説明

車両の側部構造

【課題】ドアを伴う車体の塗装工程で、マスキングをする必要がなく、ドアを閉じ状態で前後のドアサッシュ部間の隙間からセンタピラーに噴霧された塗料がセンタピラーの一部に付着することに起因して塗装の色班ができても、完成車で両ドアを開いた場合に、ピラーアウタパネルの壁面が多面形状で陰影を伴うため、視覚的に見栄えの向上を図る車両の側部構造を提供する。
【解決手段】センタピラー8のピラーアウタパネル14が水平断面視で略コ字状に形成され、ピラーアウタパネル14の車両外側の壁面14Aが、略ドアサッシュ部の高さ範囲にわたって、水平断面視で互に角度をもって上下方向に延びる多面形状に形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体のフロントドア開口とリヤドア開口とを車両の前後方向に仕切るセンタピラーが設けられ、フロントドアとリヤドアとのドアサッシュ部には、両ドアの閉時に前後に連続するようにガーニッシュがそれぞれ設けられた車両の側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両の側部構造としては、図7に示す平面図で示す構造がある。
すなわち、ピラーアウタパネル71とピラーレインフォースメント72とピラーインナパネル73とを備えて車両の上下方向に延びるセンタピラー74を設け、このセンタピラー74で車体のフロントドア開口と、リヤドア開口とを車両の前後方向に仕切るように構成している。
【0003】
また、フロントドア75のドアサッシュ部76と、リヤドア77のドアサッシュ部78、詳しくは、フロントドア75の後側のドアサッシュ部76と、リヤドア77の前側のドアサッシュ部78とには、両ドア75,77の閉時に車両の前後方向に連続するようにガーニッシュ79,80をそれぞれ設けている。
なお、図中、81はボディ側のウエザストリップ、82はドア側のウエザストリップ、83はドアサッシュ部76,78にランチャンネルホルダ84を介して設けられたガラスランチャンネル、85はドアガラス、86はトリム部材であり、また、図中、矢印Fは車両の前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0004】
図7に示すように、ドア飾り要素としてのガーニッシュ79,80の車両前後方向の幅は、ドアサッシュ部76,78の対向面(ドアサッシュ部のガーニッシュに対向する面)の車両前後方向の幅よりも大きく形成される関係上、フロントドア75の後側ドアサッシュ部76の後端と、リヤドア77の前側のドアサッシュ部78の前端との間の車両前後方向の隙間αが、比較的大きくなる。
このように、ガーニッシュ79,80を備え、ドアサッシュ部76,78間の隙間αが大きくなると、塗装との関係で次のような問題点が発生するので、以下、この点について説明する。
【0005】
塗装工程は、図8に示すようにガーニッシュ79,80がドアサッシュ部76,78に取付けられていない状態(勿論、ウエザストリップ類、ガラスランチャンネル、ドアガラス、トリム部材もない)で行なわれるものであって、まず、フロントドア75およびリヤドア77をボディに組付けた状態で、両ドア75,77を開放してセンタピラー74を塗装する(第1の工程)。
【0006】
次に、両ドア75,77を閉鎖した状態で、ドア75,77等の車両外面を塗装(第2の工程)するが、この時、図8に矢印pで示すように、上述の隙間αから比較的多量の塗料が内方に入り、ピラーアウタパネル71の車両外側の壁面に塗着する。
【0007】
一般に塗装は、金属の表面に対する錆の発生を防止すると共に次工程の中塗り塗料との付着性をよくするため、ディッピング塗装(竜着塗装)を施す下塗りと、下塗り塗装表面の凸凹をならし、次工程の上塗り塗装を良好に仕上げるための中塗りと、塗装の外観品質を確保し、塗膜に光沢感、平滑感を与える上塗りとが行なわれるが、上述のピラーアウタパネル71を含むセンタピラー74はボディ外板部品ではないため、上述の中塗りを省略するのが常である。
【0008】
このため、上述の第1の工程終了後におけるピラーアウタパネル71の塗膜は、下塗り塗装の塗膜と、上塗り塗装の塗膜との比較的薄いものとなり、下地の色が透けて見える場合があり、上述の第2の工程では隙間αから異なる塗膜(車両外面塗装用の上塗り塗料の塗膜)がピラーアウタパネル71の一部に塗着する。
このピラーアウタパネル71は、図7、図8に示すように、その車両外側の壁面がフラット面に形成されているので、第2の工程で上述の隙間αから異なる塗膜がピラーアウタパネル71に部分的に塗着すると、本来のピラーアウタパネル71の表面色に対して異なる塗膜の色班が形成され、見栄えが悪化する問題点があった。
【0009】
このような見栄えの悪化を防止するためには、上述の第2の工程の前に、ピラーアウタパネル71の車両側面にマスキング部材を配設して、車両外面を塗装する手段、または、第2の工程終了後に両ドア75,77を開放して車両外面と同一の塗料をピラーアウタパネル71に塗着する手段が考えられるが、これら何れの手段においても工程が増加する問題点があった。
【0010】
ところで、特許文献1には、車体のフロントドア開口とリヤドア開口とを車両の前後方向に仕切るセンタピラーを備え、フロントドアの車両後側のドアサッシュ部と、リヤドアの車両前側のドアサッシュ部とにそれぞれガーニッシュを設け、両ドアの閉時にこれら各ガーニッシュが前後方向に連続するように形成した車両の側部構造が開示されているが、この特許文献1に開示された構造は、図7、図8で示した従来構造と実質的に同等であるから、上述同様の問題点が発生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−234371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明は、センタピラーのピラーアウタパネルを水平断面視で略コ字状に形成し、該ピラーアウタパネルの車両外側の壁面を、略ドアサッシュ部の高さ範囲にわたって、水平断面視で互いに角度をもって上下方向に延びる多面形状に形成することにより、ドアを伴う車体の塗装工程で、マスキングをする必要がなく、ドアを閉じ状態で前後のドアサッシュ部間の隙間からセンタピラーに噴霧された塗料がセンタピラーの一部に付着することに起因して塗装の色班ができても、完成車で両ドアを開いた場合に、ピラーアウタパネルの壁面が多面形状で陰影を伴うため、視覚的に見栄えの向上を図ることができる車両の側部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の車両の側部構造は、車体のフロントドア開口とリヤドア開口とを車両の前後方向に仕切るセンタピラーが設けられ、フロントドアとリヤドアとのドアサッシュ部には、両ドアの閉時に前後に連続するようにガーニッシュがそれぞれ設けられた車両の側部構造であって、上記センタピラーのピラーアウタパネルが水平断面視で略コ字状に形成され、該ピラーアウタパネルの車両外側の壁面が、略ドアサッシュ部の高さ範囲にわたって、水平断面視で互いに角度をもって上下方向に延びる多面形状に形成されたものである。
上記構成によれば、ピラーアウタパネルの車両外側の壁面を、水平断面視において互いに角度を有する多面形状と成したので、次のような効果がある。
【0014】
すなわち、フロントドア、リヤドアを伴う車体の塗装工程で、マスキングをすることなく、両ドアを閉じて塗装を行なった際、前後のドアサッシュ部間の隙間からセンタピラーに噴霧された塗料がセンタピラーの一部に付着して塗装の色班ができても、完成車で両ドアを開いた場合に、ピラーアウタパネルの上記壁面が多面形状で陰影を伴うため、視覚的に見栄えの向上を図ることができる。
つまり、塗装工程の増加を招くことなく、視覚的に見栄えの向上を図ることができるものである。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記ピラーアウタパネルの上記壁面が、水平断面視で車両前後方向の中間部位が車両外方側に位置し、かつ、少なくとも2つの面部が上記中間部位に稜線を挟んで車両前側と車両後側とに傾斜した面となっているものである。
上記構成によれば、ピラーアウタパネルの壁面は、車両前後方向の中間部位と、車両前側の傾斜した面と、車両後側の傾斜した面とに稜線で区画されるので、ピラーアウタパネル壁面の多面形状は稜線で区分され、上記陰影がより一層明確となるため、上述の塗装の色班が存在しても、視覚的に見栄えの向上を図ることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記フロントドアと上記リヤドアとが共にヒンジドアであることを特徴とする。
上記構成によれば、両ヒンジドアを開放した時に、ピラーアウタパネルの壁面における塗装の色班が目立つのを、上記多面形状により防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、センタピラーのピラーアウタパネルを水平断面視で略コ字状に形成し、該ピラーアウタパネルの車両外側の壁面を、略ドアサッシュ部の高さ範囲にわたって、水平断面視で互いに角度をもって上下方向に延びる多面形状に形成したので、ドアを伴う車体の塗装工程で、マスキングをすることなく、ドアを閉じ状態で前後のドアサッシュ部間の隙間からセンタピラーに噴霧された塗料がセンタピラーの一部に付着することに起因して塗装の色班ができても、完成車で両ドアを開いた場合に、ピラーアウタパネルの壁面が多面形状で陰影を伴うため、視覚的に見栄えの向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の側部構造を備えた車両の斜視図
【図2】車両右側のセンタピラーを示す部分斜視図
【図3】ドアサッシュ部およびガーニッシュを含むセンタピラーの断面構造を示す平面図
【図4】図2のA−A線に沿う要部の拡大断面図
【図5】図2のB−B線に沿う要部の拡大断面図
【図6】ピラーアウタパネルの壁面における多面形状による陰影の一例を示す説明図
【図7】従来の車両の側部構造を示す部分拡大平面図
【図8】車両外面塗装時の説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
ドアを伴う車体の塗装工程で、マスキングをすることなく、ドアを閉じ状態で前後のドアサッシュ部間の隙間からセンタピラーに噴霧された塗料がセンタピラーの一部に付着することに起因して塗装の色班ができても、完成車で両ドアを開いた場合に、ピラーアウタパネルの壁面が多面形状で陰影を伴うため、視覚的に見栄えの向上を図るという目的を、車体のフロントドア開口とリヤドア開口とを車両の前後方向に仕切るセンタピラーが設けられ、フロントドアとリヤドアとのドアサッシュ部には、両ドアの閉時に前後に連続するようにガーニッシュがそれぞれ設けられた車両の側部構造において、上記センタピラーのピラーアウタパネルが水平断面視で略コ字状に形成され、該ピラーアウタパネルの車両外側の壁面が、略ドアサッシュ部の高さ範囲にわたって、水平断面視で互いに角度をもって上下方向に延びる多面形状に形成されるという構成にて実現した。
【実施例】
【0020】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の側部構造を示し、ドアを取外した状態の車体を斜め上方から目視した状態で示す図1において、エンジンルームと車室1とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル2を設け、このダッシュロアパネル2の下部後端にはフロアパネル3を一体的に連設している。
【0021】
フロアパネル3は車室1の底面を形成するもので、このフロアパネル3は上述のダッシュロアパネル2の下部後端から後方に向けて略水平状に延びると共に、該フロアパネル3の車幅方向中央部には、車室1側へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部4を一体または一体的に形成している。
【0022】
車体側部は、車両の右側と車両の左側とで対称に構成されており、上下方向に延びるヒンジピラー5と、前低後高状(スラント状)に延びるフロントピラー6と、前後方向に延びるルーフサイドレール7と、上下方向に延びるセンタピラー8と、前後方向に延びるサイドシル9とで囲繞された左右のフロントドア開口10,10を形成している。
【0023】
また、上下方向に延びるセンタピラー8と、前後方向に延びるルーフサイドレール7と、後方に向けて斜め下方に延びる図示しないリヤピラーまたはクオータピラーと、前後方向に延びるサイドシル9とで囲繞された左右のリヤドア開口11,11を形成している。
【0024】
フロントドア開口10は前席乗員乗降用のドア開口であり、リヤドア開口11は後席乗員乗降用のドア開口であって、上述のセンタピラー8は、車体のフロントドア開口10とリヤドア開口11とを車両の前後方向に仕切る車体強度部材である。
【0025】
なお、図1において、12はルーフパネル、13はトンネル部4の縦壁とサイドシル9におけるサイドシルインナとの間を車幅方向に連結する左右一対のクロスメンバ、BLはベルトラインである。
【0026】
図2は車両右側のセンタピラー8を車外側から見た状態で示す斜視図、図3はボディに対してフロントドア、リヤドアを組付けた状態下における図2のA−A線矢視断面図(平面図)である。
【0027】
図3において、上述のセンタピラー8は、ピラーアウタパネル14と、レインフォースメント15と、ピラーインナパネル16とを、これら前後の接合フランジ8a,8bにて一体的に接合し、車両の上下方向に延びるピラー閉断面17を備えたものである。上述のピラーアウタパネル14は、図3に示すように水平断面視で略コ字状に形成されている。
【0028】
上述のピラーインナパネル16の車幅方向内側には、トリム部材としてのセンタピラートリム18を配設する一方、センタピラー8の前後の接合フランジ部8a,8bには、ウエザストリップ19,20をそれぞれ嵌着し、これら各ウエザストリップ19,20の主シール部19a,20aで後述するドアのドアサッシュ部とセンタピラー8との間をシールすると共に、各リップ部19b,20bをセンタピラートリム18の車両前後面に当接させている。
【0029】
ところで、上述のフロントドア開口10を開閉するフロントドア21は、その一部を図3に示すように、閉断面構造のドアサッシュ部22と、このドアサッシュ部22にランチャンネルホルダ23を介して設けたガラスランチャンネル24と、ドアガラス25と、ドアサッシュ部22とピラーアウタパネル14との間をシールするシール部材としてのウエザストリップ26と、図示しないドアパネルとを備えている。
【0030】
図3では図示の便宜上、フロントドア21のうち、その後側のドアサッシュ部22周辺のみを図示しており、このドアサッシュ部22の車外側面には、ドアの飾り要素としてのガーニッシュ27を配設している。
同様に、上述のリヤドア開口11を開閉するリヤドア31は、その一部を図3に示すように、ドアサッシュ部32と、このドアサッシュ部32にランチャンネルホルダ33を介して設けたガラスランチャンネル34と、ドアガラス35と、ドアサッシュ部32とピラーアウタパネル14との間をシールするシール部材としてのウエザストリップ36と、図示しないドアパネルとを備えている。
【0031】
図3では図示の便宜上、リヤドア31のうち、その前側のドアサッシュ部32周辺のみを図示しており、このドアサッシュ部32の車外側面には、ドアの飾り要素としてのガーニッシュ37を配設している。
ここで、上述のフロントドア21とリヤドア31とは共に、その前側をヒンジセンタとして開閉するヒンジドアである。また、これら両ドア21,31の閉時には、フロントドア21の後側のドアサッシュ部22に設けたガーニッシュ27と、リヤドア31の前側のドアサッシュ部32に設けたガーニッシュ37とが、車両の前後方向に連続するように構成している。
【0032】
図4は図2のA−A線矢視断面図で、ピラーアウタパネル14の上下方向中間部の断面形状を示し、図5は図2のB−B線矢視断面図で、ピラーアウタパネル14の上部の断面形状を示す。
【0033】
図2、図4、図5に示すように、ピラーアウタパネル14の車両外側の壁面14Aは、略ドアサッシュ部22,32の高さ範囲にわたって、つまり、ドアサッシュ部22,32の略全高の範囲にわたって、水平断面視で互いに角度をもって上下方向に延びる多面形状に形成されている。
すなわち、図2、図4、図5に示すように、ピラーアウタパネル14の上述の壁面14Aは、水平断面視で車両前後方向の中間部位としての中間面部14Cが、車両の車幅方向外方側に位置し、この中間面部14Cの前側に上下方向に延びる稜線xを挟んで車両前側に傾斜する前側傾斜面部14Fと、上述の中間面部14Cの後側に上下方向に延びる稜線yを挟んで車両後側に傾斜する後側傾斜面部14Rと、を備えるようにプレス加工にて形成されたものである。
【0034】
上述の前後一対の稜線x,yの車両前後方向の離間間隔、換言すれば、中間面部14Cの車両前後方向の長さは、車両外面塗装時に隙間α(図3参照)から塗料が入って色班が形成される範囲に対応すべく、図3に示すドアサッシュ部22後端とドアサッシュ部32前端との間の隙間αよりも極めて大きく設定されている。ここで、上述の稜線x,yの形成部位は、車両外面塗装時に上記隙間αから塗料が入って、塗膜が形成される該塗膜の際部に設定されるものである。
【0035】
また、上述の各稜線x,yおよび中間面部14Cは、図2に示すように、ピラーアウタパネル14の上端部からベルトラインBLの直下部まで、または、ピラーアウタパネル14の上端近傍からベルトラインBLまで、上下方向に連続して形成されている。
【0036】
図4に示すように、ピラーアウタパネル14の上下方向中間部において、中間面部14Cと前側傾斜面部14Fとの成す角度θ1、並びに、図5に示すように、ピラーアウタパネル14の上部において中間面部14Cと前側傾斜面部14Fとの成す角度θ2は、何れも5°〜10°、この実施例では8°に設定されている。
【0037】
また、図4に示すように、ピラーアウタパネル14の上下方向中間部において、中間面部14Cと後側傾斜面部14Rとの成す角度θ3、並びに、図5に示すように、ピラーアウタパネル14の上部において中間面部14Cと後側傾斜面部14Rとの成す角度θ4は、何れも8°〜10°、この実施例では8°に設定されている。
【0038】
つまり、θ1=5°〜10°、θ2=5°〜10°、θ3=8°〜10°、θ4=8°〜10°に設定されたものであるが、図4、図5では各面部14F,14Rの傾斜を明確化するために強調して図示している。
ここで、上述の各角度θ1,θ2,θ3,θ4は5°以上で陰影効果を発揮するが、これらの各角度が10°を超過するような過大な場合には、周辺構造との関係で不具合が発生する。
【0039】
すなわち、ピラーアウタパネル14はウエザストリップ26,36とのシールポイントを決定した上で、中間面部14Cの位置が定まるので、上記角度が過大な場合には、中間面部14Cが過度に車外側に突出し、センタピラー8、ドア21,31間の隙間が狭くなり、ドア21,31の開閉が重くなる。
このため、上述の各角度θ1〜θ4は5度以上10数度未満が望ましい。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0040】
塗装工程に関しては、背景技術の欄で述べた内容と同様であって、ガーニッシュ27,37がドアサッシュ部22,32に取付けられていない状態下にて行なわれる。
つまり、まず、フロントドア21およびリヤドア31をボディに組付けた状態で、これら両ドア21,31を開放してセンタピラー8を下塗り塗装および上塗り塗装する(第1の工程)。
【0041】
次に、両ドア21,31を閉鎖した状態で、ドア21,31等の車両外面を塗装する(第2の工程)。
この時、図3に示す隙間αから塗料が内方に噴霧され、ピラーアウタパネル14の中間面部14Cに塗料が付着する。
【0042】
このように、フロントドア21およびリヤドア31を伴う車体の塗装工程で、マスキングをすることなく、両ドア21,31を閉じて塗装を行なった際、前後のドアサッシュ部22,32間の隙間αからセンタピラー8に噴霧された塗料がセンタピラー8の一部、詳しくは、ピラーアウタパネル14における中間面部14Cに付着して塗装の色班ができても、完成車で両ドア21,31を開いた場合に、ピラーアウタパネル14の上述の壁面14Aが、互いに角度をもって形成された中間面部14C、前側傾斜面部14F、後側傾斜面部14Rを備えた多面形状に構成されており、この多面形状で陰影を伴うため、視覚的に見栄えの向上を図ることができる。
【0043】
この陰影の状態を図6に例示する。図6では上述の各面部14C,14F,14Rのうち陰影が最も濃い後側傾斜面部14Rのハッチングの密度を密にし、陰影が最も薄い前側傾斜面部14Fのハッチングの密度を粗にし、陰影が中間の中間面部14Cのハッチングの密度を中間にして、陰影の状態をイメージ的に図示したものであって、同図から明らかなように、上述の多面形状により陰影を伴うため、視覚的に見栄えの向上を図ることができる。
但し、図6は一例であり、陰影の濃淡は外光がセンタピラー8に当る角度等により異なるものである。
【0044】
このように、上記実施例の車両の側部構造は、車体のフロントドア10開口とリヤドア開口11とを車両の前後方向に仕切るセンタピラー8が設けられ、フロントドア21とリヤドア31とのドアサッシュ部22,32には、両ドア21,31の閉時に前後に連続するようにガーニッシュ27,37がそれぞれ設けられた車両の側部構造であって、上記センタピラー8のピラーアウタパネル14が水平断面視で略コ字状に形成され、該ピラーアウタパネル14の車両外側の壁面14Aが、略ドアサッシュ部22,32の高さ範囲にわたって、水平断面視で互いに角度をもって上下方向に延びる多面形状(中間面部14C、前側傾斜面部14F、後側傾斜面部14R参照)に形成されたものである(図2、図3参照)。
この構成によれば、ピラーアウタパネル14の車両外側の壁面14Aを、水平断面視において互いに角度を有する多面形状と成したので、次のような効果がある。
【0045】
すなわち、フロントドア21、リヤドア31を伴う車体の塗装工程で、マスキングをすることなく、両ドア21,31を閉じて塗装を行なった際、前後のドアサッシュ22,32部間の隙間αからセンタピラー8に噴霧された塗料がセンタピラー8の一部に付着して塗装の色班ができても、完成車で両ドア21,31を開いた場合に、ピラーアウタパネル14の上記壁面14Aが多面形状で陰影を伴うため、視覚的に見栄えの向上を図ることができる。
つまり、塗装工程の増加を招くことなく、視覚的に見栄えの向上を図ることができるものである。
【0046】
また、上記ピラーアウタパネル14の上記壁面14Aが、水平断面視で車両前後方向の中間部位(中間面部14C参照)が車両外方側に位置し、かつ、少なくとも2つの面部が上記中間部位に稜線(x,y)を挟んで車両前側と車両後側とに傾斜した面(前側傾斜面部14F、後側傾斜面部14R参照)となっているものである(図2、図4、図5参照)。
この構成によれば、ピラーアウタパネル14の壁面14Aは、車両前後方向の中間部位(中間面部14C)と、車両前側の傾斜した面(前側傾斜面部14F参照)と、車両後側の傾斜した面(後側傾斜面部14R参照)とに稜線(x,y)で区画されるので、ピラーアウタパネル壁面14Aの多面形状は稜線(x,y)で区分され、上記陰影がより一層明確となるため、上述の塗装の色班が存在しても、視覚的に見栄えの向上を図ることができる。
【0047】
さらに、上記フロントドア21と上記リヤドア31とが共にヒンジドアであることを特徴とする。
この構成によれば、両ヒンジドアを開放した時に、ピラーアウタパネル14の壁面14Aにおける塗装の色班が目立つのを、上記多面形状により防止することができる。
【0048】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のピラーアウタパネル壁面の水平断面視で車両外方側に位置する車両前後方向の中間部位は、実施例の中間面部14Cに対応し、
以下同様に、
中間部位に稜線を挟んで車両前側に傾斜した面は、前側傾斜面部14Fに対応し、
中間部位に稜線を挟んで車両後側に傾斜した面は、後側傾斜面部14Rに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては、その前側をヒンジセンタとして開閉するヒンジドア(いわゆる前ヒンジドア)を例示したが、これは観音開き構造のドアであってもよく、また前ヒンジ、かつ後スライド式のドアであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
8…センタピラー
10…フロントドア開口
11…リヤドア開口
14…ピラーアウタパネル
14A…壁面
14C…中間面部(中間部位)
14F…前側傾斜面部
14R…後側傾斜面部
21…フロントドア
22…ドアサッシュ部
27…ガーニッシュ
31…リヤドア
32…ドアサッシュ部
37…ガーニッシュ
x,y…稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロントドア開口とリヤドア開口とを車両の前後方向に仕切るセンタピラーが設けられ、
フロントドアとリヤドアとのドアサッシュ部には、両ドアの閉時に前後に連続するようにガーニッシュがそれぞれ設けられた車両の側部構造であって、
上記センタピラーのピラーアウタパネルが水平断面視で略コ字状に形成され、
該ピラーアウタパネルの車両外側の壁面が、略ドアサッシュ部の高さ範囲にわたって、水平断面視で互いに角度をもって上下方向に延びる多面形状に形成された
車両の側部構造。
【請求項2】
上記ピラーアウタパネルの上記壁面が、水平断面視で車両前後方向の中間部位が車両外方側に位置し、かつ、少なくとも2つの面部が上記中間部位に稜線を挟んで車両前側と車両後側とに傾斜した面となっている
請求項1記載の車両の側部構造。
【請求項3】
上記フロントドアと上記リヤドアとが共にヒンジドアである
請求項1または2記載の車両の側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−158267(P2012−158267A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19961(P2011−19961)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】