説明

車両の乗降用ステップ取付構造

【課題】構造の重量化及び複雑化を招くことなく、十分な取付強度を有する車両の乗降用ステップ取付構造の提供。
【解決手段】フロントアンダーランプロテクタブラケット10は、サイドメンバ11の下面に接合され、フロントアンダーランプロテクタ27を後方から支持する。ステップブラケット8は、フロントアンダーランプロテクタブラケット10に接続されて支持される一端のフランジ部33と、ファーストステップ37を支持する他端のステップ支持部34とを有し、一端から他端に向かって車幅方向外側へ延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗降用ステップ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの大型の車両に対し、乗員がキャブに乗降する際に足場となるファーストステップを、フロントタイヤの前方に設けることが知られている。このファーストステップを支持するステップブラケットは、キャブチルト時にフロントタイヤとの干渉を避けるために、フレームに対して固定されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−301990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、他の構造物(例えば、ステアリング関連の構造物)との干渉を避けるように上記ステップブラケットを配置するためには、フレームの下方に、ステップブラケットを接合するため中間ブラケットを配置する必要がある。
【0005】
しかし、ステップブラケットを接合するための中間ブラケットを別途設けることは、構造の複雑化を招く。
【0006】
また、ステップブラケットは中間ブラケットに片持ち状に支持され、その他端部にファーストステップを介して乗員の体重が負荷されるため、中間ブラケットには、係る負荷に耐え得る剛性が必要となる。ここで、中間ブラケットの剛性は、中間ブラケットの素材自体の厚肉化や、中間ブラケットに補強構造を施す等によって高めることが可能である。しかし、何れの場合であっても、中間ブラケットの重量化を伴ってしまう。
【0007】
さらに、中間ブラケットの剛性をフレームの剛性と同等以上に高めた構造では、ステップブラケットから中間ブラケットへ入力される荷重の大部分がフレームに伝達されるため、フレームが変形して車両の耐久性に影響を与えてしまう可能性がある。係る不都合を回避するためには、車両横方向(車幅方向)の剛性を確保する補強構造をさらに付加することによってフレームが受け持つ荷重負担を軽減させる必要があり、構造の複雑化や重量化を招く。
【0008】
そこで、本発明は、構造の重量化及び複雑化を招くことなく、十分な取付強度を有する車両の乗降用ステップ取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明に係る車両の乗降用ステップ取付構造は、フレームとフロントアンダーランプロテクタブラケットとステップブラケットとを備える。
【0010】
フロントアンダーランプロテクタブラケットは、フレームの下方に配置され、フロントアンダーランプロテクタを後方から支持する。ステップブラケットは、フロントアンダーランプロテクタブラケットに接続されて支持される一端部と、ファーストステップを支持する他端部とを有し、一端部から他端部に向かって車幅方向外側へ延びる。
【0011】
上記構成では、ファーストステップを支持するステップブラケットは、フロントアンダーランプロテクタブラケットに接続され支持される。このフロントアンダーランプロテクタブラケットはフロントアンダーランプロテクタを車両の後方から支持し、フロントアンダーランプロテクタは、車両の前面に乗用車が正面衝突した際に、乗用車側の衝撃吸収機能を有効に作動させるために、乗用車が車両の下部へ潜り込むことを抑制する。
【0012】
すなわち、衝突時の入力に耐え得る剛性を本来的に有するフロントアンダーランプロテクタブラケットにステップブラケットを接続しているので、ステップブラケットを支持するための剛性の高い部材を別途設けずに、ステップブラケットの取付強度を十分に確保することができる。従って、構造の重量化及び複雑化を招くことなく、十分な取付強度を有する車両の乗降用ステップ取付構造を得ることができる。
【0013】
また、特に大型車等の車高が高い車両では、ファーストステップがフレームに対して非常に低い位置に配置される。このため、ステップブラケットをフレームに接続する場合には、ファーストステップとフレームとの高さ方向の距離に応じてステップブラケットの長さを増大させる必要がある。しかし、ステップブラケットの長さの増大は、ステップブラケットを支持する部分に加わる負荷の増大を招くため、好ましくない。
【0014】
この点に関し、上記構造では、フレームの下方に配置されたフロントアンダーランプロテクタブラケットにステップブラケットの一端部を接続しているので、ステップブラケットの長さ(一端部から他端部までの距離)を、ステップブラケットをフレームに接続する場合に比べて短くすることができる。
【0015】
また、上記フロントアンダーランプロテクタブラケットは、ステップブラケットの一端部が接続される第1側面部と、この第1側面部から車幅方向内側に離間して配置される第2側面部と、車幅方向に沿って配置されて第1側面部と第2側面部とを連結する連結部と、を有してもよい。
【0016】
フロントアンダーランプロテクタブラケットはフロントアンダーランプロテクタを車両の後方から支持するため、車両前後方向の剛性は高く設定されているが、車幅方向の剛性については高く設定されているとは限らない。
【0017】
この点に関し、上記構成では、ステップブラケットからの荷重が入力する第1側面部が、車幅方向に沿って配置された連結部によって第2側面部に連結されているため、この連結部によって車幅方向の剛性が補強される。従って、連結部を設けるという簡単な構造により、ファーストステップの取付強度をさらに増大させることができる。
【0018】
また、上記連結部は、板状部材によって形成されてもよい。
【0019】
上記構成では、連結部を板状部材によって簡易に形成することができる。
【0020】
なお、この場合、連結部は、車幅方向の剛性を確保可能な形状であればよく、内部に閉空間を区画する筒形状の他、筒形状の一部が開口した形状(例えば、断面U字形状)であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、構造の重量化及び複雑化を招くことなく、十分な取付強度を有する車両の乗降用ステップ取付構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る車両のヘッドランプ取付構造の斜視図、図2は図1の側面図、図3は図1の平面図、図4は図1の要部を模式的に示す後面図、図5は図4を矢印V方向から視た底面図である。なお、図中FRは車両前方を、図中UPは車両上方を、図中OUTは車幅方向外側をそれぞれ示している。また、以下の説明における左右方向は、車両前方を向いた状態での左右方向である。
【0023】
本実施形態に係る車両1は、キャブ(図示省略)が概ねエンジン(図示省略)よりも前方に位置するキャブオーバー型の車両であり、車両1の前部側方に、乗降用ステップ取付構造3を備える。なお、車両1の運転席は、キャブ(車室)内の左側に配置されている。
【0024】
図1〜図5に示すように、乗降用ステップ取付構造3は、フレーム4とステップブラケット8とフロントアンダーランプロテクタブラケット10と、を備える。
【0025】
フレーム4は、左右のサイドメンバ11と複数のクロスメンバ12とを備える。左右のサイドメンバ11は、車幅方向両側で車両前後方向に延設されている。各サイドメンバ11は、略コ字状断面を有し、側壁部13と上壁部14と底壁部15とを備える。上壁部14及び底壁部15は、側壁部13の上下両端から車幅方向内側へ向かって相対向して延びる。各クロスメンバ12は、その両端が左右のサイドメンバ11に接合され、両サイドメンバ11の同士を連結している。
【0026】
フロントアンダーランプロテクタブラケット10は、左右のサイドメンバ11のうち前車輪41よりも前方の前端部に固定されている。フロントアンダーランプロテクタブラケット10は、連結部としての周壁部20と、第1側面部としての側壁部21と、第2側面部としての側壁部22と、を備える。側壁部21の中央部分には、開口21aが形成されている。側壁部22は、側壁部21から車幅方向に離間して配置され、周壁部20は、車幅方向に沿って配置されている。周壁部20は、下方へ開口する略U字状断面を有し、それぞれが板状部材からなる前板部23と後板部24と上板部25とを備える。上板部25は、サイドメンバ11の底壁部15の外面(下面)に締結されている。前板部23及び後板部24は、上板部25の前端及び後端からそれぞれ下方へ相対向して延びる。側壁部21,22は、周壁部20の車幅方向外側と内側とにそれぞれ配置され、周壁部20の車幅方向外側の端縁及び車幅方向内側の端縁にそれぞれ接合されている。これにより、周壁部20は2つの側壁部21,22同士を連結し、フロントアンダーランプロテクタブラケット10は、下方に開口した略箱形状を呈する。なお、周壁部のうち開口する領域は、下方の他、後方であってもよく、また、周壁部に開口する領域を設けなくてもよい。さらに、周壁部に代えて、管状部材や棒部材を設けてもよい。
【0027】
フロントアンダーランプロテクタブラケット10の前板部23は、フロントアンダーランプロテクタ支持部26を有し、フロントアンダーランプロテクタ支持部26には、車幅方向に沿って延びるフロントアンダーランプロテクタ27が固定されている。このフロントアンダーランプロテクタ27は、車両1の前面に乗用車が正面衝突した際に、乗用車側の衝撃吸収機能を有効に作動させるために、乗用車が車両1の下部へ潜り込むことを抑制する。
【0028】
ステップブラケット8は、一端部としてのフランジ部33と、他端部としてのステップ支持部34と、アーム部35と、を備える。フランジ部33及びステップ支持部34は、アーム部35の一端と他端とにそれぞれ固定されている。フランジ部33は、フロントアンダーランプロテクタブラケット10の側壁部21の外面上に締結固定され、これにより、ステップブラケット8は、フロントアンダーランプロテクタブラケット10を介してサイドメンバ11に固定されている。アーム部35は、一端から他端へ向かって、車幅方向外側へ延びた後、斜め後下方へ延び、再び車幅方向外側へ延びている。ステップ支持部34上には、ファーストステップ37が載置され締結固定されている。このファーストステップ37は、図4に示すように、キャブ側面50よりも車幅方向内側に配置され、車両1の乗員がサイドメンバ11の上方のキャブ(車室)内へ乗降する際に、乗員の足場として機能する。なお、図4中破線で示す領域51は、ステアリング関連の構造物が配置される領域であり、ステップブラケット8は、係るステアリング関連の構造物との干渉を避けるように配置されている。また、ファーストステップ37の車幅方向外側の先端縁がキャブ側面50の鉛直下方に位置するように、ファーストステップ37を配置してもよい。
【0029】
本実施形態によれば、ファーストステップ37を支持するステップブラケット8は、フロントアンダーランプロテクタブラケット10に接続され支持される。このフロントアンダーランプロテクタブラケット10はフロントアンダーランプロテクタ27を車両の後方から支持し、フロントアンダーランプロテクタ27は、車両1の前面に乗用車が正面衝突した際に、乗用車側の衝撃吸収機能を有効に作動させるために、乗用車が車両1の下部へ潜り込むことを抑制する。
【0030】
このように、衝突時の入力に耐え得る剛性を本来的に有するフロントアンダーランプロテクタブラケット10にステップブラケット8を接続しているので、ステップブラケット8を支持するための剛性の高い部材を別途設けずに、ステップブラケット8の取付強度を十分に確保することができる。従って、構造の重量化及び複雑化を招くことなく、十分な取付強度を有する車両の乗降用ステップ取付構造3を得ることができる。
【0031】
また、特に大型車等の車高が高い車両では、ファーストステップ37がサイドメンバ11に対して非常に低い位置に配置される。このため、ステップブラケット8をサイドメンバ11に直接接続すると、ファーストステップ37とサイドメンバ11との高さ方向の距離に応じてステップブラケット8の長さ(アーム部35の長さ)を増大させる必要がある。しかし、ステップブラケット8の長さの増大は、ステップブラケット8を支持する部分に加わる負荷の増大を招くため、好ましくない。
【0032】
この点に関し、本実施形態では、サイドメンバ11の下方に配置されたフロントアンダーランプロテクタブラケット10にステップブラケット8のフランジ部33を接続しているので、ステップブラケット8のアーム部35の長さを、ステップブラケット8をサイドメンバ11に直接接続する場合に比べて短くすることができる。
【0033】
また、一般に、フロントアンダーランプロテクタブラケット10はフロントアンダーランプロテクタ27を車両の後方から支持するため、車両前後方向の剛性は高く設定されているが、車幅方向の剛性については高く設定されているとは限らない。
【0034】
この点に関し、本実施形態では、ステップブラケット8からの荷重が入力する側壁部21が、車幅方向に沿って配置された周壁部20によって側壁部22とに連結されているため、この周壁部20によって車幅方向の剛性が補強される。従って、板状部材によって簡易に形成される周壁部20を設けるという簡単な構造により、ファーストステップ37の取付強度をさらに増大させることができる。
【0035】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係る車両のヘッドランプ取付構造の斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図1の要部を模式的に示す後面図である。
【図5】図4を矢印V方向から視た底面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
3 乗降用ステップ取付構造
4 フレーム
8 ステップブラケット
10 フロントアンダーランプロテクタブラケット
11 サイドメンバ
12 クロスメンバ
20 周壁部(連結部)
21 側壁部(第1側面部)
22 側壁部(第2側面部)
27 フロントアンダーランプロテクタ
33 フランジ部(ステップブラケットの一端部)
34 ステップ支持部(ステップブラケットの他端部)
35 アーム部
37 ファーストステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームの下方に配置され、フロントアンダーランプロテクタを後方から支持するフロントアンダーランプロテクタブラケットと、
前記フロントアンダーランプロテクタブラケットに接続されて支持される一端部と、ファーストステップを支持する他端部とを有し、前記一端部から他端部に向かって車幅方向外側へ延びるステップブラケットと、
を備えたことを特徴とする車両の乗降用ステップ取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の乗降用ステップ取付構造であって、
前記フロントアンダーランプロテクタブラケットは、前記ステップブラケットの一端部が接続される第1側面部と、この第1側面部から車幅方向内側に離間して配置される第2側面部と、車幅方向に沿って配置されて前記第1側面部と前記第2側面部とを連結する連結部と、を有する
ことを特徴とする車両の乗降用ステップ取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の乗降用ステップ取付構造であって、
前記連結部は、板状部材によって形成されている
ことを特徴とする車両の乗降用ステップ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−190983(P2007−190983A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9470(P2006−9470)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】