説明

車両のラゲージルーム構造

【課題】リヤシートとバックドアとの間に画成される車両のラゲージルーム構造であって、ラゲージフロアに重量の嵩む荷物類を載置しても、変形を抑え、かつラゲージフロアの取扱い操作やラゲージルーム内への荷物類の出し入れ操作を簡単かつ円滑に行なえ、ラゲージルーム内の使い勝手を高める。
【解決手段】ラゲージサイド20に上下寸法が異なる複数の上下溝22,23を前後対称状に設け、この複数の上下溝22,23に仕切部材30を差し込むことで、仕切部材30の取付位置をハイポジションとローポジションに設定し、その上にラゲージフロア40を載置することで、重量の嵩む荷物類をラゲージフロア40上に載置しても、変形に充分耐え得る強度を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リヤシートとバックドアとの間に画成される車両のラゲージルーム構造に係り、特に、ラゲージルーム内のスペースを区画する仕切部材を設け、荷物類の収容性能を高めるとともに、この仕切部材によりラゲージフロアの上下高さ位置を可変させ、使い勝手を高め、かつラゲージフロアを強固に支持するようにした車両のラゲージルーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図17は、ワゴン車1を後部側から見た外観図であり、ワゴン車1のリヤシート2と、バックドア3との間に荷物類を収容するラゲージルーム4が設置されており、ラゲージルーム4内の荷物類を被覆し、かつ荷物類の載置機能を持つラゲージフロア5が設けられている。
【0003】
そして、従来では、このラゲージフロア5は、ラゲージルーム4内に収容する荷物類の寸法により、上下高さ位置を可変するように設けられている。図18に示すように、ラゲージフロア5を支持する支持機構としては、ラゲージルーム4の両側壁面パネルに内装されるラゲージサイド6の3箇所に車両の長手方向に沿って延びる細長状の支持フランジ7a,7b,7cが上下方向に適宜間隔をあけて突設形成されており、この支持フランジ7a,7b,7cにラゲージフロア5の両端を支持させることで図19に示すようにラゲージフロア5が支持されている。このように、ラゲージフロア5をラゲージサイド6の支持フランジ7a,7b,7cで上下高さ位置を可変させて支持する従来例としては、特許文献1に詳細に示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−186848公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来のラゲージルーム4においては、ラゲージルーム4内のスペースを区画する方法として、ラゲージフロア5の上下高さ位置を可変させることで、収容する荷物類の寸法に対応しているが、上下寸法のみの調整であるため、荷物類の収容性能に劣り、例えば、走行中の急ハンドルや急発進、急停車等により、ラゲージルーム4内に収容した荷物類が移動して、損傷を受けることも多く、内装部品や荷物類の確実な保護が得られないという不具合があり、荷物類の寸法に応じてより適切に収容できる車両のラゲージルーム構造が要望されていた。
【0006】
更に、棚機能を有するラゲージフロア5は、両側端末がラゲージサイド6の支持フランジ7a,7b,7cで支持されるという構成であるため、例えば、中央に重量の嵩む荷物類を載置すれば、ラゲージフロア5の中央が下側に撓み変形するため、重量の嵩む荷物類を載置できないという欠点があり、また、ラゲージサイド6にラゲージルーム4内に出っ張る支持フランジ7a,7b,7cが形成されているため、例えばラゲージフロア5の上下高さ位置を可変する際や、あるいはラゲージルーム4内に荷物類を出し入れする際にこの支持フランジ7a,7b,7cが障害となり易く、荷物類の出し入れ操作やラゲージフロア5の取扱い操作時の操作性に劣るという欠点が同時に指摘されている。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、リヤシートとバックドアとの間に画成される車両のラゲージルーム構造において、ラゲージルーム内を適切に区画でき、かつラゲージフロア上に重量の嵩む荷物類を載置することができ、また、ラゲージルーム内への荷物類の出し入れ操作や、ラゲージフロアの取扱い操作が円滑に行なえ、使い勝手を高めた車両のラゲージルーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために、ラゲージサイドにラゲージルーム内に突出する突起物を形成することなく仕切部材を設置でき、この仕切部材により、ラゲージルームの収容性能を高めるとともに、仕切部材上にラゲージフロアを載置固定すれば、ラゲージフロア上に重量の嵩む荷物類を載置しても、充分耐え得る強度が確保されることに着目して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、車両のリヤシートと、バックドアとの間に画成される車両のラゲージルーム構造において、前記ラゲージルームの両側壁面パネルに内装されるラゲージサイドの表面には、長寸の上下溝と、短寸の上下溝がそれぞれ前後対称状に凹設され、仕切部材における仕切板の両側縁を上下溝部に差込み支持することで、ラゲージルーム内の収容スペースを適宜区画するか、あるいはラゲージルームの外側壁部を構成することを特徴とする。
【0010】
ここで、ラゲージルームは、両側面がラゲージサイド、リヤ側がラゲージリヤプレート、床面がスペアタイヤカバーからなる各内装部品により各壁部が構成され、フロント側はリヤシートのシートバックにより画成されている。そして、ラゲージサイドに設けられる上下溝は、上下長さの異なる複数の上下溝がそれぞれ前後対称位置に設けられているとともに、左右のリヤサイドに設けられる複数の上下溝は、左右対称状に設定されている。従って、上下溝の寸法を長寸、短寸の2種類、あるいは長寸と短寸の間に中間寸法を設定した3種類に設定できる。尚、リヤサイドの成形については、汎用の合成樹脂を射出成形することにより、ホイールハウス部を膨出する形状に成形し、このホイールハウス部に複数の上下溝を一体成形すれば良い。
【0011】
次いで、仕切部材は、ラゲージサイドに設けた複数の左右対称の上下溝に差込み支持する仕切板から構成され、この仕切部材は、長さ寸法の異なる上下溝に選択的に支持されることで、ラゲージルーム内の下部スペースを区画するか、あるいはラゲージルーム内の上部スペースを区画することができる。また、使用形態として、ラゲージサイドの前側、あるいは後側の長寸の上下溝内に2枚の仕切板を縦方向に連結させて、フロント壁、あるいはリヤ壁を構成することで、荷物の確実な保護を図ることができる。
【0012】
次に、本発明は、車両のリヤシートと、バックドアとの間に画成される車両のラゲージルーム構造において、前記ラゲージルームの両側壁面パネルに内装されるラゲージサイドの表面には、長寸の上下溝と、短寸の上下溝がそれぞれ前後対称状に凹設され、仕切部材における仕切板の両側縁を長寸の上下溝、あるいは短寸の上下溝に選択的に差込み支持することで、仕切部材の高さ位置を可変とし、この仕切部材の上面に棚機能を有するラゲージフロアを載置固定することにより、上下高さ位置を調整して、ラゲージフロアを支持するようにしたことを特徴とする。
【0013】
ここで、仕切部材は、ラゲージフロアの支持機能を備えるために、前後対称位置に仕切板を配置して、前後の仕切板を連結する連結板を1枚、あるいは2枚設定することで、前後の仕切板を予め組み付けた仕切部材を使用するのが好ましい。そして、この仕切部材の仕切板を長寸の上下溝(下端が低位置にある)に差し込めば、その上に載置するラゲージフロアをローポジションに設定することができ、逆に短寸の上下溝(下端が高位置にある)に仕切板を差込み固定した後、その上にラゲージフロアを載置すれば、ラゲージフロアをハイポジションに設定することができる。
【0014】
例えば、ラゲージフロアをローポジションに設定すれば、ラゲージルームのラゲージリヤプレートと、ラゲージフロアとが面一となり、ラゲージルーム内への荷物の出し入れに便利である。また、ハイポジションにラゲージフロアを設定した場合、リヤシートのシートバックを前方に倒し込んだ際のシートバックの高さ位置とラゲージフロアの高さ位置がほぼ面一となり、特に、スキー等の長寸状の荷物類を出し入れする際に便利である。更に、ラゲージフロアにヒンジを形成して、車幅方向に沿って折り畳み可能な構成を採用すれば、ラゲージルーム上に荷物類を載置した状態で折り畳み操作を行ない、ラゲージフロア内の荷物類を取り出すことができる。
【0015】
従って、この実施の形態によれば、ラゲージフロアは、仕切部材全体で支持されるため、従来のように、両端のみで支持される支持構造に比べ、ラゲージフロアの支持強度が強化され、重量の嵩む荷物類を載置してもラゲージフロアが変形することがなく、荷物類の搭載能力をアップさせるとともに、ラゲージフロアを支持する仕切部材は、ラゲージサイドの上下溝内に差し込んで支持されるため、従来の支持フランジのように、ラゲージルーム内に出っ張る障害物とならないため、荷物類のラゲージルーム内への出し入れ操作や、ラゲージフロアの取扱い操作を円滑に行なうことができる。
【0016】
次いで、本発明の別の実施の形態においては、車両のリヤシートと、バックドアとの間に画成される車両のラゲージルーム構造において、前記ラゲージルームの両側壁面パネルに内装されるラゲージサイドの表面には、少なくとも上下位置に車両の長手方向に沿って延びるガイド孔が開設され、上下溝を設けたアジャスタを上記ガイド孔内に着脱自在に装着するとともに、アジャスタの上下溝に仕切部材の仕切板の両側縁を差し込み支持することで、上下位置、及び前後位置をそれぞれ調整可能に仕切部材をラゲージルーム内の適切位置に位置決めして、スペース機能を高めるか、あるいは上記仕切部材の上面にラゲージフロアを載置固定することで、ラゲージフロアの高さ位置を適宜調整するようにしたことを特徴とする。
【0017】
この実施の形態によれば、ラゲージサイドに上下溝が直接凹設されるのではなく、上下溝を設けたアジャスタがラゲージサイドの上下側のガイド孔に着脱自在に固定される構成である。すなわち、ラゲージサイドには、上方位置と下方位置の2箇所に車両の長手方向に沿って延びるガイド孔が設けられるか、あるいは上・中・下の3箇所に車両の長手方向に沿って延びるガイド孔が設けられており、このガイド孔に上下溝を設けたアジャスタを係着固定することにより、ラゲージサイドに上下溝が設定される。
【0018】
従って、ラゲージサイドには、車両の長手方向に沿って延びるガイド孔を設ければ良いため、構造を簡素化することができ、アジャスタをガイド孔内で前後方向にスライドさせることで、前後位置を調整でき、仕切部材の前後位置を自由に調整することができる。更に、上下側のガイド孔のいずれかを選択することで、仕切部材のポジションを適宜調整でき、その上にラゲージフロアを載置固定すれば、ラゲージフロアの高さ位置を可変させながらラゲージフロアを強固に支持できる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明に係る車両のラゲージルーム構造は、ラゲージルームの両側壁面パネルに内装されるラゲージサイドに上下長さ寸法の異なる複数の上下溝を前後対称位置に凹設し、仕切部材の仕切板を上下溝内に差し込むことで、ラゲージルームの下部スペース、あるいは上部スペースを有効に区画でき、かつ前側、あるいは後側に集中的に仕切板を配置しラゲージルームの前部壁、後部壁を構成することで、荷物類の移動を防止できる荷物類の収容性に優れたラゲージルームを提供できるという効果を有する。
【0020】
更に、ラゲージサイドにそれぞれ上下長さ寸法の異なる複数の上下溝を前後対称位置に設け、仕切部材の仕切板を前後対称状に配置して、それぞれ上下溝に差し込んで仕切部材をローポジションかハイポジションに設定し、その上にラゲージフロアを載置固定する構成を採用すれば、ラゲージフロアは仕切部材により強固に支持され、重量の嵩む荷物類をラゲージフロア上に載置しても変形する恐れがなく、しかも、ラゲージサイドには、従来の突起物が形成されないため、ラゲージフロアの取扱い操作、あるいはラゲージルーム内への荷物類の出し入れ操作が円滑に行なえ、操作性を高めることができるという効果を有する。
【0021】
また、ラゲージサイドに設けたガイド孔内にアジャスタを着脱自在に装着するとともに、このアジャスタにより仕切部材を支持するという構成を採用すれば、ラゲージサイドには、車両の長手方向に沿って延びるガイド孔を設けるだけで済むため、ラゲージサイドの加工が簡単に行なえるとともに、特に、アジャスタの装着位置を適宜変更することで、仕切部材の上下位置調整はもとより、前後位置調整も可能になり、スペースの区画性能をより高めることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る車両のラゲージルーム構造の好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例1】
【0023】
図1乃至図11は、本発明に係る車両のラゲージルーム構造の第1実施例を示すもので、図1はラゲージルームの構成を説明する斜視図、図2はラゲージルームの内部構成に加えて仕切部材とラゲージフロアを示す全体図、図3はラゲージルーム内に仕切部材をローポジションで設定した斜視図、図4は同仕切部材上にラゲージフロアをローポジションで載置した状態を示す説明図、図5はラゲージルーム内に仕切部材をハイポジションで設定した斜視図、図6は同仕切部材上にラゲージフロアをハイポジションで載置した状態を示す説明図、図7乃至図11は変形例や別の使用形態を示すもので、図7はラゲージフロアを二つ折りした状態を示す説明図、図8はラゲージフロアに替えてバックを収容した状態を示す説明図、図9乃至図11は仕切部材の使用形態の変形例をそれぞれ示す説明図である。
【0024】
図1において、ラゲージルーム10の両側壁面パネルに内装されるラゲージサイド20(図1では右側に内装されるラゲージサイド20が示されており、左側のラゲージサイドについては省略されているが、左側のラゲージサイドについては、右側のラゲージサイド20と左右対称状に成形されている)の後縁側には、ラゲージリヤプレート11が図示しないパネルの室内面側に装着されており、フロア部には、図示しないスペアタイヤを被覆するフラット状のスペアタイヤカバー12が敷設されている。従って、ラゲージルーム10の各壁部は左右両側がラゲージサイド20、リヤ側がラゲージリヤプレート11、フロア部がスペアタイヤカバー12で構成され、フロント側は、リヤシート(図示せず)のシートバックによりラゲージルーム10のフロント壁が構成されている。
【0025】
ところで、本発明に係る車両のラゲージルーム構造の特徴は、ラゲージルーム10内への荷物の出し入れ操作や、後述するラゲージフロアの取扱い操作における操作性を高め、また、ラゲージルーム10内への荷物類の収容性がアップし、しかも、ラゲージフロアの支持強度を高め、重量が嵩む荷物類を載置しても、ラゲージフロアが変形するのを可及的に防止できる車両のラゲージルーム構造を提供することにある。
【0026】
そのためには、図1に示すように、ラゲージサイド20は、ホイールハウス部21にこの実施例では前後側それぞれに長寸の上下溝22と、短寸の上下溝23とが前後対称状に凹設されている。このラゲージサイド20は、汎用の熱可塑性樹脂の射出成形体からなり、使用する熱可塑性樹脂材料としては、1種類の熱可塑性樹脂でも、2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用できる。また、ラゲージサイド20のホイールハウス部21の前後対称位置にそれぞれ長寸の上下溝22と、短寸の上下溝23が設けられているが、長寸の上下溝22の長さ寸法に対して、短寸の上下溝23の長さ寸法が約半分に設定され、そのため、短寸の上下溝23の下端位置が長寸の上下溝22の中間地点に位置するように設定されている。また、所望により、ラゲージサイド20の前後側に3本ずつの上下溝を設定するようにしても良い。
【0027】
そして、ラゲージサイド20の上下溝22,23を有効に利用した実施例について、以下、説明する。図2に示すように、ラゲージルーム10内に仕切部材30が設けられ、この仕切部材30の上面にプレート状のラゲージフロア40が載置固定される。更に詳しくは、仕切部材30は、前後対称位置にそれぞれ細長プレート状の仕切板31,32が配置され、連結板33により前後の仕切板31,32が連結される構成であり、この連結板33をそれぞれ仕切板31,32に取り付けるために、仕切板31,32の内面には、複数箇所にサポートリブ31a,32aがこの実施例ではそれぞれ4箇所に設定されており、連結板33は、4箇所の適切位置に設定して、前後の仕切板31,32を連結させる。
【0028】
上記仕切部材30は、ラゲージルーム10内に収容されて、仕切板31の端末がラゲージサイド20の長寸の上下溝22か、あるいは短寸の上下溝23のいずれかに差込み固定される。例えば、図3,図4は仕切部材30及びそれに載置固定されるラゲージフロア40をローポジションで使用する形態を示すもので、図3に示すように、仕切部材30における仕切板31,32の端末をラゲージサイド20における長寸の上下溝22内に差し込んで、ラゲージルーム10内に仕切部材30をセットする。尚、この仕切部材30のセット作業については、上下溝22の上端から端末を差し込めば、簡単に仕切部材30を装着することができる。そして、仕切部材30をセットした状態では、図3に示すように、ラゲージルーム10の下部スペースを仕切部材30で区画するとともに、この仕切部材30の上面にラゲージフロア40を載置すれば、図4に示すように、ラゲージフロア40をローポジションでセットすることができる。このローポジションにおいては、ラゲージリヤプレート11のフランジ11aとラゲージフロア40とが面一であり、バックドア3を開放して、後部側から荷物類を簡単に出し入れすることができる。
【0029】
そして、ラゲージフロア40は、前後の仕切板31,32及び連結板33により強固に支持されているため、ラゲージフロア40上に重量の嵩む荷物類を載置しても変形することがなく、荷物類の搭載性能に優れるという利点がある。更に、ラゲージフロア40を取り外す等の取扱い操作時において、ラゲージサイド20には、従来の突起物が形成されないため、取扱い操作が簡単に行なえるとともに、荷物類の出し入れについても簡単に実施できる。
【0030】
更に、仕切部材30をハイポジションに設定した状態を図5に示し、その状態でのラゲージフロア40のハイポジション使用状態を図6に示す。すなわち、ラゲージサイド20における短寸の上下溝23内に仕切部材30における仕切板31,32の端末を差し込むことで、簡単に仕切部材30によりラゲージルーム10の上部スペースを仕切ることができる。そして、この状態で、仕切部材30上にラゲージフロア40を載置すれば、ラゲージフロア40をハイポジションでセットすることができる。このラゲージフロア40のハイポジションにおいては、リヤシート2のシートバックを前方に折り畳んだ状態の高さ位置と面一となり、スキー等の長尺物をバックドア3の開口から搭載する際に便利であるとともに、寸法の大きな荷物類をラゲージルーム10内に収納することができる。そして、ハイポジションにおけるラゲージフロア40の支持構造においても、仕切部材30によりラゲージフロア40が強固に支持されているため、ラゲージフロア40上に重量の嵩む荷物類を載置することができ、変形を抑えることができるため、荷物類の搭載許容範囲を拡大することができるとともに、ラゲージフロア40の取扱い時にラゲージサイドに突起物がないため、ラゲージフロア40の取扱い操作性及び荷物類の出し入れ操作性が向上する。
【0031】
次いで、図7乃至図11は、本発明の使用形態の変形例を示すもので、図7に示すように、ラゲージフロア40にヒンジ部41を基に二つ折り可能な構成を採用すれば、ヒンジ部41を基にラゲージフロア40を二つ折り状態とすることで、ラゲージフロア40に荷物類を搭載した状態でラゲージルーム10内部の備品類の確認や取り出しを行なうことができ、使い勝手を高めることができる。また、図8に示すように、ラゲージフロア40に替えて、バック50を仕切部材30にセットする。この時、バック50を許容するために連結板33を外しておき、前後の仕切板31,32間にバック50を収容しておけば、より広範なスペースを有効に利用することができる。
【0032】
更に、図9に示すように、スペアタイヤカバー12の上面にラゲージフロア40を重合して、ラゲージルーム10内部については仕切部材30をセットすることでスペースを区画する形態を使用すれば、備品の出し入れが簡単に行なえる。次に、図10に示すように、スペアタイヤカバー12上面にラゲージフロア40を敷設するとともに、ラゲージサイド20におけるフロント側の長寸の上下溝22内に仕切部材30における前後の仕切板31,32を縦方向に連設して差し込んで、ラゲージルーム10のフロント側壁部を構成しても良い。従って、仕切板31,32でフロント側壁部を構成することで、収容性能を高めることができる。
【0033】
同様に、図11に示すように、仕切板31,32をラゲージサイド20におけるリヤ側の長寸の上下溝22内に差し込んで、リヤ側の壁部を構成するようにしても良い。このように、ラゲージルーム10内のスペースにおいて、仕切部材30の仕切板31,32を適宜有効に配置することで、荷物類に対応して有効な収容性能を発揮することができる。
【実施例2】
【0034】
図12乃至図16は、本発明の第2実施例を示すもので、第1実施例同様、車両のラゲージルーム構造において、ラゲージフロア40に重量の嵩む荷物類を搭載しても、変形することがなく、かつラゲージフロア40の取扱い操作や、ラゲージルーム10内への荷物類の出し入れ操作が簡単に行なえることが特徴である。この第2実施例においては、ラゲージルーム10の両側壁面のパネルの室内面側に装着されるラゲージサイド20は、第1実施例同様、合成樹脂の射出成形体から構成されるが、第1実施例のように前後対称位置に上下溝22,23を複数列設けるという構成ではなく、ラゲージサイド20におけるホイールハウス部21の上部側及び下部側の2列に車両の長手方向に沿って延びるガイド孔24,25が細長状に形成されている。そして、このガイド孔24,25に着脱自在にアジャスタ60が装着されて仕切部材30の仕切板31,32を支持する機能を持つ。すなわち、アジャスタ60は、係止部61を上側ガイド孔24、あるいは下側ガイド孔25に係着することで、ラゲージサイド20の適宜位置にロック固定することができ、このアジャスタ60には、上下方向に沿って延びる上下溝62が設けられている。また、アジャスタ60の上下溝62に支持される仕切部材30及びラゲージフロア40の構成については、第1実施例と同一であるため、図12で図示するだけで詳細な説明は省略する。
【0035】
次いで、この第2実施例の使用形態について以下説明する。図13,図14はラゲージフロア40をハイポジションで取り付けた状態を示す説明図並びに断面図、図15,図16はラゲージフロア40をローポジションで取り付けた状態を示す説明図並びに断面図である。まず、図13,図14に示すように、ラゲージサイド20の上側ガイド孔24に対して、その前後側にそれぞれアジャスタ60の係止部61を係着することで位置決めし、アジャスタ60の上下溝62に対して、仕切部材30の仕切板31,32を上方から差し込むことで、ラゲージルーム10の上部スペースを仕切部材30により区画するとともに、仕切部材30の上面にラゲージフロア40を載置固定することで、ハイポジションにラゲージフロア40を簡単に取り付けることができる。そして、この使用形態は、リヤシート2を前方に折り畳んだシートバックの背面位置と、ラゲージフロア40とが面一状になり、スキー等の長尺物の搭載に適している。尚、図示はしないが、アジャスタ60をガイド孔24,25の所定位置でロックできるように、ガイド孔24,25には、孔間を橋渡しするようなサポートリブ(図示せず)が設けられているのが良い。
【0036】
また、図15,図16に示すように、ラゲージサイド20の下側ガイド孔25の前後に、それぞれアジャスタ60を取り付け、このアジャスタ60の上下溝62に仕切部材30の仕切板31の端末を差し込むことで、ラゲージルーム10の下部スペースを区画することができ、この仕切部材30の上面にラゲージフロア40を載置固定することで、ローポジションでラゲージフロア40を位置決め固定することができる。そして、ラゲージフロア40のローポジションにおいては、ラゲージルーム10の後部側のラゲージリヤプレート11のフランジ11aと面一であり、バックドア3を開閉することで荷物類の出し入れが簡単に行なえる。
【0037】
このように、第2実施例においても、ラゲージフロア40を仕切部材30の上面に強固に支持固定することができ、重い荷物類を載置してもラゲージフロア40が変形することがない。更に、ラゲージフロア40の位置変更における取り外し時に従来のようにラゲージサイド20に突起物が形成されないため、ラゲージフロア40の取扱い操作性を高めることができる。また、ラゲージフロア40を使用しない使用形態においては、ラゲージサイド20の上側ガイド孔24、あるいは下側ガイド孔25にそれぞれアジャスタ60を前後にアジャスト操作して、適切位置でアジャスタ60を固定し、このアジャスタ60の上下溝62に仕切板31,32を固定することで、ラゲージルーム10のスペースを任意に仕切ることができ、搭載荷物類の寸法に応じて仕切スペースを可変することができ、使い勝手が優れている。
【0038】
更に、第2実施例のように、上側ガイド孔24、下側ガイド孔25に上下溝62を有するアジャスタ60をそれぞれ係着固定することで、従来のように、多数の上下溝を複数個設ける必要がなく、ラゲージサイド20の成形コストを引き下げることができるという利点がある。尚、この第2実施例では、ラゲージサイド20に上側ガイド孔24、下側ガイド孔25の2列のガイド孔を設けたが、上・中・下3列のガイド孔を設ければ、ラゲージフロア40の上下高さ位置を3段階で調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明した実施例1、実施例2は、ラゲージフロア40の上下高さ位置を2段階で調整できる構成を採用したが、第1実施例では前後にそれぞれ上下溝を追加形成し、第2実施例では上・中・下の3列にガイド孔を設けることで、ラゲージフロア40の位置調整を上・中・下の3段階で行なうようにしても良い。更に、第1実施例、第2実施例において、スペアタイヤカバー12上にラゲージフロア40を敷設して、その上から仕切部材30をセットするという使用形態を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る車両のラゲージルーム構造の第1実施例を示すもので、ラゲージルームの内面構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両のラゲージルーム構造の第1実施例におけるラゲージサイド、仕切部材、ラゲージフロアをそれぞれ分解して示す説明図である。
【図3】図2に示すラゲージルーム構造における仕切部材をローポジションで組み付けた状態を示す説明図である。
【図4】図2に示すラゲージルーム構造におけるラゲージフロアをローポジションで組み付けた状態を示す説明図である。
【図5】図2に示すラゲージルーム構造における仕切部材をハイポジションで組み付けた状態を示す説明図である。
【図6】図2に示すラゲージルーム構造におけるラゲージフロアをハイポジションで組み付けた状態を示す説明図である。
【図7】図2に示すラゲージルーム構造におけるラゲージフロアの変形例を示す説明図である。
【図8】図2に示すラゲージルーム構造における仕切部材の変形例を示す斜視図である。
【図9】図2に示すラゲージルーム構造における仕切部材の別の使用形態を示す説明図である。
【図10】図2に示すラゲージルーム構造における仕切部材の別の使用形態を示す説明図である。
【図11】図2に示すラゲージルーム構造における仕切部材の別の使用形態を示す説明図である。
【図12】本発明に係る車両のラゲージルーム構造の第2実施例を示すラゲージサイド、仕切部材、ラゲージフロアをそれぞれ分解して示す説明図である。
【図13】図12に示すラゲージルーム構造における仕切部材をハイポジションで組み付けた状態を示す説明図である。
【図14】図12に示すラゲージルーム構造におけるラゲージフロアをハイポジションで組み付けた状態を示す断面図である。
【図15】図12に示すラゲージルーム構造における仕切部材をローポジションで組み付けた状態を示す説明図である。
【図16】図12に示すラゲージルーム構造におけるラゲージフロアをローポジションで組み付けた状態を示す断面図である。
【図17】従来のワゴン車におけるラゲージルームを示す後部側から見た斜視図である。
【図18】従来のラゲージサイドを示す斜視図である。
【図19】従来のラゲージサイドとそれに支持されるラゲージフロアとを示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
2 リヤシート
3 バックドア
10 ラゲージルーム
11 ラゲージリヤプレート
11a フランジ
12 スペアタイヤカバー
20 ラゲージサイド
21 ホイールハウス部
22 上下溝(長寸)
23 上下溝(短寸)
24 上側ガイド孔
25 下側ガイド孔
30 仕切部材
31,32 仕切板
31a,32a サポートリブ
33 連結板
40 ラゲージフロア
41 ヒンジ部
50 バック
60 アジャスタ
61 係止部
62 上下溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリヤシート(2)と、バックドア(3)との間に画成される車両のラゲージルーム(10)構造において、
前記ラゲージルーム(10)の両側壁面パネルに内装されるラゲージサイド(20)の表面には、長寸の上下溝(22)と、短寸の上下溝(23)がそれぞれ前後対称状に凹設され、仕切部材(30)における仕切板(31,32)の両側縁を上下溝部(22,23)に差込み支持することで、ラゲージルーム(10)内の収容スペースを適宜区画するか、あるいはラゲージルーム(10)の外側壁部を構成することを特徴とする車両のラゲージルーム構造。
【請求項2】
車両のリヤシート(2)と、バックドア(3)との間に画成される車両のラゲージルーム(10)構造において、
前記ラゲージルーム(10)の両側壁面パネルに内装されるラゲージサイド(20)の表面には、長寸の上下溝(22)と、短寸の上下溝(23)がそれぞれ前後対称状に凹設され、仕切部材(30)における仕切板(31,32)の両側縁を長寸の上下溝(22)、あるいは短寸の上下溝(23)に選択的に差込み支持することで、仕切部材(30)の高さ位置を可変とし、この仕切部材(30)の上面に棚機能を有するラゲージフロア(40)を載置固定することにより、上下高さ位置を調整してラゲージフロア(40)を支持するようにしたことを特徴とする車両のラゲージルーム構造。
【請求項3】
車両のリヤシート(2)と、バックドア(3)との間に画成される車両のラゲージルーム(10)構造において、
前記ラゲージルーム(10)の両側壁面パネルに内装されるラゲージサイド(20)の表面には、少なくとも上下位置に車両の長手方向に沿って延びるガイド孔(24,25)が開設され、上下溝(62)を設けたアジャスタ(60)を上記ガイド孔(24,25)内に着脱自在に装着するとともに、アジャスタ(60)の上下溝(62)に仕切部材(30)の仕切板(31,32)の両側縁を差し込み支持することで、上下位置、及び前後位置をそれぞれ調整可能に仕切部材(30)をラゲージルーム(10)内の適切位置に位置決めして、スペース機能を高めるか、あるいは上記仕切部材(30)の上面にラゲージフロア(40)を載置固定することで、ラゲージフロア(40)の高さ位置を適宜調整するようにしたことを特徴とする車両のラゲージルーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−149188(P2009−149188A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328394(P2007−328394)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】