説明

車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造

【課題】 車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造において、車室内への水や騒音等の侵入の防止やブレーキマスターシリンダの外部環境からの保護を簡素な構成で実現する。
【解決手段】 ダッシュパネル3とフロアパネル4とを有するボディ2の車室6側にブレーキマスターシリンダ21を配置した。これにより、ブレーキマスターシリンダ21とこれに連結させるブレーキペダル22との連結体30全体を車室6側に配置することができ、従来のようにダッシュパネル3にブレーキペダル22を貫通させる必要がない。また、ダッシュパネル3やフロアパネル4によって、ブレーキマスターシリンダ21が外部環境から保護される。従って、車室6の内部への水や騒音等の侵入の防止やブレーキマスターシリンダ21の外部環境からの保護を簡素な構成で実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車等の車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両において、ブレーキペダルに連結されたブレーキマスターシリンダをボディのフロアパネルの下方に配置した構造がある(例えば、特許文献1参照)。この構造では、ブレーキペダルをフロアパネルに貫通させて配置することにより、ブレーキペダルとブレーキマスターシリンダとの連結を実現している。
【特許文献1】特開2002−362423号公報(第3−4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この構造では、ブレーキペダルがフロアパネルを貫通する構造をとっているので、その貫通部からの車室内部への水や騒音等の浸入の防止や、外部に露出するブレーキマスターシリンダ等に対する飛石や路上突起等の衝突を防止するために、専用のガード部材を設ける必要がある。このため、車両の部品点数が増加するという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造において、車室内への水や騒音等の侵入の防止やブレーキマスターシリンダの保護を簡素な構成で実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ボディの車室側にブレーキマスターシリンダを配置したことを主要な特徴とする。
【0006】
本発明は、ダッシュパネル及びフロアパネルによってブレーキマスターシリンダを車外環境から保護するようにしたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブレーキマスターシリンダとこれに連結させるブレーキペダルとの連結体全体をボディの車室側に配置することができる。よって、ブレーキマスターシリンダの搭載構造において、車室内部への水や騒音等の浸入を防止するための構造をダッシュパネルやフロアパネルとは別に設ける必要がなく、従って、車室内部への水や騒音等の浸入を防止するための構造を簡素にすることができる。また、ブレーキマスターシリンダは、ダッシュパネルやフロアパネルによって外部環境に対して保護されるので、ブレーキマスターシリンダに飛石や路上突起等が直接当たることを簡素な構造で防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図4に基づいて説明する。図1は、本実施の形態の車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造を備える車両の一部を示す斜視図、図2は、図1に対して一部部材を省略した車両を示す斜視図、図3は、その縦断側面図、図4は、その背面を一部省略して示す断面図である。
【0009】
図1〜図3に示すように、車両1のボディ2は、ダッシュパネル3とフロアパネル4とを備えている。ダッシュパネル3は、フロントコンパートメントのコンパートメントルーム5と車室6とを隔成している。ダッシュパネル3は、縦壁部3aと、その下端に続く前傾したトーボード部3bとを備えており、このトーボード部3bの後端部がフロアパネル4の前端部に溶接等により結合されている。
【0010】
フロアパネル4の車幅方向中央部には、上方に突出し下方に開口した形状のフロアトンネル部7が設けられている。フロアパネル4の上面側には、車幅方向に延在する前後2つのクロスメンバ8,9が設けられている。これら2つのクロスメンバ8,9には、それらに跨って運転座席10が固定されている。
【0011】
フロアパネル4の上方は、カーペット11で覆われている。フロアパネル4とカーペット11との間には、カーペット11に貼り付けられた遮音材が設けられている。遮音材は、ロードノイズを遮音する機能を有する。
【0012】
また、ボディ2は、図2〜図4に示すように、車両1の前部から車両1の後方へ延出した左右一対のサイドメンバ13を備えている。これらのサイドメンバ13は、ダッシュパネル3の前面に突き当たった部位で下側後方に向けて屈曲しフロアパネル4の下面に沿って後方に延出している。詳しくは、サイドメンバ13は、矩形上の閉断面に形成されており、その一部は、フロアパネル4に下方へ凹んで設けられている。サイドメンバ13は、ダッシュパネル3及びフロアパネル4に溶接などで接合されている。
【0013】
また、フロアパネル4の下面には、左右のサイドメンバ13間に位置する左右一対のサブメンバ14が設けられている。これらのサブメンバ14は、フロアパネル4に溶接などで接合されている。
【0014】
ボディ2には、ボディ2の車室6側であってカーペット11の下方に位置するブレーキマスターシリンダ21とこのブレーキマスターシリンダ21に連結されたブレーキペダル22とがブレーキブラケット23を介して取り付けられている。ブレーキマスターシリンダ21は、ブレーキペダル22の後方に位置している。これらのブレーキマスターシリンダ21とブレーキペダル22とは、連結体30を構成している。以下に、車両1のブレーキマスターシリンダ搭載構造としてのブレーキマスターシリンダ21とブレーキペダル22との搭載構造24を詳しく説明する。
【0015】
フロアパネル4の運転座席10側のサイドメンバ13とサブメンバ14との間には、下側に凹んだ凹部25が車両1の前後方向に延出して形成されている。この凹部25の前端に接続するダッシュパネル3のトーボード部3bには、前方及び下方に凹んだ凹部26が形成されている。凹部25,26の下端25a,26aは、サイドメンバ13の下端13a位置と同じか又はそれよりも上方に位置することが望ましい。なお、図では、凹部25,26の下端25a,26aがサイドメンバ13の下端13aよりも上方に位置している例を示している。これらの凹部25,26は、内部へのブレーキマスターシリンダ21及びブレーキペダル22の配置を受容している。
【0016】
ブレーキマスターシリンダ21及びブレーキペダル22は、ダッシュパネル3の後方でフロアパネル4の車室側に配置されている。具体的には、ダッシュパネル3と運転座席10との間に配置されており、ブレーキマスターシリンダ21の一部は、凹部25の内部に位置しており、ブレーキペダル22の一部は、凹部25,26の内部に位置している。そして、凹部25の底壁の内側に取り付けられたブレーキブラケット23にブレーキマスターシリンダ21とブレーキペダル22とが取り付けられている。この取り付けは、例えばボルト・ナットによる締結によって行われている。
【0017】
ブレーキマスターシリンダ21は、後ろ上がりに傾斜してブレーキブラケット23に取り付けられている。
【0018】
ブレーキペダル22は、ペダルアーム22aとその上端に設けられたペダルパッド22bとを備えている。ペダルアーム22aでは、その下端部がブレーキマスターシリンダ21のマスターロッド21aの前端部に連結され、この連結位置よりもペダルパッド22b側の部分がブレーキロッド16を介してブレーキブラケット23の軸受部に回転自在に軸支されている。また、ペダルアーム22aは、カーペット11の開口11a(図1参照)を通り上方へ延出している。これにより、ペダルパッド22bが露出して、ブレーキペダル22に対する操作が可能となっている。
【0019】
また、フロアパネル4には、ブレーキマスターシリンダ21を上方から覆うカバー27が取り付けられている。このカバー27は、ブレーキマスターシリンダ21の上部をドライバによって踏まれること等の車内環境から保護している。
【0020】
以上説明したように、本実施の形態では、ダッシュパネル3とフロアパネル4とを有するボディ2の車室6側にブレーキマスターシリンダ21を配置したことにより、ブレーキマスターシリンダ21とこれに連結させるブレーキペダル22との連結体30全体をボディ2の車室6側に配置することができる。よって、ブレーキペダル22をブレーキマスターシリンダ21に連結させるために従来のようにダッシュパネルを貫通させる必要がないので、ブレーキマスターシリンダ21の搭載構造24において、車室6の内部への水や騒音等の浸入を防止するための構造をダッシュパネル3やフロアパネル4とは別に設ける必要がない。従って、車室6の内部への水や騒音等の浸入を防止するための構造を簡素にすることができる。また、ブレーキマスターシリンダ21は、ダッシュパネル3やフロアパネル4によって外部環境に対して保護されるので、ブレーキマスターシリンダ21に飛石や路上の突起等が衝突することや、水がかかることを防止することができる。
【0021】
また、本実施の形態では、ブレーキマスターシリンダ21をフロアパネル4の車室6側に配置したことにより、ブレーキマスターシリンダ21をボディ2の車室6側に配置する構造を容易に実現することができる。
【0022】
また、本実施の形態では、フロアパネル4において下方へ凹んで設けられ、内部にブレーキマスターシリンダ21の少なくとも一部が配置された凹部25を備えることにより、凹部25を設けない場合に比べて車室6の容量を大きくすることができる。また、これにより、運転者足元のカーペット11を平坦にすることができ、運転者に違和感を与えることがない。
【0023】
また、本実施の形態では、凹部25,26の下端位置は、フロアパネル4に下方へ凹んで設けられたサイドメンバ13の下端13a位置と同じか又はそれよりも上方に位置させることにより、車両1の底部が路面に干渉する場合には、少なくともサイドメンバ13がまず路面に干渉するので、フロアパネル4の変形及びこの変形に伴うブレーキマスターシリンダ21やブレーキペダル22を含むブレーキシステムの損傷を低減することができる。
【0024】
次に、本発明の第2の実施の形態を図5に基づいて説明する。前述した実施の形態と同じ部分は、同一符号で示し説明も省略する。
【0025】
図5は、本実施の形態の車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造を備える車両1の一部を示す斜視図である。図5に示すように、本実施の形態の車両1のブレーキマスターシリンダ搭載構造としてのブレーキマスターシリンダ21とブレーキペダル22との搭載構造50では、ブレーキマスターシリンダ21が運転座席10の下方に配置されている。これに伴い、ブレーキペダル51は、テンションロッド52及びリンク部材53を介してブレーキマスターシリンダ21に連結されている。テンションロッド52の前端部は、ブレーキペダル22のペダルパッド22bとは反対側の端部に回転自在に連結され、テンションロッド52の後端部は、リンク部材53の一端に回転自在に連結されている。リンク部材53の他端側は、ブレーキマスターシリンダ21のマスターロッド21aの前端部に連結されている。このリンク部材53は、ロッド54を介してブレーキブラケット55の軸受部に回転自在に軸支されている。ブレーキブラケット55は、第1の実施の形態のブレーキブラケット23よりも後方に向けて長く形成されている。
【0026】
また、凹部56は、運転座席10の下方まで延長されている。そして、凹部56,26に、ブレーキペダル22、テンションロッド52、リンク部材53、ブレーキマスターシリンダ21のそれぞれの一部が位置している。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態では、ブレーキマスターシリンダ21を運転座席10の下方に配置したことにより、運転座席10の下方のスペースを有効に利用することができる。
【0028】
ところで、本発明は、第1及び第2の実施の形態を例にとって説明したが、これらの実施の形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施の形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態の車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造を備える車両の一部を示す斜視図である。
【図2】図1に対して一部部材を省略した車両を示す斜視図である。
【図3】その縦断側面図である。
【図4】その背面を一部省略して示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造を備える車両の一部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 車両
2 ボディ
3 ダッシュパネル
4 フロアパネル
10 運転座席
13 サイドメンバ
13a サイドメンバの下端
21 ブレーキマスターシリンダ
24 車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造
25 凹部
25a 凹部の下端
50 車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造
56 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルとフロアパネルとを有するボディの車室側にブレーキマスターシリンダを配置したことを特徴とする車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造。
【請求項2】
ボディを構成するダッシュパネルとフロアパネルとによってブレーキマスターシリンダを車外環境から保護するようにしたことを特徴とする車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造。
【請求項3】
前記ブレーキマスターシリンダを前記フロアパネルの車室側に配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造。
【請求項4】
前記ブレーキマスターシリンダを運転座席の下方に配置したことを特徴とする請求項3記載の車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造。
【請求項5】
前記フロアパネルにおいて下方へ凹んで設けられ、内部に前記ブレーキマスターシリンダの少なくとも一部が配置された凹部を備えることを特徴とする請求項3又は4記載の車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造。
【請求項6】
前記凹部の下端位置は、前記フロアパネルに下方へ凹んで設けられたサイドメンバの下端位置と同じか又はそれよりも上方に位置していることを特徴とする請求項5記載の車両のブレーキマスターシリンダ搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−188116(P2006−188116A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220(P2005−220)
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】