの強度及び剛性を確保することができる車両のフロントピラー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両のフロントピラー構造は、ウィンドシールドガラスの縦縁部に沿って長手状に設けられると共に、フロントシート側へ延びる一対の側壁部と、前記一対の側壁部における各フロントシート側の端部を連結する車内側壁部とを有するフロントピラーと、前記車内側壁部に立設されると共に、前記フロントピラーの長手方向に沿って形成されたリブと、を備えている。
【0007】
この車両のフロントピラー構造によれば、フロントピラーの車内側壁部には、このフロントピラーの長手方向に沿ってリブが立設されている。従って、例えば、車両前面衝突時にフロントピラーの上部及び下部に対して車両前側への慣性力及び車両後側への衝突荷重がそれぞれ作用することで車内側壁部に応力が集中し、フロントピラーがその長手方向中間部を基点に車両外側に折れ曲がろうとしても、この折れ曲がりをリブによって抑制することができる。これにより、車両前面衝突時におけるフロントピラーの強度及び剛性を確保することができる。
【0008】
請求項2に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項1に記載の車両のフロントピラー構造において、前記リブが、互いに並列して複数設けられ、前記複数のリブの間に保持されると共に、前記フロントピラーの長手方向に沿って配索された配索部材をさらに備えている。
【0009】
この車両のフロントピラー構造によれば、リブは、互いに並列して複数設けられており、フロントピラーの長手方向に沿って配索された配索部材は、この複数のリブの間に保持されている。従って、この複数のリブによって、車両前面衝突時におけるフロントピラーの強度及び剛性を確保しつつ、配索部材の収納スペースも確保することができる。
【0010】
請求項3に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両のフロントピラー構造において、前記フロントピラーには、前記縦縁部の裏側に設けられ、前記縦縁部が接着固定された固定壁部と、前記縦縁部の車両幅方向外側に設けられると共に、前記固定壁部から前記一対の側壁部の延びる方向と反対方向に延出された立壁部と、が形成され、前記縦縁部の表側に設けられ、前記立壁部に固定されたアウタモールをさらに備えている。
【0011】
この車両のフロントピラー構造によれば、ウィンドシールドガラスの縦縁部が接着された固定壁部からは立壁部が延出されており、この立壁部には、アウタモールが固定されている。従って、アウタモールが縦縁部に近い位置で位置規制されるので、このアウタモールの縦縁部に対する位置精度を確保することができる。
【0012】
請求項4に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項3に記載の車両のフロントピラー構造において、前記立壁部が、前記縦縁部の車両幅方向外側に前記縦縁部と離間して設けられ、前記アウタモールには、前記立壁部の先端側から車両幅方向内側に延出されると共に、前記縦縁部の表側に前記縦縁部と離間して設けられたモール部が形成され、前記固定壁部、前記立壁部、及び、前記モール部によって、車両幅方向内側に開口する排水溝が前記フロントピラーの長手方向に沿って形成された構成とされている。
【0013】
この車両のフロントピラー構造によれば、フロントピラーに形成された固定壁部及び立壁部と、アウタモールに形成されたモール部とによって、車両幅方向内側に開口する排水溝がフロントピラーの長手方向に沿って形成されている。従って、ウィンドシールドガラスの外面から流れるウォッシャ液や雨水を、この排水溝によって処理することができるので、ウィンドシールドガラスの排水性能を確保することができる。
【0014】
請求項5に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項4に記載の車両のフロントピラー構造において、前記排水溝の底部が、前記固定壁部によって構成されると共に、前記縦縁部の裏面の車両幅方向外側への延長線よりも前記モール部と反対側に位置された構成とされている。
【0015】
この車両のフロントピラー構造によれば、この排水溝の底部は、固定壁部によって構成されると共に、縦縁部の裏面の車両幅方向外側への延長線よりもモール部と反対側に位置されているので、排水溝の断面積を拡大させることができる。これにより、ウィンドシールドガラスの排水性能をより確保することができる。
【0016】
請求項6に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両のフロントピラー構造において、前記一対の側壁部のうち前記ウィンドシールドガラス側に設けられた一方の側壁部が、前記縦縁部の裏側から前記フロントシート側へ延び、前記フロントピラーには、前記一方の側壁部における前記縦縁部側の端部から車両幅方向外側に延出されると共に、前記縦縁部の裏側に設けられ、前記縦縁部が接着固定された固定壁部が形成され、前記一方の側壁部及び前記車内側壁部を車両内側から覆い、その前記縦縁部側の端末部が前記一方の側壁部における前記縦縁部側の端部に固定されたインナガーニッシュをさらに備えている。
【0017】
この車両のフロントピラー構造によれば、インナガーニッシュにおける縦縁部側の端末部は、側壁部における縦縁部側の端部に固定されており、また、この側壁部における縦縁部側の端部から車両幅方向外側に延出された固定壁部には、ウィンドシールドガラスの縦縁部が接着固定されている。従って、インナガーニッシュにおける縦縁部側の端末部が縦縁部に近い位置で位置規制されるので、このインナガーニッシュにおける縦縁部側の端末部の縦縁部に対する位置精度を確保することができる。
【0018】
請求項7に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項6に記載の車両のフロントピラー構造において、前記インナガーニッシュにおける前記縦縁部側と反対側の端末部が、前記リブに固定された構成とされている。
【0019】
この車両のフロントピラー構造によれば、インナガーニッシュにおける縦縁部側と反対側の端末部は、リブに固定されているので、インナガーニッシュのフロントピラーへの取付強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、本発明によれば、車両前面衝突時におけるフロントピラーの強度及び剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造が適用された車両におけるフロントピラー周辺部の構成を示す側面図である。
【図2】図1の2−2線拡大断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造の変形例を示す図3に対応する拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図9】図2に示されるフロントピラーの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0023】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(左側)をそれぞれ示している。また、以下には、一例として、本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造が左ハンドル車に適用された例を説明する。
【0024】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造10が適用された車両12は、フロントピラー14を備えている。このフロントピラー14は、ウィンドシールドガラス16の縦縁部16A、及び、後述するサイドドア40に備えられたサイドガラス44の前縁部44Aに沿って長手状に設けられている。
【0025】
このフロントピラー14には、図2に示されるように、一対の側壁部18,20が形成されている。この一対の側壁部18,20のうちサイドガラス44側に設けられた側壁部18は、サイドガラス44よりもウィンドシールドガラス16側の位置から図示しないフロントシート側(矢印A側)へ延びている。そして、この側壁部18におけるフロントシート側の端部には、サイドガラス44と略平行に延びるフランジ22が形成されており、このフランジ22には、ウェザストリップ24(オープニングウェザストリップ)が取り付けられている。
【0026】
このウェザストリップ24は、サイドガラス44側に膨出するシール部26と、このシール部26と反対側に延出するリップ部28とを有している。シール部26は、サイドドア40が閉状態とされたときには、後述のドアフレーム42に形成された突出部48に弾性圧縮された状態で密着される構成とされており、リップ部28は、後述するインナガーニッシュ70の端末部70Bに密着されている。
【0027】
また、側壁部18におけるフランジ22と反対側には、当て部30が形成されている。この当て部30は、フロントピラー14の内側に凹むように屈曲して形成されており、第一当て部32と、この第一当て部32の車両外側に形成された第二当て部34とを有して構成されている。そして、この当て部30の車両外側には、フロントピラー14の外面部を構成する車外側壁部36が形成されている。
【0028】
サイドドア40は、図示しないヒンジを介してフロントピラー14にスイング可能に連結されており、ドアフレーム42とサイドガラス44とを備えている。ドアフレーム42には、その長手方向に沿ってガラスラン46が設けられており、サイドガラス44は、このガラスラン46を介してドアフレーム42に昇降可能に支持されている。
【0029】
また、ドアフレーム42には、フランジ22側に突出する突出部48が形成されており、このドアフレーム42のガラスラン46と反対側には、ウェザストリップ50(ドアウェザストリップ)が取り付けられている。
【0030】
このウェザストリップ50は、第一当て部32及び第二当て部34に向けて膨出するシール部52と、第二当て部34に向けて延びるリップ部54とを有している。シール部52は、サイドドア40が閉状態とされたときには、弾性圧縮された状態で第一当て部32及び第二当て部34に密着される構成とされており、リップ部54は、サイドドア40が閉状態とされたときには、第二当て部34に押し当てられて弾性変形される構成とされている。
【0031】
一方、一対の側壁部18,20のうちウィンドシールドガラス16側に設けられた側壁部20(一方の側壁部)は、縦縁部16Aの裏側からフロントシート側(矢印A側)へ延びている。そして、この側壁部20における縦縁部16A側の端部には、後述するインナガーニッシュ70の端末部70Aを固定するための固定部56が形成されている。この固定部56は、図3に示されるように、車両幅方向内側に開口する凹部58と、この凹部58の開口縁部に形成された係止爪60とを有して構成されている。
【0032】
また、図2に示されるように、一対の側壁部18,20における各フロントシート側の端部は、車内側壁部62によって連結されている。この車内側壁部62には、複数のリブ64A〜64Cが車両内側に向けて立設されている。この複数のリブ64A〜64Cは、互いに並列して設けられると共に、フロントピラー14の長手方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0033】
そして、複数のリブ64A〜64Cの間、及び、リブ64Cとフランジ22(ウェザストリップ24)との間には、例えば、ワイヤーハーネス、アンテナケーブル、排水ホースなどの配索部材66A〜66Cが保持されている。この配索部材66A〜66Cは、フロントピラー14の長手方向に沿って配索されている。また、リブ64A〜64Cの先端部には、その立設方向と交差する方向へ延びる押え部68が形成されており、この押え部68によって配索部材66A〜66Cの抜けが抑制されるようになっている。
【0034】
また、フロントピラー14の車両内側には、側壁部20及び車内側壁部62を車両内側から覆う樹脂製のインナガーニッシュ70が設けられている。このインナガーニッシュ70における縦縁部16A側の端末部70Aには、被固定部72が形成されている。この被固定部72には、図3に示されるように、固定部56側に突出する台座部74と、この台座部74から突出し先端に係止部76を有するクリップ78とが形成されている。
【0035】
そして、台座部74が側壁部20(係止爪60)に当接されると共に、クリップ78が凹部58の内側に挿入され、この状態で、係止爪60と係止部76とが係止されることにより、インナガーニッシュ70の端末部70Aは、側壁部20における縦縁部16A側の端部に位置規制された状態で固定されている。
【0036】
一方、図2に示されるように、インナガーニッシュ70における縦縁部16A側と反対側の端末部70Bには、断面L字状のフック80が形成されている。そして、フック80は、リブ64Cの先端部に形成されたフック82に係止されており、これにより、インナガーニッシュ70の端末部70Bは、リブ64Cに固定されている。
【0037】
また、図3に示されるように、側壁部20における縦縁部16A側の端部からは固定壁部84が縦縁部16Aに沿って車両幅方向外側に延出されている。この固定壁部84は、縦縁部16Aの裏側に縦縁部16Aと対向して設けられており、縦縁部16Aは、この固定壁部84に接着剤86によって接着されて固定されている。
【0038】
また、この固定壁部84の車両幅方向外側には立壁部88が形成されている。この立壁部88は、縦縁部16Aの車両幅方向外側に縦縁部16Aと離間して設けられると共に、固定壁部84から一対の側壁部18,20(側壁部18は図2を参照)の延びる方向と反対方向(つまり、縦縁部16Aの板厚方向に沿って車両外側)に延出されている。そして、この立壁部88の先端側には、上述の固定部56と同様の固定部96が形成されている。つまり、この固定部96は、車両幅方向内側に開口する凹部98と、この凹部98の開口縁部に形成された係止爪100とを有して構成されている。
【0039】
また、この立壁部88の先端側であって、縦縁部16Aの表側には、アウタモール102が設けられている。このアウタモール102は、フロントピラー14の長手方向に沿って設けられており、本体部104とクリップ108とを有している。
【0040】
本体部104は、それぞれ車両幅方向内側に延出されたモール部110とリップ部112とを有する断面U字状に形成されており、このモール部110とリップ部112とは、車両幅方向内側に開口する排水溝114を構成している。この排水溝114は、フロントピラー14の長手方向に沿って形成されている。また、クリップ108は、上述のクリップ78と同様の構成とされており、先端に係止部106を有している。
【0041】
そして、本体部104が係止爪100に当接されると共に、クリップ108が凹部98の内側に挿入され、この状態で、係止爪100と係止部106とが係止されることにより、アウタモール102は、立壁部88の先端側に固定されている。また、このようにしてアウタモール102が立壁部88の先端側に固定された状態では、モール部110は、縦縁部16Aの表側に縦縁部16Aと離間して設けられ、リップ部112は、縦縁部16Aの表面16A1と密着されている。
【0042】
また、このアウタモール102が固定されたフロントピラー14では、図2に示されるように、一対の側壁部18,20、当て部30、車外側壁部36、車内側壁部62、固定壁部84、立壁部88によって閉断面部118が構成されている。本実施形態において、この閉断面部118を有するフロントピラー14は、一例として、押出成形によって一定の断面に形成された後に、所定の曲率を有する形状に加工されたものとされている。
【0043】
また、この閉断面部118は、一対の側壁部18,20が延びる方向に沿った縦幅W1よりも該延びる方向から見た横幅W2の方が狭く形成されている。つまり、このフロントピラー14は、全体的には、横幅が狭く縦長の細幅化された構成とされている。
【0044】
また、図3に示されるように、縦縁部16Aの裏面16A2には、不透明(黒色)のセラミック部116が形成されており、インナガーニッシュ70の側面部70Cは、セラミック部116の車両幅方向内側端116Aと図示しない運転者の頭部とを結ぶ線L1に対して平行に設けられている。さらに、モール部110の先端110Aは、上述の線L1に対して車両幅方向外側に設けられている。
【0045】
なお、この場合の運転者とは、運転席を車両前後方向中央のスライド位置に設定すると共に、標準体格で且つ正しい運転姿勢の者を想定している。
【0046】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0047】
図2に示されるように、この車両のフロントピラー構造10によれば、フロントピラー14の閉断面部118は、縦幅W1よりも横幅W2の方が狭く形成されており、これにより、フロントピラー14は、全体的に横幅が狭く縦長の細幅化された構成とされている。従って、このフロントピラー14及びその周辺部によって構成されたフロントピラー部120の幅、すなわち、この場合、上述の線L1と、この線L1と平行でガラスラン46の先端を通る線L2との成す幅W3を狭めることができるので、車室からの視界を向上させることができる(特に、運転席に対する視界の妨害角を狭めることができる)。
【0048】
また、フロントピラー14の車内側壁部62には、このフロントピラー14の長手方向に沿って複数のリブ64A〜64Cが立設されている。従って、例えば、図1に示されるように、車両前面衝突時にフロントピラー14の上部及び下部に対して車両前側への慣性力F1及び車両後側への衝突荷重F2がそれぞれ作用することで車内側壁部62(図2参照)に応力が集中し、フロントピラー14が想像線で示される如くその長手方向中間部を基点に車両前側に折れ曲がろうとしても、この折れ曲がりを、上述の複数のリブ64A〜64C(図2参照)によって抑制することができる。これにより、フロントピラー14が細幅化(細径化)された場合でも、車両前面衝突時におけるフロントピラー14の強度及び剛性を確保することができる。
【0049】
しかも、図2に示されるこの複数のリブ64A〜64Cは、フロントピラー14の押出成形時に形成されるものであるので、製造コストの増加を抑制することができる。
【0050】
また、この複数のリブ64A〜64Cは、互いに並列して設けられており、フロントピラー14の長手方向に沿って配索された配索部材66A,66Bは、この複数のリブ64A〜64Cの間に保持されている。従って、この複数のリブ64A〜64Cによって、車両前面衝突時におけるフロントピラー14の強度及び剛性を確保しつつ、配索部材66A,66Bの収納スペースも確保することができる。
【0051】
また、この複数のリブ64A〜64Cの間は、車両内側に開放されており、配索部材66A,66Bを複数のリブ64A〜64Cの間に容易に組み付けることができるので、車両内側からの配索部材66A,66Bの組付時の作業性も向上させることができる。
【0052】
なお、配索部材66Cを挟んだリブ64Cと反対側に新たなリブが設けられ、この新たなリブとリブ64Cとの間に配索部材66Cが保持されるように構成することも可能である。
【0053】
また、図3に示されるように、ウィンドシールドガラス16の縦縁部16Aが接着された固定壁部84からは立壁部88が延出されており、この立壁部88には、アウタモール102が固定されている。従って、アウタモール102が縦縁部16Aに近い位置で位置規制されるので、このアウタモール102の縦縁部16Aに対する位置精度、特に、モール部110の先端110Aと、セラミック部116の車両幅方向内側端116Aとの位置精度も確保することができる。
【0054】
また、クリップ108を凹部98に挿入して、係止爪100と係止部106とを係止させるだけで、アウタモール102を立壁部88に組み付けることができるので、アウタモール102の組付時の作業性も向上させることができる。
【0055】
また、アウタモール102には、車両幅方向内側に開口する排水溝114がフロントピラー14の長手方向に沿って形成されている。従って、ウィンドシールドガラス16の外面から流れるウォッシャ液や雨水を、この排水溝114によって処理することができるので、ウィンドシールドガラス16の排水性能を確保することができる。
【0056】
また、図2に示されるように、インナガーニッシュ70における縦縁部16A側の端末部70Aは、側壁部20における縦縁部16A側の端部に固定されており、また、この側壁部20における縦縁部16A側の端部から車両幅方向外側に延出された固定壁部84には、ウィンドシールドガラス16の縦縁部16Aが接着固定されている。従って、インナガーニッシュ70の端末部70Aが縦縁部16Aに近い位置で位置規制されるので、このインナガーニッシュ70の端末部70Aの縦縁部16Aに対する位置精度、特に、この端末部70Aの先端70Dと、インナガーニッシュ70の側面部70Cと、セラミック部116の車両幅方向内側端116Aとの位置精度も確保することができる。
【0057】
また、このように、アウタモール102及びインナガーニッシュ70のウィンドシールドガラス16に対する位置精度を確保することにより、熱や経時に伴ってアウタモール102及びインナガーニッシュ70に位置ずれが生じたり、アウタモール102及びインナガーニッシュ70の位置が製造時にばらついたりすることを抑制することができる。これにより、フロントピラー部120の幅W3をより狭めることができるので、車室からの視界をより向上させることができる。
【0058】
また、上述の線L1に対してインナガーニッシュ70の側面部70Cが平行に設けられているので、車室からの視界と見栄えとを両立させることができる。
【0059】
また、インナガーニッシュ70の端末部70Bは、リブ64Cに固定されているので、インナガーニッシュ70のフロントピラー14への取付強度を確保することができる。
【0060】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0061】
すなわち、図4に示される変形例において、アウタモール102には、立壁部88の先端側から車両幅方向内側へ延出されると共に、縦縁部16Aの表側に縦縁部16Aと離間して設けられたモール部130が形成されている。そして、固定壁部84、立壁部88、及び、モール部130によって、車両幅方向内側に開口する排水溝134がフロントピラー14の長手方向に沿って形成されている。
【0062】
このように構成されていても、ウィンドシールドガラス16の外面から流れるウォッシャ液や雨水を、この排水溝134によって処理することができるので、ウィンドシールドガラス16の排水性能を確保することができる。
【0063】
なお、この図4に示される変形例において、排水溝134の底部134Aは、固定壁部84によって構成されており、縦縁部16Aの裏面16A2の車両幅方向外側への延長線L3よりもモール部130と反対側(矢印B側)に位置されている。
【0064】
このように構成されていると、排水溝134の断面積を拡大させることができるので、ウィンドシールドガラス16の排水性能をより確保することができる。
【0065】
また、この場合に、立壁部88に車両幅方向外側に凹む凹部136が形成され、これにより、排水溝134の断面積が拡大されていても良い。
【0066】
また、図5に示されるように、車内側壁部62に、一対の側壁部18,20の延びる方向と反対方向に凹む凹部138が形成され、この凹部138に新たな配索部材66Dが保持されても良い。
【0067】
また、フロントピラー14は、押出成形によって形成されていたが、図6に示されるように、一枚の板材148がロール成形されることによって形成されたものであっても良い。
【0068】
また、フロントピラー14は、図7に示されるように、ハイドロ成形によって中空状に形成されたピラー本体150と、例えばプレス成形等により形成されてピラー本体150の車両内側に結合された補強パネル152とを有する構成とされても良い。また、この場合に、補強パネル152の車両内側に車内側壁部62が形成され、この車内側壁部62に複数のリブ64A〜64Cが立設されていても良い。
【0069】
なお、この変形例では、フロントピラー14本体と補強パネル152とを合わせたフロントピラー14全体が中空状に形成されていると捉えることができる。
【0070】
また、複数のリブ64A〜64Cは、車内側壁部62から車両内側に向けて立設されると共に、フロントピラー14の断面外に設けられていたが、図8に示されるように、複数のリブ164A,164Bが、車内側壁部62から車両外側に向けて立設されると共に、フロントピラー14の断面内に設けられていても良い。
【0071】
また、フロントピラー14は、図9に示されるように、それぞれプレス成形によって形成された第一部材14Aと第二部材14Bによって構成されていても良い。
【0072】
この変形例において、フランジ22は、第一部材14Aのフランジ22Aと、第二部材14Bのフランジ22Bとによって構成されており、このフランジ22Aとフランジ22Bとは、互いに重ね合わされた状態で、例えば、スポット溶接により接合されている。また、固定壁部84は、第一部材14Aのフランジ84Aと、第二部材14Bのフランジ84Bとによって構成されており、このフランジ84Aとフランジ84Bとは、互いに重ね合わされた状態で、例えば、レーザ溶接により接合されている。
【0073】
なお、上記変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能である。
【0075】
次に、特許請求の範囲に記載された発明以外に、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
【0076】
つまり、前記フロントピラーは、前記一対の側壁部と、前記車内側壁部とを有して構成されると共に、前記一対の側壁部の延びる方向に沿った縦幅よりも該延びる方向から見た横幅の方が狭く形成された閉断面部を有している請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の車両のフロントピラー構造である。
【0077】
この構成によれば、フロントピラーは、横幅が狭く縦長の細幅化された構成とされるので、車室からの視界を向上させることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 車両のフロントピラー構造
14 フロントピラー
16 ウィンドシールドガラス
16A 縦縁部
18,20 一対の側壁部
62 車内側壁部
64A,64B,64C,164A,164B リブ
66A,66B 配索部材
70 インナガーニッシュ
84 固定壁部
88 立壁部
102 アウタモール
110,130 モール部
114,134 排水溝
134A 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドシールドガラスの縦縁部に沿って長手状に設けられると共に、フロントシート側へ延びる一対の側壁部と、前記一対の側壁部における各フロントシート側の端部を連結する車内側壁部とを有するフロントピラーと、
前記車内側壁部に立設されると共に、前記フロントピラーの長手方向に沿って形成されたリブと、
を備えた車両のフロントピラー構造。
【請求項2】
前記リブは、互いに並列して複数設けられ、
前記複数のリブの間に保持されると共に、前記フロントピラーの長手方向に沿って配索された配索部材を備えた、
請求項1に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項3】
前記フロントピラーには、前記縦縁部の裏側に設けられ、前記縦縁部が接着固定された固定壁部と、
前記縦縁部の車両幅方向外側に設けられると共に、前記固定壁部から前記一対の側壁部の延びる方向と反対方向に延出された立壁部と、が形成され、
前記縦縁部の表側に設けられ、前記立壁部に固定されたアウタモールを備えた、
請求項1又は請求項2に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項4】
前記立壁部は、前記縦縁部の車両幅方向外側に前記縦縁部と離間して設けられ、
前記アウタモールには、前記立壁部の先端側から車両幅方向内側に延出されると共に、前記縦縁部の表側に前記縦縁部と離間して設けられたモール部が形成され、
前記固定壁部、前記立壁部、及び、前記モール部によって、車両幅方向内側に開口する排水溝が前記フロントピラーの長手方向に沿って形成されている、
請求項3に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項5】
前記排水溝の底部は、前記固定壁部によって構成されると共に、前記縦縁部の裏面の車両幅方向外側への延長線よりも前記モール部と反対側に位置されている、
請求項4に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項6】
前記一対の側壁部のうち前記ウィンドシールドガラス側に設けられた一方の側壁部は、前記縦縁部の裏側から前記フロントシート側へ延び、
前記フロントピラーには、前記一方の側壁部における前記縦縁部側の端部から車両幅方向外側に延出されると共に、前記縦縁部の裏側に設けられ、前記縦縁部が接着固定された固定壁部が形成され、
前記一方の側壁部及び前記車内側壁部を車両内側から覆い、その前記縦縁部側の端末部が前記一方の側壁部における前記縦縁部側の端部に固定されたインナガーニッシュを備えた、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項7】
前記インナガーニッシュにおける前記縦縁部側と反対側の端末部は、前記リブに固定されている、
請求項6に記載の車両のフロントピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−255688(P2011−255688A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129063(P2010−129063)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】